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2010/6/16 ブラジルのVale、アマゾン・アルミ事業から撤退、Norsk Hydroに譲渡 

ブラジルのValeが、日本とブラジルが共同で行っている「アマゾン・アルミニウム事業」(アルミ精錬のAlbrasとアルミナのAlunorte)から撤退する。

同事業を含むアルミ事業とアルミナ事業及びボーキサイト鉱山の権益をノルウェーのアルミ最大手Norsk Hydroに売却する契約を締結した。
Valeは現金11億ドルと、Norsk Hydroの株式の22%を受け取る。これらに7億ドルのJVの債務負担を加えると、合計で49億ドルに相当する。
Norsk Hydroは格付け維持と将来の投資資金確保のため、17.5億ドル相当の増資を行う。

この結果、Norsk Hydroが本年第4四半期に、Albrasの権益51%、Alunorte権益91%と、パラゴミナス鉱山の権益60%及びCAPアルミナ(Para州に建設する計画)の権益81%を保有することになる。
Norsk Hydroはパラゴミナス鉱山の残り権益40%については2分割2013と2015年にそれぞれ2億ドル)で購入するオプションを持つ。

パラゴミナス鉱山は世界3位のボーキサイト鉱山で、現在の年産能力は990万トンだが、CAPアルミナへの供給で1500万トンに拡大する。

CAPアルミナは現在建設中で、第一期能力は186万トンだが、744万トンまでの拡大を検討している。ボーキサイトは主にパラゴミナスから供給を受ける。

Norsk HydroQatarQatar Petroleumとの50/50JVのQatalum(年産585千トン)に参加している。
第2期も検討対象となっている。

2008/6/3 中東のアルミ事業

これらの事業の概要及び経緯は以下の通り。

アルミ事業       アルミナ事業
JV Albras
(Aluminio
 Brasileiro)
Alunorte
(Alumina do
 Norte do Brasil)
CAP計画
(Companhia
de Alumina do Pará
)
能力   45万トン   626万トン  186万トン
技術 三井アルミ 日本軽金属  
出資    Vale  51%→0%  57.03%→ 0%  61%→ 0%
日本アマゾンアルミニウム  49%   3.80%  
Norsk Hydro   0%→51%  34.03%→91.06%  20%→81%
Cia Brasileira de Aluminio     3.62%  
ジャパン アルノルテ インベストメント     1.19%  
三井物産     0.23%  
三菱商事     0.10%  
Dubai Aluminium      19%

AlbrasとAlunorteは工場はバルカレーナ市にあり、隣接している。
(CAPも同じバルカレーナ市)

アルミナの原料のボーキサイトは、従来からのトロンベタス鉱山(年600万トン)に加えて、新しくパラゴミナス鉱山が開発され、後者からは年900万トンが輸送用パイプライン(約244km)でスラリー輸送される。

電力はツクルイ水力発電所から供給を受ける。

      日本アマゾンアルミニウムのホームページから

この計画は1973年8月にブラジル政府から要請のあったもので、ブラジル東北部アマゾン河流域の豊富な水力資源とボーキサイトを利用して、ベレン地区に年産能カ80万トンのアルミナ工場(アルノルテ計画)および同32万トン(16万トンx2系列)のアルミニウム製錬工場(アルブラス計画)の建設、 運営を行うという計画である。
所要電力は同国政府がツクルイ地区に建設する発電所から供給されることとなっていた。

ブラジル政府から要請のあった2ヵ月後に第一次石油危機が発生した。エネルギーコスト上昇の見通しの中、ブラジルへの経済協力とアルミニウムの長期的な安定供給源確保のため、1976年9月に政府支援が決まり、ナショナルプロジェクトとなった。

1977年に日本側投資会社の日本アマゾンアルミニウムが設立された。
当時精錬5社は経営悪化で出資余力に乏しく、需要家や商社などに出資を求め、民間側32社の出資となった。

現在の出資は以下の通り。
 政府: 国際協力機構(当初は海外経済協力基金) 44.92%
 アルミメーカー: 三井アルミ 8.30%、日本軽金属 7.94%、住友化学 4.59%、
神戸製鋼所 1.84%、昭和電工 0%(←3.21%)
 アルミ需要家: YKK 2.02%、三協立山アルミ 0.92%
 商社: 三井物産 12.57%、三菱商事 5.51%、伊藤忠商事 2.75%、丸紅 2.02%、
住友商事 1.84%、双日 1.84%、豊田通商 0.92%、JFE商事 0.92%
 その他: 日産自動車 1.01%、三井住友海上火災保険 0.09%
   注 昭和電工は3.21%を出資していたが、2005年1月に三井物産に売却

1978年9月にVale(当時の呼び名はRio Doce)との合弁で2つのJVが設立された。
  アルミ精錬 Albras   日本側 49%   所要資金 約13億ドル
  アルミナ   Alunorte 日本側 39.2%  所要資金 約 8億ドル

Albrasの建設工事は1978年に開始され、1985年に第一期16万トンの通電を開始、1986年末にフル生産に入った。
引き続き、1987年に第二期16万トンの建設を開始し、1991年に1-2期合計の実質34万トンがフル操業となった。

しかし、借入金の大半は円建てのため、プラザ合意以後の円高で金融費用が大幅増となり、アルミ市況の低迷もあって事業が困難となった。

このため、追加出資、金利引下げ、返済条件緩和など、両国の官民による二度の支援が行われた。
この一環として日本アマゾンアルミへの協力基金の出資も当初の40%から引上げられた。

一方、Alunorteについては、アルミナの需要減少で国際価格が下落したため、1983年から3年間、建設工事を中断したが、日本アマゾンアルミは1986年末に、建設が4割程度完成していたこの計画から撤退した。
日本側の出資・融資金は全額、同社の議決権のない優先株となった。

Alunorteは1993年にブラジル側のみで新株主を加えて工事を再開、2005年にアルミナ110万トンが生産開始した。

その後、ジャパン アルノルテ インベストメントが出資。
(日軽金 49%、三井アルミ 17%、伊藤忠 17%、三井物産 17%)
2003年に三井物産と三菱商事が新たに出資し、引取権を得た。

なお、Valeは2000年に持株の一部をNorsk Hydroに譲渡した。
Valeは1997年に民営化されたが、コアビジネスを鉄鉱石とロジステックスとした。

その後、2006年に250万トンから440万トンに引上げられたが、同年に総額8億ドルを投じて626万トン(世界第一位の規模)に増強する計画が決まり、日本側も増資に応じた。2008年央に増設が完成した。

ーーー

現在、Albrasで生産されたアルミニウム地金は出資比率相当の49%が日本へ輸出されており、これは日本の輸入量の10%に相当する。

Alunorteのアルミナ626万トンのうち、88万トンがAlbrasにアルミ原料として供給され、残り538万トンは主に輸出されている。

 


2010/6/17 メキシコ湾石油流出事故の損害負担 

メキシコ湾石油流出事故への対応は油田の権益の65%を有し、オペレーターであるBPが窓口となり、当面の損害はBPが負担し支払いを行っている。

2010/6/8 BPの原油流出事故のその後 

これまでに原油の回収や賠償などで同社が負担した額は6月14日時点で16億ドルとなっており、株価下落で、事故直前に約17兆円あった時価総額は14日時点で約9兆円と、ほぼ半減した。

株格付け会社フィッチ・レーティングスは6月15日、BPの格付けをそれまでの「ダブルA」か ら「トリプルB」まで一気に6段階引き下げた。これは「投機的」とするレベルよりも2段階上の水準で、補償への圧力の強まりを受けてのもの。

オバマ米大統領は6月15日の午後8時に大統領執務室から国民向け演説を行い、次のように述べた。
1)総力を挙げてクリーンアップに取り組む。
2)明日BPの会長に会うが、被害を受けた個人、企業への補償に必要な資金を確保するよう要請する。「法的な請求が公正に支払われることを明確にするため、口座は独立した第三者が管理しなければいけない」
3)再発防止に取り組むが、石油依存から脱却し、クリーンエネルギーの開発強化を進める。
 
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/remarks-president-nation-bp-oil-spill

なお、米上院民主党のリード院内総務は、BPのCEOに対し、被害者救済や原油の清掃作業の費用として、200億ドルを特別口座に確保しておくよう求める書簡を多数の民主党上院議員との連名で送っている。

オバマ大統領は16日、BP首脳陣と会談した。
その結果、BPが原油流出事故の補償コストをカバーする200億ドルの基金の創設することで合意したことを明らかにした。

大統領は、200億ドルの資金は第三者機関の管理するエスクロー勘定に入金されると述べるとともに、200億ドルは賠償額の上限ではないと説明した。

BPは2010年第3四半期にまず30億ドル、第4四半期に20億ドルを払い込み、残りを四半期ごとに12.5億ドルずつ支払う。

付記 BPは8月9日、予定を早め、最初の30億ドルを払い込んだ。

この結果、BPは配当政策を見直し、既に発表済みの6月21日予定の第1四半期配当を取り止め、第2、第3四半期の配当も取り止める。
(同社は年間105億ドルの配当を予定していた。)

ーーー

現在のところ、BPだけが表面に出ているが、事件が落ち着いた時点では、当然、事故の責任や損害の負担が大きな問題となる。
この事業の10%の権益を持つ三井石油開発も負担を強いられる可能性がある。

この事件の関係者は以下の通り。

1)鉱区Mississippi Canyon 252の権益保有者

 BP Exploration and Production Inc.  65.0% (Operator
 Anadarko E&P Company LP  22.5%
 Anadarko Petroleum Corporation   2.5%
 MOEX Offshore 2007 LLC  10.0%

Anadarko Petroleum は 米国の大手独立系石油・天然ガス会社で、2009末の確認埋蔵量は石油換算23バレル。
同社は
2006年に、米国の独立系石油企業であるKerr-McGee及びWestern Gas Resoucesを買収し、独立系企業では世界最大の確認埋蔵量を誇る企業となった。

MOEX Offshore 2007 LLC は三井石油開発の100%子会社のMOEX USA の子会社。
三井石油開発は本事業に参加するため、2007年6月29日にBP社と
Acquisition and Participation Agreementを締結した。

「本探鉱事業へ参画は、当社にとり米国における更なる事業拡大を図る好機であり、大規模ガス田の発見に至れば、複数のコア事業構築に向けた大きな布石となるものと期待さ れます」としていた。
当時は権益比率をBP社75%/三井石油開発15%/その他10%となる予定としていた。

三井石油開発は1969年7月に設立された。現在の出資者は以下の通り。

  三井物産  69.91 %
  経済産業大臣 20.03  
  三井不動産 1.94  
  新日鉄エンジニアリング 1.53  
  国際石油開発帝石 0.92  
  極東石油工業 0.85  
  新日本石油 0.77  
  ジャパンエナジー 0.69  
  日本製鋼所 0.69  
  三井造船 0.58  
  カネカ 0.54  
  昭和シェル石油 0.42  
  東京電力 0.38  
  東亞合成 0.30  
  日揮 0.23  
  東洋エンジニアリング 0.23  

付記

三井物産の持株比率は2006年初めには44.34%であったが、その後、順次買い増した。

「三井石油開発はタイ国及びその周辺諸国地域を中心とする東南アジア地域や中東地域等に於いて複数の原油・天然ガスの探鉱・開発・生産事業を積極的に推進しており、三井物産のエネルギー上流資源事業の中核をなす子会社の一つ。三井物産は株式取得を通じ三井石油開発との更なる連携強化を図ることにより、連結収益基盤の拡充を図っていく方針」とした。

2006/3   三井造船から6.00%
2007/12   三機工業から0.68%
2008/12   三井生命保険から2.00%
その後   相手先不明 1.58%
2010/2   三井化学から4.98%、三井住友銀行から4.28%、
みずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行から計3.59%
 以上合計12.85%を約320億円で購入
その後   相手先不明で2.45%

以上により、2010年3月末現在で69.91%となった。

同社はタイ・ベトナム・カンボジア地域をコアエリア事業とし、アメリカ、中東・アフリカ(オマーン、エジプト、リビア)、インドネシアを第二のコア事業構築を図るフォーカスエリアとしている。
また、タイではオペレーターとして事業を行っている。
アメリカでは本事業のほか、三井物産と組んで、
Anadarko Petroleum Marcellus Shale Gas事業への参画を決めた。

2)Deepwater Horizon rig 関連
  ・設計:
R&B Falcon
  ・建設:韓国の現代重工業
  ・所有:
TransoceanR&B Falconを買収)
  ・リース:
BP Exploration and Production

  ・コントラクター 
    
Transocean:掘削作業
    
Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
    
M-I SWACOSchlumbergerSmith InternationalJV):Drilling Fluid (mud)サービス

  ・Blow Out Preventor(BOP)の製造:Cameron International Corporation

ーーー

Morgan Stanley 4月30日に本件に関して電話会議を主催した。
http://www.ogfj.com/index/article-display/2323778238/articles/oil-gas-financial-journal/e-__p/offshore/Gulf_of_Mexico_oil_spill.html

その結論は、オペレーターのBPと他の権益保有者(Anadarko と三井石油開発)が損害の大部分を負担することとなろうというものである。

その他のコメント:
M-I SWACOCameron International は責任はない。
  
BOPは今回作動しなかったが、10年前にTransoceanが購入したもので、メンテはTransoceanの責任。

Transoceanの責任は限定的で、保険の範囲内。

セメント作業のHalliburton は責任はない。
 
他の報道によると、同社は掘った穴(1600mの海底から更に3800m)に通したパイプをセメントで固定するため、特殊資材を21本使うよう提案したが、BPは時間がかかるとして6本に減らした。
また、BPは規制で定められたセメントの固定検査も省略したという。

掘削施設のリース料だけで1日50万ドルがかかり、事故発生時点で43日間の工期の遅れがあり、焦りがあった。

ーーー

この結論は、過去の例などから妥当とされる。

但し、BPが既存のガイドラインや実務の国際標準に従っておれば事故は避けられた可能性が強く、BPのオペレーターとしての責任は大きい。

このため、権益比率での負担とはならないと思われるが、三井石油開発の負担は膨大なものとなる可能性がある。
同社は本事業に保険をかけているが、総額4500万ドルとされる。

付記
2010/5/10の三井物産決算説明会で以下の説明があった。(同社ホームページ記載)

「付保状況については、三井石油開発にて
プロジェクト100%ベースで、暴噴制御費用保険300百万ドル、第三者賠償責任保険150百万ドルを付保している。保険が本件に関しどのように適用されるかは現時点では不明である。」

同社の比率は10%のため、暴噴制御費用保険3000万ドル、第三者賠償責任保険1500万ドル、合計4500万ドルとなる。

BPは本件では保険会社に付保せず、自己保険としている。

「その他のコメント」については事故の原因が不明なため、異論が多い。
特に、BOPがきちんと作動しておれば事故が起こらなかった筈で、BOP所有者のTransoceanにはメンテナンスの責任がある。

なお、米政府は一切の負担を拒否しているが、米当局が一部の指針を免除したことが事件につながった可能性があるとの意見も出ている。


2010/6/18  カネカ、バイオ医薬関連事業を本格展開 

カネカは6月17日、ベルギーのバイオテクノロジー企業であるEurogentecと提携し、新たにバイオ医薬関連事業を積極展開すると発表した。
同社株式の過半数を約40億円で取得し、バイオ医薬関連事業の売上高として10年後に約300億円を目指す。

バイオ医薬は、微生物培養技術、遺伝子組み換えや細胞融合の技術などのバイオテクノロジーにより創られたペプチド、タンパク、核酸などにより構成される医薬品。

Eurogentecは、1985年にリエージュ大学マーシャル教授等により設立され、バイオテクノロジーをベースとした事業分野で20年以上の経験と実績がある。
現在、日米欧に製造販売拠点を有し、タンパク、核酸、ペプチドの3つの事業分野おいて医薬・診断薬の受託製造や研究試薬の販売を行っている。

日本では、遺伝子工学研究用試薬、体外診断用医薬品、検査・診断試薬の開発及び製造を行うニッポンジーンとEurogentecとのJV2001年設立)のニッポンイージーティー(Nippon EGT)で、研究、診断、検査用のオリゴヌクレオチドのカスタム合成サービスを行っている。

ニッポンイージーティーは、Eurogentecのアジアにおけるオリゴヌクレオチドの生産拠点となっている。

ーーー

カネカはこれまで、独自の技術をベースに、医薬バルク・中間体の事業を主力事業の一つとして展開してきたが、新薬承認数も減少傾向にあり、画期的な医薬を創出することが次第に難しくなってきている。

カネカのライフサイエンス部門製品は以下の通り。

医薬品:グルタチオン、ユビデカレノン、半合成ペニシリン中間体、
     血圧降下剤力プトプリル中間体、エナラプリル型血圧降下剤中間体、
     カルバペネム系・ペネム系抗生物質中間体、
     血圧降下剤力プトプリル中間体、エナラプリル型血圧降下剤中間体、
     カルバペネム系・ペネム系抗生物質中間体

機能性食品素材:コエンザイムQ10、還元型コエンザイムQ10、
           カネカ・グラボノイド

血管内治療用カテーテル、血液浄化システム

ライフサイエンス部門の2010年3月期の売上高は392億円(前年比 -7億円)、営業利益は45億円(前年比 -14億円)となっている。

これに対しバイオ医薬は微生物培養の技術などを用い、これまでにない疾患に有効な新薬を作り出せる可能性が高いこと、また生体内にある物質を利用することにより、低分子薬より安全性が高く、副作用も少ない利点があり、近年市場が大きく成長してきている。

カネカでは、長年培ったバイオ技術を活かし、比較的早くから微生物系培養のタンパク医薬製造の基礎技術開発や、次世代抗体医薬である低分子化抗体の生産技術開発などにも取り組んできたが、自社の微生物培養を始めとする独自のバイオ技術力と、Eurogentecのこれら事業基盤を組み合わせることにより、バイオ医薬関連事業の早期育成が図れると判断した。
今後はタンパク医薬受託事業における大型プラントの新設や核酸分野への展開強化も進め、事業の飛躍的拡大を図る。

ーーー

カネカは2006年12月、100%出資子会社でファインケミカル製品の受託生産会社である大阪合成有機化学研究所がジェネリック医薬品分野への積極的な事業展開を進めると発表している。
カネカは同社を2002年7月に買収した。

ーーー

カネカは、2009年の創立60周年を機に策定した長期ビジョン「KANEKA UNITED宣言」の中で、「健康」を重点戦略分野の一つとして位置づけ、「人々の健康や医療・介護に貢献できる素材や製品の創出を目指す」としている。

ーーー

付記

カネカは10月19日、バイオベンチャー企業のジーンフロンティアを実質買収し、100%子会社化すると発表した。

ジーンフロンティアは2003年に、ゲノム創薬支援のためのサービス・製品提供を目的に、IT事業創出会社のITXが80%、残りを、総合臨床検査センターのBMLと「ニッチトップ」を目指すインフォコムが各10%出資して設立された。

独自の抗体作製技術を持つドイツのバイオ企業MorphoSys AGと、日本での独占的業務提携に関する契約を締結、2004年9月から抗体事業に本格参入した。

抗体とは、体内で特定の異物(抗原)に結合して、その異物を体内から排除するように働くタンパク質のこと。
モノクローナル抗体は1個の抗体産生細胞が増殖して生じた均一な細胞群によって生産された抗体で、特定抗原決定基のみを認識する。

MorphoSysが開発した完全ヒトモノクロナール抗体作製技術を用いた、バイオ研究者向けのカスタムモノクロナール抗体作製サービスを提供するほか、製薬会社等に対して、MorphoSysの抗体医薬開発に関する技術ライセンス、共同研究、共同開発の斡旋も行っている。

カネカはジーンフロンティアのカスタムモノクローナル抗体の作製サービス事業を継続しつつ、新たな研究開発支援事業の立ち上げや、スキャフォールド(低分子化した抗体よりさらに小さい分子で、抗体と同様の機能を有する分子)などの次世代バイオ医薬の探索技術の開発を強化する。

同社は同社、Eurogentec、ジーンフロンティアの総力を結集し、提案型のバイオ医薬受託製造のビジネスモデルを確立し、バイオ医薬関連事業の売上高として10年後に約300億円を目指すとしている。


2010/6/18 ダウ、スチレン系事業売却完了

ダウは617日、投資会社Bain Capital Partnersへの16.3億ドルでのスタイロン事業売却が完了したと発表した。

Styronは合成樹脂・合成ゴム・ラテックスを扱う株式非公開のグローバルな会社となり、ダウは同社に7.5%を出資する。ダウとスタイロンの間には長期の供給契約やサービス契約が結ばれる。

ダウは本年32日に、スタイロン事業を Bain Capital Partners16.3億ドルで売却する契約を締結したと発表した。この中では、ダウは新会社に15%まで出資するオプションを持つとしていた。
   2010/3/3 
速報 ダウ、スチレン系事業を売却

付記
Styron will change its name to Trinseo, effective in late 2011.

Styronの社名はスチレン系からきているが、同社はSMやPSを今後も中心とはするが、それ以外にも展開する計画であり、社名を変更する。

TrinseoはIntrinsic(「固有の」、「本質的な」、「内在する」)から取った。
同社の製品や技術が、需要家の製品にintrinsic な役割を果たし、需要家の成功に不可欠なものになるという意味。

なお、PSの商標は従来通り Styron を使用する。

売却事業は2009年に37億ドルの売り上げがあり、世界各地の13カ国20箇所に工場を持ち、従業員は30カ国に約2000人。

含まれる製品は以下の通り。
 PS、ABS、SAN、EPS
 エマルジョンポリマー
styrene butadiene latex, terpolymer, acrylic latex)
 PC、PCコンパウンド
 合成ゴム(Low Cis BR、High Cis BR、E-SBR、S-SBR)*
 自動車用プラスチック
 スチレンモノマー(数工場)

同社は2007年にChevron PhillipsとのSM/PSの50/50JVAmericas Styrenicsを設立、 米国と南米のPS工場を拠出したが、この持分も売却対象に含まれる。

注 ダウは独自のINSITE 技術によるメタロセンEPDM (Nordel)を持っている。
1996年4月にDuPont と50/50JVの DuPont Dow Elastomers を設立し、これもJVに移管したが、2005年1月にEPDMや同じくINSITE 技術によるポリオレフィンエラストマー(Engage)、塩素化ポリエチレン(Tyrin)などをJVから引き取るオプションを選んだ。
これについては今後も維持する。

付記

ダウは2010年10月にLG Dow Polycarbonate の持分をLG Chem に売却した。

住友ダウ(住友化学 50%/Dow 50%)は株主がStyronに代わったため、2011年4月1日に社名を 「住化スタイロン ポリカーボネート 株式会社」に変更する。

付記

Styronは2013年7月、EPS事業(Schkopauにプラント)を化学品商社のRavago S.A.の子会社RP Compoundsに売却する契約を結んだ。

ーーー

ダウはロームアンドハース買収のための借入金返済のため、多くの事業を売却してきた。

ダウの Liveris CEOは、今回の売却で非戦略事業売却で50億ドルを確保するという目標を5四半期で達成したとし、この資金で借入金を返済するとともに、より成長力があり、より高収益の事業への投資を行うと述べた。

主な売却は以下の通り。

 R&H子会社のMorton Salt 売却(17.0億 ドル)
 ・塩化カルシウム事業の
Occidental Petroleumへの売却(2.1億ドル)
 ・
Total とのJVTotal Raffinaderij Nederland N.V. Total への売却(7.25億ドル)
 ・Petronas とのJVのOptimal グループ3社の持分のPetronas への売却(6
.6ドル)  
 ・スタイロン(16.3億ドル)


2010/6/19 公取委、シャッターカルテルで課徴金減免を認めず

公正取引委員会は6月9日、シャッターの製造業者らに対し、全国及び近畿地区において独禁法の規定に違反する行為を行っていたとして、排除措置命令と課徴金納付命令を行った。

課徴金額 (千円)
  全国 近畿 課徴金
 合計
排除 課徴金 排除 課徴金
三和シャッター工業   2,516,150  258,990  2,775,140
文化シャッター工業 1,781,670 244,250 2,025,920
東洋シャッター工業 525,490 154,830 680,320
三和HD       40,260 40,260
合計   4,823,310   698,330 5,521,640

このうち、文化シヤッターは公取委から立ち入り検査を受けた直後、課徴金減免制度に基づいて違反を申告したが、公取委は申告に虚偽があり、「調査妨害に等しい意図的な申告」と判断し、適用見送りに踏み切ったとされる。

文化シヤッター側は検査直後、全国販売でのカルテルは事実関係を争う一方、近畿地区での販売価格などを調整するメーカー間の会合に同社幹部が出席したことを認めるとした資料などを、課徴金減免制度に基づいて提出した。
ところが、その数か月後、会合の存在自体を否定するなど、申告内容を全面修正した追加資料を公取委に再提出したという。

課徴金減免制度の不適用は初めてのケース。

独禁法第7条の2の17では、以下の場合に課徴金減免制度を適用しないとしている。

  ・報告又は提出した資料に虚偽の内容が含まれていたこと。
  ・求められた報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をしたこと。
  ・他の事業者に対し違反行為をすることを強要し、 又は当該違反行為をやめることを妨害していたこと。

三番目のケース:
強要を行ったかどうかは、他の事業者に対して何らかの圧力をかけることによって、事業者がカルテル・入札談合に参加せざるを得なくなったかどうかで判断される。
例えば、他の事業者に、カルテルに参加しなければ事業者団体から各種の有益な情報を一切得られないようにする旨を告げることで、参加せざるを得なくなった場合など。
他の事業者が違反行為をやめることを妨害することについても基本的には同じ考え方。
(公取委Q&A)

 

付記

公取委は、全社から審判請求がそれぞれ行われたため、10月4日、審判手続を開始することとした。

ーーー

これらのシャッターメーカーは、1977年と1989年にカルテルで勧告を受けている。

1) 1977年3月29日
    3社及び他5社は近畿地区におけるシャッターの見積価格、値引き限度及び受注予定者の選定方法を決定し、これを実施。
     
2) 1989年4月25日
  @ 3社及び他1社は共同して、九州地区における軽量シャッター及び重量シャッターの販売価格を引き上げ。
  A 3社及び他2社は共同して、千葉地区における大手建設業者等向け重量シャッターの販売価格を維持し、引き上げ。
  B 3社及び他4社は共同して、富山地区における軽量シャッター及び重量シャッターの販売価格を維持し、引き上げ。

 


2010/6/19 メキシコ湾石油流出事故の損害負担(その2) 

オバマ大統領は6月16日、BP首脳陣と会談し、BPが原油流出事故の補償コストをカバーする200億ドルの基金の創設すること、200億ドルの資金は第三者機関の管理するエスクロー勘定に入金されることで合意した。

本ブログでは、今後、関係者の間で、損害の負担が問題になると述べた。

事故を起こした鉱区Mississippi Canyon 252の権益保有者は以下の通り。

 BP Exploration and Production Inc.  65.0% (Operator
 Anadarko  25.0%
 三井石油開発  10.0%

2010/6/17 メキシコ湾石油流出事故の損害負担 

 

米下院エネルギー・商業委員会小委員会は6月17日、原油流出事故に関し、BPのTony Hayward CEOを招き公聴会を開催した。公聴会は中断を挟みながら7時間超に及んだ。

CEOは冒頭、「深いおわび」を表明したものの、後は議員の追及に「調査中だ」「知らない」などと繰り返した。

世界中で数百の掘削を行っており、本油田に関しては、事故が起こるまでは全く知らなかったとした。

同委員会の調査では、事故発生直前に技師が電子メールで「悪夢のような油井」と指摘していたことが判明。工期や工費を節約するために簡便な設計を採用した疑いが浮上した。

リグ関連サービスを提供する米ハリバートンからの「セントライザー」をほとんど使用していないとする警告を、BP幹部が「多分大丈夫だろう」として無視していたことが示された。

民主党のヘンリー・ワックスマン議員が、BPは最も極端なリスクを取り、コストや時間を省こうとしたことが事故につながったと非難した。

なお、共和党 のJoe Barton下院議員(テキサス州選出)が200億ドルの合意について、「shakedown=ゆすり」とし、「法的地位がなく、将来にとって恐ろしい前 例になる」などと指摘、BP会長に謝罪した。
石油業界をバックとする同議員は、今後、これが前例になることを恐れる業界の懸念を代弁したとみられる。

これに対し、猛烈な反発が起こり、議員は発言を取り消し、謝罪した。

席上、Hayward CEO は米政府が「four responsible parties」を挙げていると述べた。
BPのほか、権益保有者の
Anadarko と三井石油開発及び掘削作業担当のTransoceanとされる。

ーーー

Moody's は61825%の権益を保有するAnadarkoの長期債格付けをBa1 からBaa3 に落とし、更に引き下げの可能性があるとした。
これに対し、Anadarkoは懸念は分かるが、格下げは時期尚早であると反論、同日、以下の声明を発表した。

多くの証拠が、この悲劇が避けられたものであり、BPの無謀な決断と行動の直接の結果であることを、明白に示している。

最近の調査と議会の公聴会で明らかにされた事実、即ち、BPが安全を無視して作業し、いくつかの重要な警告のサインに気づかず、対応しなかったこと、にショックを受けている。
BPの行動は重大な過失、意図的な違法行為である。

この鉱区の共同操業協定では、BPはオペレーターとして適切に、法や規則を遵守して、掘削を行う義務がある。
また、
BPは重大な過失、意図的な違法行為による損害について、他の権益保有者に対し責任がある。

連邦法の規則では、権益保有者は石油漏洩に対し責任を負うが、BPが全ての法的請求に対し支払いを続けることを求める。

なお(BPがさきに述べたように、)同社も、同油田から回収された油からの収入を寄付する。

これに対し、BPは19日に反論を発表した。

Anadarko の「重大な過失、意図的な違法行為」との主張に強く異議を唱え、責任回避の主張を認めない。

BP以外の権益保有者も石油漏洩から起こるコストと損害に対して責任がある。他の当事者が責任を果たすことを期待する。

最終的にいろいろの関係者の間でどのように損害を分担するかに関係なく、BPとしてはクリーンアップを行い、損害賠償を行っていく。

共同操業協定では、BPはオペレーターとして作業を行う責任を有するが、権益保有者は、石油漏洩のクリーンアップを含む作業のコストを権益比率で負担することとなっている。

更に全ての権益保有者は米連邦政府に対し、Oil Pollution Act of 1990の規定に基づき、他の関係者とともに、漏洩した石油の回収コストと被害について、連帯して責任を持つとの書類を提出している。

ーーー

話題

BPは6月18日、俳優のKevin Costnerが投資、開発してきた原油分離器V20を32台購入することを決めた。

Costnerの会社 Ocean Therapy Solutionsと契約したもので、1台約50万ドル。
汚染された海水を1台当たり1日21万ガロン吸い上げ、遠心分離の原理で99%近く原油と水に分離できるとしている。

Costnerはこの技術を17年にわたり開発を続け、彼自身の金を20百万ドル以上、投入したという。


2010/6/21 新成長戦略

政府は6月18日の閣議で、2020年度までの新成長戦略を閣議決定した。
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf

政府は2009年12月に新成長戦略の基本方針を決定しており、今回はその具体策にあたる。

新成長戦略では、「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」を実現するとし、以下の通り述べている。

我国の経済政策の呪縛となってきたのは、産業構造・社会構造の変化に合わない二つの道による政策の失敗であり、第三の道による建て直しを図る。

第一の道:公共事業中心の経済政策
60年代、70年代の高度経済成長の時代には、経済成長の原動力となった。
90年代以降は既得権保護のためのばら撒きの継続で、不況対策としても行われた公共事業の拡大は、有効な効果を上げなかった。

第二の道:行き過ぎた市場原理主義に基づき、供給サイドに偏った生産性重視の経済政策
多くの人が失業する中で、国民生活は更に厳しくなり、デフレが深刻化している。

「第三の道」は、経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとし、それを成長につなげようとする政策であり、その実現のための戦略が、「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現に主眼を置く「新成長戦略」である。

「新成長戦略」では、「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」、「アジア経済」、「観光・地域」を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として「科学・技術・情報通信」、「雇用・人材」、「金融」に関する戦略を実施する。

ーーー

「新成長戦略」のマクロ経済目標は以下の通り。

 ・名目成長率3%、実質成長率2%を上回る成長
 ・2011年度中に消費者物価上昇率をプラスに転換(デフレ終結)
 ・早期に失業率を3%台に低下

7つの戦略分野の目標は以下の通り。

参考 

経済産業省の「産業構造ビジョン 2010」では、
@ インフラ関連/システム輸出  (原子力、水、鉄道等)
A 環境・エネルギー課題解決産業 (スマートグリッド、次世代自動車等)
B 医療・介護・健康・子育てサービス
C 文化産業立国 (ファッション、コンテンツ、食、観光等)
D 先端分野(ロボット、宇宙等)を
「戦略5分野」とし、2020年までに149兆円の市場と258万人の雇用の創出を目指すとしている。

   2010/6/4 「産業構造ビジョン 2010」

(1) グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略
     
   
【2020 年までの目標】 
                                    
50兆円超の環境関連新規市場                             
140万人の環境分野の新規雇用
日本の民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガス削減量を13 億トン
(日本全体の総排出量に相当)以上とする。
     
(2) ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出
  新規市場約50兆円、新規雇用284万人

     
(3) アジア経済戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を構築
・アジアの成長を取り込むための国内改革の推進、ヒト・モノ・カネの流れ倍増
・「アジアの所得倍増」を通じた成長機会の拡大
     
(4) 観光立国・地域活性化戦略
     
  観光立国
   
【2020 年までの目標】

・訪日外国人を2020年初めまでに2,500万人、将来的には3,000万人。
  2,500万人による経済波及効果約10兆円、新規雇用56万人
     
  地域活性化
   
【2020 年までの目標】

・地域資源を最大限活用し地域力を向上
・大都市圏の空港、港湾、道路等のインフラの戦略的重点投資

     
  農林水産分野の成長産業化
   
【2020 年までの目標】

・食料自給率50%
・木材自給率50%以上
・農林水産物・食品の輸出額を2.2 倍の1兆円(2017 年まで)
     
  住宅政策への転換
   
【2020 年までの目標】

・中古住宅流通市場・リフォーム市場の規模倍増
・耐震性が不十分な住宅割合を5%に
     
(5) 科学・技術・情報通信立国戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・世界をリードするグリーン・イノベーションとライフ・イノベーション
・独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数の増
・理工系博士課程修了者の完全雇用を達成
・中小企業の知財活用の促進
・情報通信技術の活用による国民生活の利便性の向上、生産コストの低減
・官民合わせた研究開発投資をGDP比4%以上
     
(6) 雇用・人材戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・20〜64 歳の就業率80%、15 歳以上の就業率57%
・20〜34 歳の就業率77%
・若者フリーター数124 万人、地域若者サポートステーション事業によるニートの進路決定者数10 万人
・25 歳〜44 歳までの女性就業率73%、
 第1子出産前後の女性の継続就業率55%、
 男性の育児休業取得率13%』、
・60 歳〜64 歳までの就業率63%
・障がい者の実雇用率1.8%、国における障がい者就労施設等への発注拡大8億円
・ジョブ・カード取得者300 万人、大学のインターンシップ実施率100%、
 大学への社会人入学者数9万人、専修学校での社会人受入れ総数15 万人、
 自己啓発を行っているの労働者の割合:正社員70%、非正社員50%
 公共職業訓練受講者の就職率:施設内80%、委託65%
・年次有給休暇取得率70%、週労働時間60 時間以上の雇用者の割合5割減
・最低賃金引上げ:全国最低800 円、全国平均1000 円
・労働災害発生件数3割減、メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合100%、
 受動喫煙の無い職場の実現

これらの目標値は、内閣総理大臣主宰の「雇用戦略対話」において、労使のリーダー、有識者の参加の下、政労使の合意を得たもの。
また、これらの目標値は、「新成長戦略」において、「2020 年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」等としていることを前提。


・誰もが安心して子どもを産み育てられる環境の実現による出生率の継続的上昇を通じ、
 人口の急激な減少傾向に歯止め
・速やかに就学前・就学期の待機児童を解消
・出産・子育ての後、働くことを希望するすべての人が仕事に復帰
・国際的な学習到達度調査で常に世界トップレベルの順位へ
     
(7) 金融戦略
     
   
【2020 年までの目標】

・官民総動員による成長マネーの供給
・企業のグローバルなプレゼンス向上
・アジアのメインマーケット・メインプレーヤーとしての地位の確立
・国民が豊かさを享受できるような国民金融資産の運用拡大
     

そして、21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクトをあげた。

強みを活かす
成長分野
グリーン・イノベーション
における国家戦略プロジェクト
「固定価格買取制度」の導入等による再生可能エネルギー・急拡大
「環境未来都市」構想
森林・林業再生プラン
ライフ・イノベーション
における国家戦略プロジェクト
医療の実用化促進のための医療機関の選定制度等
国際医療交流(外国人患者の受入れ)
フロンティアの開拓
による成長
アジア展開における
国家戦略プロジェクト
パッケージ型インフラ海外展開
法人実効税率引下げとアジア拠点化の推進等
グローバル人材の育成と高度人材等の受入れ拡大
知的財産・標準化戦略とクール・ジャパンの海外展開
アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築を通じた経済連携戦略
観光立国・地域活性化
における国家戦略プロジェクト
「総合特区制度」の創設と徹底したオープンスカイの推進等
「訪日外国人3,000 万人プログラム」と「休暇取得の分散化」
中古住宅・リフォーム市場の倍増等
公共施設の民間開放と民間資金活用事業の推進
成長を支える
プラット・フォーム
科学・技術・情報通信立国
における国家戦略プロジェクト
「リーディング大学院」構想等による国際競争力強化と人材育成
情報通信技術の利活用の促進
研究開発投資の充実
雇用・人材分野
における国家戦略プロジェクト
幼保一体化等
「キャリア段位制度」とパーソナル・サポート制度の導入
新しい公共
金融分野における
国家戦略プロジェクト
総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設を推進

「法人実効税率引下げとアジア拠点化の推進等」において、法人税率について、以下の通り述べている。

日本に立地する企業の競争力強化と外資系企業の立地促進のため、法人実効税率を主要国並みに引き下げる。その際、租税特別措置などあらゆる税制措置を抜本的に見直し、課税ベースの拡大を含め財源確保に留意し、雇用の確保及び企業の立地環境の改善が緊急の課題であることも踏まえ、税率を段階的に引き下げる。

「主要国並み」とは25%程度を想定しているが、引き下げ時期などは明示しておらず、今後の政府税制調査会などでの議論にゆだねる。

最後に、成長戦略実行計画(工程表)をあげている。

 


2010/6/22 メキシコ湾石油流出事故の損害負担(その3) 

6月19日の記事にコメントをいただいた。

ワックスマン(正しくはJoe Barton)議員の「ゆすり」発言については、正直、少し同意しますよ。法的な裏づけもなく 200億ドルの拠出を要請というのは…。じゃあ、なんで油濁法の賠償上限なんてものがあるんだ、という話です。法律の不備に対しては、政府が責任を負うのが筋でしょう。実際、今回の掘削プランは、「だいたいは」総務省のMMSが承認した通りなのに…。

米国油濁法(Oil Pollution Act of 1990)の問題と、米内務省のMinerals Management Service(鉱物資源管理局=MMS)の認可責任の問題である。

1)米国油濁法

三井物産の損害負担について、「米国油濁法による賠償限度額」というブ ログで、以下の通り記載されている。
 
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=FN&action=m&board=1008031&tid=bb00fjaabbba&sid=1008031&mid=43474

「米国には中小の石油会社がたくさんあり、油濁事故を起こした石油会社の倒産を防ぐため、油濁法により損害賠償の限度額が定められています。その限度額は 7500万ドル(70億円)で・・・

今回の被害の原因は非常時に緊急バルブ(防憤装置)がまったく作動しなかったことによるものですから、メンテナンスを請け負っているTransocean や、 緊急バルブを納入したCameron International、掘削泥水の操作を行っていたMI Swacoにも法的責任が発 生し、これらの会社も賠償責任を負うことになると三井物産の負担割合はもっと下がってきます。・・・」

(この中で「三井物産の負担が7%」とあるのは、三井物産が、権益の10%を持つ三井石油開発の69.91%株主であるため)

1989年3月のExxon Valdezの事故を機に、米国で油濁防止に関する関心が高まり、1990年8月に米国油濁法(Oil Pollution Act of 1990:OPA 90)が成立した。
これにより、全てのタンカーはダブルハル(二重底および二重船側)が義務付けられた。

このなかで、損害賠償の限度額が決められ、これを超えた分をカバーするために油濁基金(Oil Spill Liability Trust Fund ) が創られた。

 損害賠償の限度額は以下の通り。
 今回の事故の場合の限度額は、
all removal costs $75,000,000 となる。

タンカー 次の大きい方
(1)gross ton 当たり$1,200
(2)3,000gross ton以上の場合 
$10,000,000
  それ以下の場合  $2,000,000
他の船 gross ton 当たり$600か、$500,000の大きい方
offshore facility all removal costs $75,000,000
onshore facilitydeepwater port $350,000,000

 油濁基金(Oil Spill Liability Trust Fund)には、米国で操業する石油会社が生産量+輸入量に対して
 1バレル当たり
8セントを納入する。

ホワイトハウスもこの規定は認識しているが、国民の怒りを利用して、BPに200億ドルの基金創設を認めさせた。

Exxon Valdezの場合、裁判で賠償額が決められたため、 長期間の争いの後に賠償額が大幅に引き下げられたケースや、裁判での決着を見ずに亡くなった人が多数あった。

今回は漁業やレストラン、観光など、被害を受けた企業や個人は膨大で、被害は何年も続くため、裁判となれば、それまでに企業は倒産し、個人は生活の糧を失う。
このため、裁判によらず、第三者の査定により企業や個人を救済する必要があった。

ホワイトハウスも、あらゆる場合に全額をBPなどに負担させるとはしていない。

ホワイトハウスは近く、議会に緊急対策のための歳出法案を提出する。
同法案で、賠償責任額の上限額を7500万 ドルから100億ドルに引き上げ、BPにも適用するとされている。

また、同法案では油濁基金への納入を今年から1ガ ロン当たり9セントへと、1セント増やし、2017年からは10セ ントへ引き上げる。

賠償限度を100億ドルに引上げた上で、それを超える分を油濁基金の今後の増加額で補うという考えである。

このうち、新上限額をBPに適用するのは問題である。上記のブログでは以下の通り述べている。

「オバマさんがいくら頑張っても,罪刑法定主義の原則からみて、法案が改正される以前の事故にこの金額が適用される見込みはほぼありません。」

新上限額の遡及適用は別として、上限額引き上げ自体は通る可能性が強い。

これまで共和党は引上げに反対していたが、Joe Barton議員の「ゆすり」発言で反対できなくなった。

限度額が低いことが、BPに無謀なやり方を取らせ、事故の原因になったとの意見が強い。

ホワイトハウス報道官は、「Barton議員の発言 は個人の発言ではなく、共和党の考え方を反映したものであり、11月の中間選挙で国民が判断するだろう」と述べた。

以上のとおり、油濁法では損害賠償の限度額が決められており、改正での遡及適用も無理筋である。
このため、油濁法以外の法律を適用して、責任を追及するべきだとの意見も出ている。

但し、油濁法の規定では、上記の限度額は以下の場合には適用されないとなっている。
また、基金の資金は利用できない。

(A) gross negligence or willful misconduct (重大な過失、意図的な違法行為), or
(B) the violation of an applicable Federal safety, construction, or operating regulation

このため、今回の事故が重大な過失、意図的な違法行為、規則違反が原因とされた場合、損害賠償の限度額はない。
これまでの下院の委員会の調査では規則違反や重大な過失の疑いが強い。

この場合の負担は権益保有3社と他の関係者の間で決めることとなる。
Anadarko
は負担を避けるため、BPの責任であるという声明を出したが、BPのwillful misconduct を主張する訴訟を準備中と報道されている。
BPAnadarkoを訴える準備をしていると報道されたが、BPではまだ決めていないとしている。
恐らくは裁判で決めることとなろう。

なお、BPは7500万ドルの限度と関係なく支払うこと、石油漏洩の結果生活手段をうしなった人に、仕事に復帰するまでは補償を続けるとしている。

BP does not believe that the $75 million cap in the OPA '90 statute is relevant.

We intend to continue replacing this lost income for those impacted for as long as the situation prevents them from returning to their work.

2)Minerals Management Service (MMS)

オバマ大統領は6月15日、元連邦検事補 のMichael BromwichをMMSの新長官に指名し、以下の通 り述べた。

10年以上前から、石油会社とMMSとの癒着した関係がチェックされずにきた。
その結果、安全な計画だからというのでなく、石油会社が安全を保障しているというだけで採掘許可が出された。
これからはこんなことは許されない。

大統領は先月には、「石油業界と政府の監督官との癒着は規制がほとんど、又は全くないとの同じだ」とし、MMSを3つの部門に分割することを発表している。

このように業界との癒着が問題になり、6月2日にはメキシコ湾での掘削の安全規則を厳密にするとの発表がなされているにも係らず、MMSはその後に少なくとも5件の新しい掘削を承認し、そのうち3件は環境評価が免除されていることが明らかになった。

業界とMMSとの癒着は事実であり、大統領も認めているが、それを理由に米国政府が補償を負担すべきだとの主張は全く出ていない。


2010/6/23 中国トヨタも一時、生産停止 

トヨタ自動車は6月18日、中国でのストライキによって部品の供給が滞り、中国・天津市にある車の組み立て工場の操業を停止した。

操業を停止したのは天津一汽トヨタ自動車で、年産能力は42万台。

ストライキは機能部品・セーフティシステム製品・内外装部品を生産する部品メーカーの天津豊田合成で起こった。
従業員が賃上げを求めて17日にストを実施、18日もストが続いて、トヨタへの部品供給が停止した。

天津豊田合成は19日に従業員側と協議 、全従業員約1800人を対象に賃金の2割アップに加え、暑熱や皆勤の手当充実などの条件で妥結した。日曜日の20日は休日を返上して生産の遅れを取り戻した。

トヨタ自動車は天津市の完成車工場の生産を6月21日に再開したことを明らかにした。

天津では同じくトヨタ向けのゴム製品を生産する「天津星光橡塑」でも6月15日にストが発生したが、会社側が要求の一部を受け入れたため、17日には通常の生産状況に回復し、トヨタへの影響は出なかった。

天津星光橡塑:
 鬼怒川ゴム   7%
 星光橡塑   42%(鬼怒川ゴム75.58%出資の台湾・中光橡膠の香港子会社)
 豊田合成   51%

トヨタ天津が操業を再開した翌日の22日朝、今度は広州市の広汽トヨタ自動車が稼動を停止した。

広州市の南沙開発区にあるデンソーの子会社「電装(広州南沙)」の工場で21日に待遇改善を求めるストライキが発生し、部品の供給が止まったため。

デンソーの部品工場は、トヨタやホンダの工場に燃料噴射装置を供給している。ホンダは「今のところ在庫で対応できているが、長期化すれば生産停止もあり得る」としている。

 

なお、広東省中山市にある日本プラストが85.1%出資する中山富拉司特工業でも6月17日にストが発生している。
同社は日産とホンダにハンドルやエアバッグを供給している。

また、ホンダ系の自動車部品メーカー高尾金属工業が出資する湖北省武漢市の武漢アイパック汽車配件でも17日から18日にかけてストが起きていた。

付記

ホンダは6月23日、広東省広州市の広汽本田汽車の黄埔工場が稼働を停止したことを明らかにした。

ニッパツの広州市にある部品工場で、22日夜にストが始まり、工場は23日朝から操業を停止、労使交渉が続いている。
この部品工場は自動車のサスペンション用コイルバネと走行性を保つスタビライザーを生産しており、ホンダでは部品不足で稼動を停止した。

ほかの日系メーカーの生産にも影響する恐れがある。

ーーー

今後も労働条件の改善要求は相次ぐものと思われる。
更に、既報の通り、中国は「所得倍増計画」を検討している。

   2010/6/10  中国が「所得倍増」計画 (各社のストライキ状況も)

今後、中国での労務費アップは避けられないが、衣料などがベトナムなど低労務費国への移転を検討しているのに対し、自動車や家電は中国に膨大な投資をしている上、中国が世界最大の市場になりつつあるため、中国から他国に工場を移転することは難しい。

トヨタの張会長は、「労務費アップは自然の流れ」で、「中国進出は人件費が安いためではなく、顧客の近くがよいと思っているからだ」と述べ、現地生産を続ける考えを示した。

中国では下請け企業の従業員が同一労働・同一賃金を主張して、親会社並の労働条件を主張するケースが多い。
今後も労務費アップの要求は続くと思われ、下請けのストで自動車生産がストップする可能性がある。
カンバン方式を見直し、在庫を持つようにする必要があるかも分からない。

ーーー

トヨタの中国での完成車組み立て工場は以下の通り。

社名 天津一汽トヨタ自動車 四川一汽トヨタ自動車 広汽トヨタ自動車
設立 2000年6月 2005年7月
(四川トヨタ自動車1998年11月)
2004年9月
出資比率 第一汽車集団 20%
天津一汽夏利自動[email protected]
トヨタ自動[email protected]
トヨタ自動車(中国)投資 10%
第一汽車集団 50%
トヨタ自動[email protected]
豊田通商 5%
広州汽車集団 50%
トヨタ自動車 30.5%
トヨタ自動車(中国)投資 19.5%
工場 第1工場
天津市西青区
第2工場
天津市経済
技術開発区
第3工場
(同左)
成都工場 長春工場
(旧 
長春一汽豊越汽車)
広州市   
第1ライン 第2ライン
生産開始 2002/10 2005/3 2007/5 2000/12 2003/10 2006/5 2009/5
生産車種 VIOS、
カローラ
クラウン 新型カローラ コースター、
プリウス
ランドクルーザー カムリ、
ヤリス
ハイランダー、

カムリハイブリッド

生産能力 12万台 10万台
15万台(将来)
20万台 1万3千台 1万台 20万台 16万台

なお、日産自動車の中国の活動拠点は以下の通り。

社名 東風汽車有限公司 鄭州日産汽車
設立 2003年 1993年
出資比率 日産自動[email protected]%
東風グルー プ 50%
当初
 日産自動車
30%
 投資会社「中信汽車」 35%
 トラックメーカー 「鄭州軽型汽車」 35%

2005年 
 東風汽車有限公司 100%
工場 湖北省
十堰市

湖北省
襄樊市 
広東省
広州市
花都工業地区
河南省鄭州市
生産車種 バス、
大型商用車、
中型商用車
ティアナ、
ライトトラック、
ミニバン
ティーダ、
シルフィ、
リヴィナ、
キャシュカイ、
エクストレイル
パラディン、
ピックアップ
生産能力   10万台 36万台
→60万台(2012)
8万台
2010年第二工場スタート +12万台

ホンダの四輪車製造工場は以下の通り。

社名 広汽本田汽車有限公司 本田汽車(中国)有限公司 東風本田汽車有限公司
出資比率 ホンダ 50%
広州汽車  50%
ホンダ 65%
広州汽[email protected]%
東風汽[email protected]%
ホンダ 50%
東風汽[email protected]%
工場 広州市
黄埔工場
広州市
増城工場
広州市
輸出専用工場
武漢市
第一工場
武漢市
第二工場
生産能力 24万台 12万台 5万台 24万台 0→6万台
 
(2012)

 


2010/6/24 丸紅、天津渤海化工集団との戦略的パートナーシップ契約締結 

丸紅は6月23日、中国の総合化学大手、天津渤海化工集団(Tianjin Bohai Chemical)と戦略的パートナーシップ契約を締結し、今後、天津渤海化工が計画しているプロジェクト推進に協力していくと発表した。

天津渤海化工は天津市傘下の国有企業で、長年、石炭を原料としたアンモニア・肥料やソーダ灰(ガラス原料)やクロルアルカリなどの無機化学事業と、輸入エチレンやプロピレンを原料とする石油化学事業、殺虫剤、染料中間体などの事業を天津市の経済開発区で営んでいる。

天津市は、石油・化学産業は発展が期待される基幹産業と位置付けており、天津渤海化工は、天津市のサポートも得て、天津渤海化工園区を現在建設し、プロパンを原料としたプロピレンとその関連誘導品の事業化計画を進めている他、電子材料や精密化学品分野を含むケミカル・チェーン経営への展開も計画している。

プロパン脱水素によるプロピレン計画は能力60万トンとされ、プロピレンは渤海グループのプロピレン誘導品のオクタノール、エピクロルヒドリン、アクリル酸、酸化プロピレン(下記)などに使用される。PPの計画はない。

付記

天津渤海化工集団の子会社Tianjin Bohua Petrochemical (天津渤化石油化工)20109月、60万トンのプロピレンの設計を開始した。技術はLummusから導入、設計はSinopec Qilu Petrochemical が行う。
20129月完成予定で、世界最大のプロパン脱水素プラントとなる。

丸紅は、1980年代に天津渤海化工の殺虫剤や漂白剤の販売から始め、現在ではVCM、エチレンやプロピレン、溶融硫黄などを長期的に同社に供給している。溶融硫黄については輸入・貯蔵する合弁会社を天津渤海化工傘下の子会社と設立している。

今回の戦略的パートナーシップ契約の締結を契機に、丸紅は、天津渤海化工が今後推進する案件への事業提案や、ライセンサーや合弁を含めた海外事業パートナーの積極的な紹介を通じ、その原材料や製品の取扱い、ならびに事業参画にも優先的に関与していく。
また、天津渤海化工との包括的なアライアンスを通じて、中国市場への取組みを強化していく方針。

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天津渤海化工は子会社に天津大沽化工(
Tianjin Dagu Chemical) を持つ。

天津大沽は自社で800千トンのPVC能力を持つとともに、韓国LG ChemとのJVの天津LG大沽化工(LG 85%、天津大沽 15%)で340千トンのPVCを生産している。

天津渤海はLG Chemとの合弁で、天津に天津LG渤海化工(LGグループ75%、LG大沽10%、渤海化工15%)を設立し、苛性ソーダ 240千トン、EDC 300千トン、VCM 350千トンを生産、VCMは天津LG大沽化工に供給している。

2006/9/12 LG Chem、中国で2工場竣工

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天津渤海化工の子会社の天津大沽化工は塩ビチェーンのほかにPOおよびPO誘導品を事業化している。
PO能力は年産100千トンで、三井東圧化学(当時)の技術を導入したもの。

同社はこのたび、過酸化水素法酸化プロピレン(HPPO)の年産1,500トンのパイロットプラントの操業を開始したことを明らかにした。本年末に市場に製品を出す予定。

同社ではHPPO年産10千トンの商業生産用プラントの建設も行っている。

過酸化水素法PO(HPPO)、はBASFが1995年頃から研究してきたもので、副産物がなく、最終製品であるPOと水しか発生しないこと、プラントの設置面積が小さく、必要インフラストラクチャが少ないことが特徴とされている。

ダウとBASFは合弁でアントワープに過酸化水素法で30万トンのPOプラントを建設、2009年3月にスタートアップ段階を終え、順調に操業している。

2009/3/12 ダウとBASFのHPPO法PO 生産開始

ダウはまた、2009年9月に、この技術を使用し、タイのMap Ta Phut 近郊のAsia Industrial Estates39万トンのHPPOプラントの定礎式を行った。
実施はタイの
Siam Cement GroupとのJVMTP HPPO Manufacturing で、2011年に生産開始の予定。

2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設

天津大沽化工は独自でこの製法を開発し、中国で特許を取ったとされている。

なお、中国科学院大連化学物理研究所(DICP-CAS)もHPPOの技術を開発したとされる。但し、パイロットプラントは建設していない。

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また、天津大沽はSINOPECの天津エチレン計画(100万トン)に参加し、2007年11月にSM 600千トン(500千トンから見直し)とABS400千トン(の第一期200千トン)の建設を開始した。

2007/8/23 天津大沽化工、天津でSM 500千トンプラント建設

 


2010/6/24 BASF特殊化学品メーカーのCognisを買収

BASFは6月23日、ドイツの特殊化学品メーカーのCognisを買収することで合意したと発表した。

買収金額は7億ユーロだが、同社の債務や年金債務を含めると、31億ユーロとなる。

今後、独禁当局の審査などが必要で、最終取引は11月を予定している。

付記 12月1日に最後のEUの承認を得た。12月中に取引完了。

既報の通り、本年春にBASFCognisTOBをかけるとの噂が流れており、また潤滑油メーカーのLubrizolも 交渉を始めていた。対価は30億ユーロにもなると噂された。

2010/4/28  BASF、 ドイツのCognisTOB

Cognisの詳細はこれを参照願います。

BASFではこの買収により、景気変動に左右されず、収益力のある事業を強化し、世界の化学業界のリーダーとしての地位を高めることが出来るとしている。

買収完了後にはCognisはBASFのPerformance Products segment に入る。


2010/6/25 ダウCEOの論文 「米国製造業のルネサンスを」 

USA TODAY紙は621日付けのOPINION欄にダウのCEO Andrew N. Liverisの論文 “How U.S. can launch a manufacturing renaissance”を掲載した。
  
http://www.usatoday.com/news/opinion/forum/2010-06-18-Liveris21_st_N.htm?loc=interstitialskip

米国の製造業の雇用が増えず、1990年以来、製造業の雇用減は300万人で、ほぼ20%に達する。この結果、多くのセクターでリーダーシップを失った。

国としての戦略がなければ、雇用減は回復できない。経済を活性化し、産業の競争力を高め、雇用を増やすために、米国は高度の製造業のプランが必要とし、以下の各項目が重要であるとしている。

(1)新しいインフラ

新しいインフラで、企業の設備投資を促進し、米国の通信ネットワーク、送電線、海陸空の輸送システムを近代化することが必要。
これにより、国内の生産を高め、生活の質を改善できる。

(2)最先端のR&D

外国との競争で、R&D投資が経済成長を高め、生産性を高め、生活水準を高める。

(ダウは6月21日、副大統領参列のもと、政府補助金を受けた最新のリチウムイオン電池工場の起工式を実施した)

(3)教育

米国の学生の科学、技術、工学、数学などの能力はグローバルな競争で遅れをとっており、これを高める必要がある。
過去にはSTEM(Science,
Technology, Engineering and Mathematics)教育や社員訓練が米国の強みであり、製造業におけるリーダーシップを支えていた。

(4)"pro-trade" (自由貿易)policy

関税や輸入障壁を減らし、公平な条件での貿易を推進すべし。
多角的貿易交渉を進め、主要貿易国と対等の扱いを確保すべきだ。

(5)代替エネルギー政策

業界の競争力維持のための豊富なエネルギーが必要

(6)規制改革

環境規制は必要だが、イノベーションを止めたり、科学的根拠なしの規制が多い。

(7)税制

製造業を支える税制が必要。
 米法人税率はOECDで2番目に高い。
 他国と異なり、全世界の利益に課税される。
 R&Dの税額控除は主要OECD国で23番目。

(8)裁判制度の改革

原告側弁護士は企業に不当な賠償を請求しすぎである。

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米国は将来の雇用創出のため、製造業にインセンティブを与える戦略的統合アプローチが必要が必要で、景気対策のためのパッチワークのインセンティブでは不十分である。

米国がグローバルな競争に打ち勝つためには高度の製造業のプランが必要である。アメリカが製造業を諦めれば、子供たちの将来はないと説く。


2010/6/25 欧州委、倒産の恐れを考慮しカルテル制裁金を減額

EUの欧州委員会は6月23日、浴室の設備メーカー17社が価格カルテルを結んでいたとして、総額6億2225万ユーロの制裁金を命じた。
このうち5社については、当初想定していた制裁金を科すと倒産する恐れがあると判断し、制裁金を減額する異例の措置を講じた。

欧米の17社は1992年から2004年にかけてド イツなど欧州6カ国で、洗面台、浴槽、蛇口などの価格を調整していた。

17社の社名と制裁金は以下の通り。

社名 制裁金 (Euro)
Artweger (オーストリア) 2,787,015
Cisal (イタリア) 1,196,269
Dornbracht (デンマーク)   12,517,671
Duravit (デンマーク) 29,266,325
Duscholux (オーストリア) 1,659,681
Grohe (デンマーク) 54,825,260
Hansa (デンマーク) 14,758,220
Ideal Standard (US) 326,091,196
Kludi (デンマーク) 5,515,445
Mamoli (イタリア) 1,041,531
Masco (US) 0
RAF (イタリア) 253,600
Roca (スペイン) 38,700,000
Sanitec (スイス) 57,690,000
Teorema (イタリア) 421,569
V&B (デンマーク) 71,531,000
Zucchetti (イタリア) 3,996,000
合計  622,250,783

このうち、米国のMascoはカルテルについて最初に欧州委員会に報告したため、全額免除となった。
また、
Ideal Standard Groheは調査に協力したため、30%の減額となった。

17社のうち、10社が欧州委員会に対して制裁金を支払えないと申し出た。
比較的規模の小さい企業が多く、金融危機で住宅投資が減少し、企業収益が悪化している。

欧州委員会では、各社の最近の決算書や今後の損益予想、諸財務比率(健全性、収益性、支払能力、流動性など)、銀行や株主関係、各社の社会的・経済的状況を検討、更に制裁金のために倒産に追い込まれた場合に各社の資産価値が大幅に失われるかどうかを検討した。
評価は、公平性を確保し、
EUの抑止力を維持するよう、出来るだけ客観的に、数値化して行われた。

この結果、10社のうち、3社に対しては50%の減額、2社に対しては25%の減額とした。減額対象となった企業名は明らかにされていない。

Joaquin Almunia 競争政策担当委員は、違法な行為は摘発していくこと、制裁金は違法行為をやらせないような水準にすることを強調しつつ、「制裁金の目的は経済的苦境にある企業を倒産に追い込むことではない」と述べた。


2010/6/26  PetroChina大慶煉油化工、PPの第二工場の建設開始

PetroChina大慶煉油化工(Daqing Refining & Chemical) 69日、黒龍江省大慶市譲胡路区でPPの第二工場の建設を開始した。
BasellSpherizone 技術を使用するもので、能力は30万トン、2012年下期の完成を目指す。
同社は
2005年に30万トンのPP工場を稼動させている。

同じ大慶市の竜鳳区にはPetroChinaのもう一つの子会社、PetroChina大慶石油化学(Daqing Petrochemical) があり、10万トンのPP工場を持っており、大慶煉油化工の第二工場完成後の合計能力は70万トンとなる。

大慶煉油化工の第一工場は原料プロピレンを自社の製油所から得ているが、第二工場については大慶石油化学の建設中の第二エチレンク ラッカーからパイプラインで供給を受ける。

大慶石油化学と大慶煉油化工の現状と計画は以下の通り。(千トン)

  大慶石油化学 大慶煉油化工
能力 計画 能力 計画
製油所 6,500   6,000  
エチレン    600   600    
PE    540  250
300
   
PP    100   300 300
ABS    105      
SAN     75      
SM     90 100    
BR     80      
BTX   400    
gasoline hydrogenation   600    
ポリアクリルアミド     100  

大慶石油化学は当初手直しで200千トンの増設を検討したが、600千トンの新設に変更した。
2012年に完成する予定。

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大慶石油化学は当初、Sinopecの子会社であった。

1983年7月に中国で石油化学を担当するため、中国石油化工総公司が設立された。これが現在のSinopecである。
大慶石油化学(1962年設立)も他の石油化学各社とともに、Sinopecの子会社となった。

大慶石油化学では1980年代に30万トン級のエチレンコンプレックスが建設された。

これに昭和電工のEthylene Plant Information Control Systemが技術供与された。

高杉良の小説「生命燃ゆ」は、大分石油化学コンビナート(鶴崎油化)でこれを完成させ、病を押して中国への技術供与を行い、完成を見ずに亡くなった同社の垣下怜氏(小説では柿崎仁)を描いている。

1988年に政府の石油探査、開発、生産部門を中国石油天然気総公司(CNPCPetroChina)とし、上流をCNPC、下流をSinopecに分離したが、その後、両社の利害が対立した。

この結果、1998年に再編を行い、石油と石油化学を垂直統合した新CNPCと新Sinopecが誕生、両社はほぼ万里の長城を境に、中国東北部と西北部をCNPC、長江以南と北京周辺を新Sinopecが担当することとなり、大慶石油化学はPetroChina に移った。

その後、石油の販売でこの協定は崩れ、現在は各地で競合している。

大慶煉油化工は大慶地区での第二の製油所として2000年にPetroChinaにより設立された。

 


2010/6/28  再び人民元論争

中国の中央銀行である中国人民銀行は6月19日、「人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表、2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した。

しかし、初日の終値は0.44%高と変動幅の上限に近いものとなったが、その後は政府が介入した結果、非常に緩やかな変動となっている。

このため、人民元をめぐる論争が再燃した。

ーーー

中国は2005年7月21日に2.1%の切り上げを発表、その後、管理フロート制を取ってきたが、2008年夏の金融危機以降、レートを1ドル≒6.8人民元でほぼ固定してきた。

米国は中国に対して元切り上げを要求してきたが、温家宝首相は「中国は自主性、制御可能性、持続性という原則に基づき、人民元為替相場メカニズム改革を穏健に推進する」と表明し、元切り上げ要求を拒否した。

中国にとっては大幅なユーロ安で欧州向けの輸出に影響が出ており、世界的な経済危機のなかでのドルに対するレート固定は国際経済に貢献しており、これ以上の元の切り上げは困難とした。

これに反発して民主党のCharles Schumer上院議員らは3月16日、中国など為替レートの不均衡を是正しない国への制裁措置として、輸入品に反ダンピング関税を課す「通貨為替監視法案」を提出すると発表した。

Debbie Stabenow上院議員は「通貨が過小評価され米国への輸入品が安くなるのは公正ではない」とし「中国が自分で是正 しないなら強制するまでだ」と述べた。

2010/3/24 米国、人民元切り上げを要求 

多くの西側諸国のエコノミストは、人民元が25-40%過小評価されているとの見方を示している。

中国の中央銀行である中国人民銀行はG20サミットを控えた6月19日、「人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表、2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した。

世界的な経済危機の中で人民元の対米ドル相場の安定を維持したことはアジアと世界経済の回復に寄与した。
最近の世界的な金融情勢の安定化を踏まえて今後は通貨バスケットを参考として市場の需給動向を人民元相場に反映させる。
中国の国際収支は均衡に向いつつあることから、大幅な為替相場修正の根拠は無いものの、弾力性の拡大は容認される。
銀行間市場における為替取引中心レートからの日中変動幅に変更はない。
(対米ドルの日中変動幅は同行の発表する中心レートから上下0.5%以下)
  * 為替取引中心レート(基準値、中間値)は、中国人民銀行が取引開始前に、前日相場などを勘案して発表するもの。

しかし、初日の終値こそ基準値比 0.44%アップと上限に近いものとなったが、その後は政府が介入した結果、非常に緩やかな変動となっている。
G20サミットを控え、人民元高の実績をアピールすると同時に、大幅な切り上げは容認しない姿勢も示した。

このため、米国では再び、更なる人民元切り上げを求める圧力が強まった。

オバマ米大統領は6月24日、人民元相場の弾力化を「初期の動きとしては評価できる」としつつ、「不均衡是正に十分か、評価を下すのは時期尚早だ」と中国にクギを刺した。

米製造業団体の幹部は、「中国の発表はG20を前にした、また議会からの圧力を避ける策略でしかない」と指摘、議会が引き続き、中国に圧力をかけていくことを望んでいると表明した。 

民主党のCharles Schumer上院議員は中国の通商政策に関する公聴会で「中国には対応を迫らない限り何も変わらない」と述べ、人民元の過小評価を政府による補助とみなす法案について近く上院で採決を目指す考えを示した。

同氏や他の議員は、中国の為替政策が同国の輸出に不当に利益をもたらしていると みている。

米上院財政委員会のMax Baucus委員長(民主党)も中国の対応は遅すぎるとし、2007年に策定した人民元改革を促す為替法案を再提出する考えを示した。

これに対し、中国外交部の秦剛報道官は6月24日の定例会見で、人民元切り上げでは中国と米国の貿易不均衡は解決しないとし、対中ハイテク製品輸出規制を緩和すべきだとした。

人民元の切り上げで中米貿易 の不均衡することもできないを解決することはできないし、米国が現在抱える国内問題ー低すぎる貯蓄率、ローン消費、失業などーを解決することもできない。
中国は、米国がひたすら非難し、圧力を加えるのではなく、もっと自国の経済構造に原因を求めることを望む。

人民元相場は中米貿易の不均衡を生み出す主要因ではない。
貿易不均衡はグローバル化を背景とした国際分業調整の結果であり、中米貿易の不均衡を生み出し ているもう
一つの主要因は、米国による対中ハイテク製品輸出規制だ。

中米の経済貿易関係は両国にとって重要であるのみならず、世界にとっても非常に重要だ。
中国は米国との経済貿易関係の発展において相互利益・ウィンウィンを重要な原則としており、強く意図して巨額の対米黒字を追い求めてはいない。

ここ数年来、われわれは一貫して積極的な措置を講じ、米国からの輸入を拡大してきた。
これらの措置は顕著かつ効果的なものだ。
米側が中国側と共に、両国の経済貿易関係の均衡的な発展を促すことを希望する。
人民元問題を政治化し、ひたすら圧力を加え、非難し、さらには保護貿易主義的措置をやたらと発動するやり方には少しの道理もない。

米国は、航空機や航空機用エンジン、コンピュータソフトウェア、レーザー装置、光ファイバー、情報通信機器などハイテク製品の中国向け輸出について、中国が軍備増強のために利用しているとの懸念から、政府の許可を必要としている。

中国は、米国製品を輸入したくても輸入できないのが貿易不均衡の重要な原因としている。

米国も最近、世界各地で緩和が進んでいる現状ではこの規制は意味をなさなくなったとして、輸出規制政策を再検討している。

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オバマ米大統領と中国の胡錦濤国家主席は6月26日、G20を前にカナダのトロントで会談した。

オバマ大統領は人民元の弾力化方針を歓迎しつつも、「具体的にどう実行されるかが重要だ」とし、「世界経済の安定成長に向けて中国の果たすべき役割は多い」と一層の内需拡大などを求めた。

これに対し胡主席は「対米貿易黒字を追求するつもりはなく、中国は以前から米国からの輸入を拡大する措置をとっている」と主張し、人民元の切り上げ圧力をけん制する立場を示した。


2010/6/29 信越化学、シリコーンで中国進出 

信越化学工業は6月28日、シリコーンの工場を中国に建設すると発表した。

同社100%出資の「信越有機硅(南通)公司」を設立する。(「有機硅」は「シリコーン」)

江蘇省南通市経済技術開発区にある工業団地に約15万平方メートルの工場用地を確保済みで、2011年末完成をめどに成形用シリコーンゴム、RTVゴム など年産25,000トンのゴム系製品の工場を建設する。投資金額は約85億円で、年100億円の売り上げを見込む。
今後、順次製品群を拡大していき、最終的には全ての製品群の製造を行う予定。

原料モノマーは、当面タイのAsia Silicones Monomer(GE社と50:50合弁会社)から手当てするほか、日本や海外他メーカーから調達する。

2001年2月、信越化学はGE/東芝グループと50/50出資のシリコーンモノマーの製造会社Asia Silicones Monomer Limitedをタイに設立した。
能力は年間約7万トン(シロキサンベース)アジア最大の単独シリコーン製造工場である。

GEと東芝はシリコーン事業から撤退し、事業をApollo ManagementMomentive Performance Materials に売却したが、GE(東芝持分はGEが買収)このJVについては売却せず、株主のままとなっている。

2006/9/21 GE、シリコーン事業を売却

信越化学は1953年に日本で初めてシリコーンを事業化し、現在まで国内トップシェアを有している。 さらに、アメリカ、台湾、韓国、タイなど海外にも生産・販売拠点を有して、世界市場においても優れた品質と多彩な機能で高い評価を得ている。

中国の需要が大きく伸張し、今後も 高い成長が見込めることから、現地生産に踏み切り、中国市場におけるシリコーン事業の拡大を目指すこととした。

信越化学にとり、この投資が中国では初の大型投資となる。

同社は2002年に信越化学 90%出資(残り10%は米国のTOPCO International)で浙江信越精細化工有限公司を設立し、浙江省嘉善県の工業団地に工場を建設、シリコーンの二次製品である一部のエマルジョン製品、一液型RTVゴムなどを中心に生産している。投資金額は工場用地を含め約4億円であった。

また、2003年には「信越有机硅国際貿易(上海)有限公司」を設立、シリコーン製品の販売市場拡大を図ってきた。

ほかに子会社の信越ポリマーが、1993年には蘇州に現地法人を設立してキーパッドの生産を開始、その後、生産体制を拡張し、コネクター、ロールの生産にも着手、2004年には深センに塩ビコンパウンド工場を稼動させている。

これらは小規模の投資で、信越化学はこれまで、カントリー・リスクを考え、中国への大型投資を避けてきた。

金川社長は中国進出については、こう述べている。(2005/6/12 TV朝日 「トップに迫る」)

「中国はね、市場としてはこれからの10年、圧倒的に伸びるでしょうね。 非常に魅力的な市場です。
我々は製品の輸出には中国に大変お世話になっていて、たくさん輸出しています。
ただし、投資とは別のことなのです。
中国の場合は カントリーリスクというと語弊があるかもしれないが、例えば我々の商品の基礎中の基礎の原料である石油とか電力を、政府が一番コントロールしている。
我々が下流、ダウンストリームでいくら努力して、事業を成功させても、上流で押さえられたらそれで一発で終わり。
つまり、我々の経営努力ではできないものがあるところではやってはいけない、というのが私の考え方。
経営努力で克服できるものは経営努力で克服するが、できないものはやらない。」

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同社は1967年にニカラグアで、信越化学 33.75%、三井物産 11.25%、現地(ソモサ大統領系) 55%出資で、塩ビ会社Polimeros Centroamericanos S.A. (POLICASA) を設立した。中米共同市場を対象にPVC 年産 5千トン、同コンパウンド 6千トンを生産するもので、1970年にスタートした。

同社は中米でも一、二を争う高収益企業に成長したが、1979年の革命勃発(ソモサ大統領は亡命、のち暗殺される)で撤退を余儀なくされた。

「この経験は、事業を進めるときにカントリー・リスクは絶対に避けねばならないことを私に教えてくれた」
(金川社長 「毎日が自分との戦い」)

注)本年1月、ニカラグア政府は金川社長(民間外交推進協会=FEC 会長)に対し、FEC会長としての両国関係の長期安定的拡大への貢献と、過去のPOLICASAへの貢献で、「ホセ・デ・マルコレタ勲章」を授与した。

しかし今回、中国政府の関与は変わっておらず、最近は人件費アップや為替の変動などもあり、中国のリスクはあるものの、中国市場の重要性を勘案すれば、現地生産が不可欠と判断した。

5月の社長交代のインタビューで、森・次期社長は以下の通り述べている。

「金川社長は中国に対する取り組みについて、今まではカントリーリスクということで、大型の投資は控え、中小のモノをやり、営業を活発にというやり方だったが、これから中産階級が消費需要が増大してくることを見込んで、積極的に出ようということを昨年暮れに社内に宣告された。それを早く実現していきたい。

中国だけでなくて、今、新興国のGDP伸びは高い比率を示している。期待も高く、当社も相当出ていますけども、現地需要開拓を目指すというのは当然ですが、現地生産も目指して積極的に検討していく。」

 

信越化学では6月29日の定時株主総会終了後の取締役会で、金川社長が会長に、森副社長が社長に就任する。


2010/6/30 インド政府、ボパール事件で新方針

インド政府は624日遅くに、1984年のBhopal事件に関して、Manmohan Singh首相が指名した閣僚委員会が出した方針案を承認した。
犠牲者への賠償を追加し、
Dow Chemical の責任を追及し、Union Carbideの当時の会長のWarren Andersonの引渡を米国に求めるもの。

インド政府の動きは、6月7日にインドのBhopal 市の裁判所がインド人の元役員等8人に有罪とした判決のあと、被害者の支援者やメディアからの政治的圧力によるもの。

2010/6/9 Bhopal 事件でインド人元役員等8人に有罪判決

判決に対しては以下のような点で批判が殺到した。

@ 犠牲者の数を考えれば、「禁固刑2年」は軽すぎる。
A Warren Anderson元会長について、インド政府は「犯罪人引渡し条約」に基づき引渡しを求めたがアメリカはインド政府の要求を全く無視した。アメリカとの経済関係を重視し、「インド政府が意図的に動かなかった」という批判もある。
B インド政府は補償金交渉に重点を置きすぎ、アメリカに対し毅然とした対応をしなかった。補償金もインド人一人当たりで計算すれば「雀の涙」程度のものであった。
C 補償金の少なさに加え、補償金支給の遅れ、役人の横領の可能性、後遺症等に対するインド政府の無策等々。
D 判決まで25年の年月を要したこと。

新方針の概要は以下の通り。

1. 政府はインドの裁判所に、ダウの責任問題について決定するよう要請する。
   
  ダウは、Union Carbide 470百万ドルを支払ってインド政 府との間で将来にわたって解決した。ダウは10年 以上後の2001年 にUnion Carbide を 買収しており、なんらの債務も引き継いでいない」とし、「工場はUnion Carbide India が所有、運営していたものであり、Union Carbide 自体はなんら工場の操業に関与しておらず、同社及び社員はインドの裁判所の管轄外である」としている。
   
2. Warren Anderson元会長の引渡しについて、米国への圧力を強めるため、インド外務省は政府の諸機関から追加の材料を集める。
   
3. 被害者への補償
  ・死亡者の家族に100万ルピー($21,500
  ・回復不能の障害者に50万ルピー($10,700)
  ・癌患者に20万ルピー($4,300)
  ・一時的障害者に10万ルピー(($2,100)
   
  これまでの支払分は調整される。
  2008年現在で、工場のあるMadhya Pradesh州は一人平均27千ルピー ($580) を支払っている。
   
4. 環境浄化
  Madhya Pradesh州の責任だが、中央政府はこの目的のため31億ルピー($66.6 million) を支出する。
  保存されている危険物の処理、汚染された家屋等の解体、水や土壌の汚染の復旧などが含まれる。
   
  工場は1984年の事故のあと、直ちに閉鎖されたが、2009年現在で州は環境浄化に294千ルピーしか支出できていない。
   
5. その他
  1989年に示談による和解が得られ、ユニオンカーバイドは事故によって生じた被害に対し47000万米ドルを支払うことに同意したが、政府はこの件を再交渉できないかどうか調べる。
   
  また、今回の裁判の判決について、別の犯罪を理由に裁判を再開し、もっと重い罪に問えないか、検討する。
   

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2008年に米国下院の16名 の議員がインドのSingh 首相に、被害者救済運動を支援するレターを出しており、2009年6月にはFrank Pallone 下院議員を初めとする米国の議員27人がダウに対してBhopal 事件被害者の救済を要請している。

2009/6/23 米議員、ダウにBhopal 事件被害者の救済を要請

しかし、インド政府は、米国企業のインド進出への影響を懸念し、ほとんど動かなかった。
世論に押されて、ようやく動き始めたようだ。


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