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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携 

BP114日、ロシアのRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意したと発表した。

Rosneft(ロスネフチ)はロシアの石油会社で、ロシア政府が75.16%を所有、残りは公開されているが、国有財産管理庁に管理されており、実質的にロシアの国営企業である。
サハリン、シベリア、
Timan-Pechora行政区、そしてチェチェンを含む南ロシアで石油と天然ガスを生産している。
生産量は原油換算で日量240万バレ
ル。

Rosneft BPの株式5%を購入、見返りにBPRosneft株式 9.5%を購入する。
BPRosneftに発行する株式の価値は現在の株価で約78億ドルになる。両社は持ち合いを長期の、戦略的なものとみている。
(契約上は2年間は売却できず、その後も売却に制限がついている。)

両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区EPNZ 1,2,3)を共同で開発する。2010年にRosneftが権利を取得したもので、South Kara Sea125千km2にわたるもの。英国北部の北海油田と同程度の広さで、同規模の石油産出量が期待できるという。

付記 その後の情報では、Rosneftは開発JV2/3を所有するが、開発コストの最初の20億ドルはBPが負担する。

BPはメキシコ湾の原油流出事故後に、補償資金の確保のため多くの既存油田の権益売却を進めているが、その一方で、未開発油田の大きいロシアでの事業拡大を目指す。

両社はまた、ロシアに北極圏技術センターを設立し、ロシアや海外の研究所や大学と協力して、北極海の大陸棚から石油を安全に採掘するための技術を開発する。安全性、環境との調和、緊急漏えい対策などのBPの経験と知見を基にする。

両社はKara Sea以外のロシアの北極圏の石油開発についての技術的研究も実施する。

両社は今回、ドイツのRuhr Oel GmbH50/50株主となるが、これ以外にも国際的な協力関係を探る。

Ruhr Oel BPとベネズエラ国営石油会社PdVSA JVであった。
1983年に当時のVeba Oel AG PdVSA JVとして設立され、その後、Degussa Veba を買収したが、2002年にDegussa 親会社のE.On Veba BP に売却した。)

Rosneft 201010月にPDVSA50%持分を16億ドルで買収する契約を締結した。
手続きが完了すれば、
Ruhr OelBPRosneft50/50JVとなる。

Ruhr Oel Gelsenkirchenに製油所と石化コンプレックスを持ち、BPのドイツ子会社のBP Refining & Petrochemicalsが運営を受託している。
他に、石油精製会社
MiRO24%Bayernoil 25%PCK Schwedt 37.5%を保有している。
Ruhr Oel の石油精製能力の持分は合計で年2320万トンで、ドイツの精製能力の20%を占める。

付記
本取引は2011年5月1日に成立した。

BPRosneft 20061月にロシアの北極圏を評価する共同研究を行っている。

両社はサハリン4とサハリン5プロジェクトを共同で開発中。
    2006/6/6 
「新・国家エネルギー戦略」発表 後半に記載

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RosneftSinopec とも提携している。

両社は2006 年11 月に戦略的枠組み協定に調印し、TNK-BP (Tyumen OilとBPの合弁)からUdmurtneft(沿ヴォルガ地域)油田を買収、共同経営を開始した。

Sinopec はRosneft からサハリン3の一部 Veninsky oil project の25.1%の権益を取得している。(残り74.9%はRosneft)
なお、Sinopecが最近、開発がうまくいかないとして技術者を引上げたとの情報がある。

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BPはロシアでは50/50JVのTNK-BPを持っている。

2008/9/9 BP、ロシアの石油JV 経営問題でロシア側に譲歩

付記

Alfa Access Renova を構成する4人の新興財閥が1月27日、BPRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPTNK-BPの株主協定に違反するとしてロンドンの高等法院(High Court)に訴えた。

TNK-BP はロシアで3番目に大きい石油会社で、BPAlfa Access Renova group 50%ずつ所有している。
(付記 正しくは一般株主が5%で、
BPAlfa Access Renova group 45%ずつ。)
Alfa Access Renova 下記の3社の連合。

Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman German Khan 50%ずつ保有。
Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。
Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。

BPRosneft の交渉を直ちに取りやめることを求めており、本件をやめろというのではなく、BPがロシアではTNK-BP通して活動することを求めている。 4人は株主契約がそうなっていると主張している。
4人は特に、詳細を伝えられなかったことに不満を表明している。

これに対しBPは、Rosneftとの取引はTNK-BPの契約に違反しないと主張している。
BP内部では、TNK-BPは北極海での作業に必要な海上掘削の経験がないことを指摘している。

Rosneftの会長でPutin首相の腹心で、副首相でもあるIgor Sechinは、この問題は解決するものと信じるとのみ述べている。

Putin首相と腹心のIgor Sechin副首相がバックアップする取引への公然とした挑戦であるとして注目されている。

   −−−

2月1日、裁判所は調停での問題解決を命じた。それまで交渉は中断する。
BPは同日、調停にかけることを発表した。

付記

調停委員会は2011年5月1日、下記の決定を下した。

TNK-BPRosneft の同意を前提に、北極海開発に参加する。
・これを条件に、
BPRosneftの株交換を認める。
  但し、株交換は投資目的に限られ、議決権は独立の受託者に供託、双方は役員を派遣しない。

付記

BPとRosneftの契約の有効期限は2011年5月16日であり、結局期限切れで無効となった。



2011/1/18 水銀条約とPVC 

水銀条約の制定に向けた政府間交渉委員会の第2回会合が1月24日ー28日に千葉市幕張で開催される。

国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)では、国境を越えて広がる水銀汚染と健康被害を防ぐため、2001年以来、地球規模での水銀対策について議論が行われている。

付記 水銀の問題については、石弘之氏がECO JAPANに「大詰めの水銀条約 変わる人類と水銀の“付き合い”」を書いている。
  
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20100514/103826/?P=1 

国立環境研究所 「我が国及び世界の水銀の使用・排出状況

2009年2月に開催された第25回UNEP管理理事会で、水銀対策についての条約制定のための政府間交渉委員会を2010年に設置し、2013年2月の第27回UNEP管理理事会までに成案を得ることが決定された。

2010年6月にストックホルムで水銀に関する条約の制定に向けた政府間交渉委員会第1回会合が開催された。

この会合の特徴のひとつは、NGOがこの会合に参加し、会議の場で発言して意見表明をすることができるということで、多くのNGOが意見を述べた。 もちろん、決定権はない。

会合の冒頭で、日本は以下の発言を行った。

・水俣病の経験国として、同様の健康被害や環境破壊が世界で繰り返されないよう、今後とも交渉に積極的に貢献
・日本の知見や経験、汚染防止対策、排出抑制技術、水銀代替技術の共有を通じて水銀によるリスクの低減に貢献
・2013年後半に予定される外交会議を日本に招致し、承認される条約を「
水俣条約」と名付けたい。

その後、条約の目的及び内容等(水銀の供給・需要・貿易の削減、水銀廃棄物の適正管理、水銀の保管、大気への排出の削減、普及啓発、能力開発及び技術的・財政的支援等)について、順次各国から意見が述べられた。

各国からの意見を基に、次回の会合に向けてUNEP事務局が、条約に盛り込まれるべき要素を提示、議論に必要な様々な情報を整理すること等が決定された。

千葉で開催される第2回会合では水銀条約の原案が提示される。

1月7日付け毎日新聞はこの骨子を報じている。

・目的 水銀と水銀化合物の人為的排出から健康と環境を守る。
・供給削減   鉱山から採掘した水銀を禁輸する。
保管   新たに策定する方針に基づき、適正管理する。
貿易   輸出通知書の提出と、輸入同意書を取り、認められた場合のみ輸出できる。
水銀添加製品の
 使用
  付属書で適用除外用途として登録しない限り、製造、流通を認めない。
大気への排出   最良技術の適用を義務づけ。年間排出量の多い国は削減目標と行動計画を策定する。

付記
第2回政府間交渉委員会が開かれる前日の1月23日に、NGOが同じ会場で水俣病患者を招いた集会を開いた。
集会では、日本政府が「水俣条約」と命名するよう提案していることに対し、水俣病の被害者や支援者などの団体が声明を発表、「日本政府が、悲劇にきちんと向き合い、本質的解決の道筋が示されない限り、反対する」と主張した。

付記

国連の政府間交渉委員会は1月28日、水銀の輸出を原則禁止する方向で各国が大筋一致し、閉幕した。
禁輸は世界的な流れになっているが、途上国や新興国を中心に、代替技術の早期導入が難しいものは例外を認め、猶予期間が必要との意見もあり、議論を継続 し、2013年の採択までに結論を得る。

ーーー

UNEPが 2009年5月に発表したアジアの水銀使用の状況は以下の通り。
  (2005年ベース、輸出製品含有を含む。単位:トン/年)

  中国 東アジア
東南アジア
(除 中国)
南アジア
小規模金採鉱 120240 288384 312
カーバイド法VCM  700800  ー   ー 
水銀法電解 ー  48 3540
電池 150200 5070 3050
虫歯治療材 4555 2531 2232
計測器 280310 2030 4050
照明(蛍光灯など) 6070 2025 2025
電気器具 3040 1520 2530
その他(農薬、触媒、その他) 4080 3040 2030
合計 14251845 452608 195269

東アジアは日本、韓国など
南アジアはインド、パキスタン、アフガニスタンなど

小規模金採鉱とは途上国で行なわれている人力による零細な金採鉱で、手掘りした金鉱石を水銀を用いて金との合金(アマルガム)をつくり、それを熱して水銀を蒸気にして飛ばし、金を得るという原始的な作業で、ほとんどが非常に貧しい人々が従事し、世界中で家族を含めて1,000万人近くいると言われている。

ここで使用される水銀のほとんどは先進国から輸出されており、水銀の輸出禁止が水銀条約の大きなテーマとなる。

EUと米国は水銀の輸出を禁止した。多くの開発途上国と移行経済国でEU と米国から輸入される水銀の大部分が持続可能ではない方法で用いられていることを示す証拠があるからである。

EU の禁止は2011年に発効する。余剰水銀は世界の市場に出回らないようにするために、同年をもって安全に保管される必要がある。
米国の禁止も2013年に発効する。米国はエネルギー省に対して2010 年までに保管施設を選定するよう求めた。

日本は非鉄精錬の副産物や蛍光灯などの水銀含有製品から年間100トン以上の水銀が回収されるが、ほとんどは余剰水銀として輸出されており、多くが、最終的に途上国の小規模金採鉱で使用されていると言われている。
日本からの輸出先には大きな需要がないはずのシンガポール(2009年 54.2トン)や香港(同 27.6トン)が含まれ、NGOでは転売されている可能性を指摘する。

2009年10月に、国内54団体、海外60団体の計114団体の賛同を得た市民団体共同声明が政府に提出された。
日本は水俣の悲劇を経験しているにも関わらず、残念ながら、非鉄金属精錬、水銀含有廃棄物、その他からの回収により生じる水銀を開発途上国や移行経済国を中心に毎年100トン以上輸出し、結果として、世界の市場に回収水銀を再循環させています」とし、
・「水銀輸出禁止法」を早急に制定すること
回収水銀等、国内で発生する余剰水銀を国内で安全に永久保管すること
などを求めている。

輸入同意書を得ても転売される可能性はあり、日本も輸出を禁止すべきであろう。同時に(売却できることで回収されている)水銀の回収がおろそかになり放置されることは絶対にあってはならない。

ーーー

日本では当初、PVCの製造では、水銀法電解による塩素と、カーバイド法アセチレンからVCMを製造しており、塩素製造とVCM製造プロセスで水銀を使用していた。

  @水銀法電解

精製塩水を電解槽(陰極に水銀を使用)に送り電気分解する。

陰極(水銀)でナトリウムアマルガム(Naと水銀の合金)を生成、これを解汞塔で加水分解し苛性ソーダを得る。
  Na
+e―→Na(Hg) 
  2Na(Hg)+2H
O→2NaOH+H

陽極で塩素ガス(Cl2)が発生

  Aカーバイド法アセチレン

石灰石を焼いて生石灰に還元。
  CaCO
3→CaO+CO2

生石灰とコークスの混合物をカーバイド炉に投入し、電極放電で得られる2,000度C以上の高温下でカーバイドを製造。
  CaO+3C→CaC
2+CO

カーバイドからアセチレンと水酸化カルシウム(消石灰)を製造。
  CaC
2+2HO→C2H+Ca(OH)2

  BVCMの製造

    アセチレンと塩酸を塩化水銀(HgCl2)触媒下で反応させ、VCMを製造
      C
2H+HCl →C2H3Cl

その後、下記の経緯で、水銀を使用するプロセスは使われなくなった。

1960年頃に電気の価格の上昇でカーバイドのコストが上がり、採算が苦しくなった。
その頃、EDC法が導入され、各社がこれを採用しようとした。

当時の通産省はVCMの新増設の承認にあたり、@カーバイドのコスト引き下げは難しいので、今後はEDC法などを採用すること、Aその場合、古いカーバイド法のS&Bで実施することなどを条件とした。

この結果、その後カーバイド法はすべてなくなった。

水銀法電解についてはその後も使われていたが、1956年5月に水俣病が公式に確認され、その後、水銀が原因であることが分かった。
このため、1973年4月に通産省がソーダ業界に対して非水銀法への転換を要請、1986年までに隔膜法やイオン交換膜法にすべて転換された。その後、1999年には日本の製法はすべてイオン交換膜法になった。

なお、チッソ水俣工場では、アセチレンからアセトアルデヒドの製造工程で使われた触媒の水銀がメチル水銀となり、廃液とともに排出された。

アセチレン(C2H2)+H2 →アセトアルデヒド(CH3CHO)

アセチレンを水に通しただけでは、水和は起こらないので、酸化水銀HgOを加えた硫酸水溶液にアセチレンを吹き込み、上の反応を起こした。
この過程で一部、水銀化酢酸が発生し、これが脱炭酸反応することによりメチル水銀が生成したと考えられる。

昭和電工の鹿瀬工場においても同様である。(新潟水俣病)

昭和電工は1965年に、チッソは1968年に生産を停止した。
(昭和電工は徳山で、チッソは千葉で、エチレン法によりアセトアルデヒドを生産した。)

ーーー

水銀法電解は欧州でも今も使用されている。

ECは2002年7月に塩素業界に対し、水銀排出の自己規制システム導入を要請したが、当時の水銀法能力は600万トンで、全生産量の54%を占めていた。

欧州の塩素の業界団体Euro Chlor20032月の総会で、2020年までに水銀法の能力を全廃する目標を決めた。

2007年にイオン交換膜法の能力は初めて水銀法能力を上回った。

2008/10/8 Solvay、フランスの水銀法電解をイオン交換膜法に転換

ーーー

では、2000-05年の5カ年計画で水銀法電解は廃止され、現在は使われていない。
しかし、カーバイ
ド法PVCについては、エネルギー消費が多いことや環境問題から一時は廃止する動きがあったが、PVC需要の大幅増に対処して、休止中のカーバイド法設備の稼動や新・増設で自給能力を高める方向を目指した。

一方で中国政府は2004年以降、過剰能力、廃棄物対策、公害防止などの理由で、小規模設備の規制を続けてきた。

塩ビ関連では以下の通り。

2004年5月、アセチレン法PVCでは年産8万トン以下(EDC法では20万トン以下)の新設を禁止
同時に、
環境に悪影響を与えると見られる技術の使用禁止とし、禁止品目に水銀法苛性ソーダや毒性の強い各種の農薬・殺鼠剤、シックハウスの原因となる塗料等が含まれた。

2005年12月、アセチレン法PVC禁止を12万トン以下に変更

2006年5月、カルシウム・カーバイド工場について、年1万トン以下の炉、開放型の炉、環境基準に満たない炉は停止
2010年8月、4万トン以下の多数の老朽カーバイド工場に停止命令が出された。

この結果、逆に大規模なアセチレン法PVC設備が多数建設された。
中国工業情報化部(MIIT)によると、現在の中国のアセチレン法PVCの状況は以下の通り。(下記の通達に記載)

2009年末時点で中国に104のPVCメーカーがあり、能力合計は1481万トン、うち、カーバイド法は94で、能力全体の76.5%を占める。カーバイド法の生産量は580万トンで、生産量合計の63.4%を占める。

塩化水銀(HgCl2)触媒はPVCトン当たり1.2kg使用されている。(HgCl2は平均11%含まれる)
2009
年のカーバイド法生産量は580万トンのため、触媒は7000トン使用された。HgCl2は770トン、水銀は570トンとなる。

現在、塩化水銀の回収率は75%で、水銀を含む塩酸等は20%しか回収されていない。

中国での水銀使用のうち、カーバイド法PVCは60%を占める。

中国では最近、水銀や重金属の汚染事故が多発しており、2009年11月には関係省庁が共同で重金属汚染防止の通達を出している。

加えて、PVCと電池の伸びで中国は水銀の生産が追い付かず、50%を輸入に頼っており、水銀条約で今後、世界の水銀鉱山が閉鎖され、輸入できなくなると、供給源が断たれることとなる。

しかし中国ではカーバイド法PVCは70%以上を占めており、これをすべてエチレン法に転換するのは無理である。
政府間交渉委員会第1回会合でも、中国は、PVC製造のために石炭を使う必要があり、ある程度の水銀排出はせざるを得ないと主張している。

中国が水銀法の電解を禁止しながら、同じように水銀を使うカーバイド法PVCを禁止しないのは、中国が大量に輸入をせざるを得ない石油を原料とする(エチレン法)のではなく、中国に大量にある石灰石と石炭(コークス)を原料としたいためである。

深刻な環境汚染と水銀の供給問題に直面し、中国石油化学工業協会とクロルアルカリ工業協会は2009年に共同で指針を出したが、工業情報化部(MIIT)はこれに基づき、UNEPの動きも踏まえ、2010年5月31日付で通達261号「カーバイド法塩ビ業界 水銀汚染総合防止管理通達」を出した。 http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11293832/n12843926/13249494.html

125カ年計画(2011-15)期間中にカーバイド法PVC業界の水銀の管理を強化し、水銀汚染を防止するもので、
2012年までに低水銀触媒の使用を50%にし、塩化水銀の使用量を25%減らし、使用済み水銀触媒の回収をリーズナブルなレベルで行う
塩酸深度脱吸技術普及率を50%以上とする
2015年までに低水銀触媒の使用を100%にして、使用量を50%減らし、使用済み水銀触媒を100%回収する
というもので、対策等を詳細に述べている。

低水銀触媒は触媒中の塩化水銀の量を半減するもので、新疆天業集団、河北盛華化工青島海晶化工など、20社以上で使われている。

また、いろいろの水銀回収技術や水銀を使用しない触媒の開発も行われている。

しかし、多くの解決すべき問題があり、2015年にまでにこの目標を達成するのは非常に難しい。
また、目標が達成できても、水銀の使用は半分は残ることとなる。


2011/1/19  DuPontDaniscoを買収へ 

DuPont19日、デンマークの食品用酵素や素材のメーカーのDaniscoを現金58億ドルと5億ドルの債務引き受けの合計63億ドルで買収する提案を行ったと発表した。
この買収により、工業用バイオ技術のリーダーになるとしている。
Danisco側はこの提案を歓迎している。

付記 DuPontは1月21日にTOBを開始した。

その後、TOB期間を延長、331日には独禁法当局からの承認の関係で429日に延長すると発表した。

合併の独禁法審査は、415日の中国商務部の承認ですべて完了した。 

同社は4月29日に以下の発表を行った。
 ・買収価格を従来の1株DKK 665からDKK 700に引き上げる。
 ・TOB期間を5月13日に延長
 ・買収最低株数を従来の90%から80%に引き下げる。

付記

TOBは5月13日に締め切り、92.2%が応募、成立した。

 

DuPont30億ドルを手持ち現金で、残りは借入金で賄う。
買収は第
2四半期に完了する予定。

Danisco19世紀末にデンマークでDanish Sugar and Danish Distillersとして設立された。
1960年代後半に砂糖を原料とした果糖の工業的結晶化に成功し、以来フルーツシュガー(果糖)はフィンランドをはじめ、遺伝性糖尿病患者を抱えるヨーロッパ諸国を中心に広まった。
米国では英国のTate & Lyleの技術提携により大量生産を行っている。

Tate & Lyleは穀類を使った甘味料、デンプン、精糖、高付加価値食品および工業用原料、およびクエン酸などを扱っており、工業用デンプンでは世界第一位、SPLENDA®スクラロース(高甘味度甘味料)を製造する唯一のメーカー。
過去10年間で同社のテクノロジーの中核をなす発酵技術を確立し、現在では世界有数の発酵メーカーとして4大陸に17の発酵設備を所有している。

Daniscoは創業当初より乳化剤、食品用香料、食品用酵素などをはじめ、安定剤や乳化安定剤ブレンドといった分野へも進出した。

現在のDaniscoの事業は以下の通り。

分野 部門 製品
Food Ingredients Enablers Emulsifiers, Hydrocolloids その他の食品添加剤
BioActives Cultures 種菌、培養基、凝固剤、酵素
Sweeteners 果糖
Fructofin(ビート):フィンランド工場
Krystar300(とうもろこし):米国提携工場(Tate & Lyle
Industrial Biotech Genencor Bio chemicals projects(工業用酵素)

Food Ingredientsが売上高の67%、Genencorが33%を占める。

同社の業績は以下の通り。(単位:百万DKK) 

    2008/5-
 2009/4
2009/5-
 2010/4
構成比
売上高 Enablers 5,544 5,691 42%
Cultures 1,917 2,072 15%
Sweetners 1,495 1,419 10%
Genencor 4,035 4,524 33%
合計 12,991 13,706 100%
営業損益
(除 特殊項目)
Enablers 646 923  
Cultures 320 396  
Sweetners 77 20  
Genencor 401 616  
合計 1,444 1,955  

   1DKK14.7円 売上高は約2000億円

DuPontDaniscoの統合で工業用バイオ技術の強化が期待される。

DuPontは既にDaniscoの工業用バイオ部門のGenencorとの間で提携している。

DuPontGenencorは1995年に、コーンスターチからBio-PDO プロパンジオールを生産する発酵生体触媒を開発する目的で提携した。
DuPontは現在、テネシー州にあるDuPont Tate & Lyle Bio ProductsBio-PDOの商業生産を行っている。

DuPont200810月、Genencorとの間で50/50 JVDuPont Danisco Cellulosic Ethanol LLC を設立することで合意したと発表した。
次世代バイオ燃料であるセルロース系エタノールの生産に対する優れた低コスト技術ソリューションを開発・商品化し、
750 億ドルの世界市場機会に取り組むもので、最初の3 年間に14000 万ドルを投資し、まずトウモロコシの茎や芯とサトウキビバガスを原材料とする。将来は、麦わら、様々なエネルギー作物、他のバイオマスを含む多数のリグノセルロース系原料をターゲットとする。

DuPont Danisco Cellulosic Ethanol LLCは20102テネシー州Vonoreでセルロース系エタノール実証施設の開所式を行った。

2010/2/10 DuPont、セルロース系エタノールの高性能生産施設をオープン

 


2011/1/20 Evonik、インドでのHPPOプロジェクトでインドのGACLと覚書締結

Evonik(旧 Degussa)はこのたび、インドでのHPPOプロジェクトに関し、インドのソーダ会社 Gujarat Alkalies and Chemicals Limited GACL)と覚書を締結した。

EvonikUhdeが共同開発した過酸化水素法プロピレンオキサイド(HPPO)をGACLが建設し、過酸化水素工場をEvonikが建設するもの。GACLの拠点のインドGujurat Dahej に建設する。

ーーー

HPPODowBASFが共同で開発し、過酸化水素についてはSolvayが協力している。
DowBASFはアントワープでJVHPPOを生産している。
   
2009/3/12 ダウとBASFのHPPO法PO 生産開始

Dow Chemical はまた、タイのSiam Cement Group (SCG)とのJVMTP HPPO ManufacturingHPPO工場を建設している。
   
2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設  

ーーー

Evonikはこれとは別に、Uhdeとの共同開発でHPPO製造技術を開発した。

Evonikは世界第二位の過酸化水素メーカーで、欧州、北米、南米New Zealand、韓国、南ア、インドネシアで合計年産60万トンの過酸化水素を生産をしている。

同社は2001年にUhdeとの間でHPPOプロセスの独占パートナーシップを結んだ。
Evonikがプロセスや触媒を担当、Uhdeが設計、建設を行うもの。

ドイツのHanau-WolfgangEvonikの工場にパイロットプラントを設置し、研究を行った。

プロセスは以下の通りで、詳細は下記参照
  
http://www.uhde.eu/cgi-bin/byteserver.pl/archive/upload/uhde_brochures_pdf_en_10000032.00.pdf

EvonikUhdeはこの技術を韓国のSKCに供与し、SKCは蔚山に100千トンのHPPOプラントを建設、2008年にスタートした。

SKCは旧称・油公ARCOで、ARCOPO/SM併産法で180千トンのPOを生産しており、HPPOを加え、POの合計能力を280千トンとした。

なお、Evonikは子会社Evonik Degussa Peroxide Koreaで過酸化水素を製造しているが、201011月、SKCはこの子会社に45%出資し、協力関係を強化した。

インドのプロジェクトは韓国のプラントをモデルとする。

ーーー

GACL1973年にGujarat州政府の Gujarat Industrial Investment により設立された。

同州のVadodaraDahejに工場を有し、苛性ソーダ、塩素、塩酸、クロロメタン、過酸化水素、その他を生産している。

 


2011/1/21 日ロ、LNG事業協力で正式調印

資源エネルギー庁とロシア国営ガス会社Gazpromは1月17日、ロシア東部での協力推進に関する合意文書に調印したと発表した。

合意は、ウラジオストク周辺における天然ガス利用と、ウラジオストク周辺からアジア太平洋諸国の需要家に向けた天然ガス及びガス化学製品の輸送・販売に関する共同FSの実施を内容とするもの。

具体的には、
・ウラジオストク周辺における
LNG製造プラント建設に関するPre-FEED(初期設計前段階)、
CNG(圧縮天然ガス)生産・海上輸送、
・ガス化学製品の生産
に関する共同FSの実施が予定されており、これらは2011年末までに完了する予定。

LNGの主成分であるメタンは圧力をかけても常温で液体にはならないため、温度をマイナス162℃の極低温にすることにより、液化して体積を1/600にする。

CNG(圧縮天然ガス)は天然ガスを気体のまま高い圧力で圧縮したもの。天然ガスは、化石燃料の中でCO2の排気量が最も少なく、また煤塵、SO×の排出もほとんどなく、NO×低減も行いやすいクリーンなエネルギー。
これを燃料に使う天然ガス自動車は世界で約120万台が走行している。

双方はまた、2005年に締結した協力に関する枠組み合意を5年間延長した

Gazpromは、世界最大のガス生産規模を誇るロシアのガス会社で、天然ガスの年間生産量は4,615億m3、年間輸出量は2,205億m3(いずれも2009年)。

付記

事業遂行のため、新会社「極東ロシアガス事業調査」が設立された。
  伊藤忠 32.5%、伊藤忠子会社 5%、石油資源開発 32.5%、丸紅 20%、国際石油開発帝石 10%

同社は4月25日、ガスプロムとの間で、ウラジオのLNGプラント建設に向けた調査を共同で実施することで合意した。

付記

日ロ両政府は2012年6月24日、ロシア極東・ウラジオストクでのLNG基地の建設プロジェクトに対し、両政府が協力を深めることを盛り込んだ覚書を結んだ。
ロシア側は年内に投資概要を決める。
日本政府は、日本企業による事業への本格投資や、LNGの日本への輸出実現に向けて支援する方針。

ーーー

Gazpromと資源エネルギー庁は、2005年11月21日に、5年間の協力に関する枠組み合意を締結した。
この合意は、双方のガス分野における協力の主な方向性を定めたもので、協力の実施機関として、共同調整委員会が設置されている。

2009年5月にPutin首相が訪日した際、Gazpromと資源エネルギー庁、及びFSを担当する伊藤忠商事、石油資源開発(JAPEX)が、ウラジオストク周辺におけるLNG/CNG製造プラント建設に関するプレFSに関するMOUに署名した。

プレFSの結果は、2010年7月にサンクト・ペテルブルグでの第5回共同調整委員会で検討された。
今回の合意書は、プレFSの結果を受けて、従来のMOUを発展させて締結されたもので、実際には2010年7月に大筋合意していたが、11月のメドベージェフ大統領の国後島訪問の余波もあり、11月中旬のガスプ ロム社長の訪日が中止となるなど、正式調印が後ズレしていた。

ーーー

アジア太平洋諸国へのガス供給増加を目指しているGazpromは現在、サハリン南端のPrigorodnoyeにあるロシア唯一のLNG施設(サハリンエナジー所有)を通じて日本にサハリン2の天然ガスを供給している。

サハリン2プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%
→12.5%
・三菱商事 20%
→10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
@原油 10億バレル
A天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、同地で液化後、LNGをタンカーで輸出

Gazpromは、LNG輸出事業の一環として、サハリンからハバロフスクを経由しウラジオストクに延びるガス輸送用パイプライン の敷設を進めている。プリゴロドノエに次ぐ国内2番目のLNGプラントをウラジオストクに建設し、LNGを輸出する計画である。

付記 2011年9月8日、プーチン首相が出席し、稼働式典が行われた。
    全長約1800kmで、当初の輸送能力は年60億立方メートル。

 


2011/1/22 中国のGDP、世界2位に 

中国国家統計局は1月20日、2010年の国内総生産(GDP)が実質で前年比で10.3%伸びたと発表した。
2008年は9.6%、2009年(修正後)は9.2%であったが、3年ぶりに2ケタとなった。

名目GDPは39兆7983億元(5兆8895億ドル)で、日本を抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国になるのは確実。
(大和総研の試算では、日本の名目GDPは5兆4778億ドル)

付記

政府の2月14日の発表では日本の2010年の名目GDPは、総額で479兆2231億円(5兆4742億ドル)となり、中国が日本を逆転することが確定した。

第4四半期は前年比9.8%で、エコノミスト予想 9.2%を上回った。(1Q 11.9%、2Q 10.3%、3Q 9.6%)

中国の高成長の原動力は公共事業を柱とする投資で、2010年の都市部の固定資産投資は前年比 24.5%の増となった。
(2009年は30.4%)

また、既報の通り、2010年の輸出額は過去最高の1兆5779億ドルで、2009年に続いてドイツを上回り、世界一となったとみられる。

2011/1/11 中国の2010年貿易収支

しかし、国家統計局の馬建堂局長は発表に当たり、次のように述べている。

中国の経済規模が増加し、ランクが上がったことは、改革開放の勢いある活力の現われだ。

しかし、中国の発展モデルは依然として粗放であり、単位GDPあたりのエネルギー消費量、水・資源の消費量はまだ大きく、中国は経済発展の質の向上に向けてまだ多くのことをしなければならない。
また、中国は人口が多く、一人当たりGDPはまだ下位にランクインしている。世界銀行の2009年のデータによると、213の国と地域のうち、中国の一人当たり国民所得は124位だった。

同時に発表された12月消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比 4.6%であった。うち、食品は9.6%で、いずれも11月よりは鈍化した。
CPIは年間では3.3%のアップで、政府の年間目標 3%を上回った。

生産者物価指数(PPI)は年間で5.5%のアップとなった。(12月は5.9%)

インフレ抑制のために中国が人民元の自発的切り上げをするのではないかとの見方が現れている。


2011/1/24  2010年米住宅着工件数 

米商務省は1月19日、12月の住宅着工件数を発表した。

季節調整済みの年率換算で529千戸で、550千戸程度との市場予想を下回った。
前月比で4.3%の減、前年同月比で8.2%の減となった。
しかし、先行指標となる住宅着工許可件数は前月比16.7%大幅増の年率635
戸となった。

2010年の年間合計では587.6千戸となった。
1959年の統計開始以来の最低記録を更新した2009年と比べ、33.6千戸の増加となったが、2008年と比べるとまだ、65%の低い水準である。

米国経済の他の分野では改善兆候が見られているにもかかわらず、住宅建設業者は引き続き悲観的見方を維持している。
回復にはかなり時間がかかりそうだ。

ーーー

日本も同様で、2007年6改正建築基準法の施行で着工件数は同年秋に激減した。
その後若干の回復を見たが、2009年以降はその低水準で推移している。
(2010年も810千戸程度の予想で、1996年の半分。)

付記 2010年暦年は813千戸となった。

 


2011/1/25 SABIC 2010年決算速報 

SABICは1月19日、2010年の決算速報を発表した。

それによると、営業損益は37,830百万SAR(サウジリヤル)、純損益は 21,590百万SARで、粗利益は前年18,804百万SARの2倍、純損益は同 9,074百万SARの2.4倍と好調であった。

なお、純損益 21,590百万SARは米ドル換算で約 5,760百万ドルになる。

同社では純損益の増加を、ほとんどの石油化学、合成樹脂製品の値上がりと生産量、販売量の伸びによるとしている。
2010年の生産量は前年比12%増、販売数量は9%増となった。

SABICCEOのMohamed al-Madyは記者会見で、「生産量は今後も増大する。我々は金融危機から立ち直った。2010は成長の始まりであり、2011、2012に成長を続ける」と述べた。

SABICが35%出資するSaudi Kayan Petrochemicals が下半期に商業生産を開始する。
年産
14万トンのアセトンは既に完成し、SABICは1月17日に初出荷した。PC(26万トン)は2月に試運転を開始する。

CEOはまた、戦略に合致する投資機会を引き続き検討するとし、ラテンアメリカを例に挙げた。

営業損益を四半期別にみると次の通り。

原油価格高騰(グラフでは国産ナフサ基準価格で表示)とその結果としての石化製品の国際市況の高騰に応じて増益となり、2008年3Qに最高益を出した。
同社の原料のエタン価格は変わらないため、売価のアップはそのまま利益増となる。

その後の原油価格暴落と金融危機による需要の減で2009年1Qには営業損益はわずか381百万SARにまで落ち込んだ。

2009年2Qからは原油価格が再び上昇、それに応じて利益も増加した。
2010年の損益が原油価格上昇以上に増えているのは生産、販売数量の増による。
(2008年4Q-09年1Qは逆に販売数量の激減による。)

 2010年4Qの国産ナフサ価格 45,000円/klは仮価格。
 (12月輸入価格はMETI発表のエチレン用輸入ナフサ通関実績を使用)

 


2011/1/26 DSM、ロシアで KuibyshevAzot OJSC とポリアミドで戦略的提携

DSMとロシアのKuibyshevAzot OJSC KA社)は120日、戦略的提携を発表した。

両社はロシアに次の2つのJVを設立する。

@PA6のコンパウンドとフィルムの(ロシア、CISでの)マーケティングと販売のJV
   DSM Engineering Plastics 51%出資

ATogliattiにあるKA社のコンパウンド工場をJV化する。
   
DSM Engineering Plastics 80%出資
   (これにより、
DSMはロシア、CISで製造する最初の欧州のPA6メーカーとなる。)

合わせて、KA社はDSMからシクロヘキサノンの製造技術のライセンスを受ける。
最新技術導入により、
TogliattiにあるKA社のカプロラクタム工場に適用、能力増強を図る。

DSM15年間、ライセンス収入を得るとともに、増産分の一部の引取権の交渉をするとしている。

参考 シクロヘキサンー(酸化)→シクロヘキサノン→カプロラクタム→PA6

ーーー

PA6を中心とするEngineering plastics DSMのコア事業の一つ。

DSM20102月に、三菱化学との間で、DSMPC事業と三菱化学のナイロン事業の交換契約で合意している。

   2010/3/3 三菱化学、DSMとの高機能樹脂事業における事業交換契約に合意 

DSMは2007年に新しい戦略 Vision 2010 Building on Strengths strategy を発表した。
Life Sciences Materials Sciences へのシフトを進めるとし、非コア事業の処分計画を進めるとともに、コア事業では買収と提携を検討するとした。

2007/10/3 DSMの経営方針
2011/1/5 DSMMartek Biosciencesを買収 再構築をほぼ完成 

今回の提携はこれに沿ったもので、同社ではロシアでのPA6の需要は今後5年で倍増すると見ている。

ーーー

KA社は2つの事業を行っている。

・カプロラクタム、PA6、ヤーン、Tire cord fabric
・アンモニア、窒素肥料

生産実績は以下の通り。 (単位:千トン、シェアは2007年)

  2000   2009   売上高
 シェア
 
Caprolactam 105 175.3 34% 1974年スタート
ロシアのシェア 50%
Polyamide - 86.6 25% 2003年スタート
ロシアのシェア 57%
Technical yarn - 6.3 2004年スタート
Tire cord fabric - 5.1 同上
硝安 299.8 500.5 33% ロシアのシェア 5%
尿素 193.0 312.6
硫安 307.9 448.4
アンモニア 530.6 556.9 2%  
その他     6%  

2009年の売上高は16,039百万ルーブル540百万ドル)。


2011/1/27 三菱商事、インドネシアでLNG計画決定 

三菱商事は1月24日、インドネシアのSulawesi島で、同社が主体のDonggi-Senoro LNG(DS LNG)を事業主体とするLNG製造・販売事業(Donggi-Senoro LNG project)の最終投資決定をしたと発表した。総投資額は約28億ドルとなる。

このプロジェクトは東南アジア最大の天然ガス資源国で世界第3位のLNG輸出国であるインドネシアでのBontangPT Badak NGL)、ArunExxonMobil)、Tangguh(後記)に次ぐ第4LNGプロジェクトで、三菱商事にとってはTangguhに次ぐ2つ目のLNG計画である。

また、当初から三菱商事が計画を主導、完工後はプラント操業の主役を担うという本邦企業初の試み。

付記
三菱商事は1月31日、インドネシア民間最大手エネルギー会社であるMedco Energy Internationalより、同国中部
Sulawesi州に位置するSenoro-Toili天然ガス鉱区権益を20%保有するTomori E&Pの全株式を260百万米ドルで取得したと発表した。
これにより、同社は
Donggi-Senoro LNGプロジェクトの上流から下流にわたるLNGバリューチェーンへの関与を通じてプロジェクトの一体運営を行う。

PT. Donggi-Senoro LNGの概要は以下の通り。

事業内容 LNG製造・販売
設立 2007年12月28日
株主構成 Sulawesi LNG Development59.9%←当初三菱商事 51%
 (三菱商事 75%、韓国ガス公社 25%)
PT Pertamina Hulu Energi 29%
PT Medco LNG Indonesia  11.1%←当初 20%
LNGプラント建設地 Uso area, Sulawesi Island
能力 LNG 年200万トン
コンデンセート 原油換算日量47千バレル
天然ガス
 (
Sulawesi島東部)
Matindok ガス田 Pertamina 100%           
Senoro-Toiliガス田 Pertamina 50%
Medco
  50%→Tomori E&P(三菱商事)20%
         
Medco E&PMedco30%

DS LNG2014年より年間約200万トンのLNGおよび随伴コンデンセート(原油換算約47,000バレル/日)の製造・販売を開始する予定で、LNGプラント建設のEPC契約を日揮との間で締結する。

DS LNGは中部電力(年100万トン)および九州電力(30万トン)とLNG長期引き取りに係る基本合意に達しており、韓国ガス公社(70万トン)とも長期引き取り契約の交渉最終段階に入っている。韓国ガス公社は、三菱商事が今回事業主体として設立する特定目的会社(SPC)のSulawesi LNG Developmentに共同事業者として25%出資する予定。

三菱商事は2007年10月に国際石油開発帝石と共同でMI Berauを設立した。(三菱商事56%、国際石油開発帝石44%)

MI BerauTangguh LNGに16.30%を出資するとともに、プロジェクトの中心的鉱区であるベラウ鉱区の約22.9%権益を取得している。

Tangguh LNG 株主  
 BP 37.16
 MI Berau B.V. (三菱商事、国際石油開発帝石) 16.30
 中国海洋石油総公司 (CNOOC) 13.90
 日石ベラウ石油開発
  (新日本石油開発、石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
12.23%  

 

三菱商事と石油資源開発は2007年3月、インドネシアの大手石油会社であるPT Energi Mega Persada Tbk(EMP)100%子会社のEnergi Mega Pratama(EMPI)に共同で資本参加することによりジャワ島東部のKangean鉱区の権益を取得することに合意した。EMPIには三菱商事と石油資源開発がそれぞれ25%出資する。

同鉱区における開発生産作業は、石油資源開発と三菱商事の2社が主導する。

ーーー

インドネシアでは東京ガスが2010年3月に同じSulawesi島でのSengkang Projectへの参加とLNG購入の基本合意書を締結した。
相手は
Sengkang Projectを推進している豪州のEnergy World

本プロジェクトは区域内で採掘された天然ガスを利用して、インドネシア初の民間による天然ガス発電事業を1997年から行っている。(現在 19.5kW2011年拡張後 31.5kW

LNG生産プラントは、年間生産能力50万トン4基並列で、年間200万トンの LNG2011年から生産する予定。

東京ガスは、Energy World100%保有するガス田開発会社、Sulawesi島内発電会社、LNG生産会社の3事業会社、および今後設立する予定のLNG販売会社の株式を、各25%取得することで協議する。

また、本プロジェクトから生産されるLNGを、2012年以降に年間で50万トン購入することについても協議する。

 


2011/1/27 田辺三菱製薬、品質試験不実施で製品自主回収

田辺三菱製薬は1月26日、同社が製造販売する下記の3製品6品目の一部ロットを自主回収すると発表した。

 プロスタグランジンE1 製剤 リプル注   5μg、10μg
 合成副腎皮質ホルモン剤 リメタゾン静注   2.5mg
 注射用ニューキノロン系抗菌製剤 パズクロス注   300、500、パズクロス皮内反応用セット

対象製品は、同社の100%子会社の田辺三菱製薬工場の足利工場で製造されたもの。

「医薬品の品質管理に関する省令」で、国の承認を受けた医薬品について出荷前に安全性の最終確認をするための品質試験を義務づけている。
しかし、同工場の品質管理部で4製品の試験の大半を1人で担当していた社員は2007〜10年の約3年間、必要な試験十数項目のうち4項目について実施しなかった疑いがある。試験は、製品の不純物が基準値以下かなどを調べるもの。

昨秋、この社員が試験を実施していないとの疑惑が社内で浮上し、昨年末から田辺側が依頼した外部の弁護士チームが調査を実施。調査結果を、田辺側が1月24日に厚生労働省に報告した。

報道によると、子会社従業員の内部通報などで調査をしたが、同社では一旦、「事実なし」と認定した。
子会社従業員が報道機関に内部告発、報道機関の問い合わせを受け、社外調査委員会が事実を認定した。

一つの試験項目は、使うべき備品の数に比べ購入量が少なかったことなどから、「全体の77%は実施していない」と判断。記録では必要な試験は行われ たことになっているため、虚偽の試験結果が記入されたとみている。
もう一つの項目では、機器の使用記録が3年間で1回しかなかったことなどから「試験を実施したとは思えない」とした。
その他の2項目についても、試験をしたとする社員の説明が「不合理で不自然」などとして、「実施しているとは思えない」との見解を示した。

田辺三菱は「問題なしとした社内調査は、調査のノウハウなどが不十分だった。隠蔽する趣旨はなかった。今後は原因究明などの調査を続ける」としている。

厚生労働省は1月26日、足利工場について、薬事法に基づき栃木県薬務課と合同で立ち入り調査を実施した。同省は薬事法違反の可能性もあるとみて調査を始めた。

同社では参考保存品を用いて品質試験を行うなどし、製品品質に問題がないことを確認しており、これまでに本件に起因する健康被害の報告はないとしている。

大正製薬は、注射薬の末梢循環改善剤「パルクス注」の一部ロットを自主回収する方針を固めた。
これは田辺三菱製薬の「リプル注」と同じもので、大正製薬と旧ミドリ十字(現・田辺三菱)が共同開発し、田辺三菱製薬工場で製造している。大正製薬の医療用医薬品事業では抗生物質「クラリス」に次ぐ主力薬。

田辺三菱製薬の土屋社長は26日、東京都内で記者会見し、謝罪した。原因究明と再発防止策検討のため、有識者による「危機管理委員会」を設置したと明らかにした。

田辺三菱製薬は2007年に田辺製薬と三菱ウェルファーマの合併により設立された。

三菱ウェルファーマは、1998年4月に吉富製薬がミドリ十字と合併し、2001年10月に更に三菱東京製薬と合併してできた会社である。(薬害エイズ訴訟薬害肝炎訴訟はミドリ十字から引き継いだものである。)

田辺三菱製薬工場は、2008年に田辺の子会社の山口田辺製薬(小野田工場)と三菱の子会社MPテクノファーマ(足利工場、福岡県吉富工場)が合併して設立された。
その後、2009年に鹿島工場と大阪工場が三菱田辺製薬から分社化して統合され、現在は5工場体制となっている。

ーーー

田辺三菱製薬は、子会社が血液製剤の試験データを改ざんしたとして、2010年4月に厚生労働省から25日間の一部業務停止と業務改善を命じられている。

データが改ざんされていたのは連結子会社のバイファ(北海道千歳市)と共同開発し、バイファが製造、田辺三菱製薬が販売している遺伝子組換え人血清アルブミ ン製剤「メドウェイ注5%」で、同社は2009年3月にデータ改ざんを公表して5%製剤の承認を返上するとともに、同25%製剤を含めて自主回収している。

 2010/4/13 厚労省、子会社のデータ改ざんで田辺三菱製薬に業務停止命令

これを受け、同社の土屋社長は、CSRレポート2010 巻頭鼎談「社会からの信頼回復に向けて」で、以下の通り述べている。

本件は、単に田辺三菱製薬とバイファの問題ではなく、田辺三菱製薬グループ全体の信頼を揺るがす重大な事態であります。グループの社員一人ひとりが自分自身の問題として考えるべきであるという共通認識のもと、再発防止に向けてグループ全体で真摯に取り組み、社会からの信頼回復に努めております。

医薬品の創製や提供を通じて社会に貢献することを再認識できるよう、社員のコンプライアンス意識をさらに高めていきたい。さらには、研究や開発、営業をはじめ、社内のあらゆる部門で、今までやってきた業務を見直し、全社的なチェック体制を整えることが必要ではないかと思います。

 


2011/1/28 林原が私的整理手続き

甘味料トレハロースを開発したバイオ関連企業の林原グループ4社(林原、林原生物化学研究所、林原商事、太陽殖産)が私的整理の一種 「事業再生ADR」(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決)を民間の第三者機関に申請し、受理された。
同社が1月25日に明らかにした。

事業再生ADRは第三者の仲介により、債権者と債務者が話し合いで事業再生計画を作成し、再建を目指す。会社更生法などの法的整理に比べて、手続き期間が短いのが利点。

付記

「事業再生ADR」手続きを申請した林原の第1回債権者集会が2月2日、都内で開かれた。
同社が希望した私的整理を断念し、会社更生法の適用を同日中に申請することが明らかにされた。

2011/2/7   林原が会社更生法申請 

2011/8/5 会社更生法申請の林原、長瀬産業とスポンサー契約締結

林原グループは林原家の同族企業で、1883年に水あめ製造業「林原商店」として岡山市で創業。1994年、でんぷんを糖質トレハロースに変える酵素を発見し、世界で初めて大量生産に成功した。

現在、次のようなユニークな製品を扱う。

食品素材 トレハロース、低カロリー甘味料「マルチトール」、ビフィズス菌増殖効果にすぐれた「乳果オリゴ糖」、フィルムやカプセルに加工できる「プルラン」など
化粧品素材 ブドウ糖を結合させた安定型ビタミンCのAA2G(医薬部外品)、ブドウ糖を結合させ水溶性を高めたヘスペリジン、天然由来の色材天然色材など
医薬品素材 インターフェロン、自己免疫疾患治療薬「インターロイキン18」、抗ガン作用と免疫抑制作用を持つ血液細胞「HOZOT」、酵素・微生物技術から生まれた点滴液の原料の医療用マルトースなど
健康食品素材 天然成分で構成
機能性色素 3万種の色素を保有
試薬  


メセナ活動ではチンパンジー研究や恐竜化石の発掘調査を行ったり、美術館の運営を支援している。

林原生物化学研究所類人猿研究センターを設立。また林原の寄付で京大霊長類研究所(愛知県犬山市)に、ヒトに近い類人猿ボノボ専門の研究部門を国内で初めて設置した。
モンゴル古生物学センターと連携し、ゴビ砂漠で調査、新種の恐竜化石やティラノサウルス科の恐竜の子どもの全身化石などを発掘した。
林原自然科学博物館、林原美術館

林原グループは、岡山駅の至近の一等地に約45,000uの土地(岡山藩主であった池田家の元所有地)を持っており、ザ ハヤシバラシティとして再開発する構想を発表しているが、進展を見ていない。

メーンバンクの中国銀行の株式をグループ各社で10%以上取得し、筆頭株主となっている。

同族で経営陣を固め、非上場を貫く経営方針で情報公開もあまりしていない。

研究開発志向の会社で、長期にわたり開発投資が先行する事業構造になっており、金融機関からの借り入れで資金調達を進めてきたが、景況悪化で保有する土地や有価証券の資産価値が劣化し、資産規模に対して債務が膨らむ状況に陥った。

林原の借入金総額は約1400億円で、メーンバンクの中国銀行の420億円のほか、住友信託銀行の280億円など取引銀行は約30行。

同社は1991年ごろから2001年まで300億円近い架空売り上げを計上し、損失を隠していた疑いがあるという。

同社は1月26日、最近の業績を発表した。

不正経理問題については、専門家も交えて調査を行っているとしているが、事業自体は堅調に推移してきているものと認識していると述べている。

(単位:百万円) 平成2010月期 平成2110月期 平成2210月期
売上高 28,333 28,268 28,113
営業利益 2,818 3,678 4,511
経常利益 265 575 1,218

中国銀行は「同社グループの事業性及び県における高い貢献度を考慮し、主力行として相応の支援及び協力を行う方針で検討している」としているが、他行の反応は複雑とされ、ADRが成立するかどうかは予断を許さない状況。

石井岡山県知事は「大変驚いている。本県を代表する老舗企業であり、研究開発型企業として大きな役割を果たしてきた。早期の再生を望んでいる」とコメントした。

ーーー

同社の歴史は以下の通り。

1883年 林原商店創業  
1935年 酸麦二段糖化法による新しい水飴の製造法完成  
1946年 カバヤ食品 創業、水飴を使ったキャラメル等の販売 1979年 林原グループより離脱・独立
1959年 世界初の酵素糖化法によるブドウ糖の工業化に成功 バイオ分野へ進出
1961年 前社長の死亡で現社長が社長に就任 「デンプン化学」(ファインケミストリー)進出
1968年 酵素法による高純度マルトースの新製法開発
  点滴のエネルギー補給剤、低カロリー甘味料原料
医薬品分野進出
1973年 プルラン(多糖)の開発に成功 30年後に生分解性プラスチックとしてブレーク
 リステリン・フィルム、カプセルなど
1978年 虫歯になりにくいカップリングシュガー(オリゴ糖)の製造技術開発  
1979年 1FNなど各種生理活性物質の工業的生産技術の確立  
1990年 安定型ビタミンCの大量生産技術開発  
1994年 酵素法によるトレハロースの安価・大量生産技術の開発
  それまでは酵母から抽出しており、非常に高価
  28千株をテストして耐熱酵素を発見
現在、年間3万トン生産
約1万種類の食品で使用
1995年 新規サイトカインlL-18を発見  
2002年 環状四糖の大量生産技術の開発  
2005年 新規環状四糖を発見  
2006年 新規環状五糖を発見  
2006年 抗ガン作用と免疫抑制作用を持つ臍帯血由来の血液細胞「HOZOT」の発見  
2007年 文化財補修用の古糊の製法(10年かかる熟成を2週間で)  
2010年 「トロイの木馬」型 新抗癌メカニズムを発見
T細胞「HOZOT」(ホゾティ)が、癌細胞を選択して、その中に積極的に侵入し、内部から癌細胞を死滅させる現象の確認
 

林原の研究・経営哲学は非常にユニークである。

「研究に関しては10年かけてもいいから独創的な研究を」というのが経営方針で、オーナーのこの意見が反映できるよう、株主の意見に左右されないよう、非上場を続けてきた。

「ニーズは考えない」、
「自分たちで市場を創る、No.1でなく Only1を目指す」、
「あきらめなければ失敗ではない」
が同社のモットーである。

一般企業のようにニーズから入るのではなく、@最も得意な分野で他社がしないこと、新しいものを目指し、A持っている知識、技術を最大限発揮し、B新しいモノを見つけたら、大量生産技術を確立する。Cそのあとで、ニーズを考え、自分たちで市場を創るというやり方をとっている。

「No.1」でなく「Only1」を目指しており、下記の実績がある。

世界にないモノ カップリングシュガー、プルラン、乳化オリゴ、糖転移ビタミンC、
環状四糖、環状五糖
世界にない製法 インターフェロンα、インターフェロンγ、トレハロース

「あきらめなければ失敗ではない」とし、プルランでは30年後に新しい需要を見つけている。

トレハロースでは最初にみつけた酵素が熱に弱く問題があったため、耐熱酵素を探したが、なんと28千株をチェックしてようやく見つけたという。

資料:武田計測先端知財団の2008年2月「武田シンポジウム2008」の記録「選択」

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オーナーの意向、理念が強力に反映されている。そのための非上場は理解できるが、自己資金の範囲ならともかく、多額の借入金での運営は無理があると思われる。

林原は1月27日、創業家出身の林原健社長と弟の靖専務が辞任すると発表した。今後、研究方針も変更される可能性がある。
後任の社長には、福田恵温・林原生物化学研究所常務が就く。(上記シンポジウムでのスピーカー)

NHK教育テレビの番組「仕事学のすすめ」で2月に林原健社長が出演する予定だったが、NHKは急きょ放送内容変更を検討している。


2011/1/29 旭化成、韓国でアクリロニトリル増設 

旭化成は1月25日、韓国におけるアクリロニトリルの増設を発表した。

韓国の100%子会社の東西石油化学の蔚山工場に同社の最新技術プロパン法を採用して245千トンの大型プラントを建設するもので、5月に着工し、2013年1月に商業運転を開始する。

蔚山工場には既存プロセスの230千トンプラントと70千トンのプロパン法の実証プラント(既存プラントを改造)の2プラント合計300千トンの能力があるが、今回の新プラントが完成すると、合計能力は545千トンととなる。

同社のアクリロニトリルの工場は以下の通りで、すべてが完成すると、能力合計は1,195千トンとなり、世界最大のINEOS Nitrilesに迫る。

  千トン 製法 備考
水島 300 既存法  
川崎 150 既存法  
東西石油化学
 
韓国・蔚山
@ (60) 既存法 B完成で停止
A   70 プロパン法 2007/1 改造してプロパン法実証プラントに
B 230 既存法 2003/3 200千トン完成、その後増強
C 245 プロパン法 今回 
(545)    
PTT Asahi Chemical
 タイ・マプタプット
200 プロパン法 2011/央稼働予定
 (旭化成 48.5%、PTT 48.5%、丸紅 3.0%)
合計 1,195    

2007/2/7 旭化成、世界初のプロパン法アクリロニトリル工場稼動

旭化成は1998年に、米国ソルーシア社(モンサントのファイバー・化学品部門を中心に分離独立)の250千トンAN建設計画に参画し、年間50千トンの引取権を取得したが、現在は引取をしていない。

なお、旭化成は2012年頃に中東でアクリロニトリルを生産する方針を明らかにしている。

2007/4/10 旭化成、中東でのアクリロニトリル事業化を検討

東西石油化学(Tongsuh Petrochemical )は1969年に、米国スケーリー石油 50%、韓国忠州肥料 50%JVとして設立され、アクリロニトリルの製造販売を行った。
その後、1970〜75年に韓一合繊が忠州肥料の持分を、旭化成
がスケーリー石油の持分を買収し、両社のJVとしたが、1998年に旭化成の100%子会社とした。

アクリロニトリルのほか、青化ソーダ(40千トン)、アクリルアマイド(10千トン)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸・2Na・2H2O)(3千トン)を生産している。

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世界最大のINEOS Nitrilesの状況は以下の通り。

INEOS Nitrilesは旧 Innoveneのアクリロニトリル部門で、2005年にINEOSBPからInnoveneを買収した。
1957年にSohio 法アクリロニトリルが開発されたが、SohioStandard Oil of Ohio)はその後、BPとなった。

    能力
(千トン)
 
米国 Lima, OH  190 1960年スタート
Green Lake, TX 544 1981年スタートで2008年に450千トンから544千トンに増強
ドイツ Koeln 320 元はErdole Chemie
2001
年に Innovene が買収により50%から100%とした。
英国 Seal Sands, Teesside 230 IneosBASFの工場を買収
合計   1,284  

2008/3/20 INEOSBASFのアクリロニトリル工場買収

 


2011/1/31 政府、イレッサ訴訟で和解勧告拒否

肺がん治療薬イレッサをめぐり、患者と遺族が国と輸入販売元のアストラゼネカに損害賠償を求めた訴訟で、政府は1月28日、東京、大阪両地裁の和解勧告に応じないことを決めた。
アストラゼネカも勧告受け入れを拒否しており、大阪地裁で2月25日に、東京地裁で3月23日に、それぞれ判決が言い渡される。

付記
大阪地裁の2月25日の判決は以下の通り。

  アストラゼネカ:警告欄に記載するなどして注意喚起を図るべきだった。
    緊急安全性情報配布(2002/10)前は製造物責任法上の欠陥があり、賠償責任あり。
    原告9人に計6050万円の賠償。2002/10以降服用し死亡した男性の請求は棄却。

  政府:添付文書に関する行政指導は必ずしも十分ではないが、当時の知見のもとでは一定の合理性がある。
    国家賠償法上の違法はない。

1995年6月のクロロキン薬害訴訟の最高裁判決は以下の通りとなっており、これに沿ったもの。
「被害が生じても直ちに国家賠償法上の違法性は生じず、許容限度を超えて著しく合理性を欠く場合に違法性がある」

付記
クロロキンは抗マラリア薬だが、慢性腎炎や関節リウマチに効くとして広く使用された。
しかし副作用でクロロキン網膜症を発生、視力障害が生じた。

厚生省の担当課長が服用していたが、危険性が分かり、服用をやめた。(裁判で証言)
しかし、厚生省は販売中止などの行政指導を行わなかった。
地裁は医師の責任を認めた。国に厳しい基準を示したが、賠償責任は認めなかった。
これに対する最高裁判決は上記の通り。
製薬会社は和解した。

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この判決に対し、原告側、被告側がともに控訴した。
原告側は、国の責任が認められなかったことなどを不服とした。

ーーー

イレッサは英国のAstraZenecaが開発した肺がん治療薬で一般名はゲフィチニブ。

厚生労働省は2002年7月、世界に先駆けて、申請から半年で輸入承認した。
2002年8月に発売され、2カ月の間に、1万人以上の患者に投与された。

がんの増殖、転移に関係する分子を狙い撃ちにする「分子標的治療薬」で、正常細胞を傷つける抗がん剤より副作用が軽いと期待されたが、市販開始直後から間質性肺炎などによる副作用死が相次いだ。

厚労省は同年10月、同社に、全国の医療機関に緊急安全性情報を出して注意を呼びかけるよう指示した。

2009年9月現在で、副作用被害者2097人、内、死亡被害者は799人となっている。

2009年現在イレッサを承認している国は、日本を含めたアジア諸国、欧州、およびオーストラリア、メキシコ、アルゼンチン。

これまでの多くの研究・調査の結果から、以下のことが明らかになっている。
・ゲフィチニブは上皮成長因子受容体に特定の遺伝子異常を有する人に対して高い有効性を示す。
・日本人肺癌患者の約30〜40%程度にこの遺伝子異常が認められる。

AstraZeneca2005年1月に欧州医薬品局 (EMEA) への承認申請を取り下げたが、EMEAは2009年7月に、成人のEGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞肺癌を対象にイレッサの販売承認を行った。
FDAは2003年5月に承認したが、2005年6月に新規使用を原則禁止した。

ーーー

イレッサで深刻な副作用を受けた患者と副作用によって死亡した患者の遺族計15人が、国と輸入販売会社のアストラゼネカに損害賠償を求めた訴訟で、東京、大阪両地裁は、原告側の和解勧告の上申書に基づき、事前に協議して、1月7日に和解勧告した。

原告側は、国と同社の謝罪と賠償、抗がん剤副作用死を対象とした被害救済制度の創設−−などを和解内容に盛り込むよう求めていた。

原告弁護団が明らかにした和解勧告要旨によると、両地裁は、厚生労働省がイレッサを承認し、同社が販売を始めた2002年7月から、同省が「緊急安全性情報」を出した同年10月15日にまでに服用し、副作用で間質性肺炎を発症した患者5人(うち4人死亡)について、国と同社には救済する責任があるとの見解を出し、原告らへの和解金支払いを提示した。和解金の額は示されていない。

同日以降に投与され発症して死亡した患者2人についても「訴訟上の紛争の解決を図る見地から、原告と誠実に協議する」として、国と同社に幅広い救済を要請した。

さらに大阪地裁は、製薬会社の責任について「製造物責任法(PL法)上、医薬品の安全性について第1次的な責任を負う」と指摘し、薬害の集団訴訟として初めてPL法に言及した。

製薬会社の責任を重く判断し、国については薬事法に基づき「医薬品の副作用から国民の生命、健康を守るべき責務を負う」とした。

ーーー

アストラゼネカは1月24日、和解勧告に応じず、判決による裁判所の判断を仰ぎたい旨の発表を行った。

イレッサは治療選択肢の限られた進行非小細胞肺がん患者に臨床的なベネフィットを提供してきた。イレッサは肺がん治療医にとって有用な治療選択肢のひとつとして考えられている。

イレッサの発売にあたり、それまでに得られていた安全性情報を踏まえ、発売時の添付文書の「重大な副作用」欄に「間質性肺炎」を記載し、適切に注意喚起を行ってきた。発売後も、得られた安全性情報を法令に従って関係機関に適時・適切に報告するとともに、より安全対策を推進する見地から、早期に緊急安全性情報を発出した。

イレッサ発売時および発売後を通して適時・適切な情報開示を行ってきたと確信している。

厚生労働省は1月28日、以下の見解を発表した。

イレッサ自体は、現在も必要な医薬品として承認され、使用されており、今回の事案は、「薬害」の問題というよりも、副作用の問題、とりわけ、副作用情報の患者への伝え方の問題であると考える。

裁判所の所見で、国の責任が問われているのは、
@治験外の症例を承認の際にどこまで考慮したかという点、
A副作用に関する薬の添付文書への記載が十分でなかった(副作用情報の筆頭ではなく4番目に記載)という点。
 

@治験外の症例について:
新薬の承認には治験が必要であり、これには、科学的に評価できるよう、比較のため
条件の整った患者が治験の対象となる。

同じ疾患の患者でも他の疾患を併発するなどの場合は、治験の対象から外れるが、一刻も早く新しい薬の利用を望み、治験外の臨床研究として新薬を承認前に使用するケースも多くある。

今回の所見では、こうした治験外使用の症例から得られるデータをより厳格な審査の対象とすべきということになり、治験外使用がより限定的となることが想定される。
治験と治験外使用(臨床研究)の違いに十分な理解が得られていない。

A副作用に関する薬の添付文書への記載について:
がん患者、特に末期のがん患者にとって間質性肺炎が場合によっては致死性のものであることは、
医師にとって周知の事実で、副作用情報の4番目に記載してあったとしても同じこと。
添付文書中の副作用に関する記載について国に責任があったとは言えない。

注) 
当初、添付文書の「重大な副作用」の4番目に致死性の肺炎が記されていたが、副作用死が相次いだため、同年10月に緊急安全性情報を出し、肺炎の副作用を「警告欄」に記載するよう改めた。
両地裁はこの点を重視した。警告欄に記された後、死亡者が減少に向かったことも事実。

細川厚生労働相は記者会見で、和解勧告で両地裁が示した所見に従えば、臨床研究として新薬を承認前に使うのが難しくなるとし、「治療の選択肢を狭める恐れがある」と述べた。

所見が副作用情報の筆頭ではなく4番目に記載した点を問題視したことについて「医療現場の常識に合っていない。間質性肺炎が致死性なのは医師にとって周知の事実」とし、国の対応に違法性はないと主張、多くの論点を残したまま結論を急ぐべきでないとし、「全てのがん患者のために(判決を)選択する」とした。

なお、厚生労働省の見解には、今後の対策も記載されている。

現実に、医師から致死性の副作用を引き起こす可能性があるなどの事前の説明を受けず、イレッサを投与され、副作用により亡くなられた患者や遺族の無念さを、どう受け止めるべきかにも十分配慮しなければならない。

これについては、@現場でのインフォームド・コンセントの問題と、A副作用救済制度の対象をどう考えるかという問題の2点で解決の方向性を見出すべきである。

@は現場の当事者間の問題だが、国においても、インフォームド・コンセントの徹底、診療報酬上の取扱いの検討など、政策面での課題を負っていると考える。

Aについては、現在は抗がん剤は、製薬企業が拠出して運営されている医薬品副作用被害救済制度の救済対象から除外されている。
抗がん剤使用については、重い副作用を理解した上で使用せざるを得ないこと、副作用と死亡の因果関係の判定が難しいことといった理由により、これまで除外されてきた。
国としては、これを政策上の課題と受け止め、十分検討を尽くし、結論を得たい。

注 医薬品副作用被害救済制度

救済制度は、医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による健康被害者に対して各種の副作用救済給付を行い、被害者の迅速な救済を図ることを目的とし、医薬品医療機器総合機構法に基づく公的制度として設けられた。

医療費等の給付に必要な費用は、許可医薬品製造販売業者からの拠出金で賄われている。
(医薬品医療機器総合機構の事務費の1/2相当額は、国からの補助金)

一般拠出金は、前年度の許可医薬品の総出荷数量に応じて申告・納付。
付加拠出金は、前年度に救済給付の原因となった許可医薬品の製造販売業者が申告・納付。

給付額
  医療費  自己負担分
  医療手当
  障害年金 1級 年272万円
  遺族一時金 713万円など

ーーー

日本肺癌学会は1月24日、和解勧告に対する見解を発表した。
 
http://www.haigan.gr.jp/uploads/photos/258.pdf

医薬開発が、開発の最終段階においては人における有効性と安全性を、科学性を配慮した上で限られた数の被験者に対して確認した上で承認に至るという手法を取らざるを得ない以上、その精度に一定の限界があることは紛れもない事実です。しかし、そのような現状認識の中でしか医薬承認がなし得ないことも事実です。不確定なこと、予見困難なことに対して過度の責務を求めることによって、新しい医療技術や医薬を迅速に国民に提供することがきわめて困難になることを私達は危惧いたします。

副作用は1番目に記載していなかった事に対して、国とアストラゼネカ社に過失があり、損害賠償を勧めています。しかしながら、その論理は、後の時代になって急速に蓄積されたゲフィチニブに関する多くの知見に基づいた後方視的な批判となっております。
広く国民にご理解いただきたい点は医療の不確実性ということであり、後の時代にわかることをその時代にしていなかったことについて責任を問うのであれば、ただでさえドラッグラグが問題であるわが国の薬事行政のさらなる萎縮、製薬会社の開発意欲の阻喪、ひいては世界標準治療がわが国においてのみ受けられないという大きな負の遺産を後世に残すことは明らかです。
一方で、ゲフィチニブのわが国における早期の承認のおかげで劇的な腫瘍縮小や症状改善を経験され、ゲフィチニブが使えなければ数ヶ月で亡くなられてたであろう患者さんがその後数年も生きられた事例も多く経験されたことも事実であります。

日本臨床腫瘍学会も同日、見解を発表した。
 http://jsmo.umin.jp/oshirase/20110124.html

医薬品の使用を含め、医療は不確実性を伴うものであり、患者さんによりよい医療を行うためには科学的な分析が必要であります。そのため、問題が起きたときに、過去を振り 返って批判的に当時の評価や判断の妥当性を厳しく問うことは必要です。しかし、そのような過程での分析が、実際に使用され蓄積された情報による後知恵に基づく批判に留まっていては、将来の患者さんが負うリスクを低減することには寄与しません。また、今回の裁判所の判断は、現在でも新たな治療法を求めるがん患者さんの切実な思いがあるなかで、新規の医薬品の開発および承認までの期間がさらに延長する危険をはらみ、必要としているがん患者さんの新薬へのアクセスを阻害することにもなりかねません。

抗がん薬をはじめ、すべての医薬品にはリスクがあり、それを理解した上で医師は医薬品を使用しています。今回の 勧告では、副作用の記載順序に言及されているようですが、記載順序にかかわらず医師や薬剤師は効果のみならず副作用について説明を患者さんに行い、了解を得て治療は開始されるのが医療の現場の状況であります。

新たな治療法や治療薬の開発は、がん患者さんの大きな願いです。また、医薬品の被害を少しでも減らすために関係者が取り組むべきであることは、がん患者さんだけでなくがん医療に携わる医療関係者の願いでもあります。いずれの願いに対しても、科学的に合理性を欠いた対策を取ることは避けるべきです。

付記

日本医学会も1月24日に会長の見解を発表した。
http://jams.med.or.jp/news/015.html 

この見解発表の前に、厚生労働省が会長に対し、「日本医学会として懸念の声明を発します」との声明文案を渡していたことが、224日判明した。東京・大阪両地裁が「非公開」を要請した和解勧告全文も渡していた。

会長は、「がん治療の一般的な説明などは厚労省の文案を利用したが、文案にあった新薬承認の遅れへの懸念は触れず、独自に副作用への補償を盛り込んだ」としている。
声明の最後は、「現在そして未来の患者さんに禍根を残しかねない今回の和解勧告について、私は強い懸念をいだいています」となっている。

付記

厚生労働省は5月24日、「文案提供は過剰なサービス」として局長ら4人を訓告とした。
声明を出す働きかけそのものは、メディア対策として「通常の職務執行の範囲内」とした。


2011/1/31 2010年第4四半期 国産ナフサ基準価格

第4四半期の国産ナフサ基準価格は45,100円/kl となり、前期比2,400円のアップとなった。


計算根拠は以下の通り。(単位:円/kl)

  輸入平均   基準価格
2009/1Q  24,970  27,000
   2Q  31,294  33,300
3Q  39,185  41,200
4Q  40,544  42,500
2010/1 45,468    
2010/2 46,360    
2010/3 45,249    
2010/1Q 45,702 47,700
2010/4 47,517    
2010/5 49,142    
2010/6 46,421    
2010/2Q 47,655 49,700
2010/7 42,352    
2010/8 39,972    
2010/9 39,695    
2010/3Q 40,699 42,700
2010/10 40,712    
2010/11 42,222    
2010/12 46,634    
2010/4Q 43,100 45,100

基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)

なお、第4四半期の輸入価格の平均は下記の通り、752ドル/トンで、12月も804ドルである。
その後の取引価格(2か月後入着)は900ドルに近づき、最近は下落しているが、1月31日には877ドルとなった。

昨年12月ベースでの基準価格は48,600円となるが、1-3月は更に上昇するのは確実である。

 


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