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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は http://blog.knak.jp


 

2016/8/1 欧州銀行監督機構の欧州の銀行の健全性審査とMonte dei Paschi 銀行の再建策 

7月11日のブログで、BrexitでEUが揺れるなか、経済不振に悩む南欧の各国に対する EU当局の対応が新たな混乱の火種となり、ギリシャ危機のような事態を招く可能性や、各国でEU離脱派が勢力を強める可能性があると述べた。

一つはイタリアの銀行の不良債権問題で、もう一つはスペインとポルトガルのEU財政規律違反問題である。

2016/7/11   EUに新たな混乱の火種  

後者のEU財政規律違反問題については、下記の通りとなった。

EUの財務相理事会は7月12日、制裁を科す方針で合意した。最大でGDPの0.2%に当たる額の罰金が科される可能性がある。

しかし、欧州委員会は7月27日、スペインとポルトガルに対する罰金を科さず、規律達成期限を延長することを提案した。
「スペインとポルトガルがこれまでに実施した取り組みや現在の厳しい環境などを踏まえ、欧州委はこの日の会合で罰金の取り消しを提案することで合意した。」

欧州では経済成長が足踏み状態にあるなかで反EU感情が高まっており、制裁措置の発動に消極的になっていると見られる。

欧州委はスペインとポルトガルに財政ルールを達成するよう求める期限も延長。スペインは現行の2016年から2018年まで2年間、ポルトガルは現行の2015年から2016年まで1年間延ばすよう提案した。

財政ルール違反に対する制裁のもうひとつの手段であるEUから両国への補助金の支給停止については、欧州議会との合意が必要になるとの理由から、判断を秋以降に先送りした。

これに対し、EU加盟国は異論を示さない意向とされる。

 

フランスについては、財政赤字の対GDP比率を3%以内とする期限は2013年であったが、2度延長し、2017年までとしている。

フランスが目標達成できない場合、欧州委員会はフランスから罰金を取るだろうか?

ーーー

イタリアの銀行の不良債権問題は下記の通り。

イタリア大手銀行のBanca Monte dei Paschi di Siena(Monte Paschi)は7月4日、欧州中央銀行(ECB)から不良債権比率を下げるように求める書簡を受け取ったと発表した。不良債権の総額を昨年の469億ユーロから2018年までに約30%削減するように求められた。

イタリア政府は公的資金注入による救済の検討を始めたが、EUが定めた銀行再建ルールが障碍となった。

金融危機を受け、EUでユーロを使う国々は各国でばらばらだった金融行政を一元化する「銀行同盟」を進めた。
銀行の破綻処理のルールも1月から施行し、まず銀行の債券などを持つ投資家に一定の割合の損失を負わせることにし、公的資金の利用を制限する仕組みにした。

 * Bail-in 制度:まず銀行の株主や債券保有者が銀行負債の8%相当の損失を負担する。
        従来の Bail-out(外部からの「保釈金」で危機を逃れる)に対し、銀行のStake holders が先ず資金を捻出する。

しかし、イタリアでは銀行の債権者に個人投資家も多いため(個人が銀行債を預金に近い感覚で購入している)、このルールを適用すれば反発を招くおそれがある。 

イタリア政府は欧州委員会に特例を求めているが、欧州委やドイツは、導入したばかりのルールを破ることに難色を示した。

イタリアの銀行の不良債権問題で新しい展開があった。

欧州銀行監督機構(EBA)は7月29日、大手51銀行(EU:50、ノルウェー:1)を対象に実施したストレステスト(健全性審査)の結果を公表した。
       http://storage.eba.europa.eu/documents/10180/1532819/2016-EU-wide-stress-test-Results.pdf

審査は2015年末の資産状況を基に2018年末までの3年間で、大幅な景気悪化などが収益や資本に与える影響を評価した。
51行全体では2,690億ユーロの中核的自己資本が損なわれ、中核的自己資本比率は13.2%から9.4%に低下するとした。

今回の審査では合否判定を行わず、その基準も示されていない。

多額の不良債権が問題となっているイタリアのMonte dei Paschi di Siena(Monte Paschi)は、景気が大幅に悪化した場合、中核的自己資本比率 (Tier 1)が唯一マイナス(-2.44%) で最悪となり、同行の経営基盤の脆弱さが突出した。

他に、Allied Irish が2014年の前回査定で「合格ライン」とされた基準(5.5%)を下回り、7%を維持できない銀行が他に3行ある。

また基準が高い有力銀行で基準ギリギリの銀行も多い。Barclaysは基準(7.5%)を下回る。

銀行名 Threshold
(基準)
2015年 2018年
悪化ケース
基準比
(% point)
Monte dei Paschi Italy 5.5% 12.07% -2.44% -7.94
Allied Irish Ireland 5.5% 13.11% 4.31% -1.19
Raiffeisen Austria 5.5% 10.20% 6.12% +0.62
Bank of Ireland Ireland 5.5% 11.28% 6.15% +0.65
Banco Popular Spain 5.5% 10.20% 6.62% +1.12
以下はグローバルに重要なため、基準が高い銀行で、基準ギリギリの銀行
Unicredit Italy 6.5% 10.38% 7.10% +0.60
Societe Generale France 6.5% 10.91% 7.50% +1.00
Barclays UK 7.5% 11.35% 7.30% -0.20
Dutsche Bank Germany 7.5% 11.11% 7.80% +0.30
BNP Paribas France 7.5% 10.87% 8.51% +1.01
HSBC UK 8.0% 11.87% 8.76% +0.76
  

 

ストレステストは一定規模以上の銀行に限った。他にポルトガルやギリシャに問題を抱える銀行が多い。

欧州銀行監督機構の幹部は、欧州の銀行システムが抱える不良債権を一掃することに専念する必要があると語った。

 

Monte dei Paschi は7月29日、この発表の少し前に、資本増強や不良債権売却を柱とする再建計画を発表した。

JPMorgan とイタリアのMediobanca が主導でまとめた案で、まず92億ユーロの不良債権を証券化する。政府の呼びかけで同国の銀行や保険会社が参加した民間投資ファンドが一部を引き受け、残りは既存株主などに売る。

民間投資ファンド Atlante(銀行や保険会社が参画)が16億ユーロ
既存株主が16億ユーロ
その他の投資家が60億ユーロ

付記 Monte dei Paschi は不良債権を簿価の33%で売却することを決めた。

その後、再建策のとりまとめを手掛けたJPMorgan、Mediobanca などの銀行団を引受先に最大50億ユーロの増資を実施する。

引き受け銀行団には上記2行のほか、Goldman Sachs、Credit Suisse、Deutsche Bank、Bank of America Merrill Lynch、Santander、Citigroup の6行が参加を表明している。

増資および不良債権売却計画は年内に完了する見通し。

この再建策とは別に、スイスの金融大手UBS とイタリアの銀行大手Intesa Sanpaolo の元CEOのCorrado Passera 氏が支援の提案を行った。
支援内容は明らかにされていないが、Monte dei Paschi はこれを拒否した。

欧州中央銀行(ECB)はMonte dei Paschi の再建策を承認したとされるが、実現を懸念する見方もある。


2016/8/2 ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev による2位のSAB Miller 買収、実現へ 

ビール世界最大手のAB InBev は2015年11月11日、2位の英のSAB Miller を1株当たり44ポンド、総額 697億8000万英ポンド(約13兆円)で買収することに正式合意したと発表した。

2015/10/14   ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev、2位のSAB Millerを買収へ   

このままでは独禁法上で問題になるのは確実なため、両社は対策を取った。(下記参照)

これが奏功し、EUは2016年5月24日、米国は7月20日、そして最後の大物の中国商務部も7月29日に承認した。これで23国・地域の承認を得、残りは数少ない。

Asia-Pacific では、豪州、インド、韓国と中国が承認している。日本で公取委が審査しているという話は聞かない。
両社の日本でのシェアは小さく、合併しても全く影響がない。

しかし、英国のEU離脱選択を受けたポンド安が新たな問題として浮上した。

合意時のレートでは、700億ポンドは1,060億米ドルに相当する。
しかし、Brexitによる12%のポンド安で、これは920億ドルに目減りした。

株主の不満を受け、AB InBev は2016年7月26日、SAB Miller の買収価格を、これまでの44ポンドから45ポンドに引き上げた。最終提案であるとしている。
この結果、買収総額は790億ポンドになる。

但し、これでも米ドル換算では1,040億ドルで、当初のドル建てより低い。

部投資家は新たな買収価格でもSAB Millerの価値が過小評価され、株主が公平に扱われていないとして、引き続き提案は受け入れられないとの姿勢を示した。

SAB Millerの取締役会は7月29日、AB InBev の新提案(1株当たり45ポンド)を全会一致で支持を決め、株主にこれを受け入れるよう勧告した。

これによりビール業界史上最大の買収実現に向けて道筋が整った。

付記  2016年10月10日、買収手続きが完了した。

ーーー

独禁法対策は下記の通り。

 1)米国

SAB Millerは保有するMillerCoorsの持株 58%を合弁相手の米 Molson Coors Brewing に120億ドルで売却する。
Molson Coorsは米国のビール市場でシェアを25%に伸ばし、ABインベブの45%に次ぐ2位に躍進する。

 

ーーー

米国は2016年7月20日、これを条件に承認した。

2)EU

AB InBev は2015年12月17日、SABMiller の欧州のブランド、Grolsch ビールとPeroni ビールを売りに出すことを明らかにし、3ヶ月以内の成約を求めた

アサヒビールは2016年2月10日、AB InBev に対し、AB InBevによるSABMillerの買収実行を条件として、SABMillerのイタリア、オランダ、英国事業その他関連資産を取得するための法的拘束力のある最終提案を行ったと発表した。

SABMillerのイタリア、オランダ、英国の事業を構成する会社の全株式と、3ブランドの知的財産権その他関連資産。
ただし、「Peroni」と「Grolsch」は米国・プエルトリコにおけるブランドに係る知的財産権を除く。

買収対象会社 ブランド  
Birra Peroni S.r.l.(伊) 「Peroni」 150年以上の歴史
Royal Grolsch NV(蘭) 「Grolsch」 400年の歴史
Meantime Brewing (英) 「Meantime」 英国のクラフトビールのパイオニア的ブランド
Miller Brands (UK) (英)    

2016/2/16 アサヒビール、英SABMillerの欧州事業の一部を買収 

AB InBev は4月19日、アサヒからの約29億ドルでの買収提案を受け入れた。

更にAB InBev は4月29日、SABMillerの中東欧事業を売却する意向と発表した。

SABMillerのハンガリー、ルーマニア、チェコ、スロバキア、ポーランドの全ての資産を売却する。売却額は50億ドル程度と推定される。
ブランドでは、ポーランドのTyskieとLech、ハンガリーのDreher、ルーマニアのUrsusなど。

これら中東欧の事業は1社または2社に売却される。

付記

アサヒビールは2016年12月13日、73億ユーロでの買収を発表した。

SAB社が保有していた中東欧5カ国市場における事業及びその他関連事業を構成する会社(計8社)の全株式

Plzeňský Prazdroj a.s.、
Pivovary Topvar a.s.、
SABMiller Poland BV、
Ursus Breweries SA、
Dreher Sörgyárak Zrt.、
SABMiller Brands Europe a.s.、
SABMiller Brands Korea Yuhan Hoesa
SABMiller Europe AG 

「Pilsner Urquell」、「Kozel」、「Tyskie」ブランドを含む知的財産権、その他関連資産

ーーー

EUは5月24日、AB InBev によるSABMiller買収を承認すると発表した。
既に対策として発表されていたSAB Miller の欧州のビール事業の実質的に全ての売却を条件とする。

2016/5/28 EU、AB InBev によるSABMiller 買収を承認

3)中国

香港の華潤ビール(China Resources Beer)は2016年3月2日、SABMiller とのJVの華潤雪花ビール(China Resources Snow Breweriesを100%子会社化すると発表した。
SABMillerの持分49%を総額16億ドルで買収する。

中国では、華潤雪花、青島ビール、AB InBevが3強で、AB InBevSABMillerを傘下に収めると中国でのシェアは40%近くになる。

これだけでもAB InBevによるSABMiller買収承認の障害となるが、2008年11月の InBev によるAnheuser Busch 買収の際に、中国商務部は、「華潤雪花ビールの株式保有を求めてはならない」との条件を付けて承認している。

このため、AB InBev はSABMiller買収の承認を得るため、華潤雪花ビールを手放すこととしたもの。

2016/3/5 SABMiller、華潤雪花ビールを売却

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中国商務部も7月29日、買収を承認、これでほぼ全ての国での承認を取得した。

 


2016/8/3 Saudi Aramco のアジア向け原油価格 

2016年7月のSaudi Aramco のArabian light 原油のアジア向けDD (Direct Deal)価格が43.48ドル/バレルと決まった。

 

Saudi Aramcoを含めた産油国のDD原油輸出価格は、当月の「指標原油」のスポット価格に「調整金」を加算したものとなっている。

Saudi Aramcoの場合、アジア市場、米国、欧州向けに別々の原油を「指標原油」として使っている。

アジア市場 Dubai とOman の平均値
米国 Argus Sour Crude Index
欧州 Brent

米国向けは従来、WTI原油価格を指標価格として使用していたが、2010年1月1日から変更した。

Argus Sour Crude Index は米国メキシコ湾岸地域の中質サワー原油現物価格の指数で、メキシコ湾岸のMars、Poseidon、Southern Green Canyon原油の全ての取引の加重平均価格である。

WTI原油の価格は、WTI原油の受け渡しが行われるオクラホマ州Cushing 周辺での貯蔵能力の影響を大きく受けた。(当時はメキシコ湾岸への輸送パイプライン無し)
また、投機資金の影響で乱高下するなど、市場参加者からは、値決めの基準となる「マーカー原油」としての役割を疑問視する声が上がっていた。

2009/10/31 Saudi Aramco、米国向け輸出の原油価格決定で英Argus Mediaの指標を利用へ

注) 2014年3月時点ではメキシコ湾岸への3つのパイプラインが開通しており、Cusingでの在庫滞留は解消に向かった。

2011/11/17 WTI原油価格急騰 の付記参照


Saudi Aramco はこのたび、2016年9月の調整金を発表した。

アジア向けは前月比で1.30ドル引き下げ、-1.10ドルとなった。
米国向けは0.20ドル引き下げた一方、欧州向けは0.25ドル引き上げた。

アジア向けは2015年11月以降で最大の引き下げで、Bloombergは専門家の見方として、アジアの顧客企業を対象とした「市場シェア獲得競争」の一環で、特に2016年1月の制裁解除後に原油輸出を増やしているイランとの競合によるものとしている。

イランの生産量は日量360万バレル超と、制裁前の水準に回復しつつある。対抗するサウジは油田を増強、日量1000万バレルを上回る。(日経)

市場では石油製品の需要低迷が警戒され、原油先物の売りが加速したとの指摘があった。
 

8月2日の東京市場のドバイ原油スポット価格は40ドルを割り、39.10ドル/バレルとなっている。
(WTI原油も8月2日終値は39.51ドルとなった。)


 

この水準が続くと、9月のサウジ品Arabian light 原油価格は38ドルを割ることとなる。

 


2016/8/4 フランスと中国の企業による英国Hinkley Point C 原発計画に黄信号  

フランス電力公社(EDF)がイングランド南西部サマセット州Hinkley Pointで進める新規原子力発電所Hinkley Point Cの建設プロジェクトに黄信号がついた。

中国広核集団(CGN) が33.5%を出資、残りをEDFが出資し、英国南西部サマセット州で160万kW級の欧州加圧水型炉(EPR)を2基建設するもの。

建設を主導するフランス電力(EDF)は7月28日、同原発の建設計画を決定した。

ところが、英政府は7月29日、中国広核集団、フランス電力、英政府による包括的原子力協力協定の調印式の数時間前というタイミングで、同計画の決定を「秋の初め」に遅らせると発表した。

中国政府は、「この事業は中英仏三者が互恵互利、協力・ウィンウィンの精神に基づき、英側と仏側の大きな支持を得てきたということを強調したい。英側が速やかに決定をし、事業の順調な実施を確保することを希望する」と述べた。

付記

英政府は9月15日、中国との今後の関係を考慮し、この新設計画を承認したと発表した。

但し、中国の存在感が高まり過ぎ安全保障上問題があるとの懸念にも配慮し事業会社の株式売買を制限するなど条件を付け一定の歯止めをかけた。

・ 英政府は今後、重要な(critical)インフラでの外国の投資をコントロールする。

・ Hinkley原発に関しては、関係大臣はフランスのEDFが持分を売却するのを止める権限を持つ。

・ 将来の全ての新設の原発計画について、英国政府は特別株式を所有し、英国政府の承認なしに株式が売却されることを防ぐ。
 

ーーー

英国政府は2009年11月に原発拡大策を発表した。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。

  稼働中 廃止 政府案
Berkeley    2基   
Bradwell    2基 
Calder Hall    4基   
Chapelcross    4基   
Dounreay DFR   2基   
Dungeness  2基   2基   
Hartlepool  2基   
Heysham  4基   
Hinkley Point  2基   2基 
Hunterston  2基   2基   
Oldbury  2基   
Sizewell  1基   2基 
Torness  2基     
Trawsfynydo    2基   
Windscale    1基   
Winfrith SGHWR    1基   
Wylfa  2基   
Braystones    
Sellafield    
Kirksanton    
合計  19基   26基   
 

しかし、福島事故による新しい安全対策などのさまざまな理由でコストが跳ね上がり、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。

英国政府は2013年、原発推進のため自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。

フランスのEDF と英国政府は2013年10月、2基の原発リアクターの建設で合意した。
英国での原発新設は1995年完成したSizewell B 原発以来となる。2023年の運転開始を目指す。

総額160億英ポンド(うち建設費は140億英ポンド)を投じて、Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR) 2基(総出力320万kW)を建設する。
これに続いて、Sizewell に2基のEPRの建設を進める。
同型のものを建設することで、設計、購入、建設における経費節減を図る。(“series benefit”)

英国政府とEDFは今回、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合    £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

2013/12/27  英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入

2015年10月21日、英国を訪問していた中国の習近平国家主席は、フランス電力公社が進めるHinkley Point Cの建設プロジェクトに33.5%を出資することで正式に合意した。

中国広核集団(CGN) が33.5%を出資、残りはEDFが出資する。

同原発の運転開始は当初の計画より2年遅い2025年になるが、総投資額が180億ポンドと見込まれ、25千人の雇用を生み、約60年間にわたり、約600万世帯に電力を供給することになる。

当時のオズボーン財務相は9月に中国を訪問した際、同国の投資を促すため、英政府も自らHinkley Point Cに20億ポンドを投入することを確約していた。

中国はまた、EDFがイングランド東部のサフォーク州 Sizewell とエセックス州 Bradwellで予定する新規原発建設計画にも参画することで合意した。

Sizewellの新原発は中国から20%の出資を受け入れる。一方、Bradwell新原発は資金の2/3 を中国から受け入れるとともに、欧米で初めて中国製の原子炉を採用する。

2015/10/28   中国、英国の原発に出資、中国製原発も導入  

ーーー

これまで本計画については、英国の前のキャメロン政権が建設に積極的で、EDF側は建設負担でEDFの経営に影響が及ぶとの懸念がくすぶっており、今春にはCFOが辞任し、同社の複数の労働組合からも懸念が示されてきた。

英国の環境保護派や消費者団体などは、安全性の問題と、電力コスト大幅上昇などへの反対活動を続けている。

EDFは7月28日に取締役会で同原発の最終投資決定(FID)を票決した。2025年の運転開始を目指すとした。

取締役会に参加した17人の取締役のうち10人が賛成、7人が反対というかなりきわどいものだった。
また直前に、取締役の一人がCEOに宛てて「同事業は非常に危険で、EDFを破たんに導くリスクがある」との書面を送付し、辞任した。

EDFに85%出資するフランス政府は本計画に賛成していた。
報道によると、EDFのCEOは英語で書かれた2500ページの契約書をたった2日前に取締役会に提出し、議決を急いだという。賛成を強いられたとする取締役もいる。

BBCは、原子力当局による最終許可が28日中に降りる見込みとなったと報道した。

ところが、英国のメイ新首相は7月28日にフランスのオランド大統領と電話会談し、本プロジェクトについて決断を先送りする計画を説明した。
フランスと中国が出資するこのプロジェクトが英国の利益にかなうかどうか結論を出すまでに、時間が必要だと述べたという。

ーーー

今回のメイ首相の決断については、メイ内閣の一部の同僚も蚊帳の外に置かれたとされる。

報道では、事業に参画する中国の扱いや、英国のEU離脱決定後のEUとの交渉との関係などが取りざたされている。

メイ政権は現在、あらゆる政策見直し作業を行っており、本件もその一環である。

キャメロン前首相は、採算面での懸念を緩和するため、英中首脳交渉で、中国広核集団から33.5%の出資を確約させたほか、エセックス州のブラッドウェルに中国製原発の誘致を決めるなど、中国シフトを明瞭に打ち出した。

これに対し、メイ政権の支援者の一人は、 「原発での英中合意は、英国の安全保障を中国に売り渡すとともに、中国の資本を受け入れることで、中国の人権問題に英国が口をつむぐという“取引”をした」と批判してきた。
中国が建設した原発のコンピューターシステムに、何らかの細工を施し、彼らの意のままに原発をシャットダウンされるリスクが残るという指摘まである。

英国はEU離脱を決めたが、欧州の原子力商業利用の基本枠組みである欧州原子力共同体条約(ユーラトム)には残る。ドイツが原発全廃を打ち出しており、原発利用の主要国は事実上、英仏両国に絞られる。

これらの点から、中国とフランスに対する政策を確定するまで、本計画の最終決定を延ばしたと見られる。

 

今回は、英国では、政権党の党首=首相が交代しただけだが、まるで政権が交代したような印象を与える。

しかし、EU離脱という大変革を迎えるなか、今後の対中、対仏関係の検討の一環として本計画をどうするか再検討するのも当然であろう。



2016/8/5 出光創業家、合併阻止へ強攻策 

出光興産と昭和シェル石油の合併に反対している出光創業家は8月3日、昭和シェル株式を0.1%強を取得したと表明した。
出光興産の昭和シェル株式購入はこれを合わせると 1/3 を超えることとなり、TOBが必要で、出光興産が計画していたShell からの市場外での昭和シェル株式買収ができなくなる。

「両社は企業風土があわず、合併でも買収でもうまくいかない」と主張、「合併に最後まで反対する」として合併断念を迫った。

出光昭介名誉会長は、「異なった経歴の中で成立し働いている人々を、出光大家族の中に加え、同様に面倒を見ていく事に私は非常に危惧の念を抱きます」と統合反対の理由を述べている。

出光興産は、2000年5月、第三者割当により配当優先株式290万株の発行を決め、東海銀行、住友銀行、住友信託銀行、東京海上火災保険、住友生命の各社に割り当てた。
2006年10月24日に東京証券取引所第一部市場に上場した。

2006/10/28 出光興産上場

2000年5月に当時の出光昭社長が、外部資本の受け入れを表明、「数年後には上場も検討する」とぶち上げたのに対し、出光昭介会長が真っ向から反対した経緯がある。
この時は、
銀行の後押しを受けた社長派が勝利した。

創業家は、出光がシェルからの購入株数を減らして1/3 未満にしようとした場合に昭和シェル株の買い増しも検討しており、「昭和シェルに関する重要事項を伝えられるとインサイダー取引の可能性がある」として、今後は協議に応じないとしている。

創業家側は出光興産の議決権の33.92%を握っており、総会決議で拒否権を持つが、それに加え、新たな抵抗策をとったこととなり、出光興産にとり、一層ハードルが高まった。

日章興産 * 16.95%
出光文化福祉財団 7.75%
出光美術館 5.00%
(小計) (29.70%)
名誉会長 * 1.21%
長男 * 1.51%
次男 * 1.51%
合計 33.92%

付記 創業家側は8月8日、上記*の共同保有の届出を行った。21.18%となる。

昭和シェルとの合併は、出光興産のこれまでの歴史を一変するものであり、それについて経営者側が創業家と十分に話し合ってこなかったツケが出たといえる。

ーーー

出光経営陣は9月にも市場外で Shell 所有の昭和シェル株 35%のうち 33.3%を1株あたり 1,350円で買い取り、年内にも開く臨時株主総会で出光とシェルの合併の承認を得る計画でいる。

2014/12/22 出光興産、昭和シェル買収へ
2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意
2015/11/16 出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結

しかし、筆頭株主の日章興産などを通じて出光株の33.92%を握っている創業家は昭和シェルとの統合に反対している。

2016/6/29  出光興産の創業家、昭和シェルとの合併「反対」

出光興産の月岡隆社長と創業家の出光昭介名誉会長が7月11日に会談したが、理解を求めた経営陣に対し、創業家側は反対姿勢を譲らず、平行線のままだった。

このたび、出光昭介名誉会長が市場で昭和シェル株を40万株(発行済み株式の0.1%)を購入した。買い取り価格は4億円弱とみられる。

大株主の創業家は会社の「特別関係者」と見なされるため、出光側の保有割合が3分の1を超えることになり、TOBの義務が生じ、Shell のみから市場外で株を購入することが出来なくなる。TOBの場合、8月3日の終値が939円に対し、Shellとの契約価格は1,350円のため、多数株主が応じるとみられ、買収金額は膨れ上がる。

買取りを断念する場合は多額の違約金を支払う必要が出るとみられる。

ーーー

昭和シェルの株式状況は下記の通り。

株主 株数(千株) 持株比率(%)   購入金額
 (@1,350)
Shell出光興産 125,261.2 33.24 <1/3 1,691億円
出光昭介(特別関係者?) 400.0 0.11    
(小計) (125.661.2) (33.35) >1/3  
Shell (Anglo-Saxon Petroleum) 6,784.0 1.80    
Aramco 56,380.0 14.96    
その他株主 188,025.2 49.89   (2,538億円)
合計 376,850.4 100.00    

金融商品取引法(第27条の2)では、下記の場合は公開買付が必要となっている。

@市場外での買付け等で株券等所有割合が5%超となるもの(著しく少数の者からの買付け等を除く)
A市場外での著しく少数の者からの買付行為で株券等所有割合が1/3 超となるもの
特別関係者がある場合にあつては、その株券等所有割合を加算したもの

「著しく少数の者」は「61 日間で10 名以内」 (金融商品取引法施行令)

「特別関係者」は、株券等の買付け等を行う者と、株式の所有関係、親族関係その他の政令で定める特別の関係にある者となっている。

政令では、下記の通りとしている。

@株式の所有関係、親族関係その他の特別の関係にある者。
  (法人の場合)
   ―買付者の役員
   ―買付者が特別資本関係にある法人等及びその役員
   ―買付者に対して特別資本関係にある個人、法人等、その法人等の役員

A買付者との間で、共同して対象株券等の取得・譲渡、議決権その他の権利の行使、買付後の相互の株券等の譲渡・譲受を合意している者

早稲田大学の黒沼教授は、「特別関係者」の規定は、「目的を共有して共に行動することを前提」としており、「合併阻止のために規定を利用することは想定されていない」としている。(日経)  しかし、規定では、単に「特別の関係にある者」となっている。

 


2016/8/6 三井住友銀行が農業参入 秋田にコメ生産の新会社設立  

三井住友銀行は8月2日、秋田県の有力農業法人やNECグループなどと共同でコメ生産を手がける新会社「みらい共創ファーム秋田」を設立したと発表した。

高齢化で農作業が難しくなった農家から作業を請け負ったり、農家から土地を借りたりしてコメをつくる。

大規模営農化に伴うコスト削減、海外を含む新たな販路開拓等を通じた効率的で収益性の高い農業経営モデルの構築を目指すことで、農業の成長産業化や地方創生の実現といった我が国の課題解決に貢献していくとしている。

新会社の概要は次のとおりで、2016年4月1日施行の農地法改正を受けたもの。

社名 みらい共創ファーム秋田
所在地 秋田県大潟村
出資金 165百万円
議決権
大潟村あきたこまち生産者協会 50.1%
NECキャピタルソリューション 30.0%
秋田銀行 5.0%
三井住友ファイナンス&リース 9.9%
三井住友銀行 5.0%
合計 100.0%
事業内容 農産物の生産および農作業の受託業務
農産物の販売業務
その他これに付随する業務

三井住友銀行は秋田銀行と同じく銀行法で5%しか出資できないが、事業全体を主導する。

今秋から人手が足りない農家から刈り取りや精米を請け負い、来年からは田んぼを借りて本格的な米の生産に乗り出す。
秋田での事業が軌道に乗れば、米づくりが盛んな他県にも広げていく。

三井住友銀行は農業を「成長分野」と位置づけており、自ら農業に参入して、貸し出しの増加などにつなげる狙いがある。

ーーー

農業協同組合法等の一部を改正する等の法律が2015年9月4日に公布され、2016年4月1日に施行された。

6次産業化等を通じた経営発展を促進するため、農地を所有できる法人の要件(議決権要件、役員の農作業従事要件)が見直された。

  改正前 改正後
呼称 「農業生産法人」 「農地所有適格法人」
事業要件 売上高の過半が農業(販売・加工等含む) 同左
農業関係者の議決権 4分の3以上 2分の1超
農業関係者以外の者の 議決権 4分の1以下 2分の1未満
要件 関連事業者(法人と継続的取引関係を有する者)に限定 左を撤廃
(関連事業者以外も可能)
役員要件 役員の過半が農業(販売・加工含む)の常時従事者 同左
さらにその過半が農作業に従事 役員又は重要な使用人のうち、1人以上が農作業に従事

 

農業の6次産業化を進めようとすると、資本増強が必要となるが、改正前では議決権は農業関係者と関連事業者に限定されるため、外部資本の導入が出来ない。
また、6次産業化を進めると、販売・加工のウエイトが高まるが、改正前ではそれに従事する役員が限定されてしまう。

今回の改正により、農業関係者が2分の1以上出資し、役員の過半が農業(販売・加工含む)の常時従事者で、1人以上が農作業に従事していれば、その法人は農地を所有できることとなる。

この結果、これまでは出資できなかった(農業法人と継続的取引関係のない) 銀行などの出資が可能となり、また多額の外部資本の導入が可能となった。

今後農地の集約化や大型化が進むとみられる。
 


2016/8/8 IMF、アベノミクスの改善策を提案 

IMFは8月2日、日本経済に関する年次審査スタッフ報告書を発表した。

 Japan : 2016 Article IV Consultation  発表文 (日本語)   Staff Report

日本経済の現況については、次のように述べている。

民間消費の弱さと投資の低迷によって減速し、インフレは上昇の勢いを失っている。
当局は、マイナス金利政策、追加的財政刺激策、消費税率引き上げ延期などの措置を取ったが、成長とインフレの見通しは引き続き弱いままである。

日本経済は2016年に約0.3%という緩慢なペースで成長すると期待され、2017年には(今後採用される経済対策による潜在的効果を除き) 0.1%に低下すると見込まれる。

アベノミクスは当初、期待の押し上げと日本経済の再活性化に進展をもたらしたが、構造的障害と、とりわけ構造面での政策の不足が、持続的な改善を難しくしている。

特に経済成長の見通しに対する信認の低さが投資と借入需要を抑制している。
労働市場の二重構造と硬直性が賃金の伸びを阻害しており、金融部門のリスク・テイキング支援は限定的である。
加えて、財政政策の変動と中期的な予算の見通しを支える楽観的な成長前提は、信頼できる中期的なアンカー(支え)のない財政政策をもたらし、政策の不透明性を高めている。

IMFの日本チームリーダーはワシントンで開いた記者会見で、政府の新たな経済対策について、全面的な効果を評価するには時期尚早との認識を示し、金融緩和や賃金上昇への取り組み、子育て手当の拡充など労働力縮小に対応した構造的障壁の除去など、政策オプションの一環として、景気刺激策を位置づける必要があるとした。

ーーー

IMFはこれに合わせ、「アベノミクスを再充填するには」(How to Reload Abenomics)という論文を発表した。

Reloadには、下の漫画のとおり、新しい矢をつがえるという意味を掛けている。

賃金アップとインフレ期待による「2%のインフレ率」、財政政策による「2020年までに基礎的財政収支プラス」、構造改革による「実質成長率2%」の3本の矢はいずれも的に当たらなかった。日本は新しい矢をつがえるか、的を代えるしかないとし、新しい矢について述べている。

概要は次のとおり。

試練−アベノミクス効果の弱まり

安倍晋三首相がまとめた金融政策による刺激と財政の「柔軟性」、構造改革の「3本の矢」からなる「アベノミクス」は当初は成功したが、ここにきて経済の勢いが弱まり、デフレリスクが再び高まっている。

日本の2016年の成長率は0.3%、2017年は0.1%で、総合インフレ率は2016年の0.2%から、2017年は 0.4%へ上昇する。
労働市場は経済の明るい部分で、2016年6月時点の失業率は3.1%と他国がうらやむ低さだ。しかしベース賃金の2016年の上昇率はわずか0.4%にとどまり、民間部門の消費と投資は低迷している。

今後を展望すると、消費者物価のインフレ率2%、実質成長率2%、2020年までの基礎的財政収支の均衡というアベノミクスの野心的な目標は、現在の政策では手の届かなくなっている。

日本の金融政策と財政政策による刺激余地は限られている。
これらの目標を達成するには日本はより大胆な改革が必要だ。

解決策― 3 主要分野に集中を

1.  所得政策を再充填し、企業に賃金上げを促すべし

インフレ率を上げる賃金と物価の好ましいダイナミクスを作動させるには、所得政策の後押しが必要となる。
・賃上げの規則を企業に求める。
・最終的には罰則の導入も視野に入れた税制上のインセンティブを拡大
・インフレ目標に整合した行政的に管理された賃金と物価の引き上げなど 

2.  労働市場改革

所得政策が有効性を持つためには、大規模な労働市場改革と持続的な財政・金融政策による需要の下支えが並行的に必要。

労働市場改革
・雇用保障と賃金上昇のバランスをよりよく取った雇用契約での新たな雇用を促進
・正規社員と賃金の低い臨時雇用社員に分断された現市場を消滅させていくことを目指す。
・「同一労働・同一賃金」プログラムを加速

それに加え、
・税及び社会保障システムの改革
・利用可能な育児施設の増設
・外国人労働者の受け入れ促進
を通じてフルタイムの正規労働への障害を取り除くことができる。

また、継続的な需要の下支えは、賃金上昇の物価への転嫁を実現し、構造改革がデフレ圧力を生じさせないことを確実にするため必要となる。

3. 財政の持続可能性の達成

・消費税の段階的ながら着実な引き上げをできる限り早期に着手
・社会保障支出の伸びを抑制する明確な支出規則を制定

アベノミクスの約束を実現するには、日本は以下の実行が不可欠だ。
  • より野心的な構造改革を実行すべし。
     特に労働市場分野で、その二重性を縮小し、女性、高齢者、専門性を持つ外国人労働者の参加を奨励すべきである。
     
  • 賃金・物価のダイナミクスを拡大するポリシーミックスにより強力な所得政策を加えるべし。
     このダイナミクスは継続的かつバランスの取れた財政・金融政策によって実現される。
     
  • 事前に公表された着実な消費税引き上げの行程を伴った信頼される財政健全化計画にコミットすべし。
    また、課税ベースの拡大、社会保障制度改革、政策の信頼性を高める財政枠組みの強化が必要。
     
  • 金融政策の有効性と信頼性を向上すべし。
    より明確な対話とフォワードガイダンスのより有効的な活用でインフレ期待を引き上げることが必要。
  • 金融安定性をセーフガードすべし。
    それは銀行収益や国債市場流動性のモニタリングの強化、さらなる規制改革を通じて地方銀行の耐性を高めることを含む。

 


2016/8/9 三菱化学、日本合成化学にTOB、最大430億円 

三菱化学は8月5日、日本合成化学工業にTOBを実施すると発表した。1株当たり910円で買い付ける。完全子会社にすることを目指しており、買い付け額は最大で約430億円の見込み。

三菱化学は既に日本合成化学工業の発行済み株式の51.49%を保有しており、残りを買い付ける。
TOBは子会社の三菱化学ヨーロッパと共同で実施し、最終的に三菱化学が議決権を95%、三菱化学ヨーロッパが5%持つようにする。

付記

2016年9月に、三菱化学および三菱化学ヨーロッパが株式公開買付けを実施。合算で94.35%の株式を取得。
2016年11月、上場廃止。株式売渡請求により、三菱化学が残りの株式を取得。同社の完全子会社となる。

付記

三菱ケミカルは2018年5月11日、日本合成化学を20194月を目処に合併する前提で検討に入ると発表した。

付記

三菱ケミカルは2018年10月11日、日本合成化学を2019年4月1日付で吸収合併の形で合併することを決めた。

 

三菱化学は、1963 年に日本合成化学と水島合成化学工業(現在は日本合成化学水島工場)を設立するとともに、資本参加するなど、長期にわたり提携関係にあった。

2009 年9月に連携強化のため、市場内取引によって株式を追加取得し、40.04%とし、連結子会社とした。
さらに、市場内にて株式を買い進めた結果、2013 年2月には議決権保有割合が過半数を超え、その後、2015 年8月に市場外取引によって取得した株式を含め、現時点では 51.49%を取得している。

日本合成化学は、1926年に木酢生産4社の共同研究によりアセチレンを原料とする酢酸の工業化生産技術を確立し、翌1927年に4社合同で日本合成化学研究所を設立したのに始まる。
1928年に日本合成化学工業に改称し、日本で初めての有機合成酢酸の工業化に成功した。

1936年には、日本で最初にアセチレン法による酢酸ビニルモノマーおよび酢酸ビニル樹脂の製造に成功した。

1963年に石油化学への原料転換のため水島コンビナートに進出を決定、三菱化成とのJVの水島合成化学工業を設立し、翌年アセトアルデヒドを原料とする酢酸及び酢酸エチルの生産を開始した。

現在の日本合成化学の主要製品は下記の通り。

  商品 能力 世界シェア
PVOH
(ポリビニルアルコール)
「ゴーセノール」他 水島工場 40千トン
熊本工場    30千トン
合計   70千トン
 
PVOHフィルム 「OPLフィルム」他
(光学用)
大垣工場 2,500万u / 年(2系列)
熊本工場 6,300万u / 年(4系列)
合計   8,800万u / 年(6系列)
大垣工場に第7系列(1,800万u)
                        2017年2Q完工予定
2位(約30%)
EVOH
(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)
「ソアノール」他 水島工場                   10千トン
NOLTEX (米国)           38千トン
NIPPON GOHSEI UK 18千トン
合計                     66千トン
2位(約40%)

NOLTEXは、DuPontのEVOHプラントを買収
NIPPON GOHSEI UK はBP工場敷地内にある。

ーーー

なお、三菱化学、三菱樹脂及び三菱レイヨンは、2017 年4月1日に統合する予定。

2015/12/10   三菱化学、三菱樹脂及び三菱レイヨンの統合 

現状
   
統合後

2016/8/10 日本ゼオンと住友化学、S-SBR 事業統合に向けた基本合意 

日本ゼオンと住友化学は8月4日、溶液重合法スチレンブタジエンゴム(S-SBR)事業の統合に向けた検討を開始することで基本合意したと発表した。

両社は、S-SBR事業における新製品開発やコスト競争力の強化、安定供給の確保等による事業強化を目的とし、新たな合弁会社の設立や、両社のシンガポール子会社を含めたS-SBR事業の合弁会社への移管などについて検討する。

9月末までにデューデリジェンスの実施および統合効果の調査・検討を行い、12月末の最終契約締結、2017年4月の新会社営業開始を予定している。

日本ゼオンは徳山とシンガポールで、住友化学もシンガポールで S-SBR の生産を行っている。
(他に住友化学は千葉にパイロットプラント10千トンを持つ)

  場所 能力 運営子会社
日本ゼオン 徳山 55千トン  
シンガポール S-BR併産
第一期 30〜40千トン(2014)
第二期  30〜40千トン(2016)
Zeon Chemicals Singapore
住友化学 千葉 10千トン  
シンガポール 40千トン (2014) Sumitomo Chemical Asia

後記のとおり、シンガポールでは旭化成もS-SBRの生産を行っている。

ーーー

付記

2016年12月2日、JV設立の取締役会決議

社名 ZSエラストマー
出資比率 ゼオン 60%、住化 40%
事業 当初はS-SBR 事業に関する販売機能と研究開発機能
   将来的には、両社のシンガポールにある子会社のS-SBR 製造販売事業を含む他の事業を承継する予定。
時期 2017年4月1日

ーーー

SBRは、ブタジエンとスチレンを主原料とする合成ゴムで、製造法により乳化重合法によるE-SBRと、溶液重合法によるS-SBR2タイプがある。

E-SBRは汎用タイヤ向けが主体。

S-SBRの主な用途は自動車のタイヤトレッドで、タイヤの安全性能(グリップ力)を確保しつつ省燃費性能(転がり抵抗)を同時に向上させるというニ律背反の関係を解決する材料として、省燃費型高性能タイヤ用の需要が急速に拡大している。

日本の各社は、環境規制の強化や環境意識の高まりを背景に世界的に省燃費型高性能タイヤの需要が拡大しており、特にアジアではモータリゼーションの急速な進展とタイヤ生産のアジアへのシフトにより、タイヤ用ゴム市場の成長が続いていることから、増強を行っている。

2010/12/27 溶液重合法SBRの増設相次ぐ

世界需要は2020年まで年率7-8%で拡大するとみられる。

しかし、合成ゴム事業での唯一の成長分野として、世界の各社が増設・新設を行っており、さらに多くの計画が続く。

2014年のIISRP(国際合成ゴム製造者協会)の総会でのスピーチ “Global Synthetic Rubber Overview 2014” では、各社の増設計画をもとに今後の需給を予想している。

それによると、2013年のS-SBRの能力 1,602千トンに対し、需要は 1,200千トン。
新増設計画を積み上げると2017年には能力は300万トン弱となり、需要の年率18%もの伸びが必要になる。

需要の伸びが年率7-8%であれば、大幅な供給過剰となるのは必至である。


各社の生産設備の増強により、競争は既に激化している。

住友化学は2016年3月期決算で、シンガポールのS-SBR 製造設備で8,519百万円の減損損失を計上した。

今回、「世界中で増産が進み、1社で踏ん張っても難しくなる」とし、独力で商品開発を続けるよりも、ゴムを主力とする日本ゼオンに委ねたほうがよいと判断した。

8月4日付け日経の「ニュース一言」コラムで、住友化学の十倉社長は次のように述べている。

余剰資金が世界を徘徊しており、為替や原油価格の振れ幅は広がる。
右往左往せず、伸ばす事業には投資し、縮小撤退もいとわない。メリハリが重要だ。

住友化学と日本ゼオンは、新第一塩ビを設立するなど、親しい関係にある。
(住友化学と日本ゼオンはともに新第一塩ビから実質撤退している。)

ーーー

日本ゼオンと住友化学以外のアジアでの進出企業は下記の通り。

  場所

能力(千トン)

備考
現行 計画
旭化成 川崎 105    
シンガポール 100   第一期 50、第二期 50
大分 52 10 日本エラストマー
(旭化成 75%、昭和電工 25%)
JSR 四日市 60    
タイ 50 50 JSR BST Elastomer
(
JSR 51%Bangkok Synthetics 49%)  
ハンガリー   60 JSR MOL Elastomer
(
JSR 51%、MOL 49%
錦湖石化 韓国 63   公称計画は120千トン
LG Chem 韓国 60    
Lotte Versalis Elastomers 韓国   100 Lotte 50%、Versalis (Eni子会社) 50%
Synthetic Rubber Indonesia インドネシア   80 Michelin55%、Styrindo Mono Indonesia 45%
Liaoning North Dynasol Synthetic Rubber 中国遼寧省 50   Dynasol (Grupo KUO / Repsol)  50%
山西北方興安化學 50%
Zhucheng Guoxin Rubber 中国山東省 100    
Keyuan Petrochemical 中国浙江省 150    

 


2016/8/11 S&P、韓国国債の格付けを 1段階引き上げ 

S&Pは8月8日、韓国の国債格付けを「AAマイナス」 から「AA」に1段階引き上げた。同国として過去最高水準である。
S&P は2015年9月15日に
「Aプラス」から「AAマイナス」に1段階格上げしており、2年連続の引き上げとなった。

引き上げの理由について、順調な経済成長、対外健全性改善持続、十分な財政・通貨政策余力を挙げた。
韓国はこの数年間、先進国経済より堅調な成長を見せ、昨年は対外純債権に転換するなど対外部門の指標が改善したためと説明した。
「韓国の今年のGDP成長率は2.6%と予想されるが、これは主要先進国の0.3〜1.5%より高い」としている。

また、見通しを「安定的」とした。北朝鮮をめぐる地政学的リスクが大きく高まることはないと判断したためとしている。
但し、北朝鮮との緊張が高まれば格付け引き下げの要因になり得ると説明している。

中国(AA-)より1段階、日本(A+)より 2段階高い。 

Moody'sは2015年12月19日、韓国の格付けを従来の「Aa3」から、今回のS&Pと同水準となる「Aa2」に引き上げている。

しかし、朝鮮日報社説は、「暮らし向きは悪化しているのに格付けだけ上昇する韓国経済」というタイトルで、次のように述べている。

2−3%という成長率は財政支出によって引き上げたものであり、対外債務の健全性や財政・通貨政策の余力は現在のような輸出不信と福祉費用急増による財政悪化を放置すれば決して長続きしない。

今の韓国経済はますます停滞の泥沼で苦しんでいる。政府が格付け上昇を自慢するほど余裕はない。

構造改革や輸出多角化など経済の体質改善がなければ、過去最高の格付けも水の泡にすぎない。

ーーー

日本の場合は、S&P は2015年9月16日に「AAマイナス」から「Aプラス」へと1段階引き下げた。

Moody'sは2014年12月1日に「A1」に、Fitchは2015年4月27日に「A」に、それぞれ1段階引き下げている。

2015/9/19   S&P、日本国債を格下げ、韓国国債は格上げ

ーーー

なお、6月23日の英国の国民投票でEU離脱の結果となったのを受け、6月27日に S&Pは「AAA」から「AA」に2段階、Fitchは「AA+」から「AA」へ1段階引き下げた。

また格付会社は本年に入り、原油価格の下落を受けて産油国の国債の格付けを引き下げた。
サウジについては、S&Pは2月17日に2段階、Moody'sは5月14日に1段階、Fitchは4月12日に1段階、それぞれ引き下げた。

 

主要国の格付けは下記の通り。 (青字は最近の格上げ、赤字は格下げ)

S&P Moody's- Fitch
AAA
ドイツ
カナダ
シンガポール
 
Aaa
ドイツ
カナダ
シンガポール
米国
AAA
ドイツ
カナダ
シンガポール
米国
AA+
米国
Aa1
英国
AA+
 
AA
韓国←AA- 2016/8/8)
英国←AAA 2016/6/27) 
Aa2 韓国←Aa3 2015/12/18) AA
英国←AA+ 2016/6/27)
AA-
中国
Aa3
中国
AA-
韓国
サウジ←AA 2016/4/12)
A+
日本←AA- 2015/6/16)
A1
日本←Aa3 2014/12/1)
サウジ←Aa3 2016/5/14)
A+
中国
A   A2   A 日本←A+ 2015/4/27)
A- サウジ←A+ 2016/2/17)        

 


2016/8/12 日立オートモティブシステムズ、米国での自動車部品カルテルで二度目の司法取引 

日立オートモティブシステムズは8月20日、米国司法省との間で、一部の顧客へのショックアブソーバーの販売に関して米国独占禁止法に違反したとして、少なくとも55.48百万米ドルの罰金を支払うことなどを内容とする司法取引契約を締結したと発表した。

司法省によると、同社は1990年代央から2011年夏までの間、自動車メーカー向けのショックアブソーバーの供給の割り当てに同意した。同社と競合社とはまた、価格引き上げのため、自動車メーカーからの値下げ要請に対し協調した。


実は、同社は2013年9月26日に、自動車のスターター、オルタネーター、その他の電子部品の価格カルテルで司法取引を行い、195百万円の罰金を支払っている。

この件で、同社の社員1名が2015年4月に15ヶ月の禁固刑と2万ドルの罰金刑を受けている。
更に、他の社員3名が2014年9月に起訴されている。(恐らく、日本に居住のまま出頭せず、時効中断になっていると思われる)

司法省によると、同社はこの際に司法省の調査に協力し、罰金を割り引いてもらっている。しかし、ショックアブソーバーの件については申告しなかった。

このため司法省は、ガイドラインの罰金刑の幅の下限から著しく上に設定するよう、また、裁判所が同社を3年間の保護観察(Probation) に置くよう、裁判所に勧告した。
これは、違法行為で司法取引を行う際に、違法行為全体を明らかにしなかった場合の通常の対応である。

保護観察に置かれた企業は、コンプライアンス・プログラムを策定し、その実施等に係る遵守事項について監視される。

ーーー

これを含めると、自動車部品カルテルでの摘発は下記の通りとなる。

企業としては、46社が司法取引を行い、罰金合計は2,888百万ドルとなる。

このなかには、親会社と米国子会社が同時に起訴されたのが2組あり、日立は2度のため、実質は43社となる。
このうち、外国企業は5社だけで、日本企業が38社(うち米企業の日本子会社が1社)に及ぶ。

個人としては、起訴が64名(うち日本人63名)で、うち禁固刑・罰金刑を受けたのが31名(うち日本人が30名)となっており、残り33名(すべて日本人)が起訴のままとなっている。

詳細は 2015/9/7 日本ガイシ、 自動車用触媒担体のカルテルで米司法省と司法取引


2016/8/13 DNA で 「また従兄弟」が分かる新しい血縁判定法 

京都大学は8月10日、玉木敬二教授(医学研究科)らの研究グループが、口腔内細胞のDNAを用いて、これまで親子・兄弟までしかできなかった2人の間の血縁関係を「また従兄弟」(いとこの子ども同士)まで判定できるDNA鑑定法を開発したと発表した。

同成果は7月29日に米国科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

Pairwise Kinship Analysis by the Index of Chromosome Sharing Using High-Density Single Nucleotide Polymorphisms

ヒトは父親と母親からの染色体を1本ずつ23対持っている。

血縁が近い人同士は、血縁の遠い人や他人と比べて互いに同じ色の部分を多く持つため、血縁鑑定では、この同じ色の部分がどれほどあるかを検出すれば判定できる。

ところが、通常のDNA鑑定法(DNAの15箇所を検査)は、染色体にある複数の離れた場所の配列情報だけをDNA型として検出するため、血縁が遠くなって染色体の同じ部分が少なくなると、どこが同じ部分なのか分からなくなる。

現在の方法では、親子、兄弟までしか、完全には判断できない。


今回の方法は、DNAマイクロアレイを用いてDNAの配列上のわずかな違い(一塩基多型:SNPs)を174,254ヵ所 検査する。

この検査結果を有効に利用するため、「染色体共有指数」(ICS:Index of chromosome sharing ) を考案した。

検査した2人が特定の血縁関係にあるかどうかを、分布の高さ(確率密度)を利用する計算方法を用いて、確率的に評価する。

血縁関係が予想できる場合は、血縁関係がある場合とない場合の確率(尤度)を比較する尤度比で計算する。
尤度比が高いほど、血縁関係があることを意味する。

状況により、特定の血縁関係(兄弟なのか、伯父甥なのか、従兄弟なのか)が分からない場合があるが、この場合は確率密度とベイズの定理を応用した事後確率を算出し、決定する。

この方法を使うと、性別に関係なく、「いとこの子供」といった遠い縁戚関係でも99.9%の確立で判断できる。
「またいとこ」でも約94%の確立で、他人と鑑別できることが分かった。

今後の展望として、次のとおり述べている。

・ サンプル数を増やして精度の検証をしたい。

・ 今回は新鮮な頬の細胞を用いたが、遺体の場合、爪や歯や骨であることが多く、長期にわたり外環境にさらされて壊れているのが殆ど。
 このような試料からの確実に判定できるよう研究を続けたい。


2016/8/13  伊方原発3号機 再稼動

伊方原発3号機が8月12日、5年3ヶ月ぶりに再稼動した。

下記の問題を抱える。

 避難計画に弱点を抱える。
    佐多岬の先端側の住民約4700人が孤立する恐れ。

 中央構造線断層帯への地震の影響の懸念
     松山、大分、広島の各地裁で、住民が運転停止を求める仮処分申請

 

付記

広島地裁は2017年3月30日、広島市の住民らが運転差し止めを求めた仮処分申請で、住民側の申し立てを却下する決定をした。

ーーー

規制委員会の審査に合格した原発は下記の通り。

  40年超      
稼働中   九州電力 

     

川内@ 2015/9/10 営業運転開始  
川内A 2015/11/17  営業運転開始  
四国電力  伊方B 2016/8/12 再稼動  
運転差止   関西電力 

     

高浜B 2016/1/29 再稼動 2016/3/9 運転差止命令
  (大津地裁)
高浜C 2016/2/26 再稼動、直後にトラブル
審査合格 関西電力 高浜@ 2016/6/20 運転延長認可 対策工事完了待ち
(2019/秋 以降)
高浜A
合格内定 関西電力 美浜B 2016/8/3 適合の審査書案 対策工事完了待ち
(2020/春 以降)


全体の状況は下記の通り。

廃炉は福島第一の6基と、原電敦賀、関電美浜@、A、中国電力島根@、九電玄海@、四国電力伊方@の6基の計12基。

稼動中の3基を除くと、残るのは39基(他に建設中のJパワー大間の1基)。

 

  運転開始 万KW

再稼動
  申請

 
原電 敦賀@ 1970.3

40年

35.7   2015/3/17 廃炉決定
関西電力 美浜@ 1970.11 34.0   2015/3/17 廃炉決定
東京電力 福島1@ 1971.3 46.0   2012/4/19 廃炉
関西電力 美浜A 1972.7 50.0   2015/3/17 廃炉決定
中国電力 島根@ 1974.3 46.0   2015/3/18 廃炉決定 2016/7/4 廃炉申請
東京電力 福島1A 1974.7 78.4   2012/4/19 廃炉
関西電力 高浜@ 1974.11 82.6 2015/3/17 2015/4/30 運転期間延長申請、2016/4/20 安全審査合格
2016/6/20    運転延長認可
九州電力 玄海@ 1975.1 55.9   2015/3/18 廃炉決定
関西電力 高浜A 1975.11 82.6 2015/3/17 2015/4/30 運転期間延長申請、2016/4/20 安全審査合格
2016/6/20    運転延長認可
東京電力 福島1B 1976.3 78.4   2012/4/19 廃炉
関西電力 美浜B 1976.3 82.6 2015/3/17 2015/11/26  20年延長を申請
2016/8/3
新規制基準に適合すると認める審査書案
四国電力 伊方@ 1977.9   56.6   2016/5/10 廃炉
東京電力 福島1C 1978.1   78.4   2012/4/19 廃炉
東京電力 福島1D 1978.4   78.4   2014/1/31 廃炉
日本原子力 東海 1978.11   110.0 2014/5/20 (PWR優先で審査停滞) 
東京電力 福島1E 1979.1   110.0   2014/1/31 廃炉
関西電力 大飯@ 1979.3   117.5

 
関西電力 大飯A 1979.12   117.5

 
九州電力 玄海A 1981.3   55.9

 
四国電力 伊方A 1982.3   56.6

 
東京電力 福島2@ 1982.4   110.0

(地元が廃炉要求)
東京電力 福島2A 1984.2   110.0

(地元が廃炉要求)
東北電力 女川@ 1984.6   52.4

 
九州電力 川内@ 1984.7   89.0 2013/7/8 2015/9/10 営業運転
関西電力 高浜B 1985.1   87.0 2013/7/8 2016/1/29 再稼動、2016/3/9 運転差止
2016/8/2、テロ対策施設の設置計画を了承。
東京電力 福島2B 1985.6   110.0

(地元が廃炉要求)
関西電力 高浜C 1985.6   87.0 2013/7/8 2016/2/26 再稼動、直後にトラブル停止 2016/3/9 運転差止
2016/8/2、テロ対策施設の設置計画を了承。
東京電力 柏崎刈羽@ 1985.9   110.0

 
九州電力 川内A 1985.11   89.0 2013/7/8 2015/11/17  営業運転
原電 敦賀A 1987.7   116.0 2014/11/5 2013/5/27  敦賀2号機直下の断層を活断層と断定
東京電力 福島2C 1987.8   110.0

(地元が廃炉要求)
中部電力 浜岡B 1987.8   110.0 2015/6/16  
中国電力 島根A 1989.2   82.0 2013/12/25  
北海道電力 泊@ 1989.6   57.9 2013/7/8  
東京電力 柏崎刈羽D 1990.4   110.0

 
東京電力 柏崎刈羽A 1990.9   110.0

 
北海道電力 泊A 1991.4   57.9 2013/7/8  
関西電力 大飯B 1991.12   118.0 2013/7/8 2015/12/24 再稼働差し止めの仮処分申し立て却下
関西電力 大飯C 1993.2   118.0 2013/7/8
北陸電力 志賀@ 1993.7   54.0

2016/3/3  直下に活断層と最終判断
東京電力 柏崎刈羽B 1993.8   110.0

 
中部電力 浜岡C 1993.9   113.7 2014/2/14  
九州電力 玄海B 1994.3   118.0 2013/7/12  
東京電力 柏崎刈羽C 1994.8   110.0

 
四国電力 伊方B 1994.12   89.0 2013/7/8 2015/7/15 安全審査合格  2016/6/23 核燃料搬入開始
2016/7/17
1次冷却水のポンプの部品に不具合
2016/8/12  再稼動
東北電力 女川A 1995.7   82.5 2013/12/27  
東京電力 柏崎刈羽E 1996.11   135.6 2013/9/27  
東京電力 柏崎刈羽F 1997.7   135.6 2013/9/27  
九州電力 玄海C 1997.7   118 2013/7/12  
東北電力 女川B 2002.1   82.5

 
中部電力 浜岡D 2005.1   138.0

 
東北電力 東通 2005.12   110.0 2014/6/10  
北陸電力 志賀A 2006.3   135.8 2014/8/12 2016/3/3 重要設備直下に活断層の可能性の判断
北海道電力 泊B 2009.12   91.2 2013/7/8  

 



2016/8/15 EU、Dow とDuPont の合併で調査開始

EUの欧州委員会は8月11日、Dow Chemical とDuPont の合併計画をめぐり、農薬 (Crop protection) や種子、特定の石油化学製品などの分野で市場の寡占を招く可能性があるとして、合併の是非を見極める 精密調査(
in-depth probe)に着手したと発表した 。

両社は2015年12月に対等合併で合意し、2016年7月20日の両社の株主総会でそれぞれ承認を得た。

2015/12/14   Dow と DuPont、経営統合を発表

両社は本年6月22日に欧州委に合併計画を提出した。問題点を指摘されたため、7月20日に欧州委の予備的な懸念を解決するため対応策を示したが、同委は深刻な懸念の払拭には不十分だ とみなした。

調査期間は90日で、12月20日までとなっている。

付記

欧州委員会は9月初め、調査を中断した。合併の詳細と、欧州の農業市場での競争への影響について、もっと資料が必要としている。

欧州委員会は10月3日、資料が得られたとし、調査を再開した。


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両社はグローバルに活動しているため、欧州委は他の競争当局、特に米国司法省とブラジルとカナダの競争当局と密接に協力する。

「農家の生活は種子や農薬を安い価格で入手できるかどうかにかかっている。この合併の結果、価格が上がったり、革新的製品が出なくなることがないよう、確認したい」としている。

除草剤や殺虫剤のリーダーで、革新的な製品を市場に出してきた2社が結びつき、世界最大の農薬・種子メーカーが生まれること、特定の石油化学製品の大メーカーが生まれること、既にグローバルに集約されつつある業界で今回の統合が行われることに注目している。

欧州委は以下の点を懸念している。

農薬

両社はともに、多くの作物用の除草剤と殺虫剤に強い製品群を持つ。両社統合により、これら市場での競争が減り、その結果、価格、品質、製品の選択可能性、イノベーションに悪影響が出るのを懸念する。

両社の殺線虫剤や殺菌剤についてもチェックしたい。

合併により、農薬全体でイノベーションが低下するのではないか懸念する。十分なR&Dの能力を持つグローバル企業が少ない業界であり、合併で新しい原体を開発し、上市できる数少ない企業の1社がなくなることになる。

種子

両社はともに新しい種子の品種改良を加速できる「遺伝子編集」技術を開発している。合併後に、競合者にこれら技術をライセンスするインセンティヴが減ったり、競合技術の開発が難しくなるのではと懸念する。

統合会社は幅広い農薬製品を持ち、かつ種子でグローバル市場でのリーダーの一つになり、業界で最大の統合企業となる。両社の農薬と種子の販売が統合された場合、競合企業による農薬と種子のディストリビューターへのアクセスが難しくなるのではないかと懸念する。

石油化学製品(ポリオレフィンとモノマー)

両社はスペシャルティポリオレフィンの強力なサプライヤーであり、この市場で1社がなくなる影響を調査する。

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両社の農薬・種子部門の状況

Dowは農薬が中心で、一方 DuPont は種子が中心となっている。

 

Dow は幅広い作物を対象にしている。


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