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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2007/12/1 欧州委員会、板ガラスカルテルに制裁金

欧州委員会は11月28日、日本板硝子、旭硝子、米・Guardian、仏・Saint-Gobain 4社に対し、EEA欧州経済領域内での建築用板ガラスのカルテル行為に対して、総額486.9百万ユーロ(約790億円)の制裁金を科したと発表した。

* EEA協定にはEU 25ヵ国とEFTA(欧州自由貿易連合)のうちアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーが加入。

本年3月にメーカーにStatement of Objection(異議告知書)を送付した。
  2007/3/20 
欧州委員会板ガラスカルテルを調査  

4社はEEAの建築用板ガラス市場の80%を占めている。5〜6回の値上げ、最低価格決定、その他の値上げ・価格維持のための行為を行い、値上げ協定の実施の監視をしていた。

欧州委員会では、このような需要家を騙し、単一市場のメリットを奪うような行為は容認できないとし、今回は複数のメンバー国の独禁当局の情報から調査を始めたとして、欧州の独禁当局のネットワークの協力関係を自賛している。

なお、欧州委は2005年2月に板ガラスと合わせて自動車用ガラスのメーカーにも予告なしの立ち入り検査を行っており、自動車用ガラスについては需要家配分と供給制限・価格の合意があったと信じる理由があるとしている。現在、調査を進めている。

各社の制裁金は以下の通り。

  千ユーロ
Asahi (Japan)   65 000
Guardian (USA)  148 000
Pilkington (UK)  140 000
Saint-Gobain (France)  133 900
TOTAL  486 900

旭硝子は子会社のGlaverbel (現社名はAGC Flat Glass Europe)、日本板硝子は子会社のPilkington

Glaverbel SA
 本社:ベルギー ブラッセル市
 工場:ベルギー、オランダ、チェコ、フランス、イタリア、スペイン、ロシア
 品目:フロート板ガラス、複層ガラス、自動車用ガラス、鏡等
 設立:1961年(1981年旭硝子資本参加、2002年12月100%子会社)

Pilkington PLC
 本社:英国 St Helens
 工場:世界24カ国
 品目:建材用板ガラス、自動車用強化ガラス、放射線遮へい用板ガラスほか
     (世界で最初にガラスの大量生産を始めた会社)
 設立:1826
年(2006年6月 日本板硝子子会社化)

なお、旭硝子は自首減免制度(2002 Leniency Notice ) に基づき、EUの調査に協力し、追加証拠を提出して、制裁金の減免を受けている。

日本板硝子は2007年3月期連結決算で、「EU独禁法関連引当金」として 78,118百万円の引当金を計上している。
今回の同社の制裁金は約226億円だが、更に自動車用での制裁金の可能性がある。

旭硝子は引当金を計上していない。

付記

日本板硝子は2008年1月31日、制裁金140,000千ユーロを支払うと発表した。
提訴による裁判費用などを考慮。

 

付記

EUは2011年10月、ブラウン管用板硝子のメーカーに制裁金を科した。

  Leniency Notice Settlement Notice Fine (EUR)
Samsung Corning Precision Materials

100%

10%

    0

Nippon Electric Glass  日本電気硝子

50%

10%

 43 200 000

Schott AG  

10%

40 401 000

Asahi Glass  

10%

45 135 000

 

ーーー

EUによる2007年のカルテル制裁
対象分野 主な対象企業 制裁金
(百万ユーロ)
送電設備 三菱電機、東芝、日立製作所、独・シーメンス   751
エレベーター 三菱電機、米・オーチス   992
ビール 蘭・ハイネケン   274
ファスナー YKKグループ、独・プリム   329
アスファルト 西・レプソル   184
業務用ビデオテープ ソニー、富士フィルム、日立マクセル    75
建築用板ガラス 旭硝子、日本板硝子、仏・サンゴバン   487

2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金

2007/2/28 EU、エレベーターのカルテルで過去最高の罰金

ファスナー 4つのカルテル

  @ A B C  
Prym group(ドイツ)   40,538千ユーロ
YKK group    150,250
Coats group(英)      122,405
他 4社         15,451
合計          328,644

ビデオテープ 

Sony  47,190千ユーロ  
Fujifilm  13,200 協力で40%減
Hitachi Maxell  14,400 協力で20%減
合計  74,790  

付記 

日立マクセルは2008年1月31日、制裁金 14,400千ユーロを支払うと発表した。
提訴による裁判費用などを考慮。

       

付記 2007/12/5 クロロプレンゴム (単位:千ユーロ)

  本来の制裁金 減額 実際の制裁金
Bayer     201,000  100%        0
東ソー        9,600   50%     4,800
DuPont/Dow
(うちDow) 
    79,000
    (60,475)
  25%     59,250
    (44,250)
Dow  

25%

4,425

ENI      132,160      132,160
電気化学      47,000       47,000
合計        247,635
 *1 Bayer  50% 増し
 
*2 ENI   60%増し

2007/12/11 欧州委員会、クロロプレンゴムのカルテルで 243.2 百万ユーロの制裁金

電気化学は提訴、東ソーは制裁金支払いを決定


2007/12/3 中国政府、国家環境保護計画を発表

中国政府は11月26日、「国家環境保護 第11次5ヵ年計画(2006-10)」を発表した。
先進国の100年にわたる工業化プロセスで段階的に発生した環境問題が、中国では集中的に顕著に現れ、汚染事故多発期に突入、問題が顕著化する時期に入ったと指摘している。

内容は以下の通り。

第10次5カ年計画(2001−05年)」の環境保護計画指標は全てが実現されておらず、二酸化硫黄(SO2)排出量は2000年比 27.8%増加、化学的酸素要求量(COD)は2.1%減少で10%の削減目標に至らなかった。

2005年のエネルギー消費は2000年比で55.2%増加しており、新設の火力発電所はSO2低減の設備を備えておらず、旧式設備を環境に優しい技術で改良する計画もうまくいっていない。
製紙業も重大な環境問題を起こしている。

水の汚染は悪化しており、河川・湖沼の水の26%は全く利用不能な状態で、62%は魚が棲むのに適さず、市街地の川の90%は汚染されている。

   
第10次5カ年計画期間に解決が図られた深いレベルでの環境問題の一部は、いまだブレイクスルーを得られていない。
不合理な産業構造や粗放な経済成長方式は全く転換されていない。
環境保護が経済発展に遅れを取っている状況も変わらない。
体制の不備、構造の行き詰まり、資金投入不足、能力の低さなどの際立った問題が残されたままとなっている。
法律があってもそれに依拠せず、違法行為は追及が困難で、監督管理は脆弱、法執行は怠慢で、管理監督力が不足している、などが普遍的な状況となっている。

地方政府の中には環境保護より経済成長を重視しており、環境保護当局もそれを管理する強力な力を欠いている。

   
重点業務と主要任務は、第10次5カ年計画で決定された主要汚染物排出抑制目標を達成することだ。
汚染予防対策業務を重点項目中の最優先事項とし、都市・農村住民の飲料水安全確保を第一の任務とする。
   
歴史的転換をさらに促進し、長い間環境保護発展の足を引っ張ってきた制度面での障害の解決に尽力しなければならない。
中央政府と地方政府の職権、政府と企業の職責にそれぞれきちんと境界線を引き、バランスある統一的で効率の高い環境監督管理体制を健全化する。

地方政府をモニターするための評価メカニズムを設定する。
半年ごとに全ての地区の主な汚染物質排出の報告を発表し、2008年と2010年には地方政府の計画達成度合いの診断を行なう。

   
第11次5ヵ年計画の環境保護目標を実現するため、全国の環境保護投資が毎年、GDPの1.35%相当となる。

2005年に政府は環境保護にGDPの1.31%に相当する318億ドルを投入した。

計画作成に参加した中国環境計画学院の副所長は、水の汚染の処理に853億ドル、空気汚染処理に800億ドル、固形廃棄物処理に280億ドルの投入を予想している。

   
計画では2010年にCODを2005年比で10%カット、SO2排出を10%カットする。

これにより2010年までに、中国の大都市の75%が、毎年292日以上の良好な大気環境(Level U以上)となる。
(2005年は平均 69.4日)

   
飲み水問題を最優先課題とし、水の汚染に対する罰金を大幅に引き上げる。

飲み水の安全性、主な河川・湖沼の浄化、汚染・排出規制、都市の廃棄物処理を取り上げている。

   
汚染物排出者が浄化のコストを負担する原則を採用、排出や汚染を減らすための税制改革も行なう。
廃棄物処理コストを反映した価格メカニズムも導入する。

102億ドル以上を排出者から徴収し、処理のために使用する。
汚染物質を飲み水のソースに流したものや、汚染物質を河川や湖沼の沿岸に貯蔵したものに、現行の20倍の罰金を科す。
水汚染事故の場合、コスト全額負担のうえ、罰金も引き上げる。重大な事故の場合は工場閉鎖とする。

 参考  2007/11/22  中国、公害対策進める 

 


2007/12/4 ロシアのGazprom、ダウと天然ガス分野での提携のMOUを締結

Gazprom、その100%子会社の Sibur、及びDow Chemical 11月27日、ハイドロカーボンの高付加価値化分野でのMemorandum of Intentionsを締結した。

今後、以下の検討を行なう。

1)ドイツのダウの新石化コンプレックスでのJV設立
2)北西シベリアの
Yamal-Nenets 自治区での天然ガスの処理
3)その他の分野での協調の検討

今後、ワーキンググループでJVのFSを行う。来年にもまとめる。

ーーー

SIBUR Group GAZPROMが100%出資するロシア最大の垂直統合石油化学会社。

   詳細 2007/7/6 Solvay、ロシアでワールドクラスの塩ビJV 

SIBUR は石油化学分野での技術を求めており、また、プラスチック事業拡大のために新しいマーケットへの進出を望んでいる。

第一の計画は、ダウが拠点を有するドイツに合弁で石油化学工場を建設するもので、
Gazprom が原料の天然ガスを供給し、ダウが技術とマーケットでの経験・知見を供給するもの。
ドイツは欧州で最大のロシアの天然ガス輸入国となっている。

ーーー

第二の計画はYamal-Nenets 自治区のValanginian 天然ガス田の天然ガスを共同で処理するもの。

Yamal-Nenets 自治区シベリアの北西端に位置し、北部は北極圏に属する。ベールイ島、オレニー島、ショカリスキー島などを有する。

2002年10月にSIBUR は自治区政府との間で、液体ハイドロカーボンの処理計画、天然ガス液化設備建設、輸送システムの拡張、省エネ計画その他を共同で実施する契約に締結している。

SIBUR は計画の詳細を明らかにしていないが、新プラントを共同で建設する模様。

ーーー

GAZPROM もダウも計画がまだ初期の段階であり、これからFSを実施すると強調しているが、Gazprom が欧州のエネルギー需要の1/4を供給し、ロシアが天然ガスを外交の手段としようとしていることに懸念しているEUを更にいらだたせることになるとの見方が強い。

EUは本年9月に、Gazprom の進出を抑えるため、欧州市場でのエネルギーの生産と流通を分離する案を出している。
Gazprom が欧州で設備を持つことを妨げようというものだが、イタリアのEni Enel (政府31%所有)、フランスのGaz de France (政府 40%所有)、ドイツのE.ON group なども猛反対している。

Gazprom も、この案が施行されれば、新しい取引は中止され、その結果、欧州への供給が減り、価格の上昇が起こるだろうと警告している。

 


2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

シャープは12月1日、大阪府堺市の「21世紀型コンビナート」の起工式を行なった。

 

シャープは7月31日、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定したと発表した。

同社は「環境先進企業」を目標に、省エネの“液晶” 創エネの“太陽電池”を事業の柱として取り組んでいるが、同じ敷地内に関連するインフラ施設や部材・装置メーカーの工場を誘致し、「21世紀型コンビナート」として展開する。

TFT液晶と薄膜太陽電池は同じ薄膜技術をベースにしており、材料やユーティリティなどの共用化が可能で、薄膜太陽電池は液晶技術の応用により、一層の生産性向上が期待できる。

薄膜太陽電池では、液晶パネルと同様、ガラスの上に薄膜シリコンを形成する。
シランガスの供給プラントからガラス基板など、さまざまなハンドリングを共有化。

立地は新日本製鉄の堺製鉄所に隣接する遊休地で、面積は127万m2
(堺製鉄所が1961年に操業を開始、高炉増設や工場拡張をにらんで、大阪湾を埋め立てたが、埋め立て地の完成した1990年春、鉄鋼不況のあおりを受けて、堺製鉄所は高炉を休止。バブル崩壊も重なって土地の買い手が見つからないまま、遊休地となっていた。)

液晶パネル工場に隣接してインフラ関連施設や装置メーカーの工場に加え、マザーガラスやカラーフィルターなど複数の有力部材メーカーの工場を誘致する。

亀山工場で構築した、液晶パネルから液晶テレビまでの「垂直統合型」の事業展開をさらに川上まで推し進め、「企業の垣根を超えた垂直統合型」を目指す。
物流コストの削減、生産計画などのオペレーションの一元化などを行なうとともに、部材・装置メーカーと緊密に連携を図ることで、知識やノウハウを融合し新たな技術革新を図る。

 
                        同社発表から

液晶パネル工場
 ・投資額:約3,800億円(新工場の全土地代含む)
 ・着工:2007年11月
 ・稼動開始:2010年3月までに
 ・主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
 ・マザーガラスサイズ:2,850mm
x 3,050mm(第10世代)
   (60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れる)
 ・投入能力 :月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)

太陽電池工場について
 ・投資額など:詳細検討中
 ・稼動開始:2010年3月
 ・生産品目:薄膜太陽電池
 ・生産量:年間1,000MW(100万kW)規模(世界最大)

液晶パネル工場の投資額は3,800億円で、部材やガス・電気などインフラ関連の企業の投資額が4,000〜5,000億円,さらに太陽電池工場への投資額を加えると投資額は約1兆円といわれている。

大阪府の太田房江知事は、企業立地促進条例を適用して、上限額の150億円を補助する考えを明らかにした。
「10年間で600億円の税収が見込める」との見通しを示している。
大阪府では経済効果として3.9兆円と見込んでおり、総合的かつスピーディーな立地支援を行うため、知事を本部長とする全庁横断的な組織として「シャープ堺浜立地支援本部」を立ち上げている。
また、堺市も操業開始から10年間、固定資産税や都市計画税を軽減するなど優遇策を提示している。

ーーー

付記 

2008年2月26日、シャープとソニーは、シャープの液晶パネル工場を分社化することにより、大型液晶パネル・モジュールの生産および販売を行う合弁会社を設立することについて、「意向確認覚書」を交わした。

合弁会社の概略は以下の通りで、合弁契約を2008年9月30日までに締結するよう交渉する。

2009年12月29日、ソニーはシャープディスプレイプロダクトの増資を引き受け、7.04%を100億円で取得した。
ソ ニーは堺工場で生産されるパネルの7%にあたる55万台分(40型換算)を受け取る。

出資は2011年4月末までに最大34%まで引き上げられ、その時点で265万台分がソニー に供給される。

会社名称 シャープディスプレイプロダクト
設立日 2009年4月1日
稼動開始 2009年10月
出資比率 シャープ66%、ソニー34%
事業内容 大型テレビ用液晶パネル・モジュールの生産およびシャープ、ソニーへの販売
生産能力 72,000枚/月(稼動当初は36,000枚/月)(マザーガラス投入ベース)

この発表でサムスン電子は大きな打撃を受けたとされる。

ソニーとの合弁会社S-LCDはそのままとはされているが、ソニーは第10世代工場には参加せず、約5700億円の投資を全額サムスンが負担せねばならない。(従来は折半負担で、これまで1100〜1470億円をソニーが負担)
また第10世代で予想される年間4500億円の売上の半分が消えることとなる。(ソニーは毎年2300〜3400億円を購入)

付記

シャープとソニーは2011年4月、合弁会社へのソニーの追加出資を先送りにし、2012年3月末まで継続して協議すると発表した。液晶パネルの調達環境をめぐる変化が背景にあるとみられる。
これまでソニーは約7%分に当たる100億円を出資しただけ。

付記

経営が悪化したシャープは2012年3月、EMS(電子機器受託製造)の世界最大手の台湾の鴻海精密工業と資本・業務提携すると発表した。

シャープに鴻海精密工業グループ4社が合計 9.88%出資(最大株主)
シャープディスプレイプロダクト(堺)に鴻海の郭台銘
董事長が46.48%を出資
 (シャープ 46.48%、
董事長 46.48%、シャープ 7.04%となる)

鴻海はシャープディスプレイプロダクトから液晶パネル、モジュールを最終的に50%まで引き取る。

シャープはこれで約1300億円を調達し、技術開発に充てる。

付記

2012年7月12日に鴻海グループからの出資が完了した。7月17日付で社名を「堺ディスプレイプロダクト」に変更する。

付記

2006年12月、シャープが持ち株の一部を鴻海に譲渡することが分かった。譲渡後の議決権ベースの持ち株比率はシャープが約4割から26.71%に低下する。

ーーー

同コンビナートへの進出企業は次の通り。

ガラス基板 
 ・米 Corning 
    原料のケイ石を溶かす炉まで工場内に建設し,原料からガラス基板までの一貫ガラス工場
    投資額:875億円

   (同社は2006年にシャープとの長期供給契約を締結、三重の第8世代工場の主供給メーカーとなっている。
    2007年2月、静岡工場での1億6千万ドルの増設計画を発表した。)

 ・加えて、兵庫県高砂市に工場がある旭硝子からも供給を受ける。

カラーフィルター
 ・大日本印刷
   2007年10月、進出発表
    投資額:435億円
    生産量:第10世代マザーガラス 月間36千枚(インクジェット方式)
    稼動:2010年3月
    (2006年9月からシャープ亀山の第2工場内でインクジェット式第8世代カラーフィルター生産)

 ・凸版印刷
   2007年11月、進出発表
    投資額:420億円
    生産量:第10世代マザーガラス 最大 月間36千枚 (フォトリソ方式)
    稼動:2009年度中
    (2006年からは第8世代を導入し、シャープ亀山工場向けなどに納入)

  * 両社でシャープの能力 月72千枚(稼動当初は月36千枚)に対応

付記

シャープと凸版印刷、大日本印刷は2012年5月24日、凸版、大日本及び大日本の100%子会社 DNPカラーテクノ堺の堺工場における液晶カラーフィルター事業をシャープディスプレイプロダクトに吸収分割の方式により承継させることを決めた。

また、シャープとソニーは2012年5月24日、シャープディスプレイプロダクトについて、6月末までにソニーが保有する株式(出資比率:7.04%)すべてを譲渡し、両社の合弁を解消すると発表した。

これらの結果、
シャープディスプレイプロダクトの出資比率は以下の通りとなる。(吸収分割で株式発行)
  
シャープ   37.61%
      郭台銘     37.61
  凸版      9.54
  大日本     9.54
    自己株式   5.70 (ソニーから買収分 旧 7.04%相当)

産業ガス
 ・
大陽日酸とエア・ウォーターが合弁会社を設立して進出する。
   社名:堺ガスセンター(大陽日酸 51%/エア・ウォーター 49%)
   投資額:600億円程度(初期投資 約300億円)
   大陽日酸は窒素(酸化防止など)、ヘリウム(冷却)を供給
   エア・ウォーターは酸素(ガラス溶解用)、アルゴン(酸化、窒化防止)などを供給
   

超純水
 ・栗田工業
   投資額 100億円超

付記 2008/1/8

400億円を積み増し、2010年度までに500億円超を投じる。

ーーー

付記
 長瀬産業 液晶パネル製造用の現像液、剥離剤の生産・リサイクル工場で進出
        投資額 約90億円 

 他に、関西電力、大阪ガス(いずれもエネルギー供給)

 2008/7 大和ハウス(事務所棟の建設・運営)、
       積水化成(「ピオセラン」を主原料とした梱包材)、
       小池産業(液晶パネル製造用フォトレジスト)

ーーー

付記

2008年6月23日、堺市、関西電力及びシャープは 「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」の推進について発表した。
本発電施設には、シャープが建設する太陽電池新工場で生産する薄膜シリコン太陽電池モジュールを採用する予定。

    2008/7/2 シャープと関西電力、「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」を推進


2007/12/6 Petrobras、石化事業を再編

ブラジルで石化事業の再編が進んでいる。

2007年3月にブラジル国営石油会社PetrobrasUltra GroupBraskem の3社が共同で、同国の石油精製・販売、石油化学の老舗のIpirangaを買収することが決まった。

   2006/3/23 ブラジルで石油・石油化学業界の再編  

2007年8月 Petrobras Suzano Petroquimica を11ドルで買収することで合意したと発表した。

   2007/8/22 ブラジルの石油化学業界再編ー2  

 

2007811日、Petrobras União de Industrias Petroquimicas (Unipar) 両社のブラジルの化学品、合成樹脂事業を統合する協議を行っていると発表した。新会社の名称は Companhia Petroquimica do Sudeste (CPS) で、Uniparが主導権を持つ。

付記

2008年2月、BraskemIpiranga Group 60%取得を発表した。
Ipiranga QuimicaIpiranga Petroquimica 60%Copesul 62.7%(直接&間接) を取得。
Ipiranga Quimica の残り 40% Petrobras

付記

Lanxess20071213日、ブラジルのPetroflex 上記図の中)の買収を発表した。Braskem Unipar 持株を含め、70%を買収、ブラジル法に基づいてその後の時点で、残りの株式を買収する。
以前に交渉を行い、一度はギブアップしていた。

 

2007年11月30日、Petrobras は石化事業の再構築を発表した。

1)Braskem への出資を増やす代わりに、Petrobras が出資する石化会社の株式をBraskem に譲渡

2)Unipar JVを新設し、両社の出資する石化会社の株式をJVに譲渡
     
JV:Companhia Petroquimica do Sudeste (CPS)

1)Braskem への出資を増やす代わりに、Petrobras が出資する石化会社の株式をBraskem に譲渡

 Braskem への出資を現在の6.8%から25%に増やす。

Petrobrasparticipation in Braskems total capital to 25%, up from 6.8%
Shareholder ON
common shares
PN
preferred shares
Total (*)
Petrobras System 30.0% 22.1% 25.0%
Odebrecht Group 60.3% 23.8% 37.2%
Others 9.7% 54.1% 37.8%
(*) Considering a 100% allocation of Petroquimica Triunfo to Braskem

 Petrobras が出資する石化会社の株式のBraskem への譲渡

Participation in Braskems capital
  Location            現状  今後 
    Petrobras System Braskem Braskem
Petrobras Petroquisa TOTAL
Copesul Triunfo - RS  22.34%  15.63%  37.30%  62.70% 100%
Ipiranga Quimica Sao Paulo- SP  40%    40%  60% 100%
Ipiranga Petroquimica Triunfo - RS  40%    40%  60% 100%
Triunfo Triunfo - RS   Up to 100% Up to 100%   100%(option)
Petroquimica Paulinia Paulinia - SP      40%  60% 100%

2)Unipar JVを新設し、両社の出資する石化会社の株式をJVに譲渡

 新設のJV  Unipar   60%
         Petrobras 40%

 JV に移管する石化会社株式

  Value for 100%
of the shares
(In R$ million)
Petrobras Petroquisa Unipar
% Part In R$ million % Part In R$ million % Part In R$ million
Rio Polimeros S.A.
(RIOPOL)
  1,164   0%     0%    66.0%   768
Suzano Petroquimica S.A.   1,790 76.6%   1,371   0%     0%  
Petroquimica Uniao S.A.   1,520   0%   17.4%   265  51.4%   781
Polietilenos Uniao S.A.    663   0%     0%   100.0%   663
Unipar Divisao Quimica    243   0%     0%   100.0%   243
Total   5,380 25.5%   1,371  4.9%   265  45.6%  2,455

* Unipar は自社保有のRIOPOL 株を移管するとともに、Petroquisa Suzano 所有のRIOPOL株式購入資金を負担


2007/12/7 Top 40 Power Players

化学・エネルギー分野の情報サービス機関のICIS は12月3日、Top 40 Power Players を発表した。

世界の化学業界での最も影響力のある人のランキング。それぞれが、この1年に業界で重要な役割を果たした。
各人に寸評を付している。
  
http://www.icis.com/Articles/2007/12/03/9083148/top-40-power-players.html#top

ランキングは以下の通り。

1. MOHAMED AL-MADY Vice chairman and CEO, SABIC  
2. LEN BLAVATNIK Owner and chairman, Access Industries Basell + Lyondell
3. ANTONY LEUNG Chairman, Blackstone Greater China,
and board member of China National Bluestar
中国政府のBlackstoneへの投資、
Blackstone Bluestar への投資のアレンジ
4. JURGEN HAMBRECHT CEO, BASF  
5. MICHAEL DOLAN President, ExxonMobil Chemical  
6. CHARLES HOLLIDAY Chairman and CEO, DuPont  
7. JIM RATCLIFFE Chairman, INEOS  
8. HANS WIJERS CEO, Akzo Nobel ICI買収
9. JOSE CARLOS GRUBISICH CEO, Braskem  
10. MUKESH AMBANI Chairman and managing director, Reliance Industries インド
11. HAMAD AL-TERKAIT President and CEO, Equate Petrochemical Company Dow/Kuwait JV
12. CRAIG MORRISON Chairman and CEO, Hexion Specialty Chemicals Huntsman 買収
13. ABDALLAH JUM'AH President and CEO, Saudi Aramco  
14. JACK GERARD President and CEO, American Chemistry Council  
15. PATRICIA WOERTZ President and CEO, Archer Daniels Midland (ADM) corn-based ethanol and biodiesel
16. PAN YUE Deputy minister, State Environment and
Protection Administration (SEPA)
中国
17. THORLEIF ENGER President and CEO, Yara International ノルウエー肥料会社
(フィンランドの
Kemira GrowHow 買収)
18. WU YI Vice premier, China China's iron lady
(China's top troubleshooter)
19. WERNER WENNING Chairman, Bayer  
20. BRIAN FERGUSON Chairman and CEO, Eastman Chemical  
21. HIROMASA YONEKURA President, Sumitomo Chemical  
22. REN JIANXIN Chairman, China National Chemical (ChemChina) BlueStar Haohua Chemical を合併
23. WILFRED WANG Chairman, Formosa Petrochemical Corp.  
24. GHOLAMHOSSEIN NEJABAT Managing director, National Petrochemical Company イラン
25. ABDALLA EL-BADRI Secretary general, OPEC  
26. RAFAEL ESPANOL Chairman, La Seda de Barcelona (LSB) PET で欧州トップ、PTAで第三位に
27. JOSE SERGIO GABRIELLI DE AZEVEDO President, Petrobras  
28. CHONG BUM SHICK CEO, Honam Petrochemical 韓国(カタールでJV
29. NEELIE KROES Competition commissioner, European Commission カルテル摘発
30. PRASERT BUNSUMPUN Chairman, PTT Group タイ
31. DAN SMITH Chairman, president and CEO, Lyondell  
32. AXEL CLAUS HEITMANN CEO, Lanxess  
33. JOHN McADAM CEO, ICI  
34. CHIHIRO KANAGAWA President, Shin-Etsu Chemical  
35. FRANCOIS VLEUGELS CEO, Unipetrol チェコ
36. TALAL AL-SHAIR Chairman, National Titanium Dioxide (Cristal) サウジ(LyondellからTiO2事業買収)
37. HO CHING Executive director and CEO, Temasek Holdings シンガポール 海外投資
38. JAI SHROFF CEO, United Phosphorus インド(ジェネリック農薬)
39. PAT DAVIES CEO, Sasol 南ア(中東などに進出)
40. JOSE RICARDO RORIZ COELHO Copresident, Suzano Petroquimica ブラジル(Petrobras に買収される)

日本からは住友化学の米倉社長と、信越化学の金川社長が入っている。

米倉社長:
住友化学の発展に大胆でイノベーティヴな戦略をとった。
一つは中東への進出(
PetroRabigh)で、同社の長期的な収益向上が期待できる。
もう一つはスペシャリティケミカルの重視で、生命科学とIT材料に投資の70%を割り当てる。

金川社長:
信越化学のグローバルな拡大戦略を引っ張り、PVCで世界トップに引き上げた。
米国のPVC市場の下降にもかかわらず、連結中間決算で前年比16.7%の増益となった。


2007/12/8  ダウ、合理化策を発表

ダウはグローバルに効率改善とコストダウンを進めているが、124日、工場閉鎖と人員削減策を発表した。およそ1,000人の人員削減を行なう。

2007年第4四半期に退職費用と資産消却で 56億ドルの特別損失を計上する。実施後には年間180百万ドルの合理化を期待している。

Andrew N. Liveris 会長兼CEOは、今回の処置は、応分の価値を生まない事業を取り止め、より効率的に仕事に取り組むという同社のコミットメントを実現するもので、資金と資源を価値を生む分野に再配分するものだとしている。

具体的な計画は以下の通り。

1)Dow AgroSciences のフランスLauterbourg の農薬工場の閉鎖(殺菌剤 Dithane 等を製造)
  (業界の供給過剰、コスト高、特許切れ品の圧力)

2)北米、アジア太平洋、ラテンアメリカでの自動車用シーラー事業からの撤退(9〜18ヶ月以内)
  欧州の同事業の戦略的オプションの検討
  (自動車分野で、もっと高価値の差別的技術に注力)

3)カナダの石化JV、 Pétromont and Company, Limited Partnershipの消却
  ダウと
Éthylec Inc (Société générale de financement du Québec の子会社)との50/50JV。
  1980年設立、オレフィンとHDPEを製造。
  (長期的にみて採算悪化の見通し)

4)ブラジルCamaçari のSMプラントの休止(2008/1/1)
  (競争激化、採算見通し悪化)

5)ブラジル Aratu のヒドロキシエチルセルロース工場の閉鎖(2008年第1四半期)
  
(小規模、高コスト:設備・原料、古い技術)

6)100%子会社Union CarbideSt. Charles, Louisiana PP工場の閉鎖
  (長期的な操業維持に多額の投資が必要)

7)Union CarbideSouth Charleston, West Virginia R&Dを含むサポート機能を大幅に縮減

ーーー

これとは別に、ダウのEngineering Plastics 部門は同日、米大陸の自動車向け以外のABSSAN 事業から撤退すると発表した。

Allyn's Point (Gales Ferry, Conn.)Hanging Rock (Ironton, Ohio) のプラントはPS用に転換し、Dow Chevron Phillips Chemical JV(社名:Americas Styrenics)に移管する。 
なお、上記の4)記載の
ブラジルCamaçari SMは当初はJVに移管予定であった。
   2007/4/11
Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立  

Midland (Mich) のプラントは自動車向け専用とし、今後は Dow Automotive 部門が販売を担当する。
欧州のABS とSAN 事業は変更なし。


2007/12/10 アルジェリアの石油化学計画スタートへ

フランスのTotal とアルジェリアの国営石油会社 Sonatrach 12月4日、アルジェリアのOran市近郊のArzew での石油化学コンプレックス建設の基本契約を締結した。

両社は20077月に本計画についてのMOUを締結しており、FS(特に立地と設備能力)を行なっていた。
前回発表では、Total51%、国営石油会社 Sonatrach 49%を出資する。

  

 

 

 

 

 

  2007/7/25 アルジェリアの石油化学計画 

具体的には、南アルジェリアのガス田のガスを原料に、Oran市近郊のArzew に 140万トンのエタンクラッカーを建設、年産110万トンのエチレン、2系列合計80万トンのポリエチレン、55万トンのMEGを生産する。製品は一部国内市場で販売、大部分は輸出する。

投資額は約30億ドルで、間もなく技術のテンダーを行い、5年以内に生産開始の予定。

両社は石油の採掘と生産でのパートナー。

ーーー

今回の締結はSarkozy 大統領のアルジェリア公式訪問中に行なわれた。

同じく124日に、両国は核での協力協定に調印した。フランスにとってアラブ・ムスリムとの最初のものとなる。
フランスが核技術を供与し、最終的には民需用の核リアクターを建設するもの。
但し、
核協定はEURATOM(ヨーロッパ原子力共同体) の承認を得る必要がある。

大統領の訪問中の成約は合計73億ドル以上になる。

Sarkozy 大統領は11月に中国を訪問。1126日に仏製の第3世代原子炉2基と、欧州エアバス製のA320型とA330型の計160機の調達などに合意する文書に調印している。


2007/12/11 欧州委員会、クロロプレンゴムのカルテルで 247.635百万ユーロの制裁金

欧州委員会は12月5日、クロロプレンゴムの市場棲み分けと価格操作を理由に5社に総額 247.635百万ユーロ(約390億円)の制裁金支払いを命じたと発表した。
制裁金支払いを命じられたのは、バイエル、電気化学、旧
DuPont Dow ElastomersENI、東ソーの5社。

1993年から2002年の間、各社はクロロプレンゴムの市場棲み分けと価格操作を行なったというもの。
Bayerからの情報提供で、2003年3月と7月に各社に立ち入り調査を行なった。

EU Competition Commissioner の Neelie Kroes は、「合成ゴム業界が過去の教訓に学んでいないことに失望する。株主や役員会メンバーがこのような違反行動を容認しているのは理解できない」とのコメントを出した。

各社の制裁金は以下の通り。(単位:千ユーロ)

  本来の制裁金 減額 実際の制裁金
Bayer     201,000  100%        0
東ソー        9,600   50%     4,800
DuPont/Dow
(うちDow) 
    79,000
    (60,475)
  25%     59,250
    (44,250)
Dow  

25%

4,425

ENI      132,160      132,160
電気化学      47,000       47,000
合計        247,635

Bayer は過去にカルテルで摘発されているため制裁金は50%増しとなった。
ENI も同様に60%増しとなった。

 

付記

ENIは2012年12月17日、制裁金を106.2百万ユーロへの減額を受けた。理由は明らかにされていない。

但し、Bayerは、最初にカルテルの情報を提供したため、制裁金が100%減額となった。
東ソーと
DuPont/Dow も調査への協力で、それぞれ、50%、25% の減額を受けた。

EUはDuPont/Dowのうち、Dow分を48,675千ユーロとしている。
(59,250千ユーロのうち、48,675千ユーロはDuPont Dow Elastomersの分で、10,575千ユーロは1996年のJV設立以前のDuPontの分だといわれる)

しかし、Dow は DuPont Dow Elastomers 解散の際の取り決めで、DuPont負担になるとしている。
両社の50/50JVのDuPont Dow Elastomers は2005年7月1日付けで DuPont 100%子会社の DuPont Performance Elastomers となったが、カルテル問題が起こった場合には、DuPont は150百万ドルまでと、それを超える分の75%を負担することになっているという。

DuPontは、同社が全面的に調査に協力してきたし、倫理と法を遵守してきたとして、今回の決定を批判し、控訴を検討しているとしている。

東ソーは6日、今後の対応については、本決定通知の内容を精査し、弁護士とも協議の上、適切な対応をとる所存と発表した。
電気化学は、今後その内容を精査した上で公正かつ適切に対処するが、欧州第一審裁判所へ提訴することも含め、慎重に対応する所存としている。

Bayerは過去の違反に遺憾の意を表し、1999年に法順守の方針を出したが、2004年にそれを強化したとし、このような法令順守違反は容認できないとしている。

付記 2008/1/15

電気化学は本件に関して、「競争制限行為を意図したことはなく、事実認識も異なるため、欧州第一審裁判所へ提訴する」こととしたと発表した。

但し、「発生する可能性がある最大損失額(4,700万ユーロ=約76億円)を特別損失として引当計上する」として、連結決算予想を修正した。

付記 2008/1/30

東ソーは課徴金の支払いに応じることを決めた。

本決定に対し訴訟を提起した場合の、裁判の長期化による時間的・費用的負荷、課徴金の更なる減額の可能性、決定書に示された諸争点について認定された各事実及び適用法令の適否などを総合的に勘案した結果、本件を裁判によらずに早期に解決することとした。

付記

本件ではDuPont、Dow、電化とENIの4社が欧州一般裁判所に訴えたが、2012年2月、ENI以外の3社は敗訴した。

電気化学は2012年2月3日、欧州一般裁判所で敗訴したと発表した。

付記

EU Court of Justiceは2013年9月、DowとDuPontの上告を棄却した。

DowはJVのDuPont Dow Elastomers(その後、JVを解消、現在はDuPont Performance Elastomers)の行為を親会社の責任とするのはおかしいと主張したが、CourtはDowはJVに決定的な影響力を行使しているとしてこれを否定、実態がゆがめられていない限り、上告理由にならないとした。

ーーー

欧州連合が価格カルテルで制裁を強めるにつれ、企業が判定を不服として欧州司法裁判所に提訴するケースが相次いでいる。

YKK は12月7日、欧州第一審裁判所に提訴した。

欧州委が主にカルテルに関与していたとするのはYKKの独子会社のYKK Stocko Fasteners GmbH だが、1994年にYKKが資本参加し、1997年に全額出資の子会社とした。
カルテルは
YKKが資本参加する以前に始まっており、情報開示の不足があったとして、旧オーナーに損害賠償請求をしている。
同子会社は欧州だけで事業を展開しているが、欧州委は
YKKの全世界売上をもとに制裁金を科したことを不服としているもよう。

2007年の日本企業が受けた制裁は下記の通りだが、このうち、三菱電機は受け入れたが、送電設備カルテルでは全社が提訴しており、ビデオテープ、板ガラス、今回の合成ゴムについても、各社とも提訴も含め検討している。

EUによる2007年のカルテル制裁
対象分野 主な対象企業 制裁金
(百万ユーロ)
送電設備 三菱電機、東芝、日立製作所、独・シーメンス   751
エレベーター 三菱電機、米・オーチス   992
ファスナー YKKグループ、独・プリム   329
業務用ビデオテープ ソニー、富士フィルム、日立マクセル    75
建築用板ガラス 旭硝子、日本板硝子、仏・サンゴバン   487
クロロプレンゴム ENI、旧DuPont Dow Elastomers、電気化学、東ソー    243

  参考  2007/12/1 欧州委員会、板ガラスカルテルに制裁金


2007/12/12 BASF の組織改正

BASF 200811日に組織改正を行なう。

従来の組織は以下の5セグメント。
 
Chemicals
 
Plastics
 
Performance Products
 
Agricultural Products & Nutrition
 
Oil & Gas

2008/1/1から 以下の6セグメントに変更

変更点は以下の通り。

1) Functional Solutions segment 新設

  触媒、建設用化学品、コーティングの3部門からなる。
  自動車及び建設分野の顧客固有のシステムを供給する。

2) Performance Products segment

  Care Chemicals 新設
  
Acrylics & Dispersions (以前のFunctional Polymers
  
Performance Chemicals

  Care Chemicals は以前の Fine Chemicals (医薬、食品、アロマ化学品)とPerformance Chemicals の中の洗剤、クリーナー。
  消費者向け製品、医薬品の需要家向け

  Performance Chemicals は石油産業、コーティング、皮革・繊維産業向け製品

3) Plastic segment

  Specialty Plastics Foams Styrenics 部門からPerformance Polymers 部門へ移動

     以前から検討されているStyrenics の売却に備えてのもの。
     また、これら事業と
Performance Polymers 部門の事業との相乗効果を狙う。

     Styrenics 売却は以前から言われているが、進展しており、年内にもまとまる見込み。
     売却先としては
Basell (以前のBASF/Shell JV)が有力といわれている。
     但し、BASFは最近、他の1社にも情報を開示したと発表している。
       
2007/8/6 BASF、スチレン事業一部の売却交渉進展 

 

付記 2008/7/9

BASFは2008年2月に、交渉が進んでおり上半期中に決定するだろうとしていたが、結局妥結しなかった。
金融情勢の悪化で、買い手が自己資本を増やす必要が出たこと、金利の上昇などが理由で、BASFでは無理に安売りする必要なしとしている。

付記 2008/11/22

BASFは売却のため styrenics 部門を2009年1月1日付けで新しい子会社に移す計画であったが、売却先が見つからず、結局子会社に移さず、他のオプションを考えることとした。

ーーー

BASFは新しい買収を検討している。

  2007/9/20 BASF、新しい買収?  

同社のCFOによると、「世界の最大の化学企業10社を合計してもマーケットシェアはたった20%で、最も集約化の遅れた分野のひとつである。更なる集約が必要だ。」

BASFは買収のために100億ユーロ(16千億円)を新規に借り入れる用意があるとしている。

また、更なる集約が必要という同じ主旨で、同社のCEO は11の会見で、「BASFは買収されないほどは大きくはない」と述べている。


2007/12/13 韓国公取委の報奨金制度

韓国公取委は12月5日、談合、事業者団体の不公正行為、新聞景品・無料新聞の提供を通報した90人に対し、計2億9965万ウォン(約3597万円)の報奨金を支払うことを決めた、と発表した。

このうち、砂糖会社の談合に関する証拠を提供した一人に、報奨金制度(2002年導入)で史上最高の2億1000万ウォン(約2500万円)が支払われた。

公正取引委員会は本年7月、CJ(旧 第一精糖)、三養社、大韓製糖の3社が1991年から15年間にわたって出庫量や価格を談合して不当利益を得ていたとし、511億3,300万ウォンの課徴金を科した。
このうち、CJは公取委の調査に協力したため、自主申告減免制度により課徴金が半分に減額され、検察への告発対象から除外された。

2005年8月に3社のうち1社の社員から会社の倉庫に談合の資料があるという情報を得て、これが摘発につながった。この社員に報奨金が支払われた。

ーーー

韓国では政府の各部処や地方自治体が先を争って通報褒賞金制を新設したり、支給額の上限を上方修正し、褒賞金を「だし」にした政策がありとあらゆる分野に広がっている。

現在、中央政府、地方政府が導入した通報報奨金制度はおよそ60種類に達する。公取委の報奨金もその一例。
褒賞金を狙うセミプロが出現し、パパラッチと呼ばれる。それぞれの違反行為ごとに呼び名がついている。

報奨金制度の例

・国税滞納者が隠匿した財産を通報する者に最高1億ウォンの褒賞金(税パラッチ)

・公務員に適用した予算の無駄遣い通報褒賞金制度を、全国民を対象に拡大。

・首都圏などの土地取引許可区域から許可を受けているのとは違う用途で土地を使用(土パラッチ)

・違法な選挙運動行為(選パラチ)

・交通違反の状況写真の通報で警察が罰金の約半分を支払う(カパラッチ:Car)

・非衛生的な危害食品(食パラッチ)

・ゴミの違法投棄(捨パラッチ)

・カラオケボックスの違法営業(ノバラッチ)

・不正な証券取引(株パラチ)

インターネットでは様々な褒賞金の内容や通報の方法を専門的に教える有料のサイトもあるという。


2007/12/14 欧州第一審裁判所がカルテルの制裁金を増額

欧州第一審裁判所はこのたび、家畜用のビタミンB4 カルテルで、BASFに対する制裁金を引き上げる判決を下した。裁判所が欧州委員会の科した制裁金を引き上げたのは今回が最初。

本年5月に第一審裁判所の元の裁判長が、裁判所はもっと積極的になるべきで、制裁金を変更する権限を行使すべきだと述べており、企業は今後、控訴戦略をよく考えるべきだとの意見が出ている。
従来はほとんどのケースで制裁金が引き下げられており、企業が控訴をして損をすることはないと見られていた。

欧州委員会は200412月に、BASFUCBAkzo Nobel の欧州3社と米国のBioproducts DuCoa、カナダのChinook の6社が、992年から1998年にわたって、家畜用のビタミンB4 (塩化コリン)で国際カルテル(価格、市場割当)を結んだとして欧州3社に制裁金を科した。

北米3社は1994年に欧州側が北米から撤退することを条件に欧州から撤退した。
欧州委員会の調査開始時点では時効となっているため、北米
3社は制裁金を科せられていない。

欧州3社の制裁金は以下の通り。

BASF  34,970千ユーロ
UCB  10,380
Akzo Nobel  20,990

これに対し、欧州3社は第一審裁判所に控訴した。

BASFとUCBの主張は1992年から94年は国際カルテル、それ以降は欧州カルテルで別カルテルであり、前者は時効だとするもの。

第一審裁判所はこれを認め、制裁金の計算をやり直した。

BASFは欧州委員会の決定では国際カルテルへの協力で減額を得ていたが、国際カルテルは対象外のため、これが取り消された。他方、欧州カルテルに関するBASFの情報はほとんど価値がないものであるため、基礎額は減ったが減額がなくなり、結果的に制裁金が増加した。
BASFにとっては、自社の主張のために損をしたこととなる。

UCBについては欧州カルテルの調査協力が認められ、大幅減額となった。

  欧州委員会 第一審裁判所
BASF  34,970千ユーロ  35,020千ユーロ
UCB  10,380   1,870
Akzo Nobel  20,990  20,990

BASF では判決を検討し、欧州司法裁判所(最高裁判所)に控訴するかどうかを考えるとしている。
Akzo は子会社が行なったカルテルで親会社に制裁金を科すのを認めた判決に不満の意を表し、控訴するかどうかを検討するとしている。

欧州司法裁判所では、第一審裁判所が与えた制裁金の減額が多すぎるとして制裁金を増額した例が昨年に2件ある。


2007/12/14 速報 ダウとクウェートのPIC、グローバル石化JVを設立   

ダウは12月13日、クウェート国営石化会社 Petrochemical Industries Company (PIC) との間でグローバルな石化JV50/50)を設立すると発表した。

JVは米国に本拠を置き、PEPPPC、エチレンアミン、エタノールアミンを製造販売する。売上高は110億ドル以上で、従業員は世界で5,000人。

ダウは20063月に、基礎部門の強化をJV化を通して行う方針を明らかにした。他社と新しいJVをつくるだけでなく、場合によっては既存の設備を出してJVにすることも行うとした。ダウはこの戦略をasset lightstrategy asset light とは「資産を持たない、減らす」という意味 )と呼んでいる
世界各地でJVを新設するとともに、エチレングリコール事業をPICとの
50/50JVのMEGlobal にしている。また、本年にPS事業を出し、Chevron Phillips Chemical との間で北南米のSM/PSの50/50JV Americas Styrenics を設立することとした。

今回の計画はその一環で、ダウはこれら製品の事業設備の権利の50%をPICに売却した上で、両社でJVを設立する。資産価値は190億ドルで、ダウはPICから税引前で95億ドルを受け取る。

JVはPICの原料ソースとダウの技術・マーケティング能力をベースとし、ダウでは「営業開始の初日からグローバルリーダーとなる石化会社をつくる」としている。ダウとしては基礎事業をJVで運営することで、資金を他の機能性事業、マーケット志向事業に投資するとしている。

今後、詳細を詰め、所要の認可を受けて、2008年後半に設立する予定。

 

   付記 2007/12/19 ダウとPIC のグローバル石化JV 詳報


2007/12/15 ChemChina 等の豪州の農薬会社Nufarm 買収交渉、破談

豪州の農薬会社Nufarm 115日、中国化工集団公司 (ChemChina)Blackstone Group 及び Fox Paine Management III, LLC からの26億米ドルでの買収提案を受けた。

   2007/11/8 ChemChina Blackstone Group など、豪州の農薬会社買収

コンソーシアムはその後、Nufarm との話し合いに基づき、due diligence を行なってきた。

しかしながら、コンソーシアムは交渉期限の1210日までに正式提案をすることが出来ないと通知し、その結果、交渉は打ち切られた。
グローバルな信用収縮により、有利な借入ができなくなったのが理由とみられている。

これを受けてインド紙が、インドの最大の農薬会社United Phosphorus が買収を検討していると伝えたが、Nufarm はどこからもコンタクトはないとしている。

Nufarm に関心を持つ企業は多く、最終的にはNufarm の買い手が現れるとみられている。

付記

中国中化集団公司(Sinochem)は 2009年9月28日、28億豪ドルでNufarmを買収する非拘束契約を締結した。先ずSinochem がdue diligenceを行い、その後、独占ベースの売買契約を締結し、株主及び両国当局の承認を得る。

Sinochemは元国営の石油トレーディング企業で、石油の探鉱開発,生産,精製まで一貫操業を目指す。
同社は別途、
crop protection value chainR&Dから製造、販売、サービスまでを含むグローバル企業になることを目指している。

ーーー

金融関係の調査会社Dealogic によると、本年下期(12/5まで)の世界のM&A は1兆8500億ドル(計画ベース)で、過去最高だった上期の2兆7100億ドルの7割弱に止まっている。
サブプライム問題で損失を抱えた金融機関が融資に慎重となり、ファンド向け融資の金利も上がっている。


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