2014-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  http://blog.knak.jp


2014/5/1  クラレ、バイオ系液状ゴムの開発に向け、米国のAmyris Inc.と の提携強化 

クラレは4月23日、新規バイオ系液状ゴムの開発を加速するため、原料供給元の 米国カリフォルニア州のバイオ化学品企業 Amyris Inc.との間で3月に新たな共同開発契約を締結するとともに、同社への戦略的出資を完了し たと発表した。

クラレはタイヤ用途を中心にイソプレン系・ブタジエン系の液状ゴムを事業展開してきたが、Amyrisが開発したバイオ由来の新規ジエンモノマー Farnesene (商品名 Biofene) を原料とした液状ゴム(Liquid Farnesene Rubber) を開発した。

Amyris は2003 年に設立され、サンフランシスコ郊外に拠点を置くバイオ分野の先端技術開発企業で 、同社のバイオ製品は、香料、化粧品やパーソナルケア、さらにはプラスチック添加剤やディーゼル燃料やジェット燃料など、幅広い用途に展開されている。

Amyris の trans-β-Farnesene は糖類をイーストで発酵させてつくる。
イーストのメタボリズムを変え、エタノールをつくるものをハイドロカーボンをつくるものに変換した。

クラレは、タイヤの主原料であるゴムにLiquid Farnesene Rubberを添加することでタイヤの転がり抵抗が低減、低燃費化につながることを見出し た。

このため、2011年にAmyris との間で共同開発契約を締結し、国内外のタイヤメーカー 10数社と性能評価を進めている。

クラレは今回、現在の2014年までのAmyris との共同開発契約 を更に2年間延長し、その間、開発費(金額非公表)を拠出するとともに、Farnesene を使用した共同開発の対象範囲を水添スチレン系エラストマーへ拡大 する。

更に、Amyris に4百万ドルの出資を行った。

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AmyrisはLiquid Farnesene Rubber について、クラレとの提携以外に、イタリアのPETメーカーのGruppo Mossi & Ghisolfi との間でPETの原料として使用する共同開発を実施している。PETボトルの酸素遮断に役立つ。
 


2014/5/2  Invista、アジポニトリルの知的所有権問題でSolvayと和解  

Solvay と Invista は4月25日、フランスの両社の50/50 JVの Butachimie について新しいJV契約を締結し、2008年から争っていた知的所有権問題を解決した。

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ButachimieはDuPontのGen I technologyを使用してアジポニトリル(ADN)を生産するため、DuPontと Rhone-Poulenc のJVとして設立された。

ナイロン66 はヘキサメチレンジアミン(炭素数6)とアジピン酸(炭素数6)からつくるが、アジピン酸はアジポニトリルの加水分解により生産する。

Koch Industries は2004年にDuPont の繊維部門であった Invista を42億ドルで買収した。

Rhone-Poulenc は化学品部門をRhodia として分離した。
2011年に
SolvayがRhodiaを友好的買収 した。

この結果、ButachimieはSolvayとInvista のJVとなった。

2008年にInvistaは、Rhodia とDuPont が組んで、Invista の世界のトップレベルの技術をアジアでの競合工場建設のために不当に利用しようとしているとして、両社に対し、これの差し止めと、被害に対する補償を求めて提訴した。

2006年9月にInvistaは需要の伸びが大きいアジアでワールドスケールのナイロン6,6 プラントを建設すべく、設計業務を開始したと発表、同時に新設備はアジアで低コストで競争力ある地位を占めるため、次世代のブタジエンベースのADN技術を使用することを明らかにした。

その1週間以内に、RhodiaがアジアでADNプラントを建設するFSを実施していることを明らかにした。

Invistaによると、RhodiaはInvistaのブタジエンベースのADN技術のライセンスを受けておらず、同様の技術を無から自ら開発できるはずがない。
このため、Rhodiaが計画を実施しようとするなら、JVのButachimieで学んだ秘密情報を勝手に使用するか、若しくは、DuPontが違法に秘密情報をRhodia に渡したかのどちらかしかないというもの。

2008/8/22 Invista、ナイロン原料技術でDuPont とRhodia を提訴

2010年9月13日、DuPontとInvista は3つの訴訟(polymers technology、adiponitrile technology、 供給契約に関する紛争)で和解したと発表した。両社の権利と義務を明らかにしたとするが、詳細は明らかにしていない。

今回はRhodiaを買収したSolvayとInvistaとの間で和解を見たもの で、内容は以下の通り。

InvistaはButachimieで使っているADN技術の独占的保有者であり、JVのフランスの設備を最新のADN技術で改良することを検討する。
・SolvayはInvistaが中国で検討している新しいADNプラントから一定量を引き取るオプションを持つ。

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Shanghai Chemical Industry Park)でヘキサメチレンジアミン

Invista の最新鋭の


2014/5/3 ウクライナ問題でのロシア制裁の影響 

米政府は4月28日、ウクライナ東部の緊張緩和に向けた措置を講じていないとして、ロシアに対する追加制裁を発動すると発表した。

軍事産業に用いられる恐れのあるハイテク製品の輸出を禁じ、プーチン大統領側近で国営石油会社Rosneftの Igor Sechin 社長 ら7人を新たに資産凍結と渡航禁止の対象に指定、大統領に関係する企業17社の資産も凍結する。

企業としてのRosneft や天然ガス大手のGazprom は含まれていない。Gazpromの社長の名前もない。

http://www.treasury.gov/resource-center/sanctions/OFAC-Enforcement/Pages/20140428.aspx

さらに、ロシアがウクライナとの国境付近に集結させている部隊をウクライナ東部に進軍させるようであれば、エネルギーや防衛セクターを含むロシアの主要産業に対する制裁を発動する構えを鮮明にした。

付記

オバマ米大統領は7月16日、ロシアの主要なエネルギー企業や銀行を対象に追加制裁を科すと発表した。

対象:エネルギー Rosneft、Novotek
     金融    Gazprom Bank、
国営対外経済銀行VEB
 

ーーー

エネルギーに対する制裁が発動された場合、多くの欧米企業が影響を受ける。欧州諸国はガスの30%をGazpromから輸入しており、EUはロシアの最大の貿易相手国である。

EUの産業担当委員は「ロシアへのいかなる制裁措置も、欧州の企業をたくさん傷つけることになる」と語った。

BPは「欧州連合が厳しい制裁を課した場合に危機にさらされる」と述べ、BASFは「用心している」としている。


エネルギー関連の欧米各社の状況は以下の通り。

1)BP

BPはRosneft に19.75%を出資し、CEOのBill Dudley など2人がRosneft の取締役になっている。

BPはTNK-BPの持分(50%)をRosneftに譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84% を取得、同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収した。
BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなった。

BPは2013年にRosneft から配当4億5600万ドル(約467億円)を得たと明らかにしている。

2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収

今回、Rosneft のIgor Sechin 社長 が制裁対象となったが、BPのBill Dudley CEO がIgor Sechinが社長のRosneft の取締役となっていることが問題となる。

米国務省によると、米国民は一般的に制裁ブラックリストに載った人物と取引することを禁止されるが、Bill Dudleyは米国市民である。

2)Centrica (英国の電力・ガス会社でBritish Gas の親会社)

2012年9月にGazpromとの間で、2014年後半から3年間で24億m3の天然ガスを購入する契約を締結した。

3)BASF

ロシアの天然ガスはウクライナ経由、ベラルーシ経由のパイプラインのほか、バルト海の海底約1200キロを通ってドイツ北東部まで繋ぐ Nord Stream Pipelineで欧州に供給される。
Nord Stream PipelineにはGazprom が51%、BASF子会社のWintershallが15.5%、オランダのGasunieが 9%、フランスの GDF SUEZ が9%出資する。

Wintershallはロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加することで合意している。

2011/8/27 Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続

4) ExxonMobil

Rosneft とExxonMobil は2011年に戦略的協力協定を締結し、2012年4月にこれを実施する契約を締結した。

・黒海と北極海(Kara Sea)開発
・北海の7ブロック追加
・西シベリアのタイトオイル開発
・ロシア極東でLNGプラント建設

2013/6/24 Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進

同社はまた、サハリン1プロジェクト を主導している。日本企業も参加。

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
@石油    約23億バレル
A天然ガス 約4,850億立方メートル

5)Shell

Shellは三井物産、三菱商事と共に、Gazpromが過半数を獲得したサハリン2プロジェクト に参加している。

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
・Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%→12.5%
・三菱商事 20%→10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
@原油 10億バレル
A天然ガス 4,080億立方メートル

2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景


更に、Shell とGazprom Neftは50/50の合弁会社 Salym Petroleum Developmentを設立し、本年1月から西シベリアのBazhenov formation でシェールオイルの試験掘削を開始した。

両社はまた、ロシアの北極圏の東部のチュクチ湾、西部のペチョラ湾で、Gazpromが過半を出資する合弁会社を設立して石油・ガスの探査を進める。

北極海ではRosneftとExxonMobilがKara、Laptev、Chukchiで、GazpromとShellがPechoraとChukchiで開発する。

ーーー

欧米によるロシア制裁はロシア経済に大きな影響を与えるのは確実で、ルーブルは急落している。

しかし、4月29日付 日本経済新聞 によると、当面はプーチン政権の基盤は揺らいでいないという。

一つは原油価格の高止まりで、ロシアの代表的な油種であるウラル原油は、ロシア政府が当初予算に盛り込んだ2014年の年間予想の101ドル/bbl を上回り、108ドル/bbl前後で推移している。

そして皮肉なことに、制裁によるルーブルの急落で、ドル建てで取引される資源輸出の収入(ルーブル建て)が増加、資源輸出に対する課税額が膨らみ、2014年1〜2月の歳入額は2兆3681億ルーブルで、前年同期を19.5%上回った。


2014/5/3  農産物の日米TPP交渉 

日米TPP交渉については、読売新聞のみが当初から「実質合意」と報道している。

同紙は5月3日には、複数の政府筋が5月2日に明らかにしたとして、以下の通り報じている。

 ・豚肉は、差額関税制度は維持するが、最も安い価格帯の輸入豚肉にかかる関税を15年程度かけて1キロ当たり482円から50円に段階的に引き下げる。

 ・牛肉関税は10年程度かけて現在の38.5%から9%に引き下げる。

 ・日本が聖域と位置づけてきた牛・豚肉やコメなど農産品の「重要5項目」の関税はすべて残った。


これに対し、同日の日本経済新聞は、農産品5項目すべてと自動車の主要な論点については日米が合意していたとはするが、牛肉と豚肉については双方の主張に隔たりがあるとしている。

 ・(読売の報じている)牛肉9%、豚肉 50円/kg は米国の主張であり、これに対して日本側は牛肉を20%前後、豚肉を100円/kgとしている。

 ・関税率、関税の引き下げ期間、輸入急増の場合に輸入を制限するセーフガードの3つの組み合わせで妥協点を探っている。

これをまとめると、以下の通りとなる。

(牛肉)


( 豚肉)

日本が聖域とする重要5項目と現行関税率は以下の通りで、コメや麦などは関税ゼロの輸入枠などの拡大で収める見込み。

コメ 778%
小麦 252%
大麦 256%
乳製品 脱脂粉乳 218%
バター 360%
砂糖 328%
牛肉 38.5%

 

読売新聞はオバマ大統領訪日前の4月21日に単独書面インタビューを行っており、今回の報道も事実である可能性はある。

実際には、守秘条項により、TPP交渉が全体でまとまるまでは発表されないため、何が真実か、分からない。


2014/5/5  中国、EUの太陽光パネル用ポリシリコンの反ダンピング・反補助金調査でクロの最終決定  

中国商務部は4月30日の公告25号、26号で、EU原産の輸入Solar gradeポリシリコンの反ダンピング・反補助金調査でクロの最終決定を行ったと発表した。

太陽光パネルとポリシリコンについては、米国とEUが中国製のパネルについて反ダンピング・反補助金調査を行い、これに対抗して中国が米国とEU原産の太陽光パネル用ポリシリコンに対して反ダンピング・反補助金調査を行った。

これまでのところ、米国・中国とEU・中国では対応が異なった。

ーーー

米国は強硬で、反ダンピング・反補助金調査でクロの決定を行い、対抗して中国も米国産ポリシリコンでクロの決定を行った。

米国は更に、中国製の結晶シリコン太陽電池製品(バッテリー、モジュール、合板、パネル、建築一体化材料など)に対して、再度、反ダンピング・反補助金調査を実施する決定を下した。ITCは2014年2月14日、米国の関連産業に実質的な損失をもたらしたとする仮裁定を下した。

2014/1/31   中国商務部、米国とEUの太陽光パネル用多結晶シリコンで異なる対応


これに対して、EUと中国はこれまでは友好的対応を行っていた。

中国はEUによる太陽光パネルの調査に対抗して、EU産のワインについても反ダンピング・反補助金調査を行った。

2013/7/5 中国、EU原産の輸入ワインで反ダンピング&反補助金調査を開始

これを契機に双方で話し合いを行い、太陽光パネルとワインでともに和解した。

2013/7/28 EUと中国、太陽光パネルダンピング問題で和解

2014/3/26    中国とEU、欧州産ワインのダンピング問題で和解

残るポリシリコンについても、中国は本年1月にクロの仮決定を下したにもかかわらず、「特殊な市場状況を勘案し」 反ダンピング税・反補助金税に対応する保証金を徴収しなかった。
その後にワインについて和解し、中国商務部が反ダンピング調査を打ち切ったこともあり、これについても和解が想定された。

しかし状況が変わった。

EUは本年4月に、中国原産の太陽光パネル用ガラスについて、中国のメーカーが違法な補助金を得て、不当に安い価格で売り、欧州のメーカーを脅かしているとし、17.1%〜42.1%の課税を決めた。

2013年2月と4月に、EUのパネル用ガラスメーカーの約半分が加盟するEU ProSun Glass の申請に基づき、反ダンピング調査と反補助金調査を開始した。

恐らく、これを受けて中国は今回の決定を行ったと思われる。

これを見ると、どの国も補助金を支給し、ダンピングを行っていることとなる。

輸入ポリシリコン課税でパネルのコストが上がり、その輸入パネルの課税で更に パネル価格が上がることで、最終的には太陽光発電コストが上昇する。


今回の反ダンピング税率は下記の通り。

    反ダンピング税 反補助金税
ドイツ Schmid Group 42% 1.2%
Joint Solar Silicon V 42% 1.2%
イタリア MEMC Electronic Materials SpA        42% 1.2%
MEMC Electronic Materials       42% 1.2%
SILFAB S.p.A.        42% 1.2%
Estelux S.r.l.  42% 1.2%
PrimeSolar S.r.l. 42% 1.2%
スペイン Siliken Spain 42% 1.2%
その他 14.3% 1.2%

なお、仮決定後にWacker Chemie AG が価格協定書を提出したため、同社については税を免除する。

 


2014/5/6 Sinopec、Petronas のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画に参加

Sinopec は4月30日、カナダBritish Columbia 州North Montney地域でのシェールガス開発・生産プロジェクトおよび同州西海岸のNorthWest LNGプロジェクトに参画することでPetronasとの間で合意したと発表した。

付記

石油資源開発は2015年6月12日、Pacific NorthWest LNGがLNGプロジェクトの条件付き最終投資決定(FID)を決議したと発表した。

シェールガス開発・生産のProgress Energy Canada Ltd. は、これまで毎年20億ドル以上の投資を継続しており、既に20兆立方フィート以上の天然ガスの賦存を確認し、LNGプロジェクトに十分な量を確保している。

両プロジェクトに同社が10%、パートナーの中國華電集團(China Huadian Corporation)が5%の合計15%を出資し、LNG設備能力の15%の年間180万トンを20年間引き取る。
これに加え、Sinopecは年間300万トンのLNGを20年間購入する覚書を締結した。

Sinopecは合計480万トン(うち60万トンは華電集團分)のLNGを中国沿岸部の現在拡張中及び将来建設するターミナルに運び、天然ガス市場での国内のシェアをアップし、クリーンエネルギー需要の増大に対応する。


この計画は、カナダのProgress Energy Resources Corporationが行っていたものだが、Petronasは2011年6月にシェール鉱区の権益の50%を取得し、
その後2012年6月に、PetronasはProgressを55億カナダドルで買収することで合意し 、年末に取得した。

石油資源開発(JAPEX)は2013年3月、このプロジェクトに参画することで基本合意したと発表した。

2013/3/7   石油資源開発、カナダのシェールガス開発計画及びLNG計画に参画

Petronasはその後も参加者を募り、2013年12月にPetroleum Brunei がこの計画に3%の出資を行った。
2014年3月にはインド最大の石油会社 Indian Oil Corporation Limited (IOCL) が10%の参加を決めた。

2014/3/15   Petronas と石油資源開発のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画にインドとブルネイが参加

今回の合意により、Petronasのシェアは62%となる。

Progress Energy Resources
 
   →
 参加
Progress Energy Resources 50%
Petronas 50%
  →
買収


  Petronas

 
   →
  参加
Petronas 62%
Japex                 2013/3 10%
PetroBRUNEI  2013/12 3%
IOCL                 2014/3 10%
Sinopec 10%
中國華電集団 5%

中国はエネルギーミックスでの天然ガスのシェアを現在の5%以下から2020年には10%に倍増することを計画しているが、自国でのシェールガス等の開発には時間がかかるため、LNGでの輸入が当面の目標となる。

このため、LNG受入基地の建設が進んでいる。

JOGMEC 輸入LNGインフラ整備の現状 から

これらが全て完成し、中国がLNGの買い漁りを行う場合、LNG価格は大幅に上昇するのではないか、懸念される。

ーーー

Sinopecは4月29日に15%の取得を発表したが、翌日5%分を華電集團に譲渡すると発表した。

華電集団は国営電力会社で、本年1月に単独で Petronasとの交渉を開始していた。
中国の電力業界は石炭依存から、よりクリーンな燃料に多様化するよう圧力を受けている。

華電集団は江蘇泰州市に38億ドル強を投じて年間1200万トンのLNGを受け入れるLNGターミナルを建設することを計画している。


2014/5/7 出光興産、米国でのアルファオレフィン事業を取り止め 

出光興産と三井物産は米国に折半出資の合弁会社を設立し、Dow Chemicalからシェールガス由来のエチレンを購入し、アルファオレフィンを生産する計画を進めていたが、5月2日、この事業を断念すると発表した。三井物産も取り止める。

計画では、両社はDow Chemical と提携し、同社が米国湾岸地区にて展開しているエチレン製造供給網を活用して、競争力ある製造コストベースでのエチレンの引取権を確保し、1000億円程度を投じて年産33万トンのアルファオレフィンを製造、製品の一部をDow に販売する 。

2013年3月に3社間で原料調達と製品の一部販売に関し基本合意に達しており、2014年に最終投資判断を行い、2016年の生産開始を予定していた。


計画断念の理由はコンビナートの建設費の増加で、「シェール関連の開発が活発になり、米国で資材や人件費が上がっている」としている。

出光興産は2014年3月期決算で、これまで進めてきた機材調達、コンビナートの設計、用地整備などの費用 42億円を特別損失に計上した。

当初のFSがどうであったか不明で、建設費の当初予想との差額も明らかにされていないが、競争力あるコストベースのエチレンを使用するとしても、競争相手のエチレンのコストも下がり、販売価格も下がる筈で、米国内での販売を狙うのであれば、多額の投資での新設ではやっていけないのかも分からない。

ーーー

出光のアルファオレフィン (商品名:リニアレン)は出光独自の技術でエチレンを重合させてできる、末端に二重結合を持つ直鎖のオレフィンで、重合度合により、炭素数4〜24の幅広いグレードがある。

ルファオレフィンの用途は、ポリエチレンなど合成樹脂の添加剤、洗剤、高機能潤滑油、製紙用薬剤など多岐にわたり、世界需要は300万トンを超え、今後も安定的な伸長が見込まれ る。

Dow Chemical はリニアアルファオレフィンの大需要家で、同社のPerformance Plastics 部門で、LLDPE(DOWLEX™)、エンハンストポリエチレン樹脂(ELITE™)、EPDM(NORDEL™)、ポリオレフィンプラストマー(AFFINITY™ )、ポリオレフィンエラストマー(ENGAGE™)などの高機能製品の生産に使用している。

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Dow Chemical も5月2日、これについて発表を行った。

本計画の取り止めに関わらず、Dow Chemical が進めているシェールガスを原料とする戦略的なエチレン計画は予定通り進めており、アルファオレフィン用に予定していたエチレンの他の用途での使用をいくつか評価している。
更に、リニアアルファオレフィンの購入については既存の供給ネットワークを利用する。、

 


2014/5/8  マリーンホース国際カルテルでの イタリア人被告の米国への引渡し 

日経新聞は5月4日、国際カルテルを巡り、米国での裁判を避けて海外にいた外国人被告の身柄引き渡しが初めて実現したことから、 米司法省が日本企業幹部の引き渡しを要求するとの観測も浮上していると報じた。

付記 炭素ブラシのカルテルと司法妨害で訴えられた英国のMorgan Crucibleの元CEOが英国から米国に引き渡され、18ヶ月の禁固刑を受けた例もある。
     但し、カルテルの時点ではカルテルは英国の犯罪ではなかったとの主張で、カルテルは落とされ、司法妨害の罪のみとなった。)

本件は2007年のマリーンホースカルテルに関するものである。

米司法省は2007年5月、原油の海上輸送に使うマリンホースの販売で国際的な価格カルテルに関与した疑いがあるとして日欧企業の幹部8人を逮捕したと発表した。

司法省が横浜ゴムの自主申告で調査を開始し、横浜ゴム担当者になりすまして開かせた会合現場で横浜ゴム担当者以外を逮捕した。

2007/7/9 マリーンホース国際カルテル事件

これまで、個別に司法取引や裁判を行ってきたが、状況は以下の通り。

企業:

 

罰金

Dunlop Marine and Oil(英)  4,540千ドル
Trelleborg (仏)  11,000千ドル
Parker ITR(伊) 2,290千ドル
Manuli SPa (伊) 2,000千ドル
ブリヂストン 28,000千ドル
横浜ゴム 自主申告により免責 

個人:

    現場
逮捕
禁固 罰金 備考
PW Consulting (元 Dunlop Peter Whittle 30 months $100,000 英国で同一期間の禁固刑を受け、米国での禁固刑は免除
Dunlop Oil & Marine Bryan Allison  24 month $100,000
David Brammar 20 months $ 75,000
Uwe Bangert       逃亡中 時効中断
Manuli Rubber Industries Robert L. Furness   14 months $ 75,000  
Charles J. Gillespie   12 months and one day $ 20,000  
Francesco Scaglia

陪審裁判で無罪

Val M. Northcutt  
Trelleborg Industrie S.A.S Christian Caleca 14 months $ 75,000  
Jacques Cognard 14 months  $100,000  
Parker ITR S.r.l. Giovanni Scodeggio six months 自宅監禁 $ 20,000  
Romano Pisciotti   2 years $50,000 今回、引渡し
ブリヂストン Misao Hioki two years $ 80,000  

2008/12/12 マリンホース国際カテル事件で日本人に有罪判決

上記のうち3人を除く全員が司法取引で有罪を認めたが、Manuli Rubberの2人は裁判で無罪を訴えた。

裁判では政府側の証人の上司2人(いずれも禁固刑)が私腹を肥していたことなどが明らかになり陪審員の印象を悪化させた。
弁護士は、Sherman法では外国との取引の場合、米国の取引又は米国の競合者に直接の、実質的な、予期しうる影響を与えない限り適用されないとの規定があると指摘、最終的に無罪を勝ち取った。 (弁護士のブログより)

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なお、欧州委員会は2009年1月に5社に合計131.51百万ユーロの制裁金支払いを命ずる決定を下している。

2009/1/29 EU、マリンホースカルテルに制裁金


当時米国におらず逮捕を免れていたイタリアのParker ITRのRomano Pisciottiは、2013年6月にドイツで逮捕され、本年4月3日に米国に送還された。
独禁法違反で海外から米国に引き渡された最初の例になる。

Romano Pisciottiはナイジェリアからイタリアに戻る途中、ドイツの空港で逮捕された。
その後、Pisciottiはイタリアの裁判所とEUの人権裁判所に訴え、EUの法律が適用されるべきとするとともに、ドイツによる国籍差別の犠牲者であると主張していた。

Romano Pisciottiは4月24日、有罪を認め、禁固2年、罰金5万ドルを受け入れた。
ドイツでの拘束期間の(9ヶ月+ 16日)がこれから差し引かれる。

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米国で個人が起訴された場合、海外在住であれば米国から見ると国外逃亡で時効中断となる。
米国入国の際に逮捕されることはもちろん、他国に入国しても、犯罪人引渡し条約で米国に引き渡される。

但しこれまでは、独禁法違反の場合には日本政府は該当せずとし、引渡しは行われないとされていた。

起訴された某氏によると、当時、米国の弁護士に相談したところ、海外に行くと逮捕され、米国に送られる可能性があるが、日本に留まっているなら全く問題なしとのことであったという。

2004年までは、日本人で起訴されたのは役員クラスだけで、すべて時効中断となっていた。

日本人の服役の第1号はダイセルの社員(防カビ剤のソルビン酸価格カルテル、チッソの自主申告で摘発)で、チッソの提出した詳細情報のために若い担当者が起訴されることとなった。
日本にいたため、そのままでは「国外逃亡」のままとなるが、海外に行けないのでは仕事にならないため、自主的に服役(3ヶ月の禁固刑)を選んだ。

米国司法省は、独禁法を有効に施行するという司法省の能力を示すものとして、「日本人で最初に服役」と誇らしげにこれを発表している。
http://www.usdoj.gov/opa/pr/2004/August/04_at_543.htm

第2号がこのマリーンホースカルテルである。
この場合は米国で逮捕されたため、刑に服するしかなかった。

それ以外に多数が起訴されたが、刑に服したのはこの2人だけであった。

この後、2011年から今日まで、自動車部品カルテルで多くの日本企業と日本人が起訴され、これまでと異なり、日本にいたと思われる多くの日本人が有罪を認め、刑に服している。

現時点で、自動車部品カルテルで32名が起訴され、うち有罪を認め禁固刑に服したのが23名となっている。(うち、外国人は1名のみ)
残り9名は「国外逃亡」で時効中断と思われる。

http://www.knak.jp/blog/2013-10-1.htm#cartel

全くの推測だが、今回、非常に多数の日本人が刑に服したのは、米国の姿勢が強硬で、企業が司法取引をする際に、これを罰金の減額の条件にしたのかも分からない。

ーーー

今回の件を受け、日本でも引渡しがあるのではとの意見が出ている。

日米犯罪人引渡条約では、日本及び米国の法令により、死刑又は無期若しくは長期1年以上の拘禁刑(懲役 or 禁錮)に処すべき罪を犯したとされることが要件となっている。

日本の独禁法では、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金となっており、米国では最高10年以下の拘禁刑が適用される。

また、条約の付表では、独禁法は対象となっている。

45) 私的独占又は不公正な商取引の禁止に関する法令に違反する罪

更に、米国では最近は(上表の通り)ほとんどが1年以上の禁固となっている。
(日本では刑事告発は少なく、判決も懲役1年以上はあるが、全て執行猶予となっている。)

付記 懲役3年未満で初犯の場合は情状酌量で執行猶予がありうる。
    2009年改正までは最高が懲役3年のため、すべて執行猶予となった。
    以降は最高が懲役5年のため、実刑もありうる。

時効については海外逃亡で時効中断となっており、問題にはならない。

以上から、本件のような場合は、条約上は対象となる。

但し、条約第5条では、「被請求国は、自国民を引渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる」となっており、日本政府の判断で引渡しを行うかどうかを決めることとなる。

米司法省は先ず、自動車部品カルテルの残りの9名について 、引渡の請求をするかも分からない。

 


2014/5/9 住友電工の株主代表訴訟が和解 

光ファイバーケーブルと自動車用ワイヤーハーネスの2件の価格カルテルで課徴金合計88億円を支払った住友電工に対し、同社の株主が当時の経営陣に同額の損害賠償を求めた株主代表訴訟で、5月7日、経営陣側計22人が同社に解決金5億2000万円を支払うことなどを条件に大阪地裁で和解が成立した。

株主代表訴訟の和解額としては過去最高である。

2件の課徴金支払いを受け、関西在住の株主が2010年と2012年に相次いで提訴したもの。地裁の勧告を受けて和解が成立した。

和解では、外部調査委員会が発生原因や責任の所在を調査し、再発防止策をまとめることが含まれる。
解決金は、内部通報制度の外部受付窓口の運営や、社員の研修プログラムの充実など、コンプライアンス体制の推進に充てる。

ーーー

問題のカルテルは以下の2件。

1)光ファイバーケーブル

公正取引委員会は2010年5月、NTT東日本などが発注した光ファイバーケーブルなどの受注をめぐり、価格カルテルを結んだとして、住友電気工業など5社に排除措置命令を出し、総額約160億円の課徴金納付を命令した。

アドバンスト・ケーブルシステムズ(Corning Cable Systems 50%、日立電線 50%)は自主申告で課徴金免除となった。
古河電工は、自主申告で課徴金が3割減の46億円となったことを明らかにしている。
しかし、住友電工は自主申告による課徴金減額を受けていない。

課徴金納付命令                         単位:千円
  NTT東日本等向け  NTTドコモ
向け
合計      
光ファイバー
ケーブル
FAS
 コネクター
熱収縮
 スリーブ
光ファイバー
 ケーブル
住友電工 6,267,740 182,230 33,560 279,190 6,762,720
古河電工 4,273,350 136,800 22,470 173,400 4,606,020
フジクラ 4,176,050 118,360 15,400 101,830 4,411,640
昭和電線
ケーブルシステム
199,030 199,030
住友スリーエム 120,020 120,020
アドバンスト・
ケーブルシステムズ
(自主申告で免除)
合計 14,916,170 557,410 71,430 554,420 16,099,430

2010/5/26  光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金

株主は以下の点を問題視したが、監査役は提訴しないことを決めたため、代表訴訟を行った。
@ 本件カルテルに関与又は黙認した過失
A カルテル防止に関する内部統制システム構築義務違反
C 実際にリーニエンシーを利用しなかった過失

2010/11/8 光ファイバーカルテルで住友電工に株主代表訴訟 

2)自動車用ワイヤーハーネス

公取委は2012年1月、トヨタ自動車等の自動車メーカーが発注する及び同関連製品の見積り合わせの参加業者らに対し、排除措置命令と課徴金納付命令を行った。

住友電工は日産自動車向けでは1番目の自主申告で課徴金が免除されたが、残る3社分は2番目で50%の減額だった。
株主側は「早期に不正を発見し、日産のケースと同様にリーニエンシーを十分に利用しなかった過失がある」と主張した。

  排除
命令
課徴金額 (千円)   《 》は減免率
トヨタ
    向け
ダイハツ
     向け
ホンダ
    向け
日産
   向け
富士重工
    向け
合計
矢崎総業 5 4,979,950
《30
%
872,150
《30
%
2,763,500
《30
%
440,030
《30
%
551,500
《30
%
9,607,130
 
住友電気工業 738,610
《50
%
482,950
《50
%
880,660
《50
%
0
《100
%
2,102,220
 
フジクラ 1件 1,182,320
《30
%
1,182,320
 
古河電気工業 0
《100
%
0
《100
%
0
《100
%
0
《100
%
0
 
合計 12,891,670

    2012/1/28  公取委、自動車用ワイヤーハーネスのカルテルで課徴金 

ーーー

和解内容は、被告役員が会社に対して解決金を支払い、外部委員会を設置して原因調査や再発防止策を策定することを内容としたもの。

これは2009年6月に大林組の防衛施設庁談合事件、名古屋市地下鉄談合事件、和歌山県談合事件、枚方市談合事件に対する株主代表訴訟において、大阪地裁で成立した和解の内容に従うもので、その後も同様の和解が相次いだ。

和解月日 被告 訴訟内容 和解内容
09/6/1 大林組
旧経営陣ら15人
12億8190万円の賠償金 ・解決金として2億円の支払い
・原因調査及び再発防止策の策定は外部委員を含む
 「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」を設置して行い、
 同委員会は調査結果の報告と再発防止策の提言を行う。
・委員会は外部委員を3名とし、内1名は、原告の推薦する弁護士
09/12/21 日立造船
元役員4人
約9億5千万円の返還 ・4人が解決金計約2億円を支払う
・談合の原因調査や再発防止のため、社内に
 「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」を設置。
 3人の委員のうち1人は原告が推薦する弁護士
・解決金は委員会の運営、談合防止マニュアル整備施策に
10/2/10 神戸製鋼所
会長、社長ら6人
課徴金2億146万円
の返還
・6名は、会社に対し、連帯して解決金8800万円を支払う
・「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」を設置
 1年以内に、その提言内容と再発防止策を公表
 委員会のうち3名は外部委員とし、
 うち1名は原告が推薦する弁護士から選任
10/3/30 住友金属工業
現会長ら14人
76.7億円の損害賠償 ・14人が連帯して2億3千万円を会社に支払う。
・それを原資に、社外委員でつくるコンプライアンス委員会設置
10/3/31 三菱重工業
元社長ら役員7人
指名停止措置による
受注減などで被った
損害35億円
・元社長らが解決金1億6000万円を同社に支払う。
・事件の原因調査と再発防止策の策定を1年間をめどに行う
・「談合防止コンプライアンス検証・提言委員会」を設置
・和解金を委員会や談合防止施策の費用に充てる

2010/4/10 株主代表訴訟での和解、相次ぐ

これまでの株主代表訴訟の和解最高額は、住友商事の銅取引の巨額損失をめぐる訴訟の4億3000万円。

1996年6月、住友商事の元部長が約10年間にわたり会社の許可を得ずに銅地金の簿外取引をしていたことが発覚し、18億ドル(約2850億円)の損害が発生した。
東京地検が同年12月、詐欺罪で元部長を起訴、1999年に懲役8年の実刑が確定した。

1997年4月に株主代表訴訟が大阪地裁に提起された。

遅くとも1991年の末に、ロンドン金属取引所より取引上の不正についての照会が同社宛になされた時点で、チェック機構を整備すべき善管注意義務が各取締役に生じたが、この義務を怠ったことを根拠にし、社長に2000億円、上司の非鉄金属本部長や非鉄化燃部門統括役員など取締役5人に各1億円ずつ、合計2005億円の賠償を求めた。
(会社の管理上の最高責任者たる社長には企業トップの責任の重さに象徴的意味をもこめて、損害のほぼその全額を、他の取締役にはその全額の責任を負担させることは、信義則上酷に過ぎるとの配慮から、 役員報酬や役員退職慰労金の額を参考にその額を請求した。)

2001年3月、事件当時の社長ら5人(残る1人は死亡のため訴え取り下げ)が住商に約4億3千万円を支払うことで和解が成立した。

大和銀行事件では、大阪地裁は2000年9月の1審判決で、取締役は「善管注意義務」および「忠実義務」を怠ったという原告らの主張の一部認めて、被告役員のうち、11名に対して、総額7億7500万ドル(829億円)という巨額の損害賠償を命ずる判決を言い渡した。

大和銀行ニューヨーク支店の行員が無断かつ簿外に米国財務省証券の取引を行って11億ドルの損失を出し、この損失を隠蔽するために顧客、大和銀行所有の財務省証券を売却して、大和銀行に11億ドルの損害を与えた。

さらに、大和銀行はこの損害を米国当局に隠匿していたとして、刑事訴追を受けた複数の訴因の一部について有罪の答弁をし、罰金3億4000万ドルを支払った。

本件では高裁が双方に非公式に和解を打診、2001年12月、被告の現元役員49人全員で約2億5000万円を同行に支払うことなどを条件に和解が成立した。

協議の過程で、高裁は被告側に和解金額について、「10億ないし20億円」と打診。被告側は「とても払えない」として、1審判決で敗訴した11人の被告の手取り年俸の総額に当たるという約2億5千万円を提示し、同額で決着した。


2014/5/10 Bayer、米 Merckの大衆薬事業を買収 

Bayer は5月6日、米 Merck & Co. のConsumer Care事業を142億ドルで買収することで合意した と発表した。
これにより、Bayerは一般用医薬品メーカーとして米 Johnson & Johnson (J&J)に次ぐ世界2位の地位を維持する。

同時にBayer と Merck は肺動脈高血圧症の治療薬の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤のグローバルな共同開発・共同販売を行うことも明らかにした。

関係筋によると、MerckのConsumer Care事業に対しては、米 Procter & Gamble  、独 Boehringer Ingelheim、スイスのNovartis 、仏のSanofi なども関心を示していた。


 
ーーー

MerckのConsumer care business は市販薬(OCT)の世界最大のメーカーの1社で、北米で強い地位を占める。2013年の売上の70%が米国であった。

主な製品は、各種の風邪(Cold、Allergy、Sinus、Flu)、皮膚(日焼けを含む)、足ケア、胃腸などの薬で、allergyのClaritin™、coldのAfrin™、足ケアのDr.Scholl's™やスキンケアのCoppertone™、胃腸薬のMiraLAX™などが有名。

米国のMerck & Co. は1891年にドイツのMerck KGaA の一族が設立したが、第一次世界大戦で敵国企業の子会社として米国政府に接収され、1917年に独立した。接収後は両社は別会社である。

米国
Merckは米国、カナダ以外の地域では「MSD」(Merck Sharp & Dohme)の名称を使用、逆にドイツのMerck KGaAは米国とカナダでは「EMD」の社名を使用している。

米国のSchering-Plough も同様で、元はドイツのSchering AGの米国子会社であった。
  
2006/3/23 2つのMerck社

Merck & Co. は2009年3月にSchering-Plough と合併することで合意した。
   2009/3/11 
米Merck、米Schering-Plough を買収

Dr. Scholl's™やCoppertone™など上記の製品はSchering-Plough の製品である。

Bayerはグローバルに戦略的買収を行ってLife Sciences事業を強化しようとしており、OTC分野でも拡大を図っている。

2013年5月にドイツのハーブ薬メーカーSteigerwald Arzneimittelwerk を買収する契約を締結した。

2014年2月には、雲南省昆明市の市販薬 (OTC)と漢方薬(TCM) のメーカーの滇虹集団(Dihon Pharmaceutical Group)を買収すると発表した。

2014/3/4 Bayer、中国の漢方薬メーカーを買収

同社はこれまでの買収に続く今回の買収により、OTC分野で世界2位の地位を確保し、多分野・多地域で同社の事業を著しく高めるとしている。

一般用医薬品市場ではJohnson & Johnson (J&J)が首位で、Bayerは2位である。

本年4月22日にNovartisが大規模な事業再編を発表、GlaxoSmithKline (GSK) から抗がん剤製品群を買収するとともに、大衆薬事業はGSKの事業と統合してGSK主体のJVとすることとなり、このJVがこの分野でBayerを抜くこととなった。
   2014/4/25 Novartis、GSKとの取引等で事業再編

しかし、今回の買収で、Bayerは世界2位の地位を確保する。

Bayerの一般用医薬品事業は鎮痛剤のAspirinや皮膚薬のBepanthenなどを手がけ、世界各地に販路を持つ。

今回の買収により、5つの重要なOTCの分野のうちの2分野、スキンケアと胃腸薬でグローバルなリーダーの地位を得ることとなり、各種風邪薬でNo.2となる。栄養剤ではNo.2、鎮痛薬ではNo.3 の地位を維持する。

2013年ベースでの買収事業の売上高は22億ドルで、合算売上高は74億ドルに達する。

買収により、2017年までに販売費や製造コスト面で2億ドルのコストシナジーを期待している。
また、Merckの製品(現在、米国内販売が7割)をBayerの世界的なインフラを使って海外で販売することで4億ドルの販売シナジーを期待する。

ーーー

両社は別途、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤のグローバルな共同開発・共同販売を行う。

肺動脈高血圧症の治療薬であるが、この薬をフルに活用するには更なる開発努力が必要であり、両社がこれに協力する。

現在、Adempas™が外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療薬として承認を得ているが(日本でも2014年1月に製造販売承認を取得)、更に適用範囲を広げる。
加えて、現在開発の初期段階にあるものも共同開発に含める。

両社は開発のコストと利益を均等にシェアし、開発及び販売戦略を共有する。

Adempas™の販売はBayerが米大陸、Merckがそれ以外を担当し、それ以外についてはBayerは米大陸以外、Merckは米大陸で商業化を主導するが、互いに相手のテリトリーでも協力するオプションを持つ。

MerckはBayerに一時金として10億ドルを支払い、更に販売目標を達成した場合は 最高11億ドルのマイルストン支払いを行う。

ーーー

Merckは医療用医薬品に経営資源を絞り込み、開発主導の一流バイオファーマ企業になるというゴールを目指す。

Merck expects after-tax proceeds from the sale of MCC to be between $8 and $9 billion. The company will use the after-tax proceeds -- consistent with its capital allocation strategy -- to resource those areas within its business that represent the highest potential growth opportunities, such as MK-3475, to augment the company's pipeline with external assets that can create value and to continue to provide an industry-leading return of capital to shareholders. - See more at: http://www.mercknewsroom.com/news-release/consumer-care-news/merck-announces-sale-consumer-care-business-bayer-ag-142-billion#sthash.4F0Y8bch.dpuf
Merck expects after-tax proceeds from the sale of MCC to be between $8 and $9 billion. The company will use the after-tax proceeds -- consistent with its capital allocation strategy -- to resource those areas within its business that represent the highest potential growth opportunities, such as MK-3475, to augment the company's pipeline with external assets that can create value and to continue to provide an industry-leading return of capital to shareholders. - See more at: http://www.mercknewsroom.com/news-release/consumer-care-news/merck-announces-sale-consumer-care-business-bayer-ag-142-billion#sthash.4F0Y8bch.dpuf

OTC事業の売却で税引き後で80〜90億ドルの利益を見込んでいる。


2014/5/12   Pfizer が AstraZenecaに買収提案

Pfizerが本年1月からAstraZenecaに買収提案を行っている。

AstraZenecaは企業価値を「かなり過小評価している」とし、拒否しているが、両社が合併すれば、糖尿病、心臓病、関節リウマチなど大半の主要疾患の治療薬を持つ巨大製薬会社が誕生する。

Pfizerは1月5日に合併の可能性についてAstraZenecaに打診した。

買収案は現金と合併後の新会社株式で支払う内容で、時価総額は587億3000万ポンド (約10兆0800億円)となり、1月3日の終値に30%上乗せした水準だった。(1株 46.61ポンド)

Pfizerは事業売却などで積み上げた現金を買収に充てる。

両社はハイレベルの協議を行ったが、協議は4月14日に打ち切られた。

Pfizerは4月28日にAstraZenecaにコンタクトし、この時は条件を提示しなかったが、5月2日に提示額を630億ポンドに引き上げた。(1株 50ポンド)
AstraZenecaは企業価値を「かなり過小評価している」とし、直ちにこれを拒否した。

Pfizerはほかの選択肢も検討しているとされる。
 


Pfizerは3年前に英サンドイッチの大規模R&D施設の業務を大幅に縮小する決定をし、2000人近い人員削減につながったため、英国内では同社に対して批判的な見方がある。

PfizerのリードCEOは、キャメロン英首相に書簡を送り、AstraZenecaが英ケンブリッジに新設する予定のR&D施設について計画を遂行すると伝え、英マックルズフィールドの製造拠点を維持すると表明した。

また、統合後のR&D部門の従業員のうち20%は英国拠点になると約束した。 「われわれはこの約束を少なくとも5年守る」としたが、状況が著しく変わった場合は修正すると付け加えた。

付記

Pfizerは5月16日、1株 53.50ポンドを提示。
これに対し、AstraZenecaは少なくとも10%上回る水準(58.85ポンドに相当)なら取締役会が買収案の支持を勧告できるようになると伝えた。

しかし、Pfizerは5月18日、最終案として1株55ポンド、総額約693億ポンドを提示した。
PfizerはAstraZeneca
取締役会の同意を前提としており、敵対的TOBで株主に直接訴える手法をとる可能性は否定している。

AstraZenecaは5月19日、この提案を拒否した。
コスト節約と節税という財務面での利点がPfizerの買収の主な動機になっているようだと指摘し、戦略上の魅力を感じなかったとしている。

PfizerはAstraZeneca株主に対し、会社に圧力をかけるよう要請した。
Pfizerの買収案は5月26日に期限切れとなり、その後、再度買収を提案するには6カ月間待つ必要がある。

5月26日、Pfizerは買収断念を発表した。

なお、Pfizerの経営幹部が、買収目的の一つを「効果的な租税負担を構築する」こととした。買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するというもので、これに対し米国議会が反発、課税逃れ阻止の法案提出の動きも出てきた。

ーーー

Pfizerは2003年にPharmacia(MonsantoとPharmacia & Upjohnが統合)を買収した。

AstraZenecaはICIから独立したZenecaとスウェーデンのAstraが統合したもの。

ーーー

PfizerもAstraZenecaも減収が続いている。2013年通期の売上高はPfizerが516億ドル、AstraZenecaが257億ドルで、いずれも6%減少した。
また、既存製品の特許切れに伴い、今後数年間で売り上げがさらに減るとみられる。

Pfizer 

同社の2011年の売上高は67,425百万ドルであったが、2013年は51,584百万ドルに減少している。
同社は医薬以外の事業の売却を進めているが、本業の
Biopharmaceuticalでも2年前と比べ100億ドル減となっている。

利益については継続事業の利益も増大しているが、売却益の貢献が大きい。

                              (百万ドル)

 

2013 2012

2011

現状ベース 実績
売上高        
  Biopharmaceutical 47,878 51,214 57,747 57,747
  Consumer Healthcare 3,342 3,212 3,028 3,057
  Animal Health - - - 4,184
  Nutrition - - - 2,138
  Other 364 231 260 299
  合計 51,584 54,657 61,035 67,425
         
税引き後損益        
 継続事業 11,410 9,021 7,860 8,739
 売却事業 10,662 5,577 2,189 1,312
 合計(自社帰属) 22,003 14,570 10,009 10,009

Pfizer は基本事業以外を順次売却している。

1) 2011年8月に Hard capsule とDrug-delivery systemのCapsugel事業(売上 750百万ドル)をKKRに2,375百万ドルで売却。
  (売却益 約13億ドル)
2) 2012年11月にNutrition事業をNestleに11,850百万ドルで売却(売却益48億ドル)
3) 2013年6月にAnimal healthのZoetis部門をIPOで分離、103億ドルの税引き後利益を計上

AstraZeneca

減収減益となったが、「2013年の財務業績は、当社の予想に沿ったものであり複数製品の独占権の失効を反映している」としている。

                         (百万ドル)
  2013 2012 2011
売上高 25,711 27,973 33,591
営業利益 3,712 8,148 12,795
税引き後損益 2,571 6,270 9,950

2014/5/13 SolvayとINEOSの塩ビJV、EUが条件付でようやく承認 

SolvayとINEOSは2013年5月7日、欧州の塩ビ事業を統合し、50/50のJVとする覚書に調印した。

統合対象は欧州のクロルアルカリと塩ビ事業で、詳細は下記の通り。
Solvayの統合対象は欧州の塩ビ事業だけであり、アルゼンチンとブラジルに工場を持つ子会社のSolvay Indupa とタイのJVのVinythaはSolvayに残る。(その後、Solvay Indupa はBraskemが買収した。)

  2012年売上高 対象 対象外
Solvay 19億ユーロ Solvin
(Solvay 75%, BASF 25%)
・塩化ビニリデン
RusVinyl(ロシアのSiburとのJV)
Solvayのクロルアルカリプラント Povoa、Bussi、Torrelavega
製塩プラント(Tavaux、Martorell、Jemeppe)  
欧州の塩素誘導品
(エピクロルヒドリン、CLM、塩酸、Hypo)
 
フランスFevzinのエチレンの42.5%
(残りの出資はTotal)
 
Ineos 24億ユーロ Kerling
(Ineos ChlorVnyl)
ノルウェー Rafnesのエチレンの50%
(残りはIneos)

この覚書には将来のSolvayのJVからの撤退について記載されている。
JV設立から4年から6年の間にINEOSがSolvayの持株を全て買取り、100%子会社とするというもの。

2013/5/15 Solvay、欧州塩ビ事業をINEOSと統合、将来塩ビ事業から撤退 


この計画は欧州委員会の独禁法審査で難航した。

欧州委員会は、新しいJVが欧州北西部で塩ビ管・窓枠用のサスペンジョンPVCで市場支配力を持つため価格が上昇すること、また、Benelux 3国で漂白剤の価格が上昇することを懸念し、2013年11月に徹底調査を開始した。

欧州委によると、S-PVC 市場ではIneosの最強の競合者のSolvayが市場からいなくなる。残るのははるかに小さいメーカーで、抑止力にならず、値上げが簡単に行えることとなる。合併前でも、Ineosは既にかなりの市場支配力を持つ。
他のメーカーはJVに対抗するため増設する力を持たず、輸入品も力はない。需要家も対抗する力を持たない。

Beneluxの漂白剤市場では、新JVは60%以上の市場シェアを持つこととなり、残るのはAkzoだけで対抗力を持たない。

2014年1月22日、両社はEU当局から本件について問題ありとの通知(the statement of objections)を受け取ったと発表した。

これを受け、両社は2月27日、問題解決のため、数箇所のINEOSの工場をJVから除くという改正案を当局に提出した。

2014/3/5  Solvay とIneos、欧州塩ビ事業統合で対案提出

その後、両社と欧州委員会で交渉が続けられ、欧州委員会は5月8日、両社の案を一部修正した条件で、本件を承認した。
JVは市場支配力と価格支配力を持つこととなるため、いくつかの工場をJVから分離・売却し、その購入者がPVC事業でJVと競合しうるようにした。

JV設立は2014年第4四半期で、それまでに売却を実施する。JV設立までは両社が別々に事業を行う。

JVから除外し売却する工場は以下の通りで、全てIneosの工場である。

対象工場 当初の両社提案 最終決定 各工場の由来
PVC

Beek, Geleen (蘭)

Tessenderlo Groupから買収
PVC Mazingarbe (仏)
PVC Schkopau (独)

旧EVC(BSLのプラントを買収、増設)
PVC/VCM

Wilhelmshaven(独) 旧EVC(当初 ICI)
電解/EDC/VCM Tessenderlo (ベルギー) Tessenderlo Groupから買収
EDC

Runcorn (英)  旧EVC (当初 ICI)
《電解》

Runcorn (英)

注) 英国のRuncorn については、EDC工場を売却するとともに、電解工場についてはEDCの購入者と新JVとの間のJVとする。
    ベルギーの
Tessenderloは漂白剤も製造する。

ーーー

付記

INEOS とSolvayは2015年3月19日、上記設備を International Chemical Investors Group (ICIG)  に売却を決めた。条件は明らかにされていない。

英国Runcornの電解工場はINOVYNとICIGとの50/50JVとする。

これにより、INOVYNは2015年2Qにもスタートする。

ーーー

新しいJVの工場は以下の通りとなる。

 


2014/5/14     BMW、米で炭素繊維の生産能力を3倍に

BMWは5月9日、自動車の軽量化に役立つ炭素繊維の生産能力を3倍にすると発表した。

ドイツの炭素繊維メーカーのSGL TechnologiesとのJV のSGL Automotive Carbon Fibersのワシントン州のラージトウ炭素繊維工場に2億ドルを投じ、現在の年産3千トンを9千トンに引き上げる。
2015年に完成すれば世界最大のプラントとなる。

全量がBMWの自動車に使う炭素繊維強化プラスチックに使われる。
当面、電気自動車とハイブリッドカーに使用するが、BMWでは増産完成後は他のモデルでもコンペティティブな価格で大量に使用できるとしている。
2年後に改装されるBMW 7 - シリーズのフラッグシップセダンは幅広くカーボンファイバーを使うと見られている。

原料プレカーサーは三菱レイヨンとSGLのJVのMRC-SGL Precursor の大竹工場から供給される。

ーーー

BMWは2010年に、大都市圏での使用を前提としたゼロ・エミッションの車両 “Megacity Vehicle”を2013年に市場に導入することを発表した。

昨年、電気自動車「BMW  i 3 compact car」を発売、受注台数は1万台を超え、本年4月には米国で販売を開始した。
昨年9月にフランクフルトモーターショー2013で発表されたハイブリッド車「BMW  i 8 plug-in hybrid sports car」は夏に発売する。

BMWは“Megacity Vehicle”の製造にあたり、電池などで重量が増える分を素材の軽量化で相殺し、走行時のエネルギー消費を抑えるため、炭素繊維を使用することとし、基幹部品用の炭素繊維を製造するため、2010年1月にSGL Automotive Carbon Fibersを設立、1億ドルを投じ、工場を建設した
BMWが49%、
SGL Technologiesが51%出資する。

付記

BMWは2017年11月24日、SGL Automotive Carbon Fibersの持ち株(49%)をSGLに売却すると発表した。
別途、BMWはSGL本体に18.3%を出資しているが、これについては変更なし。



合弁相手のSGL Technologiesはドイツの炭素繊維メーカーで、三菱レイヨンと提携している。

三菱レイヨンは2005年1月、欧州市場の拡大を見据え、ドイツに本社を置く SGL Carbon Groupと提携し、欧州での焼成拠点を確保した。戦略的な提携の第一歩としてSGLグループのスコットランド子会社 SGL Technic Ltd. への年間750トンの生産委託を決定した。

三菱レイヨンは2010年4月、SGL Automotive Carbon Fibersに炭素繊維のプレカーサーを供給するため、SGL Technologiesとの間で合弁会社 MRC-SGL Precursorを設立した。

SGL Precursorの出資比率は三菱レイヨンが66.66%、SGLが33.34%で、製造拠点は 三菱レイヨンの大竹事業所内。
2011年4月に量産を開始した。

モノの流れは以下の通り。

担当企業 立地 製品
MRC−SGL Precursor 大竹 炭素繊維プレカーサー
SGL Automotive Carbon Fibers  米ワシントン州 (焼成)→ ラージトウ炭素繊維
  同上(中間材工場) 独 バイエルン州 → 各種織物
BMW部品工場   (成形加工)→ 炭素繊維複合材料
BMW   次世代環境対応車 “Megacity Vehicle”


2011/12/15 自動車向け炭素繊維複合材料の開発が進展

 


2014/5/15  主要企業の2014年3月決算 − 住友化学 、三菱ケミカルホールディングス

1.住友化学 

石油化学が黒字化し、情報電子化学、農薬、医薬が大きく増益となり、増収増益となった。
メタアクリルや合成繊維原料の基礎化学部門は赤字が続いた。

前年に続き、特別損益に多額の減損損失、事業構造改善費用を計上したが、当期損益は370億円の黒字となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 19,525 450 503 -511 6.0 0
2014/3 22,438 1,008 1,111 370 6.0 3.0
前年比 2,913 558 609 881 - 3.0
2015/3 23,200 1,050 1,200 450 6.0 3.0

 

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 前年比 2015/3
予想
基礎化学 206 93 -64 -109 -45 -60
石油化学 111 62 -32 49 82 100
情報電子化学 261 110 117 349 232 370
健康・農業関連 233 265 263 382 119 450
医薬品 287 209 309 471 162 260
その他 41 77 80 84 4 60
全社 -260 -209 -222 -218 4 -130
合計 879 607 450 1,008 558 1,050

 

特別損益の推移は以下の通りで、減損損失と事業構造改善費用として、前年に続き、多額の損失を計上した。 

2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
投資有価証券売却益 98 34
減損損失 -32 -36 -229 -218
事業構造改善費用 -41 -64 -108 -106
投資有価証券評価損 -47 -15
持分法投資損失 -260
その他 -11 -7 4 56
合計 -84 -268 -379 -249

  注)2012年3月期の持分法投資損失260億円は豪州農薬会社のNufarm の株式評価損。 

減損損失は以下の通り。

(前年 229億円)
千葉 エチレン等 63 2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退
大分  レゾルシン 66 事業環境悪化で収益性低下
中国 偏光フィルム 57 環境変化で事業計画見直し(建設途中)
ポーランド 偏光フィルム 32 営業停止を決定
 
(本年 218億円 )
新居浜  カプロラクタム

 73

2015年末 1系列停止
米国  研究開発費用  43  
サウジ 工業団地インフラ      37  
遊休厚生施設      24  
千葉 日本オキシラン     18 2013/11/29 日本オキシランのSM、PO、PGを2015年に停止

ナイロン原料のカプロラクタムは中国の大増設で価格が下落しており、原料のベンゼンとの格差は2011年初めに2,430ドル/トンあったのが、現在は965ドルに下がっている。
宇部興産も本年3月末に堺工場を停止、宇部とタイ・スペインの3拠点体制とした。

大日本住友製薬の実績は以下の通り。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 3,477 250 245 100 9.0 9.0
2014/3 3,877 421 406 201 9.0 9.0
前年比 400 171 161 100 - -
2015/3予 3,520 200 190 120 9.0 9.0

営業損益はSunovion Pharmaceuticals買収に伴う特許権とのれんの償却費182億円を控除したのちのもの。
前年の償却費は259億円であった。

北米で独占販売期間が満了した短時間作用型β作動薬「ゾペネックス」が減収となったが、非定型抗精神病薬「ラツーダ」が大きく伸長して補い、円安の影響(北米のみで295億円の益)もあって大幅な増収となった結果、増益となった。

2015年3月期には、北米での後発品参入、日本の薬価改定の影響が大きく、戦略製品の伸長でカバーするが、9.2%の減収となる。
これに対し、特許権の減少、経費の効率的使用による販管費の減少、優先開発品目への集中投資により研究開発費総額を増やさないなどにより、費用を押さえ、200億円の営業損益を確保する。

ーーー

2.三菱ケミカルホールディングス

増収増益となった。但し、営業損益は2011年3月期のちょうど半分である。(ケミカルズ、ポリマーズの損益減が原因)

食品機能材、電池材料、精密化学品、樹脂加工品、複合材、無機化学品、化学繊維などを扱うデザインド・マテリアルズが好調で、営業利益は前年比倍増となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 30,886 902 871 186 6.0 6.0
2014/3 34,988 1,105 1,031 322 6.0 6.0
前年比 4,103 202 160 137 - -
2015/3 35,300 1,360 1,270 380 6.0 6.0

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 前年比 増減内訳   2015/3
予想
売買差 数量差 コスト
削減
その他
ケミカルズ 530 149 -2 7 9 -48 -16 100 -27 40
ポリマーズ 550 254 1 23 22 -2 5 53 -34 190
エレクトロニクス 10 -53 -51 -55 -4 -22 -33 53 -2 -30
デザインドマテリアルズ 365 240 225 465 240 16 91 51 82 500
ヘルスケア 851 764 749 683 -66 3 -32 18 -56 700
その他 45 61 65 57 -8   -13 18 -13 40
全社 -86 -108 -85 -75 10     3 7 -80
合計 2,265 1,306 902 1,105 202 -53 3 296 -43 1,360


グループ別の営業損益は以下の通り(億円)で、  2011年3月期と比較すると、三菱化学(ケミカルズ、ポリマーズ等)と 三菱レイヨン(MMA等)の減益が大きい。

  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
三菱化学 881 231 42 231
田辺三菱製薬 766 690 690 591
三菱樹脂 166 106 128 201
三菱レイヨン 410 303 68 88
調整 42 -24 -26 -6
合計 2,265 1,306 902 1,105


当期の特別利益に「仲裁裁定による特別利益」 130億円が含まれている。

田辺三菱製薬は日本で販売する抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」に関し、Janssen Biotech(Johnson & Johnson子会社)に対して、開発販売契約に基づく供給価格の改定を求める国際商工会議所への仲裁申立を行っていたが、これに対し、裁定があったもの。

2013/8/21    田辺三菱製薬、仲裁裁定で117百万ドル受領


田辺三菱製薬の実績は以下の通り。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 4,192 690 694 419 20.0 20.0
2014/3 4,127 591 619 454 20.0 20.0
前年比 -65 -98 -75 35    
2015/3 4,090 600 615 405 20.0 20.0

 

 


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