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2010/10/1 ロシア、北極圏開発で姿勢転換、協調姿勢に 

豊富な資源が眠る北極圏で、強硬に自国の領有権を主張してきたロシアが最近、関係国との協調姿勢に転じている。

 

ロシアとノルウェーは9月15日、北極圏のバレンツ海と北極海で40年にわたり争ってきた大陸棚の境界を画定し、同地域での天然ガスや石油など資源探査・採掘、漁場資源開発でも協力する条約に署名した。(4月27日に基本合意)

約17万5000平方キロの係争海域を2等分する。

ロシアは2016年をめどにバレンツ海でShtokmanガス田の生産開始を計画しているが、現時点で氷の下に埋蔵されている資源の採掘技術を持たないため、北極圏の資源開発の経験があるノルウェーの資源大手Statoil などの技術が欠かせないといわれる。

メドベージェフ大統領は会見で、ノルウェーとの共同資源開発に期待を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシアは2004年10月、ソ連時代から係争してきた中国との東部国境画定にあたり、国境の川の島をほぼ2等分することで最終解決しており、今回も同様の手法を採用した。

アルグン川のボリショイ島(中国名:阿巴該図島)は中露両国に分割。
アムール川とウスリー川の合流点のタラバーロフ島(中国名:銀龍島)の全域と大ウスリー島(中国名:黒瞎子島)の西半分は中国に、大ウスリー島の東部はロシアに帰属。

なお、1969年3月2日、極東のウスリー川の中州・ダマンスキー島(珍宝島)で、ソ連側の警備兵と中国人民解放軍兵士による衝突が起こった。これについては1991年中ソ国境協定が結ばれ、双方が管理下にあると主張してきたダマンスキー島は中国に帰属することが合意されている。

ーーー

ロシアのプーチン首相は9月23日、モスクワで開いた北極圏に関する国際会議で演説し、関係各国と平和的にエネルギー開発を進める考えを示した。

首相は以下のように述べた。
・北極圏での資源を巡る争奪戦の懸念があるとの予測があるが、全く根拠がない。
・領有権問題は話し合いや国際法に基づき解決できる。
・各国の主張が異なる権益は、最終的に国連が管理するだろう。
・外資の導入を歓迎する。

ロシアは2007年に潜水艇で北極点の海底を探査し、国旗を打ち立てるなど、同地域での権益拡大に乗り出していた。

1994年に発効した国連海洋法条約は、自国沿岸から2002カイリまでを排他的経済水域(EEZ)として資源開発ができると規定している。
それを超える海底では自国領の大陸棚から地形・地質的につながることを証明し、国連の「大陸棚限界に関する委員会」の認定を受ければ開発が可能となる。

ロシアは北極海の海底山脈
Lomonosov Ridge(下の地図の茶色の太線:ロシア領としては北極@からBまで)など120万平方キロ(斜線部分)を自国につながる大陸棚として申請している。

北極圏にはこれまで、地球上の未発見資源の4分の1が埋蔵されているとされてきたが、厳しい気候と厚い氷が開発の障害になってきたため、大きな領有権問題になっていなかった。
ところが地球温暖化により夏季の氷が減ったことで開発熱が高まった。

参考 2010/9/1  北極海横断航路で初輸送

     地図はBBC News (August 2, 2007)

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但し、北方領土問題については別のようだ。

中国訪問中のロシアのメドベージェフ大統領は9月27日、胡錦濤国家主席と北京で会談、第二次世界大戦終結65周年を記念する共同声明を作成、9月28日発表した。

声明は「日本の中国侵入」に言及しつつ「歴史の歪曲を断固非難する」との文言を盛り込んだ。

中ロは第二次大戦の歴史を改竄し、ナチスや軍国主義分子およびその共犯者を美化し、解放者の顔に泥を塗る企みを断固非難する。国連憲章およびその他の国際文書によってすでに第二次世界大戦への定論が打ち出されており、その改竄は許されない。

メドベージェフ大統領は9月26日、旅順港を訪れ、日露戦争や第二次大戦で旧日本軍と戦った兵士の墓地に献花した。中露の元兵士らと面会して「歴史をねじ曲げようとする勢力がいるため、真実を主張しなければならない」と訴えた。

メドベージェフ大統領は9月29日、北方領土を含むクリル(千島)列島について、「わが国の重要な地域だ」と述べ、北方領土を必ず訪問すると明言した。
大統領は29日にサハリン本島から国後、択捉両島を訪れる計画であった。
日本側は「両国関係を著しく損なう」として外交ルートなどを通じてロシア側に警告していた。

付記 

メドベージェフ大統領は11月1日朝、北方領土の国後島を訪問した。ソ連時代を含めロシア国家元首の北方領土訪問は初めて。


2010/10/1 日本、イラン・アザデガン油田から撤退へ

経済産業省と国際石油開発帝石はイランのアザデガン油田開発から撤退する方針を固めた。
(経済産業大臣は国際石油開発帝石の株式の29.4%を所有する最大株主)

イランへの制裁を強めている米政府がイラン制裁法の制裁対象企業リストにAzadegan 油田開発を手がける国際石油帝石を入れる可能性を伝えたという。

制裁対象企業リストに掲載された企業は、米国金融機関との取引が禁じられ、資金調達や決済で大きな支障が生じる。

付記

米国務省は9月30日、欧州系石油大手4社が米国の制裁回避のため、対イラン投資を停止することで合意したと発表した。
ShellTotal(仏)、Statoil(ノルウェー)、ENI(イタリア)の4社。

4社はエネルギー分野での新規投資を全て取り止める。

付記

国際石油開発帝石は10月15日、アザデガン油田開発プロジェクトから撤退することについて、イラン国営石油会社との間で合意したと発表した。

権益10%を無償で返還する。イラン側から賠償金の要求はないという。

同社が開発に投じた資金は125億円で、これまでに61億円を損失として引き当て済み。

ーーー

アザデガン油田はイラン南西部の原油埋蔵量260億バレルといわれる世界有数の巨大油田。
2008年に部分的な生産が始まり、現在の生産量は日量45千バレル。今後、日量26万バレルの生産を計画している。

 

国際石油開発帝石(当時は国際石油開発)はAzadegan 油田の75%の開発権を有していた。

2006年、同社はイラン政府との間で、日本側の開発権の保有割合(出資比率)を大幅に引き下げることで合意、75%の開発権のうち65%分をイランの国営石油会社に譲渡し、日本の開発権は10%とした。

同油田はイランの核開発問題で着工が遅れていたが、米国に配慮する一方、懸念されていた全面撤退は避け、同油田からの原油輸入に道を残した。

2006/10/9 アザデガン油田の開発権引き下げでイランと合意 

ーーー

米国会計検査院(GAO)は本年5月12日、上院の求めに応じて、イランのエネルギーセクター(石油、ガス、石油化学)で活動するとともに、米国政府とも契約を結んでいる海外41社の社名を発表した。

アザデガン油田に10%の権益を有する国際石油開発帝石がこれに含まれている。
(日本企業では他に、
アラク・シャザンド製油所拡張に関与している日揮が含まれている。)

LyondellBasell は、米国政府が近くイランとの取引禁止に従わない企業に対してペナルティを課すことを考慮し、イランでの活動を停止することを決めたことを明らかにした。

2010/8/27  LyondellBasell、イラン撤退を決定

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日本政府はイランの核問題に関する安全保障理事会決議1929号の履行に関し、93日、追加制裁を閣議了解した。
8月3日に既に閣議了解を行っているが、これに追加した。

エネルギー分野では以下を決めた。
 ・石油・ガス分野の新規投資に対しては、(3)の措置の実施で停止する。
 ・産業界に対して、決議第1929号の趣旨を周知し,イランとの取引について注意喚起
 ・石油・ガス分野事業者に対し、新規プロジェクトについて厳に慎重な対応を求める

イランとの取引の大半を占める原油については、エネルギー政策や経済への影響が大きいため、輸入規制を盛り込んでいない。

直嶋経済産業相は、Azadegan 油田権益に変化はないとの見通しを示していた。

2010/9/5 政府、対イラン追加制裁を閣議了解


2010/10/2 ICISLG ChemCompany of the Yearに選定 

化学産業専門の市場調査機関ICISは9月27日、Top 100 Chemical Companieを発表、韓国のLG Chemを業界で最も革新的な企業Company of the Yearに選定した。

世界的な経済危機の中で、2009年に売上高を前期比8.3%、EBIT(税引前利息込み利益)を同45%、純利益を50.5%(いずれも現地通貨ベース)伸ばした経営成果を選定理由として挙げた。

http://www.icis.com/Articles/2010/09/27/9396161/The-ICIS-Top-100-Chemical-Companies-LG-Chem-is-the-ICIS-Company-of-the.html

トップ10は以下の通り。
@
LG Chem
AAir Liquide (France)
BChevron Phillips Chemical (US)
CLubrizol (US)
DFMC (US)
Eクラレ(Japan)
FKemira (Finland)
GPraxair (US)Industrial gases
HSIBUR (Russia)
IValspar (US)Paint and Coatings

他に好調な企業は、Givaudan (Switzerland)RPM (US)Syngenta (Switzerland)、ダイセル化学、Orica (Australia) など。

化学会社の上位10 は売上高では全体の36%を占めるが、2009年の売上高は2008年の売上高から大きく減少している。
 
Shell Chemicals 43.9%減
 
LyondellBasell Industries  39.2%減
 
INEOS  36.8%減
 
ExxonMobil Chemical  29.4%減
 
BASF  17.3%減
 
Dow Chemical 32.9%減
 
SABIC  31.6%減

ーーー

なお、前年のCompany of the Yearには Lanxessが選ばれた。

2008年の第4四半期に需要が激減したのにもかかわらず、ほぼ前年並みの売上高65.8億ユーロに対し、純利益が53%増の171百万ユーロを計上したのが理由。更に、経営陣と従業員が景気下降時に迅速に、効果的に反応し、計画を1年先取りして成長目標を達成した。I


2010/10/4 住友商事、ウジミナスの鉄鉱山子会社に出資

住友商事は9月28日、ブラジル鉄鋼大手Usinas Siderurgicas de Minas Gerais S.A.(Usiminas)が設立する鉄鉱山会社 Mineração Usiminas S.A.(MUSA)の第三者割当増資を引き受け、30%出資することにつき、最終合意した。
本年7月1日に基本合意していた。

住友商事は鉄鉱石を日本を中心としたアジア地域に輸出する考え。
日本向けは2014から15年の鉱山拡張後に、本格的な輸出を始める。国内製鉄大手と長期契約を結び、安定的な供給を目指す。

合意事項は以下の通り。

1)新設のMUSAUsiminasから次の鉄鉱山事業関連資産の移管を受ける。
 @ミナスジェライス州
Serra Azul地域の鉄鉱山資産

ミナスジェライス州の「鉄四角地帯」と呼ばれる鉄鉱石が豊富に賦存している地域の北西に位置するSerra Azul地域。

想定可採量:約24億トン、今後、30〜40年間にわたり、生産が可能。
年間生産量:現在年産700万トンベースで生産中
        将来的には年産3000万トンの鉄鉱石一貫プロジェクトを目指す。

 AUsiminas保有の民間鉄道会社 MRS Logística の株式の83.3%

Belo Honzorte市からリオデジャネイロ州イタグアイ地区の鉄鉱石輸出港湾地域および
サンパウロ州の
Usiminas社クバトン製鉄所まで延伸している民間鉄道会社の路線

 Bリオデジャネイロ州イタグアイ地区の輸出港湾プロジェクト用地地

2)住友商事は、MUSAの第三者割当増資を引き受け、同社株式の30%を取得する。
    増資引受額は最大1,929百万米ドル、
    うちクロージング時点での支払額は1,350万米ドルの予定。


Usiminasは、日本の技術援助を受けて誕生した。

日本ウジミナスが筆頭株主で21.69%を出資する。
日本ウジミナスには当初、新日鉄が14.4%、国際協力銀行など他の株主が85.6%出資していたが、2006年12月に新日鉄が出資比率を50.9%に引き上げ、連結子会社化した。

なお、Usiminas79.3%、新日鉄が20.7%出資で自動車用鋼板製造のウニガル(ブラジル)を設立している。

付記

ウジミナスは2011年11月28日、鉄鉱山子会社のMineracao Usiminas(MUSA)を通じ同国南東部に鉄鉱石鉱山の権益を持つOuro Negro社を3億6700万ドル(約286億円)で買収すると発表した。埋蔵量は最大で5億5000万トンを見込み、MUSAの埋蔵量は約20%増加する。
買収したOuro Negroの鉄鉱山の鉱脈は、MUSAが持つ鉄鉱山の一つと隣接。一体開発による効率的な運営が可能になる。これまでの調査で判明した埋蔵量は2億トンだが「今後3億5000万トン程度の上積みが期待できる」(ウジミナス)としている。
MUSAは今年、700万トンの鉄鉱石生産を見込む。処理設備の増強などを進めて2013年に年産1200万トンに引き上げる計画を進めている。

ーーー

日本企業の海外の鉄鉱石権益は以下の通り。

鉱山 JV 出資 JV相手
ブラジル ミナスジェライス州
Serra Azul 地区
Mineracao Usiminas
(MUSA)
住友商事 30% Usiminas 70%
ミナス・ジェライス州
(鉄四角地帯)

2009年の予定販売数量は
1800万トン、
拡張を経て2013年の販売数量を
3,800万トンまで拡大する予定。
Nacional Minerios S.A.
(Namisa)

CSNの100%子会社の
鉄鉱石生産・販売会社の
40%を買収
日本側の日伯鉄鉱石と
韓国POSCOのコンソーシアム

付記
2011/6 株主異動

日伯鉄鉱石と
POSCOの共同体 
40%
伊藤忠 40.00
56.12
JFEスチール 16.20
21.60
新日本製鉄 16.20
0
住友金属工業 6.57
→1.25
神戸製鋼所 3.08
日新製鋼 1.75
韓国POSCO 16.20
合計 100.00
Companhia Siderurgica
Nacional(CSN)
 60%
ミナス・ジェライス州
 ファブリカ・ノバ鉱山
鉄四角地帯)

鉱量は約4.5億トン
(1.5億トン以上の
高品位ヘマタイトが賦存)

最終的に年産1,500万トン

Minas da Serra Geral S/A
(M.S.G)
JFEスチール 50%
(当初 川崎製鉄)
CVRD (Vale) 50%
豪州 西豪州 Pilbara
  Robe River 鉱山
  
West Angelas鉱山
Robe River 三井物産   33%
新日鉄     10.5%
住友金属工業 3.5%
Rio Tinto 53%
西豪州 Pilbara
  Mt Newman
  Yandi
  Goldsworthy

  Jimblebar (付記参照)

BHPB J/V 伊藤忠   8%
三井物産 7%
BHP Billiton 85%
西豪州中西部
  
Jack Hills 鉱山
Crosslands Resources 三菱デベロップメント
(三菱商事)
50%
Murchison Metals Ltd
 50%
付記 2011/11 三菱100%
     2013/6   開発延期決定
西豪州 Pilbara
  Beasley River 鉱山
Beasley River JV Beasley River
 Iron Associates 47%
新日鉄  60%
三井物産  20%
住友金属工業  20%
Hamersley Iron 53%
(Rio Tinto group)

付記 2013/6/13 BHP Billiton 発表

西豪州 PilbaraのJimblebar鉱山に伊藤忠 が8%、三井物産 が7%出資


2010/10/5 レアアース、米・豪・カザフなど生産拡大 

9月29日の日本経済新聞は掲記の記事を掲載している。
中国がレアアースの輸出管理を強化しているのを受け、他の埋蔵国が相次いで生産拡大に乗り出しているというもの。

2010/8/16 中国、レアアース市場での支配力拡大へ
2010/9/8 
「レアアースため込む日本、中国に輸出制限緩和を要求」

状況を調べた。

1)米国

米国は世界有数のマウンテン・パス鉱山(カリフォルニア州)で採掘・生産を本格的に再開する。同鉱山を傘下に持つモリコープ社のスミスCEOが「採掘は来年から再開し、2012年末までに年2万トンを生産する」と述べた。

Mountain Pass レアアース鉱山(西半球唯一のレアアース鉱山)はオープンピット鉱山で、以前は世界最大のレアアース供給者であった。
同鉱山は14億年前の先カンブリア時代のカーボタナイトにあり、8〜12%のレアアース酸化物(CeriumLanthanumNeodymiumEuropiumなど)を含む。

Mountain Pass1949年にウラニウム探掘者が発見した。
Molybdenum Corporation of America 1974年にMolycorp Inc.と改称)が権利を買収、1952年に小規模の生産を開始した。
1962年にカラーテレビスクリーンに使うユウロピウムの需要拡大に対応し、生産を拡大した。
1965年から1995年まで、大規模生産を続け、世界のレアアースの需要の大部分を賄った。

1977年にUnocal が同社を買収、2005年にChevron子会社となった。

1998年に排水問題で分離工程を停止、2002年に環境規制と中国品の低価格攻勢により採鉱を停止した。
その後は過去に採掘した鉱石の精製を行っている。

2008年にこの鉱山の再開のためMolycorp Minerals LLCが設立され、Chevronから鉱山を買収した。2011年から生産を再開する。

2)豪州

豪鉱山企業ライナス社は2011年後半から西オーストラリア州で初めてレアアースを生産する。
年1万1000トン生産する計画だったが、このほど2億豪ドル(約160億円)を投じ、2012年末からは生産量を2万2000トンに倍増する方針を決めた。

Lynasは、1983年にYilgangi Gold NLとして設立され、1985年にLynas Gold NLに改称し、西オーストラリア州Pilbara地域で金探鉱を行っていたが、2001年6月、金プロジェクトを売却し、社名をLynas Corporation に変更、2002年5月にMt.Weld 鉱床の権益100%を取得し、同鉱床の探鉱開発に集中していった。

Mt.Weld 鉱の鉱物資源量は、770万t、酸化レアアース品位12%となっている。
(精測鉱物資源量120万t :品位15.7%、概測鉱物資源量500万t :品位11.8%、予測鉱物資源量150万t :品位9.9%)

同社はMt.Weld プロジェクトのコスト削減のため、中国山東省にレアアース分離プラントの建設を計画した。

しかし、2006年に入って、レアアース産業に対する生産抑制、輸出制限、増価税リベート見直し、環境規制など中国政府による締め付けが強くなったことから、同社は中国でのレアアース分離プラント建設を断念し、マレーシア東海岸PahangKuantan Gebeng Industrial Area にプラントを建設することとした。

計画では酸化レアアースの生産量を当初年間5千トン、将来21千トンとしている。

Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する。

なお、同社は2009年に中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めた。

しかし、豪州のForeign Investment Review Board同年9、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。

ーーー

なお、豪州のNorthern TerritoryのNolans Bore レアアース・リン・ウラン鉱床の権益100%を保有するArafura Resources は、20094中国の資源開発グループである有色金属華東地質探査局( East China Exploration & Development Bureau )から25%(24百万ドル)の出資を受け入れる正式契約に調印した。

現在、East China ExplorationECE Nolanes INV 22.17%で第二位株主となっている。

2009/5/16 中国、レアアースでも豪州に進出

同鉱床は1995年に発見され、1999年にNorsk Hydroが露頭サンプリング・分析を実施している。2000年にArafra 社が権益を取得、資源量確認ボーリングを実施中。

Arafura Resources Nolans Bore 鉱山とWhyalla Rare Earths Complex を所有している。

 

Lynasの副社長は昨年、中国の資源寡占化に言及し、「日本の需要家は決断する時だ」と訴えていたが、日本側は「中国以外の供給先は重要」との認識で一致しているが、「出資する余裕はない」というのが本音であったとされる。

3)カザフスタン

日本企業も調達先の多様化を急ぐ。中央アジアのカザフスタンでは住友商事が6月に国営原子力会社と合弁企業を設立し、ウラン採掘後の残存物からレアアースを回収する新事業に参入。2012年にフル稼働し年3000トンを生産する。
東芝も同様の事業をカザフで計画しており、年内にも合弁会社を設立する。

(住友商事)
2006年初にカザフスタン国営原子力公社Kazatompromが65%、住友商事が25%、関西電力が10%出資し、合弁企業
APPAK LLPが設立された。

2008年6月3日、南カザフスタン州スザク地区にあるウェストムィンクドゥック鉱床の原位置抽出法によるウラン鉱山が開所した。

APPAK LLPはウラン精鉱の引渡しを2008年に開始し、2010年までに毎年1,000メトリックトンウランのフル生産を開始することを計画、見込まれている鉱山寿命は22年、総生産量は18,000メトリックトンウランを計画している。

20098月、住友商事は、Kazatompromとウラン鉱石残渣からレアアースを回収する事業に合意した。
両社が協力してカザフスタン国内に存在する残渣からの 回収事業を独占的に行い、新たなレアアース資源ソースの確立に乗り出す。

2010年3月、両社は公社51%、住友商事49%出資で合弁会社 Summit Atom Rare Earth Company を設立した。
具体的には、Kazatomprom傘下のウルバ冶金工場の既存設備を活用して、ウラン鉱石残渣からのレアアース混合物の回収事業を立ち上げる。

2010年には年間3千トンのレアアース分離品の生産体制を確立し、将来的には現地でレアアースを使用した高付加価値品の一貫生産を行うことを目指す。

(東芝)
東芝は2007年8月、原子力事業強化の一環として、カザフスタンのKazatomprom社が南カザフスタンで推進しているウラン鉱山開発プロジェクト(ハラサン鉱山プロジェクト)に参画することを決定した。

丸紅、東京電力、中部電力、東北電力が権益の一部を有する持株会社を保有し、同鉱区で生産されるウラン精鉱のうち、合計で2,000トン(MTU)/年のウラン引き取り 権を取得しているが、東芝は同持株会社の株式の22.5%を取得するとともに、最大600トン(MTU)/年の引き取り権を取得した。

東芝は本年6月、Kazatompromとレアメタル分野に関する合弁会社を設立することで合意した。

Kazatomprom51%、東芝49%の出資で合弁会社を設立し、以下の事業を行う。

 ・ニオブ、ベリリウム応用製品、タンタル材の販売
 ・ニオブ、タンタル、ベリリウムを応用した新製品に関する製品開発
 ・ウラン鉱山から副産物であるレニウム、ネオジウム、ディスプロシウム等の回収・販売事業の検討
 ・カザフスタン国内における新規供給源探索の検討

4)インド、ベトナム

豊田通商は2008年12月、レアアースの専門商社である和光物産の全株式を取得し、豊通レアアースに改称した。
また、金属資源部を新たに設置し、レアアースを含む希少金属の安定供給に本格的に取り組む。

和光物産の持つインド産レアアースの商権及び販売チャンネルを譲り受け、非自動車分野への販売を含めた取引先への安定した供給体制を整える。2010年後半より年間4千トンを輸入する。

また、ベ トナムにおいても、採掘権を持つベトナム国営鉱物公社とレアアース鉱山開発に関するJVを設立し(日本側49%)、2011年より年間5千トンを生産する。

 


2010/10/6 住友商事、マレーシアでアルミニウム製錬事業へ参画

住友商事は9月28日、マレーシアのアルミ押出品最大手であるPress Metal Berhadが株式の80%を保有する子会社Press Metal Sarawak Sdn. Bhd.を通じ、マレーシア サラワク州Mukahにおいて推進中のアルミニウム地金製錬事業の第一期プロジェクト(2010年末フル稼働予定、年産12万トン、総事業費 約3億米ドル)に参画すると発表した。

Press Metalは、マレーシア最大のアルミ押出品メーカーで、かねてよりその上流のアルミニウム製錬事業も推進してきた。同社のアルミ再溶解能力は20万トン、押出能力は16万トン。

Press Metal Sarawak Sdn. Bhd.Press Metal が80%、投資会社が20%を所有するJVで、サラワクのMukahに精錬工場を建設中。
第一期は
2010年末フル稼働予定で年産12万トン、総事業費 約3億米ドル、第二期は2012年末 フル稼働予定で年産24万トン、総事業費 約6億米ドルとなっている。

住友商事は、投資会社からPress Metal Sarawakの20%を取得し、合わせて、5%の追加買い取り権と計画中の第二期プロジェクトへの出資参画権を取得した。

同地域はサラワク再生可能エネルギー回廊(Sarawak Corridor of Renewable EnergySCORE)にあり、同じくSCOREに属するBintuluではもう一つのアルミ精錬計画がある。

社名:Sarawak Aluminium
株主:Rio Tinto Alcan/Cahya Mata Sarawak Bhd.
計画:当初 72万トン(2013年予定)、最終 150万トン

ーーー

現在、住友商事はオーストラリアなどでアルミニウム製錬権益を保有し、日本およびアジア地域で広くアルミニウム地金取引を展開している。

1)オーストラリアBoyne Smelters Ltd.

出資比率:%

        1982年稼動
第1、2系列
 
 27.3万トン
1997年稼動
第3系列
 23.6万トン
Comalco   59.5  59.25
住友軽金属   17.0   1.00
住友商事    ー   8.00
丸紅    ー      8.00
三菱マテリアル    ー   4.75
三菱商事    9.5   9.50
YKK    9.5   9.50
住友化学    4.5    ー
合  計  100.0 100.00

2)アマゾンアルミ計画

アルミ事業       アルミナ事業
JV Albras
(Aluminio
 Brasileiro)
Alunorte
(Alumina do
 Norte do Brasil)
CAP計画
(Companhia
de Alumina do Pará
)
能力   45万トン   626万トン  186万トン
技術 三井アルミ 日本軽金属  
出資    Vale  51%→0%  57.03%→ 0%  61%→ 0%
日本アマゾンアルミニウム  49%   3.80%  
Norsk Hydro   0%→51%  34.03%→91.06%  20%→81%
Cia Brasileira de Aluminio     3.62%  
ジャパン アルノルテ インベストメント     1.19%  
三井物産     0.23%  
三菱商事     0.10%  
Dubai Aluminium      19%
   
日本アマゾンアルミニウムの現在の出資は以下の通り。
 政府: 国際協力機構(当初は海外経済協力基金) 44.92%
 アルミメーカー: 三井アルミ 8.30%、日本軽金属 7.94%、住友化学 4.59%、
神戸製鋼所 1.84%、昭和電工 0%(←3.21%)
 アルミ需要家: YKK 2.02%、三協立山アルミ 0.92%
 商社: 三井物産 12.57%、三菱商事 5.51%、伊藤忠商事 2.75%、丸紅 2.02%、
住友商事 1.84%、双日 1.84%、豊田通商 0.92%、JFE商事 0.92%
 その他: 日産自動車 1.01%、三井住友海上火災保険 0.09%

2010/6/16  ブラジルのVale、アマゾン・アルミ事業から撤退、Norsk Hydroに譲渡 


2010/10/7 2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞   

スウェーデンの王立科学アカデミーは10月6日、2010年のノーベル化学賞を、医薬品や工業製品の製造に欠かせない有機化合物の革新的な合成法を開発した鈴木章・北海道大名誉教授(80)、根岸英一・米Purdue University特別教授(75)、 Richard F. HeckUniversity of Delaware名誉教授(79)3人に授与すると発表した。

授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金1000万スウェーデン・クローナ(約1億2800万円)を3氏で分け合う。
ノーベル賞の日本人受賞者は、米国籍の南部陽一郎氏を含め計18人、化学賞の受賞者は計7人になる。

化学賞:
 1981年  福井謙一 化学反応過程の理論的研究
 2000年  白川英樹
 導電性高分子の発見と発展
 2001年  野依良治 キラル触媒による不斉反応の研究
 2002年  田中耕一 生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発
 2008年  下村脩   緑色蛍光タンパク質 (GFP) の発見と生命科学への貢献

業績は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」。

鈴木名誉教授が1979年に報告したパラジウム触媒を用いる有機ホウ素化合物のクロスカップリング反応(鈴木カップリング反応)は、有機合成化学のみならず、触媒化学や材料科学などの広い分野に多大な影響を及ぼした。
広範な一般性と実用性を有しており、医薬品を含む数々の生理活性天然物合成に利用されている。

根岸教授(当初、帝人勤務)は、鈴木名誉教授に先だって1977年、有機亜鉛化合物と有機ハロゲン化物とをパラジウムまたはニッケル触媒で反応させ炭素と炭素がつながった生成物を得る反応(根岸カップリング反応)を開発した。
Heck教授(と故 溝呂木・東京工大教官)も、パラジウムを使って水素を炭素に置き換えることで、炭素と炭素をつなぐ合成反応(溝呂木・ヘック反応)を発見した。

鈴木名誉教授と根岸教授はともに、1979年にノーベル賞を受賞したPurdue Universityの故Prof. Herbert Brownの下で研究した。

ーーー

2010年のIg Nobel Prizesの授賞式が9月30日、米マサチューセッツ州のハーバード大学Sanders Theatreで開かれ、10グループが受賞した。

イグ・ノーベル賞は1991年、ハーバード大系の科学雑誌「ありそうもない研究」(Improbable Research ・・・Research that makes people LAUGH and then THINK)の編集者Marc Abraham が創設した。

日本人はこれまで、2005年までに11件、2007-2009年に1件ずつ計3件、合計14件の研究でイグ・ノーベル賞を受賞している。

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8  2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4  2008年イグ・ノーベル賞
2009/10/3 
2009年イグ・ノーベル賞

本年は2008年に認知科学賞を受賞した公立はこだて未来大学の中垣俊之教授らが率いる日本と英国の共同研究チームが前回の受賞テーマの延長で、今回は交通計画賞を受賞した。

日本人の受賞はこれで15件となる。

各賞の受賞者とその内容は以下のとおり。

工学賞 メキシコ国立工科大学の研究チーム
ラジコンヘリでクジラの鼻水を収集

クジラに触れずに潮を採取することは困難とされていた。
チームは、ボートから全長約1メートルのラジコンヘリをクジラの上に飛ばして、ヘリに取り付けたシャーレで潮の採取に成功。
これを調べることにより、年齢、種類、健康状態などを調査している。

医学賞 オランダのアムステルダム大学の研究チーム
ジェットコースターで喘息が改善

「ジェットコースターに乗る前は、不安などの否定的な気持ちを感じて息苦しくなる。喘息患者でなくてもそうだ。だが、乗った後は興奮や高揚感などの肯定的な感情で楽になる。喘息患者にも同じ効果が見られた」。

平和賞 英Keele Universityの研究者3人のチーム
呪いや罵りの言葉を吐くと痛みが和らぐことを証明した。

氷水に一定の時間以上、手を浸す対照実験を行ったところ、罵倒し続ける被験者は、何も言わない被験者よりも約50%長く痛みに耐えることができた。
心拍数も上がり疼痛知覚が低下したのは、脅威の感受性を低下させる闘争逃走反応が働いたと推測される。

ただし追跡調査では、穏やかな人の方が大きく痛みが軽減するとも明らかになった。
公衆衛生賞 メリーランド州フォート・デトリックの労働安全衛生機関の研究チーム
研究者のあごひげに微生物が付着することを実証

研究施設で微生物に汚染された場合、顔を規則通りに洗浄してもひげの微生物は死滅しにくいため、特に注意が必要だと警鐘を鳴らした。

交通計画賞 公立はこだて未来大学の中垣俊之教授らが率いる日本と英国の共同研究チーム
粘菌が交通網を整備

東京都近郊を描いた地図上で培養された粘菌は、各都市にあたる場所にエサを配置すると細長く伸びてネットワークを効率的に形成し、その様子は東京の交通網そのものだったという。
更に、実際の鉄道網より効率的な形であったり、迂回路が準備されているケースもあった。

同チームは2008続く2度目のイグ・ノーベル賞受賞

前回、真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てることができることを発見し、最終的には粘菌に学んだ計算方法を利用して現代社会のインフラ基盤である通信網・道路網・上下水道網などのネットワークの新しいデザインに役立てたいとしていた。

物理学賞 ニュージーランドのUniversity of Otagoの研究チーム
靴やブーツの上から靴下を履くと氷上で転びにくくなることを証明

「一部の“進取の気性に富んだ”人たちは凍結した道路を歩く際、靴の上から靴下を履くという慣習を実践していた」。この慣習を科学的に検証。

経営学賞 イタリアのUniversity of Cataniaの研究者ら。
従業員の昇進を成果主義ではなくランダムに行う方が、より効率的な組織にできることをコンピューターモデルで証明。

「これまでの仕事がうまくいったからといって、昇進後はどうなるかわからない。だから、ランダムに昇進させる方が組織全体の効率が上がる確率が高くなるというわけだ」。

生物学賞 イギリスのブリストル大学と中国の共同研究チーム
オオコウモリがヒト同様にフェラチオを行っている事実を明らかにした。

行動の正確な理由はわかっていないが、メスの唾液がバクテリアを殺す作用を持つ、交尾時間が長くなり成功率が上がるなどが考えられるという。
化学賞 BP
マサチューセッツ工科大学、テキサスA&M大学、ハワイ大学の研究チーム
油と水は混ざらないという古い定説の間違いを証明した。

「もし海が静止していたなら、メキシコ湾に流出した原油はすぐ海面に浮かび上がり、海水と混ざることはなかっただろう。
だが海には海流があり海水の密度分布も一様ではないため、原油が微細 な粒子となって拡散し、プルームという層が海中に形成されている」。
経済学賞 Goldman Sachs、AIG、Lehman BrothersLehman BrothersBear StearnsMerril LynchMagnetarTop managements
世界経済の金融利益を最大化させ、金融リスクを最小化させる新たな投資方法を開発
(経営破たんで国民の税金を投入してもらい、グローバルな危機を起こし、先進国を不況に陥れた)

 

なお、2009年公衆衛生賞に輝いた「Emergency Bra」の商品化が決定した。
緊急時にブラジャーをガスマスクとして使用するというもので、災害時は2つのマスクに分割し、もう一人近くにいる人へ渡せるというところも特徴。価格は1つ29.99ドル。

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本年のノーベル物理学賞は、グラフェンの分離に成功し、さまざまな性質を発見した英マンチェスター大のAndre Geim教授(51)と共同研究者のKonstantin Novoselov教授(36)に与えられた。

Geim教授は2000年に、「カエルと力士を浮揚させるための磁石の使用に対して」でイグノーベル物理学賞を受賞しており、史上初めて、ノーベル賞とイグノーベル賞の両方受賞となった。


2010/10/8 韓国Honam Petrochemicalの中国での活動

東洋エンジニアリングは9月29日、韓国のHonam Petrochemical(湖南石油化学)が中国浙江省嘉興市に建設予定のエタノールアミン製造設備を受注したと発表した。

能力は年産50千トンで、2012年第1四半期に完工予定。

国際入札の結果、中国や韓国のコントラクターを押さえ、ユーティリティ、付帯設備を含め、設計、機器資材の調達、建設までの一括請負した。

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ロッテグループのHonam Petrochemicalは中国進出を進めている。

同社は200610月に中国企業を買収し、嘉興湖石工程塑料有限公司を設立した。
2009年秋にポリプロコンパウンドの第一期(能力17千トン)をスタートさせた。現在、25千トンへの増設を実施中で、間もなく完成する。

エタノールアミン工場はここに建設する。

北京にABSとPPなどの高機能性コンパウンディング工場の新設も検討している。

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Honam Petrochemical2007年に山東省の維坊亞星化学(Weifang YAXING Chemical)に10%出資した。(他の韓国1社1%出資)

亞星化学とHonam Petrochemical塩素化ポリエチレンの 50/50 JV、維坊亞星ロッテ化学(Weifang Yaxing Lotte Chemical)を持ち、2005年に40千トンでスタートし、最近45千トンに拡張した。

2007/10/20 韓南石油化学、中国企業に出資

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Honam Petrochemical と中国の三江精細化工はエチレンオキサイド(EO)の製造のため、JVSanjiang Honamを設立している。

三江精細化工はEOAEO界面活性剤のメーカーで、浙江省嘉興市にEO 120千トン、界面活性剤200千トンの工場を持っている。EOについては現在、第三期の60千トンプラントを建設中。

JVSanjiang HonamではEO 100千トンを2010年末に建設を開始、引き続き第二期100千トンを建設する。

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Honam Petrochemicalは1976年に韓国政府出資の麗水石油化学と、三井石油化学、三井東圧、三井物産、日本石油化学出資の投資会社の第一化学との50/50出資で設立された。

その後、第一化学の出資比率は33.64%となり、2002年12月に持株売却を完了し、解散した。

現在はロッテグループの子会社となっている。

     2006/4/11  韓国の石油化学-2

なお、三井化学は10月5日、韓国でポリプロピレン触媒事業を展開するため、湖南石油化学と合弁会社を設立すると発表した。

両社の50/50出資で湖南三井化学を設立、湖南石化第3工場内に三井化学のPP触媒製造技術で触媒工場を建設し、両社から汎用PP触媒の製造を受託する。

三井化学が初めてPPプロセスをライセンス供与したのが湖南石化で、両社は、このPP事業で良好な関係を構築しているという。

 

 


2010/10/9  SinopecRepsol Brazil71億ドル出資 

スペインの石油大手Repsolは10月1日、ブラジル子会社のRepsol Brazilが71億ドルの増資を行い、Sinopecが全量を引き受けると発表した。

Repsol Brazilはラテンアメリカ最大のエネルギー関連私企業で、ブラジル第三位の石油業者。
Santos
CamposEspiritu Santo Basinsの鉱区(深海の海底の岩塩層の更に下の pre-salt 層に油田がある)を所有しており、Santos basinではPetrobras及び英国の天然ガス生産大手 BG Group1986年に民営化されたBritish Gas が前身)と並び、開発の中心となっている。

増資後はRepsol 60%Sinopec40%の出資となる。

増資により、Repsol BrazilはSantos basinGuara 油田、Carioca油田などの開発体制がフルに整うこととなる。
Guara油田は採掘可能量が11億〜20億バレルと見込まれており、Cariocaも有望と見られている。

Petrobrasは9月23日、Tupi油田等の開発のため、700億ドルの増資を行った。

2010/9/28 Petrobras、700億ドルの史上最大の増資

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中国の石油会社による海外企業買収はSinopecによるスイスのAddax石油の買収(75.6億ドル)が最大だった。
今回はこれに次ぐ規模になる。

2009/9/2  シノペックのAddax買収の余波

また、アルゼンチンでは2010年3月に中国海洋石油有限公司(CNOOC)がBridasの株式50%を31億ドルで購入、現在は、Bridas Energy Holdings 50%/CNOOC 50%となっている。

Bridasアルゼンチン最大の原油輸出企業でチリ及びボリビアに石油・ガス資産を持つPan American Energyの40%株主で、残り60%はBPが所有しているが、BPはその大半をCNOOC売却する方向で交渉を進めていると伝えられている。この価値は 90億ドル程度とされている。

2010/8/5  BP、コロンビアの石油関連資産を売却

 


2010/10/11 BASF、スチレン系ポリマー事業を別会社Styrolutionに移管 

BASF107日、スチレン系ポリマー事業を戦略的に発展させるため、Styrolution社を設立すると発表した。

新会社に分離する事業は、SMPSABS、スチレン・ブタジエン共重合体(SBC)、その他スチレン・ベースの共重合体で、ドイツ(Ludwigshafen, Schwarzheide)、ベルギー(Antwerp)、韓国(蔚山)、インド(Dahej)、メキシコ(Altamira)の製造拠点で行っていたスチレン系ポリマー事業はStyrolutionに移管する。

BASFは韓国の蔚山に、PS 25万トン、EPS 8万トン、ABS 25万トンを持つ。

マーケティングや販売といった活動を展開している米国、イタリア、中国をはじめとする各国にもそれぞれ現地企業を設立する予定。

ただし、世界的に展開しているPS発泡体事業と、発泡体の製造に使用しているLudwigshafenのSM/PS関連設備はBASFに残す。

分社は、201111日に完了する予定で、将来の同事業の売却に備える。

BASFのスチレン系ポリマー事業では、現在約1,460名が働いており、2009年の売上高は、約25億ユーロ。

ーーー

BASFは2007年7月、スチレン事業一部の「戦略的な選択肢」を検討していることを発表した。

利益率が低く、原料の動向に左右されるコモディティからの離脱を狙った。

その後、売却準備を続けてきたが、全くまとまらなかった。

2008/8/20 BASF、スチレン系事業の売却準備 進める

ここにきて状況が変わってきた。投資会社に事業買収の動きが出てきた。

BASFではダウのやり方を真似しようとしている。

ーーー

ダウは2010年3月2日、Styron DivisionをBain Capital Partnersに16.3億ドルで売却する契約を締結したと発表した。ポリカーボネートや合成ゴムも含まれる。

売却事業は2009年に35億ドルの売り上げがあり、世界各地に40以上の工場を持ち、従業員は約1900人。

売却対象に含まれる製品は以下の通り。
 PS、ABS、SAN、EPS、
 エマルジョンポリマー
 PC、PCコンパウンド
 合成ゴム
 自動車用プラスチック
   PULSE(エンプラ)、 MAGNUM (ABS)、INSPiRE (機能ポリマー)、
   VELVEX (強化エラストマー)など
 スチレンモノマー

2010/3/3 速報 ダウ、スチレン系事業を売却

ダウは6月17日、投資会社Bain Capital Partnersへの16.3億ドルでのスタイロン事業売却が完了したと発表した。

Styronは合成樹脂・合成ゴム・ラテックスを扱う株式非公開のグローバルな会社となり、ダウは同社に7.5%を出資する。ダウとスタイロンの間には長期の供給契約やサービス契約が結ばれる。

2010/6/18 ダウ、スチレン系事業売却完了

ダウは2010年10月にLG Dow Polycarbonate の持分をLG Chem に売却した。

 


2010/10/11  中国で大規模なレアアース資源を発見

湖北省国土資源部門はこのたび、湖北省十堰市竹渓県竜バ鎮で大規模なレアアース鉱山が発見されたことを明らかにした。現地調査の結果、竹渓県老陰山脈の下に豊富な埋蔵量を誇るレアアース資源が眠っていると判断した。
現在、専門家グループがレアアース資源の成分、構造、品質、埋蔵量などの測定を行っている。

同区域は、森林資源、水資源、鉱山資源なども豊富で、特にスレート、石炭、大理石、リン、石灰石の埋蔵量は大きい。

また、近くの十堰市竹山県内でも12箇所のレアアース鉱山が発見されている。
このうち、竹山県得勝鎮にはブラジルに次ぐ世界第二の埋蔵量のニオビウムもあることも分かった。

中国のレアメタルの主な産地は、
 軽希土類:内蒙古自治区、四川省
 重希土類:江西省、広東省、湖南省、福建省、広西チワン族自治区
となっている。

参考 2010/8/16 中国、レアアース市場での支配力拡大へ


2010/10/12  韓国とEU、自由貿易協定締結

韓国とEUは106、自由貿易協定(FTA)の締結で正式署名した。
2011年7月1日に発効する見通し。

付記 欧州議会は2011年2月17日、賛成多数で承認した。

李大統領は、「両者は、新しい次元の関係に跳躍できる歴史的なきっかけを作った」と述べ、「韓国とEUは今後、東西という地理的距離を乗り越え、未来志向的な身近な関係へと大きく発展していくだろう」と強調した。

大統領府報道官は、「韓―EU間FTA署名には、自由民主主義や市場経済、人権についての価値を共有する哲学が基になっている」とし、「このような『価値同盟』を基に、経済同盟へと進むことになるだろう」と語った。

 

韓国とEUは2010年3月24日にFTA交渉で事実上妥結したが、いくつかの問題で最終的な妥結に至らず、その後双方で交渉を続けていたが、7月13日、交渉が妥結した。

2009/7/14  韓国・EU、FTA最終合意

その後、EUは9月13日に定例の一般・対外関係理事会で、承認の可否について話し合ったが、イタリアの反対により、再び決定が留保された。
イタリアは「韓国製の小型車が輸入された場合、国内の自動車市場が深刻な脅威にさらされる」という理由で反対した。

その後、イタリアは年内の発効を遅らせることを条件に同意、9月16日のEU外相理事会で2011年7月1日発効で合意したもの。

双方は、相手地域で生産した自動車・冷蔵庫・カラーTVなど工業品に対しFTA発効5年以内に全関税を撤廃することで合意した。
EUの関税は、自動車で10%、テレビで14%と高率で、関税撤廃による韓国企業の輸出拡大が予想される。

工業製品関税については、原則 5年間で関税を完全撤廃。
  自動車部品は協定発効と同時に関税を撤廃、
  中大型乗用車は3年、小型自動車は5年内に撤廃
韓国は例外として40余りのセンシティブ品目について7年内の関税撤廃。
 (関税率が16%のその他機械類、純毛織物など)

見返りとして、農業品などの関税撤廃についても大部分は合意した。
韓国政府は、期間10年、総額270億ドルの国内農家向け支援策をまとめた。

EU産ワインは、直ちに撤廃
EU産豚肉に対する関税は、冷蔵肉全体とバラ肉冷凍肉は10年以内に、その他の部位の冷凍肉は5年以内に撤廃。

但し、韓国のコメ市場は開放しない。トウガラシ、ニンニク、タマネギも「主要調味料」として関税を据え置く。

韓国の自動車メーカーと部品メーカーの輸出競争力が飛躍的に高まる。
まず、エンジン、変速機など大半の部品に対する関税(現行 2.7−19%)が撤廃され、欧州の自動車メーカーは韓国製部品の調達を増やすものとみられる。

自動車メーカーの輸出の伸びも見込まれる。既に強力なブランドを持ち、ウォン安の追い風を受けている現代自動車など韓国のライバル企業が一段と有利になる。

逆に、ドイツやフランスなどが強みとする精密化学、機械分野では、欧州製品の攻勢で韓国企業が打撃を受ける見通し。医薬品、医療機器などの輸入も増えるとみられる。

ーーー

韓国は、米国、日本、中国などに先立ち、EUFTAを締結したこととなり、これらの国々との競争でも有利な立場を確保した。

韓国は米国との間でも、既にFTAを締結している。

但し、米国内に反対が強く、まだ批准されていない。
オバマ大統領は最近、韓米FTAが両国議会の批准を経て公式発効される前に、韓・EU間のFTAなどが先に始まる状況に対して懸念を表明した。一部米国議員の間から、韓米FTAも急ぐべきだとの声が上がった。

さらに、韓国は以下の国と地域との間でFTAを締結している。
 チリ
 シンガポール
 欧州自由貿易連合(EFTA=スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランドで構成)、
 ASEAN10ヵ国
 インド

韓国は、批准待ちの米国、EU及びEFTA、ASEAN、インド、及び南米のチリとFTAを結んだこととなる。

韓国政府は、今回の締結で、欧州―東アジア―米国をつなぐ「
東アジアのFTAハブ」として、浮上する基盤を整えたとする。

これに対し、日本はASEAN及びそのメンバー以外でFTAを締結したのは、メキシコ、チリ、スイスのみ。

2007/8/24 日インドネシア経済連携協定の付記 参照

経済産業省によると、韓国がFTAを結んだか、実質的に締結した国との貿易量は全体の36%を占めるが、日本の場合は17%にすぎない。
しかもEU及び米国との間では、特に農産品が問題となり、FTAが結ばれる兆しは見えない。


2010/10/13  ハンガリーのアルミナ工場から赤泥流出、ドナウ川に流入

10月4日、ハンガリーの首都Budapestから西に約150kmはなれたAjkaにあるHungarian Aluminum Production and Trading Company (Magyar Aluminium Rt:MAL Rt.) のアルミナ工場の赤泥廃液を貯水する池の堤防が決壊し、貯水してあった赤泥廃液約100万立方メートルが流出し、廃液が周辺の街DevecserKolontarに流れ込んだ。

ハンガリー政府は5日、ヴェスプレーム県、ジェール・モション・ショプロン県、ヴァシュ県の3県に非常事態宣言を発令した。10月8日現在、7名が死亡、1名が行方不明、約150名が負傷となっている。
流出泥土にのみ込まれたり、有害物質に触れたことによるやけどなどが死傷の原因という。

更に、この廃液がドナウ川支流のMalcal川に流れ込んだ。

政府はMalcal川に石膏を流し込んで固め壁を作り、汚泥をせき止める方法を行ったが、これに失敗。7日昼 ごろ、Gyor市付近でラバ川とモショニ・ドナウ川からドナウ川本流に到達した。

同国の災害対策当局によると、中和剤によるアルカリ度の引き下げで、ペーハー濃度は最高値に近かった13から9.1にまで低下しているが、それでも、ドナウ川の生物が生存可能な濃度である通常時の7‐8を依然上回っている。

その後、政府は、ドナウ川の生態系や環境への悪影響は広がらないとの見方を示した。

しかし、政府は9日、工場の近くのKolontar村の住民に避難勧告を出した。貯水池からの泥土流出は止まっているが、地盤が弱まっているため、更なる決壊が起きかねない状況にある。

原因については5月17日から6月5日までの間中央ヨーロッパを襲った洪水により池の水位が上がってしまい、決壊したとされる。

同社では、赤泥はEUの安全基準ではtoxic wasteには指定されていないとし、天災でどうしようもなかったとしている。

これに対し、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、「自然災害とは考えられず、人為的なミスを疑うべきだ」と述べた。

ハンガリー内務省は10月11日、同社の社長を拘束した。

アルミナ製造過程では、ボーキサイトを粉状にし、苛性ソーダを加えて溶かし、水酸化アルミニウムを回収するが、その溶解残滓が赤泥である。
苛性ソーダが混じっており、生成直後は強い塩基性を示す

赤い色は主成分であるFe2O3(酸化鉄)による。

ーーー

同社は1995年にアルミ産業の民営化で設立された。民営化された各社(Bakony ボーキサイト鉱、Ajka などのアルミナ工場、Inota アルミ精錬工場)を買収、一貫メーカーとなった。
しかし、
2006年初めにアルミ精錬を閉鎖し、現在はボーキサイト採鉱とアルミナ製造を行っている。

Inotaのアルミ精錬は1952年にスタート、能力は年産35千トン。
同社は2006
初めにこれを閉鎖した。
電力料の高騰で、採算が取れないのが理由。

なお、アルミナ工場のあるAjkaには年産22千トンの精錬工場があったが、1991年に電力料高騰で閉鎖している。

ハンガリーには他に2つのアルミ精錬があったが、全て閉鎖された。
・ Csepel
精錬:年産5千トン、1946年に第二次世界大戦での爆撃被害で閉鎖
・ Tatabanya
精錬:年産18千トン、1991年に電力料高騰で閉鎖

同社は2009年にハンガリーの2箇所の地下鉱、3箇所の露天堀で24万トンのボーキサイトを採掘した。
同社はまた、モンテネグロとボスニアからボーキサイトを輸入している。

アルミナ工場は事故を起こしたAjkaのほか、2箇所にある。また、ボスニア、スロベニア、ルーマニアなどのバルカン諸国のアルミナ会社に出資している。

製品アルミナの75%は西欧に輸出されている。

ーーー

日本では昭和電工、日本軽金属、住友化学の3社が国内でアルミナを製造しており、赤泥を中和したうえで海洋投棄しているが、環境問題から2015年までにボーキサイトの国内精製から撤退する。
住友化学は
2010 年4月海外で生産された水酸化アルミニウムを原料に全面転換を行った。

赤泥は産業廃棄物であり、産業廃棄物の海洋投棄は、1972年にできたロンドン条約(「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」)で原則禁止されている。(日本では1973年11月発効)

ロンドン条約の付属書Tの中に例外として産業廃棄物に当たらないという項目がある。
その一つが 「汚染されていない不活性な地質学的物質であって、その化学的構成物質が海洋環境に放出されるおそれのないもの」。
日本国内法では、中和した赤泥がこの条件に当てはまるとし、例外項目として赤泥の海洋投棄を「特別」に認めている。

しかし、3社は海洋汚染の影響などを考慮、自主的に撤退の方針を決めた。

2008/3/8 アルミナメーカー、ボーキサイトの国内精製から撤退へ

2010/9/6 昭和電工、インドネシアでアルミナ工場建設


2010/10/14  インドネシア、アサハンアルミの将来

10月11日の日本経済新聞は
「インドネシア、アルミ一貫生産めざす 日本との精錬合弁 経営権獲得へ交渉」
と題する以下の内容の記事を掲載している。

インドネシアと日本のJVのアサハンアルミが操業30年を迎える2013年11月以降、インドネシア政府は日本の出資分を買い取る権利を持つ。

現在の出資比率は日本側 59%、インドネシア側 41%となっている。
JV協定は「生産開始」(1983年11月1日)から30年後に満了、設備は簿価などの補償を条件として、インドネシア政府に移管されることとなっている。

インドネシア側はボーキサイト生産を手掛ける国営鉱山大手Aneka Tambang (Antam) を経営に参画させ出資比率を50%超に引き上げたい考え。

Antamは中国の資源大手、杭州錦江集団と、中間原料のアルミナを年100万トン生産することで合意した。14年の稼働をめざす。

インドネシアはボーキサイト生産国だが、これまでは全量を輸出し、アサハン事業向けのアルミナは輸入してきた。
Antamのアサハン事業への参画と中国との合弁を通じ、ボーキサイトからアルミニウムまで国内で一貫生産する体制が整う。

付記 インドネシア政府と日本側は2011年2月18日、交渉を開始した。

付記 2012/08

インドネシアのハッタ・ラジャサ経済担当調整相は、イナルムの増産体制確立とIPO(新規株式公開)を支援するため、同社に最大12兆ルピア(約1000億円)の政府資金を投資する計画であることを明らかにした。
政府が7兆ルピア(約580億円)で日本側の株式を全株買い取る計画。政府では国内のアルミ需要が急増していることから日本側の株式の買い取りを決めたとしている。

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イン ドネシア政府は、スマトラ島の産業開発のため、アサハン川に大水力発電所を建設し、その豊富、低廉な電力をもって、アルミニウム製錬を行なうことを計画し、これ に対する外国企業の参加を期待した。

1969年には、アメリカのカイザー、住友化学・日本軽金属・昭和電工の日本3社連合、さらにアルコアが相次いで同地におけるアルミニウム製錬に関心を表明した。

その後、日本側はアルミ精錬と電力開発の一括実施を計画、米国側にも参加を求めたが、米国2社は 資金の調達難と電力開発の一括実施に強い難色を示し、1974年に参加を断念したため、本計画は日本側のみで実現を図ることとなった。
住友化学が幹事会社となり、三井アルミニウムと三菱化成を加え、更に、住友商事・伊藤忠商事・日商岩井・日綿実業・丸紅・三菱商事・三井物産の7商社に参加を求め、業界をあげて取り組むこととなった。

計画は以下の通り。
 北スマトラ、
Kuala Tanjung地区にアルミニウム年産225千トンの製錬工場(75千トン3系列)
 トバ湖から流れるアサハン川の上流の
SiguraguraTanggaの両瀑布に最大出力513千kwの発電所
 原料アルミナは輸入
(Alcoa of Australia)
 所要資金は2500億円
  (タウン、道路、港湾などのインフラの整備を含む)
 製錬工場の第1系列は1981年後半に稼動し、全設備の完成は1984年。

インドネシア側は同国のナショナルプロジェクトとして推進することにし、スハルト大統領は1975年に同国を訪問した河本通産大臣に対し、日本政府からの資金供与を強く要請した。

1975年7月、日本政府は、本計画を日本・インドネシア両国間の最重要経済プロジェクトとして実現を図ることとし、 日本輸出入銀行、海外経済協力基金と国際協力事業団を通じ、所要の資金援助を行なうことを閣議決定した。

1975年7月に日本側参加12社とインドネシア政府間の基本協定が締結された。

日本側の地金引取量は生産量からインドネシア側 の引取量(1/3を上限)を除いたもの
(その後の修正で、3/5を日本向け、2/5をインドネシア国内向けに)

この協定の有効期間は「生産開始」(全炉の2/3が通電した日の翌月1日)から30年後に満了
設備は簿価などの補償を条件として、インドネシア政府に移管される。

同年末に日本側投資会社の「日本アサハンアルミニウム」が設立された。

国際協力銀行 50%
精錬5社 各7.5%、計37.5%
7商社合計 12.5%

1976年1月、日本アサハン 90%、インドネシア政府 10%の出資で、P.T. Indonesia Asahan Aluminium (INALUM)が設立された。

その後、詳細FSが実施され、石油危機の影響による資機材の価格、労務費などの上昇と一部設計の変更により、見直し後の所要資金は4,110億円に増加した。

これに基づき協議の結果、1978年10月に基本協定の修正契約書に調印した。
資本金911億円、借入金3,199億円とし、出資比率は日本アサハン 75%、インドネシア政府 25%となった。

プロジェクトの遂行に当たっては日イ相互の理解と協調に努めた。 
・インドネシアの国内産業と国内業者の優先使用で、最終的にはインドネシアでの調達額は30%になった。
・インドネシア人の最大限の雇用と同国への技術移転
  基幹要員約100人を約1年間日本に送り、住友アルミニウム製錬と東京電力で実習を行った。
・アサハン地域の開発
  電力の供給、役所庁舎、校舎などの地方政庁への寄贈、奨学金の創設など共存共栄に努めた。

精錬工場から16kmのところに、一般住宅1,340戸、単身寮5棟、ゲストハウス、クラブハウス、教育施設(幼稚園〜中学校、日本語学校)、診療所、教会、モスク、墓地、電話局、ショッピングセンター、タウンホール、公園、ゴルフコース、上下水処理場、等々を備えた200haのタウンが 建設された。

1982年1月、精錬第一期が完成し、開所式が行われた。
1983年6月に発電設備が全て完成、10月に精錬第二期の立ち上げが完了、1983年11月1日が「生産開始時点」となった。(この30年後に協定が満了する)

1984年11月に全面操業となった。

しかし、1985年9月のプラザ合意後、短期間に大幅な円高が進行した。

アサハン計画の地金コストは安価な電力のメリットもあり、金利、償却を除けば他に遜色のないものであっ たが、同計画の収入がドルベースであるのに対し、総建設費用の80%近くを円建ての借入金で賄っているため、急激・大幅な円高で為替差損と金融費用が増加し、INALUMの経営を圧迫した。
(借入金がほぼ倍増したこととなる)

1986年にINALUMは金融機関に2年間の返済猶予を仰ぎ、この間に抜本策を講じることとした。

その結果、1987年6月、日本政府関係機関から所要の援助を行うことが閣議了解され、インドネシア政府も融資金の相当額を出資に切り替え、559.9億円の増資が行われ、出資比率は日本側 58.9%、インドネシア側 41.1%となった。

1994年8月、政府関係機関から追加の援助を行うことが閣議了解され、合計130億円の追加出資と、借入金の金利引き下げ、返済期限の延長などの支援が行われた。

INALUMの業績は好転したが、その後の円高で金融費用の負担は依然として重く、その後も、困難な状態が長く続いた。

最近の状況は、詳細は不明だが、アルミ価格が高水準で、残っていた借入金も途中でドル建てに切り替えたため、為替損もなく、黒字となっているとされており、借入金もほとんど返済した模様。

(追加情報)

INALUM20103月期決算は、売上高478百万ドル、経常利益141百万ドル、純利益101百万ドルとなった。この結果、累積損失は73百万ドルとなり、本年度で累積損失を一掃する見通しとなった。

アルミ地金生産量が256千トンと過去最高を更新、稼動開始以来の累計生産量は約550万トンとなった。

今後は競争力のある事業となる。

上記の記事では、インドネシア側はボーキサイト生産を手掛ける国営鉱山大手Aneka Tambang (Antam) を経営に参画させ出資比率を50%超に引き上げたい考えとしているが、インドネシア側が契約に基づき、設備簿価の補償で全ての移管を求めるのか、出資比率を50%超として、日本側の残留を認めるのか、製品の日本への供給がどうなるのか、これから交渉が始まる。

なお、現在の実生産能力は252千トンとなっている。

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インドネシアの100ルピア紙幣(1984年発行)の裏面にはTanggaダムの水力発電所が描かれている。
アサハンはインドネシアの近代化の誇りである。

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インドネシアはボーキサイト生産国だが、これまでは全量を輸出し、アサハン事業向けのアルミナは輸入してきた。

昭和電工は本年8月31日インドネシア政府が65%出資するAntam と共同で2011年1月よりインドネシア西カリマンタン州Tayanでケミカル用アルミナ工場(アルミ精錬用ではない)の建設を開始すると発表した。

JV名はP.T. Indonesia Chemical Aluminaで、 Antam80%、昭電が20%出資する。
アルミナの原料のボーキサイトは採掘権を保有する Antamが供給し、アルミナ生産に関する技術は昭電が提供する。

生産能力は年産30万トンで、このうち20万トンは昭電、残りの10万トンはアンタムが引き取る。
昭電は横浜事業所で年産約20万トンのアルミナを生産しているが、201
5年までに撤退を決定している。

    2010/9/6 昭和電工、インドネシアでアルミナ工場建設 

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Antamは本年7月に、中国の資源大手、杭州錦江集団と、精錬グレードのアルミナ工場建設の契約に調印した。

西カリマンタンのMempawah10億ドルを投じて、年400万トンのボーキサイトを処理し、年産100万トンのアルミナを製造する。

契約ではAntam 49%杭州錦江集団が51%を出資するが、Antam は工場の操業開始3年後にマジョリティを持つオプションを有する。

これが完成すると、インドネシアでボーキサイト→アルミナ→アルミニウムの一貫生産体制が整うこととなる。

 

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なお、カリマンタン島のマレーシア側のMukahで、住友商事がアルミニウム地金製錬事業の第一期プロジェクト(2010年末フル稼働予定、年産12万トン、総事業費 約3億米ドル)に参画する。

同地域はサラワク再生可能エネルギー回廊(Sarawak Corridor of Renewable EnergySCORE)にあり、同じくSCOREに属するBintuluではもう一つのアルミ精錬計画がある。

社名:Sarawak Aluminium
株主:Rio Tinto Alcan/Cahya Mata Sarawak Bhd.
計画:当初 72万トン(2013年予定)、最終 150万トン

2010/10/6 住友商事、マレーシアでアルミニウム製錬事業へ参画


2010/10/15 B型肝炎で政府が補償案を提示 

全国B型肝炎訴訟のうち北海道訴訟の第5回和解協議が10月12日、札幌地裁であり、国側は補償額を、症状に応じて500万〜2500万円支払う具体案を初めて提示した。
原告以外の患者も含めれば、財政負担が最大2兆円になるとする試算も明らかにした。

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集団予防接種で注射器が使い回されたことが原因でB型肝炎ウイルスに感染したとして、患者ら57人(うち3人死亡)が国に総額199650万円の損害賠償を求めた「B型肝炎北海道訴訟」で、札幌地裁は20103月12日、原告・被告双方に和解を勧告した。

訴状によると、原告57人は道内外在住の3060代の男女。06歳のころに国による集団予防接種を受けてB型肝炎ウイルスに感染したり、集団予防接種が原因でB型肝炎ウイルスに感染した親から母子感染したとされ、1人当たり1650万〜6600万円の賠償を求めている。

B型肝炎訴訟を巡っては、最高裁が20066月、国の責任を認め、札幌市の患者5人(うち1人死亡)に対して各550万円、計2750万円の支払いを命じた判決が確定している。

判決概要
   
1. 予防接種の経緯
  1948年厚生省告示で、注射針の消毒は必ず被接種者1人ごとに行わなければならないことを定め、1950年厚生省告示において、1人ごとの注射針の取りかえを定めた。
しかし、B型肝炎ウイルス感染の危険性に関する知見が形成された1951年以降も、国は集団予防接種の実施機関に対して、注射器の1人ごとの交換または徹底した消毒の励行を指導せず、注射器の連続使用の実態を放置していた。
   
2. 因果関係の判断
  通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りるものと解すべきである。
  ・B型肝炎ウイルスは、注射器の連続使用によって感染する危険性がある。
  ・原告らは、幼少期に集団予防接種を受け、注射器の連続使用がされた。
  ・原告らは、幼少期にB型肝炎ウイルスに感染して持続感染者となり、成人期に入ってB型肝炎を発症した。
  ・他の原因による感染の可能性は、一般的、抽象的なものにすぎない。
  経験則上、集団予防接種と原告らの感染との間の因果関係を肯定するのが相当である。
   
3. 除斥期間の判断
  加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には、損害の全部または一部が発生した時が除斥期間の起算点になると解すべきである。
   

国内にはB型肝炎の感染者が推計約140万人いるとされるが、国は感染の因果関係がはっきりしないとして一律救済を拒否。
このため、
2008年の札幌地裁を皮切りに、東京や福岡など全国10地裁に患者ら383人(うち6人死亡)が順次、国家賠償を求めて提訴している。
全国
10地裁で係争中のB型肝炎訴訟で、和解が勧告されたのは初めて。

国側は5月14日、和解協議に 入る意向を正式に表明したが、戦後最大規模の賠償金額になる可能性があり、巨額の財政負担が発生しかねないことなどを懸念し、救済の具体案提示を先送りしていた。

C型肝炎の場合、国の責任による救済を限定しているため対象者は現在約1400人で、300億円の基金内に収まっている。
因果関係が明確でないB型は国の責任範囲が広がりかねず、救済対象が数十万人単位になると、国の負担が兆円単位に膨らむ可能性がある。

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今回の国側の補償案は以下の通りで、無症候性キャリアーには検査費の助成のみとしており、総額は約2兆円となる。
菅首相は同日、「国民に負担をお願いすることもあり得る。被害者と同時に国民にも納得してもらえる和解案を生み出す努力が必要」と述べた。

原告側は、無症候性キャリアーも含め薬害C型肝炎と同水準の1200万〜4000万円を求めており、国の試算では最大8.2兆円になる。

両者の差は大きく、今後も協議は難航しそうだ。

  国側 原告側=C型同様
死亡・肝がん・肝硬変(重症)  2500万円  4000万円
肝硬変(軽症)*  1000万円
慢性肝炎   500万円  2000万円
無症候性キャリアー  検査費助成
 発症時に賠償
 1200万円
和解に要する総額
(国の試算:今後30年間で
発症する患者分を含む)
 約2兆円
  現状 3100億円
  30年間病状進行
      1.2兆円
  検査費 5000億円
 約8.2兆円
  現状    6.8兆円
  病状進行 1.4兆円
救済対象の証明方法  母子手帳
 腕の注射痕など
  (予防接種以外の
   感染の可能性)
 国内居住歴
 (国民のほぼ全員が
  予防接種を受けている)

 * 肝硬変の重症、軽症判断は、日常生活や働くことが制限されるかどうかなど

国側は、B型肝炎の感染者数を110万〜140万人と推計。予防接種で感染した救済対象は最大で、
(1)死亡 5000人
(2)肝がん、肝硬変 4000人
   慢性肝炎 24,000人
   計2万8000人
(3)無症候性キャリアー44万人(うち4万人が今後発症)と試算している。

同じ肝炎でもC型肝炎と差をつけた理由として、国側は「薬害肝炎と比較して因果関係の根拠が乏しく、同水準とするのは不適当」としている。

これに対し患者側は、「B型もC型もウイルスとの闘いに差はない。命に差をつけるのは納得がいかない」と非難している。

付記

札幌地裁は2011年1月11日、以下の和解案を提示した。

和解金は
▽死亡、肝がん、重度の肝硬変の原告に3600万円
▽軽度の肝硬変に2500万円
▽慢性肝炎に1250万円
未発症者(キャリアー)には、過去の定期検査などに要した費用として和解金50万円を支払うほか、今後の検査費や交通費、将来生まれた子や新たに同居する家族への検査費を上限つきで助成する
予防接種を受けた証明は、母子手帳などがない場合、本人や医師の陳述書などで裁判所が総合的に判断する
2次感染者は基本合意の対象とせず、協議を継続する
   
  国側 原告側=C型同様 和解案
死亡・肝がん・肝硬変(重症)  2500万円  4000万円  3600万円
肝硬変(軽症)*  1000万円  2500万円
慢性肝炎   500万円  2000万円  1250万円
無症候性キャリアー  検査費助成
 発症時に賠償
 1200万円 和解金50万円
今後の検査費や交通費
和解に要する総額
(国の試算:今後30年間で
発症する患者分を含む)
 約2兆円
  現状 3100億円
  30年間病状進行
      1.2兆円
  検査費 5000億円
 約8.2兆円
  現状    6.8兆円
  病状進行 1.4兆円
今後30年間で3兆円超
救済対象の証明方法  母子手帳
 腕の注射痕など
  (予防接種以外の
   感染の可能性)
 国内居住歴
 (国民のほぼ全員が
  予防接種を受けている)
本人や医師の陳述書などで
裁判所が総合的に判断

フィブリノゲン製剤と第9因子製剤の投与による薬害C型肝炎救済法では、給付額は以下の通りとなっている。
 慢性C型肝炎が進行して、肝硬変もしくは肝がんに罹患し、または死亡した者 4000万円
 慢性C型肝炎に罹患した者 2000万円
 それ以外 1200万円

2008/1/16 薬害肝炎救済法 成立 

患者側はこれと同じ補償を求めている。

付記

全国11地裁で争われており、原告数は計992人。

2011年6月に国と原告が和解の基本合意書を締結した。
2011年9〜10月に、札幌、東京、大阪、福岡地裁で和解が成立した。

B型肝炎ウイルス特別措置法が2011年12月9日の参院本会議で、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。

予防接種B型肝炎訴訟は、既に国と原告弁護団が基本合意に達して、裁判所でも和解が成立している。したがって、立法は不要なケースだが、予算措置を講じるために立法するもの。

症状に応じて1人当たり50万〜3600万円が給付される。厚生労働省は、今後5年間で45万人程度が救済対象となり、支給総額は1.1兆円と見込んでいる。

ーーー

2009年11月30日に「肝炎対策基本法」が参議院で可決され成立した。

日本にはB型肝炎・C型肝炎に感染している人が350万人、患者が60万人いると推計され、国内最大の感染症となっている。

肝炎対策基本法は、肝炎対策の基本理念を定めるとともに、国・地方公共団体の責務を明らかにした上で、肝炎の予防・早期発見・療養に係る経済的支援等の施策を総合的に推進するもの。

具体的内容は以下の通り。

1.国の責任を明記

「薬害肝炎事件では、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについて国が責任を認め、
集団予防接種の際の注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスの感染被害を出した予防接種禍事件では、最終の司法判断において国の責任が確定していること等を踏まえて制定した」。

2.肝炎対策の基本理念

居住地にかかわず肝炎の検査・適切な治療を受けられること、
施策の実施にあたって差別されないよう配慮すること

3. 国・地方公共団体・医療保険者・国民・医師の責務を明らかにする
  政府は、肝炎対策を実施するための財政上の措置を講じなければならない

4. 肝炎対策基本指針を策定

(以下、略)

肝炎が国民病になったことについての国の責任を明記するとともに、国・地方公共団体・医療従事者等の責務を定めた点は評価できる一方、具体的な予算措置は記載されていない。


2010/10/16 中国で地熱による地域暖房事業 拡大

シノペック子会社Sinopec Star Petroleum とアイスランドのGeysir Green Energyはこのたび、内蒙古自治区での地熱開発に関して契約に調印した。

両社は本年69日、アイスランド外務省で、中国での地熱開発を拡大するための5年間の契約に調印、合弁会社のSino-Icelandic Green Energy Geothermal Development Corporationを設立し、陝西省、河北省、北京市、天津市、及び中国北東部での地熱開発を取り決めた。

今回の契約は中国北東部での地熱開発に関するもので、Geysir Green Energyの中国事業子会社Enex ChinaSinopec Star は地方政府に協力し、同自治区の阿爾山での地熱調査を行う。
地熱による室内暖房、温室栽培、地熱発電を目指し、地熱開発と地熱利用で協力する。

Enex ChinaGeysir Green Energy 80.5%、残りをアイスランドの地熱開発の Reykjavik Energy Invest が出資している。

Geysir Green Energy はアイスランドの地熱エネルギー開発会社で、アイスランドのほか、ドイツ、中国、フィリピンで活動している。
2009年にはEl Salvador9.3MWのバイナリー(*)地熱発電所を稼動させている。

* 温度の低い蒸気でも発電できるように,沸点が36℃のペンタンなどの蒸気をつくり、これでタービンを回して発電するもの

温家宝首相は本年9月、アイスランドのPresident Olafur Ragnar Grimssonとの天津での会談で、地熱開発で両国の協力関係を深めたいと述べた。

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Enex ChinaSinopec Star49%/51%Shaanxi Green Energy Geothermal Development (SGE)を設立し、陝西省咸陽市と河北省保定市で地熱による地域暖房を行っている。

SGE社の最初の事業は陝西省咸陽市で地熱による地域暖房を設置、運営するもので、それまで使われていた石炭による暖房を置き換えた。
第一期は
2006年に完成、現在では11の地熱井戸と7つの暖房センターを持ち、ピーク能力100MWサーマル、ベース能力70MWサーマルで、咸陽市の120m2以上の地域に熱を供給している。

第二の事業が河北省保定市のもので、200911月に開始した。
現在では
30m2に熱を供給し、2010年末には100m2になる。

SGE社は合計で14の地熱井戸、10の暖房センターを運営、ピーク能力は140MWサーマルとなっている。

6月に調印した契約では、まず、既に実施している陝西省咸陽市と河北省保定市の計画を現在の140MWを拡大する。

3年間で熱を供給する面積を2000m2とし、次の5年間で30004000m2に拡大する。

今回の契約は中国北東部での開発に関するもので、両社の中国での地熱利用の3件目となる

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中国国土資源部によると、中国には1,000以上の地熱エネルギー田があり、そのうち1/4が利用されており、世界で地熱利用のトップの座にある。


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