タミフル (Tamiflu)     副作用問題

オセルタミビル (Oseltamivir) は、インフルエンザ治療薬。リン酸オセルタミビルとして、スイスのロシュ社(日本ではロシュグループ傘下の中外製薬)により商品名「タミフル (Tamiflu)」として販売されている。A型にしか効果が無いアマンタジン(商品名「シンメトレル」など)とは違い、A・B両型のインフルエンザに作用する(B型には効きにくい傾向がある)。ただし、C型インフルエンザには効果がない。また、致死率が高いトリインフルエンザにも効果があるとされる。

現在タミフルは、中華料理で香辛料に使われるトウシキミの果実である八角の成分シキミ酸を原料に、10回の化学反応を経て生産されている。

ロシュ社は現在、タミフルを、多くの天然の植物に含まれるポリフェノールのシキミ酸から製造しているが、ポリフェノールの微妙な相違もあって、中国の広西チワン族自治区、貴州省、雲南省、四川省で生育するトウシキミに限定しており、供給能力に心配がある。

柴崎教授らはこれを1,4-シクロヘキサジエンから不斉触媒を用いて合成に成功した。少し構造が異なる化合物も合成できることから、タミフルが効かなくなった耐性ウイルスに対する新薬開発につながる可能性もあるし、なにより原料の供給不安がなくなるため、実用化が期待される。

1996年にギリアド・サイエンシズ社Gilead Sciences が開発、スイスのロシュ社がライセンス供与を受け製造、販売を行っている。

日本においては2000年に厚生労働省が承認、2001年2月に保険適用承認後中外製薬が日本の代理店となり、タミフル(R)カプセル75とタミフル(R)ドライシロップ3%として販売されている。 本薬はノイラミニダーゼ (neuraminidase, NA) という酵素を阻害することによりインフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制する(ノイラミニダーゼ阻害薬の項も参照のこと)。ザナミビル 商品名「リレンザ(R)」と作用機序は同じである。本薬の投与法は内服であるため感染部位への到達時間は遅いが、ザナミビルよりも服用が容易であるため、老人・小児にも処方しやすいという特徴がある。

タミフルの全世界での使用量のうちおよそ75%を日本での使用が占めており、世界各国のうちで最も多く使用されている上、同2位のアメリカと比べ、子どもへの使用量は約13倍とされる。

東京新聞 2006/2/25

タミフル化学合成成功  東大教授ら

 インフルエンザの抗ウイルス薬で、新型発生時の切り札として各国が備蓄を進めるタミフルの成分を、植物原料を用いずに石油から化学合成する方法を東京大の柴崎正勝教授(薬品合成化学)らの研究グループが、25日までに開発した。

 現在タミフルは、トウシキミという木の実で中華料理に使われる「八角」の成分「
シキミ酸」を原料に、10回の化学反応を経て生産されているが、柴崎教授らの方法ではシキミ酸を経由せずに作れるという。

 柴崎教授らはベンゼンに似た構造を持つ「
1,4-シクロヘキサジエン」と呼ばれる石油化学製品を原料に「不斉触媒」と呼ばれる特殊な触媒を用いて合成に成功した。


2006年01月06日 東大

「柴崎東大教授 世界第1位 不斉触媒分野引用回数」
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_180105_j.html

 研究者の業績評価、大学の研究評価、国別の研究評価等で世界的に知られるISI Essential Science Indicators, Thomson Scientific(トムソンISI社、米国、フィラデルフィア)が左手分子と右手分子を作り分ける不斉触媒研究に関する論文の引用回数を3日発表した。
 この分野では野依良治理研理事長等が分子に水素を付加する還元触媒等でノーベル化学賞を受賞しているが、化学反応の根源である炭素-炭素結合反応でさらなる飛躍的発展が成されている。
 このため、トムソンISI社がトピックスとして選択したものと思われる。

 引用回数は1995年1月1日から2005年8月31日に発表された論文について調べられた。
 その結果、東大薬学系研究科の柴崎正勝教授らの論文110本が総引用回数3,985回で世界第1位となった。第1位の理由としては柴崎教授らが1990年頃より提唱している多点認識型不斉触媒の独創性が世界的に注目されているためと思われる。
 なお、柴崎触媒はこれまで以上に今後創薬研究等に多大な影響を与える事が予想されている。

 機関別ランキングでも東大は第1位、国別ランキングでは日本は第2位となった。日本発の科学が世界を完全にリードしている確固たる証拠であり、科学創造立国を目指す日本にとっても朗報である。


タミフル増産の問題点 http://www.botanical.jp/librarys/archives/200512/05-0118/

製造元のロシュ社は、シキミ酸確保を中国の南西部に隣接している広西チワン族自治区(Guanxi)、貴州省(Guizhou)、雲南省(Yunnan)、四川省(sichuan) で生育するトウシキミ(スター・アニス、ダイウイキョウ Star Anise )に限定しています。

シキミ酸(Shikimic acid)
 1885
年、ヨハン・エイクマン(Johann Frederik Eijkmann)によってシキミ(Illicium anisatum)の果実からシキミ酸が発見されました。 シキミは猛毒を持つ植物として知られています。
 エイクマンは日本政府により長崎に派遣され、日本の薬学発展に大きな貢献をしたオランダ人です。エイクマンは長崎駐在の後、東京大学医学部に所属していたときに日本産有毒植物の研究をしていたといわれます。エイクマンに発見されたことにより、この物質は日本名が付けられ、シキミ酸の名が世界に広まりました。
 シキミ酸は、芳香族アミノ酸の前駆物質であり、タンニンの主要成分である没食子酸の前駆体ともなります。
 またシキミ酸は植物の
2次代謝経路の一つである芳香族化合物合成経路(シキミ酸経路)の重要な中間体であることでも有名です。

シキミ酸  shikimic acid    
     

トウシキミは中国原産のシキミ科の常緑高木である。学名はIllicium verum。花は赤褐色で果実は香辛料になる。
果実を乾燥させたものはスターアニス、八角(はっかく)、八角茴香(はっかくういきょう)、あるいは大茴香(だいういきょう)とも呼ばれる香辛料である

近縁のシキミ Illicium anisatum は日本に自生し、仏事に使うため寺院にも植えられる。花は淡黄色。実はトウシキミによく似ているが、猛毒成分アニサチンを含むため絶対口にしてはならない。


タミフルをめぐる主な動き (2007/4/5 毎日新聞)

01年2月 タミフル販売開始
04年5月 添付文書の「重大な副作用」に異常行動などを追記
05年11月 岐阜県で17歳男子が車に飛び込み死亡した例と愛知県で14歳男子がマンションから転落死した例を毎日新闇が報道
06年10月 厚労省の研究班が、対象の約2800人の子どもについてタミフルと異常言動の関連は認められないと発表
07年2月 愛知県蒲郡市で14歳女子、仙台市で14歳男子がマンションから飛び降り死亡
 2月28日 タミフル服用後の異常行動(転落・飛び降りなど)死亡の続発 (04年以降5例) を受け、
同省は未成年患者について2日間は1人にさせないよう注憲喚起
 3月20日 10代の子の異常行動が新たに2件。同省.は10代のタミフル使用を控えるよう添付文書改訂を実施。
同時に中外製薬に緊急安全性情報を医療関係者に出すよう指示
 3月21日 服用後の異常行動 (転落;・飛び降りなど) が計23件に上ることが判明
 3月30日 服用と異常行動の関連を調査していた同省研究班の3人がタミフル輸入販売元の中外製薬から
寄付金を受は取っていたことが発覚。同省は3人の除外を発表
 4月4日 タミフル服用後の「異常な行動」が計128人に見られ、うち8人死亡と同省が公表