国有企業改革は不十分(事前に大幅な改革が行われるとの観測があった)
   公有制を主体とするのは中国の社会主義市場経済体制の根幹
   そのなかで、非国有資本の出資を認める、石油や電力などは「競争性のある価格」にすることを目標
 国庫納付金(配当)を2020年までに利益の30%に引き上げ(現在、たばこ20%、石油・電力15%など5段階、平均10%程度)
   
出産政策を徐々に調整・改善し、人口の長期的な均衡発展を促す
   計画生育政策という基本的な国策を堅持し、一方が一人っ子である夫婦は2人目の子どもを出産可能に
   
定年年齢を徐々に引き上げる
   
農業移転人口の市民化を推進し、条件に合致する農業移転人口を徐々に都市部住民としていく
   戸籍制度改革を加速し、建制鎮と小型都市の移住制限を全面的に緩和、中型都市の移住制限を秩序よく緩和
 特大型都市の人口規模を厳しくコントロール
   
指導幹部の勤務生活保障制度を規範的かつ厳格に実施
   基準を超えた公務接待を禁止し、規定や基準に反した待遇享受などの問題を厳しく取り締まる
   
所得分配の秩序を規範化
   違法な収入を取り締まり、低所得者の収入を増加させ、中等所得者の比重を拡大
   都市・農村間や地域間、業種間の所得分配の格差縮小
   ラグビーボール型の分配局面を形成
 

付記

国有企業改革が不十分であったことについて、毎日新聞(11月21日)は「リコノミステリー」として報じている。

「リコノミクス」とは中国の首相、李克強氏の経済改革政策である。今年3月、全国人民代表大会(議会)で表明した。

中国の成長力も落ちた。規制緩和によって国有大企業の特権を廃し、市場経済化を進めて民間活力を引き出そうというのがリコノミクスだ。となると、「大型国有企業」と結びついた共産党内の特権集団から激しい抵抗が出る。石油閥あり、電力閥あり、不動産業界、金融業界、通信業界との癒着あり……共産党内でそれぞれの権益集団代表がにらみをきかせている。

(今回)リコノミクスの具体化になると思われていたが、結果は大違い。李克強首相が関与していなかった。リコノミステリーだ。

中国では、経済政策の提案は首相か副首相が行うのが慣例だ。今回の3中全会では習近平総書記が自ら決議案の趣旨説明演説をした。あまり普通のことではない。

習氏は演説のなかで「公有制経済を守る」と断言した。要するに国有企業の権益を守る一方で、国有企業からの国庫上納金を増やそうという改革案だ。

習近平政権は構造改革という険しい道を避けて、目先の安定を求めた。持続的成長への挑戦を回避した。

リコノミクスは消え去るのみ。


2013/11/19 中国のCNPC、ペトロブラスのペルー子会社を26億ドルで買収

中国石油天然気集団(CNPC)は、中南米への進出を図る方策の一環として、ペルーの石油・ガス資産を26億米ドルで取得する。

CNPCと子会社のPetroChinaはこのたび、ブラジル国営のPetroBras からペルー子会社 Petrobras Energia Peru S.A.の全株式をを買収することに合意した

付記

中国石油天然気とペトロブラスは2014年11月6日、ペルーの首都・リマで株式譲渡を完了した。

PetroBrasはブラジル沖で発見された鉱区の開発のため、海外資産の売却を図っており、中南米進出を加速するCNPCとの間で交渉がまとまったもの。
売買にはブラジルとペルーの両政府の承認が必要となる。

Petrobras Energia Peru
は次の3つの鉱区を持つ。

 Lot X   1912年発見で、昨年原油換算16千バレルを生産
 Lot 58   最近、天然ガスが発見された。
採掘可能量は
天然ガスが 56.6 trillion m3、コンデンセートが 113.7 百万バレル。
 Lot 57   天然ガス・コンデンセート田で、まだ操業していない。
46.16%の権益で、スペイン Repsolが残り 53.84%を保有。
増え続ける中国内のエネルギー需要を支えるため、CNPCは中南米進出を加速している。

10月21日に初めて実施されたブラジルの南東部沖合にある大規模な海底油田「Pre-Salt」の開発権を巡る入札で、CNPCと中国海洋石油(CNOOC)が参加するコンソーシアムが落札した。

PetroBras   40%
Total   20%
Shell   20%
中国石油天然気集団(CNPC)   10%
中国海洋石油(CNOOC)   10%

2013/10/25  ブラジル海底油田「Pre-Salt」開発始動

 


2013/11/20 IHI ほか、100㎡規模でのバイオ燃料用藻類の屋外安定培養に成功

IHI 等が出資するIHI NeoG Algae合同会社は11月14日、油分を大量に含む藻の屋外での100m2 規模による安定培養に成功した と発表した。
屋外の開放型の池で、増殖に必要なエネルギー源として太陽光のみを利用し、他の藻類や雑菌などに負けない培養方法を開発したことで、藻を高濃度で安定的に増殖させることができる点に、世界的に見ても優位な特徴がある。

生産コストの試算を従来の1リットルあたり1000円から同500円に引き下げた。実用化目標の 2020年までに、従来燃料と同等の価格競争力を持つ同100円以下を目指す。

次のステップとして、量産を見据え数千㎡規模での培養を実現するための場所の選定と、さらなるコスト低減に向けたプロセス改良を進める。

また、生産する油をMOBURA (“藻”+”油”) と 名付けた。今後、ジェット 燃料を中心に、MOBURAを利用した燃料以外の様々な用途開発に関する共同研究も本格化する。


藻類は主に光合成によって増殖し、その一部には育成の過程において燃料を生産するものがある。
成長する際にCO2を吸収し、また増殖が速いという特徴を有しているため、原油や食糧の価格高騰と地球温暖化を同時に解決するソリューションとして、藻類を利用したバイオ燃料生産に対する注目が高まっている。

IHI NeoG Algae合同会社は、藻類バイオ燃料に関する技術開発を目的に、IHI、神戸大発ベンチャーのジーン・アンド・ジーンテクノロジー 、ネオ・モルガン研究所の3社で2011年8月に設立した。

ジーン・アンド・ジーンテクノロジー は、神戸大学 の榎本平教授の研究成果を実用化することを目的に設立された神戸大学発ベンチャー。 高速増殖型ボツリオコッカス(榎本藻)を発見。

ネオ・モルガン研究所は、創立者の古澤満博士の最先端の進化理論(不均衡進化理論)を応用した育種技術を有し、世界の製薬・化学・食品企業に対し、微生物の育種・培養を支援しているベンチャー企業。微細藻類の研究においても国内トップクラスの経験とノウハウを有している。

従来は化学物質や放射線など生物にダメージを与える方法で突然変異を起こしていたが、不均衡進化理論をベースに自然で起こる突然変異を短期間で効率的に引き起こす技術を開発した。

社名は1933年にノーベル医学・生理学賞を受賞した遺伝学者 T.H. Morgan に因んだもの。

今回屋外安定培養に成功したのは、ジーン・アンド・ジーンテクノロジーの高速増殖型ボツリオコッカス(榎本藻)をベースに、ネオ・モルガン研究所が様々な改良を加えたもので (遺伝子組み換えは行っていない)、IHIが保有するプラント技術で屋外での大量培養に成功した。

一般のボツリオコッカスは1ヶ月の培養で1個が4個に増殖するが、榎本藻の場合は約1000倍の約4000個になる。
また、雑菌等の混入に負けない培養方法を開発し、安価な培養を可能とした。

乾燥重量の約50%が燃料。

ーーー

デンソーは2008年4月から、慶応大学先端生命科学研究所と共同で、デンソーが海洋バイオテクノロジー研究所(2008年3月解散)から特許を譲り受けた新種の藻にCO2を吸収させてバイオ燃料を生産する新しい研究に取り組んでいる。最近は中央大学、京都大学とも協力している。

新種の藻は、温泉で発見されたシュードコリシスチスで、通常の植物と同様にCO2を吸収して光合成で澱粉を作るのに加え、ディーゼルエンジンに使用可能な軽油の成分を含んだオイルも作る。成長が早く、丈夫で培養しやすい特徴を持つ。


JX日光日石エネルギーはユーグレナと組んで、微細藻類のユーグレナでのジェット燃料開発を行っている。

2013/10/17   ミドリムシが地球を救う!

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JX日鉱日石エネルギー、IHIおよびデンソーは2012年6月、3社が発起人となり、微細藻燃料開発推進協議会を設立したと発表した。

微細藻燃料には、CO2削減策、エネルギー資源、食料との競合を回避、抽出残渣の飼料等としての利用など、多くの利点が期待されて いるが、実用化にあたっては、培養、油分の抽出、燃料化といった各工程の技術開発の課題を解決し、一貫生産システムの構築を行うことが必要であり、そのためには、各企業のアライアンスにとどまらず、産官学のオールジャパンでの取り組みとすべく、本協議会を設立した。

参加企業は他に、日立プラントテクノロジー、三菱商事、出光興産、㈱ユーグレナ、ネオ・モルガン研究所、いであ㈱、ヤンマー など。

学識経験者や関係行政の助言を得ながら、微細藻燃料製造の技術を開発する上で共通の課題を抽出し、解決策を検討、必要な施策を提言し、2020年度までに微細藻燃料の一貫生産システムを確立することを目標に、開発に取り組んでいく。


上記のうち、出光興産は1980-90年代にかけて、ボトリオコッカスを利用したバイオ燃料生産の研究に取り組んだが、事業の採算性が合わずに研究をいったん中止した。

いであ㈱は社会基盤の形成と環境保全の総合コンサルタントで、藻場分布調査、生育・生態調査、モニタリング調査を実施しており、自然再生や環境創造の観点から、藻場造成に関する試験、種苗培養や育成、新たな技術開発に積極的に取り組んでいる。

ヤンマーは「つくり、育てる」漁業のあり方を考え、1988年にヤンマーマリンファームを設立した。
有用な水産生物の養殖システムの開発、稚魚・稚貝の生産、種苗に不可欠な藻類の培養を一体として取り組むことで、養殖事業の拡大をめざしており、また、藻類を活用してCO2を削減する環境保全技術についても研究を進めている。


2013/11/21 テルモとオリンパス、損害賠償訴訟で和解 

オリンパスは11月18日、テルモから受けていた66億円強の損害賠償請求に対し、60億円を支払うことで和解したと発表した。
オリンパスは「和解で早期に解決することが最善の策と判断した」と説明している。

テルモは過去に第三者割当増資で引き受けたオリンパス株 681万株について、2011年に発覚したオリンパスの粉飾決算事件後に株価が急落し、損失を被ったとして賠償金を請求していた。

オリンパスは2013年4~9月期決算でテルモへの和解金を訴訟損失引当金として特別損失に計上している。

 

付記

オリンパスとテルモは2017年2月9日、資本提携を解消すると発表した。相互に持ち合っていた株式を売却する。
医療機器の開発や販売などでの業務提携は継続するが「今後は資本関係がなくとも良好な協力関係が維持できる」とのことから保有株を手放す。

ーーー

テルモとオリンパスは2001年4月25日、医療機器分野における開発、製造、販売等に関し、包括的な業務提携基本契約を締結した。

両社は2005年8月、業務提携の強化に合意した。

両社はまた、この業務提携強化を経営レベルで推進するため、その裏付けとして両社間の資本提携を行うこととした。

テルモ:オリンパスの6811千株  2.51%   
オリンパス:テルモの4715千株  2.20% 

更に両社は2006年12月に、共同事業に関して合意、2007年4月にオリンパス バイオマテリアルにテルモが参加し、オリンパス テルモ バイオマテリアルとした。

2012/1/19 オリンパスとテルモ

 

テルモは2005年8月にオリンパスと資本提携を行った際、 総額149億9782万円の第三者割当増資を引受け た。

しかし、オリンパスの過去の損失先送り問題により第三者割当に係る有価証券届出書等 に重要な事項に係わる虚偽記載があったことが判明した。

テルモは2012年7月、これによ る株価の低下で、66億1167万円の損害が発生したとして、損害賠償の請求を行った。

 

2012年に、オリンパスが他社との資本・業務提携によって再建を目指す方針を固め、国内外の5社(ソニー、パナソニック、富士フイルム、テルモ、韓国 サムスン電子)を軸に提携先の検討を進めていると報じられたが、このなかにテルモも含まれている。

テルモは損害賠償請求の直前に、オリンパスに対し、500億円の資本提携と将来の共同持ち株会社の設立に向けた統合協議委員会の立ち上げを提案して いる。

この統合が実現すれば、グローバル医療の潮流である低侵襲治療において、世界で伍していけるリーディングカンパニーになれると している。

統合提案は、オリンパス社が各分野において他社と最適な事業・技術提携ができる内容となってい る。

統合提案と同時に訴訟を行ったのは、虚偽記載による民事責任が、効力発生から7年が経過する2012年8月3日頃には権利が消滅してしまうことに よるもので、「株主への責任を全うするというガバナンスの観点から、やむを得ず提訴した」としていた。
テルモは「本訴訟が、オリンパスに対する統合提案に何ら影響を与えるものではない」とのコメントを発表した。

ーーー

ソニーとオリンパスは2012年9月28日、資本業務提携すると発表した。ソニーがオリンパスに500億円を出資し、11.46%を持つ筆頭株主になる。

両社は2013年4月、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズを設立した。ソニー51%、オリンパス49% 出資。
事業内容:
(1) 4K以上の解像度技術、3D機能等を有する新型外科用内視鏡及びその関連システムの開発・設計・製造・販売 
(2) 手術室等向けの医療機器・映像機器の統合ソリューション事業 など
 

2013/11/22    ブラジルの資源大手 Vale、アルミニウム事業から撤退 

ブラジルの資源大手 Valeは11月11日、ノルウェーのアルミニウム・エネルギー大手 Norsk Hydro の持ち株売却を開始すると発表した。
アルミニウム業界から撤退し、鉄鉱石やニッケルなどの主力事業に経営資源を集中するのが狙い。

Valeは2011年初め、ブラジルに保有するボーキサイト・アルミナ・アルミ資産をNorsk Hydroに売却し、引き換えに同社株22% を取得した。

しかし、その後の世界的なアルミニウムの供給過剰が響き、Norskの株価は大幅に下落し、Valeは昨年には9億7500万ドルの評価損を計上した。

Valeは2013年12月、この持ち分を売却する意向を明らかにした。
当初は売り急ぎはせず、利益が出るまで待つ構えでいたが、その後も値下がりが続いたため、今回、半分以上(約12%相当、時価では約10億8000万ドル前後)を売却する。
残りについても今後売却する。

Valeでは主力事業以外の資産を売却する方針で、売却資金は主力事業の鉄鉱石、ニッケル、銅、石炭、肥料の事業分野への大規模投資に充てる。

ーーー

Valeは2011年2月にブラジルに保有するボーキサイト・アルミナ・アルミ資産をNorsk Hydroに売却した。

2010年5月にNorsk Hyrdoとの間で、日本とブラジルが共同で行っている「アマゾン・アルミニウム事業」(アルミ精錬のAlbras とアルミナのAlunorte)を含むアルミ事業とアルミナ事業及びボーキサイト鉱山の権益を売却する契約を締結した。

Norsk HydroはAlbrasの権益51%、Alunorte権益91%(既出資の34.03%を含む)と、パラゴミナス鉱山の権益 60%及び Para州に建設する計画のCAPアルミナの権益81%(既出資の20%を含む)を保有することになる。
Norsk Hydroはパラゴミナス鉱山の残り権益40%については2分割2013と2015年にそれぞれ2億ドル)で購入するオプションを持つ。

パラゴミナス鉱山は世界3位のボーキサイト鉱山で、年産能力は990万トンであったが、CAPアルミナへの供給で1500万トンに拡大する。

Valeは現金11億ドルと、Norsk Hydroの株式の22%を受け取る。これらに7億ドルのJVの債務負担を加えると、合計で49億ドルに相当する。
(Norsk Hydroは格付け維持と将来の投資資金確保のため、17.5億ドル相当の増資を行った。)

詳細は、2010/6/16 ブラジルのVale、アマゾン・アルミ事業から撤退、Norsk Hydroに譲渡 



2013/11/23 暁星、ナイロンを上回る新素材ポリケトンを開発 

韓国の暁星は11月4日、ポリケトンの開発・商業化に成功したことを発表した。

ポリケトンはエチレンと一酸化炭素を原料とする環境に配慮した高分子素材 。

暁星では「ポリケトンはナイロンに比べて耐衝撃力が 2.3 倍強く、化学物質に対する安定性は 1.4~2.5倍に上る。耐摩耗性も従来の最高レベルのPOM比 14倍以上、気体遮断性も現存する素材の中で最も優れたエチレンビニルアルコールと同等の水準である」とし、「自動車の燃料系統の部品、電子製品の内・外装材などで脚光を浴びるだろう」と説明した。

暁星の李相雲副会長は「一酸化炭素を原料とする環境にやさしい低炭素の素材」、「1938年にナイロンが開発されて以降、75年ぶりに登場した革命的な素材 」としている。

韓国紙は「ポリケトンは1970年代以降、Shell などが量産化に挑戦していたが、触媒剤の開発から上手くいかず、失敗続きだった 」とし、「世界初の商用化」とはやしている。

暁星は2004年に趙錫來会長の「今まで世の中になかった素材を開発せよ」との指示で研究を始め、10年間に500億ウォン(約46億円)を投資した末、ようやく独自開発に成功した。
国内 133件、米国・欧州・中国、日本など海外 27件の関連特許出願・登録を終えている。

2012年3月に蔚山の龍淵工場に1000トン規模の生産施設を作り、試験稼動を行って おり、最近1年間で韓国・ドイツなど約100社に試作品を供給し、その品質について認証を受けている。

暁星は2年以内に2000億ウォンを投資し、年産5万トン規模のポリケトン工場を建てる計画 で、2020年まで1兆500億ウォン台の追加投資を検討している。

ーーー

日本では旭化成が独自の重合技術と紡糸技術により開発された世界初のポリケトン繊維を開発、「サイバロン」と名付けた。
独自の湿式紡糸技術により、技術化した新しいタイプの繊維で、特に接着性、耐疲労性、耐薬品性、加工性に優れており、その接着性・耐疲労性を生かして、タイヤなどのゴム資材や電子材料用途を目指した。

2001年にポリケトン繊維の開発を明らかにし、その後新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)の基盤技術研究促進事業にも採択され、2002年から5年間で約5億円の資金援助も受けて開発を進めた。2006年にパイロットプラントを稼動させた。

同社では2009年度に年産2000トンの設備を導入するとしていたが、最終的に事業化に至らず、2010年に事業化研究を中止した。

同社はその後、パイロットプラントを活用して、ポリケトン樹脂を使用した多孔膜を開発した。

ナノサイズで制御された微多孔構造とポリケトン独自の特性により、機能性フィルターやセパレーター材料、細胞培養基材、再生医療母材などの用途展開を図っている。

 


2013/11/25 JPMorgan、住宅ローン関連証券の不正販売で130億ドル支払いで政府と和解 

米金融最大手のJPMorgan Chase は11月19日、2008年の金融危機を招いた住宅ローン関連証券の不正販売を巡り、総額130億ドルを支払うことで米司法当局と合意した。

米金融当局はほぼすべての大手金融機関を対象に責任を追及しており、今後、他の金融機関にも責任追及の動きは広がる。

司法省や米連邦住宅金融庁(FHFA)、複数の州当局などは、JPMorgan、Bear Stearns、Washington Mutual が2008年末までに十分な情報を開示せずに住宅ローン担保証券(RMBS)を住宅公社や投資家らに販売、住宅バブルの崩壊で価値が急落し、多額の損失を被ったとしてJPMorganの責任を追及していた。

大手投資銀行 Bear Stearnsは2008年5月30日付けで、JPMorgan Chaseに救済買収された。
住宅金融大手 Washington Mutualは2008年9月25日に資産差押えとなり、入札により事業の大部分をJPMorgan Chaseが取得した。

被害を被った連邦住宅貸付抵当公社(Federal Home Loan Mortgage CorporationFreddie Mac)と連邦住宅抵当金庫(Federal National Mortgage AssociationFannie Mae)は2008年9月6日に米連邦住宅金融庁(FHFA)の公的管理下に置かれた。

政府によると、JPMorganが2006-07年に引き受けた住宅ローンの一部を外部機関が調べたところ、27%が引き受け基準を満たしていなかったが、同行はその少なくとも半分を 住宅ローン担保証券に組み込んで販売した。

JPMorganは、同行が扱った住宅ローンは基準を満たしているとした が、従業員の一人が基準を満たしていなかったと語ったことは認めた。

司法長官は声明で「今回の調査で明らかになった行為は間違いなく住宅ローン危機の種をまくことにつながっていた」と述べた。
JPMorganのCFOは「いかなる違法行為も認めておらず、認めた事実が残りの訴訟に影響するとは考えていない 」と語った。

JPMoraganは当初、住宅ローン担保証券の不正販売の大半は、同社が金融危機時の08年に救済買収した大手投資銀行のBear Stearnsと  Washington Mutualが起こしたもので、ブッシュ政権の要請に基づき救済買収したものであるとして責任を減免するよう求めていたが、司法当局は要請を拒否した。

これまでWall Street - White House complex(Wall StreetのトップがFRBや財務長官などを勤め、退職後は再度 Wall Street に戻る)がWall Street重視の政策をとってきており、金融危機で政府の支援を受けた金融機関が高額の報酬を支払うなど、国民の不満が高まっている。

今回は不人気なオバマ政権が人気対策で強攻策を取ったとのコメントが多い。

特に、政権の要請で救済合併したところの責任をすべて負わしており、金融機関側に不満が出ている。

和解金130億ドルの内訳は以下の通り。

1) 住宅ローン担保証券の品質に関する不適正な情報開示の罰金 20億ドル

2) 住宅ローン担保証券の買い手に対する賠償金 70億ドル

米連邦住宅金融庁 (FHFA) 40億ドル(Freddie Mac 27.4億ドル、Fannie Mae 12.6億ドル)
National Credit Union Administration 14億ドル
Federal Deposit Insurance Corporation (FDIC) 5.15億ドル
New York州など5州 計 10.57億ドル

3) 損害を被った住宅ローンの借り手への支援金 40億ドル

このうち、住宅ローンの評価損に少なくとも15億ドル、住宅所有者に対する月間返済金の軽減に最大5億ドルをそれぞれ充て、残り20億ドルは住宅危機で大きな打撃を受けた地域に住む低中所得者向け新規ローンや荒廃住宅の解体などに利用される。

なお、刑事上の免責は和解に盛り込まれなかったため、不正販売に関わった行員らに対する刑事訴追の可能性は残った。

 

今回の和解は住宅ローン担保証券に関する連邦政府、州政府との和解であり、他にも係争はある。

今回の発表に先行して、JPMorgan Chaseは11月25日、米連邦住宅金融庁 (FHFA)に51.5億ドルを支払うことで和解したと発表した。
これには上記の住宅ローン担保証券に対する40億ドルのほかに、証券化されていない住宅ローン(whole loan ) 分が11.5億ドル含まれている。

Freddie Mac 4.8億ドル、Fannie Mae 6.76億ドルの合計 11.5億ドル

JPMorgan Chaseは11月15日、住宅ローン関連の金融商品を不正に販売した問題で、21の機関投資家に、合わせて45億ドルを支払うことで和解に達したと発表した。

以上を合計すると、JPMorgan Chase の支払額は186.5億ドルに達する。

JPMorgan Chase では和解に備えて2013年7-9月期に訴訟関連引当金を92億ドル追加しており、引当金残は9月末時点で230億ドルになっており、今回分はすべて引き当て済みとなっている。

住宅ローン問題とは別に、JPMorgan Chase は本年9月、昨年発覚した巨額トレーディング損失に関連し、連邦証券法に違反したことを認め、9.2億ドルを支払うことで合意した。

同行経営幹部は2012年4月の時点で、ロンドンのチーフ・インベストメント・オフィス部門が7.5億ドルの損失を隠蔽するためにトレーディング勘定の水増しを行っていたことを認識していた。幹部の一部は昨年、第1四半期の決算報告に署名するのに「難色を示した」という。

ロンドンの部門は日々大きなポジションを動かし、市場では「London Whale(ロンドンの鯨)」とニックネームをつけていた。
 


2013/11/26 中国へのビニロンプラント輸出50周年記念式典  

クラレは、中国へのビニロンプラント輸出50 周年記念式典を11 月15 日に北京で開催した。

ビニロンはポリビニルアルコール(ポバール)を原料とする合成繊維で、京都大学の桜田一郎教授らによって1939 年に開発された。
米国でDuPontのWallace Carothersが1935年にナイロンを開発し、評判になった直後で、「日本のナイロン誕生」と騒がれた。
当時は「合成1号」と名付けられた。

1943年に倉敷レイヨンの大原総一郎が岡山に日産200kgの重合、紡糸の一貫工場を建設した。

大原は戦後直ちに事業の遂行を決め、1948年に原料から紡糸までの一貫試験工場を建設した。
この時点で桜田教授から「ビニロン」の名称の提案があり、採用された。

1949年に商工省は「合成繊維工業の急速確立に関する件」の省議決定を行い、ポリビニールアルコール系繊維を倉レ、ポリアミド系繊維を東レ担当とした。

1950年にフィラメント日産5トン、ステープル5トンの商業生産プラントが完成した。
カーバイドを生産していた昭和電工・富山工場の一角でカーバイドアセチレンからPVAを生産、岡山工場に重合、紡糸工場を建設した。

建設に当たっては政府からの資金援助が「日本にとって贅沢品だ」として閣議によって否決され、資金調達に苦しんだ。
反対した大臣のなかに大屋晋三運輸大臣(9年間の参院議員の前後は帝人社長)がいる。
大原総一郎は「日本の繊維産業を復興するものだ」と一万田日銀総裁に直談判し、協力を得て、15銀行による14億円の協調融資が成立した。

2010年に「ビニロン」が国立科学博物館により「未来技術遺産」に選ばれた。

他方、東レは1951年にDuPontから当時の東レの資本金を3億円も上回る10億8千万円で特許を購入した。
DuPontが工業化しているのは66タイプだが、東レが事業化するのは6タイプで異なるため、特許権だけ買い、ノウハウは自社開発とした。(特許購入は、米国に製品を輸出する際に、物質特許による特許紛争が起こることを読んだもの)

同社は1938年にナイロン特許が公告された直後から研究を開始し、1943年から試作を行っていた。

ーーー

1958 年に中国化学工業考察団が来日した際、民生用繊維増産の目的でビニロンプラント輸入の申し入れがあり、交渉がはじまった。

当時は日中間に国交が樹立されておらず、また台湾政府との関係もあって政治問題化した。

倉敷レイヨンは政府や政党幹部、中国在勤の西側外交筋へ積極的に働きかけた結果、1962 年11 月に締結された「日中総合貿易に関する覚書(LT協定:廖承志と高碕達之助の名前から)による日中貿易の目玉として輸出承認が得られ、中国へのプラント輸出の第一号として、1963 年6月にポバール・ビニロン一貫生産プラントを輸出する契約を締結した。

中国側の代金延べ払いが議論を呼んだが、関係各大臣の協議で、金利を原案の年4.5%から6%に引き上げることを条件に認められた。

これが、西側諸国からの対中国プラント輸出の第一号となった。

当時、大原総一郎はこう言っている。

私の念願することは、日産30トンのビニロンは、6億 5千万の人口に対しては、1年1人当たり僅かに0.017キロの繊維を供給するに過ぎないものであるが、繊維に不足を告げている中国人大衆にとって、いささかでも日々の生活の糧となり、戦争によって物心両面に荒廃と悲惨をもたらした過去の日本人のために、何ほどかの償いにでもなればということ以外にはない。

周恩来総理、陳毅副総理、郭沫若外交部長らが、訪中した大原総一郎社長と会見した。
 


2013/11/27      クラレ、DuPont のビニルアセテート関連事業買収 

クラレは11月21日、DuPont から同社のPackaging & Industrial Polymersの一部であるビニルアセテート (Glass Laminating Solutions/Vinyls)関連事業を 543 百万ドル+在庫相当額で買収する契約に調印した。
所管当局の正式な承認を経て、2014 年前半の完了を目指す。

買収対象事業は、安全ガラスの中間膜として使用されるポリビニルブチラール(PVB)シート、ビニルアセテートモノマー(VAM)、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂など で、建築分野・自動車分野等広範な産業分野において使用される製品群を有しており、当該事業の年間売上高は500 百万ドル以上となっている。

工場所在地は以下の通りで、他に、北中南米、欧州、日本、韓国、中国等に販売等の拠点があり、従業員は約600人。

 米国: 3ヵ所(テキサス州、ノースカロライナ州、ウエストバージニア州)
 欧州: 2ヵ所(ドイツ、チェコ)
 アジア:1ヵ所(韓国)

デュポンコリアの蔚山工場ではブタサイト(合わせガラス中間膜PVBシート)を生産している。
他の工場の生産品目や能力は今のところ不明。

クラレは 世界に先駆けてビニロン繊維の原料としてPVA の工業化に成功(昨日の記事参照)、ビニルアセテート関連事業のパイオニアとして、PVA 樹脂、PVB 樹脂・フィルムのほか、液晶ディスプレイや洗剤個包装などに使用されるPVA フィルム、食品包装やガソリンタンクなどに使用されるEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)樹脂(クラレ商標<エバール>)、アスベスト代替のセメント補強材料などに使用されるPVA 繊維ビニロンを世界的に展開している。

DuPontのVA 関連事業に携わる世界中の人材、技術力・開発力および生産・販売網は、今後の持続的成長に貢献するとしている。

付記

本件は、欧州におけるPVBシート事業のうち、ドイツのUentrop 工場、ベルギーのMechelen R&Dセンターを第三者に売却する条件でEUの承認を取得した。

クラレは2014年10月、対象事業をGVC Holdings の子会社のGVC S.A. に約12百万ユーロで譲渡する契約を締結した。

ーーー

クラレの2012年4月の中期経営計画「GS-Ⅲ」説明会での 同社の構想は以下の通り。

同社の現状は以下の通り。(今回のDuPontからの購入は含まず、数字は能力:千トン)
  日本 アジア 欧州 北米 合計
酢ビ 岡山 150             150
PVA(ポバール)樹脂 岡山・新潟 124 Kurare Asia
Pacific

40

Kurare Europe
     (増強中)
70
(24)
Kuraray
 America
(40) 234
(+64)
ポバールフィルム 玉島・西条
(増強中)
      MonoSol                               

MonoSol

   
PVB樹脂         Kuraray Europe 39     39
PVBフィルム     (検討中)   Kuraray Europe
  (増強中)
34
    34
エバール 岡山 10 (検討中)   Eval Europe 24

Kuraray
 America
  
(増強中)
 

35
+12
69
  (+12)

日本:

酢ビ:1983年に中条工場の天然ガス法酢ビ(86.4千トン)を休止。

ポバールフィルム:

       2007年初めは西条3100万m2、玉島3000m2の合計6100万m2であったが、
   現状は 1億8000万m2となっており、2013年6月には西条増強で合計2億1200万㎡まで拡大する。
       西条工場の増強では大型液晶テレビ用偏光フィルムのための幅5000mmの広幅タイプの生産ができる。

アジア:

クラレは1996年10月、シンガポールに日本合成化学との50/50JVのPoval Asia を設立したが、2008年1月付けでクラレ 100%になった。

2008年7月にアジア・オセアニアのポバール樹脂販売会社Kuraray Specialities Asia と統合し、Kuraray Asia Pacificとした。

欧州:

  1) PVA、PVB事業

クラレは2001年にClariantのPVA、PVB事業を買収、Kuraray Specialities Europe GmbH を設立した。
工場はフランクフルトで、能力はPVA 50千トン、PVB 16千トンであった。その後増強。


2006年
9月に
Kuraray Europeが吸収合併した。

  2) PVBフィルム

2004年11月にRütgers AGの子会社HT Troplast社から買収した。
工場はドイツの
トロイスドルフで、能力は26千トンで、2007年に34千トンに増強した。 
これにより、PVA樹脂→PVB樹脂→PVBフィルムの一貫体制を完成

2012年3月、世界的なPVBフィルムの需要拡大(特に新興国を中心に伸長する自動車用途)に対応し、増強を決定(能力非公表)。2013年11月稼働目標。

  3) Eval Europe

1999年にベルギーのアントワープでエバールの生産を開始した。

     4) MonoSol (ポバールフィルム)英国:下記

米国 

当初、Eval Company of America を設立し、1986年にテキサス州パサディナでエバールを生産開始した。
その後、
Kuraray Americaに吸収合併した。

2011年1月に酢ビ・ポバール事業の拡大のため、エバール工場の近くに土地を購入。
2012年にPVA樹脂40千トンの建設決定(2014年9月完工予定)

MonoSol:
クラレは2012年5月、米国のポバールフィルムのメーカーのMonoSol社を買収すると発表した。
MonoSolは、洗剤・農薬・染料などの個包装、人工大理石離型用など産業用ポバールフィルムではリーディングカンパニーの位置にある。
本件買収により、クラレはポバールフィルムに関し、偏光フィルム向けの光学分野だけでなく、広範な産業分野においてもグローバルリーダーとなるとしている。
工場は米国と英国。


2013/11/28   住友化学、核酸医薬原薬の受託製造開始 

住友化学は11月22日、㈱ボナックとの間でボナックが保有する核酸医薬原薬の製造・販売に関する知的財産権の独占的実施権の許諾契約を締結、大阪工場に開発用途の核酸医薬原薬の製造設備を新設し、2014 年度第3 四半期から同原薬の受託製造を開始すると発表した。

付記 住友化学は2016年7月4日、ボナックの第三者割当増資に応じ、出資した。

核酸医薬は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の働きを利用して、病気を引き起こす遺伝子やタンパク質に作用するタイプの医薬品で、低分子医薬(化学合成により作られる一般的な医薬品)、抗体医薬に続く、第三世代の医薬品として、近年注目されている。

核酸医薬品は遺伝子にじかに働きかけるため、従来型の医薬品と比べて治療効果が高く、副作用が少ないとされる。

ただし、病気を起こす遺伝子まで到達させるため、体内での安定性やDrug Delivery System(DDS)などの課題を解決する必要がある。

ボナックは、これらの課題解決に有力な独自の核酸医薬のプラットフォームを確立し、特許を日本で取得したほか欧米の主要国で出願中で、国内外の製薬メーカーと核酸医薬品開発についてライセンス交渉を進めるとともに、核酸医薬品の自社開発を行っている。

RNA干渉法を用いた核酸医薬に関する研究開発を進めてきた九州大学、東京医科大学、ボナックの3者は日本独自の核酸医薬に関する新しい基盤技術を確立するに至り、それを機に眼科領域に特化した、新しい分子標的核酸医薬の開発と臨床応用を本格的に進めるために、2012年3月19日に、産学連携ベンチャー「アクアセラピューティクス」を福岡市に設立した 。

住友化学は、医薬原薬・中間体については30 年以上にわたる生産実績があり、優れた工業化技術、GMP対応力を有するとともに、高度な品質保証体制を確立している。

核酸医薬原薬の工業化パートナーを探していたボナックと、同社の技術の将来性、優位性に着目した住友化学のニーズが合致したことから、今回の決定にいたった。

住友化学は、今後、ボナックおよび同社からライセンスを受けて医薬品開発を行う国内外の製薬メーカー向けに核酸医薬原薬の受託製造を行い、医薬化学品事業の強化を図る。
ボナックは、住友化学から安定的に高品質の核酸医薬原薬を確保し、核酸医薬品の早期実用化に向けた開発を進める。

ボナックはタルク、カオリン、炭酸カルシウム、マイカ等の輸入やあらゆる無機粉末を扱う鉱物粉末の専門メーカー の林化成が2010年2月に設立した。
社名のボナック(BONAC)は核酸化学の架け橋(Bridge Of Nucleic Acids Chemistry)を表す。

ーーー

核酸医薬品にはいろいろの種類があり、世界の多くの企業が開発に当たっている。(主としてsiRNAを開発している)

http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001922.pdf

しかし、現状では市販されているのは3品目しかない。

初めの2つはいずれも眼性疾患用である。

第1号は1998年に米国で認可されたエイズ患者のサイトメガロウイルス網膜炎の治療薬「Vitravene」(fomivirsen)で、米国のISIS Pharmaceuticalsが開発した。

天然型のDNA製剤 (アンチセンスDNA医薬 )のVitraveneの問題は、注射すると血中で分解されることと、細胞内になかなか取り込まれないこと。
そのためVitraveneは患者の眼球に局所注射して分解を抑止、局所のアンチセンスDNAの濃度を上昇させてやや無理矢理細胞内に取り込ませて薬効を発揮した。 (全身投与できず、対象疾患も極めて限定された )

第2号は2005年にEyetechとPfizerから上市された血管新生型加齢黄斑変性症(AMD)治療薬でアプタマー医薬の「Macugen」(ペガプタニブナトリウム)

第3号は2013年1月にFDAが承認した家族性高コレステロール血症の治療薬 の「Kynamro」(mipomersen) で、アポたんぱく質B100のmRNAを標的とした第二世代のアンチセンスDNA医薬 。
家族性高コレステロール血症患者のホモザイゴート(両親からLDL受容体の変異を共に遺伝した患者)に限り、承認された。
米Isis Pharmaceuticals社が開発、米Genzyme社が販売する。

ボナックは、自社の有する高い有機合成・核酸合成技術に基づいて一本鎖核酸による遺伝子発現制御プラットフォーム技術「nkRNA®」「PnkRNA™」(ボナック核酸)を開発し、2012年4月に国内特許を成立させた。

  1. nkRNA® : 「遺伝子発現制御のための一本鎖核酸分子」 (特許第4968811号)
  2. PnkRNA™ : 「含窒素脂環式骨格を有する一本鎖核酸分子」 (特許第4965745号)

ボナック核酸は従来のsiRNA(二本鎖短鎖RNA)とは異なる、ユニークな分子内構造(2次構造)を有する一本鎖長鎖核酸を構造的な特徴と する。
既に日本国内で特許が許諾されているため、特定の欧米企業が専有する既存の核酸干渉に関する基盤特許技術に依存することなく、独自の核酸医薬を開発することが可能とな る。

ーーー

核酸医薬品の原料は、日東電工の米子会社 Avecia Biotechnology と米 Agilent Technologiesが合計8割程度の世界シェアを持つ。

日東電工は2011年2月に、今後成長が期待される核酸医薬の分野において事業基盤の強化を目的に、米国マサチューセッツ州にある核酸医薬の製造受託分野でトップのAvecia Biotechnologyを買収した。

Avecia Biotechnologyは、核酸医薬の製造受託分野でトップシェアを誇り、前臨床段階から商業的製造までのステージにおいて、 世界最大のcGMP製造能力をベースに、分析方法開発、プロセスバリデーション、安定性試験、品質管理及び薬事面サポートと幅広いサービスを提供してい る。

日東電工では下記のシナジー効果を発揮し、更なる事業拡大を図っていくとしている。

1)核酸医薬分野での優位性のある市場ポジション及び顧客ネットワーク  
2)ドラッグデリバリー技術を含む、特許・技術の融合
3)日東のポリマービーズ技術を活用した、核酸合成効率の向上と製造原価削減
4)Aveciaの良好な地理的立地と、更なるサービス提供エリアの拡大

Agilent Technologiesは、化学分析機器や電気・電子計測機器の開発・製造・販売・サポートを行う業界最大手の企業。核酸分野での主なビジネスは研究用・GMP レベルの核酸の受託合成、分析受託、合成・分析機器の販売など幅広い。

Hewlett-Packardの一部門であったが、2000年にHPが株式を売却、独立した。

2006 年に核酸の製造を行うSynPro を買収、さらに2008 年にDawpharma の核酸医薬品製造ビジネス部門を買収し業務を拡大している。

住友化学は原料の需要家でもあるボナックと組むことで、先行する2社を追う。
ボナックなどの開発が進んで市販できる核酸医薬品が出るときは、量産用の設備の建設を検討する。


2013/11/29  住友化学、エチレン停止に合わせ日本オキシランのSM、PO、PGを2015年に停止 

住友化学は11月27日、60%出資する日本オキシランについて、残り40%を出資するLyondell  Centennialから保有株式40%全てを取得し、住友化学の完全子会社としたあと、2015年5月をめどにSM、PO、PGの製造・販売を終了すると発表した。

住友化学は次の定修時期の2015年にエチレンを停止することを決めており、一部誘導品の停止を含めた最適化を検討してきたが、日本オキシランの工場を停止することを決定した。

停止する工場は以下の通り。

SM:年産425千トン、PO:181千トン、PG:100千トン。

日本オキシランはハルコン法のPO/SM併産法を採用している。

住友化学はこれとは別に自社開発の単産法でPOを生産している。(能力200千トン)
同社では日本オキシラン停止後も、高い コスト競争力と低い環境負荷を実現した千葉工場 の単産法プラントで PO の製造 を継続し、引き続き販売する。

SMについては、住友化学は日本オキシランに加え、電気化学とのJVの千葉スチレンモノマーに参加していた。

電気化学と住友化学は2012年1月、千葉スチレンモノマーを2012年4月末に電気化学の100%子会社とすることで合意したと発表した。

千葉スチレンモノマーは1992年1月に電気化学60%、住友化学40%の出資で設立、電気化学の千葉工場内に年産27万トンのプラントを建設した。
製品の引取は出資比率見合いで、電気化学 162千トン、住友化学 108千トンとなっている。

電気化学は自社プラント(24万トン)と千葉スチレンモノマーのプラント(27万トン)を同社千葉工場に有するが、これを機に自社プラントを停止し、競争力のあるプラントでの集中生産体制を確立、スチレンチェーンの基盤強化を図る。

住友化学は日本オキシランにSM/PO併産設備(SM 412千トン)を有し、千葉スチレンモノマー品の販売を日本オキシランに委託しているが、千葉スチレンモノマーの生産枠(108千トン)の放棄で、競争力が低下している輸出を縮小した。

2012/1/13  電気化学と住友化学、スチレンモノマー事業を縮小 

日本オキシランの工場の停止の結果、住友化学のSMはゼロとなり、POは単産法の20万トンのみとなる。

住友化学は2009年9月末に、三井化学とのJVの日本ポリスチレンの千葉工場の操業を停止し、その後、日本ポリスチレンを解散している。

2009/4/4 日本ポリスチレン 2009年9月末に操業停止、解散へ

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日本オキシランは1972年に設立された。

1967年にアメリカのHalcon International Inc.が、メキシコで開かれた世界石油会議で、塩素を使用せず、過酸化物を種々変えることによってプロピレンオキサイドと各種の併産品を選択的に生産することができる新方法を発表して、俄然注目の的となった。

これはAtlantic Richfield (ARCO  )との共同開発によるもので、両社はJVの Oxirane Chemical を設立、テキサス州ベイポートで、同法の世界最初の工場としてPO 75千トンの工場を建設した。当初はPO/SM、後にPO/TBAも生産した。日本オキシランの名前はこれから取った。

それまでのPOの製法は塩素法であった。

プロピレン+塩素 → クロルヒドリン
クロルヒドリン+苛性ソーダ → PO+塩化ナトリウム

ハルコン法

プロピレン+エチルベンゼン(or イソブタン)→PO+SM (or MTBE)

日本の各社が導入を競ったが、住友化学はAtlantic Richfield と洗剤原料のJVの日本アトランチック(花王を含めたソフト型アルキルベンゼン生産JV)を有しており、Halcon社長と住化の児玉福社長が懇意であったことから、住友化学が技術導入に成功した。
住友化学は当時、昭和電工とPSのJV、日本ポリスチレンを持っていたことから、昭電を含めたJVを設立することとした。

能力はPO 90千トン、SM 225千トンとし、住友化学の千葉製造所に建設することとした。
出資比率はアメリカ側 50%、住友化学 30%、昭和電工 20%とした。
先ず1972年8月に住友化学と昭和電工の2社で日本オキシラン設立し、その後、アメリカ側のAtlantic Richfield とHalconが出資した。
1973年に千葉県の認可を受けて着工し、1975年8月に完成した。


1980年にハルコン持分がARCOに譲渡され、ARCOが 50%となった。

その後、採算悪化から1982年に一時的に製造部門を分離してスミアルコを設立(住化 50%/ARCO 50%) したが、1987に日本オキシランがスミアルコを吸収、住化 44.76%、昭電 5.24%、ARCO 50%とした。

20026月に昭和電工が離脱、住化 50%、Lyondell 50%とした。

2000年9月に住友化学はPOの新法開発を発表した。

プロピレンとキュメンからPOを生産し、副生するクミルアルコールはキュメンにして再度利用するもの。
2003年に千葉に200千トン設備を建設した。

住友化学はPO事業を石油化学部門のなかでコア事業の1つに位置づけ、2003年3月に日本オキシランの出資比率を60%に引き上げ、代わりにSM販売については日本オキシランに移管した。

それまで日本オキシランはPOを直接販売していたが、SMについては住友化学が日本オキシラン設立以前に製造販売していたことから、日本オキシラン品を受託販売していた。(住友化学は千葉に100千トン設備を持っていたが、産構法で停止した。)

ーーー

Halcon Internationalは1987年にScientific Design Companyに改称した。
Scientific Designは2003年に
Saudi Basic Industries Corporation (SABIC) とSüd-Chemie AGに買収された。

2011年にClariantがSüd-Chemieを買収、現在はScientific DesignはSABIC とClariantのJVとなっている。

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1985年にARCOの子会社としてLyondell 設立され、1989年に独立した。
ARCOは2000年にBPに買収されたが、これに先立ち、1998年に
Lyondell はARCO Chemical Company を買収している。

1997年にはMillennium Chemicals とのJVでオレフィンおよぴポリオレフィンメーカーのEquistar Chemicalsを設立した。
当初はLyondell が41%出資で、MillenniumとOccidental が各29.5%出資であったが、2001年にOccidentalは持株をLyondellに売却し、その代金でLyondell株を購入している。

2004年12月、Lyondell とMilleniumが合併した。合併後の姿はMilleniumとEquistarがLyondell の子会社の形をとっている。

2007年にBasellがLyondellを吸収合併し、LyondellBasell Industriesとなった。


2013/11/30 住友化学シンガポール法人が不正取引、カンボジア高官に25万ドル

住友化学は11月25日、シンガポール法人が2006~2010年にカンボジア政府の幹部2人に対し、契約受注の見返りに256,471ドルを支払う不正取引があったと発表した。

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(
Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)が11月14日に発表した調査報告で明らかになった。

基金の援助で行ったマラリア感染防止用の同社の防虫剤入り蚊帳 Olyset Net の契約を受注するたびに、架空のコンサルタント会社を経由して手数料名目で個人口座に見返り金を振り込んでいた。
2006~10年の間に計7回、カンボジア政府のマラリア対策組織(National Centre for Parasitology, Entomology and Malaria Control )の高官2人に対し、蚊帳の受注額の2.25~6.5%を渡した。

同社によると、不正にかかわったのは日本人ではない部長級マネジャーと部下の社員で、内部調査に対し不正な資金供与を認めたため、懲戒解雇した。

基金の発表では、住友化学シンガポールのほかに、スイスに拠点を置き、蚊帳(“PermaNet”)や水の濾過フィルター(“LifeStraw”)など緊急事態や病気に対応する製品に特化した企業のVestergaard Frandsenの不正が判明した。
同社は154,241ドルを支払っていた。

両社の支払った合計410,712ドルのうち、National CentreのDirector が350,904ドル、Deputy Directorが59,809ドルを受け取っていた。

付記

世界基金は2014年2月5日、住友化学を親会社として問責し、外部専門家による再発防止策実施状況の検証、マラリア防除用蚊帳100 万張りの寄
付など、今後の取引継続に必要な条件を提示したことを発表した。
住友化学は、かかる条件を受け入れ、今後も世界基金への蚊帳の供給を継続し、引き続きマラリア防圧への貢献を行っていくと発表した。

ーーー

本件で何故、住友化学が賄賂を払ったのか、不思議である。

先ず、カンボジアは基金の支援を受けて蚊帳を購入することは決まっており、供給メーカーは多くないし、Olyset NetはWHOからも使用を推奨されていることもあり、賄賂を払わなくても採用されるのはほぼ確実であろう。

Olyset Netは多くの国で採用されていることから、基金は価格を分かっているはずで、賄賂分を価格に上乗せすることは不可能と思われ、賄賂分は持ち出しになる。

その意味では、「不正行為」であることは間違いないとして、基金に損失を与えてはいないと思われる 。
基金も “all the mosquito nets procured by that grant were provided as intended” としている。

もしかすれば、カンボジアでは、インドネシアなどと同様に、賄賂なしでは物事が動かないということなのかもしれない。(言い訳にはならないが)

インターネットでは、カンボジアへの入国の際に賄賂がいるとか、「(交通違反の罰金の代わりの)ワイロを受け取らない交通整理員」としてプノンペン市内の男性公務員を紹介した動画が、カンボジアのフェイスブックで人気となっているとの記事が出ている。

ーーー

Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malariaは世界で毎年合計600万人以上の命を奪っているエイズ・結核・マラリアに立ち向かうために、国や政治を越えて新しい資金調達の方法を作ろう、と、2002年に設置された世界基金(本部 :ジュネーブ)で、この3つの病気に関する治療・ケア&支援、予防の各プログラムに資金を配分している。

2000年の九州・沖縄サミットでわが国が初めて感染症対策を主要議題に取り上げ、それがきっかけで設立された。

また、アナン国連事務総長が2001年4月に "call to action"を発表し、世界に行動を起こすよう呼びかけた。

これまでに151か国の1000件を超える事業に資金供与を承認しており,2012年には約33億ドルを実際に供与した。
世界基金の支援により,設立以来約870万の命が救われている。

我が国は世界基金に対し,これまで17.4億ドルの拠出を行っており,米国,フランス,英国,ドイツに次いで第5位の拠出国である。

2009年末の基金のレポートは次の通り述べている。

2009 年12月までに、発展途上国のエイズ・結核・マラリア対策への支援として承認された金額は総額192億ドル、そのうち100 億ドルが支出ずみ。

設立以来の僅か8 年間で、世界基金はグローバル・ヘルス( 地球規模の保健医療課題)に対する重要な多国間援助機関となった。基金を通じた支援は、発展途上国の結核対策、マラリア対策に対する国際援助総額の3分の2、エイズ対策では5分の1を占める。

2009 年12 月までに490万人の命が救われたと推計されている。そして、世界で3300万人 のHIV 陽性者、何百万人ものマラリア患者や感染リスクにある人々、年間940万人の結核患者が、生きる望みを取り戻すことに役立っている。

ーーー

11月14日のレポートで基金は以下の通り述べている。

基金は不正行為を一切許さない(zero toleranceである)。
積極的に調査を行って不正を暴き、不正に使われた資金を取り戻す。調査結果は透明性の観点から公表する。

今回、2006年から2011年の間に、国際企業の2社がカンボジアの役人2名に、マラリア予防のための殺虫剤練り込み蚊帳の供給契約を得る見返りに約41万ドルのコミッションを支払ったことが判明した。

このため、基金は2社(Vestergaard Frandsen とSumitomo Chemical Singapore)との契約を一時停止する。

両社は調査にフルに協力し、関係した従業員に対する処分を行い、将来のための予防措置を講じた。

基金はカンボジアでのAIDS、結核、マラリアと戦うため2003年以降331百万ドルを投じ、マラリアでの死亡を80%減らし、結核では45%、AIDSでは50%減らした。

今回のケースはカンボジアのマラリアとの闘いに直接の影響はなかったが、契約の見返りにコミッションを受け取ることは我々の使命に反する。
調査の結果、コミッション問題はあったが、基金の資金で購入された蚊帳は所期の目的どおり納入されている。
 

基金の調査報告書は http://www.theglobalfund.org/documents/oig/OIG_GFOIG13050InvestigationCambodia_Report_en/


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