日本とアジアの石油化学の現状その他を、各社のホームページや新聞雑誌情報を基にまとめ
た個人のデータベースです。

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奇美実業                                    

     能力 単位:千トン

  台湾    中国   
PS

400

300
→500

ABS

1,000

250
(→500)
→350

PC   

65

 

PMMA

→50

    中国ABS 

    PC(旭美化成)  奇美実業と旭化成のJV 

 

許文竜(シー・ウンロン)董事長

  中国工場停止命令問題 (小林よしのり氏の「台湾論」)

   → 許文龍「一つの中国」支持の波紋 

奇美方式

1996/9 三菱化学/奇美実業 ABS販売提携解消

2004/3 奇美実業、石化事業への投資拡大

Chi Mei may shut China ABS unit, China bans ACN up Yangzi River

Pro-independence investors warned


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第4回日経アジア賞 <経済発展部門>   1999年

許文竜(シー・ウンロン) 奇美実業董事長(台湾)

 

16世紀にオランダ人が貿易拠点としてゼーランジア、プロビンシアの2城を建設した台南は、台湾では最も歴史のある町だ。ここに本社をおくのが、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)の生産量で世界最大を誇る奇美実業である。

現在のABSビジネスは15年ほど前に本格化した。相次いで大型プラントを導入し、規模の経済でコストを下げるというのが基本戦略。生産規模は年間約100万トンで、日本の全メーカーを合わせたよりも多い。

 セールスマンを全廃し、価格は新聞で公示して注文を受け付ける。「うちのものを買ってくださいという営業は無駄。世界一いいものを作れば自然に客がついてくる」

<略歴>
1928年台湾・台南生まれ。地元の高級工業学校を卒業後、53年にがん具・日用雑貨の製造を始め、59年に奇美実業を設立。董事長(会長)として、アクリル板でスタートした同社を家電製品や自動車部品の原料であるABS樹脂で世界最大のメーカーに育て上げた。「社員に権限を与えれば、企業は無為にして治まる」というのが経営のモットー。96年から総統府国策顧問。


(世界日報 2001/3/12) 

奇美工場への停止通達を否定 中国国務院台湾弁公室

台湾紙聯合報(11日付)北京電によると、中国国務院台湾弁公室は10日、同弁公室が台湾大手の奇美実業グループが中国江蘇省鎮江市内で運営する石油化学工場の運転停止命令を出したとの報道について、中国当局は大陸に進出・投資した台湾企業の合法的な権益を保護し、違法行為は法によって処理する、として同命令を否定した。

陳水扁政権の総統府顧問を務める奇美実業グループの許文龍会長は日本の漫画家、小林よしのり氏の「台湾論」に登場し、従軍慰安婦が強制連行でないと発言して、野党側から反発を買っていた。


(日刊ケミカルニュース 2000/1/14) 

 ☆奇美実業の鎮江は2Q完成、中国の自給化強まる見通し

現段階で具体化している新増設計画は、台湾・奇美実業が中国江蘇省鎮江に建設中の第1期年産12万5千tプラントのみとされている。


(化学工業日報 1999/1/9)

奇美実業 中国・鎮江でABS着工
 24万トン、2000年末に稼働

台湾・奇美実業は中国でポリスチレン(PS)に続いてABS樹脂年産24万トン(12万トン2系列)の建設に着手した。中国江蘇省鎮江に2000年末稼働をめどに建設、一挙に中国最大のABS工場となる。

 


中国・ASEANニュース速報  2004/3/30

【台湾】奇美実業、石化事業への投資拡大
http://www.e-plastics.gr.jp/japanese/nna_news/news/news0403_5/04033003.htm

 奇美実業は、石油化学事業の拡大に2億米ドルを投じる。中国・江蘇省鎮江の工場で、アクリロニトリル・ブタジェン・スチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)の生産能力を向上させ、市場の需要に応える。TFT―LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレー)事業との統合も狙った大きな動きへと発展しそうだ。29日付工商時報が伝えた。

 
鎮江工場で、ABSの年産能力を倍増させ50万トンにする。PSも、現有工場のネック工程改善に加え、年産15万トンの新工場を増設するなどし、全体の生産能力を20万トン増やす。また、年産5万トンのアクリル樹脂(PMMA)の新工場も設ける。同計画は今年2004年から実行され、2年後の全工程完了を目指す。

Platts 2005/8/9

Taiwan's Chi Mei to boost China ABS capacity by end 2006

Taiwan's Chi Mei Corp plans to boost ABS capacity in Zhenjiang, China to 350,000 mt/yr by the end of 2006
from 250,000 mt/yr currently, a company official confirmed Tuesday.


The project had been longer in the pipeline, but had been put on a hold as Shi Wen-long, founder of the Chi Mei conglomerate
had showed sympathy for independence of Taiwan, media said.


In addition to the ABS plant, Chi Mei was also going ahead to build a polymethyl methacrylate (PMMA) plant in Zhenjiang,
with a production capacity of around 45,000 mt/yr, also slated for completion by the end of 2006.
Meanwhile, it was conducting a feasibility study to build a
polycarbonate plant in Zhenjiang as well, the source noted.



 同時に、
台湾の工場でも生産拡大を進める。少なくとも30億台湾元を投じ、ポリカーボネート(PC)工場の年産能力を倍増の14万トンにまで高める計画だ。

■エレクトロニクス産業との統合図る


China Chmical Reporter 2004/4/12

Taiwan Chimei Expands Capacity in Zhenjiang
http://www.ccr.com.cn/news_view.asp?ID=425

Owing to the favorable situation in plastic and chemical sectors in future, Taiwan Chimei has decided to restart its investments in China mainland. It will make an investment of around US$200 million from this year to conduct capacity expansion in its Zhenjiang plant.
According to the general manager of the company, Chimei will expand the capacity of ABS by 250 000 t/a, expand the capacity of PS by 200 000 t/a from 300 000 t/a today to 500 000 t/a and construct a 50 000 t/a PMMA unit.
The expansion plan in Zhenjiang will be completed in two years. The capacity of ABS in the company across the straits will reach more than 1.5 million t/a and the capacity of PS will reach 800 000 t/a at that time.

 


The Straits Times June 17 2004             解説

Pro-independence investors warned
http://straitstimes.asia1.com.sg/eyeoneastasia/story/0,4395,256718,00.html

Taiwanese investors who support island's independence are not welcome in the mainland, says Chinese vice-minister
China is prepared to shun Taiwanese investors who support the island's independence movement, a vice-minister has said, linking cross-strait politics to economic sanctions for the first time.

'For Taiwanese businessmen who resolutely support Taiwan independence and separatism from the motherland, we do not welcome them,' China's Vice-Minister of Commerce Ma Xiuhong told reporters here yesterday.

'As for what measures we will take, it will depend on the situation.'


In a hard-hitting article on May 31, the People's Daily singled out Chi Mei Optoelectronics Corp's former chairman
Hsu Wen-long as a Taiwan businessman who openly supports Taiwan President Chen Shui-bian's independence platform.

 

2004年06月21日
中国政府、 台湾・奇美実業を締め出しか
 
「台湾独立を支持する投資家は本土で歓迎しない」。中国商務部の馬秀紅副部長は16日の記者会見で、台湾独立運動を支持する投資家を締め出す可能性があることを初めて表明した。
 
 中国政府は最近、台湾独立運動について強硬姿勢を示しており、
531日の人民日報は奇美実業の許文龍元会長(最近引退)を陳水扁総統の台湾独立構想を支持する実業家として激しく批判した。
 
 許氏は
4月の経済団体でのスピーチで「中国政府は中国への投資を自由化し、中国を経済的な植民地とすべきだ」と述べ中国政府を怒らせたといわれている。許氏は、台湾が戦前に日本の植民地として利益を得たのと同様に、中国も台湾からの投資によって利益を得るという意味だと述べている。同氏は以前に日本の漫画家、小林よしのり氏の「台湾論」に登場し、従軍慰安婦が強制連行でないと発言したことがある。

 馬副部長は同時に、「中央政府は、台湾独立活動を行う者には誰であれ反対するが、台湾企業の中国大陸部での投資を奨励する政策に変化はなく、台湾企業が大陸部で投資する合法的な権益は、法律の保護を受ける」とも表明した。
 
 馬副部長によると、現在までに、台湾企業が大陸部への投資で設立した企業は、すでに
62千社に達し、台湾企業の大陸部での投資額(実行ベース)378億ドルに達した。

 奇美実業は、許氏の個人的な政治信条は奇美のビジネスとは無関係であるとしている。同社は、中国・江蘇省鎮江で、
PS30万トンから50万トンに、ABS24万トンから50万トンに増設するとともに、年産5万トンのアクリル樹脂(PMMA)新工場を建設する計画を発表している。
 
 しかし、中国の国家安全部門が
61日から有毒化学品との理由で長江流域でのアクリロニトリルの運搬を全面的に禁止する新たな措置をとったことで、ABSプラントへの原料輸送を上海からのトラック輸送に変えざるを得ず、輸送費高騰から操業停止の可能性も出てきた。

 同社はまた、浙江省寧波に液晶ディスプレイ工場の建設を計画しているが、中国当局はこれに許認可の見直しを伝えてきたと報じられている。

「人民網日本語版」2004年6月16日

台湾企業の大陸部への投資奨励に変化なし 商務部

 商務部の馬秀紅副部長は16日午前、国務院新聞弁公室が開いた記者会見で、「中央政府は、台湾企業の中国大陸部での投資を奨励する政策について変化はなく、台湾企業が大陸部で投資する合法的な権益は、法律の保護を受ける」と表明した。

 馬副部長は、「『台湾独立』活動を行う者は、誰であれ、われわれは断固反対する。これは、相手が台湾企業であるとか誰であるからという理由ではない。この観点はかねてからこのようであり、これまで変化したことがない」と述べた。

 馬副部長によると、現在までに、台湾企業が大陸部への投資で設立した企業はすでに6万2千社に達し、台湾企業の大陸部での投資額(実行ベース)は378億ドルに達した。


Taipei Times 2004/6/8  

Chi Mei boss holds good China cards
http://www.taipeitimes.com/News/biz/archives/2004/06/08/2003174271

The `People's Daily' attacked the tycoon for allegedly supporting independence, but even in retirement he could take his businesses out of China

Chi Mei Corp Chairman Hsu Wen-lung gives a talk on how Taiwan-based companies can position themselves to enter the global market at a seminar held by the Taiwan Economy and Industry Association on April 22 in Taipei.


エコノミスト 2005/4/26号

大物財界人、許文龍「一つの中国」支持の波紋  本田善彦


 問題の書簡は、同26日付「経済日報」に世界最大のABS樹脂メーカー、奇美実業創業者「許文龍」の名で掲載され、「
台湾、大陸ともに“一つの中国”に属し、中台両岸人民は同胞だ。00年の総統選挙で陳水扁を支持したのは、国民党の腐敗を不満としたもので台湾独立支持ではない」と主張。「最近の胡錦濤主席の談話と反国家分裂法の制定に心強く思った。大陸に投資した我々は台湾独立を支持しない。奇美は大陸で、より発展する」とする内容だった。

3月29日、系列の奇美電子が台湾経済部投資審議委員会に、中国での液晶テレビ部品の買い付けを目的とした大陸物流会社の投資案を提出、時を同じくして一度は中断が伝えられた浙江省寧波の奇美LCM(液晶モジュール)工場への投資案再開の可能性も報じられた。同31日には昨年、仏トムソンとの合弁で出荷量世界一のテレビメーカーとなった中国TCLの李東生総裁が液晶パネルの買い付けで訪台、最初の訪問先に奇美を指定したことが明らかになった。買い付け総額は20億台湾元(約60億円)ともいわれ、公開書簡発表との関連に自然と関心が集まった。


http://zhenyan.cocolog-nifty.com/twlog/2005/03/post_6.html

 許文龍がこの文章を公表せざる得なくなった背景には、昨年、陳水扁が再選した後から、中国当局は許文龍が中国に投資している企業、案件に妨害していたことにある。工場の原料の移入を差し止め、工場の運営に支障を来たし、更に銀行の投資を止められ、工場の設立を困難にされた。こうした度重なる中国の圧力によって、許文龍は今回の文章の発表へとつながったみたいである。

http://zhenyan.cocolog-nifty.com/twlog/2005/03/post_8.html

 中国時報の報道によれば、今回の声明は中国側が原稿を準備して、許にサインを強要したらしい。実際にこの声明の文法が大陸式の中国語で、台湾人が用いる国語とは、微妙に異なっており、それゆえ強要されたという見方が正しいのかもしれない。

2005/5/7 田中宇 http://tanakanews.com/f0507taiwan.htm

▼相次ぐ財界人の離反

 だがその後、それまで民進党を支持していた他の台湾人実業家たちの中から、陳水扁政権に対して「台独の方針を捨てるべきだ」という主張や請願が相次いで出されるに至り、どうやら許文龍の主張は脅迫の結果ではなく、むしろ逆に、台湾実業界の意外に多くが民進党に台独方針を捨てさせたがっていることが分かってきた。

 許文龍が声明文を出してから5日後の3月31日には、陳水扁の政策顧問だった実業家の中からもう一人、宏碁(エイサー)グループの前会長である施振榮が、自分は台独派ではなく中立派であり、今後は陳水扁に頼まれても政策顧問はやらないと発表した。

▼報われなかった台湾財界人の独立支持

 許文龍が台独批判の文書が本人の真意に基づくものかどうか台湾で議論になったとき、台湾プラスチックの創業者である王永慶は「これは彼の本心からの言葉である」と指摘した。王永慶は、許文龍と同じ気持ちだったのではないかと推測できる。台湾財界人が台独派から統一派に転換したのは、イデオロギーに基づくものではなく、資本の理論に基づくものだった。