2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  2015 http://blog.knak.jp
 



 

大阪ガスは4月28日、米国・メリーランド州で建設中のSt. Charles 天然ガス火力発電事業に参画すると発表した。同事業の特別目的会社であるCPV Maryland LLCの出資権益の25%を、丸紅から取得する持分取得契約を締結した。

2014年8月に丸紅と豊田通商が本計画に参画した。
出資比率は、丸紅が50%、豊田通商が 25%、米国のクリーン電源ディベロッパー のCompetitive Power Ventures Holdings, LLC(CPV)が25%であった。

米国では老朽化した石炭火力発電所の廃止による電力供給源の減少に対応するため、天然ガス火力発電が期待されているが、St. Charles発電所は発電効率58%の高効率(コンバインドサイクル方式)で環境にも優しい新規電源として、米国首都圏地域の電力供給に貢献する。

発電容量725MWで、2017年の商業運転開始を予定しており、北米最大のPJM(Pennsylvania-New Jersey-Maryland)電力卸売市場で電力を販売する。


大阪ガスグループは、長期経営計画「Field of Dreams 2020」において、海外エネルギー事業を成長事業領域の1つとして、米国、豪州等において発電事業を展開している。

米国では2004年に天然ガス火力発電事業に参入した。Tenaska Gateway 発電所の持分(40%) をShell US Gas & Power から譲り受けた。

発電所 Tenaska Gateway 発電所 Mount Enterprise. TX
出資者 Shell US Gas & Power → 大阪ガス 40%
Tenaska (米国のIPP事業者)
Diamond Generating (三菱商事)
発電容量 84.5万kW
発電方式 天然ガス コンバインドサイクル
完成年月 2001年7月
電力販売先 Coral Powr  (シェル系列電力マーケティング会社)

 

参考  2015/4/23   中部電力、米国の天然ガス火力発電事業に参画     


2015/5/2   中国のシルクロード基金が初投資、パキスタンで水力発電所整備へ   

中国の習近平国家主席は就任後初めてパキスタンを訪問し、4月20日、シャリフ首相と首脳会談を行った。会談後の共同声明によると、両国は協力してパキスタンの道路や港湾、水力発電所の大規模なインフラ整備を進めることで合意した。

パキスタン政府によると、その規模は280億ドルで、このうち、水力発電所のプロジェクトには、昨年末に設立されたばかりの中国政府系の投資ファンド「シルクロード基金」が初めての投資を行う。

総事業費は約450億ドルで、中国側は投資や低利融資で支援するが、まず、約280億ドル分について着手する。

中国政府は一帯一路」と呼ぶ「21世紀の陸と海のシルクロード」を造る構想を掲げているが、新疆ウイグル自治区の喀什(カシュガル) からパキスタンのアラビア海を臨むGwadar 港を結ぶ中国・パキスタン経済回廊をその一区間と位置づけている。

パキスタン政府は2013年1月30日、パキスタン南西部のGwadar港の港湾管理権をシンガポールのThe Port of Singapore Authority (PSA)から中国のChina Overseas Port Holding Companyに移譲することを閣議決定した。

この調印式が2月18日、イスラマバードの大統領府で駐パキスタン中国大使らが出席して行われた。

Gwadar港は南アジアと中東を結ぶインド洋の戦略的要衝で、中国は中東やアフリカから石油を運ぶための拠点を確保したことになる。
今後、原油貯蔵設備や製油所を建設するとされる。

2013/2/20 中国、パキスタンのグワダル港の運営権を取得

ーーー

習近平主席は2014年11月4日、中央財経指導グループの第8回会議を招集し、 「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)およびシルクロード基金の設立という「中国版マーシャルプラン戦略」について検討を行った。

APEC閣僚会議が開かれた2014年11月8日にバングラデシュ、タジキスタン、ラオス、モンゴル、ミャンマー、カンボジア、パキスタンの首脳と「相互接続パートナーシップ強化対話会議」を開催した。

習主席は「『シルクロード経済圏』と『21世紀の海のシルクロード』を建設しよう」と呼びかけ、中国が400億ドルの「シルクロード基金」を創設すると表明した。

2014/11/13 中国のシルクロード経済圏構想 

シルクロード基金を運用する絲路(シルクロード)基金有限責任公司は外貨準備、中国投資有限責任公司、中国進出口銀行、国家開発銀行の共同出資で、2014年12月29日に北京市内で登記され、第1弾として100億米ドルの資金募集を終えている。

シルクロード基金は市場化、国際化、専業化の3原則を順守、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と連携し、アジア地域のインフラ整備や経済交流を進める「一帯一路」構想を実現する。

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シルクロード基金は中国長江三峡集団傘下でパキスタンのPrivate Power and Infrastructure Board と共同で開発に当たる三峽南亜公司(China Three Gorges South Asia Investment)に出資し、パキスタン北東部のJhelum川のKarot 水力発電所の整備に乗り出す。

この水力発電所計画は李克強首相が2013年5月に提案したもので、水力発電所は容量72万キロワット、年間3,213メガワット時の規模で、投資額は16億5000万ドルを見込んでおり、2020年の稼働を目指し、15年末に着工する。

シルクロード基金は中国輸出入銀行や他の金融機関とともに融資を行う。

基金は更に、三峡集団などとともにこの地域での水力発電をすすめ、能力を3,350メガワット時にまで拡大し、電力供給を改善し、パキスタンの経済発展に資する。


 
2015/5/4    米運動靴大手 New Balance、中国で商標権侵害で16百万ドルの罰金

中国でも若者の間で大人気のスニーカーを扱う米運動靴大手 New Balance が中国内で使っている名称「新百倫」は他人の商標権を侵害しているとして、広東省広州市の中級人民法院が4月24日、New Balanceに対し、商標の使用中止と9800万元(約16百万米ドル)の賠償を命じた。

中国で商標登録した「新百倫」のブランド名を使い、中国内で男性用の靴を製造・販売していた広州の経営者・周某倫 が、多くの消費者に誤解を与えていると訴えていた。

新百倫の「百倫」は、百倫大飯店 (Balen Hotel) などのように、Balanceの音を漢字にしたもの。

New Balanceは1906年に米国で設立されたが、2006年に上海新百倫公司を設立し、新百倫ブランドで販売を開始した。

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広州の経営者・周某倫の家族が1996年に衣服、靴、帽子、靴下などを対象に 「百倫」の商標を申請した。
1996年8月21日にこれが認められ、2004年4月に権利を周某倫に移した。

その後、2008年1月に「新百倫」の商標が登録された。

その間、周某倫は「百倫」、「新百倫」のブランドで男性用製品を製造販売している。

この周某倫が、New Balanceによる「新百倫」 ブランドでの販売が、多くの消費者に誤解を与えていると訴えたもの。

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判決では、New Balance 側が2007年に周某倫の商標を認めないよう当局に申し立てていた経緯から、商標登録について明らかに知っていたと指摘 した。

New Balance 側は、自社の「New Balance」の商品名を翻訳しただけとも反論したが、New Balance側が「New Balance」の意味を漢字にした「新平衡」や、「New Balance」の音を漢字にした「紐巴倫」(ニウパールン)といった別の名称を使ったこともあったため、認められなかった。

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中国では日本の製品名が無断で商標登録されるケースが相次いでいる。

今回の場合は、「新百倫」 ブランドそのものは海外で使用されてはおらず(日本では「ニューバランス」ブランドで販売されている)、「New Balance」の「New」の意味と、「Balance」の音を漢字にした組み合わせの一つに過ぎず、先願があり、それへの異議が認められなかったことから、判決は止むを得ないと思われる。

中級人民法院の幹部は「中国で公平な競争をするには、知的財産権を勉強しなければならないということを海外ブランドに気づかせてくれるだろう」とコメントした。


2015/5/5   電力会社決算 

電力会社の決算が出揃った。

事業活動の儲けを示す経常損益は下記の通りで、中部、中国、四国が黒字転換し、7社が黒字になった。原油安が寄与した。

原発依存度の高い北海道、関西、九州は赤字を続けたが、北海道は2014年11月の再値上げで赤字幅は縮小した。

関西電力は家庭向けを6月に再値上げする。
九州電力は川内原発の早期稼動を目指す。

 
 
 
 
   
     
東京電力の当期損益は下記の通り。    
 
     
0
    11/3 12/3 13/3 14/3 15/3
特別利益 支援機構資金交付   24,262 6,968 16,657 8,685
  その他   907 2,172 1,581 193
  合計 0 25,169 9,140 18,238 8,878
             
特別損失 損害賠償 0 25,249 11,619 13,956 5,959
  災害損失 10,205 2,978 402 267 0
  その他 572 452 467 399 204
  合計 10,777 28,679 12,488 14,622 6,163
             
特別損益   -10,777 -3,510 -3,348 3,615 2,715

 


2015/5/6 タイ PTT Global Chemical と丸紅の米国石油化学計画 

タイ PTT Global Chemical (PTTGC) と丸紅の米国石油化学計画が取りざたされている。

PTTGC は、米国のMarcellus シェールガスを利用した50億ドルの石油化学計画の検討を行っていることを明らかにしていた。

エタンクラッカーの能力は100万トンを予定しており、誘導品として、HDPE(70万トン)、EG(50万トン)、EO(10万トン)などを考えており、2020年のスタートを予定している。

丸紅は何も発表していない。

丸紅はPTTグループと、石油製品・天然ガス並びに各種設備取引等で良好な関係を構築している。

付記

日揮は2015年9月、 Bechtel、韓国 Samsung Engineeringと共同で PTT Global Chemical から基本設計を受注した。

付記

2015/11、INEOS Technologiesは70万トンのPE用に Innovene S Processをライセンスした。

ーーー

4月22日、Ohio州知事John R. Kasich は以下の発表を行った。

タイのPTTGCとそのパートナーの丸紅は、Ohio州 Belmont County の土地をワールドスケールのエタンクラッカーの建設予定地として選んだ。
両社は今後12〜16ヶ月かけて、詳細設計や認可申請を行う。

両社は過去2年にわたり、Utica 及びMarcellus シェール地域で立地の検討を行ってきた。

両社は2016年に投資の最終決定を行う。

現地紙の報道では、Belmont CountyのMead Township にあるオハイオ川沿いのFirstEnergyのR.E. Burger バイオマス発電所(木材や農業廃棄物を燃料とするもので2010年末に停止)の跡地が選ばれた。

Utica 及びMarcellus シェールの安いエタンを利用する。

なお、隣接のMonroe Countyでは新設のAppalachian Resins Inc. がMarcellus シェールガスを利用する石油化学計画を検討している。

能力27万トンの小規模エタンクラッカーとPEプラントを建設するもので、ローカル市場に合わせたとしている。


 

ーーー

PTTGCはタイ石油公社(PTT) 傘下のPTT Chemical と PTT Aromatics & Refining が2011年に合併したもの。

PTTGCは米国計画とは別に、インドネシアで国営石油プルタミナと西ジャワ州バロンガン製油所に隣接して石化コンプレックスを建設する方向を固め ている。

2013/7/25 インドネシアのPertaminaとChandra Asri、石油化学計画で混戦 


2015/5/7    アベノミクス批判、「世界が日本経済をうらやむ日」を読む 

だいぶ前になるが、浜田宏一・安達誠司著 「世界が日本経済をうらやむ日」を読んだ。


内容紹介

アベノミクスにより、株価は約2倍、円安にもなり、景気は回復しつつある。とはいえ、いまだに「賃金が上がっていない」「生活はよくなっていない」など、アベノミクスに懐疑的な人もいる。
そこで本書では、ノーベル経済学賞に最も近いといわれ、イェール大学名誉教授、兼、内閣官房参与である著者が、「経済の真実」について、経済が苦手な人にでも理解できるよう、わかりやすく伝授。

カスタマーレビューでは次のようなコメントが続く。

日本経済の現状を正しく理解させるタイムリーな良書
アベノミクス効果をわかりやすく説明

デフレ論者には痛い内容

経済学の素人が浜田大先生の批判をするなど恐れ多いことだが、本書での主張がアベノミクスの根本原理であるとすれば問題である。

ーーー

昨年初めに竹中平蔵氏の講演で、浜田教授によるアベノミクス評価というのを聴いた。

第一の矢の金融緩和は5段階評価で A
第二の矢の機動的財政政策は、中期の財政再建が出来ておらず B
第三の矢の成長戦略は全くダメで E
即ち、ABEノミクス

しかし今回、本書を読んで、まったく異なるので驚いた。

浜田教授によると、そもそも、第一と第二の矢は供給(潜在GDP)と需要(実質GDP)の差を埋めるための不況対策であるが、第三の矢の成長戦略は、将来供給と需要の差が埋まったときに供給力を引き上げるための政策であるという。

第二の矢については、マンデル・フレミング命題から、変動相場制のもとでは景気刺激のためには財政政策の効果は少ないとしている。

デフレギャップを埋めるには金融政策だけでよく、成長戦略は 「短期の景気回復には関係のない政策」である。金融緩和政策が成功した後に成長戦略が必要になる。

このため、第三の矢の評価は、(全くダメのEではなく)、今後のEffortのEであるという。

なお、成長戦略とは産業政策ではなく、規制緩和政策であるとしている。

具体的には下記を挙げ、抵抗勢力を潰す必要を強調している。
  労働規制・金融規制の軽減撤廃
  法人税の実効税率の軽減
  TPPを通じた貿易・投資の自由化
  女性労働力の積極的活用
  海外労働者受入(社会・文化を損なわない範囲で)


毛利元就の「三本の矢」は、「矢一本なら一人の力で折ることができるが、3本束ねると折ろうとしても折れない」ことからきている。

しかし、浜田理論では、当面は第一の矢だけが重要で、その効果が出てから第三の矢の出番が来るということで、3本を束ねるということではなくなる。
3本の矢があっても、1本ずつなら折れてしまうのではなかろうか。

ーーー

同書では以下の通り述べている。

「流動性の罠」問題がある。デフレが続くと考えると、不要不急品は買わず、カネを溜め込む。

以前の日銀は、景気回復途中で引き締めなどを行ったため、疑心暗鬼となり、企業も積極投資をしなかった。  

第一の矢(ゼロ金利政策、量的緩和政策、インフレ目標政策)はこれへの対策であり、将来物価が上がるという予想を抱かせる。

この結果、個人消費は増え、企業も安心して投資する。

現在は企業も家計も貯蓄が十分あるが、企業と家計が先ず貯蓄を取り崩し、その後、企業が資金不足になると銀行貸出を使って投資する。

これにより、供給と需要のギャップが埋まる。   

この後が第三の矢の出番で、規制緩和により供給力(潜在GDP)を増やし、経済をさらに成長させる。

 

問題は供給と需要のギャップを埋めるのに第一の矢だけで出来るのかということである。

現実は 「供給 > 需要」 の状態にある。

しかし、将来物価があがるという予想を抱かせるだけで、需要が増え、ギャップが埋まるであろうか。

アダムスミスの時代ならこれは正しい。その当時なら、需要の内容が変われば、それに合わせて供給を自由に変えることが出来た。
このため供給総量と需要総量の比較だけでよい。

実際には、長い間の規制により、供給体制と需要構造が食い違っており、供給できる製品の需要が激減し、潜在需要に対する供給力がないという状況になっている。

少子高齢化が進むと、住宅、自動車、家電や、その原材料の鉄鋼、化学品などの需要は減っている。

既存品の輸出も様変わりで、鉄鋼、石油化学品などは今や、中国が過剰能力で悩むほどで、日本の出番はない。
家電も輸出どころか、日本のほとんどの需要を輸入に頼っている。
自動車さえも、電気自動車になると部品の組み立て化でやれるようになり、中国では
リチウムイオン電池製造のBYDが自動車に進出した。

しかし、少子高齢化による医療、健康維持、保育所・託児所など新しい需要が満たされていない。

医薬品や医療技術、IT、新規材料などでも新しい輸出製品の可能性は大きい。
農業なども企業が進出できればオランダのように輸出国になることも可能であろう。

現状では既存の業界が保護され、新規事業への参入が規制されている。

以下はOECDによる分析で、経済のダイナミズムの欠如が指摘されている。

http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/15041601_ja.pdf

また、「日本をダメにした10の裁判」の一つの解雇権濫用法理により、労働人口が減るなかで、既存企業は 仕事が減っても解雇が出来ず、多数の社内失業者を抱えている。
新しい需要分野に人材が流れるという状況にない。

このような、必要なものの供給がなく、需要のない供給力が保護され残っている状況では、将来物価が上がるという予想を抱かせることだけで 「供給=需要」の状態にはなり得ない。

本書では、経済学の常識から、デフレは金融現象であり、金融政策で解決できるとしている。(安倍首相は同じ意味で「デフレは貨幣現象」としている。)
しかし、上記の点から、これは今の日本では誤りである。

デフレギャップを埋めるには金融政策だけではなく、規制緩和によって需要に合わせた供給力の整備を行うことが絶対的に必要である。
下記のような状況になれば、(仮にインフレ目標政策がなくても)需要は増えるであろう。

やはり、三本の矢は3本を束ねて初めて、効果が生まれる。

 

ちなみに、同書では金融緩和の成功例としてレーマン後の米国をあげている。

しかし、米国の場合は日本の状況とは全く異なる。

規制はほとんどなく、需要の変化を先取りして、新しい「供給」が加えられている。
主に移民の増により、人口は増えている。
ローンにより賄われる需要は旺盛である。

しかし、レーマンショックで、銀行は貸し出しを絞ったため、企業投資や個人消費が抑えられた。

この状況下では、デフレは金融現象であり、金融緩和は成功した。

カネがあるが需要が無い日本とは全く異なる。

ーーー

浜田教授の言うとおり、成長戦略とは産業政策ではなく、規制緩和政策である。

教授は、抵抗勢力を潰す必要を強調している。

その通りであり、抵抗勢力を潰すのは大変である。

特に、管轄する業界と結びつく官僚の対策が難しい。業界の支援を受けている国会議員、地方議員の圧力もある。

経団連なども献金と経済産業省などとの連携により、いろいろの恩恵を受けている側である。たとえば租税特別措置法の全廃などの案に対しては猛反対するであろう。

最高裁判決の解雇権濫用法理を取り消すような法律も必要である。

中国の習近平主席並みの権力が欲しい位である。

Thomas L. Friedman は著書「Hot, Flat, and Crowded」で "China for Day (but Not for Two)" という1章を書いている。

「2日はいやだが、1日だけなら中国になりたい」というもので、米国では何年もかかる案件、レジ袋の有料化、ガソリン無鉛化、自動車燃費規制、等々をトップダウンの命令で直ちに実施したことを取り上げ、中国のやり方を(その部分だけは)羨ましく思っている。

それでも、これをやらないと、しかも、徹底的にやらないと、日本経済の再生は難しい。

官僚の上層部を全て異なる省庁に移すとか、省益に反する決定をしたものしか昇格させないなどの措置が必要であろう。

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気の毒なのは日銀の黒田総裁である。

2013年11月の記者会見でアベノミクスの評価を問われ、以下の通り述べている。

「第1の矢」の金融緩和、「第2の矢」の財政出動を含めて日本経済を緩やかに回復させており、今後も回復が持続すると思っている。

なかんずく第3の矢の成長戦略が非常に重要。
成長力を底上げするための成長戦略の実行を加速し、強化することが極めて重要だ。

これらの言動から、総裁は「デフレは貨幣現象」とは考えておらず、三本の矢が一体となってデフレを解消させると考えている節がある。

第三の矢は今後の問題とされると、梯子を外されたのと同じであろう。

もう一つ、黒田総裁の考え方と異なる点は消費税の引き上げである。

浜田教授は、景気がよくなれば法人税、所得税が増えて財政赤字が減少するとし、逆に回復途上で消費税を引き上げると、景気が悪化し、法人税、所得税が減少 して財政赤字が増えるリスクがあると主張する。

安倍首相も同じ考えのようで、消費税の10%への引き上げを延期したが、10%から更に引き上げる考えはないとしている。

これに対し、黒田総裁は消費税の引き上げ延期には反対であった。

2014年10月の追加の金融緩和は消費税引き上げ実施をバックアップするためとされた。

2月の経済諮問会議(議事要旨)で次のとおり述べている。

持続可能な財政構造を確立することは、日本経済が持続的な成長を達成していく上で必須の前提であり、日本が国全体として取り組まなければならない課題である。この点、基礎的財政収支を「2020年度までに黒字化」するという財政健全化目標の達成に向け、具体的な計画を策定していくことは重要であり、諮問会議でもしっかり議論していくべきだと思う。
日本銀行としては、政府による財政健全化に向けた取組が着実に進んでいくことを強く期待している。

議事録からは外されたが、次のように懸念を表明したと報道されている。

実はドイツ、アメリカ、イギリスなどが強硬に、銀行が自国の国債を持つことについても資本を積むべきであると主張している。

アナリストは日本の銀行がどれほど国債を持っているか、同じルールが適用されればどれほど資本が不足しているか言い立てるようになる。
国債の格付けが低いほど必要な資本は多くなりかねない。資本不足と言われるのを恐れ(銀行は)国債を手放してしまうかもしれない。


安倍総理は浜田教授の考え方を完全に受け入れていると見られるが、黒田総裁との考え方の相違は今後、広がっていくと思われる。

付記

内閣府試算(平成24年1月)によれば、2011〜2020年度の平均成長率が名目3%、実質2%となる「成長戦略シナリオ」でも、国・地方の公債残高の対GDP比は増加を続ける。
黒田総裁の発言のとおり、持続可能な財政構造を確立することは、日本経済が持続的な成長を達成していく上で必須の前提である。

ーーー

なお、浜田教授は「金融緩和で物価は上がる」と主張する。

望ましい物価上昇は需要が増えた結果としての物価上昇であり、付加価値が増えるため望ましいものとなる。

最近の物価上昇は円安による食品や原料品の輸入価格アップによるものが多いが、単なる転嫁は付加価値の増加にはつながらず、需要家の生活が苦しくなるだけである。
この結果、消費が抑えられ、結果として値下がりがおこり、メーカーの採算が悪化する。

逆に原油価格の下落による値下がりは、需要家の購買力が増えて消費増につながり、望ましい。

デフレ対策での「物価上昇」は、原油価格のような外的要因や、円安による輸入価格の影響を除外して考えるべきである。

今後、原油価格がまた大幅上昇し、それによりCPIが前年比 2%アップしたとしても、それだけではデフレ解消とは言えない。

 


2015/5/8 アジア開発銀行 

アジア開発銀行(ADB)の関連会合が5月2日、年次総会が5月4日、アゼルバイジャンの首都バクーで開幕した。

中尾武彦総裁は記者会見で、ADBの融資能力を2017年に、現在の年間約130億ドルから最大で200億ドルに拡大すると発表した。

中所得国に市場の水準に応じた金利で貸し出す「通常資本財源」と低所得国に低金利で融資する「アジア開発基金」とを一本化する。

ADBの借入限度枠は、払込資本+準備金と、非借入加盟国からの請求払資本の合計額を超えることはできないこととなっている が、別途ドナー供与国が資金を拠出するアジア開発基金をADBの自己資本に統合することで信用の裏付けとなる資本力を高め、拡大した融資枠の8割をインフラ向けにあてる。

2013年末で171億ドル、現在約180億ドルの自己資本(調整後払込資本+準備金)を2017年1月に530億ドルに拡大する。
協調融資と合わせ、年間融資額は2014年の230億ドルから400億ドル近くまで増える。

現在ADFローンを受けている貧しい開発途上国は拡大したOCRから現在のADFローンと同じ条件で融資を受けられる。
ADFローンはグラント用のみが残ることとなる。

中尾総裁は「アジアインフラ投資銀行(AIIB) とは関係ない」としたが、中国主導でAIIBの設立準備が進む中、日米が主導するADBは機能を強化する。

計画には「融資契約までにかかる期間を半年短縮」、「調達手続きの迅速化」などが盛り込まれた。加盟国からは、手続きが煩雑で時間がかかるとの不満が上がっていた。

融資対象事業の調査から実際の契約までにかかる期間は平均21カ月かかっているが、これを15カ月まで短縮する。
加えて、現地駐在員事務所に決裁権限の一部を委ねる、事務所職員を増員などの改革を行い、業務を迅速化する。

また、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と、協調融資を行う考えも示した。


ADBは5月4日、アジアでのインフラ整備に民間企業が資金を投じやすくするための信託基金を設立したと発表した。
日本が4千万ドルを拠出し、カナダ、オーストラリアの各政府とADBからの拠出分を足して計7400万ドルを集めた。欧州も関心を示しており、規模は将来的に最大1億5千万ドルまで拡大する見通し。

ADBは、三菱東京UFJ、みずほ、三井住友銀行を含む日英仏などの8銀行と協力し、当事国政府に代わって事業調査や事業者の選定、契約書の作成などに資金を出し、民間企業の投資判断を手助けする。
中尾武彦総裁はAIIBとの協力を明言しており、新基金がAIIBの投融資先の発掘にも活用される可能性がある。

ーーー

ADBの活動の財源は、通常資本財源(OCR) と特別基金で構成されるが、特別基金の中心はアジア開発基金(ADF)である。

通常資金財源(OCR)は中所得国に市場の水準に応じた金利で貸し出すもので、財源は 1) 払込資本金、2) 準備金(累積利益)、3) 借入金からなる。

2013年末の状況は下記の通り。

   授権資本   163,840 百万ドル  
   応募済資本    162,809   日本は25,510百万ドル
   請求払資本   154,640        24,230百万ドル
   払込資本   8,169        1,280百万ドル
         
   同 調整後   5,885    
   準備金   11,253    
   自己資本 合計   17,138    
   借入残高   61,615    

応募済資本と払込資本の差である請求払資本は、ADBの借入先の大規模な債務不履行という不測の事態が発生した場合にのみ、ADBの債権者(ADB債券を保有する投資家と ADB保証債務の保有者)保護を目的として利用することができ るが、過去にADBが請求払資本の実行を請求した例はない。

メンバー各国とその出資比率は下の表の通り。

参加国は、域内が48カ国、域外が19カ国の合計67カ国。
域内のうち、借入国が40カ国、非借入国が8カ国で、借入国のうち17カ国はADFのみ、12カ国はOCRとADFの両方、残り11カ国がOCRのみとなっている。

出資比率は日本が15.67%、米国が15.56%であるのに対し、GDPが日本の約2倍の中国は6.47%にすぎない。
中国など新興国は経済規模に応じた資本構成にするための増資を求めてきたが、今回の改革に増資は盛り込まれなかった。

IMFも2010年に、新興国の出資比率を引き上げ、理事会への登用を増やす「IMF改革」に合意したが、米国では議会の賛成が得られず、批准されていない。

IMFへの出資比率 (%)
現状   改革後
米国 17.67 米国 17.41
日本 6.56 日本 6.46
ドイツ 6.11 中国 6.39
英国 4.51 ドイツ 5.59
フランス 4.51 英国 4.23
中国 4.00 フランス 4.23
イタリア 3.31 イタリア 3.16
サウジ 2.93 インド 2.75
カナダ 2.67 ロシア 2.71
ロシア 2.50 ブラジル 2.32

「米国議会は中国の影響力拡大を懸念しており、増資の承認を得るのは難しい」とされており、これらに対する反発がAIIBの設立の契機の一つとなった。

中国の楼継偉財政相は講演で現在のADBの出資比率を批判し、ADBが資本の不公平問題に取り組むことを期待する 」と述べた。

これを受け、中尾総裁は5月4日の講演で、 「近い将来、加盟国に増資の支持を求める」と各国に検討を依頼した。
実施時期は未定。増資の際には「出資比率の変更をあり得る」との認識を示したが、調整は難航すると思われる。


アジア開発基金(ADF)は、1人当たりのGNP が低く債務返済能力に限りがある開発途上加盟国に対して、OCRよりも緩やかな条件で貸付けするもの。

貸付条件は、
(1)プロジェクトに対する貸付の返済期間は8年の据置期間を含む32年、
(2)セクター開発などプログラム・ローンの返済期間は8年の据置期間を含む24年、
(3)新規貸付はすべて、据置期間中は1%の金利、その後は1.5%の金利(元本は均等償還)である。

30ヵ国のドナー供与国が資金を拠出し、約4年ごとに増資が行われる。
日本はADFの最大ドナー国で、 2014年末現在、全体31,794百万ドルの約44%(13,877百万ドル)を拠出している。
その他の主なドナー国は、日本に次いでアメリカ(3,972)、ドイツ(1,940)、オーストラリア (1,936)、カナダ (1,904) の順となっている。

特別基金にはそのほかに、日本が全額拠出し、プロジェクト準備技術援助や、技術移転に関する支援に使う日本特別基金(JSF) 、日本が拠出するADB研究所特別基金、日本が焼く100億円を出資した貧困削減日本基金(JFPR)がある。

加盟国は以下の通り。

   参考 アジア開発銀行(ADB) とアジアインフラ投資銀行(AIIB) 加盟国対比  

    参加 出資
比率
投票権

ADF
拠出額
2014/end

ADB
借入
対象
ADF
借入
対象
AIIB
参加
(域内)   % % 百万ドル      







日本 1966 15.670 12.835 13,877     X
豪州 1966 5.810 4.946 1,936    
韓国 1966 5.058 4.345 437    
ニュージーランド 1966 1.542 1.532 153    
台湾 1966 1.094 1.173 92     X
香港 1969 0.547 0.736 94     X
ブルネイ 2006 0.354 0.581 18    
シンガポール 1966 0.342 0.572 18    
(小計8カ国)   30.417 26.720        





中国 1986 6.470 5.474 81  
インド 1966 6.357 5.384 15  
インドネシア 1966 5.173 4.437 15  
マレーシア 1966 2.734 2.486 23  
フィリッピン 1966 2.392 2.212    
パキスタン 1966 2.187 2.048  
タイ 1966 1.367 1.392 15  
バングラ 1973 1.025 1.119  
カザフスタン 1995 0.810 0.946 2  
ウズベキスタン 1995 0.676 0.840  
スリランカ 1996 0.582 0.764  
ミャンマー 1973 0.547 0.736  
アゼルバイジャン 1999 0.447 0.656    
ジョージア 2007 0.343 0.573  
ベトナム 1966 0.343 0.573  
アルメニア 2005 0.300 0.538   X
キルギス 1994 0.300 0.539  
タジキスタン 1998 0.288 0.529  
トルクメニスタン 2000 0.254 0.502     X
ネパール 1966 0.148 0.417  
パプアニューギニア 1971 0.094 0.374   X
フィジー 1970 0.068 0.353     X
カンボジア 1966 0.050 0.338  
アフガニスタン 1966 0.034 0.326   X
モンゴル 1991 0.015 0.311  
ラオス 1996 0.014 0.310  
チモール 2002 0.010 0.306   X
ソロモン諸島 1973 0.007 0.304   X
バヌアツ 1981 0.007 0.304   X
ブータン 1982 0.006 0.303   . X
キリバス 1974 0.004 0.302   X
モルディブ 1978 0.004 0.302  
ミクロネシア 1990 0.004 0.302   X
ナウル 1991 0.004 0.302   X
トンガ 1972 0.004 0.302   X
クック諸島 1976 0.003 0.301     X
マーシャル諸島 1990 0.003 0.301   X
パラウ 2003 0.003 0.301   X
サモア 1966 0.003 0.301  

X

ツバル 1993 0.001 0.300   X
(小計 40カ国)   33.079 38.405        
合計 48カ国   63.496 65.125        
               
(域外)              
米国 1966 15.560 12.747 3,972     X
カナダ 1966 5.252 4.500 1,904     X
ドイツ 1966 4.344 3.773 1,940    
フランス 1970 2.337 2.168 1,335    
英国 1966 2.051 1.939 1,248    
イタリア 1966 1.815 1.750 938    
オランダ 1966 1.030 1.122 806    
スイス 1967 0.586 0.767 524    
オーストリア 1966 0.342 0.572 283    
ベルギー 1966 0.342 0.572 241     X
デンマーク 1966 0.342 0.572 296    
フィンランド 1966 0.342 0.572 165    
アイルランド 2006 0.342 0.572 72     X
ルクセンブルグ 2003 0.342 0.572 50    
ノルウェー 1966 0.342 0.572 246    
スペイン 1986 0.342 0.572 403    
スウェーデン 1966 0.342 0.572 378    
トルコ 1991 0.342 0.572 115    
ポルトガル 2002 0.114 0.390 103    
合計 19カ国   36.504 34.875        
    % % 百万ドル      
総合計 67カ国   100.00 100.00 31,794      

2013年の実績は下記の通り。(百万ドル)

  ソブリン ノンソブリン 合計
OCR 特別
基金
合計 OCR 特別
基金
合計 OCR 特別
基金
合計
融資 8,761 3007 11,768 1,425   1,425 10,186 3,007 13,193
出資       142   142 142   142
グラント   849 849         849 849
保証       35   35 35   35
技術協力   150 150   6 6   156 156
小計 8,761 4,006 12,767 1,602 6 1,608 10,363 4,012 14,375
協調融資 3,715 2933 6,648
合計 16,482 4,541 21,023

中長期資金として11,975百万ドル (2012年は13,217百万ドル)、短期資金として2,518百万ドル (2012年は5,684百万ドル) の借入金を調達した。

 

ADBの融資残高(2014年6月末現在のOCR 残高 793億ドル)の内訳は下記の通り。

 
 

2015/5/9  米希少病治療薬メーカーのAlexion、同業のSynageva BioPharmを買収 

希少病の治療薬を手掛ける米Alexion Pharmaceuticalsは5月6日、同業の米Synageva BioPharma を総額84億ドルで買収すると発表した。

AlexionSynageva1株あたり、現金115ドルとAlexion株 0.6581株を支払う。買収により、2017年までに少なくとも150百万ドルの節約効果が見込めるとしている。

Synagevaの開発品を取り込み、品ぞろえを強化する。今年の半ばの手続き完了を見込む。

ーーー

Alexion はSoliris® (eculizumab) を開発し、現在世界中で命に係わる超稀少の2つの病気、発作性夜間血色素尿症(PNH) と非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の患者に供給している
2007年に上市し、2014年には20億ドル以上の売上高となっている。2014年1月にはFDAがSolirisを
腎移植患者の移植後臓器機能障害の予防に対しOphan Drug 指定した。

Alexion は2011年12月28日、Enobia Pharmaの全株式を取得する契約に署名した。
Enobiaはモントリオールおよびマサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置き、極めてまれな生命を脅かす遺伝的代謝疾患患者の治療法の開発を専門とした民間のバイオ製薬会社。

Enobiaの開発したStrensiq™(Asfotase alfa)は、承認済みの治療法がない極めてまれな生命を脅かす遺伝的代謝疾患の1つである低ホスファターゼ血症(HPP)患者を対象としたヒト組換えアルカリホスファターゼ酵素補充療法で、2015年の上市が期待されている。

今回買収するSynageva BioPharmは、血液と肝臓に脂肪成分が蓄積し死に至る Lysosomal Acid Lipase Deficiency(リソソーム酸性リパーゼ欠損症)の治療薬の Kanuma™ (sebelipase alfa) を持ち、現在米国と欧州で販売の認可を申請中。

既に上市しているSoliris® に、2015年にも承認を得る見込みのStrensiq™ とKanuma™ を加え、3つの稀少薬を持つこととなる。

Alexionの上市、開発中の製品は下記の通り。

Synageva BioPharmは以下の稀少病のための医薬品を開発中。

ーーー

希少疾病治療薬メーカーの買収が続いている。

2015/4/4   希少疾病治療薬メーカーの買収 続く    


2015/5/11 米国の石油精製産業のストライキの状況

全米鉄鋼労組(USW:United Steelworkers) の石油精製産業の労働者が35年目に初めてのストライキを始めた。

全国水準の団体交渉は3年ごとに行われる。3万人のうち多くの労働契約は1月31日付で終了した。

石油労働者を代表する鉄鋼労組と、エネルギー業界を代表するShellは、1月21日から賃金と作業場の安全条件などをめぐる交渉を行ったが、意見の相違を狭められなかった。

労組側は、賃上げの他にも超過労働、不安定な労働条件、火災や化学ガス放出と漏出、爆発などの危険な作業場の安全要件、労組弾圧、非組合員の契約職拡大などの問題の改善の要求をしている。

2月1日正午から9つの工場でストライキに突入、2月8日に更に2工場が参加し、その後更に、Shell とSaudi Aramco のJVのMotivaの3製油所とShell のNorcoの石化工場が参加し、合計15工場となった。

これ以外の工場では、旧労働協約を1日ごとに延長して操業を続ける。

2015/2/17    米国で石油精製産業のストライキ

参加工場は下記の通り。

    製油所 その他
Shell Deer Park, Texas Chemical
Norco, Louisiana   Chemical
Motiva
(
Shell / Aramco)
Norco, Louisiana  
Port Arthur, Texas  
Convent, Louisiana  
Tesoro Anacortes, Washington  
Martinez, California  
Carson, California  
Marathon Catlettsburg, Kentucky  
Texas City, Texas Co-Generation
BP Whiting, Indiana  
BP-Husky JV Toledo, Ohio  
LyondellBasell Houston, Texas  
合計   12 3

3月12日に暫定合意に達した。

概要は下記の通り。

・これまでより1年長い4年の契約。

・賃上げ:初年度 2.5%、次の2年に各3%、4年度に3.5%

・健康保険:保険金を会社/従業員 80/20で分担

具体的には各工場ごとに組合員の投票で賛否を決め、更に会社側と協定を結ぶこととなる。

この結果、ストに入っていた15工場のうち、下の(黄色表示)の5工場を除き、職場復帰した。

スト中の5工場の状況は以下の通り。

Marathon 交渉中
BP BPとUSWは5月7日にスト終結の仮合意に達した。
職場復帰の契約を結んでから、組合員による賛否の投票を行う。
BP / Husky 交渉中
Lyondell Basell 会社側は "last, best and final" という提案を行ったが、以前の契約にあった残業時の premium pay 条項がなかったため、組合は圧倒的多数でこれを拒否した。

この結果、会社側は新提案を行い、組合側は5月7日、これを受け入れた。
premium pay 条項はないが、double-time 条項が入ったとされる。

職場復帰契約はまだ締結されていない。

   


2015/5/12  Syngenta、Monsantoによる買収提案を拒否 

Syngentaは5月8日、MonsantoからSyngentaの株式を1株449スイスフラン、総額450億米ドル(うち45%を現金 )で買収する提案を受けたが、取締役会はいろいろな観点から十分に検討したうえで満場一致で拒否することを決めたと発表した。

現在のSyngentaの株価は短期的な通貨変動とコモディティの価格変動の影響を受けて下げっているが、売上の50%以上を占める発展途上国市場で事業が好調である。
同社の戦略はこれらの市場で成功し、2014年には5年連続で2桁の伸びを示した。新製品もグローバルに売上が伸びており、開発中の製品も多い。

Monsantoの提案額はSyngenta の価値を過小評価している。また、多くの国で行われる独禁法等によるチェックのリスクを過小評価している。

これを受け、Monsantoも買収提案をしたことを発表した。

両社の統合は両社の株主に大きな価値を生む。

統合は大きいシナジーをもたらし、需要家に総合的な解決策を供与できる。

独禁法については、専門家と十分な検討をしており、必要な認可を得る自信があるとしている。

関係者によると、統合事業の一部の売却を検討しており、既に Bayer などに売却を打診したという。

アナリストは、Singentaの将来は明るく、もっと高いプレミアムを望んでいるのは理解できるとするとともに、両社の企業カルチャーは異なっており、統合すればかなりの問題が出るだろうと見ている。

Monsantoの買収価格は、過去12ヶ月のSyngenta の金利・税・償却前利益の17倍に相当する。過去10年のアグロケミカル大企業の取引価額の中間値は約12倍であり、成立すれば高価格での取引の一つとなる。

付記

Monsantoは2015年8月26日、買収を諦めると発表した。

8月18日にSyngentaに新しい提案をしたが、Syntentaは拒否した。
(当初は1株449スイスフランでうち45%を現金としていた。現金は202スイスフランとなるが、これを245スイスフランに引き上げるなどの提案であった)

ーーー

Syngentaは2000年にAstraZeneca (ICIから独立したZeneca とスウェーデンのAstra が1999年に合併)の農薬部門と、Novartis(Ciba Geigy とSandozが1997年に合併)の種子部門が2000年に統合してできた会社で、農薬(殺虫剤、除草剤、殺菌剤)と穀物・野菜・花の種子、ローン&ガーデン製品を扱う。

Monsantoについては下記を参照。

2015/4/7    国際がん研究機関、米モンサントの除草剤に発癌性の恐れを発表   

Syngentaは農薬の世界最大のメーカーであり、Monsantoは種子と遺伝子組替作物(コーンや大豆など)の世界最大のメーカーである。

仮に買収が成功すれば、農業におけるグローバルなリーダーとなり、Bayer、BASF、DuPont、Dow などにとり、恐ろしい競争相手となる。


 



2015/5/13    ニューヨーク近郊の原発、変圧器火災で自動停止  

ニューヨーク近郊にあるIndian Point 原子力発電所で5月9日午後6
時ごろ、変圧器から火が出て運転中の原子炉が自動停止するトラブルがあ った。

運営するEntergy Corpによると火はすぐに消し止められ、けが人などは出ていない が、2基の原子炉のうちのUnit 3が手順に基づき自動停止した。
NRCによると、火が出た変圧器は原子炉の建屋から180メートルほど離れた場所にあり、原子炉の状態も安定して おり、外部への影響はないという。

しかし、この火災で変圧器が破裂して石油が地面に流れ出し、保水タンクからあふれてハドソン川に大量の石油が流出し、環境への影響が懸念されている。
NRCは、流出した石油の量を数千ガロンと推定している。
クオモ知事はハドソン川の野生生物に及ぼす影響について、「明らかに良くない」との見方を示し、生態系への影響についてさらに詳しく調査すると表明した。

Indian Point 原発はニューヨーク中心部から北におよそ60キロほど北のハドソン河沿いにある。

現在、2基が動いている。

  炉型 能力 運転開始 状況  
1号機 加圧水型 275MW 1962 1974停止  
2号機 同上 1,025MW 1973 運転中 2013/9に40年期限、20年延長審査中
3号機 同上 1,040MW 1976 運転中 2015/12に40年期限、20年延長審査中

 2号機は既に40年期限が到来しているが、期限の5年前に延長申請を提出している場合、"Period of Extended Operation" 規定で稼動継続が認められる。

付記 

ニューヨーク州は2017年1月、Indian Point 原発を2021年4月で運用停止することでEntergy Corpと合意に至った。
 

ニューヨーク市民の総電気使用量の30%は Indian Point 原発から供給されている。
ニューヨークは送電線が過密状態のため遠方から電力を受け入れる能力が制限されており、市への電力供給の安定性はIndian Pointに大きく依存している。

同原発はこれまでも変圧器事故などを起こしており、2012年の変圧器事故での川への石油流出では罰金を課せられている。
いくつかの環境グループが原発の永久停止を要求していた。

福島の原発事故では、米国は在日米国人に対し80km 圏内を立ち入り禁止としたが、Indian Point原発から半径80km 内には、ニューヨーク市の800 万人を含め2,000 万人近くの人々が居住している。仮に事故が起こった場合、これだけの人数を避難させることは不可能で、東日本大震災後、ニューヨーク州知事の側近が運営会社に施設閉鎖の方針を伝えたと報じられた。

同原発は、日に25 億ガロン(94.6 億リットル)の水を冷却水としてハドソン川から取水しているが、NRCからライセンス更新許可を得るためには、州政府からハドソン川の取水許可を得る必要がある。

今回の石油流出を含め、厳しい立場に立たされている。

日本人の多く住むWhite Plaines も近くにある。
ニューヨークの日本総領事館でもホームページにIndian Point原発の「緊急災害のための心構え」を掲載している。
   http://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/j4/01.html


2015/5/14    米上院、TPA法案審議入りを否決  一転可決

米上院は5月12日、大統領に強力な通商交渉権限を与える貿易促進権限(TPA) 法案の審議入りを否決した。

下院も審議入りをしておらず、5月中の法案可決は極めて難しくなり、TPP交渉の大筋合意は6月以降に遅れる公算が大きい。

早期可決を目指す共和党は、改めて動議の採択を求める。  末尾の付記参照

ーーー

米超党派議員は4月16日、TPA法案で合意し、議会に提出した。
法案名は、Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of 2015 (TPA-2015 ) となっている。

民主、共和両党の議員が法案の最終的な細部をめぐって半年間議論を進めてきた。

4月22日に上院財政委員会で可決(多くの修正案が出されたが原案で可決)、4月23日に下院歳入委員会で可決(為替操作への報復措置を盛り込む修正案は否決)した。

しかし、与党・民主党内での反対論が根強く、審議が順調に進むかは見通せない。

2015/4/18 米超党派の議員、TPA法案を議会に提出  

上院は5月12日にTPA法案について、本会議での審議開始に必要な動議を採決したが、結果は次の通り。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 51 1   52
反対 1 42 2 45
棄権 2 1   3
合計 54 44 2 100

野党の共和党は51名が賛成したが、与党民主党からは賛成は1名だけで、52対45で否決された。

米国の上院では規則により上院の5分の3以上の議員(60人以上)の賛成がないと可決されない。

一つはフィリバスター制度で、演説を長時間続けて議事妨害することが出来る。
上院規則22条によりフィリバスターを宣言するだけでフィリバスターが有効となる。
上院の5分の3以上の議員(60人以上)が打ち切りに賛成した場合は、1時間以内に演説者は演説をやめなければならない。

更に、審議を終わらせて採決に進むには、全会一致の賛成が必要となり、上院議員が1人でも反対すると、採決に進むには再び5分の3の賛成票が必要となる。5分の3の賛成が得られない場合は、その法案は廃案とみなされる。

結局のところ、過半数の賛成を得ても、60人以上の賛成がないと、否決となる。

付記 審議打切り後は議事妨害の手段はないため、採決は単純過半数で決まる。

民主党は、為替操作に関する措置などを含む他の通商関連法案とTPA法案を一緒に扱うことを要求していた。
しかし
オバマ大統領や下院が為替条項に反対しているため、審議開始の対象から外し、民主党が反発した。

民主党が求める関連法案には、交渉参加国が「自国の為替政策を制約する」と懸念する条項が含まれ、米政府高官は「TPP交渉を頓挫させかねない」としている。


これを受け、日本の鶴岡首席交渉官は、「これは交渉をまとめるための必須の条件が整わないということになり、その中で交渉を進展させることは、なかなか難しいだろうと思う」と懸念を示した。

 

付記

上院は5月14日、再度投票を行い、民主党から13名が賛成し、65対33で本会議での審議入りが決まった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 52 13   65
反対   31 2 33
棄権 2     2
合計 54 44 2 100


オバマ大統領の身内の民主党議員に対する説得活動が功を奏した。

米メディアは「前日の否決がオバマ大統領の優先政策を阻害したと受け止められ、民主党が軟化した」との見方を伝えた。

今回の合意で、上院ではTPA法案が通過する公算が大きくなったが、下院では依然、民主党を中心に反対論が根強い。


2015/5/15   DuPont、株主総会で物言う株主に勝利

DuPontの株主総会が5月13日に開催され、取締役12名全員の留任が承認された。

付記 6月4日の発表では、非常に僅差であった。
 

昨年来、物言う株主(Activist)のNelson Peltz が率いる米Trian Fund Management が会社の分割を要求している。

既に発表されているPerformance Chemicals部門に加え、DuPontを2社に分割する。
   GrowthCo      (Agriculture, Nutrition and Health, Industrial Biosciences)
   CyclicalCo/CashCo    (Performance Materials, Safety and Protection, Electronics and Communications)

しかし、DuPont が反対姿勢を崩さないので、要求の実現を目指すため、Peltz氏を含めて4人の取締役を選任するよう求め 、委任状争奪戦となった。

DuPontは4月6日、株主に対して同社の過去の実績、今後の方針などを説明する詳細資料を発表した。

資料では、DuPontのこれまでの方針、今後の方針が正しいこと、Trianの要求する会社分割がいかに問題であるかを説明、Trianが退任を求めている4人の現取締役が適任であるとし、逆にTrian が推薦している4人の取締役候補が経験などの点からDuPontの取締役には適していないとしている。

2015/4/10  DuPont、「物言う株主」と株主総会で対決


2015/5/16  リベリアでエボラ出血熱 終息宣言    

世界保健機関(WHO)は5月9日、西アフリカで広がったエボラ出血熱感染で死者数の最も多いリベリアでの流行が終息したと宣言した。西アフリカの主要な感染拡大国での終息宣言は初めて。

エボラ熱の潜伏期間は最長21日で、WHOは潜伏期間の2倍の42日間、新たな感染例が出ない状態を終息の目安としているが、最後の感染者確認から42日が経過したことを受けて終結を宣言した。

今回のエボラ熱流行は、2013年12月にギニアで始まり、2014年3月にエボラ熱と確認された。

WHOによると、死者数(疑い例を含む)は約1万1000人で、リベリアは最多の4716人(感染者は1万564人)となっている。
リベリア政府は2014年7月、感染拡大を防ぐため国境を封鎖し、同8月には非常事態宣言や夜間外出禁止令を出して抑え込みをはかった。

他の感染拡大国のギニア、シエラレオネでは5月3日までの1週間の感染者の確認件数がそれぞれ9件と鈍化しているものの、引き続き感染例が報告されている。「国境なき医師団」では、「3カ国全てで、42日間感染例なしを記録するまでは手綱を緩めることはできない」と話している。

付記

リベリアでは終息宣言以降、6月下旬から7月にかけて新たな患者が6人で死亡者が2人出た。
最後の感染者の陰性反応が確認されて42日が経過したことから、2015年9月3日、再び終息が宣言された。

しかし、2015年11月19日に国内の病院に入院した患者1人の血液検査で感染が確認された。また感染リスクが高いとみられた接触相手のうち、2人が陽性反応を示した。

WHOは2015年11月6日、シエラレオネでエボラ出血熱の終息を発表した。

WHOは2015年12月29日、ギニアでエボラ出血熱の感染が終息したと宣言した。
最後の患者が2回の検査で陰性と判定された後、ウイルスの最大潜伏期間の2倍に当たる42日が経過したことから、終息宣言が出された。

完全に終息していないのはリベリアだけとなっている。

付記

WHOは2016年1月14日、リベリアでエボラ出血熱の感染が終息したと宣言した。
2013年12月にギニアで始まった感染の連鎖は、すべての国で終息が確認された。世界での感染者数は2万8637人、死者数は1万1315人だった。

しかし、WHOは翌1月15日、西アフリカのシエラレオネで新たな感染者が出たと発表した。

付記

富士フイルムは2016年6月14日、「アビガン®錠200mg」(一般名:ファビピラビル)が、ギニアのエボラ出血熱対策を目的とした日本政府からの緊急無償資金協力の調達物資の一つに採用されたと発表した。

2015年12月にWHOより終息宣言が発表されたが、ギニアで2016年3月に新たなエボラ出血熱の感染者が確認された。
これを受けて、ギニア政府は、日本政府に対して「アビガン錠」の提供を要請。日本政府は、緊急無償資金協力の調達物資として、富士フイルムより約2,000人分を購入し、ギニア政府に提供することを決定した。

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WHOは潜伏期間の2倍の42日間、新たな感染例が出ない状態を終息の目安としているが、異なる情報も報道されている。

米疾病対策センター(CDC)の医師らは5月7日、エボラ出血熱からほぼ回復し、血液からウイルスが検出されなくなって数か月たった男性の目の中で、エボラウイルスが生き残っているのを発見したと、New England Journal of Medicine に発表した。
       http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1500306?query=featured_home

男性は米国の医師で、2014年9月、西アフリカのシエラレオネで医療活動中に感染、米アトランタの病院で未承認薬などによる治療を受け、1か月半後に血液からウイルスが検出されなくなって退院した。

しかし、その約2か月後、左目が痛くなり、青い瞳が緑に変色した。検査の結果、目の内部を循環する水「房水」からエボラウイルスが見つかった。
現在は目の症状も回復しつつあるという。

WHOは5月8日、エボラ出血熱から回復した男性から女性への性交渉による感染の可能性について、「かなり強い」とする見解を発表した。
   http://www.who.int/reproductivehealth/topics/rtis/ebola-virus-semen/en/

WHOは、症状が出てから82日間たった後でも精液からエボラウイルスを分離することがあるとの研究事例を紹介し、回復後に血液からウイルスを検出しなくなった後かなり経過してからも、性交渉による感染拡大がありえるとした。

そのため、回復後も診断を受け、精液を2回検査してウイルスを検出しなくなるまでか、検査できない場合は少なくとも発症後半年間、男性がコンドームを正しく装着することを勧告した。

回復した女性から男性への性交渉による感染について、可能性は低いとしつつも「理論上は可能性あり」とした。

 


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