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毎日新聞 2002/2/3)

常夏の国のヒット商品 電気蚊取りラケット 
Malaysia 

 (熱帯性気侯のマレーシアでは)年がら年中、ブンと飛んできて、チクと刺して思いきり血を吸って、ハンパじゃない痒さをみやげに残し、ブンと飛び去る。日本の蚊は「ブーン」と悠長だが、マレーシアの蚊は「ブン」。すごい速さで飛んできて飛び去るから、手で叩いて仕留めるのは至難の業だ。  
 まあ、日本とは蚊の種類が違うのだろうが、マレーシア在住の日本人駐在員はよく、冗談めかして「マレー人はのんびりおっとりで仕事が遅い。マレー蚊はテキパキサッサと仕事が早い。どちらも困るんだよね」などとぼやいている。  
 ところで、蚊に対してマレーシアの人々もただ手をこまねいているわけじゃない。蚊取り線香や電気蚊取り、蚊よけクリームや殺虫スプレーなどを総動員しているが、5年前に登場するやいなや爆発的ヒット商品となり、一家に1本当たり前となったのが写真の「電気蚊取りラケット」。  
 
ラケットフレームに電熱線を張ったもので、ホルダ−部分に乾電池2個を入れスイッチをオンにすると、電熱線ネットに1200ボルトの電圧がかかるとか。これを空中でぶんぶん振りまわし、飛んでいる蚊を感電死させるというシロモノ。
 発明したのは中国のメーカーで中国製。本国中国ではそれほど売れなかったらしいが、熱帯のマレーシアに来たら大ブレーク。ベトナム、タイ、インドネシアなど他の東南アジア諸国でもブレークした。   大の大人がこの電気蚊取りラケットをぶんぶん振りまわしている光景はなんかユーモラスで、「なにもそこまで目の敵にしなくても。痒いのをちょっと我慢すればいいだけなのに」などと思ったりしてしまうが・・・。  
 マレーシアにおいて蚊は、デング熱やマラリアなど熱帯特有伝染病の媒介。彼らにとってはきわめて真剣な話なのである。(葭原麻衣 =旅行作家)