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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2022/6/1 
中国、南太平洋島しょ国と外相会議、安保面の合意はできず  

南太平洋の島しょ国など8カ国を歴訪している中国の王毅国務委員兼外相は5月30日、フィジーで島しょ国9カ国との外相会議をオンラインで開催した。

ソロモン諸島、キリバス、サモア、フィジー、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニアの7か国と東ティモールの計8カ国を歴訪
ミクロネシア連邦、ニウエともオンライン形式で会談した。(当初はクック諸島も入った10カ国としていたが、参加していない)
台湾と国交を結んでいるツバル、マーシャル諸島、パラオ、ナウル4か国は除外している。

中国は、数百万ドル規模の援助、自由貿易協定の展望、中国市場への参入機会提供を提案。見返りとして、各国の警察の訓練、サイバー安全保障への関与、政治的関係の拡大、海洋地図の作成、天然資源の利用拡大を求めたという。  

経済面の連携強化などについては一致したが、中国側が求めていた安全保障での協力は合意できなかった。

中国は4月に艦船や軍隊の派遣を認める内容の安全保障協定をソロモン諸島と結んだ。ほかの島しょ国とも安全保障面での協力強化を模索しているが、今回の外相会議ではミクロネシア連邦が反対したとみられる。

ミクロネシア連邦大統領は他の当事国首脳に宛てた書簡で、中国側の提案は一見すると魅力的だが、中国に対し「われわれの地域への参入と支配」を許すものだと警告。提案は「不誠実」であり、中国による政治介入、主要産業の支配、通話や電子メールの大量監視が可能になると指摘した。  

ミクロネシア連邦(とマーシャル諸島、パラオ)は 元米国の信託統治領で、独立後、米国と自由連合盟約を締結しており、南太平洋諸国の中でも米国と特に緊密な関係にある。

中国外務省報道官は記者会見で「各国はより多くの共通認識に達することを目指して努力することに同意した」と述べ、協議を継続する意向を示した。

王毅国務委員兼外相は5月27日にキリバスでマーマウ大統領と会談し、「国交樹立以来、両国関係は発展し、国民に実質的な利益をもたらした」と強調した。キリバスは2019年9月に台湾と断交して中国と国交を樹立、中国はキリバスとも安全保障協定締結に向け交渉を進めている。

またサモア政府の声明によると、5月28日のフィアメ首相と王氏との会談では、経済や技術分野での協定を締結したほか、安全保障についても議論した。

一方、オーストラリアや米国は、中国の影響力拡大を警戒して巻き返しを図っている。バイデン米政権は5月26日、米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」にフィジーが加わると発表した。

付記

キリバスが2022年7月11日、地域機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」からの離脱を表明
事務局長選出過程に対する不満

バイデン政権は、キリバスとトンガに大使館を開設するため、両国と協議を開始すると発表

付記

2022年8月にソロモン諸島が米沿岸警備隊の巡視船の寄港を拒否(4月に中国と安全保障協定を締結)

  各国・地域名 台湾国交 Pacific Islands Forum 中国
外相会議
自由連合
盟約
2022/9/29
Summit
訪問 会議
メラネシア パプアニューギニア    
フィジー    
ソロモン 2019/9断絶  
バヌアツ    
ポリネシア サモア    
トンガ    
クック諸島        
ツバル        
ニウエ        
ミクロネシア ミクロネシア    
キリバス 2019/9断絶 〇離脱?    
マーシャル      
パラオ      
ナウル        
  東チモール          
豪州            
NZ            
米国          

付記 バイデン大統領は9月29日、太平洋島嶼国首脳を招いた会議を初めて開いた。

参加したのは上記〇印とFrench Polynesia、New Caledoniaの14島嶼国で、豪州とNZがオブザーバーで参加した。

協力強化に向けた「米太平洋パートナーシップ宣言」に署名した。
ソロモン諸島は当初、声明に参加しないとしていたが、中国に配慮して表現を修正させたうえで署名した。

 


2022/6/2     Lanxess、Advent International とエンプラJVを設立、DSMのエンプラ事業買収、自社エンプラ事業も拠出 

Lanxess と米国のプライベート・エクイティ会社で、化学業界における経験が最も豊富な世界でも有数の金融投資会社のAdvent Internationalは5月31日、高機能エンジニアリング樹脂のJVの設立を発表した。

両社はRoyal DSMからDSM Engineering Materials businessを買収する契約を締結した。JVの事業を構成することになる。

DSMのEngineering Materials businessはポリアミド(PA6, PA66) や特殊品(PA46, PA410, PPSなど)   を扱っている。欧州、米国のほか、アジアでも強い。

買収価額は37億ユーロで、AdventのJV出資金と外部借入金で賄う。
年間売上高は15億ユーロ。

更に、Lanxessは自社のHigh Performance Materials 事業(ポリアミド、PBT、繊維強化プラスチック構造材Tepexなど)をJVに拠出する。この年間売上高は 15億ユーロ。

新JVはAdventが現金出資、Lanxessが事業を拠出するが、Adventは最低60%の出資となる。Lanxessは事業拠出で最低11億ユーロの現金とJVの株式40%弱を受け取る。

Lanxessはこの11億ユーロを借入金返済と自社株買い入れに使う。

 

なお、Lanxessは早くて3年後にJV持分全てをAdventに売却する可能性がある。

ーーー

LANXESSは2004年7月にBayerから分離独立した。

2006/9/6 Bayer と Lanxess

現在の事業は次のとおり。

1) Advanced Intermediates:中間体、無機顔料
2) Specialty Additives:添加剤子会社Rhein Chemie、樹脂添加剤、潤滑油添加剤
3)  Consumer Protection:香料、物質保護剤、液体処理、受託製造子会社Saltigo
4) Engineering Materials:High Performance Materials(今回拠出)、Urethane Systems

同社の以前の中核事業の一つであった合成ゴム事業はSaudi Aramcoとの50/50JVのARLANXEOとしたが、その後、Aramco 100%とした。

2019/1/1  Saudi Aramcoと LANXESS のJV のARLANXEO、Aramco 100%に

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DSM2007年に新しい戦略 Vision 2010 Building on Strengths strategy を発表した。下図の緑色の部門を売却し、Life Sciences Materials Sciences へのシフトを進めるとした。

DSMは2021年9月に「Health, Nutrition & Bioscience companyになる」と宣言、エンジニアリングプラスチック等のMaterials 部門については売却を含めて、どうするか検討すると述べた。

2020年にResins & Functional Materials事業Covestroに売却している。

Materials部門で残るのは、ポリアミドと超高分子ポリエチレン繊維「ダイニーマ」などで、これらの売却を決めた。

ポリアミドについては売却先候補に宇部興産が挙がっていた。

2022/2/3   DSMの変身

今回、ポリアミド等についてLanxess /Advent International への売却をきめたが、残る「ダイニーマ」についても売却した。

特殊材料大手メーカーAvient Corporationは4月10日、Royal DSMとの間でDSM Protective Materialsを買収することで合意、契約を締結したと発表した。超高分子量ポリエチレンDyneema事業が含まれる。
買収金額は約14.85億ドル。

Avient Corporationは、オハイオ州に本社を置く特殊ポリマー材料のグローバルメーカーで、熱可塑性コンパウンド、プラスチック着色剤・添加剤、熱可塑性樹脂およびビニル樹脂が含まれる。


2022/6/3   ロシア制裁の盲点

バイデン米大統領は3月8日、ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。同日に大統領令に署名し、即日発効した。

大統領は「米国はロシア経済の大動脈を標的にしている。ロシアの石油、ガス、エネルギーの輸入を全面的に禁止する」と述べ、「世界中の同盟国、特に欧州と緊密に協議して決めた。欧州の同盟国・有志国の多くが我々(の輸入禁止)に加われない参加しないと理解したうえで禁輸する」と強調した。また、「欧州と協力してロシアへのエネルギー依存を減らす長期的な戦略もつくっている」と述べた。

2022/3/9   ロシア産原油禁輸、米が追加制裁 即日発効 英は年内停止

EUの欧州委員会のフォンデアライエン委員長は5月4日、欧州議会で、ウクライナ侵攻を受けた対ロシア制裁第6弾として、ロシア産原油の段階的輸入禁止、主要銀行や放送局への制裁措置を提案した。

EUは5月30日夜、ロシア産石油のEUへの輸入を禁止することを柱とする追加制裁で合意した。
発動後ただちに3分の2の輸入が止まり、年内に90%以上になるという。

但し、天然ガスの輸入禁止は当面は無理である。

2022/5/7   EUが対ロ追加制裁案、原油の段階的禁輸やSberbankのSWIFT除外

ロシアの政府系電力会社 PJSC “Inter RAO”の北欧子会社RAO Nordic Oyは5月13日、電力代金の支払い問題でフィンランドへの送電を14日から停止すると発表した

Fingridでは、ロシアからの電力は国内需要の1割を占めるが、「スウェーデンからの輸入増や国内の供給増で不足分を賄える」としている。

フィンランドの電力自給体制はどんどん改善しており、特に風力発電が増加している。本年だけでも追加の2000メガワットの風力発電が稼働する。

フィンランドのTeollisuuden Voima Oy(TVO)は2021年12月21日、2005年から建設中だったOlkiluoto原子力発電所3号機(出力172万kWの欧州加圧水型炉:OL3)が臨界条件を達成したと発表した。本年6月からは営業運転を行う。(Olkiluoto島には、原発から出る放射性廃棄物の地下最終処分場 Onkaloが併設されている。)

2023年に電力自給が完成する予定。

2022/5/16  ロシア政府系電力会社、フィンランドへの送電を停止

 

ロシア産の原油、天然ガス、石炭の輸入をやめた場合、代替のエネルギーの一つが原子力発電である。ここで問題になるのは濃縮ウランである。
ロシアの濃縮ウランの輸入をやめると、原発も動かなくなる。

米国政府は3月にロシア産の天然ガス・原油・石炭の輸入を禁止したが、ウランを制裁対象にすることはなかった。

2020年時点で米国が輸入する天然ウランの17%がロシアからのものであり、原子力発電の燃料の濃縮ウランの23%がロシアから供給されている。

燃料としては、核分裂しづらいウラン238を分離し、ウラン235の割合を3〜5%に濃縮する必要がある。

天然ウランのロシア依存からの脱却は比較的容易だが、ウラン濃縮ではロシア依存からの脱却が困難である。

米国政府は一時、Rosatomへの制裁を検討したが、国内の原子力事業者に深刻な影響を与えることを危惧して、その実施を見送った。

ウラン、ウラン濃縮の世界シェアは下記の通りで、ウランそのもののロシアのシェアは低い。


          https://world-nuclear.org/

 

ウラン濃縮会社の世界市場シェア(2020年) operational and planned (thousand SWU/yr)

 

能力

   
TVEL Fuel 28,663 43% Rosatom傘下のAtomenergopromの子会社
URENCO

欧 14,900
米   4,700

29% 英政府、蘭政府、独電力連合(E. ON及びRWE)、各1/3出資
Cogema 7,500 11% 仏Oreno(旧Areva)傘下
中国核工業 10,700+ 16%  
日本原燃 75   六ケ所村
その他 170    
合計 66,708    

  source:https://world-nuclear.org/

TVEL Fuel:ロシア、中国、インド、イラン、アルメニア、ブルガリア、ウクライナ、フィンランド、スロバキア、ハンガリー、チェコ等にある原発への燃料の供給

ウラン濃縮は、Angarsk電解化学コンビナート、Ural 電気化学コンビナート、生産合同電気化学コンビナート、シベリア化学コンビナートのロシア国内4か所

カザフスタンとロシアなどのウラン鉱石が加工される。

URENCO:1971年に設立。濃縮工場は、英 Capenhurst、蘭 Almelo、独 Gronau、米ニューメキシコ州Euniceにある。

Cogema:ウラン濃縮は仏 Georges Besse II工場

中国核工業集団公司(CNNC):2013年に蘭州市のウラン濃縮工場で100%の国産化、実用化を実現

米国のウラン濃縮能力は近年一貫して低下している。 冷戦終結以降、核兵器に充填されていた高濃縮ウラン(濃度は90%以上)から転換された安価なロシア産低濃縮ウラン(濃度は3〜5%)が大量に輸入されたことで、米国のウラン濃縮企業が壊滅的な打撃を被ったことが関係している。  

 

フィンランドは2023年に電力自給が完成する予定としているが、いまも18基のソ連製原発が稼働し、さらに、核燃料の供給も受けている。だが、ロシアのウクライナ侵攻で、核燃料を運ぶ鉄道網が寸断され た。核燃料がなくなると、電力自給は不可能となる。

電力供給に占める原発の割合が5割前後と高いスロバキアとハンガリーは鉄道輸送途絶でパニックに陥った。

編み出した解決策はロシアからの空輸で、EUはロシア機の上空通過を禁じる措置を導入したが、特例でこれを認め、3月にスロバキア、4月にハンガリーに核燃料が運ばれた。

ハンガリーの原発は、ブダペスト南方にあるPaks原発のみ。旧ソ連時代の技術で1980年代に建設され、国内電力の半分近くを供給している。ロシアの核燃料は、以前はウクライナ経由で鉄道で輸送されていたが、これが利用できなくなったため、核燃料を積んだロシア機が、ベラルーシ経由でEU加盟国のポーランド、スロバキアの空域を通り、4月6日にハンガリーに到着した。

ハンガリーの Orban首相は4月6日にPutin大統領と電話会談し、ロシアから輸入する天然ガスの対価をルーブルで支払う用意があると表明した。

 


2022/6/3 OPECプラス、7月の減産縮小幅を拡大、8月に減産終了

OPECプラスは6月2日、オンライン会合を開き、今後の原油の生産量を協議した。7月の減産縮小(=生産増)を本来の43.2万バレルから64.8万バレルに増やし、8月で減産を終了する。

OPECプラスは2021年7月18日の閣僚協議で、協調減産を8月から毎月日量40万バレルずつ縮小すると決めた。減産縮小は当時の約580万バレルの減産が解消するまで続け、「22年9月末までに生産調整を終了するよう努める」とした。

OPECプラスは各国の生産枠を2022年5月に下記の通り変更した(2021/7 決定)。この結果、5月、6月については各43.2万バレルの減産縮小を行なった。

これを続ければ9月で減産が終了するが、今回、9月の最後の縮小分の43.2万バレルを7月と8月に均等配分し(各月プラス21.6万バレル)、各64.8万バレルとした。

なお、IEAによると、4月のロシアの生産量は計画比で日量134万バレル未達とされる。

 

中東歴訪中のバイデン米大統領は7月15日、サウジアラビア西部ジッダで同国のサルマン国王やその息子で実質的な最高実力者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子らと会談した。双方はロシアのウクライナ侵攻を一因とするエネルギー価格高騰への対応などを協議。バイデン氏は2018年に起きたサウジ人記者殺害など人権問題でサウジを批判してきたが、会談は米サウジ関係の「リセット」をアピールする場となった。

会談後に記者会見したバイデン氏は「数週間のうちに世界の石油供給にさらなる進展があるだろう」と述べ、石油増産に向けたサウジへの働きかけに手応えをみせた。中東への再関与により、「中東の空白地帯を中国やロシアが埋めるようなことは許さない」とも強調。サウジの軍事介入で人道危機が深刻化しているイエメン内戦の停戦延長に向けた協力で合意したほか、サウジの防衛力強化なども話し合った。

バイデン大統領の要請にもかかわらず、OPECプラスは8月3日、9月の増産を日量10万バレルのみにとどめた。

 

各国の生産枠は2022年5月以降、修正された。  

各国の生産枠と、IEAが発表した生産能力、生産実績は下記の通り。3月時点では生産は枠未達となっている。

 

 


LG化学は電池部材のうち、正極材と分離膜、接着剤を自前で手掛け、電池子会社のLGエネルギーソリューションに供給している。 バッテリーセパレータフィルムは東レと組むことで、調達量の確保を急いでいる。

東レは2021年10月、LG Chemとの間で、東レ100%子会社のハンガリーのリチウムイオン二次電池(LIB)用バッテリーセパレータフィルム製造・販売会社「Toray Industries Hungary Kft.」に対してLG Chemが新たに375百万ドルを出資し、持分比率50:50の合弁会社「LG Toray Hungary Battery Separator Kft.」を設立することに合意したと発表した。

合弁会社はToray Industries Hungaryの現有設備で車載用LIB向けバッテリーセパレータフィルムを製造し、LGグループの欧米拠点向けに販売することを目的としている。 

また、今後の需要拡大に備え、敷地内においてフィルム基材の製膜設備の増強と、コーティング加工設備の新規導入を進めていくことに加え、合弁会社設立から2年半経過後に東レ持分の20%をLG Chemに有償譲渡し、以降はLG Chemが経営・事業の主体を担うことにも合意した。

車載向けLIB用バッテリーセパレータフィルムにおいて、LG Chemはコーティング技術、東レはフィルム基材の製膜技術に強みを持つ。合弁会社では、LG Chem、東レからそれぞれが保有する技術をライセンス供与し、両社の強みを生かしてシナジーを発揮する。


2022/6/6   DuPontの再編 

DuPontは2022年6月1日、Biomaterials business のHuafon Group華峰集團への約240百万ドルの売却が完了したと発表した。6月1日付でHuafonの子会社Covation Biomaterialsがスタートした。 2021年の売上高は約2億ドルであった。

2020年に売却を発表していたが、売却先は明らかにしていなかった。

売却した事業には、下記のSoronaと、Susterra(100% 植物ベースの高機能グリコール)、Zemea(植物ベースで生分解性プロパンジオール)などの製品が含まれる。

Sorona(Tate & Lyle とのSorona propanediol JV):

DuPontと英国のTate & Lyle の折半出資による合弁会社、DuPont Tate & Lyle Bio Products, LLC, は2007年6月8日、テネシー州のLoudon 工場でBio-PDOの商業生産を祝う式典を行った。

同工場は世界で初めて再生可能原料(トウモロコシの糖分:corn sugar) から1,3-propanediol (商品名Bio-PDO)をつくる工場で、年産能力45千トン、建設費は1億ドル。

2007/6/13 DuPont、Bio-PDOの商業生産開始

Huafon Group華峰集團)は浙江省瑞安市を本拠とする企業で、下記の製品を扱っている。

ーーー

DowDuPont Inc.は2019年6月1日、農業部門をCorteva, Inc.として分離し、社名をDuPont de Nemours, Inc. に改称した。Specialty Productsの会社となる。

DowDuPont Inc.は4月1日にMaterial Science事業をDowとして分離している。

これにより、2017年9月1日にDowとDuPontが合併してできたDowDupontの再編成が完成した。

2019/6/12 DowDupont 分離完了 

 

新生DuPontは引き継いだ事業を整理し、下記3つの事業を中心とすることとし、他の事業は売却することとした。

 @ electronics and industrial
 A mobility and materials
 B water and protection

まず、Nutrition & Bioscienceを売却した。

香料メーカーのInternational Flavors & Fragrances(IFF)は2019年12月、DuPont傘下で食品添加物・原料の製造を手掛けるNutrition & Bioscienceを262億ドルで買収する合意に達した。買収合戦でアイルランドのKerry Group plcに勝利した。

買収に伴い、IFFとNutrition & Bioscienceを統合した新会社International Flavors & Fragrances(IFF)が設立された。DuPont株主が55%、IFF株主が45%となる。

DuPontは完了時に73億ドルの現金を受け取った。

下記については売却先を見つけた。

 @DuPont Clean Technologies(alkylation, sulfuric acid regeneration and other emission control technologies)

2021年2月3日、BroadPeak Global, Asia Green Fund, The Saudi Arabian Industrial Investments Company (Dussur) のコンソーシアムに510百万ドルで売却することで合意した。

 AHemlock Semiconductor (40%持分)

当初 Dow Corning Corporation68.25%)、信越半導体(19.50%)、三菱マテルアル12.25%) のJVで、その後、三菱マテリアルが撤退した。

2016年にDowとCorningがDow Corning JVを解消、Hemlockの株主はDuPont とCorningと信越半導体になった。

今回、DuPontが株式を他株主に725百万ドルで売却した。現在はCorning Inc. 80.5%, 信越半導体19.5%。

 BBiomaterials unit(Tate & Lyle とのSorona propanediol JVを含む)を不開示の相手に240 百万ドルで売却した。
   今回、これがHuafon Group華峰集團)への売却と判明 した。

なお、 当初売却を予定した次の事業は保持することとした。いずれもMobility and Materials divisionに属する。

 @Tedlar PVF film

 Amicrocircuit materials

 BDuPont Teijin Films持分  但し、下記のとおり、2022年に売却を決定

帝人とDuPontは2000年よりポリエステルフィルム事業を統合し、世界7カ国で合弁会社を設立してグルーバルに事業を運営してきた。

日本とインドネシアの合弁については2016年8月に帝人100%とすることを決めた。
2017年10月10日、残る米国、英国、ルクセンブルグ、中国のJVをIndorama Netherlands B.V.に売却することを決定したと発表した。

しかし、発表はなかったが、この売却計画は頓挫した。

2020/2/1 デュポンと帝人、フィルム合弁を再び売却へ 


上記の通り、
DuPontは3つの部門、@electronics and industrial, Amobility and materials, B water and protectionで構成されることとなったが、DuPontは2021年11月2日に「戦略的レビュープロセス」を発表した。

1)Rogers Corporation 買収

DuPontはエンジニアリング素材メーカーの米Rogers Corporation を約52億ドルで買収することで合意した。

Rogersは電気自動車(EV)や高速通信規格「5G」関連機器向けの高周波用プリント基板材料など、高機能・高付加価値の先端電子部材に特化し、北米、欧州、アジアに計14カ所の生産拠点を持つ。2021年通期の売上高見通しは約9億5000万ドル。

DuPontはEV向け部材など高付加価値製品を成長分野と見なし、事業シフトを進めている。

2) Mobility & Materials segmentの大半の事業の売却

売却の対象となる事業は、主にエンジニアリングポリマーおよびパフォーマンスレジンの事業分野の事業と、デュポン帝人フィルムの合弁事業の持分。
対象製品ラインには、Zytel®、Delrin®、Hytrel®、Crastin®、Vamac®、TEDLAR®などブランドが含まれるが、これらに限定されない。
対象事業の
2021年通年見積もりの売上高は約42億ドル、営業EBITDAは約10億ドルになる。

3) これらにより、electronics, water, protection, industrial technologies and next generation automotiveに焦点を当てた高成長、高収益市場での位置を高め、収益向上を図る。

 

DuPontは2022年2月18日、Celanese Corporationとの間でMobility & Materials segment の大半を売却する契約を締結したと発表した。

売却対象は、Engineering Polymers 事業と、Performance Resins and Advanced Solutions business lines のなかの特定の製品ラインで、売却額は現金で110億ドルとしている。取引は2022年末頃に完了する予定。

これらの事業の2021年の売上高は約35億ドルで、EBITDA(税引前利益+支払利息、減価償却費)は8億ドルであった。

Mobility & Materials segmentのなかの Auto Adhesives, Multibase and Tedlar® product lines は対象に含まれていない。

DuPont は別途、某社とアセタールホモポリマーのDelrin® businesss の売却を進めている。

Mobility & Materials segment の製品で売却対象と対象外は下図のとおり。

今回の発表文にはないが、DuPont Teijin Films JV も売却対象に挙がっている。

2022/2/22 DuPont、Mobility & Materials Segment の大半をCelaneseに売却 

これらが完了すると、DuPontの事業は、@electronics and industrial, A water and protection と、次世代自動車関連等となる。


2022/6/7 中国の宇宙ステーション「天宮」 年末までに完成へ 

中国は65日、有人宇宙船「神舟14号」の打ち上げに成功, 宇宙ステーション「天宮」のコアモジュール「天和」とドッキングし、男性2人、女性1人の宇宙飛行士が天和へ入室した。

「天宮」はメインキャビンの「天和」と実験施設「問天」「夢天」から成り、前後に有人宇宙船と無人貨物宇宙船をドッキングさせて、宇宙飛行士と貨物の補充・回収を行なう。

2021年4月に先ずコアモデュール「天和」を打ち上げ、5月に無人貨物宇宙船「天舟2号」を天和の後部にドッキングさせた。6月には有人宇宙船「神舟12号」を天和の前部にドッキングさせた。
「天舟」「神舟」は回収、再打ち上げを2回行った。

今後、7月に実験施設「問天」、10月に 同「夢天」をそれぞれ打ち上げ、神舟14号の宇宙飛行士3人が「天和」の左右に連結させ、各種設備の据え付けや試運転を行ない、年末までに宇宙ステーション「天宮」を完成させる。

付記

中国は7月24日、宇宙実験施設「問天」を搭載したロケットの打ち上げに成功した。

付記

最後のモジュール「夢天」が10月31日、海南省の文昌発射場から大型ロケット「長征5号B」で打ち上げられた。11/1 ドッキングに成功

付記

有人宇宙船「神舟15号」は11月30日午前、宇宙ステーション「天宮」にドッキングし、宇宙飛行士3人が天宮に乗り込んだ。近く宇宙ステーションの運用を始める。

 

11月には宇宙飛行士3人を乗せた神舟15号が打ち上げられ、宇宙ステーション内で14号と15号の6人の宇宙飛行士が5-10日間、共同作業を行う。

2024年には宇宙望遠鏡「巡天」を打ち上げ、連結させる。

 

  打ち上げ  
Module  天和 2021/4  
貨物宇宙船 天舟2号 2021/5 →天舟3号(2021/9)→天舟4号(2022/5)→天舟5号(2022/10)
有人宇宙船 神舟12号 2021/6 →神舟13号(2021/10)→神舟14号(2022/6)→神舟15号(2022/11)
Module  問天 2022/7  
Module 夢天 2022/10  
「天宮」完成 2022年内  
宇宙望遠鏡 巡天 2024  

 

中国は米国に対抗できる「宇宙強国」をめざしている。2013年に月面探査機が軟着陸し、2021年5月に火星探査機の地表探査に成功した。宇宙ステーションの建設には2021年4月に着手した。

ーーー

現在は国際宇宙ステーション(ISS)のみが運営されている。

米国のNASA、ロシアのロスコスモス、日本のJAXA、カナダのCSA、欧州11カ国のESAの15カ国・5宇宙機関が参加する多国籍共同プロジェクトである。中国は参加していない。

米議会は2011年、国家安全保障上の懸念があるとして、米国の宇宙計画に中国を参加させないことを決定した。
これにより、NASAなどは中国との協力や、2国間で合意などを結んではいけないことになった。当然ながら中国は国際宇宙ステーション(ISS)にも乗ることは許されない。

このため中国は独自の宇宙ステーション建設を進めている。

 

国際宇宙ステーションは建設当初は2016年に運用を終える予定であったが、2024年までの運用延長が決まっていた。

米国政府は2021年12月31日、ISSを2030年まで運用する計画を発表、NASAは2022年2月3日、運用を2030年に終了し、2031年初頭に太平洋に落下させる予定だと発表した。

なお、ウクライナ問題の発生を受けても、ISSでのロシアの参加は変わらない。ロシアはISSの姿勢制御を担当しており、NASAは「ロシアによる姿勢制御と、米国による電力生産がともになければ、ISSは運用できない」としている。ISSと地球との間の宇宙飛行士の行き来も、ロシアの宇宙船ソユーズが一部担っている。

 

国際宇宙ステーションがなくなると、中国の宇宙ステーションが唯一となる可能性がある。

 


2022/6/8    秋田県湯沢市における地熱発電所の建設

出光興産・INPEX・三井石油開発が出資する小安地熱は6月6日、秋田県湯沢市における地熱発電所(かたつむり山発電所、出力:14,990kW)計画について建設段階への移行を決定したと発表した。

小安地熱の出資比率は、出光興産とINPEXが各42.5%、三井石油開発が15%。

発電所は、蝸牛山中腹に建設する。ダブルフラッシュ方式を採用する。

(1)地下から高温高圧の地熱流体を取り出す、(2)気水分離器により一次蒸気と熱水に分離する、
(3)熱水を減圧気化器により二次蒸気と熱水に分離する、(4)一次・二次蒸気を用いて発電する。

注)上記の(3)がないのがシングルフラッシュ方式

運転開始は2027年3月を計画しており、発電した電気は再生可能エネルギーの固定価格買取制度の認定を受ける。(1kWh当たり:40円+税、適用期間:15年間)

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湯沢市が位置する西栗駒一帯には小安峡温泉、秋の宮温泉郷、泥湯温泉などが点在し、日本有数の地熱賦存地帯といわれている。

上の岱地熱発電所と山葵沢地熱発電所が稼働しており、他に木地山地熱発電所が計画されている。

  上の岱(うえのたい)地熱発電所 山葵沢地熱発電所  木地山 地熱発電所
能力 28,800kW 46,199kW 14,900KW
運営 東北自然エネルギー
 
湯沢地熱
(電源開発、三菱マテリアル、三菱ガス化学
東北自然エネルギー
 
運転開始 1994/6 2019 2029年予定
方式 シングルフラッシュ ダブルフラッシュ  

東北自然エネルギーは東北電力の再生可能エネルギー発電事業の中核会社として、水力、地熱、風力および太陽光の4事業会社を統合し、2015年7月に設立された。

 


2022/6/9  EU、女性取締役の登用義務化

EUの欧州委員会と欧州議会は6月7日、域内の上場企業に一定比率の女性を取締役に登用するよう事実上義務づける法案で大筋合意した。2926年までに社外取締役で40%以上か、すべての取締役で33%以上を女性にする必要がある。女性の活躍を後押しして、経済や社会の活性化を狙う。

発表文によると、過去10年で進展はあったが、2021年10月時点で女性取締役全体の割合は30.6%、取締役会長では8.5%であった。(2011年にはそれぞれ、10.3%、3.0%であった。)

合意を受けて、フォンデアライエン欧州委員長は「多様性は公平性の問題だけでなく、成長と技術革新を促進するものだ」と歓迎する声明を発表した。

基準を達成していない企業は、 能力が同等の候補者が2人以上いれば、少数派の性別の候補者を優先しなければならない。取締役になれなかった候補者が求めれば、企業はその選定基準を開示する必要がある。報告が十分でない場合は罰則の対象となる。罰則は加盟国が個別に設ける。

 

2012年11月、欧州委員会は「上場会社の非業務執行役員におけるジェンダー・バランスと関連措置の促進に関する指令案」を提案し、いわゆる性役員クオータ制導入の議論が始まった。根拠となるEU法の条文は、EU運営条約157条(雇用および労働分野における男女間の機会均等と処遇平等の原則)である。

2015年、EU理事会から修正案が示され、数値目標は「非業務執行役員の40%、または役員全体の33%」とされた。

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米国の国際非営利団体「国際女性経営幹部協会」(CWDI)が2009年に発表したリポートによると、日本企業の主要100社の全取締役に占める女性採用率はわずか1.4%であった。

ノルウェーでは2003年にまず国営企業や複数州で活動する企業を対象に「取締役は男女ともに4割以上」とするクオータ制を義務付けた。2005年には上場企業も対象となり、遵守できない場合は企業名の公示や企業の解散などの制裁が科される。

 



2022/6/10 米州首脳会議が開幕、多数国が欠席 

アメリカやカナダ、中南米の米州機構(Organization of American States)首脳が集まる米州首脳会議が6月8日、ロサンゼルスで始まった。10日まで開かれる首脳会議では、移民問題や気候変動などについて議論が交わされる見通し。

バイデン大統領は各国の首脳らを前に「われわれはすべてにおいて常に同意するわけではないが、民主主義では対話と敬意を持って相違を乗り越えていける」と呼びかけた。

新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ中南米経済の回復に向け、経済連携を深める方針を表明した。米州開発銀行(IDB)など域内の経済機関を生かし、中南米への投資を促進する。サプライチェーンの多様化とリスク軽減でも連携したい考えである。

今回の首脳会議にはホスト国アメリカが「独裁者は招待されるべきではない」としてキューバとベネズエラ、それにニカラグアの3か国を招待しなかった。バイデン政権は「政敵を投獄し、不正選挙を行った権威主義国」を招待しないとしている。

ニカラグアは2021年11月19日、脱退手続きを開始したことを 発表した。11月7日の大統領選で、反米左派のオルテガ大統領が連続4選を果たしたことに関して、米州機構が「民主的な正当性がない」とする決議を採択したことに対する措置としている。

キュ−バは1962年の対キューバ制裁決議により、カストロ政権の参加を排除され、同年キューバ側もOAS脱退を発表した。その後,2009年に同決議を廃止する旨の決議が採択された。
2015年パナマでの第7回サミットでキューバは初参加。当時のアメリカのオバマ大統領と首脳同士の握手も実現した。

これに反発して、メキシコのロペスオブラドール大統領が「全ての国を招待しないなら欠席する」として欠席、エブラルド外相を代理で出席させた。
グアテマラ、ボリビア、ホンジュラスなどの首脳も出席せず、首脳出席は23か国にとどまった。米メディアはアメリカの求心力が低下していると指摘している。

米国による不法移民対策で最も協力が欠かせないメキシコが、外相による代理出席にとどまったのバイデン政権に痛手となった。

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米州機構(Organization of American States)は、1948年4月に調印されたボゴタ憲章(米州機構憲章)に基づいて、1951年12月に発足した国際機関で、35か国が参加する。

北米(2カ国) アメリカ合衆国、カナダ
中米(8か国) メキシコ、エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、パナマ、ベリーズ 、ホンジュラス、ニカラグア
カリブ海(13カ国) アンティグア・バーブーダ、キューバ、グレナダ 、ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、セントビンセント・グレナディーン、
セントルシア、ドミニカ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、ハイチ、バハマ、バルバドス
南米(12カ国) アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、ガイアナ、コロンビア、スリナム 、チリ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア

グリーンランド、プエルトリコ、アルバ、キュラソー、シント・マールテン、フランス領ギアナなどはいずれも独立国では無いため、参加資格を有しない。

日本を含む69カ国とEUが常任オブザーバーの資格を持つ。

第1回米州サミットは1994年12月にマイアミで開催され、(a)民主主義の維持・強化、(b)経済統合と自由貿易を通じた繁栄の促進、(c)貧困と差別の撲滅、(d)持続的開発のテーマ、について議論し、マイアミ宣言、並びに23項目の「行動計画」を採択した。

3年程度に一度開かれており、今回は9回目となる。

 

中南米諸国には、「中南米の問題は中南米で解決する」として、2011年12月にアメリカとカナダを除く33か国でつくるラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)が発足している。将来的な中南米統合を長期的な目標に掲げている。

 



2022/6/11 太陽光発電の大型蓄電池事業 

NTTアノードエナジー、九州電力及び三菱商事は6月10日、再生可能エネルギーの更なる活用及び導入促進に向けて、系統用蓄電池を活用して太陽光発電の出力制御量低減に貢献する共同事業の検討を開始したと発表した。

NTTアノードエナジーは、NTTグループのスマートエネルギー事業推進の中核会社として、下記の再エネを中心としたスマートエネルギー事業を展開している。
@再生可能エネルギー電源を開発する「グリーン発電事業」、A顧客の脱炭素化をサポートする「グリーンエネルギーソリューション事業」、Bエネルギーの安定化・効率化を実現する「蓄電所事業」

日照に恵まれる九州は太陽光発電所が多い。2021年5月末時点で九州の太陽光発電設備の導入量は1035万キロワットで、全てがフル稼働すると仮定した場合、九州全体の電力消費量を超えることもあり得る規模である。原発4基も稼働している。このため、天候が良く電気の使用量が少ない春と秋を中心に電力が大幅に余剰となる。

余剰能力は中国九州間連系線を経由し関西に送るが、能力は280万kW しかない。

九州電力は2016年3月に世界最大級の大容量蓄電システムを備えた豊前蓄電池変電所の運営を開始した。(出力:5万kW、容量:30万kWhのNAS電池)

このため、電力の発電量と使用量のバランスを保つため、発電量の超過が想定される場合、発電所の出力を一時的に抑制する「出力制御」を実施している。

2022年4月には、四国、東北、中国、北海道でも実施した。

政府は2050年カーボンニュートラル及び温室効果ガス排出量2030年度46%削減(対2013年度比)の目標を掲げ、再エネの主力電源化を推進している。

そのなかで、他の地方で電力が不足しながら、九州で出力制御するという事態が発生する。

2022年3月には、主に東京エリアで電力需要量が供給量を上回る厳しい見込みとなったため、全国で初めて「電力需給ひっ迫警報」が発令された。

政府は今年の夏、7年ぶりに家庭や企業に対して節電要請を行う。「東北・東京・中部の3つのエリアで、予備率が3.1%とギリギリの状況」としている。

問題解決には2つの方法がある。一つは蓄電能力の増強で、もう一つは送電網の拡大である。

 

今回、3社は各社が持つ経営資源やノウハウ等を活用し、系統用蓄電池を用いて太陽光発電の出力制御量を低減させるとともに各種電力市場での取引等でマルチユースする事業モデルの構築を目指す。

その第一歩として、NTTアノードエナジーが九州内に設置する系統用蓄電池を活用して、事業立上げに向けた具体的検討に取り組む。

NTTアノードエナジーの系統用蓄電池

設置時期 2023年2月(予定)
設置場所 福岡県田川郡(予定)
導入設備 リチウムイオン電池(4.2MWh)、電力変換装置(1.4MW)、蓄電池制御システム 一式
 

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別途、政府は再生可能エネルギーの普及のため次世代送電網を増強する。

2022/1/6     再生エネルギー普及へ送電網増強

 



2022/6/13 
欧州中銀、7月に0.25%利上げへ、量的緩和は終了 

欧州中央銀行(ECB)は6月9日、5月のインフレ率が8.1%と高い水準を維持しているため、量的緩和政策を終了し、政策金利を引き上げることを発表した。

ユーロシステムによる債券・国債の購入プログラム(APP:asset purchase programme)を、7月1日に終了する。

APPの下で購入し保有する債券・国債の再投資については、主要政策金利の引き上げ開始以降も必要な限り続ける方針をあらためて示した。

欧州中央銀行(ECB)は2021年12月16日の理事会で、コロナ危機で導入した緊急買い取り制度(PEPP:Pandemic Emergency Purchase Programme)による新規資産購入を2022年3月末で打ち切ると決めた。

2021/12/20 欧州中央銀行、2022年3月に緊急買い取り制度を終了

これを通じて購入し保有する債券・国債の償還後の再投資期間については、少なくとも2024年末までとする方針。

現在の政策金利は、主要リファイナンス・オペ金利が 0.00%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)が0.25%、中銀預入金利がマイナス0.50%である。

中銀預入金利は金融機関が余剰資金をECBに預ける際に適用する金利。

これについて、7月21日に開催予定の次回理事会で11年ぶりに金利をそれぞれ0.25ポイント引き上げる。さらに、9月の理事会で発表されるユーロ圏に関するマクロ経済予測に基づき、さらなる引き上げを決定する。「中期的インフレ見通しが変わらないか悪化すれば、9月理事会でより大幅な引き上げが適切になる」としており、9月以降も、徐々に持続的なさらなる引き上げが適切だと予想している。

付記 実際には7月21日に倍の0.5ポイント引き上げた。

更に9月4日の会合で、9月14日からの0.75ポイント引き上げを発表した。政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)は0.50%から1.25%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)は0.75%から1.50%、預金ファシリティー金利は0.00%から0.75%となる。

当初案   9月14日から

2022/9/9 EU、大幅利上げ継続

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英国のイングランド銀行(中央銀行)は2021年12月16日、政策金利を0.15ポイント引き上げ、年0.25%とすると発表した。

新型コロナウイルス感染拡大以降、利上げによる金融政策の正常化に踏み切ったのは、日米欧の主要中銀では初めてとなる。

付記 その後の利上げ   2022/2/3 →0.50%、3/17→0.75%、5/5→1.00%、6/16→1.25%

米国FRBは2022年5月3〜4日に開いた会合で、22年ぶりとなる0.5%の大幅利上げと「量的引き締め」に乗り出すことを決めた。記録的なインフレの抑え込みを急ぐ。

政策金利をこれまでの「0.25〜0.50%」から通常の2倍にあたる0.5%引き上げ、「0.75〜1.00%」にする。0.5%の大幅な利上げは2000年5月以来22年ぶり。

2022/5/6   米FRB、大幅利上げ決定 

日本だけが取り残される形となる。


2022/6/13 ウクライナへの連帯の共同声明、WTO加盟国のうち56か国にとどまる 

世界貿易機関(WTO)の閣僚会議が6月12日、スイス・ジュネーブの本部で開幕した。ロシアのウクライナ侵攻で脅かされる食料安全保障や、漁業補助金の問題などを議論する。

世界貿易機関(WTO)の有志の加盟国・地域は6月12日、ウクライナへの連帯を示す共同声明を発表した。

声明要旨

ウクライナに対する侵略によって引き起こされた壊滅的な人的損失と深刻な​​苦しみに深い悲しみを表明する。2022年3月2日および2022年3月24日の国連総会決議への支持を改めて表明する。

戦争は、ウクライナの経済や貿易能力などに壊滅的な影響を及ぼしている。道路、橋、港、鉄道など、ウクライナの交通インフラの大部分が破壊されたことで、ウクライナの生産、輸出、輸入の能力が大幅に低下している。

特に農産物や食品、肥料、ひまわり油、重要な鉱物など、ウクライナが生産する多くの主要商品の国際市場への供給に関して深刻な懸念を抱いている。また、ウクライナから穀物が略奪されたという多くの報告にも深い懸念を抱いている。これらの行動は、WTOの原則と価値観と対立している。

ウクライナは、小麦、トウモロコシ、大麦、ひまわり油などの主要な農産物の世界最大の輸出国の1つで、世界食糧計画への主要な供給者である。ウクライナの黒海へのアクセスの遮断を含む戦争の影響は、開発途上国で世界の最も脆弱な地域のいくつかへの食糧供給を深刻に危うくしている。何百万人もの人々を食糧不安に追いやるリスクがあり、COVID-19によって引き起こされたすでに深刻な状況に追加される。

我々はウクライナを支援し、その輸出を促進することを目指す。

WTOには164カ国・地域が加盟するが、ロシア批判は抑えたものとなっているにもかかわらず、署名したのは欧州諸国、日米韓や台湾、中南米の一部など56カ国・地域にとどまった。アフリカの多くの国はウクライナの小麦等に依存しているが、署名したのはシェラレオネ1カ国のみである。

欧州では、EU加盟の27か国全てと、非加盟の11カ国の合計38か国が署名したが、NATO加盟国のアイスランドとトルコの2カ国は署名していない。
トルコは現在、ウクライナからの食糧輸出についてロシアと協議している。

米大陸では、米国、カナダと中南米の8か国の合計10カ国が署名。

アジアでは日本、韓国、台湾、シンガポールの4か国にとどまった。

その他では、豪州、ニュージーランドとイスラエル、シェラレオネの4国で、合計56か国である。他にEUが署名した。

ロシアと親しく、対ロ制裁に反対する中国や、厳しい批判を避けるインドやサウジアラビア、ブラジル、南アフリカなどは加わらなかった。
東南アジアではシンガポールだけが署名した。

 

署名  赤字は旧ソ連

非署名
NATO加盟 NATO非加盟 NATO加盟
欧州 EU イタリア、オランダ、フランス、ベルギー、ルクセンブルグ、デンマーク、ポルトガル、ギリシャ、ドイツ、スペイン,チェコ、ポーランド、ハンガリー、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、 (21) アイルランド、オーストリア、フィンランド、スウェーデン、キプロス、マルタ(6)  
non-EU 英国
ノルウェー、アルバニア、モンテネグロ、北マケドニア、(5) 
ジョージア、リヒテンシュタイン、モルドバ、スイス、ウクライナ、アイスランド(6) アイスランド
トルコ

 

中東   イスラエル  
北米 米国、カナダ    
中南米   メキシコ、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ(8)  
アジア   日本、韓国、台湾、シンガポール  
ANZ   豪州、NZ  
アフリカ   シエラレオネ  
合計 28 カ国 28 カ国  

56カ国

 

 

 

 


2022/6/14    ADNOC / ENEOS / 三井物産、UAEと日本間のクリーン水素サプライチェーン構築に向けた共同事業化検討契約を締結
 

UAEのアブダビ首長国国営石油会社(ADNOC) とENEOS、三井物産3社は6月7日、共同事業化検討契約書を締結し、UAEと日本間のクリー水素サプライチェーン構築に向けた協業検討を開始すると発表した。

第一段階ではアブダビのRuwais工業地域内所在すADNOC製油所・石油化学工場由来の副生水素 を、 第二段階では天然ガスから生産されるブルー水素、効率的な水素の輸送形態であるメチルシクロヘキサン(MCHに変換日本輸出することを目的としている。

化石燃料由来の水素を「グレー水素」、再生可能エネルギー由来の水素を「グリーン水素 」と呼ぶが、化石燃料由来の水素だがCO2を回収するものを「ブルー水素」と呼ぶ。 

水素を海外から運ぶためにはセ氏零下253度まで冷やして液化し、専用の運搬船を使う必要がある。今回は水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサンとし、常温で日本に輸送し、日本でこれから水素を取り出す 。

これまでメチルシクロヘキサンから水素を取り出すのは不可能とされていたが、千代田化工が開発した触媒がこれを可能にした。

2017/8/5 千代田化工ほかの国際間水素サプライチェーン実証事業

 

ADNOC、ENEOS、三井物産3年間5万トン規模の水素生産設備の技術実証と、商用段階を想定した年間20万トン規模への拡張可能性に関するフィージビリティスタディ実施する。

ADNOC脱炭素ビジネスへの取り組みを加速させており、油田を活用したCO2回収・貯留に加え、製油所・石油化学工場などの既存設備を活用した競争力の高いブルー水素供給事業の確立を目指している。

2016年11月に中東で初となる商業規模のCO2回収プラントが、UAEのEmirates Steel Industriesの製鋼所において操業を開始した。ADNOCとMasdar(Abu Dhabi Future Energy Company)のJVが、Al Reyadah CCUS((Carbon capture, utilisation and storage) プロジェクトとして開発したもので、現在、年間80万トンのCO2回収能力を有している。

CO2は陸上油田での原油回収促進(CO2 EOR)に利用する。

ADNOCは、2030年までに年間500万トン- CO2を達成することを目指している。

ENEOSは水素とトルエンを反応させてMCHに変換し、石油と同じように常温で運ぶ研究を進めている。

LNG開発のノウハウを持つ三井物産がプロジェクトの管理を担当する。

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なお、JXTGエネルギー現 ENEOS)、千代田化工、 東京大学、 クイーンズランド工科大学は2019年3月15日、オーストラリアにおいて有機ハイドライドを低コストで製造し、日本で水素を取り出す世界初の技術検証に成功したと発表した。

2021年11月2日、世界で初めて実際に使用できるレベルまで規模を拡大し、燃料電池自動車充填することに成功したと発表した。
実際に使用できるレベル(約6kg)にまで規模を拡大し、日本においてMCHから水素を取り出し、実際に燃料電池車に充填、走行させることに成功した。

水とトルエンから一段階の反応でメチルシクロヘキサン(MCH) を製造する、ENEOSが開発した「有機ハイドライド電解合成法(Direct MCH)」を採用している。

これは、太陽光発電などからのグリーン水素を輸送するためのものであり、今回は使用しない。

2019/3/18     CO2フリー水素を低コストで製造する世界初の技術検証

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別途、INPEX、JERA、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2021年7月、ADNOCとの間で、アブダビ首長国におけるクリーン・アンモニア生産事業の事業化可能性に関する共同調査契約を締結した。

アブダビにおいて、天然ガスを改質して製造した水素を基にアンモニアを合成し、同時に排出される二酸化炭素(CO2)をINPEXが参画するアブダビ陸上油田でCO2を用いた原油回収促進(CO2 EOR)に利用することで、CO2排出量を大幅に抑制したクリーン・アンモニアを日本に輸送する事業の事業化可能性を調査する。

INPEXは2021年8月、ADNOCとの間でクリーンアンモニアの売買契約を締結した。ADNOCが既存のアンモニアプラントで天然ガスから生産されるもので、アンモニア生産時に排出されるCO2を回収し、INPEXが参画するアブダビ陸上油田においてCO2圧入することで、CO2排出量を抑制したクリーンアンモニアとなる。

クリーンアンモニア液体輸送用のコンテナアブダビから日本に輸送、発電燃料として実証を含めエネルギー分野で使用

参考 2018/10/25  日揮、再生可能エネルギー由来の水素を用いたアンモニア合成と発電に世界で初めて成功


 

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