毎日新聞 2005/2/8                       日立と松下電器 基本合意

薄型パネルで国内メーカー 優位性確保へ連合 海外への技術流出阻む

 富士通は7日、液晶子会社と関連特許のシャープヘの売却を正式に発表した。富士通は日立製作所と折半台弁のプラズマパネルの製造会社株の大半を日立に譲渡することも決めており、液晶とプラズマの薄型パネル事業から事実上撤退する。日立と松下電器産業も同日、プラズマ事業の包括的協業を正式発表した。一連の動きは、撤退する富士通が持つ薄型パネルの優位技術を他の国内メーカーが取得することに大きな意味があり、急速にシェアを拡大する韓国などアジアメーカーに対抗する各社の「知的財産戦略」が背景にある。

 富士通は、液晶やプラズマ事業の規模が小さく、価格下落で採算が悪化していたが、技術には強みを持っていた。その技術が韓国などの外資に買われれば「日本の優位性が崩れかねない」(業界関係者)ことから、経済産業省や業界内からの働きかけがあり、シャープと日立は"生命線”の知的財産の流出を阻むため、買収に動いたようだ。
 日本が80年代に圧倒したDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)で、技術流出からアジア勢が台頭した苦い経験が背景にある。
 日立と松下の協業は、部品の開発や調達などでの協力に加え、特許管理会社を共同出資で設立することも含み、知的財産の活用が大きな狙い。日立が富士通から取得するプラズマの基本技術に松下の画質の高品質化などの技術を加え、技術開発を効率化したい考えだ。
 ソニーと韓国サムスン電子の液晶パネルの合弁生産決定でも、対抗する形で日立、松下、東芝が一液晶パネルの共同生産に動いた。それも、経産省が音頭をとった。
 このほか、東芝とキャノンが第3の薄型パネル「SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレー」の共同生産を目指すなど、薄型パネルをめぐる合従連衡の動きは急を告げている。

 

日本経済新聞 2005/2/8

薄型パネル 勝ち組が再編
 日立・松下 プラズマ提携発表
 シャープ  冨士通の液晶買収


 日立製作所と松下電器産業は7日、プラズマパネル事業で包括提携すると発表した。一方、液晶陣営ではシャープが富士通の液晶パネル事業を買収すると発表。市場が拡大する薄型テレビの価格低下が激しい中、それぞれの「勝ち組」が提携・再編を主導。薄型テレビの大型化競争に勝ち抜こうと、一段の効率化を目指す。
 日立と松下は開発、生産、マーケティング、知的財産の4分野で提携する。30インチ超の大型パネルでも液晶が攻勢を強めているが、「大型画面では自発光方式のプラズマが優れている」(日立の庄山悦彦社長)として、共同でプラズマパネルの競争力を高める。
 両社はプラズマバネルに使う材料を共同購入するほか、部品や生産設備の仕様の共通化も検討。パネル内で発光する蛍光体や誘電体、画像を表示する駆動回路などが対象で、ガラス基板も厚みや材質などの規格を統一し共同調達する。「(デジタル家電は)価格低下が激しいが、減速していない」(松下の中村邦夫社長)と見ており、共同でコスト削減を進める。
 日立が新設する特許管理会社に松下が一部出資するほか、プラズマの画質や色の優位性を共同でアピールする販促活動も手がける。ただ、それぞれ独自に新工場を建設中で、生産統合などには踏み込まないとした。
 一方、シャープは富士通から液晶生産子会社の富士通ディスプレイテクノロジーズ(FDTC、松田嘉博社長)と液晶関連特許など譲り受ける。
 鳥取県米子市の工場や開発子会社で液晶を担当する研究員も引き継ぐ.詳細は3月の正式契約時までに詰める。

富士通の液晶装置製造事業 アルバックに譲渡
 液晶パネル製造装置大手のアルバックは7日、富士通から液晶パネル製造装置事業を譲り受けると発表した。対象事業の売り上げ規模は年間約100億円。液晶装置の品ぞろえを広げたいアルバックと、薄型パネル事業から撤退する富士通の思惑が一致した。
 富士通の全額出資子会社で、半導体回路設計などを手掛ける富士通ヴィエルエスアイ(愛知県春日井市)の製造装置事業を4月1日付けで譲り受けるパネルに液晶を滴下・注入する装置の製造販売のほか、半導体製造装置とプラズマパネルの試験装置の製造事業も譲り受ける。

国内大手 新たな戦略づくりへ 韓台に対抗、買収も視野
 薄型テレビの2004年の世界シェア(テクノ・システム・リサーチ調べ)は、液晶はシャーブが30.1%、プラズマは松下が20.3%でそれぞれ世界首位。パネルからテレビまでの一貫生産体制を早くから打ち出してきたのが勝因だ。
 ただ今後の道のりは順風満帆ではない。液晶パネルのシャープの世界シェアは中小型を含めると3位だが、パソコンやテレビなどの大型パネルでは韓国・サムスン電子や台湾・友達光電などに続く5位。松下は大型化が進む液晶テレビとの競争に直面する。
 薄型テレビ価格が年に2−3割も下がる中、勝ち組とされる松下やシャープでも、徹底したコスト削減なしに生き残れないとの危機感が強い。

 松下は日立とのパネル共同開発や部材共同調達により、コストを削減。プラズマから事実上撤退する富士通から日立が引き継ぐ特許にも「興味がある」(大坪文雄松下專務)。日立と松下が相互に特許を活用できる仕組みをつくり、高精細化技術の開発を加速する。
 シャープが富士通の液晶子会社を傘下におさめるのも、資金力で優位な海外勢に技術で対抗するのが狙い。富士通とシャープは液晶パネルの視野角を広げる技術で同様な方式を採用する。
 自社技術を第三者に漏れないようにする「ブラックボックス」化を推進するシャープと松下。薄型テレビでの世界競争では他杜技術の囲い込みも必要と判断、提携や買収も含む新たな戦略づくりに乗り出す。


日本経済新聞 2006/10/5

日本触媒 液晶フィルム 機能性高める樹脂開発
 50億円投じ新工場

 日本触媒は液晶パネル用フィルムの機能を高める樹脂を開発した。現在は複数枚のフィルムをパネルに張り合わせるのが一般的だが、この樹脂を使うと1枚で同じ機能を持たせられる。パネル製造の効率化や材料コスト削減が見込める。
 約50億円を投じて姫路製造所(兵庫県姫路市)に専用工場を新設、今月にも試験稼働を始める。来年から量産を開始、2010年度に売上高100億円を目指す。
 開発した樹脂はアクリル系。1枚のフィルムに複数の機能を持たせる樹脂の構造は判明していたが、フィルム状に加工するのが難しかった。同社は高吸水性樹脂などアクリル由来製品の開発で培った技術を活用。添加剤などを工夫し、フィルムメーカーの協力を得て実用化した。パネルの視野角を広げる位相差フィルムや、一定の光だけを通す偏光フィルム向けに出荷する。新設する専用工場の生産能力は年3千トン。来秋にも同規模の生産設備を完成させ、年産6千トン体制にする。