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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2011/12/16 三菱化学の石油化学事業の再編状況 

三菱化学は12月8日、事業説明会を行い、@経営の課題 、A新中期経営計画「APTSIS 15」初年度進捗概況、BAPTSIS 目標、CAPTSIS 事業トピックスの説明を行った。
(APTISについては http://www.mitsubishichem-hd.co.jp/group/motto.html 参照)

その中で、石油化学については、 2015年の国内エチレン生産は500万トンまで縮小、その後も更なる縮小を懸念しており、対策を前倒しで実施するとしている。

同社の石油化学事業の再編の状況は以下の通り。

水島コンビナート:
     旭化成との一体運営とダウンサイジングによるフレキシビリティの拡大

鹿島コンビナート:
     構造改革と地域連携による競争力強化

エチレン系:EO強化(EOセンター)、PE強化(高機能化)
プロピレン系:PP強化(S&B 下記参照)
アロマ系:ベンゼン一部停止

電解・塩ビ再編(協議中)
北共同発電設備最適化検討、石油精製との連携模索

事業再編

1)SMチェーン

ポスト産構法時代には三菱油化がSMの手直し増設で鹿島で205千トン、四日市で271千トンの能力をもち、輸出価格の高騰で莫大な利益を上げた。
(2年間で500億円の利益といわれた。これを利用して時価発行増資を行い、エチレンを増設したのが、結果として同社の足を引っ張った。)

1994年に三菱化学はシェルのシンガポールPO/SM計画に参加した。

社名:Seraya Chemicals Singapore
・出資&引取比率:シェル 70
%/三菱化学 30%
・立地:Seraya島
・能力:SM 290千トン 、PO 129千トン

その後、シェルは第二期計画ではBASFと50/50JVのELLBA Easternを設立し 、SM 550千トン、PO 250千トンを建設したが、三菱化学はこれを機会にSeraya Chemicalsの出資とPO引取権をシェルに譲渡、代わりに2期分を含めたSM 38万トンの引取権を確保した。

その後の状況の変化で、SMと誘導品のPSの赤字が増大、最終的にSMチェーン全体を停止した。

 SM 

2006年5月、油化セラヤのシェルからのSM引取権を解消する方針を固めたことを明らかにした。
2008年度に油化セラヤ解散。

2009年5月、スチレンモノマー事業からの撤退を決定したと発表した。
鹿島のSM 371千トンを2011年3月に停止。
(四日市のSM 180千トンはエチレン停止時に停止済)

 PS

三菱化学は1998年10月に旭化成との50/50JVのA&Mスチレンを設立し、両社のPS事業を統合した。
両社と出光石油化学は2002年7月、
A&Mスチレンと出光のPS事業を再編・統合、合弁会社を設立することで合意し、2003年4月、PSジャパンが営業開始した。

三菱化学は2009年10月、PSジャパンから撤退した。

  統合前 処理 統合後 出資比率 新出資
比率 
A&M
スチレン
旭化成・水島   108     108   45.0%  62.07%
旭化成・千葉   207     207
三菱化学・四日市    85      85   27.5%
合計   400     400    
出光石化・市原   130  -85    45   27.5% 37.93%
合計   530  -85   445   100.0% 100.0%

 ABS

三菱化学は1996年7月1日、JSR 60%、三菱化学 40%出資の合弁会社としてテクノポリマーを設立した。
JSRの四日市にABS 20万トン、三菱化学の四日市にABS 9万トン、AS樹脂 約3万トンの能力を持つ。

三菱化学とJSRは2008年11月25日、合弁事業に関する業務提携を解消し、2009年3月31日付けで三菱化学が保有する全株式をJSRが取得し、同社をJSRの全額出資子会社とすることで基本合意したと発表した。

2)塩ビチェーン

三菱化学と東亜合成は塩ビ事業を統合、2000年4月1日にヴイテックが営業開始した。
当初は三菱化学 60%、東亞合成 40%であったが、2005年3月、損益の悪化を受け、三菱 85.1%、東亜 14.9%に変更した。

2008年5月に水島のPVCを停止、輸出を止め、四日市、川崎2工場生産による国内販売に集中した体制に移行。
2010年9月に四日市のペースト塩ビ 20千トンを停止した。

  立地 能力(千トン)
当初 2007/12 2008/5 2010/9
電解 水島 ソーダ
 135
180 180 180
VCM 水島 300 400 400 400
PVC 水島 100 110 0
四日市 110 100 100 80
川崎 180 95 120 120
合計 390 305 220 200

三菱化学は2009年5月、ヴイテックが全製造設備を2011年3月末までには停止することを決定したと発表した。

ただし、東亞合成の川崎の設備は、東亞合成がヴイテックから引取り、カネカから年間70〜100千トンの製造受託を行う。

ヴイテックは2011年9月末に解散した。

3)ナイロンチェーン

三菱化学は2005年3月末にカプロラクタムの外販事業国内販売・輸出から撤退し、1系列50千トンを同年9月末で製造停止した。なおシクロヘキサノンについては、カプロラクタム1系列停止後も生産量を維持し、国内及び中国を含むアジアマーケットへ拡販を目指した。

2009年5月、同社はカプロラクタム事業からの撤退を発表した。

工場 製品 能力  
水島 シクロヘキサン
  ↓
110千トン 2010年3月停止
黒崎 シクロヘキサノン
  ↓     
120千トン 2010年3月停止
カプロラクタム 
  ↓
60千トン 2010年3月停止
ナイロン
  
30千トン DSMへの譲渡

三菱化学は2010年2月、Royal DSMとの間で事業の交換(ポリカーボネート事業の買収及びナイロン事業の売却)で合意したと発表した。

4)界面活性剤

三菱化学は2008年12月に中期経営計画の見直しを発表した。

石化事業全般として、C3/C4誘導品は戦えるが、C2誘導品は厳しいとの見方を示し、アルファオレフィン(及び高級アルコール)とエトキシレートは2009年に停止するとした。

三菱化学は、2010年末に四日市事業所のグリコールエーテル設備を停止し、事業から撤退した。
これまで原料のEOを鹿島から輸送していたが、安全上の問題などから輸送を停止するため。

5)テレフタル酸

三菱化学は2009年2月、テレフタル酸事業の事業構造改革を発表した。
国内生産から撤退、本社機能を海外に移す。

6)PP

三菱化学と東燃化学はポリオレフィン事業を統合し、1996年9月から日本ポリケムとして事業を行った。
2003年10月、日本ポリケムとチッソの合弁会社・日本ポリプロが発足した。

日本ポリプロでは2008年に鹿島にチッソ気相法による300千トンの最新鋭プラントを建設し、同能力の老朽スラリープラントを停止した。

  2008/1   2010/12 2011 2011/12  
三菱化学・鹿島 346 +300 646 -90 556 2008  
 300千トン新設
2011/5 
 90千トン停止
東燃化学・川崎 227 -138 89   89 2009/3
 2系列 138千トン停止
三菱化学・四日市     2002/12
 37千トン停止(エチレン停止で)
三菱化学・水島 100   100   100  
チッソ・千葉 329   329 -79 250 2011/6
 79千トン停止
チッソ・四日市 80   80   80  
合計 1,082 +300
-138
1,244 -169 1,075 (+300-307)

参考 PE

PEについては、鹿島コンビナートの項で、PE強化(高機能化)を挙げているが、能力について老朽・少量設備の廃棄の動きはない。

三菱化学と東燃化学はポリオレフィン(PE+PP)事業を統合し、1996年9月から日本ポリケムが営業開始した。
別途、昭和電工と日本石油化学はPE事業を統合し、1995年10月から日本ポリオレフィンが営業開始している。

20016月、日本ポリケムと日本ポリオレフィンはポリエチレン事業について両社の事業を統合することにつき検討を開始することで合意したと発表した。

しかし公取委は、東燃化学がダウとの合弁会社の日本ユニカーの株主でもあることから難色を示したため、三菱化学が日本ポリケムの東燃持分を(東燃のPEプラント込みで)買取り、2003年9月に日本ポリエチレンが営業開始した。
    2006/10/2 日本のポリオレフィン業界の変遷-3 

現在の能力は以下の通り。(単位:千トン)

    LDPE LLDPE HDPE 合計  

日本ポリケム
三菱・鹿島 62 261 10 333  
三菱・四日市 - - - - LDPE (75)
 2004/9/末で停止
三菱・水島 66 53 94 213  
東燃・川崎     50 50  

日本ポリオレフィン
昭電・大分 123   200 323  
日本石油・川崎 94 50 121 265  
    +2     +2 工場不明
合計   347 364 475 1,186  

2011/12/17 韓国チームが癌細胞を殺す働きのタンパク質を発見 

ソウル大学生命科学部の白盛喜(Sung Hee Baek)教授をはじめ浦項工科大学、淑明女子大学で構成される共同研究チームは12月12日、癌細胞を殺す働きのタンパク質を発見したことを明らかにした。生命科学専門誌「Molecular Cell (2011/12/9)に掲載された。

P53タンパク質は損傷を受けた細胞の自然死(アポトーシス)によって癌の進行を食い止めるが、 癌患者の5割以上は、このP53タンパク質に突然変異が生じたり、その働きに異常があったりする。

今回、癌によって正常なDNAが損傷を受けると体内ではDNA損傷信号が作られ、「RORα」というタンパク質の活性化が行われ、 このタンパク質がP53タンパク質を安定化させて、究極には癌発生を抑える働きをすること明らかにした。

白教授は「今回の研究はRORαタンパク質が、P53癌抑制遺伝子の細胞死滅機能を直接コントロールし、癌抑制に中心的な役割を果たすことを初めて究明したところに意味がある。」とし、「P53を利用した癌治療剤の開発可能性を高めた」と語った。

RORαタンパク質は小脳発達に重要な発現物質であり、教授と淑明女子大学生命科学部の金教授の研究チームチーム が2010年2月、このタンパク質に大腸癌を抑制する働きがあることを初めて明らかにした。

プロテインキナーゼ酵素の活性化
     ↓
RORαのアミノ酸・セリンの
リン酸化を促進
     ↓
タンパク質のベータカテニンと結合、ベータカテインの機能を抑制
     ↓

大腸がんの抑制

同チームが大腸がん患者から確保した30組の大腸の正常な組織とがん組織で調べたところ、大腸がん組織でRORαのリン酸化が70%以上減少 していることが分かった。研究チームはRORαのリン酸化有無を大腸がんの主要診断基準として用いることができるとしている。

今回の研究は、大腸癌だけでなく他の癌の抑制課程にもこの物質が関わっていることを初めて明かしたことになる。

白教授(女性)は2000年から3年間、米カルフォルニア州立大学で研究教授を務め、2003年ソウル大教授に採用された。

白教授のチームは2006年、がん転移過程とかかわる「SUMO」タンパク質の機能を世界で初めて究明した.

レプチンは癌転移を促すタンパク質として知られているが、どんな過程を通じてそうなるかが不明であった。
チームは次の点を明らかにした。

SUMOタンパク質がレプチンと結合すると、がん転移を阻む遺伝子(KAL1)が働かなくなる。
レプチンからSUMOが落ちると、KAL1が活性化し、癌拡散を阻止する。

レプチンとSUMOの分離にSENP1が酵素の役割を果たす。

白教授は、「正常の細胞に影響を与えずにがん細胞のみを選んで攻撃する新しい概念の抗がん剤の開発に応用できるだろう」と述べた。
 

白教授は、世界初の癌転移抑制遺伝子と調節のメカニズムを解明し、抗がん治療の新たな転機を作ったことが功績として認められ、2011年9月に「韓国ロレアルーユネスコ女性生命科学賞」振興賞を授与された。


2011/12/19  公取委、新日本製鉄と住友金属工業の合併を承認 

公取委は12月14日、新日本製鉄と住友金属工業の合併計画に関し、問題とした2点について両社の問題解消措置を前提とすれば、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認め、審査を終了した。

公取委は本年5月31日に本計画の届出を受理して第1次審査を開始し、6月30日に第2次審査を開始した。
両社から12月9日に問題解消措置に関する変更報告書の提出を受けた。

なお、公取委は6月14日に企業合併の新たな審査指針(ガイドライン)を公表した。

審査の目安となるシェアについて、国内だけでなく世界的な競争状況を勘案する。
また、市場規模が縮小している場合は合併を認めやすくすることも明記した。

   2011/6/21 公取委、企業合併の審査指針を公表 

公取委は本件について、このガイドラインの公表前の5月31日に審査を開始しているが、改正後の基準を前倒しで適用した。

また、7月施行の「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」改正では、「公正取引委員会との協議制度」が創設され、「主務大臣が計画を認定をしようとするに際して、当該計画に従って行おうとする措置が、事業者の営む事業の属する事業分野における適正な競争が確保されないおそれがある場合として政令で定める場合に該当するときは、あらかじめ公正取引委員会に協議するものとすること」となった。

新日本製鉄と住友金属工業は7月に改正産活法の適用を経産省に申請した。

ーーー

公取委の審査では、@無方向性電磁鋼板、A高圧ガス導管エンジニアリング業務、B鋼矢板、Cスパイラル溶接鋼管、D熱延鋼板、EH形鋼の6品目が取り上げられた。

いずれも合算シェアは第一位で、水平型企業結合のセーフハーバー基準に該当しない。
競争を実質的に制限することとならない範囲:セーフハーバーの指標はHHI2,500超の場合はHHIの増分150以下)

公取委は@、Aのみを問題とし、他については「競争を実質的に制限することとはならない」とした。
@、Aについては、両社の問題解消措置を認めた。

以前の評価と比べると、非常にフレキシブルになっている。

@無方向性電磁鋼板

平成22年度シェア
順位 会社名 シェア
新日鉄 約40%
A社 約40%
住友金属 約15%
  輸入 約 5%
 合計 100%
合併後
 HHI     約 4,600
 HHI増分 約 1,100
約55%

  評価:競争を実質的に制限

・有力な競争事業者が存在するが、十分な供給余力を有しない。
・高グレードの製品については、輸入圧力は認められない。
・低グレードの製品については、一定程度輸入があるが、十分な品質でなく、安定調達の面で不安。
・調達先メーカーの変更は容易でなく、需要者からの競争圧力も認められない。

 問題解消措置:

@ 合併後5年間、現在住友金属が販売する全グレードを住友商事にフルコストベースで販売。
A 住友商事に対し、住友金属の国内ユーザー向けの商権を譲渡。
B 合併後5年間、1事業年度に1回、前記措置の実施状況を公取委に報告。

A高圧ガス導管エンジニアリング業務

平成18年度〜22年度シェア
順位 会社名 シェア
B社 約35%
日鉄パイプライン 約30%
住友金属パイプエンジ 約30%
  その他 0-5%
 合計 100%
合併後
 HHI     約 4,900
 HHI増分 約 1,800
約60%

 評価:競争を実質的に制限

・入札に参加する事業者は基本的に高炉系エンジ会社のみで、入札参加事業者は3社から2社になる。
・参入圧力が働いていない。
・需要者からの一定程度の競争圧力はあるが、ガス会社等は競争性を高めるための施策を十分に持たない。

 問題解消措置:

(1) UO鋼管の安定供給
@ 新規参入者から要請があれば、子会社に供給する場合と実質的に同等・合理的条件でUO鋼管を提供。
A 上記措置について合併の日までに周知。5年間、実施状況を公取委に報告。

(2) 自動溶接機の供給及びその取扱いに係る技術指導
@ 新規参入者から要請があれば、合理的な条件で自動溶接機の新品を譲渡し、or 中古品を譲渡・貸与。
A 新規参入者から要請があれば、自動溶接機を取り扱うに必要な技術指導を行う。
B 5年間、実施状況を公取委に報告。
 

B鋼矢板

平成22年度シェア
順位 会社名 シェア
新日鉄 約40%
C社 約30%
住友金属 約25%
D社 0-5%
  輸入 0-5%
 合計 100%
合併後
 HHI     約 5,100
 HHI増分 約 1,900
約65%

  評価:競争を実質的に制限しない。

有力な競争事業者が存在し、十分な供給余力を有する。
・参入圧力や隣接市場である代替工法からの一定程度の競争圧力が働いている。
    鋼矢板の価格が5〜10%上昇した場合、代替的な工法に切り替わる可能性
・需要が縮小していく中で需要者からの競争圧力が働いている。(新ガイドライン)

Cスパイラル溶接鋼管

平成22年度シェア
順位 会社名 シェア
新日鉄 約40%
E社 約30%
住友金属 約15%
F社 約15%
 合計 100%
合併後
 HHI     約 4,000
 HHI増分 約 1,300
約55%

 評価:競争を実質的に制限しない。

・有力な競争事業者が複数存在し、供給余力を有する。
・隣接市場からの競争圧力が一定程度働いている。

D熱延鋼板

平成22年度シェア
順位 会社名 シェア
新日鉄 約30%
G社 約20%
H社 約10%
住友金属 約10%
I社 約5%
J社 約5%
K社 0-5%
L社 0-5%
M社 0-5%
10 N社 0-5%
  輸入 約15%
 合計 100%
合併後
 HHI     約 2,200
 HHI増分 約   500
約40%

 評価:競争を実質的に制限しない。

・有力な競争事業者が複数存在し、供給余力を有する。
・輸入圧力や需要者からの競争圧力が十分に働いている。
   関税は無税、韓国や中国からの輸入品は国内品に比べ安価、流通上の問題も存在しない。

◎国内市場には、新日鉄が10%超・単独第1位の議決権を持つ中山製鋼所、日新製鋼、大同特殊鋼がいる。
  これらは実態から結合関係があるとは認めらなかった。(シェア計算に含めない)

EH形鋼

平成22年度
順位 会社名 シェア
新日鉄
(含 トピー工業、合同製鉄)
約30%
O社 約20%
P社 約20%
Q社 約15%
住友金属
(含 住金スチール)
約15%
  輸入 0-5%
 合計 100%
合併後
 HHI     約 2,800
 HHI増分 約  1,100
約40%
 

合算シェアは45%となるが、公取委は約40%としている。 トピー工業、合同製鉄のシェアを外したか?

 評価:競争を実質的に制限しない。

・有力な競争事業者が複数存在し、これらの事業者は十分な供給余力を有している。
・新日鉄とO社は活発な競争をしており、合併後もその構図に変化はないと考えられる。
・合併後も、合併会社とトピー工業・合同製鉄との間には一定程度の競争関係が維持されると考えられる。
・輸入圧力、隣接市場からの競争圧力が一定程度働いている。
・需要者からの競争圧力が一定程度働いている。


2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略 

LyondellBasellは12月8日、投資家説明会を開催し、現状と今後の戦略を説明した。

今後の成長戦略のなかで、SinopecとのJVで中国でのPO/TBA計画のFS実施を決めたことや、米国で安価なエタンを使用したエチレンの増強などを明らかにしている。

1)中国 PO/TBA計画

LiondellBasellはSinopecとの間で、浙江省寧波市にワールドスケールのPO/TBAプラントを建設するために共同でFSを実施する契約を締結したことを明らかにした。
新しいJVプラントの最終的なスコープ、建設費、スケジュールを決める。

両社は50/50JVのNingbo ZRCC Lyondell Chemical を持ち、シノペック鎮海煉油化工(ZRCC)の寧波市鎮海地区のエチレン100万トンのコンプレックスの中にSM/POとPGプラントを持っている。

エチレン 1,000千トン
HDPE/LLDPE  450 千トン
PP  300 千トン
MEG  650 千トン
BTX  500 千トン
Butadiene  150 千トン
SM (jv)  600 千トン
PO (jv)  280 千トン
PG (jv)  100 千トン

2007/2/26 Lyondell とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生産

今回は既存のPO/SMに加え、PO/TBAを建設するもの。

Lyondellは世界のPO技術リーダーで、拠点は次の通り。

地区 場所 能力
(千トン)
併産 備考
米国 Bayport, Tex   545 TBA  
Channelview, Tex   530 SM  
欧州 Fos-Sur-Mer, France   220 MTBE  
Botlek, the Netherlands   250 TBA  
Maasvlakte, the Netherlands   318 SM Lyondell/Bayer 50/50
アジア 日本オキシラン(千葉)   181 SM 住化 60%/Lyondell 40%
Ningbo ZRCC Lyondell Chemical   280 SM Lyondell/Sinopec 50/50

ーーー

POの製法は以下の通り。

1)塩素法
従来からの製法で
プロピレンに塩素と水を反応させ、生成したクロルヒドリンを水酸化カルシウム或いは水酸化ナトリウムで処理する方法。(併産物:塩化カルシウム or 塩化ナトリウム)

日本では現在、旭硝子(鹿島)とトクヤマ(徳山)が生産している。

2)ハルコン法(→LyondellBasell)
イソブタン又はエチルベンゼンを酸素と反応させて得られたハイドロパーオキサイドでプロピレンを酸化する方法で、イソブタンを使った場合はTBA or MTBE、エチルベンゼンを使った場合はスチレンモノマーを併産する。

3)住化新法
上記2)の方法でイソブタン或いはエチルベンゼンの代わりにイソプロピルベンゼン(クメン)を用い、生成するクミルアルコールを脱水/水素化してクメンに戻すことにより、併産物を生成しない新しいプロセスの構築に成功した。

4)過酸化水素法
過酸化水素を酸化剤とする方法。

2006/3/24 「ダウとBASF、POを新製法で生産」 
 

LyondellBasellでは現状の各製法のシェアを以下の通りとみている。

2) 米国のエチレン、プロピレン 

同社の米国の現状は以下の通り。

エチレン:能力 9,600百万lbs(4,360千トン)で北米1位
      原料はエタンが3/4、ナフサ/コンデンセートが1/4。
プロピレン:1,500百万ポンド(680千トン)
        Methathesisが1,000百万ポンド、リファイナリーグレードが500百万ポンド。
PE:2,640千トン(北米3位)
PP:2,000千トン(北米1位)

計画は以下の通りで、低コストのエタンをフル利用する。
@Channelviewではエタンの処理能力を500百万ポンド増強し てエチレンコストの低減を図り、合わせて、エチレン増強も検討する。(2012年)
A同じくChannelviewではMethathesis新設でプロピレン500百万ポンドを 増産(同量のエチレンを使って)(2014年)
BLa Porteでは低コストのエタンを使い、850百万ポンドを増設(2014年)
C
Midwestでデボトルネッキングでエチレン/プロピレンを100百万ポンド増強(2013年)

(単位:百万ポンド:1ボンドは1/2.2kg)
  能力 原料 計画
Channelview, TX  3,850 flexible +α 
原料エタン増強
La Porte, TX 1,740 Gulf Coast NGL +850
Corpus Christi, TX 1,700 Flexible  
Morris, IL 1,250 Midwest NGL エチレン/プロピレン
    +100
Clinton, IA 1,050 Midwest NGL
エチレン合計 9,600    
プロピレン 1,000 Methathesis Channelview +500
500 Refinery grade  

3)メタノール再稼働

低コストの天然ガスを活用し、Channelviewの年産780千トンのメタノール設備を再稼働する。

ーーー

LyondellBasellの事業概況については、投資家説明会資料を参照。

  1. Meeting Agenda
  2. Welcome and Introduction – Jim Gallogly, CEO 
  3. Perceptions and Reality
  4. Olefins & Polyolefins - Americas
  5. Olefins & Polyolefins - Europe, Asia & International and Technology 
  6. Intermediates and Derivatives
  7. Refining and Oxyfuels
  8. Financial Review
  9. Wrap Up and Closing – Jim Gallogly, CEO

2011/12/21 富士フイルム 超音波診断装置の大手 SonoSite, Inc.の買収合意 

富士フイルムは12月15日、携帯型超音波診断装置の大手企業SonoSite, Inc.をTOBにより友好的に買収することについて合意した。
SonoSiteの発行済普通株式の総数を総額約995百万米ドルで取得する。

SonoSiteは携帯型超音波診断装置のリーディングカンパニーで、ワールドワイドで高いシェアを持つ。

特に、
患者がいる医療現場で、直接医師が治療方針の判断・処置を行うPoint Of Careにおいて、医療現場における医師のニーズを的確にとらえて、他社に先駆けそのニーズにこたえる機能を製品に搭載することにより、超音波診断装置の新たな応用分野を開拓してきた。

また、装置の超小型軽量化に寄与するASIC(特定用途向け集積回路)の設計技術を持つ技術力の高い会社で、高精細な「高周波プローブ」や新たな診断価値を生み出す「光超音波技術」など、次世代の超音波診断装置の開発において優位性のある高い技術も保有している。

超音波診断装置は、体表にプローブを当てて超音波を発生させ、体内で反射した超音波を受信し、画像データとして処理することで、臓器・血管・神経などの様子を可視化することができ、非侵襲で、かつ、大掛かりな設備が不要な画像診断装置。

また、超音波検査は、腹部、頸部、心臓、乳房、血管、神経などさまざまな部位をリアルタイムで診ることができる非常に汎用性の高い検査であり、X線画像診断が不得意とする軟部組織の描写力に優れるので、X線画像診断と極めて高い補完関係にある。

超音波診断装置の市場は、ワールドワイドで5000億円弱/年と、全医療画像診断装置で最大規模となっている。

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富士フイルムは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野として位置付け、「予防〜診断〜治療」の全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーを目指した事業展開を進めている。

2006/11/2   富士フイルム、超音波画像診断分野に参入 、メディカル・ライフサイエンス事業拡大
2008/2/19   富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す
2010/2/22   富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入
2010/9/3   富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携  (再生医療)
2011/2/28   富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収
2011/8/2   富士フィルム、ジェネリック医薬品のDr. Reddy’s Laboratories と業務提携 

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上場廃止の声も聞こえているオリンパスは内視鏡事業で高いシェアを有しており、 富士フィルムもこの事業を買収する可能性がある企業として名前が挙がっている。 

富士フイルムの古森重隆社長は12月16日の会見で、質問に対し、「オリンパスの件は、まだ、内容が確定されていない。第三者委員会が調査しており、どういう背景があるのか、どういうことだったのか確定していない段階で、我々がとやかく言うことは時期尚早」と述べた。

オリンパスにはソニーやパナソニックも関心を抱いている。
パナソニックはオリンパスとともにデジカメの「マイクロフォーサーズシステム規格」を策定し、関連する要素技術とキーデバイスを共同で開発している。


2011/12/21  番外編 化学年表「日本および世界の化学史」 

日本化学工業協会はホームページに、化学年表「日本および世界の化学史」を掲載している。

10月27日〜28日に学術総合センターにて開催された「世界化学年記念特別シンポジウム・講演会」の化学産業展示コーナーでパネル展示されたもので、江戸時代の1774年から現在に至るまで、化学の発明・発見と初事業化などを日本と世界にわけてまとめている。

http://www.nikkakyo.org/documentDownload.php?id=4636


2011/12/22 ロシアがWTO加盟 

世界貿易機関(WTO)は12月16日の公式閣僚会議で、ロシアのWTO加盟を正式に承認した。
1993年のロシアの加盟申請以来、18年後の承認となった。実際の加盟は2012年夏になる見通し。

中国は10年前の2001年12月11日に加盟した。(加盟申請は1995年10月)
  2011/12/13 中国、WTO加盟から10年

領土問題でロシアと対立するグルジアが拒否権を行使してきたが、債務危機と景気低迷に直面する欧米諸国が、WTO非加盟国として最後の大国であるロシアの加盟を強く求め、スイスの仲介でグルジアが態度を軟化させた。

グルジアの 南オセチアでは、多くのオセット民族がグルジアからの分離を希望し、グルジアとの間で度々紛争が起きている。
2008年8月には、南オセチアをめぐりロシアとグルジアの間で武力衝突があった。
南オセチア側は独立国として、グルジア側はグルジアの自治州としている。

ロシアの加盟で、加盟国・地域の貿易は世界全体の98%に達する。

ロシアは関税の一方的引き上げや輸入差し止めが目立つが、枝野幸男経済産業相は、ロシアのWTO加盟により「日本にとって地理的に近い国が国際的なルールに入ることで経済関係が強化される」と期待を示した。

加盟後のロシアの上限関税の平均は現在の10.0%から7.8%に下がる。
農産品は13.2%から10.8%、工業製品は9.5%から7.3%になり、コンピューターなどIT製品は税率ゼロにする。
金融などサービス貿易では116分野で段階的に規制を緩和し、流通業は外資100%の企業進出を容認する。
外国銀行も子会社の設置が可能になる。


ーーー

WTOは本年10月の一般理事会でバヌアツの加盟を承認しており、12月16日のロシア加盟承認に続き、12月17日の公式閣僚会議でサモアとモンテネグロの加盟を承認した。

加盟国の増加は2008年6月のカボヴェルデ以来で、今回、加盟国・地域は4つ増え、157になる。

2008/6 加盟 2011/10 加盟承認
2011/12/17 加盟承認 2011/12/17 加盟承認
 

2011/12/23 EU、ウクライナとの自由貿易協定などの締結見送り 

EUとウクライナは12月19日、キエフで首脳会議を開いたが、目指していた自由貿易協定を含む連携協定の調印を見送った。

 

EUとウクライナの自由貿易協定交渉は、2008年2月5日にウクライナのWTO加盟手続が終了したことを受け、同年2月18日に開始された。

「EUはウクライナの(他を遥かに凌ぐ)最大の輸出先であり、経済関係の緊密化を通じて通商と投資を増大させるにあたって、明白なパートナーである。」(EU発表)

2009年9月には協定名称を「連合協定 (Association Agreement)」とし、政治・経済面の協力強化を図るものとすることが決まった。

別途、2009年5月にはウクライナを含む旧ソ連6か国(他にアルメニア、アゼルバイジャン、グルジア、モルドバ、ベラルーシ)とEUの間で「東方パートナーシップ」が発足した。関税や査証の撤廃など、協力関係の強化のために定期的に会合を開いている。

2010年3月、ヤヌコーヴィチ大統領はウクライナ外交にとって欧州統合が優先課題であることを改めて表明した。

ウクライナはFTA創設合意、連合協定、EU査証廃止の3つの目標を掲げ、2011年9月の東方パートナーシップ首脳会合において、包括的FTA創設交渉は2011年中の終了が可能と確認された。
(EU査証廃止についても、2012年の欧州サッカー選手権大会までに実現すべく、積極的に国内改革及び欧州側との交渉を進めている。)

今回のキエフで首脳会議で、自由貿易協定を含む連携協定の調印を行う予定であった。

EUのファンロンパイ大統領は、連携協定の交渉は ほとんど終わっているとし、署名するかどうかはロシアとの天然ガス取引をめぐり職権乱用罪で禁錮7年の判決を受け控訴中のティモシェンコ前首相に対するウクライナ側の扱いにかかっていると指摘し、前首相の釈放がなければ署名は難しいとの認識を示した。

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ウクライナの首都キエフの地区裁判所は10月11日、ロシアとの天然ガス取引を巡り職権乱用罪を問われたティモシェンコ前首相に禁錮7年の有罪判決を言い渡した。

2009年1月1日、ロシアの独占天然ガス会社 Gazprom は、ウクライナへの天然ガス供給を完全に停止した。

両国は、20億ドル以上とする天然ガス供給の代金未払いや債務、滞納の罰金支払いの調整及び2009年からの価格について年末から協議していたが、31日までの交渉が不調に終わったため、強硬措置に訴えた。

2008年のウクライナ向け天然ガス価格は179$/1000m3 だが、ガスプロムは2009年の価格を一気に「国際価格」の418ドルに引き上げた。
背景には、グルジア紛争の際に、ウクライナのユーシェンコ大統領がグルジアに戦車やミサイルなどを提供したとの疑惑や、ウクライナのNATO加盟問題など、ウクライナとロシアの対立があるとみられる。

ウクライナ向け天然ガス供給停止により、天然ガス需要の約25%をロシアに依存し、その7割をウクライナを経由する欧州にも混乱が拡大した。

2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

1月18日、ロシアのプーチン首相とウクライナのティモシェンコ首相(女性)がガス価格の引き上げに大筋で合意、19日に今後10年間のヨーロッパ向けガス輸送と、ウクライナへのガス供給を確認する合意文書に調印した。

 ・2009年のガス料金は欧州向け価格より20%割り引く。
 ・2010年以降のガス料金は欧州並とする。(石油価格と連動)

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2010年にティモシェンコ前首相の政敵のヤヌコビッチが前首相との決戦投票で大統領になると、当局はティモシェンコ前首相が2009年にロシアが求めるガス価格の引き上げに応じ、15億フリブナ(約140億円)の損害を国庫に与えたとして 職権乱用罪で起訴し、2011年8月には審理妨害で逮捕した。

ウクライナの裁判所は政権の強い影響下にあるとの指摘が多く、禁錮7年の判決も検察側の求刑通りとなった。
前首相は刑期終了後、3年間公職に就くことも禁じられた。15億フリブナ(約140億円)の賠償も命じられた。

ティモシェンコ前首相は法廷で「判決は裁判官ではなくヤヌコビッチ大統領が下している」と批判し、控訴した。
大統領による政敵排除のための政治的リンチだと述べている。

ウクライナでは2012年秋に議会選が予定されており、親欧米派のティモシェンコ前首相の参加を阻止したい現政権の思惑が働いているとされる。3年間公職禁止はこのためとみられている。
 

EUは有罪判決の背景にヤヌコビッチ現政権との政治対立があるとの見方を強め、判決を批判する声明を発表した。

ウクライナによる民主主義基準の遵守に一定の疑念が生じている旨懸念すると表明し、「司法システムの全面的な改革」や「政治的動機による裁判や恣意的な裁判への対策」が不可欠だと強調した。

米国や人権グループも批判している。

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一方でロシアは、ウクライナとEUとの連携協定交渉の進展に合わせ、ウクライナを自国の影響下に置くため、ウクライナにガス供給価格を一部引き下げる譲歩をした。ロシア ・カザフスタン・ベラルーシで結んでいる関税同盟への参加も求めている。

上記の契約では2012年の天然ガス価格は原油価格に連動して416ドル(1000m3当たり)に上昇する見通しで、ウクライナは約224ドルへの値下げを要望している。

しかし、ガスプロムは条件としてウクライナ国内のガス輸送システムへの50%の出資受け入れを求めているとされる。ウクライナ側は出資比率を3分の1にとどめたい意向で、溝が残っている。

この交渉の最中に、2009年にティモシェンコ首相がロシアのプーチン首相と締結した天然ガス契約が違法と判断され、ロシア側は強く反発、プーチン首相も、「 契約に異議を唱えるのは危険で逆効果」と指摘した。

ウクライナは今後、EUとロシアとの双方と厳しい交渉をもとめられる。

ーーー

なお、ウクライナはNATO参加を希望、1997年には「ウクライナ・NATO間の特別な関係に関する憲章」に署名し、NATOとの関係強化を明確にした。

2008年4月のNATOブカレスト・サミットにおいてウクライナの将来の加盟については合意された。

しかし、2010年2月に就任したヤヌコーヴィチ大統領は、ウクライナはNATOに加盟する計画を有していないと発言し、2010年7月には、ウクライナの地位を「非同盟」と規定し 、あらゆる軍事政治ブロックへの参加を拒否する内容の「ウクライナの内外政方針に関する」法律が発効した。
これにより、ウクライナのNATO加盟は不可能となった。


2011/12/23 Nature誌の「今年の10人」

英科学誌 Nature は12月21日号で「今年の10人:Ten people who mattered this year」を掲載した。
 

そのなかに、東京大学アイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授が選ばれた。
 「フクシマのうるさ方(
Fukushima's gadfly)」のサブタイトルがついている。 

教授は放射線体内被曝の専門家で、7月27日の衆議院厚生労働委員会で意見を述べた。

「どうやって本当に除染をやるか。7万人の人が自宅を離れて彷徨っているときに国会は一体何をやっているのですか。

他の9人は以下の通り。

Dario Autiero: Relativity challenger

ニュートリノ振動を検証する国際共同実験(OPREA実験)のコーディネーター

研究グループは、ニュートリノよりも早い可能性があると発表 した。

Sara Seager: Planet seeker

  太陽系外惑星の研究を行っているマサチューセッツ工科大学の天文学者 (女性)

Lisa Jackson: Pollution cop

米国EPA長官(女性)

Essam Sharaf: Science revolutionary

エジプト暫定内閣の元首相、カイロ大工学部教授の経歴

デモ隊と治安部隊の衝突が続くなか、11月21日、 「一連の混乱は遺憾」として、暫定統治に当たる軍最高評議会に対し辞表を提出した。

Diederik Stapel: Fallen star

長期にわたる論文データ捏造が話題となった社会心理学者

データのねつ造は過去10年近くにわたり繰り返し行われていたことが判明した。

Rosie Redfield: Critical enquirer(女性)

NASAの「リンの代わりにヒ素を使う生物発見」の論文をブログで批判したカナダ人微生物学者

NASAはこの会見を「宇宙生物学上の発見」と予告していたが、このことから「宇宙人発見か」と誤解され、話題になった。
「この論文の著者は、単に無能な科学者なのか。それとも、『地球外生命を発見した』と大声で叫びたがるNASAの片棒をかついでいるのだろうか」

Danica May Comacho: Child of the times

「70億人目の赤ちゃんたち」のひとり

Mike Lamont: The Higgs mechanic

欧州原子核研究機構(CERN)の技術者

CERN
は12月13日、大型粒子加速器「LHC」を使って、あらゆる物質に質量を与えたと考えられる仮説上の素粒子「ヒッグス粒子」の存在を確認する手がかりを得たと発表した。

John Rogers: Tech exec

「表皮電子装置」を開発した物理学者で起業家

皮膚と同じくらい柔らかく、重さはゼロに近い。皮膚に貼ればワイヤレスでその人の脳や心臓、筋組織の活動を監視でき、喉に貼れば、音声作動式のコンピューターゲームを90%以上の精度で操作できるという。
 


2011/12/24   中国の「今年の漢字」 

2011年の日本の「今年の漢字」は「絆」となった。

2007年 「偽」 (食品表示偽装、年金記録問題、TV番組捏造問題)
2008年 「変」 (オバマ次期大統領のChange !)
2009年 「新」 (民主党政権発足、オバマ新大統領就任)
2010年 「暑」 (記録的猛暑)

 

中国でも2006年から「今年の漢字」が発表されている。

昨年は物価や利息、不動産の値上がりを表す「漲」(2007年に次いで2回目)であったが、本年は「控」となった。

「控」はコントロール、抑制の意味で、昨年の「漲」の流れを受け継ぎ、物価上昇を抑えるという政府の努力と国民の期待を反映したものとされている。

これまでの漢字は以下の通り。

2006年 「炒」(マスコミを利用した大々的な宣伝や投機的な売買)
2007年 「漲」(物価や株、不動産の値上がり)
2008年 「和」(北京五輪の開催)
2009年 「被」(させられる、受身的な生活)
2010年 「漲」(物価や利息、不動産の値上がり) 

合わせて、「今年の単語」と「中国メディア十大新語」も発表された。

「今年の単語」は中国の単語が「傷不起」(「つらいよ!」「大変!」の意味)、世界の単語が「欧債危機」(欧州債務危機)となった。

「2011年度中国メディア十大新語」は以下の通り。

「傷不起」   「つらいよ!」「大変!」
「起雲剤」    食品添加物。台湾品に可塑剤成分DEHP含有が見つかり、大問題になった。
虎媽」   中国式のスパルタ教育ママ(イェール大学 の中国系チュア教授の超スパルタ教育が話題に)
「政務微博」   政府公式マイクロブログ
「北京精神」    北京市発表の愛国・創造・寛容・道徳を主とする北京魂
「走転改」    組織の末端を歩き、習わしを変え、体制を改めると銘うった政府の活動
「微電影」   短期間・低予算制作の短編映画
「加名税」   不動産名義追加税。結婚後に夫婦双方の名義に変更する場合にかかる税金
「淘宝体」   大手ショッピングサイト・淘宝(タオバオ)で、出品者が商品説明文で使う独特の言い回し
「雲電視」   クラウドコンピューティングを利用したテレビ

2011/12/24 Dowの中国系の元研究者、経済スパイ法で有罪 

元Dow AgroSciencesの研究者のKexue Huang(黄科学)は12月21日、経済スパイ法(Economic Espionage Act)違反で 7年3か月の禁固刑の判決を受けた。 

黄科学は中国で生まれ、米国の永住権を持つカナダ国民で、吉林農業大学で生物学を専攻し、日本で博士号を取得した後、Texas A&M University、Rice Universityで研究生活を送り、2003-08年にDow AgroSciencesに勤務し、殺虫剤の開発に従事した。

2008年にバイオ技術者としてCargill に移った。

Dow AgroSciences時代に秘密情報を少なくとも2人に流した。そのうちの一人は湖南師範大学の研究者。

Cargill でも同社の秘密情報(新しい食品の製造のための主材料)を盗んだことを認めている。

付記

2012年1月12日、元Dowの研究員であったWen Chyu Liu (刘文秋:通称 David W. Liou) がDowの塩素化塩ビの秘密を盗み、中国企業に売った罪でルイジアナ州Baton Rougeの連邦地裁で禁固5年の判決を受けた。

1965年から1992年までDowに勤務していた。

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同様の事件はこれまでに多数起こっており、DuPontでは元社員二人が有罪になっている。

2007年に中国生まれで、後に米国の市民権を取得したGary Min(闵盖里)が同社の最も有名な製品(複数)についての推定4億ドルの価値のある情報をデータベースから盗み、懲役18ヶ月の判決を受けた。

2009年にはDuPont は同社の有機ELに関する企業秘密を盗んで母校の北京大学に持ち帰ろうとした中国生まれの研究員Hong Meng (孟鸿)を解雇した。孟鸿は有罪を認め、2010年10月に禁固14か月となった。

2009/9/12 DuPont、産業スパイを摘発


2011/12/24 米科学誌Science、2011年の科学十大成果を発表 

米科学誌Scienceは12月23日号で、2011年のBreakthrough of the Year を発表した。

付記 Nature News Blogに各成果の簡単な解説と、詳細記事の案内がある。

1位は HIV Treatment as Prevention で、抗レトロウイルス薬 (Antiretroviral drugs) 療法でパートナーへのHIV感染リスクを96%減らせることを示した臨床試験が選ばれた。

本年5月に、米ノースカロライナ大医学部のMyron Cohen所長率いる国際研究チーム(HIV Prevention Trials Network)が発表した。

日本から2つが入った。

Hayabusa

小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワから持ち帰った微粒子の分析で、太陽風が小惑星を変色させることが分かった。
The samples helped to settle the mystery about why asteroids are a different colour than most of the meteorites that fall to Earth (answer: the solar wind has discoloured the asteroids).

Photosystem II

神谷信夫・大阪市立大教授や沈建仁・岡山大教授らが、植物の光合成を担うタンパク質の働きを解明した。

光合成のうち、酸素と電子などを発生させる水分解の過程は、葉緑体に含まれるタンパク質複合体で行われていることが判明しているが、沈教授らが藻類からタンパク質複合体だけを取り出して純度の高い結晶を精製。これを神谷教授らが大型放射光施設「スプリング8」に持ち込み、構造を解析した。

タンパク質複合体が水を分解する根幹部分には、マンガン原子4個、カルシウム原子1個、酸素原子5個が歪んだ椅子の形に結合していたという。

同じ化学構造の触媒を人工的に作ることができれば、「人工光合成」として太陽光から電気を効率よく取り出せる可能性が生じるといい、神谷教授は「エネルギー問題を一気に解決する足がかりになれば」と話している。 

その他は以下の通り。

Ancient Interbreeding

2010年に発表されたヨーロッパ人とアジア人がDNAの2〜6%をネアンデルタール人から受け継いでいるとの研究成果に引き続き、ネアンデルタール人との性交渉が現生人類の免疫機能を高めたことが新分析で分かった。

Pristine Gas

ビックバンから数億年後の初期宇宙に見られるような原始的な水素ガス雲が発見された。

Microbiome

人間の腸に宿る微生物には、高たんぱく食を好むものと野菜を好むものの2種類がいることが分かった。

Malaria Vaccine

アフリカで大規模な臨床試験が行われている世界初のマラリアワクチン「RTS,S」について、子供の感染リスクが半減したとする有望な初期結果が得られた。

Exoplanets

深宇宙で不思議な太陽系外惑星(主星を周回する密集した6個の大型惑星、主星の自転方向と反対の向きに公転する巨大ガス惑星、主星を持たないと見られる10個の惑星、主星が2つある惑星など)の発見が相次いだ。

Designer Zeolites

多孔質の天然鉱石ゼオライトの孔の大きさを変更し、薄くて安価な皮膜を開発した。

Senescent Cells

マウスの実験で、老化細胞を体内から取り除くと白内障の発症や筋力の衰えが遅れることが分かった。古い細胞を除去すると生活の質を向上できる可能性が示された。


2011/12/26   2011年 回顧と展望  


2011/12/27  Dow、トルコでカーボンファイバー製造販売のJV設立 

Dowとトルコのアクリル繊維メーカーのAksa Akrilik Kimya Sanayiiは12月20日、カーボンファイバーと誘導品を製造販売するJVを設立する契約を締結した。

両社は6月にカーボンファイバーと誘導品を製造するJV設立の覚書を締結したと発表している。

2011/6/17 SABIC、カーボンファイバーの技術導入;DowもJV設立の覚書 

今回の発表では、出資は50/50で、投資額は(将来の第三者の出資も含め)5年間で10億米ドルに達する見込み。

JV はYalova市にあるAksaの 既存のカーボンファイバープラントを拡張、大規模プラントを建設する。
Dowではカーボンファイバー複合材料の市場は世界で100億ドルだが、2022年までに400億ドルに達すると予想している。

能力は明らかにしていないが、Aksaの既存プラント能力は年産1,500トン、現在第2系列2,000トンを建設中で、2012年には合計3,500トンとなる。

Aksaでは将来の目標能力を15,000トンとしており、これをJVで達成しようとしている可能性がある。

なお、PAN系炭素繊維では東レ、東邦テナックス、三菱レイヨンの3社が海外の拠点を持ち、世界市場のほとんどを押さえている。

    現在の能力

東レ  17,900トン 2013/1 21,100トン 
東邦テナックス 13,500トン    
三菱レイヨン 8,150トン    
3社 計 39,550トン    

2006/9/9 炭素繊維

昨日の「回顧と展望」に記載の通り、日本の3社は長年にわたる技術の積み重ねと、日米欧に製造拠点を持つ供給体制で、サプライチェーンの中での「主導権の確保」を行っており、DowやSABICが頑張っても、追い付くのには時間がかかるであろう。

ーーー

Aksa は、化学、エネルギー、不動産、繊維の各部門で活躍するAKKÖK Group の一員で、アクリル繊維(カーボンファイバー原料)の製造能力は年産308千トンで、1プラントでは世界最大。世界市場で14.2%以上のシェアを持っている。
同社
1968年に設立され、Yalova市に1971年に年産5千トンのアクリル繊維プラントを建設、1986に100千トンに、1997に200千トンに拡大、2007年に現在の能力に引き上げた。

売上高は2010年が850百万ドルで、2011年には900百万ドルを超える見込み。


2011/12/27 九州電力玄海4号機が停止、稼働原発は6基のみに 

九州電力の玄海4号機が12月25日深夜、定期検査のため運転を停止、これにより、九電管内の全6基の原発が止まった。
再稼働がなければ、来年春には全原発が停止することとなる。

現在、全国の54基中、稼働は以下の6基のみ。
  北海道電力 泊3号
  東京電力   柏崎刈羽5号(2012/3定修)、6号(2012/4定修)
  関西電力   高浜3号(2012/2/20定修)
  中国電力   島根2号(2012/1/下旬定修)
  四国電力   伊方2号(2012/1/下旬定修)

 参考 2011/6/13 原発の再稼働問題


このうち、泊3号機は3月7日に定修を終えて原子炉を起動し、調整運転に入ったが、営業運転開始の手続きをせず、5か月間運転を続け、問題となった。(関西電力大飯1号機も同様で、3月10日に調整運転に入った。)

2011/7/13 原発の調整運転問題

政府は調整運転中の泊原発3号機について、「最終検査は再稼働ではなく、運転継続である」とし、ストレステストは運転中の原発を対象にした2次評価のみを実施するとした。
これを受けて、北海道電力は泊3号機の定検の最終検査を国に申請、8月17日に営業運転を開始した。

本年3月7日からの運転のため、来年春には定修入りとなる。

なお、同様に調整運転中であった大飯1号機は7月16日に緊急炉心冷却システムを構成するタンクの圧力が低下するトラブルがあり、保安規定に基づき原子炉を手動停止した。
再稼働にはストレステストが必要となる。

ーーー

停止中の原発の再稼働には、7月11日に政府が発表した再稼働の可否などを判断する新たな安全評価が必要となる。

1) 一次評価(先行実施)
   対象:定期点検中で起動準備が整った原発
   目的:再稼働の可否を判断
   内容:大規模な地震や津波など設計上の想定を超える事象に対し、
      重要な施設、機器などがどの程度の安全度を有しているかを評価

2) 二次評価
   対象:全原発
   目的:運転継続または中止の必要性などを判断
   内容:欧州のストレステスト
実施状況や福島原発の事故調査・検証委員会の検討状況などを踏まえ、
       今後、内容や実施時期を確定

2011/7/12 原発の安全性基準に関する「政府統一見解」

12月21日現在で、8基について一次評価の報告書が提出されているが、原子力安全・保安院での評価はまだ終わっていない。

原子力安全・保安院ではストレステストの審査状況をウェブサイトで公開している。
国と電力会社とのやりとりを載せて審査の透明性を高める狙いで、一般からの質問や要望も受け付ける。

http://www.nisa.meti.go.jp/stresstest/stresstest.html

 


2011/12/28 ランバクシー、米FDAと同意協定書締結 

第一三共は12月21日、インド子会社のRanbaxy Laboratoriesが米国FDAと同意協定書を締結したと発表した。
メリーランド地区合衆国連邦地方裁判所の承認を条件としている。

第一三共は2008年6月11日、インドのジェネリック医薬品大手 Ranbaxy Laboratories 及び創業家一族との間で、同社の議決権総数の50.1%以上を取得する契約を締結したと発表、11月7日、Ranbaxy株の63.9%を取得したと発表した

しかし買収手続き中の2008年9月16日に、米国FDAはRanbaxyの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。

医薬品の安全性に問題はないが、Ranbaxyのインドのデワスとパオンタ・サヒブにある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。
また、FDAが1月から3月にかけて問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上

Ranbaxy Laboratoriesは本年11月30日に、高コレステロール血症治療剤アトルバスタチン(Atorvastatin ) 「リピトール」の後発薬を米国で発売した。
同社は当初、
インドでの原体生産を検討していたが、米国への輸入が認められていないため、Teva Pharmaceuticalに原体の生産を委託せざるを得なかった。

2011/12/5  第一三共子会社 Ranbaxy、米国で「リピトール」の後発品を発売

今回の同意協定書で、Ranbaxyは、データの信頼性を確実にするための手段や方針を更に強化し、現行の適正製造基準を遵守 することを確約することとなった。

また、これまでの行為に対し、米国司法省との案件の解決で罰金の支払いが必要となるが、Ranbaxyはこのため、500百万米ドルの引き当てを行う。

第一三共では、5億ドルの引き当てにより、Ranbaxyでの税引後で375億円の利益減、少数株主持分控除後の純損益で240億円の利益減を見込み、損益予想の修正を行った。

第一三共では、Ranbaxyの全ての施設が、法規制を遵守した高い水準で事業遂行することに引続き取組み、患者や消費者に価値ある製品を提供するよう、積極的に関与して いくとしている。

また、本件解決後に  Ranbaxyは製品の米国輸入を再度認められることになるが、世界最大の医薬品市場である米国において、アトルバスタチンを含む既存品の拡大に加え、重要新製品の上市に向けて事業活動を強化 するとしている。


2011/12/28  セシウム回収装置の開発 

1) チッソ、セシウム除去・回収技術の開発に成功

JNC株式会社(チッソ)は12月26日、海水を含むセシウム汚染水を対象としたラボスケールでのセシウム(安定同位体)の除去・回収の技術開発に成功したと発表した。

JNCは2012年2月20日、ベンチスケールでのセシウムの連続分離に成功したと発表した。

放射能汚染された土壌の洗浄水からセシウムを除去する方法に用いることも考えられるとしている。

セシウム汚染水に水溶性のフェロシアン化物を加えセシウム結合体とし、さらにセシウム結合体に磁性体原料となる塩化鉄を加えて反応させ、アルカリ水溶液を用いて磁性を持つセシウム結合体としたのち、磁石を用いてセシウム結合体を磁気分離することにより、汚染水からセシウムを除去・回収する。

フェロシアン化物はシアン(青酸)化合物の一種。鉄イオンとシアンが強く結びついており、毒性は低い。
フェロシアン化鉄(プルシアンブルー:紺青)が放射性セシウムには最も有効とされている。

本年4月に、東京工業大原子炉工学研究所が、汚染水に紺青を混ぜ、遠心力で分離した後、セシウムとともにフィルターでこし取るシステムを開発したと報じられた。

今回の技術は、磁気分離法を用いるため、迅速な分離操作の実現と密閉環境や遠隔操作による処理が可能となる。

海水を混合したセシウム濃度10ppm 程度の水溶液を用いたラボスケールの試験では、磁性を持つセシウム結合体を生成させる反応時間と磁気分離時間を合わせた処理操作は10分以内で完了し、1回の操作でセシウムが99.5%除去された。

JNCでは、ゼオライト等の固形吸着剤を使用する場合と比較して、短い処理時間で高いセシウムの除去率が得られ、さらに廃棄物量の低減が期待され、工業的に入手が容易で安価な材料のみであり、セシウム除去費用の削減も期待されるとしている。

現在、大量の汚染水処理を目的とした工業的なセシウム除去プロセスの確立を目指し、ベンチスケールの技術開発を進めている。

2) 可搬型の放射能汚染水処理システム「SARRY-Aqua」

東芝とIHIは12月22日、可搬型の放射能汚染水処理システム「SARRY-Aqua」を共同開発したと発表した。

福島第一原発で稼働する汚染水処理装置「SARRY」を小型化したもので、低濃度の汚染水をポンプで汲み上げ、吸着材が入った容器の中で汚染水から放射性セシウムを除去する。

処理能力は、汚染水1トンを1時間で処理することができ、処理装置をトラックに積載することにより、移動が可能となり、様々な場所で、放射性セシウムを含んだプール水や農業用水、除染で発生した水等の処理を行う。

3) 移動式土壌浄化装置

東芝は12月26日、移動可能な放射能汚染土壌の浄化システムを開発したと発表した。

シュウ酸溶液でセシウムを土から溶かし出し、吸着材が入った容器に通して回収する。処理能力は1日1.7トンで、元の場所に土を戻せる水準まで除染できるという。

付記 (2012/3/1)

土壌の放射性セシウムを、加熱処理で99.9%除去する技術を太平洋セメントや中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)などの研究チームが開発した。

福島県内の農地の汚染土に2種類のカルシウム化合物を加え、1350度まで加熱。セシウムの99.9%が揮発してフィルターで回収できることを確かめた。カルシウム化合物の添加で、土壌の粒子とセシウムの結びつきが弱まるのが今回の技術のポイントという。

 


2011/12/28 中国商務部、2012年のレアアースの輸出方針を発表 

中国商務部は12月7日、公告第1133号で、2012年のレアアースの輸出方針を発表した。

1)2012年以降、軽希土と中重希土別に輸出枠を設定する。

ハイブリッド車(HV)用の高性能磁石に不可欠なジスプロシウムなどは第一次(80%)で3,204トンに限定され、年間でも4000トン程度に止まる。

2)第一次輸出割当は、厳しい環境検査を既に通過した五礦集團公司など11社に10,546トンを認める。これは年間の約80%になる。

明細  http://wms.mofcom.gov.cn/accessory/201112/1324971083368.xls

配分は過去3年の輸出数量比率と輸出金額比率の平均

3)仮割当は包鋼集團公司など20社に合計14,358トン。年間の約80%となる。

   2012年7月末までに中国環境保護部の環境レビューを終えれば与えられる。
   それまでにレビューにパスしない場合、枠は与えられず、その分は他に配分される。

明細 http://wms.mofcom.gov.cn/accessory/201112/1324971090733.xls

この結果、年間の輸出枠は2010年、2011年とほぼ同量の31千トン程度となる。
商務部は、「国際市場の需要を保証し、レアアース供給の基本的安定を保つため」、2011年と同水準に維持するとしている。

  2009 2010 2011 2012
  承認
 (11社)
仮承認
(20社)
合計
 (31社)
上期 25千トン 14,446トン 22,282トン 一次
(80%)
軽希土 9,095トン 12,605トン 21,700トン
中重希土 1,451トン 1,753トン 3,204トン
合計 10,546トン 14,358トン 24,904トン
下期 25千トン 15,738トン 7,976トン 二次
(20%)
      約6,000トン
年間 50,145トン 30,184トン 30,258トン 年間       約31,000トン

 

2011年1-9月で中国のレアアース輸出は1万1000トンで、昨年同期比65%減となっている。

付記 2011年11月末現在の輸出量は1万4750トンで、通年の輸出枠の49%にとどまった。

中国工業情報化部では以下の通り述べている。

2011年のレアアース輸出割当は、余りが出るだろう。
中国はレアアースの輸出を制限していない。レアアース業界に対して行った規制強化も市場供給に影響しなかった。

輸出割当分の輸出が行われなかったのは、需要が減少したためである。
この主な理由はレアアース価格の高騰による需要の減少だ。これまでレアアース価格が低く見積もられていたが、現在はそれが是正された。


2011/12/29  Chevron Phillips Chemical、シェールガス利用で大規模石化計画 

Chevron Phillips Chemical は12月24日、テキサス州のメキシコ湾岸で大規模エタンクラッカーと誘導品設備を建設する計画のFSが完了したと発表した。

同社は本年3月に、シェールガス開発で得られる有利な原料を利用する計画のFS実施を進めることを発表していた。

テキサス州BaytownのCedar Bayou工場が新しいエチレンプラントの建設場所となる。年産150万トンのエタンクラッカーで、Shaw Energy and Chemicals の技術を使用する。設計契約を締結している。

付記
Shaw Group は2012年8月31日、Shaw Energy and ChemicalsのTechnipへの290百万ドルでの売却を完了した。

更に自社技術を使用して2基のポリエチレンプラントを建設する。能力はそれぞれ年産50万トン、合計100万トンで、Cedar Bayou工場か、テキサス州Old Ocean市のSweeny facility工場の近くかに建設される。最終建設場所は2012年第1四半期に決める。

付記

同社は2012年4月30日、PEの立地がSweeny facility工場になったと発表した。
能力は50万トン2基で、同社の
Loop Slurry Technologyを使用する。

Sweenyのエチレン能力は1,860千トンだが、同社は2013年6月に、1炉増強して90千トン増やすと発表した。

付記

2017年9月、新しい50万トン2基が操業を開始した。
 

温室効果ガスや排気などの環境関連の申請は年内に行う。

本計画の完成時期は2017年となっている。

Chevron Phillipsでは、シェールガスが米国の化学業界に与える有利な立場を活用していきたいとしている。

付記

日揮は2013年10月4日、米国Fluor Corporationと共同で、建設プロジェクトを受注した。

エチレン製造プラント(150万トン/年)および付帯設備に係る設計、機材調達、建設工事(EPC) 役務で、日揮はJVのリーダーとして、プロセスプラントの中核設備等を担当する。

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Chevron Phillips Chemical は2000年にPhillip Petroleum のオレフィン、ポリマー、芳香族事業とChevronの同事業と統合し、50/50のJVとして設立された。
(Phillips Petroleumの本体は2002年にConocoと合併し、ConocoPhillipsとなっている。)

Chevron Phillips Chemical はサウジのSaudi Industrial Investment Group との50/50JVを3つ持っている。

Chevron Phillips Chemicalは12月7日、Saudi Polymers Company(エチレン1,165千トンのコンプレックス)の建設完了を発表した。商業生産は2012年第1四半期の予定。

2008/1/25 Chevron Phillipsのサウジ石化事業

Chevron Phillips Chemicalは住友化学とのポリプロピレンのJVのPhillips Sumika Polypropylene の工場を永久停止することを決めたが、Saudi Polymers Companyの製造するPPを米国で販売する。

また、カタールではQatar Petroleum とのJVのQ-Chemを持つ。

2006/6/1 湾岸諸国の石油化学ー2 カタール

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既報の通りLyondellBasellは低コストのエタンを利用してエチレンの増設を計画している。

2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

Shellは6月に、Appalachia地方でエチレンクラッカーと誘導品プラントの建設を検討していることを明らかにした。
豊富なMarcellus Shaleガスからのエタンを原料とする。

2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ 

Dowも4月エチレンとプロピレンの能力増強を発表したが、Marcellusや南テキサスのEagle Ford などのシェールガスから価格面で競争力のあるエタンとプロパンを確保する目処がついたとしている。

2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表 
 


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