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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2008/8/1 BASFがW. R. Grace 買収

Financial Times Deutschland は7月30日、BASFが米国のW. R. Grace の買収を検討していると報じた。
Graceのほかに、米国のスペシャルティケミカルのRockwood、ドイツのスペシャルティケミカルの Cognis も候補に上がっている。

付記

9月15日、BASFはCibaに対し、TOBをかけると発表した。スペシャルティケミカルの強化を図る。
買収額は38億ユーロとなる。
Cibaの取締役会はこれに賛成している。

BASFは2006年6月に触媒メーカーのEngelhard を48億ドルで買収したが、2007年にBASFCFOはインタビューで、新しい買収のために100億ユーロを新規に借り入れる用意があることを明らかにしていた。

  2006/10/12 BASF、北米事業を強化 

  2007/9/20 BASF、新しい買収?

今回の報道について、同社報道官は個別の報道についてはコメントしないとしつつも、BASFは戦略として買収の検討を続けていると述べた。

BASFHambrecht CEO 7月に、コストアップのプレッシャー、資産価値低下、投資環境変化などで、化学分野での統合は加速されると述べている。

710日には、Dow Chemical 188億ドルでRohm and Haas を買収する契約を締結した。

    2008/7/11 Dow ChemicalRohm and Haas を買収  

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なお、BASFはスチレン事業の売却を交渉している。

    2007/8/6 BASF、スチレン事業一部の売却交渉進展 

BASFは2008月に、この交渉が進んでおり上半期中に決定するだろうとしていたが、結局決まらなかった。
金融情勢の悪化で、買い手が自己資本を増やす必要が出たこと、金利の上昇などが理由で、BASFでは無理に安売りする必要なしとしている。

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W. R. Grace はスペシャリティケミカル会社。

1832年にWilliam T. Davison が Davison, Kettlewell & Co. を設立(その後、Davison Chemical に改称)
1854年William Russell Grace がペルーで W. R. Grace & Co. を設立(1865年にニューヨークに移転)

1954年にGrace がDavison Chemical を買収。

2007年売上高(百万ドル)

Grace
 Davison  
Refining Technologies   971.1  Fluid catalytic cracking (FCC) catalysts
Hydroprocessing catalysts
Materials Technologies   726.7 Silica-based and silica-alumina-based engineered materials
Sealants and coatings
Specialty Technologies   311.4 Polyolefin catalysts and catalyst supports
Silica-based materials
Total  2,009.2  
Grace Construction Products  1,106.0 Fire protection materials
Concrete admixtures and structural fibers コンクリート混和剤の最大手メーカー
Additives used in cement processing
Building materials
Total  3,115.2  

同社は20014月にアスベスト訴訟関連でChapter 11 (会社更生法)を申請した。

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Rockwood もスペシャルティケミカル会社。

2007年売上高 (百万ドル)

 Specialty Chemicals   1,082.9 Lithium compounds and chemicals
Metal surface treatment chemicals
Synthetic metal sulfides
Maintenance chemicals
 Performance Additives   832.7 Iron oxide pigments
Wood protection products
Inorganic chemicals ほか
 Titanium Dioxide Pigments   766.3  
 Advanced Ceramics   452.5  
 Specialty Compounds   276.6 PVC, TPE ほか
 Corporate and other    11.8  
 Total  3,136.4  

Cognisは油脂化学をバックボーンに、160年に及ぶ経験と実績を有する総合化学会社。

2007年売上高 (百万ユーロ)

 Care Chemicals  1,447  Hair / Body / Oral Care
Home Care
Industrial & Institutional Cleaning
Skin Care
Silicates
 Nutrition & Health   331 Dietary Supplements
Pharmaceuticals & Healthcare
Food Technology
Functional Food & Medicamental Nutrition
 Functional Products   874 Adhesives
Consumer Coatings
Emulsion Polimerization
Graphic Arts
Industrial Coatings
Polymer Building Blocks
Synlubes Technology
AgroSolutions
Mining Chemicals
Ion-Transfer Technology
 Pulcra Chemicals   246 Textile Technology
Fiber Technology
Leather Technology
 Oleochemicals   599 Fatty Acids
Glycerin / Triacetin
Ozon Acids
Plastic Additives
Oilfield Chemicals
 Others    21  
 Total  3,518  

2008/8/2 無錫の汚染排出企業、新聞に謝罪広告

人民日報によると、江蘇省無錫市の新聞各紙で、違法な汚染排出行為があった企業の謝罪広告が出ている。これまでに63社が出した。

「弊社の環境保護法律制度に対する意識が十分でなかったため、基準値を超えた汚染物質排出という違法行為を生じ、環境を汚染しました。このため紙面を借りて市民の皆様に心よりお詫び申し上げます」といった内容。

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無錫市の太湖水域は2007年5月29日、深刻な汚染によって水道水から異臭を放ち、飲用できなくなり、大問題となった。

江蘇省無錫市で6月11日、太湖の水質汚染問題に関する国務院の座談会が開かれ、温家宝総理は「汚染原因を徹底的に調査・分析し、これまでの事業を基礎として、総合的な管理を強化し、具体的な改善策と措置を研究し、立案しなければならない」との重要な指示を出した。

無錫市環境保護局は、5月30日から市内の企業439社の汚染物質排出状況を調査し、基準超過の9社に改善命令、3社に排出削減命令を出し、12社を行政処分とし、市政府に1社の操業停止あるいは移転を提言したことを明らかにした。

2007/6/16 太湖の水質汚染問題

ーーー

無錫市環境保護局は今年1月に「環境違法企業への公開謝罪と承諾の要求に関する通知」を公布した。
同市が昨年から進めている「
科学治太、鉄腕治汚」(科学で太湖の汚染を防ぎ、鉄腕で汚染をくい止める)活動の中の厳重な措置の一つ。

一定期間内に汚染物質排出基準をクリアできなかった企業や1年に2回以上摘発を受けた企業に対し、有期限の改善を一律に要請し、期限内に積極的かつ効果的な措置を取って整備・改善を進めなくてはならないことを規定するとともに、自費で市内のメディアに謝罪広告を出し、改善の承諾を発表することを定めた。

追跡調査によると、公開謝罪した63社は、社内の環境保護問題について徹底的な整備・改善を進め、これまでに95%の企業が承諾事項を履行したという。

無錫恵山環保水務有限公司は、基準値を超えた汚水を排出して生産停止となり、メディアに謝罪広告を出した。
同公司は約2千万元を投入して徹底改善をはかり、基準値をクリア。環境保護部門の検査に合格し、正式に生産を再開した。

 


2008/8/4 中国、独占禁止法施行

中国の反壟断法(独占禁止法)が81日施行された。

昨年8月30日、全国人民代表大会の常務委員会は反壟断法案を採択した。

    2007/9/3 中国、独占禁止法を採択 

主なポイントは以下の通り。

反壟断委員会の設立(公正取引委員会に相当) 

競争関係にある事業者の間で、以下の協定は禁止
 ・価格の維持や変更
 ・生産や販売量を操作
 ・新技術や新設備の導入を制限

行政権を乱用して競争を排除してはならない

支配的立場の乱用を禁止
 ・不公正な高値販売や不公正な安値購入
 ・原価を下回る価格で販売
 ・正当な理由無く取引先との取引を拒絶
 ・抱き合わせ販売

合併・買収では以下の点を審査
 ・市場シェアや市場への支配力
   市場独占の判断基準=1社で5割、2社で2/3、3社で3/4以上のシェア 
 ・国民経済や消費者への影響
 ・
国家安全への影響(外資の場合)

イノベーションや技術強化を促進する場合は独占を承認
   
産業政策との整合性も考慮

違法企業には最高で前年度の売上高の10%の罰金

 

8月1日施行時点でも独禁法のガイドラインは公開されておらず、どう運用されるかは不透明のままである。

執行機関は中国国家発展改革委員会、商務部、工商行政管理総局となっており、縦割り行政の弊害が懸念される。

反壟断委員会(公正取引委員会に相当)もギリギリまで設立されなかったが、8月1日の施行日当日になって、設立が発表された。

委員会は国務院直属の組織で、業務は、独占禁止政策の調査、市場動向のモニター、執行機関間の政策の調整となっており、独占禁止や合併承認のガイドライン作成も担当する。

ーーー

合併ではBHP Billiton Rio Tinto 買収が取り上げられるのではないかとみられている。

独禁法では国内の競争を制限する独占は、国外での合併でも規制の対象となるとしており、BHP Billiton 7月初めに商務部に申請を行なっている。

中国の鉄鋼業界では、鉄鉱石は現在3社の独占となっており、このうちの2社が合併すれば、大きな影響を受けるとしている。

ーーー

中国最高裁は730日、各裁判所に対し、独禁法を注意深く検討し、法を守るよう、指示した。

独禁法は極めて専門的で、経済問題と法問題が複雑に混じっており、企業や産業に大きな影響を与えるとし、独禁法の規定は抽象的で原則を述べているため、具体的な事件では裁判所が問題に直面するとしている。

ーーー

中国で独占禁止法が施行されたのを受け、北京のIT(情報技術)関連企業の4社が行政上の権利を乱用して市場競争を阻害する「行政独占」などを理由に中国当局を提訴した。

訴えられたのは、政府機関の国家品質管理検査検疫総局で、訴えたのは、北京兆信信息技術有限公司、東方惠科防偽技術有限責任公司、中社網盟信息技術有限公司、恆信數碼科技有限公司の4社。

同局の傘下企業の商品認証システムへの強制加入は、独禁法の行政独占に当たるとして、北京市第一中級人民法院(地裁)に提訴した。

独禁法では、行政権を乱用して競争を排除してはならないとし、行政機関の市場競争の阻害も違法と定めている。

付記

北京の第一中級人民法院は94日、本件を却下した。
訴えの期限が切れていることと、行政手続法の規定を理由にしている。

原告側弁護士は、現在も強制加入が続いており、期限切れはおかしいとし、控訴するとしている。

ーーー

日本経済新聞によると、企業側は同法に抵触する恐れがある行為を相次いで取りやめ始めた。
メーカーは販売店に対し価格拘束と疑われる行為を中止し、業界同士の会合も慎重に行うよう改めた。スーパーはメーカーなどに対する優越的地位の乱用を疑われそうな行為をやめている。

ーーー

付記

中国国務院は8月4日、M&Aに関するガイドラインを発表した。

事前審査対象は以下の通り。
1) 参加社の前会計年度の全世界売上高の合計が100億元(約14億ドル)を超え、少なくとも2社の中国での売上高がそれぞれ4億元を超える場合、又は

2) 参加社の前会計年度の中国での売上高の合計が20億元を超え、少なくとも2社の中国での売上高がそれぞれ4億元を超える場合

草案での中国国内の市場シェアは削除された。

 

付記 公取委メールマガジン 平成20年8月11日発行 第12号

 同法は、全8章57条から構成され、カルテルなど独占的協定に係る規制、市場支配的地位の濫用行為に係る規制、企業結合規制に加え、行政権力の濫用行為に係る規制が規定されており、競争法先進国と同様包括的に競争関連規制を規定したものとなっております。
 執行機関については、商務部、国家発展改革委員会、国家工商行政管理総局の3機関が認定されており、それぞれが企業結合、独占的協定、支配的地位の濫用行為に係る規制を行うとされておりますが、このように、
法執行機関が3つに分かれるといったケースは、諸外国で例を見ないものであり、今後ガイドラインの策定等を含め執行体制の整備がどのように進められていくのか、具体的な執行がどのように行われるのか注目されるところです。

独占禁止委員会(国務院に設置)
  14部門のメンバーで構成
    発展改革委員会、工業・情報化部、監察部、財政部、交通運輸部、商務部、国有資産監督管理委員会、
    工商総局、知的財産権局、法制弁公室、銀行業監督管理委員会、証券監督管理委員会、
    保険監督管理委員会、電力監督管理委員会
  職責は競争関連政策の研究・制定、独占禁止ガイドラインなどの制定、競争状況の調査などで、執行はしない。

執行機関
 発展改革委員会:価格独占行為の調査・処分を担当
 商務部:事業者結合行為に対する独占禁止審査
 工商総局:独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限に対する執行(価格独占を除く)

付記

中国商務部は8月23日、同部の職能、機構、編制を新たに定める「新三定プラン」が国務院の承認を受けたことを明らかにした。

1)反独占(独占禁止)局の設置
 新局は「反独占法」に規定された国務院反独占委員会の具体的な作業項目を担当する。
 
 反独占局の職責
 ・法律に基づき、経営者の集中的行為に 対して反独占の立場で審査を行う。
 ・中国企業の国外における反独占の訴訟への応訴活動を指導する。
 ・多国間の競争政策に基づく国際交流や国際協力を展開する。

2)部門間連席会議発足
 国家発展改革委員会と商務部は関連部門と共同で、海外投資家が中国企業を合併買収 (M&A)する場合の安全審査を担当。
 (国家安全への影響)

 商務部は海外投資家からのM&A申請を一括して受理し、対応する責任を負う。
 規定の安全審査の範囲内にあるM&A行為は、同会議が安全審査を行い、新規や追加の固定資産投資については、国の固定資産投資管理規定に基づいて処理がなされる。
 安全に関わる重大事項があれば、同会議が検討を進める。


2008/8/5 Exxon Mobil の損益

Exxon Mobil は第2四半期で過去最高の利益を計上した。
116.8億ドルの利益で、前年同期比 14%のアップとなった。

これを受け、米国民主党の大統領候補 Barack Obama上院議員は8月1日、Florida 州 St. Petersburg でのタウンミーティングで新しい提案を行なった。

「計画の最初の部分は、ガソリン代と暖房費をカバーするため、この秋に各家庭に1,000ドルの緊急エネルギーリベートを配ることだ」

しかし、経済は疲弊しており、連邦政府の借入金が増えることとなる。

「そのため、Exxon Mobile のような会社の棚ボタの石油の利益 (windfall oil profits)に課税して、リベートを配ることを提案する」

ーーー

Exxon Mobile の第2四半期の利益の内訳は以下の通り。

Upstream (石油・ガスの採掘・製造)は石油価格が平均で125ドル弱で、前年同期比で約2倍となり、68%の増益となっているが、Downstream Chemical はコストアップ分の転嫁が十分できず、大きな減益となっている。

Exxon Mobile (単位:million $)
  2Q 1H
2008 2007 増減 2008 2007 増減
Upstream  10,012   5,963  +68%  18,797  11,994  +57%
Downstream   1,558   3,393  -54%   2,724   5,305  -49%
Chemical    687   1,013  -32%   1,715   2,249  -24%
Corporate   -577    -99     -666     -8  
             
Net income  11,680  10,260  +14%  22,570  19,540  +16%

Upstream についても、大きな投資をしているにもかかわらず、石油やガスの生産量は停滞している。

Exxon の石油とガスの生産量は前年に比べ8%減となった。
Venezuela政府による資産没収、 Nigeriaでのストライキや、原油価格上昇に伴ってホストの国に石油の分け前を増やす契約などがその原因となっている。

    Venezuela との争いについては 2008/2/20  WTI原油価格 過去最高値更新 

これらの理由のため、今回のExxon の過去最高の利益もアナリストの予想からは10%以上低いもので、株価は4.7%下がった。

ーーー

Shell の利益も115.6億ドルで、33%アップとなった。
Exploration & Production は90%ものアップ。

同社は財務上の在庫評価を先入先出法で行なっているため、Oil ProductsDownstream)は16%の増益となった。しかし、Chemicals は大幅減益となっている。

同社では在庫評価損益の影響を除くため、現在の原料価格を使用した「CCS (Current cost of supplies) 利益」という概念(後入先出法でもない)を使っているが、Oil Products Chemicals そのベースに置き換えると、両者は大幅減益で、全社合計では79.0億ドルの利益となり、前年同期比 5%アップに止まる。

Shell (million $)
  2Q 1H
2008 2007 増減 2008 2007 増減
Exploration & Production   5,881   3,099 + 90%   11,024   6,492 + 70%
Gas & Power    625    779 - 20%   1,573   1,582  - 1%
Oil Sands    351    202 + 74%    600    317 + 89%
Oil Products   4,539   3,928 + 16%   6,906   5,730 + 21%
 (CCS base)  (1,075)  (2,936) (-63%)   (2,269)   (4,424) (-49%)
Chemicals    157    626 - 75%    505   1,153 - 56%
 (CCS base)   (-142)   (494) (  - )    ( 59)    (974) (-94%)
Corporate    201    177      347    978  
Minority Interest   -198   -144      -316    -304  
 (CCS base)   (-89)   (-131)     (-194)   (-279)  
Total  11,556   8,667 + 33%   20,639   15,948 + 29%
 (CCS base)  (7,902)  (7,556) (+ 5%)  (15,678)  (14,488) (+ 8%)

Shell も第2四半期の生産量は前年比で 1.6%減少した。

ーーー

新日本石油の第1四半期決算は以下の通り。 (億円)

実績は増収増益だが、在庫評価の影響を除くと大幅減益。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 営業損益のうち
 在庫影響
在庫影響除き
営業損益 経常損益
08/1Q  20.372   1,016   1,013   587    926    90    87
07/1Q  15,758    793    880   527    542    251    338
増減  +29%   +223   + 133  + 60   +384   -161   -251

同社は総平均法を採用しているが、本年は石油価格の値上がりが大きいため、期首の安い在庫が損益に大きく影響する。
同社では在庫影響を除いた実質の経常利益は
前年同期比 251億円の減益としている。

経常損益の内訳(在庫影響除外)は以下の通り。(億円)
石油・天然ガス開発でも減益となっている。石油化学製品の減益が大きい。

  当期 前年同期 増減
石油・天然ガス開発   181   236   -55
石油製品精製販売   -44   -90    46
石油化学製品   -52   191  -243
その他     2     1    1
経常損益合計    87   338  -251

   


2008/8/6 ロシアの Sibur50万トンPPプラント建設着工

ロシアの Sibur LLC730日、ロシアのTyumen地区Tobolsk市にある100%子会社Tobolsk-Polimer で年産50万トンのPPプラントの建設着工の式典を行なった。2011年の完成を目指す。

   Sibur LLC については
     2007/7/6  
Solvay、ロシアでワールドクラスの塩ビJV  

     2008/4/21  東洋エンジニアリング、ロシア向けエチルベンゼン生産設備を受注

Sibur Tyumen地区の子会社 Tobolsk-Neftekhim JSC で、NGLを処理してプロパン、ブタンやブタジエン、イソブチレン、更にMTBE等を生産しているが、20064月、PP生産のため、Tobolsk-Neftekhim 工場内にTobolsk-Polimerを設立した。

20071月にプロジェクトマネジャーとして Fluor を起用、UOPのプロパン脱水素技術、Ineos (旧 Innovene)のPP技術を採用した。

能力はPPが世界最大の50万トン、プロパン脱水素が51万トンとなっている。
Sibur の現在のPP能力は11万トン。

なお、Tobolsk-Polimer設立時の計画では、これに続いて2009-2012年に、LPGの熱分解設備と、40-50万トンのPE30-40万トンのPPプラントを同地に建設することとなっている。
この時点での予想では、第1期の今回の計画の予算は
7.5億米ドル、第2期計画は13億ドルとなっていた。

ーーー

本年3月、Sibur LLC はロシアのTomsk にある子会社Tomskneftekhim LLC の年産20万トンのPP計画で Ineos (Innovene)の技術を採用した。2012年スタートの予定。

Ineos (Innovene)のPP技術としては、Sibur LLCで2基目、世界で19番目となる。

Tomskneftekhim LLC は石化の製造基地で、以下の製品を生産している。


2008/8/7 Sinopec、ロシアで石油開発の英国 Imperial Energy の買収狙う

Sinopec は、ロシアで石油開発をしている英国 Imperial Energy Corp Plc の買収を狙い、due diligence を開始した。
Sinopec は既にロシア政府から買収の了解を取ったと伝えられている。

Imperial Energy に対しては既にインドのOil and Natural Gas Corp (ONGC)13億英ポンドでの買収の交渉を行なっている。

ロシアの石油を狙い、インドと中国の争いとなる。

付記

インドのONGC は826、26億ドルImperial Energy を買収することで合意したと発表した。

買収にはロシア政府の承認が必要だが、ONGC100%買収することでは承認が得られないだろうとの見方が多い。
ONGCでは一部をRosneft などのロシア企業に譲ることも考えている。

ーーー

Imperial Energy 2004年に設立され、ロシアの西シベリアのTomsk 地区を中心に石油とガスの開発を行なっている。

このほか、同社はカザフスタンのSevkazgra (Northern Torgai Block) の油田の75%の権益を有している。

    Sevkazgra (Northern Torgai Block), Kazakhstan.  
   
Tomsk region of Western Siberia, Russia    
 
     

Imperial Energy は200712月に日量1バレルの生産をしており、2011末までに8バレルに増やす計画。

ーーー

中国の王岐山副総理は先月、エネルギー協力が中国とロシアの間の戦略的協力のなかで重要な役割を持つと述べた。

この買収はSinopec にとって、ロシアの石油を狙う3度目の試みとなる。

Sinopec とロシア国営石油会社Rosneft 2006 11 月に戦略的枠組み協定に調印し、TNK-BP からUdmurtneft(沿ヴォルガ地域)油田を買収、共同経営を開始した。

LyondellBasell の親会社のAccess Industries のオーナー Len Blavatnikはロシアの友人及びロシアの富豪と組んで Tyumen Oil Co. (TNK) を設立、更にBPとTNKの合弁で2003年にTNK-BPを設立した。

TNK-BP は現在ロシア第二の石油会社で西シベリア、ボルガーウラル地区、東シベリア、樺太等で石油の採掘をしており、ロシアとウクライナに5つの製油所を所有している。

Sinopec Rosneft からサハリン3の一部 Veninsky oil project 25.1%の権益を取得している。(残り74.9%はRosneft

 

サハリン3プロジェクト

鉱  区 キリンスキー アヤシ(Ayashsky)、東オドプト(Odopinsky) Venin
事業主体 未定
(付記)→ガスブロム
未定
(付記)→ガスブロム
ヴェニネフチ
<出資企業>
・ロスネフチ・アストラ(露、49.8%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ
 (露、25.1%)
・シノペック(中、25.1%)
    ↓
Rosneft International 74.9%
Sinopec
 25.1%
当初
・エクソンモービル社(米、33.35%)
・テキサコ社(米、33.35%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社
 (ロシア、16.55%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 16.55%)
当初
・エクソンモービル社(米、66.7%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社
 (ロシア、16.65%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 16.65%)
推定可採埋蔵量 @石油    約4.53億トン
  天然ガス  約7,200億立方メートル
@石油    約1.67億トン
A天然ガス  約670億立方メートル
@石油 約1.682億トン
A天然ガス
    約2,580億立方メートル
開発の現状 99.4 生産物分与対象鉱区に認定
   (ただし、未だ生産物分与契約は締結
    されていない。)
02.9 テキサコが今後20年間で90億ドル
   の投資を検討していることが明らかに
   した。
04.1 ロシア政府が生産物分与協定対象鉱区
   から外し、入札が無効となった
93   開発権を入札、モービル
   (現エクソンモービル)とテキサコが落札
04.1 ロシア政府が生産物分与協定対象鉱区
   から外し、入札が無効となった
03  ロスネフチが地質調査の権利
  を取得
05.7 中国のシノペックと探鉱事業
   のための合弁企業を設立   

   地震探査調査を開始 

2008/8/8  石油化学会社の第1四半期決算

ナフサ等の高騰で、石油化学会社の業績が悪化しつつある。

その中で、信越化学の有機・無機化学品部門の増益が目立つ。

注) 下記企業のうち、三井化学と住友化学は棚卸資産の評価で後入先出法を採用、他は総平均法を採用している。
原料のナフサ価格が急増している時点では総平均法では期首の安い在庫の評価益が損益に大きく反映される。

ーーー

三菱ケミカルホールディングス

三菱ケミカルは2008年4月からセグメントを全面的に組み替えた。

「事業区分の考え方自体を見直しており、従来の事業区分によった場合と比較するのが困難」としているが、下記の通り、従来の「石化」が新しい「ケミカルズ」+「ポリマーズ」にほぼ相当する。(炭素製品と肥料が加わった)
従来の〔「機能化学」+「機能材料」〕 が新しい 〔(エレクトロニクス・アプリ)+(デザインド・マテ)〕にほぼ相当。

ヘルスケアを除き、それぞれ減益となった。
ヘルスケアの大増益は田辺三菱製薬の発足による。

2007年10月に田辺三菱製薬が発足したため、2007年1Qは旧田辺製薬分が入っていない。
(旧田辺製薬の07/1Qの営業損益は105億円で、これを加えると07/1Qは220億円となる)

  06/1Q 07/1Q 08/1Q
ヘルスケア 130 115 266
石化 16 81  
ケミカルズ     24
ポリマーズ     10
機能化学 93 95  
機能材料 46 46  
Electronics Applications     57
Designed Materials     8
その他 20 22 14
全社 -11 -25 -35
合計 294 334 346

ーーー

三井化学

基礎化学品、機能材料は減益となった。

  06/1Q 07/1Q 08/1Q 増減       内 訳  
数量差 売価差 変動費
  差
固定費
ほか
基礎化学品   100   141   124   -17   -1   253  -264    -5 エチレン、プロピレン等、フェノール、
合繊原料・ペット樹脂、工業薬品、
PEPP
先端化学品 32 33 38    5    8   ー    1    -4 精密化学品、農業化学品
機能材料 33 81 56   -25   22    46   -66   -27 自動車・産業材(エラストマー)、包装・機能材(工業樹脂)、
生活・エネルギー材(機能加工品)、
電子・情報材(電子材料、情報材料、機能性ポリマー)、
ウレタン樹脂原料
その他 7 7 2    -5   -2   ー    -1    -4  
全社 -5 -11 -13    -2
合計 167 251 207   -44   27   299  -330   -40  

 

ーーー

住友化学

前年同期に赤字となった情報電子化学は能力増強が寄与して黒字に戻ったが、石油化学は赤字に転落した。
医薬は研究費増大により減益。

  06/1Q 07/1Q 08/1Q  
基礎化学 27 43 16 無機薬品、合繊原料、有機薬品、メタアクリル、アルミナ製品、アルミニウム等
石油化学 36 23 -7 石油化学品、合成樹脂、合成ゴム、合成樹脂加工製品等
精密化学 32 34 13 有機中間物、添加剤、染料、機能性材料等
情報電子化学 37 -41 72 光学製品、半導体プロセス材料、電子材料、化合物半導体材料
農業化学 46 54 58 農薬、家庭用殺虫剤、飼料添加物、化学肥料、農業資材等
医薬品 153 139 110 医家用医薬品、放射性診断薬等
その他 7 4 -15  
全社 1 0 -0  
合計 339 256 247  

ーーー

東ソー

各部門とも大幅減益となり、VCMやPVCを含む基礎原料は再度赤字に転落した。

ナフサなど原燃料価格の急騰や、イソシアネート・チェーンの構築など積極投資による償却費の増大、隔年大型定修による修繕費の増大などが収益を圧迫した。

  06/1Q 07/1Q 08/1Q  
石油化学 11 33 15 オレフィン製品、LDPE、HDPE 及び樹脂加工製品、機能性ポリマー等
基礎原料 -31 2 -10 苛性ソーダ、VCM、塩化ビニル樹脂、無機・有機化学品、セメント等
機能商品 62 99 22 無機・有機ファイン製品、計測・診断商品、水処理装置、電子材料(石英ガラス、スパッタリングターゲット)、機能材料、ウレタン原料等
サービス 5 5 8 運送・倉庫、建設・修繕、検査・分析、情報処理等
合計 47 139 35  
 

ーーー

旭化成

ケミカルズの営業損益は前年同期比 -81億円となった。
ホームズは受注戸数が -7.9% となっている。

  06/1Q 07/1Q 08/1Q 増減
ケミカルズ 64 172 91   -81
ホームズ -37 -28 -37    -9
ファーマ 47 46 90   44
せんい 5 17 12    -5
エレクトロニクス 64 58 45   -12
建材 10 11 3    -7
その他 15 4 13    9
全社 -16 -20 -23     -3
合計 152 260 194   -65

ケミカルズ損益差 内訳
  数量差 
-14
  売価差  55 (うち為替差
-61、価格差 +116)
  コスト差 
-122

ーーー

信越化学

各社が減益となるなかで、信越化学のPVCを含む有機・無機化学品部門は増益となった。

PVCについては、国内事業は原料価格高騰の影響を受けたことに加え需要が低迷し低調であったが、シンテックは、米国内での住宅建設の低迷により需要が減少し、同業他社が大幅な減益や赤字となる中、輸出にも注力しフル操業を継続し堅調だった。

  06/1Q 07/1Q 08/1Q  
有機・無機化学品  252 244 275 PVC、シリコーン、メタノール、クロロメタン、セルロース誘導体、か性ソーダ、金属珪素、ポバール
電子材料  245 388 411 半導体シリコン、電子産業用有機材料、電子産業用希土類磁石、フォトレジスト製品
機能材料その他  75 63 75 合成石英製品、レア・アース、一般用希土類磁石、液状フッ素エラストマー、ペリクル、技術・プラント輸出、商品の輸出入、建設・修繕、情報処理ほかサービス
全社  2 0 -2  
合計  573 695 758  

2008/8/9 日本スチレンモノマー解散

新日本製鐵は7月29日、連結子会社の日本スチレンモノマーを6月30日に解散したと発表した。

日本スチレンモノマーは1988年に新日鐵化学(65%)、東ソー(35%)のJVとして設立された。
新日鐵化学大分製造所内に1990年9月に能力200千トンのSMプラントをスタートさせ、1995年8月に現在の232千トンに増設した。

原料エチレンは昭和電工から供給を受け、ベンゼンは新日鐵化学が供給している。
製品は出資比率で引き取っており、損益ゼロで運営していた。

業績推移(単位:百万円)
  '06/3 '07/3 '08/3
売上高  28,838  33,954  38,886
経常利益     1     1     0
当期純利益     0     0     0

新日鐵化学と東ソーは本年3月5日、合弁事業を3月末で解消すると発表した。

東ソーは1998年10月に四日市のSMプラントを停止後、日本スチレンモノマーからの引取りのみでSM事業を行ってきたが、原料は全て他社品で(東ソーとしてはエチレンは購入ポジションで、立地は別として供給余力はない)、数量も年間8万トン程度のため、「選択と集中」を進める中で、SM事業からの撤退を決めた。

新日鐵化学は東ソー保有株式を買取り、100%子会社とした。
大分製造所には自社の190千トンプラントがあり、合計2系列422千トン(業界4位)となる。
「中国市場に近いというプラント立地条件も最大限いかした事業展開で、今後も強固な事業基盤の構築を目指す」とした。

新日鐵化学はその後、グループ一体運営による業務効率化を図るため、4 月に設備等資産を取得し、6月末をもって同社を解散することとした。

ーーー

新日鐵化学は当初、戸畑に18千トンのSMプラント及びPSプラントを持っていた。(その後、SMを停止)
1982年に新日鐵大分に150千トンのSMプラントを稼動させた。(のち190千トンに拡大)

一方、東ソーのSM事業は1971年に中部ケミカル(新大協和石化、大日本インキ化学、協和発酵、日立化成のJV)が 四日市に 80千トンプラントを建設したのに始まり、中部ケミカルの新大協和石化への吸収、90年の新大協和石化の東ソーへの吸収合併で東ソー事業となった。
自社で誘導品を持たない唯一のメーカーで、大日本インキ化学のPS向けに供給していた。

 

産構法終了に伴い、両社はそれぞれSM の増強を計画、1988年に合弁で日本スチレンモノマーを設立した。
(当時は大型化のため、共同生産するのが一般的であった。)

工場は1990年に生産を開始したが、1992年に昭和電工が参加した。

昭和電工は住友化学との合弁の日本ポリスチレン工業でPS事業を行っていたが、原料のSMは同社が5.24%出資する日本オキシランから購入していた。(当時の日本オキシランの他の株主はARC0 50%、住友化学 44.76%) 

昭和電工は工場が隣接し、エチレンを供給している日本スチレンモノマーに出資し、自社枠のSMを日本ポリスチレン工業に供給することとしたもの。

注)日本ポリスチレン工業は住友化学と昭和電工のJVで、1995年に実質解散
  現在の日本ポリスチレン鰍ヘ住友化学と三井化学(当時は三井東圧)の事業統合会社で、1997年設立。

しかし、昭和電工は1994年にPS事業を旭化成に譲渡し、SM事業(日本スチレンモノマー、日本オキシラン)からも撤退した。

 

東ソーは1998年9月末に四日市事業所のスチレンモノマープラント(130千トン)の操業を停止した。

アジア各国でSMプラントの新増設が相次ぎ、また、経済混乱の影響などで需給バランスが崩れ、市況は大幅に下落しており、事業収益改善の可能性が極めて困難であると判断した。

しかし、日本スチレンモノマーでの事業を引き続き継続するとした。

本年3月の日本スチレンモノマー株式売却で、SM事業から完全に撤退する。

ーーー

日本の会社別 SM能力(200712末時点)は以下の通りとなる。(単位:千トン/年)

会社名  能力 備考
旭化成   678 水島
出光興産   550 千葉 210、徳山 340
日本オキシラン(住友化学)   520 千葉412、千葉スチレンモノマー 270x40%
新日鐵化学   422 大分2系列
電気化学工業   402 千葉 240、千葉スチレンモノマー 270x60%
三菱化学   371 鹿島
太陽石油化学   335 宇部(三井化学から買収)
合計  3,278  

過去の能力推移グラフ 2008/3/26  主要石油化学製品生産能力調査

スチレンモノマー業界の変遷 2006/4/22  スチレンモノマー業界 


2008/8/11 ニッケル世界最大手Norilsk NickelKGB出身者がトップに 

ニッケル世界最大手のNorilsk Nickelは8月8日の取締役会で、KGB出身のVladimir I. Strzhalkovsky 前ロシア連邦観光局長官の最高経営責任者(CEO)就任を承認した。

同社は7月7日の取締役会(下記のRusal を新たな株主として迎えた初めてのもの)で、Denis Morozov 社長が解任され、大株主のInterrosのオーナーのVladimir Olegovich Potaninを会長に、Interros副社長のSergei BatekhinCEOに選出したばかり。

短期間のトップ交代は、同社の29.78%を保有するInterrosVladimir Potanin と、本年4月にNorilsk Nickel の元社長Mikhail Prokhorov から〔25%+1株〕 を取得したロシアのアルミ大手Rusal のオーナーOleg Deripaska との争いの結果で、Rusal は将来的にNorilsk との完全合併を含むさまざまな選択肢を検討していると表明し、「市場の環境が好ましければ、われわれは追加的な株式取得を検討する」と述べている。

Potanin はこれに危機感を持ち政府を味方につけたもの。
政府の強硬派はエネルギーに続き非鉄などの産業へ利権拡大を目指しており利害が一致した。

Rusal は、専門家が必要として、今回のStrzhalkovskyCEO選出に反対したが、押し切られた。
Norilsk Nickel Rusal の合併は遠ざかったと見られている。

ーーー

Norilsk Nickel はシベリア北部のNorilsk を拠点に作られた国営の非鉄金属企業。
北シベリアの
Taimyr半島における銅・ニッケル鉱床の探鉱は1920年代に開始され、開発はソ連の連邦保安院の保護の下、政治犯や囚人を利用して1935年に開始された。
1953年までには、ソ連邦生産の35%のニッケル、12%の銅、90%の白金族金属を
Norilsk のコンビナートから生産されるようになった。



同社はソ連崩壊後の1993
年に民営化された。民営化にあたっては当時「オリガルヒ」と呼ばれた新興の寡頭資本家の一つOnexim Groupが株式の過半数を握って支配権を得た。 (これを同グループの二人、Vladimir Potanin Mikhail Prokhorov が分け合った)

その後のパラジウムとニッケル価格の上昇による増収により、投資が可能となった。

現在、
Polar Division はTaimyr半島でニッケル・銅・パラジウム・プラチナ・金を生産、Norilsk などのプラントで溶錬や製錬を行なっている。
Kola Division はKola半島の4鉱山でニッケル・銅・パラジウム・プラチナ・金を含む鉱石を掘っている。
100%子会社のPolyusは、クラスノヤルスク地域で金を含む酸化鉱と硫化鉱を採掘している。

Norilsk Nickelは2003年にカナダの鉱山会社Stillwater Mining Companyの55.4%を買収。さらにフィンランド、オーストラリア、南アフリカ、ボツワナの非鉄金属企業を次々に買収し、多国籍企業になった。

2007年にはニッケルで世界第10位のカナダのLionOre Mining International Ltd. を48億ドルで買収した。
ニッケルと金の採掘業者で、豪州、ボツワナ、南アで活動している。

同社の売上高内訳(2006年ベース)は以下の通りとなっている。

 ニッケル  54%
 銅  24%
 パラジウム  11%
 プラチナ  10%
 金   1%

Norilsk Nickel によると、2007年の同社の世界シェアは以下の通り。
(下記の表と若干異なる)

 ・ニッケル   18.8%
 ・パラジウム   46.3%(うちStillwater 3.1%)
 ・プラチナ   12.0% (うちStillwater 1.0%)
 ・銅    2.7%
     
シェア(石油天然ガス・金属鉱物資源機構まとめ:日経記事より)
ニッケル鉱石 Norilisk Nickel (ロシア)  20.6%
Vale do Rio Doce (ブラジル)  17.6
BHP Billliton (英豪)  10.9
Xstrata (スイス)   5.7
中国 (国全体の生産量)   4.8
5社合計  59.6
プラチナ鉱石 Anglo Platinum (南アフリカ)  40.9
Impala Platinum (南アフリカ)  22.2
Norilisk Nickel (ロシア)  12.7
Lonmin PLC ()  12.0
Vale do Rio Doce (ブラジル)   2.2
5社合計  90.0

Potanin会長は鉄鉱石、石炭、ウランなどへの多角化をしたいとしており、株式の50% がロシアの手に残ることを条件に合併もありうるとしている。

ーーー

20084月、ロシアのアルミ大手Rusal が、Onexim Group (Norilskの元社長Mikhail Prokhorov が所有)からNorilsk Nickel 株の25%+1株 の購入取引を終了した。(現在の持ち株は25%+2株)

2007年12月に、優先権をもつPotanin所有の持株会社Interrosが、Onexim Group保有のNorilsk Nickel 株を購入しないと発表、この結果、さきに締結していたRusal との合意が有効となった。

対価は Rusal の株式14%および現金(およそ70億ドルとされている)で、この結果、Rusalの保有比率は、Oleg Deripaska が56.76%、Prokhorov が14%、Glencore10.32%Sualの元株主が18.92%となった。

Rusal については 2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収

8月5日、Onexim Group がNorilsk Nickel の株式の16.66%を取得手続中で、これをPotaninInterros に売却する意向であると発表した。
取引は11月15日までに完了しなければならず、
Potaninが100億ドルでこれを購入する準備があるとされている。

これが実現すれば、Interrosの持ち株は30%を超えることになり、法律に則って他の株主に買取りオファーを行わなければならなくなる。
また、
Interrosがすでに30%以上を保有しているにも関わらず買取りオファーを行っていない可能性もある。

このためRusal Interrosに詳細情報提供を求めるとともに、連邦金融市場庁に対して、株主構成比率に関する調査を行うよう要請した。

これに対し、連邦金融市場庁は、InterrosNorilsk Nickel の株式の30%以上を保有しているという情報はないとしている。

ーーー

今回の取締役会の前日、Rusal は声明を発表、過去数年、 Vladimir Potanin の Interros Norilsk Nickel を牛耳ってきたが、その間、業績は低迷したと批判、 StrzhalkovskyCEO選任についても、頻繁にCEOを交代し、しかも鉱業の知識も経験もない人間を選ぶのはおかしいとして反対した。

これに対し Norilsk Nickel は、業績は上がっており、批判は的を得ていないと反論している。

ーーー

Rusal は法的措置も含め、今後も争うとしており、混乱が続きそうだ。


2008/8/12 SABICArabian Industrial FibersPP進出

LyondellBasell 86日、SABIC関係会社のArabian Industrial Fibers IBN RUSHD)が同社のSpheripol PP 技術を採用したと発表した。

IBN RUSHD1993年にSABIC 70%、その他1530%JVとして設立され、Yanbu に芳香族→PTA→ポリエステルのコンプレックスを1995年から稼動させている。

今回、初めてPPに進出し、Yanbu に525千トンのプラントを建設するもので、2012年のスタートを目指す。

付記

2008年10月、Lummus Technology IBN RUSHDからプロパン脱水素設備の技術供与、基礎設計の契約を受けた。

ドイツのSud-Chemie の最新の触媒 CATOFIN を使うもので、能力は65万トン、1系列で世界最大となる。

ーーー

同社のYanbu のコンプレックスは3つのプラントから成る。

 Aromatics Plant

UOPCyclar process LPGから直接芳香族を生産する。
Paraxylene Benzene がメイン。

 PTA Plant

Paraxylene と酢酸からPTAを生産する。199910月稼動で、Tecnimont が建設を担当した。能力は35万トン。

20055月に酢酸工場が稼動した。SABIC技術で、能力は34千トン。

 Polyester Plant

PTAEG(エチレングリコール)でPolyester を生産。
EGは同じYanbuにあるYanbu Petrochemical YANPETSABICExxonMobil 50/50JVでエチレン、プロピレン、EGPEPPを生産)から供給を受ける。

以下の製品を生産している。合計生産能力は
11万トン。
 ・
Staple fiber for textiles
 ・Filament yarn
 ・Carpet fiber
 ・Bottle grade resin

ーーー

詳細は明らかでないが、同社は借入金が増大し(酢酸事業も影響)、赤字となっていた模様で、昨年末に抜本策を決めている。

先ず、2007年10月末の臨時株主総会で戦略的計画を承認した。
おそらく、ここでPP進出が決まったと思われる。

2007年12月1日の臨時株主総会で、資本金を35.5億SAR(1SARは約29円) から85.1億SARへの大幅増資し、General Investments Fund (GIF) とSABICからの借入金を資本金に切り替えること、その結果、GIFを株主に加えることを承認した。

この結果、これまで出資比率 70%であったSABICは45.19%となり、GIF 33.51%、残り15社(下記)が21.3%となった。

Saudi Arabian Fertilizer Company 3.70%
Saudi Pharmaceutical Industries and Medical Appliances Corporation (SPIMACO)
 4.17%
Arab Petroleum Investments Corporation (APICORP)
 3.45%
Gulf Investment Corporation
 1.95%
Saudi Industrial Development Company
 1.56%
General Organization for Social Insurance
 1.73%
United Gulf Industries Corporation (BSC)
 0.9%
National Industrialization Company (TASNEE)
 0.87%
Arabian Industrial Development Company (NAMA)
 0.78%
Saudi Advanced Industries Company (SAIC)
 0.62%
National Industrial Gases Company (GAS)
 0.69%
Saudi Industrial Development Company (TATWEER)
 0.11%
Al-Hasa Development Company
 0.42%
Alujain Corporation
 0.29%
Al-Madina Industrial Investment Company (MIIC)
 0.06%


2008/8/13 オーストリアのOMV、ハンガリーのMOLの買収をギブアップ

オーストリアの石油会社OMVは昨年9月にハンガリーの石油会社MOLの買収の意向を発表、その後、MOLが自社株買いに動くなど、徹底抗戦の構えを示していた。

OMV86日、欧州委員会がこの買収に反対したことを理由に、買収提案を引き下げた。

ーーー

OMV Aktiengesellschaft はオーストリアの製造業では最大の上場企業。中欧での最大の石油・ガス企業で、5大陸、18カ国で石油の採掘生産を行っている。

1994年にノルウエーのStatoil とフィンランドのNeste の石化事業を統合して設立されたBorealis に35%出資している。
Borealis の残り65%は、アラブ首長国連邦IPICAbu Dhabi National Oil 50%Abu Dhabi Investment AuthorityNational Bank of Abu DhabiのJVが50%出資)が出資している。

オーストリアのSchwechat では、2006年にOMV がオレフィンを、Borealis がLLDPEとPPの新増設を行い、欧州の一大石化基地とした。

    2006/11/10 OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強

Borealis Abu Dhabi Abu Dhabi National Oil CompanyとのJVのAbu Dhabi Polymers (Borouge)を設立し、石化事業を展開している。

    2006/6/2 湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)

ーーー

MOLはハンガリーの石油会社から中欧最大の企業の一つとなった。

 ・MOLは化学会社TVKの84.86%を所有。
    エチレン 660千トン、LDPE 97千トン、HDPE 420千トン、PP 280千トン

 ・スロバキアの石油会社 Slovnaft Plc.を所有

 ・2003年にクロアチアの石油・ガス会社 INA の25.0%を買収、同社と戦略的提携を行なっている。

付記

2009年9月、Slovnaft はスロバキアのBratislava に22万トンのLDPEプラントを建設するため、LyondellBasell Lupotech T 技術を導入した。


ポーランドのPKN Orlen 2005年にMOL との統合交渉を開始したが、政治化した結果、失敗に終わっている。

   2008/7/29 PKN Orlen、ポーランド初のPTAプラント建設

ーーー

OMVはベルリンの壁の崩壊時点からMOLを狙ってきた。
ロシアのビジネスマンが買った株を買取ったりしている。

昨年9月にOMV230億ドル(約25千億円)の買収計画を発表した。

MOLとの統合でもっと効率的なダウンストリームビジネスを作ることを狙った。
効率の向上、企業レベル及び上流事業、ガス・石油化学事業での最適化により、税引前で年間
4億ユーロのシナジー効果が出ると主張している。

これに対してMOLは、今回のOMVの発表は正式のTOBでないことを株主に伝え、OMVの提案はMOLの事業と将来性を低く評価していること、合併が年間4億ユーロのシナジー効果があるとするが、合併や独禁法上で必要とされる事業売却によってマイナス効果もあるとして、同社としてはこれに反対すると述べた。
OMVの動きに対抗し、MOLは自社株の40%を買い戻した。

ハンガリー政府も外国の国営企業がハンガリーの戦略的企業を買収するのを防ぐ目的で、「OMV法」と呼ばれる法律を通した。
OMVはオーストリア政府とアブダビ政府のファンドであるIPICがコントロールしているため、対象となる。)

欧州委員会はハンガリー政府に対し、この法律は資本の自由な移動を不当に抑えるもので、EU法に違反すると伝えた。
TOBに関して面倒な手続きを必要としており、政府がエネルギー会社の役員を1名指名できるのを問題にした。

MOLは民営化されているが、政府所有の黄金株があること、議決権が10%に制限されていることなど、敵対的買収に対する防御手段を持っており、OMVは欧州委員会がこれらの障害も除去することを求めた。

その後、両社はいろいろな手段で争いを続けた。

ーーー

6月16日、欧州委員会はOMVによるMOLの敵対的買収に関して反対意見書を出した。

OMVはオーストリアのSchwechat 製油所を持つが、買収により、ハンガリーとスロバキア(Slovnaft 社)の2つの製油所を手に入れることとなることを問題とした。

OMVはこれに対して異議を申し入れ、いろいろの国の給油所の売却、製油能力の集中についての欧州委員会の懸念を除くため第三者が能力をシェアする「共用製油所」/コストセンターモデル案など、妥協条件を出したが、欧州委員会はこれを受け入れなかった。

OMVでは、これ以上の妥協は経済的戦略的合理性を損なうとし、今回の買収をギブアップ、欧州委員会への申請を取り消した。

しかし、今までに取得した
MOLの株式20.2%を手放す考えはないとしている。
20.2%の持ち株を最大限利用するいろいろなオプションを考える。)

また、MOLの株主として、コーポレート・ガバナンスの原則確立を求め続けるとし、MOLに対する訴訟は撤回しないとした。

 

MOLOMV提案の合併は競争上問題であり、「価値破壊」的で、経済的にも戦略的にも意味はないと述べ、今後も株主価値の保護に注力するとしている。


続く

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