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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2022/6/15 米、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表 
 
米財務省は6月10日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。(前回は2021年12月3日発表)

2020年12月にトランプ前政権が「為替操作国」に指定したスイスとベトナムに加え、新しく台湾が「為替操作国」の認定基準を満たしたが、バイデン政権は2021年4月、該当する国について為替操作国の認定を見送っている。

1988年の法律に照らし、それら3カ国・地域に「効率的な収支調整を妨害する、もしくは国際貿易において競争上の不当な優位性を得る」意図があったと結論付ける「十分な証拠はなかった」と説明した。

今後、公式協議を含むenhanced engagementsを行い、為替相場の過小評価と対外不均衡の過小評価の基調的な原因に対応するために特化した行動計画を策定するよう呼び掛ける。

2021/4/23 米、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表 

2021年12月は台湾とベトナムの2国、今回はスイス1国が該当するが、いずれも認定は見送った。

「監視リスト」には、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ、マレーシア、シンガポールとインド、ベトナム、イタリア、タイ、メキシコの12国が指定された。インド以下の5国は1項目だけだが、前年が監視リストのため、対象とされた。

前回、アイルランドは1項目だけだが、その前に監視リストのため、リストに入った。同国は今回、2年続けて1項目のため、監視リストから外れた。

なお、中国は(1項目だけでも)常時、監視リストに入る。


米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
@重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
A実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
B外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月

3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。

次の場合、「監視リスト」に入る。
  2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
  なお、中国は常時、「監視リスト」

Bの外為市場介入(12カ月のうち6カ月)は、今回はスイス、シンガポールの2カ国。
日本は介入ゼロ、中国は若干の介入はあるが、12カ月のうち6カ月未満で対象外となっている。

 

操作国
3基準  
監視国
2基準  
監視国
1つだが前年に監視対象   丸数字は問題となった項目
                 
  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール タイ メキシコ
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5
 

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2019/8   操作国  
2020/1
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2020/12
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操作国
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操作国
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2021/4
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操作国
非認定

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操作国
非認定

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操作国
非認定

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2021/12
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操作国
非認定

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操作国
非認定

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2022/6
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操作国
非認定

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出光興産は6月14日、西部石油を完全子会社化し、2024年3月を目途に西部石油の山口製油所の精製機能を停止すると発表した。

国内の石油製品需要は、高齢化や人口減少といった構造的な要因に加え、新型コロナウイルスの影響や、世界的な脱炭素への潮流によって更なる減少が見込まれるため、西部石油を子会社化したのち、製品引取契約を終了し、同社の山口製油所の精製機能を停止することが最善であると判断した。

両社は下記の点で合意した。

・製油所跡地での油槽所機能および国家備蓄へのタンク貸事業等を当面継続すること、西部石油が新規事業を検討することにつき出光興産グループの最重要事項の一つとして取り組むこと
・西部石油グループの従業員の雇用維持および雇用条件の確保に協力して取り組んでいくこと
・西部石油の事業運営や精製機能停止に関する資金調達のために必要かつ合理的な措置(債務の保証等)に出光興産が協力すること


西部石油は1962年設立で、山口製油所の能力は120,000バレル/日。

同社の株主は次のとおりであったが、出光は同日、一部株主から株式の買い取りを行ない、55.90%とした。今後、残り株主からも買い取る。

  従来 今回
出光興産 38.00 55.90
UBE(旧称 宇部興産) 11.00 0
中国電力 10.79 0
商船三井 5.00 0
みずほ銀行 5.00 5.00
セントラル硝子 4.94 4.94
KHネオケム 3.87 3.87
その他 21.40 19.29

 

なお、ENEOSは1月25日、全国に10ある製油所の1つ、和歌山製油所の精製(127.5千レル/日)・製造、物流機能を2023年10月をメドに止めると発表した。

同社はまた、根岸製油所の第1トッパー(120千レル/日)と、その系列の二次装置である減圧蒸留装置接触分解装置など原油処理装置の一部および潤滑油製造装置2022年10月目途に止する。

合計で247.5千バレル/日の削減となる。

 

各社の原油処理能力は下記の通り。

単位:バレル/日 2011/1 2020/3 2021/3
ENEOS 鹿島石油 鹿島 252,500 197,100 203,100
旧 JXTG 室蘭 180,000
仙台 145000 145,000 145,000
根岸  半減 270,000 270,000 270,000
水島 380,200 320,200 350,200
麻里布 127,000 120,000 120,000
大分 136,000 136,000 136,000
大阪(国際石油) 115,000 115,000
千葉→国際石油   129,000 129,000
(極東石油) 千葉 175,000

↑  

 
旧 東燃ゼネラル 川崎 335,000 235,000 247,000
156,000 135,000 141,000
和歌山 停止 170,000 127,500 127,500
合計   2,441,700 1,928,800 1,868,800
出光興産 出光興産 北海道 140,000 150,000 150,000
千葉 220,000 190,000 190,000
愛知 160,000 160,000 160,000
徳山 120,000
昭和四日市石油 四日市 210,000 255,000 255,000
西部石油 山口  停止 120,000 120,000 120,000
東亜石油 京浜 185,000 70,000 70,000
合計   1,155,000 945,000 945,000
コスモ石油   千葉 220,000 177,000 177,000
四日市 125,000 86,000 86,000
100,000 100,000 100,000
坂出 110,000
合計   555,000 363,000 363,000
太陽石油 四国 120,000 138,000 138,000
富士石油 袖ヶ浦 140,000 143,000 143,000
南西石油 沖縄 100,000
帝国石油 頚城 4,724
合計 4,516,424 3,518,800 3,457,800

ENEOSは2020年9月25日、中国石油国際事業傘下の中国石油国際事業日本とのJVの大阪国際石油精製が運営する製油所を、12月に現在の大阪製油所から千葉製油所に変更し、合弁事業を継続することについて最終合意に至ったと発表した。

大阪国際石油精製(ENEOS 51% 中国石油国際事業日本 49%)は、2010年10月に設立。

下記の通りとなる。

大阪精油所:(原油処理能力115千BD)

ENEOSが大阪国際石油精製から取得、2020年10月に精製機能を停止、アスファルト発電設備へ

千葉製油所:(原油処理能力129千BD)

大阪国際石油精製がENEOSから取得


2022/6/16  米国、大幅利上げ

米連邦準備理事会(FRB)は6月14-15日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を75ベーシスポイント引き上げ、1.50〜1.75%とした。
今回の決定は10対1で、一人が50bpの利上げを主張した。

 
2018/3  1.50%〜1.75%
2018/6  1.75%〜2.00%
2018/9  2.00%〜2.25%
2018/12  2.25%〜2.50%
2019/7 2.00%〜2.25%
2019/9  1.75%〜2.00%
2019/10

1.50%〜1.75%

2020/3

1.00%〜1.25%

2020/3

 0.00%〜0.25%

2022/3 0.25%〜0.50%
2022/5 0.75%〜1.00%
2022/6 1.50%〜1.75%

今回の利上げは5月の50bpの利上げに続くもので、一度に75bpの大幅利上げを決定するのは1994年以来27年ぶり。

FRBは「インフレ率はパンデミックに関連する需給の不均衡、エネルギー価格の上昇、より広範な価格圧力を反映し、引き続き高止まりしている」と指摘し、ロシアによるウクライナ侵攻や、新型コロナウイルスの封じ込め策として中国が講じているロックダウンの影響に言及した上で、「インフレのリスクを非常に注視している」とした。

今後の見通しとして、2022年末には3.4%まで上昇すると見込んでいる。

6月の米国のCPIは8.6%、コアCPIは6.0%で、PPIは10.8%と、依然高水準にある。

パウエル議長は、次回7月のFOMCでも75bpもしくは50bpの利上げが決定される公算が大きいとの見方を示した。ただ、75bpが「一般的な」利上げ幅になるとは予想していないと述べた。

FRBは大幅利上げに踏み切りながらも、景気見通しを下方修正し、今年の経済成長率は1.7%に減速するとしたほか、失業率は年末までに3.7%に、2024年にかけて4.1%%に上昇すると予想を示した。

 

 


2022/6/17   Gazprom、ドイツ向けの天然ガス供給を削減

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表した。従来の日量最大1億6700万立方メートルから1億立方メートルになる。

Gazpromは翌15日、さらに33%削減すると発表した。モスクワ時間の16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになるとし、「エンジンの技術的な状態」のためガスタービンの運転を停止すると説明した。

ドイツ重電大手Siemens Energyなどによると、パイプライン内のガス圧力を高めるために使われるガスタービン(aeroderivative gas turbine) 1基をカナダで修理したが、カナダ政府の制裁措置によってGazpromに提供できなくなったという。Siemens Energyではドイツとカナダ政府に事態を連絡し、解決策を協議していると発表した。

しかし、15日の発表を受け、ドイツの副首相兼経済・気候保護相は、「政治的な決定であり、技術的に正当な解決策ではない」と非難、修理の必要性は認識しているとしながらも、関連作業は秋まで行われない予定だと指摘し、この削減規模は正当化できないと述べた。

仮にNordstream 1の問題であれば、他のパイプラインでの増量が可能だが、それは行なっていない。

ドイツのウクライナ支援への報復とか、価格を更に引き上げるためとかの理由が噂されている。

現在は暖房が必要でなく、今夏を乗り越えることが出来るが、冬に備えて備蓄を開始する時期であり、ドイツへの打撃は大きい。


イタリア国営エネルギー会社ENIは6月15日、Gazpromがイタリアへのガス輸出を前日から約15%削減したと明らかにした。削減理由について説明はないという。

 

ドイツは3月5日、国内初の液化天然ガス(LNG)輸入ターミナル建設を発表した。
ドイツ復興金融公庫(KfW)と大手エネルギー会社RWE、オランダ政府100%出資のガス大手Gasunieが、ドイツ北部のBrunsbüttel市でLNG輸入ターミナルの建設に関する覚書(MoU)を締結した。
出資比率はKfWが50%、Gasunieが40%、RWEが10%でターミナルの運営はGasunieが担当する。

同ターミナルの年間再ガス化能力は80億立方メートルで、ドイツの年間ガス需要約950億立方メートルの8.4%に相当する。

 

ドイツ政府は5月5日、LNGの輸入拠点となるターミナル建設を北部Wilhelmshavenで始めた。

既存の桟橋を改良し、LNGが貯蔵できる設備を備えた船4隻をリースして洋上に停泊させる。浮体式LNG貯蔵再ガス化設備と呼ばれる大型設備で、海外から到着するタンカーからLNGを船の設備に受け入れ、船上で液体からガスに戻し、陸上のパイプラインを通じて消費地に送る。80億立方メートル程度を供給できるという。

10年契約で、秋までに完成し、RWEが運営する。陸上受け入れ基地機能の代替となる、ドイツ政府は29億4千万ユーロの予算を付ける。

付記

ドイツ政府が導入を計画している6基の浮体式液化天然ガス(LNG)受け入れ設備のうち、1基の試験運転が12月17日、独北部ウィルヘルムスハーフェンで始まった。独エネルギー大手ユニパーが運営する。既存の港湾施設にFSRUを配置し、長距離の天然ガスのパイプライン網と接続される予定。

連邦政府はFSRUの設置を、当初予定していた3隻から4隻に増やした。ノルウェーのFSRU大手ホーグLNGおよびギリシャのLNG輸送会社ダイナガスから船を2隻ずつチャーターし、船の運営は、政府から業務委託されるドイツエネルギー大手RWEとユニパーが担当する。

ユニパーはウィルヘルムスハーフェンに設置するFSRU2隻をダイナガスから調達することも発表した。いずれも21年に竣工した17万4000立方メートル型。

RWEが担当するホーグLNGからチャーターする1隻目のFSRUは、2022年末ごろに稼働する予定。2隻目はブルンスビュッテル市で2023年初めに稼働する予定。2隻合わせて、年間100億〜140億立方メートルの天然ガスをドイツ国内に供給できる。

ユニパーが担当するダイナガスからチャーターするFSRU2隻は、配置場所は未定だが、2023年初頭に稼働する予定。2隻とも年間最大75億立方メートルの天然ガスの供給能力を持つ。

 

付記

Venture Global LNG とドイツの電力会社EnBWは6月21日、年150万トンのLNGを2026年から20年間にわたって売買する長期契約で合意したと発表した。

Plaquemines LNGから年75万トン、CP2 LNGから75万トンを購入する。

ドイツが米国産LNGの長期購入契約を結ぶのは初めて

2022/2/21 米国で新しいLNGプラントが稼働

ーーー

Gazpromはパイプライン経由の天然ガスについてルーブル払いへの切り替えを要求しているが、多くの問題が出ている。

1)ロシアは下図の仕組みを提案した。

ロシア案の仕組みであれば、買い手は契約通りのユーロで支払ったと言え、売り手のGazpromはルーブルで支払いを受けたと言うことができる。

2)ポーランドの国営ガス会社PGNiGは4月26日、ロシア国営Gazpromから天然ガス供給を4月27日から停止するとの通知を受けたと発表した。ブルガリアも同様に4月27日からのガス供給停止を通知された。

3)ウクライナが同国のロシア占領地域経由のパイプラインを停止、ロシア非占領地帯経由パイプラインへの切り替えを要求

2022/5/12 ウクライナ、ロシア産天然ガスの欧州向けパイプラインを一部停止

4)Gazpromは5月12日、ポーランドなどを経由するパイプラインYamal Europeを通じた天然ガスの供給を止めると明らかにした。
  ロシア政府が5月11日に発表した制裁対象に、パイプラインの一部を所有するポーランド企業EuRoPol GAZが含まれていたため。

2022/4/28 ロシア、ポーランドとブルガリアに天然ガス供給停止 

5)Gazpromは、ルーブル払いを拒否したとの理由で、5月31日でオランダのガス会社Gas Terra、デンマークのØrsted、Shell Energy経由のドイツ向けの供給停止を発表した。

 

ーーー

ドイツ政府は6月14日、Gazpromの子会社だったGAZPROM Germaniaを長期的に管理下に置き、政府系金融機関が最大100億ユーロを融資する救済策を発表した。
ドイツ政府は「供給の安全性を維持するために今回の措置が必要」としている。

GAZPROM Germaniaはガスの取引、貯蔵、輸送を手掛けており、ロシアのウクライナ侵攻後の4月にGazpromが手放したことを受け、期間限定でドイツ政府の管理下に置かれていた。

Gazpromは4月1日、ドイツ子会社のGAZPROM Germaniaを手放し、独事業などから撤退することを決めた。

Gazprom傘下とみられる企業がGAZPROM Germaniaを買収した上で清算する動きがあったため、独連邦ネットワーク庁が9月30日までの期限付きで同社の議決権を取得した。
資産の処分などは同庁の許可が必要となる。

なお、ロシア政府は5月11日、ドイツ政府の管理下に置かれているGAZPROM Germaniaに対して経済制裁を科したと発表した。同社と、同社の子会社との取引を、ほかの企業などに禁じた。
同社へのガス供給をロシアが停止する可能性もある。

将来的にはEU域内でロシア産のガスを貯蔵することも禁止される可能性があるという。GAZPROM Germaniaは北西部ニーダーザクセン州にある国内最大のガス貯蔵施設を運営している。

今回、エネルギー安全保障法に基づく信託管理へと変更、政府が長期間、管理下に置けるようになる。長期管理に切り替えるのに合わせて企業名を「Securing Energy for Europe」に変更する。

ドイツ政府は4月25日、ロシアによるウクライナ侵攻の影響でエネルギー市況がさらに悪化する場合に備え、エネルギー安全保障法改正案を閣議決定した。

エネルギー供給が危機に瀕したり妨げられたりした際の危機管理の包括的な対策を定めている。具体的には、重要なエネルギーインフラを運営する企業が業務を十分に遂行できなくなり、エネルギーの安定供給が損なわれる恐れがある場合、同企業を一定期間、信託管理下に置くことが可能になる。
また、エネルギー安全保障が他の手段で確保できない場合には、最終手段として、具体的かつ厳密な条件の下で同企業の収用も可能にする。

政府系金融機関の復興金融公庫(KfW)が90億─100億ユーロを融資し、事業継続を支援する。

ドイツ政府は融資について「事業運営とガス供給の維持のみに使い、ロシアには流れない状態になっている」と説明している。


2020/6/17 米FDA、新型コロナワクチン、5歳未満の子供にも接種へ

米FDAの諮問委員会は6月15日、PfizerとModerna の新型コロナワクチンの5歳未満の子どもへの接種について緊急使用許可を出すよう勧告した。近くFDAが正式に緊急使用許可を出す。

付記 FDAは6月16日に許可した。

現状は、Pfizerワクチンは5歳以上、Modernaワクチンは18歳以上となっているが、今回の諮問委の勧告が実現すれば、いずれも生後半年以上が対象となる。

  Pffizer Moderna
現状 2020/12/17 16歳以上 2020/12/1 18歳以上
2021/5/10 12歳以上 18歳未満は判断先送り(まれな炎症性心疾患のリスクを高める可能性評価)
2022/5/17 5〜11歳
 
今回   2022/6/14諮問委  6〜17歳に緊急使用許可の勧告
2022/6/15諮問委 生後半年〜4歳 2022/6/15諮問委 生後半年〜5歳

今回の小児用については、Pfizerワクチンは大人の使用量の1/10を3回接種、Modernaワクチンは大人の使用量の1/4を2回接種となっている。

 

日本の場合は下記の通り。

Pffizer Moderna
2021/2/14   16歳以上 2021/5/21  18歳以上
2021/5/31 12歳以上  
2022/1/21 特例承認 5〜11歳  

 

2022/6/17     バイデン大統領、石油会社に非難の書簡

バイデン大統領は6月14日、大手石油会社が生産量を増やさず高収益をあげていると非難する書簡を送り、ガソリンの増産を迫った。

送付先はMarathon Petroleum, Valero Energy, ExxonMobil, Phillips 66, Chevron, BP,  Shell の各CEO。

石油製品のマージンが急増していると、グラフを添付した。

3月に原油が120ドル/バレルの際にガソリン価格はガロン当たり4.25ドルであったが、現在では(原油は若干下がっているが)ガソリン価格は75%上がっているとしている。

 

書簡は次の通り。

June 14, 2022

I am writing to you about the high prices our fellow Americans are paying at the pump, and how we can all play a part in addressing them. Since the beginning of this year, gasoline prices have increased by more than $1.70 per gallon.

Vladimir Putin's war of aggression, and the bipartisan and global effort to counter it, has disrupted the global supply of  oil and driven up the global price. But the sharp rise in gasoline prices is not driven only by rising oil prices, but by an unprecedented disconnect between the price of  oil and the price of gas. The last time the price of crude oil was about $120 per barrel, in March, the price of gas at the pump was $4.25 per gallon. Today, gas prices are 75 cents higher and diesel prices are 90 cents higher.

That difference -- of more than 15% at the pump -- is the result of the historically high profit margins for refining oil into gasoline, diesel and other refined products. Since the beginning of the year, refiner's margins for refining gasoline and diesel have tripled, and are currently at their highest levels ever recorded.

 

 

To be sure, the shortage of refining capacity is a global challenge and a global concern. Around 3 million barrels a day of global refining capacity have gone offline since the onset of the pandemic, inhibiting our ability to ramp up supply of gasoline, diesel and jet fuel. I am working with allies and partners and countries around the world to encourage global refinery capacity to come back online. But, in the United States alone, oil refiners significantly reduced their capacity during the pandemic. In the year before I took office, refineries in the United States reduced their capacity by more than 800,000 barrels a day, leaving American refinery companies today at their lowest level of capacity in more than a half decade.

I understand that many factors contributed to the business decisions to reduce refinery capacity, which occurred before I took office.   But at a time of war, refinery profit margins well above normal being passed directly onto American families are not acceptable.

There is no question that Vladimir Putin is principally responsible for the intense financial pain the American people and their families are bearing. But amid a war that has raised gasoline prices more than $1.70 per gallon, historically high refinery profit margins are worsening that pain.

Your companies and others have an opportunity to take immediate actions to increase the supply of gasoline, diesel, and other refined product you are producing and supplying to the United States market. With prices for your product where they are today, you have ample market incentive to take these actions, and I recognize that some of you have already begun to do so. I also encourage you to continue maintaining and expanding fuel supply sefely.

In addition, my Administration is prepared to use all reasonable and appropriate Federal Government tools and emergency authorities to increase refinery capacity and output in the near term, and to ensure that  every region of this country is appropriately supplied. Already, I have invoked emergency powers to execute the larger Strategic Petroleum Reserve release in history, expand access to E15 (gasoline with 15% ethanol ), and authorize the use of the Defense Production Act to provide reliable inputs into energy production. I am prepared to use all tools at my disposal, as appropriate, to address barriers to providing Americans affordable, secure energy supply.

The crunch that families are facing deserves immediate action. Your companies need to work with my Administration to bring forward concrete, near-term solutions that address the crises and respect the critical equities of energy workers and fence-line communities. I have directed the Secretary of Energy to convene an emergency meeting on this topic and engage the National Petroleum Council in the coming days. In advance of that, I request that you provide the Secretary with an explanation of any reduction in your refinery capacity since 2020 and any concrete ideas that would address the immediate inventory, price, and refining capacity issues in the coming month-- including transportation measures to get refined product to market.

The lack of refining capacity-- and resulting unprecedented refinery profit margins-- are blunting the impact of the historic actions my Administration has taken to address Vladimir Putin's Price Hike and are driving up costs for consumers.  I appreciate your immediate attention to this issue and your efforts to mitigate the economic challenges that Vladimir Putin's actions have created for American families.


2022/6/18 九州電力、千葉でのLNG火力発電計画から撤退  


九州電力は6月15日、千葉県袖ケ浦市におけるLNG火力発電所共同開発検討からの撤退を発表した。

千葉袖ケ浦パワー
総出力200万キロワット(70万キロワット級×3基)

同社は東京ガスと2019年9月に「千葉袖ケ浦パワー」を設立し、千葉県袖ケ浦市の出光興産所有地でのLNG火力発電所の共同開発に向けた検討を進めてきたが、エネルギー情勢について世界規模の混乱が続いている中で、燃料市場、電力市場を含め当該プロジェクトを取り巻く諸情勢を総合的に判断した結果、共同開発検討から撤退することとした。

九州電力にとっては、営業エリア外に設ける初の火力発電だったが、燃料価格の高騰が続く現状では先行きが見通せず、大規模な投資は難しいと判断した。

これを受け、合弁相手の東京ガスは、LNG火力発電所の開発検討を引き続き進めていくと発表した。再生可能エネルギーの導入に欠かせない調整力として期待される LNG 火力発電所への投資を通じ、電力の安定供給に貢献し責任あるトランジションを実現するとしている。

当初、両社と出光興産が同地で石炭火力発電を計画したが、取りやめとなり、2社がLNG火力の計画を進めていた。

ーーー

九州電力、出光興産、東京ガスの3社は2015年3月27日、千葉県に大型の石炭火力発電所を建設することで合意したと正式発表した。

3社が均等出資し、出光が千葉県袖ケ浦市に持つ貯炭場に隣接する約30ヘクタールの遊休地に最大で100万kWの石炭火力2基を建設する。
投資額は4千億円規模の模様で、2020年代中ごろの稼働を目指す。

九電が管外に発電所を造るのは初めて。電力小売り全面自由化後の需要をにらみ、発電でも首都圏への参入が本格化する。

2015年5月、3社の共同出資により、「千葉袖ケ浦エナジー」が設立された。

2015/4/22   首都圏向け、火力発電計画 相次ぐ  

しかし、3社は2018年1月31日、石炭火力発電所について、十分な事業性が見込めないとの判断に至り、共同開発を断念すると発表した。

 

その後、2019年9月2日付けで九州電力及び東京ガスが同地点で燃料種別をLNGとした火力発電所の開発検討を進めるため、 「千葉袖ケ浦パワー」を設立した。出光は、参画していない。

 


2022/6/20 英政府、北アイルランド議定書の一部を破棄する法案を発表 

英政府は6月13日、2019年に欧州連合(EU)と交わしたEU離脱後の通商協定の「北アイルランド議定書」を破棄する計画を発表した。

国益を守るために「ほかに道がない」としている。今回の「北アイルランド議定書法案」は今後、英議会で審議・採決される。

これに対しEUは、協定の一方的な破棄は国際法に違反するとして、英の動きに反対している。

ーーー

英は2021年1月にEUを離脱、北アイルランドとアイルランド間の貿易に関しては、2019年に英とEU間で交わされた「北アイルランド議定書」が発効した。この議定書では、北アイルランドとEU間の通商に支障が出ないよう、税関など国境管理措置を設けないと定められているが、これにより、北アイルランドと残りの英との間にEU法にのっとった税関が必要になっていた。

現在、議定書にのっとって検査や規制が行われており、北アイルランドへ物品を輸入している企業は、追加コストや手続きの煩雑さといった問題に直面している。特に規制の厳しい食品や園芸といった分野で苦労が多いという。

一方で北アイルランドからアイルランドへの輸出では、EU市場への摩擦のないアクセスが維持されているため、食品を含む輸出業者は恩恵を受けている。

英政府は2021年7月21日、北アイルランドで起きている物流などの混乱をおさめるため、英領北アイルランドでの通商ルールについてEUに再交渉を求めると発表したが、EUは再交渉に応じなかった。

2021/7/24    英、EU離脱ルール再交渉を要求、EUは拒否

 

今回の英国案では、英本土から北アイルランドに入る貨物の扱いについて、次のように改定する。

北アイルランドにそのまま留まる貨物はグリーンレーンを使い、チェック無し、書類も簡単。

北アイルランドを通ってアイルランドや他のEU諸国に運ばれるものはレッドレーンを使い、北アイルランド港湾でチェックを受ける。

物品検査に関する「不必要な」事務処理をなくし、北アイルランドの企業が英の他の地域の企業と同様の税制優遇措置を受けられるようにする。

また、あらゆる貿易紛争を欧州司法裁判所(ECJ)ではなく、「独立した仲裁」によって解決する。

  1. green and red channels to remove unnecessary costs and paperwork for businesses trading within the UK, while ensuring full checks are done for goods entering the EU
  2. businesses to have the choice of placing goods on the market in Northern Ireland according to either UK or EU goods rules, to ensure that Northern Ireland consumers are not prevented from buying UK standard goods, including as UK and EU regulations diverge over time
  3. ensure Northern Ireland can benefit from the same tax breaks and spending policies as the rest of the UK, including VAT cuts on energy-saving materials and Covid recovery loans
  4. normalise governance arrangements so that disputes are resolved by independent arbitration and not by the European Court of Justice

英政府は、国際法における「必要性」という言葉は、「国家が本質的な利益を守るために、他の国際的な義務を不履行にする(あるいは破る)しかない」という状況を正当化するために使われる、とし、現状はその状況に当たるとしている。また、今回の計画は他国の利益を「深刻に損なう」ものではないとしている。

また、北アイルランド議定書の16条で、議定書の適用によって経済的・社会的・環境的に深刻な問題が生じ、その結果として貿易が制限される場合、いずれかの側が保護措置を講じることができると定めているとする。

北アイルランドの平和維持のために結ばれた「ベルファスト合意」を保護し、北アイルランドと残りの英の経済的・社会的つながりを保全することが、英の「本質的な利益」であるが、議定書の問題が、先に総選挙のあった北アイルランドでの政権樹立の「障壁になっている」としている。

5月5日投票の英領北アイルランド議会選、隣国のアイルランドとの統一を訴えるシン・フェイン党が全90議席中27議席を獲得し、史上初めて第1党となった。改選前の第1党で親英派の民主統一党(DUP)は25議席にとどまった。

議会第一党の座を失ったDUPは、議定書が修正されるまでは、シンフェイン党が率いる合同政府に参加しない意向を表明しており、政権発足の目途が立たない状況にある。


2022/6/20   日本の石油化学製品生産能力(2021年12月末時点)

経済産業省は6月10日、2021年12月末時点の石油化学製品の能力調査の結果を発表した。

1.エチレン 

  合計 増減 主な内訳
2013年末 8,000    
2014年末 7,658 -342 三菱化学鹿島@停止 -390
2015年末 7,317 -341 住友化学千葉停止  -415
2016年末 6,824 -493 旭化成水島停止 -504
2021年末 6,841    


2.ポリエチレン 

日本ポリエチレンが2021年5月に鹿島のLD 62千トンを停止

プライムポリマー(出光・千葉)が2013年3月にHDPE 130千トン停止
日本ポリエチレン(東燃・川崎)が2014年に52千トン停止

 

3.PP  

プライムポリマー(三井化学・市原) 2013年6月に工場のPP製造設備1系列98千トンを停止。
日本ポリプロ(川崎)  2014年4月に89千トンプラントを停止
日本ポリプロ(チッソ千葉) 2017/3 11.6万トン停止、2019/10 15万トン増設
日本ポリプロ(鹿島) 2020/4 106千トン停止
日本ポリプロ(チッソ千葉) 2021/1 7万トン停止

4.EO  

5.SM  

住友化学は千葉のエチレン停止に合わせ、2015年に日本オキシランのハルコン法のPO/SM併産設備(SM:412千トン、PO:181千トン、PG:100千トン)を停止した。

旭化成は水島のエチレン停止に合わせ、2016年3月にSMの1系列 306千トンを停止。

6.PS    

 

7.VCM 

2011/3  ヴイテック  停止 391千トン
2011/11 東ソー第2系列爆発事故 550千トン
2014   東ソー、第3系列(400千トン)を増強 +200千トン

8.PVC    

2015年秋に新第一塩ビ(千葉) 80千トンを停止
2020年6月 大洋塩ビ(大阪) 158千トン停止(2022/3/31 三井化学離脱、東ソー84%/デンカ 16%に)

 

9.アセトアルデヒド

昭和電工  2009年に徳山石油化学 140千トンを停止
        
2017年 大分工場 160→48千トン  


 10.アクリロニトリル

旭化成、2014年8月、川崎工場(150千トン)を停止、水島の269千トンのうち78千トンを他製品用に転用

 

11.合成ゴム

注 JSRは合成ゴムをENEOSに売却、2022年4月1日よりENEOSマテリアル

 2021/5/13 JSR、合成ゴム事業をENEOSに売却

 

12.MMAモノマー

13.BTX  

  2020 2021 増減

 増減内訳

ベンゼン 5,425 5,022 -403  全てENEOS
トルエン 2,371 2,085 -286
キシレン 8,543 8,289 -254

ENEOSは2021年10月に知多製造所のBTX、パラキシレンを停止、
2022年10月を目途に出光興産に設備を譲渡する。

2020/10/29 ENEOS、愛知・知多製造所停止へ

14.パラキシレン

    ENEOS 2021/10 知多の400千トン停止(上記参照)

 


2022/6/21 米最高裁、Bayerの除草剤問題での上訴を審議せず 

Bayerは2021年8月16日、同社の子会社Monsantoのグリホサート系除草剤「ラウンドアップ」が原因でがんになったと訴えた顧客への損害賠償を支持した米控訴裁判決(Edwin Hardeman訴訟)を不服として、米最高裁に上訴した。

米最高裁は6月13日、上訴案件のうち審議する対象案件を発表したが、本件は含まれていなかった。却下された。

 

これまでに多くの訴訟があり、かなりの部分が和解しているが、裁判で同社が敗訴になったのは下記の3件である。

  原告   陪審員 裁判官判断
1 校庭の管理人   カリフォルニア 2018/8/10 Superior Court 2018/10/23
損害賠償 39百万ドル 39百万ドル
懲罰的損害賠償 250百万ドル 39百万ドル
2 Edwin Hardeman   カリフォルニア 2019/3/27 地裁 2019/7/16
損害賠償 527万ドル 527万ドル
懲罰的損害賠償 75百万ドル 20百万ドル
被害に対して15倍もというのは違憲
3 Pilliod 夫妻   カリフォルニア 2019/5/13 Superior Court 2019/7/25
損害賠償 55百万ドル 17 百万ドル
懲罰的賠償 20億ドル 69百万ドル 
陪審の懲罰的賠償は過大で憲法違反

2019/7/27 モンサントの除草剤 Roundup による発癌被害裁判、裁判官が陪審の懲罰的賠償を大幅減額 


Bayerが上訴したのは、このうちの
Edwin Hardemanの件である。
除草剤ラウンドアップの発癌性について、連邦法(FIFRA=Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act )とカリフォルニア州法で意見が異なることから生じたもので、最高裁の判断を求めた。

(連邦法)米国で農薬承認を行うEPAは発癌性はないとしている。このため、ラベル(使用法等を記載)には「発癌性の危険」の表示はなく、仮に表示すれば違法となる。

(州法)カリフォルニア州はラウンドアップを発癌性製品のリストに含めており、その場合、「発癌性の危険」が表示されていないのは違法となる。

原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こした。陪審員は、除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されていないため違法であるとして有罪とし、一審の裁判官も、控訴裁の裁判官もこれを認めた。

米EPAと司法省は2019年12月20日、Friend of the court brief (=amicus curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。

このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。

EPAは発癌性を認めず、製品ラベルには当然、発癌性の危険は表示されていない。しかし、カリフォルニア州は発癌性製品のリストに含めており、発癌性の危険が表示されていないのは違法となる。

EPAと司法省は、ラベルは法律で認めたもので、それと異なるやり方での使用は法律違反であるとし、州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ないとしている。

2019/12/26 米EPAと司法省、除草剤Roundupの発癌被害裁判でBayer側支持の意見書 

最高裁は2021年12月13日、政権に対し、最高裁が本件を取り上げるべきかどうかについての意見を求めた。

2021/8/21 Bayer、除草剤ラウンドアップ訴訟で最高裁に上告

これに対し政権は2022年5月10日、Bayerによる上告を拒否するよう求めた。

訟務長官は、「FIFRAでのEPAラベル承認」が州法が求める「警告がなかった」ということに優先するというBayerの主張を拒否するよう求めた。「EPAが特定の疾病リスクを警告しないラベルを承認したこと自体は、州法がそのような警告をすることを求めることに優先するものではない」とした。

これまでのEPA、司法省の主張(トランプ大統領時代のもの)と真逆である。

EPAが発癌性を認めていないことは発癌性がないことを示している訳ではなく、「発癌性のおそれ」をラベルに書くことが違法であるというのは、無理があり、この回答は妥当である。

2022/5/13   バイデン政権、Bayerによる除草剤ラウンドアップ訴訟での最高裁上告に反対

今回最高裁は訟務長官の説明をそのまま受け入れたと思われる。

 

なお、Bayerはその後の4つの裁判で全て勝訴している。

1.2021/10 ロスアンジェルス地裁

 原告 Destiny Clarkは住居の雑草処理にRoundupをスプレイしたが、息子がバーキットリンパ腫にかかったとしてMonsantoを訴えた。

陪審員は病気は除草剤が主な原因ではないとして訴えを退けた。

2.2021/12 カリフォルニア州San Bernardino County 地裁

原告Donnetta Stephens は、庭でRoundup を30年以上使用してきたが、2017年に非ホジキンリンパ腫に罹った。ラベルには発癌性の警告は書かれていない。癌は寛解期にあるが、複数回の化学療法の結果、記憶喪失に苦しんでいる。

裁判はコロナのため、ZOOMを使って行われたが、陪審員はRoundupが病気の原因でないと判断した。

3. 2022/6 ミズーリ州 Kansas City地裁

Allan Shelton が癌になったとして訴えた裁判で、Bayerが勝利

4. 2022/6/17 オレゴン州Jackson Countyの巡回裁判所

Bayerが4回連続で勝訴

ーーー

Bayerは2021年5月にグリホサート系除草剤「ラウンドアップ」の訴訟問題に関し、5つの進め方を明らかにし ている。

1) 連邦最高裁のルーリングを求める。

 8月16日に連邦最高裁に上訴した。

2) 将来の訴訟対策

 最高裁の判断が不利なものである場合のため、追加で45億ドルを引当てる。

3) 和解

 138千件のうち既に107千件を解決したが、残り31千件については最高裁が審理を決めた場合、その結果を待つ。

4) 家庭用・農園用(Lawn & Garden)農薬の新処方

 「ラウンドアップ」以外の有効成分の新処方の発売

 訴訟の大半はこの用途でのもので、処方変更で訴訟を減らす。

5) 「ラウンドアップ」の安全性を説明するWeb EPA's Review of Glyphosate Safety を新設

 

今回の最高裁の決定を受け、和解を進めると思われる。


2022/6/21    ドイツ、ロシア天然ガス減で、石炭火力を拡大 

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表、翌15日、さらに33%削減すると発表した。(合計60%カット)

従来の日量最大1億6700万立方メートル であったが、16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになる

「エンジンの技術的な状態」のためガスタービンの運転を停止すると説明するが、ドイツのウクライナ支援への報復とか、価格を更に引き上げるためとかの理由が噂されている。

2022/6/17   Gazprom、ドイツ向けの天然ガス供給を削減

ドイツはロシアの天然ガスに大きく依存している。侵攻前、ドイツはガスの55%をロシアからの輸入に頼っていた。

来冬の需要に備え、天然ガスの貯蔵が必要だが、現時点ではドイツのガス貯蔵量は最大能力の5〜6割程度にとどまっている。

ドイツのハベック経済・気候相は6月19日、ロシアからの天然ガス供給が大幅に減る事態に備え、 発電に利用するガスの消費量を減らし、石炭火力発電の稼働を拡大させる法整備を進めると発表した。

ガス節約を促すため、消費量を減らした企業ほど有利になる新たな仕組み「ガスオークション」の導入も計画する。

「(冬までに)できるだけ多くのガスを蓄えることが必要だ」とし、2030年までに火力発電の全廃を目指す取り組みと逆行することについて、「つらいことだが、ガス消費量を減らすためには必要なことだ」と理解を求めた。

ーーー

ドイツの発電のエネルギーソース内訳は下図の通りで、再生可能エネルギーが40.9%を占め、石炭・褐炭が27.9%、原子力が11.8%、天然ガスが15.3%を占める。

 ソース:https://www.de-info.net/kiso/atomdata01.html

ドイツは2021年に、温室効果ガスを2030年までに1990年比で65%削減することを決めている。

2030年に国内総電力の80%を再生エネルギーにし、石炭火力については2030年までに段階的廃止する。原発については2022年中に全廃する。

 ドイツ新政権の連立協定

自然エネルギー
・ 2030年に、年間総電力需要680〜750TWhのうち80%を自然エネルギーで供給する。
・ 国土の2%を陸上風力発電に利用する。
・ 洋上風力発電の容量を大幅に拡大し、少なくとも2030年に30GW、2035年に40GW、2045年に70GWを目指す。
・ 2030年までに、太陽光発電容量をおよそ200GWまで拡大させる。
・ 新築事業用建築物への太陽光発電設備の設置義務化、新築住宅への設置も原則とする。
・ 2025年1月1日までに新しく設置される全ての暖房システムは、自然エネルギーによる運用比率65%を目指す。
・ 社会的公平性のため、2023年1月には電気料金を介した再エネ賦課金を廃止する。

石炭
・ 理想的には2030年に脱石炭完了を前倒す。
・ 脱石炭にむけた過渡期には、自然エネルギーの大規模な拡大と最新型ガス火力発電所の建設が必要である(H2-ready)。
・ 脱石炭の影響を被る地域に対する石炭地域構造強化法の施策を前倒し・加速し、調整手当などの労働政策上の措置も調整する。
・ 石炭火力発電の解体と土地の復旧のための財団・組織の設立を検討する。

原発
・ ドイツの脱原発を固持する。

気候変動対策
・ ドイツを「1.5度」の軌道へと導くことを主要課題とする。
・ 遅くとも2045年までに気候中立を達成する。
・ 2022年に連邦気候保護法を再度改正し、同年末までに必要な法整備をして新たな気候保護緊急プログラムを導入する。
・ 連邦経済・気候保護省を新設し、緑の党から連邦経済・気候保護大臣を設ける。
・ 気候チェック(Klimacheck)を行い、各省庁が起草する法案について気候への影響や国の気候保護目標との整合性を検証

その他
・ 2030年に、少なくとも1,500万台の電気乗用車(EV)を普及させる。
・ 水素経済・インフラの整備を加速化し、2030年に10GW程度の電解容量を実現する。
 

残るのは天然ガスであるが、今回、これが60%削減されることになり、やむを得ず、石炭火力を増やす。

なお、ロシアへのガス依存を減らすために原発稼働延長案が出たが、政府は3月8日、これを却下した。年内に残る3原発が廃止される。

 

  2020/7議会 2021年 2021/12/31 2022年中
温室効果ガス   2030年までに1990年比 65%削減
2045年までにネットゼロ
(2021/6 連邦気候保護法 改正)
   
国内総電力   2030年に80%を再生可能エネルギー
(2021/11 連立政権)
   
石炭火力 2038年までに全廃「脱石炭法」 前倒し 、2030年までに段階的廃止
(2021/11 連立政権)
   
原子力発電   脱原発 維持
(2021/11 連立政権)
3基停止
 Brokdorf
 Grohnde
 Gundremmingen
残り3基停止(ゼロに)
 Emsland
 Isar
 Neckarwestheim

 


2022/6/22  欧州議会委員会、EUタクソノミーに原発・ガスを加える委託法令に反対 

欧州委員会は2022年2月2日、持続可能な経済活動を分類するEUタクソノミーにおいて、天然ガスと原子力による発電を一定の条件下で「カーボンニュートラルへの移行期に必要な経済活動」に含めると発表した。一部加盟国や環境団体などが異論を唱える中、脱炭素社会実現へ「使える手段は全て活用する必要がある」との判断で押し切った。 (詳細下記)

欧州議会欧州理事会は7月11日までに欧州委員会の提案に拒否権を発動するかどうかを決定する。

EUでは、法案提出権は特別の場合を除いて、欧州委員会が独占している。

欧州議会もEU理事会も、欧州委員会に法案提出を要請することはできるが、提出するか否かは欧州委員会の裁量。

欧州委員会の提案後、欧州議会の諮問を経て、EU理事会が法案を採択する。

異議申し立てには、欧州議会では単純多数決、欧州理事会では特定多数決(加盟国の72%以上=20か国以上、人口の65%以上)が必要である。

ドイツ政府は5月16日、原子力発電を持続可能な投資対象に含めたEUの「タクソノミー」に関する規則に反対する考えを示した。天然ガスを含めることは支持している。
フランスや東欧諸国は原子力に賛成する。

欧州議会の経済金融委員会と環境・公衆衛生・食品安全委員会の合同会議は6月14日、EU気候変動タクソノミーに原子力発電とガスエネルギーを加えるEUタクソノミー委託法令に対し、異議を唱える決議案を採択した。票数は異議76、異議なし62、棄権4だった。

決議案は天然ガスと原子力について、EUの法律に基づくと持続可能なエネルギーとはみなせず、「グリーン」に区分することは投資家を混乱させるとしている。

同決議案は7月上旬に本会議で採決にかけられる。議員の過半数が支持すれば、EUの提案は否決される。 修正か、撤退となる。

本会議で決議案が否決された場合(欧州委員会案が承認された場合)、欧州理事会での採択となる。

成立する場合は、2023年1月から実施に移される。ただ、グリーンウォッシュ(見せ掛けの環境保護)として原発の盛り込みに反対しているオーストリア とルクセンブルグは既に、その場合に欧州司法裁判所に欧州委を提訴するとしている。

付記

EUの欧州議会は7月6日、原子力発電と天然ガスを「環境に配慮した投資先」のリストに加える提案について審議した。

提案に反対する決議案が議題となったが、採決の結果、否決した。639票のうち328票が提案に賛成した。反対は278、棄権33。(単純多数決)

総議席数は、ブレグジット前の751議席から705議席に削減された。欧州委案拒否には過半数の353が必要。

提案は欧州議会に事実上承認され、当初の予定通り2023年に発効する公算が大きくなった。

ただ、放射性廃棄物を出す原発や、石炭よりは少ないが温室効果ガスを排出する天然ガスを「環境保護に貢献する」と認めることに対しては、EU内外で反発が根強い。ロイター通信によると、反対派のオーストリアは6日、発効後に欧州司法裁判所に提訴する方針を示した。

 

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欧州委員会は2022年1月1日、原子力発電と天然ガスを地球温暖化対策に役立つエネルギー源と位置づける方針を発表した。

原子力発電と天然ガスについて、「再生可能エネルギーを基盤とする将来に向け、移行を促す手段」と位置付けた。

EUは、発電、交通、建築など様々な経済活動ごとに、持続可能で環境に配慮しているかどうかを仕分けするルール「EU Taxonomy(分類)」を設けている。

欧州委員会は、「電力、ガス、上記、空調の供給」に原発や天然ガスの項目を新たに追加し、持続可能かなどについての評価基準を示す。

加盟国の専門家との協議を開始した。

原案は以下の通り。

 原子力は生物多様性や水資源など環境に重大な害を及ぼさないのを条件に、2045年までに建設許可が出された発電所を持続可能と分類する。

 天然ガスは@1キロワット時あたりのCO2排出量が270グラム未満、ACO2排出の多い石炭の代替とする、B30年までに建設許可を得る――などを条件とする。

ただ、2022年末の脱原発をめざすドイツのほか、オーストリア、ポルトガルなど計5カ国は2021年11月、環境担当などの閣僚が連名で、「タクソノミーの信頼を損なう」として原発の組み入れに反対する共同声明を発表した。
一方で、原発が発電量の約7割を占めるフランスのほか、今は原発がないポーランドなど計10カ国はタクソノミーに原発を加えるよう求める姿勢を鮮明にした。 

2022/1/3 欧州委、原子力発電と天然ガスを地球温暖化対策に貢献するエネルギーと位置づけ 

 



2022/6/23 BHP、発電用石炭の売却を中止 

BHPグループは6月16日、オーストラリア東部に保有する発電用石炭(一般炭)のMt Arthur炭鉱を運営するNew South Wales Energy Coal の売却を中止すると発表した。

脱炭素の機運を背景に、発電時にCO2を多く排出する一般炭からの撤退に向けて売却交渉を進めてきたが「利益の出る提案が無かった」ため、操業継続を決めた。

操業認可は2026年までだが、当局と交渉し2030年までの延長を目指す。

 

BHPグループは2021年8月17日、石油・ガス事業から撤退、事業を豪 Woodside Petroleumに売却すると発表した。世界的な「脱炭素化」の流れをにらみ、本業である鉱業に経営資源を集中させる。 化石燃料から脱却し、「未来に目を向けた」商品へのシフトを目指す。

2021/8/19 BHPが石油・ガス事業から脱却

石炭については、2020年8月に低グレードの冶金・発電用石炭からの撤退方針を決め、2022年1月には Cerrejónを、5月にはBHP Mitsui Coal 持分の売却を行った。

BHPは世界最大の露天掘り炭鉱のCerrejón$US294 millionに売却する。

同時にAnglo Americanも33.3%の持分をGlencoreに売却、GlencoreはCerrejón炭鉱の100%株主となる。

売却は2022年1月11日に完了した。

 

BHPは2021年11月、三井物産との原料炭JVのBMC(BHP Billiton Mitsui Coal)の権益80%を 豪Stanmore Resourcesに12億ドル (今後の石炭価格動向により最大1.5億ドルの追加の可能性)で売却することで合意した。Stanmore ResourcesはシンガポールのGolden Energy and Resources が過半数権益を保有する。2022年5月に売却が完了した。

BMCはクイーンズランド州に操業中の2鉱山(Poitrel and South Walker Creek)を所有し、年間約1000万トンの石炭を生産している。主力炭鉱の1つであるPoitrel 炭鉱では、石炭処理・鉄道施設に関して豪の石炭生産企業 Peabody Pacificと提携している。

三井物産はBMCの20%の権益を維持する。

2011/11/10    BHP、豪州の石炭プロジェクトの一つを売却

BHPは三菱商事との50/50JVのBMA(BHP Billiton Mitsubishi Alliance) を持つが、世界の鉄鋼メーカーが求め高品位炭のため今後も保有する。

 


2022/6/24 JSR、腫瘍オルガノイドを用いた前臨床受託サービス開始

JSRはライフサイエンス事業を石化事業、ファイン事業に次ぐ第三の柱と位置付け、医薬品開発プロセスの革新に貢献することで価値を提供し、同事業を拡大していくことを目指している。

石化事業は柱であったエラストマーを売却し、ABS等の合成樹脂だけが残る。

2021/5/13 JSR、合成ゴム事業をENEOSに売却、韓国の合成ゴムJVも相手先に売却

JSR の ライフサイエンス事業のグループ企業である医学生物学研究所と Crown Bioscience は5 月12 日、日本国内で前臨床向けサービスを更に拡大するため、ジョイントベンチャーCrown Bioscience & MBL を設立した と発表した。医学生物学研究所は現在、Crown Bioscience の代理店としてサービスの販売を行っている。

Crown Bioscience オンコロジー、がん免疫、免疫媒介炎症性疾患(IMID) 分野における前臨床とトランスレーショナル研究の世界的な CRO 企業である。2006 年に創業され、Cayman Islandsに登記上の本社を持ち、米国、欧州、アジアにおいて 10 カ所の事業所を有している。JSRが2021年5月に買収した。

トランスレーショナル研究は、アカデミアで研究者らが基礎研究を重ねて見つけ出した新しい医療の種(シーズ)を、実際の医療機関等で使える新しい医療技術・医薬品として実用化することを目的に行う非臨床から臨床開発までの幅広い研究を指す。

世界でがん、炎症性疾患、心血管疾患及び代謝性疾患領域に対して、医薬品の基礎研究成果を臨床研究や実用化にまで高める創薬探索開発受託サービスを提供する。 腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )を用いたサービスや、世界最大の商業向け PDX コレクション(患者腫瘍移植モデルPatient-derived xenografts)を有している。 (詳細後記)

医学生物学研究所臨床検査薬、創薬支援、研究用試薬を扱う。JSRは2013年よりJSRの抗体・抗原・遺伝子関連技術および試薬開発技術と医学生物学研究所の保有する技術を統合し、医療分野での協業を進めてきたが、2021年3月 に全発行済株式の取得を完了した。

両社は海rown Bioscience & MBL を設立し、初期段階において、製薬企業に対し前臨床およびトランスレーショナル研究(橋渡し研究)関連サービスを提供する。

医学生物学研究所の国内製薬市場における深い知識と経験と、Crown Bioscience が提供する世界的規模の前臨床とトランスレーショナル研究サービスを掛け合わせることにより、シナジー効果を生み出す。
JVは
2022 年9 月のサービス開始を目指す。

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Crown Bioscience は、世界でがん、炎症性疾患、心血管疾患及び代謝性疾患領域に対して、医薬品の基礎研究成果を臨床研究や実用化にまで高める創薬探索開発受託サービスを提供する。

腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )を用いたサービスや、世界最大の商業向け PDX コレクション(患者腫瘍移植モデルPatient-derived xenografts)を有している。

腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )はがん組織由来 の培養細胞500以上の腫瘍サンプルを有する優位性を発揮してがん薬効試験などの需要を取り込む。

ソース:福島医薬品関連産業支援拠点化事業

PDX コレクション(患者腫瘍移植モデル )は、免疫不全マウスに患者の腫瘍組織をそのまま移植する手法。

従来より抗がん薬の有効性を評価する手段として、患者の腫瘍組織を細分化しシャーレで培養する細胞株が用いられてきた。細胞株をマウスへ移植して腫瘍を作成するのが細胞株移植モデル(CDXモデル)だが、これで有効でも実際にがん患者で有効性を示す抗がん薬の割合は低い。

PDXモデルでは、作成された腫瘍の組織構造が患者の腫瘍の組織構造と近似しており、腫瘍の不均一性が保たれ、さらに遺伝子異常が維持されるという特性があり、より患者での有効性を予測できるモデルとして注目されている。

 

Crown Bioscience は2020年4月、ワシントン大学のCoMotionとダナ・ファーバー癌研究所との合意により、必要性が高いが作成が困難な前立腺癌モデルとリンパ腫モデルの提供が可能となったと発表した。

ワシントン大学のCoMotionとのライセンス契約により、入手可能な前立腺癌PDXモデル数が大幅に拡大し、CrownBioの確立された前立腺癌PDXコレクションを補強する。

ダナ・ファーバー癌研究所との協業により、T/NK、マントル細胞、濾胞性リンパ腫、難治性または再発患者のDLBCL等の様々なリンパ腫がCrownBioのポートフォリオに加わる。

CrownBioでこれらの新しいモデルのバイオバンク化とデータ集積をまず確立した後、薬効評価、マウス臨床試験、CAR-T細胞療法評価、ヒト化、及びオルガノイド開発を含む腫瘍学及び免疫腫瘍学研究に利用可能となる。


2022/6/25 韓国 、国産ロケットで実用衛星打ち上げに成功 

韓国が独自開発した国産ロケット「ヌリ」(KSLV-U:Korea Space Launch Vehicle-2)が6月21日、南部の全羅南道・高興の羅老宇宙センターから打ち上げられ、人工衛星を高度700kmまで運び、宇宙空間の目標軌道に乗せることに初めて成功した。

「ヌリ」は韓国の古い言葉で「世の中」や「世界」を意味する。全長約47m、重量200tの3段式液体燃料ロケットで、午後4時に打ち上げられ、性能検証衛星(162.5kg)とダミー衛星(1.3トン)の分離に成功した。

重量1トン以上の実用衛星を自力で打ち上げた世界7番目の国となった。(日本、米国、ロシア、フランス、中国、インドに次ぐ。)

ヌリは韓国航空宇宙研究院が韓国独自の技術で設計・開発した。衛星を打ち上げた75トン級と7トン級の液体燃料エンジンから 、衛星を保護するフェアリングまで国内で開発した。とりわけ、大型・小型のロケット開発に活用できる75トン級エンジンの性能を立証し、今後の宇宙開発の土台をつくった。

 

韓国は1990年代から科学ロケット開発に本格的に取り組んできた。
2003年に初の液体推進科学ロケット「KSR3」を打ち上げた。

韓国航空宇宙研究院がロシアのクルニチェフ国家研究生産宇宙センターと共同で100キロ級の小型衛星を搭載するロケット「羅老(ナロ)」を開発し、2009年から2013年まで計3回打ち上げた。1回目と2回目の打ち上げには失敗したが、3回目で成功した。

2009年の1回目に続き、2012年11月にも打ち上げを試みたが、電気信号の異常が見つかったため直前になって中止した。

2013年1月30日にSTSAT-2C(羅老科学衛星)を搭載した羅老3号機を打ち上げ、衛星の軌道投入に成功した。

「ヌリ」は当初、ロシアから羅老の第1段ロケットエンジンの技術移転を受ける予定であったが、破談となり、国産化を目指した。

苦心の末、2021年10月21日に国産ロケット「ヌリ」が打ち上げられた。1段目とフェアリング、2段目の分離が正常に行われたが、3段目のエンジンの燃焼が予定より早く終わり、ダミー衛星を目標軌道に投入する目標は達成できなかった。

今回、衛星の軌道投入に成功した。

韓国政府は2027年までにあと4回打ち上げを実施し、ヌリ号の技術的信頼度と安全性を高めていく。3回目の打ち上げは来年上半期に予定されている。

 


2022/6/27 EU、ウクライナとモルドバを加盟候補国に認定 

 

欧州連合(EU)は6月23日開いた首脳会議で、ウクライナとモルドバに加盟候補国の地位を付与することを承認した。全27加盟国が同意し、認定に必要な全会一致で決まった。

EU加盟に向けて具体的な交渉に入ることになる。 


2月24日のロシアの侵攻を受けたウクライナおよび、同国周辺のジョージアとモルドバが3月3日、相次いでEUへの加盟を申請する文書に署名した。

欧州委員会は6月17日、ウクライナのEU加盟に関する意見書を発表し、ウクライナに対する加盟候補国の認定をEU理事会(閣僚理事会)に勧告した。

欧州委はまた、ウクライナと同様に、3月にEU加盟申請を行ったモルドバとジョージアに関する意見書を発表した。
モルドバに対しては、加盟候補国の地位付与を勧告、
ジョージアに対しては、加盟の方向性を認めるものの、今後取り組むべき優先事項が実施されるまでは、加盟候補国の認定を保留すべきとした。

今回、ウクライナとモルドバが正式に加盟候補国となった。ジョージアについては、欧州委が提示した条件を満たせば候補国にする方針を示した。

ウクライナとモルドバ両国は加盟実現に向けた長い手続きの「第一歩」を踏み出したことになる。

司法・行政・経済など分野ごとの加盟交渉に向けて動き出すが、国内法の改正などが必要で、実際に加盟するまでには通常10年程度かかる。

ウクライナの場合、腐敗が問題で、オリガルヒ(政商)が政財界の癒着を広げ、賄賂の横行や政治家による司法への圧力が問題。
国営企業の民営化、独占企業の解体などの市場改革も必要。
ウクライナの一人当たりGDPはEU平均の1/10以下で、今回の戦争の影響も大きい。加入の場合、EU予算の圧迫も懸念される。

2022年3月現在、アルバニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、トルコの5カ国が加盟候補国で、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの2カ国が潜在的加盟候補国となっている。

ブルガリアやルーマニア(2007年1月)、クロアチア(2013年7月)といった直近の加盟国は、一連の手続きに10〜12年を費やした。

アルバニアと北マケドニア、モンテネグロ、セルビアは正式な加盟候補国となって数年がたっているが、手続きは滞っている。トルコも1999年に加盟候補国となったものの、人権侵害への懸念があることから、加盟交渉は中断したままである。

NATO & EU 加盟国一覧


2022/6/28   米議会、銃規制強化法案を可決、米最高裁はNY州の銃規制を違憲と判断 

 

米連邦議会上院の超党派の議員グループは6月21日、銃規制を強化する法案を議会に提出した。

新法案は、21歳未満の銃購入希望者に対する身元確認を強化するほか、精神医療や学校警備の強化策に連邦予算150億ドルをあてる。
裁判官が危険とみなした人から銃を押収する緊急措置を導入している州を支援する資金提供なども盛り込まれている。
加えて、ドメスティックバイオレンス(DV)加害者による銃購入も規制を強める。「ボーイフレンド抜け穴」と呼ばれる法の抜け穴をふさぐ。

米国で銃規制法案が成立するのは28年ぶり。全米で相次ぐ銃乱射事件を受け、規制に慎重だった野党・共和党からも賛成が出た。共和党からも賛同者が出た背景には、5月にニューヨーク州バッファローのスーパーや、テキサス州ユヴァルディの小学校で相次いだ乱射事件がある。特に小学校の乱射事件では、多くの児童が犠牲になった。

まず上院が6月23日に賛成多数で可決した。共和党からミッチ・マコネル院内総務ら 15議員が賛成にまわり、賛成が議決に必要な60票を超えた。

  共和党 民主党 民主系 合計
無所属
賛成 15   48  2 65
反対  33     33
棄権 2     2
合計 50 48 2 100

下院は翌24日、234対193で可決した。共和党から14議員が賛成に回った。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 14 220 234  
反対 193   193  
棄権 3   3  
合計 210 220 430

バイデン大統領が6月25日に署名し、成立した。

 

他方、米連邦最高裁は6月23日、外から見えない形で拳銃を携帯するのに「適切な理由」を示して州当局から許可を受けることを義務づけた東部ニューヨーク州の州法が違憲だとの判断を示した。

銃規制強化を求める世論が強まっているが、公権力による規制よりも個人の権利を重んじる保守派判事6人の多数意見で、100年以上前に制定された州法が違憲だと判断された。 間もなく退任するBreyer判事を含めた3人のリベラル派判事は反対した。

銃規制の基準は州によって異なるが、ハワイや東部マサチューセッツなど5州と首都ワシントンはニューヨーク州と同様の規制をしている。
 
最高裁判決は、学校や裁判所、行政庁舎などへの銃持ち込みは制限可能だとした上で、ニューヨーク州法の規制が過剰だとの見解を示した。
その上で「銃を携帯する権利は、憲法修正第2条で保障されている。政府当局者に『適切な理由』を示せなければ、憲法上の権利を行使できないなどという例は(銃所持以外)他にない。法律を順守している市民が自衛のために銃を携帯することを妨げており、(州が適正な手続きなしに自由や財産を奪うことを禁じた)憲法修正第14条にも違反している」と指摘、州法は「合憲だ」とした控訴審判決を破棄し、下級審に審理を差し戻した。

2022/6/29  大阪ガス、豪州で2つのグリーン水素ハブ構想へ参加 

大阪ガスは6月17日、 豪州最大手の総合エネルギー事業者であるAGL Energy Limitedと、豪州南オーストラリア州およびニューサウスウェールズ州におけるグリーン水素ハブ構想の実現可能性調査に参画するための基本合意書を締結したと発表した。

4月に発表したDesert Bloom (Green) Hydrogen 構想(後記)に続くものである。

AGL Energyは、豪州で電気とガスの製造や小売事業を展開している総合エネルギー事業者で 、太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーの発電設備も多く保有しており、火力も含めた発電設備の保有電源量は1,100万kWになる。

本事業は、AGL Energyが南オーストラリア州のTorrens IslandとNew South Wales州のHunter Valleyに保有している既存発電設備の敷地内で、再生可能エネルギーを用いて水を電気分解することでグリーン水素を製造 するもの。

それぞれ同州内の事業者に供給するとともに、海外への輸出も目指している。また、グリーン水素を活用して、メタネーションにより製造される合成メタンおよびグリーンアンモニア製造についても検討を行う予定 。

Torrens Island計画には他に、INPEX(旧称 国際石油開発帝石)、Adbri(豪セメント等のメーカー)、Brickworks(豪建材メーカー)、Flinders Ports(豪州の7つの港を管理)、SK ecoplant(SK建設)、Spark Renewables(Spark Infrastructure Group)が参画する。

Hunter Valley計画では、AGL Energyが再生可能エネルギー、Fortescue Future Industries(Fortescue Metalsの子会社)が水素製造を中心に、共同でグリーン水素ハブ構想の検討を進めている。

製造設備や供給設備などの建設に向けた検討、需要調査および経済性評価などをパートナーと共同で進め、2022年末の完了を目指 す。

大阪ガスは4月12日、オーストラリアの水素関連企業であるAQUA AEREM Pty Ltd と、オーストラリア北部準州におけるDesert Bloom (Green) Hydrogenプロジェクトに関する共同開発契約を締結した。

本プロジェクトは、大気中から回収した水太陽光由来の電気を原料として、グリーン水素を製造し、オーストラリア国内の発電所への供給や国外への輸出を目指 すもの。

オーストラリア北部準州は日射量が非常に多く太陽光の活用に適している一方で、乾燥地帯であり水資源に乏しい地域だが、豊富な太陽光資源を活用しつつ、AQUA AEREMの独自技術により大気中から水を回収することで、グリーン水素の製造が可能とな る。

送電網と接続されていない電気を用いて水素を製造する取り組みは非常に先進的で、オーストラリアで最も期待されている水素開発プロジェクトの一つ。長期的には、複数の水素製造プラントを建設し、合計で年間約40万トンの水素を製造することを目指 す。

現在、AQUA AEREMは同社の筆頭株主であるSanguine ImpactInvestmentとともに大気中から水を回収する「水生産ユニット」の実証試験を進めて いる。
今後は大阪ガスと共同で、まずは2023年中の年間約400トンの水素を製造するプラントの建設を目指して、プラントの設計や製造した水素の供給先に関する検討などを進める。

大阪ガスは、ガス製造事業や水素関連事業で培ったノウハウを活かして、プラントの基本設計(FEED)、建設に関する技術支援を行 う。


2022/6/30 INEOS、LNG事業に進出 

英国の石油化学大手 INEOSは6月22日、米国でCameron LNG とPort Arthur LNGを運営するSempra Infrastructureとの間で向こう20年にわたり年間140万トンのLNGの供給を受ける契約を締結した。

INEOSはこれにより、初めて国際LNG市場に進出する。INEOS Energy Trading が国際市場で販売するか、欧州でのグループの需要に当てる。

LNGはCameron LNG Phase 2 project か、Port Arthur LNG Phase 1 project から供給を受ける。

 

Cameron LNG :

株主構成 Sempra Energy 50.2%、Japan LNG Investment (三菱商事/日本郵船=70:30)16.6%、三井物産 16.6%、TotalEnergies 16.6%
所在地  ルイジアナ州
能力   年間400万トン x 3 (Japan LNG Investmen、三井物産、TotalEnergiesが各400万トン)

Sempra Infrastructureは2022年4月、株主3社とheads of agreementを結んだ。
既存の3系列(各400万トン)のデボトルネッキングによる能力増に加え、第4系列
Cameron LNG Phase 2 (675万トン)を建設する。

第4系列の製品の50.2%と、既存系列のデボトルネッキングによる増産分の25%をSempraに割り当てる。増加分の残りは既存3社が配分する。

INEOSには第4系列のSempra枠から供給する。

 2022/5/26 三菱商事と三井物産等、米国キャメロンLNGプラント近接地でCCS事業化検討、LNG増設も 

Port Arthur LNG:

Sempra LNG はテキサス州Jefferson CountyでPort Arthur LNG export project の開発中である。第1期、第2期とも年間1350万トン。(下記発表時点では1100万トンであった。)

Saudi Aramco とSempra Energyは2020年1月6日、Aramco Services Company が Sempra LNG のPort Arthur LNG export projectに参加する Interim Project Participation Agreement に調印したと発表した。

AramcoがPort Arthur LNG の第1期分のうち500万トンのLNGを20年間引き取るとともに、第1期計画に25%出資する。今後、最終確定し、正式契約を結ぶ。

2020/1/14 Saudi Aramco、米国でPort Arthur LNG計画に参加

現在のところ、Cameron LNGの第4系列と、Port Arthur LNGは計画段階であり、今回の契約も非拘束のものである。


 

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