2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  2006-5-1 http://blog.knak.jp


2014/9/1 水俣病被害者救済特別措置法の判定結果 

厚労省は8月29日、水俣病被害者救済特別措置法に基づく救済措置に係る判定結果を発表した。

2010年5月1日から2012年7月31日まで救済に係る申請を受け付けた 。
各県における判定結果は以下の通り。(新潟県は暫定値)

 
  一時金対象 療養費対象 該当せず 合計 従来の保健手帳(廃止)から被害者手帳への切替
水俣病
(チッソ)
熊本 19,306 3,510 5,144 27,960 14,797
鹿児島 11,127 2,418 4,428 17,973 1,998
新潟水俣病
(昭和電工)
新潟
(暫定)
1,811 85 77 1,973 29
合計
67.3%

 32,244

12.6%

 6,013

20.1%

9,649

100%

47,906

 

16,824

判定基準 手足の先の感覚(触覚、痛覚)が鈍いなどの症状 左には当たらないが、しびれや震え等の一定の症状    

判定無しで切替

救済処置 一時金210万円 療養費
(医療費自己負担分など)
   

医療費自己負担分支給

療養費
(医療費自己負担分など)
療養手当
(月12,900〜17,700円)

救済法は原則、1969年11月30日までに生まれた人を救済対象に指定している。
熊本県では、その後に生まれた466人からも申請があり、へその緒でメチル水銀摂取が確認できるなどした4人が救済対象に認められた。

ーーー

水俣病患者救済の経緯は以下の通り。

1956年5月1日に水俣病が公式確認され、1968年に水俣病が初めて公害と認定された。

2006/5/1 水俣病50年

なお、新潟では1971年の新潟水俣病第1次訴訟の判決で、原因は昭和電工の工場排水であることが確定した。(新潟水俣病)

1969年に公害健康被害救済特別措置法が制定され、患者認定制度が始まった。

補償協定の概要
項目 内容                                  
一時金 Aランク 1,800万円/人+近親者慰謝料(最高1,900万円)
B     1,700      +近親者慰謝料(最高1,270万円)
C     1,600 
年金 170〜67千円/人・月
医療費 患者医療費全額を支払い
その他
継続補償
医療手当、介護費、温泉治療費、針灸、葬祭費
患者医療生活基金(チッソが7億円拠出)からの支給

しかし、患者の認定の条件(「52年判断条件」)が極めて厳しく、少数の患者しか認定されなかった。
(熊本、鹿児島の2県で2012年2月29日現在で2,273人、棄却は15,248人)

2013年に最高裁で「52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄した結果、2014年に改定指針が出たが、これにも問題がある。

また、非認定患者の救済のため、1995年に政治解決が行われた。
しかし、最高裁の認定基準を巡る判決を受けて、再び訴訟が続出したため、「第二の政治解決」として出されたのが、この水俣病被害者救済特別措置法である。


(患者認定基準問題)

1971 環境庁事務次官通知
水俣病の要件として、手足のしびれなどの主症状のうち「いずれかの症状がある場合」と明記。
1977 環境庁環境保健部長通知(事務次官通知を覆す)
「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」を条件
(「昭和52年判断条件」)
2001 関西訴訟・大阪高裁判決
「汚染された魚介類を多く食べ、指先や舌先の感覚に障害があれば認定できる」
「52年判断条件」を事実上否定。
2004 最高裁 大阪高裁の基準を支持
国は、「最高裁の判決は有機水銀中毒症の判断基準であり、水俣病と有機水銀中毒は別」とし、水俣病認定基準の見直しは行わないことを言明。
2013 最高裁判決は、裁判所が患者認定を独自に審査しうるとするとともに、「52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄。

手足の先の感覚障害だけの水俣病が存在しないという科学的な実証はない。
「52年基準」の症状の組み合わせが認められない場合でも、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえない。

2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決 

2014 環境省が新指針
感覚障害のみでも認定できる」とはしたものの、「水俣病を発症するに至る程度のメチル水銀」の摂取を証明する客観的な資料の提出を求める。

多くの被害者にとって水銀ばく露を証明する書類を今から確保するのは極めて困難で、これが救済対象の拡大につながる可能性は低いとみられている。

2013/1/14  水俣病認定基準 

なお、認定を求めた訴訟では、高裁判決では、裁判所が患者認定審査をできるというものと、県の裁量を重視し、司法は県の判断が不合理かどうかを審理するというものに分かれていた。

2013年4月の最高裁判決は「裁判所においては、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症状と原因物質との間に個別的な因果関係があるかどうかなどを審理の対象として、水俣病に罹患しているかどうかを個別具体的に判断すべきだと解するのが相当」とし、独自に審査しうるとした。

2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決

 

(政治解決)

「52年判断基準」で認定されなかった多くの人たちは、1980年から行政の責任を問い、水俣病と認定するよう求めて各地で提訴した。

1995年、自民党・社会党・新党さきがけの連立与党三党は水俣病の未確認患者問題につき最終解決策を決定した。
村山首相は原因の確認・企業への対応の遅れを首相として初めて陳謝した。

「メチル水銀の影響が否定できない」約1万人の未認定患者を救済対象 
 
四肢末端優位の感覚障害 医療手帳 チッソから一時金260万円、
国・県から医療費自己負担分全額、
月額約2万円の療養手当
感覚障害以外で一定の神経症状 保健手帳 医療費自己負担分(上限付き)支給

関西訴訟で国側が敗訴 後、全額支給に

これにより、ほとんどの患者が和解に応じ裁判を取り下げたが、「関西訴訟」の原告だけが行政の責任を問い続けた。

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。

2004年10月の同訴訟の最高裁判決で、最高裁は、「一定の条件があれば感覚障害だけで水俣病と認められる」とした大阪高裁の判断を支持した。

この結果、熊本県と鹿児島県への患者認定申請者が増加、認定申請者が4,500人を超えている。

これに対し国は、現行の水俣病認定基準の見直しは行わないことを言明、熊本県、鹿児島県では、認定審査会の委員が「司法と行政の二重の認定基準が存在し審査ができない」として、再任を拒否、審査業務が停滞した。

このため、未認定患者を救うため2009年7月に特措法が成立した。

2009/7/3 水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

鳩山内閣は20104月、水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法の「救済措置の方針」を閣議決定した。

一時金:210万円
療養手当
療養費の自己負担分
被害者団体計3団体に、活動費用や社会福祉施設の運営費

一時金や加算金は原因企業のチッソが負担する。
但し、チッソは債務超過に陥っていることなどから、国は熊本県が出資する財団法人を通じ、資金支援。

2010/4/16 水俣病「救済措置の方針」を閣議決定

2010年5月1日から2012年7月31日まで救済に係る申請を受け付けた。
今回、3県の申請者47,906人のうち、20.1%の9,649人が申請棄却となった。

申請の棄却理由は、一定の症状がなかったり、年齢や住んでいた地域が対象外であったりすることなど。

熊本県で最大の被害者団体「水俣病不知火患者会」の大石利生会長は「救済されるべき被害者が何の根拠も示されずに切り捨てられている」と話している。

このうち、新潟県で96人が異議を申し立てている他、救済対象外となった約500人が熊本、新潟、東京の3地裁で国などを相手取り損害賠償訴訟を起こしている。
加えて、7月末時点で1,043人が公害健康被害補償法に基づく患者認定を申請している。

石原伸晃環境相は8月29日の閣議後記者会見で「これをもって救済終了とは全く考えていない」と述べた。

蒲島熊本県知事は、チッソが全事業を移管した子会社JNCの株式を売却できる条件である「救済終了」と言える状況かどうか問われると、「公健法の認定を求めている人もおり、株式売却を議論する状況ではない」と答えた。

 


2014/9/2   武田薬品のアクトス問題、米裁判所は陪審員表決却下要請を拒否、武田は発がん性否定データを発表

米ルイジアナ州連邦地方裁判所の陪審は2014年4月、武田薬品の2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱癌を主張する製造物責任訴訟において、武田に60億ドル、米国でアクトスを共同で販売しているEli Lillyに30億ドル、合計90億ドルの懲罰的損害賠償の支払いを命じる評決を出した。

既に、原告Terrence Allenの主張を認める陪審評決があり、損害賠償として 147.5万米ドル が命じられている。

武田とEli Lillyの契約では、訴訟に係る費用および損失は武田が負担することになっている。

2014/4/11 米連邦地裁の陪審、武田薬品に60億ドルの懲罰的賠償支払の評決 

武田薬品はこの評決を不服とし、審理後申立てならびに上訴を含め、可能なあらゆる法的手段で対抗する方針を表明した。
ルイジアナ州連邦地方裁判所に対しては、陪審認定を無効とする請求と、再審の請求を別々に行った。

その一つの懲罰的損害賠償金の陪審認定を無効とするよう求めた請求に対し、米ルイジアナ州連邦地方裁判所のRebecca Doherty判事は8月28日、これを退ける決定を行った。

Doherty判事は今回の決定に関する101ページに及ぶ文書で、武田とEli Lillyの行為を判断する上で、陪審が「自らの役割と裁量の範囲内で行動した」と指摘した。

両社がアクトスと膀胱がんの関連性を把握していたにもかかわらず患者と医師への適切な警告を怠ったことを示す証拠について、陪審は適正な検証を行ったと判断した。

付記

米ルイジアナ州の連邦地裁は9月3日、陪審員評決を支持する判決を下した。

武田は再審理か大幅な減額を求めており、今後、数週間以内に結論が出る見通し。

付記

ルイジアナ州西部連邦裁判所のDoherty判事は10月27日、懲罰的損害賠償金額の減額を認める決定およびかかる減額を反映する判決を下した。

Doherty判事は先に、懲罰的損害賠償金額として武田薬品に60億米ドル、イーライリリーに30億米ドルの支払いを命じる評決を支持する判決を下していたが、今回は武田分を27.65百万米ドル、イーライリリー分を9.22百万米ドルへとそれぞれ減額する決定を下した。
補償的損害賠償金額については、先に1.475百万米ドルから1.27百万米ドルへの減額が決定されている。

しかし武田は、損害賠償金額の大小を問わず、この事件で取り扱われた証拠によって、同社の責任は認定されるものではないとし、上訴する。
 

両社は再審の申し立てに対する判断を待っている。
この結果次第では、当然、控訴すると思われる。

武田の長谷川会長は「和解も選択肢だが、我々が勝つための最善の努力をしたい」とする一方、「過去の判例に基づくと賠償は減額されると考えている」と述べた。

これまでの高額懲罰的賠償の10例では全てが破棄または大幅減額となっており、陪審の決定通りのものはない。

米国の最高裁は、懲罰的賠償は補償的損害賠償や実際の被害額に見合ったものでないといけないとしており、いくつかのケースでは補償的損害賠償額の10倍なら認められるとした。

なお、アクトスに関しては、これまでこれまで6件の陪審員評決や判決が出ているが、本件を除く5件は全て却下となっている。

カリフォルニア州とメリーランド州の州裁判所では陪審員が合計820万ドルの支払いを命じたが、裁判長がこれを却下 した。

ラスベガスの州裁では本年、陪審員が原告の訴えを却下した。

本年5月に80歳と81歳の女性が10億ドルの損害賠償を求めた裁判では、発ガン時にはアクトスを飲んでいなかったとされており、陪審員が訴えを却下した。

その前週に行われたシカゴの男性(既に死亡)のケースでも、陪審員は2時間以内の審議で却下した。


付記

2014年10月3日、ペンシルベニア州フィラデルフィア郡一般訴訟裁判所で Frances Wisniewski氏を原告とした「アクトス®」に起因する膀胱がんを主張する製造物責任訴訟において、武田薬品等が205万米ドルの補償的損害につき責任があるとの陪審評決が下された。

ーーー

なお、英文発表には Important Safety Information が記載されているが、そのなかで「膀胱がん」について、下記の記載がある。

膀胱がん患者にはアクトスを使用しないこと。
膀胱がんを患ったことがある患者は使用時に注意すること。
患者に血尿、排尿障害、
尿しぶり(頻尿に尿意切迫感・下腹部痛・残尿感が出現した状態)があった場合直ちに報告させること。


2014/9/3 ロシアのアジア向けガスパイプライン着工 

東シベリアの天然ガスを極東経由で中国に供給するパイプライン“Sila Sibiri” (Power of Siberiaの起工式が9月1日、サハ共和国の首都ヤクーツク近郊で 行われた。

式典にはプーチン大統領と中国の張高麗副首相が出席した。プーチン氏は式典で「世界最大の建設プロジェクトはハイレベルな中露関係のおかげで可能になった」と 述べた。

ウクライナ危機で欧州がエネルギー資源のロシア依存脱却を進める中、ロシアとしてガス輸出先の「東方シフト」を推進する姿勢を鮮明にした。

Power of Siberia はサハ共和国のChayanda油ガス田(図のB)、イルクーツク州のKovyktaガス田( 図のA)で産出するガスを極東に運ぶもので、総延長は3968kmに及ぶ。総工費は7700億ルーブル(約2兆1400億円)。

Gazpromによると、ヤクーツクから国境のBlagoveshshensk までの区間を2018年末までに完成させ、2019年から中国へ毎年380億m3の天然ガスを供給する。
パイプラインは
フル稼働すれば、年間の輸送量は600億m3にも上る。

将来はハバロフスクまで延伸し、サハリン産ガスを極東に運ぶ既存パイプラインと接続、ウラジオストクで液化し、LNGとしてアジア太平洋諸国に輸出する。

付記

9月27日の日本経済新聞によると、Gazprom副社長が、東シベリアのChayandaKovyktaの両ガス田開発する天然ガスの輸出先を中国に限定すると述べた。

生産するガスは中国向けを除けば、パイプライン沿いの国内地域のガス化に利用すると言明、パイプラインもガス田から中ロ国境のブラゴベシェンスクまで建設する。対日輸出拠点となる極東ウラジオストクまでの連結は「現在、必要性をみていない」との見方を示した。

ウラジオストクで2019年稼働を目標にLNG基地の建設計画を進めるが、供給するガスは「サハリン沖にある資源だけで十分だ」とした。

なお、原油については東シベリア・太平洋原油パイプラインVSTO)とSkovorodino〜大慶パイプラインにより、中国との間で既に繋がっている。

ロシア産ガスの対中輸出は価格交渉が長年難航していたが、 本年5月21日、Gazpromによる中国石油天然ガス集団(CNPC)への天然ガス供給で合意し、契約に調印した。中国訪問中のプーチン・ロシア大統領と中国の習近平国家主席がこれに立ち会った。

契約によると、ロシア側は2018年から30年間にわたり毎年380億m3の天然ガスを供給する。総契約額は4,000億ドルを上回ったとみられる。

2013年のロシアからの欧州向け天然ガス輸出は約1,600億m3、中国の天然ガスの総輸入量は510億m3。

価格は「商業機密」として明らかにしていないが、数量 380億m3x 30年で4000億ドルとすると、価格は1000m3当たり350ドル程度となる。
西欧諸国への供給価格は長期契約の下で350ー380ドルとなっており、Gazpromは350ドル以下での供給には反対したとされる。

Gazpromが天然ガス開発、ガス処理、ロシア内のパイプライン建設を担当、CNPCが中国内のパイプライン建設を担当する。
プーチン大統領は、ロシアが天然ガス探査と中国に続くパイプラインの建設に550億ドルを投資すると表明した。
また、中国がロシア側のインフラ開発などを支援するために約200億ドルを支払う。

プーチン大統領は、「ロシアと中国は西ルートでもガスを供給することを協議する」と述べ、西シベリアからモンゴルの西側を通り中国につなげる2本目(Altai Pipeline) も敷設することを明らかにしている。

2014/5/26     ロシアのGazprom 、中国への天然ガス供給契約に調印


2014/9/4 国際競争力ランキング 

スイスの研究機関で「ダボス会議」を主催する「世界経済フォーラム(World Economic Forum)は9月3日、2014年版の国際競争力ランキングを発表した。
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GlobalCompetitivenessReport_2014-15.pdf

日本は6位となり、昨年から順位を3つ上げた。日本の6位は、現在の基準になってからでは2010年と並んで最高となる。

国際競争力ランキングは、144カ国・地域を対象に、基礎的条件の4分野、効率性促進要因の6分野、革新性・洗練性の2分野、合計12分野について、コロンビア大学のXavier Sala‐i‐Martin経済学部教授が開発した国際競争力指数(GCI)で評価し、順位付けている。

首位は6年連続でスイスだった。トップ10の顔ぶれは昨年と同じだった。

韓国は26位(前年25位)、中国は28位(同29位)、ロシアは53位(同64位)、インドは71位(同60位)であった。

日本は、企業の活発な研究開発投資、鉄道網の発達、顧客重視の文化などが前年同様の高い評価を得たほか、知的財産権の保護などでポイントが上がった。
安倍政権の安定した政権運営もプラス材料になったが、巨額の政府債務や高い法人税は、順位を抑制する要因になった。

トップ10の総合順位、各分野の順位は下記の通り。分野により点数配分が異なる。

  スイス シンガポール フィンランド 日本 香港 スウェーデン

1位国

本年 前年
総合順位 本年 1 2 3 4 5 6 9 7 8 9 10 スイス
(前年) (1) (2) (5) (3) (4) (9) (10) (7) (8) (10) (6) スイス
                         
(基礎的条件) 4 1 33 8 11 25 (28) 3 10 24 12 シンガポール
制度 9 3 30 2 17 11 (17) 8 10 12 13 NZ
インフラ 5 2 12 19 7 6 (9) 1 4 10 22 香港
マクロ経済環境 12 15 113 43 24 127 (127) 14 39 107 17 ノルウェー
保健衛生、初等教育 11 3 49 1 14 6 (10) 32 5 21 23 フィンランド
                         
(効率性促進要因) 5 2 1 10 9 7 (10) 3 8 4 12
高等教育、職業訓練 4 2 7 1 16 21 (21) 22 3 19 14 フィンランド
商品市場効率 8 1 16 18 19 12 (16) 2 9 13 17 シンガポール
労働市場効率 1 2 4 23 35 22 (23) 3 21 5 20 スイス
金融市場成熟度 11 2 9 5 25 16 (23) 1 37 15 12 香港
技術発展 10 7 16 11 13 20 (19) 5 9 2 3 ルクセンブルグ
市場規模 39 31 1 55 5 4 (4) 27 23 6 36
                         
(革新性・洗練性) 1 11 5 3 4 2 (3) 23 6 8 7 スイス
ビジネス先進度 2 19 4 9 3 1 (1) 16 5 6 8 日本
Innovation 2 9 5 1 6 4 (5) 26 8 12 7 フィンランド

このうち、マクロ経済環境で日本(127位)、米(113位)、英(107位)の順位が極めて低いが、これは次の5つの評価の結果である。
(* はGDP比) 

  日本    
・Government budget balance* 

136位

  130位   119位
・Gross national savings* 58位   87位   126位
・Inflation(56カ国が1位) 62位   1位   1位
・General government debt* 143位   134位   126位
・Country credit rating 18位   7位   13位
     
このほか、日本の順位が低い項目は以下の通り。
・Total tax rate 114位  
・農業政策のコスト 131位  
・貿易障壁 116位  
・GDPに対する輸入比率 135位  
・GDPに対する輸出比率 132位  
・雇用と解雇の慣行 133位  
     

世界1位の項目は以下の通り。
 インフラ:鉄道インフラの質
 保健衛生、初等教育:
HIV感染の少なさ
 商品市場効率:国内市場での競争の強さ、需要家への説明度、バイヤーの洗練度
 ビジネス先進度:国内サプライヤーの供給量、国内サプライヤーの品質、競争優位の性質、バリューチェーンの広さ、国際物流のコントロール
 

分野別の日本と先進国平均の状況は下記の通り。



 


2014/9/5   世界経済フォーラムの2014年版国際競争力ランキング 詳細

9月4日に世界経済フォーラムの2014年版の国際競争力ランキングを報告した。

国際競争力ランキングは、144カ国・地域を対象に、基礎的条件の4分野、効率性促進要因の6分野、革新性・洗練性の2分野、合計12分野について、コロンビア大学のXavier Sala-i-Martin経済学部教授が開発した国際競争力指数(GCI)で評価し、順位付けている。
   http://www3.weforum.org/docs/WEF_GlobalCompetitivenessReport_2014-15.pdf

日本は6位となり、昨年から順位を3つ上げた。

以下に、各項目ごとの内容と日本の順位、一位国をまとめた。

大部分の項目は、悪い方(1) から良い方(7) までの点数で評価しているが、青色の部分は実数その他で評価している。
 

  基準

日本

一位国

順位 国名
Pillar 1: Institutions
1.01 Property rights 財産権の強さ 1〜7 11位 5.9 フィンランド 6.4
1.02 Intellectual property protection 知的所有権保護の強さ 7位 6.0 フィンランド 6.2
1.03 Diversion of public funds 不正による公的資金の流用 14位 5.6 NZ 6.6
1.04 Public trust in politicians 政治家の倫理基準 21位 4.5 シンガポール 6.2
1.05 Irregular payments and bribes 企業の不適切な支払い 11位 6.2 NZ 6.7
1.06 Judicial independence 司法の独立 8位 6.2 NZ 6.7
1.07 Favoritism in decisions of government officials 官僚のえこひいき 7位 5.1 カタール 5.6
1.08 Wastefulness of government spending 政府の支出の無駄 22位 4.1 カタール 6.0
1.09 Burden of government regulation 規制の重荷 64位 3.5 カタール 5.2
1.10 Efficiency of legal framework in settling disputes 事業活動での紛争解決での法律の効率の良さ 18位 5.2 シンガポール 6.2
1.11 Efficiency of legal framework in challenging regulations 企業が法システムを利用して政府の規制に対抗できるか 19位 4.4 フィンランド 5.6
1.12 Transparency of government policymaking 企業が政府の方針や規則の変更の情報を容易に得られるか 11位 5.3 シンガポール 6.1
1.13 Business costs of terrorism テロの脅威に対する企業のコスト 80位 5.1 フィンランド 6.7
1.14 Business costs of crime and violence 犯罪や暴力に対する企業のコスト 33位 5.2 カタール 6.5
1.15 Organized crime マフィアの脅威に対する企業のコスト 52位 5.2 UAE 6.8
1.16 Reliability of police services 警察の信頼度 17位 6.0 フィンランド 6.7
1.17 Ethical behavior of firms 企業の倫理 7位 6.0 NZ 6.5
1.18 Strength of auditing and reporting standards 企業の監査基準、報告基準の強さ 11位 5.9 南ア 6.7
1.19 Efficacy of corporate boards 経営者が投資家や取締役会に強い説明責任を持つか? 18位 5.4 NZ 6.1
1.20 Protection of minority shareholders’ interests 少数株主の権利の保護 14位 5.3 フィンランド 6.2
1.21 Strength of investor protection 投資家保護 1〜10 16位 7.0 NZ 9.7
小計 11位 5.47 NZ 6.09
 
Pillar 2 Infrastructure
2.01 Quality of overall infrastructure 輸送、電話、エネルギー等のインフラ 1〜7 9位 6.2 スイス 6.6
2.02 Quality of roads 道路 10位 5.9 UAE 6.6
2.03 Quality of railroad infrastructure 鉄道 1位 6.7 日本 6.7
2.04 Quality of port infrastructure 港湾 26位 5.3 6.8
2.05 Quality of air transport infrastructure 航空 27位 5.5 シンガポール 6.8
2.06 Available airline seat kilometers 国際ラインを含む座席数 x 距離 数 (週) 4位 5,620.9 34,115.8
2.07 Quality of electricity supply 電力供給の安定性 1〜7 25位 6.3 スイス 6.8
2.08 Mobile telephone subscriptions モバイル電話の数 (100人当たり) 個数 64位 115.2 香港 238.7
2.09 Fixed telephone lines 固定電話 (100人当たり) 個数 12位 50.4 台湾 71.2
小計 6位 6.13 香港 6.69
 
Pillar 3 Macroeconomic environment
3.01 Government budget balance GDP比 % 136位 -8.4 Timor 36.1
3.02 Gross national savings GDP比 % 58位 21.7 Timor 63.1
3.03 Inflation CPI    % 62位 0.4 アイルランド 0.5
3.04 Government debt GDP比 % 143位 243.2 リビヤ 0.0
3.05 Country credit rating デフォルトの可能性(可能性ゼロは100) 0〜100 18位 81.6 ノルウェー 94.8
小計 127位 3.64 ノルウェー 6.83
 
Pillar 4 Health and primary education
4.01 Malaria incidence 人口10万人当たり 件数 9国 0.0
4.02 Business impact of malaria 今後5年の企業への影響 1〜7 エジプト 6.8
4.03 Tuberculosis incidence 人口10万人当たり 件数 44位 19.0 バルバドス 1.6
4.04 Business impact of tuberculosis 今後5年の企業への影響 1〜7 43位 6.2 フィンランド 7.0
4.05 HIV prevalence 15〜49歳の成人当たり 件数 1位 0.3< 57国  
4.06 Business impact of HIV/AIDS 今後5年の企業への影響 1〜7 35位 6.1 エジプト 6.9
4.07 Infant mortality 出生1000人当たり 4位 2.2 香港 1.6
4.08 Life expectancy 誕生時 2位 83.1 香港 83.5
4.09 Quality of primary education 初等教育の質 1〜7 10位 5.5 フィンランド 6.7
4.10 Primary education enrollment rate 初等教育入学者 % 3位 99.9 シンガポール 100.0
小計 6位 6.62 フィンランド 6.89
(基礎的条件 合計)  配点 20% (25位) (5.47) (シンガポール) (6.34)
 
Pillar 5 Higher education and training
5.01 Secondary education enrollment rate Gross % 25位 101.8 135.5
5.02 Tertiary education enrollment rate Gross % 39位 61.5 ギリシャ 114.0
5.03 Quality of the education system   1〜7 33位 4.4 スイス 6.0
5.04 Quality of math and science education   21位 5.1 シンガポール 6.3
5.05 Quality of management schools ビジネススクールの質 72位 4.2 スイス 6.2
5.06 Internet access in schools   37位 5.3 アイスランド 6.7
5.07 Local availability of specialized research and training services high-quality, specialized training services 9位 5.6 スイス 6.5
5.08 Extent of staff training 企業の従業員教育 2位 5.4 スイス 5.7
小計 21位 5.44 フィンランド 6.22
 
Pillar 6 Goods market efficiency
6.01 Intensity of local competition 国内市場の競争の程度 1〜7 1位 6.4 日本 6.4
6.02 Extent of market dominance 市場の独占度の低さ 2位 5.7 スイス 6.0
6.03 Effectiveness of anti-monopoly policy 独禁法による競争促進 4位 5.4 フィンランド 5.6
6.04 Effect of taxation on incentives to invest 課税による投資抑制の低さ 71位 3.7 バーレーン 6.5
6.05 Total tax rate profit tax, labor tax and contribution, and other taxes(利益に対する税率) % 114位 49.7 マケドニア 8.2
6.06 Number of procedures required to start a business 事業開始の場合の手続き数 93位 8 カナダ 1
6.07 Time required to start a business 手続き日数 98位 22.0 NZ 0.5
6.08 Agricultural policy costs 農業政策の評価
経済への負担大〜バランスがとれる
1〜7 131位 3.0 NZ 6.1
6.09 Prevalence of trade barriers 非課税障壁による輸入品の負担 116位 4.0 香港 5.5
6.10 Trade tariffs 加重平均の関税率 37位 2.2 香港・リビヤ 0.0
6.11 Prevalence of foreign ownership 企業の外国人所有の多さ 1〜7 27位 5.3 ルクセンブルグ 6.3
6.12 Business impact of rules on FDI 外国人直接投資 規制〜促進 58位 4.6 アイルランド 6.6
6.13 Burden of customs procedures 物質の通関手続きの効率 24位 5.1 シンガポール 6.1
6.14 Imports as a percentage of GDP GDP比輸入 % 135位 20.3 香港 249.1
6.15 Degree of customer orientation 需要家対応
 需要家満足度に無関心〜十分に対応
1〜7 1位 6.3 日本 6.3
6.16 Buyer sophistication バイヤーの姿勢
 価格のみで判断〜効能も十分判断
1位 5.3 日本 5.3
小計 12位 5.20 シンガポール 5.64
 
Pillar 7 Labor market efficiency
7.01 Cooperation in labor-employer relations 労使協調 1〜7 6位 5.6 スイス 6.2
7.02 Flexibility of wage determination 賃金は中央での交渉か、個別企業で決定か 9位 5.9 エストニア 6.2
7.03 Hiring and firing practices 雇用・解雇に規制があるか、極めてフレキシブルか 133位 2.8 香港 5.7
7.04 Redundancy costs 退職手当は週給の何週分か 8位 4.3 4国 0.0
7.05 Effect of taxation on incentives to work 税金が働く意欲を阻害するか 1〜7 61位 3.8 バーレーン 6.3
7.06 Pay and productivity 賃金が生産性に関係しない〜強く関係 11位 4.8 香港 5.5
7.07 Reliance on professional management 企業トップの選任
 親戚・友人〜功績・資格のあるプロ
18位 5.5 NZ 6.5
7.08 Country capacity to retain talent 有能な人が外国へ出るか〜国に留まるか 24位 4.4 スイス 5.8
7.09 Country capacity to attract talent 有能な人を外国から呼べるか 79位 3.3 スイス 6.1
7.10 Female participation in the labor force 労働市場での女性と男性の比率 88位 0.75 マラウイ 1.05
小計 22位 4.73 スイス 5.75
 
Pillar 8 Financial market development
8.01 Availability of financial services 企業に対するサービスの存在 1〜7 27位 5.3 スイス 6.5
8.02 Affordability of financial services 手頃な料金で利用できるか 29位 5.1 スイス 6.1
8.03 Financing through local equity market 証券市場での株発行での資金調達の容易さ 12位 4.9 香港 5.7
8.04 Ease of access to loans 担保なしで銀行から借りられるか 19位 3.7 カタール 5.1
8.05 Venture capital availability 新規のリスクある計画がVenture capitalを見つけられるか 24位 3.4 カタール 4.8
8.06 Soundness of banks 銀行の健全性 33位 5.7 カナダ 6.7
8.07 Regulation of securities exchanges 証券取引所規則の効率性 15位 5.5 南ア 6.4
8.08 Legal rights index 貸し手・借り手の権利の法的保護の度合 0〜10 43位 7 10カ国 10
小計 16位 4.98 香港 5.91
 
Pillar 9 Technological readiness
9.01 Availability of latest technologies   1〜7 14位 6.2 フィンランド 6.6
9.02 Firm-level technology absorption   2位 6.1 アイスランド 6.2
9.03 FDI and technology transfer 外国直接投資が技術をもたらすか 55位 4.7 アイルランド 6.4
9.04 Internet users Internet利用者の比率 % 12位 86.3 アイスランド 96.5
9.05 Fixed broadband Internet subscriptions 固定ブロードバンドのネット利用者 % 18位 28.8 スイス 43.0
9.06 Internet bandwidth 回線容量 一人当たり kb/s  kb/s 64位 39.2 ルクセンブルグ 6,445.8
9.07 Mobile broadband subscriptions 100人当たりモバイル 3位 120.5 シンガポール 135.1
小計 20位 5.61 ルクセンブルグ 6.36
 
Pillar 10 Market size
10.01 Domestic market size index 生産+輸入ー輸出 1〜7 4位 6.1 7.0
10.02 Foreign market size index 輸出 7位 6.2 中国 7.0
10.03 GDP (PPP) 購買力平価ベースGDP(10億ドル) b $ 4位 4,698.8 16,799.7
10.04 Exports as a percentage of GDP   % 132位 17.5 香港 245.0
小計 4位 6.14 6.94
(効率的促進要因 合計) 配点 50% (7位) (5.35) (米) (5.71)
 
Pillar 11 Business sophistication
11.01 Local supplier quantity 国内供給者の数 1〜7 1位 6.3 日本 6.3
11.02 Local supplier quality 国内供給者の質 1位 6.2 日本 6.2
11.03 State of cluster development 供給者の地域集団の広がり 8位 5.3 イタリー 5.6
11.04 Nature of competitive advantage 国際市場での強み
低労務コストor天然資源〜ユニーク製品
1位 6.4 日本 6.4
11.05 Value chain breadth Value chain の幅の広さ 1位 6.1 日本 6.1
11.06 Control of international distribution 国際流通を国内企業がコントロール 1位 5.6 日本 5.6
11.07 Production process sophistication 生産プロセスの高度さ 2位 6.4 スイス 6.4
11.08 Extent of marketing マーケティング技術の洗練度 8位 5.6 6.2
11.09 Willingness to delegate authority 部下への権限委譲 21位 4.7 デンマーク 6.1
小計 1位 5.82 日本 5.82
 
Pillar 12 Innovation
12.01 Capacity for innovation 企業の革新能力 1〜7 7位 5.4 スイス 5.9
12.02 Quality of scientific research institutions   7位 5.8 スイス 6.4
12.03 Company spending on R&D   2位 5.8 スイス 5.9
12.04 University-industry collaboration in R&D 企業と大学の共同活動の程度 16位 5.0 フィンランド 6.0
12.05 Government procurement of advanced technology products 政府の調達がイノベーションに与える影響度 21位 4.1 カタール 5.7
12.06 Availability of scientists and engineers 科学者、技術者の利用可能性 3位 5.4 フィンランド 6.2
12.07 PCT patent applications Patent Cooperation Treatyによる申請
人口100万人当たり
  2位 308.2 スイス 315.0
小計 4位 5.54 フィンランド 5.78
(革新性、洗練性 合計)配点 30% (2位) (5.68) (スイス) (5.74)
 
総合   6位 5.47 スイス 5.70

 

なお、Executive Opinion Survey の回答で、日本での事業遂行で問題となる要素は以下の通り。

 


2014/9/6 EU、スマートカードのチップのカルテルで制裁金 

欧州委員会は9月3日、スマートカードのチップで、独 Infineon、オランダのPhilips、韓国 Samsung 及びルネサスの4社がカルテルを結んでいたとし、合計 138,048千ユーロの制裁金を課したと発表した。

このうち、ルネサスは「EUの競争法上で問題となる可能性が発覚し、欧州委員会に免除申請を行い調査に真摯に協力し」、制裁金を免除された。
Samsung は調査に協力し、30%の減額を受けた。

ルネサスは日立製作所と三菱電機のJVのルネサス テクノロジ時代のもの。
2010年4月にNECエレクトロニクスと経営統合し、現在はルネサス エレクトロニクスとなっている。

各社は2003年9月から2005年9月の間に需要家の値引き要請にどう対応するかについて、連絡ネットワークで共謀していた。

欧州委は2009年に、価格を固定し顧客を配分し、業務上慎重に扱うべき情報を交換した可能性があるとして、複数の企業を家宅捜索したことを明らかにした。

本年4月22日に、「カルテルに参加した可能性がある」として、複数の企業に異議告知書を送付したと発表した。

競争法違反の制裁金に関する時効は10年で、9月9日までに制裁金を決定する必要があることから、作業を急いだ。

なお、Philipsの半導体部門のPhilips Semiconductors は2006年10月に分社化し、現在はNXP Semiconductors N.V となっているが、カルテル当時の事業者としてPhilipsに制裁金を課せられた。

制裁金は下記の通り。(千ユーロ)

 

減額

制裁金

Infineon

0

82,784

Philips

0

20,148

Samsung

30%

35,116

Renesas (Hitachi and Mitsubishi)

100 %

0

合計

 

138,048

PhilipsとInfineonは談合の事実を否定し、裁判所に提訴する方針を明らかにした。

 


2014/9/8    2010年の原油流出事故、「BPに重大な過失」と認定

2010年4月20日にルイジアナ州ベニス南東約84キロで掘削中の海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig が爆発し、大量の重油が流出した。

米政府による水質浄化法(Clean Water Act)に基く民事訴訟の裁判で、New Orleansの District Court のCarl Barbier 裁判官は9月4日、BPに 「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとし、BPは水質浄化法によるバレル当たり4,300ドルの罰金に値するとの判決を言い渡した。

合わせて、リグのオーナーで掘削作業を行ったTransoceanとセメント作業を行ったHalliburtonに対しても 「過失」(「重大な過失」ではない)があったとみなした。

責任割合について、判事は、BPが67%、Transoceanが30%、Halliburton が3%と認定した。

水質浄化法では原油の流出量 1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められている。
但し、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。

今回の判決が確定すると、BPは流出量の67%に対し、バレル当たり4,300ドル、他2社は その30%と3%に対しバレル当たり1,100ドルの罰金となる。

BPでは流出量320万バレルとし、重大な過失なしとしてバレル1,100ドルを適用し、35億ドルを引き当てている。
他方、政府は流出量を490万バレルとし、
そのうち420万バレルはBPの責任だとしており、流出量そのものに大きな差がある。

なお、規則では回収努力などを考慮して減額されることとなっている。

仮に流出量を政府主張の490万バレルとすると、罰金は以下の通り。

 Transocean  30% @1100ドル→16億ドル 和解済み(後述)
 Halliburton  3% @1100ドル→1.6億ドル
 BP 67% @4300ドル→141億ドル 

 但し、BPの実際の負担は当時の権益率の65%相当の92億ドルとなる筈。
 
25%分の35億ドルはAnadarkoに請求できる。
 三井石油開発の負担分の10%の14億ドルは、三井が罰金を払って政府と和解しているため(後述)除外される筈。

具体的な罰金額については、2015年1月以降に審理する見通し。

これに対し、BPは9月4日に下記の声明を発表した。

BPはこの決定に強く反対し、控訴する。

裁判で示された証拠からは「重大な過失」「故意の不法行為 」との結論は出てこない。法律では「重大な過失」の証明には高いハードルがあり、このケースでは当てはまらない。公平に証拠を見ると、今回の誤った結論は出ない。

来年1月からの罰金を決める審理を通じて、バレル1,100ドルの適用が正しいことを示す予定である。

ーーー

この事故の当事者は下記の通り。このうち、青色の各社が水質浄化法の責任を問われた。

鉱区Mississippi Canyon 252の権益保有者

 ・BP    65% (Operator)
 ・(Anadarko)    25%
 ・MOEX(三井石油開発)    10%

Deepwater Horizon rig 関連
 ・設計:R&B Falcon
 ・建設:韓国の現代重工業
 ・所有:
Transocean
  ・リース:
BP

  ・コントラクター 
   
Transocean:掘削作業
   
Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
   
M-I SWACOSchlumbergerSmith InternationalJV):Drilling Fluid (mud)サービス

 ・Blow Out Preventor(BOP)の製造:Cameron International Corporation

ーーー

各社のこれまでの対応は以下の通り。

1)三井石油開発

2011年5月、BPとの間で和解した。
三井はBPに
10億6500万ドルを支払い、水質浄化法を除く全ての負担をBPが肩代わりする。

2011/5/20 BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解 

三井は2012年2月、米司法省、Coast Guard、EPAと和解した。
水質浄化法に基づき70百万ドルの罰金を支払うとともに、環境保全のための土地買収の為、少なくとも20百万ドルを支払う。

2012/2/20  メキシコ湾原油流出事故で三井石油開発が米政府と和解

BPは水質浄化法に基づく罰金のうち、10%(当時の三井の権益保有率)を、和解済みとして免除を要求すると思われる。

2)Anadarko

2011年10月、BPとの間で和解した。
BPに対し現金で40億ドルを支払い、水質浄化法を除く全ての負担をBPが肩代わりする。

2011/10/19   BP、メキシコ湾原油流出事故でAnadarko Petroleum と和解 

BPは水質浄化法に基づく罰金のうち、25%(当時の権益保有率)をAnadarkoに請求すると思われる。

3)Transocean

2013年1月、司法省と和解した。
 刑事上の罰金4億ドル
 水質浄化法での民事上の司法取引で 10億ドル

2013/1/8 Transocean Deepwater Horizon 事故で罰金14億ドル支払い

4)Halliburton

2014年9月2日、同社に対する損害賠償訴訟を行った原告の大半と和解した。
2年間に3分割で合計11億ドルを支払うもの。

今回、「重大な過失」とされなかったことで、残りの原告とも和解できると見ている。

同社は事故対応で13億ドルを引き当てている。

5) BP

BPは2012年3月、個人や企業を原告とする訴訟の併合審理手続きで、原告側の運営委員会との間で和解に達した。
和解で払われる総額は約78億ドルで、全額が被害補償のための200億ドルの基金から払われる。

2012/3/5 BP、メキシコ湾岸原油流出事故で漁業関係者などと和解 

BPは2012年11月、司法省によるすべての刑事訴訟で和解 、米証券取引委員会(SEC)とも和解した。
和解に伴う支払額の合計は4,525百万ドルで、米国史上最大額。

水質汚染防止法に基づく民事訴訟や天然資源の搊害賠償、過去の和解に含まれない個人による請求はこれに含まれない。

なお、BPはMacondo wellの共同所有者及びコントラクターと和解し、下記の金額を受け入れている。  

  三井石油開発    10.65億ドル
  Anadarko   40億ドル
  Cameron   2.5億ドル
  Weatherford   0.75億ドル

2012/11/17  BP、Deepwater Horizon事故に関する米政府の全ての刑事訴訟で和解 

BPでは2014年6月末時点での事故関連損失を下記の通りとしている。
水質浄化法の罰金により、これが更に膨らむ可能性が出てきた。

訴訟、和解のコスト 258.7億ドル
流出対応コスト 143.0億ドル
水質浄化法罰金引き当て 35.1億ドル
環境関連コスト 30.3億ドル
その他コスト 19.4億ドル
(小計) 486.5億ドル
戻入 -56.8億ドル
差引合計 429.7億ドル

 


2014/9/9  古河電池と凸版印刷、世界初、紙製容器でできた非常用マグネシウム空気電池を開発

 
古河電池と凸版印刷は8月29日、世界初となる紙製容器でできた非常用マグネシウム空気電池『マグボックス』を共同で開発した と発表した。
2014年12月中旬に古河電池が発売する。主に県市町村など地方自治体向けに販売予定。

非常用マグネシウム空気電池『マグボックス』は、マグネシウムを負極物質、空気中の酸素を正極物質とし、水や海水を投入して発電させる電池で、大容量かつ長期間保存可能で、非常時に水を入れるだけで、多くの携帯機器に電力を供給することができる。

仕組みは以下の通り。

  負極: 2Mg → 2Mg2+ + 4e-

正極: O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-

全反応:2MG + O2 + 2H2O → 2Mg(OH)2

 

負極に用いるマグネシウムは塩水に溶けやすく、原子が放出する電子の量も多いため発電効率が向上 する。

正極で酸素の反応を活性化させる触媒は、古河電池の独自技術により、レアメタルを使用しない酸素還元触媒を使用することでコストを削減した。

製品の特長は下記の通り。

 ・水や海水を入れるだけで発電

注水する水は淡水でも海水でもよく、雨水や河川水、池の水などそのままでは飲用に適さない水でも発電できる。
洗剤など界面活性剤が入った水やアルコール含む水以外は利用できる。実験によれば尿でも発電できるのだという。
非常時でも手に入りやすい500ml入りのPETボトルで4回注水すればよいように設計。

 ・スマートフォンなどUSB 機器の充電に最適 :USB端子を2個備えており、機器に5V、1.2Aの電力を供給できる。
 ・大容量!スマートフォンを最大30回充電:最大5日間動作し、300Whの電力量を取り出せる。

 ・世界初の紙製容器でできたマグネシウム空気電池
  (使い捨て電池として使用後の廃棄が容易となるよう、紙製容器を使用)

 ・騒音を発生せず、また発電時に二酸化炭素を発生しない環境に配慮した電池
 ・新開発のリセットスイッチにより確実なオンオフ動作が可能(特許出願中)

 ・寸法は233×226×226mmで、重量は注水前が約1.6kg、注水後で約3.6kg。

マグネシウム空気電池は外部の空気を取り入れるため、水密構造を維持して大型化するのが困難だが、古河電池と凸版印刷は両社の既存技術を融合させ、電解液が漏れにくく、かつ実用的な容量を確保する構造を実現した。
さらに、使い捨て電池として使用後の廃棄が容易となるよう、環境に配慮した紙製容器を使用している。

古河電池は『マグボックス』の開発・製造・販売を行い、凸版印刷は紙製容器であるセル外装材ならびに外箱の開発・製造を行う。 

ーーー

この高性能マグネシウム燃料電池は、東北大学・小濱泰昭教授(当時)と産業技術総合研究所、古河電池、日本素材の共同研究の結果で、2012年1月に発表された。

東日本大震災の経験から、電力会社からの電力が途絶えても数日間はテレビやラジオから情報を得る事ができ、体調維持の為に冷暖房機器を稼動させることができる様な安価な電力システムの構築を目指した。(古河電池は大震災の被災地の福島県いわき市に立地する。)

マグネシウム燃料電池はリチウム2次電池の数倍の電気量を有するため、実用化研究が行われてきたが、
・マグネシウムは発火の危険があること、
・電極が電解液に溶解する(自然放電)、
という二つの大きな技術的な問題があるために、実用化が遅れていた。

東北大学は、宮崎県の旧リニアモーターカー実験施設で高効率高速輸送システム「エアロトレイン」の実験を行ってきたが、2011年に産総研九州センターが開発した「難燃マグネシウム(Mg-Al-Ca合金)」を車体材料として使用することで、時速200kmでの浮上走行実験に成功した。

この難燃マグネシウムは「燃えない」という特徴を生かして空気中でも溶接でき、海水に対する耐食性が従来のMg合金よりも優れていることが判明したため、これを使って高性能マグネシウム燃料電池の目処がたった。
(ただし、今回の製品では特許上の問題で市販のマグネシウム合金を利用している。)

ーーー

金属マグネシウムに水を加えると、水酸化マグネシウムに変わる性質を利用、その際に電子を取り出して、外部に供給する。
このため、リチウムイオン蓄電池のように充電することはできず、いったん水を入れたら使い切る電池である。

しかし、発生した水酸化マグネシウムを還元すれば、再びマグネシウム空気電池に使用できる。

小濱氏はマグネシウム電池の開発・普及だけでなく、マグネシウムをエネルギーキャリア(輸送媒体)として大量に利用する「マグネシウム循環型社会構想」を打ち出している。

電池で使用した後の水酸化マグネシウムをオーストラリアなど日射量の豊富な国に送り、太陽熱で金属に還元し(熱還元)、金属マグネシウムを日本に再び送ることで、マグネシウムのサイクルを作るというもの。
太陽光発電や太陽熱発電での電力は日本への送電は難しいが、マグネシウムであれば輸送可能である。

共同研究チームは2011年9月に、70年前に戦艦大和の探照灯用反射鏡として作られた日本光学(現 ニコン)の直径1.5mの反射鏡を太陽炉として用いることで、Mg電池の腐食生成物を金属Mg箔として回収する実験に成功している。

ニコンは2013年春から、小濱氏と共同で太陽熱を利用したマグネシウムの還元の実証実験を行っている。

東北大学が所有する直径1.5mの太陽炉(太陽光を大きな放物面鏡などで集光し、高温を得る装置)を利用して1200度の高温を発生、マグネシウムを還元する実験を行ってきたが、2014年3月から鉄道総合技術研究所の旧リニア実験施設で直径3mの太陽炉を使って実用化に向けた実証実験を開始した。

既に太陽炉を使う技術に問題がないことが確認できており、今回は実用性を考え、製造コストや製造時間の改善を目指す。

 


2014/9/10 アラスカLNGの調達  

経済産業省は9月8日、米アラスカ州天然資源省との間で、同州産のLNG調達に向けた覚書を交わした。

アラスカでは北部の天然ガス田で産出されるガスを南部で液化する計画が2023年にも始まるが、日本側は日本の需要見通しや アラスカ計画への日本企業の投資に対する政府の支援の構想などを情報提供し、アラスカ側はLNG計画の進捗状況などの情報を提供する。

経産省は日本の総合商社やプラントメーカーがLNG基地建設に出資や参加をする際には金融面で支援する。ガスを調達する事業費に最大75%の債務保証をつけられる制度や、権益への出資額の半分を肩代わりする制度の活用も検討する。

ーーー

米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可が必要とされており、輸出許可の判断基準には@公共の利益に反するか否か、A輸出先国で内国民待遇が与えられるかどうかがある。

米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけている。

FTA非提携国向け輸出については、2011年5月にCheniere Energyが承認を得るまでは、唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった 。

Kenai LNGはアラスカ州南部のCook入り江のKenai半島の天然ガスをAnchorageの近くのNikiski で液化しLNGにするもので、連邦政府が1967年4月に日本向け輸出を認可、1969年に輸出を開始し、以降、年間約100万トンのLNGが中断されることなく輸出された。
売り手は、Phillips/Marathon、買い手は東京電力と東京ガスである。

しかし、輸入開始から40年以上が経過し、Cook入り江のガス田の埋蔵量・生産量が大きく減退し、また液化基地自体も老朽化した。

2014年4月の認可期限切れー再認可で、Conoco Phillipsが少量の生産、輸出に当たっているが、KenaiのLNGは寿命を迎えている。

今回輸入が計画されているのは、アラスカ北部のNorth SlopeのPrudhoe 湾等の天然ガスである。

North Slopeには35兆立方フィートのガスの確認埋蔵量を含む200兆立方フィート以上のガスの資源があると言われている。
 
ノースロープ地域のガス・石油確認埋蔵量
  石油埋蔵量 ガス埋蔵量
Prudhoe Bay 30.0億バレル  24.5TCF
Kuparuk River 12.5億バレル   1.2TCF
Point Thomson 0.3億バレル   8.0TCF
NPRA
(National Petroleum
Reserves - Alaska)
0.2億バレル    −
その他 19.5億バレル   1.7TCF
合計 61.5億バレル  35.4TCF

North Slopeの原油は、1975年−77年に建設されたアラスカ縦断原油パイプライン(Trans Alaska Pipeline)でValdez まで運ばれ、ワシントン州やカルフォルニア州内の石油精製所で精製されている。アラスカ州内にもいくつかの小規模の精製所がある。

しかし、原油パイプラインを天然ガスパイプラインへ転用することは出来ない。

原油は+60に加熱され、永久凍土地域では融解を防止するために地上敷設されている。
天然ガスは冷却されるため、地下埋設が原則となる。

このため天然ガスは用途がなく、原油採掘で随伴するほぼ全量(ピーク時にはLNG換算で年間6000万トン分)が油層圧力維持のため に油層内に再圧入された。 

North Slopeの大油田地帯は、最盛期の1980年代末には日量200万バレルもの大生産量を誇ってきたが、生産開始から約40年となり、現在では約4分の1の日量50万バレル程度まで大きく減退してきている。

このため、随伴天然ガス全量を再圧入する必要がなくなり、これを販売して収益を得ようという機運が高まった。
ガス埋蔵量の約35兆立方フィートは、年間3500万トンのLNGを20年以上にわたって供給できる量である。

2008年の米大統領選挙で共和党の副大統領候補となったアラスカ州の女性知事 Sarah Palin はNorth Slopeの天然ガスを米国本土のマーケットに輸送する Alaska Gas Pipeline の建設に力を入れた。

天然ガスをAlaska Highway 沿いにカナダのAlberta まで送り(全長2,000 km)、そこから既存のTransCanada のパイプラインで米国各地に送るという壮大な計画である。

Palin知事は、知事就任直後のアラスカ州議会 (2007年1月から開催) にガスパイプライン建設業者にインセンティブを与え、建設を促すためのAlaska Gasline Inducement Act を提出し、法案は可決された。

ガスパイプライン建設業者を募る一般公募が行われ、応募した5社のなかからTransCanadaが選ばれた。

2008/9/8 Governor Sarah Palin とAlaska Gas Pipeline

しかし、その後のシェールガス革命の影響を受けて、北米の天然ガス価格が大幅低下し、米本土までのパイプライン計画は頓挫した。

ーーー

行き場をなくした天然ガスを液化して輸出しようというのが現在のAlaska LNG projectである。

計画しているのはNorth Slopeの主要生産者であるExxonMobil、BP、ConocoPhillipsの3社とカナダのパイプライン業者のTrans Canadaである。

North SlopeからNikiski 港まで直径42 inch のガスパイプライン(800マイル)を建設 し、天然ガスをNikiski液化してLNGとし、輸出する。
LNG
は年1,500万トンから1,800万トン 生産する計画で、今のところ、2023年の生産開始を予定している。

当初はTrans Alaska 原油Pipelineに沿ってValdezまでのパイプラインを計画したが、2013年10月に既存のLNG基地があるKenai半島のNikiskiに変更された。

ConocoPhillipsが保有している液化基地の老朽化による取り壊しで、その敷地が空くこと、枯渇ガス田に余分なCO2を処分できることなどが理由である。

ただし、新プロジェクトは液化規模が、十数倍大きくなるので、大幅な敷地・航路・港の拡張が必要になる。

総事業費は450〜650億ドルとみられている。

ラスカ州内のパイプライン建設に伴う先住民の土地問題は、アラスカ州の場合すでに解決済みで 、既存の石油パイプライン・ルートに基本的に同じなので、環境などに大きな問題は予想されない。

4社は2014年1月にアラスカ州政府との間で覚書を締結、州政府も出資すること、設計や認可手続きを2年間で実施することなどを決めた。

7月にはAlaska LNGは米国エネルギー省に年間20百万トンのLNG(天然ガスで日量25億立法フィート)を20年間輸出する計画の認可申請を行った。

9月5日には米国連邦エネルギー規制委員会に、計画の認可を得るための環境・安全レビューの開始の申請を行った。

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このLNGは以下の利点を持つ。

・本土のガス需給に関係しないため、輸出許可の取得が容易と考えられる。

・大半が既に再圧入されている随伴ガスなので、生産コストが非常に安い。

・LNG の日本までの輸送距離はロシアを除いてアラスカが最も近距離(日本・オーストラリア間の約半分の距離)であり、輸送コストが低廉である。

日本向けLNG運賃 ($/百万BTU)資料:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25  

  Kirimat(カナダ西海岸)   1.24  アラスカの場合、これよりも遥かに近い。 
  US Gulf Coast        2.96  
   Cove Point(東海岸)   3.07  
   Gordon(豪)   1.17  
   Gladstone(豪)   1.21  
   Ichthys(豪)   1.23  

・近距離により LNG 輸送船の稼働率が上がるため、船舶数も少なくて済む。

・日本までの途中にホルムス海峡や、パナマ運河、あるいは東アフリカ沖、南シナ海のような閉塞海域や危険海域がない。


2014/9/11 Putin大統領、シベリアのVankor油田の権益の中国への売却を提案 

訪ロ中の中国の張高麗副首相は9月1日、Putin大統領とともにヤクーツク近郊で中露天然ガスパイプライン"Sila Sibiri"(Power of Siberiaのロシア側の起工式に出席したが、起工式に先立ち、ヤクーツクでPutin大統領と会談した。

会談でPutin大統領はRosneftが開発しているロシア第二位のVankor油田(日量44万バレル)の権益を“Chinese friends”に売却することを提案した。「Vankor 油田は最大の油田で将来性もある。外国のパートナーを入れるのには慎重だが、Chinese friendsに対してはなんら制限を加えていない」と述べた。

アナリストは、CNPC やSinopecが売却先で、Rosneft は最大49%の権益を40〜50億ドルで売却するのではないかと見ている。

GazpromとCNPCは本年5月21日、上記のパイプラインで送る天然ガスの供給契約(2018年から30年間にわたり毎年380億m3)を締結している。

 ウクライナ問題で欧米がロシアに制裁を加えており、米国は7月16日にRosneftも制裁対象に加えた。
そのなかで、ロシアは中国との関係強化を図っている。

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ロシアと中国は2009年2月、政府間協定を締結し、中国開発銀行がロシア国営石油会社 Rosneft に150億ドル、東シベリア太平洋パイプラインを運営するTransneftに100億ドルを低利で融資する見返りに、Rosneft は2011年から20年間、毎年15百万トンの原油の供給を行うこととなった。

極東アムール州のSkovorodinoから中国の大慶を結ぶパイプラインを完成させ、Taishet からの太平洋パイプラインと中国国内のパイプラインを結んだ。

2009/7/22  CNPC、ロシアからの原油用に遼陽市の製油所を拡大

西シベリア北東部のVankor 油田は「北極パイプライン」で太平洋パイプラインに直結し、中国への供給油田の一つとなっている。
中国がVankor 油田の権益を持てば、供給の安定性を強化することとなる、

「北極パイプライン」はVankor油田とPurpe を結ぶVankor-Purpe パイプラインと、建設中のZapolyarnoye油田とPurpe を結ぶpolyarnoye-Purpe パイプラインの総称で、Purpe 以南の既往のパイプラインのショートカットとして建設中のPurpe-Samotlor パイプラインもこの一部をなす。

 

ソース http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3711/1012_out_j_m_ru_arcticpipeline.pdf


2014/9/12 米エネルギー省、Cameron LNG にFTA非締結国向け輸出の最終承認 

米エネルギー省は9月10日、三井物産と三菱商事が輸入契約を締結しているLNG輸出プロジェクト Cameron LNGに対し、FTA非締結国向けのLNGの輸出の最終承認を与えた。

輸出承認は日量1.7Bcf の天然ガスを20年間となっている。年間ベースでは1200万トンの輸出枠となる。

LNGの輸出手続きには次の2つが必要である。

1)連邦エネルギー規制委員会(FERC: Federal Energy Regulatory Commission)が行うLNG 輸出施設の建設・操業承認
    環境法や諸規則で求められるレビュー(National Environmental Policy Act review:NEPA review)
                 約20もの連邦及び州の組織が関係しており、時間がかかる。

2)エネルギー省が行うNatural Gas Act of 1938 に基づく許可
    FTA締結国向け、非締結国向けに別個に承認

エネルギー省はこれまで、1)の承認を待たずに、2)の仮承認を行ってきた。
Cameron LNG についても、2014年2月11日に仮承認をしている。

2014/2/13    米、日本向けLNG輸出 3件目を承認 

今般、1)の承認を得て、最終輸出承認を与えたもので、2件目となる。

非FTA 締結国向けのLNG の輸出プロジェクトとしては最初となるSabine Pass プロジェクトの事例でも、FERC の承認取得後、再度DOE が最終承認を付与している。

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これまでのNatural Gas Act of 1938 に基づく非FTA締結国向けの輸出承認は 6ヶ所7件(Freeport 追加を含む)となっている。

2014/3/27 米エネルギー省、西海岸からの非FTA締結国向けLNG輸出を承認

エネルギー省は2014年5月29日、FTA非締結国に対するLNG輸出承認手続きを変更する案を発表した。
今後は、NEPA reviewが完了して後に初めて、申請を審査し、最終的に決定する案を提案した。

2014/6/6  米国エネルギー省、LNG輸出認可手続きを変更、今後の承認は遅れる見込み 
 

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三井物産と三菱商事は2013年5月17日、Sempra Energyとの間で、Cameron LNGに関する天然ガス液化加工契約及び合弁会社設立契約(液化事業への参加)を締結したと発表した。 

三菱商事は日本郵船とのJVで参加、他にGDF Suezも参加する。
年間400万トンx 3基の設備の1基ずつを三井、三菱、GDFSが委託することとなる。

2012/4/20 三菱商事と三井物産、米国産LNGを輸入へ

Cameron LNGはFTA締結国向けのLNG輸出許可を2012年1月に受けており、非締結国向けの条件付輸出許可を2014年2月に取得、最終許可が10月までに下りる見通しがついたため、各社は2014年8月6日に最終投資判断を行った。

Cameron LNGは同日、国際協力銀行並びに、日本貿易保険による保険を融資の一部に付保する市中銀行団と、本事業向けに総額74億米ドルのプロジェクトファイナンスによる融資契約を調印した。

同社はルイジアナ州ハックベリーのLNG輸入基地を輸出基地へと転用する為、新たに年間1,200万トン(400万トン×3系列)の天然ガス液化関連設備を建設、 2018年からの商業生産開始を予定している。

東北電力は三菱商事から30万トン、GDF Suez から27万トン、合計 57万トンを購入する。
東京ガスは2014年7月、三井物産から年間52万トンを購入する契約を締結した。

付記

GDFSuez は2015年7月にEngie S.A. に改称した。

東北電力は2015年10月16日、Engie S.A. との間でLNGの長期購入契約を締結した。
契約期間は2018年から20年間、年間契約数量は約27万トンで、Henry Hub価格に連動する契約価格により購入する予定。

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米エネルギー省は9月10日、Cameron LNGに加え、Crowley Maritime Corp. の子会社のCarib EnergyLCにも FTA非締結国に対するLNG輸出の最終承認を与えた。

フロリダ州Martin Countyの液化設備で 日量 0.04 Bcf 相当の天然ガスを液化し、承認を受けたISO LNG container を使って20年間輸出する。

同社は既にFTA締結国に対する25年間の小規模LNG輸出ライセンスを受けており、日量 0.03Bcf 相当のLNGをカリブ海や南米諸国に輸出している。
(米国はチリ、コロンビア、パナマ、ペルー、コスタリカ、エルサルバドール、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、ドミニカの各国とFTAを締結している。)

 


2014/9/13 太平洋セメント、中国のセメント合弁契約を解除 

太平洋セメントは9月8日、子会社の太平洋水泥(中国)投資有限公司が新疆天業(集団)有限公司と新疆ウィグル自治区で準備を進めていたセメント合弁事業に関する契約を解除 したと発表した。(水泥=セメント)

2012 年12 月に天業集団と合意し、2013 年4 月に合弁会社を設立する予定で進めて きたが、2013 年に入り、中国政府により鉄鋼、セメント、ガラス、アルミ業界等、生産能力過剰業種への新増設の抑制政策が強化され、同事業への批准が下りる目途が立たないことに加え、事業環境が悪化したことから 、新疆天業との間で中止で合意した。

天業集団は、新疆ウィグル自治区石河子市を本拠としてPVCを製造販売する大手企業集団で、 カーバイド法PVC 生産過程で発生する廃棄物を利用してセメントも生産している。

太平洋水泥と天業集団は、PVC 製造原料用生石灰を製造する際に発生している生石灰粉や、生石灰生産に使用できずに廃棄されている低品位石灰石等を原料としてセメントを製造販売する合弁会社を新疆ウィグル自治区 で設立することに合意し、2012年12月に合弁契約書に調印した。

カーバイド法PVCの製法

石灰石を焼いて生石灰に還元
  CaCO
3→CaO+CO2

生石灰とコークスの混合物をカーバイド炉に投入し、カーバイドを製造
  CaO+3C→CaC
2+CO

カーバイドからアセチレンと水酸化カルシウム(消石灰)を製造
  CaC
2+2H2O→C2H2+Ca(OH)2

  アセチレンと塩酸を塩化水銀(HgCl2)触媒下で反応させ、VCMを製造
    C
2H2+HCl →CH2=CHCl 

         VCMからPVCを製造
 

合弁会社の概要は下記の通り。

1.会社名: 新疆天業太平洋建材有限公司 (仮称)
2.所在地: 中国新疆ウィグル自治区博尓塔拉蒙古自治州精河県
3.総投資額: 6.25億元 (81億円)
4.出資者: 太平洋水泥(中国)投資有限公司 40%
新疆天業(集団)有限公司               60%
5.事業内容: 普通セメント、混合セメント及び特殊セメントの製造販売
6.生産能力: セメント年産 120万トン
7.設立:  2013年4月(予定)
8.生産開始: 2014年11月(予定)
   

中国では、鉄鋼、セメント、電解アルミ、平板ガラス、コークスなどの分野で、生産能力の活用率は70〜75%にとどまっている。

2013年5月に李克強首相は、「行政認可事務の大幅な削減と政府の機能転換、生産能力過剰とむやみな拡張の抑止、これは現在の絶対的任務である。党中央、国務院の統一的指示に従って任務を全うせよ」と地方官僚に指令した。

生産過剰の業界で無駄な投資を抑制しようとする取り組みに対し、地方政府が抵抗を示していたが、工業情報省 は本年8月、業界の各規制当局に対し、セメントと板ガラスに関連する新たな計画を「いかなる理由であれ」認可しないよう指示した。

この動きにより、合弁事業の認可が下りる目途が立たないことに加え、事業環境が悪化したことから、計画の中止を決めた。

ーーー

太平洋セメントは1998年に秩父小野田と日本セメント(旧浅野セメント)が合併し発足した。

中国には3つのJVがあり、順調な業績をあげている。

1989年設立 大連華能−小野田水泥有限公司(現 大連小野田水泥有限公司)

1993年設立 江南−小野田水泥有限公司

1995年設立 秦皇島浅野水泥有限公司

 


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