ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  http://blog.knak.jp


2014/5/16    主要企業の2014年3月決算 − 三井化学 、東ソー、旭化成 

1.三井化学 

石化の増益が大きく、増収増益となった。基礎化学品(フェノール、高純度テレフタル酸など)とウレタンは赤字が続く。
同社はこれら赤字製品の再構築を行っているが、再構築費用として257億円の特別損失を計上し、当期損益は251億円の赤字となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 14,062 43 92 -81 0.0 3.0
2014/3 15,660 249 225 -251 3.0 0.0
前年比 1,598 206 133 -170 3.0 -3.0
2015/3 16,800 350 310 120 0.0 3.0

 

 

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 前年比 差異内訳   2015/3
予想
数量差 交易条件 固定費他
石化 128 89 77 253 177 51 92 33 195
基礎化学品 204 86 -189 -174 15 -23 -6 44 -90
ウレタン -90 -146 -26 -52 -26 30 -30 -26 10
機能樹脂 72 82 84 119 35 47 26 -38 145
(加工品) 14                
機能化学品 100 116 124 150 25 40 14 -28 165
フィルム・シート   2 -33 9 42 10   32 10
その他 1 1 -6 -6 -0        
全社 -25 -15 12 -50 -62     -62 -85
合計 405 216 43 249 206 155 96 -45 350
石化 :エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン
基礎化学品 :フェノール、ビスフェノールA、高純度テレフタル酸、ペット樹脂、エチレンオキサイド

石化の増益は、売上増、交易条件の改善、ナフサ価格上昇での在庫評価益、連結子会社決算期統一(15ヶ月の業績取り込み)による。
 

特別損益として、ポリウレタン材料事業とフェノール事業の事業再構築費用 257億円を計上した。

三井化学は2月6日、ポリウレタン材料事業とフェノール事業、高純度テレフタル酸(PTA)の再構築を発表した。
この時点では再構築費用を206億円としたが、第4四半期で更に51億円を追加した。

ポリウレタン事業:

 鹿島工場  2016年12月末 閉鎖
  TDI(年産117千トン) 停止
  無水マレイン酸(32千トン)、フマル酸(151千トン) 停止、事業終了
  特殊イソシアネート群(2400トン) 大牟田工場に生産移管
  
 大牟田工場
  MDI(年産60千トン) 停止  2016年12月末
  特殊イソシアネート群の大型プラント(5000トン)新設 2015年10月稼動

フェノール事業:

 千葉フェノール(フェノール 250千トン、アセトン 80千トン) 2014年9月末に停止、解散 
 市原工場のビスフェノールA(90千トン) 2014年3月末に停止
 シンガポールのビスフェノールAの1基 70千トンを停止

高純度テレフタル酸事業:

 インドネシアのJV P. T. Amoco Mitsui PTA Indonesia 持分をBPに売却 (売却益を計上した模様)

2014/2/10 三井化学の事業構造改善計画 

 

2.東ソー

増収増益となった。

南陽のVCM工場がフルに稼動し、クロルアルカリが数量差益で黒字になった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 6,685 245 336 169 3.0 3.0
2014/3 7,723 416 495 296 3.0 3.0
前年比 1,038 171 159 127
2015/3 8,100 460 450 520 5.0 3.0

 

 

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 前年比 差異内訳   2015/3
予想
数量差 交易条件 固定費他
石油化学 104 125 105 148 42 15 19 9 118
クロルアルカリ -35 -100 -16 39 55 88 14 -47 57
機能商品 203 131 90 192 102 31 70 1 240
エンジニアリング 36 57 44 13 -31 -30   -1 22
その他 27 24 22 24 2 4   -2 22
合計 335 237 245 416 171 108 103 -40 459

2011年に爆発事故を起こした南陽のVCM工場は、第1VCMプラント(年産能力:25万トン)が2012年5月に、第3VCMプラント(年産能力40万トン)が2012年7月に再開した。

 

3.旭化成

増収増益となった。

ケミカルズ、エレクトロニクス、医薬の増益が大きく、住宅も好調。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 16,666 920 951 537 7.0 7.0
2014/3 18,978 1,433 1,429 1,013 7.0 10.0
前年比 2,311 514 477 476 - 3.0
2015/3 20,160 1,500 1,510 900 8.0 9.0


 

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 前年比 差異内訳   2015/3
予想
数量差 売値差 うち為替差 コスト差他
  ケミカルズ 644 445 229 389 160 37 497 495 -374 500
繊維 42 31 40 86 45 9 70 60 -34 90
  住宅 365 463 543 630 87 95 75   -83 560
建材 21 18 40 55 15 11 5   -1 50
エレクトロニクス 143 64 28 142 114 63 46 154 5 150
  医薬・医療 70 88 159 303 143 119 58 58 -33 290
クリティカルケア     -37 -35 1 81 -3 1 -77 5
その他 17 30 22 17 -5 1     -6 15
全社 -72 -97 -105 -153 -48       -48 -160
合計 1,229 1,043 920 1,433 514 416 748 768 -651 1,500

2014年度より、ケミカルズ・繊維、住宅・建材、エレクトロニクス、ヘルスケア(医薬・医療+クリティカルケア)の区分となる。


特別損益では、ケミカル事業における水島地区エチレンセンターの集約(旭化成のエチレン廃棄など)および国内石油化学事業の基盤強化などによる事業構造改善費用 225億円を特別損失に計上した。

2014/2/27  旭化成と三菱ケミカル、水島地区エチレンセンター集約で合意 

なお、特別利益に 受取損害賠償金 535億円がある。

旭化成ファーマが開発したRho-kinase 阻害剤「ファスジル」のライセンス契約に関連して、スイスのActelion社およびその関連会社・役員を被告とする損害賠償請求訴訟で、2014年3月にカリフォルニア州最高裁判所から勝訴確定の決定が下された。

2011/8/24  旭化成、医薬品開発中止に対する損害賠償請求の第一審で勝訴 の付記


2014/5/17   参天製薬、米Merckより眼科製品を譲り受け 

参天製薬は5月13日、日本・欧州・アジア太平洋地域において、米国のMerck & Co. が有する緑内障・高眼圧症治療薬 9品目と関連した権利等一式を取得する譲渡契約を調印したと発表した。

対象製品の2013年の売上高は約4億ドルで、参天製薬は契約実行時に約6億ドルを支払う。さらに販売マイルストンに基づく追加支払の可能性がある。

生産は当面、Merckに委託し、2〜5年間 対象製品の供給を受ける。

先進国の高齢化で市場が伸びる緑内障治療薬の品ぞろえを増やすとともに、英仏やタイなど現在事業を展開していない国や地域へのアクセスを獲得することで海外事業展開の加速を目指す

対象製品はいずれも緑内障・高眼圧症治療薬で、以下の通り。

ドルゾラミド塩酸塩点眼液   Cosopt、Cosopt PF、Trusopt、Trusopt PF
チモロールマレイン酸点眼液   Timoptic、Timoptic PF、Timoptic XE
タフルプロスト点眼液   Saflutan、Taptiqom

 このうち、タフルプロストは参天製薬と旭硝子が共同で開発したプロスタグンジン系緑内障・高眼圧症治療剤で、2009年4月にMerckに西欧(ドイツ除く)、北米、南米、アフリカ等での販売権を許諾した。
東欧、北欧、ドイツ、日本、アジア諸国は参天が権利を維持した。(当時、日本、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーで上市)

米国ではMerckが2012年2月にFDAから販売承認を得ている。    
今回の取引で、西欧での販売権を取り戻した。

タフルプロストは、旭硝子のフッ素化学と有機合成技術を融合した医薬原体で、旭硝子の千葉工場で生産していたが、米国での承認取得で需要が増大するのを見込み、旭硝子の子会社のAGC若狭化学の小浜工場で増設した。

参天製薬では、現在は2割弱の海外売上高比率を4〜5割に高め、2020年度までに連結売上高を2013年度より3割増の2千億円に引き上げる方針で、「今回の買収は長期目標実現の第一歩、今後、ドライアイ向けなど他の新薬も海外で販売し、飛躍を狙う」としている。

ーーー

Merckの眼科製品事業は2011年に眼科薬の開発などを手掛けるInspire Pharmaceuticalsを買収して拡大した。

Merckは現在、医療用医薬品に経営資源を絞り込み、開発主導の一流バイオファーマ企業になるというゴールを目指す。
本年5月6日、Consumer Care事業を142億ドルでBayerに譲渡することで合意したと発表した。

Merck expects after-tax proceeds from the sale of MCC to be between $8 and $9 billion. The company will use the after-tax proceeds -- consistent with its capital allocation strategy -- to resource those areas within its business that represent the highest potential growth opportunities, such as MK-3475, to augment the company's pipeline with external assets that can create value and to continue to provide an industry-leading return of capital to shareholders. - See more at: http://www.mercknewsroom.com/news-release/consumer-care-news/merck-announces-sale-consumer-care-business-bayer-ag-142-billion#sthash.4F0Y8bch.dpuf
Merck expects after-tax proceeds from the sale of MCC to be between $8 and $9 billion. The company will use the after-tax proceeds -- consistent with its capital allocation strategy -- to resource those areas within its business that represent the highest potential growth opportunities, such as MK-3475, to augment the company's pipeline with external assets that can create value and to continue to provide an industry-leading return of capital to shareholders. - See more at: http://www.mercknewsroom.com/news-release/consumer-care-news/merck-announces-sale-consumer-care-business-bayer-ag-142-billion#sthash.4F0Y8bch.dpuf

2014/5/10 Bayer、米 Merckの大衆薬事業を買収 

Merckは本年、米国の眼科製品事業を米国のニッチ医薬品会社のAkorn Pharmaceuticals に売却した。
Merckは当面、ラテンアメリカ、カナダ、豪州、中東、アフリカその他では事業を継続する。

これに伴い、参天製薬は本年4月1日、タフルプロストの米国での販売について、Akorn子会社のOak Pharmaceuticalsとライセンス契約を締結した。


2014/5/19   三菱ケミカルホールディングス、大陽日酸株式の公開買い付け 

三菱ケミカルホールディングスは5月13日、大陽日酸株式の公開買い付けに関する基本合意書の締結を発表した。

現在、同社は大陽日酸の株式の27%を保有するが、議決権の過半数(下限 50.0%、上限 51.0%)の取得を目指し、11月上旬をメドにTOBを実施する。
買収総額は最大で1072億円となる見込み。

付記

三菱ケミカルホールディングスは9月29日、公開買付けを2014年9月30日から実施すると発表した。

新たに1億408万株を買い付ける。
現在、三菱化学が14.07%、三菱ケミカルが12.90%を所有しており、今回の公開買付により保有比率を51%に高める。

買付価格は1株当たり1,030円で、買付代金総額は1,072億円強の見込み。

 

三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長は「米国で進むシェールガス革命に伴う事業機会の獲得に加え、東南アジアやインドといった成長市場を開拓し事業基盤の強化を図る」と買収の意義を述べた。

三菱ケミカルがDow Chemicalと共同で米国に建設を予定している化学工場に大陽日酸が窒素を供給する。また、大陽日酸の販売先に三菱ケミカルの化学品を納入するなど販路を拡大するほか、三菱ケミカルが力を入れているヘルスケア分野でも大陽日酸が持つ医療ガス技術などを活用することで相乗効果を狙う。

成立後は、大陽日酸株式の上場を継続し、大陽日酸の経営の自主性を維持する。

ーーー

大陽日酸は2004年10月に日本酸素と大陽東洋酸素が合併してできた。

日本酸素が1934年に国内初の酸素発生装置を開発して以来、産業ガス(酸素、窒素、アルゴン)を製造する空気分離装置を中核として、産業用ガス、エレクトロニクス向けガス、医療用ガス、LPガスなどの事業を展開してきた。

三菱化学は1953年に大陽酸素に25%出資し、産業ガスの製造事業を合弁(三菱油化とのJVの鹿島酸素)で行うなど提携関係にあり、大陽東洋酸素には最終 36.2%の出資したが、大陽日酸の設立で10.1%となった。その後、買い増しして2009年には15.1%とした。

2013年9月に三菱ケミカルホールディングスは大陽日酸と資本業務提携契約を締結した。

 資本提携:大陽日酸の第三者割当(10.41%)などで出資比率を26.97%とした。

 業務提携:

   @産業ガス関連事業:
   ・三菱ケミカルが計画する新たな海外生産拠点へも展開することで更なる海外事業の拡大を図る。
   ・既存製品・事業との相乗効果による売上拡大も目指す。

   A販売チャネルの相互活用
   ・大陽日酸メディカルの医療用ガス・関連機器の三菱ケミカルを通じた販売チャネルでの拡販
   ・三菱ケミカルの人工炭酸泉、炭素繊維容器の大陽日酸の販売チャネル活用など

その後の業務提携の協議・検討の過程で、両社は事業基盤の更なる強化が不可欠で、そのために同一グループとして協力し、両社の経営資源を有効に活用して一層の事業シナジーを創出することが必要との認識で一致し、今回の結論となった。

大陽日酸の業績は下記の通り。

同社は2014年5月に新中期経営計画を発表したが、経営目標として、2016年度に、売上高6,000億円、営業利益 450億円、海外売上高比率40%以上を目指すとしている。
そのためのイノベーションとして、天然ガス・シェールガス等の世界的なエネルギーを巡る環境変化を捉え、次世代の核となる新規事業を創出することを挙げている。

ーーー

TOB完了後の三菱ケミカルホールディングスの姿は次のとおりとなる。

 

   * 生命科学インスティテュートについては 
         2013/12/16 三菱ケミカルHD、来年4月にヘルスケア新事業会社を設立

三菱ケミカルホールディングスの構成会社別営業損益の推移は以下の通りで、三菱化学と三菱レイヨンの損益の変動が大きいが、大陽日酸の損益は安定している。


 


2014/5/20   化学会社の2014年3月期決算対比 ー 各社対比、東レ、積水化学、宇部興産、帝人

各社の3月期決算がほぼ出揃った。

営業損益で見ると、ほとんどの企業が前年を上回っている。
営業損益が好調なのを利用し、大規模な減損処理を行い、身軽になろうとする企業が増えている。

営業損益
 
当期損益
   

信越化学三菱ケミカル、住友化学旭化成、三井化学、東ソーについては既報の通り。

東レ、積水化学、宇部興産、帝人の状況は下記の通り。

ーーー

1.東レ

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 15,923 834 882 485 5.0 5.0
2014/3 18,378 1,053 1,106 596 5.0 5.0
前年比 2,455 218 224 111
2015/3 21,500 1,300 1,250 700 5.0 5.0
 
 
営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 前年比 2015/3
予想
繊維 324 453 432 529 97 560
プラスチック・ケミカル 271 274 183 180 -3 240
情報・通信機器 422 345 230 246 16 310
炭素繊維複合材料 33 77 73 169 96 220
環境・エンジニアリング 33 49 26 64 38 85
ライフサイエンスその他 61 60 75 56 -19 75
その他 10 13 16 20 4 20
全社 -155 -194 -200 -212 -12 -210
合計 1,001 1,077 834 1,053 218 1,300

損益差異理由:  数量差 577
           石化関連価格差 -100 (売価差 +52、原料価格差 -152)
           その他価格差 ネット -58
                      営業費差 -192
           その他費用差 -9


2.積水化学

住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックの3部門がいずれも好調。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 10,324 596 607 302 9.0 9.0
2014/3 11,109 825 833 412 11.0 12.0
前年比 784 229 226 110 2.0 3.0
2015/3 11,540 870 850 460 12.0 12.0

 
 
営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 前年比   2015/3
予想
住宅 244 311 363 411 48 430
環境・ライフライン 15 30 18 65 47 75
高機能プラスチック 244 206 232 361 128 400
その他 -1 -2 -7 -8 -0 -25
全社 -8 2 -10 -3 7 -10
合計 493 546 596 825 229 870


3.宇部興産

減収減益となった。化成品・樹脂が全前年比大幅減益となっており、建設資材でもっている状況。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2013/3 6,260 300 280 83 0.0 5.0
2014/3 6,505 244 187 126 0.0 5.0
前年比 245 -55 -94 44    
2015/3 6,700 300 240 135 0.0 5.0

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 前年比 差異内訳   2015/3
予想
価格差 数量差 固定費差 その他
化成品・樹脂 200 230 51 8 -43 -59 17 25 -25 45
機能品・ファイン 87 55 12 -5 -17 -25 11 2 -4 10
医薬 23 37 34 17 -17 -15 -10 1 6 17
建設資材 81 87 115 155 40 11 33 1 -5 155
機械・金属成形 18 31 37 45 8 -1 4 4 1 45
エネルギー・環境 40 34 60 20 -40 -12 -37 7 1 25
その他 11 10 10 11 1 1 -1 3 -3 10
全社 -17 -23 -20 -7 13     12 1 -7
合計 444 460 300 244 -55 -100 18 55 -28 300

化成品・樹脂ではラクタムチェーンが前年比 -44億円、エネルギーでは電力が -35億円となっている。
建設資材はセメント・生コンが+35億円と好調。

4.帝人

増収増益だが、2012年3月期と比べると、まだ大きな減益状態である。  

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2012/3 8,544 340 343 120 0.0 3.0
2013/3 7,457 124 98 -291 2.0 2.0
2014/3 7,844 181 199 84 2.0 2.0
前年比 387 57 101 375    
2015/3 7,800 250 225 100 2.0 2.0


 
営業損益対比(億円)           
  2012/3 2013/3 2014/3 前年比   2015/3
予想
高機能繊維・複合材料 72 -47 57 104 65
電子材料・化成品 37 -19 -72 -53 -30
ヘルスケア 259 248 245 -3 250
製品 66 47 52 5 55
その他 37 42 17 -25 30
全社 -131 -148 -119 29 -120
合計 340 124 181 57 250


アラミド繊維や炭素繊維などの高機能繊維・複合材料は需要順調で黒字転化したが、ポリカーボネート樹脂やPETフィルムの電子材料・化成品は赤字が拡大した。


2014/5/21  主要医薬会社の2014年3月期決算とIFRS方式

武田薬品、アステラス、第一三共と中外製薬(12月決算)は連結決算について、本年度から国際財務報告基準(IFRS方式)に変更した。

企業会計審議会は2009年6月、「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を取りまとめ、一定の要件を満たす企業に対し2010年3月期の年度から国際会計基準による連結財務諸表の作成を容認する方針を示した。

武田薬品は以下の通り述べている。

IFRS適用の目的
 ・欧米同業他社との財務情報の比較可能性の向上
 ・グループ内会計基準の統一による財務情報の均質化
 ・資金調達の選択肢の拡大

損益に及ぼす主要な差異

項目 日本基準 IFRS
@のれん償却 20年以内で償却 償却せず、毎期減損テストを実施
A有形固定資産償却 海外子会社を除き主に定率法 定額法に統一
特定の研究開発用設備は取得時一括費用処理 資産計上し、定額償却
B導入一時金、マイルストン 取引発生時に研究開発費処理 無形資産に計上、上市時点から定額償却
減損テスト実施
C退職給付引き当て過不足 発生から5年で償却 損益扱いせず(その他包括利益として認識)
D営業外、特別損益   営業外は金融損益に限定
残りのほとんどは営業損益
損益表示 営業損益
営業外損益
(経常損益)
特別損益
(税引前損益)
営業損益
金融損益
  ー
 ー
(税引前損益)

武田薬品の2013年3月期の営業損益は、この組み換えにより、従来の日本方式の1225億円から650億円へと大幅に減益となっている。
税引前ではあまり差は出ていない。

各社の対比は以下の通りとなる。(億円)

会社 基準 営業損益   税引前損益
2013/3 2014/3 増減 2013/3 2014/3 増減
武田薬品 IFRS 650 1,393 +743   1,331 1,589 +258
日本基準 1,225 1,557 +332 1,297 1,570 +273
差異 -575 -164   34 19  
 
アステラス IFRS 1,216 1,168 -48   1,271 1,220 -51
日本基準 1,539 1,773 234 1,247 1,317 70
差異 -323 -605   24 -97  
 
第一三共 IFRS 987 1,116 129   959 998 39
日本基準 1,005 1,159 154 921 1,093 172
差異 -18 -43   38 -95  
 
中外製薬 IFRS 747 787 40   727 769 42
日本基準 764     753    
差異 -17     -26    

ーーー

各社の損益対比は以下の通り。 IFRS適用企業は2013/3も IFRSベースで表示している。

売上高


 

営業損益


経常損益(IFRSの場合は税引前損益)     

当期損益

 


2014/5/22  東洋エンジニアリング、トルクメニスタンで大型ガス化学コンプレックス受注

トルクメニスタン国営ガス会社Turkmengas はカスピ海東岸のTurkmenbashi地区のKyyanly(Kiyanlyとも表す)に 、 数期に分けてガス化学コンプレックスを建設する計画を立てているが、東洋エンジニアリングは5月12日、韓国の現代エンジニアリング、現代建設、LG International (LGI) と共同でこのコンプレックスの第1期の建設を受注したと発表した。

プロジェクト全体の投資額は100億ドルとされるが、第1期の投資額は30億ドルで、うち、東洋エンジの受注分は800億円超。完成は2018年を予定している。

Turkmengasと東洋エンジ・韓国勢との契約は、2013年9月のトルクメニスタン大統領の訪日時に日本で調印された。
首脳会談の席上、安倍総理から、日本企業が化学プラント建設で契約や枠組み協定に署名する運びとなったことに歓迎の意を表するとともに、日本政府としてもこれを支援していく旨述べた。

4月22日に現地で大統領や各社首脳が参列し、起工式が行われた。

政府は石油とガスの生産量のアップを図っているが、欧州やアジアの天然ガス価格は今後下がる可能性が強く、経済発展を支えるためには 石油とガスの輸出だけに頼る訳にはいかない。

このため、政府は2012年にKyyanlyに数期に分けてワールドクラスの石油化学コンプレックスを建設することを決め、日本と韓国に資金と技術の支援を求め、協議を開始した。

2013年9月12日、トルクメニスタン国立対外経済関係銀行(TVEB)と日本の国際協力銀行(JBIC)は業務協力に関する覚書を締結した。
日本企業が輸出者として関与する同国でのプロジェクト等の実現に向けた協力等を両行間で行っていくこと等を目的とするもので、日本企業の事業機会獲得に向けた案件形成に協力すると共に、案件実現時の早期融資実施に繋げることで、日本企業とトルクメニスタン政府の双方の利益に貢献するとしている。

JBICはこれまでもTVEBとの間で新規プロジェクトの実現に向けた情報交換等の協力を実施してきており、2010年3月には、トルクメニスタン国営化学会社 (Turkmenhimiya)に対し、双日と川崎重工業からアンモニア及び尿素肥料製造プラントを購入するための資金450億円を貸し付けている。

他方、韓国も資金融資に関し、1年以上にわたりトルクメニスタン政府と交渉を進めた。
2014年4月に韓国輸出入銀行は本計画に770百万ドルのローン(直接融資492百万ドル、借入保証 215百万ドルなど)を供与することを決めた。

トルクメニスタン政府は第1期計画の資金計画を確立し、建設業者として東洋エンジと韓国3社を選んだ。

韓国の現代Engineering と LGI はトルクメニスタンで実績がある。

両社は2013年10月に同国南東部のGalkynyshガス田のガス処理設備を完成させている。

両社は続いて2013年5月にTurkmenbashi Refineryから原油精製プラントを受注、更に2013年7月にマレーシア国営のPetronas Carigali のトルクメニスタン子会社からKyyanly 原油処理プラントを受注している。

 


2014/5/24  EU、韓国の遠洋漁業で違法操業国家に指定か 

韓国の遠洋漁船による漁獲量制限違反など違法操業を問題視している欧州連合(EU)が、6月8日に韓国に調査団を派遣することを決めた。
6月末に違法操業国家に指定するかどうかを決定する。

EUは韓国の遠洋漁船が長期にわたり西アフリカ沿岸で、定められた漁獲量を超過するなどの違法操業を行っているとして、昨年の時点で韓国を違法操業国に予備指定した。

違法操業国家指定が確定すれば、年間1億ドルに上るEUへの水産物輸出が全面的に凍結される上、韓国の遠洋漁船はEU加盟国の港を利用できなくなる。

違法操業国の指定は、韓国にとっては大きなイメージダウンとなる。

遅まきながら、韓国政府は、罰金制度の強化や外国水域での全ての韓国漁船の操業をモニターする監視センター設置などの対策をとった。

韓国海洋水産部の関係者は「違法操業国指定を阻止するために最善を尽くす」としている。

付記

EUは7月23日、「違法、無報告、無規制(IUU)漁業国」に韓国を指定するかどうかの最終決定を2015年1月末まで半年延長すると発表した。

違法操業を防止する監視システムなどが確実に稼動し、国際規範に見合う操業体制を構築するためにさらに時間が必要だと判断したと説明した。

ーー

EUは、全世界における違法漁業による総生産額を年間100億ユーロとし、EUの2007年の水産物輸入(150億ユーロ)のうち、IUU漁業を起源とするものは11億ユーロと推計した。

違法漁業=IUU漁業のIUUはIllegal, Unreported and Unregulated の略で、‘pirate’ fishing とも呼ばれる。

EUは、IUU漁業が水産生物資源の持続的な利用に対する最も深刻な脅威の一つであり、EUの共通漁業政策及び国際的な取り組みの根幹を揺るがすものと位置付けた。

2008年9月にIUU漁業を防止、抑止及び廃絶するための欧州共同体システムを確立する「IUU漁業規則」を採択した。

EUは2010年1月1日からIUU Regulation を全面的に施行した。

IUU漁業規則商業漁業に従事する全ての漁船を対象とし、EUへ輸出する全ての水産製品(養殖魚、淡水魚等を除く)について、正当に漁獲されたものであることを漁船の旗国が証明する漁獲証明書の添付が義務付けられ、IUU規則に違反する水産物がEU域内に入域することを防止、抑止及び廃絶することを目的にしている。

2013年11月にEU の海事・漁業担当委員はIUUに違反する国との取引を禁止する計画を発表した。

構造的問題を解決して違法な漁業問題に取り組むとの熱意を示せなかったとして、ギニア、カンボジア、ベリーゼの3国を非協力国に指定した。
これらの3国の漁船が獲った全ての漁業製品をEUが輸入することを禁止し、更にEUの漁船がこれらの国の水域で漁業を行うことを禁止した

更に、韓国、キュラソー、ガーナの3国に対し、違法な漁業を禁止する国際的な義務を果たしていないとして、イエローカードを渡し、改善の努力がなければ同様のレッドカードが与えられると警告した。

英国に本部を持つEJF (Environmental Justice Foundation) は2010年以降、西アフリカで監視活動を始めた。人工衛星を使って、違法漁業がEU市場に入るのを追跡し、EU当局に“IUU Alerts”を送っている。
証拠に基づく調査でこれまで数百万ドルの罰金を課しており、地域によっては違法漁業の激減をみている。

EJFによると、韓国の漁船の違法行為は特に広範であるという。2010年以来、韓国の漁船が西アフリカ諸国の水域で高価格な魚類を狙った違法漁業が200件以上報告されている。保護海域で漁をしたり、パトロールから逃げたり、罰金支払いを拒否したり、登録番号を覆って隠したり、洋上で違法に魚を積み替えたり、現地の漁師を攻撃したりしているという。

更に、韓国船では人権問題も分かっている。14歳の若い労働者を3ヶ月もの漁業の間、ひどい状況のなかで住ませ、働かせていたという。

ーーー

米国も韓国をIUU漁業国の一つとみなしている。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)は2013年1月に議会に報告書を提出した。

その国の漁船がIUU漁業を行っている国として次の10カ国を挙げたが、そのなかに韓国が含まれている。

コロンビア、エクアドル、ガーナ、イタリア、メキシコ、パナマ、韓国、スペイン、タンザニア、ヴェネズエラ

 


2014/5/23 石原産業のフェロシルト不法投棄事件の株主訴訟が和解 

石原産業が有害物質を含む産業廃棄物をフェロシルトの商品名で販売した事件に関し、株主3人が旧経営陣らに撤去費用など489億円を同社に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審が5月20日、大阪高裁で和解した。

和解内容は公表されておらず、石原産業も和解したという事実だけを発表している。
新聞報道はまちまちである。

・元取締役とその遺族計13人が計5千万円余りの和解金を同社に支払う。

・元取締役9人が和解金5千万円余りを会社に支払う。
 元四日市工場長の3人が取締役としてのコンプライアンス上の不備を認めて相当額を、残る6人は所有する同社株の売却代金を支払うという。

・株主側の弁護団は「当時の役員9人が合わせて数千万円を石原産業に支払う」としている。

・元取締役9人があわせて5000万円から1億円を和解金として会社に支払うことで合意した。

一審の大阪地裁では請求棄却となった元取締役17人の一部も和解金を払うこととなる。

石原産業によると、フェロシルトを含む土壌は現在、9割以上回収が進んでいるという。

同社では、「改めて全社を挙げ、より一層のコンプライアンスの徹底を図り、引き続き実効あるコンプライアンス体制の維持・強化に取り組んでまいります」としている。

ーーー

石原産業四日市工場では硫酸法と塩素法で酸化チタンの生産をしているが、1997年に硫酸法の廃棄物の減量化と酸化チタンの製造コストの低減をはかるため、製造工程から副生する使用済み硫酸を再生利用して副生品を生産・販売する研究開発に着手した。

2001年から土壌埋戻材を「フェロシルト」と命名して販売を開始し、2003年には三重県リサイクル製品利用推進条例に基づく「リサイクル製品」に認定された。

2005年4月までの間に約77万トンのフェロシルトを生産、そのうち約72万トンが販売され、委託業者を通じて東海3県や京都府加茂町など35カ所に埋設された。業者がケナフを植えるための肥料と偽って埋め捨てたケースもある。

2004年11月、大雨によって愛知県北丘地区でフェロシルトが流出し、川の水を赤く染めるという事件が発生した。
サンプル検査の過程でフェロシルト中から基準値を超える6価クロムやフッ素化合物も含まれていることが分かった。

石原産業は2006年3月決算で、フェロシルト回収費用326億円を特別損失に計上した。(2007年3月期には189億円、2008年3月期には87億円を追加計上)
同社は廃棄物処理法違反(不法投棄)の罪で罰金5000万円の支払いを命じられている。

「フェロシルト」の不法投棄事件で、廃棄物処理法違反(不法投棄)の罪に問われ、1審・津地裁で懲役2年の実刑判決を受けた同社四日市工場の元副工場長、佐藤驍被告の控訴審判決(2007/12)で、名古屋高裁は「不法投棄や隠ぺい工作の中心的な役割を担っていたと認められる」と1審判決を支持し、佐藤被告の控訴を棄却した。

2006/11/13 石原産業フェロシルト不法投棄事件

佐藤元取締役は、四日市工場の元副工場長で、フェロシルトの開発から製造、投棄までの責任者だった。

会社側は、同氏がフェロシルトが有害物を含む産業廃棄物と知りながら、その事実を隠して販売、処理し、同社に撤去・回収の費用負担を負わせたとしている。

佐藤被告は控訴審で、「不法投棄は会社ぐるみで、やめるのは非常に困難だった」とし、「上司の指示に従ったというよりも自己の立場から判断して犯行の中核を担った」とした一審判決の事実誤認を主張していた。

ーーー

この事件で2007年2月、フェロシルト問題を追及してきた市民団体「ダイオキシン処分場問題愛知ネットワーク」代表など、環境問題に取り組んでいる市民で、同社の株主となった3人が石原産業宛に取締役の責任を追及する訴訟を提起するよう請求した。

これに対して、石原産業の監査役は、刑事事件の被告人となった佐藤驍に対してのみ、10億円の賠償を求める訴訟を提起した。

しかし、3人は、これは社長をはじめとする他の取締役の責任を免罪にするものであり、しかも請求金額は、撤去費用のごく一部にすぎない等、取締役の責任追及としては、きわめて不十分なものであ るとして、関係する23人の取締役全員の責任を追及する訴訟の提起に踏み切った。
  @
佐藤驍に対し、489億円、A他の取締役全員に対し、489億円

大阪地裁では会社からの訴訟と株主代表訴訟が合わせて審議され、2012年6月29日、これらに対する判決があった。

訴訟 対象 被告 請求額 判決
会社 撤去回収費用  佐藤元副工場長 10億円 10億円
代表
訴訟
善管注意義務違反による損害 佐藤元副工場長 489億円 475億8400万円
他の取締役 489億円 元社長←
 工場長
254億5050万円
元工場長
(故人)遺族3人
101億8020万円
(元社長と連帯、相続財産範囲)
他の17人 請求棄却

裁判長は、フェロシルトに有害物質が含まれていることを認識しながら、出荷を続けた佐藤元副工場長に損害の根本原因があると指摘。回収費用として生じた約486億円のうち、ほぼ全額の賠償責任があると判断した。

また、直属の上司だった元社長と死亡した元工場長(遺族3人が訴訟継承)についても「適切に開発、出荷されているかの調査や確認を怠った」と述べ、元社長については損害額の5割、元工場長には2割を限度に賠償責任を負うとした。

石原産業ではこの損害賠償金額の受領の可能性は未だ不確定であるとして、業績に与える影響を見込んでいなかった。

この判決に対し、佐藤元副工場長は控訴せずに確定、他の元役員の責任を巡り、双方が控訴して争っていたと報道されていた。

ーーー

本事件では上記判決以降、会社側が何も明らかにせず、不明な点が多い。

・佐藤元副工場長は控訴せずに確定とされるが、判決の金額をいくらかでも回収しているのか?

佐藤元副工場長は控訴審の判決前に、反省の意味を表すものとして、三重県弁護士会に2000万円の贖罪寄付を行っており、また、退職慰労金8100万円は不支給になっているため、財産はないと思われる。

・実際の和解金はいくらか?

・他の元取締役の和解金は一審の判決金額(元社長で254億円)と比べ低過ぎる。
 原告の株主側(一審で勝訴したのに控訴した)がどのように判断したのか?

光ファイバーケーブルと自動車用ワイヤーハーネスの2件の価格カルテルで課徴金合計88億円を支払った住友電工の場合、経営陣側計22人が解決金5億2000万円を支払うことなどを条件に大阪地裁で和解が成立した。
その他の例でも、損害額に対する和解金の割合は今回よりもはるかに大きい。

2014/5/9 住友電工の株主代表訴訟が和解

仮に和解金を1億円としても、会社が支払った罰金相当額5000万円は超えるものの、回収費用などは全く賄えず、1人あたりではごく少額である。
佐藤元副工場長が控訴せず、判決が確定したとされるが、支払い能力がないと思われ、回収できていない筈。

佐藤元副工場長との差が大きすぎる。
1審では元社長には佐藤副工場長の約1/2、元工場長には約1/5の支払いを命じている。

元副工場長の払われなかった退職慰労金は8100万円とされる。
元社長などは全て(恐らくこれ以上の)退職慰労金を受け取っており、支払い能力に問題はないと思われる。


2014/5/26     ロシアのGazprom 、中国への天然ガス供給契約に調印

ロシアと中国は5月21日、Gazpromによる中国石油天然ガス集団(CNPC)への天然ガス供給で合意し、契約に調印した。中国訪問中のプーチン・ロシア大統領と中国の習近平国家主席がこれに立ち会った。 (このほか、4つの契約書が調印された。5/27に記事)

ウクライナ情勢をめぐり欧州諸国がロシア産ガスへの依存度を引き下げようとするなか、アジアでの新たな協力関係構築を目指すプーチン大統領にとっては成功を収めた格好となった 。

ロシアから中国への天然ガス輸出計画は1994年から交渉してきたが、価格で折り合いがつかず、平行線をたどってきた。

1994   天然ガスパイプライン建設のMOU
1999   Gazprom とCNPC、天然ガス売買のLOI
2006   中国とロシア、天然ガス供給のMOU
2008   中国とロシア、副首相級の天然ガス契約の交渉開始
2011   価格交渉がデッドロックに
2012   プーチン訪中で交渉再開
2013   習近平訪ソ、CNPCとGazpromが初期契約を締結

今回、 プーチン大統領が輸出価格引き下げにつながる税制優遇策を適用する方針を伝え、妥結した。

契約によると、ロシア側は2018年から30年間にわたり毎年380億m3の天然ガスを供給する。総契約額は4,000億ドルを上回ったとみられる。

中国の天然ガスの需給状況は以下の通り。(億m3)

  生産 消費 輸入
2012 1,070 1,460 390
2013 1,170 1,680 510

なお、2013年のロシアからの欧州向け天然ガス輸出は約1,600億m3となっている。

契約では、Gazpromが天然ガス開発、ガス処理、ロシア内のパイプライン建設を担当、CNPCが中国内のパイプライン建設を担当する。
プーチン大統領は、ロシアが天然ガス探査と中国に続くパイプラインの建設に550億ドルを投資すると表明した。
また、中国がロシア側のインフラ開発などを支援するために約200億ドルを支払う。

ロシアのエネルギー相は、中国が最大250億ドルのガス代を前払いする可能性があることを明らかにした。

プーチン大統領は今回の契約について「旧ソビエト連邦時代を含め、ガス部門で最大規模の契約となった」とし、「ロシアのガス部門にとり歴史的な出来事となった」と述べた。

価格は「商業機密」として明らかにしていないが、数量 380億m3x 30年で4000億ドルとすると、価格は1000m3当たり350ドル程度となる。西欧諸国への供給価格は長期契約の下で350ー380ドルとなって おり、Gazpromは350ドル以下での供給には反対したとされる。

これまでの交渉では、ロシア側の提示は最低 9.67$/MMBTU(387$/1000m3)であったとされる。
 

ガスは西シベリアのガス田からウラジオストックまでをつなぐ計画中のEastern Pipeline で輸送する。

注)石油については既にパイプラインがつながっている。


プーチン大統領は、「ロシアと中国は西ルートでもガスを供給することを協議する」と述べ、西シベリアからモンゴルの西側を通り中国につなげる2本目も敷設することを明らかにした。

2006年3月のプーチン・胡錦涛会談で 西シベリアからアルタイ共和国経由で西気東輸」(中国の東西ガスパイプライン)につなぐAltai Pipelineの建設で合意したが、価格交渉が難航したこともあり、これまで実現していない。

中央アジアからのガスパイプライン「西気東輸」につながっている。


 


2014/5/27   ロシアと中国のエネルギー関係契約(2) 

プーチン大統領の訪中時に、昨日の記事の「GazpromによるCNPCへの天然ガス供給」のほか、下記の契約が締結された。

1.NovatekとCNPCのLNG供給契約

ロシアの民間ガス会社Novatekは5月20日、プーチン大統領の立会いの下、中国のCNPCとの間で Yamal LNG (Total 20%、CNPC 20%出資のJV)のLNGを年間300万トン、20年間供給する契約を締結した。

価格はJapan crude cocktail を基準に決定される。

韓国や台湾なども含めてアジア太平洋地域の LNG 価格の多くは、日本に輸入される全原油平均価格(Japan crude cocktail)を指標として、これにリンクしたものとなっている。
LNG
価格=係数 × JCC +定額

Yamal LNG 計画は2020年までに1650万トン/年のプラントを建設することになっており、2017年に第一期の550万トン/年が生産を開始する。

ーーー

2.Rosneft とPetroChina、JVの天津製油所への原油供給契約

RosneftとPetroChina は2007年10月にPetroChinaが51%、Rosneftが49%のJV 中露東方石化(天津)を設立した。
300億人民元を投じて年産1300万トンの製油所を建設するもので、1300万トンの常圧・減圧蒸留装置、270万トンの連続改質装置、400万トンの残油改質装置、芳香族とプロピレン製造装置(能力非開示)などの装置を含んでいる。

製油所の完成は2015年を予定しており、ロシア側が原油の約70%を市場価格で供給し、残りの30%はアジアで手配する。

2010/9/30  PetroChinaとロシアのRosneftが天津で製油所建設

今回、原油供給契約を締結した。

ーーー

3.SinopecとSibur、戦略的協力契約を締結

今後、取引の拡大やガス処理・石化計画での協力などを検討する。

その一環として、Shanghai Chemical Industry Parkにブタジエンにトリルゴム (NBR) のJVの設立を決めた。

能力:50千トン/
出資:Sinopec 74.9%、Sibur 25.1%
技術:Siburがライセンス

両社は2013年にロシアのKrasnoyarsk にNBRのJVを設立している。

能力:56千トン/
出資:Sinopec 25%+1株、Sibur 75%-1株
技術:Siburがライセンス

ーーー

4.神華集団とEn+ Group Ltd、中ロ国境近くのZashulanskoye炭鉱の開発契約締結

両社は50/50JVのRazrez Ugol LLCを設立し、中ロ国境近くのロシアのザバイカル地方(Transbaikal Territory)のZashulanskoye炭鉱を開発する。
2年以内に承認を得ることを予定している。

世界最大の石炭会社である神華集団にとり、ロシアでの最初の計画となる。

両社はこれに加え、代替エネルギーでも協力する。

ーーー

5.中国国家核電技術公司とRosatom State Atomic Energy Corp、水上原子力発電所で協力

ロシア連邦原子エネルギー局で低容量の浮かぶ原子力発電所(Floating nuclear power stations)の建造が進められている。
2基(70MWと300MW)の改良型KLT-40Sソビエト海軍核推進動力炉をそなえる施設で、造船所で建設し、電力消費地の沿岸部まで曳航する。

両社はこの分野で協力することとなったが、今後、それぞれの権利や責任の明確化が必要とされる。



2014/5/28   ルノー、韓国LG Chem と将来の電気自動車のバッテリーを共同開発、GMはバッテリーをLGに統一

Renault は5月21日、Renault とLG Chemが次世代のゼロエミッションの自動車用のバッテリーを共同開発する契約に調印したと発表した。

2〜3年後に販売されるRenault の新しい電気自動車に使われる次世代バッテリーの開発のため両社が協力する。LGが特許を取得した高密度で省エネのリチウムイオンバッテリーを使用する。

現在の電気自動車は最高速度が時速200km程度であるが、両社は時速400kmが可能な電気自動車の開発を検討している。

Renault は現在、電気自動車では Twizy、Zoe、Fluence Z.E. 、Kangoo Van Z.E. を販売しており、韓国ではRenault 三星自動車がFluence  Z.E. をベースにしたSM3 Z.E.を販売している。

このうち、LG Chem はTwizy、Zoe、SM3 Z.E.の3モデルにバッテリーを供給している。

Renault とフランス原子力庁(CEA : Alternative Energies and Atomic Energy Commission) は2012年7月、電気自動車用次世代電池の量産開発でLG Chemと提携すると発表した。

Renault とCEAは2010年に電気自動車の分野での戦略的提携を開始した。
その一部に新しいバッテリー技術の開発が含まれている。CEAは電気自動車用新世代バッテリーを開発している。

LG Chemが電気自動車用次世代電池の工場をフランス国内に建設し、2015年末からEV用電池の現行品の量産を開始する というもので、追って契約を締結するとしていた。Renault が2012年末に発売する小型電気自動車ZoeもLG Chem製の電池を採用することが明らかにされた。

Renault 日産グループには、バッテリーを製造するAESC(オートモーティブ エナジー)がある。
  AESCは日産自動車 51%、日本電気 42%、NECエナジーデバイス 7%のJV。

Renault と日産自動車は当初、AESCの技術をベースにした 電気自動車用電池工場を、2012年半ばまでにRenault のフラン工場に建設する計画を発表していたが、この計画は延期された。

Zoeの電池も、AESCの技術がベースになると考えられていたが、LG Chemの電池が採用された。

AESCの生産能力が限られているため、日産自動車は自ら出資するAESCの電池を優先して使い、RenaultはLG Chemの電池を採用することになったとされている。

ーーー

GMはエコカー用電池を韓国LG Chem製に統一すると明らかにした。

LG Chemは2009年1月、「2010年に発売予定のGMの電気自動車 Chevy Volt に搭載されるリチウムイオン・ポリマー・バッテリーを供給する唯一の企業として選ばれた」と発表した。

2009/1/17 LG化学、GMに電気自動車用バッテリー独占供給へ

LG Chem子会社のCompact Powerは2010年7月、ミシガン州Hollandでリチウムイオン電池工場の起工式を行い、オバマ大統領が出席した。

工場は2012年稼動の予定で、A123 SystemsとJohnson Controls-Saft  と組み、プラグインハイブリッドベースで20万台分(E-REV=充電用エンジン搭載車 "Chevy Volt" ベースでは5万台分)を生産する。
投資額は303百万ドルで、オバマ政権の24億ドルの補助金から151百万ドルを受ける。

2010/7/17 オバマ大統領、LG化学の米工場起工式で祝辞

この工場はいろいろな問題があり、2013年7月にようやく稼動したが、一旦停止し、10月末から生産を開始した。

2013/9/10 LG化学のミシガン州のリチウムイオン電池工場、生産開始2か月で停止

LGとGMは2011年8月、LGによるChevrolet Volt やOpel Ampera用のバッテリー供給での協力関係を拡大し、電気自動車を共同で開発すると発表した。

2011/8/29 韓国LG、GMと電気自動車の共同開発へ 

GMは昨年発売した5ドアハッチバックタイプの小型電気自動車Spark EV では A123 Systems の電池を使っている。

しかし、2013年1月にA123は中国の万向集団(Wanxiang Group Corporation)に買収されたため、GMはバッテリー購入先から同社を排除し、LG Chemに統一することを決めた。中国への技術流出を警戒し た。

A123 Systemsは2001年にマサチューセッツ工科大学からスピンアウトして設立された。創業者はMITの教授のYet-Ming Chiangで当初、GEが10%出資していた。
リチウムイオンバッテリーの性能を向上させるナノスケール材料を開発した。

同社は、オバマ政権が打ち出したGreen New Deal 政策を通じ、2億4900万ドルの助成金を受けていた。

A123は2012年半ばに資金難に陥った。

同年8月、同社は万向集団(Wanxiang Group)に株式の過半数を譲渡する契約を結んだ。最終的に万向集団は、A123 Systemsの株式を80%まで買い進める計画であった。

しかし、軍事用の先進的なバッテリー開発計画があることから米国の外国投資委員会(CFIUS)の承認が得られず、議会からも、税金で開発した重要な知的財産を外国に売り渡すのかとの批判が相次ぎ、計画をとりやめた。

2012年10月16日、破産法11条の適用を申請した。

A123は米国防総省向け事業はナビタス・システムズに225万ドルで売却することで当局の理解を得た。

2012年12月の競売で
万向集団は2億5660万ドルで落札した。(NECとジョンソン・コントロールズも共同で応札していた。)

この買収は2013年1月に米外国投資委員会から承認を受けた。

ーーー

LG Chemは電気自動車用バッテリー分野で、韓国の現代・起亜自動車と電気自動車メーカーのCT&T、米国のGMと自動車用部品メーカーのEaton Corporation、中国の長安汽車、ボルボ、ルノーなど世界中の各社に供給している。

2010/4/29 LG化学、ボルボに電気自動車のバッテリー供給

LG Chem は韓国と米国に次いで、中国にもバッテリー工場を建設する計画を明らかにした。
立地は、南京か広州か天津のいずれかになる。

中国では三星SDIが本年4月に中国の自動車部品メーカー安慶環新集団(Anqing Ring New Group)との合弁会社を設立、サムスン電子が西安で建設している半導体工場の隣接地に工場を建設する。

SK Innovationも2013年7月に北京汽車集団との合弁会社を設立した。

日本の化学会社はリチウムイオン電池の部品(正極材、負極材、電解液、セパレーターなど)で増設を行い、しのぎを削っている。

例 2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強

しかし、将来的には中国勢などの進出で競争相手が増え、価格が下がるのは目に見えている。

付記

三菱ケミカルホールディングスは2014年8月1日、三菱化学が9月にリチウムイオン電池部材の正極材事業から撤退すると発表した。
電気自動車(EV)用電池向けへの販売が苦戦していた。将来の売り上げ見通しが立たないため、水島事業所(岡山県倉敷市)にある正極材の生産設備を減損処理し、特別損失約10億円を計上した。

それに対し、LG Chemは早々とシステム開発を行い、システムで世界を制覇しようとしている。

日本の化学会社にとって、将来戦略の手本になると思われる。

ーーー

LG Chem は5月18日、日本の宇部マクセルに安全性強化セパレーター関連特許を有償で販売する内容のライセンス契約を結んだと発表した。

LG ChemのSRS技術はバッテリーの核心素材セパレーターにセラミックをコーティングし、熱と機械的強度を高め、内部のショートを防ぐ役割をする もので、リチウムイオンバッテリーの安全性を決める核心技術としている。

韓国の中央日報は「“バッテリー宗主国”日本に特許輸出」と誇らしげに書いている。


2014/5/29 ユニチカ、金融支援を要請 

ユニチカは5月26日、主力取引銀行に金融支援を要請したと発表した。

繊維事業の縮小や、それに代わる収益源の育成が遅れたことから業績が低迷しているが、創業事業である繊維事業からの大幅な撤退を含む聖域なき構造改革を断行することとした。

これまでは、「(財務悪化で)スピーディーな構造改革や、稼げる事業への大型投資ができなかった」

新中期経営計画を新たに策定し、低採算事業及びノンコア事業の縮小・撤退による事業ポートフォリオ改革を通じて、経営資源を高収益事業である高分子事業及び成長市場であるアジア地域向けの事業へ積極的に投下し、持続的な成長を目指す。

産業繊維事業のうち、ポリエステルの短繊維など汎用品事業を縮小する。この製品を生産する岡崎事業所も規模を見直す。
このほかにも採算が低く、中核事業でない部門は縮小、撤退する方針で、「この1年間で構造改革をやり遂げたい」としている。

大胆な事業ポートフォリオ改革には、多額の自己資本の毀損を伴うこと、また成長分野への積極的な投資を行い、一刻も早い抜本的な成長戦略へのシフトを可能とするために、金融支援を求める。

2015年3月期で440億円の特別損失を計上するため、370億円の当期損失を見込む。
2014年3月末の連結ベース純資本は193億68百万円のため、160億円の債務超過に陥る。

金融支援の内容は以下の通り。

1)主力取引銀行に優先株を発行、払込金額をそのまま、各行への債務返済に充てる。

A) 三菱東京UFJ銀行 217.4 億円  優先株配当率 年1.20%
       
B) みずほ銀行 36.35億円  
  三菱UFJ信託銀行 21.24億円  
  (小計) 57.59億円  優先株配当率 年2.374%
       
合計 274.99億円  払込金額を各行への債務の弁済に充てる

2) ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第壱号投資事業有限責任組合(JIS)に優先株を発行

総額100 億円  優先株配当率 年6.0%
資金は下記の成長分野への積極的な投資に充てる。

(ア)フィルム事業 国内・中国向け差別化フィルム拡販 1,850 百万円
(イ)樹脂事業   耐熱樹脂拡販 2,900 百万円
(ウ)不織布事業  アジア市場向けPETスパンボンド拡販 4,800 百万円

注)JISは産業再生を視野に入れた事業の再編・再生をサポートする投資ファンドで、日本政策投資銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、三菱商事が各14.9%出資している。

3) 債務返済条件の変更の要請

借入先金融機関に対し、債務残高の維持を目的として、借入約1,600 億円について返済期日の2017年9月末までの延長を要請。
債務免除又は金利の減免は要請していない。


以上により、このままでは2015年3月末時点で連結ベースで約160億円の債務超過に陥る見込みだが、優先株発行で総額約375億円の資金を調達し、純資産額が約215億円まで増加することに加えて、当該資金により借入金の一部を弁済することで有利子負債が約275億円減少する。

付記

経済産業省は6月27日、ユニチカから提出された産業競争力強化法に基づく「事業再編計画」を認定した。
外部出資による成長投資資金の確保と事業ポートフォリオ改革を通じて、高収益事業である高分子事業及び成長市場であるアジア地域向けの事業へ経営資源を積極的に投下し、持続的な成長を目指す。
今回の認定により、ユニチカが行う資本金の増加に係る登録免許税の軽減措置を受ける。

ーーー

新中期計画の概要は以下の通り。

(1)アジア市場向け、新素材・新用途向け拡販

成長市場である中国及び東南アジアへの製品供給能力の向上を図るとともに、国内外で高付加価値品を導入するための投資を積極的に実施することで、収益事業の拡大を目指す。

@ フィルム事業:アジア地域での能力増強と差別化品の拡販
   ・包装用ナイロンフィルムのグローバルトップブランド維持・強化
   ・新フィルム開発と新事業の展開:耐熱フィルム、非食品用ナイロンフィルム

A 樹脂事業:新素材・新用途向け拡販と、中央研究所開発素材の積極的な製品化
   ・グローバルニッチ戦略の推進

B 不織布(スパンボンド)事業
   ・アジアグローバルシェア拡大

(2)事業ポートフォリオ改革

事業を収益性、将来性、グループシナジーを踏まえて峻別し、事業及び子会社数をスリム化することで、事業ポートフォリオの改革を行い、成長事業へ経営資源を集中投下する。

(3)管理コスト削減と組織力強化

抜本的事業再構築の推進、連結経営体制の整備及び地道なコスト削減努力を推進することで、収益体質の強化を図る。

(4)財務体質の健全化

各種施策を実現するための資金余力、財務基盤を確保することで、本計画を着実に遂行する。

(5)損益計画(億円)

  2013年度
実績
2014年度
予想
2017年度
計画
売上高 1,627 1,650 1,460
営業利益 68 80 140
経常利益 47 60 120
当期利益 6 -370 110

ーーー

ユニチカは1969年にニチボーと日本レイヨンが合併して誕生した。

  ニチボー 日本レイヨン
1889年 尼崎紡績会社設立  
1918年 摂津紡績と合併、
大日本紡績と改称
 
1926年   日本レイヨン設立
1964年 ニチボーと改称  
1969年

 合併、ユニチカ 発足

高分子事業をコア事業とする国内屈指の素材メーカーであり、特にナイロンフィルムにおいては、国内・アジア地域において圧倒的なシェアを有している。


 

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

東京電力福島第1原発事故後、安全性の保証をせずに大飯原発3、4号機を再稼働させたとして、福井県の住民らが関西電力に運転差し止めを求めた訴訟で、福井地裁は5月21日、現在定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

付記

上記判決は控訴審で係争中 で、差し止めの効力は発生していない。

福井地裁は2015年12月24日、周辺住民らが求めていた再稼働差し止めの「仮処分」の申し立てを却下する決定をした。

原発差し止め訴訟で住民側が勝訴したのは、金沢地裁が2006年、北陸電力志賀原発2号機の運転停止を命じた判決に次いで2例目。
2009年 に名古屋高裁で原告逆転敗訴、2010年 最高裁で上告棄却)

今回の判決は地震大国日本における原発の基本の問題を正面から取り上げており、ほとんど全ての原発に当て嵌まり、影響は大きい。

判決内容は以下の通り。

判決全文
 前半 http://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2014/05/e3ebefe20517ee37fc0628ed32be1df5.pdf
 後半 http://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2014/05/8d7265da36628587548e25d7db234b7d.pdf

地震が起きた場合、止める、冷やす、閉じ込める(使用済み核燃料)という三つの要請がそろって初めて原発の安全性が保たれる。

大飯原発の欠陥:地震の際の冷やす機能と閉じ込める構造に欠陥がある。

 ・ 1260ガルを超える地震

「1260ガルを超える地震によってこのシステムは崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能となり、メルトダウンに結びつく。この規模の地震が起きた場合には打つべき有効な手段がほとんどないことは被告において自認しているところである。」

「大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である。むしろ、我が国において記録された既往最大の震度は岩手宮城内陸地震における4022ガルであり(争いがない)−−−」

 ・ 700〜1260ガルの場合

関電は、このような地震が炉心損傷に結びつく原因事実になることは自認しているが、これらの事態に対し、有効な手段を打てば、炉心損傷には至らないと主張。

下記の理由で、これは期待できない。

いったんことが起きれば、事態が深刻であればあるほど、それがもたらす混乱と焦燥の中で適切かつ迅速にこれらの措置をとることを原発従業員に求めることはできない。

対応策をとるためにはいかなる事象が起きているのかを把握できていることが前提になるが、この把握自体が極めて困難である。いったん大事故が起これば、その事故現場に立ち入ることができないため事故原因を確定できないままになってしまう可能性が極めて高い。

仮に把握できたとしても、対処すべき事柄は極めて多いことが想定できるのに対し、全交流電源喪失から炉心損傷開始、メルトダウンの開始に至るまで、時間は限られている。

これらの対策は普段からの訓練や試運転にはなじまない。
たとえば空冷式非常用発電装置だけで実際に原子炉を冷却できるかどうかをテストするというようなことは危険すぎてできようはずがない。

とるべきとされる防御手段に係わるシステム自体が地震によって破損されることも予想される。

放射性物質が一部でも漏れればその場所には近寄ることさえできなくなる。

大飯原発に通ずる道路は限られており施設外部からの支援も期待できない。

(原発事故で想定通りの対応ができないことを、若杉冽の小説 「原発ホワイトアウト」が描いている。)

過去において、原発施設が基準値振動を超える地震に耐えられたという事実が認められたとしても、同事実は、今後、基準値振動を超える地震が大飯原発に到来しても施設が損傷しないということをなんら根拠づけるものではない。

 ・ 700ガル以下の場合も施設損壊の恐れはある。(外部電源と冷却機能維持のための主給水の双方が同時に失われるなど)

   ーーー

「この地震大国日本において、基準値振動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準値振動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる。このような施設のあり方は原子力発電所が有する前記の本質的な危険性についてあまりにも楽観的といわざるを得ない。」

 注)原子力規制委員会は大飯原発の安全審査で、地震の想定を大幅に見直すよう要求、関電は基準地震動を856ガルに引き上げた。

使用済み核燃料の危険性

「使用済み核燃料プールにおいては全交流電源喪失から3日を経ずして冠水状態が維持できなくなる。ーーー そのようなものが、堅固な設備によって閉じこめられないままいわばむき出しに近い状態になっているのである。」

「使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるには膨大な費用を要するということに加え、国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ない」

「国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るという観点からみると、本件原発に係わる安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ちうる脆弱なものであると認めざるを得ない」

関電側の、原発停止による「国富の喪失」と「CO2問題」の主張に対しては、以下の通り否定している。

「被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。

我が国における原子力発電への依存率等に照らすと、本件原発の稼動停止によって電力供給が停止し、これに伴って人の生命、身体が危険にさらされるという因果の流れはこれを考慮する必要のない状況であるといえる。

被告の主張においても、本件原発の稼動停止による不都合は電力供給の安定性、コストの問題にとどまっている。

このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。

また、被告は、原子力発電所の稼動がCO2(二酸化炭素)排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。」

ーーー

毎日新聞の「風知草」(5月26日)は次の通り述べている。

福井地裁の原発運転差し止め判決の評価は割れているが、原発訴訟史上注目の一幕であることは疑う余地がない。
なぜか。
ふつう、原発訴訟は、原告が負け、被告(電力会社や国)が勝つ。今回もどうせ高裁でひっくり返ると見るのが従来の常識だが、どっこい、3・11 を経て前提が変わっている。
どう変わったか。
裁判官の間にも原発政策への懐疑が生じた。2審の審理にどのくらい時間がかかるか分からないが、高裁判決といえども電力会社の肩を持たない可能性がある。

「しょせん地裁段階」と侮れぬ福井判決のインパクトはそこにある。

従来の原発訴訟判決の指針だった、1992年の伊方原発訴訟最高裁判決の核心をかみ砕いて言えばこうなる。 、
 「安全基準の審査指針は専門家が集まってつくったのだから、よほど明白なミスがない限り、行政の判断を尊重する……」

ーーー

原子力規制委員会の田中俊一委員長は、「司法の判断について申し上げることはない。大飯については従来通り、われわれの考え方で審査をしていく」と述べ、安全審査を続ける意向を明らかにした。地震想定については、「科学技術的な知見を踏まえて判断する」と述べ、審査への影響を否定した。

規制委は設立以来、あくまで規制基準をクリアしているかどうかを審査するだけで「再稼働の是非は判断しない」としている。

安倍政権はその日本の基準を「世界で最も厳しい水準」とする。

菅元首相が世界一の根拠を質問主意書でただしたところ、閣議決定した答弁書は、「IAEAや諸外国の規制基準を参考にしながら世界最高水準となるよう策定した」というもので、答えになっていない。

菅元首相が視察したフィンランドのオルキルオト原発3号機は、飛行機の衝突にも耐えられるよう格納容器が二重になっており、メルトダウンに備え、溶けた核燃料を受け止めるコアキャッチャーを入れたという。その結果、建設費は著しく上昇した。
日本はもちろん、いずれもやっていない。コアキャッチャーは中国でさえ導入しているというが、日本では設置義務はない。

原子力規制委員会の「新安全基準骨子案に対するご意見一覧」 には「コアキャッチャーが必要」とする意見が40件ほど載っているが、採用されなかった。
 

菅氏は「要するに世界一はインチキなんだよ」と喝破する。(毎日新聞 5月28日夕刊)
 

再稼働には地元の同意を得る必要があるが、今回の判決はこれに影響を与える。

 


2014/5/31 SABIC、Lockheed Martinとカーボンナノ構造材料のJV、韓国のSK総合化学と高機能ポリエチレンのJVを設立 

SABICとLockheed Martin は5月15日、多方面の市場向けにカーボンナノ構造材料を開発するためサウジにJVを設立することに向けパートナーシップをつくると発表した。

両社はカーボンナノ構造材料とそれを浸出した製品の開発、工業化の確認、テスト、スケールアップ、製造販売に向け協力する。

Lockheed Martin は米国の航空機・宇宙船の開発製造会社で、1995年にLockheed Martin Marietta合併して生まれた。

Lockheed Martin の子会社のApplied NanoStructured Solutions, LLC はナノテクノロジーの開発、商業化を行っており、カーボンナノ構造体を連続製法でいろいろな物質に浸出する革命的方法を開発した。

木星探査機のJunoは2011年8月に打ち上げられ、2013年10月には地球スイングバイによる増速に成功した。約5年をかけ木星の極軌道に投入され、木星の組成、重力場、磁場、極付近の磁気圏の詳細な調査を行う予定である が、これにはApplied NanoStructured Solutionsのカーボンナノ構造体浸出繊維が使用されている。

ーーー

SABICとSK総合化学(SK Global Chemical)は5月26日、SKの最新ポリエチレン技術を使って高機能ポリエチレン製品を製造するための50/50JVを設立する合弁契約に調印した。

Nexlene™ はSKが2010年に触媒からプロセス、製品設計まで全体を自社技術で開発した高機能ポリエチレンで、高機能フィルム、自動車内装、靴、ケーブルの絶縁などに使われる。

既存のポリエチレンと比較し、インパクトに強く、透明性に優れ、加工性もよい。

両社のJVはシンガポールに本拠を置き、一連のプラントを操業することとなる。

第一工場はSKが最近蔚山に完成し、5月に生産を開始した年産23万トンのプラントで、メタロセンLLDPEとポリオレフィン・プラストマー、ポリオレフィン・エラストマーを製造する。
このシステムは溶液法のため、
octene-1 コポリマーのポリオレフィン・プラスとマーの生産が可能である。

発表では595百万ドルのJVとしており、SKとして建設したプラントを買収するものと思われる。(建設予算は345百万ドルとされていた)

第二工場はサウジに建設する予定で、その後、世界中に建設する。

付記

SK Global ChemicalとSABIC は2015年7月5日、シンガポールにJVを設立する契約に調印した。
シンガポールにNexleneプラントを建設する計画で、第二工場はサウジアラビアに建設する。

SABICは以下の通り述べている。

新しいJVにより、両社は高度に特化した高機能ポリエチレン市場に参入し、世界中の需要家に高級な高価値ポリマーを供給できることとなる。
SK Global との提携により、SABICのこれまでの広範囲の製品群に革新的な新製品ラインが加わり、アジアやそれ以外の需要家にコスト効率がよく、顧客が求める製品を提供できるようになる。


次へ

最新分は  http://blog.knak.jp