2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2015/8/1   ロッテの内紛

ロッテホールディングスでは7月17日、韓国ロッテの会長でロッテHDの取締役副会長の重光昭夫(辛東彬)氏が、ロッテHDの代表取締役副会長に就任した。
重光昭夫(辛東彬)氏は重光武雄(辛格浩)会長の次男。

重光武雄(辛格浩)会長、重光昭夫副会長、佃孝之社長の代表取締役3人体制となった。

2015/7/28   ロッテ、初の日韓連結財務諸表作成 

直後の7月28日、ロッテHDは取締役会を開き、創業者の重光武雄会長が代表権を外れ、名誉会長に就く人事を決めた。

付記

この取締役会の無効確認を求めた裁判の判決が2017年4月17日、東京地裁であり、「決議は有効」として請求を棄却した。

 

創業者の重光武雄(辛格浩)氏 (92歳)の長男 重光宏之(辛東主)氏(61歳) と次男 重光昭夫(辛東彬)氏 (60歳)の内紛の結果とされる。

報道によると、今回の経緯は下記の通り。

重光武雄総括会長の長男は7月27日、父親の総括会長を車椅子に乗せ、金浦空港から日本に飛んだ。
長女の辛英子ロッテ福祉財団理事長、甥の辛東仁ロッテジャイアンツオーナー代行らが同行した。

一行は東京に到着すると、新宿のロッテHDのオフィスに直行した。
総括会長は、取締役らに対し、「自分を除く6人の取締役全員を解任する」と宣言した。次男の重光昭夫副会長や佃孝之社長も含まれていた。

重光昭夫副会長は7月28日朝、正式な取締役会を招集し、適法な決議を経ていない解任命令を違法だとした。
出席していない重光武雄総括会長を日本のロッテHD代表から退任させ、名誉会長に就任させることを決めた。

ロッテグループは「総括会長は日本での代表職のみを退き、韓国では総括会長職にとどまり、これまで同様に全ての報告を受ける」とし、重光昭夫会長が韓日双方のロッテを代表すると説明した。

ロッテ幹部は「グループと無関係な人物が総括会長の法的地位を利用するケースが再び起きないようにするため、総括会長には名誉会長に就いてもらった」と語った。単独では行動が不便で、90代の総括会長を重光宏之元副会長が「利用」したとの判断からという。

  日本 韓国
重光武雄 (92)
(辛格浩)

創業者、総括会長

2015/7/28  ロッテHDの代表権外れ、名誉会長に  
長男 重光宏之 (61)
(辛東主)
当初、ロッテHD 副会長

2015/1 ロッテHD副会長 解任
     グループ役職全てから外れる。
 
次男 重光昭夫 (60)
(辛東彬)

2015/7/17 ロッテHD代表取締役副会長 就任
                (日韓双方で実質トップに)
韓国ロッテ会長

総括会長は18歳の時に日本に定着したが、韓国籍のまま。
日本で生まれた長男、次男は一時韓国と日本の二重国籍だったが、現在はいずれも韓国籍とされる。

今回、ロッテHDの代表権を持つのは、重光昭夫副会長と佃孝之社長の2人となる。


しかし、これで決着ではない。重光宏之氏は今後開かれるロッテHDの株主総会で取締役の入れ替えを提案するとしている。

ロッテHDには、総括会長が代表を務める資産管理会社「光潤社」が27.65%出資し、3氏や親族が直接出資しているほか、社員持ち株会が32%超を所有する。
総括会長の長女・辛英子理事長が「キャスティングボート」として存在感を強めているとされる。

報道によると、「光潤社」がロッテHDの株を 27.65%保有する実質的な持ち株会社で、同社の株は総括会長が3%、兄弟が 29%ずつ保有する。
今回の事態を受け、自社株 12%を昭夫氏が譲り受けることにしたとの報道もある。

光潤社と社員持ち株会をどちらが支配するかにより、結果が決まるが、大波乱も予想される。

ーーー

重光宏之氏は7月30日付の日本経済新聞でインタビューに応じ、経緯を話した。

宏之氏のロッテHD副会長解任:

投資案件が予算オーバーし、会社に損害を与えたとの理由。
損害は数億円ほどだったが、昭夫氏などが曲解した情報を父に伝え、永久追放に近い状態にされてしまった。

ようやく連休明けぐらいから『実はこういうことだったんだ』と話を聞いてもらえるようになった。

不文律を破り、韓国のロッテ製菓の株を買い増したとの話は、会長からの指示だった。昭夫氏に対抗してではない。

今回のロッテHD役員全員解任:

佃社長が功績のあった取締役などをこの1年で9人も辞めさせたことに総括会長が立腹し、直接解任を指示したが無視された。

昭夫氏も中国事業をはじめ韓国ロッテの業績をきちんと報告していなかった。昭夫氏が日韓両方の経営を見るということも総会会長は知らなかった。
総括会長は昭夫氏に日本ロッテグループ役職からの解任を指示したが無視された。

このため、『自分で直接行って申し渡す』と来日し、6人の取締役の解職と執行役員4人の選任の人事を発令した。

株主総会:

総会では取締役の入れ替えを提案する。

ロッテHDの議決権は総括会長が代表の資産管理会社が33%持つ。自分の2%弱と32%超の従業員持ち株会を合わせれば3分の2となる。

ーーー

ロッテは、総括会長が1948年に東京で創業し、日韓国交正常化後の1967年に韓国へ進出した。
韓国では小売業やホテル、石油化学なども手がけており、サムスンなどに次ぐ韓国財閥5位。  

2015/7/28   ロッテ、初の日韓連結財務諸表作成 

韓国の事業規模がはるかに大きいが、韓国ロッテの持ち株会社に当たるホテルロッテの株は日本側がほとんどを握っている。

ロッテHDが19.07%、総括会長が代表である日本の複数の「L投資会社」が72.65%、光潤社が5.45%保有するとされる。

 

今回の騒動で、ロッテは規模こそ大きいが、総括会長のワンマン個人会社であることが判明した。

これまでは早く、大胆な意思決定
のメリットがあったと思われるが、2代目が実質経営を担当する時代になっても、同じ体制を続けているのは問題である。

 

付記

韓国ではロッテグループの株主構成が明らかでないことが問題になっている。

韓国金融監督院は8月5日までに、ロッテグループの支配構造の頂点にある正体不明の投資会社について、実態の究明に乗り出すことを決めた。

金融監督院が定める企業の半期報告書作成基準によると、筆頭株主の出資比率と法人代表者、役員、財務状況、事業概要を開示しなければならない。

韓国公正取引委員会もロッテグループの海外系列企業の実態把握に乗り出した。
公取委は7月31日、ロッテグループ全体の海外系列企業の株主構成、株式保有状況、役員などの資料を8月20日までに提出するよう要求した。


2015/8/2 TPP 合意見送り  

TPPを巡ってハワイ州のホテルで開かれていた日米など12カ国の閣僚会合は7月31日午後、合意を見送って閉幕した。
医薬品に関する知的財産ルールと乳製品の貿易で対立し、各国の利害を調整できなかった。

参加国は8月中の閣僚会合の再開を目指す。

共同声明の要旨:
 ・重要な進展があり、限られた数の問題の解決にむけて作業を続け、妥結に向けて道筋をつける
 ・共通の土台を見つけるため、勢いを保って集中的に作業を続ける
 ・交渉は最終段階にあり、TPPが妥結間近にあると確信している

一つの問題はニュージーランドで、日本、アメリカ、カナダ、メキシコに対し、膨大な乳製品の低関税枠を求め続けた。

甘利経済再生相は、「いろいろ過大な要求をされている国がありまして」、「もうちょっと妥当な要求に頭を冷やしてもらわなきゃならない」と述べた。

ニュージーランドは国内市場が小さいことから輸出に力を入れており、輸出全体のおよそ60%を農産物が占めている。
中でも、バターやチーズなどの乳製品が輸出される農産物のおよそ半分を占めており、経済的に重要な位置を占めている。

同国にとって、競争力がある乳製品の輸出拡大は重要な政策課題であり、「安易な妥協」を認めず本来の理念を強調することは、ニュージーランドの国益とも一致する。

閣僚会合後の共同記者会見では、ニュージーランドは、小規模経営の酪農家が多い日本やカナダを念頭に、 「乳製品に競争力がない国と難しい問題を抱えてしまうのはいつものことだ」と述べ、自らの主張に問題がないことを強調した。

TPPは元々はニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、チリの4カ国がモノやサービスのやりとりを原則自由にしようと結んだ貿易協定が前身で、2005年7月18日に締結、2006年11月8日に発効した。

これによれば、他に規定がある場合を除いて、発効と同時に他の締約国の原産品に対する全ての関税を撤廃すると規定している。

実際は下記のとおり順次撤廃する。

ブルネイ チリ ニュージーランド シンガポール
発効時 92% 発効時 89.39% 発効時 96.5% 発効時 100%
2010年 残り1.7% 2009年 残り0.94% 2008年 残り0.03%  
2012年 残り1.1% 2011年 残り0.29% 2010年 残り1.54%  
2015年 残り5.2% 2015年 残り0.12% 2015年 残り1.92%  
  2017年 残り9.26%    

この協定の拡大である現在のTPPは「全ての関税撤廃」には程遠く、ニュージーランドの主張も理解できる。


最大の問題は「新薬データの保護期間」で、バイオ医薬品について、米国は「12年」、日本は「8年」を主張しているのに対し、価格の安い後発薬を多く使う豪州やマレーシアなどは、新薬が保護されると医療費が高くなるとして「5年」を求めてきた。

新しい医薬品は特許で守られる。特許保護期間は20年である。ただし、医薬品の場合、臨床試験や審査に多くの年数を要し、販売を開始するときには特許切れまで数年しかない場合が多い。

このため、各国は特許とは別に、医薬品規制当局に提出する臨床試験データ等を承認申請時から一定期間保護している。
この保護期間中は、仮に特許が切れたとしても、ジェネリックメーカーは、独自に臨床試験データを作成する場合には膨大な手間とコストがかかるため、実質的に販売できないこととなる。

米国では保護期間は一般医薬品は5年、バイオ医薬品は12年となっている。

日本では一般医薬品は8年、稀少疾病用医薬品は10年。
(薬事法では、新薬承認時に指定される「再審査期間」中は
ジェネリック医薬品の承認に新薬と同等の資料が必要と定めらており、実質的にデータ保護期間の役割を果たす)

EUは10年。

「国境なき医師団」は、途上国で使われるエイズ治療薬の8割以上がジェネリックだと指摘し、「知的財産権の保護」によって、医薬品価格を高止まりさせる米国の「誤ったビジネスモデル」で、「人命が左右される事態になる」と批判している。

会合では、米国や日本が原則8年、バイオ医薬品について12年を要求、逆に、後発医薬品に依存するニュージーランドや豪州、マレーシアなどは5年を求めて対立が続いた。

米国紙によると、米国は最終的に「12年」は降りる姿勢を示した。日本は期間延長に際し、猶予期間を設ける提案をしたとされる。

しかし、合意には達せず、最後にニュージーランドは米国や日本、カナダなどに乳製品の大幅な輸入拡大を求め、 それがない限り、5年間の保護期間を譲らないとした。

 

他にも各国間でまとまらない項目は残っているが、新薬データ保護期間でまとまる見込みがないことから、各国とも最後の切り札を切らなかった。

ーーー

これまでは、米国大統領に強力な通商交渉の権限(Fast track negotiating authority ) を与える貿易促進権限(通称TPA)が切れていたため、交渉で妥協して合意しても米国議会がその部分を認めない可能性 の恐れから、各国が最後の切り札を切らなかった。

6月24日に米議会は貿易促進権限(TPA)法を可決、翌日にはこれと対の、失業者対策を盛り込んだ貿易調整援助制度(TAA) 法案を可決し、オバマ大統領は6月29日、TPA法案に署名、成立した。

2015/6/25    米上院がTPA法案可決 近く成立

これで障害はなくなり、今回で一気に合意に達すると思われたが、米国の根回し不足でまとまらなかった。

米政府はTPA法により、TPPの署名の90日前に議会に通告する必要がある。その後に始まるTPPの実行に必要な法改正などを盛り込んだ関連法案の審議にも90日程度かかる。年明け2月には 大統領選挙の予備選が始まるため、年内の議会承認が必要である。

年内の米議会承認には、8月末がギリギリのタイミングで、次も合意に失敗すれば、 見通しがつかなくなる。


2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意 

出光興産は7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% を取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。
独禁法等の手続きを経て、2016年上期の取得を目指す。

Shellも 同日、1690億円で売却すると発表した。シェル英国法人のAnglo-Saxon Petroleum が持つ1.80%は保有するとしている。

Shell は、売却はDownstream を集約するという戦略によるものとしている。
Shellブランドは引き続き昭和シェルに使用を認める。

出光と昭和シェルはこの株式譲渡を前提に経営統合に向けた協議を進めてきたが、これを加速する。

Shellは昭和シェルに持株売却の意向を伝えるとともに、2014年春に極秘裏に金融機関を通じて出光に昭和シェル株式売却を打診した。
両社は統合の協議を進めたが、2014年12月にこれが明らかになり、
昭和シェルの特約店などからは「業界2位の出光による吸収合併だ。不利益を受けるのではないか」など懸念の声が広がった。 このため、協議は中断した。

2014/12/22 出光興産、昭和シェル買収へ 

本年6月に東燃ゼネラル石油が昭和シェルとの統合に名乗りをあげた。

しびれを切らしたShellは出光に売却することを決めた。

これを受け、昭和シェルも出光との統合を決めた。

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付記 両社は2015年11月13日、経営統合に関する基本合意書を締結した。

・ 対等の精神に基づく両社の経営統合
・ 経営統合の方式については、合併によることを基本方針
・ 2016 年10 月から2017 年4 月を目途に本統合会社を発足させる
・ 代表取締役及び業務執行取締役については、当面は両社から同数ずつ候補者を指名
・ 一定期間は、両社の既存のブランドを併用
・ 製油所の配置は、東から西まであり、バランスが良い。どこかの製油所を閉めるとそのバランスが崩れる。


昭和シェルの大株主と持株比率は下記の通り。

 The Shell Petroleum Company Limited 33.24%

 今回買収

 The Anglo-Saxon Petroleum (Shell 英国法人) 1.80%

 当面保有継続

 Aramco Overseas Company B.V. 14.96%

 

SaudiAramco はShellから、2004年に10%分m2005年に更に5%分を取得した。
昭和シェルとAramcoの関係を深めて昭和シェルの原油調達能力を高め、競争力を抜本的に強化するのが狙い。
Shell Aramco米国とサウジで共同事業を展開するなど、グローバルな戦略的提携を実施している。

Aramcoは出光と昭和シェルの経営統合を支持している。株保有は継続し、原油供給を続ける。

両社の製油所の概要は下記の通り。

トッパー処理能力(千bbl/d)

 

トッパー処理能力

 当初 高度化法 現状
  昭和四日市石油 四日市 205 255 255
西部石油 山口 120 120 120
東亜石油 京浜

70

70 70
昭和シェル 扇町 120 0
昭和シェル合計 515 445 445
出光興産 北海道 140 160 160
千葉 220 220 200
愛知 160 175 175
徳山 120 0
出光興産 合計 640 555 535

昭和四日市石油はコスモ石油の精製能力減に伴い、コスモに石油製品・半製品を供給する。

2015/5/21  コスモ石油、千葉と四日市で精製能力半減 

経産省は残油処理装置の装備率(残油処理装置の処理能力÷常圧蒸留装置の処理能力)の2016年度までの改善を求めている。

2014/3/31時点の装備率 改善率
   55%以上    9%以上
   45%以上55%未満    11%以上
   45%未満    13%以上
 
各社の2014/3/31の装備率
JX日鉱日石エネルギー 46.2% 鹿島石油、大阪国際石油精製を含む。
出光興産 51.5%  
コスモ石油 43.4%  
昭和シェル石油 59.4% 東亜石油、昭和四日市石油、西部石油を含む。
東燃ゼネラル石油 35.9% 極東石油を含む。
富士石油 48.3%  
太陽石油 24.6%  

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制

ーーー

出光社長は、「石油の安定供給という社会的使命を全うするには昭和シェル石油がベストパートナー。経営統合で日本のみならず世界の石油業界をリードしていける競争力をもつ総合エネルギー企業を目指す」と語った。

記者会見での両社長の発言は下記の通り。

統合メリット   両社ともすでに製油所を再編するなどしてエネルギー供給構造高度化法への対応にメドをつけており、製油所の統廃合は不要。
物流など供給コストを削減できる。

(両社が保有する製油所は地域的にも重なっておらず、最大のコスト削減の製油所の統廃合は見込めない)  

     
経営統合の形   特約店や社員が活躍できる対等な形での経営統合をめざす
統合までの過程で一時的に(昭和シェルが)関係会社になることはあっても、親子関係になることは全く考えていない
     
ブランド   当面は維持することを基本的な考えとしたい
     
海外事業   昭和シェル単独で海外に出て行くという目標が昔から頭にあった。
海外展開に向けて出光興産と新しい枠組みをつくっていきたい

出光社長は、「供給過剰、過当競争が業界の課題だ。経営統合の後は大手4社体制になるが、これが最終形とは考えづらく、さらなる再編もありうるだろう」と述べた。

なお、これまでの石油業界の変遷は下記の通り。

コスモ石油と東燃ゼネラルは2014年12月19日、下記内容の基本契約書を締結した。

 ・2015年1月に両社で共同事業会社「京葉精製共同事業合同会社」を設立する。
 ・両製油所を結ぶパイプライン敷設を正式合意。
 ・パイプライン完成に先行して両製油所の生産計画を一体的・総合的に立案し、生産効率の向上を目指す。
   また、常圧蒸留装置を含めた設備の最適化についても併せて検討する。
 ・パイプライン完成後、共同事業会社へ精製設備を一元化し、パイプラインを活用することで、年間100億円程度の収益改善を見込む。

2013/10/4 コスモ石油と極東石油工業、千葉製油所の共同事業検討

各社の概況:

  売上高 国内ガソリン
販売シェア
JX 10.9兆円 33.3%
出光 4.6兆円 15.5%
昭和シェル 3.0兆円 16.3%
(出光・昭和シェル) 7.6兆円 31.8%
東燃ゼネラル 3.5兆円 19.8%
コスモ石油 3.0兆円 10.8%

 



2015/8/4   福島の漁協、サブドレン地下水の海洋放出容認  

福島県北中部の相馬双葉漁協は7月27日、理事会を開き、東電福島第一原発の建屋周辺の井戸(サブドレン)からくみ上げた汚染地下水を浄化して海に流す計画について容認する方針を決めた。

同県南部のいわき市漁協は既に容認を決めており、県漁業協同組合連合会も受け入れる。

付記 

東京電力は9月14日、「サブドレン」からくみ上げて浄化した汚染地下水の海洋放出を始めた。 合わせて海側遮水壁の残る部分の工事を開始した。

海への放出基準は、
セシウムは1リットル当たり1ベクレル(WHO基準 年間0.1ミリシーベルト→10Bq/L)
ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質は同3ベクレル(WHO基準 ストロンチウム90 10Bq/L)
トリチウムは同 1,500ベクレル(WHO基準 10,000Bq/L)
で、WHOが定めた飲料水基準などよりも厳しい目標を定めている。
 

第一原発の山側からは地下水が1日400トン程度、建屋側へ流れ込み、これが内部の溶融燃料に触れて汚染水が増える要因となっている。

東電は2014年5月、汚染前の地下水を海に流す「地下水バイパス」を開始した。東電によると1日約400トンあった地下水流入を約300トンに減らした。

建屋の山側に12本の井戸を設置し、流入前の地下水をくみ上げ、放射性セシウム濃度が1リットル当たり1ベクレル以下と低いことを確認して海に放出する。
流入量を1日100トン程度減らせる。

福島県漁業協同組合連合会は2014年3月末、放出を容認、東京電力は2014年4月9日、「地下水バイパス」の作業を始めた。

サブドレン計画は、建屋内に流れ込む地下水を減らし高濃度汚染水の増加を抑えることなどが目的で、原子炉建屋を囲む41本の井戸から地下水をくみ上げ、浄化装置で処理し、放射性物質の濃度を基準以下にして海に放出する。

浄化装置で放射性物質濃度を1000〜1万分の1程度に下げて海に流す。
地下水を150トンに半減できると試算している

国と東電は2014年8月、計画を発表したが、地元漁協との交渉が大詰めを迎えた2015年2月、原子炉建屋屋上にたまっていた汚染水が排水路から外洋に流出していたことが発覚したため、県漁連は容認に向けた意見集約を先送りした。

サブドレン計画には、風評被害を深刻化させるのではという懸念がある。

それでも漁協側が容認したのは他に選択肢がなかったためである。

試験操業の範囲を広げる方向で協議を始めているが、そのためにも早く遮水壁を閉じること(下記)が必要で、サブドレン計画を実施すれば、原子炉建屋に流れ込む地下水を減らすだけでなく、1〜4号機の海側遮水壁によって港湾内への汚染地下水の流出を食い止める効果 が期待される。
東電は「早期に遮水壁を閉じられないと、300トン以上の汚染水が毎日、海に流れ続けてしまう」と計画への理解を求めた。

漁協側は、「県の漁業復興が少しでも進むのならやむを得ないということだ」としている。

付記

東電は2015年10月、地下水ドレンから地下水をくみ上げ海へ放出する作業を開始したが、5本の井戸のうち4本の井戸水で高濃度の放射性物質や塩分が検出され、海に流せなくなった。
計画では1日300トンずつ増えていた汚染水を150トンに半減できるとしていたが、逆に原子炉建屋側に移送する汚染水は最大400トンに増える結果となった。

ーーー

東京電力は2015年3月25日、原子力規制委員会の第33回特定原子力施設監視・評価検討会に提出した資料で、2014年4月からの1年ほどの間に、福島第一原発から7420億ベクレルの放射性セシウムが海に漏出していたとの試算を明らかにした。

うち、護岸から専用港への流出が5100億ベクレルで最大である。

  314日間の流出量 (億ベクレル)
 
  全β Cs 134 Cs 137 Cs 合計 Sr 90
A排水溝 140 26 82 108 11
物揚げ場排水溝 130 23 76 99 15
護岸からの流出 22,000 1,300 3,800 5,100 8,500
K排水溝 2,300 500 1,500 2,000 1,500
C排水溝 320 29 84 113 110
合計 24,890 1,878 5,542 7,420 10,136

A排水溝とK排水溝からは外洋に流出
その他は専用港に流出(下記の通り、シルトフェンスで港外への流出防止)

このうち、護岸からの流出に対しては、海側遮水壁で流出を防ぐこととなっていた筈である。

汚染水を漏らさない対策の一つとして、海側遮水壁(鋼鉄製の板の壁で、海底から海面上まで幅800mにわたり約700本)を設置し、内側を埋め立てるとなっていた。

しかし実際は、海側遮水壁が完成すると地下水が行き場を失って水位が上がるため、全780mのうち770mを造ったところで中断し、残り10mの部分から地下水を海に流出し続けている。

        http://oshidori-makoken.com/?p=921

専用港では遮水壁未完成箇所を含め3箇所にシルトフェンス(海面から海底までカーテン状になっている汚濁防止フェンス)を張っているだけで、港外への流出防止は完全ではない。

(汚染水が流出してシルトフェンス内側の水量が増えると、フェンスを超えてフェンス外に出る。シルトフェンスの破損事故もあった。船が接岸する際はフェンスを外す。)

 

2015/3/28  福島第一原発から海への放射性物質流出

付記 

サブドレン地下水の海洋放出容認で海側遮水壁の全面完成が可能となり、2015年10月26日に完成した。

2015年11月、海側遮水壁が地下水圧の影響で全体的に傾斜していることが分かった。傾斜は海側に最大20センチ。傾きの影響で周辺敷地の舗装にひび割れも発生。
東電は、遮水壁周辺に鋼材を補強すると共に、ひび割れで雨水が流入するのを防ぐ対策を進めている。

ーーー

東京電力は7月30日、福島第一原発3号機の海側にあるトレンチ(配管などが通る地下トンネル)にたまっていた高濃度汚染水の抜き取りが完了したと発表した。

当初は、トレンチと建屋が接する部分の汚染水を凍らせて流れをせき止めたうえで抜き取る計画だったが、汚染水が十分凍らず、昨年11月からはトレンチをセメントで埋め立てながら汚染水を抜き取る方法に変更していた。

これで、「凍土遮水壁」の建設のめどが立った。

なお、多核種除去設備ALPSでの処理後のトリチウムを含む水は、トリチウムの処理方法は今のところないため、タンクに保管されたままである。


2015/8/5  電力会社第1四半期決算、沖縄を除き全社で経常黒字  

沖縄を除き全ての電力会社で第1四半期(4〜6月)の経常損益が黒字となった。

原油やLNGの価格下落で火力用の燃料費が大きく下がったのが貢献した。

2015/7/31 輸入LNG 値下がり

 

2015年3月決算では、原油安が寄与して中部、中国、四国が黒字転換し、7社が黒字になったが、原発依存度の高い北海道、関西、九州は赤字を続けた。

北海道は2014年11月の再値上げで赤字幅は縮小した。

2015/5/5   電力会社決算

関西電力は本年6月1日から再値上げした。

第1四半期では、北海道、関西、九州も黒字となった。
関西電力は再値上げ(1ヶ月分)も収益を押し上げた。

 
   

2015/8/6  オマーン、イランから天然ガス購入へ 

オマーンがイランの天然ガスをペルシャ湾の海底パイプラインを通して購入する計画がまとまりつつある。

イランのNational Petrochemical Companyはこのたび、イランのKuh-e MubarakからオマーンのSoharまでの200kmの海底パイプラインのアドバイザーが決まったと述べた。

イランのRudanからKuh-e Mubarakまでの陸上の200kmのパイプラインも新たに建設される。

パイプラインやインフラの建設費は全額オマーンが負担する。

2013年8月にオマーンのカブース国王は、イランを訪問し、ロウハーニ大統領と会談した。

この際に両国はペルシャ湾のKish島から海底パイプラインを敷設して、日量28百万m3の天然ガスを15年間(600億ドル相当)輸入する内容を含むMOUに調印した。

案としては、Kish島からオマーンまで全て海底パイプランでつなぐ案と、陸上パイプランで対岸まで運び、そこから海底パイプラインでつなぐ案があった。
今回、後者が採用される模様。Kish島からRudanまでは既存パイプラインを利用する。

Kish島での共同開発の構想もあったが、これはまとまらなかった。

オマーンはガス輸出国ではあるが、人口の急激な増加や産業の活性化などによる国内でのガス需要増が見込まれ、近い将来、逼迫する懸念が生じている。
2008年には、カタールからアブダビを経由したドルフィン・パイプライン(後記)を通じて200MMcf/dのガスを輸入する売買契約に調印している。

イランにとっては、これにより、同国の天然ガスをアジア等の諸国に売却することができるようになる。

イランがオマーン国内のLNGプラント建設に参画する構想をある。

ーーー

オマーンにはLNG出荷ターミナル会社が2つあるが、2013年9月にこれらが統合された。(統合後の出資比率不明)

2つとも、Qalhatにプラントを持つ。

名称 Oman LNG Qalhat LNG
設立 1999 2002
株主 Oman政府 51.00% 46.84%
Oman LNG 36.80%
Shell 30.00%
Total 5.54%
Korea LNG 5.00%
三菱商事 2.77% 3.00%
三井物産 2.77%
伊藤忠商事 0.92% 3.00%
大阪ガス 3.00%
Pastex 2.00%
Union Fenosa Gas
(ENI/Fenosa)
7.36%
合計 100% 100%
長期
販売先
(年間)
大阪ガス 66万トン 80万トン
伊藤忠 77万トン  
Kogas 406万トン  
三菱商事・東電   80万トン
Fenosa(スペイン)   165万トン

ーーー

ペルシャ湾のガス・海底パイプラインは既にDolfin Pipelineが運営されている。

2007年7月に、カタール・ノースフィールド・ガス田から、ラスラファンにおけるプラントを通して、UAEのタウィーラへの送ガスが開始された。

運営するDolfin Energy の出資者は、アブダビ政府のMubadala Development 51%、Total 24.5%、Occidental Petroleum (当初は Enron) 24.5%である。

フジャイラのUnion Water and Electricity Company の海水淡水化プラント用のガスは当初、オマーンからアライン経由のパイプラインで輸送されたが、カタールのガスに代替された。
現在は、逆にこのパイプラインをアラインから逆送することで、Dofin Pipelineで送られたガスをオマーンに送っている。

 


2015/8/7 オバマ政権、火力発電のCO2排出規制 を強化   

オバマ米大統領は8月3日、石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出に対する規制強化を正式に発表した。
新規制では、火力発電からのCO2排出量を2030年までに2005年比32%削減することを目指す。

米EPAは2014年6月、火力発電所から出るCO2を2030年までに05年比で30%削減するとの規制案を公表していた。(下記)
オバマ大統領はこの削減幅を同 32%に拡大する。大統領権限で実施する。

規制計画では、古い石炭火力発電所を廃止することでCO2排出量の削減目標を引き上げる一方、太陽光などの再生可能エネルギーへの転換を投資促進策をてこに促す。
目標達成に向けた計画は州ごとに2016年9月までに作り、2022年から実施する。
火力発電所へのCO2回収・貯留設備の設置など、規制計画に伴う電力業界の費用は2030年まで年84億ドルと試算している。

米国政府はすでに、温暖化ガス排出量を2025年までに2005年比で26〜28%削減する計画を提出しており、今回発表した火力発電への規制強化により目標達成を後押しする。

各国の目標は下記の通り。

  2030年 2025年
日本 2013年比 26%減  
中国 2005年比 GDP当たり60〜65%減  
米国   2005年比 26〜28%減
EU 1990年比 40%以上減  
ロシア 1990年比25〜30%減  
韓国 対策とらない場合比 37%減  
カナダ 2005年比 30%減  
メキシコ 対策とらない場合比 25%減  


大統領はホワイトハウスで演説し「われわれは気候変動の影響を実感する最初の世代。そして何らかの対策をとることのできる最後の世代でもある」と主張。「地球は1つだけだ。プランBはない」と訴えた。

ーーー

米環境保護局(EPA)は2014年6月2日、発電部門における新たなCO₂排出規制案を発表した。
(新設の
石炭火力発電を対象にした排気ガス規制案については、EPAは既に下記のとおり、2013年9月20日発表し ている。)

大気浄化法(Clean Air Act)に基づき、米国内の既存の発電所におけるCO₂排出を規制するもので、EPAが各州に発電部門において達成すべきCO₂排出基準を設定し、基準を達成するための行動計画の提出および実施を義務付けるもの。

石炭よりもクリーンな天然ガスを使った火力発電の活用を明記したほか、建設中の原子力発電所を完成する方針を示すなど温暖化ガスの排出を抑える手段として原発の役割にも言及した。太陽光や風力による発電など再生可能エネルギーの重要性も認めた。

EPAはこの規制の実施により、これまでの対策と合わせて発電部門におけるCO₂排出量を2030年に2005年比で30%削減できると見込んでいる。

各州に適用される排出基準は、州の排出削減ポテンシャルに応じて設定され、かなりの幅がある。
ワシントン州では  0.10kg CO₂/kWh だが、ノースダコタ州では 0.81kg CO₂/kWh となっている。

既設の火力発電所の排出量は下記の通りで、規制案の達成は大変である。
 石炭火力平均 1.02kg CO₂/kWh
    LNG火力平均  0.51kg CO₂/kWh
    LNGコンバインドサイクル発電平均 0.37kg CO₂/kWh

ただし、需要側管理や再生可能エネルギー買取制度、排出権取引制度など幅広い施策を選択できる。

石炭火力からCO₂排出量の少ないLNGコンバインド火力へのシフトが進む他、省エネ投資、再生可能エネルギー投資が進むことなどが予想される。


今回は、火力発電所から出るCO2の削減幅を30%から更に 32%に拡大するもの。

新規制への電力業界の対策コストは年84億ドルとされる。

米の発電比率は下記の通りだが、EPAでは石炭発電比率は2030年には27%に減ると試算している。

  2000年 2013年
石炭 52% 39%
原子力 20% 20%
再生可能 9% 13%
天然ガス 16% 27%
石油など 3% 1%
合計 100% 100%

石炭産出州や業界団体などは新規制の撤回を求めて政府を訴える見通し 。
上院のマコネル共和党院内総務は、新規制は発電所の閉鎖につながり、電気料金を押し上げるとして「何としてでも阻止する」と述べた。

ーーー

EPAは2013年9月20日、新設の石炭火力発電を対象にした排気ガス規制案を発表した。

それによると、新設の石炭火力発電所は1メガワット時あたりの二酸化炭素(CO2)排出量を1100ポンド(500キロ)までに制限される。
これは、近代的な石炭火力発電所の大半での排出量より700ポンドも少ない。

この基準を達成するためには、CO2が大気に放出される前に回収する二酸化炭素回収貯留(CCS) という最新技術を使うしか方法がない。

商業的に稼働している発電所で導入している所は1カ所もない。

建設中の発電所でCCS施設が導入されているのは、2箇所のみ。巨額の追加投資は不可欠で、負担の転嫁で消費者や企業などが払う電気料金は大幅に上がりかねない。

JX日鉱日石開発は2014年7月15日、米国のJX Nippon Oil Exploration (EOR) Limitedを通じて、米国で石炭火力発電所の燃焼排ガスから二酸化炭素(CO2)を回収するプラントを建設し、回収したCO2の油田への圧入により原油の増産を図るプロジェクトを開始したと発表した。

CO2回収事業は、三菱重工業と米国の大手建設会社The Industrial Company(TIC)によるコンソーシアムが建設する。

CO2を年間約160万トン削減する。

 2014/7/18 JX日鉱日石開発、米国で石炭火力発電所の排ガス活用による原油増産プロジェクトを開始 
 

もう一つはSouthern Energyがミシシッピー州 Kemper County のMississippi Powerで建設中のもので、発電規模は582 MWで65%のCO2 (年間350 万トン)を捕捉する。
莫大な予算超過が、同社の収益を大幅に圧迫しているとされる。

しかも、このケースは特殊要因があり、多くの火力発電に適用可能とはいえない。
 ・ 発電所はSouthern Energy が所有する炭鉱に隣接し石炭の輸送コストがかからない。
 ・ 回収したCO2を近隣の2社の油田のEOR(石油増進回収法)の材料として販売でき、年5000万ドル程度の収入が期待できるという。

ーーー

同様にEPAが石炭発電所などに義務づけた水銀などの有害汚染物質の排出規制では、米連邦最高裁が6月に規制を無効とする判断を下した。

問題となったのは、水銀その他大気有害物基準(Mercury and Air Toxic Standards:MATS)で、EPAは2012年2月、火力発電所が排出する水銀や二酸化硫黄(SO2)といった大気汚染物質は呼吸器疾患などを引き起こし、国民の健康に悪影響を及ぼすとして、厳しい排出規制を課した。

EPAでは、汚染制御機器を備える石炭・石油火力の56%はこの基準を達成でき、残りの44%は水銀及び酸性ガスの排出を90%減少させる技術の設置が必要になるとした。

EPAはそのコストが年間96億ドルとする一方、恩益を年間370〜900億ドルと見積もり、毎年11千人までの早期死亡を回避できるとした。

約1100の石炭火力と300の石油火力設備が対象となる。
石炭火力では水銀、粒子状物質、塩酸、フッ化水素酸の排出量が制限され、水銀排出量の90%が削減される。
石油火力では粒子状物質、塩酸、フッ化水素酸の排出量が制限される。
適用まで3年間の猶予期間(州は更に1年の猶予許可可能)

石炭産出州など20州と電力会社などは、発電所の廃止や追加対策による費用が膨らんだとして規制の撤廃を求めた。

米連邦控訴巡回裁判所は2014年4月、排出量の制限が実質的にも手続き的にも有効とした。

これに対し、最高裁は2015年6月29日、EPAがこの規制を実施する前にコストを十分に考慮していなかったとし、5対4で規則を無効と判断し、差し戻した。

多数派意見を執筆したスカリア判事は「EPAは環境規制が適切で必要なものと判断する前に、まずその実施や順守のためのコストを考慮しなければならない」とした。
反対派少数意見は、EPAの政策決定過程は妥当なもので、政策策定の後半の過程ではEPAはコストについて繰り返し計算していたと指摘した。

EPAでは、今回の最高裁の決定は規制自体を取り消すものではなく、またEPAの大気汚染を規制する権限に疑問を投げかけるものでもなく、単に規則制定にあたりもう少し早い段 階でコストを考慮すべきであったと指摘しているだけであるとしている。

今回の差し戻しにも関わらずMATSはなお有効であり、電力会社は引き続き対策をとっていく必要があるとしている。
MATSへの対策が必要な発電所の多くはすでに必要な投資をはじめており、また多くの石炭火力がすでに閉鎖され、再稼働される見込みはない。

ーーー

Steve Coll の「石油の帝国:エクソンモービルとアメリカのスーパーパワー」によると、ExxonMobilはずっと地球温暖化を疑問視してきたが、オバマ政権の誕生を契機に、気候変動が社会に深刻なリスクをもたらそうとしている認識に変換、環境税の導入支持へと軌道修正した。

石炭が最大のCO2排出源であり、天然ガスが石炭にとって代わることが出来るため、同社にとって有利となるとの判断からである。


2015/8/8 アイルランドのShire Pharmaceuticals、Baxter Laboratoriesから独立したBaxalta に買収提案   

アイルランドの製薬会社Shire Pharmaceuticalsはバイオ医薬品の米Baxalta に株式交換による約300億ドル相当の買収案を提示した。
Baxalta はBaxter Laboratoriesから7月にスピンオフしたばかり。

Shireの提案では、Baxalta の株主は1株当たりShireの米国預託証券(ADR)を0.1687ADR受け取る。
Baxalta 株を45.23ドルと評価したことなり、これは8月3日終値を36%上回る水準。

非米国会社が、米国において株式により投資家から資金を集めようとする場合、母国との物理的な制約から株券の受け渡しに手間がかかる上、配当金が企業の母国通貨建てで支払われることから、米国投資家に取引上・為替上のリスクや不便が生じていた。
ADRは、これらの不都合を解消し米国株式と同様、米ドルでの売買・決済、および配当金の受領を可能にした。併せて証券の保管も米国内で行われる。

Shire はBaxalta に対し「買収協議に応じる」よう求めたが、Baxalta はこれまでのところ協議を拒否しているという。

付記 

両社の取締役会は2016年1月11日、ShireがBaxaltaを買収することで合意した。

Baxalta の株主は1株当たり現金18.00ドルとShireの米国預託証券(ADR)を0.1482 ADR受け取る。
Baxalta 株を45.57ドルと評価したこととなり、総額 320億ドルとなる。

Baxaltaは希少な血友病や免疫不全症の治療薬を手掛け、Baxterからスピンオフ(分離・独立)を完了したばかり。
スピンオフ後もBaxterが24%前後の株式を保有し、筆頭株主の座を維持している。

Baxterは2014年3月27日、バイオ製薬事業を分離し、別会社として上場する計画を発表した。バクスター本体には、輸液製剤などの医療用品事業が残る。
市場や成長ペースが異なる2つの事業を分離し、経営効率や株主価値の向上を見込む。

新会社として分離するバイオ製薬事業は、血友病や他の血液疾患の治療剤、ワクチンなどを手がける。2013年の売上高は約60億ドルだった。

一方、本体に残る医療機器事業は輸液製剤や薬剤投与関連製品が中心。2013年の売上高は90億ドルだった。
2012年に血液透析システム大手の
スウェーデンのGambro AB約40億ドルで買収し、事業規模を拡大していた。

ーーー

Shire は患者数の少ない希少疾病に強い製薬会社で、競合を避けながら4割弱の高い営業利益率を誇っている。

Shire Pharmaceuticalsは2014年7月、2013年初めに米Abbott Laboratoriesからスピンオフして誕生したAbbVie Inc. に買収されることで合意したが、AbbVie は2014年10月15日、Shire Pharmaceuticals 買収を撤回すると発表した。

米政府が9月22日に節税目的の本社移転の抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断したもの。
AbbVie による買収案の撤回により、Shire は違約金16億ドルを受け取った。

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる

Shire Pharmaceuticalsは2015年1月11日、米バイオ医薬品のNPS Pharmaceuticals, Inc. を52億ドルで買収すると発表した。

NPS Pharmaceuticals は、希少疾病用医薬品(Orphan drug)に重点を置いたバイオ製薬企業で、下記の有力製品を持つ。

成人の短腸症候群 (SBS) 治療薬としてGattex®が米国と欧州で承認されている。
成人の副甲状腺機能低下症における NatparaTM(遺伝子組み換えヒト副甲状腺ホルモン)は、第3相試験が完了した。

NPSの買収により、難病治療薬への軸足移動が加速するとともに、消化器疾患や内分泌疾患などの治療薬の拡充を図る。

ShireのCEOは、バイオテクノロジー企業としての存在感を増すために、引き続き買収機会を模索していくと述べた。

2015/1/17 アイルランド製薬Shire Pharmaceuticals 、米バイオ医薬品 NPSを買収 


これらの関係は下記のとおり。

 


2015/8/10  “The Colder War”   

マリン カッサの「コールダー・ウォー: ドル覇権を崩壊させるプーチンの資源戦争」を読んだ。

 (出版社のPRから)

東西冷戦をしのぐ米露の熾烈な戦いが始まっている。プーチンは今、膨大なエネルギー資源を武器に強力な資源外交を展開している。狙いは資源取引のドルベース・ルール(ペトロダラーシステム)に変更を迫り、アメリカ覇権を転覆させることだ。その長期戦略はもはや経済制裁や原油安では阻止できない。米国有数のファンドマネージャーが資源開発現場で得た最新情報をもとに、ドル崩壊の危機を予測した全米ベストセラー !

著者:Marin Katusa
Casey Research のエネルギー部門主任研究員で、エネルギー産業に特化した投資ファンドマネージャーとして大きな成功を収める。世界各地の資源開発現場に飛び、第一線の最新情報を持つ。

ほとんどのアメリカ人が知らないうちに、米露の間で超冷戦(Colder War) が進んでおり、プーチンの長期戦略が結実しつつある。

プーチンのグランドデザインは下記のとおりとする。

 1)ロシアは外国からの攻撃に屈しない強国でなければならない。
 2)ロシアを脅かすのは米のみ
 3)周辺国をバッファーに(米との連携を許さない)
 4)ロシアの安全保障のためにも国民は豊かにならなくてはならない。
 5)ロシアの繁栄は天然資源とりわけエネルギー資源に依存する。
 6)資源収入は軍事予算を担保するだけでなく、資源輸入国をロシア依存国にする。
 7)資源エネルギー関連産業の圧倒的力がロシアに依存せざるを得ない国をつくる。
 8)資金と技術のため海外からの資金は歓迎するが、政府の全面的監督下に。
 9)ロシア国外のエネルギー事情混乱はロシアに有利。中東騒乱は有利。
  10)PetroDollarに風穴をあけ、米に打撃を与える。

PetroDollar体制とは:

1971年8月15日、ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止した。

ニクソンはキッシンジャーをサウジに派遣し、以下の交渉を行わせた。

 ・米はサウジを防衛する。どんな兵器も売る。サウジ王家を未来永劫に保護する。   
    ・見返りに
@サウジの石油販売を全てドル建てにする。
         Aサウジの貿易黒字で米国財務省証券を購入する。

  
サウジはこれを受け入れ、1974年に調印された。
その後、OPECの他のメンバーもドル建て取引を採用し、ドルが世界通貨となった。

これが「ペトロダラー」システムで、これまで金との兌換が必要なため、無制限なドル印刷は出来なかったのに対し、ほぼゼロコストでドルを無制限に印刷し、輸入決済に充てることが出来るようにな った。

ーーー

著者によると、ソ連の崩壊はレーガンの政策の成功の結果ではなく、ソ連が石油開発に資金を割けなかったため、埋蔵量はありながら、生産が激減したためであるとする。

プーチンはロシア再興のカギは豊富なエネルギー資源であると早くから認識し、それはロシアの民間資本で運営されるべきで、経営は国家の指導に沿ったものでなくてはならないと考えた。
このため、この方針に沿わない新興財閥(オリガルヒ)を国家権力を使って排斥すると共に、中小企業を半官半民の超企業に育て上げた。

ユダヤ人のMikhail Khodorkovskii は混乱期のロシアで違法スレスレの手段で国営石油会社 Yukos を超安値で買収した。
Khodorkovskii はこれを、Roman Abramovich同様の手法で育てた石油会社 Sibneft と合併させ、ロシアの石油生産の30%を占める大企業にした上で、高値で売却すべく、ExxonMobil とChevronとの交渉を開始した。
一方で、
Khodorkovskii はプーチンを公開の場で批判し、プーチンの政敵に政治献金をした。

政府はKhodorkovskiiを脱税、横領、詐欺、文書偽造で逮捕して財産(ユコス株含む)を凍結するとともに、Yukosの最大子会社を脱税で差し押さえた。
最終的に、ExxonMobilもChevronも交渉を取り止め、Yukos-Sibnet の合併はご破算となり、Yukos は破産、清算した。

Yukosの残余資産は、Rosneftがバーゲン価格で取得し、これを機に拡大した。

石油戦略

ソ連崩壊時 原油生産設備は荒れ放題であったが、プーチンは石油増産のため合併を進め、2007年以降、寡占化に1600億ドルを投じた。
Rosneft にYukos資産を取得させた上で、少数株主の株を強制的に買い上げさせ、政府プロジェクトを任せ、大企業に育て上げた。

ロシアの生産は1998年に日産600万バレルであったのが、2012年には1100万バレルに達した。
2012年の世界の消費量 8500万バレルのうち、ロシアの供給は1100万バレルで13%を占め、国際間取引では15%を占める。

ExxonMobilとの提携で、北極圏開発。
  2013/6/24 Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進 

TNK-BPの買収で、BPとの提携強化   
  2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収 

石油パイプラン敷設

  中国・アジア向け

2010年 ESPO(東シベリア・太平洋石油パイプラン) 中国国境まで完成
2012年     コジミノまで開通

     2012/12/27  東シベリア太平洋石油パイプラインが全線で稼働 

  欧州向け

ドルジバ(Friendship) Pipeline

2012/3、輸出ターミナル新港 ウスチルガが開通 
パイプライン使用料で揉めたベラルーシを通らず、ウラル石油を欧州に供給

天然ガス戦略

Gazpromはソ連崩壊時に民間企業になったが、乱脈経営で資産を超安値で売却。

プーチン就任後、直ちに経営陣を刷新。
新経営陣は、シブネフチガスを買収、Gazprom銀行を設立。

本書に記載はないが、サハリンUではロシア政府が工事の承認を取り消し、最終的にGazpromが過半数(50%+1株)を出資した。
  
2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景

ウクライナとの抗争
 
2013/2/19   ロシアとウクライナ、天然ガスで再び抗争  

ウクライナを経由しないパイプライン
 @ Nord Stream
       
2011/8/27  Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続
            2015/7/1    Nord Stream 倍増計画

   A South Stream
          
2012/12/13 ロシア、サウスストリームパイプライン計画着工
         2014/12/4   ロシア、South Stream 計画を取り止め

      代替案 Turkish Stream
   
2015/7/15   ギリシャへの中国、ロシアの接近

アジア向け  Eastern Pipeline、Altai Pipeline 中国に30年の供給契約
  2014/5/26     ロシアのGazprom 、中国への天然ガス供給契約に調印

LNG戦略:パイプラインで遅れない地区にLNGで供給

サハリンU 年1000万トン輸出 →2020年 6000万トン

バレンツ海シュトックマン海底ガス田(Gazprom 75%、Total 25%)のガスをNord Stream へのつなぎ込むとともに、ムルマンスク州のテリベルカにLNGプラント建設

アフリカ戦略(ナイジェリア、エジプト、モザンビーク、アルジェリアで開発)

イスラエルで膨大な天然ガスが発見され、開発中。
    
2013/4/4 イスラエルで新ガス田からの天然ガス輸送開始

Gazpromは2013年2月、Tamar ガス田のガスのLNG化を計画するLevant LNG Marketing Corp. との間でLNGの20年間の独占購入契約を締結した。

また、天然ガスを
キプロスとギリシャを経由するガスパイプランで欧州に輸出することも検討している。
ロシアは、キプロスに財政支援、ギリシャにもTurkish Stream を通すなど関係強化を図っている。

ウラン戦略

ウラン鉱山の囲い込み

ロスアトム子会社ARMZは2010年に「ウラニウムワン」の持株を17%から51%にアップ。
 ウラニウムワンはウラン鉱最大手で、豪、カナダ、カザフ、南ア、タンザニア、米に鉱山

カザトムプロム(カザフ)と共同生産合意

モンゴルでのウラン開発 

   2020年にロシア生産分で世界のyellow cake 生産の1/3を占め、カザフを加えるだけで世界の半分。
   他にウクライナ、ウズベキスタン、モンゴル

   ロシアは転換と濃縮分野でのリーダーでもあり、転換能力では世界の1/3のシェア、濃縮のシェアも40%でこれを50%にアップする構想。

目標 Yellow cake 生産では58%確保、加工工程でも半分以上

原子力発電では米国も含め、ロシアに依存することとなる。


黄昏のペトロダラーシステム

プーチンの長期戦略に従い、国家権力も使って、ロシアに依存せざるを得ない体制が密かに完成しつつある。

ペトロダラーシステムに対しても、ドルを介在させない取引が出現しつつある。

 ロシア:石油産出国に金による価格設定を要請

 中国:ブラジル、豪、UAE、トルコ、韓国などと通貨スワップ協定を締結、ドル介在なしでの取引が可能に。

 BRICS:新開発銀行設立

 米国:イランの経済制裁が、逆にドル崩壊を加速化している。

制裁をくぐった貿易は盛んであり、SWIFT(ドル決済システム)が使えないため、ドルを使わない決済(金塊、他の通貨、バーターなど)が次々に開発された。

米国の政策が各国に反米感情を産んでいる。

 ペトロダラーの元のサウジも最近は対米不満が高まっている。

・シリアのスンニ派の反アサドの戦いに支援なし
・スンニ派パレスチナ組織の対イスラエル交渉に何もせず
・シーア派イランへの接近
・フセイン放逐に反対したが、米は従わず、結果はイラクがばらばらに 等々

 そのなかで、ロシアがサウジに接近している。

サウジと米国の提携が崩れ、石油取引がドル建てではなくなった場合、米国経済は崩壊する。

最悪のシナリオは、各国がドルから逃げ出し、金利が大幅アップ、発行済み国債が暴落し、ドル の減価で輸入コストが急増し、インフレが進行、金利アップやデリバティブ商品の破綻で金融機関が危機に陥る。

これを回避するには、政府予算削減、外交姿勢修正(紛争介入回避)、過度な福祉政策の停止、国内エネルギー資源開発、非経済な再生可能エネルギーの見直しなど厳しい政策が必要であると説く。

ーーー

本書にはほとんどの米国人が知らない米政府の問題行動を明らかにしている。

@イラクのクウェート侵略

米国の駐イラン大使 April Glaspie は侵略の1週間ほど前に大統領官邸でフセインと会談し、クウェート侵略を黙認するような以下の発言をした。

あなた方とクウェートとの紛争の様な、アラブの紛争には何の意見もありません。ベーカー国務長官は、1960年代のクウェート問題は、アメリカとは関係がないという、最初にイラクにさしあげた説明を強調するよう、私に指示しました。

Aウクライナ問題

2014年2月に国外脱出したヤヌコーヴィッチ大統領は選挙で選ばれた大統領であり、暴力的に失脚させることに米は手を貸した。
米資本の入ったインターネットTV(フロマッケテレビ)が煽った。

Victoria Nuland 国務次官補は過激なネオナチのスヴォボダ党党首とヤヌーコヴィッチ大統領追い落とし作戦を打ち合わせた。
暫定政権でスヴォボダ党は副首相、農相、環境相、司法長官を確保した。

ウクライナの改革は進まず、腐敗は相変わらずである。


2015/8/11 インドの後発薬大手Lupin、米の同業  GAVIS Pharmaceuticalsを買収   

インド後発薬大手Lupin Limited は7月23日、米のGAVIS Pharmaceuticals LLC とその姉妹会社Novel Laboratories を買収する契約を締結した。
買収価額は880百万ドルで、借入金は引き継がない。

買収でLupinの米ジェネリック市場での規模は拡大するとともに、皮膚科学、規制物質製品およびその他の高価値でニッチな後発医薬品のパイプラインが拡大する。GAVISのR&D組織はLupinのフロリダの吸入製剤関連のR&Dセンターを補強する。GAVISのNew Jerseyの工場はLupinにとって最初の米国の生産基地となる。

ーーー

Lupinは1968年設立の世界第7位のジェネリック医薬品メーカーで、アメリカ、EU、オーストラリアなど世界約100ヶ国以上の国で販売している。特に、抗結核薬およびセファロスポリン等で世界市場をリードし、CVS(心血管系)、CNS(中枢神経系)等の領域において存在感を強めている。

世界市場を対象とした原薬から医薬品まで自社一貫製造を行う製造施設(FDA認定工場)を複数有し、コスト競争力においても定評がある。日本の品質管理基準に合致した原薬・医薬品の供給が可能。

 

共和薬品工業は2007年10月、Lupin と資本提携することとし、Lupinが共和薬品の株式の過半数を取得した。

共和は2005年8月より、Lupinとジェネリック医薬品に関する協力契約を締結し、共同開発を推進してきたが、より密接な関係を構築することとした。

共和の製品開発、製造販売に対して、Lupinの研究開発力及び国際マーケティング力が戦略的に加わり、相乗的に大きな価値を生み出すとした。

インド系企業による日本のジェネリックメーカーの買収は、2007年4月のZydus Cadila による日本ユニバーサル薬品の買収に続き2社目だった。

Zydus グループの本社はインド北部グシャラード州アーメダバードにあり、インドではCadila Healthcare、インド国外ではZydusの名称で事業展開している。

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GAVIS Pharmaceuticals LLC とその姉妹会社Novel Laboratoriesについて:

2006年12月に創業者Dr. Veerappan Subramanianが進出に技術的バリアのあるジェネリック医薬品のR&D、製造、販売を目指し、Novel Laboratories を設立した。

2008年にNovelで開発、製造したジェネリック医薬品の販売のため、GAVIS Pharmaceuticals が設立された。

GAVISの2014年の売上高は96百万円。


2015/8/11 中国、人民元/米ドル取引の基準値の算出方法を変更、人民元2%切り下げ   

中国人民銀行(中央銀行)は8月11日、人民元売買の基準となる対ドルの為替レートの「基準値」の算出方法を変更すると発表した。

人民銀行は市場で取引される人民元の水準を基準値の上下2%以内に制限している。
これまでは基準値は銀行から毎朝報告される為替レートをもとに人民銀行が決めていたが、市場の実勢レートとの差が大きかった。

8月11日からは、基準値を市場の前日終値などを参考に決め、市場の実勢を反映しやすくする。

これに伴い人民銀行は8月11日の基準値を前日から約2%切り下げた。

付記

終値は6.3231人民元/$ となった。

  基準値 下限 上限 終値 変動幅 2010/6/18比
8/7 6.1174 6.2397 5.9951 6.2097 -1.51% 9.93%
8/11 6.1162 6.2385 5.9939 6.2097 -1.53% 9.93%
8/12 6.2298 6.3544 6.1052 6.3231 -1.50% 7.96%

 

突然の発表を受け、市場では人民元が一時約3年ぶりの安値水準に急落した。

人民元が円やユーロなどに対して割高になり、輸出が伸び悩み貿易面で影響が出るなど中国の景気が減速するなか、事実上の人民元切り下げにより、低迷する輸出競争力の回復を目指す。
    
2015/5/30 IMF、「人民元はもはや過小評価でない」

人民銀行は以下の通り述べた。

人民元の実効レートは他の通貨より高い
本日の人民元中心レートの大幅引き下げは1回限りの調整
人民元相場の柔軟性を高める
市場における人民元中心レートの役割を強化する


2015/8/12      2015/1〜6月 経常収支    

財務省が8月10日公表した2015年1〜6月の経常収支は8兆1835億円と、東日本大震災後では最高となった。

経常黒字は2010年7〜12月の9兆5692億円に次ぐ高い水準。2014年は 1〜6月が4977億円の赤字、7〜12月は3兆1435億円の黒字だった。

 (単位:億円)
  経常収支 貿易収支 輸出 輸入 サービス
収支
一次所得
収支
二次所得
収支
2014/上 -4,977 -62,014 357,273 419,286 -14,924 83,348 -11,386
         下 31,435 -42,002 383,743 425,747 -15,876 97,855 -8,542
2015/上 81,835 -4,220 378,247 382,467 -8,723 105,114 -10,336
 

貿易収支(決済ベース)は、原油の輸入額が減少したことや、海外景気の緩やかな回復等を背景に輸出が持ち直していること等から、▲4,220億円の赤字となり、前年同期比では5兆7,794億円の赤字幅縮小となった。

 原油価格(石油連盟)

  1. ドルベース:57.75米ドル/バレル(前年同期比▲47.8%)
  2. 円ベース:43,558円/キロリットル(前年同期比▲39.1%)

サービス収支は 8,723億円の赤字で、前年同期比 6,201億円の赤字幅縮小となった。

  サービス収支 うち
旅行 知的財産権
2014/上 -14,924 -657 7,970
2014/下 -15,877 216 9,003
2015/上 -8,723 5,273 13,362

「旅行収支」が黒字転化した(黒字額は過去最大)ほか、「知的財産権等使用料」が黒字幅を拡大した(黒字額は過去最大)こと等から、「サービス収支」は赤字幅を縮小した。

旅行収支は日本を訪れた外国人が使ったお金から、日本人が海外で支払ったお金を差し引く。
上半期の訪日外国人旅行者数は 9,139,900人で、前年同期比 46.0%増の過去最高となった。
逆に、出国日本人数は7,622,800人で、前年同期比 4.9%減となった。

 第一次所得収支は、「直接投資収益」及び「証券投資収益」が増加したこと等から、10兆5,114億円の黒字で、前年同期比 2兆1,766億円の黒字幅拡大となった。

 


2015/8/13  Shell、中国の潤滑油JV持分を売却    

Shell は8月7日、中国のJVの統一潤滑油(Tongyi Lubricants)の全持分75% を、JV相手の 霍氏集团(Huo's Group) と The Carlyle Groupに売却する契約に調印したと発表した。承認を得て、2015年末か2016年初めに完了する見込み。

Carlyleによると、Carlyle Group がこのマジョリティを取得する。

統一潤滑油は、エネルギー、倉庫・ロジスティック、金融を扱う霍氏集团(トップはHuo Zhenxiang:霍振祥)の事業であったが、Shellが2006年に75%を取得した。
北京、山西省
咸陽市江蘇省無錫市の3箇所に合計60万トン能力の潤滑油調合工場を有している。

Shell自身は天津と江蘇省乍浦の2箇所に潤滑油調合工場を持っていたが、統一潤滑油の取得後も、2009年には広東省珠海に、更に本年には天津工場に隣接して7番目(統一潤滑油3工場を含め)の工場を稼動させた。

統一潤滑油は Monarch ブランドで販売しているが、Shell自身は一般ガソリン車用にはShell Helix ブランド、ディーゼル車用にはShell Rimula ブランドで販売している。

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2014年1月にBen van Beurden がShellの新しい CEOに就任したが、原油価格の下落を受け、2015年末までに150億ドルの資産を売却する計画を明らかにした。
これまでの投資拡大から、キャッシュフローの改善と増配による株主への還元に舵を切った。

下流部門については、最も競争力のある少数の資産に集中する戦略で、その他は売却する方向。

最近の昭和シェルの出光興産への売却はその一環である。

2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意 


2014年12月に、Shell が統一潤滑油の持分の売却を計画していることが明らかになった。

売却に関して China International Capital Corp.を雇用、350百万ドル〜500百万ドルでの売却を期待しているとされた。(今回の売却額は明らかにされていない。)

この時点では、Blackstone Group LP が霍氏集团と共同で買収するのではないかとされていた。


2015/8/14 天津で大規模爆発   

天津市の工業地帯で8月12日夜、大規模な爆発が発生した。

爆発は、天津東疆保税港区の 瑞海公司(RuiHai International Logistics) の危険物倉庫で起こった。
関係者は「引火や爆発しやすい物資を詰めたコンテナから出火した」と話している。

 

8月12日午後11時前、自動車が燃えているとの通報を受けた消防隊が現場に駆けつけると、積んであった多数のコンテナが激しく燃えていた。

消防が誤って炭化カルシウムに放水したとの噂もある。
(炭化カルシウムは水と反応すると発熱し、水酸化カルシウムを生成し、可燃性ガスのアセチレンを発生する。)

大きな爆発は2回あった。

一回目は午後11時34分6秒で、2回目は30秒後に起き、高さ数十メートルのキノコ雲が上がり、大きな揺れがあった。河北省など周辺地区でも揺れを観測した。
新華社によると、1回目の爆発はリヒタースケール約2.3でTNT火薬3トンに相当、2回目は約2.9で 同21トンに相当する規模だったと いう。
現地駐在の日本人は、「日本でもあれだけの揺れは、なかなかないような、それぐらいの激しい揺れでした」と話している。

地震計はこれを捉えている。

爆発は気象衛星「ひまわり」からも捉えられた。

死者は50人、負傷者は700人以上で、依然として数十人が行方不明になっている。死者のうち12人は消防隊員だった。日本人の被害はない。

付記 

トヨタ自動車の販売店では、窓ガラスが割れる被害が出ているほか、イオンのショッピングモールも、爆風で入り口のガラスが割れ、営業ができない状態となっている。

税関を含む付近の港湾施設で建物損傷や機能停止が報告されており、二次被害防止のため、同地区の大部分で立ち入りができなくなっている。
今後の船積みに大きく影響が出ることが予想される。

付記

Sinopec Tianjin とSinopec SABIC Tianjin Petrochemical は南の大港 (Dagang) 地区にあり、爆発の影響を受けず、操業を続けている。

 

瑞海公司は2011年設立で、天津港で危険品コンテナの中継、集散の拠点を運営している。

同社は下記の危険品を扱っている。

第二類  高圧ガス  アルゴン、圧縮天然ガスほか
第三類 引火性液体類  メチルエチルケトン、エチルアセテートほか
第四類 可燃性物質類  硫黄、ニトロセルロース、炭化カルシウム、カルシウムアロイほか
第五類 酸化性物質類  硝酸カリウム、硝酸ナトリウムほか
第六類 毒物類  青酸ソーダ、TDIほか
第八類 腐食性物質 ギ酸、燐酸、メタアクリル酸、硫酸、硫化ソーダほか
第九類 有害性物質

第一類の火薬類、第七類の放射性物質は扱っていない。


2015/8/15 クルド自治政府、独自に石油輸出   

イラク北部のクルド自治政府が中央政府との合意に反して、独自に石油輸出を始めた。

中央政府とクルド自治政府は2014年12月2日、対立の原因だった石油輸出問題で合意、キルクーク油田などで産出された石油に関して自治政府が中央政府を通して輸出し、中央政府が必要な予算を配分することになっていた。

ーーー

イラクでは中央政府とクルド自治政府が石油開発を巡って争ってきた。

中央政府は、自治政府と外国企業の油田開発契約を違法とし、参加した外国企業を中央政府との開発交渉から除外した。

イラク政府は第1回油田開発入札資格審査で韓国石油公社やSKエナジーを排除、オーストリアのOMVに対しても石油輸出の停止処分を行なった。
ExxonMobil に対しても警告した。

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

しかし、その後もクルド地区での石油開発は続いている。

2012/8/14  イラク・クルド自治区の石油開発の状況

クルド地区の利点は、石油をトルコを通る既存パイプラインを使って、トルコの地中海岸の積み出し港ジェイハンにまで運び、そこから輸出できることである。

イラク政府は、自治政府が独自に石油を開発することを認めず、また、石油を直接輸出することを認めていない。

中央政府が認めた場合は輸出は認められており、2009年6月にはノルウェーのDNO International が開発するTawke油田、カナダのAddax Petroleumなどの企業連合が開発するTaq Taq 油田から、中央政府が管理する既存パイプラインを使ってトルコの地中海岸の積み出し港ジェイハンに運び、そこから輸出された。

原油の販売はイラク石油省傘下の国営石油会社(SOMO)が担当し、中央政府が収入の71%、クルド政府が17%を受け取り、残りを外国石油会社が受け取るもの。

2009/6/9 イラクのクルド自治区の原油輸出開始 

2014年6月、イラク政府は、クルド人自治区がイスラエルに原油を「違法」に売却したと非難した。 自治区産の原油を積んだタンカー SCF Altai 号は6月20日、イスラエルのアシュケロンに入港した。

イラク石油省は自治政府がイラク憲法に反して割引価格で原油を輸出していると主張しており、今後も輸出を監視し、自治政府から原油を購入した者を訴えると表明した。

自治政府は、パイプラインを通じてトルコに2度目の輸出を行ったと認めた。買い手は明らかにしておらず、原油の販売は憲法違反ではないと主張している。

これを受け、中央政府は自治政府に対する予算の支払を凍結した。
この結果、自治政府の職員やクルド人民兵は何ヶ月も支払を受けられなかった。

この問題は、ISISとの戦いにも支障をきたした。

2014年11月に双方の間で、日量15万バレルの石油の代わりに中央政府が自治政府に5億ドルを支払うという暫定合意に達した。
この支払いの約束を契機に妥協が生み出された。

2014年12月の合意では、クルド自治政府は中央政府に日量55万バレル(現在のイラクの輸出量の1/5に相当)を引き渡す。
このうち、30万バレルはISISが進出しイラク軍が撤退した後、クルド軍が掌握したキルクーク周辺(自治区外)の油田からのもの(中央政府は自分のものと主張している)で、残り25万バレルはクルド地区の他の油田からのもの。

これらの石油はイラク石油輸出公社(SOMO)を通じて輸出される。これにより、中央政府はクルド自治区の石油とその収入への管理を強化できることとなる。

その代わりに、自治政府はこれまで凍結されていた中央政府の財政支出の17%を確保することになった。
この比率は、イラクの全人口に占めるクルド人の割合を基礎としたもので、2005年憲法に盛り込まれた財政取り決めを反映したもの。

シーア派政治家は「われわれ全ての上にISISの脅威がのしかかっていることから、どのような形にせよ、双方が合意することは必要だった」と話した。

ーーー

クルド側は7月に中央政府への石油の引渡しを停止した。

自治政府によると、当初は技術的問題で約束しただけの量を中央政府に渡せなかったが、これに対し、中央政府は約束した額の30〜40%をカットした。

その後、クルド側は技術的問題を解決し、4月に入って平均日量50万バレル以上を送ったが、中央政府は支払を増やさなかったという。

信頼関係が弱まり、自治政府は6月の輸送量を15万バレル以下とし、7月にはゼロとした。

自治政府はトルコ経由のパイプラインで日量60万バレル以上を輸出し、支出をカバーするに必要な月額10億ドル近くを確保している。

自治政府側は、自治政府の職員や戦闘員に給与を支払うため、中央政府に頼るのではなく、経済的自立に向け動かざるを得なかったとしている。

中央政府が昨年、予算の支払を凍結したため、多額の借入金があること、ISISとの戦闘の費用、他の地域から流入した170万人の外国人及びイラク人の避難民の費用などから、輸出を増やさざるを得ないとしている。

しかし、自治政府が輸出している石油には、中央政府が自分のものとしているキルクークの石油が含まれていることが、問題を複雑にしている。

昨年の合意が何故壊れたのかについては、いろいろな説があるが、中央政府内にクルド自治政府に譲りすぎだとの批判があったとされる。


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