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2012/4/2 ユーロ圏、金融安全網 8,000億ユーロに拡大で合意 

EU27カ国は3月30日、コペンハーゲンでユーロ圏財務相会合を開き、債務危機に対応するための安全網全体の規模(2013年7月以降)を現在の案の5,000億ユーロから8,000億ユーロ(約88兆円)に拡大することで合意した。

但し、8,000億ユーロの内訳は今年7月に発足する欧州版IMFの欧州安定メカニズム(ESM)の5,000億ユーロに、既に実施済み又は実施予定のものを加えたもので、不十分との声も上がっている。

ESMは資本金を2014年上半期までに5回分割で払い込むため、ESMの融資能力はそれに合わせて増加、最終払込時点で5,000億ユーロとなる。
2013年6月末まではEFSFはESMと併存し、総額5,000億ユーロを確保する範囲でEFSFの未消化分も利用できる。

EUは当初、ESM/EFSFの融資能力を、合わせて 9,400億ユーロ(うちEFSFのコミット済みが約1,900億ユーロのため新規資金は7,500億ユーロ)に引き上げることを提案していたが、域内で最大の経済規模を持つドイツが反対した。 

なお、ユーロ圏諸国はIMFに1,500億ユーロを拠出する。

2011年11月のG20首脳会合で、IMFが十分な資金を持つ必要で一致した。
IMFは欧州への支援を念頭に最大5000億ドルの財源調達を目指しており、このうちEUが2,600億ドル規模を拠出する方針であった。英国など非ユーロ圏EUの拠出は未定。

EU議長国のデンマークのベステエア財務相は、会議後の記者会見で、「ヨーロッパは宿題を果たした。今度はIMFの基盤を拡充する時だ」と述べ、G20の対応を促した。

IMFは5000億ドル規模の追加融資財源の調達に向けて加盟国と本格協議に入る。4月下旬ワシントンで開く春季総会で資金増強策の大枠を決定する。
議会の反対が強い米国は支援を見送る構えで、日本や中国の協力が焦点となる。日本は「欧州の努力を前提に協力する準備はある」との姿勢を示していた。

付記

安住財務相は4月17日の閣議後記者会見で、日本政府として600億ドルをIMFに拠出する方針を表明した。

Lehmanショック直後の2009年にIMFに1000億ドルを拠出したが、500億ドルが年内にも返済される見込みで、これに外貨準備(2012年3月末 1兆2887億ドル)から100億ドルを上積みする。

ーーー

EU首脳会議は2012年3月2日、財政規律の強化に向けた新条約に各国が署名したが、欧州債務危機対策の一環としての金融安全網の再強化については、ドイツの慎重論に配慮し、3月末までに結論を出すことで合意した。

基本構想は以下の通りで、IMF資金枠を合わせ、1兆9000億ドルを準備する。
本来、この会議で決定する予定であったが、ドイツの慎重論に配慮し、決定を3月末まで延ばした。

  2012年7月ESM発足以降
当初案 目標
欧州基金 ESM   5000億ユーロ 統合、上限撤廃
    7500億ユーロ
     (約1兆ドル)
EFSFの残 打ち切り 
    (2500億ユーロ)
IMF資金枠 現行   約 4000億ドル     +5000億ドル
 (うちEU 2600億ドル)
合計       1兆9000億ドル

2012/3/7 欧州金融危機への今後の対応 

今回の「8,000億ユーロ規模の安全網」は、実質的には当初案のままである。

ーーー

今回の8,000億ユーロ(2013年7月EFSF解散後)の内訳は以下の通り。

    金額
(億ユーロ)
 
欧州安定メカニズム
(ESM)
新規 5,000  
ギリシャ向け第一次支援

 

EU各国による支援で、
EUは調整役

 

 

 

 

実施済 529
  ユーロ圏 IMF 合計
支援総額 800 300 1,100
調整 -27   -27
実施済 529 200 729
残額 244 100 344

調整:
不参加のスロバキア、
問題化以降のアイルランドと
ポルトガルの分を控除

欧州金融安定化ファシリティ
(EFSF)

 

枠   4,400
既実施 1,917
残   2,483

残から下記が控除される
可能性がある。
 ギリシャ債務交換 300
 ギリシャ一次残  244

 

既実施・
  コミット
ギリシャ二次 1,480 ギリシャの銀行の資本[email protected]
新規融資 1,000

他に民間保有のギリシャ債務交換 300、
一次支援残高 244 あり

IMFは280の融資実施承認
(即時 16.5)

アイルランド 177 2010/11 総額 850
 アイルランド年金基金 175
 EFSF 177
 EFSM 225
 英、デンマーク、スウェーデン 48
 IMF 225
ポルトガル 260 2011/3 総額 780
 EFSF 260
 FEFM 260
 IMF 260
合計 1,917  
欧州金融安定化メカニズム
(EFSM)

 枠 600

既実施 アイルランド 225 上記参照
ポルトガル 260
合計 485
合計 7,931  

参考

2010 年5 月、当面の危機への備えとして総額5,000 億ユーロの包括的支援策を発表した。
@全てのEU 加盟国が対象となる上限600 億ユーロの「欧州金融安定化メカニズム」(EFSM)
Aユーロ圏参加国が欧州中央銀行への出資率に応じた比例配分で拠出して特別目的会社を設立する「欧州金融安定化ファシリティ」(EFSF) 
 
3年間の時限措置で、2013年6月末まで。
B
EFSFを引き継ぐ恒久的支援組織の「欧州金融安定化メカニズム」(ESM)   当初は2013年7月設立予定。

2012年2月、
ESM創設条約が署名された。1年繰り上げ、2012年7月発効を目指す。
  
当初の最大融資能力は、7,000億ユーロの応募資本(800億ユーロの資本金と6,200億ユーロの請求払資本)
  によって得られる5,000億ユーロ (払込資本金
/融資額は15%以上とする。)

EFSFの債権発行のための各国の保証負担額は当初合計4400億ユーロ。
但し、AAA格付けの債権の発行のために必要なAAA格付け国6か国の保証額は2554億ユーロしかない。
このため、保証負担額を7798億ユーロに増加した。(ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを除くと7260億ユーロ)。
この場合の6か国の保証負担額は4515億ユーロとなるが、従来通り4400億ユーロと称されている。
  2011/11/7  EU 金融危機

なお、ESMは7,000億ユーロの応募資本(800億ユーロの資本金と6,200億ユーロの請求払資本)をテコにESM債の発行などで金融市場から調達する5,000億ユーロが最大融資能力となるが、ユーロ圏17カ国は800億ユーロの資本金を分割払いにする。

2013年半ばに資本金の6割(480億ユーロ)を確保していても、その時点のESMの融資能力は3000億ユーロにとどまる。

当初は資本金を5年に分けて払い込む計画だったが、EU首脳はこれの加速方針でも合意した。
2回分は本年7月と10月に、2回分を2013年中に、最後を2014年上半期に行うことが決まった。
融資額と資本金の比率が15%を下回る場合は払い込みを早める。

ーーー

欧州委員会は3月29日、債務問題解決のためのユーロ圏サミットをローマ法王の臨席のもとに4月1日に開催すると発表した。

「今のユーロを救えるのは、明らかにローマ法王ベネディクト16世と聖なる介入のみだ。法王の臨席でユーロ救済のための神の介入を祈る機会をいただく。これが今や最も頼れる戦略である。」

エイプリルフールを前に、Herman Van Rompuy EU大統領の側近の内部用のE-Mailが外部に流出したもの。

英国の独立党の党首は、「神の介入は欧州中央銀行の介入よりは効果があるだろうが、全知全能の神は賢明にもユーロには近づかないだろう」と述べた。
 


2012/4/3  塩ビ共販誕生から30年 

塩ビ共販の第1号の第一塩ビ販売は30年前の1982年4月1日に営業を開始した。

産構法(特定産業構造改善臨時措置法)が施行されたのは1983年5月24日であり、 塩ビ共販は、 産構法の下で設立されたポリオレフィン共販とは異なり、産構法施行に先立つ1年前に設立された。

共販会社は通常の事業統合として、公取委の審査を受けて設立された。(このため、第一塩ビ販売以外の共販の発足がずれ込んだ。)

ーーー

1979年1月に第2次石油危機が発生し、3万円/kl 程度であったナフサ価格は一気に6万円/kl まで上昇、需要が激減し、不況が深刻化した。

日本の石化業界は先ずは以前と同じように不況カルテルで対応しようとした。

塩ビ業界はそれまでに何度も不況カルテルを結んでいる。
 1958/11/18−59/3/31
 1972/1/1-9/30
 1977/5/13-78/8/31 (4回延長) 

1972年3月には、ポスト・カルテル対策として業界で基本問題研究会を設置した。 
 ・第5次増設後、公称能力 1,584千t に対し 実能力は 2,060千t(MITI算定)となる。
 ・対策 設備投資休戦、過剰設備の廃棄、休止
   →1972年末には通産省の指導で、公称能力を上回る48万トンの設備廃棄を実施。

 なお、過剰設備廃棄に加え、商社を含む共販会社の設立の提案もあったが、この時点では採用されなかった。

塩ビ業界は1981年5月から翌年2月まで生産量と余剰設備制限を内容とする不況カルテルを実施し、在庫量を適正水準まで戻した。
しかし、国際競争力の低下により輸入は増大し、市況は回復しないままであった。この結果、塩ビ業界の赤字は、1980年には 323億円となり、危機的な状況となった。(1981年470億円、82年 407億円)

このことは不況対策としてカルテルを実施しても問題は解決できず、抜本的な対策が必要となってきたことを示していた。

1981年10月に通産省は産業構造審議会化学工業部会の塩化ビニル・ソーダ小委員会を開いた。

長期需給見通しによれば、1985年の設備稼働率は塩ビで67%となり、「国際競争力の強化」と「集約化」が必要。
具体的には、
@メーカー17社が数社ずつまとまり共同販売会社を設立し、価格の安定化、流通合理化、生産の受委託を進める
A塩ビ中間原料の輸入を数社ずつによる共同輸入
B塩ビ設備能力の増加は避け、競争力強化と集約化促進のためにS&Bを積極的に進める

これを受け、主要9社首脳が構造改善策を協議し、全17社を4グループに再編成して共販化を目指すことで合意した。

組み合わせについて、塩ビ協「塩化ビニル工業30年の歩み」(1985)では当時の呉羽化学・高橋博社長が塩ビ協会長として私案をつくったとしている。

共販体制発足時の姿は以下の通り。

グループ 会社名 資本金
 百万円
参加会社 出資比率
    %
その他系 第一塩ビ販売

1982/3/12設立
1982/4/1営業開始
  90 住友化学    25
呉羽化学    25
サン・アロー化学    25
日本ゼオン    25
三井系 日本塩ビ販売

1982/7/15設立
1982/8/1営業開始
  80 鐘淵化学    25
電気化学    25
東亜合成化学    25
三井東圧化学    25
三菱系 中央塩ビ販売

1982/7/15設立
1982/8/1営業開始
  90 旭硝子    33.33
化成ビニル    33.33
信越化学    33.33
興銀系 共同塩ビ販売

1982/8/11設立
1982/9/1営業開始
  50 東洋曹達    27.5
チッソ    27.5
セントラル化学    17.5
日産塩化ビニール    17.5
徳山積水    10.0

三菱化成系の塩ビメーカーは菱日と三菱モンサント化成であったが、三菱化成は共販参加に当たり、両社の塩ビ販売窓口会社として「化成ビニル」を設立した。

先発の日本ゼオン、呉羽化学工業、住友化学工業、サン・アロー化学(徳山曹達系)の4社は1981年12月に社長会を開き、共販売会社の骨格を最終的に決定、直ちに公正取引委員会との協議に入った。

共販会社の内容は以下の通り。
 @資本金は4社均等出資、従業員は各社からの出向
 A共販対象は汎用塩ビ樹脂とし、各社の自家消費用を含む全量を買い上げて販売する。
   ペースト塩ビは4社のうち、ゼオンと住化のみが生産しており、これを除外した。
 B共販量の4社間の比率は現行生産シェア(占有率)を目安にするーーなど。

公正取引委員会は、この計画については「販売シェアが24%と規制基準(25%)を下回っているし、競争制限につながることはない」とし、共販を認めるとの姿勢を示した。

しかし4グループ化による共販については、以下の理由で「独禁政策上問題点が多い」とし、
残り3共販については、「先頭グループの共販活動の様子を見守ったうえで判断したい」とした。

@販売市場を4分割するので価格競争がほとんど行なわれなくなる可能性が強い
Aグループによっては販売シェアが市場支配力の目安である25%を超えるところもある
B共販による構造改善効果が不明確ーーなど。

この結果、第一塩ビ販売のみが4月1日に営業を開始した。

1982年6月になって、通産省と公取委はようやく、塩化ビニル共販会社設立で合意した。

日本塩ビ販売(三井系) 1982/7/15設立、8/1営業開始
中央塩ビ販売(三菱系) 1982/7/15設立、8/1営業開始
共同塩ビ販売(興銀系) 1982/8/11設立、9/1営業開始

 

各共販とも、交錯輸送の廃止による物流の合理化、販売経費の削減、グレード統合や設備処理・生産集中による生産合理化、研究開発の効率化などをうたっている。
これは、設立の際に公取委に対して設立目的として説明したもので、毎年、公取委から進捗状況のヒアリングを受けた。

実際には、各社から共販に出向した社員が自社の費用(口銭)で自社の製品の販売を行っており、実質的には縦割りの運営であった。 販売価格などの販売政策は当然、共販内で協議して決定された。

第一塩ビ販売のみは、各社の技術を出し合って技術改良や新技術の開発を行った。
これが後に、共同開発の新技術による共同生産会社(第一塩ビ製造)の設立につながり、更には(呉羽化学を除き)各社の塩ビ事業を統合した新第一塩ビに発展した。


2012/4/4 南海トラフの巨大地震で新想定 「浜岡」再稼働は困難に 

内閣府中央防災会議の有識者会議は3月31日、東海から九州沖の「南海トラフ」で起きる地震について、「最大クラス」で津波や震度を予想した。

「あらゆる可能性を想定した最大クラス」を前提に試算した。

2003年に政府はマグニチュード8.8の想定をしたが、その際は津波は最大17メートルだった。

今回、震源域を約2倍、地震の規模を約3倍のマグニチュード9.1とした。
満潮時の津波は高知県黒潮町の34.4メートルを最大に、各地でこれまでの想定の2〜3倍となった。

中部電力浜岡原発のある静岡県御前崎市には21メートルの津波が押し寄せるという。
また、従来の震度6強から震度7になった。

中部電力が浜岡で想定している津波は8.3メートルである。
福島第1原発の津波が15メートル程度であったことを考慮し、緊急安全対策では1400億円をかけて高さ18メートル、長さ1.6キロの防波壁建設、扉の水密化や非常用電源増設などを進めているが、この防波壁を軽々と越える高さである。

原子力安全・保安院は「従来想定していた津波よりはるかに高く、緊急安全対策は結果的に不十分だった」として、中部電力に追加対策の検討を求める。

枝野経産相は3月31日、「これを踏まえて抜本的な安全対策を組み立てていくことになる」と述べ、必要な措置を取る考えを示した。

再稼働の前提となる安全対策が根底から見直しを迫られるのは必至で、巨額の安全対策費と併せ、浜岡原発の再稼働は一段と厳しくなった。

なお、野田首相は4月3日、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を巡り、関係3閣僚と初の協議を行い、経産省に対し、再稼働の是非を判断するための「暫定安全基準」の整備を指示した。

ーーー

菅直人首相(当時)は2011年5月6日、中部電力の浜岡原子力発電所について、定期検査中の3号機のほか稼働中の4、5号機も含めてすべての原子炉を停止するよう要請したと発表した。

期限は、津波対策などで中電が検討している「防波壁の設置など中長期の対策が完成するまでの間」とした。

2011/5/7 菅首相、浜岡原発の全炉の運転停止を要請 

浜岡原電では、東海・東南海・南海地震の3連動の地震を検討し、津波の遡上高を海抜8.3メートルと想定している。

敷地前面にある砂丘堤防は海抜10〜15mの高さがあり、地震後においてもこの高さはほぼ維持され、敷地内への津波の浸入を防ぐことができるとしていた。

中部電力では福島第1原発の津波が15メートル程度であったことを考慮し、下記の緊急安全対策(本年12月完工予定)を行っている。

当初、工事費を約1000億円と発表していたが、中部電力は3月21日、約400億円積み増すと発表した。

周辺の地質などを追加調査し、当初計画時点より防波壁の基礎部分を平均で2メートル深く造ることにした。
また、浜岡原発建屋内の防水扉や非常用ガスタービン発電機などを増強する。

今年12月としている工事の完了予定は変更しない。

1) 浸水防止対策

・防波壁設置工事

 海抜18mの防波壁
を新たに設置するとともに、両端部は盛土で約20mにかさ上げをおこなう。

・建屋内への浸水防止
 屋外の海水取水ポンプ浸水に備え、同様の機能を持つポンプを新たに設置する防水構造の建屋の中に設置。
 原子炉建屋外壁の耐圧性・防水性の強化(防水扉から水密扉への取り替えと強化扉の新設による二重化など)

 

2) 冷却機能強化

「海水取水ポンプ」や「非常用電源」などの機能の喪失が発生した場合でも、これに替わり、原子炉を冷やし続けるための「注水」「除熱」「電源供給」の3つの働きを保つための対策を幾重にも備え、一週間程度で確実かつ安全に原子炉を冷温停止に導く。

・注水

  1. 空冷式の熱交換器を設置
  2. 緊急時の注水確保のため電源を必要としない可搬式動力ポンプを配備
  3. 発電所に隣接する新野川から専用ホースなどを用いて淡水を送水
  4. 水源の多様化を目的とした水タンクを高台などに増設

・除熱

  1. 電源喪失時にベント操作をおこなうための窒素ボンベの設置
  2. 中央制御室から直接ベントがおこなえるよう遠隔操作化
  3. 冷温停止に必要な機器の予備品を確保

・電源供給

  1. ガスタービン発電機を高台に設置
  2. 災害対策用発電機の原子炉建屋屋上への設置
  3. 予備蓄電池の確保

ーーー

なお四国電力伊方原発の津波の想定は3メートルとされた。
従来の震度5強から6強になった。

保安院は3月26日に四国電力伊方原発3号機の1次評価を妥当とする審査書をまとめ、原子力安全委員会に報告した。
この1次評価では、扉の浸水対策などで14.2メートルの津波にまで耐えられるとしている。


2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

東芝は3月31日、同社グループ会社のWestinghouseによる新型加圧水型原子炉「AP1000®」の建設運転一括許可(Combined License=COL)を米国原子力規制委員会(NRC) が承認したと発表した。

South Carolina Electric & Gasとサウスカロライナ州営電力会社Santee Cooperがサウスカロライナ州のコロンビアの北西約40キロにあるVirgil C. Summer Nuclear Stationが計画している2号機と3号機。

総工費は約110億ドルで、17〜18年にかけて稼働させる予定。

今回もGregoy Jaczko委員長は反対した。
福島原発の事故を受けてNRCが現在検討しているすべての安全対策を会社側が実施することを求めた。
今回の承認に当たり、前回の
Vogtle原発承認以降に決めた安全対策の一つを実施することという条件がついた。

 

米国における新規原子力発電所の建設は、本年2月にCOLを取得したボーグル(Vogtle)原子力発電所3・4号機に続くものとなる。

NRCは本年2月9日、Southern Nuclear Operating Companyのジョージア州オーガスタの南東26マイルのVogtle power plantの2機の建設・運転一括許可を承認した。

東芝傘下のWestinghouse Electricの新型加圧水型軽水炉(PWR)のAP1000を採用する。

1979年のスリーマイル島原発事故以来凍結されている米国の原発建設について、オバマ政権は再開する方針を示していた。
福島第1原発の事故後も、原子力を主要なエネルギーとして利用する政策を堅持している。
今回はその第1号である。

NRCは同日、5人の委員で採決し、4対1の賛成多数で承認した。

反対したのはGregoy Jaczko委員長で、福島第一原発のメルトダウンの例から原発建設のポテンシャルな危険を懸念すると発表した。「まるで福島の問題が起こらなかったかのように、承認を下すことを支持できない」「操業までに、福島で計画している改善策を実施するという確約が必要だ」と述べた。

NRCはWestinghouseの改良型のAP1000 そのものを2011年12月30日に承認している。
110万kW級の最新鋭リアクターで、安全システムが運転員の操作や電源を必要としない世界初の設計となっていて、圧縮ガスによる圧力や重力などの力で原子炉容器内に冷却水が注入され、自然循環によって熱を取り除くようになっている。

同型の原子炉は中国で4基が建設中だが、米国内では初めてとなる。

 

付記

Exelon は8月28日、テキサス州Victoria County Stationの原発申請を取り下げた。

同社はさきに、建設を長期間遅らせるため、combined construction and operating license (COL)の申請を取り下げていたが、今回、残していたearly site permit for land の申請も取り下げた。

天然ガスの値下がりで、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断した。

7月30日付の英 Financial Times は、“Nuclear 'hard to justify', says GE chief”のタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。

シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったというもの。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長 

なお、NRG Energyも2011年4月、福島第1原発事故の影響で「規制動向など先行きが不透明になった」として、東芝との合弁会社でテキサス州で進めていた原発2基の新設計画への投資を打ち切った。同計画の認可申請は取り下げられていないが、事実上計画は宙に浮いている。

NRGは2008年にNuclear Innovation North America(NINA)を設立。同年に東芝が12%出資し、サウステキサスプロジェクト原子力発電所に改良型沸騰水型原子炉 (ABWR)2基(3号機、4号機)を増設する計画を進めていた。

米原子力規制委員会は2012年8月7日、最近の連邦控訴裁判所の判決で提起された使用済み核燃料の保管に関する規則を見直すまで、原子力発電所建設の認可手続きを停止すると発表した。

連邦高裁は2012年6月、運転をやめた原発の敷地内で60年間、使用済み燃料の保管が認められていることについて、NRCの安全性評価は不十分だとして再検討を命令。原発敷地内ではなく、最終処分場の候補地を検討するよう求めている。

ーーー

米国では天然ガス価格が約10年ぶりの水準に下落しており、電力会社の間ではコストの安いガス火力発電への関心が高まっている。
このため、認可を受けた2件以外の新設計画の先行きについては不透明感もある。

米国の64カ所にある原発で運転中の原子炉は計104基で国内の電力需要の約20%を賄っている。

米国で計画中の原発は以下の通り。

  申請 機種 立地 基数 既存
稼働
 状況
NRG Energy 2007/9/20 ABWR South Texas Project 2 TX 取り止め
NuStart Energy 2007/10/30 AP1000 Bellefonte 2 AL 保留
UNISTAR 2008/3/13 EPR Calvert Cliffs 1 MD 審査中
Dominion 2007/11/27 USAPWR North Anna 1 VA 審査中
Duke 2007/12/13 AP1000 William Lee
 Nuclear Station
2 SC 審査中
Progress Energy 2008/2/19 ESBWR Harris 2 NC 審査中
NuStart Energy 2008/2/27 ESBWR Grand Gulf 1 MS 保留
Southern Nuclear
Operating Co.
2008/3/31 AP1000 Vogtle 2 GA 2012/2 承認
South Carolina
Electric & Gas
2008/3/31 AP1000 Summer 2 SC 2012/3 承認
Progress Energy 2008/7/30 AP1000 Levy County 2 FL 審査中
Exelon Nuclear
Texas Holdings
2008/9/3 ESBWR Victoria County
 Station
2 TX 申請取下げ
Detroit Edison 2008/9/18 ESBWR Fermi 1 MI 審査中
Luminant Power 2008/9/19 USAPWR Comanche Peak 2 TX 審査中
Entergy 2008/9/25 ESBWR River Bend 1 LA 保留
AmerenUE 2008/7/24 EPR Callaway 1 MO 保留
UNISTAR 2008/9/29 EPR Nine Mile Point 1 NY 保留
PPL Generation 2008/10/10 EPR Bell Bend 1 PA 審査中
Florida Power
 & Light
2009/6/30 AP1000 Turkey Point 2 FL 審査中
AP1000  Westinghouse Electric(東芝)
EPR  Framatome (Areva), Electricité de France, Siemens
US-APWR  三菱重工業
ESBWR  General Electric   

ソース:http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1200/ML12004A009.pdf


2012/4/5 Dow、タイで新コンプレックスの開所式 

Dowは3月27日、タイのRayongの工業団地Asia Industrial Estateで新しいコンプレックスの開所式を行った。(各プロジェクトは既に2010年から順次稼働している。)
これは同時に、Dowのタイ進出45周年と、DowとSiam GroupのJVの提携のSCG-Dow Groupの25周年を祝うものとなる。

新しいコンプレックスはDow、Siam Group、Solvayの共同計画で、‘Thai Growth Project’と名付けられている。

SCG-Dow Groupの既存プラントは Map Ta Phut Industrial Estateにある。

ーーー

Dowが1967年にBangkokに小さな販売事務所を設置したのが同社のタイ進出の始めである。

SCG-Dow Groupは1987年に設立された。両社はそれ以前に1975年にポリオールのJVのPacific Plastics (Thailand)を設立している。

  Pacific Plastics
  (Thailand)

  SCG-Dow Group

Siam Styrene
  Monomer
Siam Synthetic
 Latex
Siam Polystyrene Siam Polyethylene
Formed: 1975 1988 1990 1993 1995
Ownership: Dow 49%;
Siam Cement 48%;
Others 3%
                                   Dow 49.99%;
                                   Siam Cement 49.99%;
                                   Others 0.02%
Headquarters:

Bangkok, Thailand

Production
facilities:

Map Ta Phut Industrial Estate

Capacities:
metric tons per year
Polyol Styrene monomer:
  300,000
Latex Polystyrene:
  120,000
LLDPE:
  300,000

 

新しいコンプレックスはDowとSiamの新しいJVのMap Ta Phut Olefins Co., Ltd.によるナフサクラッカーとその誘導品から成っている。

1)エチレンクラッカー Map Ta Phut Olefins Co., Ltd.

エチレン90万トン、プロピレン80万トン

Dowは2006年10月、タイでSiamとのナフサクラッカーJV計画を進めると発表した。
Siamの発表では、
11億ドルを投じてRayongに新しいナフサクラッカーを建設するもので、能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。サイアムが67%、ダウは33%出資する。

2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進

 2)ポリオレフィン

同地にはSiamの子会社のThai Polyethylene (TPE)、Thai Polypropylene (TPP) と両社のJVのSiam Polyethyleneがあるが、いずれも増設した。(千トン)

会社名 製品 既存能力 今回新設 合計能力
Thai Polyethylene HDPE  580  400 980
LDPE 100   100
LLDPE 120   120
Siam Polyethylene LLDPE 300  350 650
Thai Polypropylene PP 320 400 720
3)Specialty elastomers

Siam Synthetic Latex に下記のSpecialty elastomersを生産するプラントを新設。
  
AFFINITY™ Polyolefin Plastomers
   ENGAGE™ Polyolefin Elastomers

4)過酸化水素プラント MTP HPJV (Thailand) (Dow/Solvay JV)

過酸化水素 33万トン

Solvayは2011年10月5日、ダウとのJVのMTP HPJV (Thailand)が世界最大の過酸化水素プラントを稼働させたと発表した。能力は330千トン(100%ベース)と世界最大。

2007/8/3 
Dow と Solvay、タイにHPPO用の過酸化水素製造のJV設立

5)POプラント MTP HPPO Manufacturing (Dow/Siam JV)

過酸化水素法PO 39万トン

Dow Chemical は2008年6月、タイのSiam Cement Group (SCG)とのJVの MTP HPPO Manufacturing がタイでPO工場の建設に着手したと発表した。2012年1月4日、正式スタートアップを発表。能力は39万トン。

2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設

6) ユーティリティ、ターミナル

Power, Utilities & Infrastructure
Rayong Terminal Co.,Ltd.


2012/4/6 太陽電池大手 Q-Cells 破綻

ドイツの太陽電池メーカー大手のQ-Cellsは4月2日、法的整理の手続きを申請すると発表した。

太陽電池ブームを追い風に2008年に世界シェア首位に立ったが、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていた。

付記
Q-cellsは8月26日、韓国のHanwha Groupから買収提案を受けたと発表した。
新聞情報では、買収額は4千万ユーロで、2億74百万ユーロの負債も引き継ぐ。

同社は破綻の理由には挙げていないが、ドイツ政府は4月1日から太陽光発電の買取価格(Feed-in-tariff)の大幅引き下げを実施する。

ドイツ議会は3月29日、Renewable Energy Actの改正案を議決した。

ドイツでは送電事業者に買い取りを義務づける「固定価格買取制度」により太陽光発電は急速に拡大し、設備容量で世界一になった。
しかし
価格は電気料金に上乗せされるため消費者負担が政府の予想を超えて膨らんだ。このため、4月1日以降の設置分について買取価格を引き下げ、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換した。

10kW 未満の小規模発電は1kw時当たり0.2443ユーロから0.1950ユーロに引き下げられる。かつ、発電量の80%分しか払われない。
1 MW までは0.165ユーロに、1-10 MWは0.135ユーロになる。発電量の90%分しか払われない。

10MW以上についてはFeed-in-tariffは不適用となる。 (一定の猶予期間あり)

これらを受けて、多くのメーカーが破綻している。

2011年12月にSolar Millennium AGが破綻した。

本年3月にSolarhybrid AGが破綻した。
同社はこれに先立ち、買取価格の引き下げが同社損益に大きな影響を与えるとしていた。

4月2日、南カリフォルニア州で1000メガワットのBlythe Solar Power Projectを推進しているSolar Trust of America LLCがChapter 11 を申請した。

同社は破綻したSolar Millenniumが70%、Ferrostaal(旧称MAN Ferrostaal、アブダビのIPICが70%取得)が30%のJV。
Solar Millenniumはその持株を
Solarhybrid AGに売却しようとしたが、Solarhybrid AG自体が破綻した。
Ferrostaalは資金援助を拒否した。

ーーー

Q-Cells は2009年に大幅赤字に陥った。
同社は2009年8月13日、2009年上半期決算が下記理由で大幅な赤字となったと発表した。

スペイン政府が2009年以降、太陽光発電の補助金を年間500MWに制限した。
スペインは世界最大の市場で、2GW以上の需要があったため、1.5GWが他に需要を求め、競争が激化した。
   
金融危機による銀行融資の激減
   
厳しい冬のため、3月末まで需要が極めて少なかった。
  スペインが上記理由で需要激減となったが、ドイツや中欧ではほとんど設置されなかった。

2009/9/16 欧州で「太陽電池バブル」崩壊、米First Solarは好調 

2010年はかろうじて黒字を確保した。

新たに開始した太陽電池モジュール事業と中型の建物屋根への太陽光発電施設や小規模太陽光発電施設というシステム導入事業という戦略新規事業部門の売上高が全社売上高の27%を占めたのが大きい。

しかし、同社が3月末に発表した2011年決算は、価格下落に歯止めがかからず、最終損益が8億4600万ユーロの最終赤字だった。 有形・無形資産の除却損 398.5百万ユーロ、在庫評価損 129.1百万ユーロを含む。

2011年に経営再建のため、生産量を一時的に削減、ドイツの生産能力を半減して生産拠点をドイツから人件費の安いマレーシアに移管した。

本年2月には債権者集会を開き、債務の株式化などの財務リストラの承認を得た。しかし、Pfleiderer社の同様のケースが裁判所で否定されたことからこれを断念、代替案が見つからないため法的整理に入ることを決めた。

同社によると、世界の太陽電池の状況は以下の通り。

  1)過剰能力(単位:GWp)

  需要 能力 過剰
2010年 19 25 6
2011年予 25 40 14
2012年予 29 50 21

  2)2011年のスポット価格下落

Solar cells         -60%
Modules -40%
Systems -20%

Q-Cellsは2008年の年間生産量で世界1位であった。(2位は米のFirst Solar、3位は中国のSuntech Power)

その後の中国勢の台頭で同社のシェアは急減している。

2010年のシェアは以下の通り。
1 Suntech (尚徳電力) 中国 6.6%
2 Ja Solar(晶澳太陽能) 中国  6.1%
3 First Solar 米国 5.9%
4 Yingli(英利緑色能源) 中国 4.7%
5 Trina Solar(天合光能) 中国 4.7%
6 Q-Cells ドイツ 3.9%
7 Gintech(c晶能源科技 台湾 3.3%
8 シャープ 日本 3.1%
9 Motech(茂迪) 台湾  3.0%
10 京セラ 日本 2.7%

この状況は液晶パネルなどと同じである。

参考 2011/12/26   2011年 回顧と展望

 

Q-Cellsの2011年決算は以下の通り。 (単位:百万ユーロ)

  2011 2010 2009 2008 2007
売上高 1,023.1 1,354.2 790.4 1,195.1 858.9
EBIT
(金利・税金
 控除前損益)
-717.4 82.3 -362.5 191.8 197.0
純損益 -845.8 18.9 -1,342.9 177.3    148.4


生産・販売状況 (単位:MWp) 
  2011 2010
生産量 Solar cells  717  939
Thin-film Modules 66 75
合計 783 1,014
出荷量 Solar cells 319 612
Thin-film Modules 58 36
Crystalline Modules 150 157
Systems 259 120

2011/4/7 韓国政府、IT分野の中核技術を選定 

韓国知識経済部は4月4日、洪錫禹長官主宰のIT政策諮問団会議を開き、集中投資を行う10大IT中核技術を選定した。

IT産業の発展を通じ、社会や経済などあらゆる分野をスマート化するビジョン
“Smartopia Korea”を掲げるとともに、
 ・主力IT産業の競争力向上
 ・ソフトウエア素材産業の競争力強化
 ・未来新産業の育成
の3大政策目標を掲げた。

また、集中投資を行う10大IT中核技術を以下の通り決めた。
 ・次世代デバイス中核技術
 ・IT中核素材
 ・ビッグデータおよび人工知能
 ・ハイブリッドストレージ
 ・有無線統合ネットワーク
 ・テラヘルツおよび量子情報通信
 ・無人化プラットホーム
 ・バイオセンサー
 ・ライフケアロボット
 ・電力半導体

韓国政府は、今後5年間で1兆2400億ウォン(約900億円)を10大技術分野に投じ、2020年に同分野で売上高49兆8000億ウォン、輸出197億ドルの達成を目指している。

知識経済部は、1人当たり国民所得4万ドル達成に向け、ソフトウエアの競争力確保に注力する方針で、洪長官は「IT産業を、現在のハードウエア中心からソフトウエア中心に転換してこそ、貿易規模2兆ドル時代を開くことができる」と強調している。


2011/4/7   原発再稼働へ新基準決定 

野田首相と枝野経済産業相藤村官房長官、細野原発事故担当大臣は4月6日、「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」(新基準)を正式決定した。
    http://www.meti.go.jp/topic/data/120406-11.pdf

政府は関西電力大飯原発3、4号機が基準1,2 を満たすか検証するよう原子力安全・保安院と関電に指示した。
関西電力に対しては、基準3 を踏まえた安全対策の実施計画を示す工程表の提出を要請した。関電は新基準を念頭に入れた安全対策の実施計画を9日にも提出する。

付記

関西電力は4月9日、大飯発電所3、4号機のさらなる安全性・信頼性向上のための対策の実施状況と実施計画を取りまとめ、経済産業大臣に報告した。

「大飯発電所3、4号機における更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画(概要)」

週明け以降の会合で、工程表の内容を確認した上で安全性を検証、福井県知事らに説明し、再稼働を要請する。
この後、地元理解を得られているかどうかを政治判断し、再稼働を決める。

* 地元の範囲は不透明
* 官房長官は地元同意について、「法律などの枠組みで義務付けられているわけではない」と述べている。

付記

野田政権は4月13日夜の関係閣僚会合で、安全性を最終確認し、再稼働することが妥当だと判断した。
これを受けて、枝野幸男経済産業相は14日にも福井県を訪問し、再稼働を要請する。

この日の会合では、関電が実施済み及び計画している安全対策が暫定的な安全基準を満たしていることを最終的に確認した。そのうえで、原発が1基も再稼働せずに一昨年並みの猛暑を迎えた場合、関電管内で約2割の電力不足になるといった電力需給見通しなどを踏まえ、再稼働する必要性を認めた。

ーーー

新基準設定に当たり、福島原発事故について、以下の「基本的理解」を行っている。

(1) 事故の原因と事象の進展
 ○地震の影響
  ・「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」の安全機能は正常に働いた。
  ・外部からの受電系統7回線の全てが、地震による電気設備の損傷等で受電できない「外部電源喪失」状態に。

 ○津波や浸水という共通要因による機能喪失
  ・津波の来襲により、海側に設置されていた冷却用のポンプ類が全て機能喪失した。
  ・非常用ディーゼル発電機、配電盤、蓄電池等の電気設備の多くは、建屋の浸水により機能を失った。
  ・生き残った冷却機能のうち、非常用復水器(1号機)は直流電源の喪失で十分機能せず。
   原子炉隔離時冷却系(2号機)、原子炉隔離時冷却系と高圧注水系(3号機)は水位が維持されていたが、
   電源喪失及び空気弁の開操作困難等により適切に減圧し低圧の代替注水に移行することができなかった。
    ・その結果、水位の低下により炉心が露出し、ついには炉心損傷・溶融に至った。
    ・原子炉建屋内に水素が滞留したことにより、1、3、4号機の原子炉建屋で水素爆発が発生した。

 ○迅速・的確な事故対応のための環境
  ・地震及び津波による電源喪失で、中央操作室における計測機器等が全て機能喪失し、
   プラントの状況監視や電動弁の制御等が出来なくなった。
   コミュニケーション・ツールの確保や情報の収集が迅速にできなかった。

 ○使用済燃料プール
  ・電源喪失や水素爆発の影響で、使用済燃料プールへの注水・冷却機能を喪失した。

(2) 地震及び高経年化の影響
   安全上重要な機能を有する主要設備については、基本的には安全機能を保持できる状態にあったと推定。

   ・原子炉圧力容器・格納容器・重要な配管類が、地震で破壊されたのではないかとの指摘もあるが、
  そうした事実は確認できていない。
  基本的な安全機能を損なう地震の被害があったことを示す知見は得られていない。

  ・高経年化による劣化事象の影響について評価したが、これは考え難い。

原発再起動にあたっての安全性の判断基準として3つの基準を決めた。
(各項目の最後の「対策」は下記の「30の安全対策」参照)

基準1 地震・津波による全電源喪失という事象の進展を防ぐ安全対策がすでに講じられていること。

 @ 所内電源設備対策の実施 
  1) 全交流電源喪失時にも電源供給可能な電源車等を配備  対策5,6,7,10
  2) 直流電源は、津波の影響を受けないよう浸水対策を行う    対策6
    3) 電源車等による給電が可能であるよう、緊急時の対応体制を強化、訓練実施 対策5,7,8,10

 A 冷却・注水設備対策の実施
  4) 全交流電源喪失時の冷却・注水のため、最終ヒートシンクの多様性を確保 対策16,17
  5) 全交流電源喪失時の冷却・注水機能維持のための機器への浸水対策  対策13
  6) 震災時に給水が可能であるよう、緊急時の対応体制を強化、訓練実施  対策12
  7) 給水のための消防車・ポンプ車の確保  対策13,16,17
  8) 消防車、ポンプ車等用に必要な燃料の外部からの調達可能な仕組み 対策16,17

 B 格納容器破損対策等の実施
  9) 低圧代替注水への移行を確実に行うための手順・体制構築、訓練   対策20
  10) ベントの実施の手順・体制構築、訓練(BWR のみ)  対策21
  11) ベント弁等に空気駆動弁が用いられている場合、ベントを可能とすること。(BWR のみ) 対策21

 C 管理・計装設備対策の実施
  12) 全交流電源喪失時に、中央制御室の非常用換気空調系設備(再循環系)を運転可能に  対策25
  13) 全交流電源喪失時における確実な発電所構内の通信手段を確保  対策26
  14) 全交流電源喪失時においても、計装設備を使用可能とすること。  対策28
   15) 高線量対応防護服、個人線量計等の資機材を確保、要員拡充  対策30
  16) 津波等により生じたがれきを迅速に撤去      対策30

     大飯原発では、昨年3月末に原子力安全・保安院が電力各社に指示した「緊急安全対策」で既にほぼ実施済み。

基準2
「福島第1原発を襲ったような地震・津波が来襲しても、炉心と使用済み燃料ピット・使用済み燃料プールの冷却を継続し、同原発事故のような燃料損傷には至らないこと」を国が確認していること。

津波については、15mの津波、あるいは、各発電所の想定津波高さより9.5m以上の高さの津波に耐えられること。

大飯原発ではストレステスト(耐性調査)で確認済。
  
2012/3/26    原子力安全委員会、大飯原発のストレステスト 1次評価を確認

基準3
  さらなる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が事業者により明らかにされていること。
事業者自らが安全確保のために必要な措置を見いだし、これを不断に実施する事業姿勢が明確になっていること。

福島第一原発事故の技術的知見から得られた30の安全対策について、実施されていなくても、実施計画があるだけで再稼働を認めるというもの。

 @原子力安全・保安院がストレステストの審査で一層の取り組みを求めた事項

 A保安院が「東電福島原発事故の技術的知見」で示した30の安全対策
   (1) 地震などによる長時間の外部電源喪失を防ぐための対策 (対策1〜4)
   (2) 所内電源の機能喪失を防ぎ、非常用電源を強化する所内電気設備対策 (対策5〜11)
   (3) 冷却注水機能の喪失を防ぐ設備対策 (対策12〜17)
   (4) 格納容器の早期破損や放射性物質の非管理放出を防ぐ格納容器破損・水素爆発対策 (対策18〜24)
   (5) 状態把握・プラント管理機能の抜本的強化のための管理・計装設備対策 (対策25〜30)

大飯原発の対策予定時期は以下の通りで、関電は前倒しを検討する。
 外部電源の多重接続(2014年度)
 防波壁の5mから8mへのかさ上げ(2013年12月)
 緊急時の免震棟(2016年度) →2015年度に繰り上げ
 内線電話の交換機などの高台移設(2016年度)
 フィルター付きベント設備の設置(中長期)→2015年度完成
 発電所へのアクセス道路の整備(中長期)

ーーーーーーーー

東京電力福島第一原発事故の技術的知見から得られた30の対策(保安院)

〇外部電源対策 対策1 外部電源系統の信頼性向上
対策2 変電所設備の耐震性向上
対策3 開閉所設備の耐震性向上
対策4 外部電源設備の迅速な復旧
@所内電気設備対策 対策5 所内電気設備の位置的な分散
対策6 浸水対策の強化
対策7 非常用交流電源の多重性と多様性の強化
対策8 非常用直流電源の強化
対策9 個別専用電源の設置
対策10 外部からの給電の容易化
対策11 電気設備関係予備品の備蓄
A冷却・注水設備対策 対策12 事故時の判断能力の向上
対策13 冷却設備の耐浸水性確保・位置的分散
対策14 事故後の最終ヒートシンクの強化
対策15 隔離弁・SRVの動作確実性の向上
対策16 代替注水機能の強化
対策17 使用済燃料プールの冷却・給水機能の信頼性向上
B格納容器破損
・水素爆発対策
対策18 格納容器の除熱機能の多様化
対策19 格納容器トップヘッドフランジの過温破損防止対策
対策20 低圧代替注入への確実な移行
対策21 ベントの確実性・操作性の向上
対策22 ベントによる外部環境への影響の低減
対策23 ベント配管の独立性確保
対策24 水素爆発の防止(濃度管理及び適切な放出)
C管理
・計装設備対策
対策25 事故時の指揮所の確保・整備
対策26 事故時の通信機能確保
対策27 事故時における計装設備の信頼性確保
対策28 プラント状態の監視機能の強化
対策29 事故時モニタリング機能の強化
対策30 非常事態への対応体制の構築・訓練の実施

   ※ 19、20、24は主にBWRが対象


2012/4/9 武田薬品の移転価格税制での更正処分で異議決定 

武田薬品は4月6日、移転価格税制に基づく更生処分について大阪国税局に異議申し立てをしていたが、更生された所得金額1,223億円のうち977億円を取り消す異議決定書を受領したと発表した。

地方税を含めた追徴税額は571億円であったが、このうち455億円が還付され、還付加算金(金利:2010年以降は年4.3%)が116億円支払われる。 合計の還付額はたまたま追徴額と同じとなった。

異議申し立ての全額は認められておらず、残りの246億円という巨大が金額の所得が日本と米国で二重課税の状態にある。
同社では
今後の対応については異議決定書の内容について検討の上、決定するとしている。

付記

同社は5月7日、原処分の取り消しが認められなかった部分の全額の取り消しを求める審査請求書を、大阪国税不服審判所に提出した。

付記

武田薬品工業は2013年3月26日、大阪国税不服審判所長より同社の主張を認容する旨の裁決書を受領したと発表した。
この結果、法人税・地方税等が全額還付されることとなり、還付加算金と併せ152億円が還付される。

ーーー

武田薬品は2006年6月、米国アボットとの50:50の合弁会社(当時)のTAPファーマシューティカル・プロダクツ(TAP)との間の消化性潰瘍治療剤「プレバシド」の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、大阪国税局より所得金額で6年間で1,223億円の所得の更正を受け、約570億円の追徴税額を課せられたと発表した。

2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正

なお、TAPは2008年4月の会社分割により、武田アメリカの100%子会社となった。
2008/4/4 武田薬品工業、米国事業再編

武田薬品は、
@50/50JVのTAPとの取引価格はアボットの合意なしには決められず、独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではない、
A価格を安くすればTAPの利益が増えて半分がアボットにいくため、武田にとってTAPに所得を移転する意図や動機はない
として、徹底抗戦の構えをとった。

当初は追徴税額は返還されるものとみなし、業績は修正せず、追徴分は貸借対照表には固定資産の「長期仮払税金」として計上したが、監査法人の意見変更で2006年9月中間期に税金に計上した。
   2007/5/14 注目会社、3月決算概要ー4

武田薬品は2006年8月に大阪国税局に異議申し立てをおこなったが、2008年7月にこれを中断し、二重課税の排除を求めて国税庁に対し米国との相互協議を申し立てた。
しかし、2011年11月に国税庁から、相互協議が合意に至らず終了した旨の通知を受領した。

米国側との相互協議は、日本で更正した額を輸出価格の値上げとして米国で追加でコスト算入して利益を減らし、米国での税金を減らすというもの。

米国との相互協議が成り立たなかったということは、国税局の主張を米国当局が全く受け入れなかったことを意味する。

武田の主張の通り、通常は50/50JVとの取引価格は独立企業間価格とみられ、移転価格税制は適用されないため、米国側が応じないのは当然である。
下記の信越化学のケースでは、米国当局は日本側の主張を一部受け入れ、その部分について信越の米子会社に税金の還付をしている。

同社は一旦中断していた異議申し立て手続きについて大阪国税局へ再開を申し入れていた。

なお、大阪国税局が残りの246億円分の異議を認めなかった理由が分からない。

おそらく、武田薬品は国税不服審判所に審査請求を行うものと思われる。

ーーー

移転価格税制を巡る問題で、異議申し立てを国税当局が認めるのは珍しいという。

TDKの場合は、東京国税局の移転価格税制に基づく更正処分について国税不服審判所に審査請求を行い、国税不服審判所長から約141億円の処分を取り消しの裁決書を受領、地方税や還付加算金を含め約94億円が還付された。

2010/2/5 国税不服審判所、TDKの移転価格課税取り消し

信越化学の場合は、約110億円の追徴課税を受けていた問題で、二重課税の排除を求め日米相互協議を申し立て、日米両国の当局の相互協議で、申告漏れと指摘された所得は当初の約233億円から約39億円に減額され、還付加算金を含めて日米合計で約119億円が還付された。
米子会社
シンテックは米税務当局(IRS)が39億円相当の技術料追加を認めたため、相当する税金の還付を受けた。

2010/6/11 信越化学の移転価格課税、119億円還付へ

 

付記

東亜合成は2012年11月12日、日米租税条約に基づき日米両当局間で協議中であった当社と米国子会社の取引にかかる移転価格税制の適用についての相互協議が合意に達した旨の通知を、国税庁より受領したと発表した。

2001年12月期から2006年12月期の6年間の米国子会社との取引に関して、東京国税局より国外移転所得金額約19億円の移転価格税制に基づく更生処分を受け、追加納税額約9億円を2008年3月に納付したが、二重課税を排除を目的として国税庁に対して日米相互協議の申立てを行っていた。

二重課税を排除されることとなり、同社は東京国税局より追加納税額にかかる減額更正を受けるとともに、米国子会社は米国税務当局より減額更正を受ける予定。
 


2012/4/10  ConocoPhillips、川下事業をPhillips 66 として分離 

ConocoPhillipsの取締役会は2011年7月、同社をスピンオフにより Exploration & Production事業とRefining & Marketing事業の2つの独立した企業に分割し、それぞれを上場する計画を承認した。

2011/7/20 ConocoPhillips、石油開発と精製に会社分割

ConocoPhillipsの取締役会は2012年4月4日、分離を承認した。

Exploration & Production会社がConocoPhillipsの名称を引き継ぎ、下流のRefining & Marketing会社はPhillips 66となる。
Phillips66は上場する。

Phillips 66 はConocoとの合併前のPhillips Petroleumのガソリンのブランド名。
1927年に新しいハイオクタンガソリンのテストをUS Highway 66で行い、時速66マイルが出たため、ガソリンのブランド名をPhillips 66とした。

4月30日に、株主は2株につきPhillips66の株1株を交付される。

新しいConocoPhillipsはPhillips66の株を持たない。

ーーー

ConocoPhillips2002年にPhillips PetroleumConocoが合併して誕生した。

ーーー

ConocoPhillips事業

ーーー

Phillips 66の事業


2012/4/11  東ソー、南陽事業所爆発事故の調査報告書を発表

東ソーは4月9日、南陽事業所事故調査報告書を発表した。
4月3日に関係行政官庁へ提出、6日に受理された。

   http://www.tosoh.co.jp/news/pdfs/20120409002.pdf

付記

東ソーは2012年6月13日、南陽事業所第二VCM製造施設爆発事故調査対策委員会の報告書を発表した。
http://www.tosoh.co.jp/news/pdfs/20120613001.pdf

事故は2011年11月13日に南陽事業所第二VCM製造施設で発生した。
  
2011/11/17  東ソー・南陽事業所の第二VCMプラントで爆発事故

3時39分にオキシ反応工程の緊急放出弁誤作動で全開、プラントが全停止した。
その後、プラント点検のための液抜き作業等を行ったが、ガス漏れが起こり、15時24分に爆発した。
1名が死亡した。

事故の経緯と原因は以下の通り。

  1)最初の緊急放出弁誤作動はバルブポジショナーのトルクモーターコイルの温度変化による接触不良

 

2)塩酸塔へのフィード組成の変動に気づかず、塩酸塔の塔内温度分布を適正に保てなかったために塩酸塔塔頂のHCL組成が異常となり、塩酸塔還流槽にVCMが多量に混入した。

 

3)1,1-EDC生成の異常反応の知識が無かったため、通常の停止操作に入った。

VCMの混入した還流槽を塩酸塔と切り離して閉鎖系にしたこと、冷却源を停止したことで急激な圧力上昇の要因を作った。

 

4)還流槽とタンク内に反応触媒となる塩化第二鉄が存在したことで、HCLとVCMによる1,1-EDCの生成反応(発熱反応)が進行し、温度・圧力が急上昇。

 

5)異常時の対応マニュアルが十分でなかった。

 

報告書では以下の通り結論付けている。

本事故の要因は、オキシ反応工程のA系列での緊急放出弁の誤作動を発端に、プラント全体の大幅な緊急ロードダウンが発生し、その過程で塩酸塔の温度管理が適切ではなかったため、HCLの中にVCMを混入させたこと、HCLとVCMから1,1-EDCが生成する反応に対する知識が不足していたため、通常と同じ考えに基づいた各機器の停止処置操作を行ったこと、異常時の対応マニュアルが十分でなかったこと、等である。

最初のトラブルから爆発炎上に至るまで約12時間の長時間が経過しており、その間、幾度も災害を回避する機会があったと思われるが、充分な対処に至らず、重大な結果を引き起こした。

報告書では事故の再発防止対策として、ハード対応とソフト対応(マニュアル改定、教育等)を挙げているが、次の記載が気になる。

事業所の体質的な課題に関しては、再発防止策が浸透し、効果を上げるまでには相当の時間を要すると思われる。

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東ソーでは休止中の第一VCM、第三VCMプラントについてもプラント特性に合わせて同様の対策を取り、今回の調査報告書と同時に、両プラントの稼働再開に向け改善計画書を提出した。

これを受け、県と同市消防本部、経済産業省の中国四国産業保安監督部(広島市)は計画書の審査、確認のため、10日に現地で合同の立ち入り調査を行った。

東ソーでは改善策の実施後に報告書を提出し、第一プラントは5月上旬、第三は6月以降の稼働再開を目指している。
なお、ペースト塩ビは2011年12月後半に生産開始している。

事故が起きた第2号機は、撤去して新設となれば運転再開に1年以上かかる見通し。

付記

東ソーは5月9日、第一塩ビモノマープラント(年産能力:25万トン)が8日から稼動再開したと発表した。

東ソーは4月26日、第三塩ビモノマー(年産能力:40万トン)の運転再開が同日、当局から承認されたと発表した。27日から再稼働に向けた準備を開始する。

東ソーは7月8日、第三塩ビモノマー(年産能力40万トン)が稼動を再開したと発表した。

東ソーの宇田川社長は7月12日、第二塩ビモノマー(55万トン)について、「再建するが、生産能力は元に戻さず年20〜30万トンにする」と述べた。(日本経済新聞)


2012/4/12  China-Malaysia欽州工業園区 建設 

中国とマレーシアは4月1日、 広西チワン族自治区欽州市で両国首相が出席し、China-Malaysia Qinzhou Industrial Park(中馬欽州工業園区)の立ち上げ式典を行った。

同工業園区は2011年4月に両国首相が設立に合意した。

住宅、工業団地、商業施設からなり、第1期は15km2、最終的には55km2となる。
開発コストは10億リンギ(約270億円)と見込まれている。

マレーシアのQinzhou Development (Malaysia) と欽州政府傘下の欽州金谷投資が合弁で手掛け、今後3期に分け、15年で開発を行う。

 

ナジブ首相は挨拶の中で、着想から1年でプロジェクトが着工に至ったことについて、「中国政府のプロジェクト認可までの動きが非常に速く、感銘を受けた。この“欽州スピード”とをマレーシアも学ぶべきだ」と、述べた。

温家宝首相はナジブ首相に対して中国はもっと多くの中国企業にマレーシアに投資するよう勧めているとしマレーシアにも同様の工業園区を建設したいと述べた。

ナジブ首相はこれに賛成し、それにより中国の企業がASEANに大きな足跡を残すことになると述べた。

ナジブ首相はその後、首相のお膝元パハン州クアンタンのGebengに工業園区を建設すると述べた。

        Geneng には現在、PetronasのMTBE MalaysiaとPP Malaysia、BASF/Petronas JVのBASF Petronasがある。

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中国は既にシンガポールと共同で2つの工業園区を持っている。

江蘇省蘇州市のChina-Singapore Suzhou Industrial Park (中新蘇州工業園区)と天津市郊外のChina-Singapore Tianjin Eco-City (中新天津生態城)である。

China-Singapore Suzhou Industrial Park 中新蘇州工業園区
蘇州工業園区は中国最初の政府間合作開発区で、日本企業も多く進出している。
詳細は http://www.sipac.gov.cn/japanese/

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China-Singapore Tianjin Eco-City 中新天津生態城
 

天津市の浜海新区は渤海湾に面した区域で、
塘沽(TangGu)、漢沽(Hangu)、大港(Dagang)の3つの行政区と経済技術開発区(TEDA)、保税区などから構成されているが、漢沽とTEDAの間に建設中。

天津エコシティの計画詳細は http://file.h2o-china.com/user/130/2e.pdf 

 


2012/4/13   昭和シェル・太陽石油・GS Caltex、韓国でのパラキシレン事業で基本覚書締結

昭和シェル石油と太陽石油は4月13日、韓国GS Caltexとの間で韓国でのパラキシレン事業に関わる新規プロジェクト基本覚書を締結した。

麗水市のGS Caltexの年産能力135万トンのPXプラントを2014年末に年産235万トンまで増強し、PXの単一工場として世界最大とする。 (インドのRelianceが185万トン、韓国のSオイル 170万トン)

昭和シェル石油と太陽石油は原料供給などで協力する。

両社の原料キシレン能力は以下の通り。
 昭和四日市石油 376千トン
 西部石油    250千トン(昭和シェル 38%、宇部興産 11%、他に中国電力ほか)

 太陽石油    400千トン

両社は製造・販売の関与も検討する。
合弁設立の有無や各社の投資負担など協力関係の詳細は今後詰める。

両社は、「この協働により三社は、原材料調達・生産・製品の販売に至る、PX事業を通しての競争力強化を目指してまいります」としている。

総事業費は500億〜600億円規模になる見通し。

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韓国企業はパラキシレンの拡大を図っている。
日本企業の参加が相次いでいる。

1)コスモ石油・Hyundai Oil Bank

 コスモ石油は2009年6月、Hyundai Oil Bankとの合弁会社設立の基本合意を発表した。

合弁会社:HC Petrochem
出資比率:50/50
 ・事業内容 :パラキシレンおよびその他関連製品の製造・販売
 ・設備規模 :Hyundai Oil Bankの既存設備(大山)の譲受
        ナフサ原料のパラキシレン 380千トン
/
         パラキシレン製造設備 新設
           混合キシレン原料のパラキシレン 800千トン
/
           (2011年7月に鍬入れ式)

 ・コスモ石油四日市製油所にミックスキシレン蒸留装置 (300千トン)を新設、JVに供給

 注)コスモ石油とHyundai Oil BankにはUAEのIPICが出資している。

  2009/5/8 コスモ石油、韓国でパラキシレン製造へ

2)JX日鉱日石エネルギーは2011年8月、SKイノベーション(旧称 SK Energy)と合弁設立で合意した。
 2014年に年産能力100万トンのパラキシレンの生産を始める予定。

 2007年1月22日に当時の新日本石油とSKが合意した戦略的業務提携に基づくもの。

1)パラキシレン製造に係る合弁会社設立

社名:未定  付記 2012/6/8設立、ウルサン・アロマティックス
立地:蔚山
出資:JX 50% -1株、SK 50%+1株
能力:約100万トン
原料:JXは日本国内の製油所から供給

注)SKは蔚山にパラキシレン 650千トンを持っている。

2)潤滑油ベースオイル製造に係る合弁会社設立

2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

付記

ウルサン・アロマティックス は2012年11月6日、パラキシレン製造工場の建設に着手した。
2014年8月の商業運転開始を予定。
JX日鉱日石は日本国内の製油所より新工場にパラキシレン原料を供給する。

3)韓国のS-Oilは2011年6月に、温山で1系列で世界最大のパラキシレン工場の商業生産を開始した。

稼働したのはNo.2 Aromatic Complexのパラキシレン年産90万トン、ベンゼン 28万トン。
これにより同社の能力はほぼ倍増し、パラキシレン 170万トン、ベンゼン56万トンとなった。

2011/10/28   韓国S-Oil、1系列で世界最大のパラキシレン工場の竣工式を開催


2012/4/14  コスモ石油、沖縄に貯蔵のサウジ産原油を調達

コスモ石油は、サウジアラビア国営石油会社のSaudi Aramcoが沖縄県にあるタンクに貯蔵している原油を調達する。
5月上旬に沖縄県の基地にあるサウジ産原油20万キロリットルを船積みする予定で、堺製油所まで運び、石油製品を生産する。

原油の国内輸送に関し大型タンカーの利用が認められたことから費用の軽減が見込まれる。

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Saudi Aramcoによる沖縄原油タンク活用プロジェクトは2007年4月に中東訪問中の安倍晋三首相がアブドラ国王との会談で提案したもので、2010年6月に資源エネルギー庁とSaudi Aramcoが基本的事項について合意した。

Aramcoがうるま市の沖縄石油基地鰍フ原油タンク6基(計60万キロリットル貯蔵)を借り受け、自国原油を蔵置し、商業的に活用する。
経産省が石油天然ガス・金属鉱物資源機構JOGMECを通じ、沖縄石油基地から借りる国家備蓄用タンクのうち6基を転貸)

我が国は、緊急時において貯蔵される原油の優先的な供給を受けられ、エネルギーセキュリティが向上するとともに、日本への原油供給の約30パーセントを担うサウジアラビア王国との戦略的関係が一層強化される。

中東からの原油輸送は通常20日かかるが、沖縄からだと3〜4日で製油所まで届く。

第1船(約30万キロリットル)は2011年2月に入港した。

Aramcoはこれまで、中国や韓国などに販売してきた模様。
第一号は2011年5月に韓国の
GS Caltex.に出荷された。
2011年8月にはConocoPhillips向けに米西海岸に出荷されている。

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沖縄石油基地鰍ヘ1973年設立で、JX日鉱日石エネルギーが65%、コスモ石油が 35%を出資する。

うるま市の約63万坪の敷地に45基(貯油能力450万キロリットル)の巨大タンクを配備し、日本の原油消費量の約6日分に相当する原油を貯蔵している。

平安座島と宮城島の間を埋め立てて、沖縄石油基地鰍フ石油備蓄基地(OCC)が作られている。
これに隣接して平安座島に沖縄出光の石油備蓄基地(沖縄ターミナル:OTC)がある。(航空写真の青色の囲い)

本島と結ぶ海中道路は、この石油備蓄基地の為につくられた。

 

 

我が国の現行石油備蓄制度は、国家備蓄と、「石油の備蓄の確保等に関する法律」に基づく民間備蓄の二本立てとなっている。

石油備蓄は現在、国家備蓄が116日分、民間備蓄は89日分となっており、国家備蓄は国内10か所の国家備蓄基地に加え、民間石油タンクを借り上げている。


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