2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は http://blog.knak.jp


2015/8/17    天津大爆発のその後    

天津市は8月16日、死者数が112人になったと報じた。 更に95人が行方不明で、このうち85名が消防関係者とのこと。
病院で手当てを受けた人は720人以上に上っている。

既報 2015/8/14 天津で大規模爆発          

爆発に巻き込まれた消防士は、最初に受けた通報では「コンテナから出火」という内容で、何が燃えているのか理解しておらず、「消火作業を始めて約20分後に突然、爆発が起きた」と証言している。現場に行った警官も何が燃えているのか知らされていなかったと明かしている。
水に触れると可燃性ガスのアセチレンが発生する恐れがある炭化カルシウムを保管しており、放水が爆発を誘った可能性がある。

付記

軍関係者、倉庫にあった金属ナトリウムに放水したことが爆発につながったとの見方を示した。
倉庫にはほかに、シアン化ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなど約40種類が保管されていた。

中国メディアは瑞海国際物流の董事長ら10人が拘束されたと報じた。ずさんな管理体制や贈収賄などについて調べている模様。

中国共産党中央規律検査委員会は8月18日、国家安全生産監督管理総局トップの楊棟梁局長(閣僚級)について、重大な規律違反と違法行為で調査していると発表した。
楊氏は、中央政府で天津市の爆発事故を統括する立場にあるほか、2012年まで天津市常務副市長を務めており、何らかの関係がある可能性もある。 

現場に多量のシアン化ナトリウムが確認されたため、8月15日に急遽、現場周辺 1km前後だった立ち入り禁止区域を周辺 3kmに拡大した。
一部中国メディアは保管されていたシアン化ナトリウムが700トンに上り、下水道から基準値を超えるシアン化合物が検出されたと伝えた。

港に通じる道路の通行止めが続くなど、復旧のめどがたっていない。

事故現場付近には、トヨタ自動車を中心に多くの日系自動車関連企業が進出している。
天津一汽豊田汽車や豊田通商、松下汽車電子開発やイオン(
永旺夢)のモールなどは 3km 範囲にある。

トヨタ自動車は夏期休業(8月9日〜16日)明けの生産を8月17日から始める予定になっていたが、避難勧告が出されたため、19日までの3日間を操業停止とすることを決めた。
イオンは営業できない状況になっており、今のところ再開のめどは立っていない。

爆発の影響で、現場近くの自動車置き場では数千台の自動車が破損した。

爆発前(Google Earth)

 

北側から   爆発で巨大な穴が出来ている。自動車置き場の後方に高層マンション群。


税関業務も止まり、荷揚げが中断している。
天津港は大連や上海、香港などと並ぶ中国有数の輸出入の拠点で、港湾機能の停止が長引けば、中国の輸出不振に追い打ちをかける懸念もある。


爆発現場の南約800メートルにマンションが立ち並び、数千人が暮らしていたが、壊滅的な被害を受けた。

中国の法律は、周囲1キロの範囲に住宅などがある場所に危険化学物質の貯蔵施設を造ることを禁じているが、人民日報によると、近くのマンション群が完成した後の2013年に爆発が起きた貯蔵施設の建設許可が出ていた。

地元では貯蔵施設の管理会社の幹部が天津市の幹部の親類だったといったうわさも繰り返し流れている。

 


2015/8/18 ミャンマーのDawei 経済特区、ようやく前進    

ミャンマーの3つの経済特区(北部で中国が開発するチャウピー、日本が担当するヤンゴン南部のティワラ、タイが担当する南部のダウェー)のうち、遅れていたダウェーの開発がようやく動き出す。

初期開発段階で日鉄住金物産のタイ企業とのJVが参加する。

Dawei SEZは2008年にミャンマーとタイの両国が開発で合意した。

2010年にタイの大手建設会社Italian-Thai Development Corporation Limited (ITD) が250平方キロの土地について60年間の事業権利と75年間の租借権を得て、開発に着手した。
しかし、実際は1社では開発資金をまかないきれず、地元住民の移転や周辺土地と一部道路の整備程度しか進んでいない。

2012年7月のタイのインラック首相とテイン・セイン大統領との会談で、Dawei 開発の仕切り直しが行われ、両国政府が協力して進めることで合意、土地の開発権と租借権がItalian-Thai Development からDawai 開発の特別目的事業体(SPV)に移管された。

Dawei SEZの開発面積はThilawa SEZの10倍あり、港湾や発電所などのインフラ整備だけで1兆円とされる。

このため、タイ政府とミャンマー政府は日本にも参加を要請した。
但し、
両国はあくまでThilawa SEZ 優先ということで合意している。

2013/5/29 ミャンマーの経済特区 

安倍首相は2014年11月、ASEAN関連首脳会議へ出席のため訪問中のミャンマーの新首都ネーピードーでテイン・セイン大統領と会談を行った。

テイン・セイン大統領から、これまでの官民を挙げてのティラワ経済特区の開発支援に対する感謝表明があり、安倍総理から総額260億円の円借款3件の供与を決定したこと、これも活用して、中小企業向け金融、配電網、ティラワ港などの整備に協力したい旨述べた。

両首脳は、ダウェー開発についても今後、日本、ミャンマー、タイの3カ国間で協議していくことで一致した。

ティラワ経済特区の状況(2015/5) については下記参照
 http://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/mm/sez/pdf/thilawa_sez_7.pdf

2015年7月4日、東京で第7回日本・メコン地域諸国首脳会議が開催された。
これを機に同日、日本、ミャンマー及びタイの間で、ダウェー開発にあらたに日本が参加することについて覚書が署名された。
ミャンマーの情報相によると年内にも覚書に基づく開発が開始される。

覚書は「出資」「技術連携」「幹線道路建設」「環境・社会への配慮」など6章で構成され、出資については、ミャンマーとタイが設立した特別目的事業体(SPV)に、3カ国が均等出資する形で日本が参画の意図を表明。前提となるSPVの枠組み合意や株主合意の修正も進める。
開発を「初期開発事業」と「本格開発事業」に区別し、各段階でSPVの機能を明確化し、SPVの権限、ガバナンスを強化することでも一致した。

技術連携では、3年以内に本格開発に必要な技術的検討、設計・開発計画を策定し、既存マスタープランを精緻化させる。
日本政府は技術協力の意図を表明、SPVを支援し、プロジェクトを提案するためJICAの専門家を派遣する。

幹線道路建設では、日本政府は新規幹線道路の建設のあり方を探るプレFSを早期に実施すると表明した。

三井物産や伊藤忠商事が同特区開発への参画を検討、新日鉄住金やトヨタ自動車も関心を寄せている。


ミャンマー政府とタイ政府は8月5日、ダウェー経済特区の開発で、2年前に権利を取り上げた
タイの大手建設会社Italian-Thai Development Corporation Limited (ITD) を含むコンソーシアムと初期開発権契約を締結した。

コンソーシアムは2015年2月に、この事業のため、MyanDawei Industrial Estate Holding を設立した。
コンソーシアムのメンバーは下記の通り。

・Italian-Thai Development Corporation(ITD) タイの大手建設会社

Rojana Industrial Park Public Co., Ltd.  :タイの工業団地の造成・分譲・運営会社

1988年5月にVinichbutr's Group(タイ)と住金物産(現 日鉄住金物産)のJVとして設立された。
現在はタイで上場しており、Vinichbutr's Groupが31%、日鉄住金物産が21%の出資となっている。

LNG Plus International Company Limitedタイのエネルギー会社

初期計画のうちのLNG受入基地の建設は、LNG Plus International が実施する。

ITDによると、初期開発の総開発費は17億ドルで、敷地面積が27平方キロメートルの工業団地や発電所などを整備する。
第一段階として、小規模港湾、火力発電所、タイへの2レーンの道路、LNG受入基地、居住地、電話線、労働集約産業の団地などを整備する。

世界銀行からの5億ドルの融資や、ミャンマー政府、タイの地場銀行からの融資で開発を行う。

初期開発段階では衣料品や食品加工のような労働集約産業の団地を整備するが、長期計画では自動車、鉄鋼、電子電器、ゴム、化学品、石油精製、肥料、プラスチック、医薬品などの誘致を考えている。

ーーー

住金物産(現 日鉄住金物産)はタイ国において長年に亘り、現地パートナーと合弁で工業団地の造成・分譲・運営 (Rojana Industrial Park Public Co., Ltd.)や天然ガス焚きによる発電事業(Rojana Power Co., Ltd.)を行い、同国におけるインフラ事業を推進してきた。

Rojana Powerは、Rojana Industrial Park 41%、KPICネザーランド(関電グループ) 39%、住金物産 20% の出資で、ロジャナ工業団地内に併設され、1999年の運転開始以来、天然ガス焚き発電を行い、タイ電力公社(EGAT)に電力を安定して卸販売するとともに、ロジャナ工業団地に入居する企業に電力と蒸気を販売して いる。


2015/8/19 ロッテ、次男中心の体制に 

ロッテホールディングスは8月17日午前、帝国ホテルで臨時株主総会を開き、創業者の次男の重光昭夫副会長を中心とした体制で経営を続けると確認し 、およそ15分で終了した。
これにより、事実上、韓国と日本ロッテの「ワントップ体制」が固まった。

これまでの経緯  2015/8/1   ロッテの内紛

総会には、経営陣の1人として次男の昭夫副会長が、また、株主として長男の宏之氏が出席した。創業者の武雄名誉会長は欠席した。

会社が提案した議題は次の2つで、いずれも承認された。

 1)コーポレートガバナンスに関する方針の確認

重光昭夫副会長を中心とする現在の経営陣が、安定的な経営体制を確立してコーポレートガバナンス・企業統治を向上させるとともに、透明性の高い経営を徹底することを希望する。

 2)社外取締役の選任

元参議院議員で、帝京大学の教授を務める弁護士の佐々木知子氏を創業以来、初めてとなる社外取締役として選任する。

役員や社員持ち株会が昭夫副会長を支持したとみられる。

創業者一族が対立している問題で、 盧柄容・ロッテ物産社長ら韓国ロッテグループ系列37社の社長は8月4日、ソウルで会議を行った後、「ロッテを率いるリーダーとして、長年にわたり経営能力の検証を受け、成果を出してきた辛東彬会長(昭夫氏)が適任だ」とする声明を発表した。
「ロッテグループは特定の個人や家族の専有物ではなく、顧客、株主、協力会社、18万人に上る社員と共に歩む企業だ」とも強調した。

ロッテHDの佃孝之社長も同日、東京で韓国メディアとの懇談会を開き、昭夫氏支持を明確にした。

重光宏之氏は以前、ロッテHDの株主総会で取締役の入れ替えを提案するとしていたが、1)の結果を受けてか、提案しなかった模様。

宏之氏は2件の議案に賛成しなかったとし、「父の委任状を持って株主総会に出席し、父も2つの議案に賛成しなかった」と述べた。
「私は株主の権利を持っている。今後経営陣の交代に向け株主総会の招集を求めることも考えていきたい」としている。

昭夫氏は総会の後、「佐々木氏の就任を機に開かれた経営をよりいっそう加速する」とのコメントを出した。

昭夫氏は8月11日の韓国での記者会見で、支配構造改善タスクフォースと企業文化改善委員会の発足を約束した。
タスクフォースは循環出資の解消、持ち株会社体制への転換とそれに伴う実務作業を担う。委員会はこれまで問題視されてきた「軍隊式組織文化」を変えることも重視する。

付記 ロッテの「韓国企業化」を図るため、ホテルロッテの上場を準備している。


付記

ロッテホールディングスは2016年3月6日、都内で臨時株主総会を開き、経営陣への復帰を求める創業家長男で前副会長の重光宏之氏側の提案はすべて反対多数で否決されたと発表した。

臨時株主総会は宏之氏が社長を務めるロッテHD筆頭株主の光潤社が開催を求めたもの。
光潤社の出した現経営陣の解任、宏之氏の取締役選任など4つの議案がすべて否決された。

宏之氏は総会終了後、今回の総会で否決された議案を改めて6月の定時株主総会の議案として提出したと明かした。

付記

韓国のロッテ製菓は2016年3月25日、株主総会を開き、辛東彬(重光昭夫)韓国ロッテグループ会長とロッテ製菓の金龍洙社長を取締役として再任し、新たに2人を取締役に加えた。

93歳と高齢の創業者の辛格浩氏は再任されず、1967年の設立以来49年務めた取締役を退任することになった。


付記

ロッテグループ各社で務めていた取締役を正当な理由なく解任されたとして、創業者重光武雄氏の長男の重光宏之氏がグループ4社に合計約6億2000万円の損害賠償を請求していた訴訟の第一審判決で、東京地裁は2018年3月30日、宏之氏の請求を棄却した。宏之氏が経営面で悪影響が及びかねない事業を強引に進めたことから「役員として著しく不適任とされてもやむを得ない」と判断した。

ーーー

今回の騒動で、韓国ロッテの持ち株会社に当たるホテルロッテの株は日本側がほとんどを握っていることが初めて明らかになり、韓国内で大騒動となっている。

韓国紙は、「韓国で稼いだカネを日本に持っていく」 などと報じている。
長男の宏之氏が記者会見を日本語でおこなったことも問題視された。

ホテルロッテの株は、日本のロッテHDが19.07%、総括会長が代表である日本の複数の「L投資会社」が72.65%、光潤社が5.45%保有するとされる。 

昭夫副会長は11日の記者会見で、「日本のロッテHDの株式は光潤社、社員持ち株会、役員が3分の1ずつ保有している」と説明した。

諸情報から、ロッテの株主と出資比率は下記の通りとみられる。

総括会長が代表を務める資産管理会社「光潤社」が27.65%
社員持ち株会が32%超
残りを武雄名誉会長、長男宏之氏、次男の昭夫副会長(いずれも数%ずつ?、昭夫副会長は1.4%)や長女・辛英子氏、親族、役員など。

「光潤社」の株は総括会長が3%、兄弟が 29%ずつ保有するとされるが、今回の事態を受け、自社株 12%を昭夫氏が譲り受けることにしたとの報道もある。

「L投資会社」については下記の点を明らかにした。

韓国のロッテホテルは1972年から完成まで10億ドルという多額の資金が投資された。
日本のロッテ系列企業多数が共同で出資し、8株主になっている。

2000年代に入り、出資元の企業が事業部門と投資部門を分割した結果、L投資会社が設立された。
12社あるL投資会社はホテルロッテの株式72.65%を保有している。

聯合ニュースによると、7月31日付で昭夫氏が L投資会社12社すべての代表取締役として登記されたことが分かったという。

 

韓国の現行法によると、ロッテのように相互出資が制限されている企業集団は非上場会社であっても筆頭株主の株式保有状況や役員の構成などを公示することになっているが、外国企業にはこの義務が適用されない。

しかし、韓国公取委は8月に入り、韓国ロッテグループの支配構造の頂点にあるロッテHDと光潤社が日本企業で、筆頭株主や株主構成などが公表されていないため混乱が深まっているとして、韓国ロッテを所有している日本のロッテHDと光潤社 、L投資会社の筆頭株主や出資構造などを把握する方針を固めた。
「方法を模索している」としている。

外国企業が韓国の相互出資制限企業集団(資産規模2兆ウォン:約2124億円以上)を保有している場合、その企業の所有構造を把握できるようにしたい考え。


韓国の崔ギョン煥経済副首相兼企画財政部長官は8月6日、必要に応じて同グループの不透明な支配構造や資金の流れを厳しく調査する方針を示した。

「資産規模で韓国第5位のグループであるロッテが、常識的に理解できない経営権争いを繰り広げていることに、非常に失望している」と述べた。ロッテは争いをやめて不透明な支配構造の改善に努めるべきだとし、「そうしなければ市場が相応の対応を取るだろう」と強調した。

 


2015/8/20   環境相、中部電力の石炭火力計画 是認せず 

環境相は8月14日、中部電力が愛知県武豊町で2022年の運転開始を目指す大型石炭火力発電所(出力107万kw)について、環境影響評価(アセスメント)法に基づき「現段階では是認できない」とする意見書を経済産業相に提出した。

環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kw以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境相は、提出された計画段階環境配慮書について、経産相からの照会に対して意見を言うことができるとされており、この手続きに沿うもの。

電気事業連合会など電力業界が2015年7月に「電気事業における低炭素社会実行計画」で公表した二酸化炭素(CO2)削減目標は実効性が不十分なため、CO2排出量を2030年までに2013年比26%減らす政府目標達成に「支障を及ぼしかねない」と判断した。

環境相は6月12日、山口宇部パワー鰍ェ宇部興産の構内で石炭を燃料とする総出力120万kWの火力発電所を新設する「西沖の山発電所(仮称)」について、「現段階において是認しがたい」との意見書を経産相に提出した。

2013年4月に関係閣僚会合で承認された「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」では、電力業界全体で二酸化炭素排出削減に取り組む枠組の存在が不可欠であるが、この時点において、枠組は構築されておらず、エネルギーミックスに基づく約束草案政府原案の達成に支障を及ぼす懸念があるとした。

2015年7月に「枠組」は発表されたが、環境省は今回、これの実効性が不十分とした。

今後、経産相から事業者である中部電力に対して、環境相意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

電力業界の目標を環境省が容認しない状況が続けば、今後の手続きでも反対意見が出て経産省が建設を許可しない可能性もある。

付記

環境相は8月28日、九州電力・東京ガス・出光興産の3社が設立した「千葉袖ケ浦エナジー」が千葉県袖ケ浦市で計画している大型石炭火力発電所の建設について、「是認できない」とする意見を表明した。

ーーー

東京電力による2012年度電力卸供給入札で、石炭火力の落札の可能性が出た。
石炭火力は安定供給・経済性に資するが、環境面に課題があることから、2013年4月25日、経済産業省と環境省は国の目標・計画と整合を取るため、「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」を行い、関係閣僚会合で承認された。

・今後作成する国の温室効果ガス排出削減目標と整合的な形で電力業界全体の実効性ある取組の確保が必要。

・ 国は、下記の観点により必要かつ合理的な範囲で審査していく。
  (1) BAT(Best Available Technology)

  (2) 国の目標・計画との整合性

http://www.meti.go.jp/press/2013/04/20130426003/20130426003-3.pdf

ーーー

計画中の主な石炭火力発電所は下記のとおり。

立地 事業者 石炭火力計画 備考
愛知県武豊町 中部電力 5号機 107万kW
着工予定:2018年度
営業運転開始予定:2021年度
原油・重油燃焼の1号機は老朽化し、停止済み
同2号機〜4号機(各37.5万kw)を2015年に停止、全機を撤去し、5号機を新設
山口県宇部市
西沖の山
(宇部興産所有地)
山口宇部パワー 120万kw(60万kw x 2基)
運転開始 2020年代前半
電源開発 45%、大阪ガス 45%、宇部興産 10%
 
秋田市 関西電力/丸紅 130万kW (65万x 2) 2020年代半ば
袖ケ浦市
出光の貯炭場に隣接
千葉袖ケ浦エナジー
九州電力/出光興産/
東京ガス均等出資
max 200万kW 2020年代半ば
千葉
(JFE製鉄所内)
中国電力/JFE/東京ガス 100万kW  

ーーー

政府は7月17日、地球温暖化対策推進本部を開き、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比26%削減」とする目標を正式決定した。

2015/7/18 温室効果ガス 2030年に2013年比 26%減 

政府は目標の検討にあたり、2030年時点の再生可能エネルギー比率を22〜24%、原発を20〜22%と決め、2013年比で排出量を21.9%削減できるとした。

  2010年度 2030年度
再生エネルギー(含水力) 9.6% 22〜24%
原子力 28.6% 20〜22%
LNG 29.3% 27%
石炭 25.0% 26%
石油 7.5% 3%
 
 
 
 
 
再生エネルギー内訳
安定 水力 8.8〜9.2%
バイオマス 3.7〜4.0%
地熱 1.0〜1.1%
不安定 太陽光 7.0%
風力 1.7%

さらに代替フロン類削減などで1.5%減、森林整備などによるCO2吸収分2.6%を上乗せし、計26%削減を目指す。

    2015/6/4   エネルギーミックス最終案   


電気事業連合会加盟10 社、電源開発、日本原子力発電および新電力有志 23社は、2015年7月17日、低炭素社会の実現に向けた新たな自主的枠組みを構築するとともに、「電気事業における低炭素社会実行計画」を策定したと発表した。

   http://www.fepc.or.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2015/07/17/20150717_CO2.pdf

内容は下記のとおりで、2030年度の販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を2013年度比約35%減らすというもの。

2030年度に排出係数 0.37kg-CO2 / kWh 程度(使用端)を目指す。

 2030年度CO2排出量(3.6億トン-CO2) / 同年度の電力需要想定(9.808億kWh) = 0.37kg-CO2/kWh
 
  2013年度比 ▲35%程度相当と試算
 

火力発電所の新設等にあたり、BAT(Best Available Technology) を活用すること等により、最大削減ポテンシャルとして約1,100万トン-CO2の排出削減を見込む。

 設定根拠

参加各社はそれぞれの事業形態に応じた取り組みを結集する。

・安全確保を大前提とした原子力発電の活用

・再生エネルギーの活用

・火力発電の高効率化に努める。

・電力小売分野での省エネ・省CO2サービスの提供


参加各社はそれぞれの事業形態に応じた取り組みを結集するというだけで、具体的な「実行計画」はない。

今回、環境省は、このCO2削減目標は(1)石炭火力のCO2排出量をどう減らすか(2)CO2排出が目標通りに収まらない場合どう対応するか−−が明確でないと判断、実効性が不十分なため、CO2排出量を2030年までに2013年比26%減らす政府目標達成に「支障を及ぼしかねない」と判断した。

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オバマ米大統領は8月3日、石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出に対する規制強化を正式に発表した。
新規制では、火力発電からのCO2排出量を2030年までに2005年比32%削減することを目指す。

米国政府はすでに、温暖化ガス排出量を2025年までに2005年比で26〜28%削減する計画を提出しており、今回発表した火力発電への規制強化により目標達成を後押しする。

EPAは2013年9月20日、新設の石炭火力発電を対象にした排気ガス規制案を発表した。

それによると、新設の石炭火力発電所は1メガワット時あたりの二酸化炭素(CO2)排出量を1100ポンド(500キロ)までに制限される。
これは、近代的な石炭火力発電所の大半での排出量より700ポンドも少ない。

この基準を達成するためには、CO2が大気に放出される前に回収する二酸化炭素回収貯留(CCS) という最新技術を使うしか方法がない。

2015/8/7 オバマ政権、火力発電のCO2排出規制を強化
 

石炭火力は、最新型であってもCO2排出量が天然ガス火力の2倍以上とされ、欧米各国は事実上、新設を不可能にする規制を導入しつつある。

日本が大量の石炭火力発電の増強を進めれば、温暖化対策に逆行するとして、国際的な批判にされるのは必至である。


 

2015/8/21    天津爆発事故のその後(2)   

天津の爆発事故を受け、市トップの黄興国・共産党委員会書記代理兼市長が8月19日、事故後初めて市内で記者会見し 「天津市の党委と政府の主要な責任者として私には今回の事故に対して逃れられない責任がある」と述べ、責任を取る意向を表明した。
黄市長は、習近平国家主席に近い指導者として知られる。

中国共産党中央規律検査委員会は8月18日、天津市の爆発事故現場で事故対応を指揮していた楊棟梁・国家安全生産監督管理総局長(閣僚級)を「重大な規律・法律違反の疑い」で調べていると発表した。
楊氏は天津市で国営化学メーカーや市経済分野の幹部を歴任し、2001〜2012年の間、天津市副市長を務めた。

中国メディアは瑞海国際物流の董事長ら10人が拘束されたと報じた。ずさんな管理体制や贈収賄などについて調べている模様。

爆発現場の南約800メートルにマンションが立ち並び、数千人が暮らしていたが、壊滅的な被害を受けた。

中国の法律は、周囲1キロの範囲に住宅などがある場所に危険化学物質の貯蔵施設を造ることを禁じているが、人民日報によると、近くのマンション群が完成した後の2013年に爆発が起きた貯蔵施設の建設許可が出ていた。

地元では貯蔵施設の管理会社の幹部が天津市の幹部の親類だったといったうわさも繰り返し流れてい たが、同社の株の45%の所有者・董社軒が天津港公安局の元局長の息子であることが分かった。会長が55%を保有する。

この董社軒が新華社のインタビューで、「警察や消防当局とコネがある。私が彼らに資料を渡せば、すぐに認可をくれた」と話したという。 贈賄の事実には触れなかったという。

付記  会長は李亮で55%株主とされるが、実際の55%株主は創業者の於學偉于学伟)で、元 Sinopec 天津分公司副總經理

また、爆発した倉庫には許可量を大幅に上回る猛毒の化学物質があったことが分かっている。

天津市当局は、損壊した周辺の住居を買い取ったり、修繕したりする方針を明らかにした。破損程度を当局が査定する。

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天津市は8月19日、現場に残る化学物質について、硝酸アンモニウムや硝酸カリウムなどの酸化物が約1300トン、ナトリウムやマグネシウムなどの可燃性の高い物質が約500トン、シアン化ナトリウムなどの毒物が約700トンあると明らかにした。

国営中央テレビは17日、爆発現場の空気中から高濃度の有毒な神経ガスが検出されたと伝えた。李興華副参謀長は「シアン化ナトリウムと神経ガスという二つの有毒物質の値が最高値に達した」と述べたという。

しかし、天津市環境保護局長は、「そのような物質は検出されていない」と否定した。

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新交通システム津浜軽軌の東海路駅(終点)の駅舎とコントロールセンターは爆発で大きく損傷した 。イオンの近くの会展中心駅や隣の市民広場駅の駅舎も大きな損傷を受けた。
このため、8月13日から全線は運営停止になった。

周辺3キロが立ち入り禁止となっている。

中国天津市トップの黄興国・同市共産党委員会書記代理は19日の記者会見で、天津の大規模爆発で生産停止に追い込まれるなどして影響を受けた企業は176社に上ると明らかにした。
損害額はまだ分からないという。

トヨタ自動車は8月19日、現地合弁会社の天津一気豊田自動車の泰達工場と西青工場の生産停止を8月23日まで続けることを明らかにした。
24日以降に稼働を再開するかどうかも未定という。

同社は夏期休業(8月9日〜16日)明けの生産を8月17日から始める予定になっていたが、避難勧告が出されたため、19日までの3日間を操業停止と していた。

天津一汽トヨタは中国における主力生産拠点の1つで、小型車「カローラ」などを生産しており、2014年の生産実績は44万台。

泰達工場は爆発現場から約2キロほどしか離れておらず、爆発により窓ガラスが割れるなどの被害があった。3キロ以内は現在、立ち入り禁止となっている。
西青工場は約70キロと離れているが、泰達工場からの部品供給が滞るため、同様に稼働を停止していた。

部品供給が滞っているため、長春西工場(吉林省長春市)も20〜21日に休止する。

トヨタは完成車や部品受け入れのための代替の港を探す準備を進めている。

付記

トヨタは2工場の操業停止を再延長し、週明けの24〜26日の3日間も続けると発表した。また、爆風の被害に遭った出荷待ちの新車が約4700台に及んだことも明らかにした。

天津港は中国の主要な自動車の荷揚げ港の一つで、2014年の日本などからの輸入台数は約50万台と、中国全体の約4割を取り扱っているとされる。

ルノーの中国の合弁会社は港の倉庫に保管していた輸入車 1500台近くが焼けたり壊れたりする被害に遭ったとしてい る。
フォルクスワーゲンと現代自動車も、倉庫などに保管していた輸入車が被害を受けたことを認めている。
地元の自動車輸入販売会社「国機自動車」は当時、現場近くの倉庫に日本円で580億円余りに相当する6500台余りの輸入車を保管していたことを発表し た。被害は不明。

富士重工業は中国に生産工場を持っておらず、現地で販売する車両はすべて日本から輸出している。
天津港は2014年度に中国向けに輸出した約51千台のうち4割超を取り扱った最大の拠点となっているが、事故現場から約2キロ離れた物流拠点に保管していた新車百数十台が被害を受けた。

同社は8月19日、華北部向け輸出車の荷揚げを天津港から上海港へ一時的に変更する方針を明らかにした。8月20日に日本を出港する予定の輸送分から上海港に荷揚げ先を切り替える方向で最終調整している。

三菱自動車もスポーツタイプ多目的車(SUV)約600台の被害があった模様だが、「現場に立ち入れないので確認ができない」という。
同社は中国への輸出車の陸揚げを上海や大連などほかの港に切り替えることを決めた。

 

天津でカーナビなどを生産している富士通テンは製品を陸路で別の港まで搬送し出荷できないか検討している。  

大塚製薬は現場からおよそ4キロ離れたスポーツドリンクの工場で、窓ガラスが割れるなどの被害が出たため、14日から操業を停止していて、再開のめどは立っていないとしている。

イオンは爆発現場からおよそ2キロの場所にモールがあるが、周辺の立ち入りが規制されて被害の状況などが確認できず、営業再開のめどは立っていない 。

三越伊勢丹は
客入りが鈍いため閉店時間を3時間繰り上げている。

Hewlett-Packardは被害が比較的大きく、正常化の目途は立っていない。
 

三井化学(7月から三井化学SKCポリウレタン)が85.1%出資する天津天寰ポリウレタンは 北東の漢沽区で通常通り操業している 。
しかし、トヨタ向けの自動車座席の素材を製造していることから、「トヨタの生産停止が長引けば影響が出る可能性がある」という。

2009年9月に天津市の市轄区のうちの渤海海岸に面した塘沽 区(TangGu)、漢沽区(Hangu)、大港区(Dagang)が合併し、浜海新区が設置された。

爆発が起こったのは塘沽区。
天津天寰ポリウレタン漢沽区にあり、Sinopec天津とSinopec SABIC天津石油化学は南の
大港区にある。


2015/8/22   「世界モスキート・デー」    

8月20日は世界モスキート・デーであった。

マラリアはマラリア原虫に感染したハマダラ蚊に刺されることにより人に感染する病気で、世界で毎年約2億人が発症し、約58万人が亡くなっていると言われている。

1897年8月20日にイギリスの医学者であるRonald Ross(1857〜1932)が、ハマダラカ蚊の胃の中からマラリアの原虫を発見した。
これを記念して、8月20日はWorld Mosquito Day と呼ばれている。

Ronald Rossはこの発見により1902年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。1911年にナイトに叙勲された。

ーーー

次のような経緯がある。

マラリアの語源は “mala aria” で「悪い空気」を意味し、水はけが悪い地域の毒気に当てられた、と考えられていた。

フランスの Alphonse Laveran (1845〜1922) は、ストラスブルグ大学で医学を学び、アルジェにいた時マラリアの研究を始めた。

1880年11月、コンスタンチンの陸軍病院においてマラリア患者の血液を検査し、赤血球内にある小体が色素を含有して運動するのを見つけ,また赤血球外に飛び出しては鞭毛を出し、活発に運動するものを発見した。 マラリア原虫のプラスモジウスであった。

この発見でフランス科学アカデミーの名誉会員になり、後にコルシカ島に行きマラリアの撲減を計画し,蚊の絶減と湿地の治水を実行して効果を挙げた。

1907年にマラリア原虫を発見した功績により、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 

Patrick Manson (1822-1922) は、蚊によるマラリア媒介説を提唱した。

Mansonは、フィラリアの寄生によるフィラリア症の研究を行った。
フィラリアは人体内においては発育し得ないことを見つけ、中間宿主の体内においてのみ発育し、ヒトに移ると推定し、蚊に注目した。

1877年に、蚊の胃においてフィラリアが袋を破り、脱皮して胃壁をとおり抜けて筋肉に入り、ここで成長する事実を発見した。

Mansonはフィラリア研究より推論して、マラリアも中間宿主があって人に伝染するもので、恐らく一種の蚊が伝染の仲介者であろうと考え、1894年にマラリア・蚊媒介説を発表した。

 

Ronald Ross は、インドで生まれ、英国に帰って教育を受け、India Medical Service の試験に合格し、インドに渡った。

マドラスで多数のマラリア患者の血液を検査したが、原虫プラスモジウスを発見することができなかった。

ロンドンでMansonの研究室を訪ねた際に、Mansonはマラリア・蚊媒介説を説明し、この分野の研究を行なうことを勧めた。

Rossは1895年にインドで研究を開始、1897年にマラリア患者がRossの知らない種類の蚊(ハマダラ蚊)を示した。
Rossはこの蚊に患者の血液を吸わせ、毎日その蚊の胃を検査した。
その結果、1匹の蚊の胃壁に小球体を発見し、この小球体は蚊が患者の血液を吸って、4日後に発生することがわかり、またこの小球体が発育することを知った。

Ross はノーベル賞を受賞したが、Rossにマラリア・蚊媒介説を伝え、研究を指導したManson は受賞していない。

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住友化学は世界モスキート・デーの8月20日、マラリア対策向け新規殺虫成分の現地試験を開始すると発表した。
(英文発表は住友化学と下記のIVCCの共同発表)

非営利団体 IVCC蚊が媒介する疾病の感染を減らすことなどを目的として、2005年にBill & Melinda Gates Foundationの支援を受けて設立)と共同で、マラリアなどの感染症を媒介する蚊を駆除する新たな殺虫成分のアフリカでの現地試験を開始する。

開発品は従来のマラリア対策用の殺虫成分と異なる作用機作を持っており、既存の殺虫剤に抵抗性をもつ蚊に対する効果や安全性について、研究室レベルですでに確認されている。

これまで、住友化学の「オリセット®ネット」をはじめとする長期残効型防虫処理蚊帳や、室内残効性スプレーが普及することで、罹患率は大きく低下してきた が、一部地域では、既存殺虫剤に抵抗性をもつ蚊の発生が確認されている。

開発中の新規殺虫成分は、こうした抵抗性問題の解決につながることが期待される。


2015/8/23 中国山東省で工場爆発  

山東省淄博市桓台県果里鎮東付村の化学会社・山東潤興化工科技の工場で8月22日午後8時50分ごろ、大規模な爆発があり、火災が発生した。

9人が負傷して病院に搬送されたが、その後、工場従業員1人が死亡した。

山東潤興化工科技は、山東潤興投資集團の100%子会社で、 自社で技術開発したアジポニトリル(年産10万トンの3系列)とヘキサメチレンジイソシアネート(年産10万トン)のプラントを建設している。

アジポニトリルの第1期10万トンは昨年完成し、本年5月15日に竣工式を挙げた。

アジポニトリル→ヘキサメチレンジアミン(HAD)→ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)

ヘキサメチレンジアミンはナイロン6.6.の原料にもなる。

アジポニトリルが爆発の原因とみられる。アジポニトリルは加熱や燃焼により分解し、きわめて有毒なシアン化水素(青酸)を発生する。

工場から最も近い住宅は1キロ以内にあり窓ガラスが割れたほか、5キロ離れた場所でも揺れが感じられたという。消防車20台と消防隊員140人が現場に急行した。

空中に浮遊物が漂っているとの情報もあり、警察は現場に通じる道路を封鎖し、工場から半径1キロの範囲に住む人たちが避難している。

同じ山東潤興投資集團の子会社の山東省濱州市の山東海明化工では2015年3月18日に過酸化水素の爆発事故があり、4人が死亡、2人が負傷した。

 

山東潤興投資集團は化学、不動産、家具を扱う。

山東海明化工はアゾ染料のトップメーカーと自称している。青島潤興光電材料は、ポリウレタン、液晶材料、医薬中間体を扱っている。


 


2015/8/24   日揮、サウジのシェールガス設備受注   

日揮がサウジアラビアの国営石油会社 Saudi Aramco から同国北部 Turaif のシェールガス精製設備の第一期分を受注したことが8月20日に明らかになった。

Aramcoは2018年までに、日量2億立方フィートのシェールガスを生産する。
ガスはTuraifのWa'ad Al Shammal 計画(Ma'aden が開発している燐コンプレックス)の1000MWガス発電所の燃料として送られる。

2014年に日揮のほか、韓国のGSエンジニアリング建設、伊のMarie Tecnimont 及びカナダのSNC-Lavarin の4社が応札した。
当初は2014年11月末に決定予定(2016年12月完成)であったが、数回延期された。

第一期計画(通称 System A)は、シェールガスの坑口、パイプライン、精製設備建設を含み、能力は日量 66百万立方フィート(当初の50百万立方フィートから拡大された)。
契約金額は明らかでないが、2億ドル程度でないかとされる。

第二期分の System B 計画はこれの4倍で、同じ4社が応札している。

ーーー

Ma'aden は1997年にサウジの鉱物資源の開発のために政府100%出資で設立され、その後2008年に50%分が売却され、上場した。

当初は金鉱山の開発を行ったが、その後、燐、アルミ、工業用金属(マグネサイト、カオリン、低品質ボーキサイトなど)に事業を拡大した。

このうち、燐関係については2つの子会社を持つ。

1) Ma'aden Phosphate Company
         出資:Ma'aden 70%、SABIC 30%
         Al Jalamid 鉱山:粗鉱 年 1160万トン、コンセントレート 年500万トン(dry basis)
         Ras Al Khair 工場:Al Jalamid から鉄道輸送したコンセントレートを加工
   生産:燐酸、硫酸、アンモニア、燐酸二安肥料(DAP:年産300万トン)、
      コジェネ、海水脱塩   

2) Wa'ad Al Shamal Project (建設中)
  設立:2012年承認  
        出資:Ma'aden  60%、
米国肥料最大手 Mosaic 25%、SABIC 15%
  Umm Wual 鉱山:Turaifの40km北東
  Wa'ad Al Shamal(Turaif)工場
   生産:コンセントレート、硫酸、燐酸、飼料用燐酸1カルシウム・燐酸2カルシウム
      食品用精製燐酸、トリポリ燐酸ソーダ、

  他に、東部の Ras Al Khairにアンモニア・燐酸ベースの肥料工場を計画

  Wa'ad Al Shamal Projectは2018年から、採掘及び発電用に日量 2億立方フィートのガスを引き取る計画。

Wa'ad Al Shamal ProjectはTuraif に人口10万人の都市と燐鉱山・化学を中心とする産業コンプレックスをつくる計画で、Bechtel がMa'adenに協力している。

2014年2月に下記の建設契約が締結された。

相手先 建設計画
SNC Lavalin (カナダ)/ Sinopec 硫酸工場
中国寰球工程  鉱石選鉱設備
Hanwha Engineering & Construction 燐酸工場(年産150万トン)
韓国企業 アンモニア工場
スペイン企業 燐酸肥料工場

ーーー

サウジは世界で5番目の天然ガスの貯蔵量を持つが、主に発電用の需要量は2030年には2011年から倍増する。このため、シェールガスの調査を行ってきた。

Aramcoは、北西部のAl Jalamid地区、東部のSouth Ghawar地区、南部の Rub’a al-Khali (Empty Quarter) の3地区でシェールガスの探査を行ってきた。

政府は、2016年のシェールガス生産量を日量 20〜50百万立方フィートとし、2018年には5億立方フィート、最終的には40億立方フィートと推定している。

石油相は、サウジは有望なシェールガスを発見しており、採掘のための技術も妥当な価格で取得済みであるとしている。

石油相は2015年5月に、Aramcoが、建設中のWa’ad Al Shammal 計画の発電所用にシェールガスの供給を行うことを明らかにした。

 


2015/8/25   Sinopec、Lukoil からカザフスタンのJV持分を買収、100%子会社化  

Lukoilは8月20日、カザフスタンのJVの Caspian Investments Resources Ltd.の50%持分をSinopecに売却する契約に調印した。売却額は10億8700万ドルで、カザフスタン政府からの認可は7月末に受けている。

Sinopec は残りの50%を2010年にインドの富豪Lakhshmi Mittal から購入しており、これで100%オーナーとなる。

実は両社は2014年4月に12億ドルでの売却で合意していた。

しかし直後から石油価格が下落し、約半値となった。このため、Sinopecは最終の契約を締結せず、Lukoil側は契約違反として調停にかけていた。

今回、値下げで最終合意に達したと見られる。

ーーー

Caspian Investments Resourcesはカザフスタンで5つの油田を開発している。

北西部のAktyubinsk RegionのAlibekmola と Kozhasai
カスピ海東岸のMangistau RegionのKarakuduk、North Buzachi、Arman

このうち、Alibekmola と Kozhasai はカザフスタン国営のKazMunayGas が50%、Caspian Investment Resources が50%出資するJVのТОО Kazakhoil Aktobeが運営している。1999年8月に25年の 採掘契約を締結した。

Caspian Investments の売却後も、LukoilはカザフスタンにTengiz、Karachaganak、Kumkol の3つの原油・ガス田を持ち、Caspian Pipeline Consortium の権益も有しており、ロシアの最大のカザフスタン進出企業である。

TengizのパートナーはChevron 50%、ExxonMobil 25%、KazMunayGas 20%、Lukoil 5%である。

2014年のカザフスタンでの生産は、石油が430万トン、ガスが15億m3となっている。

Kashagan 油田については 2013/9/14   カザフスタンのカシャガン油田、生産開始 

Caspian Pipeline Consortiumはカザフスタン最大の生産油田であるTengiz (及び途中のKashagan)と ロシアの黒海沿岸の積み出し港ノボロシスクとを結ぶ総延長1,580km、輸送能力2,800万トン/年の原油パイプライン(CPCパイプライン)を保有・運営するコンソーシアム。

 出資は下記の通り。

Transneft - 31%
Kazakhstan - 19%
Chevron Caspian Pipeline Consortium Co. - 15%
LukArco B.V. (Lukoil) - 12.5%
Mobil Caspian Pipeline Co. - 7.5%
Rosneft - Shell Caspian Ventures Ltd. - 7.5%
Agip International (N.A.) N.V. - 2%
Oryx Caspian Pipeline LLC - 1.75%
BG Overseas Holdings Ltd. - 2%
Kazakhstan Pipeline Ventures LLC (KazMunayGas / BP)- 1.75%

2001年3月に完工し、 2001年11月に正式に稼動を開始した。


 


2015/8/25    中国、追加の金融緩和     

中国人民銀行は8月25日、追加の金融緩和を決めた。

8月26日に政策金利である銀行の貸し出しと預金の基準金利を0.25%引き下げる。
9月6日から預金準備率を0.5%引き下げる。

期間1年以上の定期預金の金利の上限規制を撤廃し、金利の自由化に向けた歩みを進める。

本年に入っての推移は下記の通り

  貸出
基準金利

預金基準金利

準備率
金利 上限 倍率
2015/1 5.60 2.75 3.300 1.2 20.0
2 5.60 2.75 3.300 1.2 19.5
3 5.35 2.50 3.250 1.3 19.5
4 5.35 2.50 3.250 1.3 18.5
5 5.10 2.25 3.375 1.5 18.5
6 4.85 2.00 3.000 1.5 18.5
7 4.85 2.00 3.000 1.5 18.5
8 4.65 1.80

廃止

18.5

9

   

18.0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

付記 2015/10/24 17.5%
   2016/3/1     17.0%


2015/8/26  Valeant Pharmaceuticals、女性用バイアグラの Sprout Pharmaceuticalsを買収    

カナダの製薬大手 Valeant Pharmaceuticals International, Inc. は8月20日、「女性用バイアグラ」とも呼ばれる女性の性的欲求低下障害の治療薬 Addyi (一般名flibanserin) を手掛ける米製薬会社Sprout Pharmaceuticals, Inc. を買収することで合意したと発表した。

買収額は約10億ドル(借入金なしベース)で、契約締結時に5億ドル、2016年第1四半期に残り5億ドルを支払う。これに加え、今後の業績の一定割合を支払う。

Addyi (一般名flibanserin) は、閉経前女性の性欲低下障害(HSDD:Hypoactive Sexual Desire Disorder)に対する初の治療薬で、処方薬としての認可をFDAから8月18日に受けたばかり。10月中旬から先ず米国で販売する。今後、世界中での販売を目指す。

HSDDは、性欲の低下を特徴としており、いままで性欲が正常だった女性に発症し、性行動のタイプやパートナーに関係なく発症する。

FlibanserinはBoehringer Ingelheinが開発した。しかし、FDAから承認を得られず、2010年にSprout Pharmaceuticalsに権利を売却した。

FDAの諮問委員会は本年6月4日、女性の性欲向上に役立ち得るとして 賛成18、反対6で市販承認を促す判断を下し、FDAは8月18日に承認した。

買収完了後、Sprout はValeant の事業部となり、Sproutの現CEOはValeantに移り、この事業を担当する。

 

Sprout Pharmaceuticals は女性の HSDD 治療薬のみに注力している。

同社のCEOのCindy Whitehead は、FDA から最初に承認を受けた男性用の医療用テストステロン埋め込みペレット Testopel を販売するSlate Pharmaceuticals の共同創業者であったが、2011年にSlate Pharmaceuticalsからスピンアウトし("sprouted")、Sprout Pharmaceuticals を設立した。

その後、Slate Pharmaceuticals をActient Pharmaceuticals, LLCに売却した。

ーーー

Valeant Pharmaceuticals International は2014年、物言う株主William Ackmanが組んで米製薬会社Allergan の買収を目指したが。拒否された。

2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦

Valeant は本年2月22日、米同業Salix Pharmaceuticalsを借入金込みで145億ドルで買収することで合意したと発表した。
1株当たり158ドル、総額101億ドルの現金で全株を買い取る。

2015/2/28 Valeant Pharmaceuticals、米同業Salix Pharmaceuticalsを買収    


2015/8/27   天津爆発事故のその後(3)   

瑞海公司の爆発した当時の化学品の保管状況が明らかになった。

爆発後の写真(右)で見られるとおり、炭化カルシウムなどの置かれていた重箱区に爆発の大きな穴があいている。

付記 「ダイヤモンド」誌は運抵庫に置かれたシアン化ナトリウム(河北誠信製の700トン)が原因ではないかとしている。
    シアン化ナトリウムは化学反応を避けるため、単独で閉めきった危険物倉庫に置くべきなのに、野積みにし、露天に晒していた。

爆発前の工場の写真
 

 

天津市政府は8月25日、犠牲者の数を発表した。

死者:135人(うち、公安消防 21、天津港消防 60、警察 7)
行方不明:38人(うち、公安消防 3、天津港消防 20、警察 4)

入院:582人(うち、危篤 11、重症 25)、退院済み 216

 付記 8月30日現在

死者:150人(うち、公安消防 23、天津港消防 69、警察 10)
行方不明:23人(うち、公安消防 1、天津港消防 11、警察 1)

入院:367人(うち、危篤 5、重症 15)、退院済み 431

公安消防は正式には中国人民武装警察消防部隊で、隊員の身分は軍人で、兵役(2年間)として消防任務に就いている。
「消防新兵」と呼ばれる兵士で、十分な専門知識と経験に基づいた訓練を受けていないとされる。


中国の国有不動産 5社(天津不動産集団有限公司、天津泰達投資持株有限公司、天津住宅建設発展集団有限公司、天津海泰持株集団有限公司、天津天宝持株有限公司) は天津不動産企業社会責任連盟を結成し、爆発で損壊したアパートを買い取る。
地元当局が被害状況などを査定した上で「住民らの利益を損なわない形で」買い取り価格を決定するという。


付記

中国検察当局は8月27日までに、危険物取り扱いの許認可や安全検査を担う担当部局に職務の怠慢や職権乱用などがあったとして、同市交通運輸委員会トップら各部局の幹部計11人を拘束した。

 職務怠慢(監督を怠る)

天津市交通運輸委員 主任 武岱
(元)天津市交通運輸港口管理局 副局長 李志剛(退職)
天津市交通運輸委員會港口管理処 処 馮剛
天津市安全生産監督管理局 副局長 高懷友
濱海新安全生産監督管理局 局長 曹春波
濱海新企画&國土資源管理局 副局長 朱立明
天津税関 税関 新港税関 税関長 王家鵬
天津港(集團)有限公司 總裁 鄭慶躍
天津港(集團)有限公司 總裁助理  李洪峰
天津港(集團)有限公司 安監部副部長 鄭樹國

 職権乱用(条件を備えていないにもかかわらず危険物の取り扱い許可を与えた疑い)

交通運輸部水運局 副巡視員 王金文

 

付記  瑞海公司関係では下記の10名(舒錚を除く)が拘束されている。

瑞海公司

出資

影のオーナー
名目 実際
会長 李亮 55% 55% 於學偉 元 Sinopec 天津分公司の副總經理瑞海公司創業者
副会長 曹海軍        
副会長 董社軒   45%    
CFO 宋齊        
社長 只峰        
安全担当副社長 尚慶森        
副社長 劉振國        
工場長 貝勝強        
李某某        
取締役 舒錚 45%      

 45%出資する副会長の董社軒天津港公安局 元局長董培軍の子


ーーー

2015/8/14   天津で大規模爆発

2015/8/17   天津大爆発のその後

2015/8/21   天津爆発事故のその後 (2)

 


2015/8/28 Butamax とGevo、バイオベースのイソブタノールの特許紛争で和解  

Butamax Advanced Biofuels, LLC とGevoは8月24日、バイオベースのイソブタノールに関して世界中での特許のクロスライセンス契約を締結し、長期間争ってきた特許紛争を解決したと発表した。

ーーー

ButamaxはDuPontとBPの50/50 JVで、DuPontのバイオ技術・バイオ関連の製造技術とBPの燃料の技術経験と販売ノウハウを結びつけるもの。

両社は2003年にバイオ燃料の共同開発で合意し、2004年に対象をバイオブタノールに決め、2005年にコアとなる特許を申請した。

両社は2006年6月19日に、既存のバイオ燃料の限界を超える次世代バイオ燃料の開発・製造・販売でのパートナーシップの設立を発表した。

2008年に事業採算を確認、2009年にButamax社が設立された。

Butamax は2013年に第一世代のエタノールメーカーのHighwater Ethanol LLC と組み、同社のプラントをButamaxの最新の技術で改造した。
2014年に商業生産を開始した。

付記

Butamax Advanced Biofuels LLC は2017年4月3日、Nesika Energy, LLC と、同社のKansas州Scandia にある最新鋭のエタノールプラントを買収した。

このプラントにバイオイソブタノール設備を追加する詳細設計作業を開始する。設備追加後もエタノールの生産は続ける。


Gevoは2005 年にコロラド州Englewood を本拠地として設立された。
同社はカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の遺伝子組み替え技術を導入してバイオマスからイソブタノールを選択的に生産する技術を開発した。

現在、ミネソタ州Luverneの発酵プラントでイソブタノール、エタノール、高価値の動物飼料を生産している。
また、バイオアルコールから石化製品をつくる技術を開発しており、テ
キサス州 Silsbeeにバイオリファイナリーを持ち、South Hampton Resources Inc.の協力のもと、バイオジェット燃料、オクタン、ポリエステル原料などを生産している。

2009年にフランスのTotal が出資し、役員1 名を送り込んでいる。このほか、 Coca-Cola Companyや東レなど多数の有力企業と提携している。

ーーー

Butamaxは2011年1月、特許侵害でGevoを訴え、それ以降、抗争が続いている。

Delaware 地裁は2013年4月11日、GevoがButamax 特許を侵害していないとの判決を出した。

これに対し、Butamaxは控訴し、控訴裁は2014年2月18日、問題となった特許請求の新しい解釈に基づき、地裁判決を覆した。

これに対し、Gevoは最高裁に上告した。

米最高裁は2015年1月27日、Butamax勝訴とした控訴裁の特許請求の新しい解釈を否定した。
そして、前週の Teva Pharaceuticals とSandoz の特許紛争での判決で決まった控訴裁でのレビューの基準に基づき、再検討するよう控訴裁に差し戻した。

この審理が始まる予定であったこの日(8月24日)に和解が発表された。

Teva とSandozの特許紛争は下記の通り。

Tevaは多発性硬化症治療薬Copaxoneの特許権を有しており、Sandozがこの治療薬のジェネリック品を上市しようとしたため、TevaはSandozを特許権侵害で訴えた。これに対し、Sandozは 、クレームの記載用語が不明瞭であるとして、本特許の無効を主張した。

地裁は、当業者であれば十分理解することができると判断し、専門家からの証言を録ったのち、特許は有効であるとの判決を下した。

連邦巡回区控訴裁は、 審理を最初からやり直し、用語が不明瞭であるとして、地裁の判決を覆した。

2015年1月20日、米国最高裁はこの事 案で、地裁のクレーム解釈判決を控訴で再審理する際に使用すべき新基準を打ち立てる判決を下した。

これまでは、「de novo基準」(地裁判決を考慮せず、最初からやり直す)を使用していたが、今回、7対2の多数決で、再審においては地裁で判決の下された事実問題は「clear error基準」(明らかな誤りがない限り、地裁の判断を尊重する)を使用するべきであり、de novo 基準は、事実問題以外の法律問題などで使用すべきであるとした。

事件を総轄し、証言を実際に傾聴した地裁の判事は、証言はなく、弁論趣意書に基づいた代理人の議論だけが行われる控訴裁の判事に比べ、事実をより詳細に理解しているはずであるとしている。

ーーー

和解に当たって金銭の授受があるのかどうかについては明らかにされなかった。

クロスライセンスにより、両社はイソブタノールの全分野で全ての特許を使用できる。サブライセンスも可能。

各分野で年間30百万ガロンまではロイヤリティなしで販売できるが、これを超えた場合、下記の通りロイヤリティを支払う。

分野 幹事会社

ロイヤリティ

支払 受取
On-roadのガソリンブレンド Butamax Gevo  Butamax
ジェット(Alcohol-to-jet) 燃料 Gevo Butamax  Gevo
船舶用ガソリンブレンド、卸パッケージ燃料、
パラキシレン
Butamax  Gevo
ケミカル イソブチレン Gevo Butamax
Off-road ガソリンブレンド、イソオクタン、
ディーゼル、溶剤
双方無し

幹事会社は必要な許可(EPA、ULその他)を取ったり、相手側の製品のこの分野での販売を手助けする。

イソブタノール製造・販売で全ての特許をクロスライセンスするが、両社とも独自のバイオ触媒やプロセス技術を持ち、これらは自由に第三者にライセンスできる。

両社とも発表分以外は情報を秘密とすることで合意した。


2015/8/29 Sucampo Pharmaceuticals、アールテック・ウエノを買収   

米医薬品メーカー Sucampo Pharmaceuticalsは8月26日、アールテック・ウエノを330億円で買収すると発表した。
アールテック・ウエノ の持つ現金約54百万円とSucampo 株式 (250万株、持株比率5.5%)を含む。

1株1900円で公開買付けを行い、全株式の56%を取得する。
残る44%については、アールテック
の創業者と関係団体から1株1400円で買い取る。

Sucampo も アールテックも、上野隆司博士と久能祐子博士夫妻が設立した会社で、夫妻は両社の大株主である。
今回、両社を一体化する。

Sucampo:夫妻及び夫妻の資産管理会社(S&R Technology Holdings)が46.17%を所有
     (2015年3月に株式公開のため一部放出した後の持株比率)

アールテックS&R Technology Holdingsが32.99%、上野博士が16.57%、久能博士が10.35%
      (他にオリックスが9.19%)

ーーー

夫妻は新技術開発事業団(現 科学技術振興機構)で研究に携わっていたが、上野博士はプロスタグランジンの代謝物でケトン基を有するものが活性を有することを発見し、プロストン(Prostone) と名付けた。

夫妻は上野博士の父親が社長の上野製薬で緑内障・高眼圧症治療薬「レスキュラ点眼液」の開発を進め た。

夫妻は1989年にアールテック・ウエノを設立、久能博士は経営に専念した。
1994年に「レスキュラ点眼液」の製造承認を取得し、藤沢薬品工業(現 アステラス製薬)と独占的販売契約を交わした。(2004年10月に眼科領域に強い参天製薬へ変更)

2001年に上野製薬からレスキュラの製造販売業務の承継を含む事業承継を受け、製造発売元になった。

夫妻は1996年に米国にSucampo Pharmaceuticalsを設立し、Prostoneをベースにした医薬品の開発を開始 した。
最初の製品がAmitizaで、成人向け慢性特発性便秘症治療薬として
2006年1月に米食品医薬品局(FDA)より販売認可を受けた。

2002年に英国にSucampo Pharma Europe、日本にスキャンポファーマを設立し、日米欧三極で医薬品を開発する体制を構築した。

アールテック・ウエノは、グループの中で、プロストン製剤の全世界への製造供給を担う。

ーーー

Sucampo Pharmaceuticalsは米国とカナダでのAmitizaの独占販売権を武田薬品に譲渡、武田薬品は米国で 2006年4月に販売を開始した。

久能博士は「ワシントンDCライフスタイル」のインタビューで次のように述べている。

1996年には最初に開発した薬のロイヤリティーも入り始めていたので、それを元手にしてアメリカで上野と共に創薬ベンチャーの「スキャンポファーマシューティカルズ」を1997年に立ち上げ、私はCEOに就任しました。

2002年にお金がなくなった時に投資家を募ったほか、最終的にまたお金がなくなった時にはまた新薬の販売権を武田薬品に合計200億円で売る(マイルストンを含む)ことにし、2006年に2番目の新「アミテーザ」の販売にこぎ着けました。

Sucampo Pharmaceuticalsは2010年3月15日、武田薬品が便秘薬のCollaboration and License Agreementに違反したとして、この契約の終了と損害賠償を求めて国際仲裁裁判所に調停を申し立てたと発表した。

Sucampoが開発した便秘型過敏性腸症候群治療薬アミティーザの売上高が当初予想を下回ったことなどを理由に「武田側が販促活動を怠った」として契約終了を要求していたが、武田側が要求を受け入れなかったとしている。

2010/3/22 米製薬ベンチャーSucampo Pharmaceuticals、武田薬品との調停申し立て

2012年7月、国際仲裁裁判所はSucampoの主張 を認めず、損害賠償についても認めなかった。
この結果、2004年に締結した独占的供給契約は継続することとなった。

その後2014年10月に、Sucampo Pharmaceuticalsと武田薬品 は、AMITIZA®について、グローバルでの開発、販売、供給に関する契約を締結した。
武田薬品は、これまでの米国・カナダに加え、日本および中国以外のすべての国におけるAMITIZAの独占的販売権を獲得した。

日本については2009年2月にアボットジャパンが独占販売権を取得している。
また、Sucampoは2015年5月11日、
Harbin Gloria Pharmaceuticals Co., Ltd. (哈爾濱譽衡藥業有限公司)との間でAMITIZA®に関する中国での独占的ライセンス契約を締結した。


2015/8/31  インドネシア、バタンの石炭火力発電所で起工式    

8月28日、ジャワ島中部 Batang で、電源開発と伊藤忠商事が参画する石炭火力発電所の起工式がJoko Widodo大統領をはじめ日本とインドネシアの政府や企業の関係者らおよそ500人が出席して行われ、ジョコ大統領が「着工」を宣言した。

ジョコ大統領は、経済成長に伴ってひっ迫している電力事情を改善するため、今後5年間で3万5000メガワット分の発電所の建設が必要だと強調したうえで、「この発電所が、ほかの投資案件のモデルケースとなることを望んでいる」と述べ、日本からのさらなる投資の拡大に期待を示した。

大統領は「私たちは投資家を安心させなければならない」と述べ、政府として計画を支援していく方針を表明した。
土地収用を近く終えるとし、「投資環境の問題解決のモデルだ」と強調、2018年の稼働開始に言及した。

しかし、住民が「農地を奪われて生活できなくなる」「環境が悪化する」などと反対し、土地収用が難航、着工が3年近く延期されているが、なお未収用の土地が多い。
Greenpeaceによると、20.7ヘクタールの土地を持つ67人の土地所有者が売却に反対している。

総事業費は40億ドル超で国際協力銀行(JBIC)が融資を主導するが、融資契約は土地収用の完了が前提 で、日本側の企業幹部は「完了するまで先のことは何もわからない」と述べた。

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計画は中部ジャワ州に合計出力200万kWの石炭火力発電所を建設し、インドネシア国有電力会社(PLN) と25年間の長期売電契約を締結するアジア最大規模のIPP事業。

2011年4月に行われた国際入札で、電源開発(Jパワー)と伊藤忠が現地の石炭企業のAdaro Energy Tbk.と組んで優先交渉権を獲得、10月に同JVが国営電力PLNと契約を結んだ。

日本政府が進めるパッケージ型インフラ輸出で、高効率石炭火力発電設備としては初の案件となる。

概要は以下の通り。

立地 :中部ジャワ州 Batang 県 Pondewareng 村
 
事業会社 :PT. Bhimasena Power Indonesia
  建設・保有・運営・保守を担当
発電所 :中部ジャワ発電所(CJPP)
発電方式 :超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)石炭火力発電
         
亜臨界圧石炭火力発電所と比べ、
          使用燃料を約1割削減
       容量100万kW当たり二酸化炭素排出量を年間約50万トン削減
出力 :200万kW(100万kW×2)
        ジャワ島の電力需要の約1割
燃料 :インドネシア産低品位炭(亜瀝青炭)
スキーム :BOT(Build-Operate-Transfer)方式
出資
電源開発(Jパワー) 34%
  PT Adaro Energy Tbk. 34%
  伊藤忠商事  32%
電力販売先 :PLN(インドネシア国有電力会社)
    インドネシア財務省が国営インフラ保証会社を通じて、PLNの契約履行を保証
契約期間 :25年間
工程
   (2011/10)
:2012/10 着工
    2016/10  1号機運転開始(工期48か月)
    2017/4    2号機運転開始(工期54か月)
事業費 :約40億ドル
資金調達  :三井住友銀行、みずほコーポレート銀行、国際協力銀行 (JBIC)などで構成する銀行団が
  30億ドル程度を協調融資

本計画の認可条件として、事業資金の融資契約を1年以内(2012年10月6日まで)に締結することとなっており、そのためにはそれまでに用地の買収を完了しておく必要があった。
用地買収、住民対応等ほとんどを事業者側が行う形になっている。

建設用地の買収は難航した。農地は年3回、コメの収穫が可能という肥沃な土壌で、田んぼを手放さないという農民と、予定地近くの漁場汚染を懸念する近隣の村の漁師、環境保護団体が猛反対した。

期限の2012年10月になっても、同計画に関する環境アセスメントや土地取得が終わっておらず、地元住民の反対運動も続いていた。
このため、インドネシア政府は資金調達契約の締結期限を1年間延長した。「再延長はなし」と決められた。

その後も土地取得は進まず、日本政府はインドネシア政府に協力を要請、2013年9月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の際、安倍首相が直接ユドヨノ大統領に協力を要請した。

この結果、2013年10月に再延長が認められた。

2013/10/7    日本出資の中部ジャワ石炭火力発電所計画 難航

しかし反対運動が続き、2014年10月には3度目の延長が行われた。
用地買収は9割程度とされるが、
発電所の重要部分の地権者が反対している。Greenpeaceによると、20.7ヘクタールの土地を持つ67人の土地所有者が売却に反対している。

土地収用の決着がついていないにもかかわらず、2015年4月上旬からインドネシア国軍の重機による整地作業が強行された。

建設に反対する地元住民が2015年7月29日、融資を検討する国際協力銀行に環境や地域社会に与える影響を精査するよう求める異議申立書を、関係官庁に抗議書を提出した。

建設予定地の水田や畑が収用され、多数の住民が生計手段を失った。「年に3回収穫可能な水田があり、非常に豊かな土地だ。私たちの土地を守ってほしい」と訴えた。

建設予定地は海に面しており、過去に石炭火力発電所周辺で漁業被害が生じたことから、地元漁民も反対運動に加わっている。

また計画に反対する住民が、不当逮捕されたり、軍や警察などから脅迫を受けたりしたという。警察や軍、民間警備員、地元で「プレマン」と呼ばれるならず者による人権侵害に直面している。

ーーー

本計画の受注争いで敗れた丸紅のグループは、用地買収は事業者側が担当する取り決めになっていることに配慮し、地盤整備で費用がかさむが、土地を取得する際の問題は少ない別の場所を採用していたとされる。

「早い段階での企業からの説明や交流がほとんど無かった」ともされる。


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