日本経済新聞 2006/6/10       NEDOレポート  NEDO技術  中国における石炭液化協力


石炭からガソリンや軽油精製 中国に液化技術提供
 経産省 原油消費抑制促す 2010年メドに商用化

 経済産業省はアジアで、石炭からガソリンや軽油を精製する「石炭液化」事業の普及に乗り出す。独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が持つ独自技術を活用。今夏から中国企業と実証実験を始め、2010年にも商用化する。インドネシアでもプラント建設で交渉を始めた。アジアで豊富に産出する石炭を有効活用し、世界的な原油需給の緩和につなげる。
 石炭液化は粉末にした石炭を高温・高圧状態にしてガソリンや軽油、灯油をつくる技術。世界のエネルギー需要は今後30年で1.6倍に増える見通し。特にアジアでは近年、エネルギー需要が急増しており、原油高騰の一因になった。石炭は可採年数が160年強と豊富にあり、生産の半分はアジアで占める。石炭は取引価格も安定しており、石炭液化油が普及すれば原油需給が緩和し、日本のエネルギーの安定確保にもつながる。
 日本は1980年代から石炭液化技術の研究を進めてきた。コストは1バレルあたり25−30ドルで、これまでは割高だった。だが、原油価格が同70ドル台にまで高騰。石炭の輸入コストが高い日本での実用化はなお困難だが、アジアでの商用化には道が開けた。
 普及支援の第一弾として、経産省所管のNEDOが7月をめどに、中国のエネルギー会社、大唐国際発電(北京市)と新波鉱業集団公司(山東省)と共同で、どれだけ効率的に液化できるかの実証実験を始める。
 共同実験する2社は2010年をめどに、1日当たり3千トンの処理能力を持つ液化プラントの運転を始める計画。プラント建設は1千億円規模の大型事業になる見通しで、日本のプラント会社の参画が見込める。技術移転に伴いNEDOには技術使用料が入る。
 中国はエネルギー供給の7割を石炭で占めており、原油高騰に対応して2020年には石油需要のうち7−10%を石炭液化油でまかなう計画をたてている。
 インドネシア政府とも石炭液化事業の協力で交渉に入った。実験プラントを来年度にも立ち上げ、商用化につなげる。インドやモンゴル、フィリピンとも事業協力に向けた検討を始めた。
 経産省は5月に「アジア省エネルギープログラム」をまとめており、石炭液化事業はその一環。中国とは東シナ海のガス田開発などで対立しているが、日本の技術を使って省エネや環境政策を後押しし、日中関係を強化・改善する狙いがある。


平成12年2月15日 NEDO                   

石炭液化粗油の精製・改質実験プラントが完成

―本年4月から運転を開始し、商業的規模で自動車燃料を製造するためのエンジニアリング・データを取得―

  新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、通商産業省工業技術院のニューサンシャイン計画の一環として石炭液化技術開発の研究開発を推進しておりますが、2月15日、秋田県男鹿市において、石炭液化粗油を精製・改質してガソリン及び軽油を製造する実験プラントを完成しました。
  本実験プラントは、石炭液化粗油処理量が1日当たり40バーレル(6.3キロリットル)の規模であり、瀝青炭液化パイロットプラントで製造された石炭液化粗油から、商業的規模で自動車燃料としてのガソリン及び軽油を製造するためのエンジニアリング・データを本年4月から2年間にわたり取得します。

1.背景・経緯

(1)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、通商産業省工業技術院のニューサンシャイン計画の一環として石炭液化技術開発を進めており、石炭を液化する技術の開発については、平成10年9月に茨城県鹿嶋市の1日石炭処理量150tのパイロットプラントの運転を終了し、瀝青炭液化技術を確立するとともに、実証規模プラントへのスケールアップに必要な成果を「技術パッケージ」としてとりまとめ、技術開発を終了しました。
(2) 他方、石炭液化プラントから得られる石炭液化粗油を自動車燃料製品に仕上げるアップグレーディング技術については、実験室レベルの小型装置を用いて石炭液化粗油からガソリン及び軽油を製造するための精製・改質の方法や反応条件等を検討してきました。2月15日に完成したアップグレーディング実験プラントは商業的規模での生産に必要なエンジニアリング・データ取得のため、平成3年度から設計を開始し、平成7年度から秋田県男鹿市の株式会社ジャパンエナジー船川製油所内で建設を進めてきたものです。

2.アップグレーディング技術開発の目的 
 石炭液化粗油は、固体の石炭を高温高圧下で水素と反応させることによって製造されますが、液化したままの油(石炭液化粗油)は、原油と比較して軽質留分に富んでいるのでガソリン及び軽油への利用には有利な一方、窒素分や酸素分等の不純物が多いこと、芳香族性が大きいこと等のため、そのままでは石油製品と同様に使うことは困難です。アップグレーディング技術開発の目的は、石炭液化粗油を精製・改質して石油製品と同等品質のガソリン・軽油に転換する技術を確立することです。

3.アップグレーディグ実験プラントによる研究計画 
  実験プラントでは、本年4月から2年間をかけて、茨城県鹿嶋市の瀝青炭液化パイロットプラントで製造された石炭液化粗油を原料として、自動車用ガソリン及び軽油を製造する運転研究を行い、物質収支、熱収支等のエンジニアリング・データを取得します。また、製品である石炭液化ガソリン及び軽油について、既存の石油製品の流通機構にのせるため、石油製品との混合及び自動車エンジンテスト等による実用性能評価を行います。

4.中国・インドネシアとの石炭液化協力 
 NEDOでは、中国及びインドネシアからの要請を受けて、中国では神華炭田(内モンゴル自治区及び陜西省)、インドネシアではバンコ炭田(スマトラ島)の石炭を対象として、石炭液化プラントのF/S(事業化可能性調査)に協力しています。今回の実験プラントで得られるエンジニアリング・データ等は、今後、中国及びインドネシアでの石炭液化粗油精製・改質プラントの検討にも利用されます。