ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/


2006/10/16 Eastman、ポリエチレン事業をWestlakeに売却

Eastman とWestlake Chemical は10日、Eastman がポリエチレン事業をWestlake Chemical に売却することで合意したと発表した。売却するのはポリエチレン事業、Epolene polymer ポリオレフィンワックス:接着剤、コーティング材料)事業とエチレンパイプラインで、売却額は255百万ドル。この事業の2005年の売上高は約680百万ドル。

Eastman としては、ポリエチレン事業そのものは順調だが、原料エチレン設備が古く競争力がないため、エチレンに強い相手に売却するとともに、老朽エチレン設備の廃棄でコスト競争力を高め、他のエチレン誘導品の維持を図るとしている。


売却するのはテキサス州Longview
ダラス東方のポリエチレン工場LDPE 320千トン、LLDPE 190千トンとポリオレフィンワックス工場、及びLongview とMont Belvieuヒューストン近郊との 間の200マイルのエチレンパイプライン。

Westlakeはルイジアナ州 Lake Charles
近郊のWestlakeLDPE 390千トン、LLDPE 250千トンの合計640千トンをもっており、今回の買収により合計能力は 1,150千トンとなる。Westlakeはまた、アクリレートコポリマーやEpolene polymerLLDPEEnergx などの技術も取得する。

工場は引き続き Eastman が操業を受託する。

Westlakeではこの取得により北米のポリエチレン市場での力を強化するものとしている。

Eastman のLongview 工場のエチレン能力は4プラント合計780千トンで、2007年から順次、老朽化した3プラントを廃棄する。残る1プラントの能力は359千トン。

Westlake Chemical は台湾資本で、ルイジアナ州 にエチレン109万トンのほか、LDPE、LLDPE、SMを、またケンタッキー州にエチレン、塩素、VCM、PVCを、ルイジアナ州Geismarには破産したBorden Chemicals and Plastics から買収したVCM、PVCプラントを持っている。

2006/9/16 「Westlake Chemical、20周年」 参照


2006/10/17 デュポン、持続可能性について新たな公約を発表

2006/10/5  「ダウ、天然油ポリオール開発に成功ダウが20065月に発表した「2015年サステナビリティ目標」に触れた。

食料供給、住宅、水問題、健康と安全などの問題解決のため、最低3つのブレイクスルーを達成する。
省エネルギーの達成、代替エネルギーの開発、化石燃料消費に伴うグローバルな気候変化へのチャレンジ
等である。

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デュポンの会長兼CEO チャールズ・O・ホリデー Jr.は10日、持続可能性についての新しい公約を明らかにし、安全、環境、エネルギーおよび気候変動を視野にいれてグローバル市場で、ビジネスの拡充を図る、と発表した。

2015年に向けての市場に関する目標
   
環境的に優れた市場機会への研究開発の投資を2倍に。
   
非枯渇資源からの売上を2倍増の80億ドルに
   
省エネ and/or 温室効果ガス排出量削減を実現する製品からの売上を年間20億ドル超に拡大。
   
新たに1,000以上の安全関連製品およびサービスを導入。
   

2015年に向けての環境負荷に関する目標

地球温暖化ガスの排出量
  1990年以降、世界中の事業所から排出される地球温暖化ガスの排出量をCO2換算で72%削減したが、さらなる削減を推進し、2015年までに、2004年を基準として15%以上の地球温暖化ガス排出量の削減する。
   
水の使用量
  世界中の事業拠点において、今後10年間で30%以上の水の使用量削減する。
   
社有車の燃費
  燃費の向上や石油代替燃料のための主要な技術を駆使した車両を導入
   
浮遊性発がん性物質
  1990年以降、世界中の事業拠点における大気中の発がん性物質排出量を92%削減したが、2015年までに、2004年を基準として大気中発がん性物質排出量の50%以上の削減。
   
第三者機関による検証
   

デュポンは再生可能なバイオベース素材、先進的なバイオ燃料、省エネ技術、高機能の安全防護製品、代替エネルギー関連製品および技術をはじめとする、製品の開発と商業化を推進している。これらの製品の中には、トウモロコシを原材料とし、カーペットやアパレル、その他の用途に使用されるデュポン ソロナ®ポリマーの主な成分となるバイオPDOTM、高い収穫量や高品質の作物を栽培するために先進的な植物遺伝学を駆使して開発されたパイオニア®ブランドの種子、警察官や消防士および救急隊員の防護服に使われている デュポンケブラー®、デュポン ノーメックス® およびデュポン タイベック®の新用途などの高機能材料が含まれている。

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デュポンは11日、バイオベース3GT繊維ソロナ® のポリマーを生産し、アジア全域で販売するため、中国の「張家港 Glory Chemical Industry」 と提携すると発表した。

3GT繊維はポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維)で、テレフタル酸と1,3プロパンジオール(PDO)とのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子からなる繊維。「しなやかさ(ソフト感)」を持ち、染色性が良く、高発色性、耐久(特に耐塩素)性などが特長。また、ポリエステル成分を張り合わせた複合糸は優れたストレッチ性と回復力を合わせ持つ。

デュポンは Tate & Lyle と共同で醗酵、精製技術を開発、50/50JVのDuPont Tate & Lyle BioProducts を設立し、トウモロコシ等を原料としたバイオ法PDOのプラントをデュポンのテネシー工場の既存プラントに隣接して建設した。

「張家港 Glory Chemical Industry」は本年初めにソロナ® ポリマーを生産するために設立された会社で、デュポン技術の連続重合設備を5月に建設開始した。2007年第2四半期に商業生産を開始する予定で、原料のバイオPDOは上記JVから供給を受ける。生産能力は年産30千トン。

 
PTT繊維は日本では東レが2001年にデュポンとライセンス契約を結び生産しているほか、旭化成と帝人が合弁会社ソロテックスで生産している。


2006/10/18 Akzo Nobel、寧波化学産業区に新立地

Akzo Nobel は12日、中国寧波市の鎮海地区にある寧波化学産業区との間で工場新設の覚書を締結した。Akzo Nobel としては世界最大の50ヘクタールの土地を確保した。

詳細は来年はじめに発表するが、エチレンアミンやキレート剤、有機過酸化物等を生産する。

同社は寧波にポリマー化触媒とパウダーコーティングの2工場を持っているほか、寧波化学産業区にはシノペック鎮海煉油化工が年産100万トンのエチレンクラッカーを建設中で、いろいろの原料を入手しやすいことから同地を選択した。

ーーー

付記

その後、具体的計画を発表
  第一期
   インフラ(2009)
   Chelates(2009)
   EO、エチレンアミン(2010)
   Organic peroxides(2010)

  第二期
   Cellulosic specialties
   エチレンアミン2期
   Metal alkyls
   Coatings

同社は2008年10月、NDRCから下記計画の承認を取得した。2010年のスタートを予定している。
  
エチレンアミン 35,000トン、
  EO 73,000
トン
  MEG
5,200トン、
  エタノールアミン
96,700トン 

2009年12月、キレート設備がスタートした。欧州、北米、アジアにプラントを持つ唯一のメーカーとなった。

ーーー

オランダの化学大手アクゾノーベルは、オランダの化学・医薬品のアクゾ1886年設立)とスウェーデンの化学大手ノーベル1871年設立)が1994年に合併して誕生した。

事業部門はコーティング、化学、医薬品の3事業体制で、世界60ヵ国以上で事業展開している。コーティング事業では世界最大手である。

2004年事業部門別売上シェア
  コーティング 41%、化学 34%、医薬品 25%

地域別では、ユーロ圏 38%、その他欧州 20%、北米 19%、アジア 12%、その他 11%と、欧州が圧倒的な主力市場であるが、中国を世界で最も重要な急成長市場として位置づけ、同社の成長計画の中で主導的な役割を果たすとしている。同社では2010年までに中国での売上高10億ドルにするとしている。

付記

同社は2007年には、中国での売上高を2012年までに20億ドルにするという目標を掲げた。

同社の中国での活動は以下の通り。

 従業員数  約3,700人
 売上高(2004年) 6億5,500万ドル
  うちコーティング 66%
    化学     
27%
     医薬品     6%

コーティング事業

製品部門   工場
Akzo Nobel Car Refinishes 修理工場向け自動車塗料、その他  蘇州
Casco(Akzo Nobel Industrial Products 接着剤  
Akzo Nobel Changcheng Powder Coating Powder Coating 蘇州、北京、深セン、廊坊、寧波
Akzo Nobel Decorative Coatings 内装、外装用化粧塗料 蘇州
Akzo Nobel Marine Coatings 船舶用コーティング剤 上海浦東
Akzo Nobel Protecitive Coatings 保護コーティング剤(建造物 上海浦東
Akzo Nobel Wood Coatings 木製家具用コーティング剤 東莞、天津、嘉興
Akzo Nobel Coil Coatings 鉄鋼用コーティング剤(下塗り済み) 蘇州
Akzo Nobel Non-Stick Coatings ライパン、調理器具用 非接着性コーティング剤 東莞、天津

  2005年9月、エマルジョンペンキ最大手の広州のGuangzhou Toide Paint Manufacturing との間で、
  同社のコーティング事業の買収で合意

化学事業

製品部門   工場
Akzo Nobel Polymer Chemical 有機過酸化物、金属製アルキレート、ポリマー化触媒  天津(2工場)、寧波
Eka Chemicals パルプ、製紙用化学製品 蘇州、封開
Akzo Nobel Functional Chemicals MCA モノアセチンクロロ酸 泰興
Akzo Nobel Functional Chemials CC クロリンクロライド(家畜飼料用ビタミン添加剤) 宣興
Akzo Nobel Resins 自動車向けOEM コーティング用合成樹脂 蘇州

医薬品

1992年に Nanjing Organon Pharmaceuticalを設立。経口避妊薬が好調。

 

参考資料
JETRO 2006/5 「欧州企業の中国戦略」
 
http://www.jetro.go.jp/news/releases/20060517405-news/05001227_001_BUP_0.pdf


2006/10/19 シノペック茂名石化、新エチレンクラッカー稼動

シノペック子会社の茂名石化が広東省茂名市で建設していた年産64万トンのエチレンクラッカーがこのほどスタートし、オンスペックとなった。既存の36万トンと合わせ、合計能力を100万トンとした。

茂名石化は広東省西部に位置する石油精製と石油化学の統合基地で、石油精製能力は年産1350万トンでエチレン能力は360千トンであった。
これまでの誘導品能力はHDPE/LLDPEが175千トン、LDPEが100千トン、MEGが100千トン、SM 100千トン、PP 170千トン、芳香族 150千トンであった。

同社は2003年に新クラッカーの建設承認を得て2004年12月に建設を開始した。当初は既存の36万トンエチレンを80万トンに拡張する計画であったが、のちに計画を変更した。

本年8月には新しい年産120万トンの接触改質装置が稼動した。また260万トンのガスオイル水添脱硫装置も稼動した。
エチレン増設とともに、誘導品の増設も行っており、新設のHDPE 350千トン、PP 300千トン、ブタジェン 150千トンが既に稼動しており、芳香族も 150千トンから 460 千トンに拡張した。更にLDPE 250千トンを建設中で、2007年第1四半期にスタートの予定。

ーーーー

中国政府はエチレンの大型化を推進している。
2005年12月、発展改革委員会(NDRC)は「産業構造の調整促進のための暫定規定」と「産業構造調整指導リスト」を公表した。このうち「指導リスト」は、産業分野を奨励対象、規制対象、
淘汰対象の3種に分類している。

エチレンでは年産600千トン未満の計画を「規制対象」とし、逆に「奨励対象」には大型エチレン計画(東部、沿岸地域では800千トン以上、西部地区では600千トン以上)及び既存エチレンプラントの拡張計画を挙げている。(誘導品についても大型化を奨励している。)

NDRC はまた、本年3月に第11次5カ年計画での「エチレン工業 中長期育成計画」を発表した。それによると、中国は2010年までに既存プラントの増設と新規計画により 1,060万トンの能力増を行うこととなる本年1月スタートの中海シェル計画や着工・承認済みの計画を含む)。2005年末の能力が 780万トンであるため、この通りいけば2010年末には1,840万トンになるということになる。

既存プラントの増設については、例えば本件や上海石化
の増設のほか、撫順石化175千トン)のような中規模プラントも拡張し、100万トンに近い能力に引き上げ、既存プラントの能力を2010年までに438万トン増やすとしている。
上海石化は既存の2系列(150千トン&700千トン)のうち、三菱化学技術の第1系列をS&Bで 550-600千トンにすることが計画されている。遼寧省の撫順石化(エチレン175千トン)は800千トンの増設を実施中。

新設については中海シェル計画のような大規模エチレンを7基、合計620万トンを新設する。揚子江デルタ、珠江デルタ、渤海湾地域が2010年には全国のエチレンの60%以上を占めることとなり、同時に新疆、甘肅、四川、湖北省など中西部地区にも大型エチレンが建設されるとしている。

このほか、「育成計画」では、規模の経済と原料問題を提起し、エチレン新設の場合、能力は80万トン以上とすること、製油所との結合で原料入手を確実にし、新計画の原料の75%以上を自給することとしている。
さらにエチレンメーカーに他の原料ソース、例えば、Sinopec傘下の石油化工科学研究院が開発した深度接触分解法
Deep Catalytic CrackingFCCや、石炭→メタノール・メタノール→オレフィンMTOを探求することを求めている。


2006/10/20 エチレン新設計画

台湾プラスチックの雲林県麦寮の第3期エチレン計画が来年上半期に完成することが明らかになった。
完成するのはエチレン 120万トン、プロピレン 60万トン、ブタジェン 17万トン、芳香族 110万トンで、これによりFPCの麦寮のエチレン能力は、1,2期計 1,735千トンと合わせ、2,935千トンとなる。

台湾では2005年のエチレン需要の3,325千トンに対して能力は2,850千トンで、エチレンを輸入して誘導品を生産し輸出している状況だが、この完成でエチレン輸入は不要となる。日本からはこの数年10万トン程度のエチレンを台湾に輸出しているが、これがなくなることとなる。

なお、台湾では中国石油も林園のNo.3エチレン 23万トンをS&Bで100万トンにする計画で、2011年の完成を予定している。

台湾の石油化学については 2006/4/15 「台湾の石油化学」 参照 (添付の能力表は最新版に更新している)

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カタール石油とエクソンモービルは15日、ラスラファンに30億ドルのワールドクラスの石化コンプレックスを建設する検討を進める基本合意書を締結したと発表した。

North Field ガス田からのエタンを原料に、エクソンモービルの技術で、エチレン130万トンのほか、ポリエチレンやエチレングリコール等を生産する計画で、アジアと欧州市場を対象にし、2012年のスタートを予定している。

両社は2004年6月に本件に関する基本覚書を締結している。

なお、カタール政府とエクソンモービルは2004年7月に、ラスラファンでの70億ドルのGas-to-Liquid (GTL) 計画の基本合意書を締結している。

カタールの石油化学については 2006/6/1 「湾岸諸国の石油化学ー2 カタール」 参照

付記 

エクソンモービル石油とカタール石油は2010年1月6日、カタールのラスラファンに共同で大規模石油化学コンプレックスを建設する契約に調印したと発表した。

North Field ガス田からのエタンを原料に、エクソンモービルの技術で、年産160万トンのエチレン、65万トンのガスフェースPE 2基、及び70万トンのエチレングリコールを建設する。2015年 後半のスタートを予定している。


2006/10/21 OPEC、減産合意

 OPECは19日、カタールのドーハで緊急会合を開き、イラクを除く加盟10カ国の生産量を公式生産枠2,800万バレルから170万バレル、実質生産量2,750万バレルから120万バレル減らして2,630万バレルにすることを決めた。11月1日から実施する。

 OPECは2005年7月1日に生産枠を50万バレルアップし2,800万バレルとして以来、公式生産枠を維持してきた。しかし、8月後半以降の原油価格の急落を受け、減産による価格維持策が必要と判断した。

 当初は公式生産枠から100万バレルの減産との説が流れたが、実質生産量は生産枠を50万バレル程度下回っていることから、現状追認に過ぎないとの見方が出て、価格は下落傾向をたどっていた。

 このため、OPECは実質生産量を基準にし、かつ120万トンと減産幅を上積みした。

 OPECでは市場の動きを見守り、12月4日にナイジェリアで開く会合で見直しを行うとしている。

各国の状況及び減産幅は以下の通り。(単位 千b/d)

  生産枠  06/9
  実績
06/9
  能力
減産幅
Algeria    894    890    890    59
Indonesia   1,451   1,400   1,400    39
Iran   4,110   3,750   3,750    176
Kuwait   2,247   2,600   2,600    100
Libya     1,500   1,700   1,700    72
Nigeria   2,306   2,200   2,200    100
Qatar    726    850    850    35
Saudi Arabia   9,099   9,200  10,500
 - 11,000
   380
UAE   2,444   2,600   2,600    101
Venezuela   3,223   2,450   2,450    138
Total  1 28,000 1 27,640  28,940
 - 29,440
  1,200

 OPECの減産合意を受けて、ニューヨーク商業取引所の原油市場は19日、WTI原油の先物価格が夕方の時間外取引で1バレル=61ドル台に急伸した。しかし、実際の減産は合意の70-75%にとどまるとの見方が広がり、一時57ドル台まで下げている。

付記 ニューヨーク原油市場、20日終値は 56.82ドルで約11カ月ぶりに57ドルを割り込んだ。

 

OPEC生産枠推移

 


2006/10/23  WHO、マラリア防止にDDT使用を推奨

WHO915日、マラリア蔓延地区においてDDTの室内散布を推奨すると発表した。DDTを壁や天井などに散布することにより、そこに停まる蚊を殺し、マラリア蔓延を防ぐもの。

DDTは1873年に初めて合成され、1939年にスイスの科学者パウル・ヘルマン・ミュラーが殺虫効果が発見し、この功績によって1948年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。安価で高等生物への急性毒性が弱く、マラリアを媒介する蚊の駆除に劇的な効果を上げることも分かり、世界中で使用された。

しかし、米国のレイチェル・カーソンが1962年、著書「沈黙の春」でDDTの生態系への影響を指摘、他の研究者からも発がん性やホルモンに似た作用があるという報告が相次いだ。このため、80年代に各国で使用禁止となった。

スリランカでは1948年から62年までDDTの定期散布を行ない、それまで年間250万人を数えたマラリア患者の数を31人にまで激減させることに成功していたが、DDT禁止後には僅か5年足らずで年間250万人に逆戻りしている。
最近は世界で毎年、5億人以上がマラリアに感染し、100万人以上が死亡しているという。

2004年、地球規模での化学物質の汚染防止を目的にした「ストックホルム条約」が発効した。これにより、DDTやPCB、ダイオキシンなどの使用が規制されたが、例外としてマラリア対策として、DDTの製造・使用が認められた。

南アフリカでは国際的な圧力により、1996年にDDTの使用をやめ、その代替殺虫剤が使用されるようになっていたが、その殺虫剤がDDTに比べ効果の弱いことが分かり、その4年後、再びDDT使われるようになった。
公式資料によると、2000年には64,622人(内 死亡438人)のマラリア発症の報告があったものが、2005年には7,754人(内 死亡64人)と大きく減少している。

今回のWHO発表では以下のように述べている。
・DDTの室内散布はマラリア感染蚊による感染者数を素早く減少させるのに有効。
・調査によると、よく管理されたDDTの室内散布は野生生物や人体に害を与えないことが判明。
・科学的データによるとWHOが室内散布を認める殺虫剤のなかで、DDTが最も有効。
・家や畜舎の壁や天井に長期間効果のある殺虫剤を散布し、そこに停まるマラリア蚊を殺す仕組み。
・室内散布は丁度、大きな蚊帳を家中に24時間吊るのと同じである。
・室内散布についての考えはこの数年、変わってきた。1960年代に反DDT運動をした環境保
護基金(Environmental Defense)やシエラクラブ、絶滅危惧野生動物保護基金(Endangered Wildlife Trust)も賛成に回っている。
・正しい、タイムリーな室内散布はマラリア蔓延を
90%まで減らすことが出来る。
WHOのマラリア防止策は次の3つ。
 1)室内散布

 2)殺虫剤処理の蚊帳の使用
 3)
感染者にはアルテミシニンと他の抗マラリア薬の併用治療

ーーー

殺虫剤処理の蚊帳は住友化学が開発した。商品名をオリセット蚊帳Olyset Mosquito Net)と呼ぶもので、殺虫剤を樹脂に練り込み、その樹脂を用いて蚊帳を作った。WHO ではこのオリセット蚊帳の効果を確認し、推薦している。

住友化学はタンザニアの蚊帳メーカーに技術を無償供与し、これの現地生産体制を整えたが、昨年、現地メーカーとの合弁会社Vector Health International Limitedを設立して新規工場を建設した。タンザニアでの年間生産能力は 800万張り/年に、世界での生産能力を2,000万張り/年にした。

ーーー

マラリア治療薬についてはアルテミシニンが使用されたきたが、WHOはアルテミシニンの単独使用でマラリア原虫は抵抗性を持つ可能性があるとし、アルテミシニン単独、または他の抗マラリア薬単独の治療法ではなく、アルテミシニンと他の抗マラリア薬を併用するACT (artemisinin combination therapies) 治療を推奨している。
また、
WHOは従来常用されてきたクロロキンはほとんどの国でその効果を失ってしまったと指摘している。

ーーー

今回のDDT使用推奨については賛否両論がある。

科学ライター、松永和紀さんによると、使用賛成論者は次の理由を挙げる。

(1)DDTの評価の誤り
 ヒトへの発がん性を示す確たる証拠がないこと、神経系や内分泌系への影響も実験結果がさまざまで、はっきりしたことがまだ言えないこと。つまり、「『沈黙の春』は、真実ではない恐怖を煽ってDDTを禁止させ、大勢の子どもの命をマラリアで失わせたのではないか」という批判が、浮上している。

(2)農薬など化学物質は、それほど生物に蓄積していない。
 昨年、CDC(米疾病管理センター)が、米国民の尿や血液から検出された148化学物質をリストにして発表した。99-2000年の調査結果で、DDTをはじめとする農薬は、検出されないか検出されても微量。
もちろんこれは、「沈黙の春」などの警告に基づき、化学物質管理が進んだ結果でもある。ただ、「沈黙の春」が、化学物質を排出したり分解したりする生物の機能を軽視し過ぎたことは否めない。
(2006-06-07  松永和紀のアグリ話●「沈黙の春」の検証が進まない不思議な国ニッポン話」)

これに対して最近の欧州などでの研究で、DDTと男児の生殖器異常との関連性を示す報告がいくつか出ており、DDTのホルモンに似た作用による影響と考えられる。動物実験の結果では、発がん性も完全には否定されていないという。DDT有害説は完全には否定されていない。

5億人以上がマラリアに感染し、毎年100万人以上が死亡している事実を考えると、DDT使用は止むを得ないと思われる。
昔のように畑(農業用)や家の周りの草むらや水溜り(マラリア防除用)に散布するのと異なり、室内散布の場合は自然汚染のリスクも少ない。

付記 2007/2/8

中西準子先生のホームページに掲載された。

雑感377-2007.2.6「WHOの方針転換(DDT問題)」

A. DDTについてのWHOの方針転換(昨年9月15日)

昨年(2006年)9月15日、WHO(世界保健機関)は、DDTについての重要なアナウンスを行った。(この情報遅くなってすみません。)
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2006/pr50/en/index.html

かなり重要な情報だと思うが、日本の全国紙では読売新聞しか報道しなかったようである(データベースで見ているので、間違いがあるかもしれない)。*)

*) 新聞社の方から以下の注意がありました。ありがとうございます。

「きょうのエントリーのWHO&DDTの件ですが、10月19日の毎日新聞夕刊1面に加え、共同通信の配信記事(インタビュー)が1月27日の中国新聞と東奥日報、1月29日の東京新聞に掲載されています。NHKは読売と同じ9月16日にニュース報道しています。」

06年9月15日のWHOアナウンス

DDTの広範な使用が禁止されてからほぼ30年経過して、WHOはマラリアをなくすために、DDTの室内残留性噴霧(IRS)を奨励するという方針を公表した。IRSとは、屋内の壁面に殺虫剤をスプレーするという方法で、即効性がある。これは、ハマダラカが吸血行動に際して室内の壁で休息する性質があるため、有効だと以下のハンドブックに書かれている。

IRSは費用も低く、適切に使用すれば、健康リスクはない。1980年代初期までWHOは熱心にこの普及に努めてきたが、人の健康や環境影響が大きいと言う声が上がり、この使用を止め、他の方法を検討した。しかし、その後の精力的な研究、調査でIRSは人に対しても、環境に対しても害はないとの結論に達した。

IRSについて、以下のハンドブック(pdf)の14頁に詳しい説明があり、写真もついている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/oda_ngo/shien/pdfs/05_hoken_01.pdf

FAQ(よくある質問と答え) 

上記アナウンスの1年ほど前に出たFAQにあった説明もひとつつけ加えておこう。
http://www.who.int/malaria/docs/FAQonDDT.pdf

問:マラリヤ制御のためのDDTの使用は、なぜこれほど議論になるのか?

答え:DDTが残留性、残存性の高い物質だから。殺虫剤として散布してから、環境中で12年も残留する。この間、DDTと代謝物は食物鎖に入り、脂肪組織に蓄積する。野生生物でのいくつかの有害影響がDDTによるものだった。鳥類の卵殻が薄くなるのもその影響である。

また、DDTが人健康に慢性的な影響を与えるという畏れもあった。しかし、現在までのところDDTと人健康影響との間の直接的な関係はないが、これが生殖機能や内分泌系の機能に影響を与えるかもしれないという証拠は増えつつある。DDTの使用に反対する人々は、この理由で使用を抑制すべきと主張している。

他方、DDTの使用を続けるべきだと主張する人々は、以下のようなことを根拠にしている:(1)マラリアによる高い死亡率と疾病率(年間約100万人がマラリアで死亡)、(2)マラリアの媒介を防ぐ効果が高いことが証明されていること、(3)費用が低いこと、(4)他の良い方法がないことである。

彼らは、DDTによる過去の悪い影響は、農薬として広く使われたことの影響だと主張している。マラリア媒介昆虫制御のために使われる量は、農業利用に比べ微々たるもので、WHOが指導するような室内利用を厳密に守れば、環境影響もほんの少しでしかないと主張している。

<私の意見>

1. 媒介昆虫用を認めると、結局農業用に流れるという主張もあるが、これは監視するしかない。

2. DDTをつけた蚊帳と比べて費用の比較が行われたが、一般的にはIRSが安く、人口密度の低いような地域では蚊帳が安いということらしい。

3.(雑感68−1999.10.25から再録、一部省略)DDTに対して耐性をもつ蚊ができるので、DDTの効果は限られているということがしばしば言われる。では、何故、DDTはこれほど長く使われるのか、また、現に効果をあげている(インドなど)というのが不思議だったが、Jim Dukelowという人の書いた文章を読んでいたら、この謎が解けた(内藤航さんがinternetで見つけた)。 
  
蚊は直ぐにDDTに耐性をもつようになる。しかし、このDDT耐性種は、耐性種になるときにある種の能力を失うようで、DDTのないところでは野性の蚊と競争すると負けて絶滅するという。 

したがって、他の薬剤も少し使い、DDTの施用のタイミングを調整すると、耐性種を野生種で退治しながら、蚊を殺すことができるとのことだ。 
  
つまり、こんな具合か? 

DDTを使い続ける。耐性種になる。ここでDDTをやめる。野生種が増える。この間は別の薬剤をやや弱めに使い、耐性種を絶滅させる。絶滅された時点で、再びDDTか? (二種使うと費用はかかる。ただ、ピイレスロイドに対しては、交差耐性を持つという)

4. これだけ、人へのリスクが大きければ、DDTを使った方がいいだろう。しかも、IRSという方法なら、生態系への影響がほとんどなくなるとすれば、大したものだ。ただ、WHOは、人間の健康至上主義で、生態系への影響は考えない傾向があるので、それこそ、今後のmonitoringが必要で、risk-based Adaptive Managementの出番となろう。

 


2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進

ダウは20日、タイでサイアムセメントとのナフサクラッカーJV計画を進めると発表した。

昨年のサイアムの発表では、11億ドルを投じてRayongに新しいナフサクラッカーを建設するもので、能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。
サイアムが
67%、ダウは33%出資する。2010年稼動を目指す。

ダウは石油化学投資に当たり "asset-light" approach 取っている。Kuwait Oman JVのように、技術と資金を提供してワールドクラスの石化計画に参加するもので、本件もそれであるとしている。

同社ではこのアプローチの利点として、@低コスト原料の入手、Aパートナーのローカルのノウハウ活用、B資金節減、Cリスクが低い、の4つを挙げている。

ダウはタイでの誘導品事業も検討している。プロピレンではBASFと共同で開発した過酸化水素法POHPPO)を、エチレンでは既存のサイアムとのJVSiam Polyethylene でのhigher alpha olefins PE の増設を検討している。

付記

2008年6月10日、ダウとサイアムセメントの合弁会社のSCG−Dow がタイで過酸化水素法PO工場の建設に着手したと発表した。生産能力は年産39万トンと世界規模。同時にプロピレングリコールも生産する。稼動開始は2011年の予定。

過酸化水素(HP)は、ダウとソルベイが設立する合弁会社が、隣接地に新工場を建設する。

2007/8/3 Dow Solvay、タイにHPPO用の過酸化水素製造のJV設立

ダウとサイアムはRayongMap Ta Phut に5つのJVを持っている。
 Siam Polyethylene (LLDPE)
 Siam Polystyrene (PS)
 Siam Styrene Monomer   (SM)
 Siam Synthetic Latex  (SB latex)
 Pacific Plastics (Thailand)  (
Polyol)

新クラッカーはこれらの立地に近いため、川上、川下の連携でより効果が得られるとしている。

なお、サイアム側も 4億ドルを投じてHDPE 30万トン、PP 40万トンのプラント建設を計画している。

タイの石化については 2006/6/8 「タイの石油化学の現状」、2006/10/6 「タイで年産100万トンエチレン建設」参照 

ーーーー

ダウはまた同日、上海浦東新区の張江高科技園区Zhangjiang Hi-Tech Park)でダウセンターの建設を開始した。
65千m2の立地にR&DセンターとグローバルITセンター、付属設備を建設する。

R&Dセンターは数百人の科学者を擁し、60以上の研究室で、建設、自動車、健康、パーソナルケア製品など幅広い研究を行う。

 

ダウのGreater China (本土・香港・台湾)での2005年の売上高は23億ドルで、米国、ドイツに次ぐ3番目の市場となっている。

ダウの中国事業については 2006/8/23 「中国でのダウの活動」参照

 

張江高科技園区は「中国のSilicon Valley & Pharmaceutical Valley」と呼ばれ、多くの企業が進出している。
http://www.localglobal.de/gbf2004/vortraege/shanghai_zhangjiang.pdf 参照)

 


2006/10/25 中国、有害廃棄物輸入で海外企業を処分

国家質量監督検疫検験総局(SAQSIQ:State Administration of Quality Supervision, Inspection and Quarantine)は有毒・有害廃棄物が中国へ流入することを防ぐため現場検査を行った結果、登録した廃物原料と実際の状況が一致しないことが明らかになったとして海外17社の廃物原料国外供給企業登録資格(中国向けスクラップ輸出に関する資格)の停止、取消を行った。

資格の一時停止処分を受けたのは日本の日中再生資源株式会社のほか、韓国企業1社、スウェーデン企業4社、英国企業2社の合計8社。また登録した廃物原料と実際の状況の不一致が深刻だったことから、日本の揚州加藤現代農芸有限公司と、ベルギー企業3社、ドイツ企業2社、スウェーデン企業1社、英国企業2社の合計9社の資格が取り消された。


SAQSIQ によると本年初めから、21社が資格取消、8社が資格の一時停止の処分を受けている。

ーーーー

登録資格制度は2005年9月に施行された。

発端となったのは中古プラスチックの輸入問題。
2004年3月下旬に
九州のある企業が山東省青島市に回収プラスチック 6千トンを輸出した際、「バーゼル条約」(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)に違反したことがある。
同社は合格基準を満たした少量のプラスチックを貨物の最上部に置き、規定に満たず、利用価値もない大量の有害廃棄物をその下に隠すという詐欺まがいの手段で輸出し、現地の環境に深刻な汚染をもたらした。

SAQSIQは同年5月、日本から輸入する回収プラスチックの登録検査と関連の検査・検疫手続きを一時停止すると発表した。すでに検査手続きをすませている場合は、関連機関が厳重な検査を行い、条件に合わない貨物は一律に通関を認めないとした。
特定の国からのリサイクル原料輸入を全面的に停止するのは、中国では初めてであった。

この措置により、回収プラスチックの輸出を扱う日本企業はたちまち苦境に立たされた。2003年の日本の回収プラスチック輸出量は68万トンで、3年前に比べて倍増しており、うち9割以上が中国に輸出されていた。

この事件に関しては日中の当局者が協議した結果、問題となった廃プラは2005年8月にすべて中国から持ち出されたうえ、日本側が輸出の際の適切な処理を保証した。

この結果、中国政府は日本からの廃プラスチック輸入再開を認めるとともに、 廃物原料国外供給企業登録資格制度を実施した。


2006/10/26 信越化学 中間決算好調

信越化学は23日、中間決算を発表した。

連結売上高が前年同期比19.4%増の6,390億円、営業利益と経常利益は同33%増の1,200億円、当期純利益は同34.7%増の749億円といずれも大幅増加した。
国内の半導体シリコン製造設備の減価償却(定率法)の
耐用年数を、従来の5年から3年に短縮している。(短縮による償却費増は半年で70億円)

3月期決算でも増収、増益、増配を予想している。
但し来年の業績見通しについては、金川千尋社長は、「米国の景気が建設、自動車など下降気味なので楽観できない。今年と横ばいならいい方だと思う」と語っている。

 

信越化学決算推移         単位:百万円(配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
05/9中間  535,103  276,079   90,291   35,611   90,037   36,027   55,611   22,787  17.5  ー
06/9中間  639,049  334,650  120,024   40,243  120,043   39,711   74,932   25,311  25.0  ー
                     
03/3  797,523  480,243  122,149   62,014  122,119   62,011   73,015   37,028   7.0   7.0
04/3  832,804  482,580  125,625   56,073  125,612   58,065   74,805   34,725   8.0   8.0
05/3  967,486  520,289  151,734   63,081  151,503   62,030   93,160   39,020  10.0  10.0
06/3 1,127,915  582,426  185,320   73,685  185,040   72,115  115,045   45,065  17.5  17.5
07/3 1,290,000  690,000  241,000   80,000  241,000   80,000  150,000   50,000  25.0  25.0

 

セグメント別営業損益と概況  (単位:億円) 

各分野ともに好調。

  05/9中間 06/9中間
塩ビ系 182 245
シリコーン系 193 200
その他有機・無機 94 106
有機・無機化学品計 469 551
半導体シリコン     258     421
その他      57      84
電子材料計 315 505
機能材料ほか 120 143
全社 -1 1
営業損益計 903 1,200

1)有機・無機化学品 

●塩ビ                               
 米国シンテック社が、北米市場を中心に需要が旺盛で、売値も高水準で推移したことから、増収増益になった。   
 オランダのシンエツPVC社は、欧州全体の需要に支えられ、売上と利益を順調に伸ばした。               
 国内事業は、中国向け輸出の採算悪化により営業利益は減少した。

【シンテック業績】  

  売上高  経常利益 当期純利益
2005/6中間  1,058億円   170億円   112億円
2006/6中間  1,303億円   251億円   168億円
       
2003/12月期  1,671億円   238億円   155億円
2004/12月期  1,971億円   271億円   179億円
2005/12月期  2,330億円   373億円   248億円

●シリコーン
 中国・米国向け輸出が総じて順調であったことに加え、国内販売が堅調に推移し、増収増益となった。
 信越ポリマー鰍フ携帯電話用キーパッドなどの加工製品も好調だった。

●その他有機・無機
 セルロースは国内が医薬品向けを中心に堅調に推移したほか、ドイツのSEタイローズ社も建材向けの販売が好調だった。
 酢ビ・PVAの日本酢ビ・ポバール鰍フ出荷も好調だった。

2)電子材料事業
●半導体シリコン
 携帯電話、パソコン、デジタル家電、自動車など幅広い分野でデバイス需要が伸びるなか、300mmウエハーでは、需要の拡大を的確に捉えながら、複数の拠点で製造能力の増強を行い、拡大が続く需要に対応した。
 200mmウエハーの需要も高水準で推移した結果、半導体シリコンは大幅な増収・増益となった。
 
 当中間期において、国内の半導体シリコン製造設備の減価償却(定率法)の
耐用年数を、従来の5年から3年に短縮した。(短縮による償却費増;70億円/半年)

●その他
 電子産業用希土類磁石はデスクトップパソコン、サーバー、映像記録機器用途等のハードディスクドライブ向けが好調。
 半導体用フォトレジストは、先端デバイス向けに本格採用が始まったArFレジストが好調。

3)機能材料その他
●合成石英
 液晶用大型マスク基板は、当後半に調整局面を迎えたが、光ファイバー用プリフォームは需要の回復の兆しが見られたことから、合成石英製品は増収増益となった。

●希土類磁石他機能材料
 希土類磁石は自動車、デジタル家電など多くの分野で採用が進み堅調に推移、液状フッ素エラストマーやペリクルも好調に推移。

ーーー

同社は中間配当を前年の17.5円から25円に増やした。年間(予想)では昨年の35円から50円にする。一昨年が20円であったので2年で2.5倍になる。
医薬業界では武田薬品が今期中間60円、年間120円を予定している。

 


2006/10/27 ババリア・エチレンパイプライン建設補助金承認

ECはこのたび、ECの協定による州政府の補助金支払い可否を審査した結果、ドイツのバイエルン自由州(英語読みでババリア州)政府による南部エチレンパイプライン社EPSEthylene Pipeline Sud GmbH & Co. KG) への補助金支払いを承認した。
パイプライン建設費
150百万ユーロに対し、当初申請の50%から29.9%44.85百万ユーロに引き下げて承認した。

EPS社はBASF, Borealis, Clariant, OMV Deutschland, Ruhr Oel, Vinnolit, WACKER のコンソーシアムで、 BASF本社工場のあるLudwigshafen (既存パイプラインの東南端)とババリアのMunchsmunsterを結ぶ 357kmのエチレンパイプラインを建設する。

ドイツ当局は、このパイプラインは既存のエチレンパイプラインと「内陸の島々」を結ぶとともに、更に西欧と中欧・東欧のパイプラインを結ぶものと、重要性を主張した。

付記 当初2011年稼働の予定であったが、短い部分で農民による訴訟があり、2012年にずれ込む。

コンソーシアム参加各社のババリアの拠点は以下の通り。

Borealis Polymere Munich
Clariant Produkte
Gersthofen
Ruhr Oel (BP) Munchsmunster .
WACKER
Burghausen
Vinnolit Gmbh&Co KG:@Gendorf 、A Burghausen (Wacker 敷地内)


2006/10/28 出光興産上場

出光興産が10月24日、東京証券取引所第一部市場に上場した。
募集株式数は国内が7,400千株、海外が4,120千株の合計11,521千株。ほかに公募の数量を超える需要があった場合に主幹事証券会社が対象企業の株主等から一時的に株券を借りて追加的に販売するオーバーアロットメントが1,157千株がある。

公募・売り出し価格9,500円を約11%上回る10,500円で初値を付け、終値は10,770円、終値べースの時価総額は4,183億円となった。
時価総額は元売り大手6社の中では昭和シェル石油に続き5番目で、首位の新日本石油(約1兆3千億円)とは大きな差がある。

公募・売り出し価格1株 9,500円のうち、4,513円を資本金に、4,512円を資本準備金とする。
上場後も創業家の出光家が大株主にとどまるが、持ち株比率は31
%から約20%に下がる。

同社では上場によって調達した1,000億円超の資金を合わせ、2009年3月期まで2,500億円を戦略分野に重点を置いて投資する。
今後の事業戦略について、同社は以下の通り述べている。
「国内の石油製品需要は減少傾向にあり、事業成長には限界があります。成長を確保する為には、事業ポートフォリオの改善が必要であり、基盤事業は、国内での効率化を追求し、競争力を強化する一方で、海外において技術・ノウハウを活用した事業展開を行い、資源事業は石油・石炭などの採算性の高いエネルギー資源事業の中長期的拡大を図り、潤滑油・機能性樹脂・電子材料などの高付加価値事業は技術力による差別化で積極的に拡大してまいります。これらの戦略を着実に実行し、バランスの取れた事業ポートフォリオの構築と持続的成長を目指してまいります。」

ーーーー

同社は1911年に、出光佐三氏が北九州市に出光商会として創業、1940年に出光興産となった。

1951年にイランが石油を国有化し、これに対しメジャーは日本などの消費国にイランと取引をしないよう圧力をかけた。
出光は1953年に日章丸二世(1万9千重量トン)でアバダンよりガソリンと軽油を輸入した。産油国との直接取引の先駆けを成すものであった。
BPの前身、アングロイラニアンは積荷の所有権を主張し、東京地裁に提訴したが、出光が勝訴した。)

1957年に徳山製油所を竣工、石油精製に進出、1963年に千葉製油所を建設した。
1964年に出光石油化学を設立、徳山工場を建設した。

1963年には石油業法による「生産調整」に反対し、石油連盟を脱退している。
1966年末で石油の生産調整は表向き廃止されることになり、同年10月、石油連盟に復帰した)

同社はその後拡大を続けたが、1990年代には資本金10億円に対し、連結有利子負債が2兆円を超え、経営危機が深刻化した。
このため、同社は財務内容改善を目指し、1998年度を初年度とする5ヵ年の中期経営計画を策定、借入金の大幅な削減と自己資本の充実を図ることを決めた。

20005第三者割当により配当優先株式290万株の発行を決め、資本金を10億円から300億円へ増資した。
東海銀行、住友銀行、住友信託銀行、東京海上火災保険、住友生命の各社に割り当てた。
その後も金融機関を引受先として議決権のない優先株を発行し、資本金を388億円とした。また、今後、第三者割当による普通株式発行、株式上場も検討することとした。

2002年に就任した天坊昭彦社長は記者会見で、以下の通り述べている。
2006年の株式上場を目指すなかで「プライベートカンパニー」から「パブリックカンパニー」への方針転換を果たすことが自分の役割だと考えている。
   
これまで出光の経営は金融機関からの借り入れに依存しており、これが一種の「盾」になってくれた。しかし、金融機関の体質も徐々に変化しており、出光としても大きな変革が求められるということだ。
   
出光石油化学は規模も大きく、これまで出光興産とは「兄弟会社」として、それぞれ独自に運営してきた傾向があった。しかし、日本の石化業界は厳しい国際競争のなかを一人で勝ち抜いていくのは難しく、コンビナート同士の戦い、競争力の問題になってくる。これからは連結経営強化の一環として100%こちらの歩調に合わせてもらう。
   

また、出光石油化学の厩橋社長も精製石化一体化による優位性を次のように述べた。
「今後、中国にメジャーが進出し、中東ではエタンベースのエチレン設備が本格化するが、当社は原料では負けない。たとえば中東ではプロピレンが生産されないが、出光グループには精製のFCC
流動接触分解プロピレンがある。一方で、石油製品も需要構造の変化が予測され、石化原料となる留分の価値が見直される可能性もある。出光グループは石油と石化の両方の変化に対応できる」

2005年10月、同社は金融機関や系列販売店を引受先とし、512億円の第三者割当増資(679社向け)と228億円の自己株売り出し(3社向け)を実施した。
同時に従来の資本金388億円のうち、優先株の有償消却で387億円の減資を実施した。
新資本金は513億円、自己資本増加額は353億円となる。

                     (資本金) (自己資本増減)
当初 普通株式 20,000千株    1,000百万円  
優先株式  3,780千株   37,800百万円
       
減資 優先株式 3,780千株  -38,661百万円  -38,661百万円
増資 普通株式 7,321千株   51,250百万円   51,250百万円
売却 普通株式(3,256千株)     22,789百万円
       
合計 普通株式 27,321千株   51,388百万円   35,378百万円

 

出光興産は2004年8月1日に出光石油化学を吸収合併した。

2005年4月1日に三井化学と出光興産は両社のポリオレフィン事業を統合してプライムポリマーを設立した。
三井化学 65%、出光興産 35%の出資で、実質的には出光が旧出光石油化学のポリオレフィン事業を三井化学に譲渡したこととなる。
2005年8月の
出光興産4半期報では「ポリオレフィン事業での合弁会社設立に伴う営業譲渡益を含め特別損益47億円」としている。


2006/10/30 中国化工集団公司(ChemChina)の海外進出

中国化工集団公司(ChemChina)は2004年5月に国営のChina National Blue Star (Group) (藍星グループ)と China Haohua Chemical Industrial (Group) (昊華化工)を統合して設立された。

中国藍星は10月26日、フランスのローディアとの間でローディアのシリコーン事業を買収する契約を締結した。事業価値を同事業の2005年の金利・税金・償却前利益の7倍強の4億ユーロをベースにしている。

ローディアのシリコーン事業は、2005年の売上高が417百万ユーロで従業員は合計1200人、欧州が中心で、フランスに2箇所大きな工場を持っている。アジアでは、上海と江西省、マレーシアと豪州に工場を持つ。

藍星は本年、江西省南昌市に年産10万トンの新しいシリコーンモノマー工場を建設、これにより同社の南昌での生産能力は同20万トンとなる。

藍星とローディアは2004年10月にシリコーン事業で提携の覚書を締結し、2005年5月にはローディア技術により年産20万トンのメチルクロロシランのプラントを建設することで合意書を締結、同時に両社はそれぞれのシリコーンの上流及び下流分野での活動をグローバルに戦略統合する可能性について2006年央までに検討するとしていた。検討の結果、今回の事業売却にいたったと思われる。

ローディアは、この売却は世界で主導的地位を占める事業に専心するという基本戦略に沿い、かつ負債縮減に役立つものとしている。

ローディアは元はローヌプーランで、1998年に化学品事業部と繊維・ポリマー事業部を統合し、新会社ローディアとなった。
(残りのライフサイエンス部門は1999年にヘキストと合併してAventis となった。)

ローディアでには3グループ、7事業がある。

Performance Materials Polyamide
Acetowcellulose acetate fiber
Functional Chemicals Novecaresurfactants, phosphorus derivatives, natural polymers and specialty polymersand monomers
Silcea“Electronics & Catalysis” (rare earths), “Silica Systems” (highperformance silicas) and “Silicones”
Organics and Services   Eco Servicessulfuric acid
Organics:diphenols and derivativesisocyanatesfluorinated compounds and derivatives
Energy Servicesreduction of greenhouse gases

ーーーーーーーーー

一方、ChemChina はこの数年海外の化学事業の買収に積極的で、2005年10月には豪州の石化会社Qenosを買収した。

Qenosは1999年10月に当時のケムコアエクソンとモービルの折半会社とオリカ旧ICIオーストラリアが豪州の両社の石化事業を統合して設立したもので、エクソンモービルが53%、オリカが47%出資している。シドニーとメルボルンに工場を持ち、以下の能力をもっている。従業員920人。
 エチレン 500千トン、プロピレン 50千トン、ブタジェン 20千トン
 HDPE 180千トン、LDPE 90千トン、LLDPE 120千トン
 ブタジェンゴム 12千トン
このほか、
Qenosはエクソンモービル、錦湖、BASF等の代理店として、EPDM、PP、ポリエステルレジン等々の輸入販売を行っている。

ーーーーーーーーー

BlueStar は、本年1月にはCVC Capital Partners から子会社で動物用栄養製品メーカーの Adisseoを買収している。売買代金は4億ユーロ。

Adisseoは、CVCがアベンティス現在サノフィ・アベンティスの動物栄養製品部門を2002年に購入して設立した会社で、メチオニン、ビタミン、飼料用酵素を製造販売しており、年間売上高は5億ユーロ。メチオニンは年20万トンを生産し、世界シェアは29%。

中国では2005年にメチオニンを12万トン輸入しており、今後も需要は10ー15%増加すると見られている。
BlueStarは将来、Adisseo技術により中国内に20万トンプラントを建設する計画をもっている。

付記

BlueStar と同社のフランスの子会社Adisseoは2009年8月19日、中国初のメチオニン工場を南京市に建設する契約を締結した。能力は年産7万トンで、2012年下半期に稼動の予定。

Adisseoは2009年6月にフランスとスペインの工場でメチオニンを合計25千トン増強することを明らかにしている。


2006/10/31 中国で三菱化学技術のアクリル酸エステル工場完成

中国藍星(前回記事参照)の子会社、瀋陽パラフィンのアクリル酸エステル工場が22日、遼寧省瀋陽市の瀋陽経済技術開発区に完成した。

三菱化学が藍星に供与したアクリル酸、アクリル酸エステル技術により建設していたもので、瀋陽パラフィンの生産するプロピレンを原料に、アクリル酸 80千トンと2系列計 130千トンのアクリル酸エステル(メチル 10千トン、エチル 10千トン、ブチル 80千トン、2-エチルヘキシル 20千トン、その他)を製造する。投資額は12.9億人民元。

三菱化学は2004年8月に藍星との間で、技術供与と、藍星が生産する同製品の一部を三菱化学が引き取る契約に調印した。藍星から引き取るアクリル酸、アクリル酸エステルを、三菱化学とサソールの合弁会社サソール・ダイヤ・アクリレーツ(下記)を通じて、中国国内を含むアジア市場を中心に販売する。

なお、同プラントの基本設計及び設備調達は、三菱化学エンジニアリングが担当した。

ーーーー

三菱化学は原料のアクリル酸、アクリル酸エステルから川下製品の高吸水性樹脂、エマルジョンまで 「トータル・アクリレート・チェーン」を石化ビジネスにおけるコア事業として位置づけており、ワールドワイドな事業展開を加速させるとしている。

同社は四日市にアクリル酸110千トン、アクリル酸エステル116千トンの能力を持っている。

2001年10月、南アのSasol 社との間でアクリル酸及びアクリル酸エステルの共同事業について合弁会社を設立することで基本合意した。その後、20039月に2つの合弁会社を設立した。
@Sasol Dia Acrylates (Pty) Limited (本社:南ア)
 三菱化学 50%、Sasol 50% 出資で、アクリル酸及びアクリル酸エステルの販売、投資等の事業管理を目的とする。

ASasol Dia Acrylates (South Africa) (Pty) Limited (本社:南ア)
 @のJVが
50%、Sasol 50% 出資で、Sasol 社 Sasolburg工場敷地内に、三菱化学技術で、
 アクリル酸 80千トン、アクリル酸ブチル 80千トン、アクリル酸エチル 35千トン、精製アクリル酸 10千トンを生産。

三菱化学とサソールの間には、これより以前に、三菱がノルマルブタノール生産技術を供与し、サソールが生産するノルマルブタノール(年産能力15万トン)の一部を引き取るとの提携関係が出来ていた。

付記 
2007年9月合弁解消。
@の三菱持分50%をSasol に譲渡し、Sasolの100%子会社となる。(この結果、Aも)
合弁解消後もSasolからの製品の引取権をもつ。

高吸水性樹脂(SAP)については、三菱化学は原料アクリル酸からの一貫生産の強みを生かして当分野に進出すべく独自に懸濁重合法によるSAPを開発、1987年に生産販売を開始した。同じく、三菱化学の関連会社である日本合成化学もSAPの生産販売をしており、両社はSAP事業合理化のため、1996年、合弁会社・ダイヤポリアクリレート三菱化学 51%出資、生産能力年産1万トンを設立した。

一方、三洋化成は、1975年に水溶液重合法によるSAPの開発に成功し、1978年に世界で初めてコマーシャルベースでSAPの生産販売を開始し、生産能力を順次増強し、名古屋工場に年産8万5000トンのプラントを有していた。

両社はそれぞれの事業を統合してサンダイヤポリマー(三菱40%/三洋60%)を設立し、2001年4月から営業を開始した。

サンダイヤポリマーは2003
6月に江蘇省南通市に100%子会社、三大雅精細化学品(南通)を設立した。2005年10月から高吸水性樹脂2万トンを生産している。 

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三菱化学では藍星との提携が、三大雅へのアクリル酸供給ソースが確保できること、需要の大幅な伸びが期待される中国をはじめとするアジア市場へのアクリル酸エステルの供給体制が強化できるなど、本事業の発展・強化に資する提携となるとしている。


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