ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2009/7/1 プラスチックの成形加工業の天馬、旧昭和プラスチック事業を買収

プラスチックの成形加工事業分野のリーディング企業として国内、海外に広く事業を展開している天馬株式会社は6月29日、株式会社アークの所有するタクミック・エスピーの発行済み株式全てを取得し、買収(子会社化)することを決めた。

同社は東アジア及び東南アジア地域は、中長期的には世界の成長センターとして今後大いに発展が期待できることから、これらの地域を重視している。
このため、@東アジア・東南アジア地域の生産拠点ネットワークの拡充、A海外での取引基盤の強化、B輸出向け製品のみならず国内向け製品の製造販売の拡大、等が喫緊の課題となっている。

タクミック・エスピーは、タイ、インドネシア、ベトナムの子会社を通じてプラスチック成形加工事業を行っており、双方にとり大きなシナジー効果が期待できる上、天馬にとっては一挙に生産拠点ネットワークの拡大及び事業領域を広げることとなる。

タクミック・エスピーの海外事業を以下の通り。

インドネシア P.T. Showpla Indo 射出成形機 合計57台、熱硬化性射出成形機、塗装ライン、印刷ライン、組立ライン、等
ベトナム Showpla Vietnam 射出成形機 合計30台、ブロー成形機、塗装ライン、印刷ライン、等
タイ S.P.Evolution Thailand 射出成形機 合計44台塗装ライン、印刷ライン、組立ライン(10)、等

 Showpla Vietnamには住友商事が15%出資している。

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天馬株式会社は1949年に太洋商事として創業したが、1954年にプラスチックへの特化を図り、天馬合成樹脂に社名変更した(1987年に天馬株式会社に変更)

1961年にプラスチック産業の飛躍的な発展による業容拡大にともない、埼玉県川口市に最新鋭工場を建設、その後、各地に工場を建設した。

1988年にグローバルな展開を目指す第一歩として英国スコットランドに子会社を設立した。
その後、1992年に中国における現地日系メーカー向け部品供給を目的に、広東省中山市に子会社を設立したのを皮切りに、上海市、深セン市などに子会社を設立している。

2007年にはベトナムのハノイ郊外に天馬ベトナムを設立している。

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今回買収したタクミック・エスピーは株式会社アークの100%子会社。

アークは1948年に荒木製作所として創業、木製品の製造を主とした。
現在は新製品開発に関するトータルサービスを主たる事業とし、工業デザインモデルの製造・販売、商品開発および企画・デザイン・設計、各種金型の設計・製造及び少ロット成形品の生産・販売などの事業を行っている。

アークは2003年にタクミック・エスピーをユニゾン・キャピタル・パートナーズから買収した。

付記 アークは7月24日、中期経営計画を発表した。
    経営資源を金型製作に集中する方針で、プラスチック成型品事業からは撤退する。

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タクミック・エスピーの元は昭和プラスチックである。上記のインドネシア、ベトナム、タイの事業会社は昭和プラスチックが創業したもの。

」であるといわれる。

1937年に筒中セルロイド(その後、筒中プラスチック)の加工部門が独立して設立されたが、日本で最初に社名に「プラスチック」を使用したものとされている。

筒中セルロイドは井、川両家が経営したため、この名が付けられた。  
筒中プラスチックは住友ベークライトの子会社であったが、2007年3月1日付で株式交換により同社の完全子会社となったうえで2007年7月に同社に合併した。

昭和プラスチックは日本のほか、インドネシア、ベトナム、タイなど海外12カ国19拠点に手を広げた。

日本拠点が保有するデザイン・設計・試作・金型起工等のノウハウと、海外拠点が保有する樹脂の成形・塗装・印刷・サブアセンブリーに至るまでのノウハウを武器に、製造工程の上流から下流までの技術・サービスを提供することで日系企業を中心に高い評価を得ていた。

海外統括会社のショープラ・アジアは1996年にシンガポール証券取引所に上場し、1997年には大阪証券取引所の外国部への上場第1号となり話題を呼んだ。

しかし、1998年にアジアでの金融不安をきっかけに財務が悪化、1998年に会社更生法を申請した。
金融機関の貸し渋りなどを受け、予定していたメキシコ工場の建設資金の調達が難しくなり、資金繰りに行き詰まった。

その後、同社の日本及び上記3カ国の事業はキョウデンが引き継いだ。
他の海外事業は売却された。 

2003年5月にユニゾン・キャピタルと経営陣グループが共同でマネジメントバイアウトを実施した。

共同でタクミック・エスピーを設立、これを通じてキョウデンから事業を買収した。
対象事業の日本拠点、海外生産拠点双方の人員・ノウハウを完全に引き継ぐことで、従来からの業務を中断することなく、企業価値向上を目指した。

同年、ユニゾン・キャピタルはタクミック・エスピーをアークに売却した。


2009/7/2 Lyondell Basell 買収の裏話

Basell 20077月、 Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意し、LyondellBasell が誕生した。
148ドルでの買収で、45%のプレミアムとなっている。

しかし、世界経済の悪化により化学品の需要が減少、LyondellBasell 借入金負担に耐えられず、260億ドルの債務の整理のため、本年1Chapter 11 を申請した。

2009/1/7 LyondellBasellChapter 11 申請

この買収に直接関係する多くの人が大変なことになると指摘していたが、高収益と莫大な手数料に目がくらんで、これらの声に耳をかさなかったーーー。
New Yorkの破産裁判所での LyondellBasellChapter 11 の審議で、債権者が提出した資料で明らかになった。

関係者は、借入金100%での買収により統合会社は莫大な債務を負うこと、統合会社の損益予想は意識的に水増しされていることを懸念していた。しかし、統合会社の長期的な健全性よりも、取引が成立すれば得られる利益をより重視するトップにより、無視されたという。

ーーー

2006年4月にBasell の親会社の Access Industries Lyondell に対し12427ドル(10%のプレミアム)での買収提案をした。
しかし、
Lyondell は真面目に検討するには少なくとも20%のプレミアムが必要として拒否した。

Access の要請を受け、投資銀行のMerrill Lynch 28ドルという数字を出した。買収はよいタイミングだとしている。

しかし、Access内部では懸念が出た。
CEO Lincoln Benet Blavatnik 会長に対して、石油・石油化学事業が下降すれば(既にその可能性が出ていた)、合併会社の事業運営、借入金返済に支障が出る可能性があるとした。

しかし、Blavatnik はこれを無視し、8月には Access は正式に26.5028.50ドルでのオファを行った。Lyondell はこれを拒否した。

2007年初めにLyondell 株価は30ドルを超え、Blavatnik 3538ドルでの買収提案を行った。

Merrill Lynch38ドルでもやっていけるとの計画を出したが、Access 社内では買収に対する懸念と懐疑の声が再び出た。
資金がついてくるというだけで、莫大な負債を抱え込むのは長期的にまずいとしている。

しかしBlavatnik は、 Huntsmanや他の化学会社の買収失敗で、どうしてもLyondell を買収するとの強迫観念に取り付かれていたとされる。

同社の株価は更にアップし、Lyondell48ドルという株価を逆提案、Blavatnik は社内の反対を無視し、これを受け、717日に合併が発表された。

Lyondell2007年下期の利益予想も後押ししたが、後になって余りにも高すぎることが分かった。"Reverse engineering"手法(逆算手法)を使ったとされている。

合併は同年12月に行われたが、これにより Blavatnik3億ドル以上、Lyondell社長は56百万ドル以上を得たとされる。
裁判では、
Merrill や他の投資銀行が数億ドルの顧問料を得るために積極的に取引を推し進めたことを明らかにしている。

 


2009/7/3 ダウ、石化事業のリストラを継続、藻からのバイオ燃料計画に投資

ダウは6月30日の取締役会で石化事業のリストラ計画を承認した。

今回のリストラ計画は、状況の変化に応じ、素早く積極的に製造体制を見直すというダウの方針に基づくものであるとともに、機能製品や先端材料分野に優先的に投資するという変身戦略にも合致するものとしている。

今回の設備停止で年間1億ドルの節約となる。(特別損失としては7億ドルを計上する)
ダウはRohm and Haas との合併で13億ドルのシナジー効果を出すとしている。

今回、下記の設備を停止する。

  立地 能力
エチレン Hahnville, Louisiana  409千トン
EO/EG Hahnville, Louisiana  385/330千トン
EDC/VCM Plaquemine, Louisiana  970/590千トン

同社では昨年、以下の設備の停止を発表している。

  立地 能力
EPDM Seadrift, Texas  
LDPE(The Poly 2 line) Freeport, Texas  100千トン
塩素化ポリエチレン Plaquemine, Louisiana  
Styrene monomer Freeport, Texas  

付記

2010年2月3日、Freeport, Texas10万トンのTDIを2Qに永久停止すると発表。
“because manufacturing TDI there is no longer economically viable.”

ーーー

ダウは6月29日、Algenol Biofuels, Inc.と共同で藻からバイオ燃料をつくるパイロットプラントを建設・運営すると発表した。

同社の Freeport, Texas に建設する。

Algenol の技術はCO2、海水、日光、非耕作地を使用してエタノールをつくるというもの。
ダウと、
National Renewable Energy LaboratoryGeorgia Institute of TechnologyMembrane Technology & Research, Inc. が技術や知見を提供する。

Algenol は藻類の細胞からエタノールを取り出す技術を開発した。藻類を乾燥・加圧してバイオディーゼル用の油を抽出するというコストのかかる工程を省略できる。

ハイブリッドの藻をシールした透明なプラスチック製の光バイオリアクターに入れ、 Direct to Ethanol(TM) 技術で日光とCO2と海水から低コストでエタノールを生産する。  光合成と天然の酵素の働きで糖分を直接エタノールに変換する。

コーンではエーカー当たり年間 400ガロンのエタノールが取れるが、Algenol 技術では6,000ガロンが取れるという。
2009年末にはこれを10,000ガロンにアップする計画で、将来は20,000ガロンまでアップする。

 

付記

ExxonMobil 714日、バイオ企業のSynthetic Genomics Inc.と提携して、光合成藻からの次世代バイオ燃料の開発を行うと発表した。

付記

三菱ケミカルホールディングスが2009年4月1日付で全額出資で設立した樺n球快適化インスティテュートは2010年5月7日、代謝工学研究の世界で第一人者のJames Liao 教授が在籍するUCLAに、増殖する力が高い藻類を利用し、CO2から化学原料となるアルコールを効率よく生産する研究開発を委託することにしたと発表した。

James Liao 教授は、これまでに大腸菌や微細藻類を宿主として、遺伝子組み換えにより新たにデザインした代謝経路を導入し新規のアルコールを発生させることに成功している。


2009/7/3 水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法案が7月3日午後の衆院本会議で、自民、公明、民主、国民新の各党の賛成多数で可決され、参院に送られた。チッソ分社化を容認しない共産、社民の両党は反対した。
来週中に参院でも可決、成立する見通し。

付記

8日午前の参院本会議で与党や民主党などの賛成多数で可決、成立した。

水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法
(平成二十一年七月十五日法律第八十一号)

前文は以下の通り。

 水俣湾及び水俣川並びに阿賀野川に排出されたメチル水銀により発生した水俣病は、八代海の沿岸地域及び阿賀野川の下流地域において、甚大な健康被害と環境汚染をもたらすとともに、長年にわたり地域社会に深刻な影響を及ぼし続けた。水俣病が、今日においても未曾有の公害とされ、我が国における公害問題の原点とされるゆえんである。
 水俣病の被害に関しては、公害健康被害の補償等に関する法律 の認定を受けた方々に対し補償が行われてきたが、水俣病の被害者が多大な苦痛を強いられるとともに、水俣病の被害についての無理解が生まれ、平穏な地域社会に不幸な亀裂がもたらされた。
 平成十六年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決において、国及び熊本県が長期間にわたって適切な対応をなすことができず、水俣病の被害の拡大を防止できなかったことについて責任を認められたところであり、
政府としてその責任を認め、おわびをしなければならない。
 これまで水俣病問題については、平成七年の政治解決等により紛争の解決が図られてきたところであるが、平成十六年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決を機に、新たに水俣病問題をめぐって多くの方々が救済を求めており、その解決には、長期間を要することが見込まれている。
 こうした事態をこのまま看過することはできず、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく判断条件を満たさないものの救済を必要とする方々を水俣病被害者として受け止め、その救済を図ることとする。これにより、地域における紛争を終結させ、水俣病問題の最終解決を図り、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現すべく、この法律を制定する。

一時金の額など具体策は今後、環境省、チッソ、被害者団体などで協議する。秋ごろの施行を目指す。

与党と民主党は衆院、参院にそれぞれ別の法案を出していたが、2日の修正協議で特措法案に合意し、3日の衆院環境委員会に委員長提案の形で再提出した。

法案の主な内容は以下の通り。 2009/5/4 水俣病 53年 参照

  与党案 民主党案 2009/7/2 自民・公明/民主 合意、7/3 衆院可決
対象疾病 1)四肢末梢優位の感覚障害 1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄
5)大脳皮質障害による知的障害、精神障害又は運動障害
1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄

5)全身性感覚障害

(胎児性水俣病患者に多い「大脳皮質障害による知能障害」は法案への明記を見送り)

救済を受けるには、国や原因企業を相手取った訴訟や、認定申請を取り下げることが条件。

診断 公的医療機関限定 主治医の診断を尊重 主治医の診断を活用
被害者給付金 150万円 300万円 別途協議
医療費等
 
療養費
療養手当:月額10,000円
医療費:
 自己負担分相当額
 療養手当:公健法の療養手当と同等額
 特別療養手当:月額10,000円
 
最終解決に向けた取組 公害健康被害補償法
 
地域指定等の解除
    
     ー
地域指定継続
事業再編計画
 事業譲渡(チッソ分社化)
「チッソが一時金支払いに同意するまで凍結」の条件を加え、容認
(チッソが一時金の支払いに同意するまで、環境相が分社化の前提となる事業再編計画を認可しない)

斉藤環境相は3日の閣議後記者会見で、別途協議されることになった一時金の額や救済対象となる症状の診断方法などについて、「(環境省として)関係議員や被害者団体と相談していく」と述べ、法案成立後に具体化を急ぐ考えを示した。

法案では民主党の要求で、「政府が住民の健康などに関する調査研究を実施する」ことが盛り込まれたが、事業の一環としての全戸調査は「考えていない」と述べた。

付記

水俣病関西訴訟で勝訴後、熊本県から水俣病と認定された関西在住の男性が、認定後に求めた水俣病補償協定に基づく一時金の支払いをチッソ(東京都)が拒んだのは不当として、同社に補償金1600万円の支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こしていたことがわかった。

男性は1985年にチッソなどを相手に損害賠償訴訟を起こし、2001年、大阪高裁がチッソに約1000万円の支払いを命じる判決を出し確定。
一方、1984年に県に水俣病の認定を申請。県は2007年、
公害健康被害補償法に基づき水俣病と認定した。

1973年にチッソと患者間で結ばれた水俣病補償協定では水俣病と認定されると1600万〜1800万円の受け取りが可能だが、チッソ側は「損害賠償で解決済み」として支払いを拒み、男性が2009年7月に提訴した。

男性側は「損害賠償と認定による補償は別」と主張している。

ーーー

1995年の村山内閣に続く「第2の政治決着」で、県内の患者団体からは「全員救済にならず、最終解決にはならない」と疑問や批判の声が上がった。

水俣病不知火患者会など患者団体やノーモア・ミナマタ国賠訴訟原告団など5団体は2日、「チッソが水俣病の加害責任から逃れることを容認し、被害者の大量切り捨てによる幕引きを行うものだ」とする「緊急声明」を発表し、抗議した。

日本共産党の志位和夫委員長は2日の記者会見で「加害企業の免罪になる内容であり、到底認められない」と強調した。

修正案は「チッソ分社化」の環境相認可について、同社が「一時金の支払いに同意するまで」と条件をつけましたが、多額の債務がある加害企業チッソの会社清算・消滅などによる責任逃れの歯止めにならないものです。

修正案は、与党案にあった「3年」という期限つき救済が「当分の間」とますます不透明になりました。法案は公害健康被害補償法にもとづく国の判断条件をみたさない被害者の救済を対象としています。手足や全身の感覚障害がある人や、口・舌の感覚障害・視野狭窄などの症状はメチル水銀が原因である場合が「救済」対象と、一部修正されました。与党は1995年の政治決着の2倍以上に広がるなどと説明していますが、救済される被害者の実数はまったく不透明で、すべての水俣病被害者の救済とはいえない内容です。支給する一時金の額は同法成立後に政令で示すとしています。

環境省の有識者会議の元委員で作家の柳田邦男氏らは記者会見で、チッソから事業部門を分社化すれば、将来、チッソ本体が清算されることになり、水俣病を発生・拡大させた国とチッソの責任をあいまいにするとして、法案から分社化を削除するよう求める声明を発表した。

また柳田氏は、今回の法案が一定の期限を設けることについて、恒久対策を求めた有識者会議の提言を無視していると指摘したうえで、「加害者が救済を永続的に行う仕組みを作るべきだ」と述べた。

 


2009/7/4  公取委が見解 「バイオ燃料についての石油連盟の姿勢は独禁法上 問題」

これまで何度か、日本のバイオガソリンの動きについて述べてきた。

1) バイオエタノール・ジャパン・関西が環境省の補助を受けて建設した廃木材からエタノールを製造する世界で初めての商業プラントが竣工した。大都市でのエタノール3%混合ガソリン(E3)大規模供給実証のためのエタノール供給元となる。

日本エタノール販売とペトロブラスの50/50JVの日伯エタノール(Brazil-Japan Ethanol)は3月初めから東京でエタノール3%混合ガソリン(E3)の試験販売を開始。

   
2) 他方、石油連盟は「バイオマス燃料供給有限責任事業組合」を設立、バイオエタノールを石油系ガスと合成し、バイオETBE としてガソリンに混合して利用する。

新日本石油は6月1日、関東1都6県のガソリンスタンド(計861カ所)で、バイオエタノールを混ぜたバイオガソリンの販売を開始した。
コスモ石油も5
13日から埼玉、千葉、東京、神奈川の9カ所のセルフスタンドで販売を開始している。

石油連盟では(1) 大気環境への悪影響、(2) 車の安全性や実用性能から、バイオエタノールをそのままガソリンに混入するのではなく、バイオETBE のガソリン混合を主張している。

2009/3/5  日本のバイオガソリンの動き−2 

2009/6/4 バイオガソリン販売開始

2009/3/5のブログでは以下の通り述べた。

政府(経産省、環境省)と石油業界の対立が続き、別々の方向で動いているのは問題で、普及促進のためには早急に方向をまとめる必要がある。

正当な理由なしに直接添加を妨げた場合、独禁法上は問題にならないのだろうか。

ーーー

公正取引委員会は7月3日、「ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用について」という発表を行った。

2008年12月から2009年3月にかけて、ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用の実態について、関連事業者及び関係省庁に対して行ったヒアリング等による調査に基づく。

調査の結果、公取委では直接混合方式ETBE方式が、市場における競争を通じて評価・選択される環境を整備するという観点から、以下の対応が必要であると考えた。

1) 独占禁止法上の考え方の明確化(対 石油元売会社)

石油連盟が各石油元売会社に対して直接混合方式による製品の製造又は販売に協力しないようにさせること及び各石油元売会社が共同して直接混合方式による製品の製造又は販売に協力しないことを決定することは、独占禁止法に違反する行為である。

さらに、石油連盟が二つの混合方式の一方についてだけ、否定的な見解を表明し続けることは、石油連盟の会員である各石油元売会社の間に、一方の混合方式を採用しないとする共通の認識を醸成するおそれもある。

石油元売会社の行為は、不当に、その取引の相手方に対して、競争者と取引しない条件を付して取引するものであって、競争者の取引の機会を減少させるおそれがある行為であり、不公正な取引方法第11項等に該当し、独占禁止法上問題となるおそれがある。

石油元売会社が、その系列特約店等に対して、他社製品を当該石油元売会社の商標を付さないで販売することを禁止する行為は、独占禁止法第21条 (知的財産権の行使行為に対する適用除外)の問題ではない。

少なくとも、系列特約店等が一部の給油機を直接混合方式の製品専用のものとして、給油機を地下タンクとともに分け、当該給油機から給油する商品がサインポール の石油元売会社の製品でないことを明確に認識できるように表示してこれを販売するのであれば、その販売を禁止する行為は独占禁止法に違反しないとすることはできない。

2)関係省庁において必要な対応

独占禁止法違反行為が行われないような環境を整備するためにも、また、2つの混合方式の双方の促進を確保するためにも、関係省庁において次のような措置を採ることが必要である。

環境省及び経済産業省は、今後のガソリンにおけるバイオマス由来燃料の普及について、連携協力して必要な情報提供を行うこと。
   
環境省は、標準的な仕様のレギュラーガソリンを直接混合方式に用いることについて、環境に与える影響との比較考量を十分に行いつつ、蒸気圧に係る基準について、必要な見直しの可否を検討すること。
   
経済産業省は、バイオエタノールの混合方式について、ETBE方式、直接混合方式の双方について制度的な手当てがなされており、事業者が自由な選択を行うことができる旨を石油連盟及び各石油元売会社に周知すること。

 


2009/7/6 合成ゴム100年

本ブログは2006年2月15日に始まった。

第1号のタイトルは「プラスチック100周年」であった。

「来年2007年はプラスチックが初めて誕生してから100周年に当たる。
1907年、ベルギー系アメリカ人のベークランド博士がフェノール樹脂(商品名:ベークライト)を開発した。・・・・」

本年は「合成ゴム100周年」である。

バイエル(当時の社名はElberfelder Farbenfabriken vormals Friedrich Bayer & Co.)のFritz Hofmann が1909年9月12日、「合成ゴム製造過程」に関する特許第250690号を取得した。

天然ゴムは10万〜100万のイソプレン分子からなる付加重合体(cis-1,4-ポリイソプレン)であることは1905年に解明されたが、誰も重合することが出来なかった。

Hofmann isoprene の代わりに methyl-isoprene を使用した。

彼は原料をスズ製容器にいれ、熱して、待った(時には数ヶ月も)。温度により軟らかさは異なったが、常に弾力性があった。
最初の合成ゴム(メチルゴム)である。

Continental Tireは、早くも1910年に、これを使った最初の自動車用タイヤの生産を始めた。

Hofmann1866年にWeimarの近くで生まれた。薬学と化学を勉強し、2年間大学で教えた後、1897年にBayerに入社した。
1956年に90歳で死亡。

その後の研究で、ナトリウムを加えることで速く、効率的に生産できることが分かった。

Hoffmanの後継者は1920年にブタジエンとナトリウムから別の合成ゴムの製造に成功した。このブタジエンゴムは(Butadien + Na から) Buna と名付けられた。

その後、Walter Bock Eduard Tschunkurがブタジエンとスチレンからスチレン・ブタジエンゴム Buna S を開発、19294月に特許を取得した。

更にEduard TschunkurHelmut KleinerErich Konrad がニトリルゴム Buna N (その後Perbunan に変更)を開発、19304月に特許を取得した。

その後、ナイロンの発明者デュポンのWallace Carothers がクロロプレンゴムを、IG Farben (1925年にBayer, BASF, Hoechst, Agfa 等8社が統合)のOtto Bayer がウレタンゴムを、GE社がシリコーンゴムを、戦前から戦中にかけて次々に開発していった。
第二次大戦後は1954年チーグラー・ナッタ触媒によって天然ゴムと同一構造のシスポリイソプレンの合成天然ゴム(イソプレンゴム)が完成した。
その後、EPDMやTPE(熱可塑性エラストマー)が開発されて現在に至っている。

ーーー

Bayerは2003年末までに、Bayer CropScienceBayer HealthcareBayer PolymersBayer Chemicals の4社と、サービス会社3社の合計 7社を分社化したが、2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場した。

RubberやRubber chemicals 事業はLanxess に移された。

2006/9/6 Bayer と Lanxess 

Lanxess は合成ゴムの世界トップメーカーである。(単位:千トン)

会社名 能力 製品
Lanxess 独、仏、ベルギー、米、加  1,043 ESBR, BR, EPDM, IIR, NBR, CR, SSBR
Goodyear   775 SSBR, BR, IR, ESBR
Kumho   713 ESBR, BR, NBR, SSBR, SBC
ExxonMobil 米、仏、英   592 EPDM, IIR
Polimeri 伊、英   553 EPDM, NBR, ESBR, BR, SSBR, SBC, SSBR
JSR   453 BR, IR, EPDM, NBR, SBC, ESBR
Petroflex ブラジル   401 SSBR, BR, NBR, ESBR, SBC
日本ゼオン 日、米、英   363 SBR, BR, IR, NBR 

 資料:日本ゼオン ファクトブック 2009

Lanxess は2007年にブラジルのBraskem Unipar などからブラジルの合成ゴムメーカー Petroflex の株式の70%を購入、2008年に残りの株式についてTOBを行い、100%を買収した。

Lanxessは2008年2月、シンガポールに年産10万トンのブチルゴム生産拠点を新設すると発表した。2010年稼動の予定であった。

しかし、昨年12月にこれを2012年に延期したが、本年6月29日、需要の減少を受け、2014年稼動に再延期すると発表した。
この期間を利用し、製造技術の更なる改良を行う。

同社では計画の延期はあるが、アジア重視は変わらないとしており、将来的にブチルゴム事業の世界本部をシンガポールに置く方向でシンガポール開発庁と交渉をしている。

また同社は最近、韓国No.1のハンコックタイヤとの間でブチルゴムの5年間の供給契約を結んだ。SBRとポリブタジエンゴムに関しては既に2007年に同社と長期供給契約を締結している。


2009/7/7 サウジが中国のメタノールのダンピング調査に反発

中国商務部は6月24日、輸入メタノールのダンピング調査を開始すると発表した。サウジアラビア、マレーシア、インドネシア、ニュージーランドの4カ国原産のものを対象としている。 

上海焦化(Shanghai Coking Chemical)、内蒙古遠興エナジー(Yuanxing Energy)、エン礦國泰(Yankuang Cathay)、Yankuang Lunan、Pingmei Lantian などの中国メーカーからダンピング調査の申請を受理し、その後検討してきたもの。  

過去1年で中国東部のメタノール価格は劇的に下落した。
昨年第2四半期にトン当たり4930人民元であったのが、最近は1900人民元になっている。
これは経済危機の影響とともに、安価な海外のメタノールの流入によるもので、国内メーカーは輸入数量の増加と価格の低下の被害を受けたとして、メタノール市場の安定化のため政府にダンピング調査を要請した。
 

中国のメタノールのバランスは以下の通り。(千トン)

  生産 輸入 輸出 消費
2007  10,760    845   563  11,042
2008  11,120   1,434   368  12,186
2009
(1-5)
  3,910   2,906    1   6,815

本年の輸入数量は年換算で6,974千トンとなる。    

ーーー

サウジ政府はダンピングを否定し、今回の措置に遺憾の意を表した。
これを受け、中国の大使館スポークスマンは、調査の段階であり、調査完了まではダンピング課税をしないと説明し、サウジ政府の懸念を考慮すると述べた。

National Centre for the Development of Saudi Exports の会長でサウジ商工会議所会頭(メタノールメーカーの1社の株主のSipchem の取締役)は74日、サウジの輸出業者は中国が検討している間に被害を受けるのを心配していると述べ、サウジ政府は報復措置として中国からの鉄や化学品などの輸入品に対して関税を課するよう主張した。
「中国の鉄やプラスチックや電機産業がダンピングで我国の産業に害を与えている」としている。

これに対しては昔のサウジのWTO交渉チームのヘッドは、感情を持ち込まず、中国でダンピングをしていないことを立証すればよい、としている。商工会議所にWTOのルールを教育すると。

サウジの中国へのメタノール輸出はサウジの石化製品の10-15%になり、2008年では20億ドルに達するという。
2008年のサウジの生産量は620万トンで、うち中国に84万トンを輸出した。

SABIC74日、中国市場でダンピングをしていないとの声明を発表した。

サウジの石化メーカーは低コストの原料を入手できるため、競争上、不公平なメリットを受けているとの批判を受けてきた。

サウジは2005年12月にWTOに加盟したが、最後まで問題になったのが政府の決めたエタンとメタンの固定価格(75cent/百万BTU)で、WTOは最終的にこれを承認した。(サウジ政府は天然ガス輸出用の液化費用を勘案すれば安くはないと説得した)

GCC 6ヶ国のうちクウェート、UAE、カタール、バーレンは1998年以前に加盟済みであり、オマーンも2000年末に139番目のメンバーとして正式加盟を果たしており、残る未加盟国はサウジのみであった。

EUはサウジがWTOに加盟した場合、これまでサウジの石化製品に課していた関税障壁を撤廃しなければならず、EU内の石化産業が打撃を受けることは必至である。このため、上記のエタン価格問題や、サウジ国内の工業所有権等の法制度の未整備、商慣習が透明性に欠ける等の点をあげ、反対していたが、米国が説得したといわれている。

サウジのエコノミストは、サウジのWTO加盟の際に他の加盟国はこれに同意しており、サウジの石化製品は輸出のためのインセンティブを与えられているとはいえないと述べている。

ーーー

中国はこれまでサウジ製品に対しては2件、ダンピング調査を行った。

2005年9月にオクタノールについて、日本、韓国、EU、インドネシア品とともに調査を開始したが、これについては2007年1月に「損害なし」との結論で、調査を終結した。

2008年9月に1,4ブタンジオールについて、台湾品とともに調査を開始、2009年5月にクロの仮決定を行い、現在調査を継続している。
この際には、影響が少ないためか、サウジ側に動きはない。
サウジでは Sipchem がマジョリティのInternational Diol Company がブタンから無水マレイン酸→ブタンジオール→テトラヒドロフラン、ガンマブチロラクトンを生産している。)

付記

中国商務部は12月24日、1,4ブタンジオールのダンピング調査でクロの最終決定を行った。
International Diol Companyに対するダンピング税率は仮決定時の20.9%から4.5%に下がった。

ーーー

サウジのメタノールに関して(仮にダンピングの事実があった場合)、中国政府がサウジとの政治的関係を考慮するかどうか、見ものである。

これまでの中国のアンチダンピング措置のうちに、政治的配慮がなされたと見られるのが1件だけある。

中国商務部は2004年3月に、米国・韓国・タイ・台湾原産の無漂白クラフト紙についてダンピング調査を開始し、2005年5月にクロの仮決定、2005年9月にクロの最終決定を行った。

ところが2006年1月9日、国務院決定でこれが取り消された。理由は挙げていない。
(中国の反ダンピング法50条では、商務部が決定の変更や取り消しを提案し、関税委員会がこれを決定できるとなっている)

米政府は2007年2月、「企業に不当な補助金を与えて輸出を促進、輸入を阻害して米国企業に被害を与えている」として中国をWTOに提訴した。
USTRはその発表の中で、過去の米中間のWTOを巡る3つの問題点を挙げている。
その第3が無漂白クラフト紙のダンピング問題で、米国が本件でWTOに提訴すると伝えると、中国側が決定を取り消したとしている。 

付記

商務部は2010年10月25日、サウジについてはシロ、他の3国についてはクロの仮決定を行った。
サウジについては、やはり、政治的配慮を行ったとみられる。

3国については、12月23日にクロの最終決定を行い、ダンピング課税を発表した。
しかし、理由は述べずに、「特殊な事情により、国務院の委員会の承認を得て、追って通知するまで実施しない」との発表を行った。

ーーー

今回の中国のダンピング調査の対象は、サウジアラビア、マレーシア、インドネシア、ニュージーランドの4カ国原産のものである。

各国のメーカーは以下の通り。

  社名 能力 出資
ウジアラビア AR-RAZI (Saudi Methanol) 490万トン SABIC 50%/日本・サウジアラビアメタノール(JSMC) 50%
 JSMCは三菱ガス化学 47%/海外経済協力基金 30% ほか
IBN SINANational Methanol Company) 110万トン SABIC 50%/CTE (Hoechst-Celanese Duke and Energy) 50%
International Methanol Company 100万トン Sipchem 65%/Japan-Arabia Methanol (JAMC)35%
 JAMCは三井物産55%/三菱商事15%/ダイセル15%/飯野海運15%
マレーシア Petronas  66万トン
170万トン
 
インドネシア Pertamina  33万トン  
PT Kaltim Methanol Industri  66万トン 双日 85%/ダイセル 5%/ PT Humpuss 10%
ニュージーランド Methanex 240万トン  

 


2009/7/8 帝人、NatureWorks の持分譲渡、自社の耐熱性バイオプラスチックに集中

帝人は米国Cargill との合弁会社のNatureWorks LLCの保有持分50%全てをCargillに譲渡し、6月30日を以って合弁契約を解消した。
今後は、
Cargill が全持分を保有することになり、将来の成長を目指してポリ乳酸ポリマーの生産・販売事業を継続して運営する

NatureWorks は、1997年に Cargill Dow 50/50JVCargill Dow LLC して設立された。
2005年1月にCargill
Dow の持分を買収、100%子会社となった同社をNatureWorks LLC に改称した。
2007年10月、帝人が同社に50%出資した。

2007/10/6 帝人、Cargill NatureWorks に出資

世界最大である年産14万 トン規模のポリ乳酸ポリマー(PLA)の商業生産施設を有し、「Ingeo」ブランドのバイオポリマーを製造・販売してきた。

ーーー

今回、帝人は、事業の「選択と集中」を徹底する中で、独自開発の「バイオフロント(BIOFRONT)に経営資源を集中し、技術開発・市場開拓をさらに加速していくこととした。既に2008年度にNatureWorks 出資に関わる損失処理を実施している。

帝人は2006年3月、武蔵野化学研究所と共同で新型耐熱性バイオプラスチックの開発に成功したと発表した。

ポリ乳酸(PLA)をはじめ、バイオプラスチックは耐熱性や耐衝撃性などの性能面において石油由来のプラスチックに及ばないが、新型耐熱性バイオプラスチックはポリ乳酸に使用されるL乳酸と、その光学異性体であるD乳酸を原料とし、両者のユニークな結晶構造が高耐熱性を生み出している。

・使用する原料が植物由来であるため、生分解性がある。
・融点は約210℃で、ポリ乳酸の融点を40℃も上回る。
 (代表的な耐熱性プラスチックのPBTに匹敵)
・高耐熱特性により、既存のバイオプラスチック製の繊維では不可能であったアイロンがけも可能。
 また、フィルムや樹脂の高温成型プロセスへの適合性も有している。
・透明性においても、PETを上回る高透明性を有する。

帝人は20079この耐熱性バイオプラスチックに帝人グループとし て統一ブランドを「バイオフロントとし、グループを挙げて具体的に市場展開を図っていくと発表した。

繊維  :帝人ファイバー
フィルム:帝人
樹脂  :帝人化成

その市場展開の第一弾として、帝人ファイバーがマツダと共同で、自動車内装に使用可能な品質と耐久性を有する「バイオフロント繊維を100%使用した自動車用シートファブリックの開発に成功した。

本年6月、帝人は「バイオフロント」について、高温・高湿度下での耐久性を大幅に向上させることが可能な「加水分解防止技術」の開発に成功したと発表した。

バイオフロントは他のバイオプラスチックと同様に、高温・高湿度の環境においてはポリマーが加水分解を起こしやすく、PETなどに比べて使用条件に制限を受ける場合があった。

帝人では得意とするポリマー基盤技術の駆使と、分子レベルでの反応をコントロールする革新的な技術の創生により、 「バイオフロント」の本来有する耐熱性を損なうことなく、加水分解の原因となる要素をコントロールすることにより、それらの作用を極限まで抑制することに 成功したもの。

従来品と比較して10倍以上の耐加水分解性が発現することが確認されており、PETとほぼ同等の耐久性を 実現した。

これにより、既に採用されているカーシート用繊維として耐久性が向上することはもとより、電気・電子分野や自動車分野などにおい て、より高温・高湿度の厳しい環境にさらされる部品や部材として使用することが可能となる。

帝人は2008年7月に岩国事業所に年産200トンの実証プラントを稼動させたが、同時にトヨタから豊田市にある年産能力1,000トンの実証プラントを譲り受けた。(トヨタは実証実験にメドがつき、稼動を停止していた。)

解体して松山事業所に移設し、改造、本年8月から立ち上げるが、今回の改良技術を生かす。

同社は2011年度にも、年間3,000〜5,000トンの生産規模で事業化する方針といわれている。


付記

NatureWorksは7月9日、オランダに本拠を置く Avantium との提携を発表した。

Avantium は20002にシェルからスピンオフして設立された。PfizerGSKEastman ChemicalWR GraceAkzo Nobel などのコンソーシアムが出資し、戦略的パートナーとなっている。

同社は糖質からバイオ燃料、プラスチックを生産する技術を開発した。(製品名 Furanics

Avantiumの製造技術とNatureWorksの市場開発技術を統合するもので、AvantiumのバイオプラスチックをNatureWorksがいろいろの分野でテストを行う。


2009/7/8 EU 裁判所、モノマーに関するREACH規定は有効と判断

EU裁判所は7日、反応してポリマーになったモノマーも登録が必要とするREACH規定は有効と判断した。

REACH規則では、ポリマーは登録と評価は除外されている。
しかし、ポリマーを構成する
2wt%以上のモノマーが年間1t以上の場合は登録が必要としている。(article 6 (3)

EUは当初、ポリマーも登録対象としたが、化学業界のロビー活動の結果、最終的にポリマーは対象外となった。

化学会社4社(フランスのS.P.C.M. SA、ドイツのC.H. Erbsloeh KG、英国のLake Chemicals and Minerals、米国のHercules )が、反応済のモノマーはポリマーの部分であり、ポリマーである以上は規定により登録の対象外であるとし、この規定を除外することを求めていた。
(手続き上、直接
EU裁判所に訴えることは出来ないため、英国環境省を通じて、英国最高裁からEU裁判所に判断を仰ぐ形式をとった)

EU裁判所は、REACH規定のモノマーには反応してポリマーになったモノマーも含まれると判断した。


2009/7/9 中国政府、BASF-YPCの増設計画承認

中国政府7月1日付で、シノペックとBASFが2008年3月に提出した両社の50/50JVの南京のエチレンコンプレックス BASF-YPCの増設計画のFSを承認した。

BASF-YPC2000年に50/50JVとして設立され、シノペック揚子石化に隣接して建設された。
第一期(投資額 29億ドル)は2005年6月に商業生産を開始した。

約14億ドル(当初計画では9億ドル)を投じて、既存のエチレンを60万トンから74万トンへ増強するとともに、新しく10基のプラントを建設、既存3基のプラントを増強する。

2010年のエチレン定修時に繋ぎこみを行い、2011年に稼動する。

また、シナジー効果を高めるため、隣接するBASFとシノペックのJVのYangzi-BASF Styrenics をBASF-YPCに統合する。

Yangzi-BASF Styrenics SINOPEC揚子石化が40%、BASFが50%、BASF (China)が10%を出資して199410に設立され、1997末に生産を開始した。

SM、PS、EPSを製造販売している。

計画は次の通り。(単位:千トン)

製品 既存   増設計画
チレン エチレン   600 増設(→740
C4 complex    - Butadiene
2-propylheptanol
Isobutene
Polyisobutene.
EO EG   300 EO 増設 
EO Derivatives    - Butyl glycol ether
Non-ionic surfactants
Amines complex    - Ethanolamines
Ethyleneamines
Dimethylethanolamine
     - DMA3
LDPE   400  
Acrylics value chain アクリル酸   160  
アクリル酸エステル   215  
     - Super-absorbent polymer (SAP)
C4オキソアルコール   250 増設
蟻酸    50  
プロピオン酸    30 増設
メチルアミン    30  
ジメチルホルムアミド(DMF    40  
Yangzi-BASF Styrenics Ethylbenzene   130 BASF-YPCに統合
Styrene monomer   120
Polystyrene   200
EPS    52

付記  2014/5 Neopentylglycol(年産40千トン)建設決定

 

 

参考  2006/7/10 BASFの中国戦略


 

2009/7/10 Rio Tinto 社員、中国で拘束

Rio Tinto の上海事務所の社員4名が7月5日に上海の国家安全局に拘束され、調べられている。
4名のうち、3名は中国人で、残り1名は中国系で豪州国籍を有している。いずれも鉄鉱石部門で中国を担当している。

国家安全局では拘束の事実は認めているが、理由は明らかにしていない。

Rio Tinto は中国側の調査には完全に協力するとし、何が起こったのかを問い合わせているとしている。
豪州政府は領事館による面会を要請した。

拘束の理由として、いろいろ噂されている。

豪州の外務相は8日、拘束された豪州人は国家機密を盗んだとしてスパイ容疑で調べられていると述べた。

鉄鋼メーカー筋は中国の鉄鋼メーカーへの贈賄容疑ではないかとしている。

豪州のメディアは鉄鉱石市場を操作した疑いではないかとし、中国のメディアはRio Tinto が価格引き上げのためスポット市場に製品を出すのを控えたと批判している。

首都鋼鉄の役員も拘束されたとの報道もある。

ーーー

Rio Tinto 526日に新日鉄との2009年度価格交渉を終えた。粉状鉱の価格を前年度比 33%値下げすることで合意したもので、日本と韓国のメーカーはこれを受け入れた。

価格推移(単位:cent/dry metric ton unit
  2007 2008 2009 2008 2007
Pilbara Blend Fines粉状鉱   80.42  144.66   97  -33%  +21%
Pilbara Blend Lump塊状鉱  102.64  201.69  112  -44%   +9%

    2009/5/27 2009年度鉄鉱石価格

中国鋼鉄工業協会や中国の鉄鋼会社にとってはこれは受け入れがたい値段で、中国鋼鉄工業協会は緊急会議を開き、対策を協議し、Rio Tinto に対して45%の値下げを要求した。

Rio はこれを拒否し、まとまらないまま、7月1日からはスポット価格での取引に移行することとなった。

しかし、7月8日の中国紙は、中国側がRioと日本側の上記の価格をそのまま受け入れると報道した。
また、従来の1年契約から、半年契約への切り替えも受け入れたという。

スポット価格が4月の安値から32%も上がっているのが理由で、このままでは日本や韓国の価格よりも高くなる。

但し、Rio Tinto は何も発表しておらず、中国の鉄鋼メーカーも、これが誤りで交渉は続いているとしている。

上記の、「鉄鉱石市場の操作」、「スポット市場・・」はこれを指している。
中国に値下げをすれば、日本や韓国にも波及するため、これを防ぐためにスポット価格を引き上げたのではないかというもの。

付記

その後の情報では、鉄鉱石価格交渉に関して、国家機密を盗んだという疑惑の模様。
中国側は中国鋼鉄工業協会が業界を代表してRio Tinto との交渉に当たっているが、
役員が拘束された首都鋼鉄は国営企業で、鉄鉱石価格交渉での中国側の落とし所(これが国家機密か?)を知る立場にある。
この役員に賄賂を渡して情報を得ようとしたとされる。

ーーー

Rio Tinto 本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表したが、6月5日、Rio Tinto は中国アルミの出資取り止めを発表した。違約金として195百万米ドルを支払う。

中国勢の豪州進出が相次ぎ、これに不安を感じる反対派と中国との関係強化を図る賛成派が互いを攻撃し、政治問題化した。

2009/6/6  中国アルミのRio Tinto への出資 取り止め

新華社通信はこれをRioの背信行為であると批判している。


2009/7/11 中国企業、海外の鉄鉱石にも進出

中国企業が世界の鉄鉱石会社に相次ぎ出資している。

豪州の資源会社 Emergent Resources7月3日、西豪州のBeyondie Iron project の開発のため、中国冶金科工(China Metallurgical Investment)とJVを設立すると発表した。

同鉱山は当面、年間300万トンの磁鉄精鉱生産を目標としているが、JVで2億豪ドル(159百万米ドル)を集める。

Emergent はまた、中国冶金科工に対し新株860万株(@45セント、387万豪ドル)を発行、490万株(@27セント、116万豪ドル)のオプションを与える。増資資金はBeyondie Iron project の運転資金になる。

Emergent は西豪州に下記の権益を有している。

Beyondie Iron Project 磁鉄鉱
Glengarry Mt Bartle Project base metals
North Pool Project base metals, gold
Diamond Well Project base metals
Rainbow Bore, Clarrie Well and Fenceline base metals, uranium
Mt Narryer Project gold, uranium
Marble Bar Project gold, copper
Paterson / Rudall River Project gold, copper, uranium

 

   −−−

中国冶金科工は2008年8月にCape Lambert Iron Ore Ltd. から4億豪ドルで同社のCape Lambert Iron Ore Project を買収している。

Cape Lambert Iron Ore Project は西豪州の Pilbara 地区のプロジェクト。

看板鉄鉱石プロジェクトを売却し4億豪ドルを取得した Cape Lambert は、新たな買収の機会を探っている。

ーーー

Cape Lambert の南西のCape Preston では香港のCITIC Pacific の子会社のCITIC Pacific Mining Management が35億米ドルの鉄鉱山開発を行っている。これには中国冶金科工が20%を出資している。

20億トンの磁鉄鉱を開発し、高グレードの磁鉄精鉱とペレットを25年間、毎年27.6百万トンを輸出する計画。

これに加え、40億トンの鉱山の権利を得るオプションを持っており、その場合、年間生産量は70百万トンに達する。

ーーー

鞍山鋼鉄集団(AnSteel )は6月25日、豪州の鉄鉱石生産会社Gindalbie Metalsヘの 出資比率を12.6%から36.28%に高め最大株主になることについて中国政府の承認を得た。昨年8月にGindalbie Metalsから提案のあったもので、Gindalbieの株主総会は本年2月にこれを承認している。

Gindalbie は新株発行で162百万豪ドルを集める。

この後、両社は144百万豪ドルずつを西豪州のKarara iron ore project 開発のための50/50 JV(Karara Mining Limited)出資する。
両社による出資総額
はこれで534百万豪ドルとなる。

残りの開発資金(12億米ドルまで)は中国開発銀行によるプロジェクトローンで賄われる。

Karara は2010から年間10百万トンの鉄鉱石を生産する。磁鉄鉱工が800万トン、赤鉄鉱が200万トンとなっている。

ーーー

中国鉄鋼大手の武漢鋼鉄集団(Wuhan Iron & Steel )は本年6月、ブラジルの鉄鉱石生産会社 MMX(Mineração e Metálicos S.A)グループに9.09%(120百万米ドル)を、MMX の子会社 MMX Sudeste に23%(280百万米ドル)を出資することを提案、MMX側も「武漢の提案を受諾する方向で進める」と表明した。

武漢はMMXへの9.09%の投資を通じ、実質的にMMX Sudeste 30%を出資することとなる。
これは、MMX
の借入金返済、Sudesteの開発、拡張の資金となる。

MMXは現在、2つの子会社MMX Corumba and MMX Sudesteで操業している。
MMX Sudeste Minas Gerais州で2つの孫会社 AVG Minerminas で操業している。

付記

武漢鋼鉄は11月30日、EBXグループの子会社、MMXの第二株主となり、鉄鉱石製品の長期権益を獲得した。
さらにEBXグループと共同出資してブラジル・リオデジャネイロ州の工業パークに鋼鉄工場を建設する。

   −−−

カナダのConsolidated Thompson Iron Mines (CLM) 69日、武漢鋼鉄集団が同社に240百万米ドルを投資する契約に調印したと発表した。

武漢は105百万カナダドルでCLMの19.99%を取得する。
更に武漢は残額で 武漢25%/CLM75% 出資の
limited partnership を設立し、CLMBloomLake鉄鉱山(QC州)をこれに移管する。
この運営は
CLMが引き受ける。

武漢はBloomLake鉄鉱山の存続期間にわたり、毎年の生産物の出資比率分を市場価格で購入する義務を負う。
武漢はまた、
CLMの他の鉱山の生産物の長期引取権を一定条件で持つ。

なおCLMはより有利な提案があれば、200万ドルの解約料の支払いで解約する権利を持つ。

付記

武漢鋼鉄集団は7月20日、豪州のCentrex Metals Ltd との間で協力契約を締結した。

武漢はCentrex 15%を出資し、南豪州のEyre Peninsula Iron 鉱山を共同開発し、60%の権利を取得する。

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Baosteel Group(宝鋼集団)と豪州のAquila Resources 928日、戦略的協力の覚書と出資契約を締結した。

・両社は
Aquilaの事業の促進を図る。

COMMODITY/PROJECT AQUILAS
INTEREST
PLANNED
PRODUCTION
AQUILAS SHARE
OF PRODUCTION
IRON ORE West Pilbara Iron Ore ~40% 30 - 40 Mtpa 12 - 16 Mtpa
Thabazimbi (South Africa) 74% 2.5 Mtpa 1.9 Mtpa
Total   32.5- 42.5 Mtpa 13.9 - 17.9 Mtpa
COAL
(Queensland)
Isaac Plains 50% 2.8 Mtpa 1.4 Mtpa
Eagle Downs 50% up to 8.0 Mtpa up to 4.0 Mtpa
Washpool 100% 1.6 Mtpa 1.6 Mtpa
Total   12.4 Mtpa 7.0 Mtpa
MANGANESE
 (South Africa)
Avontuur 74% 1.0 Mtpa 0.74 Mtpa

Bao15%の出資を行う。(A$285.6 million
Baoは中国金融機関からの借入に協力
Baoは諸計画に直接投資又は協力
Bao副社長がAquila の取締役に

付記

Foreign Investment Review Board 10月30日Baosteel GroupによるAquila Resources15%の取得を承認した。(19.99%までの取得を承認)

11月23日、15%の買収を発表。

ーーー

付記

豪州のWestern Plains Resources Ltd は6月12日、武漢鋼鉄集団との間で南豪州のHawks Nest磁鉄鉱開発に武漢が50%出資する契約を締結した。Hawks Nest Woomera Prohibited Area にある。

豪国防省は9月24日、国家の安全に及ぶとの理由で、中国武漢鋼鉄公司によるWoomera Prohibited Area禁止地区での磁鉄鉱の投資採掘は認めないと発表した。

西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. は中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めたが、豪州のForeign Investment Review Board924日、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。

これまでの数カ月間、豪州政府と何度も話し合ったが、豪国防省は最近、国家安全の角度からこの投資プロジェクトを終止させた。
豪政府が中国側のウーメラ地区への投資を拒否するのは、今年で2度目。 

2009/4/25 豪州政府、中国五鉱集団による豪州OZ Minerals 買収を条件付で承認

しかし、豪州財務相は3月27日声明を発表、OZ Minerals Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。

両社は協議の結果、Prominent Hill 鉱山を買収対象から除外し、買収額を12.1億米ドルに修正した。


2009/7/13 中国、シノペック天津石化計画へのSABICの参加を承認

SABIC711日、中国国家発展改革委員会(NDRC)が、現在建設中のシノペックの天津石化計画へのSABICの参加を承認したと発表した。

昨年の6月にシノペックとSABICは戦略的協力契約を調印し、60万トンのPE、40万トンのEGを生産する50/50JVを設立するとともに、ポリカーボネートなど新製品のFSを実施することを決め、その後、SINOPEC SABIC Tianjin Petrochemical が設立された。

参考 2008/2/6  SABICの中国進出

両社はその後、エチレンコンプレックス本体へのSABICの参加を決めた。SINOPEC SABIC Tianjin Petrochemical がエチレンコンプレックスを運営する。

ーーー

シノペックは既に天津の大港石化基地にエチレン20万トンのコンプレックス(PE12万トン、PP30万トンほか)を持っている。

シノペックと天津市は大規模石化計画をたて、1997年頃にダウケミカルと中国側(SINOPEC/天津市)の50/50 JV検討された。
しかし、
ダウが経済性を理由に撤退した。

その後、天津市は外資企業の参加を求め、
サウジアラムコとの合弁の報道もあった。またSABICも2004年4月にシノペックに対して本計画に関心ありとの意向を示したが、そのときは進展はなかった。

シノペックは2005末に単独での拡張計画の承認を受け、20066月に着工した。本年9月に建設が完成する予定。

既存の500万トンの製油所を1250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設するもので、誘導品は以下の通り。
 LLDPE 30
トン
 HDPE  30
トン(INEOS Innovene S Process
 PP   45
万トン(LyondellBasell Spherizone PP) 
 EOG  42
万トン(Dow技術)
 フェノール35万トン
 ブタジエン20万トン
 ブテン
-1 5万トン
 分解ガソリン 
65万トン
 
PC   (FS中)
       ↓

付記
2011年5月17日、両社は26万トンのPC建設の覚書締結を発表した。
Sabic Innovative Plasticsの最新技術(下記旭化成法と同様のホスゲンと溶媒塩化メチレンを使用しないもの)を採用、2015年完成予定。

2006年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、SABICがシノペックとの交渉を再開した。

2006/7/3 SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画着工

 


2009/7/13 臓器移植法改正案 成立

参院は13日午後の本会議で、脳死後の臓器提供の年齢制限を撤廃し、本人の意思表示がなくても家族の承諾で提供を可能とする臓器移植法改正案(A案)を賛成多数で可決、成立した。
賛成138票、反対82票、欠席・棄権は21人だった。

1997年の施行から12年ぶりの改正となる。
現行法の付則第二条の規定は以下の通り。

この法律による臓器の移植については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、その全般について検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする。

採決は、A案修正案、A案、子どもの脳死臨時調査会設置法案の順で行われた。

現行法の脳死の定義を維持するA案修正案は先立って採決されたが、賛成72票、反対135票、欠席・棄権は34人で否決。
子どもの脳死判定基準などを議論する「子どもの脳死臨時調査会」の設置を盛り込んだ対案は採決されず廃案となった。

付記

改正法は、2010年7月17日に全面施行された。
本人の意思が不明の場合でも家族が承諾すれば臓器提供できるとし、これに伴い年齢制限も撤廃された。

2010年8月9日、関東信越地方の病院で18歳以上の患者が(患者本人の提供意思は不明だったが)家族承諾で脳死となり、家族の承諾のみで臓器提供されることになった。

従来認められなかった親族を優先する提供が可能となり、この規定は2010年1月に先行施行された。

  2010/1/18  改正臓器移植法 一部施行

ーーー

衆院は6月18日の本会議で、臓器移植法改正案を採決し、原則「脳死は人の死」とし、臓器提供の拡大をめざすA案を賛成多数で可決し、参院に送付した。

2009/6/19 臓器移植法改正、A案が衆院通過 

参院では衆院から送られたA案に加え、参院で提出された修正A案、子どもの脳死臨調設置法案の3案が審議された。

  現行法 A案 修正A案 子どもの脳死臨調
設置法案
脳死位置づけ 提供時に限り
人の死
人の死
(現行法規定削除)
         現行法と同じ
臓器提供の条件 本人の書面同意と
家族の同意
     家族の同意
     本人が生前に拒否可能
現行法と同じ
提供可能年齢 15歳以上          0歳以上 内閣府に「子ども脳死
臨調」を設置
その他 移植術を受ける機会は、
公平に与えられるよう配慮
親族への優先提供 提供者の家族への
精神的支援検討など
付則に明記
生体移植のルール検討

自民、公明、民主の有志議員は7月7日、現行法の通り「脳死は臓器提供の場合のみ人の死」とするA案の修正案を、参議院に提出した。

野党議員有志は6月23日、A案の対案として、子どもの脳死臨調設置法案(子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案)を提出した。

・脳死の定義を現行法と同様に臓器摘出時に限って人の死とする
・子供からの臓器摘出の課題を検討する「子どもの脳死臨調」を内閣府に設置する。
 検討するのは
 (1)子供の脳死判定基準
 (2)本人の意思確認や家族の関与
 (3)虐待された児童からの臓器摘出防止策−−など。
 法施行後1年以内に結果をまとめ、首相に意見を述べる。

法律案を提出する理由として以下のように述べている。

臓器の移植及びこれに使用されるための臓器の摘出が人間の尊厳の保持及び人権の保障に重大な影響を与える可能性があること等にかんがみ、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討並びに当該検討に係る臨時子ども脳死・臓器移植調査会の設置について定めるとともに、適正な移植医療の確保のための検討及び検証等について定める必要がある。

付記

改正臓器移植法が2010年1月17日から一部施行され、臓器提供者(ドナー)から親族に臓器を優先提供できるようになる。
7月から全面施行される。

親族優先提供の新規定は以下の通り。
(1)親族の範囲は、配偶者と親子(養子と事実婚は除外、特別養子縁組は容認)
(2)親族への限定提供は無効
(3)個人名での指定は、個人でなく、親族への提供として扱う
(4)親族間での優先順位付けは、順位通りでなく、親族への提供として扱う(医学的優先順位による)
(5)優先提供の意思表示ができる年齢は15歳以上
(6)優先提供が受けられる年齢は特に制限なし
(7)意思表示は書面で(登録システム、意思表示カード、意思表示シールを張った保険証などに「親族」などと書き込む)
(8)自殺したドナーからの優先提供は認めない(自殺防止)


2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資

中国投資有限責任公司(CIC) 73日、100%子会社の Fullbloom Investment Corporation を通じて、資金難のカナダの資源大手Teck Resources Limited の株17.2%を現金15億米ドルで購入することで合意したと発表した。

CICは最低1年間は株を保有する。

ーーー

CICは中国政府が2007年9月に、外貨資産のうちの2000億米ドルを資本金とし、海外での運用を目的として設立した。

中国の外貨準備は、2002年末の2,864億ドルから2007年末の15,283億ドルまでに膨らんだ。
中国は為替市場安定や対外支払準備のため流動性の高い外貨準備7,000億ドルを必要としているが、外貨準備はこれを超えて増え続け、人民元の切り上げ圧力となっており、超過部分約8,000億ドルの運用が課題となっていた。

CICの設立直前の2007年6月に中国政府は30億ドルで米国の投資会社Blackstone groupの筆頭株主となった。(CICに移管)

CICは2007年12月にMorgan Stanley の転換社債56億ドルを購入し、9.86%の株主となった。Morgan Stanley には2008年に三菱UFJが投資したためCICの比率は7.68%に下がったが、本年62日、12億ドルで株式を購入し、持株比率を9.86%に戻した。

真山仁の小説「ハゲタカ」シリーズの第三部「レッドゾーン」は中国の国家ファンドによる日本の自動車メーカー買収を扱っている。

その中で主人公は国家ファンドの目的を、「ドルを無駄使いすること。下手に利益を上げれば外貨準備高を増やしてしまい、人民元切り上げの圧力が高まる」とし、短期的には損をするが、長期的にはノウハウ(金融)や技術(自動車)を獲得することを狙っているとしている。

一般の企業では決して太刀打ちできない存在である。

金融危機の影響で評価損が膨らみ、昨年は大規模投資を控えていた。

CICはこれまで主として金融機関に投資してきたが、資源権益の獲得を目指したものと見られている。
中国の企業は政府の支援を受け、石油、石炭、鉄鉱石、その他、資源権益の獲得に積極的である。

ーーー

Teck Resources はカナダの資源大手で、石炭・銅・鉛・亜鉛・モリブデン・金を扱っており、亜鉛では世界最大級、原料炭の海上輸送シェアは世界2位。

同社は1913年に金鉱山生産のため設立されたTeck-Hughes Gold Mines と、銀・亜鉛・鉛鉱山開発を主体とした1906年設立のComincoが2001年に合併してできた。(当初名はTeck Cominco)

2008年には石炭事業のJVパートナーである
Fording Canadian Coal Trustを98億ドルで買収して石炭資産を拡大した。

Teck Fording Canadian Coal 買収後、コモディティの価格は暴落し、カナダ経済も不況に陥った。

Teck は本年初めには借入金の一部の支払猶予を受けたが、借入金返済のため、資産売却、コストカットを行っている。

この一環として金資産のJV権益の売却を進めており、カナダの金鉱山の権益を2008年にJV相手のBarrick Goldに売却、本年4月にはアラスカのPogo鉱山の権益をJVパートナーの住友金属鉱山2億4500万米ドルで売却した。

Pogo金鉱山は住友金属鉱山の海外での初の主導的な開発プロジェクトで、1991年に探鉱を開始、1997年にTechと提携し、探鉱及び企業化調査を進めた。

1)位置:米国アラスカ州フェアバンクスの南東約145キロ
2)権益比率:住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山100%子会社) 51%→85%
        Teck Resources 40%→ 0
        SC Minerals America(住友商事100%子会社) 9%→15%
3)埋蔵金量:109t(2008年末鉱量計算結果)
4)年間生産金量:11〜12t/年
5)開発投資額:約378百万ドル(出資比率で負担)

採掘後、選鉱→青化浸出→電解採取を経てドーレ(金品位約94%、銀品位約6%)として回収している。

CICへの株式売却収入15億米ドルは主に借入金返済に回される。

 


2009/7/14  韓国・EU、FTA最終合意

韓国とEUは7月13日、FTAの締結交渉が妥結したと発表した。
欧州訪問中の韓国の李明博大統領とEU議長国のスウェーデンのラインフェルト首相との首脳会談で決着した。
今後、双方が承認手続きを経て協定に署名、それぞれの議会の批准により発効する。

付記 10月15日 仮署名、2010年前半の発効を目指した。

付記 
EUは
20109月13日、定例の一般・対外関係理事会で、韓国とのFTAの承認の可否について話し合ったが、イタリアの反対により、再び決定が留保された。

AP通信は、イタリアが「韓国製の小型車が輸入された場合、国内の自動車市場が深刻な脅威にさらされる」という理由で反対している、と報じた。

その後、イタリアは年内の発効を遅らせることを条件に同意、9月16日のEU外相理事会では2011年7月1日発効で合意した。
EUと韓国は10月6日の首脳会議で正式署名した。2011年7月1日に発効する見通し。

本年3月24日に事実上妥結しながらも、いくつかの問題で最終的な妥結に至らず、その後双方で交渉を続けていた。

EU執行委員会が7月10日、加盟27カ国で構成される通商政策諮問機構(133条委員会)に韓国とEUのFTA交渉の最終案を報告し、加盟各国がこれを受け入れることとしたもの。これまで韓国とのFTAに消極的だったドイツが賛成に回り、ポーランドなど一部の東欧諸国も肯定的な立場に変わったものと見られる。

韓国とEUがFTAを締結・発効して韓国企業の欧州市場への輸出に伴う関税がゼロになれば、競合関係にある日本の自動車や電機メーカーなどは価格競争上のハンディを負うことになる。

韓国・米国間のFTAについては200742日に交渉が妥結したが、特に米国内での反対が強く、発効に至っていない。

2007/4/4 米韓FTA妥結

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韓国とEUは本年3月24日、自動車・ワイン・豚肉の関税など自由貿易協定(FTA)交渉の中核争点について合意し、1年10カ月間かけて行われた交渉が事実上妥結した。

2009/3/27  韓国とEU、FTA交渉が事実上妥結

双方は、相手地域で生産した自動車・冷蔵庫・カラーTVなど工業品に対しFTA発効5年以内に全関税を撤廃すると基本合意した。
EUの関税は、自動車で10%、テレビで14%と高率で、関税撤廃による韓国企業の輸出拡大が予想される。
見返りとして、農業品などの関税撤廃についても大部分は合意した。

工業製品関税については、原則 5年間で関税を完全撤廃。
  自動車部品は協定発効と同時に関税を撤廃、
  中大型乗用車は3年、小型自動車は5年内に撤廃
韓国は例外として40余りのセンシティブ品目について7年内の関税撤廃。
 (関税率が16%のその他機械類、純毛織物など)

EU産ワインは、直ちに撤廃
EU産豚肉に対する関税は、冷蔵肉全体とバラ肉冷凍肉は10年以内に、その他の部位の冷凍肉は5年以内に撤廃。
但し、韓国のコメ市場は開放しない。トウガラシ、ニンニク、タマネギも「主要調味料」として関税を据え置く。

現在、EU産農産物のうち輸入トップは「冷凍豚肉」だが、FTA妥結以降、韓国市場シェアをさらに拡大する可能性が高い。
ワインもEUの対韓主要輸出品目で、EU産チーズも消費が増えるとみられる。

双方は、G20首脳会議(金融サミッ ト)が開かれる4月2日にロンドンで通商相会談を開き、関税引き下げ・原産地決定基準・農産物関税撤廃といった残りの争点を最終的に妥結する見通しだった。

しかし、最終的な妥結に至らなかった。

争点は、「関税の払い戻し」。

韓国は中国などから部品を輸入し完成品を輸出する場合、部品輸入については関税を払い戻している。
EU側は韓国・EU間FTAの利益が第三国に向かいかねないとして、これに反対している。
特に欧州自動車産業界は、韓国メーカーが安価な中国製部品を使った自動車を輸出できるのは不公平とした。

他方、韓国政府はFTA交渉初期から、関税還付問題は決して譲れないとの姿勢。

4月の通商相会談では、「韓国の関税還付制度を維持してほしい」という韓国側の要求は受け入れられなかった。

今回、本件については、韓国製品に外国産部品の使用が「著しく増える場合」、EUはこれを規制する「セーフガード(緊急輸出入制限措置)」を適用できる、とする保護措置を取ることで妥協した。

付記

最終的には、「協定発効5年後から、韓国産自動車の輸入部品使用割合が重大な変化のレベルにまで高まれば、関税の払い戻し額を5%に制限する」と定められた。

ーーー

韓国の外交通商部の李恵民FTA交渉代表は今回の協定には今後議論になるような「毒素条項」はないと強調した。

特に韓米FTA締結時に韓国に一方的に不利な内容だと指摘された「逆進防止条項」(合意された水準を後退させる措置を取らないこと)や、「投資者・国家提訴条項」(韓国の政策が外国人投資家の利益に反する場合、外国人投資家が韓国政府を提訴できるもの)などは含まれなかった。

しかし「未来の最恵国待遇」条項は 今回の協定にも含まれた。FTAが発効した後、どちらか一方が他の国とより有利な条件でFTAを締結する場合、以前に締結された当事国にも同じ優遇を与えなくてはならないというもの。


2009/7/15 EU、ガス市場分割で2社に制裁金

EUは7月8日、ドイツの Ruhrgas AG とフランスのGDF Suez SA にそれぞれ、553百万ユーロ、合計1,106百万ユーロの制裁金を課した。
(1社での過去最大は
自動車用板ガラスカルテルでのフランスのSaint-Gobain 896百万ユーロで、今回の両社はこれに次ぐもの)

Ruhrgas AG Gaz de France1975年にロシアのガスをドイツとフランスに送る MEGAL pipelineを共同で建設することとし、パイプラインで送ったガスを相手の国の市場では売らないことで合意した。両社はそれぞれ、ドイツとフランスにおける天然ガスの最大手。

Ruhgasは、2003年にRAGE.On所有のDegussa株を購入、見返りにRuhgas株をE.onに譲渡し、E.On group に入った。
Gaz de Franceは
2008年にSuezと合併し、GDF Suez となった。

MEGAL pipeline (Mittel-Europaische-Gasleitungsgesellschaft)はロシアの天然ガスをドイツ・チェコ、ドイツ・オーストリア国境からドイツ・フランス国境まで送る2本のパイプライン。
現在、
E.On51%、GDF Suez44%、OMVが5%出資する。
チェコ国境の
Waidhausから独仏国境のMedelsheimまでのMEGAL Nord(北MEGAL)と、ドイツ・チェコ・オーストリア国境のOberkappel とドイツのSchwandorfまでのMEGAL Sud (南MEGAL)から成り、両パイプラインは Rothenstadt Schwandorf で接続されている。

両社は1975年にMEGAL建設を決めた際に、MEGALで運んだガスをGDFはドイツで売らないこと、Ruhrgasはフランスで売らないことで合意し、レターで交わした。

当時はGDFはフランスの輸入天然ガスを法的に独占していた。
Ruhrgas
の天然ガスも他のメーカーとの間のDemarcation Agreement 独占的な供給区域を設定する境界設定契約)で実質的に独占であった。(他に、排他的なパイプライン敷設権を認めるConcession Agreement もあった。)

GDF独占は2000年に廃止され、ドイツのDemarcation Agreement も19984月に違法とされた。

しかし両社は2000年8月にEC指令により欧州ガス市場が競争市場になった以降も、1975年のレターが違法であることを認識しながらも、市場分割を続けた。
定期的にいろんなレベルで会合を持ち、協定を確認し、相手の行動を監視した。

2004年には以前から協定は無効であると考えていたと説明したが、2005年9月に廃棄するまで協定を実行してきた。

EUは市場分割協定は独禁法の重大な違反であり、協定により、両社は自由化された両国のガス市場で強い地位を築いたとしている。


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