ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2011/2/16  PetroChina、カナダの天然ガス権益取得

PetroChina210日、カナダの天然ガス最大手のEncana Corporation から天然ガスの権益の50%を54カナダドル(54.3億米ドル)で買収することで合意したと発表した。

付記

両社は6月21日、条件が折り合わず、交渉を中止したと発表した。

British ColumbiaAlberta両州にまたがるCutbank Ridge事業を50/50JVとする。
Cutbank Ridgeでは2010年に400MMcf/d(日量4億立法フィート)の天然ガスの生産をしているが、新たなMontneyを加えると、約700MMcf/dとなる。
資産は
130万エーカーの土地、3,400kmのパイプライン、Hythe地下ガス貯蔵タンクを含む。

当面はJVの運営委員会の指揮下で、Encana が操業と製品販売を行う。

両社は20106に、EncanaHorn RiverGreater SierraCutbank Ridgeなどでの天然ガスのJV化の検討を行う覚書を締結し、交渉を続けていた。

Encanaはカナダと北米に以下の拠点を持っている。(緑は新開発地域)

既報の通りPetroChinaはスーダンで活動している。

PetroChinaは2010年7月にShellと共同で豪州の炭層メタン生産会社を買収した。

2010/3/12 PetroChinaShellと共同で豪州炭層メタン生産会社に買収提案

 

中国勢の北米進出状況は以下の通り。

2005/4   中国海洋石油カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を買収
2005/6   Sinopecカナダのアルバータ州のNorthern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% をSynenco Energy から買収
2009年に50%にアップ
2009/9/10   PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加 (Athabasca Oil Sands)
2010/4/16   Sinopec、カナダのオイルサンドに投資 (ConocoPhillipsのオイルサンド事業会社 Syncrude Canada)
2010/10/18   CNOOC、テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加 Niobrara shaleを追加

2011/2/17 サウジが石油埋蔵量を大幅水増し? 

WikiLeaksが発表した、米のサウジ大使館員からワシントンへの秘密公電のなかに、サウジが石油埋蔵量を大幅に水増ししているというものがあった

2月16日付の毎日新聞の「水説」では、「サウジの水増し疑惑」と題し、「日本ではあまり報道されていないようだが、大問題だと思う」としている。

英国のGuardian紙が詳細に伝えている。

2007年12月10日付の公電には以下の記載がある。

11月10日にSaudi Aramco Executive VP(開発・生産担当)Dr. Sadad al-Husseini と面談。

彼によると、
Aramcoは増産可能量を過大に発表しており、2009年までに12.5百万b/dの能力にするという公表された目標は達成できない。

peak-oil”説には同意しないが、世界の生産量は5-10年で頭打ちとなり、15年ほど続いて、その後減少に転ずる。現在の高価格は市場のゆがみではなく、世界の需要が供給に追いついた現実を表したものである、としている。

1120日の面談では、Dr. al-Husseini以下の通り述べた。

Aramcoは10以内に12百万b/dは達成できるが、2009までに目標の12.5百万b/d達成は無理である。12百万b/dも一定期間だけで、それも多額の投資が必要である。

問題は2つある。一つは埋蔵量がそれほどないこと。
12月1日のシンポジウムで現在のAramcoのSenior VPのAbdallah al-Saif
は、Aramcoの埋蔵量は7160億バレル(うち51%は採掘可能)で、20年のうちに、埋蔵量は9000億バレルとなり、技術改革で70%は採掘可能となろうとしているが、Dr. al-Husseiniはこの分析に同意せず、Aramcoの埋蔵量は3000億バレルほど過大表示されているとする。

確認埋蔵量は3600億バレルで、この半分まで採掘すると、生産量は徐々に減少する。これまでに1160億バレルが採掘されており、50%までにはあと640億バレルしかない。12百万b/dで続けると、あと14年である。その後は15年ほどはその水準でいけるが、そのあとは生産は減少する。

もう一つは技術者不足、製油所能力の不足、インフラ問題、油田管理の問題である。

7か月後の公電では、サウジは最早、原油価格を長期的に引き下げる力はないとしている。

200910月の公電では、サウジの電力需要の増大により、原油輸出は抑えられるとしている。また、計画の遅れや事故も問題としている。

ーーー

これに対し、Dr. Sadad al-Husseiniは以下の通り反論した。(同じくGuardian紙が報道)

・WikiLeaksに書かれている大使館員との面談というのは、立ち話で、不正確な話も含んでおり、報告では更に誤りが増えている。

・Saudi Aramcoの埋蔵量は根拠のある正確なものであり、これに疑問を呈したことはない。
 
Saudi Aramcoの埋蔵量は2600億バレルであり、埋蔵量が3000億バレルも過大などというのはあり得ない。

・その際、大使館員は、サウジの公表している埋蔵量は採掘不能の原油や未発見の油田を入れて3倍以上とすべきだと述べた。
 これに対して、Saudi Aramco
のやり方が正しいと主張した。

・Saudi Aramcoは多額の投資をして増産を行い、2009年末には生産能力は既に12.5百万b/dになっている。

ーーー

Dr. Sadad al-Husseiniの説明は理にかなっているようだ。
BPの発表した統計では2009年末のサウジの石油埋蔵量は2646億バレルとなっている。

サウジの銀行のアナリストは、Saudi Aramcoが埋蔵量を水増しする理由はないとする。
Aramcoは自分の金で採掘しており、外部資本を入れるために偽装する必要はない。

その場合、大使館員の報告は、単なる聞き間違いか、わざと誤りの報告をしたのか?
また、逆に大使館員の側が、埋蔵量を増やすべきだと述べたとされる。

大使館員がわざと誤りの報告をしたとすると、その意図は何なのであろうか?

米国側はWikiLeaksの発表したものについては、なんらのコメントもしていない。


2011/2/17 Sanofi-AventisGenzymeを買収 

Sanofi-aventis216日、遺伝性疾患治療薬で世界最大手の米Genzyme Corporation を現金約201億ドル(174ドル)で買収する契約を締結した。

株主は現金に加えContingent Value Right (CVR:不確定価額受領権) を受け取り、新薬Lemtradaの開発が進んだ場合、または2011年に他の2つの新薬の生産数量が一定レベルに達した場合に、追加の支払いを受ける。

合計6つの基準があり、1株当たり1ドルが2件、2ドルが1件、3ドルが2件、4ドルが1件となっている。
権利は、2020年末か、4つの基準が達成された時の、いずれか早い時期に終了する。
権利は売買可能となっている。

取引は両社の取締役会の承認を受けており、第2四半期中に完了する見込み。

既にEUと米国の独禁法当局から承認を得ている。

ーーー

Sanofi-Aventis 20108月29日、Genzymeに対する185億ドル(1株当たり69ドル)の買収提案を公表した。

Sanofi-Aventisは7月29日にGenzymeに対し非公開で買収を提案した。
しかし、協議に入れないため、
Genzymeの株主に提案を説明するため公開したとしている。

買収を完了させるために「あらゆる選択肢を検討する」としており、敵対的買収も辞さない構えを示した。

2010/9/2 Sanofi-aventis、米Genzymeへの買収提案を公表

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Genzyme は業績が悪化しており、人員削減や事業売却を行っている。

9月13日にはGenetic Testing 事業(Genzyme Genetics)を925百万ドルで Laboratory Corporation of America (LabCorp) に売却する契約を締結した。

1118日には積水化学に対し、Genzymeが展開している検査薬事業を売却する契約を締結した。

2010/11/24  積水化学、米国Genzyme Corporation の検査薬事業を買収

同社ではこれら事業売却で得た資金での自社株買いで、買収防衛対策をとった。

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Sanofi-Aventis は10月4日、1株69ドルでGenzyme の全株のTOBを開始した。

Genzyme118Sanofi Aventisに対し、取締役会が満場一致で169ドルの提案価格が安過ぎると考えていること、株主はこれを支持していること、Genzymeの価値を評価したものなら交渉するとしたレターを出している。

Sanofi-Aventisは、TOBに期限を12月10日としていたが、不成功に終わり、2011年1月21日まで延長した。
Genzyme
TOB不成功を受け、自社の主張が正しかったと述べている。

その後、両社は話し合いを続けた。

2011年1月に入り、両社の評価額の差を解決するための手段としてContingent Value Rightを採用する可能性の検討を始めている。

131日はGenzymeSanofi-Aventisに対して、due diligenceの実施を認めた。


2011/2/18 産総研、単層カーボンナノチューブの大量生産技術を確立

産業技術総合研究所(産総研)は日本ゼオンの協力を得て、高純度単層カーボンナノチューブ(CNT)の大量生産設備の開発を進めていたが、2月14日、1日あたり600gの生産能力を実現したと発表した。

単層CNTは電気を流す性質や強度、熱伝導性などが優れるが、従来の実験室レベルでの合成装置はバッチ式で、生産量は日産1グラム程度にとどまっていた。

産総研は今後、単層CNTの基盤研究を加速し、大量試料を必要とする用途研究開発を推進する。

ーーー

産総研は2004年に単層CNT生産技術のスーパーグロース法を開発した。

単層CNTの合成手法の一種の化学気相成長法では、触媒下でメタンやアセチレンなどのガスを500〜1200℃の比較的低温で反応させて、CNTを得る。

スーパーグロース法は、水分を極微量添加することにより、通常は数秒の触媒寿命が数十分にもなり、極微量の触媒から、大量の単層CNTを合成することができる。

この方法で合成される単層CNTは、触媒粒子を含まず、不純物が従来の1/2000の高純度(炭素純度99.9%以上)である。
また、成長基板上の触媒パターンを制御することで、容易にマクロ構造体を作成できる上、合成後、容易に基板と単層カーボンナノチューブを分離することができる。

CNTの量産は、気相流動、もしくは担持触媒を用いたロータリーキルンなどで行うというのが業界の常識であったが、量産を行うため、基板の上で大量に単層CNTを成長させるという方法を考案した。

http://www.nanocarbon.jp/lab/image/071129_002.pdf

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産総研は2007年2月、日本ゼオンと共同で、スーパーグロース法を用いて、初めて大面積金属板上に直接大量の単層CNTを合成する技術を開発したと発表した。

当初、量産のパートナー企業探しに苦労した。
何社にも話を持ちかけたが、反応は良くなかった。

特に従来からCNTに取り組んでいた会社は、これまでの製造法を捨ててスーパーグロース法に鞍替えすることに躊躇した。

その中でまったくCNTの経験がないものの、情熱と事業化への真剣さが感じられた日本ゼオンを最終的に選定した。

これまでは高価なシリコン基板を用いて単層CNTを合成していたが、今回、安価なニッケル合金基板上での合成に成功した。

さらに、日本ゼオンと共同で、今回開発した技術を適用できる合成炉を設計・試作し、A4サイズの金属板の全面に均一な単層CNT構造体を合成することに成功した。これは成長面積として従来の100倍のスケールアップであり、生産量はグラム単位である。

合成された単層CNTは、金属板フォイル上で、垂直に起立した形で成長し、高さ1ミリメートルの構造体をわずか10分で形成する。
基板コストを従来の100分の1に抑えることができるもので、CNTの大面積・連続生産技術を開発する上でのキー技術であり、単層CNTの工業的量産への大きな礎となる。

ーーー

今回の大量生産装置では金属シート上に触媒層をコーティングしており、これを化学気相成長炉に送り込むことで基板上に単層CNTを連続的に成長させることができる。
種々の合成条件を最適化することで、幅50cmの金属シートの全面に単層CNTが均一かつ緻密に成長する。
成長した単層CNTは、剥離装置により自動で根元から切断することで基板から分離・回収する。

スーパーグロース法で合成される単層CNTは他の方法によるサンプルと比べはるかに高純度であるため、特に精製することなく多くのアプリケーションに供することができる。

生産能力は一日あたり600g以上であり、本格的な工業規模での生産に道を拓くことができた。

一般にCVD法で作製される材料の形状は、製造装置の規模や形状に依存するため、小規模の実験用設備と大規模な生産用設備で製造した 試料の特性が必ずしも一致しない。
本装置により、製造した単層CNTの形状は、これまで研究開発設備で製造した試料とほぼ同等であり、単層 CNTの持つ優れた機能を発揮することが期待される。

数年後に年間10トンの商業生産を目指している。


2011/2/19 日本政策投資銀行、参天製薬と業務・資本提携

日本政策投資銀行(DBJ)は2月8日、参天製薬との間で、「協業の取り決めに関する契約」を締結し、業務・資本提携を行うことを決定した。

 業務提携:
  DBJは参天に対し、以下の分野を中心に、企業価値向上に向けた支援を行う。
   @ 海外戦略
   A 提携・M&A戦略
   B 資本戦略

   具体的には、人材補強への協力、情報提供、アドバイザリー業務など

 資本提携:
   DBJは参天の普通株式を4%程度取得
   その一環として、参天の自己株式(2.19%)を第三者割当により取得(5,641百万円)

参天は第三者割当による自己株式売却金額5,641百万円を、グローバル戦略品のR&Dに関連する医療用眼科薬の開発候補品の購入に充当する。

ーーー

参天製薬は、眼科とリウマチ領域に特化した独自性のある医薬品企業として、国内医療用眼科薬及び抗リウマチ薬市場においては、リーディングカンパニーとし ての地位を確立しており、この基盤をもとに、海外事業展開を進めてきた。

米国、フィンランド、スウェーデン、ドイツ、台湾、韓国、中国

海外の医療用眼科薬市場は国内を上回る成長を続けており、特に中国をはじめとするアジアや他の新興市場において一層の市場規模の拡大が予想されており、参天はこれら海外市場への事業展開を加速することを目指している。

一方、DBJは今年度より「企業の成長戦略支援 のための付加価値創造型エクイティ投資」に本格的に取り組みを開始した。

今回の参天との提携はその一環で、参天製薬の海外市場への事業展開の実現を通じた企業価値向上を目的として、成長資金を提供するとともに、海外戦略、提携・M&A戦略及び資本戦略等を中心にサポートを行う。

ーーー

DBJは2007年11月に、WISE PARTNERSの運営するファンドとの共同出資で、旭硝子から旭ファイバーグラス(ガラス短繊維事業とガラス繊維強化熱可塑樹脂などの工業材料事業)を160.5億円で買収している。

2007/9/21 旭硝子、旭ファイバーグラスの事業を譲渡

このほか、以下の「エクイティ投資」を行っている

(株)ホットマン   宮城、岩手、福島、茨城県でカー用品販売店「イエローハット」等の運営を行う、イエローハットグループのリーダー的企業
 若年者・女性の雇用増加や、東北地域における上場企業数の増加を通じた経済の活性化を期待
     
(株) 日陸   化学品の原材料などの危険品の輸送・保管業務
 高度な安全物流をより確かなものにするために、従来の防災の枠を超えた事業継続のための計画を作成
     
UDSメザニンファンド   三井住友銀行と共同、企業の優先株式や劣後ローン等を引き受けるファンド

 


2011/2/21 日・インド包括的経済連携協定 締結

日・インド包括的経済連携協定が2月17日に署名された。日本にとって12件目の経済連携協定となる。

付記 2011年5月20日、参院本会議で承認。→ 2011年8月1日発効

これまでの締結国については、下記に記載。
2007/8/24 
日インドネシア経済連携協定

日本とインドの貿易構造は以下の通り。

日・インド包括的経済連携協定は、2006年12月の日・インド首脳会談における決定を受けて2007年1月に交渉を開始。2010年9月、本協定の主要点について大筋合意に至り、同年10月の日・インド首脳会談において交渉完了を確認した。その後、署名に向けて条文確定作業を実施してきていた。

日本からインドに輸出する家電製品や自動車部品を含む物品の輸出額の90%、インドから日本への輸入額の97%について、今後10年かけて関税を撤廃する内容。日本が重要品目とするコメや麦などは除外される。

関税

インド側

分野 品目 現行
税率(%)
改正
自動車部品 ギアボックス 12.5 8年間で6.25%まで段階的引き下げ
ディーゼルエンジン 12.5 6年間で5%まで段階的引き下げ
マフラー 10.0 10年間で関税撤廃
自動車 完成車   関税撤廃の対象外
鉄鋼製品 合金銅 5.0 5年間で関税撤廃
亜鉛メッキ鋼板 5.0 5年で関税撤廃
電気電子製品 リチウムイオン電池 10.0 10年間で関税撤廃
DVDプレーヤー、ビデオカメラ 10.0 10年間で関税撤廃
一般機械 ブルドーザー 7.5 10年間で関税撤廃
トラクター 10.0 10年間で関税撤廃
農水産品 盆栽 5.0 5年間で関税撤廃
モモ 30.0 10年間で関税撤廃
30.0 10年間で関税撤廃
イチゴ 30.0 10年間で関税撤廃

日本側

鉱工業品. ..... ほぼすべて............... .............. 即時関税撤廃
農水産品   ドリアン 2.5 即時関税撤廃
アスパラガス 3.0 即時関税撤廃
カレー粉 3.6 10年間で撤廃
紅茶 2.5 10年間で撤廃
えび 1.0-2.0 即時関税撤廃
調理品は10年間で関税撤廃
コメ、小麦、
牛肉、豚肉
  関税撤廃の対象外

その他

・日本はインドの後発医薬品の承認審査を迅速化
・日本はインド料理の指導員やIT人材などの入国審査を迅速化

・インドの看護師、介護福祉士などの就労機会拡大は継続審議

参考 外務省資料 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_india/pdfs/gaiyo.pdf

ーーー

日本はこれで12か国と締結したが、ASEAN以外ではアジアはインドだけで、他は、メキシコ、チリ、スイスのみ。

これに対し、韓国はASEAN、インドのほか、EU、EFTA、米国、チリ、ペルーと締結している。
(EU、米国は未発効。EU議会が2月17日に承認したため、EUについては7月1日発効は確実)

ASEANは日本、韓国、インドと中国、ANZと締結している。
台湾は中国との間で経済協力枠組み協定(ECFA)を締結した。

この結果、日本は対欧州、米国向け輸出については韓国に対して、対中国輸出ではASEANと台湾に対して、不利な立場となる。

更に、シンガポールはブルネイ、チリ、NZとTPP(環太平洋戦略的経済パートナーシップ)を結んでおり、現在、米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアが参加の交渉をしている。

213付の日本経済新聞は、
企業の輸出、ASEANを拠点に FTAで関税低く」と題して、
日本企業の間で、ASEANの現地法人から、日本がFTAを結んでいない中国や韓国、インドなどに輸出する動きが強まっていると報じている。
(インドについては今回の提携で、韓国、ASEANに並ぶこととなる。)

日本がTPPに入れない場合、シンガポール、ベトナム、マレーシアなどASEAN立地の意義はますます増加する。

 

各国の経済連携協定 ( )は締結済で未発効、△は交渉中のもの 

  ASEAN 日本 韓国 中国 インド EU EFTA USA NZ その他
日本       (○)         メキシコ、チリ、スイス
韓国       CEPA (FTA) FTA (FTA)   チリ、ペルー
中国                 チリ、パキスタン
台湾       ECFA              
ASEAN          
[TPP] ○シンガポール
○ブルネイ
△ベトナム
△マレーシア
            ○チリ
△ペルー

 


2011/2/22  BP、中国のPTA事業を拡大 

BP217日、中国のPTAの拡大計画を発表した。

現在、珠海BP 珠海ケミカル(BP 85%)に第1、第2系列合計で150万トンの能力を持つが、第2系列のデボトルネッキングで20万トン以上の増強を行い、合計能力を170万トンにするとともに、1系列では世界最大となる最新技術の125万トンの第3系列を新設する。

BP 珠海ケミカルは1997年にBPが85%、富華集(その後 Zhuhai Port Coと改称)が15%出資して設立された。

Zhuhai Port 1986年設立で、港湾物流、港湾開発、電力事業を行っている。

2003年に第1系列(当初35万トン)、2008年に第2系列(90万トン)の生産を開始した。

第1系列はその後、58万トンに増強し、合計能力は150万トンとなっている。

第2系列のデボトルネッキング(20万トン以上の能力増)は既に設計を完了しており、2012年1Qに生産開始の予定。

第3系列は能力125万トンで、1系列では世界最大となる。BPの最新技術を世界で初めて使用する。
2014年スタートを計画しており、中国のPTAの需要の増大に対応する。

付記

2015年7月3日、広東省のBP 珠海ケミカル(BP 85%、Zhuhai Port 15%) の第3期(125万トン)の生産開始の式典を行った。
第1期 35万トン、第2期110万トン(当初 90万トン)と合わせ、合計能力は270万トンとなった。

ーーー

BPの石油化学の歴史については下記参照。

2006/8/29 BPの石油化学のオリジン

同社は20054月に石油化学の大半をInnoveneとして分離、2005年末にIneosに売却した。

2006/6/14  事業買収で急成長した化学会社」 参照

現在のBPの石油化学は、中国のエチレンJV(上海SECCO石油化工と、酢酸・パラキシレン・PTAである。

BPPTAに関しては、世界市場の15%JV能力を含めると18%)のシェアを持っている。

BPの生産基地は以下の通り。(単位:千トン)

  立地(及びJV名) PTA PX 酢酸 その他
欧州 Geel, Belgium  1,400 560   purified isophthalic acid
Hull, UK       500 acetic anhydride
米国 Decatur, AL 1,000   naphthalene dicarboxylate 2,200
Texas City, TX    2,000
(MX込み)
(580) *1  Sterling Chemicalsの酢酸
  全量買取
Cooper River, SC 1,250      
中国 重慶
 
Yangtze River Acetyls (YARACO *2)
    400 ethyl acetate and butyl acetate 80
南京
 
BP YPC Acetyls Company (Nanjing) (BYACO *3)
    500  
珠海
 
BP Zhuhai Chemical *4
580
900
    2系列増強  +200
3系列新設  1,250 
Malaysia Kuantan 700      
Kerteh
 BP Petronas Acetyls *5
    540  
Indonesia Merak
 PT Amoco Mitsui *6
500      
韓国 Ulsan
 Samsung BP *7
売却   450 2006/7/26 BPが韓国のPTA事業から撤退
Ulsan
 ASACCO *8
      VAM 160
台湾 Kaoshiung and Taichung
 China American Petrochemical Company (CAPCO)*9
2,000      
Mai Liao
 Formosa BP Corporation *10
    300  

*2 BP 51/Sinopec Sichuan Vinylon Works 44/Chongqing Energy Investment Group 5
*3
 BP 50/Sinopec 50
*4
 BP 85/Zhuhai Port Co. 15
*5
 BP 70/Petronas 30
*6
 BP 50/三井化学 45/三井物産 5 → 2013/12  三井化学と三井物産、持分をBPに譲渡
*7
 BP 51/Samsung 49
*8
 BP 34/Dow 34/Samsung 32
*9
 BP 61.43/Chinese Petroleum Company 38.57
*10 BP 50
/Formosa Chemicals and Fibre Corporation 50


2011/2/23  ヴイテック、2011年9月末に解散 

三菱化学と東亜合成は2月21日、両社のJV(三菱化学 85.1%、東亜合成 14.9%)のヴイテックを9月末日を目標に解散すると発表した。

9月に解散決議を行い、12月に精算を完了する予定。

ーーー

2009年4月に三菱化学が年内にもPSとPVC事業から撤退すると報じられた。

2009/4/13 三菱化学、PSとPVC事業から撤退

三菱化学は2009年5月、ヴイテックが全製造設備を2011年3月末までには停止することを決定したと発表した。
但し、
川崎の設備については、ヴイテックとしては停止するものの、その後については東亞合成が方向性を検討するとした。

四日市工場のペースト塩ビ 20千トンは2010年9月末で生産を停止した。(販売は2011年3月末で停止)

東亞合成は2010年5月、東亞合成が2011年3月にヴイテックから川崎工場のPVC設備を引取り、カネカから年間70〜100千トンの製造受託を行うと発表した。東亞合成自体は塩ビ樹脂事業から撤退する。

恐らく東亞合成としては従業員を他の事業に配置転換できないため、この形で雇用を継続するのが目的と思われる。
カネカとしては関東地区の需要家への供給のため、高砂の生産を落として、製造委託するものと思われる。

  カ性ソ−ダ VCM PVC  
水島工場(三菱化学内) 180千トン  400千トン   20113月末 停止
    汎用 (110千トン) 2008年 停止済
四日市工場(三菱化学内)     汎用 80千トン 20113月末 停止
ペースト 20千トン 20109月末 先行停止
川崎工場(東亞合成内)     汎用 120千トン 20113月 東亜合成が引取
 カネカから生産受託

ーーー

三菱化学と東亜合成は1996年に塩ビ事業で業務提携を行なった。

三菱化学は1996年末にS&Bにより水島で100千トンプラントを建設した。
東亜合成はセントラル硝子、東燃化学とのJV・川崎有機で年産100千トン設備を稼働させているほか、徳島工場に同20千トン設備を持っていたが、徳島の老朽化した20千トン設備を廃棄し、川崎に三菱化学の技術で100千トン設備を新設した。(2008年増強し 120千トン)
 (その後、旧川崎有機のPVCプラントは停止した。)

その後の業績悪化を受け、両社は事業統合を決め、200041日、統合会社がスタートした。

会社名   ヴイテック
資本金   60億円 
 出資比率 三菱化学 60%、東亞合成 40%
事業   電解製品(水島)の製造、VCM(水島)及びPVCの製造・販売及び研究開発
  電解製品の販売は三菱化学100%のダイアケミカルに委託
能力   電解(水島) 135千トン(苛性ソーダ97%換算) 
    VCM(水島) 300千トン 
  *セントラル化学はVCM(132千トン)生産を継続、ヴイテックに供給→その後停止
    PVC 合計 390千トン(川崎 180、四日市 110、水島 100

同社は設立以来、大幅赤字が続き、その結果、2005年3月、ヴイテックは再編を行い、出資比率を三菱化学 85.1%、東亜合成 14.9%に変更した。

2009年12月末の累積損失は235億円となっている。(資本金60億円)

日本のPVCの能力は2009年末で2,156千トンあるが、2010年の内需は1,031千トン、輸出は660千トン、出荷合計1,690千トンとなっており、能力は内需の2倍以上ある。

ーーー

PVC業界の推移は以下の通り。


2011/2/23 BHP Billiton、米シェールガス鉱区を買収 

BHP Billitonは2月22日、Chesapeake Energyからアーカンソー州のFayetteville Shaleの権益全てとパイプラインを47.5億ドルで買収すると発表した。

同社では、これは将来の開発で量的拡大が見込める大規模・長期・低コストの資産に投資するという戦略に沿ったものであるとしている。
また、地理的、需要家、製品の多様化というゴールにも合うものとする。

買収するFayetteville shale 資産はアーカンソー州の約487千エーカーの鉱区のリースと天然ガス資産で、現在、日量4立方フィートのガスを生産しており、40年間にわたりより多くの生産が見込まれる開発オプションを含んでいる。

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Chesapeake Energyの現在の鉱区は以下の通り。

このうち、Eagle Ford Shale については中国のCNOOC60万エーカーのリース権益の33.3%を購入している。

2010/10/18  CNOOC、テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加

 


2011/2/24  協和発酵キリン、英国のProStrakanを買収 

協和発酵キリンは2月21日、英国のスペシャリティファーマのProStrakan Groupの全株式を現金で取得し、100%子会社化する手続きを開始すると発表した。友好的買収で、ProStrakanの取締役会は全会一致で賛成している。

買収総額は約2.92億ポンド(約394億円)で、手元資金で充当する。
ProStrakan
昨年11月に複数の企業が買収に興味を示していることを明らかにしているが、買値はその直前の株価に対し、41%のプレミアム。

2011年6月初旬に英国法の手続きを終え、買収を完了する予定。

付記
2011年4月20日に、
Scheme of Arrangementについて英国裁判所の最終承認を受け、21日に効力が発効した。

協和発酵キリンは昨年、協和発酵ケミカル売却を決め、医療用医薬品事業に集中したが、
「がん、腎、免疫疾患を中心とした領域で、抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジーを駆使して、画期的な新薬を継続的に創出し、開発・販売をグローバルに展開することにより、世界の人々の健康と豊かさに貢献する、日本発のグローバル・スペシャルティファーマとなる」
ことを医薬事業ビジョンとしてきた。

Prostrakanは、米国と欧州でがん関連領域をはじめとする医療用医薬品の開発・販売体制を構築済で、同社の経営資源を獲得することでグローバル戦略を飛躍的に進展させるとしている。

買収の意義は以下の通り。

@米国と欧州における自社販売体制確立
A自社グローバル開発体制の強化
B既存パイプライン製品に関する開発・販売ノウハウの獲得
C重点領域におけるグローバル新薬開発・販売の加速・拡大

ProStrakanは抗がん剤投与に伴う吐き気抑制剤(Xomolix)を持っており、協和キリンが開発中の血液がん治療薬の販売で相乗効果も期待している。

ーーー

ProStrakan 1995年にStrakan として設立され、2004年に ProSkelia と合併し、ProStrakanとなった。
2005年にロンドン証券取引所に上場している。

スコットランドのGalashielsに本社を置き、米国と欧州でがん領域をはじめとする医療用医薬品の開発・販売を行う。
開発拠点は
Galashielsと米国Bedminster, NJで、自社販売子会社を通じて英、米、仏、独、スペイン、イタリアその他EU諸国で販売している。

2009年の売上高は79百万ポンドで、うち英国が40%、英国以外の欧州が44%、米国が9%、提携による売り上げが7%となっている。


2011/2/24 リビア危機で原油価格 急騰 

リビアの情勢緊迫化を受け、世界の原油価格が急騰している。

2月23日のNY原油先物市場でWTI原油は一時、2008年10月2日以来の100.00ドルを付けた。
終値は前日比2.68ドル高の98.10ドル。

エジプトの混乱を受けて欧州の原油市場が高騰している中で、WTI原油は米国の石油在庫が多いことから値下がりしていたが、ここにきて急騰した。

ロンドンの先物取引所北海ブレント原油一時108.57ドルに上昇した。
(日本時間24日11時現在、112.95ドル)

東京市場のドバイ原油は2月22日に104.30ドルとなった。(23日は103.30ドル)

これを受け、東京市場のオープンスペックナフサも22日に925ドルを付けた。(23日は910ドル)

付記 最新情報は http://www.knak.jp/index.html

 

リビアでは石油や天然ガスの生産活動に影響が広がっている。

BASF子会社のWintershallが日量10万バレルの生産を止める方針を表明、Repsol YPF、ENITotalが一部操業の停止を発表した。オーストリアの石油会社OMVも社員を大幅縮小した。

ENIはイタリア経由欧州向けの天然ガスパイプライン Greenstream を止めた。

BPは海底油田の採掘開始の準備をしていたが、最低限の要員だけを残して社員や家族を帰国させた。

2010/7/27 BP、リビア沖で深海油田掘削 

リビアの石油積み出し基地は6つあるが、そのうち5つが反政府側が抑える東部にある。

リビアの石油積み出し港の操業が停止されていると報じられ、また、リビアが全ての石油製品輸出に関して不可抗力条項を発動したと伝えた。これは不可抗力の事態が発生したことを理由に、出荷を免除される条項。

 

 http://www.avianflutalk.com/forum_posts.asp?TID=27000&PID=211512から

 

リビアの生産量は日量155万バレルで、埋蔵量は440億バレル。

生産量の80%が輸出されており、輸出先はイタリア32%、ドイツが14%、フランスが10%、その他欧州が23%、その他11%となっている。

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野村ホールディングスは2月23日、中東・北アフリカ情勢の悪化でリビアとアルジェリアが原油生産を停止した場合に、WTI原油先物価格が現在の2倍以上高い1バレル=220ドルに達する可能性があるとする報告を発表した。

 

付記

サウジアラビアは2月25日までに原油生産量をこれまでの日量860万バレルから900万バレル超へと引き上げた。

サウジの原油生産能力は日量1200万バレル超で1月の生産量は860万バレル。リビア減少分を短期間で補える余剰能力を持つ唯一の生産国。

リビアの供給の肩代わりをし、原油高騰に歯止めをかける。


2011/2/25 東洋紡、米国でのザイロン(R) 繊維を使用した防弾ベストの訴訟で和解

東洋紡は2月16日、米国の防弾ベストメーカーSecond Chance Body Armorからの損害賠償請求訴訟で和解契約を締結したと発表した。

破産した同社の破産管財人から提起されていた訴訟で、東洋紡が500万ドルを支払うことで和解する。
破産裁判所による承認が条件
となる。

ザイロンは有機系繊維の中では最高レベルの引張強度・弾性率を持つ繊維で、防弾チョッキ、コンクリート補強材、卓球ラケットなどに幅広く使用されている。DuPontのケブラーに比べ2倍の強度を持ち、弾性率、650°C高い分解温度、難燃性を持っている。

  poly(p-phenylenebenzobisoxazole

東洋紡は1998年にSecond Chance Body Armorとの間で、防弾チョッキ製造のためザイロンを供給する契約を締結した。

Second Chanceはザイロンでできた自社の防弾チョッキについて「もっとも薄く軽く、もっとも強い」と宣伝、1999年から2004年にかけて米国政府や地方の警察などに合計66千以上の防弾チョッキを販売した。

しかし、ザイロンには日光や熱、湿気にさらされると劣化する性質があった。
そうした欠陥がだんだんと分かってきたにもかかわらず、
Second Chanceは長らく米政府にそれを知らせなかった。

2003年9月に、Second Chanceが、ザイロンを使用した防弾チョッキの性能が予想より早く劣化するとして、これらの防弾チョッキの製造を中止し、販売済の製品を回収、補強、交換等の措置を取ることを発表した。

東洋紡はこれに関し、2001年7月から、強度保持性の指標として、高温、高湿下における強度保持のデータを定期的に開示してきており、一定以上の特殊な環境下でザイロン原糸の引っ張り強度が低下することは業界で広く理解されてきたと述べた。

2003年11月に、マサチューセッツ州の司法長官は、Second Chanceに対し、同社が製造・販売したザイロン使用の防弾チョッキの販売中止、交換、損害賠償等を求める訴訟を起こした。

2003年12月には、イリノイ州において、Second Chanceの防弾チョッキの購入者から、損害賠償を求める集団代表訴訟が提起された。

このほか、防弾ベストのユーザー等からオクラホマ州の地方裁判所に集団訴訟が行われた。

いずれも東洋紡も被告になっている。

東洋紡は、ザイロン繊維が欠陥ある製品であるとは考えておらず、ザイロンは防弾チョッキの一部分を構成する材料であり、いずれのケースも防弾チョッキメーカーの設計、製造、販売の問題であって、ザイロン繊維の瑕疵に起因するものではないと主張したが、いずれも和解している。

ーーー

Second Chance 2004年4月に、東洋紡に対する損害賠償請求訴訟を提起した。

Second Chance 、2004年10月に会社更生手続(Chapter 11)の申立をし、2005年11月に破産手続(Chapter 7)に移行した。
この結果、訴訟は破産管財人との間で、破産裁判所で進行した。

原告は、東洋紡がザイロン繊維に関する明示または黙示の保証に違反し、虚偽の品質情報を提供し、また契約に基づく誠実義務を履行せず、損害を生じさせたと主張した。

東洋紡は、相手方の主張が誤りで、同社に非がないことを主張し、長期間にわたって争ってきた。

今回、破産裁判所の指示による当事者間の協議の結果、訴訟を継続した場合の費用や判決の不確実性を勘案し、法的責任を認めることなく和解契約を締結することが妥当と判断し、500万ドルでの和解について合意した。

ーーー

現在、防弾ベストに関連し、米国政府との訴訟、Point Blank SolutionsFirst Choice Armor & Equipmentとの訴訟など、東洋紡を被告とする複数の訴訟が継続している。

付記

東洋紡績は
20117月、防弾ベストメーカー Point Blank Solutionsを原告として争っていた「ザイロン」繊維による防弾ベスト欠陥訴訟問題が600万ドルの和解金を支払うことで決着したと発表した。
東洋紡側は一貫して原告の主張が誤りであることを主張してきたが、今後の訴訟継続による費用負担などを考慮した。

付記
東洋紡績は2012年3月15日、
First Choice Armor & Equipment,Inc.からの損害賠償請求訴訟において、東洋紡から原告に600万ドルを支払う条件での和解契約を締結したと発表した。
なお、
米国政府を原告とする2件の訴訟が米国の裁判所において係属している。

司法省は2005年6月、政府を代表してSecond Chance と東洋紡を訴えた。

この訴訟のもともとの原告は、Second Chance の元幹部で、訴状や証拠資料は秘密裏に司法省に送られ、財務省の監査官事務所な どが調査を開始、元幹部は内部告発者の立場で政府の調査に協力した。

米国の 不正請求防止法では、政府との取引で代金などを請求する際にウソを言った場合は、その業者は政府の損害額の3倍の金額と民事制裁金を政府に払わなければな らないと規定されている。
そうしたウソがあった事実を裏付ける証拠を持っている関係者は、政府に代位してみずから業者を相手取った訴訟の原告となることがで き、勝訴した場合は、回収額の最高3割を報奨金として受け取ることができる。

キイタム訴訟(Qui Tam Actions)と呼ばれる。
元幹部はこの制度に基づいて提訴した。

司法省は、東洋紡が欠陥を知っていながら、これを米政府に開示しな かったことを問題視した。
一方、東洋紡は、「ザイロン繊維の品質特性を何ら隠蔽していない」と反論。「ザイロンの劣化に関する各時点の最新の情報をSecond Chance に提供した」「東洋紡は政府に何らのウソもついておらず、責任はすべてSecond Chance にある」と主張して、東洋紡に対する訴えの却下を裁判所に申し立てた。

2010年2月、ワシントンDCの米連邦地裁は東洋紡の訴えを却下する決定を下し、東洋紡からの異議に対し、同年5月、結論を維持する決定を下した。

これから審理が本格化する。

Point Blank Solutions、First Choice Armor & Equipmentは、ザイロン繊維を用いて防弾ベストを製造し販売した米国の防弾ベストメーカーで、ザイロン繊維には欠陥および劣化の問題があると主張するとともに、東洋紡が当該欠陥等を知りながら隠してザイロン繊維を販売した結果、防弾ベストのリコールや販売中止のために 多額の損失を被った、と主張している。

 


2011/2/26 公取委、合併の事前審査を廃止 

公正取引委員会は、合併審査の事前相談制度について定めた現行の指針を廃止し、新制度を盛り込んだ指針をあらたに定める。

審査期間が長引く一因とされる事前相談制度を廃止して、届け出後の法定審査に一本化する。
審査期間も短縮し、審査の過程での理由説明や最終的な判断理由を公表するなど、企業側の不満に対応して透明性を高める。

同時に、審査の目安となるシェアについて、国内だけでなく世界的な競争状況を考慮することを改めて明確化する。具体的な例を示した指針を公表する方針。

近くパブリックコメントを募ったうえで最終案をまとめ、7月にも新制度に移行する。

大型案件の場合は以下の通りとなる。

  現行:事前相談制度  

事前相談
(1〜2年の場合も)
法定審査
(30日)
・実質的な審査
・審査は1次と2次
・追加資料要求などで長期化
・実質的な審査なし

  新制度:法定審査

一次審査
(30日以内)
二次審査
(90日以内)
  最終
@問題なし  −   合併認可
A追加資料要請
  (原則1回、理由説明)
@問題なし   合併認可
B排除措置事前通知 意見申述など 排除措置命令
B排除措置事前通知  − 意見申述など 排除措置命令

     要求に応じ、審査の論点を説明、反論の機会も
     詳細審査案件では、判断理由も公表

現在の事前相談制度は法律で決まったものではない任意の手続きだが、実際には大半の案件がこれによっている。
届け出受理前に 何度も書類提出を求められ、質問の数が1千を超えるケースもあった。期間が1〜2年に及ぶ例もあり、どのくらい時間がかかるか見通し難く、また、法定審査ではないため、担当者によって対応がばらつくとも批判されていた。

本年1月25日に閣議決定の「新成長戦略実現2011」に、これが挙げられている。

○企業結合規制の見直し
  ・企業結合審査の迅速性・透明性を高める観点からの見直しを2010 年度中に実施。

2月9日の事務総長定例会見で、以下の説明があった。

(問) 企業結合審査をめぐっては、手続に時間がかかる、不透明感がある、生産性が低いなどいろいろあるようですが、これらについては、どのようにお考えでしょうか。

(事務総長) 企業結合規制につきましては、今、御指摘のような時間がかかるのではないか、透明性が十分ではないのではないかなどの指摘があることを踏まえまして、公正取引委員会としても、現在、現行の企業結合規制の手続について、透明性、迅速性を一層高める観 点から、検討を進めているところでございます。

(問) やはり、不透明な部分はあるということでしょうか。

(事務総長) 不透明なところがあるというよりは、不透明だという御指摘がある点など、産業界からいろいろな 指摘もいただいていますから、そのような点を踏まえて、さらに、透明性の高い、企業にとって予測可能性の高いものにするためは、どうしたらよいかというこ とを、現在、検討しているところでございます。

(問) 今のことに関連して、検討しているということですが、目途はあるのでしょうか。

(事務総長) 今年1月25日に閣議決定されました新成長戦略実現2011におきましても、企業結合規制の見 直しが取り上げられておりまして、企業結合審査の迅速性、透明性を高める観点からの見直しを2010年度中に実施するとされておりますので、現在、その見 直し作業を進めているところでございます。

(問) 今、おっしゃったのは、2010年度中にということでよろしいのですか。つまり年度末までにという理解でよいのですか。

(事務総長) そうです。

 


2011/2/26 イラク最大の製油所爆破 

イラク北部Baiji の同国最大の製油所で2月26日、少なくとも4人のテロリストが侵入し、設備を爆破した。従業員4人が死亡した。
大火災が起こり、全プラントが停止した。

製油所全体の能力は日量29万バレルで、爆破されたNorth Refinery は日量15万バレル。
もう一つの Salahuddin Refinery
は改造中で、約5割の7万バレル程度の操業をしていた。

石油省報道官は早期の操業再開を目指すとしているが、復旧に2年はかかるという説がある。

この製油所は、以前は al-Qaeda が長期間支配し、活動の資金源となっていた。

イラクには現在、北部のBaiji、バクダッド南部のDora、南部のBasra 3つの製油所があり、合計の精製能力は日量55バレル。

2010/7/14 イラク、4製油所を新設、外資導入

2月初めにはバグダッドの北でパイプラインが爆破され、Dora製油所の操業に支障が出た。


2011/2/28 BP、インドでのガス・石油開発でRelianceと提携 

BP221日、インドの石油精製・石油化学最大手のReliance Industries と提携し、インドでの石油・ガス開発を拡大すると発表した。
両社はロンドンで枠組み協定に調印した。

BPRelianceが操業しているベンガル湾のKrishna Godavari (KG)海盆のKG D6 blockを含む23の鉱区(総面積27km2)の石油・ガス権益の30%を取得する。
また
50/50JVを設立し、インド市場でのガス販売の市場調査などを実施する。
JVはまた、インドで天然ガスの受け入れ、輸送、販売のためのインフラ作りに努力する。

付記

両社は2011年8月30日、正式契約に調印した。
BPは対価として72億ドルを支払うが、実績に応じて追加で最高18億ドルを支払う。

BPの深海での探鉱開発技術(これら鉱区は水深 1,000〜2,000mの深海にある)とRelianceのインドでのプロジェクト運営、操業の経験を統合する。
Relianceが引き続きオペレーターになる。

BPReliance23の鉱区の権益の対価として総額72億ドルを支払う。更に開発の進展に応じて最高18億ドルを支払う。
これらの支払いと今後の開発投資を合わせると
200億ドルに達する見込み。

BPはインドの将来に賭けており、海外の直接投資では最高額の一つである。

BPはメキシコ湾の原油流出事故後に、補償資金の確保のため多くの既存油田の権益売却を進めているが、その一方で、本年1月、ロシアのRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意した

2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携 

今回、インドの埋蔵量の多い鉱区の権益を取得し、成長著しいインドのガス市場に参入する。

ーーー

Krishna Godavari D6 blockでは2002年にDhirubhaiガス田(埋蔵量11Tcf)が、2006年にMA油田構造(埋蔵量5500万バレル)が発見された。Reliance90%、カナダのNiko Resources10%の権益を獲得、Relianceがオペレーターとなった。

これまでのインドの国産ガス供給は、ムンバイ・ハイ油田など西海岸沖合油ガス田に頼っていたため、ガス消費地は西海岸のムンバイ〜デリーを結ぶメガロポリスに限定されていたが、東海岸で初めて開発されることとなる。

Reliance2008年に原油の生産を開始、20094月にDhirubhaiガス田の生産を開始した。インドで初めての深海ガス田(水深10002000m)である。

第1フェーズ生産ガス田(Dhirubhai 1,3)で生産されたガスは、対岸のKalinadaで陸揚げされ、30km離れたGadimoga処理設備で処理される。その後、Reliance子会社が操業する東西横断パイプラインを経由して、インド西部グジャラート州Bharuchに輸送される。
Relianceでは、東西横断パイプライン沿線のデカン高原、インド東部、南部の主要都市にもガス需要を創出しようとしている。

その後、Dhirubhaiガス田の周辺で多くのガス田が見つかっている。

Dhirubhaiガス田はインドの天然ガスの中で重要な位置を占める。

資料 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3295/0906_out_m_in_d6_gas_production.pdf

 


2011/2/28  富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収

富士フイルムは228日、米Merckからバイオ医薬品の受託製造会社を買収したと発表した。

Merckの全額出資子会社、英国のMSD Biologics (UK) と米国のDiosynth RTP買収、両社を100%子会社として新たにスタートさせる。買収額は明らかにしていないが、約400億円とされる

米国MerckはドイツのMerck KGaAから分離した。
このため、米国
Merckは米国、カナダ以外の地域では「MSD」(Merck Sharp & Dohme)の名称を使用、逆にドイツのMerck KGaAは米国とカナダでは「EMD」の社名を使用している。

付記

三菱商事は20116月、両社に各20%を出資した。
バイオ医薬品の受託製造事業において業務提携する。

三菱商事は富士フイルムファーマにも15%の出資をしている。

がんやリウマチなど、未だに有効な治療方法が確立されていないUnmet Medical Needsが高い一部の疾患領域では、有効な治療薬として、バイオ医薬品に期待が高まっている。

今回買収した両社は、バイオ医薬品の開発・製造に必要なタンパク質を、効率的に細胞や微生物を使って発現させる高度なバイオテクノロジーや、培養から抽出、精製にいたるプロセスの管理ノウハウ、経験豊かな人材、製造設備を持つバイオ医薬品受託製造のリーディングカンパニーである。

これまで、Merckは両社を生産プロセスの開発から製造までを行うMSD BioManufacturing Networkとして一体運営してきた。

MerckSchering-Ploughとの合併を機にバイオ医薬品の受託製造事業を見直し、生産設備を最適化することに伴い、富士フイルムがこれらの2社を買収した。

両社の生い立ちは複雑である。

(1) MSD Biologics (UK)(MerckAvecia BiologicsICI

微生物を用いたバイオ医薬品の開発・製造受託事業者。バイオベンチャーや製薬企業からの業務を請け負う。

旧称はAvecia Biologicsで、元々はICISpecialty Chemicals1部門であった。

ICI1993年に Biochemicals 部門をスピンオフし、Zenecaを設立した際に、Specialty Chemicalsも同時にスピンオフされ、Zeneca SpecialtiesとしてZeneca子会社となった。

1999年にZenecaがスウェーデンのAstra と合併しAstraZencaとなった時に、Zeneca SpecialtiesMBOで独立、Aveciaとなった。

その後、Aveciaは買収と売却を繰り返した。

Avecia Biologics 2010年にMerck が買収した。

なお、Avecia2006年に三井化学にImage Polymers(米、英)の持分を売却、また、Avecia Inkjet を富士フィルムに売却している。

2010/4/24  Avecia の変遷

(2) Diosynth RTP:(MerckSchering-Plough AkzoCovanceCorning

細胞や微生物を用いたバイオ医薬品の開発・製造受託事業者。バイオベンチャーや製薬企業からの業務を請け負う。

198090年代にCorning, Incorporated が多数の医薬開発会社を買収したが、同社は19971月にこれらをまとめてスピンオフし、Covance Inc.を設立した。

同社の子会社の1つがCovance Biotechnology Services Inc で、2001年にAkzo Nobel が買収し、Diosynth RTPと改称した。

Akzo Nobelの医薬事業の3本柱の一つであった。

Organon:経口避妊薬、不妊症治療薬、その他医薬品 (世界50か国で展開)
Diosynth:受託生産
Intervet :動物用医薬品 

Akzo20051月にDiosynthOrganonに吸収させたが、2007年にそのOrganonSchering-Ploughに売却した。

AkzoOrganonの売却資金でICIを買収した。

2007/8/13  Akzo ICI を買収

Merck 20093月にSchering-Plough を買収した。

2009/3/11 Merck、米Schering-Plough を買収

この結果、MSD Biologics (UK)Diosynth RTPはともにMerck100%子会社となり、MSD BioManufacturing Network として一体運営してきた。

ーーー

富士フイルムは、医療関連の事業を重要な成長分野として位置付け、「予防〜診断〜治療」の全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーを目指した事業展開を進めている。

2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す

2010/2/22  富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入

2010/9/3  富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携

 


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