2002/12/16 日本フエルト/市川毛織/日本フイルコン    公取委発表

経営統合に関するお知らせ

 本日、日本フエルト株式会社、市川毛織株式会社および日本フイルコン株式会社は、それぞれの取締役会の承認を得て、
三社統合を取りやめることで合意いたしましたので、お知らせいたします。

 本年4月の基本合意に基づき、三社は、統合委員会を設置し鋭意検討を進めることと併せ、公正取引委員会に対する事前相談を行って参りました。

 このたび、公正取引委員会より、
本件統合は競争を実質的に制限するおそれがあるとの指摘を受けたことにより、三社それぞれの取締役会にて、本件統合を取りやめる旨決議いたしました。

 今後、各社は、それぞれの経営に更に努力して参る所存でありますので、何卒、ご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。


2002/4/15 日本フエルト/市川毛織/日本フイルコン 

経営統合に関するお知らせ

 本日、日本フエルト株式会社、市川毛織株式会社、および日本フイルコン株式会社は、三社が経営統合を行うことについて、本経営統合が独占禁止法に違反するおそれがないとの公正取引委員会の回答等と株主の承認を前提として、基本的に合意し、そのための具体的な検討を開始することとなりましたので、下記のとおりお知らせします。

1. 経営統合の趣旨
 今日の抄紙用具業界は、経済のグローバル化による国際競争の激化、製紙産業の統合・再編による巨大化と技術革新、抄紙用具3 品目[ワイヤー・フエルト・カンバス]の一括購買方式への転換など世界規模での急速な構造変化への対応を迫られております。このような認識の下に、三社は、総合抄紙用具メーカーとして、企業体質の強化、国際競争力の向上と企業の成長を図るために対等・互恵の精神で、共同して、持株会社を設立することに合意いたしました。
 本統合の目的は、統合によりグループの経営体質を強化し、抄紙用具の高度化ならびに多様化するユーザーニーズに迅速に対応し得る世界一流の総合抄紙用具グループを目指すものであります。

2. 経営統合の概要

(1 ) 統合の基本スキームおよびスケジュール
   三社は、株式移転により共同して持株会社を設立し、三社はその完全子会社として存続いたします。
 共同持株会社の設立は、平成15 年4 月1 日を目処とします。
(2 ) 株式移転の比率
   共同持株会社の設立に際して発行される株式の割当比率は、複数の外部機関の評価を踏まえて、三社協議の上決定いたします。
(3 ) 共同持株会社の概要
   共同持株会社の名称、所在地、代表者等につきましては、今後三社の協議の上決定いたします。
(4 ) 共同持株会社の上場申請に関する事項
   共同持株会社は、設立後速やかに東京証券取引所市場第一部に新規上場申請を行います。なお、三社は上場を廃止いたします。

3. 経営統合の効果
(1 )生産・技術の効率化
  @生産設備の相互活用と戦略的投資
  A研究開発の共同化
  B資材の共同購入

(2 )営業・流通の効率化
  @共同営業活動による顧客対応力強化
  A商流・物流等の合理化によるコスト低減

(3 )財務体質の改善
  @資金調達、資金運用の効率化
  A資産の圧縮による回転率の向上

(4 )情報システムの共有化

4. 統合委員会の設置
 統合業務の遂行ならびに統合目的を速やかに達成するために、統合委員会を設置いたします。

 


日本経済新聞 2002/12/23

合併・統合の審査短縮 合計シェア25%以下 事前相談、半月で 産業再生法企業が対象

 政府は来年4月から、企業合併や経営統合が独占禁止法に抵触するかどうかを審査する期間を大幅に短くする。統合後の合計シェア(占有率)が25%以下だったり、有力な競合企業が存在したりすれば、実質的な審査の場である公正取引委員会による事前相談を15日程度にする。政府の認定を受けて事業再編に取り組む企業が対象で、産業再生を後押しするのが狙い。

迅速審査の対象

シェア25%以下
  原則としてすべて
シェア25%超50%以下
  統合会社以外にシェア10%以上の競合企業が2社以上ある
  輸入品・代替品比率が5%以上あり、過去5年間で国内企業の出荷額が5%以上減少
シェア50%超
  首位企業以外の企業が事業撤退企業を再建目的で統合
  統合によるシェア増加が1%未満であり、シェア10%以上の競合企業がある

 


日本経済新聞 2003/4/3

石化3社に課徴金20億円 合成樹脂販売で価格カルテル     
公取委発表

代表的な合成樹脂であるポリプロピレン(PP)樹脂の販売を巡り不正な価格カルテルを結んだとして、公正取引委員会は2日までに、独占禁止法違反(不当な取引制限)で石油化学メーカー3社に課徴金納付を命令した。課徴金額は計20億4038万円で、公取委によると、1977年の課徴金制度導入以降、6番目に大きい額。
 命令を受けたのは2001年5月に排除勧告された計7社のうち、日本ポリケム、三井化学、チッソの3社。残る4社は勧告を不服として現在も審判係属中。三井化学はカルテルに加わったグランドポリマーを吸収合併し存続会社となったため、独禁法の規定で命令対象となった。
 命令について、日本ポリケムとチッソは「社として検討のうえ対応を決めたい」とし、三井化学は「真撃に受け止め、課徴金を納付することを決めた」としている。

 


日本経済新聞 2003/8/5

カルテル摘発、国際協定
 年内に公取委、米欧加と組む
 
 日本の公正取引委員会など日米欧、カナダの競争当局は独占禁止法に関する協力協定のネットワークを年内に完成する。国際的なカルテル事件の摘発のため、当局間で調査協力や情報交換を実施。各国が海外企業を国内法で規制しようとする「域外適用」による摩擦を防ぐ。国境をまたぐ企業合併などに対応する。
 日本の公取委はこのほど欧州連合(EU)との協定を締結、カナダとも年内をめどに結ぶ。米国との間には既に協定があり、四極間の協定網が完成する。協定を締結した当局間では、国際カルテルの審査に乗り出す際には事前に通報しあったり、企業の情報を相互に提供する。
 日本国内での輸入妨害行為によって欧州企業が被害を受けたような場合は、EUの欧州委員会が日本の公取委に調査を要請する。
 国際的な企業合併に際しては、当局間で判断が食い違わないように事前に調整する。
 今年2月、四極当局は欧州委の要請に基づき、塩化ビニール樹脂を強化する
添加剤の販売を巡る国際カルテルに関する同時調査に初めて着手。協定締結後はこうした協力が義務となり、国際カルテル摘発に向けた態勢が一段と強化される。
 競争当局間の協力がないと、各国政府が海外企業を国内の競争法で裁こうとする「域外適用」が広がりかねないという懸念があった。

 


2003/2/14 AZoM - The A to Z of Materials  http://www.azom.com/news_old.asp?newsID=497

PVC Companies Raided for Suspected Price Fixing

Over 14 companies in over 9 countries suspected of price fixing of PVC were raided by anti-trust investigators on Wednesday. Investigators from the US, Europe, Japan and Canada co-ordinated raids to maximize the element of surprise.

Chemical giants Akzo Nobel and Rohm and Haas are both amongst the 14 companies raided and have confirmed that they are assisting investigators with their enquiries. In Japan, impact modifier chemical manufacturers Mitsubishi Rayon Co, Kureha Chemical Industry Co Ltd and Kaneka Corp were also raided.

Raids have also taken place in France, the Netherlands, Germany, Italy and the UK.

Investigators are attempting to ascertain whether or not the companies under investigation were part of a cartel agreement involved in illegal practices relating to price fixing and market sharing for PVC and related products.

* PVC Modifier


2004/1/19 毎日新聞社説

独禁法改正 反対意見に説得力はない

 通常国会には独占禁止法の改正案が提出される予定だ。しかし日本経団連や自民党から批判や反対が続出し、先行きは不透明だ。公正取引委員会の機能強化は小泉改革宣言の約束だ。小泉純一郎政権の責任として、改正独禁法の成立を図るべきだ。
 改正案の柱は5つある。課徴金を現在の3倍程度に引き上げる。課徴金の対象を拡大する。摘発前にカルテルや談合の情報や資料を提出した事業者は課徴金を減免する(措置減免制度)。公取委に国税庁並みの調査権限(犯則調査権限)を与える。電カや通信、コンビューターソフトなど共通の施設や製品上に成り立つ業界に不可欠施設という制度を導入し、新規参入者への妨害を排除する。
 課徴金は、談台やカルテルによる「不当利益の没収」という概念に基づいていた。改正独禁法は「社会の経済的厚生の損失補填」という新概念で課徴金を引き上げる。批判は「経済的厚生」の概念が不明確、算定根拠を示せと迫る。
 独禁法第1条には「公正かつ自由な競争を促進」することにより「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」とある。「社会の経済的厚生」はこの第1条に尽きる。市場競争を確保することで全体の利益を得るのが独禁政策だ。カルテルや談合を抑止できる課徴金が重要なのだ。
 批判はまた、課徴金引き上げは行政措置を超えた制裁であり、憲法が禁止する二重処罰の可能性があるとする。課徴金はあくまで行政措置で、刑罰ではない。憲法違反は当たらない。
 措置減免制度は、独禁法だけが司法取引的な制度を導入すれば混乱する、司法改革と連動すべきだと批判される。しかし、司法取引のない欧州で、措置減免制度は混乱なく機能している。この制度を活用した日本企業もある。
 不可欠施設には、定義があいまい、裁量権の拡大、事業法と独禁法の二重規制との批判がある。確かに公取委は、不可欠施設について適正手続きを保障し、説明する責任がある。だが、制度を利用するか否かは事業者の選択で公取委の裁量ではない。また、独禁法は市場経済の基本法だ。事業法と重複するなら事業法を直すべきだ。
 独禁法改正全体について、不景気なこの時期に規制強化するな、意見の聴取期間がわずか1カ月で拙速、という批判がある。独禁法は事業者全体への規制ではなく、道路交通法と同様に違反者だけを取り締まる規則だ。不景気だから道交法を改正するなとは言わない。米国の企業改革法はワールドコムの犯罪発覚後、1カ月で成立した。企業経営でスピードを強調する経済界が独禁法改正のスピードを批判するのは不可解だ。
 経済がグローバル化してカルテルもグローバル化した。国際的なカルテルが摘発されると日本の措置の甘さが際立ち、欧米は奇異の目で見る。独禁法改正はむしろ遅過ぎる。もちろん、法律が成立しても公取委は、強きを助け弱きをくじく存在であってはならない。

 


日本経済新聞 2004/1/22

刑事罰金分を減額 公取委案
 独禁法課徴金上げ 「二重処罰」批判に配慮

 公正取引委員会は独占禁止法改正の具体案を固めた。独禁法違反に対する課徴金引き上げに併せ、課徴金から刑事罰の罰金に相当する額を減額する制度を導入する。課徴金は現行6%の2−3倍に上げる一方、中小企業向けの軽減措置を維持する。経済界などと調整し、3月にも今国会に改正案を提出する方針だ。
 課徴金は談合やカルテルで摘発された企業から違反行為で得た売上高の6%を「不当利益」として徴収する制度。ただ6%では実際の不当利益を下回る場合が多く、違反の抑止効果が小さいため公取委は法改正で課徴金を引き上げる考えだ。
 日本経団連などは、公取委が違反事件の刑事告発を積極化すると、課徴金に加えて最大5億円の刑事上の罰金がかかる恐れが強まり、憲法が禁じる二重処罰に当たりかねないと指摘している。公取委は「脱税事件でも重加算税と刑事罰が併存しており、行政上の制裁金と刑事上の罰金が重なることは憲法違反ではない」としている。ただ、経済界の批判に配慮して負担軽減策を導入する。
 公取委が違反企業に対して課徴金支払いの命令に加えて刑事告発をする揚合、刑事告発に対する裁判所の判決が確定するまでは課徴金支払い命令の執行を差し止める。課徴金が10億円で、判決で罰金が5億円と決まれば、課徴金から罰金分を差し引き、課徴金は5億円に減額する。
 課徴金は現行6%の2−3倍程度に引き上げる方向で調整する。原則を12%程度とし、摘発後も違反を繰り返すなど悪質な企業には18%程度まで加算できるようにする案が軸となる。課徴金が軽減されている中小企業(現行3%)、卸・小売業(同1−2%)については、2−3倍に引き上げた後も大企業の半分以下に抑える。
 公取委は今後、経済界や与党との調整を急ぎたい考え。ただ経済界には「現行の2−3倍の課徴金は高すぎる」などの反発が依然根強い。自民党内にも反対論が多く、調整は難航しそうだ。


朝日新聞 2005/10/26

除草剤の価格制限の疑い 日産化学立ち入り検査 公取委

 ホームセンターや園芸店で販売されている除草剤の価格をめぐり、大手化学品メーカー「日産化学工業」(東京都千代田区)が、小売店などに商品を安売りしないよう不当に求めた疑いがあるとして、公正取引委員会は26日、同社の本社や営業所など二十数カ所を独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで立ち入り検査した。

 日産化学工業は米国の化学メーカーのモンサント社が開発した除草剤「ラウンドアップ」の日本の販売元で代理店を通して国内のホームセンターなどに販売している。

 関係者によれば、日産化学工業は商品の安売りを防ぐため、代理店などを通じてホームセンターや園芸店側にメーカー希望価格で販売するよう指示。従わない場合は販売数量の制限を示唆した疑いが持たれている。

 違反の疑いが持たれているのは雑草への吸収速度を高めた「ラウンドアップハイロード」。小売店で500ミリリットルが1500円前後で販売されている。

 日産化学工業は1887年創業。従業員1500人で、05年3月期の売上高は1018億円。


2006年01月04日 朝日新聞

改正独禁法が施行、談合・違反の自主申告で課徴金減免

 改正独占禁止法が4日施行された。公正取引委員会は入札談合やカルテルの違反を自ら情報提供した企業の処分を軽くする課徴金減免制度(リーニエンシー)の申請を同日から受け付ける。減免されるのは各事件につき先着3社まで。同着を防ぐためファクスのみの受け付けで、受信の時間で順位が決まる。

 減免制度は最初に申告した企業は立ち入り検査の前ならば課徴金が全額免除される。2番目は50%、3番目は30%が減額される。秘密裏に談合・カルテルを続けている企業間の連携を崩し、談合行為を解明する狙いがある。

 複数の企業による同時申請は適用されないほか、個人での告発や他社の違反行為だけの密告も認められない。まず簡単な違反の概要を記載し、社名や会社印を押印した報告書を送信。その後詳細な報告書や資料を送付する仕組みだ。

 これまでに納付された課徴金の最高額はセメント製造業者による違法カルテルで、12社が総額約112億円の支払い命令を受けた。改正法では課徴金が製造業の大企業の場合、原則売上高の10%(現在は6%)に引き上げられることもあり、申告企業にとって順番が重要な意味を持つことになる。公取委は指定したファクス(03・3581・5599)に限定して受け付ける。

 減免制度は欧米やカナダ、韓国などで採用されており、国際間の企業による価格カルテルなどの摘発に効果をあげているという。日本の場合、役人が入札談合を仕切る官製談合がいまだに残り、談合から離脱しにくい事情もあるため、新制度に対する企業の対応が注目される。


毎日新聞 2006年3月28日夕刊

水門工事談合:「自白」で課徴金減免を初適用 公取委

 国、自治体などが発注する水門工事の入札を巡り談合が繰り返されていたとして、公正取引委員会は28日、大手重工・鉄工二十数社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査を実施した。関係者によると、公取委は今年1月の独禁法改正で新たに設けられた「課徴金減免制度」に基づき、検査対象の企業から事前に違反内容の情報提供を受けたという。同制度を活用して、公取委が談合事件摘発に乗り出すのは初めて。【斎藤良太、棚部秀行】

 立ち入り検査を受けたのは▽石川島播磨重工業(東京都江東区)▽三菱重工業(港区)▽川崎重工業(神戸市)▽三井造船(中央区)▽日立造船(大阪市)などで、昨年の橋梁(きょうりょう)談合事件で公取委から排除勧告を受けた企業も含まれる。いずれも業界団体「水門鉄管協会」(港区)に加盟している。

 関係者によると、各社は国土交通省や農林水産省、地方自治体、独立行政法人・水資源機構などが発注した水門や関連施設の設置・補修工事の入札で、事前に話し合って受注する会社や落札価格を決めていたという。水門は鋼鉄製で、河川から水道や農業・工業用水を取る「取水堰(せき)」の閘門(こうもん)やダムの排水設備、河口や運河への高潮や津波の侵入を防ぐゲートなどに使われていた。入札1件あたりの落札金額は数百万〜数億円で、国内の市場規模は約600億〜700億円。

 課徴金減免制度は、談合やカルテルなど独禁法違反にかかわった事業者が公取委に「自白」し、資料の提出など調査に協力すると、課徴金が減免されるというもの。今回、同制度に基づき事前申告していた少なくとも1社と、公取委は毎日新聞の取材にいずれも「申告に関することはコメントできない」と回答している。

 水門工事を巡っては、石川島播磨、三菱重工などメーカー37社が「睦水会」という親ぼく組織を結成し、事前に受注予定社を決定し落札価格を決めていたとして、公取委が79年10月に排除勧告している。

 ▽課徴金減免制度 価格カルテルや入札談合など、独占禁止法違反行為を公正取引委員会に自発的に申告した事業者の課徴金を減免する制度。米国、EU、韓国などで既に導入されている。日本では今年1月の独占禁止法改正で導入された。適用対象は公取委への申告順位が先着3社までで、立ち入り検査前の場合、1番目が全額免除、2番目は50%、3番目は30%減額され、立ち入り後は3社とも30%の減額となる。公取委は申告企業名を原則非公表としている。

 ◇他業界にも波及か

 独占禁止法の改正(今年1月)により、談合などを自主申告すれば課徴金が減免される制度が、導入後わずか3カ月で初適用された。「アメとムチ」が明確なのがこの制度の最大の特徴であるため、今回のケースを機に、ほかの業界に申告が波及する可能性もある。

 この制度では、申告の「先着3社」が課徴金の減免対象で、とりわけ、立ち入り検査前に1番目に申告すれば、課徴金の全額と刑事告発が免除される。メリットはそれだけでなく、国土交通省は、同法違反に伴う指名停止期間について、減免対象社は通常の2分の1に短縮する方針を打ち出した。公共事業依存度が高い企業ほど、課徴金や損害賠償の支払い以上に、指名停止による経営上の影響が大きいとされるだけに、この差は大きい。

 一方で、申告しなかったり、先着3社から漏れた企業は、課徴金納付、指名停止などの処分に加え「申告しなかったことにより、損失が増えた」などとして、経営陣が株主代表訴訟を起こされる可能性もある。申告の順番について他社と相談することは認められていないため、他社に先んじて「先着3社」の椅子を獲得するしかないわけだ。

 企業に“自首”を促す減免制度の導入により、立ち入り前に情報を入手できることから、公取委の摘発能力は高まったともいえる。加えて、強制調査権を持つ犯則審査部も設置され、悪質なケースに関しては、これまで以上に刑事告発していくことが予想される。「身に覚えのある」企業は早急に内部点検することを迫られそうだ。


朝日新聞 2006/5/27

取締役らがカルテル 公取委、床材5社に排除措置命令

 床材の販売をめぐり最大手の東リ(兵庫県伊丹市)など業界大手各社が価格カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会は26日、5社に独占禁止法違反(不当な取引制限)に基づく排除措置命令を出し、総額約3億9000万円の課徴金の納付を命令した。各社の取締役らが業界団体の会合で協議。自ら東京都内の喫茶店などに集まって販売価格を決めていたという。

 公取委の調べでは、カルテルが結ばれていたのはオフィスや病院などに使う塩化ビニル製床材とタイルカーペットで、ほかにロンシール工業(東京都墨田区)、タジマ(同足立区)、三菱レイヨン・カーペット(同中央区)、スミノエ(大阪市)が命令を受けた。

 うち取締役自ら営業責任者として価格調整に参加していたとされるのは東リ、タジマ、スミノエの3社。

 塩化ビニルの場合、原油価格の高騰で原材料の価格が上がったことなどから、東リ、ロンシール、タジマは04年10月ごろ、「インテリアフロア工業会」事業運営委員会の休憩時に協議。11月には都内の喫茶店に集まり、最低販売価格を取り決め、翌年1月にもさらに引き上げていたという。

 各社は全国の営業担当者を集めた会議でこの方針を伝え、各地でも各社責任者が確認しあうことにしたという。

 カーペットでも東リ、タジマ、三菱、スミノエが価格対策を話し合う「4社会」を開催。新たに見積もり依頼があった場合の価格を決めたという。

 公取委は業界団体の場がカルテルのきっかけになったことを重視し、営業責任者を業界団体の運営にかかわらせないよう異例の命令を出した。

 公取委の命令について、スミノエは「指摘は事実で再発防止に努める」と話したが、東リは「違反はないという認識だ」とコメント。タジマは「コメントできない」としている。


日本経済新聞 2006/6/15

公取委、合併審査見直し 米国型の寡占度基準視野 シェア上限上げには否定的

 公正取引委員会が企業合併の審査基準を見直す方針を決めた。統合後の国内シェアが35%以下であればほぼ統合を認めている現在のシェア上限のルールを撤廃、上位企業の市場寡占度で判断する米国型基準に近づけることなどを念頭に検討を進める。ただ、産業界や経済産業省が求める規制の緩和につながるかは不透明な部分も多い。
 見直しの背景は産業界からの要望。2002年度から04年度までの審査実績では、シェアが35−50%の統合案件の8割強が独禁法上問題ないとみなされた。35%を超えても問題がないなら、企業が再編を決断しやすいようルールも変えてほしいという声が高まり、経産省はシェア上限を50%以下にまで緩和する案を打ち出した。
 これを受け、14日記者会見した公取委の上杉秋則事務総長は「35%を超えると統合できないという誤解があるならルールを変える必要がある」と表明した。ただ、公取委は「単純なシェア上限の引き上げは国際的に整合性がとれない」と経産省案には否定的。その代わりに視野に入れているのが米国式基準だ。
 米国では市場全体でみた上位企業の寡占度で統合の可否を判断する。各企業のシェアをそれぞれ二乗して足し合わせる「HHI」という指数が基準。統合の結果、その企業のシェアが何%になるかは直接の判断材料にはならない。例えば、業界全体でみたHHIが統合で100以上増え、1800以上になる場合には、問題が多いとみなされ、厳しい審査が待ち受ける。
 「シェアよりHHIの方が価格強制力など市場の競争状態を的確に表す」(公取委)。実は日本の現行基準でも「HHI 1800未満」などが条件に含まれる。そこからシェア基準がはずれ米国型に移行した場合、もともと市場全体の寡占度が低い業界なら再編の自由度は高まる可能性がある。
 だが米国方式でもシェア50%に達するような大型再編は基準に抵触するうえ、すでに市場寡占度が高い業界では今より厳しくなる場合もある。例えば、鉄鋼業界で仮に新日本製鉄(粗鋼シェア約30%)と神戸製鋼所(約7%)が統合する場合、現行の慣例なら認められる可能性もあるが、米方式ならJFEスチール(約27%)などを含む業界大手5社のHHIはすでに1800を超え、統合後のHHI増加分も400程度となるため「問題あり」とみなされる範囲に入る計算になる。
 HHIは各社のシェアをすべて算定するのが容易ではないとの見方もある。このためシェア基準を残しつつ「35%を超える統合でも競争制限につながらなければ統合できる」などとガイドラインに明記する案も検討するが、いずれにせよ基準緩和で日本企業の再編を加速、国際競争力を高めたいという経産省の意向は満たされない可能性が強い。来春に向けた公取委の検討作業は紆余曲折も予想される。

▼HHl 
Herfindahl-Hirschman Index
 市場構造が寡占的かどうかを判断する際に用いる指数で、発案者にちなんで名づけられた「ハーフィンダール・ハーシュマン指数」の略。同じ市場で競争する事業者のそれぞれのシェアを二乗し、それを合計する。例えば、企業10社が各10%のシェアで競う市場ではHHIは 1000となるが、首位企業のシェアが40%、2位が30%、3位が20%、4位が10%の場合は 3000となり、市場の寡占度は高いとみなされる。

日米の合併審査基準の比較
日本 シェア25%以下+HHI 1800未満+競争相手1社※ →競争制限の恐れは小さい
シェア35%以下+HHI 1800未満+競争相手2社※
HHI増加分100未満+競争相手1社※
米国 HHI 1800未満+HHI増加分100以上 →競争上の懸念が生じる恐れ
HHI 1800以上+HHI増加分50以上
HHI 1800以上+HHI増加分100以上 →市場支配力の行使が容易と推定
(注) ※の日本基準の競争相手は10%以上のシェアを持つ企業

日本経済新聞 2006/6/16

公取委、合併審査基準を見直し 竹島委員長に聞く 単純な「緩和」目指さず

 公正取引委員会は企業合併の審査基準を見直す方針を決めた。統合後の国内シェアが35%以下であればほぼ統合を認める現在のシェア上限を撤廃、上位企業の市場寡占度で判断する米国式指標の導入を視野に検討を進める。見直しの狙いを竹島一彦委員長に聞いた。

ー 経済産業省や日本経団連が企業再編がしやすくなるよう合併基準の緩和を求めていた。
 「経産省などはシェア上限を50%まで緩和するよう求めているが、単純に上限を引き上げるというのは世界的な競争政策との整合性がとれない。現在のガイドラインの基準は欧米と比べて厳しいわけではない」
 「統合の可否はシェアだけでなく、ユーザーへの価格強制力や、新規参入がどれだけ増えそうかといった様々な要素から判断する。その結果、シェアが50%を超えても認めているケースはある。35%を超えれば統合できないという誤解もあるようだ」

ー 米国式基準の導入が見直しの柱になる。
 「米国などは1社の国内シェアではなく、市場全体でみた上位企業の寡占度で統合の可否を判断する。1社あたりのシェアが低くても市場の事業者が少なければ、協調的に価格をつり上げるなどのリスクが高まる。統合が競争制限になるかどうかを測るには、市場寡占度をみる『HHI(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)』という基準のほうが合理的だ」
 「市場寡占度が低ければ現行基準より緩和することになるが、寡占度が高ければ現行よりも厳しくなる。国際競争力を高めるために日本だけ緩めるというわけにはいかない。大型合併で効率化が進みユーザーにもプラスになるというのであれば、個別審査して認めていけばいい」

ー 個別審査のルールが不透明だという批判もある。
 「審査は製品の特質によって変わる。素材のように品質がほとんど変わらず世界的に調達できるようなものは、国内シェアだけでなく輸入圧力も判断材料になる。国内からしか調達できないとユーザーが主張すれば、国内市場をべースに判断する。こうした判断基準がわかりにくいのであれば、ガイドラインに明記する方向で検討する」。
 「製薬や鉄鋼の世界的な再編に日本が取り残されるという懸念があるのは理解している。製薬のように世界市場で競争しているケースは国内シェアだけで統合の可否を判断するわけではなく、海外企業との競争圧力も判断材料にする」


2006/8/2 日本経済新聞

公取委・竹島委員長 「現行制度は合理的」

 独占禁止法の見直し議論について、公正取引委員会の竹島一彦委員長に聞いた。

ー 経団連が審判制度の廃止を求めている。
 「経済や競争政策に精通した公取委が裁判でいう第一審を担い、それが不服であれば高等裁判所に提起するという現在の制度は合理的だ。7人いる審判官のうち3人は法曹資格者であり、審査との独立性、中立性も保たれている」
 「審査と審判を同じ組織が行うことへの経団連の疑問は原理原則論としては理解できる。ただ、第一審を裁判所が担うことになった場合に、どこまで競争法などの専門知識を備えた裁判官を確保できるかなど現実的な問題が残る。内閣府の懇談会ではそういった執行面も考慮してきちんと議論してもらいたい」

ー 課徴金と刑事罰の併存についても経団連は異論を唱えている。
 「1月の独禁法改正で課徴金の水準を引き上げ、これまでの『不当利得の徴収』から、それ以上の金銭的不利益を科す『行政上の制裁』に位置づけを変えた。だからといって刑事罰をやめるというのは反対だ。刑事罰には社会的に違反行為を糾弾する厳格な制裁としての効果があり、行政制裁金では肩代わりできない」
 「欧州でも一部の国で刑事罰を科しており、日本の制度が国際的に異例というわけではない。そもそも刑事告発するのは重大・悪質な事案に限っている。違反行為への抑止力を持たせるために刑事罰は維持すべきだ」


2006/8/10 日本経済新聞夕刊

トンネル換気談合 4社に課徴金通知 公取委 自主申告の三菱重免除

 旧首都高速道路公団(現首都高速道路会社)などが発注したトンネル換気設備工事を巡る談合事件で、公正取引委員会は、荏原製作所▽日立製作所▽石川島播磨重工業▽川崎重工業の4社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で課徴金の納付を命じる方針を固め、10日、命令内容を事前通知した。04年発注の5件の工事が対象で、今後各社から弁明を聴いたうえで、正式な納付命令を出すとみられる。
 改正独禁法(今年1月施行)で、違反行為を自主申告した企業の課徴金を減免する制度が新設されて以降、公取委が同制度に基づく審査で行政命令を行うのは初めて。談合には三菱重工業も加わっていたが、最初に自主申告したため課徴金は全額免除され、命令の対象外になった。その後申告した2社は30〜50%減額され、課徴金総額は約10億円とみられる。
 関係者によると、5社は、首都高速中央環状新宿線の換気設備工事5カ所の入札で、事前に落札業者と金額を決めていた。落札額は計225億4000万円、落札率は97・67〜94・44%だった。
 複数の社の担当者は、旧日本道路公団や国土交通省などの工事でも、20年以上にわたって談合を繰り返していたことを公取委に認めている。しかし、首都高の工事5件の落札金額が、04年分の全国工事の半分以上を占めるなど悪質だったため、対象をこの5件に絞ったとみられる。

2006/8/11 日本経済新聞

自主申告で課徴金 初免除へ 談合「ムラ社会」にくさび

 談合を自主申告した企業の課徴金を減免する制度が高速道路のトンネル設備工事で初めて適用される。自主申告して課徴金を免除・減額されるのは、三菱重工業、石川島播磨重工業、川崎重工業という日本を代表する大企業だった。
 「(三菱)重工が駆け込んだらしい」。トンネル設備工事を巡る談合疑惑で公正取引委員会がメーカーの立ち入り検査に入ったのは3月30日。直後からプラント業界では、疑惑が明るみに出た発端は談合関与企業の自主申告であり、通報したのは三菱重工ではないかという観測が広がった。
 今年1月に導入された課徴金減免制度は当初、「密告は日本の企業風土にはそぐわない」などと否定的な見方が多かった。ところが、1−3月の最初の3カ月で通報件数は26件に達した。今回、課徴金全額減免の第1号が大手企業であることが明らかになり、「脱談合」の流れが加速するのは間違いなさそうだ。
 談合の担当者は横のつながりが強い。自社の上司よりも、他社にいる業界談合のボスに忠誠を誓う担当者が少なくなかった。企業のトップも受注に結びついていれば見て見ぬふりをした。コンプライアンス(法令順守)よりも業界の論理が優先する"ムラ社会が存在していた。
 だが、公取委の摘発体制が強化され、さらに住民訴訟や株主代表訴訟で談合に関与した企業や経営者が損害賠償を請求されるようになると、トップにとってひとごとではなくなる。自身の地位や家計が脅かされると危機感が飛躍的に高まるのが人情。課徴金減免は「過去の過ちを漬算したい」という思いにトップを誘導し、ムラ社会にくさびを打ち込む巧妙な制度といえる。

取締役、賠償リスクを危惧 独占禁止法に詳しい石田英遠弁護士の話
 談合を知りつつ公取委に自主申告しなければ、取締役は違法行為を故意に継続させたとして、株主代表訴訟で個人責任を追及されるだろう。談合への加担を把握できなければ、内部統制が不十分だった過失責任が生じる。
 過去の訴訟では、株主が課徴金相当額の賠償を求めることが多い。課徴金が減免されれば会社の損害は小さくなり、取締役の賠償リスクも低くなる。三菱重工のような大企業が真っ先に申告したこξで、あらゆる談合の関与企業間で疑心暗鬼が一層強まるだろう。


日本経済新聞 2006/8/19

王子による北越統合「独禁法に違反」公取委へ上申書 大王製紙

 製紙業界第3位の大王製紙は18日、王子製紙が計画する北越製紙の経営統合について「独占禁止法に違反する」とした上申書を公正取引委員会に同日提出したと発表した。上申書を提出することで統合についての公取委の見解を求める。
 統合が実現すればティッシュペーパーの箱などに使う白板紙や塗工紙などで寡占状態が形成されユーザーに不利益をもたらすというのが上申書の骨子。王子グループと北越のシェアを合わせると白板紙で約60%。塗工紙でも40%超となる。大王によれば、代理店などの紙流通業界に対する支配力が強化され他メーカーの販売が阻害される可能性があるという。


日本経済新聞 2006/8/30

EU独禁法 制裁を強化 再犯なら最大2倍課金

 欧州連合(EU)がEU競争法(独占禁止法)違反の企業に対する制裁措置の強化に乗り出す。9月にも新指針を公表、独禁法違反の再犯企業に最大で基準額の2倍の制裁金を科すほか、違反期間に応じて制裁金を増額するルールを明確化する。EU独禁当局と対立している米マイクロソフトを事実上けん制する狙いとの見方がある。
 新指針はEUの執行機関である欧州委員会が作成し、来月中にも適用を始める。新指針では、違反と判定された部門の年間売上高の最大30%を基準額とし、再犯企業への上乗せを現行の最大50%から最大100%に引き上げる。違反期間が長いほど、制裁金が重くなる仕組みを導入するほか、再犯の判定も厳格化。現在は欧州委の摘発だけが対象だが、今後はEU加盟国による摘発も過去の違反として数える仕組みに変える。ただ、制裁金の上限は現行通り、違反企業の全世界での総売上高の10%に維持する。
 EU独禁法違反では、マイクロソフトに2004年に科した約5億ユーロ(約750億円)の制裁金が最高。その後も同社が独禁法違反を続けたという理由で、EUは今年7月に追加的な制裁金を科している。


2006/11/14 日本経済新聞夕刊

ガス管でカルテルの疑い 公取委立ち入り 三井化学など8社

 ガス会社が使うガス供給用のポリエチレン管や継ぎ手など配管部材の販売を巡り、大手メーカーが違法な価格カルテルを結んでいた疑いがあるとして、公正取引委員会は14日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で三井化学や三菱樹脂など計8社に一斉に立ち入り検査に入った。原油価格の高騰分を転嫁しようとしたとみられる。
 ほかに立ち入りを受けたのは、日立金属、日本鋳鉄管、富士化工、積水化学工業、クボタシーアイ、協成。各社の本社や営業所など立ち入り先は計三十数カ所に上った。
 関係者によると、2004年から05年にかけて、各社が相次いで配管部材の価格を10−20%程度引き上げた際、カルテルを結んでいた疑いが持たれている。各社は04年ごろから基礎原料となるナフサや原油の価格上昇に直面し、原材料の高騰分を価格に転嫁して利益を確保しようと、担当者が事前に話し合い、値上げの率や時期を決めていたとみられる。
 ガス用ポリエチレン管は地中に埋設し、全国の都市ガスを家庭やオフィスなどに供給する。日本ガス協会によると、昨年末時点での全国の普及率は約3割。市場規模は年間約100億円で、8社でシェアの大半を占めているという。
 三井化学など8社は「立ち入り検査を受けたのは事実。詳しい内容は分からないが、検査には協力する」などとコメントしている。


日本経済新聞 2006/11/15

ガス管でカルテルの疑い 化学会社、印象悪化を危惧 他分野への影響懸念

 三井化学や三菱樹脂などポリエチレン(PE)製品8社が14日、違法な価格カルテルを結んでいた疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。他の石油化学各社は2004年以降、原油高を受けて川下メーカーに対して粘り強く値上げを浸透させただけに、検査による業界イメージ悪化に神経をとがらせている。
 立ち入り検査の対象は都市ガス供給用の配管部材。各社はPEを相次いで値上げしてきたが、原料高の勢いが強く「それでも収益はとんとん」(総合化学)としている。
 ガス配管部材市場は年間100億円程度で、ポリエチレン市場の中でごく一部にすぎない。業界内では1992年に排除勧告を受けた塩ビ管同様、建設関連資材の特殊事情として、「ガス管以外の分野でも不信感を招いては困る」と懸念する声が強い。
 ただ三井化学(旧三井東圧化学)や三菱樹脂は、91年のラップフィルムの独禁法違反にも関与していたことがある。立ち入り検査の結果次第では企業体質が再び強く問われかねない。


日本経済新聞 2006/11/22

公取委の合併審査 基準緩和圧力高まる 自民議員からも要望

 独占禁止法に基づく企業の合併審査の基準見直しに向けた本格議論が始まった。自民党が21日に開いた企業統治委員会に公正取引委員会と経済産業省が出席。統合後のシェアで35%以下なら「問題は少ない」としている合併審査の基準について、経産省は「上限を50%に引き上げるべきだ」と主張した。自民党の出席委員からも「公取委が強い裁量を持つべきではない」との声が相次ぎ、基準緩和に慎重な公取委への圧力が一段と高まった形になった。
 現行の審査指針では、統合後の国内シェアが25%以下なら「競争を制限するとは考えられない」、シェア35%以下なら「制限する恐れは小さい」とする二段階の基準を設けている。実際には35%を超える合併案件でも最終的に認められる例が多く、企業から実態に合わせて基準そのものを見直してほしいとの声が強まっている。
 21日の委員会では経産省が現行基準の大幅緩和を求める独自案を説明。シェアが50%未満なら「問題になる恐れは小さい」、50%以上でも「競争があれば統合を認める」とする案を示した。輸入圧力の評価、生産性向上を伴う合併の扱い方などについても新指針に盛るよう主張した。
 一方の公取委はシェア上限の引き上げの可否については言及しなかったが、二段階の基準を一つに簡素化。使用する指標を合併会社の単純なシェアだけではなく、他の市場参加者も勘案して寡占度を測る「HHI」を採用することなどを検討していると説明した。米国が採用しているルールだが、この手法では基準緩和にはなりにくいとの見方もある。
 これに対して出席議員からは「製薬業界などでは、現行のシェア基準が合併を妨げ、研究開発力の強化が遅れている」「議論している間にも海外企業はどんどん大きくなっている」などの意見が続出。早期緩和を求める声が大勢を占めた。
 公取委は企業統治委員会で産業界や有識者の意見を聞きながら、1月中に「企業結合ガイドライン」見直しの原案をまとめる予定。

公取委と経産省の指針改定案

  公取委案 経産省案
シェア基準・指標 市場寡占度を測る米国方式のHHIに一本化を検討 50%未満なら問題となる恐れは小さい。50%以上でも十分な競争があれば問題なし
国際競争の考慮 「考慮する」と明記 「考慮する」と明記
輸入圧力 事例に沿った具体的な考え方を明記。数値盛り込むかは未定 輸入品シェアなど数値基準を含めて明記
生産性向上を伴う合併 言及なし(現行は評価基準不明確) 技術革新能力などを評価する基準を導入
審査前の事前相談 言及なし(現行は最大120日) 必要な提出資料を明示し、相談期間を短縮

 


日本経済新聞 2006/12/16

合併審査、シェア基準撤廃 公取委案 市場寡占度 競合企業含め判断

 公正取引委員会は企業の合併審査基準の改正案をまとめた。合併後の市場占有率(シェア)が35%以下なら「独占禁止法上、問題は少ない」として統合をほぼ認めてきた「シェア基準」を撤廃し、業界の競争状況を示す市場寡占度で判断する米国方式を導入する。輸入品などとの競合を判断材料に加味することも明記。新基準は欧米より緩やかになるものの、経済界が求める大幅緩和とはなっておらず、今後の調整が難航する可能性もある。
 週明け以降、経済産業省や自民党などと改正案についての協議を始め、来年春に運用指針を改定する方針だ。
 新基準は業界内の全企業のそれぞれのシェアを二乗して足し合わせる寡占度指数を採用。現行制度でもシェア基準と並んで判断材料にしているが、同指数を重視する米欧に足並みをそろえる。
 改正案では
 @合併後の業界全体の
寡占度指数が1500以下
 A全体の指数が
2500以下で合併に伴う増加分が250以下
 B全体の指数が
2500超で増加分150以下
の3条件のうちどれかを満たせば無審査で合併できるようにする。
 現行基準は「シェア25%以下で寡占度指数1000未満」なら審査不要で、「シェア35%以下で指数1800未満」の場合は審査は必要だが「競争を制限する恐れは小さい」としてほぼ容認してきた。新基準ではシェア35%の大手が同1%の中小を買収する場合などは無審査の範囲が広がる可能性がある。
 さらに基準を上回る統合でも、輸入品が多く流入するなど海外に有力な競合相手がある場合などは容認すると明記。統合で生産性が高まり、商品の値下げが促されれば、大型合併でも容認するとしており、審査対象となっても最終的には統合が認められる可能性はある。
 ただ、「問題が少ない」とするシェア基準を35%以下から50%未満に広げる経済産業省などの案からは大きく後退する形ともなる。

合併審査、一部で厳格化も 輸入圧力も考慮

 公正取引委員会による企業合併の審査基準見直しは、国際競争の激化に直面する産業界から再編をしやすくしてほしいとの声が高まったことが背景にある。このため改正案は輸入品との競争なども考慮する内容としたが、現行のシェア基準を廃止する結果、一部では審査が厳しくなる例も出てくる。
 公取委の改正案は米欧と比べ数字上はおおむね緩い基準。これまで必要だった厳格な審査が免除されるケースも多い。例えば、業界内のシェア35−38%の大手が同1−3%の企業を買収する事例。従来の基準では合併後のシェアが35%以上なので厳格審査の対象となり、企業は公取委に対し大量の資料を出すなどして時間をかけて認可を得る必要がある。しかし新たな基準では寡占度指数に大きな変化が出ないため無審査となる。
 逆に準大手級のメーカーが経営統合しようとする場合は、新基準で審査が厳しくなる可能性もある。例えばデジタルカメラ業界で4位の松下電器産業(シェア14%)と5位のニコン(同12%)が統合すると仮定すると、現行基準なら合併後の2社のシェアは26%なので、簡単な審査で済むが、新基準では厳格審査の対象となる。
 一方、産業界からは「審査では海外からの輸入も加味すべきだ」との声も上がっていた。これについては一定の答えを出した。まず市場の範囲がどこまで及ぶかという「市場の画定」の作業で「国内を原則とする」という現行指針の文言を削除。その上で
外国企業からの輸入圧力があるかどうかを判断するための具体的な項目を明記した。
 第一が
関税水準や、輸入が急増した場合の制限措置があるかなど制度上の障壁の有無。第二が輸送費で、負担が小さいほど輸入圧力が強いとみなす。第三が製品の品質などが同じかどうかの「代替性」。さらに外国企業の生産能力なども勘案し、能力が高ければ圧力が大きいと判断する。

米国 (1992年4月発表のHorizontal Merger Guidelines 公取委案
統合後の
HHI
市場認識 HHIの増加 結論 合併後
HHI
HHIの増加
1000未満 unconcentrated   問題なし、検討不要 1500以下  
1000-1800 moderately concentrated  100未満 問題なし、検討不要 1500-2500  250以下
 100以上 競争上の懸念、検討要  
1800以上 highly concentrated   50未満 問題なし、検討不要 2500  150以下
  50以上 競争上の懸念、検討要  
 100以上 市場支配力の行使が容易と推定  


2006/12/25 毎日新聞夕刊

談合「自首」企業:国交省は処分 公取委との違い明らかに

 談合を自主申告した企業の課徴金を減免する制度を巡り、国土交通省が申告企業に対しても、営業停止などの厳しい処分を科す方針を決めたことが分かった。複数の企業からの照会に、国交省が方針を伝えた。無申告企業と差を付けることで「自首」を促し、摘発増につなげるために導入された制度だが、処分による経営への打撃は避けられず、企業の判断に影響を与えそうだ。

 この制度は「リーニエンシー」と呼ばれ、トンネル換気設備工事の談合事件で9月、公正取引委員会が日立製作所と荏原製作所の2社に計約7億円の課徴金納付命令を出す一方、立ち入り検査前に申告した三菱重工業は全額(2億7783万円)、検査後に申告した石川島播磨重工業と川崎重工業の2社も、各3割の課徴金が免除された。こうした企業への国交省の対応が注目されてきたが、日立、荏原の2社に加え、減免された3社にも営業停止などの処分を出すとみられる。

 関係者によると、複数の企業幹部が「リーニエンシーで自首した企業について(処分する際に)配慮はあるのか」と見解を尋ねたところ、国交省側は「課徴金はあくまで公取委の判断。法律違反があった以上、処分は免れないと考えている」と厳しい態度で臨む方針を示したという。

 国交省の処分は、談合やカルテルなどの違法行為に対し、建設業法に基づいて行うもの。最も長い営業停止期間は1年間で、民間工事を含めすべての受注をストップさせる。さらに国交省の処分に追随する形で、他の官庁や地方自治体も次々と指名停止に踏み切るため、企業は大きな打撃を受ける。

 ある公取委幹部は「できれば国交省も処分を免除してもらいたかった」と語り、メーカー幹部も「これでは自首に踏み切れない」と影響を危惧する。一方、ゼネコン幹部は「違反行為をした以上、何らかの処分がないと世間の理解が得られない」と理解を示した。

 この制度は改正独占禁止法(今年1月施行)で導入された。違法行為を申告した企業のうち、先着3社までの課徴金を100〜30%減額するもので、これまでに2件の摘発が明らかになっている。


日本経済新聞 2007/1/25

送電設備カルテル 制裁金1200億円命令 EU、三菱電機など10社に

 三菱電機、日立製作所、東芝などの日欧10社が送電設備で国際カルテルを結んでいたとして、欧州連合(EU)の欧州委員会は24日、総額で7億5干万ユーロ(約1200億円)の制裁金支払いを命じた。EUによる単独のカルテルに対する制裁金では過去最高額。日本企業はEU市場でほとんど実績がないが、欧州委は日欧の企業が「互いに市場参入を控えることで価格競争をゆがめた」と批判している。
 カルテル疑惑では三菱電機が約1億1800万ユーロの制裁金を命じられたほか、日立、東芝、富士電機システムズ、日本AEパワーシステムズも制裁対象。欧州企業では独シーメンスの約3億9600万ユーロをはじめ、仏アルストムなどが制裁金を科された。スイスのABBはカルテルに加わっていたが、情報提供したため制裁金を免除された。
 各社は約16年間、送電・遮断の調節に使うガス絶縁開閉装置(GIS)で国際カルテルを結んでいた疑いがある。欧州委は、日本企業はシーメンスなどが日本市場で設備を販売しないことを見返りとしてEU市場参入を手控えたと指摘。「このような合意がEU市場での価格競争の制約につながった」と判断した。
 三菱電機は「内容を確認したうえで、欧州司法裁判所への提訴も合めて対応を検討する」としている。シーメンスは欧州委の決定を不服として、欧州司法裁に提訴する構えだ。


2007年02月02日 asahi.com

談合を「自首」、だから違約金払わぬ? 三菱重工

 旧首都高速道路公団のトンネル換気設備工事をめぐる談合に加わった設備メーカー5社のうち、三菱重工業だけが、首都高速道路会社からの5000万円の違約金の請求に応じていないことがわかった。三菱重工は公正取引委員会に談合を自主申告したため公取委から課徴金を免除されたが、旧公団の違約金制度は課徴金納付命令を受けた企業を請求対象としている。三菱側は談合の事実を認める一方、「違約金名目では支払えない」と、首都高会社に再考を求めている模様だ。

 首都高会社は昨年12月、談合に加わった荏原製作所など5社に、工事契約書の中の違約金条項に基づいて、計5億2600万円の違約金を請求。三菱重工以外の4社は1月末の期限までに支払った。

 請求に応じない理由について同社は「現在協議中でコメントできない」としているが、関係者によると、談合を公取委に「自首」した企業に対する課徴金減免制度が根拠になっているとみられる。この制度は、独占禁止法改正で昨年1月から導入。トンネル談合で三菱重工は同制度を初適用され、課徴金を全額免除されている。


韓国連合ニュース 2007/2/20

韓国 価格談合の石油化学10社に課徴金1051億ウォン 
 
 公正取引委員会は20日、国内石油化学会社10社が1994年から談合を通じ高密度ポリエチレン(HDPE)とポリプロピレン(PP)価格を決めていたことを摘発し、是正命令を出すとともに過去3番目に多い1051億ウォン(112百万米ドル) の課徴金を科したと明らかにした。このうち5社については、検察に告発したという。
  公正取引委員会から課徴金を科されたのは、湖南石油化学、SK、暁星、大韓油化工業、サムスン総合化学、GSカルテックス、サムスントータル、LG化学、大林産業、シーテックの10社。このうち、SKとLG化学、大韓油化工業、大林産業、暁星の5社が検察に告発された。会社別の課徴金はSKが238億ウォンで最も多く、シーテックが29億ウォンで最も少ない。
   調査結果によると、これら企業は1994年4月に社長団会議を開き、販売価格の基準となる基準価格を毎月定め、それに基づき会社ごとに品目別販売価格を決めることで合意した。2002年6月まで毎月点検会議を開催し販売基準価格を合意し、月末に再び価格を協議するなど価格を共同で決めていた。その後も2005年4月まで基準価格と取引先の販売価格を協議した上で決定していたという。10社の営業利益は1991〜1993年は赤字だったが、価格談合が始まった1994年以降は通貨危機の2年間を除き、毎年黒字を計上した。  
  公正取引委員会は、10社が国内合成樹脂製造・販売市場に占めるシェアが85%以上に達し、談合により約1兆5600億ウォンの消費者被害をもたらしたものと試算されると説明した。
 
Top refiner SK Corp. received the largest fine, 23.8 billion won, followed by Korea Petro Chemical Ind. Co. with 21.2 billion won and LG Chemical Ltd. with 13.1 billion won.

The FTC also said it plans to file criminal charges against five companies for allegedly playing a key role in holding the price-rigging meetings.
"The sanctions are designed to ensure a stable supply for the local plastic industry," the watchdog said in a statement.

The irregularities are estimated to have cost consumers approximately 1.56 trillion won in damages, as the routine price rigging prompted hikes in the prices of consumer products, according to the FTC.

Meanwhile, the companies objected strongly to the decision, saying that their actions weren't intended to reap excessive profits.
"The meetings were aimed at seeking a balance in supply and demand amid fierce competition, and a breakthrough from a long-term slump within the petrochemical industry," an industry official said, asking to be unnamed.

The decision comes amid an ongoing investigation into alleged price rigging among four oil refiners, including SK and GS Caltex, with fines expected to be announced sooner or later.

Earlier in the month, FTC Chairman Kwon Oh-seung said that his agency plans to tighten its grip on the country's raw materials sector, saying it was "deeply linked to people's everyday lives and corporate competitiveness."


2007/2/21 bbj.hu

EU fines Otis, four other elevator makers for price-fixing

European antitrust authorities fined Otis Elevator Co. and ThyssenKrupp AG, the world's two largest elevator makers, and three competitors a record Euro992.3 mln ($1.3 bln) for price-fixing.

The European Commission penalized
ThyssenKrupp Euro479.7 million, the biggest fine against a company for a cartel, and levied Euro224.9 million on Otis, a unit of United Technologies Corp. It also fined Schindler Holding AG Euro143.7 million, Kone Oyj Euro142.1 million and Mitsubishi Elevator Europe BV Euro1.8 million for fixing prices of elevators and escalators. "It is outrageous that the construction and maintenance costs of buildings, including hospitals, have been artificially bloated by these cartels,Competition Commissioner Neelie Kroes said in a statement today. The penalty is the highest imposed by the Brussels-based commission for a cartel, surpassing a Euro790.5 million fine imposed on eight companies for fixing vitamin prices in 2001. Otis, Schindler, ThyssenKrupp and Kone control about 75% of the global elevator and escalator market, which is worth Euro30 billion in annual sales, said Christian Obst, an analyst at HVB in Munich who has a "holdrating on ThyssenKrupp shares. Kroes has made fighting cartels a priority for her five-year term. On January 24, she fined Siemens AG, Areva SA and eight other companies that make electricity network gear Euro750 million. The commission fined seven cartels a total of Eruo1.84 billion last year, an annual record. Today's fines can be appealed to the European Court of First Instance in Luxembourg.

"Today we see the commission really going forward and really emphasizing its commitment not only to penalizing participants in cartels but also sending a very clear deterrent message to companies that might be tempted to get involved in those types of activities," John Pheasant, a partner at Hogan & Hartson LLP, said in an interview. The commission, the EU's antitrust regulator, said a price-fixing cartel took place in Belgium, Germany, Luxembourg and the Netherlands between at least 1995 and 2004. The companies rigged contract bids, allocated projects to each other and shared confidential information, the regulator said. The companies "were aware that their behavior was illegal and they took care to avoid detection; they usually met in bars and restaurants, they traveled to the countryside or even abroad and they used pre-paid mobile phone cards to avoid tracking," the commission said.

"The result of this cartel is that taxpayers, public authorities and property developers have been ripped off, big time," Jonathan Todd, a commission spokesman, told reporters in Brussels. "Its effects will be felt for the next 20 to 50 years." ThyssenKrupp's fine was raised by 50% because it was a repeat offender, the regulator said. The Dusseldorf, Germany-based company said in a statement that its lawyers "will review the fine notice and then decide whether to appeal." Peter Murphy, a spokesman at United Technologies, wasn't immediately available when contacted by phone for a comment. He also didn't immediately respond to an e-mail. Under EU law, the commission can fine companies accused of operating a cartel as much as 10% of their annual sales. The agency has typically opted for about 2% to 3% of sales. The EU based the fines against the elevator makers on a calculation method approved in 1998. Under new fining guidelines adopted last year, the EU can double the penalties on companies that have repeatedly engaged in price fixing and impose additional fines on companies that join cartels.

"Kone will examine the commission's decision and decide on potential further action," the company said in a statement. "Schindler will decide whether to appeal once it has been able to examine the grounds for the commission's decision," the company said in a statement. "Schindler is very surprised at the size of the fine since the European Commission found no evidence of pan-European collusion among companies in the European elevator industry." Herman Van De Pasch, senior managing director at Mitsubishi Elevator Europe in Veenendaal, The Netherlands, said he was "disappointed" by the fine. "I had expected a very low fine because of our small role," Van De Pasch said in a telephone interview. EU spokesman Todd said Mitsubishi's fine wasn't included in the total fine printed in the commission press release earlier today. (Bloomberg)


日本経済新聞 2007/3/29

企業合併審査 新指針の運用開始 公取委、海外市場も考慮

 公正取引委員会は28日、企業合併の可否を審査する際に使う新しいガイドライン(指針)を発表した。国際的なM&A(企業の合併・買収)が活発化していることを受け、国際競争の状況を考慮することや、無審査で合併を認める基準を緩和することなどが盛り込まれた。同日から新指針の運用を開始した。
 新指針は、国際競争が激しい製品では、海外市場も審査の対象に含めることを明記。国内で見ると独占状態にある企業でも、国際競争の存在が認められ、アジア市場や世界市場での市場占有率(シェア)や寡占状況で審査されれば、合併が許される道が開ける。
 これまでも、案件によっては世界市場を考慮して審査していた。だが、指針上は「国内市場を中心に審査する」となっていたため、企業がM&Aに尻込みする一因となっていた。また、ほぼ無審査で合併を認める基準について、シェアを重視した今のルールを改正。業界内の企業すべてのシェアを二乗して足し合わせて寡占度を測る指数(HHI)に一本化し、その上で基準を緩和した。
 具体的には、今まで「合併後のシェア25%以下でHHI 1000 未満なら無審査としていたルールを、新指針では@合併後のHHIが1500以下AHHIが2500以下で合併による増加分が50以下BHHIが2500超で増加分が150以下のいずれかを満たす場合と改めた。


日本経済新聞 2007/4/21

試される司法 変貌 刑事訴訟
 日本版免責制度の衝撃  「自首」100件超、談合を崩す

 日本の刑事司法が転換期を迎えている。再来年に始まる裁判員制度に加え、被害者参加制度が今国会で審議される。独占禁止法の免責制度の期待以上の効果が日本でも「司法取引」が機能する可能性を示すなど、捜査手法の改革も急務だ。変化の芽を探る

社名の公表望む
 「我が社が自主申告したことを発表してください」。大林組や鹿島などゼネコン5社が独占禁止法違反に問われた名古屋市地下鉄談合事件で、起訴を免れたハザマは公正取引委員会に社名公表を依頼した。
 同社は公取委に談合を申し出る代わりに刑事告発を免除される同法の制度を利用した。「積極的に社名公表を求めるとは…。株主に早く情報開示し、談合決別の姿勢を訴えたかったのだろう」と公取委幹部。公取委は刑事告発の記者会見でハザマの社名を出した。
 昨年1月の改正独禁法で導入された課徴金減免制度の威力は絶大だ。談合やカルテルを公取委に申し出ると、一番目は告発を免除され、3番目まで課徴金を減免される。会社や役員が刑事被告人にならない一種の「司法取引」で、一年間の申告数は100件を超えた。
 申告の中身も業界を震撼させる。業界トップの三菱重工業は水門工事談合など少なくとも4件を自主申告し、課徴金免除を受けた。江川豪雄副社長は「元検事の弁護士3人に依頼し、徹底した内部調査をした」と話す。
 業界トップ抜きに談合は成立しない。三菱重工の方針を知った同業他社は「今後は社内で談合を把握すれば、公取委に駆け込む」と口をそろえる。業者間に生じた疑心暗鬼で、日本社会に根づいてきた談合組織は崩壊に向かいつつある。
 竹島一彦・公取委委員長は「効果は予想以上。談合は密室で行われるため立証が難しかったが、全面協力する企業が1社でも出てくれば名古屋のように短期間で処理できる」と自信をのぞかせる。
 日本の刑事司法は捜査に協力した容疑者を訴追しない米国型の取引を原則認めていない。「大のために小に目をつぶることを日本人は潔しとしない」(法務省幹部)と、司法界は司法取引に後ろ向きだった。
 改正独禁法にも刑事免責の明文規定はない。検察は公取委が告発対象としていない会社や個人も起訴できるが、国会審議で法務省が「公取委の判断を十分考慮する」と答弁、事実上の刑事免責が実現した。
 もっとも刑事免責に似た手法はある。検察官にだけ与えられている被疑者を起訴するか、起訴を猶予するかの裁量権。検察OBは「起訴の裁量権が司法取引的に使われることがないとは言わない」と本音を漏らす。

透明性向上カギ
 ライブドア公判で、前社長、堀江貴文被告(34)側は、検察側ストーリーに沿う陳述をする元側近らが会社資産を流用した疑いを指摘。「検察官は横領疑惑を捜査しないと黙契した」と事実上の"司法取引"があったと批判した。
 東京地裁判決は堀江被告側の主張を退けたが、「検察官は立件の上、不起訴処分にするなど疑念を払拭できたのにしなかった」と異例の言及を加え、検察側に一層透明な捜査を求めた。
 米国の司法取引は裁判官の目の前で行われるため透明性が高い。被告が有罪を認める代わりに罪を軽減するケースが多く、刑事裁判の約90%は司法取引で処理されている。安冨潔慶応大教授は「起訴猶予がどう使われているか、第三者は検証できない。司法取引を認めるならきちんと制度化すべきだ」と指摘する。
 司法制度改革の源流になった2001年の司法制度改革審議会意見書。将来の課題として刑事免責制度を挙げ「社会・経済の変化や国民感情、犯罪情勢に応じた多角的な見地から検討すべきだ」と記した。
 規制緩和で経済活動が自由化し、ルールを破った者に対する捜査当局への摘発要請は高まっている。「殺人は無理でも、インサイダー取引など経済犯罪なら司法取引に理解が得られるのではないか」(検察幹部)との声も出始めている。


四国新聞 2007/6/7

包装フィルムカルテルで大倉工業など立ち入り

 カップめんなどの食品包装用のフィルム販売をめぐりカルテルを結んだ疑いが強まったとして、公正取引委員会は6日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、
大倉工業(香川県丸亀市)など化学メーカー4社の本社や支店約20カ所を立ち入り検査した。

 ほかに立ち入り検査を受けたのは、
興人(東京)、昭和パックス(同)、東洋ケミカル(高知市)

 大倉工業では、丸亀市の本社のほか、東京、大阪、名古屋の各支店と岡山営業所の合成樹脂事業部の営業部門に対して、午前9時半ごろから本社は約10人、支店・営業所は各2、3人が検査を行った。

 関係者によると、4社は2004年から今年にかけて、合成樹脂製の「シュリンク(熱収縮)フィルム」の卸売価格をめぐり、値上げの時期や割合を事前の話し合いで決め、複数回にわたって数%ずつ値上げするなどカルテルを結んだ疑いが持たれている。

 カルテルの対象となったのは、
シュリンクフィルムのうちポリプロピレン製とポリエチレン製の2種類。加工が容易で強度に優れている上、人体への影響などもないため、カップめんなどの食品や薬品の包装などに広く使われている。

 4社は材料の原油価格が高騰したことなどから、カルテルを結ぶことで利益確保を図ったとみられる。

 国内の市場規模は、ポリプロピレン製、ポリエチレン製ともそれぞれ年間約100億円で、立ち入り検査を受けた4社が大半のシェアを持つという。


2007年07月05日 朝日新聞

国際カルテル摘発、横浜ゴムの「自首」端緒 おとり捜査

 米司法省と公正取引委員会などが今年5月に摘発した、原油などの海上輸送に使う「マリンホース」をめぐる国際的なカルテル事件は、大手ゴムメーカー、横浜ゴム(東京)の米司法省への自首・減免申請(リーニエンシー)が発端だったことがわかった。司法省は、申請受理後、同社の協力でカルテルのメンバーになりすましておとり捜査を仕掛けたとみられ、一斉逮捕につなげた。

 日本でもリーニエンシー制度を模した課徴金減免制度が導入され、談合漬けといわれた企業の自首ラッシュが起きている。横浜ゴムの申請は、そうした企業の「談合決別」の流れが国際舞台にも広がりつつあることを示している。

 ブリヂストン化工品海外部長ら日英仏伊のゴム製品メーカーの幹部8人は、99年から大手石油会社や米国防総省に納入するマリンホースの価格を高値で維持するため、米国やバンコク、ロンドンで会合をもち、落札者を決め、入札価格も操作していたとして、5月初め、米司法省に逮捕された。日本の公取委や英当局などと連携して米司法省が捜査を続けている。

 司法省によると、カルテルの調整役は、英国のコンサルタントで、各社は年5万ドルを支払っていた。

 朝日新聞の調べでは、司法省は06年秋、横浜ゴムが船舶用ゴム製品の販売エージェントとして雇っていた米国人を別のカルテル容疑で逮捕。同社が関与したとする供述を引き出し、同社に対し、「マリンホースでもカルテルがあるようだ。協力してくれるなら本件の訴追を見送ってもいい」などとリーニエンシー申請を持ちかけたという。

 横浜ゴムは、防衛庁(当時)のタイヤ調達をめぐる談合事件などで2度、公取委に摘発されており、04年には事実上、マリンホースのカルテルから脱退していた。そのため、協力することを決め、カルテルに関する当時の資料を提供したとされる。

 司法省は、横浜ゴム担当者になりすまし、そのメールアドレスを使ってコンサルタントらとやりとりを開始したという。メンバーは数年間、会合を開いていなかったとされるが、5月初め、米ヒューストンのホテルで会合を開くことになった。

 ホテルでの話し合いが終わった直後に、司法省の捜査員らが踏み込み、横浜ゴムの担当者をのぞく参加者を逮捕。ブリヂストン担当者も米国内の滞在先で逮捕した。

 横浜ゴムは06年暮れ、日本、欧州連合と英国などリーニエンシー制度のある国に同時申請したとみられ、公取委は、司法省の強制捜査着手を待って立ち入り調査に入った。

 横浜ゴムは「捜査中なので何も話せない」としている。

 


2007/7/10 日本経済新聞夕刊

化学3社に強制調査 公取委 塩ビ管でカルテルの疑い 刑事告発を視野

 上下水道に使用される塩化ビニール管を巡り違法な価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして、公正取引委員会は10日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で大手化学メーカーの三菱樹脂、積水化学工業、クボタシーアイの3社に強制調査に入った。塩ビ管の市場規模は年間約1800億円と巨額で、公取委は今後、検察当局への刑事告発を視野に調査を進めるとみられる。
 関係者によると、各社は2004年ごろから基礎原料となる原油価格の上昇に直面。原材料の高騰分を価格に転嫁して利益を確保しようと、担当者が事前に話し合い、数回にわたって価格を10%程度引き上げた際、違法なカルテルを結んでいた疑いが持たれている。
 塩ビ管は主に上下水道に使用され、卸会社を経て自治体などに販売される。市場規模は年間約1800億円と公取委が過去に調査した案件の中でも最大級で、3社でシェアの6−7割を占めているという。
 三菱樹脂は1991年に食品包装用ラップカルテル事件で公取委から告発され、93年に法人としての有罪が確定。三菱樹脂と積水化学工業、クボタシーアイの親会社のクボタは塩ビ管の受注談合で公取委から
92年に排除勧告を受けている。
 こうした経緯がありながら、同様の構図のカルテルが繰り返されたことや、国民生活に密着し、水道料金にも跳ね返りかねない上下水道管を巡ってカルテルが行われていた実態などを重くみて、公取委は刑事責任を追及する必要があると判断したもようだ。
 積水化学工業、三菱樹脂、クボタシーアイの3社は「強制調査を受けたのは事実。詳しい内容は不明だが、調査に全面的に協力していく」などとしている。


92年 塩ビ管 課徴金納付命令

納付義務者 納付すべき課徴金の額(万円)
三菱樹脂 715万円
積水化学工業 572万円
クボタ 337万円
アロン化成 271万円
信越ポリマー 79万円

日本経済新聞 2007/7/11

公取委 「原料高転嫁」厳しく監視 水道料金に波及懸念

 塩化ビニール管を巡る価格カルテル疑惑で、公正取引委員会は10日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で大手化学メーカ−3社の強制調査に入った。公正取引委員会は昨年以降、入札談合だけでなく、原油などの原材料価格高騰を理由にしたカルテルに対する監視も強化しており、今回は検察当局への刑事告発を検討する。
 塩ビ管の市場規模は年間約1800億円で、カルテルとしては過去最大級。三菱樹脂、積水化学工業、クボタシーアイの3社はここ数年、塩ビ管の値上げを相次ぎ発表。「世界的なナフサ急騰で原材料価格が高騰しており、製造費や物流費の削減など自助努力の範囲を大きく超えている」などと説明した。7月出荷分についても10%程度の値上げを公表したばかり。
 公取委は3社が上下水道に使われる塩ビ管で同様の構図のカルテルを繰り返し、水道料金の引き上げに結びつく恐れもあったことなどを重くみて、刑事責任を追及する必要があると判断したもようだ。刑事告発されれば、公取委が積極的に告発する方針を打ち出した1990年以降で、
ラップカルテル(91年)、水道管カルテル(99年)に次ぐ3件目となる。
 公取委が最近、調査に乗り出した価格カルテルは、原材料価格の高騰を理由に値上げしたケースが相次いでいる。5月にニチアスなど2社に課徴金納付を命じた壁材カルテル、6月に今回の3社を含む8社に課徴金納付を命じたポリエチレン製ガス管のカルテルでも、偵上げの理由は原油価格上昇だった。6月に公取委が立ち入り検査した食品包装用フィルムカルテルも、原油価格の高騰分を転嫁しようとしたとみられ、調査が続いている。
 また、2006年1月に導入された「課徴金減免制度」は談合だけでなく、カルテル摘発にも効果を発揮しつつある。ポリエチレン製ガス管カルテル摘発の端緒は企業の自主申告。今回、調査の対象となった三菱樹脂と積水化学も自主申告で課徴金を減額されていた。塩ビ管カルテルでも、自主申告があった可能性は高いとみられる。

刑事告発
1 平成09年12月24日
  金門製作所ほか58名に対する独占禁止法違反被告事件(公正取引委員会告発事件)
    東京都が発注する水道メーターの販売

2 平成08年05月31日
  日立製作所ほか26名に対する独占禁止法違反被告事件(公正取引委員会告発事件)
    日本下水道事業団発注に係る電気設備工事の請負

3 平成05年12月14日
  トッパン・ムーア(株)ほか3名に対する独占禁止法違反被告事件(公正取引委員会告発事件)
    社会保険庁におけるシール導入

4 平成05年05月21日
  三井東圧化学(株)ほか22名に対する独占禁止法違反被告事件(公正取引委員会告発事件)

5 昭和59年02月24日
  出光興産(株)ほか25名に対する独占禁止法違反(価格協定)被告事件(公正取引委員会告発事件)

6 昭和55年09月26日
  出光興産株式会社ほか25名に対する独占禁止法違反(価格協定)被告事件

7 昭和55年09月26日
  石油連盟ほか2名に対する独占禁止法違反(生産調整)被害事件(公正取引委員会告発事件)

8 平成12年02月23日
  ダクタイル鋳鉄管シェア協定独占禁止法違反被告事件 <独禁法関係刑事事件判決>

公取委が摘発した原料価格高騰を理由とするカルテル
公取委調査 企業 対象製品 処分
2006/9 ニチアス、
エーアンドエーマテリアル
ビル内壁用建材
内装工事用けい酸カルシウム板
2社に7億円の課徴金納付命令
2006/11 三菱樹脂など8社 ポリエチレン製ガス管 8社に18億円の課徴金納付命令
2007/3 日立金属など4社 ステンレス製ガス管  
2007/6 興人など4社 食品包装用フイルム  
2007/7 三菱樹脂など3社 塩化ビニール管  

床材

2007.03.02

カルテル疑惑・ガス管製造4社を立ち入り 公取委

ステンレス製ガス管のメーカー4社が価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして、公正取引委員会は1日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査に入った。各社は昨年、原材料価格の高騰を理由に値上げしており、公取委は関連を調べる模様だ。  検査を受けているのは▽日立金属(東京都港区)▽テクノフレックス・トーラ(中央区)▽JFE継手(大阪府岸和田市)▽協成(大阪市)の4社。公取委は昨年11月に、ポリエチレン製のガス管を巡っても日立金属、協成を含むメーカー約10社が価格カルテルを結んでいた同法違反の疑いで、各社に立ち入り検査を行っている

塩ビ管メーカー 公共工事減少が打撃

 公共事業削減に伴う需要の減少と、原油高による原料の塩ビ樹脂値上げの挟み撃ちで塩ビ管メーカーを取り巻く経営環境は厳しさを増している。特に近年は原料を供給する塩ビ樹脂業界の再編が進んだ結果、価格交渉力が強まり、相対的に塩ビ管業界の立揚が弱まってきたとの見方もある。
 塩ビ管は主に上下水道用に使用され、専門商社を通じて自治体などに販売している。市場規模は年50万トン弱。大手3社で7割のシェアを握るが、公共事業の減少で国内需要は年5%程度の減少が続いている。
 積水化学工業、三菱樹脂の2社は上下水道に使われる塩ビ管・継ぎ手の値上げを、2004年から今年6月末までに通算5回表明した。04年当初は値上げがほぼ満額で浸透したが、05年以降は要求額を下回ったという。
 一方、塩ビ管メーカーに原料を供給する塩ビ樹脂業界は過当競争脱却を目指した再編が進み、1995年には15社あったのが03年末には大手5社体制となった。塩ビ管メーカーへの価格交渉力は強まり、業界全体の損益は04年度には12年間続いた赤字から黒字へと転じた。
 塩ビ管業界でも、02年に積水化学と三菱樹脂が生産委託などで提携、05年にはクボタとシーアイ化成が事業統合会社の設立に踏み切ったが、余剰設備の廃棄は遅れ気味だ。


ビル内壁用建材
内装工事用けい酸カルシウム板
 (千円)

ニチアス  381,200
エーアンドエーマテリアル  345,550

A&Aマテリアル
 
2000年10月、アスク(当初朝日スレート)と浅野スレートが合併


業務用ストレッチフィルム

三井東圧化学(株)ほか22名に対する独占禁止法違反被告事件(公正取引委員会告発事件)

三井東圧化学及び信越ポリマー   いずれも罰金800万円
三菱樹脂   罰金700万円
理研ビニル工業、日本カーバイド工業、電気化学工業、日立ボーデン及びグンゼ  いずれも罰金600万円

被告人A2を懲役1年に、被告人C2を懲役10月に、被告人A3、同B2、同C3、同D2、同E2、同F2及び同G2をいずれも懲役8月に、被告人B3、同D3、同E3、同F3、同G3及び同H2をいずれも懲役6月にそれぞれ処する。
被告人15名に対し、この裁判の確定した日から2年間、それぞれその刑の執行を猶予する。

課徴金納付命令

納付義務者 納付すべき
課徴金の額
三井東圧化学 11,080万円
三菱樹脂 9,148万円
信越ポリマー 7,821万円
理研ビニル工業 5,154万円
日本カーバイド工業 4,523万円
電気化学工業 4,120万円
日立ボーデン 2,052万円
グンゼ 1,080万円

 


日本経済新聞 1999/8/7

水道管カルテル 起訴事実を認める
  3社と10被告、初公判で

 水道管などに使われるダクタイル鋳鉄管の販売シェアを巡るカルテル事件で、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪に問われたクボタ(大阪市)、栗本鉄工所(同)、日本鋳鉄管(東京都千代田区)の3社と、各社の営業担当元幹部計10人の初公判が6日、東京高裁(高木俊夫裁判長)で開かれ、各被告はいずれも起訴事実を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、3社が40年以上前から受注調整を繰り返していたと指摘。一方、弁護側は「高価格維持が目的ではなく、協定は長年のうちに形がい化していた」などと述べ、情状酌量を訴えた。

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ダクタイル鋳鉄管シェア協定独占禁止法違反被告事件

クボタ 罰金1億3000万円
栗本鐵工所 罰金7000万円
日本鋳鉄管 罰金3000万円

被告人A2、同A3及び同C2をいずれも懲役10月に、同B1、同B3、同B4及び同C3をいずれも懲役8月に、同A4、同B5及び同C4をいずれも懲役6月にそれぞれ処する。
右被告人10名に対し、この裁判の確定した日からいずれも2年間、それぞれその刑の執行を猶予する。

課徴金納付命令  
納付義務者 平成8年度 平成9年度
クボタ 33億2689万円 37億4519万円
栗本鐵工所 13億6828万円 15億6661万円
日本鋳鉄管 5億1802万円 5億3552万円
 

 


2007年07月12日 asahi

塩ビカルテル、公取委が昨年指摘 業界に「寡占市場」

 塩化ビニル管をめぐりカルテルを結んだ疑いがあるとして、公正取引委員会が独占禁止法違反容疑で化学メーカー9社を捜索した事件で、昨年2月に公取委が業界団体に対し「特殊な寡占市場で協調的行動がとられやすい」と、カルテルの危険性を指摘していたことがわかった。各社は指摘後の昨年6月ごろにも10%程度の値上げで合意していた疑いがあり、公取委は刑事告発に向けて調査を進めている。

 関係者によると、捜索を受けたのは積水化学工業、クボタシーアイ(いずれも大阪市)、三菱樹脂(東京)の大手3社を含む9社。

 業界団体の塩化ビニル管・継手協会(東京)によると、昨年度の塩ビ管の出荷量は年間約44万トン。公共事業の減少や、上下水道の普及が進んだことから需要は頭打ちで、03年度をピークに出荷量は毎年3〜5%ずつ下がっているという。

 同協会は05年10月、市場縮小を見据えた今後5年間の需要予測や各社のシェアをまとめ、データを各社に伝えたり公表したりしても問題がないか公取委に相談した。

 公取委は06年2月、「上位3社で7割のシェアを占める寡占市場」と業界の特性をふまえて、需要減少の数値予測を公表すれば「大手を中心に値上げに向けた協調的な歩調が取られかねない」とカルテルの危険性を口頭で伝えた。この見解は協会を通じて各社に伝えられたという。


Platts 2007/8/13

Japan's FTC fears Sumitomo Chem may engage in price fixing again

Japan's Fair Trade Commission expressed concern that Japan's Sumitomo Chemical might engage in price fixing again since the company had previously been punished for polyolefins engaging in such behavior, the commission said late Friday.

The expression of concern was contained in the announcement of the FTC decision regarding an appeal by four PP producers -- Idemitsu Kosan, Sumitomo Chemical, SunAllomer, and Tokuyama -- on alleged polypropylene price fixing.

In case of Idemitsu and Tokuyama, the FTC has confirmed that arrangements facilitating price fixing have been eliminated. "Therefore, no particular measures will be taken to Idemitsu and Tokuyama," said the FTC.

However, the FTC ordered Sumitomo Chemical and SunAllomer to ensure PP price fixing arrangements have been eliminated and to report on the measures taken to eliminate them.

"Sumitomo Chemical, in particular, has previously been punished for price fixing -- one time for polypropylene and three times for polyethylene," the FTC said. "Therefore, we are concerned that Sumitomo Chemical will engage in similar offenses again."

Sumitomo Chemical was not available for comment on Monday due to Japan's local Obon holiday period.

TRIAL BEGAN IN 2001
The FTC warned seven PP producers -- Idemitsu Kosan, Sumitomo Chemical, SunAllomer, Tokuyama, Grand Polymer, Japan Polychem and Chisso -- against PP price fixing six years ago.

The FTC suspected that the seven PP makers had in January 2000 agreed to a unified price increase of Yen 10/kg after delivery of April 2000. Grand Polymer, Japan Polychem and Chisso heeded the FTC warning. However, since the other four firms rejected the warning and appealed, a trial was launched in June, 2001.

PP PRICE FIXING SAID EASIER THAN BEFORE
The FTC said on August 10 that it has become much easier for the PP producers to exchange information needed to engage in PP price fixing since
mergers and acquisitions have reduced the number of Japanese PP producers to four from seven.

The four PP producers are Sumitomo Chemical, Prime Polymer, Japan Polypropylene and SunAllomer.

Sumitomo Chemical has a 386,000 mt/year PP plant in Chiba, East Japan.
SunAllomer has two PP plants -- one in Oita, Southwest Japan and the second in Kawasaki, East Japan. The two plants have a combine production capacity of 319,000 mt/year. Basell, one of the world's largest major polymer producers, owns a 50% stake in SunAllomer.

Chisso transferred its 323,000 mt/year PP plant in Chiba, East Japan, to Japan Polypropylene in 2003. Japan Polypropylene now has a total PP production capacity of 1.083 million mt/year. Japan Polychem owns a 65% stake in Japan Polypropylene.

Grand Polymer was bought by Mitsui Chemicals in 2001. After that transaction, Mitsui Chemicals and Idemitsu Kosan merged their PP businesses to create Prime Polymer in 2005. Prime Polymer's total PP production capacity is now 1.16 million mt/year.

Tokuyama Polypropylene, a 50:50 joint venture between Tokuyama and Prime Polymer, owns a 200,000 mt/year PP plant in Yamaguchi, West Japan. Prime Polymer is responsible of sales of the products from the joint venture.


2007816日 読売新聞

「談合」自主申告のハザマにも排除措置…公取委方針

 名古屋市発注の地下鉄工事をめぐる談合事件で、公正取引委員会は、談合の自主申告を認めて刑事告発を免除した準大手ゼネコン「ハザマ」(東京都港区)に対し、「鹿島」(同)や「大林組」(大阪市)など他の32社とともに独占禁止法違反(不当な取引制限)で排除措置命令を出す方針を固めた。

 申告が談合疑惑の報道後だったため、「調査に積極的に協力したとは認められない」と判断した。
課徴金納付は免除する見通しだ。

 関係者によると、排除措置命令は、2006年2月と6月に行われた同市営地下鉄6号線(桜通線)延伸工事計5工区の入札に参加したJVを構成する計32社と、下請けに入ることを条件に入札参加を見送った「裏JV」1社の計33社が対象。落札額の総額は約192億円に上る。

 この事件で、公取委は今年2月末、談合の仕切り役を名古屋支店顧問が務めていた大林組と、落札したJVの幹事だった鹿島、清水建設など4社を独禁法違反で刑事告発。5工区のうち「鳴子北駅」工区を落札したJVの幹事だったハザマには、自主申告制度に基づいて、告発を免除していた。

 自主申告制度は昨年1月に施行された改正独禁法の運用方針に盛り込まれ、立ち入り検査や捜索の前に、公取委に違反行為を報告した最初の1社は刑事告発や課徴金が免除される。ハザマの申告は、公取委が強制調査に着手する約1か月前で、際立った悪質性もなかったことから、運用方針通りの扱いを受けていた。

 しかし、申告は、ゼネコンの名古屋支店関係者が公取委から任意の事情聴取を受けたことが報道された直後だったため、談合に加わっていた他のゼネコンからは、公取委の措置について不満も出ていた。

 一方、課徴金納付命令は工事を落札したJVの計15社のうち、ハザマ以外の14社が対象になる。課徴金は原則売り上げの10%で、一部は10年以内に同命令を受けた「前歴」があって15%の算定率が適用されるため、総額は20億円以上。


日本経済新聞 2007/9/20

ファスナー価格カルテル 
YKK制裁金 240億円 欧州委 米欧6社・団体にも

 欧州連合
(EU)の欧州委員会は19日、YKKグループを含む日米欧7社・団体が価格カルテルを結んだとして総額で約3億2900万ユーロ(530億円)の制裁金支払いを命じた。EU市場などでファスナーや関連機器について最低販売価格などを設定したとみている。欧州委は今年に入って企業の価格カルテルヘの制裁措置を強めており、国際的な日本企業が巻き込まれるケースが増えている。
 制裁金の対象は日米欧6社とと業界団体。
YKKグループは最高の約1億5千万ユーロ(約242億円)の制裁金支払いを命じられた。欧州委員会がカルテルで日本企業に科した制裁金の額としては過去最大。
 そのほか、英コーツグループは約1億
2200万ユーロ、米スコビルグループは約600万ユーロの制裁金を科されている。YKKと並んで価格カルテルに深くかかわったとみられる独プリムグループは欧州委の調査に協力したため、約4千万ユーロに制裁金が減額された。
 欧州委の調査によると、
YKKやプリムなどは販売先の国や製品ごとに最低価格を設定したうえ、顧客の割り当てや重要な情報の交換などを行っており、公正な企業競争を定めたEU競争法(独占禁止法)に違反している。クルス欧州委員(競争政策担当)は同日、「多くの消費者を抱えるファスナー企業が長期間にわたって価格操作などを行っていた事実は受け入れがたい」という声明を発表した。
 
YKKは世界70カ国・地域で事業展開し、ファスナーの世界シェアは45%程度とされる。2007年3月期の連結売上高は6582億円、連結営業対益は456億円。そのうちファスナーの生産、販売を手掛けるファスニング部門の売上高は2581億円、営業科益は391億円。


The cartels

The evidence uncovered in the inspections showed that the companies ran illegal cartels on the markets for zip fasteners, other fasteners (e.g. snap buttons, rivets.) and their attaching machines. This was further confirmed and complemented by numerous documents and statements provided by the leniency applicants.

The first cartel, involving the YKK group, the Prym group, the Scovill group, A. Raymond, Berning & Söhne and the association VBT, ran from 1991 until at least 2001. During this period the above companies agreed among other things on coordinated price increases in annual "price rounds" with respect to 'other fasteners' and their attaching machines, in the framework of the work circles organised by the trade association VBT.

The second cartel, involving the Prym group and the YKK group, ran from 1999 until at least 2003. During this period the two leading manufacturers of fastening products in Europe fixed prices on a product-by-product and country-by-country basis and allocated customers on a worldwide level with respect to 'other fasteners' and their attaching machines.

The third cartel, involving the YKK group, the Coats group and the Prym group, ran from April 1998 to at least November 1999. During this period, the three leading manufacturers of zip fasteners met on a number of occasions to exchange price information and to discuss price increases. The three undertakings also agreed on a methodology to set minimum prices for zip fasteners in Europe.

The fourth cartel, involving the Prym group and the Coats group, was the longest infringement discovered by the Commission during this investigation and lasted for more than 21 years, from 1977 until at least 1998. During this period, the two companies agreed to share the whole haberdashery market between themselves.

The Commission has evidence that in all four cartels high-ranking management (such as managing directors, sales directors, and board members) participated in regular meetings and discussions. There is also evidence that the companies were aware that their behaviour was illegal.

Fines

These practices are very serious infringements of EC Treaty anti-trust rules. The fines take account of the size of the relevant product markets, the duration of the cartels and the size of the firms involved.

It is the Commission's practice to address its decisions to all the legal entities responsible for the illegal behaviour. In line with established case law, if the parent company within a group exercises decisive influence over the commercial behaviour of its subsidiaries, then they both form part of the same economic entity. There is a presumption that a parent company exercises decisive influence over its wholly owned subsidiary. Legal responsibility for the infringement and the related fine can be attributed to both, the subsidiary that actually participated in the cartel and the parent company or companies that exercised decisive influence over the commercial behaviour of that subsidiary at the relevant time.

Fines imposed by the Commission:

Name of company Total fine on group
(euros)
Prym group 40 538 000
YKK group 150 250 000
Coats group 122 405 000
Scovill group 6 002 000
A. Raymond S.A.R.L. 8 325 000
Berning & Söhne GmbH & Co. KG 1 123 000
Fachverband Verbindungs- und Befestigungstechnik (VBT) 1 000
TOTAL 328 644 000

asahi 2007年09月28日

公取委員長、談合課徴金引き上げ見送りへ

 公正取引委員会の竹島一彦委員長は28日、来年の通常国会に提出する独占禁止法改正案では談合などに対する課徴金の水準引き上げを見送る方針を表明した。一方で、課徴金の対象になる違反行為の範囲を広げるほか、国際カルテルの摘発強化へ「時効」を米国並みに長くする方針も示した。

 27日付で委員長に再任されたことを受けた記者会見で語った。課徴金の算定率は06年1月の改正法施行に伴い、大企業製造業の場合、違反対象の売上高の6%から10%に引き上げられた。竹島氏は「その効果を見極める必要がある」と述べ、新たな引き上げは時期尚早との考えを示した。

 見送りの背景には、有識者らによる独占禁止法基本問題懇談会(官房長官の私的懇談会)が6月の報告書で引き上げ水準への具体的言及を避けたほか、与党や財界との調整が難航する可能性があるという事情もある。

 それでも竹島氏は、課徴金の算定率を柔軟に変えられる方式に見直すことに、なお意欲を見せる。欧州連合(EU)の「上限方式」に移行し、課徴金水準も引き上げるための同法改正を引き続き探る方針だ。

 EUの課徴金に当たる行政制裁金は、世界全体での売上高の10%を上限とし、事件の内容に応じて当局が柔軟に加減している。これまで竹島氏は「EU方式にするなら、上限を現行算定率より高くすべきだ」との考えを表明していた。

 また、竹島氏はこの日の会見で、今回の改正で課徴金の対象を拡大する方針を表明。不当な低価格販売などで競争相手を市場から締め出したり、新規参入を妨げたりする「排除型私的独占」が加えられる見通しだ。

 さらに、同法の時効に当たる「除斥期間」については「少なくとも米国並みには延ばさないといけない」と述べた。日本は3年で、EU(最長10年)、米国(5年)より短い。竹島氏は「違反行為が終わってから3年たつと公取委は手を出せない」と述べ、国際カルテルの摘発強化には延長が必要とした。


日本経済新聞 2007/10/23

マイクロソフト 欧州委命令順守で合意
 独禁法違反係争に決着 技術情報提供など

 米マイクロソフト(MS)による欧州連合(EU)独禁法違反で、同社と欧州委員会は22日、是正命令の完全順守で合意した。MSは競合他社への技術情報の提供や特許料の大幅な引き下げを受け入れた。MSはさらに欧州司法裁判所に上訴しないと表明、欧州委もこれ以上の制裁措置を見送る方針を示した。
 両者の対立は、基本ソフト「ウィンドウズ」の独占的な地位の乱用を巡る2004年の独禁法違反の判定から、法廷闘争を含めて3年半以上に及んだ。欧州委のクルス委員(競争政策担当)は同日の記者会見で「MSは最終的に(是正命令の)完全順守の手続きに入った」と指摘。「追加的な制裁措置を科す理由がない」と述べた。
 欧州委との合意によってMSは競合他社に「ウィンドウズ」に関する技術情報を提供するほか、情報提供料を1万ユーロ(約164万円)に引き下げる。それに関連した世界的な特許使用料などを現行の6%弱から0.4%に大幅に下げる。EU行政に詳しいブリュッセル自由大学のマリアンヌ・ドニ教授は「独禁法違反を巡る係争は終わったと判断できる」と指摘した。
 欧州委はウィンドウズに音楽・映像再生ソフトなどを組み込んだMSの販売手法は競合他社のソフトとの競争を妨げると判断。04年に他社への技術情報の提供を盛り込んだ是正措置を命令した。これを不服とするMSは欧州司法裁に訴えたが、欧州司法裁は9月中旬にMSの訴えを退ける判決を下していた。
 今回の合意は判決後にMSのバルマー最高経営責任者とクルス委員が数週問のトップ協議でまとめた。MSは上訴しても訴えが認められる可能性は低いと判断。欧州委も競争条件の確保で成果が得られたとみて係争終結に動いたもようだ。
 MSとの係争の終結で、欧州委の関心は同じく米IT(情報技術)大手であるインテルやラムバスに移る。欧州委はでに両社に独禁法違反の疑いを通告済み。「消費者保護や競争確保に向けて監視を強める」(クルス委員)としており、EU独禁法の順守で両社にも厳格な対応を迫る可能性が高い。

マイクロソフト ビジネスモデル見直し急務
 欧州委員会の是正命令を完全に受け入れることで、米マイクロソフト(MS)は自社技術を知的財産として囲い込み、これを競争力の源泉とする従来のビジネスモデルに見直しを迫られることになる。MSによる技術情報の広範な開示が進めば、自社製品と競合するソフトの商品化が加速し、ソフト業界の競争が激化する可能性もある。
 MSによると、ライセンス料を引き下げるのは競合会社が基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」と互換性のあるソフトを開発するのに必要な技術情報で現在、収益への貢献はほとんどない。ウィンドウズそのもののライセンス料ではないため、2007年6月期で売上高営業利益率が約80%に達するOS部門の収益力は当面、維持できる見通しだ。
 ただ、技術情報の広範な開示により、他の企業がMSの製品と競合するソフトを続々と商品化してくる可能性が出てくる。競争激化で価格が下がり、シェアが奪われる事態になれば、MSにとっては脅威だ。MSは検索や広告などを新たな収益源と位置づけ事業強化を急ぐが、グーグルやアップルに大きく先行されている。経営の柱であるOS部門の事業モデルに「メス」が入ることで、成長継続に向け新たな課題を背負ったといえる。


日本経済新聞 2007/11/9

ブラウン管 国際カルテルの疑い
 日米欧韓当局 一斉調査開始 松下系など立ち入り

 テレビやパソコンに使われるブラウン管の販売価格を巡り、松下電器産業子会社の「MT映像ディスプレイ」(大阪府高槻市)など日本や韓国、台湾、番港の主要メーカーが国際的なカルテルを結んでいだ疑いがあるとして、日米韓と欧州連合(EU)の独禁当局は8日、一斉調査に入った。
 日本の公取委は同日、MT社に独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査。韓国の公取委もサムスン電子系列のサムスンSDJの調査に乗り出したもよう。米欧を含めた各国当局は今後連携を取り合い、全容解明を進めるとみられる。
 関係者によると、MT社など各社はテレビメーカーにブラウン管を販売する際、価格低下を防ぐため、2005年ごろから担当者が連絡を取り合って価格などを取り決めるカルテルを結んでいた疑いがあるという。
 液晶やプラズマディスプレーの普及でブラウン管の市場規模は縮小している。ただ中国や東南アジアなど依然としてブラウン管の需要が大きい地域も多く、世界的な年間市場規模は現在も約5千億円に上るという。MT社はブラウン管メーカーでは世界的な大手。


日本経済新聞 2008/2/4

懲りない鉄鋼カルテル 「公正・透明」指針見せかけか

 鉄鋼業界がまたもやカルテルの疑いで公正取引委員会の調査を受けている。対象は住宅の壁や屋根に使われる亜鉛メッキ鋼板。日新製鋼、日鉄住金鋼板、JFE鋼板、淀川製鋼所の4社の担当者が2006年度に複数回実施した価格引き上げを事前に話し合って決めた疑いが持たれている。
 鉄鋼業界の独占禁止法違反は日常茶飯事になっている印象がある。昨年7月には土木用鋼材を巡る価格カルテル疑惑で新日本製鉄やJFEスチールなど4社が公取委の立ち入り検査を受けた。05年にはステンレス鋼板カルテル(鉄鋼6社に総額67億円の課徴金納付命令)、06年には鋼鉄製橋梁談合(鉄鋼・重機44社に総額129億円の課徴金納付命令)もあった。
 今回の鋼板カルテル疑惑が注目を集めているのは、公取委が刑事告発を視野に入れた強い姿勢で調査に臨んでいるからだ。「公取委はカルテル体質が改まらない鉄鋼業界へのいら立ちを強めている」と独禁法に詳しい法曹関係者は解説する。刑事告発されれば1999年の水道管カルテル事件以来。この時告発されたクボタでは社長、会長がそろって引責辞任した。
 鋼板カルテル疑惑が「悪質かつ重大」と判断される材料の一つとして、調査を受けている日鉄住金鋼板が発足する際の経緯を指摘する関係者もいる。同社は新日鉄と住友金属工業が建材薄板事業を統合して06年12月に発足。公取委はその際、2社の事業統合が独禁法上、問題ないか調べる「審査」を実施した。
 公取委は書類審査に加え、取引先へのアンケート調査なども実施。審査が広範囲に及んだため新会社発足は2カ月延期された。こうした厳しい審査に加え、新会社が企業行動方針に「公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行う」との文言を盛り込むなど脱カルテルの姿勢を鮮明にしたこともあり、
公取委は統合にお墨付きを与えた。
 それからわずか1年余り。同社の脱カルテルが見せかけだった疑いが強まったことで公取委が態度を硬化させたのは想像に難くない。大手ゼネコンが脱談合宣言の裏で違法な受注調整を継続していた07年の名古屋地下鉄談合事件(刑事告発された5社に有罪判決、14社に総額19億円の課徴金納付命令)の構図と重なる部分は多い。
 その名古屋事件では公取委の強制調査前に談合を自主申告したハザマが課徴金減免制度によって、刑事告発と課徴金全額を免除された。今回の鋼板カルテル疑惑でも自主申告した企業があるとの憶測が飛び交い、鉄鋼業界の旧態依然の体質に風穴が開く気配もある。
 海を越えた欧州でも昨年、送電設備の国際カルテル摘発で独シーメンスや三菱電機、東芝などに総額7億5千万ユーロ(約1200億円)の制裁金が科せられたが、カルテル情報を自主申告したスイスのABBは2億1500万ユーロ(約340億円)の課徴金を免除された。
 カルテルや談合に対する厳罰化は世界的な流れであり、企業体質改善の必要性は言わずもがな。むしろ自主申告でリスクを回避する、前のめりの対応を企業のトップは求められている。


2008/1/24 毎日新聞

公取委:価格カルテルの疑い、新日鉄子会社など捜索

 溶融亜鉛メッキ鋼板の販売を巡り価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして、公正取引委員会は24日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で新日本製鉄子会社の日鉄住金鋼板など4社を強制調査(家宅捜索)した。建材メーカー向け製品が含まれており、市場規模は年間約3000億円。4社で8割のシェアを占め、住宅価格上昇などにつながった疑いもあるとみて解明を進める。

 捜索を受けているのは同社のほか、鉄鋼大手・日新製鋼▽鉄鋼大手JFEスチール子会社・JFE鋼板▽鋼板メーカー・淀川製鋼所。

 関係者によると、4社は06年、建材メーカーや流通業者と値上げ交渉する前に、1キロ当たり10円前後値上げする合意(価格カルテル)を結んだ疑い。値上げは数回に及んだという。

 溶融亜鉛メッキ鋼板は、空気と鉄との接触を阻み、さびを防止するため、鋼板の表面を亜鉛で加工したもの。自動車や家電、建築物などに幅広く使用されており、公取委はこのうち一部でカルテルを結んだとみている。

 中国の経済成長を背景に鉄鋼需要が年々拡大。これが鉄鉱石などの原料価格上昇につながり、鉄鋼各社は03年以降、各種製品の値上げを繰り返してきた。各社が好業績を確保していることから、公取委は不当な利益を得た悪質事案とみて、担当者や法人の刑事告発を前提にした捜索に踏み切ったものとみられる。

 鉄鋼製品を巡っては03年12月、ステンレス鋼板を巡るカルテルで日新製鋼など6社が同法違反で排除勧告を受けた。さらに昨年7月には土木工事で使われる鋼矢板(こうやいた)と鋼管杭(こうかんぐい)を巡るカルテルの疑いで新日本製鉄など4社が立ち入り検査を受けた。

 捜索を担当しているのは犯則審査部。裁判所から令状を取り捜索する権限(犯則調査権)を付与された部署で、過去に▽汚水処理施設談合(06年5月)▽名古屋市ゼネコン談合(昨年2月)▽緑資源機構官製談合(同5月)−−を刑事告発した。

 4社は強制調査を受けたことを認めており、日新製鋼の広報IRチームは「調査には協力する」としている。

 ◇解説…公取委、刑事告発へ積極姿勢

 公取委がカルテル事件で強制調査に乗り出すのは、昨年7月の塩化ビニール管を巡る事件に次ぐものだ。排除措置命令や課徴金など行政処分を前提とする通常の立ち入り検査と異なり、刑事告発を視野に置いた強制調査は年間1〜3件しかなく、その中での相次ぐカルテル摘発は公取委の積極姿勢の表れと言える。

 公取委が従来最も力を入れてきた談合は、大手ゼネコンが決別を申し合わせるなど一定の体質改善が進んだ。一方で原油などの原材料価格の高騰を理由にした一斉値上げが目立ち、公取委は内偵を進めてきた。

 談合は受注価格が上がり納税者が損失を被る。カルテルは原材料費の上昇分を上乗せして販売する形で、一見すると被害者がいないようにみえる。しかし公取委は「競争すれば値段はもっと下がる」と見ており、安易な値上げを問題視する。水道管ヤミカルテル事件(99年)以降、カルテルの刑事告発は途絶えているが、今後は積極姿勢に転換する構えだ。

日鉄住金鋼板株式会社は、日鉄鋼板株式会社と住友金属建材株式会社/建材薄板部門の統合により、(2006/12/1)発足した会社です。合金めっき、塗装鋼板、金属サンドイッチパネルの製造を行っております。

社内調査委員会の設置について 2008/1/29

 今般、独占禁止法違反容疑により公正取引委員会から強制調査を受けた件につきましては、被疑事実の調査に対し引き続き全面的な協力を行って参りますが、これに関わる事実関係の解明を主体的に進めるべく、本日1月29日開催の取締役会にて、第三者も委員に加わった「社内調査委員会」の設置を決議いたしましたのでお知らせいたします。


2006/10/30 公正取引委員会

日鉄鋼板株式会社及び住友金属建材株式会社による建材薄板関連事業の統合について

 公正取引委員会は,当事会社である日鉄鋼板株式会社(以下「日鉄鋼板」という。)及び住友金属建材株式会社(以下「住金建材」という。)から,両社が予定している建材薄板関連事業の統合について事前相談があったので,その検討を行ってきた。
 当委員会は,相談があった内容に関する当事会社の提出資料等を前提とすれば,本件行為は,独占禁止法の規定に違反するおそれはないものと認められる旨,当事会社に回答を行った。
 なお,当事会社は,本件統合を契機として独占禁止法の遵守を含むコンプライアンスの一層の徹底を図ることとし,その実現のための体制強化を図る旨の上申書を提出している。

当事会社の合算市場シェアは,約40%・第1位(統合後のHHI 約3200・HHI増加分 約600)となる。
市場には,10%以上のシェアを有する競争事業者が複数存在する。
   
2006/12/19 合併審査基準の公取委案 

1 単独行動による競争の実質的制限についての検討
 ユーザーにとっては新製品の発売時や在庫製品の切替え時等に取引先を変更することが比較的容易であること及び10%以上のシェアを有する競争事業者が複数存在し,それら事業者が十分な供給余力を有していることに加えて,今後は,輸入品及び輸入材料による競争圧力が高まっていくと考えられること等にかんがみれば,本件統合後において,当事会社が単独で価格を引き上げることは困難と考えられる。

2 協調的行動による競争の実質的制限についての検討
 ユーザーにとっては新製品の発売時や在庫製品の切替え時等に取引先を変更することが比較的容易であること及び当事会社を含む競争事業者は供給余力を有していること,また,今後は輸入品及び輸入材料による競争圧力が高まっていくものと考えられること等にかんがみれば,本件統合後において,当事会社が他社と協調して価格を引き上げることは困難と考えられる。

第6 結論
 当委員会は,本件統合によって,一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとはならないと判断した。


日本経済新聞 2008/2/23

海外企業に初の排除命令 公取委
 送油ホース国際カルテル ブリヂストンも

 海上での石油輸送に使われるマリンホースを巡り国際カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会は22日までに、独占禁止法違反(不当な取引制限)で英仏伊のメーカー4社とブリヂストンに排除措置命令を出した。国際カルテルで日本企業が欧米独禁当局から巨額の制裁金を科されるケースが相次ぐ中、公取委がカルテルで外国企業に同命令を出すのは初めて。
 外国企業はダンロップ・オイル・アンド・マリーン(英国)、トレルボーグ・インダストリーズ(フランス)、パーカーITR(イタリア)、マヌーリ・ラ一バー・インダストリーズ(同)の4社。日本国内で受注実績のあったブリヂストンのみ課徴金238万円が科された。
 公取委は横浜ゴムの関与も認定したが、違反を最初に自主申告したため課徴金免除、排除措置命令も見送られた。
 公取委によると、横浜ゴムを含む6社は事業撤退した2社とともに、1999年から2007年にかけ、カルテルを締結。それぞれの自国で使われる製品は現地企業が独占受注することを取り決め、中東など他国で使われる製品については英国のコンサルタント会社が調整していたという。発覚を避けるため、会合は米英やタイで開き、各社ごとに「A1」「B1」などの暗号名を使って連絡を取り合っていた。
 マリンホースは海上のタンカーから陸地の貯蔵施設に石油を移すときに使う大口径の高圧ホース。世界市場規模は150億ー200億円で、6社でシェアの大半を占める。同カルテルを巡っては、昨年5月に日米欧の独禁当局がほぼ同時に調査を開始。米司法省が横浜ゴムを除く各社の幹部とコンサルタント会社の経営者ら計8人を逮捕していた。
 ブリヂストンは22日、「命令を厳粛に受け止める」とのコメントを発表した。
 同社は今月12日、マリンホース事業を巡り、中南米や東南アジアの外国公務員に対する計約1億5千万円の不正支出があったことを公表するとともに、不正競争防止法違反(外国公務員への利益供与)に当たる恐れがあるとして、東京地検や米司法省に調査内容を報告。同事業からの撤退を明らかにしている。