ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2010/7/16 最近の中国経済の状況 

中国国家統計局が7月15日に発表した上半期の経済成長率は、前年比プラス11.1%となった。
第1四半期は11.9%、第2四半期はエコノミストの予想10.5%を若干下回り10.3%となった。

政府の公共工事などの固定資産投資額が、ことし上半期の累計で、前の年に比べて25%増えて、国内需要をけん引したことに加え、一時期落ち込んでいた輸出が、ここ2か月連続して前年比40%以上上回るなど、急回復していることなどによる。

景気過熱を抑えるための政府の引き締め策が徐々に効きつつあるが、引き締めが行き過ぎると失速する懸念がある。

2010年通年では中国のGDPが日本のGDPを超えるのはほぼ確実と見られる。
民間調査機関の試算では第2四半期に超えた可能性もある。

中国税関総署が710日発表した6月の輸出額は前年同月比43.9%増の1,373.9億ドルとなり、単月で過去最大を記録した。
これまではリーマン・ショック前の2008年7月が最大だった。

輸入は34.1%増の1,173.7億ドル。
貿易収支は前年同月の約2.5倍の200.2億ドルの黒字となった。
3月に輸入の急増で6年ぶりの貿易赤字に陥ったが、その後、再び貿易黒字がふくらんでいる。

輸出については、今後減少に転ずる可能性がある。

(1) 6月の輸出は、EU向けは43.2%増、米国向けは43.8%増で、日本向けは37.1%増となっているが、5月以降の欧州からの新規受注は減少傾向にあり、今後鈍化する懸念が強まっている。

中国商務省報道官は5月に、「過去4カ月で元は対ユーロで約14.5%上昇した。これは中国の輸出業者へのコスト圧力を高め、中国の欧州向け輸出に悪影響を及ぼす」 と述べている。

   
(2) 財政部と国家税務総局は6月22日、「一部商品の輸出増値 税還付の取り消しに関する通知」を発表し、7月15日から一部の鋼材や非鉄金属製建築材料などを含む406種類の商品関税コードの製品について、輸出増値税(付加価値税)の還付を取り消すことを明らかにした。
これは輸出の採算の悪化となる。

増値税還付取り消しの対象となる製品は、(1)一部の鋼材(2)一部の非鉄金属加工材(3)銀粉(4)アルコール、トウモロコシデンプン(5)一部の農薬、医薬品、化学工業製品(6)一部のプ ラスチック・プラスチック製品、ゴム・ゴム製品、ガラス・ガラス製品、の6種類で、これらはこれまで517%の還付率を適用されていた。

   
(3) 人民元の対ドル相場の上昇が続けば、対米輸出に影響が及ぶのは必至。
逆に上昇しなければ、米国の対抗策の懸念もある。

2010/7/12 米財務省、中国の為替操作国認定を見送り

   

中国の自動車の生産は相変わらず好調である。

中国自動車技術研究センターは7月5日、上半期の実績を発表した。
国産自動車の生産台数は前年同期比44.37%増の847万2200台、販売台数は同 30.45%増の718万5300台で、引き続き世界一だった。

但し、販売台数は今年4月から3カ月連続で前月を下回り、在庫状況はまだ正常な範囲内にあるものの、合理的な在庫の上限に達している。


2010/7/17 BP、新しいキャップの設置に成功 

慎重を期して遅れていた新しいキャップのテストが7月14日に開始された。
15日午後、最後のシールがしまり、BOPからの原油の漏れが止まった。

[email protected]/7/10 メキシコ湾石油流出事故対策の現状

新しいキャップについている3つのラム(バルブ)を閉め、BOPからの回収もストップした。

6時間ごとに最長48時間、センサーで油圧を測定し、ラムを閉めても、海底下13,000フィートに及ぶ井戸が壊れないかどうかをチェックする。テスト中はバックアップ井戸の掘削も停止する。

油圧が一定以上であれば、井戸に漏れがないことを示している。
ハリケーンなどの場合に、ラムを閉じて、回収船を避難させる。

もし油圧が一定以下であれば、井戸に漏れがあることを意味し、ラムを閉じたままであれば井戸が崩壊し、現在のBOPからだけでなく、井戸周辺から広く油が流出してしまい、捕捉不可能となる。

この場合にはラムを開き、キャップから原油とガスを回収する。
従来よりも回収能力は増えて8万バレルとなり、流出量(政府推定では35〜60千バレル)ほぼ全量を回収できる。
但し、回収船の手当てなどでフル稼働には時間がかかる。

いずれの場合も、リリーフ井戸が完成し、現在の井戸に接続、油圧を分散した上で、泥やコンクリートを流し込むのを待つ。

7月16日(現地時間)では圧力は上がっており、井戸に異常は見られない模様。

付記
718日にBPの井戸の状況をモニターしていた技術者が、海底に油の漏れを発見した。
井戸のヘッドにもなんらかの異常がみられる。

米大統領報道官は19日の記者会見で、新たに原油漏れが発見されたのは、英BPがふたをした油井の先端から約3キロメートル離れた場所であることを明らかにした。深海のカメラで泡が確認されており、監視を続けているという。そのほかに、油井の先端の上部からの漏れもあるという。

政府はBPに対し、「油井口近くで炭化水素の漏出が確定した場合、油井に影響を与えずに、油井キャップのバルブをできるだけ早急に開放する手続き」を書面で提出するよう命じた

米政府は事故発生以来、これまでに流出した原油の総量を最大約70万kl (438万バレル)と推計している。

1989年のExxon Valdez 号の際は4万kl(25万バレル)の原油が流出した。影響を受けた地域の人口は4万人ほどだったが、当時のExxonは40億ドルを超える賠償・負担金を払った。

今回の被害地域の人口は400万〜600万人とされる。
BPが今後15年間に支払う費用を630億〜1000億ドルと見積もる専門家もいる。


2010/7/17 オバマ大統領、LG化学の米工場起工式で祝辞

オバマ米大統領は7月15日、LG化学子会社のCompact Powerのミシガン州Hollandのリチウムイ オン電池工場の起工式に出席し、祝辞を述べた。
米国の現職大統領が、外国企業のイベントに参加するのはかなり異例のこと。

工場は2012年 稼動の予定で、A123 Systems(工場はデトロイト近郊のLivonia) とJohnson Controls-Saft (工場はHolland) と 組み、プラグインハイブリッドベースで20万台分(E-REV=充電用エンジン搭載車 "Chevy Volt" ベースでは5万台分)を生産する。
投資額は303百万ドルで、オバマ政権の
24億 ドルの補助金から151百 万ドルを受ける。

オバマ大統領は起工式会場で具本茂LGグループ会長と会い、韓国語で「アンニョンハセヨ」とあいさつした後、「バッテリー工場の建設をお祝 いする」と述べた。

オバマ大統領は祝辞で、「これは新工場の建設以上を意味する。この町や州、米国の新たな未来を建設するものだ」と評価し、「この工場で数百人が働くことになり、これによって小規模な企業の基盤も確保される。こうした努力が米国経済の発展に寄与するだろう」と語った。

「米国経済は困難に直面しているが、エコカーの量産を通じて未来型の雇用を創出し、外国に対する原油依存度も減らせる」と強調した。 そして、「この工場はミシガン州と米国が進む方向を示す象徴だ」と指摘した。

ーーー

LG化学は、「米大統領も認めた企業」という、金では換算できないほどのPR効果を期待している。

米自動車メーカー「Big 3」のうち、GMとフォードの2社に対し、バッテリーを供給することになっている上、米大統領まで招いたことで、「世界最高」という名声を固めることができたとしている。

同社では、これまでに、韓国の現代・起亜車と電気自動車メーカーのCT&T、 米国のGMと自動車用部品メーカーのEaton Corporation、中国の長安汽車、スウェーデンのボルボの6社と契約し、更に7月13日にはFord が採用を発表したが、「年内にさらに3、4社増えるだろう。日本企業もある。具体的に明らかにすることはできないが、大きな契約も含まれている」としている。

同社の今回の成功の背景には、具会長特有の「意地経営」がある。
グループの主要系列会社の社長らは2001年と2006年の2回に渡り、赤字が続いた二次電池事業からの撤退の意見を出したが、具会長は、「決して諦めず、研究開発に専念せよ」と指示し、2007年から収益を上げ始めた。


2010/7/19 大阪地裁、国の基準を否定し、水俣病認定を義務づけ  

最高裁で水俣病と認められた大阪府豊中市の女性が、国と熊本県を相手に行政としても認定するよう求めた訴訟の判決が7月16日、大阪地裁であり、水俣病患者と認定するよう命じた。

山田明裁判長は、以下の理由をあげ、女性の認定申請を退けた処分を取り消し、公害病訴訟では初めてとなる改正行政事件訴訟法に基づく行政認定を義務づけた。

1)  現行の認定基準(1977年基準)の「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」がない限り水俣病と認めないとの国の主張は医学的正当性を裏付ける根拠がない。
   
2) 四肢の感覚障害は水俣病の基礎的症候で、神経症状が感覚障害のみである水俣病も存在すると認められる。
   
 

国はメチル水銀により末梢神経を損傷したとする「抹消神経説」を支持、複数の症状の組み合わせが必要と主張。
関西訴訟の原告を支援する医師や研究者は、メチル水銀が大脳皮質を傷つけたとする「中枢神経説」を提唱している。
判決は、原告の症状を「中枢神経の損傷と推認される」とした。

   
3) 原告の症状は四肢の感覚障害のみだが、メチル水銀の摂取状況、他に原因になる疾患がないことなどを総合考慮すれば、原告は水俣病と認められる。
   

女性は1953年ごろから手足にしびれが出始め、1978年に認定申請した。
しかし、熊本県は「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」で水俣病と認める1977年基準に当てはまらないとして、1980年に退けた。

2004年の最高裁判決は二審・大阪高裁判決が示した「汚染された魚介類を多く食べ、指先や舌先の感覚に障害があれば認定できる」との基準を支持して女性ら37人を水俣病と認定、国と同県、チッソに原告1人あたり450万〜850万円の賠償責任があることを認めた。

これに対し国は、「最高裁の判決は有機水銀中毒症の判断基準であり、水俣病と有機水銀中毒は別」とし、現行の水俣病認定基準の見直しは行わないことを言明した。

最高裁の勝訴判決が確定した後も、国は認定基準を見直さず、熊本県の棄却処分に対する女性の不服審査請求も退けたため、女性は2007年5月に提訴した。

被告の国側は「最高裁判決の基準は医学的にあり得ない」とし、国の認定基準について「水俣病認定に複数の症状の組み合わせが必要とする基準は医学的な根拠があり、現在でも合理的だ」と反論していた。

なお、熊本県、鹿児島県では、認定審査会の委員が「司法と行政の二重の認定基準が存在し審査ができない」として、再任を拒否しているため、審査業務が停滞してい る。

ーーー

国は1977年に、「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」で水俣病と認める基準を決めた。

チッソは認定患者対しては、1973年の協定により継続的に補償を実行した。
   2,268名の認定者に対し、合計1,390億円 (2008/5時点)

補償協定の概要
項目 内容                                  
一時金 Aランク 1,800万円/人+近親者慰謝料(最高1,900万円)
B     1,700      +近親者慰謝料(最高1,270万円)
C     1,600 
年金 170〜67千円/人・月
医療費 患者医療費全額を支払い
その他
継続補償
医療手当、介護費、温泉治療費、針灸、葬祭費
患者医療生活基金(チッソが7億円拠出)からの支給
            年間補償金支払額 約27億円

非認定者対しては、1996年の和解にて解決を図った。

約1万人の未認定患者を対象に、四肢末端優位の感覚障害がある場合は「医療手帳」、感覚障害以外で一定の神経症状がある場 合は「保健手帳」を交付。
医療手帳はチッソから一時金260万円、国・県から医療費自己負担分全額、月額約2万円の療養手当などを支給。
保健手帳は医療費自己負担分などを上限付きで支給してきたが、関西訴訟最高裁判決後に医療費自己負担分は全額支給に改めた。

2008/5/31 チッソの弁明

しかし、2004年の関西訴訟の最高裁判決が国の認定基準より幅広く水俣病と認めた結果、再び水俣病被害を訴える患者が続出したため、未認定患者を救うため2009年7月に特措法が成立した。

2009/7/3 水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

鳩山内閣は20104月、水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法の「救済措置の方針」を閣議決定した。

一時金:210万円
療養手当
療養費の自己負担分
被害者団体計3団体に、活動費用や社会福祉施設の運営費

一時金や加算金は原因企業のチッソが負担する。
但し、チッソは債務超過に陥っていることなどから、国は熊本県が出資する財団法人を通じ、資金支援。

2010/4/16 水俣病「救済措置の方針」を閣議決定

以上の通り、国は(最高裁判決を無視して)認定基準を厳しいままとして「認定患者」を限定、非認定患者に対しては2回の「特別措置」での一時金で救済する方針を取った。

認定患者が増えると補償が膨大になることを懸念したとされる。

認定の場合、Cランクで一時金1600万円プラス年金
未認定の場合、今回の救済処置では一時金210万円。

今回の判決では、国の認定基準は「チッソの支払い能力を考慮した可能性も否定できない」と指摘している。

今回の判決により、患者を認定せず、一時金での決着を図るという国の方針が崩れることとなる。
国と熊本県は17日、控訴する方針を固めた。月内に正式な手続きをとる。

ーーー

今回の判決は、最高裁が水俣病と認めた被害者の行政認定をめぐる初の司法判断。

未認定患者については特措法による救済策が進んでいるが、今も8000人以上が認定申請中で、今回の判決で、「認定」を求める訴訟を起こす患者が増えることが予想される。

特措法による救済策で、チッソには3万人とされる未認定患者に対する一時金630億円の費用負担が生じる。
認定患者が増えると、この負担が大幅に増える可能性がある。

環境省は7月6日、水俣病特別措置法に基づき、チッソの分社化に向けた手続きの一環として、同社を「特定事業者」に指定した。
チッソは今秋にも分社化し、3年後に分社化した子会社を売却、売却益を熊本県に納付して補償業務を委ね、チッソを清算ことを狙っているが、チッソの負担が大幅に増えた場合、この計画が狂う可能性が強い。

2010/7/6 チッソ を「特定事業者」に指定

 


2010/7/20 湖南石油化学、マレーシアのTitan Chemicalsを買収 

ロッテグループ系列の湖南石油化学は716日、マレーシアの石油化学大手 Titan Chemicalsを買収すると発表した。
買収総額は12.5億ドルで、買収価格は直近の株価に27%のプレミアムをつけるものとなる。

既に大株主の台湾のChao Groupから37.3%、国営資産運用会社Permodalan National Bhd.から35.3%の合計72.6%を取得する契約を締結している。残り株式についてTOBをかける。

湖南石油化学は、1兆3000億ウォン(約936億円)の手持ち現金があり、グループ他社の支援を受けず、買収資金を全額自己調達する。

付記

2012年12月、湖南石化とKP Chemical が合併し、Lotte Chemical となった。

ーーー

Titan Chemicalsは2008年3月に亡くなったT.T. Chao (米国のWestlake Chemicalの創始者)1989年に設立した。
マレー半島南端のPacir Gudangにエチレン73万トン、ポリエチレン53万トン、PP37万トン、BTXのコンプレックスを建設、運営している。
2006 年3月にはインドネシアのPEメーカー P.T. PENI (BP/三井物産/住友商事合弁、LLDPE/HDPE 450千トン)を買収し、PT. TITAN Petrokimia Nusantara と改称している。

2008/3/12 T.T. Chao 逝去

同社の昨年の売上高は16.4億ドルとなっている。

ーーー

湖南石油化学は1976年に韓国政府の麗水石油化学と三井グループの第一化学との50/50JVの誘導品会社として設立された。(エチレンは政府出資の湖南エチレンが製造)
1979年に韓国政府が麗水石油化学をロッテと大林産業に売却(その後大林は離脱)、湖南エチレンは大林産業に売却した。
湖南石油化学は1992年に自社エチレンをスタートさせている。
日本側は順次、湖南石油化学の経営から外れ、2002年12月に第一化学は持株を売却、2003年6月に第一化学は解散した。
現在は湖南石化の過半をロッテが保有している。

2006/4/11  韓国の石油化学-2

湖南石油化学は麗川にコンプレックスを持ち、エチレン 75万トン、HDPE 38万トン、PP 40万トンなどを生産している。

2003年1月に現代石油化学を湖南石化とLGが共同で買収、2004年11月にLGが第1系列、湖南石化が第2系列を分け合った。
湖南石化はこれをロッテ大山石油化学と名づけたが、2009年1月に吸収合併した。
大山工場ではエチレン 100万トン、ポリエチレン 40万トン、PP 50万トンなどを生産している。

Titanの買収が完了すれば、同社のエチレン能力は、韓国 175万トン、マレーシア 73万トン、合計248万トンに達する。

 


2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

経済産業省は7月5日、エネルギー供給構造高度化法の基本方針の一つに重質油分解能力の向上を挙げ、重質油分解装置の装備率の目標を決めて、業者に対して重質油分解装置の新設若しくは増設又は常圧蒸留装置の削減により適切に対応することを求めた。

これについて、本ブログでは、重質油分解装置の装備率の向上に係る基準を定めて強制するのは、経産省が設備処理を強制することとなり、法律の正しい運用かどうか、疑問であるとした。

2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

エネルギー供給構造高度化法 (正式名は「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」)は2009年7月1日に成立した。

電気事業者と石油事業者、ガス事業者に、(1)非化石エネルギー源の利用、(2)化石エネルギー原料の有効な利用の促進を義務づけている。

  電気事業者 石油事業者 ガス事業者
非化石エネルギー源の利用
太陽光、原子力など非化石電源の利用拡大
太陽光発電による余剰電力買い取り
バイオ燃料利用
バイオガス利用
化石エネルギー原料の有効な利用  
原油の有効利用
天然ガスの有効利用

いずれについても以下のように定められている。

経済産業大臣は、必要な「指導及び助言」をすることができ、
供給事業者は達成のための計画を作成し、経済産業大臣に提出しなければならず、
経済産業大臣は、著しく不十分であると認めるときは、必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。
供給事業者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

これによれば、今回の重質油分解装置の装備率の向上に係る基準に従い、(重質油分解装置の新設か)常圧蒸留装置の削減をしなければ、経産相は勧告を行い、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができることとなる。

付記

石油精製各社は、「エネルギー供給構造高度化法」による重質油分解装置の装備率の新基準について2010年10月末に経済産業省に計画を提出したが、その内容は非開示であるという。

AOCホールディングスは富士石油・ 袖ケ浦製油所の第1常圧蒸留装置(5.2万バレル)の廃棄を経産省に届け出たとされる。(能力 19.2→14.0万バレル)

付記
出光興産は2011年11月1日、徳山製油所(12万バレル/日)を2014年3月に停止すると発表した。

ーーー

石油連盟は2009年3月19日の石油連盟会長定例記者会見で資料「エネルギー供給構造高度化法と石油業界の考え方について」を配布した。
その中では、競争力強化のため、「民間事業者の創意工夫と自主性の尊重」をうたっている。

新法施行にあたっての石油業界の考え方

(1)エネルギーの特性に応じた供給構造の高度化
 ・2030年も石油は一次エネルギーの約4割を占める基幹エネルギー
 ・石油残渣などの高度化利用技術の開発・普及
 ・経済性・利便性の優れた石油の有効活用の促進

(2)エネルギー産業の競争力強化
 ・
民間事業者の創意工夫と自主性の尊重(規制のみに拠らない誘導的措置)
 ・リスクの高い事業への取り組みに対する国による継続的な支援の実施
 ・情勢変化に応じて方向性を柔軟に見直すこと

(3)エネルギー間の公平性の確保
 ・各エネルギーの特性に応じた効率性、合理性に基づくベストミックスの達成
 ・税や政府の支援措置などエネルギー間の公平性を実現すること

現行の石油石炭税について
  税率 熱量当たり
税負担
(円/10
6kcal)
比率
石油    2,040円/kl 223円  100
LNG 1,080円/t 83円  37
LPG 1.080円/t 90円  40
石炭 700円/t 110円  49

ーーー

今回の告示にはいろいろ問題がある。

1)重質油分解能力の向上

方向として重質油分解能力の向上をあげるのはよい。
しかし、この法律では、基本方針は勧告から命令につながっている。

どういう原料を使って、どういう製品をつくるかは、企業の判断である。
仮に新設をする場合も、重質油分解装置をつくるかどうかは、企業の判断であり、国が強制するのはおかしい。

2)重質油分解能力の増加の可能性

国内の原油処理能力は日量479万バレルだが、ガソリンなどの需要減で現状の処理量は日量300万バレル台で推移、日量100万バ レル以上の過剰能力を抱えている計算になる。

重質油分解装置の新設には500億円以上かかるとされ、内需が縮小する中で新増設は非現実的である。

この状況下で非現実的な重質油分解能力の向上を基本方針とするのはおかしい。

重質油分解装置の装備率の向上を目指すのは、重質油分解能力の向上ではなく、常圧蒸留装置の削減を目指していることに等しい。

3)重質油分解装置の装備率の向上

アジア各国の重質油分解装置の装備率は中国が35%、シンガポールが22%。アジア平均でも19%。
経産省では、
我が国の重質油分解装置の装備率を 2013年度までに現状の10%から13%程度まで引き上げることを目標としている。

中国やシンガポールは重質油分解装置を新設したのであり、日本が常圧蒸留装置を削減して比率を上げるのは自己満足に過ぎない。
装備率が上がっても、法が目的とする「原油の有効利用」にはならない。

日本の場合、過剰能力を抱え、今後需要が伸びる可能性は少ないため、メーカーは減産又は廃棄をせざるを得ず、政府が干渉せずとも自動的に装備率は増える。

今回の経産省の案を実施した場合、装備率は13.9%に上がるが、現在各社が発表している能力削減計画だけでも、13.4%となり、とりあえずの目標は達することとなる。
この場合でもまだ過剰能力のため、減産は必至であり、「率」はもっと上がる。

  トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 改善達成
のための
トッパー
能力
(万bbl/d)
トッパー
能力
削減
義務量
(万bbl/d)
トッパー
能力
削減
計画

(万bbl/d)
この場合

装備率(%)
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
和シェル石油グループ 51.5 8.8 17.1 15 19.665 44.8 6.7 12  
JXグループ 179.22 20.6 11.5 30 14.95 137.9 41.4 60  
出光興産 64 8.3 13.0 15 14.95 55.7 8.3 10  
コスモ石油 63.5 2.5 3.9 45 5.66 43.8 19.7 8  
東燃ゼネラル石油 66.1 2.8 4.2 45 6.09 45.6 20.5    
太陽石油 12 2.5 20.8 15 23.92 10.4 1.6   装備率達成
富士石油 19.2 2.4 12.5 30 16.25 14.8 4.4 *1  
極東石油工業 17.5 3.4 19.4 15 22.31 15.2 2.3    
合計 473.02 51.3 10.8   13.9 368.2 104.9  90
削減後 
383.02

13.4

  上記ブログ記載の週間ダイヤモンド(2010年6月22日号)の表を補正

付記

AOCホールディングスは2010年11月1日付で富士石油・ 袖ケ浦製油所の第1常圧蒸留装置(5.2万バレル)の廃棄を経産省に届け出た。(能力 19.2→14.0万バレル)

コスモ石油は 2013年7月付で坂出製油所(14万バレル)を閉鎖すると発表した。

 

4)重質油分解装置の装備率の強制

上記のとおり、重質油分解装置の装備率は意味がない。
これを政府が各社に強制するのはおかしい。

5)常圧蒸留装置の削減

政府が各社の能力の削減を命じることは出来ない。
(水銀法の電解のように安全その他の問題のある場合を除く)

今回は、重質油分解装置の装備率の強制により、実質的に常圧蒸留装置の削減を命じている。

しかも、過去に各社の判断で設置してきた重質油分解装置の装備率により削減量が決まるため、極めて不平等なものとなっている。

社名 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
改善達成
のための
トッパー
能力
(万bbl/d)
トッパー
能力
削減
義務量
(万bbl/d)
義務
削減率
(%)
トッパー
能力
削減
計画
(万bbl/d)
削減率
(%)
達成
昭和シェル石油グループ 51.5 44.8 6.7 13.0 12 23.3
JXグループ 179.22 137.9 41.4 23.1 60 33.5
出光興産 64 55.7 8.3 13.0 10 15.6
コスモ石油 63.5 43.8 19.7 31.0 8 12.6
東燃ゼネラル石油 66.1 45.6 20.5 31.0 0  
太陽石油 12 10.4 1.6 13.3      
富士石油 19.2 14.8 4.4 22.9    
極東石油工業 17.5 15.2 2.3 13.1    

太陽石油の重質油分解装置の装備率は20.8%となる。
装備率を2013年度までに現状の10%から13%程度まで引き上げることが目標であり、これ以上を求めるのが妥当か?

ーーー

以上の通り、
重質油分解能力の向上を各社に義務付けるのはおかしく、
・実際に、その可能性は少ない。
・「重質油分解能力の向上」を
「重質油分解装置の装備率」にすり替えており、
その達成のため、違法に設備処理を強制している。
・結果として不平等な設備処理を強制している。

実際には各社の自主的な設備処理計画で、経産省の当面の目標(装備率13%)は達成される。減産を折り込むと実質的な装備率はもっと上がる。

それにも係らず、「重質油分解能力の向上」という名目で、(十分な設備処理計画を出していない各社に)設備処理を強制している。

不思議なことに石油連盟は、このような経営への政府の関与になんら反対をしていない。
業界主力の意向に沿っているからとの推測もできる。

これは官製の設備カルテルではなかろうか。

1988年の産構法終了により、設備カルテルも終了した筈である。
今回は法律によらず、設備処理とは直接関係のないエネルギー供給構造高度化法に基づく経産省の告示として出され、高度化法の規定で強制力を持たしている。

公正取引委員会はこれにどう対応するのだろうか。


2010/7/22  BP、北米とエジプトの石油資産をアパッチに売却

BPは7月20日、米国の独立系石油会社Apache Corporationに対し、米国、カナダ、エジプトの石油資産を売却する契約を締結したと発表した。
売却額は総額
70億ドルで、売却対象はテキサス州とニューメキシコ州南東部にまたがるパーミアン盆地の油田、西カナダの天然ガス、及びエジプトの西砂漠油田とEast Badr El-din 油田。

BPはメキシコ湾の原油流出事故の補償費用のため資金確保に動いており、先月100億ドル分の売却を行う予定と発表しているが、これはその一部。

当初、BPとApache BP米アラスカ州プルドー湾の油田権益の半分を含む資産を120億ドルで売却する交渉を行っていると伝えられていた。
関係者によると、プルドー湾の油田権益については、資産価値の評価や現在および将来に法的責任を問われた場合の対応などをめぐり、
7月18日に交渉が暗礁に乗り上げたという。

Prudhoe Bayの権益はBPが26%、Exxon MobilConocoPhillips がそれぞれ36%、Chevronが2%となっている。

今回、プルドー湾の油田権益を除き、交渉が成立した。

米国、カナダ、エジプトの石油資産は別々に売却され、どれかの話が壊れても、他には影響しない。
所定の認可を得て、第
3四半期に取引が完了する予定。
Apache 730日に合計50億ドルの仮払いを行う。

2009年の対象資産からの利益(税、金利控除前)は166百万ドルで、6月末時点の資産の償却後簿価は30.85億ドル。

パーミアン盆地の資産は元はBPが買収したARCOの資産で、10の油田から成り、売却額は31億ドル。
確認埋蔵量は原油換算
126百万バレル(資源量は148百万バレル)で、生産量は原油が日量15,100バレル、ガスが日量80百万立方フィート。

西カナダのガス資産は売却額32.5億ドル。
確認埋蔵量は原油換算
214百万バレル(資源量は1,368百万バレル)で、生産量はガスが日量240百万立方フィート、原油が日量6500バレル。

エジプトの資産売却額は6.5億ドル。
BP開発権を有し、100%の権益を持つEast Badr El-din鉱区と、Western Desert BPの持分が対象。
確認埋蔵量は原油換算
20百万バレル(資源量は55百万バレル)で、生産量は日量6016バレルの原油と11百万立方フィートのガス。

ーーー

Apacheは独立系の石油会社で、メキシコ湾、米中部(TexasNew MexicoOklahoma)、カナダ、エジプト、北海、豪州、アルゼンチンで開発・生産を行っている。

同社は本年4月に石油・ガス探査会社の米Mariner Energyを約27億ドル(プラス12億ドルの負債引継ぎ)で買収すると発表した。Gulf Shelf パーミアン盆地での探査に役立つと考えた。

また610日には、Devon Energy のメキシコ湾の権益の買収を完了した。
買収
額は10.5億ドルで、同油田の埋蔵量は原油換算で83百万バレル。

Devon Energy 2009年11月に、北米の陸上油田に集中するため、メキシコ湾と海外の油田を売却すると発表した。

Apacheへの売却のほか、2010年3月にはBPにブラジル、アゼルバイジャン、メキシコ湾の資産を70億ドルで売却、6月に中国沖合いの南シナ番禺(Panyu) 油田を共同開発の中国海洋石油に515百万ドルで売却した。

ーーー

インドの国営Oil and Natural Gas Corp(ONGC)はBPのベトナム権益買収で交渉していることを明らかにした。

BPはベトナム沖のNam Con Sonガス計画の35%を保有、残りをONGCが45%、PetroVietnamが20%を保有している。
BPはまた、ガス田から陸上のターミナルまでの371kmのパイプラインの権利の一部と、ガスを使用するPhu Myの発電所の1/3の権利を所有している。

これらの対価は966百万ドルと評価されている。

BPはパキスタンの権益の売却も検討している。

ーーー

BPApache Corporationにエジプトの権益の一部を売却したが、これとは別に、BP719日、エジプト石油省及びエジプト石油公社との間でアレクサンドリアの北の地中海のNorth Alexandria鉱区とWest Mediterranean Deepwater鉱区の大規模ガス田開発で合意し、改定新契約を締結した。

これらからのガスは日量10億立方フィートに達する予定で、エジプトの国内需要に回される。
投資額は
90億ドルで、2014年後半にも最初のガスが期待される。

North Alexandria鉱区はBP60%RWE Dea が残り40%の権益を持ち、BPが操業する。
West Mediterranean Deepwater鉱区はBP80%RWE Dea 20%で、BPが操業する。

 

  


2010/7/23 神華包頭石炭化学、秋に中国最初の石炭からのポリオレフィン生産をスタート

神華包頭石炭化学は7月初め、内蒙古自治区の包頭で年産180万トンの石炭ベースのメタノールの生産を開始した。
これは同社が
170億人民元を投じる石炭からのポリオレフィン製造コンプレックスの一部。

メタノールは全量ポリオレフィン用で、2005年に先行してNDRCの承認を受け、昨年12月に建設を完了した。

同社はこの180万トンのメタノールから、60万トンのオレフィンを、これから30万トンのポリエチレンと30万トンのポリプロピレンを生産する。
これらは
2006年に承認を受け、本年5月に建設を完了し、現在試運転の準備中。
9月に生産を開始する予定で、中国で最初の石炭ベースのポリオレフィンとなる。

付記 ポリオレフィンは8月中旬にスタートした。

オレフィン製造には中国科学院大連化学物理研究所(DICP-CAS)とSINOPEC Luoyang Engineeringが開発したDMTODimethyl Ether /Methanol to Olefin) 技術を使用する。
PEPPについてはUnivation Technologies (ExxonMobil Chemical DowJV) Unipol技術を採用した。


神華包頭石炭化学は当初、神華集団が
51%、香港のKerry Group 25%、包頭明天科技が24%JVとして構想された。
その後、神華集団 76%
上海華誼集団公司 24%JVとなったが、最終的には神華集団が単独で事業を行うこととなった。

2006/12/23 ニュースのその後、中国のMTO計画

ASIACHEMのデータでは、中国では本計画に大唐国際発電と神華寧夏石炭グループのPPを加え、2010年末までに158万トンの石炭ペースのポリオレフィンが完成する。
PE30万トン、PP128万トンで、これは中国のポリオレフィン能力の7%に達する。

大唐国際発電の内蒙古自治区Duolun県の46万トンのPPは同じくUnipol法を使用する。
200911月に購入プロピレンにより生産を開始しており、本年末に石炭〜メタノール〜プロピレンが完成、全プロセスがスタートする予定。

神華寧夏石炭グループの52万トンのPPはABB-LummusNovolenガス法を導入するもので、年内にスタートする予定となっている。

 

なお、2006/12/15 中国でMTO計画相次ぐ で、以下の4つの計画を説明した。

1.陝西新興煤化工公司(Shaanxi Xinxing Coal Chemicals )

  第一期 最終
原料 石炭
製品 メタノール 60万トン
オレフィン 
20万トン
PE     10万トン
PP     10万トン
Methanol-to-Olefin 300万トン
スタート 2009年  
投資額 625百万ドル 27.5億ドル
技術 DMTO(Dimethyl Ether /Methanol to Olefin)技術
 開発:Dalian Institute of Chemistry and Physics (DICP), CAS

2.Zhonghua Yiye Energy Investment Co. (中化益業エネルギー投資)

  第一期 最終
原料 石炭
製品 メタノール 60万トン
(+火力発電所)
メタノール 240万トン
オレフィン  80万トン
スタート 2009年  
投資額 288百万ドル  
技術 GEの石炭ガス化技術(旧テキサコ技術)

3.JV Sino Biopharmaceutical Ltd 43%出資)

原料 石炭
製品 メタノール  60万トン
エチレン   10万トン
プロピレン  10万トン
スタート 2009年末
投資額 632百 万ドル
技術 DMTO(Dimethyl Ether /Methanol to Olefin)技術
 開発:
Shannxi New Coal Chemical Science Technology Development Company Ltd
      (JVに5%出資)

4.SINOPECの天然ガスのMTO(methanol-to-olefin)

原料 天然ガス
製品 メタノール 180万トン
オレフィン  60万トン
投資額 約10億ドル
技術 MTO技術
 開発:SINOPEC傘下の石油精製研究所(Research Institute of Petroleum Processing)
又は、
DMTO(Dimethyl Ether /Methanol to Olefin)技術
 開発:Dalian Institute of Chemistry and Physics (DICP), CAS 

この4つの計画はいずれも棚上げとなっている。

国家発展改革委員会(NDRC)は2007年夏に、新しい天然ガス活用政策を発表、天然ガスの利用は、都市ガス、産業ガス、発電、化学品の4つに分類され、都市ガス用の利用が最優先される一方、メタノール用の使用が禁止された。

この結果、上記4のSINOPECの天然ガスのMTO計画が中止となった。


2010/7/24  原油流出事故のその後 ー上院小委員会公聴会と原油流出事故対応会社設立 

上院の小委員会(Subcommittee on Federal Financial Management, Government Information, Federal Services and International Security of the U.S. Senate Committee on Homeland Security and Governmental Affairs)の公聴会が722日に開かれた。

出席したのは、
 
AnadarkoJim Hackett CEO
 MOEX Offshore 2007 LLC(三井石油開発の米子会社の子会社):石井直樹社長
 200億ドルのファンドの管理者:Kenneth Feinberg

事前に提出された証言の準備原稿の内容は以下の通り。

Anadarko Jim Hackett CEO 
   原油流出コスト問題の解決を裁判なしで行うため、他の権益者と話し合う用意がある。
適切な時期に、
BPMOEX Offshoreと建設的な会合を持ちたい。

共同運営契約では、オペレーターの重大な過失や意図的な違法行為の結果として発生したコストや損失については他の権益者は負担を要しないこととなっている。

油濁法のもとでの義務は果たす。
司法省からの事業売却などの事前報告の要請には同意する旨返事した。

石油掘削を共同で行うのは無理で、オペレーターが計画、実行し、日々の活動に責任を持つ。
オペレーター以外の権益者は、作業の報告や予算書類を受け取るが、
BPの決定をリアルタイムに判断する情報は受け取らない。

   
MOEX Offshore 石井直樹社長
  MOEX OffshoreBPの技術と経験を信頼していた。MOEX OffshoreDeepwater Horizon rigの選択にも作業にも関与していない。このプロジェクトに出資したときには、既に米政府が計画を承認し、作業が始まっていた。
契約のもとでは採掘計画を変更する権利も能力もなく、本計画の十分性(
sufficiency)と適格性(competence)を疑う理由はなかった。
BPは進展状況についてある程度の情報を呉れ、コストについてはモニターしていた。しかしBPの運営に影響を与えようとしたことは全くない。加えて、当事者間の契約に基づき、行われている仕事についてコントロールする権利は持っていない。
MOEX Offshoreは現状を懸念し、調査の進展をモニターしている。
回収した原油に対する権利を放棄する旨発表している。これは被害を受けた人々のために使われるべきだと考えている。
MOEX Offshoreは、湾岸地区が回復し、人々が仕事に戻れるよう、議会、政府機関、州や地方政府とうまくやっていきたい。

公聴会で議員達は両社がクリーンアップコスト負担を拒否したことに対し、批判した。

最初にMcCain上院議員が、両社がBPへの支払いを検討するのに事故の調査の結果を待っていると攻撃し、必要な資金を積み立て、一部の資金を支払うことを強く求め、それが米国民と両社のイメージにとり最も良いことだと述べた。
メキシコ湾岸の国民は金が必要なのであり、裁判を求めているのでないとした。

Hackett CEOは、「我々の見解では、事故は避けられた」と述べ、公開情報ではBPの重大な過失や意図的な違法行為の可能性が強く、運営契約ではオペレーターの重大な過失や意図的な違法行為の結果として発生したコストや損失については他の権益者は負担を要しないこととなっていると主張した。

石井社長も、支払の決定をする前に、まず事故の原因を明らかにしたいと述べた。
なお、事故が起きた4月20日の1週間ほど前に「安全の観点からこれ以上の掘削は難しい。掘削を止めたい」との電子メールがBPから届いていたことを明らかにした。

事故前のBPの対応をめぐっては、これまでに現場のエンジニア間で掘削の危険性を指摘する電子メールがやりとりされていたことが明らかになっている。
石井社長の証言内容はBP側が掘削の危険性を認識していたことを示すもので、BPの責任問題に影響しそうだ。

両社とも、このようなケースの一般的な慣行では、操業権益者がクリーンアップや他のコストを先ず支払い、その後に他の権益者に支払いを求めることとなっているとした。
石井社長は、「当事者間の契約では、操業担当のBPが先ず支払いをすることとなっている」と述べた。

議員達はこれに満足せず、両社は少なくともエスクロー勘定(第三者預託)を設け、支払いの用意と能力を持つことを示すべきだと主張した。

McCain上院議員は、米政府は両社を油濁法での責任当事者にしており、支払いの義務がある筈だと攻めた。

その後のやりとり。

McCain:払うのか、払わないのか?
Hackett:払わない。
McCain:(エスクロー勘定に)積み立てていないのだな?
Hackett:積み立ててはいない。しかし十分な資産があり、支払いは可能だ。
      年間50億ドルのキャッシュフローがあり、手持ち現金は30億ドル、借入も可能。

石井社長もクリーンアップコストの積み立てをしていないと答えた。

しかし議員達は両社に支払いを求めているのではなく、必要な場合には支払うということを示すために資金を積み立てておくことを求めていると反論した。

両社とも、法的に求められればコストを負担すると述べた。

 

ーーー

原油流出事故対応会社の設立

ChevronConocoPhillipsExxonMobilShell4社は721日、将来のメキシコ湾の海底油田の原油流出事故に対応するため、漏れた原油の回収と油井封じ込めを迅速に行うための会社を共同で設立すると発表した。

開発するシステムは、24時間以内に出動可能なフレキシブルなもので、多様な種類の、油井・機器デザイン、石油・天然ガス流量、天候に対応する。1万フィートまでの深海に適用可能で、日量10万バレルまで回収することを狙う。

4社の専門家が開発にあたり、メキシコ湾の深海での事故に直ぐに対応できるよう、設備の設計、建設とテストを行う。

4社はこの目的のため、非営利会社のMarine Well Containment Companyを均等出資で設立する。4社以外にも参加を求める。

4社は当面のシステム開発に10億ドルをコミットした。機器の使用やメンテのコスト、回収船のリースや新造船のコストなどはこれに含まれない。
米メディアによると、その後も事故対応のための体制づくりや技術開発、人員の維持などに、数年間で数十億ドルが必要という。

事故時の体制を平常時から作ることで、米政府や米国民の石油業界への信頼回復を狙う。

付記

BPは9月19日、Marine Well Containment Companyに参加する意向を表明した。
海底井戸を封じ込める機器をメキシコ湾で操業する全ての石油・ガス会社に利用させる。


2010/7/26  大連新港の石油パイプライン爆発事故原因判明 

7月16日夕方、大連市大連新港付近の中国石油天然気(CNPC=ペトロチャイナ)の石油パイプラインが爆発、 火災が発生した。
30万トンのタンカーが荷揚げを終えた後に、タンカーとタンクを結ぶ直径90cmのパイプラインが爆発、もう1本の小さなパイプラインも爆発した。タンカーは無事に離岸した。

火災は15時間後に鎮火したが、事故現場の石油輸送設備がひどく破損したほか、原油が流出し、周辺海域が汚染された。

原油約1500トンが流出、海面約430平方キロメートルが汚染された。
大連新港も一時、閉鎖され、製油所も減産した。

(中国のTVは、流出量は1,500トン=40万ガロンで、これに対してBPの流出量は9,400万〜18,400万ガロンであると伝えている。)

ーーー

中国の国家安全生産監督管理総局と公安省は7月23日、石油パイプライン爆発事故の原因を発表した。

原油から不純物の硫黄や硫黄化合物を除去する脱硫剤をパイプラインに注入する作業を請け負った業者が、タンカーが荷卸を終了した後も、脱硫剤を流し続けたことが爆発を誘引した。
脱硫剤は天津の
Huishengda Petroleum Technology製のもので強い酸化剤を含む。

タンカーの荷卸し終了の連絡が、ペトロチャイナから脱硫剤の注入現場まで伝わらなかったうえ、脱硫剤自体の安全性も確認せず、安全作業規定もなかったという。

ーーー

多くの労働者が石油を回収しており、2000人の軍人と40隻の石油回収船、数百隻の漁船がクリーンアップを手助けしている。

グリーンピースによると、海岸は立入り禁止になっておらず、警告もなく、子供が遊んでいる。また、漁民がマスクもなしで素手や箸でクリーンアップ作業をしている。

グリーンピースは声明を出し、政府に対し、海岸の近くの住民に危険を警告すること、クリーンアップ現場に専門家と安全器具を送ることを求めた。

 


2010/7/27 BP、リビア沖で深海油田掘削 

BPはリビア沖で数週間以内に深海油田の新規掘削を始めることを確認した。

BP719日にエジプト石油省及びエジプト石油公社との間でアレクサンドリアの北の地中海のNorth Alexandria鉱区とWest Mediterranean Deepwater鉱区の大規模ガス田開発で合意したばかり。

2010/7/22  BP、北米とエジプトの石油資産をアパッチに売却 の後半参照

リビアのGulf of Sirte(別名 シドラ湾)の1700mの海底で掘削を行うもので、メキシコ湾の流出事件の井戸より更に200m深い。

リビアは、BenghaziMisratahを結ぶ線の内側全体がリビアの領海であり、さらに62海里の漁業専管水域を有すると主張している。カダフィ大佐はこの線をThe Line of Deathと呼んだ。
これに対し米国は、沿岸から12海里が領海で、それの外側は公海であると主張した。

1981年8月、レーガン大統領の命令でアメリカ艦隊がここで演習を行った。
リビア軍機が米機に接近、リビア機が空対空ミサイルを発射したが、これは外れた。
米機はリビア機2機を撃墜、30人以上のリビア兵が死亡した。(シドラ湾事件)

BP 2007529日、当時のブレア英首相のリビア訪問時に、リビアのNational Oil Company との間で Exploration and Production Sharing Agreement を締結した。

BPによると、これは
・国際石油会社がリビアと締結した単一では最大の開発契約で、
・BPの100年の歴史の中で、単一では最大の開発契約で、
・近代になってリビアが国際石油会社に与えた単一では最大の面積の開発契約で、
・リビアの
National Oil Company が国際石油会社とともにリビアの石油・ガスを開発する戦略の成功例である
としていた。

7年間にわたり、54,000km2の開発を行うもので、海底のSirte basin30,000km2と陸上のGhadames basin24,000km2とから成る。

Sirte basinについては油井掘削開始に向けたリグが準備できており、人工地震による地質調査は昨年完了した。
Ghadames basinについても、年末までに掘削を計画している。
Ghadames basinはリビア、チュニジア、アルジェリアにまたがっている)

BPのメキシコ湾原油流出 事故の原因究明も終わっていないだけに、それより深い海底での掘削について、環境面から同社への批判が出ている。

米政府は、メキシコ湾原油流出事故の原因究明や再発防止策を優先し、深海油田の新規掘削活動を凍結している。

BPはさきの事故を教訓に、大きな注意を払って進めるとしている。

もっと大きな反発が米国から出ている。

米上院は、BPのヘイワードCEOに対し、米パンナム機爆破事件のリビア人受刑者の釈放について、公聴会で証言するよう求めた。

1988年12月21日、ニューヨーク向けのPan Am Flight 103は、フランクフルトからの乗客47名と乗員2名に、ロンドンから搭乗する194名の乗客と乗員16名が加わり、ヒースロー空港を離陸した。

40分後の午後7時ごろ、スコットランドのLockerbie上空を飛行中に、前部貨物室に搭載されていた貨物コンテナが爆発。爆発により機体は空中分解した。
乗員16名、乗客243名(日本人1名を含む)全員と、巻き添えになった住民11名の計270名が死亡した。

爆発は機体前方の貨物室にあった航空貨物コンテナの下部で発生、セムテックスと呼ばれるプラスチック爆薬を用いた時限爆弾によるものであった。

回収された物品から容疑者はリビア人のAbdelbaset Ali Mohmed Al Megrahi Lamin Khalifah Fhimah2人と判明した。

リビアは当初、容疑者らの引渡しを拒否、国連安保理事会は1992年1月に容疑者の引渡しを求める決議731を採択、リビアがなお拒否したため、国連安保理事会は1992年にリビアに対する制裁を目的とした決議748を、翌年1993年にはこれを強化する決議883を採択した。

リビアはその後、態度を軟化させ、1999年4月に2人を国連代表に引渡し、2003年には、遺族に対する総額27億ドルの補償金支払いも約束した。

これを受け、2003年9月に国連安保理は対リビア制裁の解除を発表した。
2003年12月、米英政府との9ヶ月にわたる交渉の結果、リビアが大量破壊兵器(WMD)の開発計画の廃棄を約束し,国際機関による即時・無条件の査察受け入れに合意した。

この結果、米国はリビアを「テロ支援国家」指定から外し、その後、2006年5月にアメリカはリビアとの国交正常化を発表した。

第三国のオランダでスコットランド法に基づき裁判が行われ、2001年1月31日にMegrahi 容疑者に終身刑、 Fhimah容疑者には証拠不十分で無罪の判決が下された。

Megrahi 容疑者はスコッ トランドで服役中だったが、余命3か月の末期の前立腺がんと診断され、2009年8月20日に釈放されて帰国した。

米国はMegrahi 受刑者の釈放に反対していたが、上院は今回、BPがリビア計画の推進のために受刑者の釈放をもとめたのではないかとの疑念をもっている。

BPはリビア人受刑者の釈放に関し、英国政府、スコットランド政府と話し合ったことはないとしている。 
就任後初めて訪米したキャメロン首相は7月20日、「決定を行ったのはスコットランド自治政府であり、BPではない」と指摘した。

なお、クリントン米国務長官は7月16日、ヘイグ英外相と電話で会談、両外相は、元リビア情報機関員を釈放した昨年8月の英スコットランド自治政府の決定について、「誤りだった」との認識で一致した。

ーーー

2006年5月にアメリカはリビアとの国交正常化を発表した。

これを受け、Dowは2007年4リビアの国営石油会社(NOC)とJVを設立し、NOCのRas Lanuf コンプレックスの石化コンプレックスを拡張・運営すると発表した。

    2007/4/25 Dow、リビアに石化JV設立

 


2010/7/28 BP、第2四半期決算とCEO更迭を発表 

BP727日、2010年の第2四半期の損益を発表した。

石油会社は在庫変動の影響を避けるため、前期末在庫の影響を除いた損益(当期のコストによる損益)を発表している。
BPではこれを
Replacement Cost 損益と呼んでいる。

第2四半期のReplacement Cost 損益は170億ドルの赤字、上半期では114億ドルの赤字となった。

単位:百万ドル
  2009 2010   上期損益
2Q 1Q 2Q   2009 2010
Exploration & Production   5,046   8,292   6,244     9,366   14,536
Refining & Marketing 680 729 2,075   1,770 2,804
Others -583 -328 -70   -1,344 -398
事故関連     -32,192     -32,192
調整 76 208 98   -329 306
金利・税前損益
(事故関連除外)
5,219
(5,219)
8,901
(8,901)
  -23,845
(8,347)
  9,463
(9,463)
-14,944
(17,248)
金利(net) -321 -228 -214   -689 -442
税金(Replacement cost base) -1,714 -2,966 7,188   -3,168 4,222
少数株主持分 -44 -109 -102   -79 -211
Replacement cost 損益 3,140 5,598 -16,973   5,527 -11,375
在庫損益 1,874 705 -284   2,128 421
対応の税金 -629 -224 107   -708 -117
財務損益 4,385 6,079 -17,150   6,947 -11,071

BPでは事故関連の費用を322億ドル計上した。
直接支払った費用
29億ドルに、将来の引当金として293億ドルを加えたもの。これには米政府に約束した200億ドルのエスクロー勘定を含んでいる。

なお、BPはAnadarko と三井石油開発に合計1,433百万ドルの負担を求めたことを明らかにした。
Svanberg 
会長は、BP には重大な過失はなく、契約上、当然回収できるとしている。
(今回の決算には反映していない)

実際の請求額は以下の通り。

      Anadarko     MOEX
5
月分  272百万ドル  111百万ドル
6月分  919百万ドル  368百万ドル
累計  
1,191百万ドル  479百万ドル 

事故関連費用を除くと、業績は好調で、本年上期の金利・税前損益は前年同期比で1.8倍となっている。

BPでは今後18ヶ月で300億ドルの資産を売却する計画。(Apache への売却 70億ドルを含む)
主に上流の資産で、BPよりも他の会社の方に価値があるものを選ぶ。これにより、BPには数は減るが、優良な事業が残ることとなる。

一方でアゼルバイジャン、エジプト、中国、インドネシアなどで新事業を進める。

財務的には、6月末の借入金残高230億ドルに対し、今後18ヶ月で借入金を100-150億ドルのレベルに下げる。
2010-2011年の投資は年間180億ドルベースを維持する。

ーーー

BP727日、 Tony Hayward CEOが10月1日付けで辞任し、Robert Dudley氏がCEOに就任すると発表した。
Hayward CEOに対しては、原油流出事故への対応のまずさをめぐって辞任を求める圧力が高まっていた。

Robert Dudleyはボードメンバーで、現在メキシコ湾のクリーンアップと補償事業を担当している。
1998年のBPによるAmoco買収でBPに移った。2008年までBPのロシアのJVTNK-BPCEO兼社長をしていた。
BPで初の米国人CEOとなる。

Hayward氏はTNK-BPの取締役(非執行役員)に就任する予定。(新聞は「シベリア送り」と報じている。)

2008年、 Dudley氏がTNK-BPのCEO時代に、「設備投資より配当を」と迫るロシア側株主と経営を巡るあつれきが深まり、 Dudleyの辞任要求運動に発展。Dudleyを含むBP側経営者や技術者のビザ更新が拒否され、出国に追い込まれるという騒ぎになった。
経営権がロシア側に奪われかねない状況になるなかで、
Dudley暫定ビザ期限切れ前に出国し、中欧に滞在して、そこから社長業務を行なった。
結局、自らが辞任する代わりに、BPの50%の出資比率を維持する話をまとめ、かえってタフ・ネゴシエーターとして評価を高めた。この間、TNK-BPの石油生産量や追加埋蔵量は大幅に増え続け、コストも下がるなど、経営面で実績をあげた。

TNK-BPについ[email protected]/9/9 BP、ロシアの石油JV 経営問題でロシア側に譲歩



2010/7/29 ペトロチャイナ、ウルムチで大規模パラキシレンプラントを稼動 

ペトロチャイナ・ウルムチ石油化学は7月19日、新疆ウイグル自治区ウルムチで大規模パラキシレンプラントの稼動を開始した。

38億人民元を投じたもので、PX能力は年産93万トン、他にベンゼンを32万トン生産する。
UOP技術を採用、原料は同地にある同社の製油所から供給する。

本計画は2006年9月にNDRCの認可を得ており、当初は2008年に生産開始の予定であった。
当時、ウルムチ石油化学は年産150万トンのPTAを計画しており、PXはこれの原料として考えられた。

建設開始は当初計画の2006下期から2007年9月にずれ込み、スタートアップ予定も2009年3四半期となったが、これが更に遅れることとなった。

問題はPTA計画が棚上げとなったことである。
同社は
NDRCにPTA計画を申請したが、その後、建設費が少なくとも40億人民元(約500億円)かかることが判明し、ギブアップした。

このため、PXが完成しても、使い道がなくなった。

工場から最も近いPTAプラントは河南省洛陽で、1900kmも離れている。
新疆ウイグル自治区ウルムチは中国の西北端にあり、ロシア、カザフスタン、タジキスタン、蒙古、アフガニスタンなどに囲まれている。
主な輸送手段は鉄道かトラックである。ペトロチャイナでは「可燃性のPXを簡単に輸送は出来ない」としている。

完成してもPXの行き先がないため、ペトロチャイナは稼動を遅らせた。
これに対し、地方政府は地方経済の活性化と数百人の雇用の確保のため、早急な稼動を要請し、揉めていた。

ーーー

2009年7月5日夜、ウルムチ市で少数民族ウイグル族による大規模暴動が発生、漢族ら197人が死亡、1700人以上が負傷した。広東省の工場でウイグル族が漢族に襲われ死亡した乱闘事件への抗議デモが暴動に発展した。
新中国建国以来、当局が発生を認めた少数民族の暴動としては最大級の規模で、背景には漢族が主導権を握る統治システムへのウイグル族の不満にある。

当局は暴動再発への強い危機感から、約10カ月にわたって自治区でのインターネット閲覧制限などの情報管制を行った。

2010年に入り、中国政府は新疆ウイグル自治区の経済発展支援を強化し、住民の生活改善を急ぐ政策をとった。

胡錦濤主席は4月23日の会合で、「地域の永続的な安定を実現するため、新疆ウイグル自治区を経済的、社会的に発展させることが我々にとって戦略的意味を持つ大きな、緊急の仕事である」と述べた。

ペトロチャイナのPX工場の生産開始は中央政府と地方政府から要請されたものである。

同社では、PXは約10%を自治区内で販売、40%は中央アジア市場で、残り50%は中国内陸部で販売するとしている。

しかし、上記のペトロチャイナの過去の発言から考え、販売先を見つけたとは考え難く、政府に押し切られ、とりあえずスタートしたものと思われる。

なお、中国全体では、PXを2008年に340万トン、2009年に370万トン輸入している。

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ウルムチ石油化学の製油所能力は600万トンで、PX 7万トン、ベンゼン 1万トン、アンモニア 63万トン、尿素 110万トン、PTA 75千トンのプラントを持っている。
同社では製油所能力を1000万トンに拡張する計画を持っている。


2010/7/29 2010年第2四半期 国産ナフサ基準価格

第2四半期の国産ナフサ基準価格は49,700円となり、前期比2,000円のアップとなった。
なお、5月の通関金額が修正されている。

計算根拠は以下の通り。(単位:円/kl)

  輸入平均   基準価格
2009/1Q  24,970  27,000
   2Q  31,294  33,300
3Q  39,185  41,200
4Q  40,544  42,500
2010/1 45,468    
2010/2 46,360    
2010/3 45,249    
2010/1Q 45,702 47,700
2010/4 47,517    
2010/5 49,142    
2010/6 46,414    
2010/2Q 47,653 49,700

基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)


2010/7/30 事業統合会社の2009年度決算 

非上場会社の2010年3月決算の発表(決算公告)が出揃った。

12月決算会社を含め、対比した。
  
  
は12月決算、
  
は3月決算

日本ポリエチレンと日本ポリプロが3月決算に変更した。
今回、2010年1-3月期決算を発表した。
両社とも2009年1-12月が赤字であったが、2010年1-3月は黒字となっている。

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ポリオレフィン

日本ポリエチレン (PE)
 出資: 日本ポリケム(三菱化学) 58%、
日本ポリオレフィン(昭和電工/新日本石油)
42% 
 能力: 1,186千トン
   
  12月決算から3月決算に変更
 
(百万円) 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/12 178,358 400 606 123
09/12 124,131 -3,055 -3,108 -2,035
10/3 1-3月) 32,813 1,535 1,638 1,055
      
ーーー  
   
日本ポリプロ (PP)
 出資: 日本ポリケム(三菱化学) 65%/チッソ 35% 
 能力: 1,244千トン
   
  12月決算から3月決算に変更
 
(百万円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益
08/12 206,819 1,047 305 156
09/12 130,757 -13,274 -13,455 -8,478
10/3 1-3月) 39,587 1,370 1,358 777
  2011年に千葉の79千トン、鹿島の90千トンを停止     
   
ーーー  
   
サンアロマー (PP)
 出資: LyondellBasell 50%、
SDKサンライズ投資 50%(昭和電工 65%、 新日本石油 35%) 
 能力: 347千トン
 
(百万円) 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/12 69,524 1,542 2,106 1,284
09/12 40,789 -382 -358 -960
増減 -28,735 -1,924 -2,464 -2,244
ーーー  
   
プライムポリマー (PE/PP)
 出資: 三井化学 65%/出光興産 35% 
 能力: PE  489+三井デュポン 170+三井化学 4+日本エボリュー 190/240=853千トン
PP  1,071+徳山PP 200+宇部PP 90=1,361千トン  
 
(百万円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
09/3   338,228   -16,278  -16,045 -20,136
10/3 255,844 -7,963  -8,134  -10,186
増減  -82,384 8,315  7,911  9,950
                         
  2010年4月に高圧法低密度ポリエチレン事業を三井デュポンに譲渡
2011年3月に宇部ポリプロ90千トン停止
2011年11月に日本エボリュー 60千トン増強(全量プライムポリマー枠)
   

ーーー

PVC

大洋塩ビ (PVC)
 出資: 東ソ− 68%/三井化学 16%/電気化学 16%
 能力: 558千トン
 
(百万円) 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
09/3  57,543 -488    -502  -377
10/3  45,567  -1,597   -1,619  -1,972
増減  -11,976  -1,109  -1,117 -1,595
                         
ーーー  
   
新第一塩ビ (PVC)
 出資: トクヤマ 71%/日本ゼオン 14.5%/住友化学 14.5%
 能力: 255千トン
 
(百万円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
09/3  23,297  - 554    - 755  -1,166
10/3  16,096   -1,053   -1,038  -1,045
増減  -7,201  -499 -283  121
   
ーーー  
   
ヴイテック (PVC、VCM、電解)
 出資: 三菱化学 85.1%/東亞合成 14.9% 
 能力: PVC 220千トン、VCM 391千トン
 (水島PVC 110千トン停止、川崎PVC 9
5→121千トン) 
 
(百万円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益
08/12 45,206 -1,992 -2,365 -3,025
09/12 28,139 -1,269 -1,546 -6,526
増減 -17,067 723 819 -3,501
                     
  2011年3月末までに停止、解散
但し、川崎PVCプラント(121千トン)は東亞合成が引取り、カネカから製造受託

ーーー

ポリスチレン、ABS

付記 東洋スチレンを追加した。

PSジャパン (PS)
 出資: 当初 旭化成 45%/出光興産 27.5%/三菱化学 27.5%
2009/10 三菱化学が離脱
旭化成ケミカルズ 62.07%/出光興産 37.93%
 能力: 445千トン
 
(百万円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
09/3   64,260   1,073  1,251   724
10/3  50,948  2,873  2,911   1,669
増減 -13,312  1,800   1,660 945
     2011年3月末に三菱化学四日市の85千トンを停止
ーーー  
   
日本ポリスチレン (PS)
 出資: 住友化学 50%/三井化学 50%
 能力: 162千トン→ 0
 
(百万円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
09/3   20,714   483  472   -2,681
        
  2009年9月末で操業を停止した。
 (2009年3月期に特別損失 2,941百万円を計上)
ーーー  
   
東洋スチレン (PS)
 出資: 電気化学 50%/新日鉄化学 35%/ダイセル化学工業 15%
 能力: 278千トン
 
(百万円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
09/3   46,005   514  506   253
10/3  39,226 -180  -194   162
増減 -6,779  -694  -700 -91
   
   
テクノポリマー(ABS)
 出資: 当初 JSR 60%/三菱化学 40%
2009/3/31に三菱化学撤退 →JSR 100%  
 能力: 290千トン→250千トン
(三菱化学分 90千トン停止、JSR分 50千トン増強) 
 
(百万円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
09/3   48,266  655   1,467   790
10/3  36,746   -302  547  584
増減  -11,520 -957 -920   -206
        
ーーー  
   
日本エーアンドエル(ABS、SBRラテックス)
 出資: 住友化学 67%/三井化学 33%
 能力: ABS 100千トン、SBR 85千トン
 
(百万円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
09/3 39,514 1,098 835 1,047
10/3 29,601 -480 -530 -728
増減 -9,913 -1,578 -1,365 -1,775

 


2010/7/31 ダウ、IOCのスポンサーに

ダウは716日、International Olympic CommitteeTOPThe Olympic Partnersになる契約を締結したと発表した。スポンサー期間は2010年から2020年まで。条件は明らかにしていないが、1億ドル以上との報道もある。

TOPプログラムは1985年に創設された。IOCに対する最高水準の世界的スポンサーシップで、冬季・夏季オリンピック大会を含めた4年間の全体を通してサポートを行う。

従来、オリンピックマークの商業使用権は各国のオリンピック委員会が管理をしていたが、サマランチ会長がIOCの一括管理にし、この制度を始めた。

1業種1社に限定されており、ダウは化学分野で契約した。
(電機分野は同業種の企業が多数選ばれているが、
Panasonicは音響・映像機器、GEは一般電気製品、Samsungは通信機器と細分化されている。)

TOP にはそれぞれの分野で、自社製品、技術、サービスの世界的マーケティング活動の独占的な機会が与えられる。

ダウではこの期間中、10億ドルの売り上げ増加 を期待している。断熱材、熱伝導流体、建築・産業用コーティング剤、電化関連および絶縁、プラスチックなどが対象で、ダウの30以上の事業部門がオリンピック関連のインフラ市場に売り込みをかける。

ダウは2010年冬季オリンピック・パラリンピック・バンクーバー組織委員会の公式サプライヤーになり、スタイロフォーム製品がオリンピック建築物の多くに使用された。

2012年のロンドンオリンピックのTOPには現在、ダウのほか、Coca-ColaAcer(パソコン)、Atos OriginIT)GEMcDonaldsOmegaPanasonicProcter & GambleSamsungVisaの合計11社が選ばれている。
Procter & Gambleはダウに続いて728日に選ばれた。)

このうち、Atos OriginPanasonicSamsung2016年まで、ダウ、Coca-ColaOmegaProcter & GambleVisa2020年までとなっている。
Panasonic2009年から2016年までTOP Partnerを務める。

 

 


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