審判手続等の改正

迅速に競争秩序の回復を図るため、従来の勧告制度を廃止し、事業者に意見申述・証拠提出の機会を与えるなどの事前手続きを踏んだ上で排除措置命令や課徴金納付命令などを行うこととなる。これらの行政処分に不服がある場合、審判が開始される。

 

審判制度の位置付けが変更されました。

公正取引委員会における審判手続は,既に出された排除措置命令・課徴金納付命令に対する事後審査という位置付けとされました。

勧告という制度を廃止し,これからは排除措置命令に切り替えていくということになりますので,勧告は,当然1月4日以降には行われなくなり,したがって,勧告審決も行われなくなります。

審決も制度が変わりまして,これまでの審判を経て審決を下すという点は同じなのですけれども,審判で実体判断をするというのではなくて,原処分が適正かどうか,維持すべきかどうかを判断する審決ということになります。
今後は,いわゆる審判審決と我々が呼んできた,審判を経て審決を行うものとか,審判の過程で,同意審決の申し出があった場合に行う同意審決という制度も,原則として廃止されることになります。
(独占的状態に対する措置は従来どおりの手続で行うということでありますので,原則廃止ということになります。)

ただ,現時点で審判を行っているもの,あるいは審判を開始しているものは,従来どおりの手続で行いますので,こういった事案については,今後審判が終結すれば審判審決になりますし,それから同意審決の申し出があれば同意審決が1月4日以降も行われるということであります。

現在,カルテル事件の中で,違反行為がないなど,違反行為そのものを争っている審判事件というのがありまして,それについては公取の審決が出た後でないと課徴金の納付を命ずる手続に移れないというのが現行の手続なものですから,結局,そういった本案について争っている審判については,将来,審判審決が出て,それから,課徴金納付命令が出ていくという手順になるわけです。その課徴金の納付命令というのは旧法,つまり今と同じ手続で行うということですので,そういう意味ではまだまだ当分の間,現在行っているような手続というものが続くことになりますし,また,課徴金に関する審決というのは,最終的には相当な数になるだろうというように思っております。

事務総長会見記録(平成17年12月14日)

 

排除措置を命ずることができる期間が延長されます。

旧法では違反行為が既になくなっている場合であっても,特に必要があると認めるときは,違反行為がなくなった日から1年以内であれば勧告を行うことができましたが,現行法では,3年以内であれば排除措置を命ずることができるようになりました。

課徴金納付命令に係る手続が見直されました。

旧法では課徴金納付命令は審判手続が開始されると失効しますが,現行法では,審判手続が開始された場合であっても失効しないこととなりました。

課徴金の納付を命じた金額のうち,審判を開始したことに伴ってその効力を失ってしまったものが約7億円相当分あります。この審判が開始されますと,納付命令の効力自体が失われてしまうという制度は,要するに,納付命令で争っても被審人に何らの不利益も発生しないということだけではなく,納付の時期を遅らせることができるというメリットを生んでおりますので,我々が現在検討中の改正法案の中で是非改善したいと考えている点の一つであります。もちろん,被審人が課徴金の納付に不服があるということで争うわけですから,これを審判中に強制的に徴収するということは適当でないわけですので,強制徴収は行わずに,事後的に審判の期間に応じて金利相当分を徴収するという制度にしたいということであります。
他方で,課徴金を一旦納めた後に審判で争い,被審人の主張が認められて課徴金額が減額されたという場合には,それに見合う金利相当分を付して返還という形で,バランスのとれた制度にしたいと考えております。

平成16年4月 事務総長定例会見記録


犯則調査

犯則調査権限が導入されました。

悪質かつ重大な事案についてより積極的に刑事告発を行うために,犯則調査権限が導入されました。

◎犯則調査事件の流れ

犯則調査部門と行政調査部門との間にファイアーウォールが設けられました。

 犯罪捜査のために行政調査権限が行使されることのないよう,犯則調査部門と行政調査部門との間にファイアーウォールが設けられました。
 具体的には,
@ 犯則調査部門として
「犯則審査部」を新設し,行政調査部門と所掌事務を明確に分離しました。
A 犯則事件の調査を行う職員の指定は,「犯則審査部」の職員についてしか行えないものとなりました。
B
「犯則審査部」の職員は行政調査権限を行使する審査官には指定できないものとなりました。
 その他,犯則調査規則に所要の規定を置いています

 

「裁判の迅速化に関する法律」(裁判迅速化法)は,2003年7月9日に成立,同年7月16日に公布・施行されました。

裁判迅速化法では,「第一審を2年以内のできるだけ短い期間内に終わらせる」ことが目標として掲げられ,迅速化は,充実した手続の実施とこれを支える制度・体制の整備により行われるものとされました。


裁判の迅速化に関する法律(裁判迅速化法)
(平成十五年七月十六日法律第107号)

(目的)
第1条  この法律は、司法を通じて権利利益が適切に実現されることその他の求められる役割を司法が十全に果たすために公正かつ適正で充実した手続の下で裁判が迅速に行われることが不可欠であること、内外の社会経済情勢等の変化に伴い、裁判がより迅速に行われることについての国民の要請にこたえることが緊要となっていること等にかんがみ、裁判の迅速化に関し、その趣旨、国の責務その他の基本となる事項を定めることにより、第一審の訴訟手続をはじめとする裁判所における手続全体の一層の迅速化を図り、もって国民の期待にこたえる司法制度の実現に資することを目的とする。

(裁判の迅速化)
第2条  裁判の迅速化は、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、その他の裁判所における手続についてもそれぞれの手続に応じてできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標として、充実した手続を実施すること並びにこれを支える制度及び体制の整備を図ることにより行われるものとする。
2  裁判の迅速化に係る前項の制度及び体制の整備は、訴訟手続その他の裁判所における手続の整備、法曹人口の大幅な増加、裁判所及び検察庁の人的体制の充実、国民にとって利用しやすい弁護士の体制の整備等により行われるものとする。
3  裁判の迅速化に当たっては、当事者の正当な権利利益が害されないよう、手続が公正かつ適正に実施されることが確保されなければならない。

(国の責務)
第3条  国は、裁判の迅速化(前条に規定する裁判の迅速化をいう。以下同じ。)を推進するため必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(法制上の措置等)
第4条  政府は、前条の施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

(日本弁護士連合会の責務)
第5条  日本弁護士連合会は、弁護士の使命及び職務の重要性にかんがみ、裁判の迅速化に関し、国民による弁護士の利用を容易にするための弁護士の態勢の整備その他の弁護士の体制の整備に努めるものとする。

(裁判所の責務)
第6条  受訴裁判所その他の裁判所における手続を実施する者は、充実した手続を実施することにより、可能な限り裁判の迅速化に係る第2条第1項の目標を実現するよう努めるものとする。

(当事者等の責務)
第7条  当事者、代理人、弁護人その他の裁判所における手続において手続上の行為を行う者(次項において「当事者等」という。)は、可能な限り裁判の迅速化に係る第2条第1項の目標が実現できるよう、手続上の権利は、誠実にこれを行使しなければならない。
2  前項の規定は、当事者等の正当な権利の行使を妨げるものと解してはならない。

(最高裁判所による検証)
第8条  最高裁判所は、裁判の迅速化を推進するため必要な事項を明らかにするため、裁判所における手続に要した期間の状況、その長期化の原因その他必要な事項についての調査及び分析を通じて、裁判の迅速化に係る総合的、客観的かつ多角的な検証を行い、その結果を、二年ごとに、国民に明らかにするため公表するものとする。
2  前項の検証の結果については、第3条の規定による国の施策の策定及び実施に当たって、適切な活用が図られなければならない。

附 則

(施行期日)
1  この法律は、公布の日から施行する。
(最高裁判所による検証の結果の最初の公表)
2  第8条の規定による検証の結果の最初の公表は、この法律の施行の日から二年以内に行うものとする。
(検討)
3  政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。


日本経済新聞 2006/12/16

合併審査、シェア基準撤廃 公取委案 市場寡占度 競合企業含め判断

 新基準は業界内の全企業のそれぞれのシェアを二乗して足し合わせる
寡占度指数を採用。現行制度でもシェア基準と並んで判断材料にしているが、同指数を重視する米欧に足並みをそろえる。
 改正案では
 @合併後の業界全体の
寡占度指数が1500以下
 A全体の指数が
2500以下で合併に伴う増加分が250以下
 B全体の指数が
2500超で増加分150以下
の3条件のうちどれかを満たせば無審査で合併できるようにする。
 

合併審査、一部で厳格化も 輸入圧力も考慮

 一方、産業界からは「審査では海外からの輸入も加味すべきだ」との声も上がっていた。これについては一定の答えを出した。まず市場の範囲がどこまで及ぶかという「市場の画定」の作業で「国内を原則とする」という現行指針の文言を削除。その上で
外国企業からの輸入圧力があるかどうかを判断するための具体的な項目を明記した。
 第一が
関税水準や、輸入が急増した場合の制限措置があるかなど制度上の障壁の有無。第二が輸送費で、負担が小さいほど輸入圧力が強いとみなす。第三が製品の品質などが同じかどうかの「代替性」。さらに外国企業の生産能力なども勘案し、能力が高ければ圧力が大きいと判断する。

米国 (1992年4月発表のHorizontal Merger Guidelines 公取委案
統合後の
HHI
市場認識 HHIの増加 結論 合併後
HHI
HHIの増加
1000未満 unconcentrated   問題なし、検討不要 1500以下  
1000-1800 moderately concentrated  100未満 問題なし、検討不要 1500-2500  250以下
 100以上 競争上の懸念、検討要  
1800以上 highly concentrated   50未満 問題なし、検討不要 2500  150以下
  50以上 競争上の懸念、検討要  
 100以上 市場支配力の行使が容易と推定  

 

 


日本経済新聞 2007/3/29

企業合併審査 新指針の運用開始 公取委、海外市場も考慮

 公正取引委員会は28日、企業合併の可否を審査する際に使う新しいガイドライン(指針)を発表した。国際的なM&A(企業の合併・買収)が活発化していることを受け、国際競争の状況を考慮することや、無審査で合併を認める基準を緩和することなどが盛り込まれた。同日から新指針の運用を開始した。

企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針

別添 過去の企業結合審査の実績について