ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は http://blog.knak.jp


2016/8/16  天津爆発事故、1周年 

 
173人の死者・行方不明者を出した天津市の大規模爆発から8月12日で1年を迎えた。

天津市の工業地帯で2015年8月12日夜、大規模な爆発が発生した。

爆発は、天津東疆保税港区の瑞海公司(RuiHai International Logistics) の危険物倉庫で起こった。

コンテナーヤードには7類の危険品(第一類の火薬と第七類の放射性物質を除く)合計111種 11,384トン、うち硝酸アンモニウム 800トン、シアン化ナトリウム 681トン、ニトロセルロース類229トンを保管していた。
うち運抵庫(受入倉庫)には72種類、合計4,840トンを保管、うち硝酸アンモニウム800トン、シアン化ナトリウム 360トン、ニトロセルロース類48トンを保管していた。

シアン化ナトリウム681トンは、施設の設計上の保管量を40倍以上も上回る。

2015/8/14   天津で大規模爆発
2015/8/21   天津爆発事故のその後(2)
2015/8/27   天津爆発事故のその後(3)
2016/2/10   天津爆発事故の調査報告書
事故の発生から1ヶ月も経たない9月初めに、天津市は浜海新区の爆発現場を「海港生態公園海港エコ公園)」として整備する計画を明らかにした。

公園は24ヘクタールで「エコ、活気、暮らし、記念」を理念とし、事故前に着工していた小学校や幼稚園も敷地内に建てる。11月に着工し、2016年7月の完成を目指すという。

全体は43ヘクタールで、公園部分(下図の赤線内)は約24ヘクタール。公園の池は丁度、爆発の穴の場所。

南側には小学校、幼稚園などが、西側にはグリーンベルトがつくられる。

大惨事の原因究明も済んでいない中での発表に、事故車両を埋めようとした温州の高速鉄道と同じだと、批判が相次いだ。

2015/9/7 天津の爆発事故現場、早くも公園化計画 批判相次ぐ   


天津市は当初、2016年7月の完成としていたが、実際にはほとんど進んでいない。

1年前 (上の写真の逆の北側から見たもの) 現状

現在は爆発によりできた直径約100メートルの穴を重機によって埋める作業が昼夜を問わず続いている。

建設業者によると、爆発による汚染状況は想像していたより遥かに深刻で、1〜2年での完成は難しいという。

更に当局は、商業秘密を含むとして汚染データを公開していないという。

 

地元政府は8月10日、現場周辺の復旧状況を公表し、周辺の大気や水質については問題ないとした。

しかし、爆心地から数百メートルと最も近い距離にあるマンション群「海港城」では、割れた窓や外壁はほぼ完全に改修され、表面上は新築物件のようだが、住み人はほとんどいないという。

 


2016/8/17 マイナス金利の影響 

日本銀行は1月29日、政策委員会・金融政策決定会合で、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定した。今後は、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使して、金融緩和を進めることとした。

金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。 (2月16日から)
今後、必要な場合、さらに金利を引き下げるとした。

 

2月3日発表 

金利率
2月残高 年80兆円増
2015年平均残高 210兆円 210兆円 0.1%
これを超えた残高 うち一定割合 40兆円 残り  0%
これを超える分  10兆円 10〜30兆円 -0.1%

2016/2/13 マイナス金利の波紋 

 

導入から半年が経過したが、目的の「2%の物価安定目標の早期実現」の兆しは見えない。

逆に悪影響はいろいろ出ている。

2016/8/13付日経によると、金融庁は日銀のマイナス金利政策の影響を聞き取り調査し、日銀に懸念を伝えた。

  ・ 利ざやの縮小などから、3メガ銀行グループの2017年3月期決算で少なくとも3000億円程度の減益要因になる。

  マイナス金利による減益幅 マイナス金利幅拡大ケースの上積み
(金利収入面のみ)
三菱UFJ 1550億円 480億円
三井住友 750億〜760億円 410億円
みずほ 610億円 600億円

  ・  自己資本埋め合わせ対策としての公募増資は踏み切りにくく、リスク資産圧縮は融資先の絞込みに結びつく可能性がある。

  ・ ある銀行では年利0.625%で貸す住宅ローンの採算が割れ、銀行単体で赤字となっていた。

  ・ マイナス金利の長期国債などの変動影響を時価で評価したところ、1年間で自己資本比率が半分に減った保険会社ももあった。

   付記

各行は2009年1月以降、短プラを変更していない(ほとんどが 1.475%)

金融庁は短プラ引き下げの影響を調査した。
「三菱UFJは全ての金利を0.2%下げる」「三井住友は短プラ0.1%下げ」などと3メガごとに条件を設定したところ、減益額が金利収入だけでも1500億円に上った。

三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は4月14日、都内の講演で日本銀行のマイナス金利政策について、銀行にとっては「短期的効果は明らかにネガティブだ」と述べた。

「銀行はマイナス金利を個人や法人顧客に転嫁できないだろうから、資金利ざやはさらに縮小して基礎体力低下をもたらし」、銀行業界では「体力勝負の持久戦は厳しさを増し長期化することになる」とした。

一方、マイナス金利の経済効果については、欧州の先行例などを示し、既に金利の低い日本で企業や個人の投資を促すかどうかは分からず「残念ながら懸念を増大させる方向に働いてしまっているようだ」、「個人も企業も政策効果に懐疑的になってしまっており、将来に対する不確実性が増すにつれて支出や投資計画を凍結している」と述べた。

平野社長の懸念のとおりとなった。

ーーー

三井住友銀行の労働組合は2月23日、物価上昇に弾みがつかない中、マイナス金利などで本業の収益が悪化する懸念が出てきたため、春闘でのベースアップ要求を3年ぶりに見送る方針を固めた。三菱東京UFJ銀行やみずほフィナンシャルグループの労働組合もこれに従った。

2016年春闘は、政府が賃上げを呼びかける「官製春闘」の3年目にあたる。

安倍政権の要請に応えて、経団連は労働組合が求めるベースアップを容認する方針を固めていたが、マイナス金利が足を引っ張る結果となった。

ーーー

三菱東京UFJ銀行は7月13日、国債の入札に参加する際の特別な資格である国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)の資格返上を正式に届け出た。財務省は7月15日付けで資格を取り消した。今後は特別参加者の役割を三菱UFJモルガン・スタンレー証券が行い、三菱UFJ銀行も必要に応じて国債の入札には参加する。

外資系では資格返上の例はあるが、日本の金融機関では2004年10月の制度導入以来初のケースとなる。メンバーは国内大手銀行や証券会社など計21社となる。

プライマリーディーラーは、財務省が開催する国債市場特別参加者会合に参加し、財務省と意見交換等を行うことができるが、下記の義務を持つ。

・応札責任:
全ての国債の入札で、相応な価格で、発行予定額の4%以上の相応の額を応札すること。

・落札責任:
直近2四半期中の入札で、短期・中期・長期・超長期の各ゾーンについて、発行予定額の一定割合(原則短期ゾーン0.5%、短期以外のゾーンは1%)以上の額の落札を行うこと。

・流通市場における責任:
国債流通市場に十分な流動性を提供すること。

・情報提供:
財務省に対して、国債の取引動向等に関する情報を提供すること。
これまで各銀行は自己資本比率を計算する際に、日本国債のリスクを事実上「ゼロ」と扱っており、貸し倒れリスクのない国債を大量に購入してきた。

三菱UFJの国債保有額は突出している。

2016年3月末
 三菱UFJ  28.3兆円
 みずほ   15.0兆円
 三井住友    9.8兆円

しかし、利回りがマイナスに下がった国債を買い続ければ損失が出る懸念がある。

日経によると、三菱東京UFJ銀行で 「国債の金利変動リスクを自己資本に反映させたらどうなるか」のシミュレーションを行った結果、「どのモデルを使って計算しても国債金利が一律2%上がると自己資本比率は5%程度下がる」という結果が出た。当時の自己資本の3分の1を吹き飛ばすというものであった。

プライマリーディーラーの場合は応札責任、落札責任があり、損失が出る懸念がある国債を買い続けることは株主に説明できない。

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日銀が導入したマイナス金利政策が企業業績に打撃を与えている。

市場金利が低下し、「退職給付債務」が膨らみ、利益を圧迫し始めた。

退職給付債務は国債や優良社債の利回りを参考にして決める「割引率」を使って計算する。市場金利が下がれば運用益が減ることになり、退職給付債務は拡大し、現時点で保有する年金資産を差し引いた積み立て不足は、費用計上する必要がある。

明らかにされた例は下記の通りだが、今後、他社にも拡大する。

大和ハウス工業   2016年3月期に849億円の特別損失を計上
住友林業   2016年3月期に115億円の費用を計上
LIXIL   2016年3月期の営業利益を108億円押し下げ
ダスキン   2017年3月期から5年で50億円の費用計上
四国電力   2017年3月期に166億円の費用計上

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金融庁は銀行救済のため、法令改正を行った。

金融庁は7月7日、「金融商品取引所等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」を出した。

金融商品取引所はデリバティブ(金融派生商品)取引時に、決済の不履行に備えて顧客から一定の証拠金を預かっている。
これらはこれまで、銀行等への預金で管理することとなっていた。

しかし、マイナス金利ルールでは、銀行の預金(預かり金)が増加すると、その分は銀行が日銀に金利を支払うことが必要になる。

これを避けるため、金融庁は、金融商品取引所が証拠金を(銀行等以外に)日銀に直接預けられるように法令を改正した。

金融庁はマイナス金利の副作用に対して「助け舟」が必要だと判断した。


2016/8/18 消費者物価指数の改定

総務省は、ライフスタイルの変化を統計に反映させるために、「消費者物価指数」の調査品目などを見直す「基準改定」を5年ごとに行っている。

2016年7月分から改定するが、今回は基準となる年(指数を100とする年次)を現在の2010年から2015年に変更するとともに、毎月、価格を調べている588品目のうち、30品目余りを入れ替えた。

8月12日、新たな基準で計算した指数を過去にさかのぼって公表した。これに合わせ日銀も「日銀コアコア」について発表した。

2%の物価上昇率を目指す日銀の金融政策にも影響するため、結果が注目されていたが、小幅な変更にとどまった。
(日銀コアコアは各月とも旧基準を下回る結果となった。)

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品目入れ替えの例

費目 追加品目 廃止品目
食料 からあげ弁当
しょうが焼き定食(外食)
親子どんぶり
お子様ランチ
住居 カーポート
壁紙張替費
左官手間代
板ガラス取替費
家具・家事用品 空気清浄機
水筒
電気カーペット
電気アイロン
保健医療 青汁
マスク
ヘルスメーター
体温計
交通・通信 電動アシスト自転車
ロードサービス料
自動車ワックス
ETC車載器
教養・娯楽 競技用靴
ペットトイレ用品
筆入れ
植木鉢
諸経費 カウンセリング化粧品
警備料
 
合計品目数 33品目 32品目
選択の条件 @〜Bの基準を全て満たす品目

@ 新たな財・サービスの出現や普及、嗜好の変化などによる消費構造の変化に伴い、家計消費支出上重要度が高くなった品目
A 中分類指数の精度の向上及び代表性の確保に資する品目
B 円滑な価格取集が可能で、かつ、価格変化を的確に把握できる品目

@〜Bの基準のいずれかに該当する場合

@ 消費構造の変化などに伴い、家計消費支出上重要度が低くなった品目
A その品目がなくても、中分類指数の精度が確保できる品目
B 円滑な価格取集が困難となった又は価格変化を的確に把握できなくなった品目

詳細は下記

   http://www.stat.go.jp/data/cpi/2015/plan/pdf/2015plan.pdf


2016/8/19    Global Top 50 Chemical Company 

Chemical & Engineering News の8月15日号は2015年のGlobal Top 50 Chemical Company を掲載した。

http://cen.acs.org/global-top-50.html?type=paidArticleContent

化学会社のChemical部門の売上高、営業利益、資産、設備投資、R&D支出を分析している。

日本企業では、売上高で三菱ケミカルホールディングスが 2014年の11位から9位に上がり、東レが21位から15位に上がった。住友化学は18位から21位に下がった。
三井化学は2014年が19位で、2015年は25位。

アジアでは、Sinopecが3位(前年も3位)、台湾のFormosa Plastics が5位(前年6位)、韓国のLG Chem が11位(前年13位)に入っている。

なお、Bayerは2014年9月に MaterialScience 部門をCovestroとして分離した。
Bayerとしての2014年売上高は23,464百万ドルで10位であったが、2015年にはCovestroが売上高 11,504百万ドルで20位に入った。

営業利益、営業利益率でみると、日本企業は低位にある。
但し、売上高27位の信越化学の営業利益、営業利益率は高い。

   

 


2016/8/20 世界のGDPの推移 

世界銀行は2015年の世界各国のGDPを発表した。

http://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD

上位各国のGDPは下記の通り。

 

上位5カ国の過去の推移は下記の通り。

日本は2012年以降、下降を続けており、中国との格差はどんどん広がっている。

日、独、英の低迷と比べ、米国経済の堅調さが目立つ。


2016/8/22 光免疫療法による癌治療 

米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員らの研究チームは 8月17日付けの米医学誌 Science Translational Medicineで、光免疫療法(PIT)により、癌細胞を免疫の攻撃から守っている仕組みを壊し、癌を治す動物実験に成功したと発表した。

http://stm.sciencemag.org/content/8/352/352ra110

1カ所の癌を治療すれば、遠くに転移した癌も消える効果があることが確認され、チームは「全身の癌を容易に治療できる可能性がある。3年程度で治験(臨床試験)を始めたい」と話す。
 

現在の癌治療では「手術」「放射線療法」「化学療法」の3つの方法が主流になっているが、これらの治療にはいずれも副作用が付いてくる。
「放射線療法」「化学療法」は癌細胞を殺すが、正常細胞も殺す。

副作用を最小限にするため、「分子標的薬」が開発されてきたが、その数はまだ少ない。

研究グループは、新しいタイプの分子標的癌治療法となる「光免疫療法」(PIT=Photo-Immuno-Therapy) を開発した。

研究チームは2011年11月6日のNature Medicine で初めて「光免疫療法」を報告した。

この報告は注目を集め、オバマ大統領が2012年の一般教書演説で「米政府の研究費によって、癌細胞だけを殺す新しい治療法が実現しそうだ」と紹介し、2014年にNIH長官賞を受賞した。

Innovation also demands basic research.  Today, the discoveries taking place in our federally financed labs and universities could lead to new treatments that kill cancer cells but leave healthy ones untouched. 

NIHの小林主任研究員は米ベンチャー企業のAspyrian Therapeutics, Inc. と組み、2015年4月30日にFDAの計画承認を受け、治験を開始した。

 

概要は次のとおり。(米国国立がん研究所は動画「カメラが見たがん研究:光免疫療法でがんと闘う」で仕組みを説明している。)

1) 癌にくっついて熱で殺す

癌が生体で増殖し続けるのは、癌の周りに「制御性T細胞」が集まり、異物を攻撃する免疫細胞の活動にブレーキをかけて守っているためである。

制御性T細胞に結びつく性質を持つ「抗体」に、波長700nmの近赤外線を受けると光エネルギーを吸収し、化学変化を起こして発熱する「IR700」と呼ばれる色素をつけ、肺癌、大腸癌、甲状腺癌をそれぞれ発症させたマウスに注射した。

体外から近赤外光を当てた結果、約1日で全てのマウスで癌が消えた。
光を当てた約10分後には制御性T細胞が熱で大幅に減り、免疫細胞「リンパ球」のブレーキが外れて、癌への攻撃が始まったためとみられる。

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このための光は、光化学反応を効率よく起こせるだけの波長の短い光で、なおかつDNAに損傷を起こさないために可視光よりも長い波長の光である必要と、体内の光吸収物質に吸収されずに体の深部にまで到達する光である必要があり、その条件に合致するのが700nm あたりの近赤外領域の光である。

2) 光を当てない癌も消える

さらに、1匹のマウスに同じ種類の癌を同時に4カ所で発症させ、そのうち1カ所に光を当てたところ、全ての 癌が消えた。
光を当てた場所で癌への攻撃力を得たリンパ球が血液に乗って全身を巡り、癌を壊したと考えられる。

この治療で壊れなかった局所のがん細胞や近赤外光の到達できなかった場所のがん細胞、ひいては遠隔臓器に転移したがん細胞にも効果を起こせる可能性があり、「転移があっても効果的に治療できる方法になると期待できる」と話す。

3) 癌だけを殺せる!

この薬は癌細胞にくっつかない限り、体に害を与えない。
癌細胞にくっついて初めて、近赤外線を当てるとそのくっついた癌細胞を殺す。

 


2016/8/23    帝人、日本とインドネシアのDupont とのJVを100%子会社化

帝人は8月19日、日本とインドネシアのDuPontとのJVについて、DuPontの持分を買収し、帝人100%とすると発表した。

帝人とDuPontは2000年よりポリエステルフィルム事業を統合し、世界7カ国で合弁会社を設立してグルーバルに事業を運営してきた。

しかし、中国経済の減速に伴う需要低迷、中国メーカー台頭による市場構造の変化により、事業環境は厳しさを増し、事業構造の変換が急務になっている。

今回、事業運営柔軟性と意思決定の迅速性を向上するため、国内合弁とインドネシア合弁について、DuPont持分を取得することで合意した。
対価などは公表していないが、報道では数億円規模とみられるとしている。

帝人が持つ他の高機能素材と合わせた販売・製造拠点として活用する。

 国  現社名 出資比率 %  新社名
帝人 DuPont
日本 帝人デュポンフィルム 60.0 40.0  帝人フィルムソリューション
インドネシア P.T. Indonesia Teijin DuPont Films 50.1 49.9  P.T. Indonesia Teijin Film Solutions

ーーー

帝人はポリエステルフィルム分野では、世界7カ国で米国デュポンと合弁事業を行ってきた。

帝人は1957年に英国ICI のPETフィルム製造技術を導入。
DuPontは1998年にICI からポリエステル事業を買収。

両社は2000年1月、折半出資により世界最大のポリエステルフィルムのグローバル合弁会社(Teijin DuPont Films)を設立した。

日本をはじめ、米国、欧州(ルクセンブルグ、英国)、アジア(インドネシア、中国)の6カ国に地域合弁会社が設立されており、工業用、包装用、磁気用の幅広い用途向けに、それぞれの地域のニーズに対応した高機能ポリエステルフィルム製品群を、地域の販売網を通じて販売している。

インドネシアは帝人子会社、中国はDuPont のJVで、それぞれを両社のJVに移した。

その後、韓国にPETフィルムの販売会社のTeijin DuPont Films Koreaを折半で設立した。

 国  社名

出資比率 %

 備考
帝人 DuPont その他
日本 帝人デュポンフィルム 50.1 49.9   その後、 60/40 に変更
インドネシア P.T. Indonesia Teijin DuPont Films 50.1 49.9   元は帝人100%P.T.Indonesia Teijin Films
米国 DuPont Teijin Films U.S. 49.9 49.9 (*1) 0.2 *1 帝人デュポンフィルム
英国 DuPont Teijin Films U.K.  50.0 50.0    
ルクセンブルグ DuPont Teijin Films Luxembourg 50.0 50.0    
中国 DuPont Hongji Films Foshan
(佛山杜邦鴻基薄膜)

JV(*1)  51

(*2) 49 *1 DuPont Teijin Films China
*2
佛山塑料集団(Foshan Plastics Group)
(49.0) (51.0)
韓国 Teijin DuPont Films Korea 50.0 50.0   販売会社

帝人は2008年3月決算で米国及びルクセンブルグでのJVの固定資産の減損処理を実施し、大幅減益となった。
需要低迷や原燃料価格の高騰により、特に米国のフィルム事業を取り巻く経営環境は厳しく、急速な業績回復は難しい状態となったのが理由。

DuPont Teijin は、2009年2月の米国Circleville, OH 工場の閉鎖、同6月のLuxembourg工場の1生産ラインの休止に加え、米国Florence, SC工場を段階的に縮小し、2010年末に閉鎖した。
これにより、米国におけるポリエステルフィルム製造拠点を、Hopewell, VA 工場に集約した。

帝人デュポンフィルムは、岐阜事業所、宇都宮事業所の2拠点で生産しているが、岐阜(能力3万トン)を2016年9月末までに停止し、宇都宮に集約する。
中国メーカーの台頭などで収益が悪化し、生産効率の高い設備を備える宇都宮事業所への集約を決めた。

同社は2013年末に茨城事業所(能力1万トン)を停止している。

ーーー

Bloomberg は2011年10月13日、DuPontがDuPont Teijin Films の買い手を探していると報じた。
売却額は10億ドル未満と見られている。

Ellen Kullman女史が2009年1月にCEOに就任して以来、71億ドルでのDanisco買収などで高成長分野に舵を切っている。
これまで大きな売却はしていないが、いよいよ時期が来たとしていた。

しかし、その後、売却の動きはない。

2011/10/18     DuPont、帝人とのポリエステルフィルムJVを売却か?


DuPontは現在、Dow Chemical との統合を進めている。

両社は2015年12月に対等合併で合意し、2016年7月20日の両社の株主総会でそれぞれ承認を得た。

2015/12/14   Dow と DuPont、経営統合を発表



2016/8/23 日本化学会の山本会長、Roger Adams賞を受賞 

日本化学会は8月22日、山本尚・会長(中部大学教授・総合工学研究所長)が、米国化学会が設立し、有機化学の分野で優れた業績をあげた研究者に贈られる Roger Adams賞を受賞したと発表した。

1959年から2年に1度選出するもので、日本では2001年の野依良治・名古屋大学特別教授に続き 2人目となる。

これまでの受賞者29人のうち、11人がノーベル賞を受賞している。

2016年4月にサンフランシスコで授賞式 が行われる。賞金は25千ドル。


山本尚教授は、73歳で、紫綬褒章、フンボルト賞、日本学士院賞、野依賞、藤原賞などを受けている。

1980年代初頭にC2対称軸を持つキラル・ルイス酸触媒を提案・実現した。この触媒は不斉分子性酸触媒の源流となった。

最近では、さらに高選択性を得ることのできる、ルイス酸とブレンステッド酸を組み合わせた複合型酸触媒、ルイス酸の金属中心がキラルとなるシス・ベータ型金属触媒、2つの螺旋を組み合わせたシス・アルファ型鉄触媒の創成に成功している。

一方では、金属に替わる毒性のまったくない強力なスーパー・ブレンステッド酸触媒を開発、それを駆使した3次元分子の1工程合成に成功し、クリーンで省資源型のカスケード型合成法に成功した。

開発した触媒や反応剤は工業的にも日常的に用いられている。例えば、アルミニウム反応剤はプロスタグランディン合成に、アミド化ホウ素触媒はいくつかの医薬品プロセス合成に、バナジウム触媒は工業的規模での不斉酸化に用いられている。

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Roger Adams賞は、アダムス触媒(酸化白金)を開発したRoger Adams (1889-1971)  を記念して設立された。

過去の受賞者は下記の通り。

      (ノーベル化学賞)
2015 Larry E. Overman  
2013 David A. Evans  
2011 Robert H. Grubbs 2005年 有機合成におけるメタセシス法の開発
2009 Andrew Streitwieser  
2007 Samuel J. Danishefsky  
2005 Jerrold Meinwald  
2003 Albert Eschenmoser スイス  
2001 Ryoji Noyori 日本 2001年 不斉触媒による水素化反応の研究
1999 Dieter Seebach スイス  
1997 K. Barry Sharpless 2001年 不斉触媒による酸化反応の研究
1995 Barry M. Trost  
1993 Elias J. Corey 1990年 有機合成理論および方法論の開発
1991 Gilbert J. Stork  
1989 George A. Olah  1994年 カルボカチオン化学における研究
1987 Jerome A. Berson  
1985 Donald J. Cram  1987年 高選択的に構造特異的な相互作用をする分子(クラウン化合物)の開発と応用
1983 Sir Alan R. Battersby  
1981 Nelson J. Leonard  
1979 Melvin S. Newman  
1977 William S. Johnson  
1975 Rolf Huisgen  
1973 Georg Wittig  1979年 新しい有機合成法の開発
1971 Herbert C. Brown 1979年 新しい有機合成法の開発
1969 Vladimir Prelog スイス 1975年 有機分子および有機反応の立体化学的研究
1967 John D. Roberts  
1965 Arthur C. Cope  
1963 Paul D. Bartlett  
1961 Robert B. Woodward 1965年 有機合成化学に対する顕著な貢献
1959 Sir Derek H. R. Barton 1969年 分子の立体配座概念の確立

 



2016/8/24    Pfizer、Medivation を買収

Pfizerは8月22日、バイオファーマのMedivation, Inc. を買収する契約を締結したと発表した。

1株81.50ドルでの買収で、総額は140億ドルとなる。両社の取締役会は満場一致でこれを承認した。
Medivation株の8月19日の終値は67.15ドル。

PfizerはMedivationの買収で、前立腺がん治療薬 XTANDI ( 一般名Enzalutamide)を手に入れる。
XTANDIは、第二世代のアンドロゲン受容体拮抗薬で、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に適応を持つ。

後記のとおり、米国を除く全ての地域については、アステラス製薬がXTANDIの独占的開発・販売権を有している。

Pfizerは転移乳がん治療薬IBRANCE® (一般名:palbociclib) を持っており、乳がんと前立腺がんの治療薬を持つことになる。

PfizerはフランスのSanofiとの買収合戦を制した。

Sanofiは4月28日、Medivation に対し現金での1株52.50ドル、総額93億ドルでの買収提案を行ったと発表した。過去2ヶ月の平均株価に対し50%以上のプレミアムとしている。

終値は、2/1 が 33.16ドル、3/1 が 36.60ドル、4/1 が 46.19ドルであった。

しかしMedivationは翌29日、提案はMedivationの価値を低く見ており、同社と株主の利益に反するとしてこれを拒否したと発表した。

Sanofi はこれに対し、引き続き買収の実現を目指すとし、Medivationの株主に直接説明したいと述べた。敵対的買収にも含みを残した。

さらに、AstraZeneca、Pfizer、Novartis AG などが買収の検討を始めたと報じられていた。

その後、Sanofiは1株当たり58ドルの提案をしたが、Medivationは拒否した。

2016/5/6   米国の製薬会社 Medivation、仏Sanofi の買収提案を拒否

Sanofiは敵対的買収も考え、Medivationの株主に対し、取締役を追放させることについての暫定的な同意要請趣意書を送付した。

しかし、両社は7月5日に秘密保持契約を締結、敵対的買収提案の取り組みは終わり、より友好的な交渉に移った。

この時点でMotivationの株価は62.50ドルにまで上がっていた。

ーーー

Pfizer は2015年11月23日、アイルランドに拠点を置く同業のAllergan との合併を決めた。株式交換方式で合併するもので、実質的に、Pfizerによる1600億ドルでのAllergan 買収となる。
PfizerはAllergan買収を通じて本社を税率の低いアイルランドに移す考えだった

しかし、米財務省が2016年4月4日、税率の低い国へ本社を移転する税逃れ行為「インバージョン」をめぐり追加措置を発表したが、これが合併契約書に規定している「不利な税制変更」に該当するため、Pfizer は4月6日、Allerganとの合併を両社の合意で中止すると発表した。

2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念

発薬との競争が激化する中、収益源多角化に向けたPfizerの次の一手が注目されていた。

2016年5月16日、Pfizerは米バイオ医薬のAnacor Pharmaceuticals, Inc.を52億ドルで買収すると発表した。

Anacorは承認が最終段階を迎える軽度のアトピー性皮膚炎の新薬を持っており、免疫系薬の品ぞろえ強化につなげる狙い。

ーーー

Medivation は2009年10月、アステラス製薬との間でXTANDI の全世界での開発・商業化に関する契約を締結した。

アステラス製薬は契約締結一時金として110百万ドルを支払い、開発マイルストン達成に伴う総額 335百万ドルの一時金支払いのほか、売上達成に応じて最大320百万ドルの追加一時金を支払う。

両社はXTANDI の広範囲な開発プログラムを共同で進め、米国における商業化を共同で行なう。

米国を除く全ての地域については、アステラス製薬が独占的開発・販売権を有し、アステラス製薬はMedivationに対し米国以外の全地域の売上に応じて漸増する2桁台のロイヤリティを支払う。

アステラス製薬のXTANDI の売上高は下記の通り。(単位:億円)

  2014/3 2015/3

2016/3

2017/3予
米国 443 857 1,484 1,637
日本 149 262 257
米州(米国以外) 8 26 45 61
欧州 95 334 707 959
アジア・オセアニア 0 6 24 45
合計 546 1,372 2,521 2,959

 


2016/8/25    中国商務部、日本とEU原産の高性能ステンレス継目無し鋼管に対するアンチダンピング課税措置を撤廃  

中国商務省は8月22日、公告第34号で、日本とEU原産の高性能ステンレス継目無し鋼管* に対するアンチダンピング課税措置を撤廃すると公表した。

* 石炭火力発電所の超々臨界圧ボイラ等に使用される高付加価値特殊鋼

WTO上級委員会が2015年10月14日に、WTOルールに違反しているとして日本とEUの主張を認め、中国に対し是正を勧告する最終判断を示し た。

商務部は2016年6月20日付けで再調査を行う と発表した。

今回、当初の反ダンピング調査申請者が申請を取り消したとの理由で、アンチダンピング課税を撤廃した。

商務部は2011年9月8日、日本とEU原産の本製品について調査を開始し、2012年11月8日にクロの最終決定を行った。

反ダンピング税率は次のとおり。

日本    
  住友金属工業 9.2%
  神鋼特殊鋼管 14.4%
  其の他 14.4%
EU    
  Tubacex Tubos Inoxidbles 9.7%
  Salzgitter Mannesmann Stainless Tubes Italia 11.1%
  其の他 11.1%

日本政府は、中国では同製品を生産していないとし、中国側の損害認定などの説明が不十分と主張して、中国側に詳しい説明を求めた。

WTOの紛争解決手続きによると、相手国と協議し、解決しない場合は、WTOの「一審」に当たる紛争処理小委員会(パネル)設置を要請する。

日本(およびEU)は2013年4月11日、WTOに対し本件措置についてパネル設置要請を行い、同年5月24日にパネルが設置された。

2015年2月にパネル報告書が、同年10月14日に上級委員会報告書がそれぞれ公表された。

中国の措置はアンチダンピング協定に違反すると判断し、中国に対して措置を協定に適合させるよう勧告した。

  1. 中国によるアンチダンピング課税は、日本から輸出している高性能品と中国製品とのグレードの違いや競争関係がないことを適切に考慮していない等の点で損害及び因果関係の認定に瑕疵があり、アンチダンピング協定3条1項(実証的な証拠) 及び5項(損害立証) に違反するとしたパネル報告書の判断を支持した。
     
  2. 中国の措置は、アンチダンピング協定3条2項(影響を累積的に評価)及び4項(すべての経済的な要因及び指標の評価)にも整合しない。
これを受け、商務部は2016年6月20日、再調査をすると発表したが、当初の申請者が申請を取り消したという理由で措置を撤廃したもの。

経産省はこれについて、「WTOの紛争解決手続の有効性が改めて確認されるとともに、近年新興国においてアンチダンピング課税措置が増加傾向にある中、WTOルールの明確化を通じて、恣意的又は不透明なアンチダンピング課税措置発動を抑制することについても大きな意義があると考えられます 」としている。

ーーー

同様の例として、EU原産のX線セキュリティチェック機がある。

2011年1月23日にクロの最終決定を行った。

これに対し、WTO紛争処理小委員会は2013年2月、WTO反ダンピング規定に違反するとの判断を下した。

反ダンピング関税は「損害的ダンピング」への対処として厳格な条件の下でのみ課すことができるが、今回の事案において、中国はこれらの条件を満たしていないとのEUの訴えに同意した。
また、中国が適正な手続きと透明性の規定用件を尊重することを怠ったとの結論を下し、同国にWTO規定に則るよう要請した。

中国商務部はWTOの決定を受け、再調査していたが、2014年2月19日、当初の申請者が申請取り消しを申し出たため、国務院関税委員会がダンピング課税の終了を決めた。

2014/2/26 中国、WTO決定に従い、EU原産のX線セキュリティチェック機の反ダンピング措置を終了

 

WTOの決定前に中国側が取り消した例もある。

商務部は2005年9月に、米国・韓国・タイ・台湾原産の無漂白クラフト紙をダンピングと認定し、課税を開始した。

米国政府は被害の認定や調査手続きを問題視し、強く反発、WTOの協議を要請すると中国に伝えた。

米国企業が中国の行政再審法(1999/10/1発効)に基づき再審を要請したところ、商務部は再審の結果、この決定がアンチダンピング法に合致しないとして、2006年1月9日付けでこの決定を取り消し、同日付でダンピング課税を終了した。


2016/8/25 原発に強度不足の鋼材使用の可能性 

原子力規制委員会は8月24日、各原発事業者に対し原子炉容器等における炭素偏析の可能性に係る調査を指示した。

2015年4月、建設中のフランスの Flamanville 3号機で、Areva社傘下のCreusot 工場 (Creusot Forge ) が製造した原子炉容器上蓋と下鏡に鋼材組成の異常が見つかった。
炭素濃度の高い箇所では機械的強度が弱まるため、フランスの原子力安全局 (ASN) は、他の原子炉機器にこれと同様の異常が存在するかを特定する分析調査の実施をフランス電力(EDF) とArevaに指示した。

その結果、ASNは6月28日に下記の発表を行った。

フランスで運転中の58基の加圧水型原子力プラントのうち、9つの原発の18基の蒸気発生器で水室(Channel Head) の機械的強度が想定より低い可能性がある。

原発 リアクター
Le Blayais No.1
Bugey No.4
Chinon B1, B2
Civaux No.1, No.2
Dampierre No.2, No.3, No.4
Fessenheim No.1
Gravelines No.2, No.4
Saint-Laurent-des-Eaux B1, B2
Tricastin No.1, No.2, No.3, No.4

これらはArevaのCreusot 工場 と日本鋳鍛鋼(新日本製鐵グループ及び三菱グループの共同出資)が鍛造したもので、機械的強度を低下させる炭素濃度の高い領域を持つ鍛造鋼が使われた可能性がある。 うち、日本鋳鍛鋼は12基。

ASNはEDFに対し、当該蒸気発生器の水室の機械的強度を裏付けるよう指示を出した。

このような鍛造鋼がクラス1容器(高温高圧の原子炉冷却材を閉じ込める原子炉容器、蒸気発生器、加圧器)において、使用されていないかどうかについて調査を継続するとしている。

付記

フランスの原子力安全局は12月5日、重要設備の部品に強度不足の疑いがあるとしてフランス電力(EDF)に検査を指示した原発計12基のうち、10基について「稼働を認可し得る」と判断した。いずれの原発も「日本鋳鍛鋼」が製造した部品を使用している。

残る2基はさらに詳細な検査を続ける。また、稼働に問題がないと判断した10基中3基については、EDFに追加データの採取、提出を求めた。

これを受け、原子力規制委員会は、国内の実用発電用原子炉の原子炉容器等において、炭素濃度の高い領域が残っている可能性がある鋼塊部分を含んだ鍛造鋼の使用の有無等について確認する必要があると判断し、今回、下記のとおり指示した。

下記の調査対象機器について、製造方法及び製造メーカーを調査し、その結果を報告すること。

加圧水型原子炉:原子炉容器、蒸気発生器、加圧器
沸騰水型原子炉:原子炉圧力容器

調査の結果、鍛造鋼の使用が確認された場合は、当該鍛造鋼が規格を上回る炭素濃度領域を含む可能性について評価し、その結果を報告すること。

フランスで2015年4月に問題が分かり、ASNが調査を指示し、本年6月に結果を発表しているのに対し、原子力規制委員会の対応が遅いのが気になる。

付記  2016/9/5 原発に強度不足の鋼材使用の可能性ー2


 

2016/8/26     LyondellBasell、サンアロマーから撤退

昭和電工とJXエネルギーは8月23日、LyondellBasell からサンアロマーの持分 50%を取得することで合意したと発表した。

現在は、昭和電工とJXエネルギーが出資するエスディーケイ・サンライズ投資が50%、LyondellBasellが50%出資する。

2016年8月31日にエスディーケイ・サンライズ投資がLyondellBasellよりサンアロマーの株式を取得し、100%子会社とする。
その後、11月1日付けで、サンアロマーを存続会社とする吸収合併方式により、エスディーケイ・サンライズ投資とサンアロマーは合併する。

この結果、昭和電工とJXエネルギーがサンアロマーに直接出資する形とする。

なお、サンアロマーとLyondellBasell間の技術・マーケティング・販売等に関わる提携は、これまで通り継続する。

昭和電工とJXエネルギーは、両社にとって、ポリプロピレン事業は、オレフィンチェーンの中核をなす事業の一つであり、今回の株式取得を契機に、サンアロマーとの連携を一層強化することにより、ポリプロピレン事業の競争力強化を図るとしている。

本件については、LyondellBasell は今のところ何も発表していない。

なお、サンアロマーとLyondellBasell は韓国で大林産業とのPPのJVを持っている。これについてどうするかも現時点では不明。
(PolyMirae は大林産業とLyondellBasellのJVとの認識で、サンアロマーは当初の台湾PPと同様に、LyondellBasellの一員として参加している)

社名 PolyMirae Co. Ltd.
設立 2000/9/1
出資比率
  大林産業 LyondellBasell サンアロマー 台湾PP
当初 50% 8% 30% 12%
現在 50% 35.18% 14.82%
Basellは台湾PPに36%出資していたが、2006年に持株を李長栄化学に売却し、台湾PPのPolyMirae持分を買収した。
その後、サンアロマーと持分を調整した。
 
PP能力 4系列計 700千トン

ーーー

1995年2月、ポリオレフィン共販会社のエースポリマーに属する昭和電工と、三井日石ポリマーに属する日本石油化学がポリオレフィン事業を統合することを発表した。

1995年7月1日に昭和電工 65%:日本石油化学 35% 出資の日本ポリオレフィンが設立され、同年10月1日に営業開始した。

大分と川崎に下記の能力を持った。
 HDPE  331千トン/年 
 LDPE  214 
 LLDPE 110       
 PP     346 (水島の日本ポリプロ 64千トンを含む)   
 計    1,001  

 水島の日本ポリプロは昭和電工と旭化成のJVであったが、1994年10月に旭化成が持分を昭電に譲渡した。1999年3月に操業を停止。

日本ポリオレフィンは1996年7月にMontell International と折半出資のJV Montell-JPOを設立して自動車向け分野でのPP及びコンパウンド等の販売を始めた。

1999年5月にMontell-JPOを改組し、Montell 50%、昭和電工・日本石油化学50%出資とし、モンテルエスディーケーサンライズと改称して、日本ポリオレフィンからPP事業の譲渡を受けた。
日本ポリオレフィンはこれによりポリエチレン専業となった。 (その後、日本ポリエチレンに参加)

@社 名  : モンテルエスディーケーサンライズ  
A資本金   63億円
B出資比率  
エスディーケイ・サンライズ投資*  : 41.67%
日本ポリオレフィン    8.33%
(日本側計)    (50%)
モンテル   33.33%
台湾ポリプロピレン   16.67%
(モンテル側計)    (50%)
C年産能力  
ポリプロピレン    大分工場 3系列計  : 243千t
    浮島ポリプロ    65千t
    合  計   308千t

  *SDKサンライズ投資は昭和電工65%、日本石油化学35%

2006年にBasellが台湾ポリプロの株式を李長栄に売却、見返りに台湾ポリプロ所有のサンアロマー株を取得した。

その後、LyondellBasell 50%、エスディケー・サンライズ投資 50%となった。

現在の能力は下記の通り。

大分工場   : 281千t
川崎工場   127千t
合  計   408千t

 

 

サンアロマーの業績は下記の通り。

 


2016/8/27  国際石油開発帝石の天然ガスパイプライン

国際石油開発帝石は8月18日、新潟県糸魚川市と富山県富山市を結ぶ天然ガス輸送パイプライン(富山ライン)を通じて、日産化学の富山工場へ天然ガスの供給を開始したと発表した。

富山ラインは、沿線の大口の需要家に対して、新潟県上越市に建設した直江津LNG 基地から送出するLNG気化ガスなどの天然ガスを供給する全長約103kmの天然ガス輸送パイプラインで、2012年4月に建設工事に着手した。

10月には、富山市、射水市、高岡市などに都市ガスを供給する日本海ガスに天然ガスの供給を開始する。

同社は、1960年代から、天然ガス輸送のためのパイプライン網の整備に取り組んでおり、一都七県に幹線パイプラインを敷設(新潟・長野・群馬・埼玉・栃木・東京・山梨・静岡)、総延長は約1,400kmに達する。

今回、これに富山ライン(103km)が加わる。

このパイプラインで送付する天然ガスのソースは2つある。

1) 南長岡ガス田は、新潟県長岡市の南西約10kmに位置する国内最大級の埋蔵量を誇る大型ガス田であり、国内最深の深度4,000〜5,000mの深部火山岩中に含まれている。

1976年、長岡市西方でグリーンタフ中にガスの存在を確認し、1981年に開発を決定した。
南長岡ガス田で生産される天然ガスは、1984年に生産開始した越路原プラントで処理した後、パイプラインネットワークを通じて送られる。


2) 2013年に新潟県上越市(直江津港)にLNG受入基地を建設し、操業を開始した。

バース、タンク(18万kl ×2基、将来1基増設可能)、気化設備、熱量調整設備ほかを持つ。

ここでは、同社がオペレーターとして開発を手がけているオーストラリアの Ichthys LNGプロジェクト及びインドネシアの Abadi LNGプロジェクト(計画段階)で開発・生産されるLNGを受け入れる。

2012/12/22 豪州イクシスLNGプロジェクトのファイナンス契約締結

Ichthys LNGプロジェクト

生産量(予定)  

LNG年間890万トン
LPG年間160万トン
コンデンセート日量約10万バレル(ピーク時)

生産開始予定

2017年第3四半期(2017年7月-9月)

2016/3/29   国際石油開発帝石、インドネシア政府方針でLNG計画を大幅変更へ

 

受け入れたLNGを気化した後、国産ガスと共に熱量調整し、製品ガスとしてパイプラインネットワークへ送り出す。



2016/8/27  ロッテグループのナンバー2、検察取り調べ前に自殺 

韓国の検察は6月10日、ロッテグループの幹部が帳簿外の裏金づくりを行った疑いがあるとして、大々的な家宅捜索を行った。

ソウル中央地検が、ソウル市内のロッテグループ本社にある辛東彬(重光昭夫)会長の執務室と自宅、グループ会社など計17カ所を家宅捜索した。グループ創業者、辛格浩(重光武雄)氏の執務室なども捜索した。

2016/6/15  韓国検察、ロッテグループを家宅捜索
 

韓国ロッテグループを捜査しているソウル中央地方検察庁は 、グループ幹部で、辛東彬(重光昭夫)会長の側近の李仁源・副会長兼政策本部長と黄珏圭・ロッテショッピング政策本部運営室長の取調べを決めた。

両氏はグループ全体を統括する司令塔役で、系列社との間で行ったとみられる秘密資金作りに関与している可能性があり、横領や背任の容疑で調べるという。

地検は8月25日に黄珏圭・ロッテショッピング政策本部運営室長を取り調べた。
黄氏は記者団に対し、辛会長が秘密資金作りを指示した事実について否定した。

地検は李仁源・副会長兼政策本部長に26日の出頭を求めたが、同日の朝、自殺しているのが発見された。

遺書では、グループ内の裏金の存在を否定するとともに、会長を「立派な人」としていた。

副会長は、経営者一族やグループ全般に関することはもちろん、系列会社の経営まで総括する役割を担っていた。

検察は 今後、創業者の辛格浩(重光武雄)氏や次男で同グループ会長の辛東彬(重光昭夫)氏 などからの聴取も考えていたが、この件で「今後の捜査を再検討する」。

付記

韓国検察は9月1日、前副会長の辛東主(重光宏之) 氏を事情聴取した。2006年から2015年まで、勤務実体がないのにロッテ建設やホテルロッテなど7〜8社の取締役を務め、400億ウォン(約36億円)の報酬を受けた横領疑惑。

ソウル中央地検は9月8日、ロッテホテルの辛格浩総括会長(94)執務室で総括会長から事情聴取した。

辛東彬(重光昭夫)会長は9月20日午前、背任や横領の疑惑に絡む事情聴取を受けるため、ソウル中央地検に出頭した。


 

ーーー

地検は創業者の辛格浩氏の脱税疑惑も調べている。

同氏が、日本のロッテホールディングスの持ち株を事実婚の関係にある女性と娘に譲渡した際、約 6千億ウォン(約550億円)の贈与税を脱税した疑惑が浮上した。

中央日報によると2005年に、米国や香港、シンガポールなどに設立したペーパーカンパニーを通じ、女性らに株式を譲渡したとみられる。

韓国検察がロッテグループの巨額の裏金疑惑を捜査する過程で新たに脱税疑惑が浮上したもので、検察は女性らを任意で呼び、事実関係を調べる見通し。

ーーー

韓国公正取引委員会はロッテグループの創業者の辛格浩氏に対し、日本の関連企業の株式持ち分を虚偽申告した可能性があるとして、公正取引法違反で検察に告発する方針を固めた。

公取委は、韓国ロッテグループの系列企業11社に対して追徴金5億7千万ウォン(約5千万円)を課す方針も固めたという。

ロッテ側は、日本の系列企業の状況を十分把握できなかったためで故意ではない、と釈明している。

ーーー

既報のとおり、ソウル中央地検は7月7日、辛格浩(重光武雄)氏の長女・辛英子容疑者を背任収財や横領の疑いで逮捕した。

韓国の化粧品会社などからロッテ免税店への出店を認めるよう頼まれ、リベートとして計30億ウォン(約2億6400万円)を受け取ったほか、辛容疑者が実質的に運営する企業から40億ウォン(約3億5200万円)を横領した疑い。


2016/8/29 米国の利上げ観測強まる

8月26日にJanet Yellen FRB議長がJackson Hole Economic Policy Symposium での講演で、「米雇用が改善し、追加利上げの条件は整ってきた」と述べたことで米国の利上げ観測が強まった。

年内のあと3回(9/20-21、11/1-2、12/13-14)の連邦公開市場委員会で決まると予想される。先ず9月2日発表の雇用統計が注目される。

付記 

9月21日は利上げを見送ったが、年内の追加利上げに意欲を示した。

「利上げの条件は整ってきた」、「近い将来の経済見通しに関するリスクはおおむね均衡している」としたが、雇用市場を中心に「以前考えていたよりも、経済にはもう少し改善の余地がある」と指摘。雇用最大化と2%の物価目標という使命の達成に向けて「さらなる証拠を待つことを選択した」

「現在の経済が過熱しているとはみていない」とも言及し、利上げ派の「完全雇用なのだから利上げを急ぐ必要がある」という主張を退けた。

 

米国の金融政策は、年に8回開催される 連邦公開市場委員会(FOBC:Federal Open Market Committee)で決定される。

メンバーは連邦準備制度理事会(FRB) の議長ら理事7名と、ニューヨーク連銀総裁、及び残り11の連銀総裁から輪番で4総裁の合計12名で構成される。

FOMCは米国の景気が冷え込んでいる時には金利を引き下げて需要を喚起し、逆に景気が過熱気味になってくると金利を引き上げて景気が過熱することを防ぐ。

金融危機に対応するため、2008年11月〜2010年6月に量的緩和策 QE1(Quantiative Easing Program-1 )を実施し、1兆7250億ドルが供給された。

米国の景気回復ペースの鈍化を受けて、2010年11月〜2011年6月に実施されたQE2では6000億ドルが供給された。

更に、労働市場を刺激して景気を回復させるため、2012年9月にQE3 を開始し、以降、毎月850億ドルの債券買い入れを行ってきた。

2013年6月に当時のバーナンキFRB議長が、経済指標次第だが「年内に証券購入ペースを緩めるのが適切」と述べた。

2014年1月には、債券買い入れ規模を減らし、量的緩和(QE3)の縮小を継続する方針を決めた。

2014/2/4 米国の量的緩和縮小とその影響 

その後、毎月の債券買い入れを月850億ドルから順次減少させ、2014年11月には買い入れをゼロとした。

そして、2015年12月16日に、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識 に立ち、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を 0%〜0.25% から0.25%〜0.50% に引き上げ、2016年中に4回の利上げを予想した。

2015/12/17  米国、利上げ

今後の利上げの条件としては、「雇用情勢」と「物価」を挙げた。

このうち、「雇用」については、「失業率が5%まで下がり、完全雇用に近づいている」 とし、条件を満たしているとみなした。

しかし、「物価」は目標の2%に届いておらず、「原油の一段安で物価の下押し圧力が想定よりも長く続く」と懸念 し、「物価を注視して緩和的な環境を保つのが妥当で、追加利上げは段階的に」とした。

 

当初、2016年に4回の利上げを想定したが、5回開催された連邦公開市場委員会ではいずれも見送られた。

2016/1/27 見送り

 ・ 世界的な株安や原油安に懸念
 ・ 米経済も「昨年終盤に減速した」

2016/3/16 見送り

 ・ 海外経済と金融市場には引き続きリスクあり。
 

2016/4/27 見送り

 ・ 海外経済や金融市場のリスクは後退したが、「米経済は減速した」
 ・ 個人消費の鈍化などを懸念

2016/6/15 見送り

 ・ 「経済活動は上向いたが、雇用改善は減速した」
       「個人消費は「成長が強まった」
    5月の雇用統計が5年8カ月ぶりの低水準

2016/7/27 見送り

 ・ Brexit による市場混乱は一服、「短期的なリスクは弱まってきた」
 

2016/8/26 イエレン議長のJackson Hole Economic Policy Symposium 講演

「米雇用が改善し、追加利上げの条件は整ってきた」

物価は本年に入り下落、但し 食品・エネルギー除くと2%を上回る)



 

 

 


 
2016/8/30 Mylanの医薬品 EpiPenの値上げに対する批判

米国で製薬会社 Mylanに対する非難が集中している。

命の危険がある急性アレルギー反応「アナフィラキシー」を緩和するために用いられる注射薬「EpiPen」の価格をかつての5倍にまで引き上げ、不当に利益を得ているというもの。

EpiPen は、アレルギー疾患のうち、食物・薬物・ハチ等などにより即時型・多臓器アレルギー反応(アナフィラキシー症状)を起こす可能性の高い患者に対して事前に処方され、それを携帯し、緊急補助治療の目的に使用される医薬品である。

成分はepinephrineで、これはadrenalineの米国での名前。

症状出現後30分以内(遅くとも60分以内)に注射すれば、死亡者を減少させる効果が期待できる。

アナフィラキシーが起こる恐れのある何百万人もの患者に処方されている注射薬で、流通はMylanがほぼ独占している。

米国ではSanofi が競合品のAuvi-Q を販売していたが、2015年11月に、誤った投与量が注入される可能性があるとして自主回収した。

イスラエルのTeva Pharmaceutical はEpiPenのジェネリックをFDAに申請していたが、本年2月29日、FDAに大きな問題点を指摘され、却下された。
同社では上市は著しく遅れるとしており、2017年以前の上市は期待できないとみられている。

米上院の2人の有力議員が8月22日の上院司法委員会で、EpiPenの価格(2本入り)を過去6年間に100ドルから500ドル以上につり上げたとして同社を激しく糾弾した。

報道によると、実際には100ドルから600ドルに上がっており、その間、 同社のCEOの年俸は245万ドルから1893万ドルに上がったという。

日本ではファイザーが2012年8月にMylanから独占的販売権を取得するライセンス契約を締結した。
日本では2011年9月から保険が適用されている。
薬価は、大人用(0.3mg)が10,894円、子供用(0.15mg) が7,979円。

価格急騰で家族や学校、緊急救援隊員によるEpiPenへの使用を困難にしていると指摘し、価格引き下げを求めた。

EpiPenは1年ごとに買い替える必要があり、両議員によると、価格上昇により多くの患者が購入を続けられなくなっている。また、学校への常備や、患者が加入する健康保険プログラムへの出資額の増加により、政府も巨額の負担を強いられているという。

議員はまた、米連邦取引委員会に対し反トラスト法違反容疑での調査を要求した。

既に市場に長く流通していた同薬を2007年に買収したMylanは研究開発費を回収する必要もないとして、「EpiPenの継続的な価格引き上げには、何ら正当性がないとみられる」と指摘した。

これに対しMylanは、EpiPenには保険が適用されるため、大半の患者の負担は皆無か少額にすぎない上、同社は2012年から6万5000校以上にEpiPenを無料配布してきたと反論し た。

民主党大統領候補のHillary Clinton が8月24日に「製薬会社が正当な理由なく薬を値上げし、患者よりも自社の利益を優先することは間違っている」とし、Mylanの事例は「非常識」と非難、自主的値下げを要請した結果、Mylanは25日、患者の自己負担額を軽減する方針を発表した。

実際の定価引き下げは見送ったものの、患者が割引きカードを活用することで、2本入りの購入で最大300ドルのコストを軽減できる措置を導入した。これまで定価で購入してきた患者にとっては、自己負担額が実質半減することになる。
さらに、患者支援プログラムの使用要件を拡大し、保険未加入の患者や家族の自己負担額を軽減する方針を示した。

MylanのCEOは、同社がこれまでにEpiPenの改善に向け数十億ドルを投じてきたとしたうえで、薬剤給付管理会社や保険会社などが関与するため、同社が実際に回収できるのは定価の半分を下回る水準に過ぎないと主張している。

Clinton陣営は、Mylanの措置を歓迎するとしつつも、「定価を引き下げることなく割り引きを提供しても、高額の薬価を反映し保険料が上昇するため、今回の措置では不十分」との見解を示した。

カナダの製薬大手 Valeant Pharmaceuticals が2種類の心疾患治療薬を大幅に値上げしたことをめぐり、米議会下院の監視・政府改革委員会の民主党委員らが問題視した。

ValeantはMarathon Pharmaceuticals から2種類の心疾患治療薬(特許切れだがジェネリック品無し)を買収したが、即日、大幅値上げした。

医薬品 Marathon価格 Valeant価格 値上げ率
Isuprel 215.46$ 1,346.62$ 525%
Nitropress 257.80$ 805.61$ 212%

議員は、Valeantが2つの薬剤の権利を取得した当日にそれぞれ525%、212%値上げした根拠になる文書の提出を要請していたが、同社は機密性が高いとして情報の提出を拒んだ。

Valeant はこれまで、成長の大部分を買収や、買収で手に入れた割安な医薬品の値上げに依存していた。
同社
は米国での医薬品値上げで監督当局や政治家から監視の対象となり、数カ月にわたって混乱に見舞われている。

2016年3月15日の米国の株式市場で、Valeantの株価が51%下落した。
業績見通しを下方修正したことや、2015年第4四半期決算が予想を下回ったこと、4月の期限までに年次報告書を提出しなかった場合はデフォルトに陥る恐れがあると明らかにしたことなどが理由。

Valeant は再建対策の一つとしてコアでない資産の売却も検討しており、問い合わせもあるという。

Wall Street Journalによると、武田薬品と投資会社TPGから共同での買収提案があった。金額の提示はなかったとされ、Veleantはこれを拒否、その後の話し合いはないという。

Valeantは4月25日にライバルのアイルランドの製薬大手 Perrigo Co. のCEOのJoseph Papaを会長・CEOとして迎えることを決めた。

4月29日に2015年の年次報告書を提出し、デフォルトをひとまず免れた。
これによると、株主帰属純損益は、2014年の+881百万ドルに対し、2015年は-292百万ドルとなっている。

その後、資産家のWarren Buffett が5月初めに、Valeant のビジネスモデルには非常に大きな欠陥があると述べたこともあり、株価は2015年8月の高値から85%余り下落した。

2016/5/30   武田薬品、カナダのValeant Pharmaceuticalsに買収を提案、拒否される

Valeantは2016年5月、2剤について、病院に対し最低10%、数量に応じ20%、30%、40%のリベートを支払うと発表した。


2016/8/31  Pfizer、AstraZeneca から抗感染症薬買収

Pfizerは8月24日、AstraZeneca から複数の抗感染症薬の権利を最大15億7500万ドルで取得すると発表した。対象には既存の抗生物質の耐性菌に効果がある新薬などを含む。世界的に需要が拡大する感染症薬で品ぞろえを強化、収益拡大につなげる。

AstraZeneca としては、呼吸器・自己免疫疾患、循環器・代謝疾患、オンコロジーの3つの重点領域に注力する戦略の一環。

Pfizerは一時金として先ず手続き完了後(本年第4四半期を予定)に 550百万ドルを支払い、2019年1月に175百万ドルを支払う。
加えて、
新薬候補の開発目標達成などに応じて250百万ドル、販売高に応じて600百万ドル、合計最高で850百万ドルを支払う。(以上で最高 1,575百万ドル)

また、特定市場での製品Zavicefta と ATM-AVI の売上高に対しロイヤリティを支払う。

取得するのは、EUで承認を受けた新薬Zavicefta を含む抗菌薬3種類と開発中の新薬候補2種で、主に米国外での販売権。

北米では、Allergan Pharmaceuticalが4製品について権利を持つ。
Zinforoでは日本で武田薬品が、Merrem/Meronemでは大日本住友製薬が日本とアジア諸国での権利を持つ。

Zavicefta は既存の抗生物質が効かない耐性菌に使えるため、今後の需要拡大が見込まれる。

製品名   他社権利
Zinforo(ceftaroline fosamil) Forest Laboratories から導入
2012年8月に上市
北米:Allergan Pharmaceutical
日本:武田薬品
Zavicefta (CAZ-AVI) 第三世代セフェム系抗生剤のセフタジジムとセリンベータラクタマーゼ阻害剤avibactamの合剤

2016/6/28にEUの承認取得

北米:Allergan
Merrem/Meronem(meropenem) メロペネム水和物 日本・中国・台湾・韓国:大日本住友製薬
大日本住友製薬は、マレーシア・フィリピン・インドネシア・香港についてのオプションを持つ。
ATM-AVI 現在、Phase II 段階 北米:Allergan
CXL 開発中 北米:Allergan

Pfizerは8月22日、バイオファーマのMedivation, Inc. を買収する契約を締結したと発表した。
5月16日には、米バイオ医薬の
Anacor Pharmaceuticals, Inc.を52億ドルで買収すると発表している。

短期的な収益拡大につながる主力薬の買収に積極姿勢を強めている。

2016/8/24 Pfizer、Medivation を買収


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