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3月10日付の日本経済新聞の「200年企業 成長と持続の条件」は塩野香料を取り上げている。
その中に以下の記載がある。
「塩野香料は1943年秋に、バラから得られる香料を原料にポリスチレンを製造する技術を確立した。終戦まで毎月1トンを生産、軍用機のレーダー対策用に住友電気工業などに供給した。」
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塩野香料は和漢薬真珠などの薬種問屋としてスタートした。
和漢薬から丁子(クローブ)、肉桂(シナモン)など同じ原材料を使う香料事業に転換した。
三代目の弟は分家して洋薬に転換したが、それが後の塩野義製薬である。
塩野吉兵衛 1808年に道修町に薬種問屋・塩野吉兵衛商店を開業
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二代 吉兵衛
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三代 豊太郎---弟 義三郎(分家、洋薬に転換、塩野義三郎商店→塩野義製薬)
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四代 光太郎 和漢薬から香料に転換
1908
輸入品で香料事業参入
1917 香料製造開始
1921
エッセンスの合成に成功
1929 塩野香料設立
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ポリスチレンは1839年にドイツの薬剤師の Eduard Simon が発見した。天然レジンから分離したが、それが何かは分からなかった。
その後、ドイツの有機化学者のHermann StaudingerがSimon が発見した物質がスチレンの重合体でプラスチックポリマーであることを見つけ、1922年に発表した。1953年にノーベル化学賞を受賞している。
1930年にBASF(I.G. Farben)の科学者がポリスチレンの商業生産の方法を開発した。
1930年代にDowの最初の女性化学者のDr. Sylvia Stoesserを含む研究者がポリスチレンの製法を開発、Dowは1937年にPS(Styron)を発売した。
日本では1957年1月にモンサント化成が四日市で、同年2月に旭ダウが川崎で、ポリスチレンの製造を開始した。
両社のPS生産は、エチレンとSMの生産開始に先立ち、輸入SMを原料に行われた。
四日市では三菱油化が1959年5月にエチレン(22,000トン)、1959年5月にスチレンモノマー(22,000トン)の生産を開始した。
川崎では日本石油化学が1959年7月にエチレン(25,000トン)、旭ダウが1959年10月にスチレンモノマー(18,000トン)の生産を開始した。
モンサント化成は1952年に三菱化成とモンサントのJVとして設立され、三菱化成のPVC関連事業を承継した。
1953年に可塑剤の生産を開始、1957年に四日市でPS(7,200トン)の生産を開始した。
(1958年に三菱モンサント化成と改称)旭ダウは1953年に塩化ビニリデンポリマーの繊維への事業展開のため、旭化成とDow ChemicalのJVとして設立され、1957年に川崎でPS(10,200トン)の生産を開始した。
2006/10/7 日本のPS業界の変遷
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しかし、これより早く、1943年に塩野香料が日本で最初のポリスチレンの生産を開始していた。
担当したのは、のちに日東化成、大阪曹達の社長を歴任した勝村龍雄氏である。
同氏の著書「化学者のおとぎ話」(1990年 発売元:化学同人)では経緯は以下の通り。
同氏は当時、塩野香料で、香料原料の製造のため、塩化アルミを触媒としてベンゼンとエチレンオキサイドからバラの香りの主成分のβ-フェネチルアルコールを合成する研究を行っていた。
C6H6 + CH2CH2O → C6H5CH2CH2OH
β-phenylethylalcohol (C6H5CH2CH2OH)はTea Rose Elementとも言われ、「バラの香り」として香水に欠かせない原料で、ほとんどすべてのバラに含まれている。
太平洋戦争では米軍のレーダーが威力を発揮、これに対抗するには高周波の絶縁物であるポリスチレンが必要として、日本中の大学、研究所でポリスチレンの研究が行われた。
レーダーは目標物に電波を発射して跳ね返ったきた電波を微弱な高周波電流にして増幅・変調するので、効率よく回路に流すにはこの誘電損失の少ない絶縁材料が必要になる。
このため、軍の要請で、ポリエチレンやポリスチレンの研究が行われた。
同氏は恩師の阪大の小竹無二雄教授から、β-フェネチルアルコールの合成法を利用してスチレンの合成法を考えるよう指示され、β-フェネチルアルコールを脱水してスチレンを生産する研究を進めた。
C6H5CH2CH2OH ー H2O → C6H5CHCH2
研究の結果、β-フェネチルアルコールをピュアにしておけば、脱水して高純度のスチレンモノマーが得られることが分かり、それをブロック重合してポリスチレンにすることに成功した。
記事の「バラから得られる香料を原料に」というのは誤りで、正しくは「バラの花の主香気成分であるβ-フェネチルアルコールを原料に」であり、これはベンゼンとエチレンオキサイドから合成された。
他の多くの研究所はエチルベンゼンの脱水素法を研究したが、うまくいかなかったという。
1943年に海軍艦政本部にポリスチレン400kgを持ち込んだところ、代金と今後の助成金として、今(1989年の執筆時)の価値で20億円以上の金額の小切手が渡された。
急遽、同社の三国工場を全部ポリスチレン工場に切り替え、フル生産体制に入った。
終戦まで月産1トンの生産を続け、製品は海軍の命令で、住友電工と古河電工の2社に半分ずつ渡した。1944年からポリスチレンを軍のレーダー用に間に合わすことができるようになった。
ほかにも数か所で小規模な生産が行われた。
三井化学工業も1944年末から生産を行った。
しかし、敗戦まで軍の使用したポリスチレンの大部分は塩野香料製であった。
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勝村龍雄 化学者のおとぎ話
ポリスチレン物語
1937年に始まった日華事変は、41年には太平洋戦争と、その戦火を拡大していった。私は塩野香料で、湯川(泰秀 のち、阪大教授→大阪女子大学長)さんの後をうけて塩化アルミを触媒とするベンゼンと、エチレンオキサイドによるβ-フェネチルアルコール(バラの香りの主成分)の合成の研究をやっていた。
緒戦は大層景気のよかった太平洋戦争も、ガダルカナルの戦闘あたりから様子が怪しくなってきた。わが軍の得意とする夜陰に乗じての奇襲戦法が、ことごとく敵に察知され功を奏さなくなったのである。
調査の結果、電波兵器というものがアメリカ軍にあって、それが威力を発揮しているためとわかった。アメリカの電波兵器に対抗するためには、高周波の絶縁物であるポリスチレンの研究が必要だった。
国家存亡の危機ということで大学も軍に協力して戦時研究に没頭しなければならなかった。
小竹先生(阪大 小竹無二雄)から私は「今、お前が研究しているバラの香りの合成法を利用して、スチレンの合成法を考えなさい」と命令された。
いろいろな文献を調べたところ、βーフェネチルアルコールを脱水すればスチレンになると思いついた。私はその線に従って研究を進めた。
一方、戦局はますます不利になった。それもこれも敵に電波兵器があるためということで、高周波の絶縁物の完成が急がされた。
日本中の大学を始め、研究所という研究所は、ポリスチレン、ポリスチレンと血眼だった。私の研究もご他聞にもれず矢のような催促をうけた。しかし、一向に成果があがらない。他の研究所は着々と成果をあげているのではないだろうかと、よそのことが気になって仕方がない。
焦った私は「研究を打ち切りたい」と願い出て、小竹先生に「何を言うか、俺の言う通りにしておればいいのだ」とこっぴどく叱られた。
「こうときめたら右顧左眄するな。腰を落ちついてやれ。研究の途中でギブアップするなどもってのほかだ」と先生に叱られたのである。
私は一切の邪念を吹き払い、粘り強く、ああでもない、こうでもないと研究を繰り返し続けた。その結果、β-フエネチルアルコールをピユアにしておけば、脱水して高純度のスチレンモノマーが得られることがわかり、それをブロック重合することに成功した。
ついに、レーダー用高周波絶縁物のポリスチレンの試作に成功したのである。
そのことも嬉しかったが、初心忘れず粘りに粘れば必ず成功するという自信を得たことの方が、私には喜ばしかった。
1943年4月、私は海軍艦政本部にポリスチレン400キログラムを持ち込んだ。午前十時ごろにいったのだが、そのまま十二時ごろまで待たされた。係官が、人が待っているのを忘れて昼食にでもいったのかと思った。それにしては失礼な話だと私は中へ入って「いつまで待たせるのです?」と催促した。
「もすこし待ってくれ」と言われて、また小一時間たった。
二時近くなったので「まだですか」ともう一度せかすと「実は」と遅れている事情を係官から説明された。
私が持ち込んだ400キログラムのポリスチレンを、どこが先に使うか、何に使うか、ということで議論が沸騰し、それどころではないのだ、ということだった。
私はそれを聞いて、400キログラムのポリスチレンというのは、それくらい重要な意味を持つものかと認識を新たにした。
三時すぎになって責任者があらわれ、私と一緒にいった塩野香料東京営業所の課長に「これからもどんどん生産してくれ」と「指示書」と、日本銀行発行の小切手が渡された。
小切手の額面をみて課長は顔色を変えた。
それも当然だった。
額面の金額は、106万円。今の価値に換算すると20億円以上の巨額なものだったからである。
持っていったポリスチレンの代金だけでなく、助成金として先払いされたのである。
交通事故で関東甲信越地方の病院に入院していた少年が改正臓器移植法に基づき15歳未満で初めて脳死と判定され、提供された臓器の移植手術が全国5病院で行われた。
少年は交通事故による頭部外傷で12日に脳死と判定され、13日朝に臓器が摘出された。
心臓と肝臓、腎臓の移植手術は13日中に大阪大病院など3病院で、膵臓ともう一つの腎臓を同時に移植する手術は14日未明に藤田保健衛生大病院で終了した。肺は再開したばかりの仙台空港を使って東北大病院に搬送され、14日に移植手術が終了した。
いずれの患者も容体は安定しているという。
心臓 | 10代の男性 | 大阪大 |
肝臓 | 20代男性 | 北海道大 |
片方の腎臓 | 60代男性 | 東京女子医大 |
片方の腎臓と膵臓 | 30代の女性 | 藤田保健衛生大(愛知県豊明市) |
両肺 | 50代女性 | 東北大 |
心臓については、「18歳未満から提供された心臓の移植は、待機患者として登録した時点で18歳未満だった人を優先する」との厚労省の新選択基準が初めて適用された。
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2009年7月13日午後の参議院本会議で、脳死後の臓器提供の年齢制限を撤廃し、本人の意思表示がなくても家族の承諾で提供を可能とする臓器移植法改正案(A案)を賛成多数で可決、成立した。
参院では衆院から送られたA案に加え、参院で提出された修正A案、子どもの脳死臨調設置法案の3案が審議された。
従来の法律 | A案 | 修正A案 | 子どもの脳死臨調 設置法案 |
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脳死位置づけ | 提供時に限り 人の死 |
人の死 (現行法規定削除) |
現行法と同じ | |
臓器提供の条件 | 本人の書面同意と 家族の同意 |
家族の同意 本人が生前に拒否可能 |
現行法と同じ | |
提供可能年齢 | 15歳以上 | 0歳以上 | 内閣府に「子ども脳死 臨調」を設置 |
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その他 | 移植術を受ける機会は、 公平に与えられるよう配慮 |
親族への優先提供 | 提供者の家族への 精神的支援検討など 付則に明記 |
生体移植のルール検討 |
採決は、A案修正案、A案、子どもの脳死臨時調査会設置法案の順で行われた。
A案修正案は否決され、A案が可決、「子どもの脳死臨時調査会」の設置を盛り込んだ対案は採決されず廃案となった。
これにより15歳未満の子どもが家族の同意で臓器提供ができるようになった。
2009/7/13 臓器移植法改正案 成立
改正臓器移植法は2010年7月17日に施行された。(「親族への優先提供の意思表示」は2010年1月17日から施行)
改正法の施行まで年平均で6例程度だった脳死移植は、改正後の9カ月で42例まで増えた。
4月18日付の毎日新聞のコラム「風知草」(山田孝男氏)のタイトルである。
中部電力の浜岡原子力発電所を止めてもらいたい。安全基準の前提が崩れた以上、予見される危機を着実に制御する日本であるために。
(中略)
浜岡原発は静岡県御前崎市にある。その危うさは反原発派の間では常識に属する。運転中の3基のうち二つは福島と同じ沸騰水型で海岸低地に立つ。それより何より、東海地震の予想震源域の真上にある。
「原発震災」なる言葉を生み出し、かねて警鐘を鳴らしてきた地震学者の石橋克彦神戸大名誉教授(66)は、月刊誌の最新号で、浜岡震災の帰結についてこう予測している。
「最悪の場合、(中略)放射能雲が首都圏に流れ、一千万人以上が避難しなければならない。日本は首都を喪失する」「在日米軍の横田・横須賀・厚木・座間などの基地も機能を失い、国際的に大きな軍事的不均衡が生じる……」(「世界」と「中央公論」の各5月号)
これが反原発派知識人の懸念にとどまらないことを筆者は先週、思い知った。旧知の政府関係者から「浜岡は止めなくちゃダメだ。新聞で書いてくれませんか」と声をかけられたのである。原発輸出を含む新成長戦略を打ち出した内閣のブレーンのひとりが、浜岡に限っては反原発派と不安を共有し、「原発を維持するためにこそ止めるべきなのに、聞く耳をもつ人間が少ない」と慨嘆した。(後略)
既報の通り、石橋名誉教授は岩波書店の雑誌「科学」1997年10月号で、浜岡原発について述べている。
発生が懸念されるM8級東海巨大地震の想定震源断層面の真上、静岡県御前崎のやや西に、中部電力浜岡原子力発電所がある。
原発を直撃する地震動は、原子炉のS2(安全のための余裕を加えた基準地震動)を超える恐れが強い。
地震時に浜岡は1m以上隆起すると考えられるが、それに伴って地盤が傾動・変形・破壊すれば原発には致命的だろう。
津波に関して中部電力は、最大の水位上昇がおこっても敷地の地盤高(海抜6m以上)を越えることはないというが、1605年東海・南海巨大津波地震のような断層運動が併発すれば、それを越える大津波もありうる。
そのうえで、浜岡で、今回福島原発で起きたこと(敷地地盤高を越える大津波、全電源停止、水蒸気爆発、4基すべてが同時に事故、使用済み燃料貯蔵プールへの波及)が起こる可能性を述べている。
(浜岡は現在は3基だが、当時は4基あった)
2011/3/29 福島原発事故
「科学」1997年10月号記事 http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/9710kagaku.pdf
同氏は2005年2月23日の衆議院予算委員会公聴会で、浜岡原発で事故が起こった場合の首都喪失の可能性を公述している。
今世紀半ばに東海、南海地震が起こるのはほぼ確実としている。
会議録 http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/050223koujyutsu.pdf
「最悪の場合、放射能雲が首都圏に流れ、一千万人以上が避難しなければならない」場合、どこに避難するのだろうか。
西への道は地震と放射能で全て閉鎖されている。
参考
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石橋氏は全電源停止の可能性を指摘しているが、4月19日付の毎日新聞は、原発の全事業者が電源の長期喪失を想定せず、国も「考慮不要」としていたと報じている。
米スリーマイル島原発事故などを受け、原子力安全委員会が1992年に炉心溶融などシビアアクシデント対策の報告書の作成を推奨した。
これに対し各社は、電源が喪失した場合でも原子炉内に7〜8時間は注水を続けられる冷却機能を原発に備えているが、これに加え、隣接する号機の電源を融通する、非常用ディーゼル発電機を追加設置するなどの方法で電源供給能力を向上させるとした。
電源が8時間を超えるような長時間にわたり失われる事態を想定した社はなかった。
付記 冷却機能
1) 非常用復水器(1号機で起動。手動停止、再稼働を繰り返し、停止) → 冷却機能発揮せず
原子炉圧力容器内の蒸気を凝縮し、その凝縮水を原子炉圧力容器へ戻す2)原子炉隔離時冷却系(2号機で起動)
初期水源は復水貯蔵槽から、その後、最終水源には圧力制御プールからの水を炉心シュラウド外側に注水。
炉心の崩壊熱による蒸気を使用したタービンによってポンプを駆動。3)高圧注水系(3号機で原子炉隔離時冷却系と合わせて起動)→地震でパイプ破損の可能性大
初期水源は復水貯蔵槽から、その後、最終水源には圧力制御プールからの水を高圧モードで
炉心上部のノズルからシュラウド内側の燃料集合体に向けて注水。
通常は交流モーターポンプで駆動、福島では蒸気を使用したタービンによってポンプを駆動。
安全委が1990年に定めた原発の安全設計審査指針でも「長期間にわたる電源喪失は、送電線の復旧、非常用発電機の修復が期待できるため、考慮する必要はない」とされていた。
一方、原子力安全基盤機構が昨秋に公表したシミュレーションでは、福島第一原発の2〜5号機と同じタイプの沸騰水型軽水炉(出力80万kw)について、電源を喪失し、注水不能になって約1時間40分後に核燃料の溶融による落下が始まり、約3時間40分後に原子炉圧力容器が破損、約6時間50分後には格納容器も破損すると予測された。
最悪の事態が予想されながら、国や電力会社が対策を怠っていたこととなる。
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付記 「ごまめの歯ぎしり メールマガジン版ー河野太郎の国会日記」
明日(4/20)の外務委員会の質問通告です。国会改革の申し合わせの一環として公表します。
外務大臣は、浜岡原発の安全性を海外に向けてどのように説明するのか。
保安院はなぜ、浜岡原発の停止を求めないのか。
↓
今日の質疑を要約するとこんな感じです。詳しくはビデオライブラリーを見てください。
私の質問は9時から35分間です。
ビデオライブラリーはこちら。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib2.php?u_day=20110420 の外務委員会
問い 保安院はなぜ、浜岡原発の停止を求めないのか。
答え むにゃむにゃむにゃなので、安全だ。
(中略)
夜、ルクセンブルク大使公邸で、ルクセンブルクの副首相・外務大臣の歓迎夕食会が開かれ、その席上で、元通産官僚が、日本では自動車事故で毎年何千人死んでいる、原発の事故でこれまで何人死んだんだとのたまわった。それを聞いて、出席していたヨーロッパ人は、みんな僕の方を向いてウインクした。日本の原子力行政がいかにひどいかを説明するよりも、百倍、日本の原子力問題がはっきり副首相には伝わった。
Dowは4月11日、取締役会が第2四半期の1株当たり配当をそれまでの15セントから25セントに増やすことを決めたと発表した。
6月末の株主に対し、7月29日に支払う。
Dowは1912年以降、四半期ごとに配当を払っており、これは連続399回目の配当となる。
同社の損益は2008年に急落、2009年も低水準であったが、2010年決算は増収増益となった。特にPlasticsの増益の影響が大きい。
同社は2009年4月にRohm & Haasの買収を完了している。
単位:100万ドル | ||||||||||||||||||||||||
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2011/3/16 Dow、BASF、Bayer の2010年決算
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Dow は2009年第1四半期の配当を、それまでの42セントから15セントに減らした。
これは97年目で初めての減配である。
2009/2/23 Dow Chemical、史上初の減配
EUは4月13日、欧州8か国で家庭用洗剤の価格カルテルを結んだとして、Procter & Gamble とUnileverに合計315.2百万ユーロの課徴金を課した。
両社はHenkelとともに、欧州8か国で3年間にわたり価格カルテルを結んでいた。
カルテルは洗濯機の粉末洗剤に関するもので、少なくとも、2002年1月から2005年3月まで続いていた。
カルテルは業界団体の International Association for
Soaps, Detergents and Maintenance Productsが洗剤の環境負荷の改善の会議のために集まったのを機会に始まった。
会議では大型のボックスをやめ、コンパクトな包装にすることを決めたが、3社はこの変更によってどの社も競争上有利になることはないことを確認、それぞれのマーケットシェアを守り、包装の変更で値下げをしないことを決め、後に、値上げで合意した。
EUは業界団体は違法行為に関係していないとしている。
課徴金の明細は以下の通り。
社名 Leniency減額 示談制度減額 課徴金
Henkel 100% N/A
0
Procter & Gamble 50%
10% 211,200 千ユーロ
Unilever 25%
10% 104,000 千ユーロ
Henkelは2008年にEUにこのカルテルの存在を伝えたため、免責された。
2社の課徴金は調査への協力による減額に加え、事実を認めて調査を早く終結させたことで10%の減額となっている。
EU の欧州委員会は2008年6月に、企業の価格カルテルに絡んで新たに「示談制度 (settlement procedure)」の導入を決めた。
捜査の終了段階で欧州委は対象企業にカルテルの証拠を示す。
企業がカルテルへの参加を認め、責任を認めた場合、制裁金の10%を減額する。2008/7/4 EU、カルテルで示談制度導入
2011/4/22 三井石油開発子会社とAnadarko、BPを訴え
2010年4月20日夜、ルイジアナ州ベニス南東約84キロで掘削中の海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig で爆発事故が発生、大量の原油が流出した。
2010/5/4 米の原油流出、環境や漁業に影響
同年9月19日、BPは井戸の封鎖が完了したことを確認した。
2010/9/20 メキシコ湾原油流出事故ーBottom Kill 作業完了
事故を起こした鉱区Mississippi Canyon 252の権益保有者は以下の通り。
BP Exploration and Production Inc. | 65.0% (Operator) |
Anadarko Petroleum | 25.0% |
三井石油開発子会社 Moex Offshore LLC | 10.0% |
事故から1年が経ったが、現地での環境回復作業や補償手続きは続いている。
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三井石油開発の子会社のMoex Offshore LLCとAnadarko Petroleum は2011年4月19日、BPを訴えた。
両社はNew Orleansの連邦判事に対して、BPがパートナーシップ契約に違反しているとして、原油流出事故による損害や復旧費用の負担の責任がないことを確認するよう求めた。
Moex Offshoreは訴状の中で次のように述べている。
死亡や人的被害への責任、クリーンアップ費用、経済的損害、投資損失、逸失利益、流出に伴い将来課せられるかも分からない罰金など、同社に求められる予見可能の損害の原因はBPの行動によるものである。
両社は爆発や原油流出にはなんらの責任もないとし、リグの所有者のTransoceanに対しても重大な過失があるとして非難している。
これに対して、BP側は両社が持分相当の負担をすることを求めている。
2010年度Annual Report で以下の通り述べている。
Operating AgreementではMoexとAnadarkoは全てのコストと債務を持分に応じて負担することとなっている。
重大な過失か故意に基づく違法行為の場合はその社が単独で責任を持つが、BPは、Operating Agreementや法律に照らして、重大な過失も故意に基づく違法行為も犯していないと信じる。2010年12月末時点で、両社に60億ドルの請求を行っており、これは契約上、回収可能と信じている。今後発生する費用についても負担を求める。
両社はBPに重大な過失、故意に基づく違法行為があるとして支払いを留保しているが、重大な過失、故意に基づく違法行為があるかどうかに関しては法的手続きを行う。
最終的には契約に基づき、調停にかけて、請求分の支払いを求める。付記
BPは2011年4月に両社に "notice of dispute" を送付した。
契約では"notice of dispute" 送付後190日以内に解決しない場合、調停にかけることが出来る。
リグの所有者のTransoceanは、同社の重大な過失を示すような証拠は何もないとしている。
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メキシコ湾の原油流出事故を巡り、米司法省は2010年12月15日、BPと三井石油開発子会社Moexなど計9社を相手取って、損害賠償請求訴訟をルイジアナ州ニューオーリンズの連邦地裁に起こした。
2010/12/17 米司法省、BP原油流出事件で提訴
対外的には、MoexとAnadarkoも同油田のオーナーとして損害賠償責任や罰金の対象となる。
このため、直接支払いを求められるものについては、両社は一旦支払いを行ったうえで、BPに求償することとなる。
今回の訴えは、BPからの請求を拒否するとともに、外部からの両社への支払請求を避ける意味もある。
浜岡原発については 2011/4/19 「浜岡原発を止めよ」で問題点を述べた。
石橋・神戸大学名誉教授は岩波書店の雑誌「科学」1997年10月号で、こう述べている。
発生が懸念されるM8級東海巨大地震の想定震源断層面の真上、静岡県御前崎のやや西に、中部電力浜岡原子力発電所がある。
原発を直撃する地震動は、原子炉のS2(安全のための余裕を加えた基準地震動)を超える恐れが強い。
地震時に浜岡は1m以上隆起すると考えられるが、それに伴って地盤が傾動・変形・破壊すれば原発には致命的だろう。
津波に関して中部電力は、最大の水位上昇がおこっても敷地の地盤高(海抜6m以上)を越えることはないというが、1605年東海・南海巨大津波地震のような断層運動が併発すれば、それを越える大津波もありうる。
これに対し、同原発を運営する中部電力は、ホームページで以下の説明をしている。
浜岡原子力発電所の基礎岩盤=相良(さがら)層
浜岡原子力発電所の安全上重要な施設は相良層という岩盤に直接支持されています。
相良層は、新第三紀中新世後期から鮮新世前期(今から概ね数百万年から1千万年前)に堆積した泥岩・砂岩の互層で、軟岩に分類されますが、原子炉建屋の基 礎岩盤として地震時にも十分な強度を有していることを確認しています。
地盤の隆起に対する安全性
海域で発生するプレート境界地震では、地殻変動は広い範囲に及ぶため、傾斜は非常になだらかなものとなるとされています。
浜岡原子力発電所の敷地周辺においては、東海地震に伴い、1m程度隆起することが想定されますが、敷地に生じる傾斜は非常になだらかで、また、敷地内には地震に伴って動くような断層は存在しません。
したがって、地震に伴う地殻変動に対しても、原子炉施設に影響を及ぼすような傾斜や地盤の変位・変形が生じることはありません。
耐震設計の基本的な考え方
浜岡原子力発電所の敷地周辺は、過去に安政東海地震(M8.4)などのプレート境界型の巨大地震による揺れを経験しており、下図のaおよびbの領域に M8.4の地震を想定して設計をおこなっています。更に余裕を持たせ、これと同じaおよびbの領域に、これを上回るM8.5の地震を考慮して設計をおこなっているため、安政東海地震よりも規模の小さいM8.0の想定東海地震(図のaの領域)に対して十分安全性は確保されています。
注)上記では限界的な地震をM8.5としている。
東日本大震災について気象庁はマグニチュード(M)を「8.8」から「9.0」に修正した。1960年5月22日 チリ地震- M 9.5
2004年12月26日 スマトラ島沖地震 - インドネシア、アチェ(スマトラ島) - M 9.3
1964年3月28日 アラスカ地震 - M 9.2
1957年3月9日 アリューシャン諸島で地震 - M 9.1
1952年11月4日 カムチャッカ地震 - M 9.0
東北電力は、女川原発1〜3号機原子炉建屋で地震の揺れが耐震設計の基準値を上回ったと発表。
津波に対する安全性
痕跡高などの文献調査や数値シミュレーションの結果、敷地付近の津波の高さは、満潮を考慮しても、最大でT.P.+6m程度です。
これに対して、敷地の高さは津波の高さ以上のT.P.+6〜8mであり、津波に対する安全性を確保しています。
さらに、敷地前面には、高さがT.P.+10〜15m、幅が約60〜80mの砂丘が存在してます。また、安全上重要な施設を収容している原子炉建屋などの出入口の扉は防水構造にしています。
これらのことから、浜岡原子力発電所は、津波に対する安全性を十分に確保しています。
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中部電力は今回の原発の被災状況を踏まえた浜岡原子力発電所の緊急安全対策について、経済産業大臣からの指示に基づきとりまとめ、4月20日、原子力安全・保安院へ報告書を提出した。
この中には砂丘と原子炉建屋の間に15メートルの防波壁を設置することが含まれている。(当初案は12メートル)
4月5日に地盤調査を開始、完成は2013年度中となっている。同社は知事に対し、遠州灘は遠浅のため、東海、東南海、南海地震が同時に起きた場合でも津波は8メートル以内で収まるとの想定を示しつつ、福島第1原発を襲った津波は15メートル程度だったと説明し、理解を求めた。
注 東京電力はこれまでホームページに、以下の通り、原子力発電所の「津波への対策」を載せていた。
(4月13日に削除した。)
津波への対策 原子力発電所では、敷地周辺で過去に発生した津波の記録を十分調査するとともに、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認しています。また、発電所敷地の高さに余裕を持たせるなどの様々な安全対策を講じています。
海江田経済産業相は3月29日の参院予算委で、福島第一原発の設置許可時に想定していた津波が 3.122メートルだったが、実際の津波は14メートル程度だったと説明した。
女川町を襲った津波は17メートルクラスだったとする調査結果がある。
敷地標高が14.8メートルの女川原発も2号機の原子炉建屋の地下3階が浸水した。付記
東京電力は2006年の米国での原子力工学の国際会議で、福島第一原発に、設計の想定を超える津波が来る確率を「50年以内に約10%」と予測し、発表していた。
今後50年以内にこの想定を超える確率が約10%あり、10メートルを超える確率も約1%弱としていた。
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浜岡原発については、2002年4月に市民団体が運転差し止めの仮停止申請を申し立て、翌03年7月、訴訟に踏み切った。2007年10月、静岡地裁は、「中電の想定する東海地震は科学的根拠に基づいており、運転によって原告らの生命、身体が侵害される具体的危険性は認められない」と原告の請求を棄却した。
斑目春樹原子力安全委員長は、浜岡原発訴訟の中部電力側の証人として証言、複数の非常用発電機が起動しない可能性を問われ、以下の通り答えた。
「非常用ディーゼルが二台同時に壊れて、いろいろな問題が起こるためには、そのほかにもあれも起こる、これも起こる、あれも起こる、これも起こると、仮定の上に何個も重ねて初めて大事故に至るわけです。[・・・]何でもかんでも、これも可能性ちょっとある、これはちょっと可能性がある、そういうものを全部組み合わせていったら、ものなんて絶対造れません。だからどっかでは割り切るんです。」
事故後の3月22日の参院予算委員会で社民党の福島瑞穂党首がこの発言を追及したのに対し、班目氏は「割り切らなければ(原発の)設計ができないことは事実。割り切り方が正しくなかったことも、十分反省している」と述べた。
現在、東京高裁で係争中。
Brazilのルセフ大統領、Russiaのメドベージェフ大統領、Indiaのシン首相、Chinaの胡錦濤国家主席の新興4カ国(BRICs)にSouth Africaのズマ大統領を新たに加えた新興5カ国(BRICS)の首脳会議が4月14日に中国海南省の三亜市で開かれ、「三亜宣言」を採択し閉幕した。
新BRICSは、世界の人口の42%、陸地面積の30%、2010年GDPの18%、2010年貿易額の15%を占める。
三亜宣言は、福島原発事故を念頭に、「原発の安全基準を厳格に順守しなければならない」としつつ、「原子力エネルギーは各国の未来の中で重要な位置を占めている。平和目的の原子力エネルギー協力を進めるべきだ」と表明した。
リビア問題について「平和的手段と対話によって解決すべき」としてNATOへの反対姿勢を鮮明にし、南アのズマ大統領が支持するアフリカ連合(AU)停戦案に各国首脳が賛同した。
欧米が影響力をもつアフリカ経済を、BRICSをテコに中国に引き寄せる考え。
宣言はまた、安定的で信頼性の高い国際通貨システムの構築を求めるとともに、国際金融体制に世界経済の変化を反映させ、新興国や発展途上国の発言権と代表権を強める必要性を強調した。
次回の首脳会議は2012年にインドで開催する予定。
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新興4か国の総称の“BRICs”は投資銀行Goldman SachsのエコノミストのJim O'Neillが書いた2001年11月30日の投資家向けレポート“Building Better Global Economic BRICs”で初めて用いられ、世界中に広まった。
BRIC四か国の第一回の首脳会議は2009年にロシアで開催された。
主に通貨問題が話し合われ、新興市場と発展途上国の国際金融機関における発言権と代表性を高めることを求めた。
国際貿易と投資環境の改善に努力するようアピールし、貿易保護主義に反対の姿勢を示した。
エネルギー問題では生産国、消費国の協調と協力を進め、エネルギー資源供給の多元化を進めること、国連改革についてはグローバルな挑戦に効率的に対応できるよう行うべきだとの考えを明記した。
第二回首脳会議は2010年4月にブラジルの首都ブラジリアで開催された。
経済発展と通商、IMF・世銀改革、農業協力、貧困との闘い、エネルギー、気候変動、テロ対策、文化・スポーツ交流について共通認識と相互協力を確認し、33項目の声明を発表した。
新たな世界金融危機の防止のため、新興国の発言権を強めること、世界金融のシステムを多様化する改革の必要性を確認した。
本年の第三回会議に先立ち、昨年12月、南アフリカをグループに正式加入させることで合意した。
中国外務省の報道官は記者会見で、「BRICsの議長当番国として、ロシア、インド、ブラジルと協議し、南アを正式メンバーとして機構に加入させることで合意した」と中国主導をアピールした。
「南アの加入はBRICSの発展に有利に働き、新興市場国家の協力を促進すると信じている」と述べ、新興5カ国の協力関係を「調和」「安定」と強調した。
経済分野での“中国脅威論”が膨らむことを牽制している。南アの経済規模はロシアの4分の1にすぎない。GDPは世界で28位である。
他の新興国を差し置いて新たに南アを加えた中国の思惑は、エネルギー資源獲得を狙ったアフリカとの関係再構築にあるとされる。北アフリカ・中東政変が、これまでの中国のアフリカ戦略を狂わせた。
各国の2010年のGDP(単位:10億ドル)
. はG7、これにロシアを加えてG8となった。
. はBRICS、 ○はG20
1位 アメリカ ○ 14,658 2位 中国 ○ 5,878 3位 日本 ○ 5,459 EU ○ 4位 ドイツ ○ 3,316 5位 フランス ○ 2,583 6位 イギリス ○ 2,247 7位 ブラジル ○ 2,090 8位 イタリア ○ 2,055 9位 カナダ ○ 1,574 10位 インド ○ 1,538 11位 ロシア ○ 1,465 12位 スペイン 1,410 13位 オーストラリア ○ 1,236 14位 メキシコ ○ 1,039 15位 韓国 ○ 1,007 16位 オランダ 783 17位 トルコ ○ 742 18位 インドネシア ○ 707 19位 スイス 524 20位 ポーランド 469 21位 ベルギー 466 22位 スウェーデン 456 23位 サウジアラビア ○ 444 24位 台湾 431 25位 ノルウェー 414 26位 オーストリア 377 27位 アルゼンチン ○ 370 28位 南アフリカ ○ 357
中国を除く4カ国の共通項は新興国であるということと、いずれも中国との経済関係を深めているという点しかなく、「中国が主役で4カ国が脇役の政治ドラマ」で、実際は対中警戒感を隠さぬロシアやインドとの“同床異夢”でもあるとされる。
BPは4月20日、掘削業者のうちの2社、Transocean とCameron International に対し、原油流出事故のコストと損害賠償を負担するよう、訴訟を行った。
Transocean はDeepwater Horizon oil platformの所有者で、Haliburton がセメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)を行い、Cameron International は故障した噴出防止装置( blow-out preventer)のメーカーである。
BPによれば、 Transoceanは井戸の掘削に当り、基準を満たさない機器を使用した。White Houseの原油流出委員会の調査では、Transoceanは原油が地表に噴出しているという致命的なサインを見逃し、井戸を閉鎖する適切な手を打てなかったとしており、BPはこれを理由にしている。
Coast Guardの報告では、Transoceanの電気設備、ガスアラーム、自動シャットダウンシステムのメンテナンスの不備、不十分な訓練が事故の原因で、Transoceanには有効な安全のマネージメントとカルチャーがないとしている。
これに対し、TransoceanはCoast Guardの報告に反発した。
Coast Guard は事故の7か月前にDeepwater Horizon をチェックし、米国と国際的な安全基準に完全に合格していると証明したと述べ、記録を確認してほしいとしている。
BPに対しては、契約ではBPはコントラクターの不注意やミスによって起こった如何なる損害、費用、損害賠償要求、ペナルティ、公害訴訟などに対して責任を持つとの条項があるとして、BPを逆に訴えた。
更に、BPが致命的な欠陥のある井戸設計、不十分な管理、重要な作業計画での重なる変更などにより、災厄の土台を作ったとしている。
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Cameron に対しては、BPは噴出防止装置のメンテナンスと改良の不備を指摘している。本来、これは井戸からの原油流出を防止するフェイルセーフ機構であるはずだとしている。
これに対し、Cameronは、作業員がこれを作動させる以前に原油とガスが装置を通ったという理由で、BPを逆訴訟した。
BPはまた、Halliburtonに対しても、 不適切かつ不注意に作業を行い、これが爆発の原因になったとして、民事訴訟を行った。
これに対し、Halliburtonは、爆発は他の関係者により起こったもので、同社の行動によるものではないとして、BP、Transoceanと他のコントラクターを訴えた。
既報の通り、Anadarkoと三井石油開発はNew Orleansの連邦判事に対して、BPがパートナーシップ契約に違反しているとして、原油流出事故による損害や復旧費用の負担の責任がないことを確認するよう求めた。
泥仕合の様相を示してきたが、法律専門家は、それぞれの企業イメージの悪化を避けるため、最終的には裁判所外での解決を図るだろうとみている。
2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表
Dowは4月21日、エチレンとプロピレンの能力増強を発表した。
米国北東部のMarcellusや南テキサスのEagle Ford などのシェールガスから価格面で競争力のあるエタンとプロパンを確保する目処がついたとしている。
シェールガス掘削により米国の天然ガス供給は増加しており、価格は石油と比較して低下している。
MarcellusやEagle Ford のシェールガスから長期契約でエタンとプロパンの供給を受けることにより、同社のPerformance Plastics、Performance Products、Advanced Materials などの事業の競争力を強化する。
付記
天然ガス価格の優位性についてコメントをいただいた。
Georgia Gulf は2011年2月の株主説明会資料で、米国の塩ビ事業の特長の一つに天然ガスの優位性を挙げている。
・シェールガスによる天然ガス市場の拡大
・北米の天然ガスの競争力
・少なくともこれは2014年までは続く
−−−
具体的な計画は以下の通りで、同社のエチレン新設は1995年以来。
エチレン能力の増加を230万トン、プロピレン能力の増加を90万トンとしている。
エチレン
・停止していたルイジアナ州St. Charles
のエチレンクラッカーを2012年末までに再開
・ルイジアナ州Plaquemineのエチレンクラッカーのエタン原料のフレキシビリティの改善(2014年)
・テキサス州のエチレンクラッカーのエタン原料のフレキシビリティの改善(2016年)
・メキシコ湾岸に新しいワールドスケールのエチレン設備の建設(2017年)
プロピレン
・テキサス州に新しいワールドスケールのプロピレン製造設備の建設(2015年スタート)
・自社の新技術を使って、プロパンからプロピレンを製造する計画の検討(2018年製造開始)
付記 2012/3/12 Dow、ワールドスケールのプロピレン建設を決定
ダウは既に Eagle Fordのシェールガスをもとにするエタンとプロパンの購入契約を締結しており、追加の契約を交渉している。
更に、Marcellusシェールガスを開発しているRange
Resources Corporationとの間で、ペンシルバニア州南西部のシェールガスからのエタンをダウの既存のルイジアナ州のコンプレックスに供給する長期契約を締結する旨の覚書を結んだ。
このほか、テキサスでのJVによる天然ガス分留設備建設なども検討している。
「北米最大のプロピレンのユーザーとして、プロパンからのプロピレン製造に投資したい。また、北米最大のエチレンメーカーとして、既存設備でシェールガスからのエタンの使用を更に増加させ、原料の多様性を確保したい」としている。
Range Resources Corporation
は独立系の天然ガス会社で、2004年からMarcellus
Shaleを開発し、同Shaleの南西部で支配的地位を占めている。同社は現在、アパラチア地区で最大の液体天然ガスの生産者。
付記
NOVA Chemicalsは5月2日、Range Resourcesとの間でMarcellus Shale Basinのエタンの長期購入契約を締結したと発表した。Ontario州Sarniaにパイプラインで輸送する。
同社は9月6日、Corunnaのクラッカーの原料を100% NGLに転換するため、3つの重要契約を締結したと発表した。
・Range Resourcesとの間でMarcellus Shale Basin のエタン購入長期契約
・Caiman Energy, LLCとの間でMarcellus Shale Basin のエタン購入長期契約
・Sunoco Pipeline L.P.との間でMarcellus Shale BasinからSarniaまでのエタン輸送サービス契約
ーーー
Dowは2006年3月に、基礎部門の強化をJV化を通して行う方針を明らかにした。
当時のDowの事業のうち、基礎部門の比率が高いが(プラスチックが売上の24%、ケミカルズが11%で合計35%)、原料高騰、値下がりにより収益性が低下していた。
このため、Dow はJV化による“Asset light”
strategy を進めた。基礎部門での海外での新規事業を他社とのJVで実施するだけでなく、既存事業を分離して他社とのJVにしようとするものである。
高付加価値で多角化した化学品・先進材料会社という「明日のダウ」に変貌させ、機能製品と先進材料で世界の主導的地位を占める米国最大のスペシャルティケミカル会社にするとし、Rohm & Haasを買収した。
GEやHuntsmanが、原料高騰の影響を受けやすい汎用製品事業を売却するのに対し、DowはJV化により、関係を残しながら、負担減を図ろうとした。また、JV相手の力の利用も考えた。
Kuwait Petroleum Corporation と50/50JVのMEGlobalを設立してダウの設備を出したのをはじめに、最近では、昨年にスタイロン事業を売却、三井物産と折半出資でテキサス州フリーポートで電解事業を行う合弁を設立している。
Dowは2007年12月に、クウェート国営石化会社 Petrochemical Industries Company (PIC) との間で、PE、PP、PC、エチレンアミン、エタノールアミンを製造販売するグローバルな石化JV(50/50)を設立すると発表した。
しかし、2008年末にこれは一転して破談となった。(事業のうち、PCはスタイロン事業の一部として売却)
これに対し、Dowは「変身戦略」を推し進めるとし、対応策を発表している。
2009/1/7 ダウ、「変身戦略」を続行
ここにきて、Dowの戦略が見直しされつつある。
2010年11月にLiveris CEOは記者会見で、溶液重合やメタロセン触媒などで製品の差別化が図れる余地の大きい直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)に関して、現状維持で運営するケースも示唆した。
今回の計画で基礎原料のエチレン、プロピレンを強化し、それによって、Performance Plastics、Performance Products、Advanced Materials などの事業の競争力を強化する。
2010年決算ではPlasticsの利益の伸びが大きい。
同社は2009年1月には、グローバル石化JVの実現に向け、PICに代わる新しいパートナーを探すとしていたが、この方針は変更される可能性がある。
2011/4/27 韓国ロッテグループの湖南石油化学、インドネシアでエチレンプラント建設へ
インドネシアのBOPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)メーカーのPT Titan Kimia Nusantaraは40億ドルを投じてエチレンプラントを建設する計画を明らかにした。
社長によると、韓国の湖南石油化学がファイナンスを行う。建設費の70%は湖南石油化学が出し、残りは韓国輸出入銀行が融資する。
本年末までにFSを完了し、建設に3-4年かける。
エチレンプラントはMerakにあるBOPPプラントの近くに建設する予定。
PT Titan Kimia Nusantaraは旧称 PT Fatrapolindo Nusa Industriで、2001年にマレーシアのTitanが買収した。
PT Titan
Kimiaは子会社にPT. TITAN
Petrokimia Nusantaraを持つ。
これは旧称PENIで、BPが75%、三井物産と住友商事が各12.5%を持っていた。
Titanが2006年にPENIを買収し、改称した。
現在のHDPE/LLDPEの能力は年産45万トンとなっている。
2010年、湖南石油化学がマレーシアのTitanを買収、この結果、湖南石油化学がPT Titan Kimia NusantaraとPT. TITAN Petrokimiaのオーナーになっている。
付記
インドネシア | マレーシア | ||
(BOPPメーカー) | (HDPE/LLDPEメーカー) | (エチレンコンプレックス) | |
1987 | PT Indofatra Plastik Industri 設立 | ||
1988 | PT Fatrapolindo Nusa Industri と改称 | ||
1989 | 台湾のT.T. Chao、Titan Chemicals を設立 | ||
1991 | P.T. PENI設立 | ||
2001 | マレーシアのTitan が買収、 PT Titan Kimia Nusantara Tbkに改称 |
||
2003 | Indika Group、P.T. PENIを買収 | ||
2006 | Titan Chemicals、P.T.
PENIを買収、 PT. TITAN Petrokimia Nusantara と改称 (PT Titan Kimia の子会社に) |
||
2010 | 右により、湖南石油化学が PT Titan Kimia、PT. TITAN Petrokimiaのオーナーに |
湖南石油化学、Titan Chemicalsを買収 |
韓国ロッテグループの重光昭夫(辛東彬)会長は本年2月に、30〜50億ドルを投じ、インドネシアに石油化学工場を建設すると表明した。
2011/3/2 韓国ロッテ、インドネシアの石油化学に進出
2011/4/28 旭化成、サウジでのアクリロニトリル事業化のため合弁会社設立
旭化成は4月27日、サウジにおけるアクリロニトリル(AN)の共同事業化の詳細検討を行うため、SABIC及び三菱商事と、合弁会社の設立を決定したと発表した。
旭化成は2007年4月の経営説明会で、2012年頃に中東でアクリロニトリルを生産する方針を明らかにした。
世界No.1を目指すAN
v 世界No.2 →No.1を目指す
-生産能力:年産80万トン、シェア14%
v 世界初のプロパン法を開発
-韓国で実証運転開始(07年1月)
v タイ国PTT社とAN、MMA、アクリル樹脂の共同事業化を基本合意(06年5月)
-ANはプロパン法20万トンのプラント建設(09年末稼動)
v 中東での事業化検討開始
2007/4/10 旭化成、中東でのアクリロニトリル事業化を検討
その後、コスト競争力の高い生産拠点としてサウジアラビアにおけるANの事業化に関し調査、交渉を進めてきたが、今般、SABIC及び三菱商事と合弁会社を設立し、ANの共同事業化実現に向けた具体的な準備を進めることに合意した。
今後、製造設備の基本設計に着手するとともに、詳細な事業計画の作成を進め、設備投資の最終的な意思決定は2012年を目指す。
合弁会社概要は以下の通り。
(1) | 会社名 | : | (仮称) Saudi Japanese
Acrylonitrile Company 通称:Shrouq(シュルーク=アラビア語で"朝日"の意味) |
(2) | 本社 | : | サウジアラビア王国アルジュベール市 |
(3) | 株主 | : | SABIC 50%、旭化成ケミカルズ・三菱商事 50% |
(4) | 設立資本金 | : | 40百万サウジリヤル(約10億円) |
(5) | 計画生産能力 | : | プロピレン法AN
20万トン/年、青化ソーダ 4万トン/年※ ※AN製造工程から副生する青酸を原料に、青化ソーダ製造プラントを併設 |
これが完成すれば、旭化成グループ全体のAN生産能力は約140万トン/年規模となり、Ineos Nitrilesを抜いて世界No.1となる予定。
千トン | 製法 | 備考 | ||
水島 | 300 | 既存法 | ||
川崎 | 150 | 既存法 | ||
東西石油化学 韓国・蔚山 |
@ | (60) | 既存法 | B完成で停止 |
A | 70 | プロパン法 | 2007/1 改造してプロパン法実証プラントに | |
B | 230 | 既存法 | 2003/3 200千トン完成、その後増強 | |
C | 245 | プロパン法 | 2011/1 発表 2013/1 商業運転開始予定 | |
計 | (545) | |||
PTT
Asahi Chemical タイ・マプタプット |
200 | プロパン法 | 2011/央 稼働予定 (旭化成 48.5%、PTT 48.5%、丸紅 3.0%) |
|
サウジ計画 | 200 | プロピレン法 | SABIC 50% + 三菱商事 | |
合計 | 1,395 |
ーーー
サウジでは2006年11月に、Saudi International Petrochemical Company (Sipchem)が第三期計画としてオレフィンと誘導品計画を発表したが、その中に、エチレン(1,000千トン)、HDPE、LDPE、PPなどとともに、ANM(200千トン)、m-MMA(250千トン)、Carbon fiberなどが含まれていた。
その後、Sipchemはエチレン計画を断念した。
2009年にSABICとSipchem は、それぞれの新計画の実施に当たり、互いに既存の余剰能力を出して協力する覚書に締結した。
SABICの計画(投資額 32億ドル)には下記の計画が含まれた。
MMA | 250千トン |
PMMA | 30千トン |
アクリロニトリル | 200千トン |
ポリアクリロニトリル | 50千トン |
ポリアセタール | 50千トン |
カーボンファイバー | 3千トン |
青酸ソーダ | 40千トン |
2009/5/11 サウジのSABICとSipchem、新プロジェクトで相互協力の覚書
三菱レイヨンは2009年8月、SABICとの業務提携を発表した。
50%ずつの出資でJVを設立し、ルーサイトの新エチレン法によるMMAモノマー(25万トン)、三菱レイヨン技術によるPMMA(3万トン)を建設し、2013年の稼動開始を目指す。2009/8/7 三菱レイヨン、サウジでMMA
今回の計画はSABICと旭化成の計画を両社のJVで実施するもの。
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INEOS Nitriles はINEOSが2005年にInnovene(旧
BP)から事業を買収した。
その後、BASFの工場を買収し、現在の能力は1,284千トンとなっている。
千トン | |||
Germany | Köln | 320 | 元はErdole Chemie 2001年に Innovene が他の50%を買収し100%とした。 |
UK | Seal Sands | 230 | 2008年INEOS NitrilesがBASFの工場を買収 |
USA | Lima, Ohio | 190 | 1960年スタート |
Green Lake, Texas | 544 | 1981年スタート、2008年秋に増設 | |
合計 | 1,284 |
* 1957年にSohio 法を開発したSohio(Standard Oil of Ohio)はBPの前身である。
2011/4/28 2011年第1四半期の国産ナフサ基準価格 52,400円/klに
3月のナフサ輸入価格は51,929円/klとなった。
この結果、第1四半期の輸入価格平均は50,384円/klとなり、国産ナフサ基準価格は52,400円/klとなった。
2008年第3四半期は85,800円で過去最高を記録したが(第4四半期に52,000円に下がった)、今回はこれ以降の最高となった。
ナフサの国際価格は高騰を続けており、第2四半期は60,000円/kl程度になるとの見方が強い。
ナフサ輸入価格の推移は以下の通り(単位:円/kl)
国産ナフサ基準価格は、輸入価格の四半期平均に2,000円を加算(10円単位を四捨五入)
輸入価格 | 平均価格 | 基準価格 | |
'10/1 | 45,468 | 45,702 | 47,700 |
2 | 46,360 | ||
3 | 45,249 | ||
4 | 47,517 | 47,655 | 49,700 |
5 | 49,142 | ||
6 | 46,421 | ||
7 | 42,352 | 40,705 | 42,700 |
8 | 39,972 | ||
9 | 39,715 | ||
10 | 40,712 | 43,100 | 45,100 |
11 | 42,222 | ||
12 | 46,634 | ||
'11/1 | 49,202 | 50,384 | 52,400 |
2 | 50,257 | ||
3 | 51,929 |
ナフサのスポット価格の状況は下記の通りで、昨年下期から上昇を続け、4月27日は1085ドル/トンとなった。
2011/4/29 住友化学、米国子会社で微生物農薬原体の製造工場建設
住友化学は4月26日、米国の農薬子会社Valent U.S.A. の100%子会社のValent BioSciences が微生物農薬原体の製造工場をアイオワ州Osage市に建設することを決定したと発表した。
投資額は約150百万ドルで、2014年中の商業運転開始を予定している。
Valent BioSciences は、住友化学が米国大手医薬品会社のAbbott
Laboratoriesの微生物農薬関連事業を買収し、2000年に設立した。
事業の歴史は50年に及んでいる。1962年に植物成長調整剤ProGibbを上市、1972年には農業用微生物殺虫剤DiPel
を上市した。
現在、微生物殺虫剤、微生物線虫剤、植物成長調整剤を含む微生物農薬・防疫薬の分野における世界のリーディングカンパニーとして、現在、世界90ヶ国以上で事業を展開している。
住友化学は2001年に、フランスのAventis Crop Scienceの生活環境事業部門Aventis Envronmental Scienceから家庭用殺虫剤関連事業を買収したが、米国とカナダの事業はValent BioSciences が継承した。
Valent BioSciencesは2003年3月には、Certis USAからPublic health分野用のBt剤(天敵微生物を利用した生物農薬)Teknar(R)事業を買収し、同時に、Bt剤Thuricide(R)の森林分野における独占販売権のライセンスを受けている。
Certis USAは旧称 Thermo Trilogyで、Bt剤分野で世界第二位のメーカー。
Bt剤の他、ニーム油、土壌線虫、フェロモンやウィルスを使用した天然農薬の製造・販売を行っている。
2001年に三井物産が大手計測機器メーカーのThermo Electronから買収した。
参考 2010/8/28 三井物産、アイルランドの農薬製造・販売会社を買収
Valent BioSciences はこれまで、Abbott
Laboratoriesから独占的に原体の供給を受けてきたが、契約期間終了を見据え(Abbottは工場閉鎖を決めた)、原体製造工場を建設することとした。
新工場は、既存の微生物農薬事業の拡大のみならず、現在開発中の砂漠化や温暖化等に対応するための環境ストレス耐性付与剤など、新規分野の製品の生産にも寄与することを期待している。
ーーー
住友化学は、世界で唯一、化学農薬と生物農薬の両方の本格的事業ユニットを持つ農薬メーカー。
米国拠点のValent
U.S.A. は1988年に、住友化学とChevron Chemicalの50/50JVとして設立された。
Chevronは当時、農薬に力を入れており、強力な販売網を有し、開発普及力には定評があった。住友化学は同社に殺虫剤、殺菌剤、植物成長調整剤の3剤の開発権を供与していた。
その後、Chevron Chemicalがリストラクチャリングの一環として農薬事業からの撤退を表明、住友化学に対して買い取りの打診を行った。交渉の結果、1991年にValent U.S.A. は住友化学の100%子会社となった。
住友化学はその以前の1975年に、殺虫剤スミチオンの製造のため、Stauffer Chemical との間でJVのMount Pleasant Chemicalを設立しているが、1983年に解散した。
これは、日本では毒性の高いパラチオンが早くに禁止されスミチオンに置き換わったのに対し、米国では1990年代初めまで使用が認められたため、コストの高いスミチオンが売れなかったのが主な理由である。
住友化学は、スミチオンの場合、米国での開発(販売分野の選択〜登録取得)と販売はStaufferに委ねた。
同社が世界に先駆けて発明した農業用ピレスロイドのスミサイジンも米国での開発・販売はShellに委ねていた。
同社は、本格的に米国で販売するには自ら開発・販売を行う必要があると考え、実績のあるChevron とのJVでValentを設立した。なお、Staufferは1985年にVaselineなどの消費財のメーカーのChesebrough-Pondに買収されたが、Chesebrough-Pondは1986年にUnileverに買収された。
UnileverはStaufferには関心なく、1987年にICIに売却した。
ICIの農薬事業はその後分離してZenecaとなり、スウェーデンのAstraと合併してAstraZenecaに、更にNovartisの農薬部門と統合してSyngentaとなっている。
ICIはStauffer買収後、StaufferのSpecialty Chemicals部門をAkzoに売却したが、ICI本体は石油化学等の事業を次々に売却した後、2007年にAkzoに買収され、消滅した。
国家発展改革委員会(NDRC)は4月12日、石炭化学産業を更に規制する通達(2011年635号)を発表した。
石炭化学にはいくつかの問題があり、規制が必要として、4つの点を挙げている。
1. 新規参入の規制
特にコークスとカーバイドへの新規参入が制限され、旧式設備の廃棄が求められる。
アンモニアとメタノールについては、特定地域では、新規の大規模設備の計画には、小規模プラントの停止が必要。
2. | 石炭原料の一定規模以下のプロジェクトの禁止 | |
Coal to Olefins | オレフィン年産50万トン以下のもの | |
Coal to Methanol | メタノール年産100万トン以下のもの | |
Coal to DME | DME年産100万トン以下のもの | |
Coal to Liquids | 液化燃料年産100万トン以下のもの | |
Coal to SNG | SNG(代替天然ガス)年産20億m3以下のもの | |
Coal to MEG | MEG年産20万トン以下のもの |
上記能力以上の計画も(地方政府でなく)NDRCによる承認を得る必要がある。
3.資源割り当ての強化、省エネと環境アセスメントの強化
4.行政責任の明確化
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中国では石油価格の高騰を受け、石炭液化計画や、石炭からのメタノール、オレフィン生産などの計画が相次いでいるが、NDRCは早くも2006年7月に石炭化学産業を規制する通達を発表している。
年間300万トン未満の石炭液化計画、年間100万トン未満の石炭からのメタノール又はDMT生産計画、年間60万トン未満の石炭からのオレフィン生産計画を承認しないとした。
更に2009年8月には新産業分野を含め過剰能力について懸念を表し、過剰能力や不必要なプロジェクトなどの問題について行政指導を進めることを決めた。
政府の4兆元の景気刺激策で新エネルギーや環境産業が重点投資分野に指定され、全国各地で投資が増えたためで、特に、石炭化学と、鉄鋼、セメント、板ガラス、ポリシリコン、風力発電分野で指導を強化するとした。
NDRCによると、2009年の規制で石炭化学の過度な拡大を抑えているが、地方政府によってはこれを無視し、勝手に事業を進めており、過度な無節操な拡大は石炭の需給を混乱させ、エネルギー消費抑制を困難にするとしている。
業界筋によると、石炭化学の技術の多くは未完成で、中国のほとんどの大規模計画は商業生産に入れていない。
公害問題と技術ハードルが問題で、いくつかのプラントは完成後もスタートアップが出来ないでいるという。
現在のところ、Coal-to-Methanolだけが相対的に成熟した技術で、オレフィンやMEGは操業が安定せず、品質問題も起こっている。
神華包頭石炭化学の年産60万トンのMethanol-to-Olefinsプラントは未だに商業生産に入れていないという。
2010/7/23 神華包頭石炭化学、秋に中国最初の石炭からのポリオレフィン生産をスタート
加えて、現在の中国の石炭化学は環境面のリスクを抱えており、中国の温室効果ガス削減目標を達成困難にしかねない。
NDRCの今回の通達は、これらを勘案したもので、最低能力を決めるとともに、地方政府の認可権を剥奪し、NDRCの認可を必要とするよう変更した。従来は一定規模以下のものは地方政府に認可権があった。
今回の通達は、石炭資源の効率的な使用と、メタノール過剰能力の抑制を狙っている。
中国のメタノールは、工場が能力の半分程度で稼働しているにもかかわらず、供給過剰となっている。今や石炭からのメタノール生産は赤字となっている。
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