2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  http://blog.knak.jp


2014/1/6    中国で大規模Coal-to-Chemical 計画スタート

Sinopec Engineering Group は2013年12月26日、 Zhong Tian He Chuang(中天合創)が内蒙古自治区オルドス市のUxin地区で計画しているCoal-to-Chemical プロジェクトの設計・調達・建設(EPC) 契約に調印した。

計画では、石炭ガス化により年産360万トンのメタノールを生産、MTOでオレフィン 120万トンを生産、更に副生C4〜C6を接触分解してプロピレン等を生産、最終的にPEとPPを生産する。

総投資額は186.7億元(約31億ドル)で、引渡しは2015年10月30日となっている。

これまでで最大のCoal-to-Chemical プロジェクトである。

中天合創は、Sinopecが38.75%、国営の石炭生産大手の中国中煤能源(China Coal Energy) が38.75%出資するJVで、他に上海申能(Shenergy)が12.5%、內蒙古滿世煤炭が10%出資する。

当初は、2010年の生産開始を目指して、年産2,500万トンの石炭を採掘し、420万トンのメタノール、300万トンのDMEを生産することを計画していたが、DMEの市場性がないと判断し、MTOに切り替えた。

今回のEPC契約には下記プラントが含まれる。

石炭ガス化、精製  
メタノール 360万トン
MTO(オレフィン) 180万トン のメタノール処理施設x2系列  120万トンのエチレン、プロピレン
オレフィン接触分解 MTOで副生するC4〜C6 20万トンを分解 約16万トンのプロピレン
MTBE/ブテン-1 1万トン/3万トン
PP(バルク法ループ型) 35万トン
PP(気相法 35万トン(PP 合計 70万トン)
LDPE(オートクレーブ) 12万トン
LDPE(チューブラー) 25万トン
LLDPE気相法 30万トン(PE 合計 67万トン)

Sinopec Engineeringは自社のMTO技術(SMTO)を使用する。

SMTO(Sinopec MTO)プロセスはシノペック上海石油精製研究(SRIPT)、シノペックエンジニアリング、シノペック北京燕山石化により共同で開発された。
2007 年に燕山石化が日産100トンのパイロットプラントを建設、2008年にメタノール投入ベースで年産180万トンのS-MTOプロセスの技術パッケージが完成した。

誘導品のうち、ガス法PP(35万トン)については、2012年2月にINEOSがInnovene PP processをライセンスしている。
ホモポリマー、ランダムコポリマー、インパクトコンポリマーを含むフルラインのPPを製造する。

ーーー

中国では石炭からのオレフィン製造(“Coal to Olefins”)が盛んで、多くのプロジェクトが進行している。
2011年11月時点で、
20件以上のCoal -to-olefins が建設中か検討段階にあった。

2011/10/26  中国の“Coal to Olefins”の現状

神華包頭石炭化学は2010年7月初め、内蒙古自治区の包頭で年産180万トンの石炭ベースのメタノールの生産を開始した。
同社はこの
180万トンのメタノールから、エチレン30万トン、プロピレン30万トンを、これから30万トンのポリエチレンと30万トンのポリプロピレンを生産する。

オレフィン製造には中国科学院大連化学物理研究所(DICP-CAS)とSINOPEC Luoyang Engineeringが開発したDMTO 技術を採用した。
これは現在稼動中の唯一のMTOによるエチレンである。

2010/7/23 神華包頭石炭化学、秋に中国最初の石炭からのポリオレフィン生産をスタート


ダウと神華集団は2009年11月3日、陜西省楡林市で大規模石炭化学JVの起工式を行った。

投資額は約100億米ドルで、陜西省楡林市に石炭と岩塩を原料とし、石炭化学・クロルアルカリ技術を使った23のプラントが建設される。

主な製品は以下の通り。(年産能力)

 メタノール 332万トン(Coal to Methanol)
 オレフィン 122万トン(Methanol to Olefins)
 クロルアルカリ 50万トン
 MEG  40万トン
 エタノールアミン/エチレンアミン 21万トン
 ポリエーテル ポリオール 34万トン
 アクリル酸 15万トン
 アクリレート 20万トン
 EDC  51万トン
 PVC  50万トン

2009/11/10 ダウと神華集団、陜西省で大規模石炭化学JVの起工式 


2014/1/7 LyondellBasell、シェールガス利用し、休止メタノールプラントを再稼動

LyondellBasell は1月2日、テキサス州Channelviewのメタノールプラントが2013年第4四半期に再稼動したと発表した。

主原料の天然ガス価格の高騰により2004年以来休止していたが、低コストのシェールガスを利用し、再開した。
能力は年産 780千トン。

LyondellBasellは2011年12月8日に投資家説明会を開催し、現状と今後の戦略を説明したが、今後の成長戦略のなかで、米国で安価なエタンを使用したエチレンの増強などとメタノール再稼働を明らかにした。

2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

シェール革命により、米国の石油化学は蘇生した。天然ガス価格の下落により、生産コストは激減する。

LyondellBasellの説明会資料では、エチレンやメタノールのコストの有利性は下記の通り変化した。

  エチレン
 

 

  メタノール
 

エチレンについては、2011年12月にはChannelviewとLa Porteでの増強を発表していたが、2013年3月にCorpus Christiでの増設計画を明らかにした。
いずれも2014年〜2015年に完成する。

  2011年12月8日発表 現在の計画
千トン
既存能力
千トン
原料 計画(千トン)
Channelview, TX  1,750 flexible 原料エタン増強
エチレン若干増強
エチレン +110
La Porte, TX 790 Gulf Coast NGL エチレン +390 エチレン +390
Corpus Christi, TX 770 Flexible   エチレン +360   
Morris, IL 570 Midwest NGL エチレン/プロピレン
 若干増強
 
Clinton, IA 480 Midwest NGL
エチレン合計 4,360     エチレン +860
プロピレン 450 Methathesis Channelview +230  
230 Refinery grade    

ーーー

米国では安価なシェールガスを利用する大型石化計画が相次いでいる。

 


2014/1/8  Shell、LNG事業を強化、Repsolから事業買収

Shellは2014年1月2日、RepsolのTrinidad & TobagoとPeruのLNG事業の買収を完了したと発表した。

買収金額は41億ドルで、他にLNG船のチャーターに係わる16億ドルの債務を引き受ける。

買収により、Shellが直接取り扱うLNGの数量は年間720万トン増え、LNG船の能力を飛躍的に増やす。
(能力持分の増加は420万トンで、Shellの全世界の能力持分は22百万トンから26百万トンに約20%増加する。)

一方でShellは本年に石油部門での売却を進める。
2013年11月にPeter Voser CEOはShell が
“a divestment phase”に入ったと述べた。2014年にも300億ドル (180億英ポンド) もの資産を売却するとしているが、背景には、精製マージンの低下やナイジェリアの石油窃盗で、純利益が大幅に減少したことがある。

売却候補は豪州のWoodside Petroleum (24%)の70億ドル、ナイジェリアの石油資産の20億ドル、その他の200億ドルと噂されている。

外資系企業にとって、ナイジェリアの最も大きな懸案事項は窃盗で、昨年の夏に、パイプラインから盗難された石油量は1日あたり190万バレルであった。同国における石油産出量は、4年連続で低下した。

Shellは、ナイジェリアの「運用上の課題」の影響で、第2四半期に2億5,000米ドルの損失があったことを明らかにした。「運用上の課題」とは、石油泥棒や当局による天然ガス輸出封鎖の影響である。

付記 

ShellはWoodside株23.1%のうち、4.5%を残し、売却することを決めた。
Shell とWoodsideは2014年6月、WoodsideがShell持株のうち9.5%を買い戻すことで合意したが、Woodsideの株主総会で承認が得られなかった。
このため、Shellは2014年8月1日、これを含め13.6%を持ち続けると発表した。

ーーー

今回買収する事業の概要は以下の通り。

1)Atlantic LNG Company of Trinidad and Tobago

の持分

同社は1995年に設立された。
Trinidad and Tobagoの周辺の天然ガスをパイプラインで 南西端のPoint Fortinに運び、4系列の液化設備でLNGにする。

4系列合計の能力は年間 1480万トン。

同社の出資比率、製品引取比率は下記の通り。

  出資比率 引取比率
Train 1 Train 2,  Train 3 Train 4
BP (AMOCO) 34% 34% 42.5% 37.78%
BG 26% 26% 32.5% 28.89%
Repsol 20% 20% 25% 22.22%
NGC 10% 10% 11.11%
Summer Soca LNG Liquefaction 10% 10%
能力   300万トン 330万トンx2 520万トン

NGCはTrinidad and Tobagoの権益を代表する国営の National Gas Company。
Summer Socaは中国のChinese Investment Corporationの子会社で、フランスのSuezから権益を買収した。当初の株主はCabot 。
 

2)Peru LNG

の持分と引取契約

本プロジェクトはペルーの首都リマから南へ約170kmの太平洋沿岸Pampa Melchorita地区で天然ガスを液化、輸出するもので、原料となる天然ガスはペルー内陸部にあるカミセア・ガス田から供給される。

生産能力は年間445万トンで、Repsol は2010年のLNG生産開始から18年にわたり、LNG生産量の全量を購入する契約を締結している。

世界のLNG供給源の中で唯一南米地域に位置する本プロジェクトは、北中米西海岸に最も近く、極東地域にもアクセスが可能という地理的特性を持ち、今後も引き続き市場拡大が期待される環太平洋地域に競争力のあるLNGを供給できるというメリットがある。

同社の出資比率、製品引取比率は下記の通り。

  出資比率 引取
Hunt Oil 50%  
SK Energy 20%  
Repsol 20% 100%
丸紅 10%  

丸紅は2007年8月にSKエナジーが保有する持分30%のうち10%分を購入した。

ーーー

Shell は全世界でLNG計画に参加している。

  能力 参加者
Pluto, Australia 480万トン  Woodside(Shellが24%出資 *)90%
東京ガス 5%、関西電力 5%
North West Shelf Venture, Australia 1,590万トン BHP Billiton、BP、ChevronTexaco、Shell、Woodside Energy、Japan Australia LNG(三井物産/三菱商事)の6社が均等出資
Brunei LNG 671万トン ブルネイ政府 50%、Shell 25%、三菱商事 25%
Malaysia LNG 2,300万トン Malaysia LNG PETRONAS(90%)、サラワク州政府(5%)、三菱商事 (5%)
Malaysia LNG Dua PETRONAS(60%)、Shell(15%)、サラワク州政府(10%)、三菱商事 (15%)
Malaysia LNG Tiga PETRONAS(60%)、Shell(15%)、サラワク州政府(10%)、JX(10%)、Diamond Gas(5%)
* Diamond Gas は三菱商事80%、石油資源開発20%のJV
Nigeria LNG 2,200万トン Nigerian National Petroleum Corporation 49%, Shell 25.6%, Total 15%、Eni  10.4%.
Oman LNG 660万トン Oman政府 51%、Shell 30%、Total 5.54%、Korea Gas 5%、Partex (Oman) 2%、三菱商事 2.77%、三井物産 2.77%、伊藤忠 0.92%
Qatargas 4 780万トン Qatar Petroleum 70%、Shell  30%
Sakhalin 2 1,000万トン Shell 27.5%-1株、Gazprom 50%+1株、三井物産 12.5%、三菱商事 10%
Hazira, India
 再ガス化
  Shell 74%、Total 26%.
Altamira, Mexico
 再ガス化
  Shell 50%、Total 25%、三井物産 25%

* Shell は “a divestment phase”に入ったとし、2014年にも$30bn (£18bn) もの資産を売却するとしているが、売却候補にWoodsideが入っている。
 

2012年5月16日、シェルカナダ、韓国ガス公社(Kogas)、中国石油天然気(PetroChina)と三菱商事はLNG輸出計画「LNG Canada」構想を発表した。
4社でカナダのブリティッシュ・コロンビア州 Kitimat港周辺においてLNG輸出基地を共同開発する。

2012/5/17  Shell、三菱商事等の「LNG Canada」計画 

Shellは2013年1月28日、米国のエネルギー会社 Kinder MorganとのJVを設立して、ジョージア州Savannahの近くのKinder Morgan子会社のEl Paso Pipeline の既存のElba Island LNG Terminalに 2段階で天然ガス液化プラントを建設すると発表した。

2013/1/30 Shell、LNG輸出用の天然ガス液化プラント建設 


2014/1/9   サウジのKing Abdullah Port が開港 

サウジの紅海側の Rabighの近くのKing Abdullah Economic CityのKing Abdullah Port (第1期)が1月1日に開港し、Petro Rabigh は1月5日、ここからポリオレフィンのコンテナー54個をシンガポールに向けて初出荷した。

Petro Rabighでは、工場の近くから出荷できることで輸送費が節減できること、世界市場に速く届けられること、これまで使用していたJeddah Islamic Port の混雑を避けられることなどの利点を挙げている。

King Abdullah Port はサウジの最も新しい港湾施設で、Jeddah 北方100kmにあるKing Abdullah Economic City (KAEC) に建設中である。

港湾地区は広さ約1500万m2で、全て完成した時の能力は2000万TEU(20フィートコンテナ単位)、世界最大のコンテナー船が停泊できる18mの深さのバースを30以上備える。

建設・運営・管理を担当するのは私企業のPorts Development Companyで、2010年に建築複合企業の Saudi Binladin Group とKAECの開発を担当する開発業者のEmaar, the Economic City のJVとして設立された。サウジで唯一の私企業が所有運営する港湾施設である。

全て完成した時点で、紅海の主要港湾で世界の十大港湾の一つに入ること、世界で最も利用されるコンテナー輸送ルートの一つにおける主要積み替えハブになること、アジアと欧州を結ぶことを狙っている。

King Abdullah Economic City (KAEC)は2005年にサウジ国王が設立を発表したメガプロジェクトで、173 km² の土地に産業地区、港湾、居住地区、海浜リゾート、教育地区、ビジネス地区が建設されつつある。 教育地区にはKing Abdllah University of Science and Technology (KAUST) がある。

巡礼高速鉄道(Haramain High-Speed Railway)はメディナとメッカの444kmを2時間で結ぶ建設中の高速鉄道で、途中、ジッダ中央、ジッダ空港、KAEC駅がある。2014年開業予定。

 


2014/1/10  EU、ドイツの再生可能エネルギー法の賦課金制度を調査

欧州委員会は2013年12月18日、ドイツの再生可能エネルギー法(EEGErneuerbare-Energien-Gesetz )の2012年改正で、電力集約的な製造業者が賦課金を軽減されていることについて調査を開始すると発表した。

現在、BASF やThyssenKruppなど、ドイツの重工業の2,000社以上が恩恵を受けている。

合わせて、電力供給事業者が、供給する電力の50% 以上が再生可能エネルギーによる電力である場合、自社で消費する電力の賦課金が軽減されていること("green electricity privilege")についても調査を行う。

欧州委員会が違法とみなせば、(これまでの分を遡及して支払いをさせる可能性が強く)、恩恵を受けていた各社は数十億ユーロを支払う必要が出てくる。
しかし、Merkel 首相は雇用に悪影響を与える法律改正は断固ブロックすると述べた。

ーーー

ドイツでは、1991 年に制定された電力供給法と、この法律を引き継いで2000 年に制定された再生可能エネルギー法(EEG)により、再生可能エネルギーによる発電を現在まで順調に伸ばしてきた。


EEGでは再生可能エネルギーの固定価格買取と、消費者の賦課金が決められている。


賦課金(2013年は1キロワットあたり5.3セント)については従来から軽減規定があるが、2012年法で一部改正された。
 

・電力集約的な製造業者
  これまでも、電力集約的な製造業者の賦課金の支払義務は軽減されてきたが、この軽減措置を受けることができる対象の範囲が拡大された。
     
  従来: 直前の事業年度の電力消費量が10ギガワット時超、かつ、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が15% 超である企業
  改正: 直前の事業年度の電力消費量が1ギガワット時以上、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が14% 以上
     
  賦課金軽減が開始されて以降、認定を受ける企業の数は上がり、軽減分の転嫁を受けて一般電気料金が上昇を続けている。
改正で条件が引き下げられた為、ますます多くの企業が免除の申請を行っている。
     
・電力供給事業者
 
  電力供給事業者は下記の場合、自社で消費する電力のすべてについて賦課金の支払いを免除されていた。
2012年からはこうした企業に対する減免の上限は1kWあたり2セントとなった。
     
  従来: 電力供給事業者が供給する電力中、50% 以上が国内の再生可能エネルギーによる電力である場合
  改正: これに加えて、20%以上が風力又は太陽光による電力である場合
     
・自家発電等
  従来: 最終消費者が自家発電した電力を消費する場合
  改正: 自家発電した電力を発電施設に近接した場所において自家消費する場合に限る。


2012年1月1日から施行された「2012年法」では、再生可能エネルギーによる発電を一層促進するために、エネルギー計画の目標が取り入れられ、再生可能エネルギーによる電力の買取価格(「補償金額」)が見直されたほか、再生可能エネルギーによる発電量が増大してきたことにかんがみて、再生可能エネルギーによる電力と従来電力との市場統合を促す規定が定められた。

2012年法での仕組みは下記の通り。


系統運用者は再生可能エネルギーによる発電施設を優先的に送配電網に連系し、その電力を買い取る。

系統運用者は、送電系統運用者にこの電力を転売 する。

送電系統運用者は、再生可能エネルギーによる電力を電力市場で差別なく販売する。

従来は、再生可能エネルギーによる電力を、電力供給量の割合に応じて電力供給事業者に再販売していた。

送電系統運用者は、補償のために必要な支出と再生可能エネルギーによる電力を販売して得た収入との差額=「賦課金」を、電力供給事業者に対して要求する。

ソース:ドイツの2012 年再生可能エネルギー法

 参考  

 送電系統運用者

名称 Tennet Amprion Transnet BW 50 Hertz
管轄地域 中央部 旧西ドイツエリア 南西部 北東部
  オランダの国営TSOが買収 株式の約25%をRWEが保有 EnBWの子会社 ベルギーのTSO Eliaグループ

 
 四大電力会社

名称 E.ON AG RWE AG EnBW Energie
Baden-Württemberg
Vattenfall Europe
管轄地域 中央部 旧西ドイツエリア 南西部 北東部
  ドイツ最大の電力会社(欧州2位)
 
  株式の大半をエリアの州及び市町村が所有 スウェーデン国営会社のドイツ事業法人

欧州委員会は電力集約的な製造業者への軽減について、これまで問題視していなかったが、2012年の改正により、問題である可能性が出てきたとしている。

改正により、送電系統運用者4社が賦課金の管理を行い、政府がこれをモニターすることとなった。
軽減については多くの消費者や対象とならない業者から不満が出ているが、政府が関与する仕組みとなったため、政府の補助金の可能性が出てきた。
(以前のシステムでは単に購買契約に基づくもので、政府の補助金ではないとの欧州司法裁判所の判決がある。)

軽減は電力消費量が1ギガワット時以上で、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が14% 以上の企業に限定されており、EU市場内における競争を歪める恐れがあるとみている。

ただし、カーボン排出削減のために正当化できるかもしれないとの考えもあり、電力集約的な製造業者への軽減が正当化できるかどうか、不当に競争を歪めていないかを慎重に検討する。

再生可能電力に対する固定費買取価格そのものについては補助金であるが、欧州委員会は2008年のガイドラインで環境保護のための政府補助金を認めている。

"green electricity privilege" については、電力供給事業者が供給する電力中、50% 以上が再生可能エネルギーによる電力である場合に軽減されるが、国内の再生可能エネルギー(20年未満の稼動のもの)に限られるため、同様の設備であっても、国内の電力であるか輸入電力であるかの差別がある。
輸入電力が地元で同様の支援を受けていない場合に、差別があるかどうかを調査する。

 

 


2014/1/11   Braskem のSolvay Indupa 買収に障害 

Braskemは2013年12月17日、SolvayからSolvay Indupa の70.59%の持ち株を290百万米ドルで買収する契約を締結したと発表した。

政府の認可を得た後、TOBを行い、一般株主の残り持ち株を買い取り、100%子会社にする。

2013/12/23 Braskem、SolvayからSolvay Indupa を買収

しかし、アルゼンチンの証券取引委員会は2014年1月3日、買取価格が公正な市場価格より低いとして、これを認めないと発表した。

Braskem のオファー価格は1株1.35 ペソだが、2013年9月末の会社の簿価は1株2.81ペソ、2013年第4四半期平均株価は3.92ペソ、最終取引価格は5.70ペソであったとしている。

Solvay Indupaの一般株主のうちには、アルゼンチンの国家年金基金(ANSES)(持株比率 16.71%)がある。

付記

Braskemは2014年2月24日、買値を2.40ペソに引き上げた。

Solvay Indupa 株式の推移を見ると下図の通りで、2013年7月までは殆ど取引がなく、1月から7月末までの平均株価は1.57ペソであった。

しかし、8月に入り売買株数は急増し、株価も高騰している。

昨年12月17日の終値は5.70ペソで、この日に1株1.35 ペソでの買収が発表された。12月18日から本年1月3日までは取引がなく、1月6日の終値は3.46ペソに下がった。

Solvayは今回の売却発表にあたり、Solvay Indupaは同社にとって2012年第4四半期以降、売却対象資産であったとしているが、昨年8月からの株価高騰は、Braskemへの売却交渉の情報が漏れたためかも分からない。

証券取引委員会としてはこの異常な価格の方を調査すべきではなかろうか。

Solvayの1月9日の発表では、Braskemは2つの公正意見書に基づいて1.35ペソをオファーしたとだけ述べているが、この価格で合意し、外部に発表していることから、Solvayとしては妥当な価格と判断したと思われる。

Solvayによると、Braskemはアルゼンチンの証券取引委員会と本件について協議している。価格見直しの可能性がある。

一方で、ブラジルとアルゼンチンの公正取引委員会に申請が行われている。

付記

ブラジルの独禁当局は2014年11月12日、これを認めない決定をくだした。
Solvayは売却を諦めず、代替案を検討するとしている。


2014/1/13 中国の貿易統計

中国税関総署が1月10日に発表した2013年の中国の貿易統計によると、貿易総額は前年比7.6%増の4兆1603億ドルと初めて4兆ドルを突破した。

中国の輸出額は2009年に世界一となったが、輸入額では米国に次ぐ2位にとどまっていた。
2013年の輸出入はいずれも過去最高を記録、貿易総額で米国を抜いて世界貿易で首位に立ったと見られる。

    単位:億ドル
  輸出 輸入 貿易総額 貿易黒字 前年比伸び率 (%)
輸出 輸入 貿易総額
2012年 20,489 18,178 38,668 2,311 7.9 4.3 6.2
2013年 22,100 19,503 41,603 2,598 7.9 7.3 7.6

しかし、輸出入の伸び率を見ると、輸出は7.9%増、輸入は7.3%増で、2年連続で1桁台に止まっている。
貿易総額の伸びも政府目標の8%増には届かなかった。

人件費増や人民元の上昇などによる競争力の低下で、今後も伸びは緩やかになると見られている。

輸出入相手をみると、日中関係の悪化により、主要貿易相手のなかで対日貿易だけが減少している。

ASEANへの輸出、米国からの輸入の伸びが大きい。

輸出先別輸出額 (億ドル)
  2010 2011 2012 2013 前年比
日本 1,211 1,483 1,516 1,503 99%
ASEAN 1,382 1,701 2,043 2,441 119%
EU 3,112 3,560 3,340 3,390 101%
USA 2,833 3,245 3,518 3,684 105%
 
輸入元別輸入額 (億ドル)
  2010 2011 2012 2013 前年比
日本 1,767 1,946 1,778 1,623 91%
ASEAN 1,546 1,928 1,958 1,995 102%
EU 1,685 2,112 2,121 2,201 104%
USA 1,020 1,222 1,329 1,526 115%

それにしても、いつものことながら、年間統計がこんなに早く発表できるのは驚きである。

ーーー

中国の人民元は上昇を続けている。

中国人民銀行が決める基準値は12月27日から31日まで3日連続で最高値を更新した。
終値も同様に3日連続で最高値を更新、年明け後も1月2日に最高値を更新 (6.0506元/ドル)、同日は一時高値も更新した。

弾力化前の2010年6月8日終値と比較し、12.8%の元高となっている。


2014/1/13 番外編 小説「苦い花梨・マジャパヒト 元軍襲来・ジャワ戦記」の紹介 

以前に本ブログで、友人で化学会社OBの中原洋氏の 「腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス」 (東洋経済新報社)を紹介した。

中原洋氏の本 「腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス」 (東洋経済新報社)が面白い。
本ブログのチャンドラ・アスリの項で「インドネシア特有の理由で建設費が異常に高いと言われていた」としたが、この辺の事情も詳しく書かれている。インドネシア全般に蔓延する汚職については止むを得ない点もあるとするが、政府関連の大規模なものは区別して批判的である。

中原氏が今度は13世紀のジャワ島を舞台とする小説「苦い花梨・マジャパヒト 元軍襲来・ジャワ戦記」を書いた。

モンゴル・元軍は東方および南方戦線に限っても二度、大敗北を喫することとなった。初めは日本。二度目は越南(ベトナム)である。

だが、モンゴル・元軍が、三度目の敗北を喫したことはあまり知られていない。フビライ・ハーンが命じたジャワ遠征の失敗である。遠く南海の波濤を越え、はるばるジャワ島までやってきたモンゴル・元の遠征艦隊は、ジャワ人の巧みな策略に乗せられ、逃げるように去らざるをえなかった。

ジャワ人が強力なモンゴル・元軍の侵略とどう戦ったか、このあまり知られていない一大冒険絵巻をひもとき、その面白さを知ってもよいと思う。日本では元寇がひとつの時代を変えるきっかけとなった。同様にインドネシアのジャワ島でも、元寇は新しい時代を生む契機となり、歴史を推し進めたからである。

(同書まえがきより)

非常に面白いので、ご関心をお持ちの方はどうぞ。(右の本紹介をクリックするとアマゾンに飛びます。)

なお、ウィキペディアにこの歴史事実が書かれている。

ーーー

付記

中原 洋氏は以前にChemnet Tokyoに随筆 風の音 を連載していた。

2006年08月07日に「 マジャパヒトの実」がある。

 東南アジアで奇異に感じたことのひとつに、都会に住む一般の人々が花や木の名前を知らないということがあった。咲き乱れる美しい花の名を訊いても、ほとんどの人が知らない。自分の家の庭に咲く花の名を知らない人さえいる。花や木に興味がないのか、それともあまりに豊富なのでいちいち憶えていられないのか。

 もちろん有名な花、たとえば火焔樹やブーゲンビリア、ハイビスカスなどは知っている。ちなみにハイビスカスはインドネシア語でブンガ・スパトゥ、靴の花と呼ぶ。どうして靴の花なのか不思議だが、小林英治氏の「熱帯植物散策」によると、むかしこの花でよく靴をみがいたのでそう呼ぶようになったらしい。そういえば英語でもシュー・フラワーというのは、靴の花を直訳したのだろうか。

 だが少しばかり変わった花木になるともうだめだ。たとえばインドネシアで歴史上有名なマジャパヒトの木。その名が中世ジャワに栄えた最大の王国の名になっている。だから誰でも知っていると思っていた。ところがマジャパヒトの木を探しても、ほとんどの人が知らない。名前を聞いたことがあるというだけだ。

 マジャパヒトとは苦いマルメロの意味。西洋カリンの一種である。王国の建設者ラーデン・ウィジャヤが開拓した土地にたくさん生えていたので王国の名になったという。どんな実か探しまわったあげく、思いがけぬ身近な庭に発見したときは感動だった。

 ゆたかに葉を茂らせた木の幹に直接、つやつやと輝く緑の、みごとにまん丸いサッカーボールほどの実がなっている。思わず撫でたくなるようなすばらしい果実だった。熟して黄褐色になったころ実を採取し、殻を割ってみようとした。それがひどく堅い。大きな包丁でも歯がたたず、のこぎりでぎしぎし切ってやっと割ることができた。

 でてきた中味は灰色のぶよぶよゼリー。見ていたインドネシア人が、これがマジャパヒトかといいながら指ですくって舐めた。すぐペッと吐きだし、パヒト(苦い)という。名前のとおりマジャパヒトは、みかけは美しくとも中味は苦い果実だった。

 花や木の名前に興味がないのはシンガポールでもおなじだ。都会で科学技術教育だけに専念すると、自然との対話を忘れがちになる。経済的繁栄を求める国々が、マジャパヒトの実のような国にはなってほしくないものである。


 

2014/1/14  水俣病認定基準  

環境省は水俣病の患者認定について、メチル水銀との因果関係が認められれば、手足の先のしびれなどの感覚障害だけでも認める方針を固め、近く、熊本、新潟両県など関係自治体に通知する。

水俣病の認定については、環境庁は「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」(52年基準)を条件としているが、2013年4月16日に、水俣病未認定患者の遺族が熊本県に認定を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁は、裁判所が患者認定を独自に審査しうるとするとともに、「52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄した。

「52年基準」についての最高裁判断:

手足の先の感覚障害だけの水俣病が存在しないという科学的な実証はない。

「52年基準」は、複数の症状が認められる場合には通常水俣病と認められ、個別的な因果関係について立証の必要がないとするもので、多くの申請について、迅速かつ適切に判断するための基準として定めたという限度で合理性を有する。

「52年基準」の症状の組み合わせが認められない場合でも、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえない。

2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決 

最高裁判決を受け、石原伸晃環境相は2013年4月19日の閣議後記者会見で、「判決の趣旨をしっかり踏まえ、(運用改善の)具体化を急ぐよう指示した」と述べ、検討を始めたことを明らかにした。

今回の決定はこれを受けたものであるが、認定基準そのものの変更ではなく、「補足」と位置付けた。

通知案のポイントは以下の通り。

・感覚障害のみでも認定できる

52年基準では、手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせが必要

・魚介類の多食時期や入手方法に加え、体内水銀濃度や居住歴、職歴などを確認する

有機水銀に汚染された魚介類をたくさん食べた時期や、魚介類の入手方法から認定申請者のばく露状況を確認、その上で(1)メチル水銀を摂取した当時の毛髪やへその緒などによる体内の有機水銀濃度 (2)汚染地域での居住歴 (3)家族の認定状況 (4)漁業などの職業歴−−を確かめる。

・水俣病に特徴的な症状か確認する

・水銀ばく露から発症までの期間は通常約1カ月、長くて約1年以内と考えられる

「時期が近くない場合は別の病因や加齢の影響が高まる」との見方。

・できる限り客観的資料の裏付けが必要

さまざまな機関が行った疫学調査などでも「適切な手法」で得られた結果であれば資料として取り扱えるとしたが、個別具体的な本人情報が記載されていることが条件。

・過去の処分の再審査はしない

過去の審査結果は見直さず、棄却された人も再審査をしない。

この認定条件は非常に厳しく、多くの被害者にとって水銀ばく露を証明する書類を今から確保するのは極めて困難で、これが救済対象の拡大につながる可能性は低いとみられている。

被害者団体では、「毛髪やへその緒の水銀値などの記録が残っている人は少ない。この内容で審査したら、最高裁判決や不服審査会の裁決を受けて水俣病と認定された人たちが、認定されないことになる。「52年基準」よりも認定しにくくするもので、環境省は最高裁判決を全く無視したと言わざるを得ない。被害の実態に反するごまかしだ」と厳しく批判している。

「52年基準」では、複数の症状が認められる場合には通常水俣病と認められ、個別的な因果関係について立証の必要がない

 

付記

熊本県は2015年12月2日、公害健康被害補償法(公健法)に基づき、新たに1人を水俣病患者と認定したと発表した。

国は従来、水俣病の認定基準として感覚障害や視野狭窄などの複数の症状があることを条件としていたが、2013年4月の最高裁判決は生活歴などを総合的に検討すれば、一つの症状でも認定できると判断。判決を受け、環境省は2014年3月、新指針を通知した。

患者認定されたのは、2015年10月に県の認定審査会が審査した40〜80代の男女24人のうちの1人で、認定は11月30日付。鹿児島県を含めた認定患者数は2,278人になった。

 


2014/1/15 Saudi Aramco、韓国のS-Oil株を買い増しへ  

韓国のS-Oilに35%出資しているSaudi Aramcoが、韓国の韓進グループが所有するS-Oilの株式28.4%を買い取ることが分かった。
最近の株価では買収額は22億ドルになる。買収後のAramcoの出資比率は63.4%となる。

付記 Hanjin Energy Co. は2015年1月20日、売却を発表した。

韓進グループは、傘下に海運会社の韓進海運、航空会社の大韓航空(KAL)、陸運会社の韓進などを持つ財閥で物流を中心に事業を展開している。
韓進重工業も元は同一グループであったが、2005年に別グループとして独立した。

韓進グループは2007年に韓進エナジーを設立し、S-OiLの株式28.4%を取得した。

KALと韓進海運の使用する燃料を安価に入手することを狙った。
両社の燃料購入先はGSカルテックスとSKの2社が65%以上を占めていたため、S-Oilにとっても安定供給先の確保ができ、メリットがあった。

2007/3/9  韓国の石油精製 S-Oil に韓進グループが参加

2008年のグローバル経済危機で、海運業は大きな打撃を受け、韓国3、4位企業だったSTX Pan Oceanは2013年6月、大韓海運は2011年1月に法定管理に入り、“2強”の韓進海運と現代商船も2010年から赤字が続いている。

韓進海運の負債総額は急増し、負債比率は2010年末に261%であったのが、2013年6月には775%にもなった。金融機関から背を向けられ、債務返済資金が調達できず、大韓航空に支援を要請した。

大韓航空は2013年12月19日、公開経営説明会を開き、グループの「自救計画」を発表した。

韓進グループは株式、不動産、航空機を売却し、3兆5000億ウォン(33億ドル)を調達、韓進海運への支援資金とする。

売却対象:
 韓進エナジー保有のS-Oil株 28.4% 全て(時価22億ドル)
 
航空機13機(ボーイング747-400、ボーイング777-200など機齢が高く燃料の消耗が多い旧型航空機
 
栗島(ユルド)備蓄油基地や教育院などの不動産

S-Oil株はS-Oilの株主であるSaudi Aramcoに売却する。

SaudiAramcoはS-Oilに1991年以降 35%出資している。
(SaudiAramcoは日本では昭和シェル石油に15%の出資をしている。)


2014/1/16 インドネシアが鉱石禁輸実施、直前に緩和 

インドネシア政府は1月12日、国内での加工推進を目的とする未加工の鉱石の輸出禁止措置を導入した。

インドネシアで採掘された鉱石を国内で加工・精錬することを義務付ける「鉱物・石炭鉱業法」(2009年制定)に基づくもので、
加工製品の輸出増加を通じて、鉱物資源からの収益を長期的に拡大する狙いがある。

ただし、当局の間でも、未加工の鉱石の輸出禁止により、短期的には外貨収入が落ち込み、経常赤字が拡大し、通貨ルピーを圧迫する、大量の失業が発生するとの懸念があり、長時間の協議の末、加工・精錬を実施または計画している企業に2017年まで精鉱あるいは加工鉱石を輸出することを認めるという鉱物省の提案が採用された。

加工・精錬を行うことの出来ない数百社に及ぶ国内の中小鉱山への影響は大きい。

2017年からは全ての企業が金属製品あるいは鉱石の精製品のみ輸出可能となる。

詳細は近く発表されるが、諸情報によると、
1) Freeport-McMoRan Copper and Gold やNewmont Mining Corporation、その他加工・精錬を実施または計画している企業は2017年まで、銅、マンガン、鉛、亜鉛、鉄鉱石を輸出できる。

現状では製錬所の建設提案を125件受けており、そのうち28件は着工しているという。

   
2) ニッケル鉱石とボーキサイトについては、国内に十分な数の製錬所があるため、輸出禁止措置
  (年間20億ドル以上の輸出が影響を受ける)
   
3) 石炭とスズの輸出は規制対象外
   

日本はニッケル鉱石の全体輸入量の4割超をインドネシアに依存する。
日本の非鉄各社は在庫積み増しや他国からの輸入増で乗り切る構えだが、代替確保は容易でなく、禁輸が長引けばステンレス鋼の原料となるフェロニッケルの減産を強いられるとの懸念も出ている。

現在の日本のニッケル輸入は、インドネシアが44%、フィリピンが32%、ニューカレドニアが24%となっている。

ーーー

1945年憲法第33条では、「天然の資源は、国家の管理の下に置かれ、国民が公共の福祉を最大限享受できるように活用されなければならない」とされている。

2009年1月に公布・施行された鉱物・石炭鉱業法(2009年法律第4号)の内容は以下の通り。

@ 鉱業権は、国又は地方政府から発給される鉱業事業許可制度に一本化(鉱業事業契約制度は廃止)
A 鉱業事業許可は、鉱業事業許可(鉱業事業区域)と特別鉱業事業許可(特別鉱業事業区域)に分類
B 事業許可は、探鉱許可(入札により付与)と生産許可の2段階制
C 許可取得可能者はインドネシア法人又は自然人(内国資本、外国資本の差別無し)
    ただし、外国資本の場合、生産開始後に、国、地方政府、インドネシア民間企業等への資本委譲の義務
D インドネシア国内での生産物高付加価値化(精製・製錬)義務
  2014年以降に鉱物資源の輸出禁止措置を実施する

E 政府に生産量、輸出量をコントロールする権限を付与
F 国内鉱業サービス会社使用義務

鉱物・石炭鉱業法実施のための細則が2012年2月6日にエネルギ−・鉱物資源省大臣令として発表された。
このなかで、2014年からを前倒しして2012年5月6日からの輸出禁止令を公布するとしていた。

しかし、インドネシア内部の鉱山業者の猛反対、政府内部の見解不統一もあって土壇場で20%輸出関税賦課で内部の折り合いを付けた。

商業省貿易局が指定した鉱物生産の登録輸出業者だけに金属鉱石21品目と非金属鉱石44品目の輸出を認可。
輸出関税は一律2割とした。

インドネシアの鉱石禁輸で日本にとって影響が懸念されるのがニッケル鉱石で、フェロニッケルの原料となり、全体輸入量の約5割をインドネシアに依存しているため、供給が途絶すれば製錬業界、ステンレス業界など関連業界への影響が懸念される。

2012年5月の輸出禁止は撤回されたが、2014年以降に未加工の鉱石輸出の禁止を予定している問題で、経済産業省の製造産業局長は2012年6月、一方的に禁輸を実施した場合にはWTOへの提訴も検討すると述べた。

「一方的な輸出禁止は輸入国である日本の製錬産業の根幹に関わる。輸出税についても輸出国の自由で行うようであれば日本からの投資にも影響がある。日本政府としてはインドネシア政府に対していずれの措置も受け入れることは難しく、引き続き撤回を求めていく」

日本政府は、制度の見直しを強く働きかけてきたが、インドネシア国内では資源採掘による収入が「地元経済に十分還元されていない」との不満が強く、4月の総選挙や7月の大統領選挙を考慮して、今回、部分的に緩和策をとったうえで、法律の規定どうり禁輸に踏み切った。

ニッケルについては鉱石での輸出は禁止される。


2014/1/17 日揮と千代田化工、北米でLNGプラント建設 

日揮は1月14日、米国Fluor と共同で、ChevronがカナダのBritish Columbia州で推進しているKitmat LNG Project に係わるLNGプラント建設の発注内示を受けたと発表した。

ChevronとApacheの50/50JV(Chevronが運営)が、Summit LakeからKitimat港まで直接結ぶパイプライン(Pacific Trail Pipelines )計画と、Kitimat 郊外のBish CoveでのLNG輸出ターミナル建設の計画を進めている。

LNG輸出ターミナルでは、550万トンx 2系列(合計年産1100万トン)のLNGプラントおよび付帯設備を建設する。
カナダ政府から年間1000万トンのLNG輸出のライセンスを受けている。

発注内示はLNGプラントおよび付帯設備に係る設計、機材調達、建設工事役務で、契約形態、受注金額、納期は 非公表。

日揮と米国大手エンジニアリング会社であるFluorがジョイントベンチャーを形成 (日揮がリーダー) し、日揮は主にLNGプラントの中核となる液化プロセス設備等を、Fluorはユーティリティやオフサイトを主に担当する。

日揮は、世界のLNGプラント全生産量のうち、約30%のLNGプラントの建設実績を有し、現在も計6件のLNGプラント建設プロジェクトを遂行している。

なお、シェール開発については、日揮は2011年6月にテキサス州Eagle Ford シェールのChesapeake Energy運営の鉱区の10%の権益をTriTech I, LLCから取得した。

2011年11月には国際石油開発帝石(INPEX)と共同でカナダの石油・天然ガス開発会社NexenがカナダのBritish Columbia州北東部のHorn River、CordovaおよびLiardの各地域に保有するシェールガス鉱区に40%の権益を取得することで合意したと発表している。
(40%を取得するINPEX Gas British Columbia にはINPEXが82%、日揮のカナダ子会社が18%を出資する)

  

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千代田化工建設は1月14日、米国CB&Iと北米のLNG製造・出荷関連諸設備に関する設計、建設の協業覚書を締結したと発表した。
LNG案件ごとにCB&Iと協業して取り組む。

両社は豪州、ロシア、西アフリカのLNG案件の協業を通じて良好な関係を構築しており、それを北米市場に発展させた。

千代田はLNG生産能力換算で世界の40%以上のLNG設備の建設実績があり、CB&Iは同分野で貯蔵タンクを主に50年以上取り組んでおり、45カ国350以上の実績を有している。

千代田化工は2013年12月11日、テキサス州のFreeport LNGの液化基地建設プロジェクトでCB&I 及び Zachry とともにEPC業務を遂行することとなったと発表した。

Freeport LNGは年間440万トンの能力の液化設備3系列を建設し、2017年に液化事業を開始することを目指している。

米エネルギー省は2013年5月に、Freeport LNGに対し、日本などFTA非締結国への輸出を承認したと発表した。
この時点では2系列分880万トンの輸出承認であったが、2013年11月に増量を承認、1320万トンとなった。

大阪ガスと中部電力は2012年7月31日、Freeport LNGと天然ガス液化加工契約に関する契約を締結、それぞれ年間約220万トンずつの天然ガス液化能力を確保している。

2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可

今回のCB&I との米国での協業について、千代田化工は緩やかな提携を模索したが「相手からきっちり組みたいと要請があった」とされる。

LNG設備は千代田化工、日揮を含め、世界で5社程度しか実績がない。北米市場は地元企業優先の伝統が根強く、これまではBechtel、KBRの2社が突出していた。


 

2014/1/18   第一三共のRanbaxy、原体製造工場も問題か? 

第一三共は1月14日、連結子会社のインドのRanbaxy Laboratoriesが、原薬工場であるToansa工場(Punjab州)に関して、米国FDAによる査察の結果、何らかの問題があることを指摘する Form483 を受理したと発表した。

現在、Ranbaxyは指摘された内容を精査中で、FDAに対し問題解決に必要な手順に則った適切な回答をするとしている。

FDAが施設の査察を行った結果は施設査察報告書 (EIR :Establishment Inspection Report)で報告され、指摘事項は 「Form 483」に記載されて企業に提示される。

「Form 483」を受け取った企業は、指摘事項に対する回答をFDAへ提出する。

「Form 483」に対する企業側の対応が不十分である場合、FDAは Warning Letter(警告書) を企業へ送付する。

Ranbaxyは下記の事情で米国へのインドからの製剤輸出が出来ない状況にある。

Ranbaxyは米国ニュージャージー州に製剤子会社 Ohm Laboratories を持っており(1995年取得)、現在、米国向け後発薬はToansa工場の原体をここで製剤している。

もし、Toansa工場からの輸出が禁止された場合、これも出来なくなる。

なお、Ohm Laboratories は、2012年12月の監査についてのEstablishment Inspection ReportをFDAから2013年10月に受領したが、FDAはここについては問題なしとしている。

付記

米国FDAは1 月23 日付で、Toansa工場で製造された原薬を医薬品用に製造および流通させることを禁止する旨発表した。

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第一三共は2008年6月11日、インドのジェネリック医薬品大手 Ranbaxy Laboratories 及び創業家一族との間で、同社の議決権総数の50.1%以上を取得する契約を締結したと発表、11月7日にRanbaxy株の63.9%を取得したと発表した

株式買収中の2008年9月16日、米国FDAはRanbaxyの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。

医薬品の安全性に問題はないが、ランバクシーのインドのDewasPaonta Sahib にある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。
また、FDAが1月から3月にかけて問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上

Ranbaxy Laboratoriesは2011年11月に、高コレステロール血症治療剤アトルバスタチン(Atorvastatin ) 「リピトール」の後発薬を米国で発売した。
同社は当初、
インドでの原体生産を検討していたが、米国への輸入が認められていないため、Teva Pharmaceuticalに原体の生産を委託せざるを得なかった。

第一三共は2011年12月に、Ranbaxy Laboratoriesが米国FDAと同意協定書を締結したと発表した。

Ranbaxyは、データの信頼性を確実にするための手段や方針を更に強化し、現行の適正製造基準を遵守することを確約した。

また、これまでの行為に対し、5億ドルの罰金支払いで米国司法省と和解した。

2011/12/28 ランバクシー、米FDAと同意協定書締結

FDAは2013年9月、Ranbaxyのインドのパンジャブ州のMohali 工場で生産された医薬品の輸入を差し止めるという輸入警告(import alert)を発表した。

FDAは2012年の9月と12月のMohali工場の検査で、製造上の問題点を適切に調査しなかった、品質確保のために適切な手順を作らなかった等の、重大なCGMP違反を発見した。

FDAはまた、2012年1月のRanbaxyの終局的差止の同意にMohali工場を含めることを命じた。
この結果、Mohali工場での医薬品製造の方法、設備、管理がCGMPに従って確立、運営、管理されるまでの間は、Mohali 工場でFDA承認医薬品の製造や、同工場から米国に医薬品を輸出することを禁止される。

Ranbaxyは2012年4月、高コレステロール血症治療剤アトルバスタチンカルシウム錠(アトルバスタチン錠:PfizerのLipitorの後発品) を「最先端技術を結集した」Mohali経済特区の工場から米国向けの輸出を開始したことを発表したが、これが出来なくなった。

2013/9/21  米FDA、第一三共子会社Ranbaxyに再び輸入差し止め 


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