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2010/5/19 「世界の石油化学製品の需給動向」2010年版 

経産省化学課は5月14日、「世界の石油化学製品の需給動向」2010年版を発表した。

世界の石油化学製品の今後の需給動向
 
国別データシート
 
2014年までの新増設計画
 
商品別集計データ表

製品別・国別の能力/生産/需要データ (METIデータ組替)

概要は以下の通り。

世界のエチレン系誘導品の需要は2008年に原油や石油製品価格の乱高下の影響を受け、減少に転じた(前年比 -4.2%)。

2009年以降は、世界的な金融危機等の影響が未だ残るものの、世界全体で経済の回復が達成されることを前提に、各国・地域ごとの需要見通しを積み上げると、2008〜14年の世界全体の需要の伸びは年平均+3.9%、2014年の需要量は134.2百万トン(2008年比で+27.6%)となる見通し。

中国については、輸出環境は依然厳しいものの、国内需要の回復に伴い、石化需要も2008年夏場(原油下落開始時期)以降、急激に落ち込んだ需要は、09年末には在庫調整も終わり、原油の下げ止感がでたことから、在庫の上乗せ需要も加わり、大きく需要が回復した。

中国の2008〜14年の需要の伸びはエチレン換算で年平均 8.0%とみている。
 LDPE 8.1%、HDPE 9.6%、PS 6.1%、PVC 8.5%、
 PP 9.1%、PTA 9.1%

中国は現在のところ、エチレン換算の約5割を輸入に依存しているが、2009年から新設プラントが本格的に稼働を始めており、その自給率が上がり、2014年の輸入比率は約3割まで低下すると見込まれている。輸入比率が低下し、輸入量は緩やかに減少すると見込まれている。



ーーー

今後、中東や中国で大規模コンプレックスが続々完成する。

しかし、ほとんどの製品で現在の能力が既に2014年の需要を上回っている。
中国での新設は当然、輸入品に置き換わるし、中東などの新規設備は既存の老朽設備を淘汰することとなる。
日本への影響は大きい。

上記のとおり、この報告では中国の需要の伸びを年率8%でみている。
各製品で中国の需要の比率がどんどん上がっている。

エチレン換算でみると、需要の増加は驚異的である。
       
  2008年 2014年予想 増加量
中国 19.8百万トン 31.5百万トン 11.7百万トン
米国 20.0百万トン 22.9百万トン  2.9百万トン
西欧計 22.8百万トン 24.3百万トン  1.5百万トン

中国の需要が今後もどんどん伸びるかどうか疑問がある。

製品輸出が今後も伸びるか?
  人民元の引き上げ、労務費アップ、貿易戦争

個人消費が増えるか?
  
「家電下郷」、 「汽車下郷」などの補助金は続かない。
  都市部と農村部の所得格差の拡大(農村部の消費は余り拡大しない)
  消費より貯蓄の傾向(将来への不安)

バブル崩壊の恐れ(住宅価格、株価の異常なアップ)

2006/2/21 「中国バブル説」でこう書いた。

(中国の需要予想の)根拠の一つには13億人という膨大な潜在需要の存在と思われる。
しかし実際には三大成長エリア、広東、長江デルタ(上海)、渤海湾(北京、天津、大連)の3億人を現在のマーケットと考えるべきである。これと残りの10 億人の所得格差は著しく大きい。
将来は別としてこの数年をとってみると、これら10億人の需要を当てにすることはできない。
仮に三大エリアの3億人が石化製品を日本並み
44kg/人・年)、残り10億人がフィリッピン並み6.5kg/人・年)に消費するとすれば、中国の需要は2000万トンにしかならない。

現在では中国の市場はもう少し拡大はしているが、農村部の状況は余り好転していない。2014年に需要が5割以上も増えるであろうか。

仮に中国の需要が伸び悩めば、大変なことになる。

 


2010/5/20 「世界の石油化学製品の需給動向」2010年版−2

各地域の動向は以下の通り。(エチレン換算)

日本
  
  2014年に以下の輸出をみているが、可能だろうか。
    エチレン 44万トン、SM 110万トン、PVC 70万トン、PE 43万トン
  
韓国
  
  大幅な輸出依存だが、2010 年にエチレン増設(麗川NCC 5万トン、LG 化学 10万トン)がある。
  誘導品増設はなく、エチレン輸出増。
  このほかにもエチレンの増設が検討されている。
  輸出がなくなれば、壊滅的。
 
台湾
  
  韓国と同様、大幅な輸出依存である。
 
中国
  
 
シンガポール
  
  Shell のBukom 島のエチレンプラント(80万トン)が2010年稼動
  ExxonMobil 二期計画(エチレン100万トン、PE130万トン、PP45万トンほか)2011年稼動予定
 
中東
  
  中東での2008 年初めより2014 年迄の角度の高いエチレン計画として以下をみている。(万トン)
  ・サウジ
    
Chevron(20083Q 24), SEPC(20092Q 100)YANSAB(20093Q 130)
    
PetroRabigh (20092Q 130),Sharq(20094Q 130)Kayan (20104Q 135),
    ChevronPhillips(20112Q 130)、小計 779
  ・イラン
    
BIPC(2009610)NPC#9(20081Q 100), NPC1020084132,
    #5(20101Q 50)、小計 292
  ・ カタール
    
Ras Laffin(20102月 130)
  ・ クウェート
    
Equate-220092Q 85
  ・
UAE Borouge (20102Q 140)
  以上合計 約
1,426万トン
 
北米
  
 
西欧(トルコ含む)
  
 
世界合計
  
 

 


2010/5/21 EUDRAMカルテルに制裁金、「同意決定手続き」初適用

EUの欧州委員会は519日、世界の主要半導体メーカー10社がDRAMの価格カルテルを結んでいたとして、9社に総額331百万ユーロ(約370億円)の制裁金支払いを命じた。

エルピーダと株主で前身のNECと日立の両社及び東芝、三菱電機の日本企業5社は同日、制裁金を支払う方針を明らかにした。

欧州委によると、各社は19987月から20026月にかけて、DRAMの価格カルテルを結んでいた。

米国のMicronはカルテルの存在を通知し、制裁金を100%減免された。
また、Infineon
ほかが、調査に協力して一部減免された。

各社は「同意決定手続Cartel Settlement Procedure)」に従い、10%の減免を受けた。
* エルピーダ等は「和解手続」と呼んでいる。

半導体メーカー 減免(Leniency) 減免(Settlement) 制裁金 (EUR)
Micron (米国) 100% N/A 0
Infineon(独:1999年にシーメンスから分離・独立) 45% 10% 56,700,000
Hynix(旧称 現代電子産業で2001年に現代グループから分離) 27% 10% 51,471,000
Samsung Electronics 18% 10% 145,728,000
エルピーダ、NEC、日立(連帯) 18% 10% 8,496,000
NEC、日立 (JV期間、連帯)   10% 2,124,000
NEC (JV以前) 18% 10% 10,296,000
日立 (JV以前) - 10% 20,412,000
東芝 - 10% 17,641,800
三菱電機 - 10% 16,605,000
Nanya(台湾:南亞科技) - 10% 1,800,000
合計     331,273,800

「同意決定手続き」2008630日に制定され、同年71日から運用された。
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/08/1056&guiLanguage=en

欧州委と企業がカルテルの内容と証拠を協議し、企業がカルテルの存在を認めると制裁金が10%減額される仕組み。
これにより裁判所への控訴による長期の争いを避けることができ、欧州委では要員を他の事件の摘発に向けることが可能となる。

当時のNeelie Kroes競争政策担当委員は次のように述べた。

この手続の導入は、カルテルに対する執行をいささかでも弱めるものではなく、寧ろ、同手続の導入は、カルテルのより効果的な摘発を目的としたものである。
10%の制裁金減額という効果も、手続の簡素化や執行の効率化により正当化できるものである。

EUにはすでにカルテルの存在などの情報提供で協力した企業の制裁金の免除や大幅な減額を認めるLeniency制度があるが、これと併用する。

今回のケースはこの制度の初適用となる。

ーーー

エルピーダは1999年12月にNECと日立製作所のDRAM事業を統合する形で発足した。

エルピーダは1999年4月から2002年6月までの間にDRAMの国際カルテルに参加したとして、2006年1月に米国で8400万ドルの罰金支払いに同意している。

他に、Samsung3億ドル、Hynix18500万ドル、ドイツInfineon Technologies16000万ドル。
エルピーダの米国の副社長(米人)が25万ドルの罰金と7カ月間の禁固刑。

これと同時にDRAM顧客のパソコン大手から訴訟を受け、和解金を支払った。

エルピーダは自製開始まではNECと日立の製品を販売していたが、この和解金の負担に関して両社と争っており、両社に対して約120億円の損害賠償を求める訴訟を起こしていたことが判明した。


2010/5/22 アスベスト被害で国の責任認定

大阪府の泉南地域の石綿紡織工場の元労働者や元周辺住民ら29人が石綿肺や肺がんなどになったのは、国がアスベスト(石綿)の規制を怠ったのが原因だとして、国に計9億4600万円の賠償を求めた訴訟の判決が5月19日、大阪地裁であった。

小西義博裁判長は「石綿対策を省令で義務づけなかったのは違法」とし、 賠償金を支払うよう命じた。
勝訴したのは26人で、賠償額は1人あたり 687万円〜4,070万円で総額は
約4億3500万円
工場近くで石綿粉じんにさらされたとして「近隣暴露」を訴えた元周辺住民の請求は退けた。

泉南地域では明治40年に石綿から糸や布を作る石綿紡織業が起こり、地場産業として発展した。2005年11月の生産中止まで約100年間の歴史を持つ。

石綿原料から石綿糸・布をつくる第一次加工で、泉南市、阪南市の狭い地域に、最盛期には一貫工場で70社あり、下請け内職を含めれば約2000人が就労していた。

戦前は軍需関連、戦後は自動車、造船、鉄鋼などの断熱・保温材を中心に紡織製品が使用された。

工場内外で激甚な石綿粉じん飛散があった。

資料 http://www.takagifund.org/admin/img/sup/rpt_file20034.pdf

付記

国と原告の双方が控訴していたが、2011年8月25日、大阪高裁で控訴審判決があった。
三浦潤裁判長は国の規制に不備はなかったと判断、計4億3500万円の賠償を命じた一審・大阪地裁判決を取り消し、原告の請求を退けた。

石綿被害をめぐり、国の「不作為責任」を認めた判決は初めて。
ほかに尼崎市のクボタ旧神崎工場の周辺で働いていた男性の遺族らと、首都圏の建設労働者らが提訴、係争中。

原告側主張:
国は戦前に泉南地域を中心とした石綿関連工場労働者を対象にした健康被害調査を実施し、その1割以上が石綿肺にかかっていたことを把握しており、石綿肺を労災疾病に指定した1972年には、危険性を認識していた。
   
国は1972年以降、粉じんが飛散しやすい作業工程での粉じん を除去する「局所排気装置」の設置▽防じんマスクの着用指示ーなどを省令で義務付けなかった。
   
国側主張:
1972年以降から技術発展に応じた規制を行った。
   
危険性を認識できたのは、疫学調査の結果が蓄積され、石綿肺の予防を目的としたじん肺法が制定された1985年以降。
   
周辺住民は工場労働者より暴露量が少なく、石綿肺の所見も認められない。
   

大阪地裁判決の要旨は以下の通り。

・国が石綿被害の実態と対策の必要性を認識した時期

石綿に関係する医学的な知見は1959年に石綿肺について、72年には肺がんと中皮腫についておおむね集積された。国はそれぞれの時期に、防止策をとる必要性を認識していたと言うべきだ。

戦前のデータは意義はあったが、仮説にとどまっており、医学的知見確立とは言えない。

・1960年時点で国が石綿肺防止のための省令を制定しなかったことの違法性について

石綿肺の医学的知見が59年におおむね集積され、重大な被害が発生していることを認識しているのだから、被害の防止策を総合的にとる必要性も認識していたということができる。

労働大臣は59年の旧じん肺法成立までに、排気装置の設置を中心とする石綿粉じんの抑制措置を使用者に義務づけるような内容の省令を制定していれば、石綿肺になる危険性をかなり低下させることができ、その後の被害拡大も相当防ぐことができたと考えられる。
しかし、この時点で省令を制定せず、71年に旧特化則(特定化学物質等障害規則)で粉じんが飛散する屋内作業場に排気装置を設置することが義務付けられるまで、対策をとらなかった。

省令を制定・改正し、排気装置の設置を義務づける規定を設けなかったのは、著しく合理性を欠き、違法だというべきだ。

・72年時点で国が石綿肺防止の省令を制定しなかったことの違法性について

石綿粉じんと、肺がんと中皮腫発症の関連性があるという医学的知見は、72年におおむね集積された。
粉じん測定機器としてメンブランフィルター法も実用化され、一般の事業所で粉じん濃度の測定ができるようになった。
特化則により、石綿を製造し、取り扱う屋内作業場で6カ月以内ごとに1回、定期的に粉じん濃度を測定、記録することが義務付けられた。

この測定が実行されるのを担保するため、測定結果の報告などを義務づける必要があったが、国はこれを怠った。これは著しく合理性を欠き、違法だったというべきだ。

・省令制定権限不行使の違法と石綿粉じん暴露による損害との因果関係

国の省令制定権限不行使の違法と、60年以降に石綿粉じんに暴露し石綿関連疾患になった労働者の原告、またはその相続人らの損害には、相当因果関係がある。

 

厚生労働省では、今後の対応は詳細を確認の上、関係機関と協議して検討したいとしている。

ーーー

付記

厚生労働省と環境省は控訴を断念する方向で調整に入っていたが、政府は5月31日、関係閣僚会議を開き、控訴する方針を決めた。

仙谷由人国家戦略相らが、他の被害者らへの影響や検討期間の短さなどを指摘、最終的には仙谷国家戦略相に対応を一任した。

仙谷国家戦略相は、「短時間でこの問題を確定させてしまえば、後々出てくる問題点について合理的な解決策を示す余地がなくなる。全体的な解決策を、裁判所に入っていただくこともありうる前提で検討する」と述べた。


2010/5/24 世界競争力、日本は27位 

スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)は5月19日、「World Competitiveness Yearbook 2010」を発表した。
  
http://www.imd.ch/research/publications/wcy/index.cfm

今回の調査では、世界的な金融危機の影響が比較的少なかったアジア各国の躍進が目立った。
シンガポール(1位)と香港(2位)が、金融危機の影響を受けた米国(3位)を初めて追い抜いた。(但し、3国は極く小差で、報告ではLeading Trio という方が妥当としている)

日本は昨年は17位で、アジアでは香港(2位)、シンガポール(3位)に次いで3番目であったが、本年は27位に落ち、台湾、マレーシア、中国、韓国、タイにも抜かれた。
日本は調査開始の1989年から93年までトップになっていた。(その後は米国が首位を続けた。)

日本の順位の推移
2005 2006 2007 2008 2009 2010
21 17 24 22 17 27

BRICsでは中国が18位に上げ、インド (31)、ブラジル (38)、ロシア (51)となっている。

中国の力は豊かな労働力(1位)と安定・効率性が高い制度的条件(2位)を基盤とした活発な輸出(1位)と外国人投資誘致(2位)。世界最大の外貨保有額(2兆4000億ドル)と低い国家負債の割合(2位、GDP比2.72%)も強い背景。
弱点は社会的インフラの不足、深刻な公害など保健・環境分野の競争力が非常に脆弱なこと、GDPの3%にすぎない教育費投資なども改善を急ぐ必要があると指摘された。

順位 昨年   点数
1 (3) Singapore 100.000
2 (2) Hongkong 99.357
3 (1) USA 99.091
4 (4) Switzerland 96.126
5 (7) Australia 92.172
6 (6) Sweden 90.893
7 (8) Canada 90.459
8 (23) Taiwan 90.441
9 (11) Norway 89.987
10 (18) Malaysia 87.228
11 (12) Luxembourg 86.867
12 (10) Netherlands 85.650
13 (5) Denmark 85.587
14 (16) Austria 84.085
15 (14) Qatar 83.828
16 (13) Germany 82.730
17 (24) Israel 80.327
18 (20) China 80.182
19 (9) Finland 80.002
20 (15) New Zealand 78.531
21 (19) Ireland 78.144
22 (21) UK 76.808
23 (27) Korea 76.249
24 28) France 74.372
25 (22) Belgium 73.586
26 (26) Thailand 73.233
27 (17) Japan 72.093
28 (25) Chile 69.669
29 (29) Czech 65.443
30   Iceland 65.067

競争力の評価には、以下の4つの分野でそれぞれ5つの項目(合計20項目)を審査する。
各項目
5点で、合計100点。

Economic Performance Government Efficiency Business Efficiency Infrastructure
Domestic Economy
 Size
 Growth
 Wealth
 Forecasts
Public Finance Productivity Basic Infrastructure
International Trade Fiscal Policy Labor Market
 Costs
 Relations
 
Availability of skills
Technological Infrastructure
International Investment
 Investment
 Finance
Institutional Framework
 Central Bank
 State Efficency
Finance
 Bank efficiency
 
Stock market
 
Finance management 
Scientific Infrastructure
Employment Business Legistlation
 Openness
 Competition
 
Labor regulations
Management Practices Health and Environment
Prices Societal Framework Attitudes and Values Education

日本は、不況で打撃を受け、高齢化や財政悪化が進んでいるとして評価を下げた。

IMDは新しく、'Debt Stress Test' を採用した。各国がその債務を我慢可能なレベル(GDPの60%)にまで下げるのに何年かかるかというもの。
「大事なのは公的債務の大きさだけではなく、それを解消するのに何年かかるかということ。債務の多い国は結局、競争力を失い、生活水準の悪化を起こす」としている。
.

先進国は"debt curse"(債務の呪い)に苦しむが、日本は最悪で、2084年までかかると見ている。
イタリアがそれに次ぎ、2060年としている。

このほかの諸国は以下の通り。
  ポルトガル 2037年
  ベルギー  2035年
  ギリシャ   2031年
  ドイツ    2028年
  フランス   2029年
  英国     2028年
  米国     2033年

他の日本の弱点は生活費が高く、人口高齢化が深刻なこと、日本の主要都市の生活物価水準はニューヨークに比べても30%も高いとされた。最高40%に達する法人税率は企業活動の意欲をなくし、外国企業の進出を阻害する要因とされた。外国人観光客誘致(GDP対比観光収入)は調査対象58カ国の中で最下位だった。

逆に、日本の科学技術インフラは米国に続いて世界2位。輸出(4位)で貯めた金で研究開発に莫大な投資(2位)をしている。特許保有件数では世界1位、平均寿命が世界で最も長いことを含め、保健・環境で11位となっている。
企業の環境にやさしい経営 (1位)とグリーン技術(2位)でも世界的な優位を占めている。
  

ーーー.

国際通貨基金(IMF)は5月19日、「日本政府は2011年度には財政再建を開始し、消費税を徐々に引き上げていく必要がある」とする声明を発表した。日本の財政が先進国で最悪の状況に陥っていることを踏まえ、国債発行の限度額などを盛り込んだ財政健全化に向けたルールづくりを求めた。

「国家財政への監視の目が厳しくなる中、信頼性のある財政再建策を早期に策定することが非常に重要」と指摘、リプスキーIMF筆頭副専務理事は「財政の安定性が確保されることが消費者や企業に安心感を与え、成長につながる」と語り、消費税増税 は景気回復を阻害しないとの見方を示した。

 


2010/5/25 雲天化集団、重慶でPOM増設、年産6万トンに

雲天化集団(Yuntianhua )は 4月19日、重慶の重慶ケミカルパークでPOM(ポリアセタール)の第三系列2万トンの生産を開始した。

第一系列(Aライン)2万 トンは20089月に完成、第二段階は2系列(B,Cラ イン)計4万 トンで、200911月にCライン2万トンがスタート、今回Bライン2万トンがスタートしたもので、同社の重慶のPOM能力は6万トンとなった。

同社は中国最初のPOMメーカーで、2005年に雲南省昭通市に12千トン能力でスタート、2006年に20千トン設備を追加し、現在の能力は32千トンとなっており、今回の重慶の完成で合計能力は92千トンと、中国最大のPOMメーカーとなった。

中国のPOMメーカー(千トン)
    2007/7
現在
2010/5
現在
建設中  
雲天化集団 重慶市       60       
雲南省昭通市 32 32  
宝泰菱工程塑料(南通)有限公司PTM 江蘇省南通市 60 60   ポリプラスチックス(70.1%)、三菱ガス化学、
韓国Engineering Plastics、Ticona
上海藍星新材料(Blue Star Group) 上海市浦東区   40   60千トンと100千トンの計画あり
杜邦ー旭化成ポリアセタール(張家港) 江蘇省張 家港 20 20   旭化成ケミカルズとDuPont の50/50JV
 付記 2013/6 旭化成 100%
Shenhua Ningxia Coal Industry
(Shenhua Ningmei)
寧夏回族自治区銀川市     60  
 (以上 2007/7/28 中国でポリアセタール(POM)計画相次ぐ 参照)
Tianjin Soda Plant 天津市   40    
CNOOC Tianye Chemical 内蒙古     60  
Yongmei Group 河南省開封市     40 付記 
2010/1
1 第1期(4万トン)生産開始、
2期(6万トン)建設開始

中国のPOM計画については既に述べた。

2007/7/28 中国でポリアセタール(POM)計画相次ぐ 

このうち、本計画と、上海藍星新材料の第一期が稼動した。
これに加えて、Tianjin Soda Plantの40千トンプラントが既に完成している。

Tianjin Soda Plant
1917
設立で、アジアの最初のソーダ企業の一つ。

また、Shenghua Ningxia Coal Industry(通称 Shenhua Ningmei)のMTP (メタノールからプロピレン)計画の一環の60千トン計画と、新規のCNOOC Tianye Chemical 60千トン計画、Yongmei Group40千トン計画も本年下期から来年上期に完成の予定。

CNOOC Tianye Chemical
中海石油化学(中国海洋石油
CNOOCCの子会社)は20063月に内蒙古の Tianye Chemical 株式の90%を買収した。
Tianyeは尿素520千トンとメタノール200千トンのプラントを有しており、中海石油化学の尿素製造能力は1,840千トンに増大した。

Yongmei Group
大規模石炭化学計画の一環で、他に、メタノール
800千トン、酢酸 300千トン、ジメチルエーテル 300千トン、ジメチルカーボネート10千トンなどがある。POMは当初の20千トン計画を倍増した。

付記
河南煤業化工集団の子会社・河南永煤集団(
Henan Yongmei Group)の開封龍宇化工は2010年11月23日、河南省開封市でポリアセタール(POM) 計画の第1期年産4万トンの生産開始と、2期年産6万トンの建設開始の式典を行った。

2007年7月時点での中国の能力は112千トンであったが、来年上期には412千トンとなる。

中国は2009年にPOMを165.9千トン輸入している。(31.2千トンを輸出)

昨年末以降に完成の雲天化集団の重慶第二段階40千トンと、今後完成する3計画を合わせると、輸入は不要となる。


2010/5/26  光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金

公正取引委員会は5月21日、NTT東日本などが発注した光ファイバーケーブルなどの受注をめぐり、価格カルテルを結んだとして、住友電気工業など5社に排除措置命令を出し、総額約160億円の課徴金納付を命令した。
    
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/10.may/10052103.pdf

約20種類ある光ファイバーケーブルの種類ごとに「覚悟値」と呼ばれる値引き限度額を設定し、交渉で価格が下落するのを防いでいた。 

排除措置命令及び課徴金納付命令                     単位:千円
  NTT東日本等向け  NTTドコモ
向け
合計      
光ファイバー
ケーブル
FAS
 コネクター
熱収縮
 スリーブ
光ファイバー
 ケーブル
住友電工 4件
6,267,740 182,230 33,560 279,190 6,762,720
古河電工 4件
4,273,350 136,800 22,470 173,400 4,606,020
フジクラ 4件
4,176,050 118,360 15,400 101,830 4,411,640
昭和電線
ケーブルシステム
      1件
199,030       199,030
住友スリーエム       1件
  120,020     120,020
アドバンスト・
ケーブルシステムズ*
(自主申告で免除)
コーニング
インターナショナル
(アドバンストに営業譲渡)
昭和電線
ホールディングス
(昭和電線ケーブルシステムが承継)
日立電線 (アドバンストに営業譲渡)
合計 4社 4社 3社 3社 14社
14,916,170 557,410 71,430 554,420 16,099,430
* アドバンスト・ケーブルシステムズは Corning Cable Systems 50%、日立電線 50%

付記 古河電工は、自主申告で課徴金が3割減の46億円となったことを明らかにしている。

 

今回の課徴金はカルテルとしては過去最高額で、談合を含めても過去2番目の規模。

カルテルとしてのこれまでの最高額は、溶融亜鉛めっき鋼板カルテルの155億円。

  2009/8/31 溶融亜鉛めっき鋼板カルテルに排除措置及び課徴金納付命令  

談合での最高額は、2007年3月のごみ処理施設の製造施工業者に対する課徴金の270億円で、今回はこれに次ぐ。

単位:千円
三菱重工業  6,496,130
JFEエンジニアリング 5,732,510
川崎重工業 5,165,580
日立造船 4,901,020
タクマ 4,702,650
合 計 26,997,890

5社は審決取消請求訴訟を提起していたが、2009年10月に最高裁は上告棄却・不受理決定を行った。

付記

5社は課徴金納付命令についても審判で争ったが、公取委は2010年11月12日、同額の課徴金の納付を命ずる審決を行った。

付記

公正取引委員会は、古河電気工業及びフジクラから課徴金納付命令に係る審判請求が行われたため、2010年9月1日、審判手続を開始することとした。

(両社は課徴金の減額を求めたもので、排除措置命令に対しては審判請求を行わず、同命令は確定している。)

公正取引委員会は、2011年12月15日、審判請求をいずれも棄却する旨の審決を行った。

付記

古河電工はこれに対し、独禁法は業種ごとに課徴金算定率を法定していることからすると、単一の課徴金算定率を適用した本件の課徴金納付命令は解釈適用を誤った不適法なものであり、同命令に対する原告の審判請求を棄却した本件審決も法令に違反するなどとして、本件審決の取消しを求めて提訴した

東京高裁は2012年11月30日、これを棄却した。

課徴金の算定に当たっては、単一の業種を認定した上で、単一の算定率を適用することが予定されていると解するのが相当である。
仮に、この取引が小売業の実質を有していたとしても、原告の本件特定製品の取引全体に占める割合は売上額の5%余りにすぎないのに対し、その余の約95%の取引が小売業又は卸売業のいずれにも当たらないことは当事者間に争いがない。

最高裁は2014年4月23日、上告事由に該当しないとして、上告を棄却した。


2010/5/27 PET樹脂で放射線計測、PET装置にも応用

放射線医学総合研究所は5月19日、ペットボトル用の樹脂ポリエチレンテレフタレート(PETPolyethylene Terephthalate)が放射線の計測には極めて優れた性質を持つことを発見し、実際に市販のペットボトル用の樹脂を用いた放射線の計測に世界で初めて成功したと発表した。
  
http://www.nirs.go.jp/news/press/2010/05_19_1.shtml

がんの診断で多用されているPET (Positron Emission Tomography:陽電子断層撮像) 装置など、様々な放射線検出器の低コストな素材として応用されることが期待される。

本研究成果は、世界最古の歴史を誇る英国王立協会の著名な科学誌『英国王立協会紀要A』 のオンライン版に5月19日に掲載された。
   http://rspa.royalsocietypublishing.org/content/early/2010/05/15/rspa.2010.0118.abstract

現在、核医学診断装置のみならず科学の幅広い分野で、様々な放射線検出器が使用されているが、放射線検出器の一つであるシンチレーション検出器(Scintillation)は、放射線を受けると微弱な光を発するシンチレータと、この微弱な光を捉え電子に変換する光電面および光電面で発生した電子(光電子)を数百万倍に増幅する光電子増倍管で構成されている。

シンチレータは放射線があたると蛍光を出す物質のこと。

放射線が物質を通過する際に、物質中の電子を少しエネルギーの高い状態(励起状態)にするが、励起された電子は 10万分の1秒から10億分の1秒という短い時間で元の状態に戻り、この時にシンチレーション光という光が出る。
シンチレーション光は非常に微弱で、そのままでは放射線や素粒子などの測定に使うことができない。
1940年代になって波長変換剤を添加したシンチレータが開発され、シンチレーション光を使った放射線検出が行われるようになった。

PETはガン細胞が正常な細胞より数倍の糖類を消費することを利用したもの。
糖類の一種にポジトロン放出核種と呼ばれる物質を化学合成した特殊な薬剤を被験者の体内に投与すると、一対のガンマ線を180度の方向に放出しながら、糖類が多量に消費されるガン細胞に集まり滞留する。

PET装置の検出器は、円筒状になっており、180度の方向に放出された2つのガンマ線を同時に捉えることができるので、2点の検出箇所を結ぶ線上に元の薬剤があることが分かる。これらを一対ずつ検出、記録し、解析することでガン細胞の場所を特定する。

シンチレータには、無機質を使う場合、非常に高価であると共に、加工や製造が難しいという大きな問題点がある。

PET装置のシンチレーターとしては、NaI(Tl) (タリウム活性化ヨウ化ナトリウム)、BGO(ビスマス ゲルマニウム オキサイド)、LSO(ルテチウム シリコン オキサイド)、GSO(Ce添加Gd2SiO5)、BaF2(フッ化バリウム)などが使われている。

一方、プラスチックの場合は、プラスチックは放射線を受けると微弱な光を発するが、光は紫外光領域に偏っており、当時の光電子増倍管の有感波長がほぼ可視光に限られていたため、「プラスチックはそのままでは放射線計測を行えない」ことが長年の常識になっていた。

このため、紫外光を可視光に変換する波長変換剤を添加することで使用が可能となったが、波長変換剤の添加は、光の変換効率を低くし、放射線計測の感度を下げる要因の一つになっている。また、海外企業のノウハウに依存しており、市場はほぼ海外に独占されている。

素粒子の検出によく使われるプラスチック・シンチレータは、ポリビニルトルエンに2種類の蛍光物質をわずかに混ぜたもの。

ところが、近年、光電子増倍管の有感波長領域が著しく向上したため、紫外光を十分に検出できる可能性が高まったため、様々なプラスチックを用いて、放射線計測用のシンチレータとしての可能性を検討した結果、ペットボトル用樹脂が光電子増倍管の最も感度が高い波長を発光し、放射線計測に極めて優れた性能を持つことが示された。

実際に放射線をペットボトル用樹脂に当て、光電子増倍管で計測したところ、電気信号が検出され、放射線の計測に成功した。

今後原子力産業や非破壊検査など、放射線計測を必要とする幅広い産業での応用も期待でき、また、低価格で高性能、エコロジーな放射線計測装置への応用が大いに期待できるとしている。

現在がんの診断で多用されているPET(陽電子断層撮像)装置やSPECT(単一光子断層撮像)装置が考えられ、実際に、研究グループは試作機を用いて画像化などの研究を行っている。


2010/5/28 中国中化集団、ブラジル油田に30億ドル出資

中国中化集団公司(
Sinochem)は5月23日、ノルウェーの国営石油会社Statoil ASAとの間で、ブラジル沖のPeregrino油田の権益の40%を対価 3,070百万ドルで買収することで合意したと発表した。

Peregrino油田はブラジルの海岸線から85キロメートルのCampos 海盆にあり、2011年に生産を開始する見込み。

取引はSinochemにとってこれまでで最大の海外投資となり、同社の石油開発(E&PExploration & Production )事業を拡大する。

Statoil は引き続き、残りの60%を保有し、操業を担当する。

Sinochemは元は1950年設立の国営の石油トレーディング企業で、旧称は中化工進出口公司(輸出入公司)。
2002年の石油輸出入におけるシェアは原油・製品輸入の4分の1、原油輸出の約40%を占め、利益の約25%は石油取引部門が寄与していた。

1998年の石油業界再編とその後のWTO加盟により、私営企業が石油取引に参入し、競争が厳しくなったため、同社はCNPCSinopecなどと同じく、石油の探鉱開発、生産、精製まで一貫操業を行う会社を目指し、200311月に中国中化集団公司に改称した。
CNPCSinopecCNOOCに次いで、中国の第4の石油メジャーとして、成長しつつある。

E&P事業や精製事業では国内で資産や設備を保有していなかったため、主に国外の油ガス田買収や製油所への資本参加等により参入を図った。

2002年に海外油ガス田の探鉱開発を行うSinochem Petroleum Exploration & Production Co., Ltd.を設立し、同年に215百万米ドルでノルウェーの油田サービス会社Petroleum Geo-Serviceの子会社Atlantisを買収した。

20086月時点で、チュニジア(Oudna海底油田で40%の権益)、UAEUmm al-Quwain海底油田)、エクアドル(ConocoPhilipsの権益の16%を取得)、イェーメン、中国の渤海湾で合計13箇所、原油換算129百万バレルの権益を持っている。

製油所については、大連西太平洋石油化工公司(Dalian West Pacific Petrochemical)に出資している。海外原油の処理を目的に仏TotalSinopec1998年の改革でCNPCに委譲)等との共同出資で1990年に設立した。処理能力は1000万トンに達している。

なお、2004年にSinochemは韓国の仁川精油の買収を決めたが、白紙に戻り、最終的にSKエナジーが買収した。

仁川精油は現代精油がハンファエナジーを買収して改称したもので、その後現代グループから離脱した。

200310月、Sinochemはタイの国営石油会社PTTと石油関連プロジェクトに関する包括的な協力協定に調印した。
協力範囲はタイ及び中国における石油・天然ガス資源の探鉱開発から精製、輸送、貿易、販売までを含む幅広い分野で、両者は委員会を設置し、協力事業について検討する。

ーーー

Sinochem はエネルギー以外では、農業資材、化学品、ファイナンス、不動産をコア事業として展開する。

農業資材では肥料、農薬、種子を扱う中国最大の企業で、2007年にChina National Seeds Group を吸収した。
同社は2009年9月、28億豪ドルで豪州のNufarmを 買収する非拘束契約を締結した。

2009/10/6  Sinochem、 豪州農薬会社Nufarmを買収へ

しかし、この件は破談となり、2009年12月に住友化学がNufarm の発行済み株式の20%の取得ならびに同社と農薬事業の包括的な事業提携を行う方向で、基本的な枠組みを定めた覚書を締結、同社は2010年4月20%取得を発表した。

2010/1/4 住友化学、豪州農薬メーカー Nufarm と包括的業務資本提携へ

 


2010/5/29 豪州の資源新税で資源開発計画の見直し相次ぐ

豪州政府は5月2日、将来の税制に関する政府方針:Stronger Fairer Simpler A tax plan for our future を発表した。

2007年12月に誕生した労働党政権は、半年後の2008年5月に税制調査委員会を発足させた。
委員会が2009年末まで検討した報告書を基に、政府ハイレベルで更に検討を加えたもので、今後の税制改革法案の叩き台となる。

法人税減税などに加え、鉱業分野に関し、州政府の資源ロイヤルティ税に加えて、連邦政府が課税する40%の資源超過利潤税(Resource Super Profits Tax) を新たに導入するとしている。

鉱業及びエネルギー分野は、豪州の全輸出物、サービスの約6割を占めるものの、全雇用の1.6%を占めるにすぎず、高騰する鉄鉱石、石炭等から得られる利潤は、一部の資源会社に占有されており、資源ブームで得た利潤の一部を税金として課税し、国民に分配する姿勢を打ち出した。

本税制改革は「公平なる繁栄の共有」のための10年計画の第一段階であり、第二期資源ブームによりもたらされる成長の機会を、国民の繁栄のために生かしていくべきとしている。とりわけ、再生不能な資源から得られる利益について、国民全体で公平に享受できるかに焦点をあてて改革を行うとしている。

州政府の資源使用税は存続するが、二重課税を防止するため、支払ったロイヤルティ相当を税額控除として認める方針。

同税は2012年からの導入を予定し、当初2年間で120億豪ドル(約8940億円)の税収を見込む。
米格付け会社Moodysは、課税が2012年に始まると、鉱山各社の収益が約3分の1、減少する可能性があるとみている。

更に、カナダやペルー、チリも豪州に続く可能性があるとの指摘もある。

付記

豪州のラッド首相は6月9日、道路や鉄道、港など資源開発用のインフラ整備向けに総額60億豪ドルの基金を設定し、その1/3の20億豪ドルを資源開発の盛んな西オーストラリア州に割り当てると発表した。基金の財源の大半は資源新税収入を充てる。
新税への反発が強い同州の理解を促す狙い。

付記

豪州のラッド首相が6月24日、辞任し、Julia Eileen Gillard 副首相が豪州初の女性首相に就任した。

ギラード首相は7月2日、資源税案の修正で業界と基本合意した。2012年7月から導入する。

対象:鉄鉱石と石炭事業に限定 「鉱物資源利用税」
     当初案で対象の陸上・沖合の石油・ガスは既存の「石油資源利用税」を適用
税率:30% (←40%)
営業利益からの控除率:13% (←6%)

法人税率 29%←現行 30% (当初案 28%←30%)

付記

2012年3月19日、豪で新資源税の導入法案が成立した。

同税の導入により、鉱山大手BHP Billiton、Rio Tinto、Xstrataを含む約30社が影響を受ける。
導入後初めの3年間で、約106億豪ドル(112億米ドル)の税収が見込まれている。

ーーー

豪連邦議会上院は2011年11月8日、二酸化炭素排出企業に負担を課す「炭素価格制度」の関連法案を可決した。排出量の多い企業500社を対象に1トンあたり23豪ドルの負担を求める事実上の炭素税で、下院もすでに可決しており、2012年7月から導入される。

ーーー

資源業界では新税制の導入発表後、計画見直しなどが相次いでいる。

Rio Tinto のCEOは5月24日、豪資源税は世界的に最大のソブリンリスクと指摘、最悪の想定に基づき豪州での全てのプロジェクトを見直すよう幹部に命じたと述べた。

BHP Billitonも、影響について調査するため複数のプロジェクトを保留する。同社のCEOは、オリンピックダム・プロジェクトなどの計画の拡張について、承認は「非常に困難」かもしれないと述べ、新税制は企業の国外移転につながり、豪州経済の9%を占める鉱山業界を脅かすとの見方を示した。

スイスのXstrataも、「政府が何を目指しているか判明するまで全てのプロジェクトについて再検討する」と述べた。

これを受け、資源・エネルギー相は5月17日、「細部について交渉の余地がある。これは真の協議プロセスだ。意見に耳を傾けている」と述べた。


2010/5/31 Sanofi-Aventis、日医工と提携、日本のジェネリック医薬品に進出

Sanofi-Aventis とシェネリック医薬品大手の日医工は528日、日本においてジェネリック医薬品事業を展開する共同出資会社「日医工サノフィ・アベンティス」を設立し、戦略的提携関係を結ぶことで合意したと発表した。

この共同出資会社には、Sanofi-Aventisの日本子会社サノフィ・アベンティスが51%、日医工が49%を出資する。

また、戦略的提携関係をより強固なものとするため、サノフィ・アベンティスは日医工が第三者割当で発行する株式の1,524,500 株を44.1億円で取得し、日医工の全発行済み株式の4.66%を取得、創業家などに次ぐ大株主になる。

提携の具体的なステップとして、JVはサノフィ・アベンティスが製造販売承認権を有する睡眠障害改善剤「アモバン(R)」(2009年度売上高 51億円)の販売と流通を行う。
日医工は、薬局、卸、医療機関の広範なネットワークを通じて、販促活動を行う。

両社は、日医工がこれまで日本で培ってきたジェネリック医薬品の製造・開発・販売のノウハウと、Sanofi-Aventisのリソースやグローバルで展開するジェネリック医薬品を融合させることにより、日本のジェネリック医薬品市場において、JVの発展に向け、さらなる機会を検討するとしている。

付記

日医工は2016年4月4日、Sanofi が所有する 4.76% を取得すると発表した。株主還元の一環として自己株式とする。

Sanofi の「財務構造強化によりCash Flow の最適化を図るという方針による。
これにより、日医工とSanofi の戦略的提携関係に影響を及ぼすことはなく、関係を継続するとしている。

付記

両社は2021年10月25日、2021 12 31 日付で、日医工サノフィ を解散する事に合意したと発表した。

サノフィが 51%、日医工が49%をそれぞれ出資し、抗血小板薬「クロピドグレル」や抗アレルギー薬「フェキソフェナジン」といったオーソライズドジェネリックを中心に取り扱って おり、日医工は日医工サノフィを通じてこれらの製品を販売してきた。

 引き続き、サノフィ製品はサノフィが日医工へ製品供給を行い、日医工による販売を継続する。

 

ーーー

日医工は1965年7月に日本医薬品工業として設立、1967年に富山市内に工場を建設した。
2005年6月に日医工株式会社に改称した。

ジェネリックメーカーとしては初めて1980年に名古屋証券取引所第二部に上場、現在、大阪証券取引所、名古屋証券取引所の第一部に上場している。
国内5カ所の生産拠点で製造、医薬品卸等を通じて全国12万軒の医療機関等で採用されている。

同社は、「ジェネリックメーカーとして世界で卓越する」というミッションステートメントを掲げるとともに、日本のジェネリック医薬品市場において高い評価と強さを兼ね備えた企業として市場を拡大させ、バイオ後発薬、抗体医薬及び抗がん剤等の将来の新たな市場を創造することを目指している。

同社は本年1月、富山県滑川市の主力工場に遺伝子組み換え技術などを使って製造するバイオ後発薬の開発技術センターを設置し、バイオ薬品事業に参入することを発表した。

ーーー

Sanofi-Aventis はHoechst特殊品をClariantに譲渡、化学品をCelaneseとして分離)とRohne Poulent (化学品、繊維・ポリマーをRhodiaとして分離が合併したAventis を、フランス政府の支援を受けたSanofi Synthelabo(元はElf AtochemL'Oreal) が買収して誕生した。

2006/3/6  世界の医薬会社の構造改革

Sanofi-Aventis では、「急成長している日本のジェネリック医薬品市場において、当社のリーダーシップを強化し、確固たる地位を築いていくために、日医工と共同出資会社を設立できることは大変喜ばしい。さらなる成長が見込まれるこの市場において、経済性にすぐれた高品質なジェネリック医薬品を提供することを目指し、政府によるジェネリック医薬品の使用促進策を推し進めたいと考えている」としている。

ーーー

日本の医療用医薬品市場は年間約8兆8,500億円(薬価ベース)の世界第2位の市場規模だが、全医療用医薬品に占めるジェネリック医薬品の割合は、金額ベースで約8%、数量ベースで約20%に止まっており、5割を超す米国やドイツに比べ低い。

政府は患者負担の軽減や医療費抑制を目的として普及を推進しており、2012年度までに数量ベースで全医療用医薬品市場の30%以上をジェネリック医薬品が占めることを目標に掲げており、ジェネリック医薬品の使用促進が図られている。

このため、有力企業が相次ぎ参入し、競争が激化している。また、海外のジェネリック医薬品メーカーも多数進出している。

2010/3/5  日本のジェネリック市場の動き 


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