ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/


2007/10/1 日米住宅着工件数 減少

7月の日本の住宅着工件数が大きく減少した。
8月は更に減少した。63,076戸で、前年同月比 43.3%減である。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは改正建築基準法の施行によるものである。

2005年に発覚した構造計算書偽装問題(姉歯事件、耐震偽装)を受けて、2006年に成立した改正建築基準法が本年6月20日に施行された。
この日以降建築確認申請は滞ったままの異常な状態が続いている。

構造計算書偽装問題が起きた主な原因は、
・一部の建築設計士とマンション販売会社の職業倫理の欠如、
・国交省が改竄可能な構造計算プログラムを認定したこと、
・確認申請のチェック体制の制度上の不備、などであるといわれている。

改正の主なポイントは以下の通り。

1) 「構造計算適合性判定制度」の導入

一定の高さ以上等の建築物(高さ20mを超える鉄筋コンクリート造の建築物など)については、第三者機関による構造審査(ピアチェック)が義務付けられることになった。

2)確認申請に関する補正慣行の廃止

従来は、設計図書に関係法令に適合しない箇所や、不適合な箇所がある場合には、建築主事等が申請者にその旨を連絡し、補正させた上で確認するという慣行があった。

しかし、法改正に伴って、誤記や記載漏れなどを除き、図書に差し替えや訂正がある場合には補正が認められず、
再申請が必要となった。再度申請を出し直す時間と申請料が別途発生する。

3)着工後の計画変更

建設が始まってからの変更は、軽微な変更を除き、原則として計画変更申請が必要となる。

従来補正で対応していた部分も、このような変更が生じた場合は、一旦工事をとめて申請を行う必要があり、構造的な変更があれば、再度ピアチェックが必要になる。

 

建築確認を受けないと着工できないため、着工件数の急減につながっている。これまで1カ月で建築確認がおりていたが、法改正後は3カ月程度必要との見方もある。

たださえ住宅着工件数の減少でPVC需要が減少しているが、これにより更なる需要減少のおそれがある。
PVCの需要は着工後、数ヵ月後に発生するが、需要家側で前以って発注を減らす可能性がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、米国の8月の住宅着工件数は年換算 1,331千戸と下落を続けている。1-8月平均は1,434千戸となった。

米国のサブプライム問題の影響は更に広まっている。

Ninja ローンとも呼ばれ、No Income, No Job, (No) Asset の人にさえも貸すローンで、最初の数年は低金利だが、その後は利率が急騰する。ローン返済が出来なくても、(バブルで住宅価格は上昇を続けるため)取り上げた担保を売却すればよいという前提のローンである。

バブル崩壊で住宅の価値が下がり、目論見が外れた。
ローンは証券化され、ばら撒かれているため、影響が世界中にひろまった。

FRBのバーナンキ議長は7月中旬の議会証言で、これによる金融機関の損失が500億-1,000億ドルに達するとの試算があると指摘した。

2007/8/19 サブプライムローン問題の波紋 

国際通貨基金(IMF)は9月24日、国際金融の安定性に関する報告書を発表したが、サブブライム問題の余波が少なくとも来年まで続くと指摘し、損失の計算は前提次第で大きく異なるとしながらも、1,700億ドルと 2,000億ドルという2種類の試算を提示した。
(バーナンキ議長も 9月20日に、「世界の金融機関の損失は最も悲観的な予測をはるかに上回った」と述べた。)

サブプライムローンの残高は1兆3千億ドルとされており、それで済まない恐れもある。

8月の中古住宅販売件数は前年同月比12.8%減で、5年ぶり低水準となった。
米国の住宅の不振はまだ続きそうだ。

 


2007/10/2 内蒙古で100万トンのメタノール工場竣工

Boyuan United Chemical (博源聯合化工)は910日、内蒙古自治区のオルドス市で天然ガスを原料とする100万トンのメタノール計画の竣工式を行なった。

2004年9月に建設を開始したもので、投資額は2億ドル。
40万トンと60万トンの2系列で、原料天然ガスはオルドス盆地の
CNPC Sulige ガス田から120kmのパイプラインで供給される。

国家発展改革委員会(NDRC)は8月30日から新しい天然ガス活用政策を適用し、限られた天然ガスの消費を最適化し、省エネを推進することを狙い、天然ガスベースのメタノールを禁止した。

しかし、これは稼動中のものや建設完了のもの、ガスの供給契約を締結済みの建設中のものについては除外される。同社は既に天然ガスの長期供給契約を締結しているため、この新政策は適用されない。

2007/9/7 四川−上海の天然ガスパイプライン「川気東送プロジェクト」工事開始  文末参照

Boyuan United は内蒙古のYuanxing Energy(遠興エナジー) が 51.2%、米国のSigma Investment が33.8%、内蒙古のBoyuan Investment Group (博源投資)が15%出資する合弁会社。

Yuanxing Energy の別の子会社 Sulige Natural Gas Chemical は現在、オルドスに18万トンのメタノール工場を持ち、さらに同地に15万トンプラントを建設中である。

ーーー

石炭と天然ガスが豊富なオルドス市ではこれを含めて 6計画合計960万トンのメタノール計画が進行中で、中国最大のメタノール生産基地となる。
オルドス近辺の石炭埋蔵量は1,496億トンで、内蒙古自治区のそれの半分、中国全体の1/6を占めている。

最大のメタノール計画は20068に設立された合弁会社で、メタノール能力は420万トン、2010年のスタートを目指している。

出資は次の5社
国営の中国中煤能源集団公司(ChinaCoal  32.5%
SINOPEC  32.5%
Shenergy Group 申能集団有限公司:上海市の電力・ガス供給会社)  12.5%
Yintai Investment (銀泰)  12.5%
内蒙古 Manshi Coal Group滿世  10%

計画では内蒙古のオルドスで年間20百万トンの石炭採掘を行い、420万トンのメタノール、300万トンのDMEを生産、135MWx2基の発電所を建設する。投資額は26億米ドル。

内蒙古のオルドスから河北省の港湾都市の唐山市(天津市の東)までの長距離パイプラインを設置し、
DMEをエネルギーが不足する中国東部及び南部へ輸送する。

このほか、Ordosで進行中の計画には次のものがある。

河北省 新奥集団XinAo Group

第1期 2007年末までにメタノール(600千トン)とDMT(400千トン)
第2期 2010年までにメタノール 1,800千トン

2006/8/12 世界銀行、中国のクリーンエネルギー事業に融資 

山東省 久泰化工(Jiutai Chemical

JV名:久泰能源(内蒙古)社(Jiutai Energy)
出資比率:久泰化工69%
/米国Rockefeller & Co.31%
能力:メタノール(150万トン)、DME(100万トン)
技術:石炭ガス法(シェブロン・テキサコ法)

参考 2006/6/23 中国の石炭化学 

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なお、新奥集団(XinAo Group)は江蘇省張家港市で20万トンのDMEを建設中(第二期として100万トンに拡張)だが、これに世界最大のメタノール会社のカナダのMethanex 540万ドルを投じ20%の持分を取得した。

原料メタノールはMethanex が輸入する。第1期用に年間30万トンのメタノールを供給する。張家港は揚子江に近く、物流面で有利である。

Methanex ではこのDMEへの最初の投資を通じてDME業界の知識を深め、中国や世界各国で今後の拡大を検討するのに役立てたいとしている。

Methanex については2006/12/27 三菱ガス化学、ベネズエラのメタノール合弁増設 文末参照 


2007/10/3 DSMの経営方針

DSMはこのたび、新しい戦略 Vision 2010 Building on Strengths strategy を発表した。
Life Sciences Materials Sciences へのシフトを進める。

DSMは1902年にオランダ政府が設立した国営炭坑会社 Dutch State Mines(DSM)がはじまりで、1929年にコークス炉ガスを利用した化学肥料製造を開始して化学事業に参入、1960年代に石油化学事業への構造転換を行なった。
1989年に民営化を決定し、1996年に一般公開を完了した。

石油化学事業については2002年にSABICに譲渡した。

  2006/8/22 SABIC Europe とその前身

主な内容は以下の通り。

Life Sciences (Nutrition and Pharma)Materials Sciences (Performance Materials) 会社へのシフトを進める。
 このため、非コア事業の処分計画を進める。
 コア事業では買収を検討する。

・成長目標
  有機の販売伸び率の目標を
5%以上に上げる。
  
2010年の中国向け販売目標を10億ドルから15億ドルにアップ。

 

同社は現在の4部門をレビューした結果、5部門に分類し直し、Life Sciences の2部門(Nutrition and Pharma)Materials Sciences 中のPerformance Materials を中心としていくことを決めた。
これらが同社が市場で大きな地位を占め、同社の経験と技術を活用できる分野である。
具体的には
White BiotechPersonalized NutritionBiomedicalSpecialty Packaging を上げている。

なお、Fibre Intermediates Industrial Chemicals に属していたが、Engineering PlasticsPerformance Materials)の原料であるため、新しい Polymer Intermediates に帰属させる。.

処分対象としては以下の製品群をVision 2010 期間中に処分し、新しいオーナーの下で成長することを期待している。

                               2007Sales
Melamine / Urea / Fertilizers / Energy ~EUR 700 million
Elastomers ~EUR 500 million
Special Products ~EUR 100 million
Maleic anhydride including derivatives ~EUR 75 million

新しい目標は以下の通り。

Vision 2010 Original Target New Target
Organic sales growth 3-5% >5%
Cluster EBITDA margins
- Nutrition
- Pharma
- Performance Materials
- Polymer Intermediates

>18%

>18%
>16%
 −

>18%
>19%
>17%
>13% (average)
Growth from innovation EUR 1 billion by 2010 EUR 1 billion by 2010
Growth in China USD 1 billion by 2010 USD 1.5 billion by 2010
Specialty profile 50-60% Towards 60%

 


2007/10/4  旭硝子、米国のフッ素化学品生産拠点の閉鎖を決定

旭硝子は9月28日、AGC Chemicals Americas, Inc.のBayonne Plant (New Jersey州)でのフッ素化学品 PTFE (四フッ化エチレン)の生産を2007年末で停止し、同工場を閉鎖することを決定したと発表した。

AGC Chemicals Americas は3拠点を有している。
 Bayonne Plant (New Jersey州):フッ素樹脂 PTFE及びフッ素系溶剤 AK-225の製造・販売拠点
 Thorndale Plant(Pennsylvania州):フッ素樹脂コンパウンド
 テクニカルセンター(Exton, Pennsylvania):フッ素化学品の営業・サービス拠点

米国でのPTFE事業の収益悪化を受け、米国におけるフッ素化学事業の戦略を大幅に見直し、Bayonne Plantを閉鎖するもの。
Thorndale Plant のフッ素樹脂コンパウンドの生産は継続、Exton のサービス機能を向上させ、日本、英国の生産拠点で製造したフッ素樹脂「フルオン(R)ETFE」
(エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体)やフッ素ゴム「アフラス(R)」(4フッ化エチレンとプロピレンの共重合体)などの輸入販売を強化する。

PTFEは耐薬品性・耐熱性に優れたフッ素樹脂で、シート、チューブ、テープ等に加工され、半導体関連製品・自動車部品などに使用される。

旭硝子は米国のほかに、日本及び英国にPTFEの製造拠点を有している。いずれも ICI から買収したものである。(日本はJV持分)

ーーー

旭硝子は1981年に、ICI社との間でPTFE(四フッ化エチレン)樹脂の50/50 JV、旭アイシーアイフロロポリマーズ(AIF)を設立し、旭硝子千葉工場内に工場を建設した。

1998年に旭硝子はフッ素化学事業拡大施策の一環として、AIFのICI持分を買収することで合意、1999年1月に買収を完了し、旭硝子フロロポリマーズと改称、従来から独自で製造・販売しているフッ素樹脂・フッ素ゴム事業をはじめとしたフッ素化学品事業と完全に一体化した事業運営を行なうこととなった。
(旭硝子は2004年1月1日付けで旭硝子フロロポリマーズを本体に吸収した。)

ーーー

旭硝子は1999年9月、ICIからFluoropolymers 事業を136百万ドル買収する基本契約を締結し、12月1日に買収を完了した。

ICIにとっては抜本的構造改革の一環である。
   
2006/3/7 ICIの抜本的構造改革 

ICI Fluoropolymers 事業は1998年の売上高は110 百万ドルで、米国のBayonne (New Jersey) と英国の LancashireThornton-Cleveleys PTFEの工場を、また米国 Thorndale (Pennsylvania)にコンパウンド工場を持っている。

旭硝子はこの買収に際し、米英に2社を設立し、この事業を行うこととした。

 米国: Asahi Glass Fluoropolymers USA,Inc.
=旭硝子アメリカの100%出資


 (その後
AGC Chemicals Americas, Inc.と改称)
 
 英国: Asahi Glass Fluoropolymers U.K. Ltd.
Asahi Glass Fluoropolymers USAの100%出資

 (その後、
AGC Chemicals Europe と改称)


この買収により、旭硝子は生産拠点として英国、米国及び日本(市原)にPTFEの製造拠点を保有し、販売・製造・開発が一体化したグローバルな体制を持つことになった。
今回の米国拠点閉鎖で、英国と日本の2拠点となり、米国にはこれらから供給することとなる。

ーーー

なお、旭硝子はAsahi Glass Fluoropolymers U.K. に電線被覆材やフィルム原料として使われるフッ素樹脂フルオン(R)ETFE の生産設備を建設した。

フルオン(R)ETFE(エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体)は同社が1975年に世界で初めて商業生産を開始した高機能フッ素樹脂で、千葉工場と鹿島工場で生産している。

近年は自動車向け、建材向けなどの新用途を中心に需要が急増しており、ミュンヘンのサッカースタジアム「Allianz-Arena」や、北京五輪のメインスタジアム「国家体育場」の屋根部分と水泳会場の「国家遊泳中心」にETFEフィルムが採用されている。

 


2007/10/5 Dow、JV白書を発表

Dowは9月28日、同社のJVの活動に関する白書を発表した。

  内容:http://www.dow.com/about/pdf/djv_0907.pdf

2006年の非連結子会社の売上高(Dow持分)は59億ドルで、2社の分離があったにかかわらず前年比 7%増となり、持分損益は前年とほぼ同じの 959百万ドルとなった。

@ 2005年71付けで、DuPont Dow の50/50JVの DuPont Dow Elastomers DuPont 100%子会社の DuPont Performance Elastomers となった。(エチレン・塩素エラストマー関連事業はDowが引取り)
   
A 2005年10月、Union Carbide Dow)Honeywell の50/50JVのUOP LLC Honeywell 100% とすることで合意。

2007年の9ヶ月では以下の進展があった。

4月、リビヤのNational Oil Companyとの間で Ras Lanuf petrochemical complex 運営、拡張に関する覚書を締結。
   
2007/4/25 Dow、リビアに石化JV設立  
   
同じく4月に、Chevron Phillips Chemicals との間でPSSM JV設立の覚書を締結。
   2007/4/11 Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立 
   
5月、中国の神華集団との間で、陜西省にワールドスケールのCoal-to-Chemicals complex 建設の詳細FS実施の契約を締結。
   2007/5/21 ダウの海外進出 
   
同じく5月に、Saudi Aramco との間で、サウジに世界最大級の石化コンプレックス建設の覚書締結。
   2007/5/15  
アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設 
   
7月、ブラジルのCrystalsev との間で、サトウキビからLDPE製造のJV設立の覚書締結。
   2007/7/27 Dow、ブラジルでサトウキビからLDPE製造 
   

付記 2007/12/4 ロシアのGazprom、ダウと天然ガス分野での提携のMOUを締結

ダウは2006年3月に、基礎部門の強化をJV化を通して行う方針を明らかにした。他社と新しいJVをつくるだけでなく、場合によっては既存の設備を出してJVにすることも行うとした。
ダウはこの戦略をasset lightstrategy (又は equity light” )と呼んでいる

   2007/2/3 ダウ、PSとPP事業のJV化を検討 参照 

ーー

Dowの主要な非連結子会社の概要は以下の通り。

  Compania MEGA S.A. Dow Corning Univation Technologies LLC
Formed: 1997 (in operation since 2001) 1943 1997 (reorganized 2001)
Ownership: Dow 28%
Repsol YPF 38%
Petrobras 34%
Dow 50%
Corning 50%
Union Carbide 50%
ExxonMobil Chemical 50%
Headquarters: Buenos Aires, Argentina Midland, Michigan, U.S.A Houston, Texas, U.S.A
Production
facilities:
Loma de la Lata and
Bahia Blanca, Argentina
worldwide  
Capacities:
  (tons/year)
Ethane: 570,000
Propane: 390,000
Butane: 264,000
Natural gasoline: 229,000
(Silicones and
silicon-based products)

capacities: Not applicable
(to license UNIPOL PE process
technology worldwide)
2006 revenues: $690 million $4.4 billion Not disclosed
 
Kuwait
  EQUATE Petrochemical Equipolymers MEGlobal
Formed: 1995 2004 2004
Ownership: Union Carbide 42.5%
Petrochemical Industries Co. K.S.C. 42.5%
Boubyan Petrochemical Co. K.S.C. 9%
Al-Qurain Petrochemical Industry Co. K.S.C. 6%
Dow 50%
Petrochemical Industries
 Company of Kuwait 50%
Dow 50%
Petrochemical Industries
 Co. K.S.C. of Kuwait 50%
Headquarters: Jleeb Al-Shyoukh, Kuwait Horgen, Switzerland Dubai, United Arab Emirates
Production
facilities:
Shuaiba, Kuwait Ottana, Italy and
Schkopau, Germany
Fort Saskatchewan and
Red Deer, Alberta, Canada
Capacities:
  (tons/year)
Polyethylene: 600,000
Ethylene glycol: 500,000
PET: 485,000 EG: 1,000,000
2006 revenues: $990 million $470 million $2.4 billion
   2006/5/31 湾岸諸国の石油化学ー1 クウェート&バーレーン 
 
マレーシア(PETRONAS とのJV
  OPTIMAL Olefins      
 
(Malaysia) Sdn Bhd
OPTIMAL Glycols
 (Malaysia) Sdn Bhd
OPTIMAL Chemicals
 (Malaysia) Sdn Bhd
Formed: 1998
Ownership: Union Carbide 23.75%
PETRONAS 64.25%
Sasol Polymers International
  Investments 12%
Union Carbide 50%
PETRONAS 50%
Union Carbide 50%
PETRONAS 50%
Headquarters: Kuala Lumpur, Malaysia
Production
facilities:
Kertih, Terengganu, Malaysia
Capacities:
  (tons/year)
Ethylene: 600.000 Ethylene glycol: 385,000 Butanol: 140,000
2006 revenues: $810 million
 
タイ(Siam Cement とのJV
  Pacific Plastics
  (Thailand)
Siam Styrene
  Monomer
Siam Synthetic
 Latex
Siam Polystyrene Siam Polyethylene
Formed: 1975 1988 1990 1993 1995
Ownership: Dow 49%;
Siam Cement 48%;
Others 3%
Dow 49%;
Siam Cement 49%;
Others 2%
Headquarters: Bangkok, Thailand
Production
facilities:
Map Ta Phut Industrial Estate, Rayong Province, Thailand
Capacities:
  (tons/year)
Polyol Styrene monomer:
  300,000
Latex Polystyrene:
  120,000
Polyethylene:
  300,000
2006 revenues: $890 million
 

2007/10/6 帝人、Cargill NatureWorks に出資

帝人とCargill 10月1日、世界初で最大規模の100%植物由来のバイオポリマーのメーカーで Cargill 100%子会社の NatureWorks LLCに帝人が折半出資することで合意した。

両社は、この提携により今後、NatureWorks 社のグローバルな売上拡大が加速し、製品がプラスチックおよび繊維の幅広い市場に向けて拡大していくことを期待するとしており、NatureWorks 社の米国のPLAポリマープラントの生産能力拡大を計画している。

帝人は、先般「環境経営宣言」を行い、「環境経営」戦略をグローバルに展開していくためにふさわしい投資先を求めていたが、NatureWorks 社は最適の投資先であり、帝人の繊維、フィルム、プラスチックコンパウンドにおける用途開発技術が、それぞれの分野での新市場開拓に貢献することができるとしており、Cargill もそれを期待している。

付記

帝人は2009年6月、ネイチャーワークスの保有持分50%全てをカーギル社に譲渡し、6月30日を以って同社に関する合弁契約を解消した。

帝人は
独自開発の耐熱性バイオプラスチック「バイオフロント」に経営資源を集中し、技術開発・市場開拓をさらに加速する。

高耐熱バイオプラスチック「バイオフロント」

植物由来の原料を使用する、石油を含まない環境にやさしいプラスチック。
融点が約210℃で、現在上市されているバイオプラス チックで最も成長性が高いと言われるポリ乳酸の融点を40℃も上回る。
この高耐熱特性によりアイロンがけも可能となる。フィルムや樹脂の高温成型プロセスへの適合性も有する。
また、透明性においても、汎用性の高いPET(ポリエチレンテレフタレート)を上回る高透明性を有する。
原料は、ポリ乳酸に使用されるL乳酸と、その光学異性体であるD乳酸

ーーー

1997年に Cargill Dow 50/50JVとしてCargill Dow LLC 設立された。

Cargill の
独自技術を植物中の糖質の加工プロセスに用いて、とうもろこしのような再生可能資源を原料にポリ乳酸 (PLA:polylactide ポリマーを生産する。
Cargill のMinnetonka, Minn.にある年産能力3,000トンのパイロット・プラントを6,000トンに拡張した。、

ポリ乳酸は、トウモロコシなどの植物から取り出したでんぷんを発酵することによって得られる L-乳酸をモノマーとして重合させて合成するポリマーである。
発酵直後の乳酸には,L-体とD-体の二つの光学異性体があるが、L-体の乳酸から得られるポリマーが優れた特性を示すため、L-乳酸が合成原料になる。

2002年4月、Cargill Dow LLC Blair, Nebraska に界最初のグローバルスケールの工場の開設した。
能力は14万トンで、ブランド名を 「NatureWorks®」とした。
Blair はコーンベルトのど真ん中に位置し、
Cargill が巨大なトウモロコシ加工処理工場を持つ。
その後、同社はこれを原料とするPLA繊維・
IngeoTM を発売している。.

2005年1月、 CargillCargill Dow LLC Dow の持分を取得することで合意した。
Cargill 100%子会社となった同社をNatureWorks, LLC に改称した。

現在は「NatureWorks®」および「Ingeo®」ブランドで、硬軟両タイプの生鮮食品用パッケージ、耐久消費財、飲料用パッケージ、衣料、ホームテキスタイル、パーソナルケア、衛生用品などの製品分野においてプロダクトイノベーションを実現している。

日本ではNatureWorks® 2004年6月にポリ衛協の「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準」のポジティブリストに追加され、食品包装用に使用可能となっている。

 

Dowの撤退後、生産設備を最大限生かす運転技術などポリマー知見に弱く、能力は14万トンながら実生産は7万トンで、世界的なグリーン対策への取り組みの活発化により、供給不足が深刻になっていた。

今回の提携を機に帝人も技術協力を行い、能力を14万トンに高める。

PLAポリマー事業にはすでに、ユニチカや東レといった国内の大手繊維・化学メーカーが進出しているが、帝人は、「すでに参入している企業に対しては競争相手というより、PLAポリマーの顧客として対応する」としている。

 


2007/10/8  2007年イグ・ノーベル賞

イグ・ノーベル賞(The Ig Nobel )の第17回授賞式が10月4日夜、米ハーバード大学サンダース・シアターで催された。

イグ・ノーベル賞は1991年、ハーバード大系の科学雑誌「ありそうもない研究」(Improbable Research ・・・Research that makes people LAUGH and then THINK)の編集者Marc Abraham が創設した。
Ignoble(=nobleでない)とNobel をかけたもので、「人を笑わせ考えさせてくれる研究」に対して贈られ、裏ノーベル賞といわれている。

本年は外資系医療機器会社勤務の山本麻由さん(26)が「牛糞からバニラの芳香成分 vanillin の抽出」で化学賞を受賞した。

山本さんは宮崎大学農学部を卒業後、牛のふんを簡単に廃棄する方法について研究を進め、国立国際医療センター研究所の研究員だった2004年に今回の抽出方法を開発した。
「酪農家の大変さを軽くしたい、不要と思われているものを役に立たせたいという気持ち」で、本業の高分子研究と並行して何百もの試料で実験を繰り返した。
牛糞1グラムに水4ミリリットルを加え200℃で60分間加熱すると、1グラムあたり約50マイクログラムのvanillinが抽出できた。

バニリンは樹木などの木質成分リグニンから生成するため、馬や山羊などの草食動物の排泄物も利用可能だという。抽出コストはバニラ豆を原材料にする方法に比べおよそ半分でシャンプーやロウソクの芳香添加物などの応用が考えられる。

トロフィー贈呈役を務めたDr. W.N. Lipscomb, Jr. (1976年ノーベル化学賞を受賞)は「一級の研究」と絶賛した。

壇上では、牛の糞から抽出した香料を使った「バニラ」アイスクリームが歴代のノーベル賞受賞者に配られ、教授らは食べるのをためらったが、会場からの Eat ! Eat ! の野次で、意を決して口にした。 (実際には普通のアイスクリームであったとのこと)

2006年のイグ・ノーベル賞とこれまでの日本人の受賞者11件)については
2006/10/13 
ノーベル賞とイグ・ノーベル賞 

今年の他の受賞は以下の通り。

○医学賞:英国Gloucestershire Royal NHS Foundation Trustの放射線医師Brain Witcombeと、米国人協力者のDan Meyer
   「剣飲みとその副作用について:
The health consequences of swallowing a sword」   
   3カ月間で約2000本の剣を飲んで、その際の生体反応について調査した。

○物理学賞:米ハーバード大学のラクシミナラヤナン・マハデバンと南米チリのエンリケ・セルダ
   「シーツの皺のつき方について:
The problem of how sheets become wrinkled」
   

○生物学賞:オランダのDr Johanna van Bronswijk
   「寝床で一緒に眠り、ムズムズ感を引き起こすダニ、昆虫、クモ、シダ類、菌類の全統計調査
     
Creepy crawly census of all of the mites, insects, spiders, ferns and fungi that share our beds」   

○言語学賞:A University of Barcelona team
   「ラットは日本語の逆さ言葉とオランダ語の逆さ言葉を聞き分けられない
     
Rats are unable to tell the difference between a person speaking Japanese backwards and
     somebody speaking Dutch backwards」

○文学賞:オーストラリアBlue Mountains Glenda Browne
   「アルファベット順に並び替える際に、英語の定冠詞『the』によって引き起こされる混乱
     
Her study of the word "the", and how it can flummox those trying to put things into alphabetical order」

○平和賞:The US Air Force Wright Laboratory
   「同性愛爆弾 "gay bomb"
     
Chemical weapon that would provoke widespread homosexual behaviour among enemy troops 」

○栄養学賞:Brian Wansink of Cornell University
   「底がないスープ皿で自動的に給仕される場合における、人間の食欲の限界について
     
The limits of human appetite by feeding volunteers a self-refilling, "bottomless" bowl of soup」.

○経済学賞:台湾のKuo Cheng Hsieh
   「銀行強盗を捕らえるネットの開発で特許を取得
     Patenting a device that can catch bank robbers by dropping a net over them

   Hsieh氏の行方は数年前から分かっておらず、司会者は同氏についての情報提供を呼び掛けた。

○航空学賞:パトリシア・アゴスティーノとサンティアゴ・プラノNational University of Quilmes, Argentina
   「バイアグラに時差ぼけ解消の効果があることを発見
     
Discovering that impotency drugs can help hamsters to recover from jet lag.」

2008/10/4  2008年イグ・ノーベル賞


2007/10/9 Alcoa、事業見直し

Alcoa 4日、低採算事業を見直し、包装材や自動車向け鋳物事業等を売却、鉱山開発や地金生産に経営資源を集中すると発表した。

大株主のヘッジファンドなどの求めに応じ、売り上げ規模が大きくても利幅が薄い事業を切り離す。
資本構造を高め、株主価値を高める。

今後、次の事業を処分する。

1)Packaging and Consumer business の売却
 
  売却先候補から強い意向を示されており、本年末か来年初めに契約締結の予定。

Alcoa Consumer Products はフォイル、フィルム、紙容器などを小売店や食品サービス業に提供している。
@
Reynolds Consumer ProductsReynolds Wrap® ブランドのアルミフォイル、フィルム、ワックスペーパーなど
A
Presto Products CompanyNorth America's largest private label plastics company
BBaco Consumer Products:英国の家庭用ラップ、バッグメーカー

2)Automotive Castings business の売却
   
契約間近で年末までに締結予定

アルコア独自のVRC/PRC*(真空・加圧ライザーレス鋳造)法のアルミアロイの金型鋳造
  *
Vacuum Riser-less and Pressure Riser-less

3)Electrical and Electronic Solutions (旧Alcoa Fujikuraのワイアーハーネス事業)の大幅再編

Alcoa とフジクラは米国で自動車および情報通信事業における合弁事業会社 Alcoa Fujikura Ltd.(フジクラ49%、Alcoa 51%)を運営していたが、2005年3月末に合弁を解消した。

事業のうち、欧米顧客向けの自動車事業は Alcoa が、情報通信事業と日系顧客向けの自動車事業はフジクラが引き受けた。


4)中国アルミメーカーChalco の株式売却
   
Alcoa は本年9月、所有する中国のアルミメーカー Chalco の株式(約7%) 全てを約20億ドルで売却、約18億ドルの売却益を得た。

Alcoa 2001年のChalco IPOに際し、約7%の株式を購入した。
Alcoa Chalco は戦略的提携契約を行い、株式取得とともに、広西壮族(チワン族)自治区にあるChalcoのPingguo アルミ工場を50/50 JVとし、拡大を図ることとした。同工場はアルミナ精錬能力 850千トン、アルミ精錬能力 135千トンを有している。

Chalcoについては  2006/8/25 中国アルミ業界の拡大競争 参照

Pingguo JV設立については 20044月にNational Development and Reform Commission (NDRC) の承認を得た。
しかし、その後、
JV計画は全く進展しなかった。

両社の思惑が食い違ってきていた。

Chalco側は当初は資金と技術面で Alcoa の助力が必要であったが、最早それは必要ではなくなった。
Pingguo は高品質のボーキサイト鉱を有しているが、中国側はこれを外国に渡すことを嫌った。

Alcoa側は中国市場への進出が本来の目的だが、Chalcoとの提携はむしろ、その障害となった。

この結果、今回の株式売却となった。

ーーー

Alcoa本年5月7日にAlcanに対して買収総額269億ドル(債務引受を除く)の敵対的TOBをかけた。
これに対してRio Tinto White Night として乗り出し、Alcan を買収、Alcoa TOBを撤回した。

2007/7/17 Rio Tinto、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に

 

事業売却で得た資金を元手にAlcoaが再び企業買収に乗り出す可能性が高いが、逆に、資産内容が改善したAlcoa が格好の買収の標的にもなりうる。

アルミ市場ではロシアの二大アルミ会社とスイスの商社のアルミ部門が統合し、Alcoaを上回る世界最大のアルミ生産会社United Company RUSAL(ロシースキー・アルミニウム)が誕生している。

  2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収 

なお、Alcoa のアルミ製錬工場と能力は上記記事に記載している。

 

付記

Alcoa 2008/12/22Orkla との間で、スウェーデンでのアルミ加工事業JV45%と交換にノルウェーのアルミ精錬JV Elkem Aluminum (282千トン)50%を引き取り、それぞれの100%事業とすることで合意した。

この結果、
Alcoa の全世界能力は470万トンを超え、世界一のメーカーとなる。

 


2007/10/10 タイ TPC、バンコックのPVC設備をベトナムに移設

Thai Plastic and Chemicals TPC) Rayong Map Ta Phut 380千トン(60+100+100+120千トン)、Bangkok 近郊のSamutprakarn に公称100千トン(実能力 60千トン+30千トン)の合計480千トンのPVC能力を有している。

他に
Map Ta Phut に ソーダ(50%) 52千トン、EDC 115千トン、VCM 440千トン(140+300千トン)
Samutprakarn に コンパウンド 55千トン
Map Ta Phut の100%子会社TPC Paste Resin (元Oxy とのJVに ペーストPVC 35千トン
を有している。

同社は8月に、Map Ta Phut で新しく 120千トン設備の商業生産を開始し、現在フル稼働をしている。
これに伴い、当初の計画通り、
Samutprakarn の2系列を近く停止する。
(これにより、
TPCのタイのサスペンジョンPVCの能力は500千トンとなる)

このうち、30千トン設備は廃棄するが、60千トン設備は解体し、ベトナムの子会社TPC VINA Plastics and Chemical Co. Ltd. に移設し、デボトルネッキングを行なって、90千トン設備として稼動させる。

TPC VINA は旧称 Mitsui Vina Plastics & Chemical 株主は三井化学 36%、三井物産 10%TPC 24%Vinaplast 15%Fercemco 15% であったが、三井の撤退で、TPC 70%、Vinaplast 15%Fercemco 15% となっている。
PVC能力は80千トン。移設設備が稼動すると、2系列合計 170千トンとなる。

 

ベトナムにはもう一つのPVCメーカー Phu My Plastics and Chemicals がある。
当初は
Oxy と丸紅が主導していたが、両社が撤退し、PetroVietnam とマレーシアのPetronas 及びTramatsuco が株主となっていた。
能力は
100千トン。

TPCはPetroVietnam との間で、PetroVietnam Phu My 株の買収を交渉し、2006年9月にはTPCの取締役会が買収を承認したが、PetroVietnam が白紙還元を要請し、この話は潰れた。
(その後、
PetroVietnam は持株をPetronas に売却し、Petronas が93%の株主となった。)

TPCはこの代替としてタイからの旧設備移設により、90千トン設備をつくることとした。

ベトナムの両社については
2007/6/27 ペトロナス、ベトナムのPVCメーカーを子会社化 

ーーー

なお、TPCはインドネシアに PT. TPC Indo Plastic & Chemicals PVC能力 120千トン)を持っている。

同社は旧称 Siam Maspion で、当初、インドネシアのMaspion が50%、Siam Cement とTPCの60/40 の海外投資法人 Siam TPC が50%のJVとして設立されたが、2005年にMaspion が撤退し、現在は Siam TPC 100%となっている。
新第一塩ビが内部ジャケット法の製法をライセンスした。

ーーー

TPC は当初、地元のCEグループと旭硝子出資のTHASCO Chemical(現在は旭硝子99.85%三井物産/三井東圧の3社JVとして設立された。
その後上場、THASCO、三井グループが持株を売却、
20073月現在では Siam Cement 44.24%、CPB Equity 22.60%を所有している。


2007/10/11 高杉良 「挑戦 巨大外資」

高杉良 「挑戦 巨大外資」(小学館)を読んだ。

小学館ホームページには以下のPRがある。

経済小説の巨星が放つ、本格的国際経済小説

1970年、32歳で世界的コングロマリット、ワーナー・パーク・グループの日本法人CFO(最高財務責任者)としてヘッドハンティングされた池田岑行。相次ぐCEOの解任、一瞬の隙も許さぬ人事抗争――非情の「外資」をその卓越した財務戦略で生き抜く池田は、日本人として初の取締役の座に就き、社内改革を次々と押し進める。 ワーナー・パークの伸張に危機感を抱いた製薬最大手・ライザーが、新CEOの失策を機に、10兆円規模の
巨大TOBを仕掛けてきたのは99年のことだった。池田は否応なく、巨大M&Aの激流に放り込まれることになる―ようやく日本に訪れた「三角合併」時代の原点を、「奇蹟のCFO」と呼ばれた男の視点から描く、本格的国際経済小説。

勿論、小説であり、全てが事実ではないが、巨大TOBは事実である。

1999年11月にWarner Lambert (小説でのワーナー・パーク)はAmerican Home Products (同アメリカン・ホーム・コーポレーション)との友好的合併(対等)を発表した。
その数時間後、
Pfizer (同ライザー)がWarner Lambertの敵対的買収を発表した。

最終的に2000年2月7日にPfizerによるWarner Lambert の買収で合意した。

ーーー

Warner-Lambert の事業は医薬品と消費財であった。

医薬品は1970年に買収したParke-Davis の事業で、高脂血症治療薬 Lipitor が有名である。
2006年の大型医薬品世界売上ランキングの1位はこのLipitor 13,682百万ドル、2位のGraxoSmithKline の抗喘息薬 Seretide /Advair  6,490百万ドルの2倍以上の売上である。

1897年、高峰譲吉博士がParke-Davisの技術顧問になっている。
Parke-Davis は高峰博士から日本以外の地域におけるタカアスターゼの製造および販売権を取得した。

日本でタカヂアスターゼを技術導入して1899年に設立されたのが三共商店で、1913年に三共(現 第一三共)となったが、初代社長に高峰博士が就任している。

1996年 米国三共(Sankyo Pharma Inc.)がWarner Lambert との折半出資による三共Parke-Davis を設立した。
2000年9月米国三共Pfizerから三共Parke-Davis の持分を買取った。)

Pfizer Warner-Lambert1996年からこのLipitor 開発の partnership を組み、Pfizer は販売権を有していた。
American Home Products Pfizer のWarner-Lambert の取り合いはLipitor を目指したものである。

消費財部門には、Listerine mouthwashCerts mintsTrident gumSchick razors などの有名ブランドがある。

 

1999年11月4日、Warner LambertAmerican Home Products (AHP) は友好的合併(対等)を発表した。Warner Lambert の株式は720億ドルの評価を受けた。
その数時間後、
PfizerはLipitor の販売権を失うことを恐れ、Warner Lambertの敵対的買収を発表した。買収額は824億ドルであった。

小説では前のCEOが独立路線を取ってきたのに対し、新CEOが、対等合併と自分が世界最大の医薬会社のCEOになれることから、AHPの提案を呑んだこととなっている。

その後、両社の訴訟合戦などがあったが、2000年に入り、 大株主のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)等の機関投資家が「Pfizer提案も検討すべし」とのWarner Lambert批判を行った。

Warner Lambert とAHP はPfizerへの対抗策として Procter & Gamble を含めた3社合併を模索したが、Procter & Gambleの離脱で潰れた。
更に2月になり、
Pfizerは買収条件をアップした。

この結果、2月7日にPfizerによるWarner Lambertの買収で合意した。買収額は 892億ドルであった。
American Home Products には契約に基づきWarner Lambert から18億ドルのbreak-up fee が支払われた。

この買収は6月にFTCの承認を得、Warner Lambert Pfizerの完全子会社になった。

小説の主人公が懸念したとおり、PfizerによるWarner Lambert の買収は医薬品のためであり、消費財部門はその後、売却された。

2002年12月、PfizerWarner Lambert Trident gum、Dentyne gumCerts mints などのAdams Division Cadbury Schweppes 42億ドルで売却した。  
2003年1月、PfizerSchick-Wilkinson Sword shaving products business Energizer Holdings, Inc.930 百万ドルで売却した。 
2006年、Pfizer Consumer healthcare 部門をJohnson and Johnson に166億ドルで売却した。
 
LISTERINE oral care products, 禁煙薬 NICORETTEなどである。

ーーー

Pfizer はWarner-Lambert を吸収後、2003年4月にはPharmacia を吸収合併し、世界の医薬メーカーのトップとなった。

Pharmacia はMonsanto とPharmacia & Upjohn が合併したもの。

・MonsantoはG.D.Searleを吸収、化学品部門をSolutiaとして分離
・Monsantoは1998年に一旦、
American Home Products との合併で合意したが、直ぐに破談となった。

・PharmaciaとUpjohn が合併してPharmacia & Upjohn となる。

・Monsanto とPharmacia & Upjohn が合併してPharmaci
a となり、農薬部門を分離(再びMonsanto

ーーー

American Home Products 1994年にAmerican Cyanamid と合併した。
(その後
2000年にAmerican Cyanamid を分離し、BASFに売却している。)

同社は1998年にSmithKline Beecham と合併で合意したが、すぐ破談した。

SmithKline Beecham は代わりにGlaxo Wellcome との合併で合意したが、これも破談した。
 その後、両社は2000年になって、合併し、GlaxoSmithKline となった。

更に上述の通り、American Home Products 1998年にMonsanto との合併で合意し、破談している。

2002年、American Home Products Wyeth と改称した。

ーーー

なお、本のPRに、「ようやく日本に訪れた三角合併時代の原点」とあるが、あまり関係がない。

三角合併とは、企業合併の方法の一つで、会社の吸収合併を行う際に、存続会社の親会社の株式を交付することによって行う合併をいうが、米国では原則として株式対価の買収は三角合併である。

2005年に成立した日本の新会社法では、会社を合併する際、消滅会社の株式の対価について、存続会社の株式ではなく、現金その他の財産、例えば親会社株式を用いてもよいことが明確化された。
外国の親会社の株式でもよいため、外国会社による日本の会社の買収、子会社化が加速する、という予測もおこなわれている。
なお、新会社法は2006年5月1日に施行されたが、対価の柔軟化に関する部分については、その1年後の施行となった。

本の中で「三角合併」の言葉はなく、それを表す記述も全くない。小説でも一般記事でも、単に Warner-Lambert 株1株に対してPfizer 2.75株が割り当てられたとなっている。
実際の手続きでは、Warner-Lambertの株主にPfizer の株式が与えられ、Warner-LambertPfizer 新設の100%子会社のSeminole Acquisition Sub Corp.合併した。その結果、存続会社となった Warner-Lambert Pfizer 100%子会社となった。
(被買収会社が存続会社となる逆三角合併である。なお、日本では、正三角合併のみが可
能で、逆三角合併は認められていない。)


2007/10/12 UC RUSAL、世界最大のアルミ工場を建設

世界最大のアルミ会社のUC RUSAL 109日、 Saratov 州政府との間で、原子力発電所とアルミ工場を建設する投資計画に調印したと発表した。

Saratov 州はロシア南部のVolga 川沿岸の経済的、産業的に最も発展した地域の一つ。

UC RUSAL Balakov の原子力発電所に合計 2,000MWの第5、第6発電所と、世界最大の年産105万トンのアルミ精錬工場を建設する。建設資金はUC RUSALが負担し、自ら建設に当たる。建設予算は2008年末に完了するFSの結果で決まる。

この契約はBalakov原子力発電所の増設がロシア原子力委員会 (ROSATOM) の承認を得て発効する。

この計画の意味は、同社が世界一のアルミメーカーの地位を確保するため、及びそのための電力を自給することにある。

UC RUSALUnited Company RUSALロシースキー・アルミニウム)はロシア最大のアルミメーカー Rusal と同2位の Sual、スイス商社Glencore International のアルミ部門が合併して誕生した。
  2006/9/5 
ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収

英豪資源大手リオ・ティントは本年7月、カナダのアルミ大手、Alcanを買収することで合意したと発表した。
このTOBが成立すると、同社は
UC RUSAL を抜いて世界一となる。
  2007/7/17 
Rio Tinto、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に 

今回の計画により、
UC RUSAL は再度トップの地位を確立することとなる。

現状 Alcan TOB 計画実現後
1 UC RUSAL  381万トン 1 Rio Tinto + Alcan 428万トン 1 UC RUSAL  486万トン
2 Alcoa 356万トン 2 UC RUSAL 381万トン 2 Rio Tinto + Alcan 428万トン
3 Alcan 344万トン 3 Alcoa 356万トン 3 Alcoa 356万トン
7 Rio Tinto  84万トン            

  Alcoa については 2007/10/9 Alcoa、事業見直し 参照

ーーー

なお、UC RUSAL は本年49日、ロシア原子力委員会との間でロシア極東にアルミ工場と原子力発電所を同時に新設することで合意したと発表している。計画の詳細は明らかにされていない。

2006年8月に始まった両者の協力協定に基づくもので、2007年末までにFSを行い、その結果を受けて、詳細スケデュールを決める。

 


2007/10/13 バイエル、医薬品の価格吊り上げ疑惑

ドイツの独禁当局は11日、バイエルが違法にOTC医薬品の売価を吊り上げた疑惑で、バイエルの医薬品販売会社Bayer Vital の本社ほかを立ち入り捜査した。

ドイツ誌 Stern の報道に基づくもので、同社はアスピリンその他のOTC 医薬品について高価格で販売した 11,000店の薬局に 最高 3%の割引を行なったという。
割引が与えられるのは、大幅かつ長期の割引をしない場合、具体的には特売をする場合の価格が希望小売価格の
80%以上で、期間が4週間以内であった場合に限られる。
記事には
Bayer-Vital の課長からセールスマンに送られたE-Mail が載っており、「3%のリベートは、ゲームのルールが守られた場合にのみ、与えられる」と記されている。「Bayerpremium drug maker でありたい」とも述べられている。

当局は、雑誌発売後にBayer からコンタクトがあり、協力の約束があったとしている。
Bayerでは薬局との間ではなんら拘束するような価格協定はないとしている。

欧州及びドイツの法律ではそのような行為は禁止されており、最高
29億ユーロの罰金が科せられる。

 

付記

2008年5月、ドイツ独禁当局はBayer Vital に対して10.3百万ユーロの罰金を課した。

同社では違法行為はしていないが、法的闘争を避けるため罰金を受け入れるとしている。


続く

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