2004/6/3 住友化学

情報電子材料分野における事業の「選択と集中」について
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/gnews/news_pdf/20040603_1.pdf

 住友化学は、新しい中期経営計画に掲げる「選択と集中」を加速させる事業方針に従い、このたび、情報電子材料分野において、情報家電向け表示材料および電子部品材料分野に一層資源を集中させていくという方向性をより明確にするため、2つの事業を戦略的に再編するとともに、顧客重視の姿勢をより徹底すべく品質保証体制の充実を含めた組織体制の変更ならびに情報電子化学品研究所の体制強化を行うことといたしました。

(1)事業再編に関しましては、
@
液晶ポリマーの愛媛工場の生産能力(現行3,000トン/年、この他にグループ会社である田岡化学工業鰍ノ1,000トン/年の能力を持つ)を漸次引き上げ、2006〜2007年に現行能力の倍である6,000トン体制を確立いたします。これは、液晶テレビ用バックライト向けのボビン用途など、需要が今後世界的に大きく伸長することをふまえたものです。まず、第一段階として2005年春に愛媛工場の能力を4,500トンへ引き上げることとし、既に増強工事に着手いたしました。

A一方、長らく継続してきた半導体封止材用
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂事業(生産能力7,500トン/年)について、本年10月をもって同業界のリーディングカンパニーの1社である長春人造樹脂廠股*有限公司(本社台湾・台北市)へ事業譲渡し、同社に当社技術等を全面的に継承することといたしました。これに伴い同事業に投入していた人材等の経営資源については、表示材料分野等の重点分野に再配分してまいります。

(2)組織体制の変更につきましては、本年7月を目途に、次のとおり組織の新設と組織名称の変更を実施することといたしました。顧客に満足いただけるマテリアル・ソリューションの実現を目指し、情報電子材料分野の品質保証を一元的に管理・運営できるよう組織体制を強化するとともに、事業の選択と集中を加速させるという事業方針をふまえ、事業部組織の名称を重点分野を明示した名称へと変更するものです。

(新設) 「情報電子化学品質保証室」
(変更前) 「半導体プロセス材料事業部」→ (変更後) 「半導体・表示材料事業部」
      「電子材料事業部」→ 「電子部品材料事業部」

(3)光学機能性フィルムの研究を充実し、部材や加工技術の開発スピードをさらに加速させるとともに、顧客志向の研究開発を一層効率的に進めるべく、2005年春を目途に当社愛媛工場敷地内に新研究棟を設立することといたしました。同研究棟に最新の試作機器、評価機器を導入し、研究員についても中期経営計画期間中に50%程度の増員を図ることにより顧客のニーズに的確かつタイムリーに応えてまいります。

 住友化学は、カラーフィルターや光学機能性フィルムといった液晶材料をはじめ、フォトレジスト、液晶ポリマーなど情報電子材料分野で積極的に投資を行ってきています。こうしたなか、中期経営計画の取り組み方針に則り、より加工度の高い高付加価値製品の開発を中心とする「マテリアル・ソリューション・ビジネス」を推進すると同時に、事業の「選択と集中」を通じて経営資源の最適配分を図り、戦略的かつダイナミックな事業運営を一層強化していく考えです。今回の事業再編、組織体制変更および研究体制強化は、重点分野においてより積極的かつタイムリーに事業展開を進めることにより、顧客満足度の高い「創造的ハイブリッド・ケミストリー」による事業運営を加速していくものです。

 


2004/6/14 中国・ASEANニュース速報

【台湾】長春、住化の封止材用樹脂事業を買収
http://www.e-plastics.gr.jp/japanese/nna_news/news/news0406_3/04061405.htm

台湾第2の石油化学メーカーである長春グループは、住友化学工業から半導体のパッケージング用樹脂事業を買収する。台湾の半導体産業の川上および川下の垂直統合が図られ、競争力の向上につながるとみられる。11日付工商時報が伝えた。

住友化学は3日付の「情報電子材料分野における事業の『選択と集中』について」と題されたプレスリリースで、同事業の長春グループへの譲渡を明らかにしていた。それによると、年産7,500トン規模の半導体封止(パッケージング)材用オルソクレゾールノボラック(OCN)型エポキシ樹脂事業を今年2004年10月、長春グループの長春人造樹脂廠に譲渡し、技術も全面的に継承させる。

長春グループの林書鴻董事長は、買収額は20億台湾元に達するとした。将来的には東京に日本長春人造樹脂を設立し、同地での事業を統括する。

林董事長はまた、
住友化学と英メリゾールの南アフリカにおける合弁会社、住化メリゾール(SMRSA、2001年設立)の買収も行うことを明らかにした。住友化学が同合弁会社に出資する株式80%を取得する。OCN樹脂分野に進出し、生産チェーンをさらに強固なものにするのが狙いとみられる。

長春グループと住友化学は、
高雄県大寮郷の大発工業区に住友培科を設立し、日月光半導体(アドバンスト・セミコンダクター・エンジニアリング=ASE)やシリコンウエア・プレシジョン・インダストリー(SPIL)にパッケージング材料を供給してきた。今回、住友化学は、長春グループの研究開発(R&D)能力を高く評価し、「選択と集中」の方針の下、自ら譲渡を申し出てきたようだ。


日本経済新聞 2004/7/19              発表

中国に液晶材料新工場 住友化学、来年夏に稼働

 
住友化学工業は中国江蘇省無錫市に液晶表示装置(LCD)材料の新工場を建設する。偏光フィルムと導光板の生産ラインを設け、2005年に稼働させる。シャープなど同市に進出している有力顧客の需要拡大を見越して迅速な供給体制を整える。日本、韓国、台湾の生産拠点と連携、電子材料部門の連結売上高を03年の1250億円から06年には2500億円に倍増させる計画だ。
 偏光フィルムは液晶画面の表示に不要な光を遮断し、導光板は蛍光管(バックライト)が発する光を画面全体に均一に反射させる役割を担う。ともにLCDの中核材料となる。住友化学は今月末に全額出資子会社「住化電子材料科技(無錫)」(資本金900万ドル=約10億円)を設立。来年夏には同市内の約40万平方メートルの敷地に、月産能力1000万枚の偏光フィルム工場と、年産能力5千トンの導光板工場を完成させる。
 3年以内に資本金を7300万ドル(約80億円)まで増額。06年夏には生産能力を偏光フィルムで月3500万枚、導光板で年1万トンに拡大する。液晶材料の生産拠点としては中国最大規模となる。
 新工場は当面、偏光フィルムのロールを日本、韓国、台湾から調達。パソコンや携帯電話の画面サイズに切り取り最終加工する製品化工程を手掛ける。2−3年後には偏光フィルムのロールそのものも新工場で生産する予定で、総投資額は100億円を超えるとみられる。
 住化は、
上海の全額出資子会社でも偏光フィルムの製品化工程を手掛けているが、敷地が手狭で.労賃も上昇しているため、無錫を主力拠点に育成する。導光板の海外生産は初めてとなる。 アジア各地の需要変動に応じて日、韓、中、台の4生産拠点間で必要な液晶材料を臨機応変に融通し合う。住化は01年秋に液晶材料事業に参入して以来、韓国を中心とする4拠点に累計1100億円を投資してきた。


2004年7月20日 住友化学

中国無錫市における情報電子材料拠点の設立について
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/gnews/news_pdf/20040720_1.pdf

 住友化学はこのほど、中華人民共和国江蘇省無錫市に「住化電子材料科技(無錫)有限公司」を設立し、情報電子材料の新工場を建設することといたしました。
 住友化学は、情報電子材料を重点分野として、特に液晶関連部材について、需要が大きく拡大しているアジアでの生産拠点の拡充に積極的に取り組んでいます。中国においても需要の急速な拡大が予想されることから、生産拠点の拡充を検討してまいりましたが、このほど無錫市に新工場を建設することを決定し、同市の国家ハイテク産業開発区内に約40万m2(12万坪)の土地使用権を購入する契約を7月13日に同市国土資源局と調印いたしました。無錫市は、長江デルタ地域で主要都市の一つであり、上海・蘇州・常州等と高速道路や鉄道で直結している上、同地域には多数の情報電子産業が存在し、今後の成長が期待されています。さらに同市にはシャープ等有力重要顧客が進出しており、当社は今回の拠点確立により製品供給と共に顧客サポート体制を一層強化し、中国における事業の拡大を図ってまいりたいと考えています。
 新会社は、7月下旬までに法的手続きを完了し、建設許可取得後、直ちに工場建設に着手する予定です。まず、液晶用導光板の製造工場(能力5千トン/年)と偏光フィルムの製品化工場(能力10百万枚/月)を建設し、2005年夏の操業開始をめざします。偏光フィルムについては、中国における液晶パネルの需要が急速に伸びており、需要家の要請に応じるために、需要の伸長に応じて逐次製品化工場の増強を実施するとともに、大型液晶パネルの立ち上げに応じて2〜3年後を目途に原反工場を建設する予定です。導光板については、第一工場完成後直ちに第二工場の建設に着手し能力を倍増する計画です。
 新会社は、急速に拡大する中国の液晶パネルの需要に対応し、順次各種液晶用部材のプロダクトラインを拡充してゆく予定であり、カラーフィルター工場の建設も検討するとともに、技術開発センターや物流拠点としての活用も視野に入れ、中国における住友化学の情報電子材料分野の戦略拠点として育成を図ります。
 なお、当社は現在、上海の住化電子材料科技(上海)有限公司において偏光フィルムの製品化工場を運営していますが、同地での労務費の上昇や要員確保の困難さ、更に増設余地もないことから、将来は順次製造を無錫へ移管し、上海は技術開発に重点を移し、試作品や少量品種の生産基地として活用してゆく予定です。
 住友化学は、今回の中国における拠点整備により、日本・韓国・台湾と合わせた四つの拠点で今後急速に拡大するアジア地域の液晶関連部材の需要に柔軟に対応し、各地の顧客に迅速かつ充実した需要家サービスを実施できる体制を整え、これらを最大限に活用し重点事業である情報電子材料事業を成長させてまいります。

 新会社の概要は以下の通りです。

1.会社名   住化電子材料科技(無錫)有限公司
2.設立   ‘04年7月末
3.資本金   当初9百万ドル(10億円邦貨相当)
3年以内に漸次73百万ドル(80億円邦貨相当)まで増資の予定
4.設備能力   第一期(‘05年夏)
 導光板     5,000トン/年
 偏光フィルム 10百万枚/月
第二期(‘06年夏)以降(数字は第一期を含む累計)
 導光板     10,000トン/年
 偏光フィルム 35百万枚/月
5.人員   約300名(‘05年夏)
6.社長   宮竹賢一

日本経済新聞 2005/1/20

住友化学 液晶関連に100億円投資 カラーフイルター台湾に新工場

 住友化学は液晶パネル関連部材を中心とする情報電子化学部門に約100億円を投資する。中核部材である液晶カラーフィルターの新工場を台湾に設けるほか、韓国では同部材を3割増産。日韓の生産拠点に研究開発センターも新設する。液晶パネルは昨夏から需給調整が続いているが、同社は中長期的には大幅な需要増を見込み、経営資源を積極的に投入する。
 台湾で生産するのは携帯電話向けに需要が伸びている「第二世代」と呼ばれる小型液晶パネル用のカラーフィルター。約50億円を投じて、台北郊外の新竹科学工業園内に月産5万枚の工場を9月に完成させる。需要家である台湾の大手液晶パネルメーカーの既設クリーンルームを利用するため、建設費を40億円程度節減できるという。
 韓国では今夏までに大型テレビ用カラーフィルターを生産している平沢市内の2工場の月産能力を、現在の合計12万枚から16万枚に引き上げる。カラーフィルター用材料などを生産している韓国・益山市の生産拠点には約5億円を投資し、4月までに次世代の液晶に使う材料を開発する研究所を設立する。
 日本では液晶部材生産拠点の愛媛工場に約45億円を投資する。4月までに次世代の液晶用偏光フィルム開発などを手掛ける研究所を設けるほか、今秋までに偏光フィルムの塗工工場や品質管理センターも新設する。
 総合化学大手は石化事業をめぐる国際競争が厳しさを増す中、付加価値が高い電子材料事業を強化している。住友化学の04年9月中間期の情報電子化学分野の売上高営業利益率は15.6%に達し、石油化学の2.3%を大きく上回った。07年度には同部門で2500億円(04年度予測は1850億円)の連結売上高を目指す。
 液晶パネルは韓台メーカーの攻勢にさらされているが、韓台勢も構成部材の多くは圧倒的な強さを持つ日本企業製を活用している。


2005年1月20日 住友化学

情報電子化学部門の拡充について
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/gnews/news_pdf/20050120_1.pdf

 現在、液晶業界においては、大型テレビを中心とした市況の軟化と在庫調整等により需要の低速が続いておりますが、中長期的には大幅な伸長が期待されることから、当社は引き続き積極的に経営資源を投入し、中核事業として育成していく方針です。
 このため、下記の諸策を実施し、顧客サービスの充実を図ると共に、コスト競争力を高め、研究開発のスピードをあげて、事業の順調な拡大を図ります。

(T)カラーフィルター
(1)住華科技股.有限公司(台湾)において、新工場を建設
  場所:新竹科学工業園区
  能力:5万枚/月(第二世代サイズ)
  完成:2005年9月
  投資額:約50億円

 台湾における需要家の強い要請により、当社は同社工場内の既設クリーンルームの貸与を受けて新工場を建設いたします。現在、台湾へは、日本の新エスティーアイテクノロジー鰍ゥら全量出荷していますが、現地生産によりコスト競争力の向上を図ると共に、今後の需要増に対応してまいります。
なお、新エスティーアイテクノロジーの供給余力は、今後の国内外の需要増加に充当いたします。

(2)韓国・東友STI鰍フ能力増強
 現在、当社は韓国に2つの第五世代カラーフィルター工場を持ち、生産能力は合計12万枚/月ですが、生産性の向上ならびにボトルネック解消のための少額投資により、本年夏頃までに合計16万枚/月まで生産能力を増強を実施いたします。これにより、コスト競争力の向上と将来の需要増加に対応いたします。

(U)偏光フィルム
(1) 能力増強・拠点拡充
 当社は現在、韓国、台湾においてそれぞれ第二期工場を建設中ですが、本年3月にこれらが相次いで完成いたします。これにより、当社の合計生産能力は、既存の15百万m2/年から26百万m2/年へ大幅に増加します。これらの能力拡大は、今後、伸長が期待される大型テレビ用途への供給に対応するものです。
 また、需要が急速に拡大している中国市場に対応するために現在、無錫に製品化工程の工場を建設中で、本年7月に完工いたします。さらに、中小型品のカラー化が進展する中で需要の伸びが著しい中国華南地区での生産拠点を確保するために、近く香港に新会社を設立する準備を進めています。

 これらの市場における拠点の整備に加え、研究開発のスピードアップ、品質保証体制の充実、コスト競争力の向上のため、下記の施策を実施いたしました。
@ 情報電子化学品研究所(光学製品)
 現在、大阪と愛媛に分散している研究員を統合すると共に、人員の拡充、研究機器の充実を図るために、愛媛工場内大江地区のフィルム工場に隣接して研究所の新棟を建設中です。
  完工:2005年4月
  投資額:10億円

A 品質管理センターと塗工工場の新設および新生産管理システムの導入
  完工時期:本年秋までに順次
  総投資額:約30億円

 原反からチップカットまでの一貫生産体制を実現し、品質保証、デリバリー期間の短縮、コスト競争力の向上等大幅な改善を図り顧客満足度を向上させます。
 品質管理センターはクリーンルームを新設し、高度な検品装置を導入し、原料や仕掛品の不良品が次工程に流れるのを事前に防止します。
 また、現在リンテック社新宮工場(兵庫県)で実施している塗工工程を当社愛媛工場のフィルム工場隣接地に誘致し、生産のリードタイム短縮を図り、品質管理能力を向上させます。生産は引き続きリンテック社に委託しますが、当社工場と同様の管理を実施するため、クリーンルームやその他必要なインフラを充実するための投資を実施します。
 新しい生産管理システムは、受注から配送までをオンラインシステム化することにより、各工程での生産状況、部材の供給状況、製品在庫の状況等を随時把握し、在庫の縮減、生産リードタイムの改善、顧客の生産要望へのタイムリーな応答を可能にします。

(V)東友ファインケム研究所新設
 韓国東友ファインケム(株)益山工場に新たに研究所を建設中であり、液晶材料(顔料レジスト、エッチャント)や半導体用フォトレジスト(主としてKrF),液晶用レジストの研究開発の拡充を図ります。
  完工:2005年4月
  投資額:約5億円

 当社は、情報電子化学部門を当社の第三の柱として育成し、中核事業としての基盤を確固たるものにしてまいります。2004年度の情報電子化学部門の連結売上高は1,850億円を見込んでいますが、2005年度は2,300億円、さらに中期経営計画最終年度となる2006年度には2,500億円を計画しており、この達成を確実なものとするため、上記の諸施策を確実に実施してまいりたいと考えています。


2005/5/16 住友化学

住友化学、ダウから高分子有機EL用材料事業を買収
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/gnews/news_pdf/20050516_1.pdf

 住友化学は、米国ダウ・ケミカル社から高分子有機EL用材料事業を買収いたしました。当社はダウ社の高分子有機EL用材料「LUMATION」に関する知的財産および技術を全て承継いたします。
 当社は、情報電子化学を重点分野の一つと位置付け、中でも表示材料分野に注力していますが、今回の買収はこの事業戦略の一環であり、これにより同事業を一層、強化することになります。
 当社は、長年蓄積してきた表示材料技術および導電性ポリマー技術を活かして、高分子有機EL用材料の開発を行っており、青色材料について半減期1万時間を達成する一方、現在、英国ケンブリッジ・ディスプレー・テクノロジー社(CDT)との協力の下、デンドリマーなどの高効率新規材料の開発も進めております。今回の買収で、高分子有機EL用材料の品揃えを拡大すると共に、当社の独自技術にダウ・ケミカルの技術を融合することにより、新規材料開発を促進いたします。
 フラットパネルディスプレーの中で有機ELは、バックライトを必要とせず、広視野角かつ高コントラストな画像表示が可能であり、現在広く使われているLCDに比べて残像のない高速動画表示が可能であるなど、数多くの優位性があります。中でも高分子有機ELは、インクジェットプリンターを用いた印刷による画素形成が可能であり、真空蒸着による画素形成工程を必要とする低分子系有機ELに比べ、より効率的なディスプレー製造が可能です。
 高分子有機ELの用途としては、携帯電話や携帯情報端末(PDA)などの携帯機器向け中小型ディスプレーなどが挙げられます。また、将来的には、大型テレビやモニター等の大型ディスプレイ用途への展開も可能です。当社としては、ディスプレーだけでなく、さらに照明などにも用途を拡大してまいりたいと考えております。


2005年9月1日 住友化学

大型液晶テレビ用偏光フィルム設備増設
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/gnews/news_pdf/20050901_1.pdf

 住友化学はこのほど、急増する大型液晶テレビ用偏光フィルムの需要に対応するため、日本と韓国においてそれぞれ1系列600万u/年と2系列1,200万u/年の合計1,800万u/年の大幅な設備増設を実施することを決定いたしました。
 大型液晶テレビの販売は、その性能の向上と価格低下に伴い大きく伸長し、市場が本格的に立ち上がってまいりました。当社は、予てから大型液晶用偏光フィルムの品質向上に向けた研究開発を続けてまいりましたが、この度、大型液晶テレビ向けに開発されたポリシクロオレフィン系位相差フィルムに独自の技術改良を加えることにより、格段の性能向上と価格競争力強化を実現する目処を得ました。今後はこのフィルムが、大型液晶テレビ用途の主流となるものと期待しています。
 今回の設備増設は、最新鋭の設備と革新的な技術を投入し、延伸・塗工から製品化までの一貫設備として生産性を大幅に向上させると共に、品質維持に重点を置いた品質保証体制にも種々の最先端技術を導入したいわゆる理想型の工場を建設するものであります。今後の一層、厳しくなると予想される品質競争に積極的に対応してまいります。
 本設備完成後は、当社の偏光フィルムの生産能力は
現有の日本(800万u/年)、韓国(800万u/年)、台湾(800万u/年)の能力と合わせて合計4,200万u/年となり、急増するフィルムの需要に対応し、需要家の安定供給に対する要望に応える生産体制を整えてまいります。
 また、韓国での増設のうち1系列は、今後急増すると予測される中国市場での需要に対応する計画です。需要動向を見ながら愛媛工場にてさらに1系列増設、台湾または中国(無錫)での増設についてもいつでも着手できるように計画を詰めているところであります。
 当社は、今後とも需要家のニーズに応じて機敏に供給体制の整備に努め、液晶表示材料関連ビジネスの拡大を図ってまいります。

《設備増強の概要》
1. 設備能力
   愛媛工場          1系列 600万u/年
   韓国(東友ファインケム) 2系列 600万u/年 計1,200万u/年

2. 完成時期
   愛媛工場 06年 8月
   韓国(東友ファインケム) 06年 5月(1系列目)、06年10月(2系列目)


2005年10月31日 Chemnet Tokyo               CDT発表

住友化学が高分子有機EL材料の生産へ
英CDTと11月にも折半会社を設立

 住友化学は薄型デスプレイ用に成長が期待されている高分子有機EL(エレクトロルミネッセンス)の発光材料を大阪で生産することになった。英CDT(ケンブリッチ デスプレイ テクノロジー)と折半で合弁会社を11月にも設立する。新会社の社名はSumationで、本社は東京。日本と英国に研究所をもち、製造は住化大阪工場に委託する。

 住化は筑波研究所で有機EL発光材料の研究を進めてきたが、高分子型の製造技術を01年に米ダウから導入するとともに、発光材料を塗布するインクジェット方式でCDTと共同研究(デンドリマ)を行ってきた。

 高分子型では低分子型のように真空蒸着設備がいらず、その分コストが安くなる。また動画の反応が早くテレビや携帯電話、DVDなどに適しているといわれる。有機ELは自家発光型なのでバックライトが要らず液晶パネルなどに比べ、省エネルギーが可能。高精彩で視野角が広いのも特徴である。

 有機ELの発光材料は寿命が短いのが難点とされてきた。しかし、同社ではこの問題を解決、30〜40型のテレビ用にも使えるようになったとしている。当面の生産は数10キログラム程度、将来はトンクラスの規模にしたい考え。

 高分子有機ELの発光材料は世界でダウ、コビオン、住化の3社が手がけてきたが、
ダウはすでに住化に製造技術を売却しており、今後は日欧2社が取り組むことになる。

 低分子有機EL材料ではさる10月、出光興産が青色発光で、輝度半減寿命2万3,000時間(従来の2.3倍)を達成している。住化は筑波研究所でこれまでにEL材料の生産を行っているので、ユーザーとの折衝は年内にも始めたい意向である。


Covion(コビオン)

コビオン社(Covion Organic Semiconductors GmbH)はドイツ フランクフルトに位置し、 1999年4月に設立された
AveciaとCelanese Venturesとのジョイントベンチャー(合弁企業体)です。
コビオン社は有機ELディスプレイやオプトエレクトリック市場に対し高機能性材料の設計、 製造及び供給を行います。


2005/10/19 CDT 

ANNOUNCEMENT OF NEW 'SUMATION' JOINT VENTURE FOR POLYMER OLED MATERIAL SUPPLY
http://www.cdtltd.co.uk/press/current_press_releases/408.asp

Cambridge Display Technology (CDT) and Sumitomo Chemical have announced the name of their proposed joint venture operation: the company will be called Sumation KK. Sumation(TM) will develop and supply advanced polymer OLED (P-OLED) materials and formulated inks for use in commercial P-OLED display and lighting applications.

The intention to form Sumation was announced in May this year, and completion is expected around the end of October.

Sumation will be based in Tokyo, with R & D in Japan and the UK, and materials will be produced on behalf of Sumation by Sumitomo Chemical at their plant in Osaka, Japan, taking advantage of Sumitomo's extensive experience in fine chemicals manufacture.

Dr Susumu Miyazaki has been named as President of the company, which is staffed by personnel from both CDT and Sumitomo. Dr Scott Brown, formerly CDT's VP of R&D, has relocated to Japan as Executive Vice President to ensure a strong interaction between the UK and Japan-based R & D groups and co-ordination between CDT and Sumitomo.

Prior to the announcement of the jv, Sumitomo Chemical purchased the lumation^(TM) business from The Dow Chemical Company, and Sumation has access to what is believed to be the largest portfolio of P-OLED material development expertise and intellectual property (IP) in the industry. This includes both the current best-performing full colour P-OLED materials based on polyfluorene chemistry, and high-efficiency materials based on dendrimer chemistry, the technology which CDT gained through the acquisition of Opsys in 2002.

Sumation will combine the high quality chemicals manufacturing experience of Sumitomo with the leading edge P-OLED development know-how of CDT and Sumitomo. Through Sumation, display and lighting companies will have access to the very best performing materials. The synergies which flow from combining the experiences of the companies should increase the pace of development of P-OLED materials, and in turn this is expected to accelerate the adoption of the technology in the next generation of consumer products such as mobile phones, portable DVD players and ultimately televisions.

About CDT
Cambridge Display Technology is a pioneer in the development of light emitting polymers (P-OLEDs) and their use in a wide range of electronic display products used for information management, communications and entertainment. P-OLEDs are part of the family of organic light emitting diodes, or OLEDs, which are thin, lightweight and power efficient devices that emit light when an electric current flows. P-OLEDs offer an enhanced visual experience and superior performance characteristics compared with other flat panel display technologies such as liquid crystal displays, and have the key advantage that they can be applied in solution using printing processes. Founded in 1992, the company is headquartered in Cambridge, UK and listed on the US Nasdaq stock exchange under the symbol 'OLED'.

About Sumitomo Chemical
Sumitomo Chemical Company, Limited is one of Japan's leading chemical manufacturers, offering a diverse range of products, including basic chemicals, petrochemicals, fine chemicals, IT-related chemicals, agricultural chemicals, and pharmaceuticals. Established in 1913, its products are now sold in more than 100 countries. Sumitomo Chemical's strong basic and applied research programs have yielded numerous products that have gained top market shares in global markets. More information is available about Sumitomo Chemical at: www.sumitomo-chem.co.jp/english/.


2005119日 住友化学

液晶ポリマー関連米国ベンチャーへ出資
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/gnews/news_pdf/20051109_2.pdf

住友化学は、液晶ポリマー(以下LCP)による中空パッケージ事業(以下「LCP中空パッケージ」)のベンチャー企業であるクウォンタム・リープ・パッケージング社(Quantum Leap Packaging Inc.、本社:米国マサチューセッツ州、以下QLP社)が新規に発行する株式を購入し、同社へ出資することといたしました。出資額は20百万米ドルで、同社発行済み株式の20.7%の株式を保有することになります。また、QLP社が開発した「LCP中空パッケージ」の日本及び韓国での非独占的販売権を得て、市場でのマーケティング活動を通じて事業の将来性を見極めた上、本事業への本格的な参入を図りたいと考えています。
LCPは、耐熱性、精密成型性に優れた樹脂で、主にコネクターなどの電子部品に使用されています。当社は、LCP事業を情報電子化学部門の戦略事業として位置付け、国際競争力のある製造技術と優れた製品性能により、世界各地域において積極的に事業拡大を推進しています。また、従来からLCPの特性をいかした新規アプリケーションの開発、川下への展開について独自の技術で開発を進めてきました。
一方
QLP社は、次世代技術として注目される「LCP中空パッケージ」の研究・開発を進めてきましたが、従来のLCPの性能を大幅に上回る高機能LCP(商標名:Quantech)の開発に成功すると共に、必要な成型加工技術・品質評価技術を開発し、「LCP中空パッケージ」として、欧米を中心とする大手電子部品メーカー向けに事業化を進めています。近く先行する顧客での評価を完了し、商業ベースの供給を開始する予定です。
中空パッケージは、デジタルカメラ・携帯電話・コピー機等の中核部品となる半導体(CCDイメージセンサー等)を外部環境から保護するために用いられます。これらの用途には、現在はセラミック製が主に使用されていますが、電子製品のダウンサイジングに伴い、微細かつ薄肉で複雑な形状が求められています。「LCP中空パッケージ」は、その優れた成型性及び加工性により、薄肉化、軽量化、形状・設計の自由度の向上、さらに微細化配線を実現できることから、将来的にはセラミック代替の主役になる可能性があると期待されています。
当社は今回、
QLP社の優れた技術・開発力を活用することで研究期間を短縮し、「LCP中空パッケージ」の早期事業化を進め、LCP事業の拡大を図っていきたいと考えています。


2005119

住化電子材料科技(無錫)有限公司の設備増強について
http://www.sumitomo-chem.co.jp/japanese/gnews/news_pdf/20051109_3.pdf

住友化学はこのほど、急速に拡大する中国の液晶パネル(LCD)用部材の需要に対応するため、「住化電子材料科技(無錫)有限公司」において、偏光フィルムの製品化工場、及び液晶テレビ用拡散板工場を増強することとしました。
LCD市場は、パソコンやモバイル電子機器用などの中小型に加えて、大型液晶テレビ用の需要が急速に拡大すると共に、液晶パネルメーカーがモジュール工程を中国へ移管する動きが急速に進んでおり、顧客からは、開発やデリバリーをタイムリーに行えるよう、中国で供給体制を拡充することを強く求められています。
当社は、中国においては上海、無錫を製造拠点として供給体制充実に努めてきましたが、今回、こうした要望に応えるために、量産工場として位置付けている無錫地区で、偏光フィルムの製品化と拡散板の能力の増強を決定いたしました。
偏光フィルムの無錫での製品化能力は、今回の増強後、中小型では現状比約
2.5倍の50百万枚/(2インチ換算)、液晶テレビ用大型品では同じく約8倍の1.6百万枚/(32インチ換算)の能力となります。また、液晶テレビ用拡散板工場(能力5千d/年)については、現在、第一系列を建設中であり、稼動開始を2006年2月に予定していますが、第二系列(能力5千d/年)を新設することにしたもので、2006年春の完成を予定しています。
今後、無錫においては、偏光フィルムの製品化工場の更なる増強、原反工場の新設、液晶ポリマー(LCP)コンパウンド工場の建設等を検討する一方、華南地区においても新たな生産基地の選定を進めており、無錫・上海・華南地区の中国内3拠点で連携してより高い顧客サービスを提供し、拡大する中国の需要に的確に対応していく計画です。


日本経済新聞 2006/3/2

住友化学 液晶素材生産能力3倍 
 中国に工場、日韓も増強 500億円投資、日東電工を追撃

 住友化学は約500億円を投じ、液晶テレビの主要部材の偏光フィルムを増産する。シャープや韓国サムスン電子の増産計画を受け、日韓で2007年に大型テレビ向けの製造ラインを増設。中国でも工場を新設する。建設中のラインを含む生産能力は現在の3倍に拡大。ブラウン管から液晶への切り替えが進み、液晶素材の需要が急増していることに対応する。
 偏光フィルムは一定方向にだけ光を通す液晶パネルに不可欠な部材。同社は日韓で建設中の3ライン(合計年産1800万平方メートル)にさらに4ライン(同3400万平方メートル)を新設する。4ラインが完成する07年夏時点の生産能力は年7600万平方メートルに達する。
 新設する4ラインは需要が急増する32型以上の大型機専用。これまで中心だった中小型機やパソコン向けからの製品シフトを加速する。
愛媛県新居浜市の工場には1ラインを新設してシャープの増産に対応。韓国平沢市の工場では2ラインを追加し、同国で液晶パネルを共同生産するサムスン電子とソニーなどへの供給能力を高める。
 
中国の工場は江蘇省無錫市に新設。1ラインを稼働させる。シャープなどは中国での需要拡大をにらみ、同国での液晶テレビの組み立てを拡大。住友化学は今後中国に日韓からパネル生産移転が進むとみて、供給体制を整える。中国には偏光フィルム裁断の加工拠点はあったが、フィルム本体の工場は初めてという。
 同杜は偏光フィルムで
世界2位の25%のシェアを持ち、積極的な投資で首位の日東電工を追撃する構え。シェア50%の日東電工は偏光フィルムなどに約1千億円を投資する計画を2月に打ち出しており、住友化学も昨年9月の3ライン新設決定からわずか半年で追加投資を決めた。
 ただ今回の投資でも、シャープの亀山第二工場などが稼働する08年以降の需要には対応しきれない見込み。さらに08年をめどに追加投資する方向で検討している。

偏光フィルム
 360度の全方向に振動する光のうち、すだれのように一定方向に振動する光だけを通過させる機能を持つ。後部のバックライトに発光させ、個々の液晶の向きを変えることで画面上の細かな明暗を調整する液晶テレビに欠かせない部材。バックライトの手前と画面前面の2カ所に使う。
 日東電工と住友化学のほかに
サンリッツ(東京・板橋)、ポラテクノ台湾オブティマックスが生産。液晶テレビを生産する韓国LGグループも内製している。視野角を広げる位相差フィルムなどとともに「光学フィルム」とも呼ばれる。

サンリッツ:旧称 三立電機株式会社 日本における偏光板パイオニア企業
http://www.sanritz-corp.co.jp/

ポラテクノ
日本化薬と有沢製作所折半出資で液晶表示用偏光フィルム等を製造
http://www.polatechno.co.jp/

Optimax  力特光電科技
http://www.optimax.com.tw/English/index.asp


2006年3月2日 住友化学

大型液晶テレビ用偏光フィルム設備増設
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1141262649.pdf

 住友化学はこのほど、大型液晶テレビ用偏光フィルムの原反について、新たに日本で1系列、韓国で2系列、中国で1系列の計4系列、合計年産能力3,400万uの大幅な設備増強を実施することを決定いたしました。完成は2007年6月から7月を予定しています。当社は既に2005年9月に日本と韓国で3系列(年産能力1,800万u)の増強を決定し、現在、工事を進めていますが、既存設備とこれらの能力増強を合せた当社の偏光フィルムの合計生産能力は年産7,600万uとなります。また、液晶パネルメーカーが大型テレビ用パネルの工場展開を中国で進めていることから、偏光フィルム原反の設備増強に加えて、大型テレビ専用の加工工場の建設を台湾、韓国に次いで中国でも進めてまいります。
 大型液晶テレビは、その性能の向上と価格低下により非常に早いスピードで普及してきています。そうした中、液晶パネルの主要部材である偏光フィルムの需要は、画面サイズの大型化とあいまって急増しており、供給能力の確保が強く望まれる状況にあります。一方、当社がかねてから技術開発を進めてきた大型液晶テレビ用の偏光フィルムは、液晶パネルメーカーからその品質・性能について高い評価を頂いており、この分野のスタンダード製品となりつつあります。
 このような状況から、当社は、現在、進めている設備増強を早期に完成させることに努めると共に、追加の投資により生産能力を大幅に増加させることが必要と判断いたしました。今回の設備は、大型テレビ専用系列とし、最新の技術を織り込み、生産性と品質安定性を一段と向上させる計画です。
 この増強により、当社は、日本で4系列、韓国で6系列、台湾で2系列、中国で1系列の偏光フィルム生産設備を備えることになり、液晶パネルメーカーの生産拠点展開に応じて、グローバルに製品を供給できる体制が一段と拡充されます。当社は、これにより偏光フィルム事業のさらなる拡大をめざしてまいります。

《設備増強の概要》
1. 設備能力
   愛媛工場 1系列 850万u/年
   韓国 2系列 850万u/年 計1,700万u/年
    (東友ファインケム梶j
   中国 1系列 850万u/年
    (住化電子材料科技(無錫)有限公司)

2. 完成時期
   愛媛工場    07年 6月
   韓国       07年 6〜7月
    (東友ファインケム梶j
   中国       07年 7月
   (住化電子材料科技(無錫)有限公司)


2006年8月7日 住友化学

ポーランドにおける情報電子材料拠点の設立について

 住友化学株式会社(以下、住友化学)はこのほど、ポーランド北部トルン市郊外に「Sumika Electronic Materials Poland Sp. Z o.o.」を設立し、情報電子材料の新工場を建設することを決定いたしました。
 住友化学は、情報電子材料を重点分野として、特に液晶関連部材について、グローバルな生産拠点の拡充に積極的に取り組んでいます。既に、日本、韓国、台湾、中国に液晶偏光フィルムを中心とした液晶部材の生産拠点を保有しておりますが、欧州においても、大型液晶テレビ用の需要が急速に拡大するとともに、液晶パネルメーカーの欧州地域進出の動きが加速化していることから、同地域での生産拠点設立を検討してまいりました。このほど、有力顧客である
シャープ株式会社が進出しているポーランド北部(トルン市郊外)のポモルスカ経済特区内に新工場を建設することとし、今後、製品供給及び顧客サポートを強化し、欧州における事業の拡大を図ってまいります。
 新会社は、8月下旬までに法的手続きを完了し、建設許可取得後、直ちに工場建設に着手する予定です。まず、液晶用偏光フィルムの製品化工場(能力500千セット/月)と拡散板の製造工場(能力5千トン/年)を建設し、2007年夏の操業開始をめざします。また、偏光フィルム・拡散板ともに、主要液晶パネルメーカーの需要の伸張に応じて逐次増強を実施する予定です。
 住友化学は、今回の欧州における拠点構築により、欧州に進出する主要液晶パネルメーカーに液晶関連部材を迅速に供給し、柔軟で充実した需要家サービスを実施できる体制を一段と拡充いたします。当社は、これらを最大限に活用し、重点事業である情報電子材料事業のさらなる拡大をめざしてまいります。

 新会社の概要は以下の通りです。
 1.会社名 Sumika Electronic Materials Poland Sp. Z o.o.
 2.設 立 2006年8月下旬(予定)
 3.所在地 ポーランド共和国ポモルスカ県トルン市ヴィソミッツア郡
 4.土 地 約200千u(将来の拡張分含む)
 5.設備能力 第1期
     偏光フィルム 500千セット/月(37インチ換算)
     拡散板 5千トン/年
 6.生産開始 2007年夏(予定)
 7.人 員 当初約250名
       400名程度迄逐次増員の予定


日本経済新聞 2007/7/10

液晶テレビ向けデジタル素材 住化、東欧生産上積み
 ポーランド新工場 来夏、年1万トンに

 住友化学はポーランドでの液晶テレビ向け主要素材「拡散板」の生産計画を上方修正する。今年11月に
年5千トン規模の新工場が稼働するが、約15億円を追加投資して生産量を年1万トンに引き上げる。欧州でブラウン管から薄型テレビヘの買い替えが進み、シャープなど家電各社が東欧生産を拡大しているのに対応する。住化は拡散板で4割強の世界シェアを握る。成長市場で供給体制を整え首位固めを狙う。
 新工場はポーランド北部のトルン市に建設中。拡散板の第2ラインは2008年夏に新設する。新工場では偏光フィルムの生産も予定しており、追加投資15億円を含めた総投資額は70億円。第2ラインのフル稼働後は新工場で年間150億円の売り上げを見込む。
 拡散板は液晶パネルの背面にある蛍光管の光を均一に広げる役目をする。住化は日本、中国、韓国に拡散板の生産拠点を持ち、ポーランドは4カ所目になる。
 薄型テレビの価格下落で拡散板を含むデジタル素材の採算は全般に悪化している。住化は事業収益を改善するため、様々な機能を盛り込み高い利幅を確保できる拡散板を開発中で、ポーランドの第2ラインは新型拡散板の量産にも対応できるよう設計する。
 欧州では薄型テレビヘの買い替え需要が拡大、ポーランドやスロバキアなど東欧地域ではシャープ、ソニー、サムスン電子、LGフィリップスなどが液晶テレビ・パネルの生産拠点め新増設を進めている。これに合わせて日本のデジタル素材メーカーの東欧進出も相次いでいる。液晶用の光学フィルムで世界最大手の日東電工がチェコに新工場を建設し、08年3月をめどに稼働する計画を打ち出している。

▼拡散板
 液晶パネルの主要部材の一つ。半透明の樹脂製で、液晶パネルの背面にある蛍光管の光を散乱・拡散させバネル全体に均一に広げるのに使う。紫外線をカットしてパネルの変色を防ぐ役目も果たす。最近では拡散板の表面を加工してレンズの機能を持たせ、パネル全体め部品点数を削減する試みもある。住友化学や旭化成など日本メーカーが高いシェアを持つ。


2007/7/31 住友化学

Cambridge Display Technology Inc.社の完全子会社化について

 住友化学は、本日、高分子有機ELのデバイス開発のパイオニアであるCambridge Display Technology Inc.社(以下「CDT社」)を買収し、住友化学の完全子会社とすることで、CDT社と合意いたしました。買収予定金額は約285百万米ドルです。CDT社は、本年秋頃に開催予定のCDT社の株主総会で本件に関する決議を得た後、住友化学が買収対価をCDT社の株主に支払うことにより住友化学の完全子会社となります。なお、CDT社の筆頭株主でありますKelso & Company社およびCDT社の株式を保有する同社経営陣、その他の株主等(合計で普通株式の約43%相当分を保有する株主)と住友化学の間で、株主総会において当該買収提案に賛成の議決権行使を行う旨の合意をいたしております。
 有機ELデバイスは、高精細で視認性が高く、自発光であるため高速応答性に優れ動画が美しく、また、低消費電力で環境に優しい表示デバイスです。特に高分子有機ELは、発光層の形成方法として溶液系での印刷法が適用できるため、低コスト高生産性で大型パネルが製造でき、次世代のディスプレイとしての大型テレビ、あるいは照明などを中心に今後市場が急速に成長するものと予測されています。
 住友化学は、表示材料を重点事業領域の一つとして位置付け、液晶表示装置用部材の事業拡大を進めるとともに、高分子有機ELを始めとする次世代表示材料の開発に注力しています。高分子有機ELについては、1989年に開発を開始しましたが、2001年にCDT社の関連会社と発光材料に関するライセンスを含む技術援助契約を締結するとともに、2002年には出資も行いました。さらに、2005年には、CDT社の関連会社と発光材料の開発、製造、販売の合弁会社「サメイション株式会社」を設立し、高分子有機ELの事業化に向けて密接な協力関係を築いてまいりました。現在、発光材料の性能は著しく向上し、ディスプレイ用途等での実用レベルに到達しています。
 CDT社は、有機ELに関するデバイスおよび材料の基本的な知的財産を多数保有しており、一方、住友化学は、材料開発に関する高度な知見に加え、化学素材全般にわたる豊富な技術や人材を有しております。今回の買収で、両社の経営資源が融合され、発光材料やデバイス関連材料の性能向上とともに、デバイス製造のための実用化技術開発が一段と加速されることにより、“材料からプロセスまでのトータルソリューション”の顧客への提供が可能となります。さらに、ディスプレイメーカーとのアライアンスも視野に入れ、大画面高品位テレビをはじめとする本格的有機ELディスプレイの早期の事業化に向けて一層注力してまいります。

【参考:CDT社について】
社名   Cambridge Display Technology Inc.
本店所在地   米国 デラウエア州(米国ナスダック上場)
事業拠点   英国 ケンブリッジ市近郊
創業   1999年
払込資本   285百万米ドル(2006年12月末)
発行済株式数   21.6百万株(2007年7月末)
売上高  8百万米ドル(2006年12月期)
CEO   Dr.David Fyfe
従業員   約130人


2007年08月01日 Chemnet Tokyo

住友化学、CDT社の子会社化で高分子有機EL開発を加速

 住友化学は31日、高分子有機ELの開発ベンチャーである、ケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー社(Cambridge Display Technology =CDT社)の買収を発表(既報)したが、住化の中江清彦常務執行役員は記者会見で「これで両社の技術一体化が加速される。シナジー効果は大きい」と、これまでの経緯や完全子会社化する意義などを語った。
 
 住友化学は1989年に高分子有機ELの研究(PPV系)に着手、「暗室でもほのかに発光する」技術を発見して、90年2月に特許出願した。しかし、その10カ月前の89年4月にケンブリッジ大学が同じ技術内容の特許を出願していた。
 
 CDT社は1992年、そのケンブリッジ大学で高分子有機ELの特許を取得した学者・研究者らが設立した研究開発ベンチャーだ。

 住友化学はその後、CDT社と共同で材料の研究開発を行うことになり、02年にはCDT社に資本出資、05年にはCDT社と合弁の発光材料製造・販売会社「サメイション」を設立するなど密接な協力関係を築いてきた。
 
 住化はその一方で、米・ダウ社からも有機EL事業を買収し、独自の研究開発体制を構築してきた。

 今回、CDT社の買収に至ったきっかけは、一つには実用化に向けての両社の“視点”の違いにあったようだ。
 
 「最初は小型のものでもいいから、早く商品化したいというCDT側と、できるだけ完成度を高めて大型製品でスタートしたいという住化側の希望」が合わず、協議しているうちに住化が全株式を買い取ることで一致したという。
 
 CDTはもともと研究開発のための会社であり、長期の研究を続けるには資金力に限界があったようだ。
 
 だが、CDTの持つ技術力はやはり相当のものという。特にデンドリマー材料、デバイスパイロット、生産ライン技術、インクジェット技術、駆動回路設計技術などは世界の最先端をいくもので、これが住化の蛍光材料、燐光材料などの発光材料技術と一体化すれば、高性能材料の開発は一段と進むと期待される。
 
 CDTは従業員130人だが、うち100人が研究者。材料分野の研究者が40数人、デバイス関連が50数人という内訳だが「ノーベル賞候補クラスが何人もいる」といわれるほどにレベルは高い。
 
 CDTは現在、米国ナスダック市場に上場しており、発行済株式数は21.6百万株、1株当たりの株価は6.15ドル。これを今回は1株12ドルと2倍にプレミアムを付けて買収する。
 
 高分子有機ELで大型ディスプレイ、壁照明市場への進出を狙う住化は、2008年中には実用化、2010年には大型テレビをターゲットとするスケジュールを組んでいる。
 
 高分子有機ELは、従来の液晶や低分子有機ELなどに比べて、製造方法が開放系(インクジェット)で、素子構造が単純、大面積のディスプレイに対応でき、低コスト、量産性に優れているなどの特徴をもっている。「今後はディスプレイメーカーとのアライアンスも視野に入れた展開になるだろう」(中江氏)というが、今回の買収で、本格事業化に向けた取組みがどのように進むか注目される。

有機EL事業 本格展開

 住化採用の高分子系有機EL事業の問題点 
    
山形大学 城戸淳二教授


日本経済新聞 2007/8/1

住友化学 米有機EL会社買収 実用化へ開発急ぐ

 住友化学は31日、有機EL(エレクトロ・ルミネツセンス)材料の開発を手掛ける米ケンブリッジ・ディスプレー・テクノロジー(CDT、デラウェア州)を買収すると発表した。今秋をメドに約2億8500万米ドル(約340億円)で同社の全株式を取得する。住友化学は2008年に次世代ディスプレーの有機EL実用化を目指しており、買収で開発速度を上げる。
 CDTは米ナスダック上場のベンチャー企業。住友化学は0.8%を出資しており、05年には発光材料の開発・製造の合弁会社も設立した。子会社化でCDTの約100人の研究者をフル活用し、材料開発や表示装置の実用化を加速する。
 今秋開催予定のCDTの株主総会で買収提案する方針で、株主には直近90日間の平均株価の2倍強の1株12ドルを提示している。筆頭株主の米投資ファンドなど43%相当分の株主の賛同を得ているという。
 CDTは高分子系と呼ばれる方式の有機ELの研究開発では世界的に先行し、材料やデバイスの知的財産を多数保有している。06年12月期の売上高はライセンス収入を中心に約9億6千万円。従業員は約130人。高分子系材料は携帯電話やテレビなどで現在実用化されている低分子系材料よりも生産効率が高く、パネルの大型化に適しているとされる。


日本経済新聞 2007/8/19

そこが知りたい 有機ELは中核素材に育つ ? 
住友化学社長 米倉弘昌氏

20年度、液晶用と同規模に
 薄型テレビなどに使うデジタル素材。日本企業が強いこの分野で住友化学が攻勢に出ている。液晶用材料に続き、次世代の表示装置・照明に期待される有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の事業化に向け、7月に
米国企業を約340億円で買収することを決めた。デジタル素材でどのように成長戦略を描くのか、米倉弘昌社長に聞いた。

ー 住化としてのデジタル素材の位置づけは。
 「当社が強化していくのは、デジタル素材など情報電子と、医薬・農薬などライフサイエンスの分野だ。毎年の新規戦略投資の7割を情報電子とライフサイエンスに重点投資する方針に変わりはない。得意分野を磨きながら、基盤事業である汎用樹脂などの石油化学分野の収益力を改善していくのが基本戦略だ」

ー 液晶用偏光フィルムなど既存の製品は価格下落で収益が悪化している。
 「情報電子部門の4−6月期は営業赤字だったが、心配はしていない。(液晶テレビの価格下落に伴う)素材価格の下げ幅は縮小している。むしろ市場は量的拡大が続いており、フル生産の状況。フィルムの製造スピード向上など収益改善の技術革新にも取り組む。7−9月期に赤字を解消し、2008年3月通期では黒字を確保できるはずだ」

ー 有機ELは新しい収益に育つのか。
 「(電圧をかけると有機材料そのものが発光するので)液晶パネルより構造が簡単で薄型化できる。折り畳んで持ち歩くことも夢ではない革論的な素材だ。研究中の材料は耐久性などの点で実用レベルに達した。有機材料の製造だけでなく、国内メーカーと組みテレビや照明などのデバイス(部品)まで手掛けたい。08年度に(携帯電話向けなど)小型の表示装置、10年度に大型テレビ向けを実用化する。20年度に液晶用材料と同規模の年間2千億円超の事業にしたい」
 「米の有機ELベンチャー(CDT社)の買収は、向うから持ちかけられた。両社で有機材料の開発・製造の合弁会社を運営しており、他社に買収されて知識やノウハウが散逸するのも具合が悪いと判断した」

ー デジタル素材で日本勢優位は揺るがないのか。
 「当社は精密化学や医薬品など様々な事業を手掛け、有機EL材料の合成技術などはお手の物だ。日本の総合化学メーカーのようなタイプの企業に向いている領域だろう。実際、研究を始めて10年以上がたつが、その間に米ダウ・ケミカルなど多くの企業が脱落した。日本の素材メーカーは電機メーカーなど顧客と一体でデジタル素材を開発してきた。この強みはまだまだ続くだろう」

ー 原油高騰の影響は。
 「世界経済が年率5%台の成長が続く以上、原油とナフサの価格が急に下がることはないと覚悟している。汎用樹脂など石化製品の世界需要は好調なため、ナフサの値上がり分を製品価格に転嫁できている。ただ、今年のような急激なナフサ高には(値上げが追いつかず)困っている」

     ーーー

聞き手から一言
 石化強化と並び将来の収益占う

 住友化学はサウジアラビアで国営石油会社との石化合弁を立ち上げようとしている。総事業費は1兆円超の世界最大規模のプラントだ。「計画は極めて順調。生産拡大のためサウジ側と第2期工事の話し合いも始めた」と米倉社長。
 サウジ合弁が商業生産を予定しているのは2008年の後半。くしくも有機ELの事業化時期と重なる。汎用樹脂など基盤の石化製品と、高機能品を代表するデジタル素材。それぞれで収益向上を狙う二正面作戦の成否が住化の将来を左右する。(堀 直樹)

2007/7/31 Cambridge Display Technology Inc.社の完全子会社化

 


2007年11月28日 Chemnet Tokyo

米倉・住化社長が有機ELのロードマップ   2010年に液晶デスプレイに並ぶと予測

 米倉・住友化学社長は27日の記者会見で、同社が08年から生産を開始する高分子有機EL(エレクトロルミネッセンス)の発光材料「LUMATION」を使った薄型デスプレイテレビが2010年に液晶テレビに並ぶとの見通し明らかにした。

 米倉社長によると高分子有機EL を発光材料とする薄型テレビは、2010年に総需要が1億1,000万台(今年7,600万台、08年9,200万台)となる中で、この50%を占め、液晶テレビと対等になるとみる。

 この背景として来年には有機ELの大型化が実現することをあげている。有機ELは液晶に比べ高コントラストで,視野角が広く、薄型、軽量、また、消費電力が少なくて済む(バックライト不要)などの特徴があり、さらに課題だった発光材料の寿命もここ半年で4−5倍に伸びた。

 高分子型の有機ELは低分子型のように発光材料の真空蒸着設備がいらず、この分コストが安くなる。住化では英CDT(ケンブリッチ デスプレイ テクノロジー)から、発光材料を塗布するインクジェット方式を導入している。

 CDTはほかに青色発光材料(デンドリマーを領した高効率りん光材料)や赤色発光材料の寿命を延ばす技術を持ち、住化との共同会社(06年10月設立)での研究に生かしている。

 寿命については素子のデータで400cd/平方メートルの初期輝度で20万時間を超えている模様。

 住化の河内副社長は「有機ELはデスプレイをフィルム化することが可能。また、TFT(薄型トランジスタ)をフィルムに一体化することもできるわけで、今後の技術開発しだいでまだまだ市場が広がる」と語っている。

 有機ELの 薄型テレビはソニー、東芝、セイコーエプソンなどが商品化を発表しているが住化ではまだ、発光材料の供給先を明らかにしていない。