2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  2006-5-1 http://blog.knak.jp
 



2014/12/15 原油価格下落でシェールオイルの生産は減少へ 

12月12日のWTI原油先物価格の終値は57.81ドル/バレルとなり、2009年5月以来の低水準となった。
最近の高値の2014年6月20日の107.26ドルからは46%の下落である。

国際エネルギー機関(IEA)は11月の石油市場月報では、2015年の世界の石油需要が2014年から日量113万バレル増えると予想していたが、12月12日発表の12月の月報では、これを23万バレル引き下げ、90万バレル増とした。中国や欧州の景気減速で需給が緩む状態が続くと分析している。

米エネルギー情報局(EIA)は、2015年の原油価格の予想を11月時点ではバレル当たり77.75ドルと予想していたが、OPECの生産目標据置き決定を受け、12月9日に15ドル下方修正し、平均62.75ドルと予想した。
来年については、「
米国の原油生産の伸びが鈍化しそうだが、それでも年間の生産量は1972年以来の高水準に増加すると見込まれる」としている。

Morgan Stanley はOPECが生産減に踏み切らなければ、2015年の第2四半期には43ドルまで下落するだろうと警告している。

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EIAは来年については高水準の生産を予想しているが、価格が上がらなければ、投資の削減により、今後は生産は減ると思われる。

ConocoPhillipsは12月8日、2015年の投資額を135億ドルとし、2014年見込みに比べ20%減らす方針を発表した。同社は2014〜17年まで年平均で160億ドルを投資する計画だった。
2015年は資源掘削にかける費用を50億ドルとし、14年比で20%強減らす。シェール開発も選別し、テキサス州 Eagle Ford など投資効率の高い案件を継続するが、リスクの高い案件は見送る。

BPは12月10日の投資家向け会合で、 探査や開発、生産を担う上流部門と、製油など下流部門の双方にわたる全社的な業務簡素化を進めることを明らかにした。
2015年末までにリストラ関連で約10億ドル規模の引当金を計上する。

最近の原油安については、すべての事業が石油価格の影響を同じように受けるわけではないとしている。
上流部門の3分の1は生産分与契約によるものであり、また石油価格の動向を受けにくい良質なガス田にも投資していると指摘した。

BPは、1バレル=80ドルの想定で事業を承認しているが、価格変動に対する耐性を調べるため、60ドルの水準でも収益性を試算しているとしている。

1995年設立の独立系石油・ガス業者でEagle Ford Shale やHaynesville Shaleなどで活動するGoodrich Petroleumは12月10日、2015年の投資額を本年の325〜375百万ドルから大幅に減らし、150〜200百万ドルにすると発表した。
合わせてEagle Ford のシェール資産の一部又は全てを来年上半期に売却することを検討するとしている。

Williston Basin (Bakkenシェール層)で活動する Oasis Petroleum も同日、2015年の計画を明らかにしたが、投資額は$750〜850 百万ドルとしている。2014年の投資額は1,430百万ドルと見込んでいる。

Wood Mackenzieの試算では、米国のシェールオイルの損益分岐点は下記の通りである。現在の原油価格(60ドル)ではほとんどが赤字となる。

http://www.businessinsider.com/shale-basin-breakeven-prices-2014-10

Morgan Stanleyでは損益分岐点の平均はバレル当たり76〜77ドルで、現在の価格水準が続けば投資は減るとみている。

一度掘れば長期間にわたって石油が採掘できるこれまでの油田と異なり、シェールガス・オイルの場合、掘削して2年で生産量は激減する。
このため、新しい井戸を次から次に掘り続けなければならない。

殆どの業者は借入金で井戸を掘るため、原油価格下落で借り入れが困難になると、生産停止に追い込まれることとなる。

http://www.businessinsider.com/fracking-shale-extraction-and-depletion-2013-3?op=1

 


2014/12/15  DuPont、クロロプレンゴム事業を電気化学に売却 

DuPontは12月10日、DuPont Performance Polymers部門のクロロプレンゴム(商標名:ネオプレン)を電気化学が70%、三井物産が30%出資して新設するDenka Performance Elastomer LLCに売却する契約を締結したと発表した。電気化学も11日、本件の発表を行った。

当局の承認を得て、2015年上半期の買収完了を目指す。約235名の従業員は新JVが引き継ぐ。
売買条件は明らかにしていないが、電気化学では100億円〜140億円を想定している。

クロロプレンゴム (polychloroprene) は、クロロプレンの重合によって得られる合成ゴムで、略称CR。
1930年、DuPontのWallace Carothersが開発し、翌1931年から製造を始めた。
ほとんどのゴムがシス型が主たる構造であるのに対し、クロロプレンゴムはトランス型である。

製法にはアセチレン法とブタジエン法があり、大半はブタジエン法である。

電気化学は1962年に青海工場で独自のアセチレン法で製造を開始、現在では世界約80カ国に供給する最大級のクロロプレンメーカーである。

DuPontはルイジアナ州 La Place の Pontchartrain 工場で生産しており、主に北米、南米、欧州で販売している。

電気化学は今回の買収で、アセチレン法の青海工場に加え、北米にブタジエン法の第2生産拠点を持つことなり、高品質で安定的な供給体制が強化される。

三井物産は長年、グローバルネットワークを使って電化のクロロプレンの販売に協力しており、事業パートナーとなる。

他方、DuPontは物言う投資家(activist investor )から非コア事業を売却し、成長の早い分野に集中するよう圧力を受けており、売却を決めた。

なお、Pontchartrain 工場ではパラ系アラミド繊維のKevlar を生産しており、クロロプレンプラントのみを売却する。

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現在のクロロプレンのメーカーは下記の通り。

DuPont

上記の通り、1931年に生産を開始した。

1996年4月にDuPontはDowと50/50JVのDuPont Dow Elastomers を設立し、クロロプレンもこれに移した。

両社は2004年4月にJVの将来に関してDowにオプションを与えたが、2005年1月、Dowが特定資産を買収するオプションを実行し、JVから撤退すると発表した。

Dowはポリオレフィンエラストマー、EPゴム、塩素化ポリエチレンなどのエチレン及び塩素化エラストマーを引き取り、DuPontは残るクロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴムなどを引き取った。

DuPontはJVのDow 持分を買い取って100%子会社とし、DuPont Performance Elastomersに改称した。

Lanxess

元はBayerの事業で、Lanxess設立時に引き継いだ。ドイツのDormagenで製造している。

2012年末に10%増強し、能力を年産63千トンとした。

海外の生産はこの2社である。

以前はEniが生産していたが、2005年に工場を閉鎖した。

Eni は1992年末にRhone-Poulenc からクロロプレン事業を買収し、100%子会社のPolimeriで事業を行っていた。
(Polimeri はENIとUCCの50/50 JVであったが、UCCとDowの合併に当たり、ENIのポリウレタン事業のDow への売却との交換でENI 100%とした。Eniは現在は Versalis S.p.A.となっている。)

Polimeriは2005年末に唯一の工場(フランスのChampagnier)を閉鎖 した。

昭和電工 20千トン

昭電は1960年にDuPont との50/50 JVの昭和ネオプレンを設立し、事業を開始した。

その後、DuPontとDowがDuPont Dow Elastomer を設立したのに伴い、改組した。

ネオプレン製造:昭和DDE (DuPont Dow 50%、昭電 50%)
エラストマー製品の販売:DDE Japan (DuPont Dow 69.9%、昭電 30.1%)

2002年10月に合弁解消で合意、昭和DDEは昭電の100%子会社に、DDE Japan はDuPont Dowの100%子会社となった。

東ソー 34千トン 

南陽事業所に年産30千トンの生産能力を持っていたが、2007年に34千トンに増強した。

電気化学  100千トン

2012年11月に「デンカクロロプレン50周年感謝の集い」を開催した。

生産開始当時は能力は2000トンであったが、世界最大の10万トンに拡大した。
世界80カ国以上の国で使用されており、「今や販売拠点がないのは、南極大陸のみ」としている。

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州委員会は2007年12月5日、クロロプレンゴムの市場棲み分けと価格操作を理由に5社に総額 247.635百万ユーロ(約390億円)の制裁金支払いを命じたと発表した。
制裁金支払いを命じられたのは、バイエル、電気化学、旧DuPont Dow Elastomers、ENI、東ソーの5社。(昭電は欧州での販売権がなし)

各社の制裁金は以下の通り。(単位:千ユーロ)

  本来の制裁金 減額 実際の制裁金
Bayer     201,000  100%        0
東ソー        9,600   50%     4,800
DuPont/Dow
(うちDow) 
    79,000
    (60,475)
  25%     59,250
    (44,250)
Dow  

25%

4,425

ENI      132,160      132,160
電気化学      47,000       47,000
合計        247,635


2007/12/11 欧州委員会、クロロプレンゴムのカルテルで 247.635百万ユーロの制裁金


2014/12/16 Lion Copolymer、再びSBR事業を取得 

Lion Copolymer は12月1日、テキサス州 Port NechesでSBRを生産しているAshland Elastomers, LLCの買収を完了したと発表した。
10月9日に契約したもので、取引条件は一切明らかにされていない。

この事業は、Ashland Inc. が2011年に買収したInternational Specialty Products の事業で、非コア事業売却の戦略の一環として売却するもの。

Lion Copolymerは一旦売却したSBR事業に再参入することになる。

Lion Copolymerについては、一度このブログで取り上げている。

2006/11/14 合成ゴム会社 Lion Copolymer, LLC

その後、いろいろな展開があったため、再度取り上げる。

 

2005年9月、DSMはBaton RougeでSBRを生産する子会社のDSM Copolymer Inc.をLion Chemical Capitalに売却すると発表した。

Lion Chemical CapitalはこれをLion Copolymer, LLCと改称した。

その後の同社の歴史は下記の通りで、それぞれの事業は長い歴史を持つ。

1.DSM Copolymer の SBR

第二次世界大戦を控え、米国政府は天然ゴムの供給が絶えるのを恐れ、合成ゴム製造計画を進めた。

Franklin D. Roosevelt 大統領の指示で、1940年にゴムの保管、速度制限によるタイヤ用ゴムの節約、スクラップゴムの回収を目的にRubber Reserve Company が設立された。

その後、東南アジアからの天然ゴムの供給が途絶え、合成ゴムの生産が求められた。

1942年にRubber Reserve Company とタイヤメーカー(Firestone、Goodrich、Goodyear、United States Rubber Company=後のUniroyal)は統一処方GR-S (Government Rubber-Styrene) を決めた。
  ブタジエン 75%、SM 25%、触媒 potassium persulfate、改質剤 dodecyl mercaptan 

1942年4月に4社が生産を始め、1945年には生産量は92万トン(うちGR-Sが85%) に達した。GR-Sのうち 70%は4社が生産している。

http://www.acs.org/content/acs/en/education/whatischemistry/landmarks/syntheticrubber.html

この動きのなかで、1943年に 中小のゴム・タイヤ企業7社が集まって設立したのがCopolymer Corporation で、Baton RougeのRubber Reserve Company のプラントでSBRの生産を始めた。

1955年に米国政府は民間への払い下げを決め、Copolymer Corporationが Copolymer Rubber and Chemical Corporation と改称し Baton Rouge工場を買い取った。

1983年に Armstrong Rubber Companyが買収、1989年3月にDSMが買収し、DSM Copolymer となった。

Lion Chemical Capitalは2005年にこの
DSM Copolymer のSBR事業を買収し、Lion Copolymer を設立した。

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DSM Copolymer は以前には米国に、SBRのほかにNBR (Nitrile Butadiene Rubber) とEPDMを持っていた。

NBRについては、Baton Rougeに年産16千トンのプラントを持っていたが、日本ゼオンは1999年1月、DSM CopolymerからNBR事業を買収した。
NBRの
商権約10千トン(年)と、同社の年産16,000トンの連続重合生産能力での生産権利を取得した。

ゼオンは1999年10月にはGood Year Tire & Rubber からNBR事業を買収した。
Good Year のNBR商権約13千トン(年)と同社のNBR関連技術の全てで、工場は停止する。

ゼオンは欧州では1989年にBP Chemicals からNBR事業を買収している。(英国 Sully に工場)

ゼオンは現在、日本に年産60千トン、米国に15千トン、英国に15千トン、合計90千トンの能力を持つ。

EPDMについてはルイジアナ州AddisでKeltanブランドで生産していたが、老朽化したため、2004年に停止した。

DSMは1989年に出光とのJVの出光DSMを設立し、千葉にEPDM 年産4万トンのプラントを建設した。
2003年にオランダに8万トン(第1期)のプラントを建設したのに伴い、2004年9月末に千葉での生産を停止し、JVを解散した。

オランダのSittard-Geleenではその後増設して年産16万トン とし、更にブラジルのTriunfoに年産4万トンのプラントを建設した。

DSMは2010年に オランダとブラジルのEPDM事業をLanxessに売却した。
Bayerから分離独立したLanxessもBayerから引き継いだBuna EPブランドのEPDM
を販売しており、ドイツのMarlと米国のOrangeで、合計能力    12万トンを持つ。

DSMのEPDM事業買収でLanxessの全世界能力は32万トンになった。

2010/12/20 LANXESS、DSM Elastomersを買収

2.ChemturaのEPDM

Chemturaは2006年10月末に、コア事業への集中のため、ルイジアナ州に工場を持つEPDMとゴム薬事業中国のChemtura-CNCCC Danyang Chemical の持分を含む)及び、全世界のオゾン劣化防止剤事業をLion Chemical Capital に売却する覚書を締結した。

Lion Chemical Capitalは2007年に契約を変更し、中国JV持分とオゾン劣化防止剤事業はChemturaに返却した。
EPDM事業は
Lion Copolymer に移した。
ゴム薬事業は、
Lion Chemical Capital とACI Capital が2004年にPolyOneから北米のゴムコンパウンド事業を買収して設立したExcel Polymersに移した。

Lion Chemical Capitalは2010年11月30日に、スウェーデンに本拠を置くゴムコンパウンドメーカーのHEXPOLにExcel Polymersを売却した。

  2010/12/11 ゴムコンパウンドメーカーHEXPOL、同業のExcel Polymersを買収

Chemtura はCrompton と 水処理剤、家庭用クリーナー、難燃剤、安定剤等のメーカーGreat Lakes Chemical が2005年に合併して設立された会社で、樹脂添加剤では世界最大のメーカー。ほかに農薬、石油添加剤、ウレタンポリマー等を生産している。

 

Lion Chemical Capital が買収したEPDMとゴム薬事業は、元はCrompton & Knowlesが買収したUniroyal Chemical の事業で、EPDMについては、Royalene® EPDM とTrilene® Liquid EPDMを生産している。

Uniroyal Chemical の元は、1892年に9社が統合してコネチカット州Naugatuckに設立されたタイヤ会社United States Rubber Companyである。
United States Rubber Companyは1961年にUniroyal, Inc.に改称した。

1985年にCarl Icahnによる敵対的買収を避けるためLBOを行ったが、債務の返済のため、化学部門 Uniroyal Chemical をAvery Inc.に760百万ドルで売却した。

その後1996年にUniroyal Chemical はCrompton & Knowlesに買収された。

なお、Uniroyal, Inc そのものは1986年にB.F. Goodrichのタイヤ部門と統合してUniroyal Goodrich Tire Company となったが、1990年にフランスのMichelinに買収された。

ーーー

住友化学はUniroyalからEPDM技術を導入した。
韓国のSK(旧称は油公)のEPDM事業は、元は油公と住友化学のJVの
Yukong Elastomer であるが、これは住友化学とUniroyalが共同で技術供与した。

また住友化学はABSとSBRラテックス技術をUniroyalから導入し、UniroyalとのJVの住友ノーがタックを設立した。(Uniroyal発祥の地のNaugatuckから取った。)

住友ノーがタックは1980年に住友化学100%となった。
1988年にDowが35%出資し、ポリカーボネート事業を開始、1992年に50/50として住友ダウと改称した。

1995年に住友ダウはABSとラテックス事業を分離し、住友化学100%の住化ABS・ラテックスとしたが、1999年に三井化学のABS事業と統合し、日本A&Lと改称した。

Dowは2010年にPCやスチレン系事業を投資会社Bain Capital Partnersに売却し、Styronが誕生した。
この結果、住友ダウは
住化スタイロン ポリカーボネート と改称した。

 

3.Lion CopolymerのSBR事業(続き)

Lion Copolymerは2010年10月、Acrylonitrile-styrene-butadiene terpolymer (NSBR)の導入を発表した。

しかし同社は2014年2月SBRプラントを停止 した。Economic conditions によるとした。
その後、プラントを同社の元CEOが設立したEast West Copolymer LLC に売却した。

そして今回、Ashland Elastomers, LLCを買収し、SBR事業を再開した。


4.Ashland Elastomers, LLCのSBR

Ashland ElastomersのSBRは元はB. F. Goodrichの事業である。

B. F. Goodrich は1940年にブタジエンとMMAのコポリマー をタイヤ用ゴムとして開発し た。
これを使ったタイヤは“Ameripol” という名前で売られた。輸入天然ゴムではなく、“polymer of American materials” を使っているということで名付けられた。

上述の通り、1942年に統一処方でのSBRの生産を開始した。

1986年にUniroyal, Inc とB.F. Goodrichのタイヤ部門が統合してUniroyal Goodrich Tire Company となり、1990年にフランスのMichelinに買収されたが、Michelinは 1992年にSBR事業をAmeripol Synpol Corp (買収したSBRの商標を社名にした)に売却した。

同社はOdessa, TexasとPort Neches, Texasにプラントを持っていたが、2002年にOdessa工場を停止し、廃棄した。(設備の一部はPort Nechesに移した。)

同社は2002年12月にChapter 11 を申請、裁判所の許可を得て、Port NechesのSBR事業をInternational Specialty Products Inc. に売却した。

米国最大の化学品のディストリビューターのAshlandは2011年6月3日、特殊化学品とパーソナルケア製品などのメーカーのInternational Specialty Products を買収すると発表した。
AshlandはこのうちのSBR事業を
Ashland Elastomers, LLCとした。

2011/6/7 Ashland、特殊化学品メーカーのInternational Specialty Products を買収 

Lion CopolymerはこのAshland Elastomers, LLCを取得した。

 

 

2014/12/17 「南水北調」中央ルート完成 

中国の長江流域から北京など水不足に悩む北部に水を引く「南水北調」事業のうち、中央ルートの1432kmが完成し、12月12日から正式通水が始まった。
2003年の着工から11年かけた総投資額2013億元(約3兆8000億円)の大事業。

中央ルートは河南省と湖北省にまたがる丹江口ダムで長江支流の漢江を堰きとめ、用水路に流し、北京と天津まで送るもので、同日、水門が開かれ、北京に向けた水の供給を開始した。水は15日程度で北京に到達する。

ただ、中国では河川などの汚染が深刻で、飲用に可能な水質を維持できるかどうかや、水源地域で干ばつになった場合の問題も指摘されている。

習近平国家主席は以下の通り述べた。

『南水北調』は、中国における水資源の配置の健全化を実現し、経済と社会の持続可能な発展を進め、国民生活を保障し改善するための戦略的な事業である。
中央ルートの第1期の送水開始は、中国の改革開放と社会主義の近代化づくりにおいて大きな出来事であり、有難いことである。

水質保護や節水、移転者の保障をはじめ、今後の工事計画などを強化するよう希望する。

南水北調は1952年10月30日に毛沢東が、北部の渇水対策のため、「南方の水を借りればよい」(南方水多,北方水少,如有可能,借點水來也是可以的)との構想を打ち出したのに始まる。

それ以来、中国政府は多くの専門家を集め、調査・研究を行い、数々の案を検討・議論した結果、長江(揚子江)の上流、中流、下流からそれぞれ取水し、西北地区と華北地区の各地に引水する東線、中央線、西線の3ルートの案を決定した。

南水北調は、三峡ダム、青蔵鉄道、西気東輸川気東送とならび、中国の5大プロジェクトと言われている。

また、
2000年3月に東部沿海地区の経済発展から取り残された内陸西部地区を経済成長軌道に乗せるため、「西部大開発」が全国人民代表大会で正式決定されたが、その目玉が、「西気東輸」、「南水北調」、「西電東送」、「青蔵鉄道」などである。

「西電東送」は西部(貴州、雲南、広西、四川、内蒙古、山西、陝西)に豊富に存在する水、石炭資源を利用して水力・火力発電を行い、東部沿岸地域に送電し、電力不足を解消する計画。

東線は2002年12月27日に着工され、2013年末に完成した。

江蘇省揚州市で長江の水を引いて、京杭大運河とその平行の河道を利用してポンプで揚水して北方に送水する。さらに洪沢湖、駱馬湖、南四湖、東平湖とも連結し、東平湖を出た後、水路は2つに分かれ、一つは北方に向かい、位山の付近にてトンネルを経て黄河に合流して河北省から天津市にまで到達、長さは1,156kmになる。
もう一つは東に向かい、山東省北部の平原を経由して、青島市と山東半島の煙台市、威海市まで達し長さは701kmになる。

今回完成した中央線は、長江支流漢江の丹江口ダムから取水し、唐白河平原北部及び黄淮海平原の西部縁に沿って輸水路の主水路を敷設し、自然流下法によって終点の北京市、天津市に到達する。
沿線の湖北省、河南省、華北省、天津市、北京市に都市生活用水、工業用水、農業用水、及びその他の用水を提供する。

長期計画では長江三峡ダム、あるいはその下の長江主流から取水し、引水量を増やしていく。

西線は長江上流の通天河と支流の雅礱江、大渡河上流地域にダムを建設して、長江と黄河の分水嶺・巴顔喀拉山脈(バヤンハル山脈)に輸水トンネルを掘り、長江上流の水を黄河上流に引く。この工事により青海省、甘粛省、寧夏回族自治区、内モンゴル自治区、陝西省、山西省等の黄河上中流域と渭河関中平原の水不足解消が見込まれる。

ただし、長江と黄河の高低差が80m〜450mあり、長江から水を送るためには高さ200m以上の規模のダムかポンプによる水の汲み上げが必要であり、長さ100kmのトンネルを開削しなければならない。さらに海抜3,000〜5,000mの高原地帯のため工事作業者の高山病が心配され、地震の危険などもあり、現在もまだ検討段階である。

 


2014/12/18 米国、包括的歳出法案が可決するも、問題を残す

米上院本会議は12月13日深夜、2015年9月までの大半の政府支出を賄う内容の総額1兆1000億ドルの包括的歳出法案を賛成56、反対40で可決した。

下院は12月11日夜に219対206の賛成多数で可決しており、オバマ大統領の署名を経て成立する。

しかし、オバマ大統領の移民制度改革(不法移民の大量受け入れ)の所管事項が多い国土安全保障省の予算については、来年2月までとされた。

今回の選挙で民主党は上院でも過半数を取れず、来年1月3日からは共和党が上下両院を握ることとなる。
移民関連の予算については否定される可能性があり、2月末に混乱が起こることが予想される。

また、2015年3月には債務上限の期限がくる。
共和党は医療制度改革(Obama Care)などオバマ大統領の政策の変更を上限引き上げの条件にすると見られ、またデフォルト寸前までいくと思われる。

共和党のTea Partyグループは、予算不成立による政府機関の閉鎖、連邦債務上限の据置きによるデフォルトも辞さずという強硬姿勢のため、今後も不毛な争いが続くこととなる。

ーーー

オバマ政権は成立以来、予算案と債務上限問題で苦しんでいる。

2013年末まで本予算が一度も通らず、それまでの支出のペースを維持する短期の暫定予算をつないだ。

背景については 2013/3/25 米議会が暫定予算可決 

2012年末には連邦債務は上限16.4兆ドルに達し、減税の期限切れと政府支出の強制削減がほぼ同時に訪れる「財政の崖(Fiscal Cliff)」問題が発生した。

米与野党幹部は2012年12月31日夜、 「財政の崖」への対応で、当面の回避案で合意した。

2013/1/4   米国、「財政の崖」問題を当面回避

しかし、2013年5月には2月に認められた債務上限に達し、デフォルトを回避するためさまざまな緊急措置を実施し、資金をやりくりした。

その後、米与野党は2013年10月以降の暫定予算案で合意できず、10月1日、政府は1996年以来、17年ぶりとなる政府機関の一部閉鎖を開始した。
また、資金のやりくりも限度にきて、デフォルト寸前となった。

米議会の上・下院は2013年10月16日深夜、米政府の債務上限を2014年2月7日まで引き上げ、政府の一部閉鎖も解消する法案を可決、米政府のデフォルトがギリギリで回避された。

2013/10/17 速報 米国、政府デフォルトを直前に回避 

 

2013年12月10日、米議会の民主党代表を務めるPatty Murray上院予算委員長と共和党代表のPaul Ryan下院予算委員長は民主・共和両党の超党派委員会が2015会計年度末(2015年9月末)までの予算決議案で合意したことを発表した。

財政支出の削減を求める野党・共和党への配慮から、富裕層への増税を避けつつ、連邦職員の退職手当の削減や空港利用料の増額案などを盛り込んだ。
一方、民主党の要求に応じ、3月に始まった歳出の強制削減措置で圧縮するはずだった630億ドル分を復活させた。

2013/12/18  米国、予算案成立の見込み → 成立 

米議会上院は12月18日の本会議で、超党派の財政協議の合意を踏まえた修正予算決議案を民主、共和両党の賛成多数で可決、オバマ大統領は12月26日、法案に署名した。しかし、これは「予算方針」であり、具体的には各年度の歳出法案を可決する必要がある。

2014会計年度については、米上院は2014年1月16日に、2014年9月30日までの歳出法案を可決した。

債務上限については、2014年2月12日に上院が債務上限の適用を2015年3月まで凍結する法案を可決し、成立した。

2014/2/14  米債務上限上げ法案可決 デフォルト回避確定

2015会計年度の予算案は、相変わらず2014年10月1日の年度開始時には成立せず、上院は2014年12月11日までの暫定予算を可決した。

今回、与野党は暫定予算の期限切れ直前の12月9日に新たな歳出法案をまとめた。

オバマ大統領が議会を通さず、大統領権限で移民制度改革に乗り出したことに野党・共和党が反発したため、移民制度改革の所管事項が多い国土安全保障省の予算については、来年2月までとする変則的なものである。

下院は12月11日に可決したが、上院では共和党のTea Party系グループがオバマ大統領による移民制度改革に反対しため、同日中に採決できず、2日間の暫定予算を通し、ようやく13日深夜に採決した。


2014/12/19 Apache Corporation、カナダと豪州のLNG権益をWoodside Petroleum に売却 

米石油・ガス開発大手 Apache Corporation は12月15日、カナダと豪州のLNGプロジェクトの権益を豪州のWoodside Petroleum に売却すると発表した。

売却するのはカナダの Kitimat LNGと豪州のWheatstone LNGで、いずれも上流の天然ガスの権益を含む。

売却額は27.5億ドルだが、2014年6月末から取引完了(2015年第1四半期を想定)までの両計画への支出額の払い戻しを受けるため、実質37億ドルでの売却となる。

Apache Corp.は、Activist investor(物言う株主)のヘッジファンド Jana Partners LLCからリストラ実施の圧力を受け、本年7月に両計画からの離脱の意向を明らかにしていた。

Jana はApacheの業績が米国のシェールに特化するライバルと比べて劣るとし、海外事業を売却し、米国内に特化するよう求めた。
特に、上記の2つのプロジェクトについては、開発に長期間かかり、多額の資金を必要するとし、売却を求めた。

原油価格が急落するなかで、同社がこれほど早く権益を売却できたことについて、アナリストは「Apacheの大勝利だ。売却にはもっと時間がかかると考えていた」としている。

売却する物件は下記の通りで、いずれも Chevron が提携相手である。

1) Kitimat LNG 計画の50%持分と、Horn River 及び Liard シェールガス田の権益

 Kitimat LNG 計画はChevron とApache の50/50JVで、Summit LakeからKitimat港まで直接結ぶパイプライン(Pacific Trail Pipelines)計画と、Kitimat 郊外のBish CoveでのLNG輸出ターミナル建設の計画を進めている。

日揮は2014年1月、米国Fluor と共同で、Kitmat LNG Project に係わるLNGプラント建設の発注内示を受けたと発表した。

2014/1/17 日揮と千代田化工、北米でLNGプラント建設 

ApacheはHorn River Basin に20万エーカーのシェールガス田の権益を持ち、現時点で69の水平井戸を掘っており、2011年9月には149 MMcfd の生産を記録した。
Liard basinでは、43万エーカーの権益を持つ。

なお、国際石油開発帝石(INPEX)と日揮はは2011年11月、カナダの石油・天然ガス開発会社NexenがカナダのBritish Columbia州北東部のHorn River、CordovaおよびLiardの各地域に保有するシェールガス鉱区に40%の権益を取得することで合意したと発表した。


2)東電が参加する 豪州 Wheatstone LNGの13%の権益と、沖合開発鉱区(WA-49-L block:Julimar/Brunelloのガス開発と Balnaves油田開発)の65%の権益

2012/5/17 東電の豪州LNG計画

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Woodside Petroleumは1954年に7月に設立された。

一時はShellとBHPが40%ずつ出資していたが、BHPは1994年に全株を売却した。
2001年にShellは100%子会社にしようとしたが、豪州財務省が国益の観点で阻止した。

Shellはその後、持株の一部を売却し、2014年6月にはWoodside株 23.1%のうち、4.5%を残し、売却することを決めた。
WoodsideはShell持株のうち9.5%を買い戻すことで合意したが、Woodsideの株主総会で承認が得られなかった。
このため、Shellは2014年8月1日、これを含め13.6%を持ち続けると発表した。

Woodside Petroleumの活動分野は下記の通りで、豪州西部とチモール海を中心とし、海外でも活動している。

豪州西部とチモール海の石油・ガス開発については、http://www.knak.jp/blog/2009-9-2.htm#gorgon を参照。

 

 

 

Pluto LNG Woodsideは2007年7月、Pluto LNG事業への投資を最終決定した。 Woodside 90% (operator)
Tokyo Gas 5%
Kansai Electric 5%​
North West Shelf 1970年代初頭に西豪州北西部沖合い約130kmにある鉱区で発見された。
LNGの他、原油・コンデンセート・LPG等を生産・販売する豪州最大の総合エネルギープロジェクト。
(各社 1/6 ずつ参加)
Woodside Energy
J
apan Australia LNG (MIMI)
 (三井物産・三菱商事の折半出資)

BHP Billiton Petroleum
BP Developments Australia
ChevronTexaco Australia
Shell Development
  
Browse FLNG Torosa、Brecknock、Callianceガス田。
埋蔵量は合わせて14兆立方フィートのドライガスと370百万バレルのコンデンセート。

2013年9月にFLNG(Floating LNG)を計画。

 

 

Woodside (Operator)
Shell (Australia) Pty Ltd
BP Developments Australia Pty Ltd
Japan Australia LNG (MIMI Browse) Pty Ltd
PetroChina International Investment (Australia)
Sunrise LNG Sunrise とTroubadourのガス、コンデンセート田で総称してGreater Sunrise fieldsと呼ばれる。
埋蔵量1億6千万トン

 

Woodside (Operator)  33.44%
Conoco Phillips  30%
Shell  26.56%
Osaka Gas  10%
石油開発 豪州西部とチモール海で開発

Enfield &Vincent 油田の権益の60%
Stybarrow油田の権益の50%
チモール海の Laminaria-Corallina油田のマジョリティ、など
Grassy Point LNG カナダBritish Columbia 政府とPrince Rupertの北側のGrassy Point でLNG輸出基地建設のFS実施を計画
Cameroon Douala BasinのTilapia Blockの権益の30%
Gabon Gabon Coastal BasinのBlock F15の権益の40%
Ireland Porcupine Basinの深海油田開発.
Morocco Rabat Deep Offshore permits I-VI の権益の25%
Myanmar Rakhine Basin
New Zealand Taranaki Basin and frontier Great South Basin
Tanzania Lake Tanganyika South Blockの権益の70%
韓国 2014/12/13    韓国石油公社と豪Woodside、日本海で大規模天然ガス田発見?

 



2014/12/19 ニューヨーク州、フラッキング(水圧破砕)を禁止へ 

ニューヨーク州の健康局は12月17日、水圧破砕法 (Fracking)に関する報告書を公開した。

水圧破砕法の環境や健康への影響は「完全には解明されていない」としつつも「環境に影響を及ぼし、潜在的に健康にも有害であることは明らか」とし「ニューヨーク州では継続すべきではない」と結論づけた。

Howard Zucker健康局長は、調査の結果、著しい健康リスクがあると述べた。水と空気の汚染に対する懸念を示し、Frackingの安全性を確認する科学的証拠は不十分であるとした。
自分自身がFrackingが行われている地域に家族がすむことを望むかと自問し、答えは “no” とした。「潜在的リスクは大き過ぎ、十分にわかっていない」と述べた。

Joe Martens環境局長はFracking禁止を推奨すると述べ、Andrew  Cuomo知事は決定を健康局長と環境局長に任せると述べた。

2015年初めに正式に禁止されると見られている。

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水平型のFracking 掘削法は、深いシェール岩層に大量の水や砂、化学物質を一気に注入して、内部にあるガスを抽出する。
注入した大量の水や化学物質を回収できず、地下水脈に流れ込んで水質が汚染される危険がある。

New York 州にはMarcellus shale があるが、この辺りは New York 680万人、Pennsylvania 540万人、Delaware70万人、New Jersey 290万人の合計1,580万人に飲み水を供給する水源である。

 

Cuomo知事は2011年に就任したが、それ以前に David Paterson 前知事がFracking が環境にもたらす影響に関する環境局の報告がまとまるまでFracking を禁止した。

環境局はFracking を認める報告草案を発表したが、反発する世論を受け、Paterson 知事は第2次草案の作成を命じ、結論は次のCuomo知事に先送りされた。

環境保護団体からの激しい反対と、Frackingを認めよとする保守的な有権者の請願の板挟みとなったCuomo 知事は何度も決定を遅らせ、決定を州保健局に預け、人体への影響に関する報告をまとめるよう命じた。

2010年の米のドキュメンタリー映画ガスランド 〜アメリカ 水汚染の実態〜」は大きな反響を呼んだ。

2013年1月にはオノヨーコと息子のショーン・レノンが反対派に加わり、二人は、204千人分の署名をCuomo州知事に提出した。
レノン家ではシェールガスの開発地の近くに農場を購入しており、Frackingによって土壌等に影響が出ることへの反対を表明した。

ニューヨーク州は現在まで、Paterson 前知事から 6年間にわたって実質的にFrackingの一時停止措置を取っている。

Cuomo知事が再選を果たして6週間後に、ようやく報告が発表された。

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米国内でシェールの採掘を禁じるのは、北東部バーモント州(2012年5月に禁止法案を可決)に続いて2例目だが、同州ではFrackingは行われておらず、象徴的な法律であり、実質的にはNew York州が最初の例である。

しかし、New York州では6年前の州による一時停止措置の後、170もの市町村がFracking 禁止の条例を出している。

New York 州北部のDryden と Middlefieldが裁判の対象となった。Norse Energy Corp.と農家が、市町村は石油・ガス産業に制限を加える権利を持たないとして訴えた。

2014年6月30日、州控訴審は3つの下級審判決と同じく、市町村が問題のFrackingを禁じるルールを決めることが出来るとの結論を出した。


New York州が禁止を表明したことで、同様の動きが広がる可能性がある。

 


2014/12/20  WHOの“World Malaria Report 2014”

WHOは12月9日、“World Malaria Report 2014” を発表した。

それによると、マラリアによる死者は2000年以降、劇的に減少しており、2000年から2013年の間で死亡率は全世界では47%、マラリアによる死亡が90%を占めるアフリカでは54%減少した。サハラ砂漠以南のアフリカ (sub-Saharan Africa)では、人口は43%増加したが、マラリア感染者は2000年の173百万人から2013年には128百万人に減少した。

WHOではマラリアと戦う武器を持ち、防御策は効いているが、戦いに勝ち抜くにはこの武器をもっともっと多くの人に渡す必要があるとしている。

この武器の一つが住友化学のOlyset Net などの殺虫剤を浸み込ませた蚊帳で、2000年から2013年の間に普及が著しく進み、sub-Saharan Africa のマラリアのリスクのある人々の間では2004年の普及は3%であったが、2013年にはほぼ半分に普及した。本年末までには214百万張の蚊帳がアフリカのマラリア流行地域に配布される。

また、マラリアの迅速診断キット(RDTs:rapid diagnostic tests)も世界中で2008年の46百万個から2013年には319百万個に増え、特効薬のアーテミシニンと他の抗マラリア剤を併用するマラリアの治療 ( ACTs) も2005年の11百万件から2013年には392百万件に増加した。

世界全体ではマラリア撲滅は進展している。

2013年にはアゼルバイジャンとスリランカが初めて発生ゼロとなった。
アルゼンチン、エジプト、イラク、モロッコ、オマーンなど11カ国が発生ゼロを継続した。
アルジェリア、コスタリカなど4カ国が年間発生が10件以下となった。

しかし、世界中では97国・地域で32億人にマラリア感染のリスクがある。
2013年には世界で約198百万人が感染し(うち82%がアフリカ)、死者は584千人と推定される。死者のうち453千人は5歳未満の子供である。

WHOでは次の2〜3年が重要であるとする。

2013年時点で、sub-Saharan Africaでは全体の1/3の家族が殺虫剤処理の蚊帳を持たない。
もう一つの防疫方法である室内用の残効性エアゾールも近年は減少している。
殺虫剤抵抗性の蚊も世界の49カ国で報告されている。

迅速診断キットや治療薬も受けられない人が数百万人もいる。
妊娠している女性や5歳未満の子供への予防措置も進んでいない。

大メコン圏の5カ国で特効薬のアーテミシニンが効かない例も現れた。

マラリア対策費用も2005年以来3倍になったが、グローバルに実施するために必要な51億ドルの半分に過ぎない。

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住友化学のOlyset Net については  2013/6/8 住友化学のOlyset Net

開発の経緯については下記を参照

農学博士の25年「日本の蚊帳」が世界の子どもを救う
http://president.jp/articles/-/51

第19回(2012年度)読売国際協力賞  住友化学株式会社 「防虫蚊帳 マラリア予防」
http://info.yomiuri.co.jp/yri/k-prize/kp2012.htm

 

2014/12/22 出光興産、昭和シェル買収へ 

出光興産が昭和シェル石油買収に向け交渉に入ったと報じられた。
2015年2月にも基本合意書を交わし、公正取引委員会の審査などを経て出光がTOBを実施するという。

今夏以降、出光の月岡社長と昭和シェルの会長兼CEOが会談するなど、両社は調整を重ねており、昭和シェルの筆頭株主のシェルもTOBに応じる意向。
また、出光は主力行の三井住友銀行から買収資金を調達するめどをつけたという。

昭和シェルの時価総額は約3800億円で、仮に3割のプレミアムをつけると5千億円程度となる。

両社の3箇所ずつ、合計6箇所の製油所は地域的に重複しておらず、それぞれの設備に最適な石油製品をつくり生産効率を高める。
販売面でも計約8千カ所ある給油所網を統廃合し、収益力向上をめざす。

出光興産の首脳は12月20日朝、記者団に対し交渉の事実を認めたうえで、連携を図る相手企業について「昭和シェル石油とだけということはない。ドアをオープンにして交渉している」と述べた。他の交渉相手についての質問に対しては、東燃ゼネラル石油などの名前を挙げた。

付記 東燃ゼネラルは12月22日、出光興産との具体的な交渉の事実はないと発表した。

     2015年7月30日、株式譲渡契約締結を発表

 

なお、エネルギー供給構造高度化法に基づき、JXは室蘭製油所の原油処理を、出光は徳山製油所における原油処理機能を停止したが、両社は年間約230万KLの石油製品をスワップすることで合意している。

出光による昭和シェル買収後も、このスワップは維持される見込み。

2013/2/28 JX日鉱日石エネルギーと出光興産、製油所停止で製品スワップ 

今後は、残るコスモ石油と東燃ゼネラル石油の去就が注目される。

コスモ石油と東燃ゼネラルは、コスモの千葉製油所(220千B/D)と東燃ゼネラル傘下の極東石油工業の千葉製油所(152千B/D)の共同事業に関する検討を行ってきた。

2013/10/4 コスモ石油と極東石油工業、千葉製油所の共同事業検討

コスモ石油と東燃ゼネラルは12月19日、下記内容の基本契約書を締結した。

 ・2015年1月に両社で共同事業会社「京葉精製共同事業合同会社」を設立する。
 ・両製油所を結ぶパイプライン敷設を正式合意。
 ・パイプライン完成に先行して両製油所の生産計画を一体的・総合的に立案し、生産効率の向上を目指す。
   また、常圧蒸留装置を含めた設備の最適化についても併せて検討する。
 ・パイプライン完成後、共同事業会社へ精製設備を一元化し、パイプラインを活用することで、年間100億円程度の収益改善を見込む。

ーーー

ガソリンなど燃料油の国内需要は最盛期の1995年に比べ20%超減少しており、中長期的にはさらに2〜3割の減少が見込まれる。

エネルギー供給構造高度化法による告示(2014年3月末期限)により、日本の原油処理能力は日量395万バレルとなった。

一方、生産量は2013年度で335万B/Dであるが、5年後の2018年度の見通しは306万B/Dで、大幅な過剰能力となる。

総合資源エネルギー調査会・第5回石油・天然ガス小委員会(2014/6/10)資料

経産省は6月30日、産業競争力強化法第50条に基づく調査報告「石油精製業の市場構造に関する調査報告」を発表した。

我が国の石油精製業は「概ね過剰供給構造にある」と認められる。
今後、現在の収益状況や精製能力が継続するとすれば、本格的な過剰供給構造に陥るおそれが大きい状況にある。

課題
1)製油所の生産性の向上
  @過剰精製能力の解消
  A統合運営による設備最適化
  B設備稼働率を支える稼動信頼性(設備保全)の向上
  Cエネルギー効率の改善
  D高付加価値化(残油処理能力の向上、石油化学品等の得率向上)
2)戦略的な原油調達
3)公正・透明な価格決定メカニズム等の構築
4) 国際的「総合エネルギー企業」への成長

以上の課題を解決するため、今後、石油精製業者は「資本の壁」や「地理的な壁」を超えた事業再編等に積極的に取り組むことが期待される。

経産省はこれに合わせ、総合資源エネルギー調査会の資源・燃料分科会がまとめた「平成26年度以降の3年間についての原油等の有効な利用に関する石油精製業者の判断基準(告示)案」を公表した。

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制 

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石油精製各社の最近の業績は下記の通り。

 

 

エネルギー供給構造高度化法による告示による処理後のトッパー処理能力は下記の通り。(千B/D)
両社が合併すると、能力シェアは25%となり、JXに次ぐ2位となる。

出光興産 北海道 160  
千葉 220
愛知 175
徳山 0
合計 555 14%
昭和シェル 昭和四日市石油・四日市 255  
西部石油・山口 120
東亜石油・京浜 70
昭和シェル・扇町 0
合計 445 11%
統合の場合の総合計 1,000 25%
 
JXグループ  1,311 33%
コスモ石油 452 11%
東燃ゼネラル(極東石油を含む) 708 18%
富士石油 143 13%
太陽石油 118
大阪国際石油精製 (ペトロチャイナ 49%) 115
南西石油 (PetroBras) 100
総合計 3,947 100%
* JXグループの鹿島と水島はコンデンセートスプリッターを含む。

石油製品販売シェアは下記の通り。
両社が合併すると、シェアは30.2%となる。なお、東燃ゼネラルは三井石油を合併しており、シェアは15.7%。


   http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/data/pdf/42.pdf

注)キグナスは三愛石油が2004年に東燃ゼネラル石油とニチモウから買収した。
   (キグナス石油精製は2001年7月に東燃ゼネラル石油が吸収合併している)

ーーー

昭和シェルは1985年に昭和シェルとシェル石油化学が合併して生まれた。

シェルが50%を所有していたが、2004年に9.96%をSaudi Aramcoに売却、翌年さらに5%を追加売却した。

なお、これまでの石油業界の変遷は下記の通り。

 



2014/12/23 三菱ガス化学、カナダのシェールガス・LNGプロジェクトに参画 

三菱ガスは12月19日、マレーシアのPetronasがカナダ Britich Columbia州で推進するシェールガス開発・生産及びカナダ西海岸で検討中のLNG計画(Pacific Northwest LNG Project)に参画すると発表した。

本計画に10%の権益を有する石油開発資源(JAPEX)の子会社 JAPEX Montneyに10%出資するもので、合わせて年間12万トン(1200万トンx10%x10%)の引取権を取得する。

JAPEX Montney はJAPEXの100%子会社として設立したが、その後、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が50%を出資した。
今後はJAPEX 45%、JOGMEC 45%、三菱ガス子会社 MGC Montney Holdings が10%の出資となる。

同社では、シェールガス開発・生産・販売による収益獲得とともに、競争力をもつLNGを原燃料として同社の国内工場に供給し、国内事業強化を図るとしている。

日本の化学メーカーが原燃料の輸入を目的にシェールガス計画に参加するのは初めて。

しかし、石油や天然ガスを巡る状況は最近になって著しく変化しており、LNG計画が予定通り進むかどうか、明らかではない。

ーーー

計画概要は下記の通り。

シェールガス開発は、North Montney地域のAltares、Lily、Kahta鉱区で、Petronasが天然ガスを生産し、AECOハブ(西カナダの主要ガス市場)で販売していた。

当初、カナダのProgress Energy Resources Corporationが行っていたものだが、Petronasは2011年6月にシェール鉱区の権益の50%を取得し、その後2012年6月に、PetronasはProgressを55億カナダドルで買収することで合意し、年末に取得した。

LNG計画は、Petronasが計画したもので、Prince Rupert 市のLelu島で年1,200万トンプラントを建設する。上記の鉱区からガスパイプラインで結ぶ。

石油資源開発(JAPEX)は2013年3月、このプロジェクトに参画することで基本合意したと発表した。

2013/3/7   石油資源開発、カナダのシェールガス開発計画及びLNG計画に参画

Petronasはその後も参加者を募り、2013年12月にPetroleum Brunei がこの計画に3%の出資を行った。
2014年3月にはインド最大の石油会社 Indian Oil Corporation Limited (IOCL) が10%の参加を決めた。

2014/3/15   Petronas と石油資源開発のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画にインドとブルネイが参加

2014年4月にSinopec とパートナーの中國華電集團(China Huadian Corporation)の出資が決まった。

2014/5/6 Sinopec、Petronas のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画に参加


今回、三菱ガス化学は
JAPEXの子会社 JAPEX Montney に10%参加する。

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LNG計画(Pacific Northwest LNG Project) は当初、2018年末に生産開始の予定としていたが、大きく遅れる見込み。

Petronasは2014年10月7日、税金と環境コストが悪影響を与えており、現在の評価では利益はほとんど見込めないとし、州政府に対し、税金や規制面での特典を要請した。
10月末までに回答を求め、それまでに好回答がない場合、計画は10〜15年遅れるだろうと警告した。

州の環境省は11月に計画を承認したが、連邦政府の承認など多くの手続きが残っている。


Petronasは12月3日、石油価格急落を踏まえ、このLNGターミナル建設計画を予定通り進めるかどうかの決定を先送りすると発表した。
LNGプロジェクトの収益見通しが悪化しており、さらに建設コストを引き下げる必要があると説明している。

JAPEXも、「連邦政府の許認可が遅れていること、パイプラインや液化施設の建設費用の更なる削減を図るべく協議を継続していることから、最終投資決定を延期した」と発表した。


2014/12/23     三井化学、韓国SKCとポリウレタン事業統合

三井化学は12月22日、韓国SKCと両社のポリウレタン材料事業を統合する合弁契約を締結したと発表した。

許認可取得を前提に、2015年4月1日を目途に50/50出資の合弁会社(社名未定)を韓国に設立し、両社の事業を拠出する。

ポリウレタン材料の総合メーカーとして、極東アジアから中国、ASEAN、欧州、米州まで、両社のネットワークを利用してグローバルに顧客に価値を提供する。
2015年の売上高は15億米ドル、2020年頃に年間20億ドルを目指す。

SKCは蔚山でポリオール原料のPOを生産しており、コスト競争力がある原料調達が可能になる。

三井化学は日本の事業を縮小しつつあり、今後はポリオールを中心として、海外でウレタンシステム事業の展開を図るのではないかと思われる。

付記

三井化学は2015年3月23日、ポリウレタン材料事業の統合について、合弁会社の骨子を発表した。

統合JVの社名

 (1)韓国法人 Mitsui Chemicals & SKC Polyurethanes Inc.  三井化学 50%、SKC 50%
 (2)日本法人 100%子会社 
三井化学SKCポリウレタン

JV設立期日 2015年7月1日に変更

 

新会社の製品と拠点は下記の通り。(能力:千トン)

  三井化学

SKC

TDI 大牟田 120        
鹿島 (117) 2016年停止      
 
MDI 韓国・麗水 200 錦湖三井化学
(錦湖化学50%)
     
大牟田 (60) 2016年停止      
 
ポリオール 名古屋 50   蔚山

180

 
徳山 40        
インド 8 Vithal Castor Polyols      
 
システム製品
天津   天津天寰ポリウレタン 北京   SKC (Beijing) Polyurethane
蘇州  
佛山   佛山三井化学ポリウレタン
タイ   Thai Mitsui Specialty Chemicals      
マレーシア   Cosmo Scientex (M) SDN. BHD.      
インドネシア   P.T. Cosmo Polyurethane Indonesia      
      米国   SKC Inc.  (Film事業も)
      ポーランド   SKC Europe PU

なお、三井化学は2012年2月26日にSABICにTDI及びMDI製造技術をライセンスした。

Al-Jubail地区でのプラント運転開始時期は2016年の予定で、合弁事業への参画を含めた提携検討で合意している が、未定。  

2012/3/2  三井化学、ウレタン事業でSABICとの提携を検討、ウレタン事業を再構築

ーーー

三井化学は2月6日、ポリウレタン材料事業とフェノール事業、高純度テレフタル酸(PTA)の再構築を発表した。

TDI 及びMDI事業は、中国を中心とするアジアでの大規模な新増設による市況悪化のため収益が低迷している。

同社のウレタン部門の営業損益は2012年度が -26億円であったが、2013年度は -52億円と悪化している。

今回、特徴ある特殊イソシアネートで、コーティング・機能材事業、メガネレンズモノマーの更なる強化・拡大を図り、 汎用ウレタン原料は、国際競争力が劣位の鹿島TDI、大牟田MDIを2016年12月末に停止し、国際競争力を十分有する他のプラントで、最適生産体制による同事業での勝ち残りを図る。

対策:

鹿島工場  2016年12月末 閉鎖
  TDI(年産117千トン) 停止
  無水マレイン酸(32千トン)、フマル酸(151千トン) 停止、事業終了
  特殊イソシアネート群(2400トン) 大牟田工場に生産移管

5月16日、扶桑化学工業が三井の有機酸事業(無水マレイン酸32千トン、フマル酸 151千トン)を承継することで基本合意した。

大牟田工場
  MDI(年産60千トン) 停止  2016年12月末
  特殊イソシアネート群の大型プラント(5000トン)新設 2015年10月稼動

三井化学は2013年8月29日に、非可食植物由来のひまし油を主原料とした「バイオポリオール」の製造会社をインドに設立する合弁会社設立契約を締結した。

世界最大のひまし油メーカーのJayant Agro-Organicsが50%、三井化学が40%、日本におけるひまし油事業のパイオニアの伊藤製油が10%を出資する。 
インドは世界のひまし油の8割を生産する。

2014/2/10 三井化学の事業構造改善計画 

ーーー

SKCはSK Energyの子会社。

SKグループの元の油公は1987年にARCOとのJVのYukong ARCOを設立し、PO/SM併産プラントを建設した。

1992年にARCOが撤退、Yukong ARCOはYukong Oxichemicalと改称、その後、SK Oxichemical 、SK Evertec を経て SKC となった。 

現在の事業は下記の通り。

1)ケミカル

上記の通り、PO/SMでスタート、PPG、PG、PGEへ展開した。
(現在、PO 280千トン、SM 400千トン)

SKCはEvonikとUhdeのHPPO技術を導入し、蔚山に100千トンのHPPOプラントを建設、2008年にスタートした。

2010年11月、SKCは過酸化水素を製造するEvonikの子会社Evonik Degussa Peroxide Koreaに45%出資した。

同社では2016年には両法合計でPO能力を600千トンにするとしている。

2)フィルム

1977年に独自の技術によりPET フィルムを開発、韓国水原工場と米ジョージア州に大規模工場を建設、更に深圳への進出を決定した。2015年には合計能力300千トンとなる。
世界150 カ国以上にPET フィルムを供給している。

また、光学フィルムやバイオコンポスタブルフィルムにも進出している。

2007年8月にRohm and HaasとのJVでSKC Haas Display Films を設立、フラットパネルディスプレイ市場で使用される最先端の光学および機能フィルムの開発、製造、および販売を行っている。(現在は Dow 51%、SKC 49%)


2014/12/24  スペインの石油大手Repsol、カナダのTalismanの買収で合意 

スペインの石油大手 Repsol S.A. は12月16日、カナダの同業 Talisman Energy Inc. を買収することで合意に達したと明らかにした。
2015年2月のTalismanの株主総会、各国の承認を経て、2015年央の取引完了を目指す。

付記 2015年5月8日完了。

買収額は83億米ドルで、負債47億ドルを引き継ぐため、実質 130億米ドルでの買収となる。

買収価格は直前7日間の加重平均株価に75%のプレミアム、過去30日間の加重平均株価に75%のプレミアムとなっている。

Repsolはこれを手持ち資金で支払う。
同社は
2012年4月にアルゼンチン政府により国有化された子会社YPF に関して、賠償を求めて世界銀行傘下の投資紛争解決国際センターに仲裁を提訴したが、2014年4月に和解し、63
億米ドルを取得している。

2014/3/3 アルゼンチン政府、YPF の接収で補償

Talisman Enegy は主に、北米(米・加)、北海(ノルウェーが主)、東南アジア(インドネシア、マレーシア、ベトナム)、コロンビアで活動している。

2013年の生産量は373千boe/dで、石油が35%、天然ガスが65%となっている。

2012年7月にSinopecがTalisman の英国子会社Talisman Energy (UK) の49%を15億ドルで取得することで合意し、両社のJVとしている。
   2012/7/31   中国石油大手による買収 続く

買収により、Repsol は世界のエネルギー関連私企業トップ15社のうち内の1社となる。

政治的に安定しているOECD諸国での生産活動を増やす。現在のOECDでの生産は全体の11%だが、買収により36%に拡大する。
また、北米、コロンビア、ノルウェーの事業を拡大し、東南アジア(インドネシア、マレーシア、ベトナム)の優良資産を加える。

北米は開発投資ベースでほぼ全体の50%、ラテンアメリカは22%となる。

2014年のRepsolの生産量は原油換算で386千boe/d だが、買収後は680千boe/d と76%増加する。

確認埋蔵量(1P) は原油換算で1,515百万バレルから2,353百万バレルに、確認+推定埋蔵量(2P) は2,302百万バレルから3,545百万バレルに増加する。

Repsolでは買収によるシナジー効果を年間2億米ドル以上と見ている。

 


2014/12/25 BASF、Gazpromとの資産交換計画を断念 

BASFは12月18日、「現在の厳しい政治情勢を踏まえ、」年内に予定していたGazpromとのガス資産の交換計画を断念すると発表した。

ロシアと西側諸国の間で緊張が高まったことが背景にある。

 
BASFは2013年12月23日、Gazpromに天然ガスのトレーディング事業を譲渡し、交換で鉱区権益を取得すると発表した。

譲渡するのは、

1)BASF子会社Wintershall とGazpromの50/50JVの天然ガスのトレーディングと貯蔵会社、WINGASとWIEH のWintershall 持分

  両社はGazprom 100%となり、WIEWIEHの100%子会社のWIEE もその結果、Gazprom に移る。

WINGASとベルリンに本社を持つWIEH(Wintershall Erdgas Handelshaus) はドイツのみならず、ベルギー、フランス、英国、オーストリア、オランダ、チェコなどに天然ガスを供給している。

WIEWIEHの100%子会社のWIEE (Wintershall Erdgas Handelshaus Zug) はスイスに本拠を置き、ルーマニアとブルガリアを中心に天然ガスを供給している。

2)  北海で石油の開発を行っているWintershallの子会社WINZ(Wintershall Noordzee)の50%持分

 

代わりに譲り受けるのは、北極圏北海のUrengoyskoye 石油・ガス田のAchimov depositsの4A and 5Aブロックの開発権の25.01%。

Urengoyskoye 石油・ガス田は1966年発見で、北極圏のガス田で最大のもの。

今回取得する2鉱区は24億バレルの埋蔵量が見込まれ、2016年に生産が始まる予定であった。

Wintershall は長年、Gazpromと共同でシベリアのガス田を開発している。

交換中止により、WINGASとWIEH はWintershall とGazpromの50/50JVのままとなり、WINZはBASFグループの100%子会社のままとなる。

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BASF子会社のWintershallは、ロシアの欧州向けの天然ガスパイプライン、Nord Stream計画に参加している。

2005年9月、Gazpromとドイツの電力会社E.On、及びWintershallの3社が契約文書に調印した。

現在の出資比率は、
Gazprom 51%、Eon 15.5%、Wintershall 15.5%、Gasunie 9%、 GDF SUEZ 9%となっている。

WintershallはSouth Stream 天然ガスパイプライン計画にも参加している。

2011/3/30  BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加

2014/12/4  ロシア、South Stream 計画を取り止め

付記

2014年12月29日、WintershallはSouth Stream Transport の持株15%をGazpromに売却した。
この結果、出資は
Gazprom 65%、フランスのElectricite de France SA 15%、ENI 20%となった。


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