2001/12/3 フロンティアカーボン株式会社            添付資料

フラーレンの製造販売会社『フロンティアカーボン』の発足について
  夢の素材「フラーレン」の量産化、低価格化を世界初で実現するパイオニアがスタート

 三菱商事株式会社(本社:東京都千代田区、社長:佐々木幹夫)の主催するナノテクノロジー投資ファンド「ナノテクパートナーズ1号投資事業有限責任組合(以下「NTP」)」と三菱化学株式会社(本社:東京都千代田区、社長:正野寛治)とは、本年夏に、21世紀の夢の素材と言われる「フラーレン」の本格的な商業生産を開始することで基本合意しておりましたが、本日、その合弁会社であるフロンティアカーボン株式会社(本社:東京都中央区、社長:友納茂樹、以下「FCC社」)が発足いたしました。今後、FCC社は、フラーレンの大量生産、低価格化を世界で初めて実現し、さらにフラーレン、カーボンナノチューブを用いた高付加価値ナノカーボン製品の開発及び新規事業開発並びにナノカーボンの製造及び供給における世界のトップ企業を目指してまいります。

 フラーレンは、炭素原子がサッカーボール状に配列された構造を持つ物質で、光線力学療法を利用した抗癌剤、抗エイズ剤などの医薬品、特に皮膚の老化防止効果をもつ化粧品類、長寿命リチウムイオン電池、燃料電池用水素ガス貯蔵、超伝導材料、高機能塗料、超微細粒子人工ダイヤモンドなどの工業用研磨剤など多くの分野での用途開発が進んでおりますが、工業化(実用化)に当たっては、高コストがネックとなっていました。

 FCC社は、米国
フラーレン・インターナショナル・コーポレーションが保有するフラーレン物質特許を含む三菱商事グループが持つ知的財産、販売力と三菱化学グループが持つカーボンブラック生産技術をベースに、従来の方法では困難とされてきたフラーレンの大量生産と低価格化を実現し、本格的商業化を進めてまいります。具体的には、2002年2月に三菱化学社黒崎事業所(北九州市)内に年産400sのパイロットプラントを設置し、生産販売を開始する予定です。その後、本格プラントを新たに設置し、生産規模を段階的にスケールアップしていき、2007年頃には年間1,500トン程度の生産能力にまで拡大していく計画です。これにより現在世界で年間約百キロと推定されるフラーレンの生産量が一挙に約一万倍規模にまで拡大し、製造コストも現行の1/10 から 1/100程度になると予想しています。

 なお、FCC社は、今後飛躍的発展が見込まれる本事業推進の加速化と拡大を一層図るため、2002年4月を目処にストックオプション制度を導入する予定です。また、将来広く資金を調達すべく株式の公開を検討していきます。

[当社の概要]

 社名 : フロンティアカーボン株式会社
 社長 : 友納茂樹(前三菱化学社科学技術戦略室部長)
 本社所在地 : 東京都中央区京橋1-8-7 京橋日殖ビル5階
 資本金 : 10億円(三菱化学社50% NTP50%)
   (2002年3月迄に23億円まで増資)
 発足 : 平成13年12月3日
 事業内容 : フラーレン等のナノカーボン製品の製造及び販売
 売上高見込 : 約230億円(2007年度)
 従業員数 : 約20名(2002年度)


[NTPの概要]

世界で初めてのフラーレン・カーボンナノチューブを核とするナノテクノロジーの事業化を推進するためのプライベート・エクイティー・ファンド。

 ファンド名 : ナノテクパートナーズ1号投資事業有限責任組合
 ファンド総額 : 72億円(2002年6月迄に150億円程度まで拡大予定)
 投資期間 : 5年間
 ファンド存続期間 : 原則10年間
 組合員構成          : 組成当初として
 ナノテクパートナーズ株式会社
 三菱商事株式会社
 三菱化学株式会社
 本荘ケミカル株式会社
 主な投資対象 : 日本国内外における未上場企業(新規設立含む)
 (1) フラーレン/カーボンナノチューブの製造販売会社(当社)
 (2) フラーレン/カーボンナノチューブの応用製品の製造販売会社
 目的 : フラーレン・カーボンナノチューブの製造並びに応用製品の事業化を加速的に推進する目的から、技術面や製造面で有力な企業や個人とも提携し、本ファンドを通じ効率的な事業利益の獲得を狙う。

添付資料          

注 buckyball =buckminsterfullerene
【名】 《理》C60構造分子、バッキーボール=C60






Fullerene International Corporation     http://www.fullereneinternational.com/fullerene/aboutfic.html

 Fullerene International Corporation (FIC) combines the capabilities of partners Mitsubishi Corporation (MC), Materials and Electrochemical Research Corporation (MER: http://www.mercorp.com/mercorp/), and Research Corporation Technologies (RCT: http://www.rctech.com/) in a joint venture to commercialize fullerene materials.
 MC, the giant trading company, brings business development and market incubation to FIC. MER, a high technology development company in Tucson, provides production, production scale-up, application development, technical support and patents to the new company. RCT, a Tucson-based intellectual property management company, contributes dominant composition-of-matter and method-of-production patents.

 MER in Tucson has been producing fullerenes and nanotubes, and developing applications for these unique materials since their discovery. In the last five years, MER and MC have been evaluating the commercial potential of fullerene materials in Japan. They found commercial potential limited by commercial-scale production levels and cost. FIC plans to scale up production in Japan, identify lowest-production-cost technology and promote commercial applications.

 Fullerene International Corporation has established a fullerene manufacturing facility in Japan for FIC subcontractor Honjo Chemical Corporation, a specialty chemical company in Osaka. MER built the reactor and separation system for Honjo and trained its personnel. FIC is now forming collaborations with several Japanese companies to explore the potential use of fullerenes in a diverse range of products. The initial targeted applications for fullerenes include batteries, field emission displays, gas storage, diamond-like cutting tools, capacitors for electric vehicles, sports equipment and pharmaceuticals.

About Fullerenes
 
Fullerenes are new forms of pure carbon with chemical, electrical, and physical characteristics quite different from the two previously known forms, graphite and diamond. The most common fullerene configuration is a soccer-ball-shaped molecule of 60 atoms, although carbon-70 and other variations can also be made. Researchers are studying fullerenes for use as a foundation for diamond films and in batteries, catalysts, superconductors and molecular membranes. They may also be useful in lubricants, photoconductors, gas storage, radiation therapy, medical imaging, novel polymers, rocket propellants, nonlinear optical devices, molecular-scale machinery and high-strength microfibers.

 Drs. Donald Huffman and Wolfgang Kratschmer disclosed their invention to RCT in July 1990. Their article in Nature just two months later was the most-cited chemistry paper published between 1988 and 1992 (Institute for Scientific Information). Science magazine named C60 "1991 Molecule of the Year."

 RCT applied for international patents both on the method of production and composition of matter for fullerenes and licensed MER Corporation to make and sell research quantities of fullerenes using the Huffman/Kratschmer process.


1999/12/6 三菱商事

夢の素材『フラーレン』の商品特許ライセンスを取得
     実用化に本格着手―燃料電池・抗癌剤などの開発に期待

フラーレンとは
 『フラーレン』とは
60個もしくはそれ以上の炭素原子が球状あるいはチューブ状に繋がった中空構造を有する巨大分子(C60、C70、C76、C78など)で、グラファイト(黒煙)・ダイアモンドに次ぐ第三の炭素原子です。チューブ状のものは『ナノチューブ』と呼ばれ電子ディバイスへの応用性はより高いと考えられている。『フラーレン』は1985年に発見され、1991年に米国のATTベル研究所が『フラーレン』にカリウムを添加して超伝導を作り出してからその物質特性に『夢の素材』として世界中の科学者が注目しています。1996年には『フラーレン』の発見に対してノーベル化学賞が贈られています。

 現在までに、分かっている『フラーレン』の代表的物質特性は
(1)電子的特性、(2)水素吸蔵特性、(3)機械的特性、(4)光学的特性などがあり、これらの特性を利用してリチウムイオン電池・燃料電池用水素貯蔵・次世代ディスプレイ・キャパシタ・耐摩耗材料・抗がん剤・エイズ治療薬など広範囲な分野への応用に因り革命的な商品開発が期待されています。

FIC社設立・特許実施権を取得
 三菱商事は『フラーレン』の物質特許を所有する米
RCT社(アリゾナ州)、RCTから委託を受けて用途開発を進めているMER(アリゾナ州)と資本金12百万ドルの調査企画会社FIC社(フラーレン・インターナショナル・コーポレーション、ニューヨーク州)を設立、初代社長を今月中旬より派遣します。さらに三菱商事はFIC社との間でフラーレンの商品特許に係わるライセンス契約を取得、今後はフラーレンを利用した商品開発を希望するメーカー・研究機関などと商品別の用途開発契約を順次締結し、商品ごとの事業会社設立につなげていく考えです。

ビジネススキーム
 今回のビジネススキームの特徴は、三菱商事が夢の素材と呼ばれる『フラーレン』の物質特許を持つRCT社などと調査企画
FS会社を設立したこと、さらに商品特許ライセンスを取得し・用途開発を行うなど『フラーレン』に係わる事業展開の上流から下流までの一貫した体制を一挙に確立したことにあり、『今世紀最大の発明』・『夢の素材』などと形容され商品化に期待が掛かる『フラーレン』の事業化に独占的基盤を確立したことにあります。さらに三菱商事は、「国内で安価に『フラーレン』を製造・供給することで、様々な特性を活かした用途開発・研究を促進することにより実用化・商業化に拍車をかける」ことを狙いに本荘ケミカル(大阪)と『フラーレン』の製造契約を締結、本荘ケミカルは当初月間50キロ程度の『フラーレン』を製造しつつ『フラーレン』の製造コストの大幅な低減を目指します。

商品開発
 三菱商事が特に期待している『フラーレン』の実用化の一つは、『フラーレン』の光学的特性を活かした抗がん剤の開発です。『フラーレン』は人体に無害で、可視光の照射によって活性酸素を発生させ細胞を殺傷する光学的特性をもっており、さらには正常の筋肉組織などに比べて約
20倍の高い値でがん細胞に蓄積することがマウス実験などで判明しています。こうした特性を利用して、水溶状にした『フラーレン』を皮下注射により癌組織に蓄積、ここにレーザー光を照射することにより、がん細胞のみを確実に消滅させる医療が可能となることが期待されています。


2001/12/26 三井物産

カーボン・ナノチューブ量産化へ来春着工

 三井物産(清水慎次郎社長)は、100%出資の子会社
(株)カーボン・ナノテク・リサーチ・インスティチュート(CNRI)(本社:東京都千代田区、井形光太郎社長)を通じてカーボン・ナノチューブの量産化セミコマーシャルプラントを東京昭島市に建設する。 既に基本設計を終え、同社取引先である昭和飛行機工業株式会社(本社:東京都新宿区、杉原予志夫社長)敷地内に、2002年4月着工・同9月試験運転開始を目指して建設準備に入った。
 当面は管径20ナノメートル(ナノは10億分の1)のマルチウオール品を中心に年産120トンを製造し、用途に応じてより管径の小さいマルチウオール、シングルウオール品や特殊品にも広げて行く。
カーボン・ナノチューブは、今後ナノテクノロジーが様々な分野で展開して行く上で基本となる有力な炭素系材料としてフラーレンと並んで注目されている。 現在米国他で量産化事業計画が立案されているが、CNRIによる来年中の本格生産が実現すれば世界初となる。

 CNRIは、今年7月、炭素系ナノテク材料の研究・技術開発のために設立(資本金10億円)された。 ナノテク関連新産業の創出を目指し、CNRI昭島研究所をはじめ総合商社としては初めて自前の研究機関を持ち、国内外の大学・研究機関や企業研究所との共同研究や事業化に取組んでいる。

 今回三井物産が管径20ナノメートルのセミコマーシャルプラントによるカーボン・ナノチューブの量産化に踏切った背景としては、CNRI昭島研究所において、独自開発の製造技術により、これまで他社が発表してきた価格の1/10に当たる、市場ニーズに適した価格での製造・供給に見通しがついたことによる。 カーボン・ナノチューブの安価な供給が可能になれば、その優れた電気特性・機械特性から、自動車軽量化に利用される高機能樹脂、電池や電子デバイス並びに放熱材料、又燃料電池部材開発にも寄与すると見られている。

 今後の大規模化による本格的事業段階では、国内外メーカーとの合弁や、設備・ノウハウの対センス供与も視野に入れ、中小企業を巻き込んだ産業創出を図っていく。

識者コメント
信州大学 工学部 電気電子工学科 遠藤守信教授

今回CNRIによる20ナノメーター径のナノチューブの量産化の意義は学問的にも産業的にも大きい。シングルカーボンナノチューブの欠点を防ぎ、ナノテクノロジー領域でバルクセンスでの効果を発揮する極限のサイズである。

 

 


日機装株式会社   http://www.nikkiso.co.jp/

●会社概要
  設 立   1950年3月7日
      <特殊ポンプ工業株式会社(現 日機装株式会社)の創立は1953年12月26日>
  払込資本金   6,094,984,191円
  従業員数   1,367人(2002年3月31日現在)
                   :    
●業務内容
  流体技術カンパニー   特殊ポンプなど産業プロセス用流体機器の製造および販売
  粉体技術カンパニー   粉体計測機器などの製造および販売
  産業機器カンパニー   高圧機器、先端産業向け分析機器、計測機器、生産用機器などの製造販売
  計装・電力カンパニー   火力・原子力発電所向け水質調整装置、ボイラ制御装置などの製造販売
  複合材カンパニー   航空機用部品など炭素繊維強化複合材による成形品、およびカーボンナノチューブなどの製造および販売
  医療機器カンパニー   血液透析装置、ダイアライザー、血液回路、人工膵臓、遠心型血液ポンプ、人工腎臓用透析剤などの製造および販売
  歯科器材カンパニー   歯科用機器および材料の輸入販売

カーボンナノチューブ(CNT)は、導電性、熱伝導性、摺動性などの優れた特性を持つことから、多くの分野から注目を集めており、線径をそろえて多量に生産する技術が求められていました。
日機装では、気流中で反応させ、取り出す流体制御技術により、連続反応の技術を確立しました。

ナノチューブに関する日機装の保有する成立特許
  物質製造特許 16件
  加工処理特許 11件
  用途製品特許 16件

  1999 ナノサイズの連続生産技術
  1997 ナノサイズの繊維発見

 


GSIクレオス (旧称 グンゼ産業株式会社)

ナノテクノロジー開発プロジェクト
  カーボンナノファイバー及び先端炭素材料の研究開発とマーケッティング及び販売を行っています。
特にカーボンナノファイバー(CNF)については、その構造上他のいかなる物質にも見られないユニークな性質が明らかになってきており、21世紀において最大の基礎材料になる可能性があります。
その用途は各種複合材料、燃料電池、新型コンデンサ、次世代ディスプレー、バイオ応用など、電気電子、化学、機械、物理、エネルギー、生理学分野を網羅した極めて広い範囲にわたります。今後数年以内に実用化(モノによっては明日かもしれない)することで、まったく新しい産業が生まれる事が予測されています。
当プロジェクトはこの21世紀の材料をいち早く実用化、商品化すべく研究開発を進めています。
     
業務内容   炭素系材料の研究開発、製造、マーケッティング、販売
取扱商品   カーボンナノファイバー『カルベール® (Carbere)』、気相成長炭素繊維、
CVDダイヤモンド、その他

カルベールは気相合成法によって製造したカーボンナノファイバーです。
通常のカーボンナノファイバーと異なり
底のあいたカップを重ねた様な形状(カップ積層構造)で、中心に連続した中空コアを有し、グラフェンエッジがファイバー表面に露出した形状になっております。
この特徴ある形状によって今後さまざまな用途開発が期待されております。

 


2002/1/29 http://homepage1.nifty.com/boxer/stock.htm


 GSIクレオスは、カーボンナノファイバー(多層カーボンナノチューブ)“カルベール
® ”の構造上の新たな発見と用途開発について発表した。昨年3月発表時、カーボンナノファイバー『カルベール®』はカップ構造であることが明らかになっていたが、この特異な構造に注目し、信州大学と共同開発を進めてきた。
 その結果、カルベールの持つ特異な特徴は、幾つかの応用に最適であることが判明した。 第一の優位性は、他の複合材料との良好な親和性である。これまで通常のカーボンナノチューブ(CNT)ついて様々な特性が研究されているが、問題点としては他の複合材料との親和性が低く、改善のために複雑な二次加工を必要とした。しかしカルベールではファイバー製造時にすでにカップのエッジが外面に露出しているため、活性面が側面全体を覆っており、複雑な二次加工を行う必要はない。これにより樹脂との複合化において強固な界面を形成することが可能となった。
 第二の優位性は、線長調整が容易である。通常のナノチューブではその切断を複雑な方法で行ない、極めて切断しにくいという問題点があった。しかし当社はメカニカルな切断を可能にし、径に対して長さの短い(アスペクト比1から2)バレル状(樽状)ナノ構造の製造に初めて工業的に成功した。この「ナノバレル
®」の用途は極めて広範囲にわたる。あらゆるマトリックスに対応可能な「ナノバレル®」は複合材料の強度付与、導電性付与に貢献が期待できる。同社は、これらの特性を生かし、独自のコンパウンド「コムフロン®」の開発に成功した。極めて微細なファイバーを均等に樹脂内に分散するには、先端の技術が必要とされるが、これまでのコンパウンド開発のノウハウを生かし、先頃ナノファイバーコンパウンド商品化の目処をつけた。また電気電子分野では、電界放出源として可能性を見出した。電界放出源としてのCNTの可能性は広く知られるところであるが、現在進めている開発は従来のCNTの持つ加電圧時より更に低電圧での電界放出を確認した。29日に発表した構造についての解析の詳細は、信州大学と共同研究として、2月にアメリカの一流学術誌に掲載される予定である。


日経メカニカル・ニュース 2002/1月30日号

・「GSIクレオス,「バレル」状の新炭素ナノ構造体を開発」

 GSIクレオスは,バレル(樽)状の新炭素ナノ構造体「ナノバレル」を開発,サンプル出荷を開始した。同社がこれまで供給してきたカップスタック形状のカーボンナノチューブ「カルベール」を機械的な手法で切断し,高さ,直径共に約50nmとアスペクト比が1程度の形状とした。表面の活性が高いために樹脂の導電性付与材と使った場合に混ぜやすいメリットがある。また,中空部に別の分子を捕捉するなど機能材料としての可能性もあると同社は期待している。


本荘ケミカル        医薬原料製造

http://it.nikkei.co.jp/it/archive/chokoku/2001022106662p8.cfm  

 本荘ケミカルは三菱商事を通じて米国の開発会社、MER社(アリゾナ州)の技術を導入、2000年5月にカーボンナノチューブとフラーレンの量産を寝屋川工場(大阪府寝屋川市)で開始した。現在の生産量は一時間あたり100グラム強で従来の研究所レベルの100倍以上に達する。

 同社が採用したのはアーク放電法と呼ぶ量産技術。大型の反応器内で炭素電極の間で放電し、高温のプラズマ中に炭素を蒸発させる。そこからできる煤(すす)をふるいにかけてカーボンナノチューブを得る。技術導入を仲介した三菱商事の中沢輝幸事業開発部長は「いつでも本格的な供給体制を敷けるように、今から量産技術を蓄積する必要がある」と力説する。今後は触媒などを円滑に反応器へ供給する設備設計を進め、生産能力の向上を目指す。


2002/7/8 島津製作所/三菱化学

[パイロットプラントでの実用化共同試験を開始
   −二酸化炭素からカーボンナノファイバーを生成−]

 この度、株式会社島津製作所と三菱化学株式会社は、二酸化炭素を触媒のもとでメタンガスと化学反応させることで炭素・水に変換(固定化)する、二酸化炭素固定化技術の共同試験をスタートすることとなりました。両者共同でパイロットプラント(年産5トンクラス)を立上げ、実証試験を進めていきます。試験期間は1年間を予定しています。

 また今回の実証試験では、変換された炭素から様々な産業応用が期待されているカーボンナノファイバー〔直径100ナノメートル(10-7m)以下の機能性炭素繊維〕抽出の技術開発も行います。

 本技術は、従来は焼却などにより廃棄されていた有機廃棄物を有効利用して、地球温暖化の主因である二酸化炭素の排出抑制を実現しようとするものです。
 島津製作所は、本技術による環境対策用設備として、2003,4年の商品化を目指します。一方三菱化学は、生成炭素にふくまれるカーボンナノファイバーを用いて従来は大量生産が困難であった、カーボンナノマテリアルズの製造方法の確立を目指します。

<開発の経緯>
 二酸化炭素固定化技術の開発の経緯は、島津製作所が1997年から3年間にわたり財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)と共同で、二酸化炭素の固定化に関する反応プロセスの基礎研究を行ったことをスタートとします。1999年には島津製作所はサッポロビール株式会社と共同で、バイオガス(二酸化炭素をふくむメタンガス)の触媒性能に与える影響について共同で実験を行いました。
 島津製作所と三菱化学の共同研究は、2000年にスタートしました。これまでにプラントとしての具体化と生成炭素の解析や用途開拓などを行ってきましたが、これらは事業化の観点で商品化に向けた技術的付加価値を高める重要なものです。
また今回のパイロットプラントレベルでの実証試験は、従来の実験室レベルの開発から実用化への商品開発の最終段階に位置付けられるものです。

<期待されるインパクト>
 本技術では、食品工場やゴミ処理場で生じる有機性廃棄物から微生物により作られたバイオガス(メタンガス・二酸化炭素)を用い、これを触媒反応により低エネルギーコストで水素を作り出します。この水素を用いて、バイオガス中の二酸化炭素を炭素・水に固定化します(→
添付図ご参照)。また固定化した炭素は、カーボンナノファイバーなど産業資源としての活用が見こまれ、有機性廃棄物の有効なリサイクル処理方法として大きな注目を集めています。
 島津製作所は、食品工場などでの嫌気性メタン発酵施設の後段に二酸化炭素削減を目的に本技術(装置)が設置されることを目指します。またパイロットプラントの開発を担当した三菱化学エンジニアリング株式会社とも共同で、環境処理設備メーカなどとの連携も視野に入れた事業展開も計画しています。
 三菱化学は、1934年の創業以来培ってきた技術蓄積をもとにカーボンブラックや炭素繊維といった各種炭素材料を開発・事業化してきました。今後商品用途に応じたカーボンナノファイバーの品揃え、更に三菱化学の有する触媒等のコア技術を用いた当技術の展開により、従来の方法では高価で大量生産が困難とされてきたカーボンナノマテリアルズの製造方法の確立を目指します。本技術は従来のカーボンナノファイバーの製造法に比較して、低コストかつ大量生産に適した方法であり、導電性材料、樹脂補強材、機能性顔料、電磁波吸収材、電極材等の商品用途に応じたカーボンナノファイバーの製造が可能になると期待されます。

 なお島津製作所と三菱化学は、現在米国で開催されているカーボンナノチューブ学会(Nanotube 2002、7月6日〜11日、ボストン)において、本件に関して技術発表を行います。

 



日本経済新聞夕刊 2003/7/10

燃料電池材料量産へ カーボナノホーン NEC、技術確立
パソコン搭載1万円以下

 NECはナノテクノロジー(超微細技術)を使った炭素系の新素材、カーボンナノホーンの量産技術を確立した。長時間連続稼働できるパソコン用の燃料電池の電極などに使う。1時間に数グラムだった生産量を年内に同100グラムに引き上げる。コストをノート型パソコンのリチウムイオン電池並みの1台当たり1万円以下に抑えるメドをつけた。電池外販も検討しており、携帯電話やビデオカメラなどにも応用が広がりそうだ。
 カーボンナノホーンを燃料電池の電極に使うと発電効率が高い電池になる。NECはノート型パソコンに内蔵できる大きさで40時間の連続使用が可能な小型燃料電池を試作済み。同じ大きさのリチウムイオン電池に比べ性能は10倍以上。2005年に同モデルを発売する計画だが、商業べ−スに乗せるためカーボンナノホーンの量産化が課題になっていた。
 量産技術は経済産業省が支援するナノカーボン応用製品創製プロジェクトの一環として、NEC基礎研究所が確立した。すでに1時間当たり50グラムの生産を実現しており、生産設備の改良で年内に2倍にする。同プロジェクトでは品質の安定や設備の長時間運転などの改良を進め、1日1キログラムを目指している。パソコン用電池1台でカーボンナノホーンを1グラム程度使う見込み。
 カーボンナノホーンの量産化で燃料電池の価格は大幅に下がる。ノート型パソコンの電池として一般的なリチウムイオン電池と同等の1万円以下のメドがついたことで商業利用できる。 パソコンに限らず、様々な携帯機器の電池に利用できるため「電池単体での外販も検討する」(NECパーソナルプロダクツの片山徹社長)としている。
 NECの量産技術ではレーザー光線で原料の炭素を加熱して蒸発させ、これを高温のガス中で凝集させてカーボンナノホ−ンを作る。温度管理を含めこれらの工程を自動化した。

カーボンナノホーン
 ナノテクノロジーを利用した代表的な炭素系素材、カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)の一種。炭素分子が網の目状につながり、全体では牛の角(ホーン)のような形をしているためナノホーンと呼ぶ。直径は数ナノ(ナノは10億分の1)メートル。ナノホーンを燃料電池の電極に組み込めば、発電効率を2割程度高めるとされ、研究が活発に進んでいる。燃料電池の触媒である白金は団子状に固まってしまい発電効率が落ちる難点があるが、ナノホーンの網の目に白金を付着させればこれを防げる。また、鋼より硬いとされ、自動車の強化材料などへの利用も見込まれている。

 


2002/12/17 日本鋼管

【世界初】カーボンナノチューブが繊維状に密集した超高純度テープ状物質の合成に成功

 当社はこのたび、カーボンナノチューブ(以下CNT)が繊維状に密集した"超高純度のテープ状物質"の合成に世界で初めて成功いたしました。
 このテープ状物質は、幅2〜5mmの薄い膜状で、任意の長さのものを連続的に合成することができます。テープを構成するCNTは、炭素原子が六角網面状にずらっと並んだシートが丸まって出来た筒が複数同心円状に重なっている多層タイプのもので、これら無数の多層CNTが複雑に絡み合って薄い膜状テープを形成しています。テープ裏面には、原料の炭素材料が一部に薄く付着しているものの、その他の部分は、ほぼ100%のCNTから成る超高純度CNTテープです。

 現在CNTの合成方法としては、アーク放電法と気相成長法(CVD)が多く用いられています。一般にCVDは大量合成に向く方法とされていますが、合成後そのままではCNTの結晶性が低く、用途によっては合成後に熱処理等が必要です。また、従来のアーク放電法で合成されたCNTは、合成後の結晶性が優れているため熱処理等を施さなくても十分な特性が得られますが、そのままでは純度が低いことから回収された煤や電極堆積物の中からCNTを分離・収集する精製処理が必要で、生産性が低くなるという課題がありました。

 このたび当社が合成に成功した超高純度CNTテープは、当社の溶接用アーク放電現象を研究しているグループが、CNTが著しく長く成長する放電条件を発見し、テープ状物質の合成に成功したもので、以下の優れた特徴をもっています。

(1) 純度がほぼ100%であるため、回収後の精製処理が不要。
(2) テープ状物質は、薄い膜状で任意の長さに合成でき、かつ、しなやかに曲る性質(可撓性−かとうせい)と取り扱いに十分な強度を有しているため、多様な分野への応用が期待できる。

 また、アーク放電法を用いたテープ状物質の合成装置は、通常の溶接電源を使用できる等、比較的簡素で連続合成も可能なため、低コストでの量産製造が見込めるプロセスです。
 当社は今後、この超高純度CNTテープの外部へのサンプル提供などを通じて、材料評価や市場性評価を行い、その上で量産化を含めた今後の展開を検討してまいります。