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2009/7/27 最近の石化の生産、出荷状況

6月の石化製品の生産や出荷実績が発表された。

1)エチレン

6月は三菱化学の鹿島1号機と水島、三井化学の千葉の2社3プラントで定修があったため生産量は前年比3.0%減の555,400トンとなった。

平均稼働率は95.6%となり、昨年7月以来11ヶ月ぶりに採算ラインとされる95%を上回った。
昨年の下期以降、稼働率は下落が続いていたが、この3ヶ月上昇が続いている。

注 能力は定修なしケース

 

2)ポリオレフィン

いずれも年初には輸出が増大したが、最近は輸出は若干減少している。(なお高水準にある)

しかし、国内出荷が6月に前月比2桁の増加となり、内需込みでほぼ前年並みにまで回復した。

2)PS、ABS、SM

同様に、PS、ABSともに内需は増加している。

PSは安価な輸出を控える姿勢をとっているが、海外進出メーカー向けが中心のABSの輸出は増加している。

SMの生産増は輸出の増加に依存するところが大きい。

ーーー

ポリオレフィン、スチレン系を含め、6月の内需増が今後も続くのか、又は一時的なものなのか、今後が注目される。

石化協会長は「中国の内需拡大が牽引役だが、中国の対米輸出が回復しておらず、先行きは慎重にみる必要がある」としている。

   参考  2009/6/29 中国の現状

 

3)PVC、VCM

PVCは住宅着工件数の減少が続いている影響などで、内需は減少を続けている。(6月は若干増加)

本年に入り増加に転じた輸出も、このところ減少に転じており、余剰能力は拡大している。

VCMの輸出も同様。


2009/7/28 塩野義製薬、米の製薬会社買収を取り止め

塩野義製薬は518日、米国の関連会社 Sciele Pharma, Inc.(サイエル・ファーマ)を通じて、米国で疼痛とその関連疾患に対する治療薬の導入、開発および販売に特化した医薬メーカーVictory Pharma, Inc.を買収するで合意したと発表した。

塩野義製薬は2008年10月、米ナスダック上場の中堅製薬会社Sciele Pharmaを総額で14億2400万ドルを投じ、完全子会社にした。
全米に約800人の従業員を持つサイエルを傘下に収め、世界最大の医薬品市場である米国での販売体制を強化する。

付記
塩野義製薬は
Sciele Pharma を2010年1月11日付けで、Shionogi Pharma, Inc. に改称した。

塩野義は米国子会社を通じ抗肥満薬やアトピー性皮膚炎治療薬などの新薬候補物質を開発、2012年前後に発売を期待できる薬が3種類ある。米国での売 り上げを最大化する販売網の構築を行うもの。

サイエル社では「この買収は製品ポートフォリオの拡大戦略を実行する重要な過程であり、また、買収により、米国における疼痛治療薬市場への速やかな展開が可能になると共に、今後も疼痛治療薬の導入を積極的に進めていくことにより、塩野義製薬の重点領域である疼痛領域へのサイエル社の貢献を確実なものにしていきたい」とした。

塩野義製薬は、疼痛領域を重点領域の一つと位置づけ、研究開発に積極的に取り組んでおり、今後、開発中のオピオイド副作用緩和薬および今後臨床開発を予定している化合物のグローバルな開発をより一層加速させていくとしている。

Victoryの主力製品であるNAPRELANは、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)である塩酸ナプロキセンで唯一の一日一回投与を可能とする徐放製剤であり、他の製剤に比べ消化器等への安全性に優れた製剤。

 

しかし同社は7月10日に、この買収契約を解消することで双方共に合意したと発表した。

契約解消についての詳細は開示せず、「本買収契約が締結された時点では予期し得ない事態が買収契約締結後に生じたことによるもの」としている。

買収のための費用は一切支払っておらず、今回の契約解消に伴う、サイエル社および塩野義製薬の今年度の業績への影響は軽微としている。

ーーー

Victory Pharma 疼痛治療薬市場に特化したスペシャルティ・ファーマ。
 創業
2004年
 代表者 President and CEO Matt Heck
 本社所在地
米国カリフォルニア州サンディエゴ
 従業員数
182名(MR120名、2009年5月1日現在)
 売上高
年間57百万ドル(2008年)
 製品
販売中の製品は、NAPRELAN(R) を中心とする疼痛治療薬
      
NAPRELAN(R) (naproxen sodium) 除放性疼痛治療薬 
       
Fexmid(R) (cyclobenzaprine hydrochloride) 筋肉けいれん治療薬
      
XODOL(R) Hydrocodone bitartrate/ Acetaminophen) 疼痛治療薬
      
Dolgic(R) Plus (Butalbital/ Acetaminophen/Caffeine) 緊張性頭痛治療薬

     開発中の製品としてはオピオイド副作用緩和薬(MGX001)と、めまい・吐き気治療薬(MGX006)があり、
     後者はFDAの認可を受けて2010年上半期にも発売を期待するとしている。

ーーー

「予期し得ない事態」が何であるかは全く不明だが、米紙は次の点を可能性として挙げている。

同社の販売中の製品4品目のうち、2品目(XODOLDolgic Plus)にアセトアミノフェンが含まれている。

アセトアミノフェンはMcNeil 社が鎮痛と解熱効果を見出し、1955年に解熱鎮痛薬「小児用Tylenol」 を発売した。
1959年に Johnson and Johnson がMcNeil を買収した。

このアセトアミノフェンに関しては、過量服用に伴う重篤な肝障害が問題となっており、米FDAは6月29日・30日の2日にわたって、35人の専門家を集めて、アセトアミノフェンの安全対策に関する諮問委員会を開催した。

同委員会では、1日及び1回の量の制限、他の成分を配合したOTC及び処方箋製品の取り止め、他の成分を配合した処方箋製品販売の場合の条件などの勧告をまとめた。

三級指定麻薬であるHydrocodone との合剤(同社のXODOL )などは事実上の販売禁止を求めた。

10代の若者の間でHydrocodone 中毒者が増えており、これらの処方薬を悪用して、多量の合剤を服用し、結果としてアセトアミノフェンによる肝不全を招いていると言われている。

この勧告について、業界団体のConsumer Healthcare Products Association は「アセトアミノフェン過量服用と関連がある有害事象は処方薬によるものが大部分であり、成人が通常に使用する場合には安全である。私たちは、過量服用防止のために、ラベルの変更とともに教育による介入が適切だと考えている。」 としたステートメントを発表すると共に、適正使用のための包括的な教育プログラムの開発を行っていることを明らかにしている。

合併取り止め発表はこの委員会の直後であり、同社の4品目のうちの2品目が勧告対象となったのが響いた可能性があるとしている。


2009/7/29  SABICの第2四半期業績

SABICは719、第2四半期の業績の速報を発表した。

純損益は18SRとなり、第1四半期の974百万SRの赤字からは黒字転換したが、前年同期比では 76%もの下落となった。
本年上半期の純損益は、前年比で94%の下落となった。
(1サウジリアルは約25円)

但し本年第1四半期の営業損益、純損益には GE Plastics のノレン償却 1,181百万SRを含む。
企業価値が減少したと判断した。

2009/4/23 SABICの第1四半期の損益、赤字に 

SABICは2007年8月にGE Plastics を116億ドル(+借入金)で買収したが、ノレン代は29.6億ドル(111億SR)であったとされる。Basellとの競争で買収価格が引き上げられた。

SABICでは第2四半期にはノレン償却はないとし、もし状況が悪化すれば、公認会計士が第3四半期にノレン償却を求めるだろうとしている。

            単位:百万SR
  09/2Q 09/1Q 前月比   08/2Q  前年比      
Gross Profit 6,218 3,622 2,596 : 14,853 -8,635 -58.1%
ノレン償却 0 -1,181          
Operating Income 4,080 381 3,699 : 12,141 -8,061 -66.4%
同上(除 ノレン償却) 4,080 1,562 2,518 : : : :
Net Icome 1,800 -974 2,774 : 7,548 -5,748 -76.2%
 
  09/上 08/上  前年比
Gross Profit 9,840 28,642 -18,802 -65.6%
Operating Income 4,461 23,031 -18,570 -80.6%
同上(除 ノレン償却) 5,642 23,031 -17,389 -75.5%
Net Icome 826 14,472 -13,646 -94.3%
 

  注 09/1QのOperating Income はノレン償却を除いたもの。

第2四半期の純損益の前年同期比の大幅減は売価ダウンによるもの。第1四半期からの増益は製品により価格が回復したため。

SABICによると、世界的な金融危機、経済危機のなかで、生産販売活動そのものは高水準を維持している。
本年上半期の生産数量は2850万トンで前年比で1%の増となっており、販売数量は2290万トンで同じく2%の増となっている。

ーーー

同社では間もなくYANSAB (新設)と SHARQ(増設)が稼動する。

YANSAB   SHARQ(増設)
Ethylene  1,300
Propylene   400
BTX   250
Buten-1,-2   100
MTBE    25
LLDPE   500
HDPE   400
Ethylene Glycol   770
 
Ethylene  1,300
LLDPE    400
HDPE   400
Ethylene Glycol   700

YANSABSABIC 55%、IBN RUSH & TAIF 10%、一般公開 35%

またSinopec の天津計画への参加も決まった。

2009/7/13 中国、シノペック天津石化計画へのSABICの参加を承認

 ーーー

同社の連結対象会社は以下の通り。(社名のリンクは同社のホームページ)

  出資比率   備考
石油化学)     石油化学
 Petrochemya 100.00  石化  
 Jubail United 75.00  石化  
 Yansab 55.95  石化  
 Yanpet 50.00  石化 ExxonMobil
 Sadaf 50.00  石化 Shell
 Sharq 50.00  石化 ブログ サウジ石油化学
 Kemya 50.00  石化 ExxonMobil
 Saudi Kayan 35.00  石化 ブログ
 Saudi European Petrochemical (Ibn Zahr) 80.00  PPMTBE  
 Arabian Industrial Fiber (Ibn Rushd) 47.26  合繊原料・合繊 ブログ
 National Industrial Gases 70.00  産業ガス  
 Saudi Methanol (Ar-Razi) 50.00  メタノール ブログ 日本サウジメタノール
 National Methanol (Ibn Sina) 50.00  メタノール ブログ Hoechst
 SABIC Luxembourg 100.00    
  子会社 SABIC Innovative Plastics    (100)  石化 ブログ
       SABIC Europe    (100)  石化 ブログ
(肥料)      
 National Chemical Fertilizer 71.50    
 Al-Jubail Fertilizer 50.00    
 Saudi Arabian Fertil.izer 42.99    
Metal      
 Saudi Iron and Steel (Hadeed) 100  鉄鋼  
(その他)      
 SABIC Industrial Investments 100    
 SABIC Asia Pacific 100    
 SABIC Antilles 100    
 SABIC Sukuk (SUKUK) 100    
 SABIC Capital 100    

何故か連結対象に含まれていないが、他に下記の子会社がある。
   
National Plastic (IBN HAYYAN) (塩素、VCM、PVC)
   
Ibn Hayyan Plastic Products (TAYF) (可塑剤、加工製品)


2009/7/30  韓国でPOSCOSK Energy が石炭ガス化事業

韓国のPOSCOSK Energy は、石炭から合成天然ガス(SNG)、ガソリン、化学品の製造を行うためのノウハウ創出で協力する覚書を締結した。韓国政府もこれを支援する。

POSCO1968年に国営の浦項綜合製鉄として設立された。
日韓基本条約に伴う対日請求権資金などによる資本導入と、 旧八幡製鉄、富士製鉄、日本鋼管の3社からの技術導入により、慶尚北道浦項市に浦項総合製鉄所を建設した。現在は光陽製鉄所が主要拠点になっている。
2000年に完全民営化された。

両社は合計3.35兆ウオン(27億ドル)を投じて、韓国で初めて、石炭から合成天然ガス、化学品、ガソリンを生産する。
韓国政府も研究開発を支援するため、
250億ウオンを用意している。

POSCO2013年までに1兆ウオンを投じて、技術開発を行い、光陽製鉄所に石炭を原料に年産50万トンの合成天然ガス工場を建設する。同社ではこれを 2000億ウオン分の輸入LNGを置き換える。

SK Energyは先ず2013年までに5500ウオンを投じ石炭液化技術の開発を行い、蔚山に年産20万トンの化学品(メタノールや水素など)の製造工場を建設し、ナフサ代替とする。

更に2014年から2018までに18000ウオンを投じ、年産630バレルのガソリン製造工場を建設する。
これは韓国の
2008年の輸送用燃料需要の2.5%に相当する。
この工場は海外の低コストの炭鉱の近くに建設する。

政府では、クリーンな石炭技術が国のエネルギー安全保障を高め、環境保護を促進すると期待している。

 


2009/7/30 2009年第2四半期 国産ナフサ基準価格

財務省が730日に発表した輸入通関速報によると、6月のナフサ輸入価格は33,544円/kl となった。また、5月の金額も修正された。

この結果、2四半期のナフサの平均輸入価格は 31,283円/kl となり、これを基にした国産ナフサ基準価格は33,300円/kl となる。

計算根拠は以下の通り。(単位:円/kl)

  輸入平均   基準価格     修正後
輸入平均   基準価格
4Q平均  50,162  52,200  50,047  52,000
09/1  21,462      21,500    
09/2  23,717      23,836    
09/3  28,632      28,632    
1Q平均        24,970  27,000
09/4        29,628    
09/5  30,753      30,783    
09/6        33,544    
2Q平均        31,283  33,300

基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)


2009/7/31 化学工業と温室効果ガス 

世界の化学工業を代表する国際化学工業協会協議会(
ICCAInternational Coucil of Chemical Associations) はこのたび、

 "Innovations for Greenhouse Gas Reductions
   A life cycle quantification of carbon abatement solusions enabled by the chemical industry"

と題する報告書を発表した。 
  
http://www.icca-chem.org/ICCADocs/ICCA_A4_LR.pdf

気候変動という地球規模の課題について、グローバルな視点で化学品の低炭素化社会への貢献を定量的に検証した。
化学品の製造過程では温室効果ガス(GHG)が排出されるが、同時に、化学品の使用によりGHGの著しい削減が可能となるとしている。
化学品のライフサイクル全体にわたるGHG排出量と、化学品を使用した8分野102製品について化学品使用の場合と化学品を使用しない場合のライフサイクル全体にわたるGHG排出量の差を計算した。

米国、欧州、日本のメーカー、化学団体が作業に協力、計算をMcKinsey & Co. に委託した。
LCAはすべてOko Institutにより外部検証が行われた。

対象製品
 輸送:自動車軽量化、潤滑剤、摩擦低減、エンジン効率、航空機軽量化、船舶燃料軽減、ほか
 断熱:建築物断熱、冷蔵庫断熱、ほか
 建築物:建設資材、配管、窓、ほか
 農業:栄養補助飼料、肥料・農薬、保存、食糧生産効率、ほか
 包装:食品包装、買物袋、ほか
 消費者製品:電子部品、家庭用品、作業用ウエア、繊維、低温合成洗剤、ほか
 電力:地域暖房、太陽光発電、風力発電、ほか
 照明:電球型蛍光灯、LED照明

2030年では、現状延長の場合で化学品のGHG排出量はCO2換算65億トンだが、化学品の使用によりネットで137.5億トンの排出減になり、最大努力ベースでは50億トンの排出に対し、ネットで184.5億トンの排出減になる。


1)化学品のライフサイクルGHG排出量 (2005年ベース)

  CO2換算
  億トン
原燃料採取    3
生産 燃料消費    6
外部での発電    8
製造中の排出    7
小計  (21)
廃棄    5
High GWPガス*    4
合計   33
      
2030年(現状延長)   65
2030年(最大努力)   50

* Global Warming Potential Gases  主に最終利用者により排出される。


2)化学品使用によるGHG排出削減(CO2換算 億トン)

  化学品の
GHG排出
化学品使用
による削減
ネット
削減
肥料・
農薬
除外
具体例
化学品使用効果の計算可能分   14.5   74.6  60.1  44.1  
同上 計算困難分   10   10   −  − 食品保存料、石油精製の触媒
代替品存在せず計算不能分    8.5    0  -8.5  -8.5 溶剤、産業ガス、医薬原体
2005年 合計   33.0   84.6 (68.6)  51.6  35.6  
  ↓          
2030年現状延長   65   202.5 (177.5)  137.5  112.5  
2030年最大努力   50   234.5 (209.5)  184.5  159.5  

   対比困難分は±0 と想定、代替品が存在しない場合は削減をゼロとした。
   

肥料・農薬については、それらを使用しない場合は作物の収量が大幅に低下し(計算では50%減とした)、同じ作物量の生産には耕地面積を倍にする必要がある。これによる植生と土壌からの固定炭素の放出を計算すると、GHG排出削減効果は2005年で16億トンと大きい。

これについては不確実性とさまざまな異論の存在のため、この削減効果を含める場合と除外する場合の計算を行った。

上表のGHG化学品使用による削減の( )は、肥料・農薬の効果の除外ケース

肥料・農薬の効果を除外した場合でも、削減比率(排出量:削減量)は以下の通り、大きい。
    2005年 1:2.1
    2030年現状延長 1:2.7
    2030年最大努力 1:4.2

3)ネット削減の内訳 (CO2換算 億トン)

  2005年   2030年
現状延長
2030年
最大努力
断熱  24.0     56.0   68.0
照明    7.0     34.0   41.0
バイオ燃料   −     5.0   10.0
包装    2.2     4.5   3.0
船舶防汚   1.9     4.0   4.0
合成繊維   1.3     3.0   3.5
自動車軽量化   1.2     2.5   3.0
低温合成洗剤   0.8     1.0   1.0
エンジン効率化   0.7     1.5   1.0
配管   0.7     1.0   1.0
風力発電     0.6     4.5   7.0
CO2回収・貯留   −     −   6.0
地域暖房    0.6     0.5   0.5
グリーンタイヤ    0.4     1.0   1.0
太陽光発電    0.4     7.0   20.0
その他    2.3     4.0   2.0
肥料及び農薬   16.0     25.0   25.0
小計   60.1    154.5  196.5
代替品なし  -8.5    -17.0  -12.0
合計  51.6    137.5  184.5
         
肥料及び農薬除外  35.6    112.5  159.5

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