2008年2月1日 サントリー

サントリー「青いバラ」のカルタヘナ法に基づく承認について

サントリー(株)およびオーストラリア・フロリジン社(Florigene 本社:ヴィクトリア州、社長:芦刈俊彦、出資比率:サントリーグループ100%)が、世界で初めて※1開発に成功した「青いバラ」は、2008年1月31日付で、所轄官庁である農林水産省および環境省から、カルタヘナ法※2に基づく第一種使用規定※3(切り花の用に供するための使用、栽培、保管、運搬及び廃棄並びにこれらに付随する行為)の承認を得ました。なお、生産・販売体制を整え、2009年から発売する予定です。

※1 花弁にほぼ100%青色色素を含む
※2 
カルタヘナ法 Cartagena Protocol on Biosafety

「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」の別称。

遺伝子組み換え生物等の取扱いの規制に関する国際的条約「カルタヘナ議定書」の国内での実施に必要な取り扱いを定めた法律のことで、2004年2月19日から施行されている。

カルタヘナ議定書
現代のバイオテクノロジーにより改変された生物(Living Modified Organism:LMO)が生物の多様性の保全及び持続可能な利用に及ぼす可能性のある悪影響を防止するための措置を規定しており、生物の多様性に関する条約第19条3に基づく交渉において作成されたもの

この法律では、遺伝子組み換え生物等の使用等に先立ち、その使用形態に応じた対処の仕方(交雑防止措置など)を実施することを規定されており、環境省をはじめ厚生労働省、農林水産省などの6つの機関が関わっている。

遺伝子組み換え生物等の輸入・輸出、栽培、飼養、販売等にあたり、その開発者や輸入者などは手続きを行なったうえで主務大臣の承認を受ける義務が定められている。
遺伝子組み換え技術を利用したペット等を海外で購入する場合などもこの法律に該当する。

※3 第一種使用等:流通、一般ほ場での栽培等の「環境中への拡散を防止しないで行う使用」のこと。

<サントリー「青いバラ」について>

バラの歴史は古く、今までに数万種のバラが作り出され、色は、赤・白・ピンク・黄色など様々なものが存在しています。しかし、バラには、もともと青色色素がないことからこれまで青い色のバラは存在せず、「不可能の代名詞」とも言われていました。2004年、サントリー(株)とフロリジン社は、バイオテクノロジーを使いこの「青いバラ」の開発に成功しました。なお、開発の過程で、世界初の青いカーネーション「ムーンダスト」の開発にも成功しました。

1990年 オーストラリアのフロリジン社と提携。青いバラの共同開発に着手
1995年 世界初の青いカーネーションの開発に成功
1997年 日本で初めて青いカーネーション「ムーンダスト」の販売開始
2004年 青いバラの開発に成功
2008年 カルタヘナ法に基づく承認
2009年 販売開始(予定)

▼「青いバラ」について

現在栽培されているバラは、世界各地の野生種のバラ数種を人為的に交配するという品種改良によって作られています。四季咲きのバラや黄色いバラも、育種家の情熱と英知により、生み出されました。
青いバラは、過去800年の品種改良の歴史の中で、多くの育種家が挑んできた夢でした。青いバラの開発はこれまで成功しておらず、英語では、「不可能」の代名詞とも言われていました。
  
"Blue rose" means "impossible" in English.

「最先端のバイオテクノロジーの遺伝子組換え技術を用いれば可能になるはず」。これが夢への挑戦の始まりでした。以来、14年の年月を経て、2004年にようやく開発の成功をご報告できる運びとなりました。青色色素が花びらに存在する、正真正銘、世界初の青いバラの誕生です。


開発の歴史

1990年   オーストラリアのバイオベンチャー企業カルジーンパシフィック社と共同で青バラプロジェクトを開始

「青いバラを作る」というプロジェクトは、サントリーとオーストラリアのバイオベンチャー企業カルジーンパシフィック社(現フロリジン社)の共同プロジェクトとして、1990年に始まりました。

Florigene - The World's First Molecular Breeder
Florigene uses genetic modification technology to create valuable improvements to the important flower species.

Florigene was founded in Melbourne in 1986 as Calgene Pacific Pty Ltd. The name was changed to 'Florigene' in 1994 after the Company acquired the assets of its primary competitor, Florigene B.V., a company incorporated in Holland.

開発を始めてから青いバラが開花するまで、十数年を要したわけですが、この月日はまさに試行錯誤の繰り返しでした。
当初の目的は、次の2点でした。
1)青色遺伝子を取得する
2)バラに遺伝子を導入して遺伝子組換えバラを作製する方法を開発する

1991年  ペチュニアから青色遺伝子取得、特許出願
青いペチュニアから青色遺伝子の取得に成功し、特許出願を行いました。

1994年  ペチュニアの青色遺伝子を入れたバラが開花
1994年頃、この遺伝子を導入したバラを咲かせることができました。ところが、遺伝子は確かに入っているものの、カーネーションの場合にはうまく働いたペチュニアの青色遺伝子は、バラとの相性がよくなかったようで、残念ながら花弁にデルフィニジンは検出されず色は変化しませんでした。 そこで、今度は、いろいろな植物から青色遺伝子を取得し、それぞれをバラに導入してみました。咲いても咲いてもデルフィニジンがないという状況がしばらく続きました。

*世界で初めての青色カーネーションは、ペチュニアから取り出した青色遺伝子を組み込んで品種改良したもので、1995年に誕生し、日本では97年より「ムーンダスト」として発売しています。

1996年  パンジーの青色遺伝子を入れたバラが開花
1996年には、パンジー由来の青色遺伝子を導入したバラがデルフィニジンを作ることがわかりました。色の変化が見られ、研究レベルでは大きなステップアップでしたが、この段階では、まだ青いと呼べるものではありませんでした。バラに青色遺伝子を導入するシステムを改良し、様々な品種のバラに青色遺伝子を導入できるようにしました。

1998年〜1999年  デルフィニジン含有率がアップ、青みを帯びた色合いに変化
1998年〜1999年頃にはやや青みを帯びたバラを得ることに成功、さらに青さを追求し、デルフィニジンが100%近く蓄積する工夫を行い、より多くの品種に遺伝子を導入した結果、2004年、ついに青いバラの誕生に至りました。

●カギとなる色素・デルフィニジン
植物がさまざまな色に見えるのは、含まれる色素の働きによるものです。植物の色素の中で代表的なものは、フラボノイド(
アントシアニン、フラボン、フラボノール、カルコン、オーロンなどの色素の総称。白・黄・橙・赤・紫・青など)、ベタレイン(ベタシアニンとベタキサンチンの総称。前者は赤から紫色を、後者は黄色を発色する。)、カロチノイド(カロチンとキサントフィルの総称 黄・橙)、クロロフィル(葉緑素のこと。緑)の4種類です。
このうち青色に見せる働きをするものは、フラボノイドの一種であるアントシアニンですが、アントシアニンの中でも特に重要な青色の色素が「デルフィニジン」です。バラにはもともとこのデルフィニジンが含まれておらず、青色に近いバラの花びらからも、デルフィニジンは発見されませんでした。こうした科学的裏付けから、十数年前までは青色は「実現不可能の色」として、もっともらしく語られ続けてきたのです。