ブログ 化学業界の話題     目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は http://blog.knak.jp/


2022/4/15  エンビジョンAESC、米国に2番目の電池工場建設 

エンビジョンAESCグループは4月14日、米ケンタッキー州Bowling GreenのKentucky TransparkでEV向けリチウムイオン電池の新工場を建設すると明らかにした。
投資額は20億ドルで、生産能力は立ち上げ時で年30ギガワット時を想定、年内にも着工し、2025年の稼働を目指す。

従来よりも高性能な車載電池を独自動車大手Mercedes-Benzグループなど、複数の自動車世界大手へ供給する。

中国の遠景科技集団は2022年3月16日、傘下の車載電池メーカーのエンビジョンAESCが、ドイツの高級車大手Mercedes-Benzと車載電池の供給契約を結んだと発表した。

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エンビジョンAESCエナジーデバイス(Envision AESC Energy Devices Ltd.)は2019年4月1日、事業を開始した。

中国の再生可能エネルギー関連企業のEnvision Group(遠景能源集団)が80%、日産自動車が20%を出資する。

日産自動車は2018年8月3日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を、再生可能エネルギー事業者である中国のEnvision Group(遠景能源集団) に譲渡する契約を締結したと発表した。

日産自動車は当初、2017年8月8日に中国の投資会社GSR Capitalに譲渡する契約を締結したと発表したが、その後中止し、Envision Groupに売却した。

日産が売却したオートモーティブエナジーサプライ(AESC)を前身とする新会社エンビジョンAESCジャパン、日産がエンビジョングループに譲渡した米英のバッテリー会社や、NECが同グループに売却した電池の電極を製造するNECエナジーデバイスも加わる。

2017/8/15 日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡


エンビジョンAESは2019年4月1日、中国の無錫に新工場を開設すると発表した。2020年に稼働し、2023年をめどに生産能力を20ギガワット時に引き上げる。2019年内に開発拠点も新設する。

AESCジャパンは2021年8月4日、茨城県の茨城中央工業団地に新工場を建設すると発表した。投資額は500億円。茨城県の20億円の補助金などを活用する。
生産能力は年間6ギガワット時で、将来的には生産能力年間18ギガワット時まで引き上げる。10月に着工し、2024年に量産開始を目指す。

エンビジョンAESCとRenault Groupは2021年6月、戦略的提携を結び、フランスに大規模バッテリー工場「ギガファクトリー」を建設すると発表した。

2024年に9GWh、2030年までに24GWhのバッテリー生産能力を持つギガファクトリーをフランスのDouaiに建設する。最大20億ユーロを投資して、将来の新型EVのルノー『R5』を含めたEV向けに、最新かつコスト競争力のあるバッテリーを生産する。

別途、Renault はフランスのスタートアップ企業Verkorに20%出資、フランスのDunkerque市に2026年までにギガファクトリーを稼働させる。生産能力は2025年に16ギガワット時(GWh)、2030年に50GWhとなる

日産自動車は2021年7月1日、英国Sunderland工場の隣接地のInternational Advanced Manufacturing Parkに、エンビジョンAESCが大規模バッテリー工場「ギガファクトリー」を建設することに協力すると発表した。

稼働当初、9GWhで生産を開始する予定で、2030年までに最大25GWhへ生産能力を増強、最終的には、35GWhまで拡張することを想定している。

 

同社の能力(現状及び計画)は下記の通り。

日本 神奈川

2.6GWh/yr

英国 Sunderland 1.9GWh/yr
米国 Smyrna/TN 3.0GWh/yr
中国 無錫 20GWh/yr
日本 茨城 6→18GWh/yr
米国 Kentucky 30GWh/yr
フランス Douai 9→24GWh/yr
英国 Sunderland 9→25→35GWh/yr

これらの計画で、同社の世界の能力は約150GWh となり、2026年までに300GWhにするという目標に向かい前進する。

 


2022/4/16   超強力な水中接着剤を開発

東京大学の研究チームはこのたび、海洋生物からヒントを得て、超強力 な水中接着剤の開発に成功したと発表した。

一般的な接着剤は、被着体表面の水和水が接着剤と被着体間の相互作用を阻害するため、水中で接着強度が大幅に低下する。

東京大学大学院工学系研究科の江島広貴准教授らのグループは海洋生物の接着機構にヒントを得て、水中でも接着強度10 MPaを超える、超高強度水中接着剤の開発に成功した。

本接着剤は湿潤環境下においても高い接着強度を発揮できるため、手術用接着剤などへの応用が期待される。

4月13日に英国科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載された。

 

沿岸土木工事、船舶、歯科、外科手術などの分野において多くのニーズがあるが、 上記の通り、水中接着は技術的困難が伴う。

しかし、海洋生物では、例えば、ムラサキイガイは海岸で岩に固着して生息しているが、水中接着タンパク質を長い進化の過程で獲得してきた。この接着原因タンパク質として、DOPAを多量に含むタンパク質ファミリーが同定されている。

これをヒントに、2017年に米国の研究者により、ポリスチレン骨格に2個の水酸基を導入すると優れた水中接着剤(接着強度 3 MPa)になることが報告され、2020年には3個の水酸基を導入することで4 MPaの水中接着強度を達成した。

今回、研究チームは、さらに多くのフェノール性水酸基(4個および5個)を導入した高分子を合成することに世界で初めて成功し、10 MPa(メガパスカル)以上の水中接着強度を達成した。

フェノール性水酸基数が増えるほど基材表面への吸着に有利になることが示唆された。 一方で、水中接着剤は疎水的であることが必要だが、フェノール性水酸基数が増えると高分子鎖はより親水的になる。

今回、一つのスチレンユニット上に4個および5個という多数のフェノール性水酸基をもつモノマーを新たに設計・合成し、疎水性モノマーと共重合することで、疎水性を損うことなく、これまでより多数のフェノール性水酸基を高分子鎖上に導入することに成功した。

本接着剤は手術用接着剤などへの応用が期待される。


2022/4/18    FDA、初のCOVID-19 呼気検査器を承認

FDAは4月14日、呼気サンプルからコロナ感染を検出する「InspectIR COVID-19 Breathalyzer」の緊急使用認可を発表した。

InspectIR Systemes, LLC製のこの呼気検査機器は機内持ち込み手荷物ほどの大きさで、医療従事者が病院やクリニック、移動型検査場で使用できる。3分以内に結果が分かるという。

2409人を対象とした研究では、検査の感度(陽性サンプルを正しく識別する確率)は91.2%、特異度(陰性サンプルを正しく識別する確率)が99.3%だった。

また、ウイルス陽性が4.2%しかない集団で 陰性的中度(negative predictive value:検査結果が陰性と出た人のうち、真に疾患を有していない人の割合)が99.6%であった。

オミクロン変異体に焦点を当てた追跡臨床研究で同様の結果が出た。

この検査器は、ガスクロマトグラフィーガス質量分析(GC-MS)手法を使用して、化学物質の混合物を分離および識別し、呼気中のSARS-CoV-2感染に関連する5つの揮発性有機化合物(VOC)を迅速に検出する。

なお、FDAは、陽性だった場合はPCR検査で確認する必要があるとしている。

InspectIR Systemes, LLCによると、開発経緯は次の通り。

2018年にUniversity of North Texas のGuido Verbeck 教授は呼気からのアルコールや薬物を検出する機器を開発した。

Verbeck 教授らと テキサス州FriscoのInspectIR Systemは同年8月、opioid中毒が蔓延するなか (2016年の死者は42,249人)、呼気を分析することにより薬物使用を発見するシステムの商業化で協力することを決めた。

この技術をCOVID-19に応用した。2020年5月に臨床試験を開始した。(当時のテスト方法では偽陽性や偽陰性が多く出た。)

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2022/4/19     厚労省、ノババックス製ワクチン承認へ 
厚生労働省の専門部会は4月18日、米 Novavax, Inc. の新型コロナウイルス感染症ワクチン候補であるTAK-019(販売名は「ヌバキソビッド筋注」)の製造販売を承認ことを了承した。厚労省は近く承認する。国内で4種類目の新型コロナワクチンとなる。

付記 厚労省は4月19日、これを正式に承認した。

ウイルス由来のたんぱく質の一部を培養技術で増やし投与する「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれるタイプで、ワクチン未接種者は18歳以上を対象に、3〜4週間間隔で2回、筋肉内に注射する。3回目の追加接種で使う場合は、2回目から一定の間隔をあける。1、2回目で別のワクチンの接種を受けた人に3回目でノババックス製を打つ交互接種も認める。

2〜8度での冷蔵保存が可能で、輸送・管理がしやすいのが特徴。

米国などで約2万5000人を対象に行われた最終段階の治験では、発症予防効果は90.4%で、安全性の懸念は認められなかったとする。
武田は国内でも約200人を対象に実施し、海外同様良好な結果が得られたとしている。

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Novavax, Inc. から技術提供を受けた武田薬品工業が2021年12月16日、厚生労働省へ製造販売承認を申請した。特例対象となる米国、英国、カナダ、ドイツ、フランスのいずれでも未承認なので、通常承認の申請をおこなった。
日本での申請直後の12月20日にEUの欧州委員会が承認した。(これは特例対象にはならない)
米国では食品医薬品局(FDA)での審査が続いている。

提携概要:

- Novavaxが新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造技術を提供し、武田薬品が日本国内向けにワクチンを製造・流通
- NovavaxがアジュバントMatrix-Mを供給
- 日本政府は本ワクチンの製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップに対し助成

武田薬品は Novavaxからのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領する。
光工場の新型インフルエンザ製造設備を転用、年間2億5千万回分以上のワクチンの生産能力を整備し、ワクチン原液から充填・包装まで製造する。

2021/9/9 武田薬品、Novavaxのワクチンを日本政府に供給 

 

ノババックスのワクチンの特長(2022/3/24 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料)




 


2022/4/20 iPS細胞で椎間板を再生 

大阪大学の妻木範行教授らの研究グループは4月18日、ヒトのiPS細胞から椎間板の中心組織(軟骨様髄核組織)を作って、同じ組織を切り取ったネズミに移植したところ再生し、椎間板の変性を防ぐことができたと発表した。

椎間板は背骨のすき間でクッションの役割を果たしているが、加齢などにより変形したり、無くなったりすると腰痛を引き起こす原因になる。

椎間板の中心部分を構成する組織が髄核で、脊椎にクッション性と可動性を与える。髄核の変性・消失は腰痛の原因になり、変性した髄核は治らない。再生治療が期待されているが、移植して髄核の代わりをする、即ち置換するような組織はなかった。

 

 

今回、研究グループは、髄核と軟骨の遺伝子発現を単一細胞レベルで網羅的に調べることにより、髄核の中の軟骨様髄核組織の性質を明らかにした。

椎間板は、中心部の髄核とそれを取り囲む線維輪で構成される。髄核は髄核細胞と髄核細胞が作る細胞外マトリックスからなる。

髄核の細胞外マトリックスの粘弾性・流体特性が、脊椎にクッション性と多方向への可動性をもたらす。また、細胞外マトリックスは、髄核細胞に適切な環境を提供することにより髄核細胞の分化に貢献している。

そして、ヒトiPS細胞を分化誘導することによって、遺伝子発現プロファイルが軟骨様髄核組織に似た組織(hiPS-Cart)を用意し、脊椎の髄核を摘出した動物モデルに移植した。

移植したヒトhiPS-Cartは少なくとも6ヶ月の長期にわたって生着し、椎間板の変性を防ぐことが明らかになった。力学試験により、移植組織は正常椎間板に近い力学特性を持つことが分かった。

さらに、移植後も椎間板の低酸素環境に順応した細胞分化をすることが分かった。髄核を置換する役割を果たしたことを示唆している。


日本では、約1300万人が腰痛を患い、その20−40%は椎間板変性が原因となっている。椎間板変性は、多くの場合において髄核の変性・消失から始まると考えられている。

研究グループは、有効性や安全性を確認する実験を経て、3年後をめどに臨床研究を行いたいとしている。

2022年3月30日に国際科学誌「Biomaterials」に掲載された。

Human iPS cell-derived cartilaginous tissue spatially and functionally replaces nucleus pulposus

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逆に、椎間板の中心部分にある髄核や外側の線維輪の一部が突出することで脊椎周辺の神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす疾患が腰椎椎間板ヘルニアである。

椎間板ヘルニアや黄色靱帯(脊柱管の後方にある椎弓の間を結ぶ靱帯)が厚くなることで脊柱管を圧迫して狭くし(狭窄)、それによって脊柱管のなかの神経が圧迫を受けるのが脊柱管狭窄症である。

腰椎椎間板ヘルニアの治療には、手術をする方法と、保存療法(鎮痛剤薬、神経ブロック注射、温熱療法、牽引療法等)があったが、根本治療となる薬物療法は存在しなかった。

生化学工業は2013年1月、腰椎椎間板ヘルニアを適応症とするSI-6603(一般名:コンドリアーゼ)について厚生労働省に製造販売承認申請を行ったと発表した。

2018年3月23日に承認、5月22日に薬価収載され、8月1日に科研製薬より発売された。

コンドリアーゼは、髄核の構成成分であるグリコサミノグリカン(GAG:コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸等)を特異的に分解するコンドリアーゼという酵素を利用した注射薬で、椎間板内に直接投与することにより、GAGを分解して髄核を縮小させることで、神経への圧迫を減少させる。

タンパク質を分解しないため、血管や神経などの周辺組織に影響を与えないとされる。

2014/6/11 生化学工業、椎間板ヘルニア治療薬を開発 


2022/4/21  インドネシアで2つの統合バッテリー計画

インドネシアのPertaminaなど国営企業4社で設立したIndonesia Battery Corporation (IBC)は4月14日、2つの統合バッテリー計画の基本契約に調印した。ニッケル採掘から電池までのバリューチェーンを構築する。

Indonesia Battery Corporation(IBC)はインドネシアの国営4社:石油の Pertamina、電力のPLN、鉱業持株会社のMIND ID(Mining Industri Indonesia)、国営ニッケル・金鉱山のPT Aneka Tambang(ANTAM)が2021年に25%ずつの出資で設立した。

第一は、世界最大手の中国の電池会社 寧徳時代新能源科技(CATL)の子会社であるPT Ningbo Contemporary Brunp Lygend  (CBL)との契約である

国営鉱業持株会社のMIND ID(Mining Industri Indonesia)の所有の1社でニッケルなど非鉄金属を扱うPT Aneka Tambang Tbk (ANTAM)を含めた3社で統合EVバッテリー計画の基本契約に調印した。

同プロジェクトにはニッケル採掘・加工から、EVバッテリー素材、EVバッテリー製造、バッテリーリサイクルまでを含んでいる。 能力は10GWhとされる。

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実現すれば、寧徳時代新能源科技(CATL) にとって海外で2つ目の工場となる。

寧徳時代新能源科技(CATL)は2022年4月4日、ドイツのリチウムイオン電池工場におけるバッテリーセルの製造許可を地元当局から取得した。

子会社 CATT(Contemporary Amperex Technology Thuringia)がドイツ中部のチューリンゲン州にある工業団地エアフルター・クロイツに建設する。

ドイツの自動車メーカーに電池を供給する予定で、生産能力は、まずは年間8GWhとし、将来的には14GWhまで拡大する。2022年末までに建設を完了し、生産を開始する見込み。

なお、BASFは2021年9月16日、CATLと協力のための戦略的提携を発表した。リチウムイオン電池用の正極材と蓄電池リサイクルでの協力で、(1)蓄電池の持続可能なバリューチェーンの構築、(2)CATLの欧州でのビジネス展開協力、(3)両社の気候中立目標達成への寄与を目指す。

 

第二は韓国の LG Energy Solution主導のコンソーシアムとの契約で、これもPT Aneka Tambang Tbk (ANTAM)を含めたもの。

LG Energy Solutionのコンソーシアムメンバーは、LG Energy Solution、LG Chem、LX International (旧 LG商事)、POSCO Holdings、中国のZhejiang Huayou Cobalt 浙江華友コバルト) である。

90億ドルを投資し、ニッケルから最終製品までの電池のバリューチェーンを完成させる。

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2021年7月末に、LG Energy Solution と現代自動車が共同で、インドネシアの首都ジャカルタ近郊にEV向けニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム酸リチウム正極(NCMA正極)を採用したリチウムイオン電池セル生産工場を建設することを発表した。

投資金額は両者の折半で合計11億ドル。2024年から、年間10ギガワット時(GWh)(EV15万台相当)の電池セルを生産する。

 

インドネシアの国営4社が設立したIndonesia Battery Corporation (IBC)が中国のCATL、韓国の LG Energy Solutionとそれぞれ協働するもので、両計画を合わせた投資額は150億ドルに達する。

担当大臣は、インドネシアがEVバッテリーのグローバルリーダーの一つになる重要な一歩であると述べた。

インドネシアは電池の主要原料であるニッケルで豊富な埋蔵量(2100万トンとされる)を持ち、国内に関連産業を集積させて車載電池やEVを主要な輸出品目に育てる思惑がある。

 

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参考

MIND IDはIndonesia Asahan Aluminiumの持株会社機能を独立させたもので、これにより、Indonesia Asahan Aluminiumはグループの事業会社となった。

アサハンアルミ(Inalum)はインドネシア国有のアルミニウム精錬会社であるが、2017年に政府の方針で、国有の鉱工業企業の持株会社となった。

2017年11月の政令で、非鉄金属のPT Aneka Tambang (ANTAM) 、錫のTimah Tbk PT (TINS)、石炭のBukit Asam (PTBA)の政府持ち株がアサハンアルミに譲渡された。
各社固有の経営資源と技術の相乗効果を狙う。

インドネシアのジョコ大統領は2018年7月12日、米鉱山大手 Freeport-McMoRan Inc.の現地法人 PT Freeport Indonesiaの株式の51%を国営鉱業大手のPT Indonesia Asahan Aluminium:Inalumが取得すると明らかにした。 世界第2の銅鉱山のGrasberg鉱山を取得する。

2018/7/17 インドネシアのアサハンアルミ、銅鉱山運営のFreeport Indonesiaの株式の51%を取得


2022/4/22 日立製作所、日立物流を売却へ 

日立製作所が、物流大手で株式の39%を保有する日立物流の株式を売却する方向で調整を進めていると各紙が報じた。

米大手ファンドのKKRに売却に向けた優先交渉権を与えた。優先交渉権は4月28日まで。ほかの投資ファンドもこれまで買収交渉に参加しており、交渉が最終的にKKRでまとまるかは不透明な面も残る。

交渉がまとまり次第、KKRは6000億円超を投じ、日立物流のTOBに乗り出す。KKRがTOBを実施すれば日立物流と日立製作所は賛同する見通し。

日立はKKRの買収後も1割の株式は保有し続け、物流システムなどでの協業は継続する。今回の売却で日立は2000億円前後の資金を得る模様。

付記 

KKRは4月28日、日立物流株をTOBで取得すると発表した。TOB価格は1株8913円。

日立製作所は4月28日、売却を発表した。

KKRのTOBには応じない。
日立物流の自己
株式取得じて売却する(譲渡価額2,220 億円)
総額 100 億円公開買付者親会社議決権付株式取得(議決権比率 10)
 これにより、KKRが日立物流の100%を取得した場合、うち10%は日立が所有することとなる。

20233月期連結決算におけるその収益として、事業再編等利益約 1400計上

日立は日立物流の株の59.01%を保有していたが、宅配大手の佐川急便を傘下に持つ「SGホールディングス」との経営統合を目指し、2016年5月に株式の29%をSGホールディングスに譲渡した。
 
世界で戦う日本企業の競争力向上に寄与するべく、両社の強み融合をめざした戦略的施策実現を企図した。(日立 30.01%、SG 29.00%)

しかし、SGホールディングスは 新型コロナウイルスの影響で物流業界を取り巻く環境が大きく変化し、期待された国際物流での相乗効果が薄れたたとし、2020年9月29日付で保有する日立物流株の一部を売却し、持ち分比率を15.27%に引き下げ た。売却分の一部を日立が買い戻したと見られる。
 (日立39.91%, SG 15.27%)

SGホールディングスは2021年4月15日、持分比率の変更を目的として、保有する日立物流の一部株式を市場外取引で売却した。
 (日立 39.91%、SG9.8%)

日立物流はその後も国際的な総合物流グループの形成に向けた提携などの模索を続けていた。

SGホールディングスへの株式売却は下記の非中核事業売却の一環であり、SGとの統合計画は元に戻ったが、売却を進める方向には変わりはない。

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日立製作所は「選択と集中」を旗印に、成長分野と位置づけるエネルギーなどのインフラやIoT(モノのインターネット)事業に経営資源を集中させる方針である。

非中核分野を次々に売却していった。上記のSGホールディングスとの統合を目指し、59.01%保有の日立物流の株式の一部をSGホールディングスに売却したのはその一環である。

2009年に上場子会社は22社あった。

2009年に日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービス、日立プラントテクノロジー、日立マクセルを完全子会社とすべく、TOBを実施。いずれも上場廃止。

2014年に日立メディコと、2016年に日立モバイルと、株式交換を行ない、上場廃止。

2018年にクラリオンを売却した結果、2019年には日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズ (2020/2 日立ハイテクに改称)の4社に減った。

2020年には上場4子会社のうちの日立化成株式を51.29%全てを 昭和電工に譲渡した。

2019/12/2 日立製作所、子会社日立化成を昭和電工に売却へ
2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB 

日立製作所は約53%の株式を保有する上場子会社の日立金属を売却すると報道されていたが、米投資ファンドのBain Capital と日本産業パートナーズ、ジャパンインダストリアルソリューションズのコンソーシアムが独占交渉権を得たことが分かった。日立は持株全てを売却する。この場合、日立化成の場合と同様、上限なしのTOBとなる。

日立製作所は2021年11月30日、保有する日立金属の株式を売却する時期について、当初予定していた2022年3月期から2023年3月期に後ずれすると発表した。日立は日立金属株に対する公開買い付け(TOB)を2021年11月下旬に開始する予定だったが、一部の国で競争法に基づく手続きなどが完了していないという。

日立金属の売却が実施されると、以前の御三家が全て売却されることとなる。

これにより日立製作所は以前の重工業企業から変身する。

2021/4/15 日立製作所、米GlobalLogicを買収、日立金属を売却 & 付記

日立製作所は2021年4月7日、上場子会社である日立ハイテクの完全子会社化に向けてのTOB(@8000円、総額5311億円)が成立したと発表した。買い付け予定株数の下限以上となったため、応募株式の全部を買い付ける。日立ハイテク株の保有比率は51.73%から90.55%に高まる。TOB成立により、日立ハイテク株は2020年5月18日に上場廃止となった。

今回、最後に残った上場会社の日立建機の持株の一部を売却し、子会社から持分法適用会社とする。

これで、2009年に22社あった日立の上場子会社はすべて無くなる。

2022/1/19 日立製作所、日立建機の株式を一部売却


2022/4/23    TSMCの創業者、米国での半導体生産に否定的見解

台湾積体電路製造(TSMC)の創業者、張忠謀(Morris Chang)の発言が波紋を呼んでいる。

4月14日にThe Brookings Institution and Center for Strategic and International Studies の会合にゲストとして呼ばれた。

テーマは「半導体の生産は米国に戻り得るか」"Can semiconductor manufacturing return to the US?” というもの。

https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2022/04/Vying-for-Talent-Morris-Chang-20220414.pdf

初めに、彼の経歴を説明した。

 1931年 中国寧波生まれ、香港育ち、第二次大戦で重慶に移住、戦後上海に移るが、共産軍の上海占領で再度、香港へ
 1949年訪米、Harvardへ。1年でM.I.T に移る。卒業後、Texas Instrumentに入社
 Texas Instrument では最終、CEO、COOに次ぐNo.3に昇進、世界全体の半導体事業を担当
 その後、同社が消費者事業に中心を転換、半導体事業は競争力を失った。

 52歳の時に同社を辞め、General Instruments の社長に就任、Trump Towerに住んだ。
 General Instrumentsは小企業を買収、大きく育てて売却する会社で、面白くなく、1985年に退職。

 Texas Instrumentの時に台湾に工場を作ったことがあり、台湾政府の関係者がIndustrial Technology Research Instituteにリクルートした。
    ITRI で半導体を開発、TSMCが設立された。

 

その後、本題のCan semiconductor manufacturing return to the US?” に入った。

TSMCはワシントン州のCamasに工場を持つが、今回、アリゾナ州 Phoenix に工場建設を決めた。

8-inch Fabs(200mm) WaferTech L.L.C.(ワシントン州 Camas) 
12-inch GIGA FABs(300mm) 建設中  アリゾナ州 Phoenix

      2021/10/18     半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設

まず、ワシントン州の工場の経験について述べた。

まず、製造の人材が欠けている。(There’s a lack of manufacturing talents to begin with.)
米国ではこれは大した問題でないかも分からないが、米国で半導体を生産する場合には大問題だ。
オレゴン(実際はワシントン州)
では25年かかった。台湾から技術者を送り、改善を図り、なんとかなった。

しかし、コスト差は変わらない。同じ製品で台湾より50%高い。それでもなんとか黒字だが、台湾とは比べ物にならない。
1997年に始めた際にはコストは台湾と同じと思っていた。ナイーブ過ぎた。
数年やって、仕方ないと受け入れた。それでも儲かっているから続けているが、増設はしない。

話題は建設するアリゾナ工場に移る。

Arizonaはスケールがもっと大きい。規模も大きく、技術ももっと先端のものだ。米国政府に言われて決めた。実際には私は退任しており、現在の会長が決めた。

米国は国内で半導体の生産を増やそうとしているが、たった数百億ドルの補助金を考えている。(議会は5年間で520億ドルの補助金の法案を審議中)
そんな額では十分でない。無駄に終わると考えている。なんとか工場を作るだろうが、単位当たりコストは高い。世界市場で、TSMCのような工場と競争しえない。

米国と台湾がもっと関係を深め、共同でやっていくのはどうかとの質問に対し、政治問題に関わりたくないとし、中国との関係を問われると次のように答えた。

状況が変わることを望んでいる。現在、すでにHuaweiへの出荷を禁じられている。1年以上もだ。以前は世界の誰にも出荷できたが、そんな時代は過ぎ去った。もっと悪化しないことを望んでいる。

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発言の理由の一つは、米政府が約束した補助金の法律がいまだに通っていないことへの不満である。

バイデン米大統領は2021年2月24日、重要部材のサプライチェーン(供給網)を見直す大統領令に署名した。半導体や電池など重点4品目で安定した調達体制を整える。

2021/10/22 半導体供給問題:米国の場合 

米政府は、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け、500億米ドルの補助金を決めた。

TSMCもSamusungもIntel も、これを確認したうえで新工場建設を発表している。

 

米上院は2021年6月8日、拡大する中国の影響力に対抗することを目的とした異例の超党派法案 United States Innovation and Competition Act を可決したが、半導体・通信機器の生産・研究の強化に5年間で約540億ドル(うち20億ドルは、深刻な供給不足に陥っている自動車向け半導体に充当)が含まれている。

2021/6/11   米上院、対中包括法案を可決

しかし、この法案は「中国対抗法案」との位置づけで、新興技術の研究開発や台湾の支援強化など様々な条項を盛り込んだため、下院との法案すり合わせに時間がかかった。

米下院は本年1月25日にようやく、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案The America COMPETES Act of 2022 を公表した。上院と同様、5年間で520億ドルの補助金を含む。

今後は下院で法案を可決したうえで、上下院で法案の一本化をまとめ、それぞれが議決することが必要で、いつ通るか不明である。

2022/2/1    米下院、半導体補助金法案を公表

 

なお、IntelのPat Gelsinger CEOが2021年は12月1日に、「米国政府は(TSMCのような外資ではなく) Micron TechnologyやTexas Instruments、Intelといった米国の半導体メーカーにこそ優先的に補助金を支給し支援をすべきだ」と述べた。

この時も張氏は「米国は、もう昔のような半導体が強い国に戻ることは不可能だ」と発言し、米への不満をあらわにしている。


2022/4/26    中国人民銀行、外貨預金準備率を引き下げ 

中国人民銀行(中央銀行)は4月25日、銀行の外貨預金準備率の引き下げを発表した。5月15日から現行の9%から8%とする。

人民元の下落に歯止めを掛けるための措置とみられ、「金融機関が外貨資金を利用する能力を改善する」ための措置と説明した。金融機関が人民元を売って外貨を買う動きを弱める。

上海などの主要都市のロックダウンを受けた経済見通しの悪化、米との金利差縮小で、人民元は3月2日の6.3107元を天井に下落に転じ、先週は2015年以来の大幅下落を記録、4月25日 に1年ぶりの安値の1ドル=6.5544元で通常取引を終えていた。

 

人民元は2020年5月から急上昇したが、これに対し中国人民銀行は外貨預金準備率を2021年6月15日から5%から7%に引き上げ (2007年に4%から5%に高めて以来、14年ぶり)、更に2021年12月15日からは9%に引き上げていた。

 

なお、これは外貨預金の準備率であり、一般の預金準備率は4月25日に0.25ポイント引き下げ(地方商業銀行は 0.50ポイント引き下げ)ている。


2022/4/27  住友金属鉱山、インドネシアの Pomalaa ニッケル精錬プロジェクトの事業化検討を中止  


住友金属鉱山は4月25日、インドネシア共和国
Southeast Sulawesi ProvinceKolaka市Pomalaa地区でのニッケル製錬所建設Pomalaa Project事業化検討を進めてきたが、これを中止すると発表した。

2012 年に PT Vale Indonesiaと共同でPre-Feasibility Studyを開始し、2018 年からは 最終的な事業化調査を進めてきた 。

PT Vale Indonesiaの株主は、Vale Canada Limited 43.79%、国営PT Indonesia Asahan Aluminium(Inalum) 20.00%、住友金属鉱山 15.03%その他 21.18%
Inalum は2020年10月に主要各株主から譲渡を受けた。

2020/6/25 住友金属鉱山、インドネシアのニッケル事業会社の株式の一部を売却

新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、 許認可の取得手続きが難航、更に、ビジネスを早期に収益化するため迅速な建設や予算削減を求めるVale Indonesiaと、工期や採算の調整を慎重に進めたい住友金属鉱山で方向性の相違が生じ、Valeが第三者との協業の検討を始めたため、検討を中止せざるを得ないとの判断に至った。

 

住友金属鉱山の2021年の中期経営計画では、長期ビジョンとして「世界の非鉄リーダーを目指す」とし、ターゲットとして、ニッケル生産量15万トン/年としている。

また、大型プロジェクトの推進として、電池材料(正極材)生産能力増強とこのPomalaaニッケル精錬プロジェクトを挙げている。
(他に
チリ銅鉱山Quebrada Blanca Phase2 とカナダのCôté金開発プロジェクト

ニッケル、コバルトは車載用二次電池の正極材に使用される。

ニッケル精錬に関しては、同社は世界に先駆け高圧硫酸浸出法(High Pressure Acid Leach:HPAL)実用化に成功した。従来は製錬の対象とならない低品位のニッケル酸化鉱から、ニッケルやコバルトといったメタルを回収できるプロセスで、未利用資源の有効活用という側面からも注目されている。

ニッケル鉱石は、フィリピンとインドネシアが2大産出国で、有力鉱山はアジアを中心に分布してい るが、地球上に存在するニッケル資源の多くは低品位酸化鉱と呼ばれるニッケル含有量のきわめて少ない鉱石である。

現在、フィリピンのコーラルベイニッケルとタガニートHPALでは、MS(Mixed Sulfide)と呼ばれるニッケルとコバルトの混合硫化物を生産、これを原料として日本のニッケル工場と播磨事業所で製錬を行ない、電気ニッケルや電気コバルト、硫酸ニッケルなどを製造し、正極材にしている。

鉱山 HPAL 能力(千トン)

出資

鉱山所有
住友金属鉱山 三井物産 双日 Nickel Asia
Rio Tuba鉱山 Coral Bay Nickel 30→36 54%  18%  18% 10% Nickel Asia 60%
Taganito鉱山 Taganito HPAL 20 62.5%→75% 15.0%   22.5%→10% Nickel Asia 65%
 Sulawesi Pomalaa 40      

Nickel Asiaはフィリピン最大手のニッケル鉱山会社 で、住友金属鉱山は2009年8月に16.5%出資、同年12月に25%に増やした。

2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得

住友金属鉱山では、Pomalaaプロジェクトを長期ビジョンの1つである「ニッケル 15万トン体制」の実現に向けたニッケル資源戦略の中心に据えていた。

同社では、この結果は遺憾だが、中期経営計画に掲げた「事業連携(ニッケル-電池)のバリューチェーン強化」ならびに製品の安定供給に向け、今後も資源の安定確保に努めていくとしている。


2022/4/28 ロシア、ポーランドとブルガリアに天然ガス供給停止 

ポーランドの国営ガス会社PGNiGは4月26日、ロシア国営Gazpromから天然ガス供給を4月27日から停止するとの通知を受けたと発表した。詳細な理由は明らかになっていないが、ポーランドがガス購入でルーブル決済を拒否し、ロシアが圧力を強めた可能性がある。

また、ポーランド内務省は4月26日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)や、Gazpromを含めたロシア企業50社を対象に制裁を科すと発表した。資産凍結や、ポーランドへの入国禁止などが含まれる。この制裁とロシア産天然ガスの供給停止が関係あるかは不明。

付記 報道(5/5 BSフジ・プライムニュース)によると、ポーランド側が自らベラルーシからのパイプラインを閉めて、ロシア天然ガスの購入を停止したとのこと。

付記 

Gazpromは5月12日、ポーランドなどを経由するパイプラインYamal Europeを通じた天然ガスの供給を止めると明らかにした。

ロシア政府が5月11日に発表した制裁対象に、パイプラインの一部を所有するポーランド企業EuRoPol GAZが含まれていたため。

Gazpromは、「制裁対象者の利益となる取引や支払いが禁止された。Gazpromの場合はEuRoPol GAZが所有するガスパイプラインの使用が禁止される」と説明した。

 

ポーランドはベラルーシ経由のYamal Europeパイプラインでガスプロムからガスを輸入してきた。

なお、ウクライナを経由するパイプラインは現在も稼働しており、ウクライナも天然ガスを購入し続けているとされる。

Nordstream 2 は完成したが、認可をうけておらず、稼働していない。

2021/11/13

ポーランド政府は、一定のガス貯蔵量を確保しているほか、他国からの液化天然ガス(LNG)などの代替手段もあるため、国内供給は「安定している」としている。ただ、これまでロシア産ガスは国内消費の約5割を占めており、今後、産業用などの利用制限が必要となってくる可能性もある。

ロイター通信によると、ブルガリアも同様に4月27日からのガス供給停止を通知された。
ブルガリアのエネルギー省は4月26日、ロシアからのガス供給停止に対し「状況に対応するための措置を講じた」と主張した。同国ではこれまでガス輸入の約9割をロシアに頼ってきた。

ブルガリアはTurkStream pipelineを経由してロシアの天然ガスを購入している。

2020/1/10 トルコストリーム開通 


ウクライナ侵攻後では、ロシアが天然ガス供給を停止するのは初めてで、経済制裁などを強める欧州に揺さぶりをかける狙いがありそうだ。

 

ロシアのプーチン大統領は3月23日、非友好的と指定した国がロシアから天然ガスを購入する際には通貨ルーブルでの支払いしか認めない方針を示した。

欧州などの取引企業がガスを買う場合、国営ガス会社Gazprom傘下のGazprombank にユーロなどの外貨建てとルーブル建ての両方の決済口座を開設する必要がある。Gazprom は4月1日、需要家に指示した。

Gazprombankは口座に振り込まれた外貨を市場で売却し、ルーブルを買い入れる。その後、同行が取引企業の口座からルーブル建てで代金をGazpromに送金する仕組みをつくる。

2022/4/4 ロシア、天然ガス代のルーブル払い義務化 

欧州連合(EU)の欧州委員会は契約でドルやユーロでの支払いを規定している場合は応じるべきではないとの見解を示しており、ポーランドはルーブル決済を拒否している。

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ロシア案の仕組みであれば、買い手は契約通りのユーロで支払ったと言え、売り手のGazpromはルーブルで支払いを受けたと言うことができる。

買い手が直接ルーブルで払う場合は各国の市中で多額のルーブルを入手するのは困難だが、この場合は問題ない。

欧州委員会は、代金の支払いのためルーブルを買い、Gazpromに支払うのは契約条件違反で、ロシア制裁にも違反するとしている。

しかし、上図の通りであれば自らルーブルを買う必要はない。Gazprombankにルーブル口座を設定すること自体(元の契約にはない)を拒否するということであろうか。


2022/4/29 インドのReliance、アブダビでクロルアルカリ、EDC、PVCのJV 

インドのRelianceは4月26日、UAEのAbu Dhabi Chemicals Derivatives Company RSC Ltd (TA’ZIZ) との間で、RuwaisのTA’ZIZ Industrial Chemical Zoneで20億ドルを投じて、クロルアルカリ / EDC / PVC工場を建設するJVを設立する契約を締結した。

TA’ZIZはAbu Dhabi National Oil Co (ADNOC)と国営ファンドのADQのJVである。

生産能力は、クロルアルカリが94万トン、EDCが110万トン、PVCが36万トンと報じられている。いずれも同国で最初のもの。

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アブダビのRuwaisにはADNOCの油田(ADNOC Onshore)、同製油所、Abu Dhabi Polymers (Borouge)、Ruwais Fertilzerがある。

2006/6/2 湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)
2010/6/15 
UAEのBorouge、石油化学第三期計画進展

ADNOC と ADQはAbu Dhabi Chemicals Derivatives Company RSC Ltd (TA’ZIZ) を設立、RuwaisにTA’ZIZコンプレックスをつくり、グローバルスケールで多くの化学製品を生産することを計画している。

TA’ZIZ コンプレックスは3つのゾーンに分かれる。(下図の08と09)

 TA’ZIZ Industrial Chemicals Zone  ワールドスケールの化学品の生産、ほとんどが同国初である。

アンモニア、クロルアルカリ、EDC、PVC、メタノール、エラストマー、イソプロピルアルコール、無水マレイン酸

 TA’ZIZ Light Industrial Zone  上記の製品を使用し、下記の消費財を生産

  • Non-metallic pipes (PE, PP, PVC and etc.)
  • Pipe fittings (PE, PP and etc.)
  • Catalyst production
  • Plastics Recycling
  • Plastics masterbatches/compounding
  • Fiberglass and applications
  • Heavy duty bags
  • Shrink hood films

 TA’ZIZ Industrial Services Zone ユーティリティ、ロジスティック、各種サービス

 

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