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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2013/5/13  2013年3月決算 − 三菱ケミカル、三井化学 

三菱ケミカルホールディングス

営業損益は前年比で403億円の減益となったが、石油化学(ケミカルズ、ポリマーズ)がほぼ同額の減益で、ともに損益ゼロとなっている。
製品と原料の価格差が1000億円もあり、石油化学がそのうち700億円。(ケミカルズでは主としてテレフタル酸関係)

ヘルスケアが好調で、全営業利益の80%強を占める。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 31,668 2,265 2,239 836 5 5
2012/3 32,082 1,306 1,336 355 5 5
2013/3 30,886 902 871 186 6 6
前年比 -1,196 -403 -466 -169 1  1 
2014/3 35,700 1,580 1,430 510 6 6

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 売買差  数量差  コスト
削減
その他
ケミカルズ 530 148 -2 145 -150 -289 113 34 -8
ポリマーズ 550 238 1 225 -237 -429 73 82 37
エレクトロニクス
アプリケーションズ
10 -53 -51 -10 2 -45 -15 62 0
デザインド
マテリアルズ
365 256 225 450 -31 -62 -30  87 -26
ヘルスケア 851 764 749 800 -15 -194 153 6 20
その他 45 61 65 50 4   0 13 -9
全社 -86 -108 -85 -80 23     12  11
合計 2,265 1,306 902 1,580 -403 -1,018 294 296 25

注 エレクトロニクス・アプリケーションズ:記録材料、電子関連製品、情報機材
   デザインド・マテリアルズ:食品機能材、電池材料、精密化学品、樹脂加工品、
               複合材、無機化学品、化学製品

2014年3月期については、円高の修正による増益効果と、機能商品・素材分野における需要回復と拡販による増益を見込む。


田辺三菱製薬の業績は以下の通りで、薬価改定の影響はあったが、新製品6品目の伸びが大きく、純利益では5期連続の最高益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2012/3 4,072 690 688 390 15 20
2013/3 4,192 690 694 419 20 20
前年比 120 -1 6 29 5 0 
2014/3 4,170 700 715 440 20 20

三菱ケミカルホールディングスの田辺三菱製薬持分は56.34%であるため、営業損益、経常損益は全額が連結決算に反映されるが、当期損益ベースでは少数株主利益が控除され、持株比率分しか反映されない。

ーーー

三井化学

減収で大幅減益となった。

2012年4月22日、岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発・火災事故が発生した。
レゾルシンは再建を断念し、事業撤退、メタパラクレゾールその他が長期休止した。

これによる販売減少が448億円ある。

営業損益は基礎化学品の交易条件差、数量差が大きく、大幅減益となった。

特別損益は事故損失49億円、事業再構築の減損損失56億円、関連事業損失41億円などがあり、受取保険金55億円などがあったが、差引100億円の損失となっている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 13,917 405 389 249 3 3
2012/3 14,540 216 229 -10 3 3
2013/3 14,062 43 92 -81 3 3
前年比 -478 -173 -137 -71 0  0 
2014/3 16,000 280 230 50 3 3

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 交易
条件 
数量差  固定費
石化 128 89 77 160 -12 -68 10 46
基礎化学品 204 86 -189 -140 -275 -247 -83 55
ウレタン -90 -146 -26 70 119 92 10 18
機能樹脂 72 82 84 105 2 -40 18 24
(加工品) 14              
機能化学品 100 116 124 155 7 -16 21 2
フィルム・シート   2 -33 -20 -35 -37   2
その他 1 1 -6 -50 -7     20
全社 -25 -15 12 27    
合計 405 216 43 280 -173 -316 -24 167

三井化学は機能化学品部門 にヘルスケア材料事業部を持つが、三菱ケミカルの田辺三菱製薬、住友化学の大日本住友製薬のように損益に貢献するには至っていない。

同社では景気変動の影響を受けにくいヘルスケア材料事業の拡大を目指しており、本年4月に歯科材料事業を543億円で買収した。
   


2013/5/14 2013年3月期 決算 − 旭化成、日本触媒、帝人

旭化成

ケミカルズは減益とはなったが頑張っており、住宅と医薬・医療が好調で、若干の減益で止まった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 15,984 1,229 1,182 603 5 6
2012/3 15,732 1,043 1,076 558 7 7
2013/3 16,666 920 951 537 7 7
前年比 934 -123 -124 -21    
2014/3 18,910 1,300 1,300 770 7 7

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3
予想
  前年比 差
増減 売買差  数量差  コスト差
ケミカルズ 644 445 229 430 -216 -59 -53 -104
住宅 365 463 543 600 79 27 91 -39
医薬・医療 70 88 159 205 71 -29 162 -62
繊維 42 31 40 70 9 6 -9 11
エレクトロニクス 143 64 28 100 -36 -59 -40 63
建材 21 18 40 55 21 3 7 12
クリティカルケア     -37 -40 -37     -37
その他 17 30 22 15 -8   -8  
全社 -72 -97 -105 -135 -8     -8
合計 1,229 1,043 920 1,300 -123 -111 150 -164

2012年4月に米国の救命救急医療機器大手のZoll Medicalの買収を完了した。
同社関連の業績を、「クリティカルケア」セグメントで開示。

2014年3月期については、ケミカルとエレクトロニクスの増益を見込む。

ーーー

日本触媒

2012年9月29日、姫路製造所のアクリル酸のタンクが爆発した。

ほとんどのプラントが停止、12月に一部プラントの使用停止命令が解除されたが、アクリル酸とそれを使ったアクリル酸エステル、吸水性樹脂(SAP)は下期全期間停止し、現在もまだ停止している。
メタアクリル酸およびメチルメタアクリレートについては、2013年4月30日に一時使用停止命令が解除された。

プラント停止に伴う減収減益と、他の製品の原料・製品の価格差等で大幅な減益となった。
なお、停止期間中の固定費は特別損失に振り替えている。

停止期間中の固定費を含む爆発火災事故に係わる損失(減収損失を除く)8,882百万円を特別損失に計上した。
保険金8,231百万円が入り、特別利益に計上している。

大幅減益となるため、法人税等は74億円減少となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 2,883 298 310 211 10 12
2012/3 3,207 311 331 213 11 11
2013/3 2,695 100 138 84 11 5
前年比 -512 -211 -193 -129 0  -6 
2014/3 3,000 150 180 120 8 8

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 前年比 2014/3
予想
基礎化学品 140 134 21 -113 150
機能性化学品 133 165 68 -97
環境・触媒 24 17 14 -2
全社 1 -5 -3 2
合計 298 311 100 -211 150

基礎化学品:アクリル酸、アクリル酸エステル、EO・EG、高級アルコール、その他
機能性化学品:高吸水性樹脂、無水マレイン酸、不飽和ポリエステル樹脂、その他

 

2014年3月期については、下期には姫路製造所の稼働が回復し、生産活動が本格化すると見込み、増収増益を予想している。

ーーー

帝人

炭素繊維を中心とする高機能繊維・複合材料と電子材料・化成品が赤字に転落、大幅減益となった。
ヘルスケアのみが好調で、全社の損益を支えている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 8,157 486 503 252 2 3
2012/3 8,544 340 343 120 3 3
2013/3 7,457 124 98 -291 2 2
前年比 -1,087 -217 -245 -411 -1  -1 
2014/3 8,300 250 230 80 2 2

特別損失に減損損失294億円を計上した。内訳は以下の通り(億円)

炭素繊維 日本・ノレン -173
ドイツ・機械装置 -31
米国・機械装置 -19
ヘルスケア 米国・ノレン等 -54
その他   -17

炭素繊維のうち、ノレンは2007年に東邦テナックスを100%子会社化した際の「のれん代」

長期化する景気低迷、またスポーツ・レジャー用途を中心とした競合激化の状況を踏まえ、将来キャッシュフロー予測に基づく回収可能性を慎重に検討して減損処理した。

2013/4/6    帝人、炭素繊維関連で減損処理

ヘルスケアは米国で在宅医療事業を営むBraden  Partners L.P. を2008年に114百万ドルで買収した際ののれん等の未償却残高の一部で、米国での医療制度改革で保険価格が大幅に引き下げられたこと等の環境変化で買収時に想定した収益性が見込めなくなった。
 
その他は2001年の洪水で被災したタイの子会社の工場の固定資産の一部等の減損損失。

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 前年比 2014/3
予想
高機能繊維・複合材料 44 72 -47 -119 35
電子材料・化成品 234 37 -19 -57 10
ヘルスケア 229 259 248 -11 250
製品 77 66 47 -19 50
その他 31 37 42 5 40
全社 -131 -131 -148 -16 -135
合計 486 340 124 -217 250

同社のヘルスケア部門には「医薬品」と「在宅医療」がある。

 医薬品:

骨粗鬆症治療剤は後発品を含む他社新薬の伸張で厳しい状況が続く。

そのなかで、痛風・高尿酸血症治療薬「フェブキソスタット」が国内・海外共に順調に販売を伸ばしている。

 在宅医療:

国内外で約40万人の患者にサービスを提供している。

 在宅酸素療法(HOT)用酸素濃縮装置
 睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療器:携帯電話網でモニタリング
 補助換気療法機器
 超音波骨折治療器 など


2013/5/15 Solvay、欧州塩ビ事業をINEOSと統合、将来塩ビ事業から撤退 

SolvayとINEOSは5月7日、欧州の塩ビ事業を統合し、50/50のJVとする覚書に調印した。
今後、従業員の代表と協議した後、正式契約を締結する。

この覚書には将来のSolvayのJVからの撤退について記載されている。JV設立から4年から6年の間にINEOSがSolvayの持株を全て買取り、100%子会社とするというもの 。

買取価格はREBITDA(経常損益+支払利息+減価償却・減耗費)の平均の5.5倍となっており、SolvayはJV発足時に前渡し金として250百万ユーロを受け取る権利を持つ。

2012年実績ベースでは合計のREBITDAは257百万ユーロとなっており、この5.5倍では1,414百万ユーロとなる。

欧州の塩ビ事業は2007年以来、需要が30%も下落し、輸出も今後減少する見込みで、大幅な供給過剰が予想されており、シェールガス革命の恩恵を受ける米国との原料価格差も今後拡大する。

このため、2012年にTotalグループのArkemaが塩ビ事業をコモディティ製品に特化するKlesch Group に売却した。本件のその後は別記。

そのなかでSolvayは2011年にRhodiaの友好的買収を行い、スペシャルティ化を推し進めており、これはその一環である。
今後、石油・ガス用の特殊ポリマー、水及び健康分野、消費者用化学品(肌ケア、毛髪ケア)などに投資する。

ーーー

統合対象は欧州のクロルアルカリと塩ビ事業で、詳細は下記の通り。

  2012年売上高 対象 対象外
Solvay 19億ユーロ Solvin
(Solvay 75%, BASF 25%)
・塩化ビニリデン
RusVinyl(ロシアのSiburとのJV)
Solvayのクロルアルカリプラント Povoa、Bussi、Torrelavega
製塩プラント(Tavaux、Martorell、Jemeppe)  
欧州の塩素誘導品
(エピクロルヒドリン、CLM、塩酸、Hypo)
 
フランスFevzinのエチレンの42.5%
(残りの出資はTotal)
 
Ineos 24億ユーロ Kerling
(Ineos ChlorVnyl)
ノルウェー Rafnesのエチレンの50%
(残りはIneos)

Solvayの統合対象は欧州の塩ビ事業だけであり、アルゼンチンとブラジルに工場を持つ子会社のSolvay Indupa とタイのJVのVinythaiはSolvayに残る。

KerlingはINEOSの塩ビ事業子会社。

1986年にICIとEniChemが50/50の塩ビ事業JVのEVCを設立した。
2001年にINEOSがEVCの過半を買収、更にICIから塩素化学事業を買収した。
2005年にEVCを100%子会社とした。
  
2006/6/14  事業買収で急成長した化学会社

INEOS は2007年にNorsk Hydro からポリマー事業のKerling 社(旧称 Hydro Polymer)を買収し、INEOSの塩ビ事業をKerlingとした。

INEOSは2011年にベルギーのTessenderloに本拠を置く Tessenderlo Groupから塩ビ関連事業(LVM)を買収した。
 

 統合により、2012年の決算数値ベースでJVの売上高は43億ユーロとなり、PVC能力で信越化学に次ぐ世界第二位となる。


2013/5/16  元Arkemaの塩ビ事業を巡る問題 

昨日の記事の通り、欧州の塩ビ業界は供給過剰による困難に直面しており、塩ビ業界での名門のSolvayが将来の撤退を前提にINEOSとの塩ビ事業統合を決めたが、TotalグループのArkemaは2012年7月 に塩ビ事業をコモディティ製品に特化するKlesch Group に売却した 。

 2011/11/30 Arkema、塩ビ関連事業を売却

Klesch Groupは1990年にスイスで設立されたコモディティ事業の企業で、メタルと石油を扱う。
メタル部門はオランダに精錬能力165千トンのDelfzijl BV (ALDEL)を持つ。

プラントはリストラなしで移管、従業員はそのままとし、Arkemaから経営陣を派遣、Klesch Group の下でこれを欧州の塩ビ産業のリーダーとするとしていた。

この取引では赤字の事業をリストラなしで引き取ってもらうため、売る側のArkemaが買い手のKlesch Groupに100百万ユーロを支払う。
これを含めてArkemaは2011年に470百万ユーロの費用を計上した。

Arkemaは残る2つのスペシャルティ部門(Industrial Chemicals、Performance Products)に集中する。

新しいPVC会社はKEM ONEと名付けられた。

Klesch Group は同社を電解〜PVCまでのKem One SASと、コンパウンド、窓枠、塩ビ管を扱うKem One Innovative Vinyls SASの2社に分離した。

同社の概要は以下の通り。

能力(千トン)
塩素 660
苛性ソーダ 730
VCM 870
PVC 870
コンパウンド 170
窓枠 35
塩ビ管 45

 

  Vauvertで岩塩から塩水をつくり、近くのFos-sur-Mer とLavéraにダクトで送る。

Fos-sur-MerとLavéraで塩素/ソーダ、VCMを製造、BalanとSaint-AubanでPVCを製造する。

他に、下記にコンパウンドや塩ビ安定剤の工場を持つ。

 メキシコ   Resinoplast North America
 埼玉   昭島化学工業
 江蘇省常熟市 Changshu Resichina Engineering Polymers
 Vietnam 
     Resinoplast Vietnam

 

本年3月、Klesch Group はArkemaに対し、310百万ユーロの損害賠償を求めた。

塩ビ事業の売買に当たり、PVC資産について正しい財務情報を開示しなかったというもの。

塩ビ事業を取得し8か月経つが、取引に際してArkemaが開示した財務情報と現在の状況に著しい差が見付かったとし、これらが分かっておれば、あの条件での取引はなかったとしている。

またArkemaが経営陣を派遣するとしていたが、すぐ辞めてしまったとしている。

その後、これまで数か月交渉したが効果がなかったとし、310百万ユーロの賠償を求め、正式に調停を申請した。

3月27日、上流のKem One SASが親会社の Klesch の要請で破産申請した。
下流のKem One Innovative Vinyls SASは“satisfactory”.とされている。

ArkemaはKleschの主張を全て否定した。

数か月交渉したという事実も無く、交渉段階でKleschは全ての情報にアクセスできた。
取引は完全な透明性のもとで行われ、証明できる。

問題はKleschがKem Oneを上流と下流の2つの企業に分断したことにあるとし、以下の通り述べている。

塩ビ事業を売却する際には、電解、VCM、PVCからコンパウンド、窓枠、塩ビ管までのパッケージとした。
一貫して運営することがKem Oneの将来の成功のためのキイであった。

スタート時にはKem Oneは健全なバランスシートで、借入金はなく、100百万ユーロの現金の寄付もあった。
KleschはKem Oneのニーズに合った資金計画作成を約束していた。

しかし、Kleschは一方的に上流と下流に分断し、必要な資金を供給しなかった。

Arkemaには現時点でKem Oneへの債権が65百万ユーロと、第三者への保証債務 60百万ユーロ、合計125百万ユーロが残っている。


ArkemaはKleschに赤字事業を押し付けた積りであったが、高くつく恐れがある。

ーーー

欧州塩ビ業界では他に、投資会社のAdvent International が塩ビ子会社 Vinnolit の売却先を探す努力を続けている。
欧州の住宅建築のスローダウンで窓枠やドア材などの塩ビ製品の販売が停滞しているのが理由。

付記

2014年5月28日、Westlake Chemical がVinnolitを買収する契約を締結した。

Vinnolit はHoechst とWacker のJVであったが、2000年にAdvent International が買収した。

2007年にVinnolitはINEOSから
ペーストPVC(Emulsions-PVC)事業を 買収した。
英国のHillhouseとドイツのSchkopauのペーストPVC工場を買収するとともに、INEOSのイタリアのPorto Torres 工場で生産するペーストPVC全量の引取り権も得た。

Vinnolit の状況は以下の通り。

能力(千トン):

PVC 780
VCM 665
Caustic soda (100%) 475

工場:

立地 製品   VCM
ドイツ Cologne Microsuspension (paste) PVC
Suspension PVC
Wacker Chemie工場内 鉄道輸送
Knapsack 電解、EDC、VCM、
Suspension PVC
Hoechst 工場内 自製
Gendorf 電解、EDC、VCM、
Suspension PVC
Emulsion PVC
  自製
Burghausen Suspension PVC
Emulsion PVC
Wacker Chemie工場内 Gendorf からパイプ輸送
Schlopau Emulsions-PVC Dow ValuePark内
(旧INEOS)
Dowからローリー輸送
英国 Hillhouse Emulsions-PVC
Microsuspensions-PVC
(旧INEOS) INEOSのRuncornからローリー

 


2013/5/17  中国で住民の工場建設反対運動が相次ぐ

安徽省合肥市の合肥國軒高科動力能源有限公司 (Hefei Guoxuan High-tech Power Energy) は上海市松江区で自動車用のリチウムイオン電池工場の建設を計画していたが、反対運動を受け、5月15日に事業計画を撤回すると表明した。用地を当局に返還、補償は求めないとしている。

この企業は当初、約10億元(約167億円)を投じて工場を建設する計画であった。

しかし環境汚染を心配する地元住民が工場建設に反対、4月21日に続き、5月に入り何度も数百人が計画撤回を求めてデモ行進した。
5月11日には1000人以上がデモした。

これに対し地方政府は、電池の工程には材料(anodeとcathode)製造とバッテリーセルの製造、組み立ての3工程があるが、今回の工場は材料製造を含まず、後の2工程のみであり、廃水やガスを正しく処理すれば環境汚染の懸念は全くないと説明した。

上海化工研究院は昨年9月に環境評価報告を発表し、環境汚染の可能性はほとんどないとした。
報告では廃水は出さないとしているが、地方政府は毎日5トンの廃水を出すと述べている。

このため、住民はこの報告の信頼性を疑っている。

昨年末には上海化工研究院がアンケートを取り、68%が計画に賛成との結果を得ており、計画に賛成する住民は、デモに参加した数百人は近くの住民8万人のほんの一部であり、公聴会を開催すべきだと主張していた。
しかし、計画に反対する住民は逆に、このアンケートの対象は8万人の住民のうちのたった150人に過ぎないと反論し、公聴会を求めた。

工場側は住民の反対を受け、計画を撤回した。

ーーー

中国では環境汚染を懸念する工場建設反対運動が相次いでいる。

雲南省昆明市では5月4日、PetroChinaの石油化学工場の建設に反対する住民約1千人が市中心部の広場に集まった。
5月16日にも数百人がデモを行った。

PetroChinaは本年2月、昆明市郊外での精製事業について中国国家発展改革委員会(NDRC)から承認を受けたと発表した。
NDRCへの提出資料ではガソリンなどのほか年産50万トンのパラキシレン(PX)も生産するとなっている。

新華社によると、昆明市の市長は、市民の反対が多ければ計画を中止する方針を表明した。

中国ではパラキシレンは非常に毒性の高いものとの認識があり、各地で反対運動が起こっている。

2006年11月に台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)が福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した際に、「事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」といった内容の記事がインターネットに次々掲載され、反対運動が広がったのが始まりである。

2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止める

2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ

2012/10/30   寧波で大規模デモ受け、SinopecのPX増設取り止め

四川省成都市でも5月4日、PetroChina が建設中の成都彭州石油化学に反対するデモが呼びかけられたが、地元当局が「地震対策訓練」に名を借りて警察官を大量動員し、抑え込んだという。

成都彭州石油化学はPetroChinaが75%、成都石化(PetroChina と成都市のJV)が25%出資する。
80万トンのエチレンコンプレックスに加え、10百万トンの製油所を建設するもの。

住民は空気と水の汚染を懸念するとともに、地震の巣である地域での建設に反対している。
彭州市は、2008年に死者行方不明9万人を出した四川大地震(中国では汶川大地震)の震源地の汶川県と同じ断層帯にある。

PetroChinaでは、この計画は中国の環境当局とNDRCの承認を得ており、地震に対しても評価を受けているとし、空気と水の問題は重視しており、もし環境問題が発生すれば工場を停止すると約束した。

ーーー

2012年7月には江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る排水が環境汚染を引き起こす恐れがあるとして、住民1万人以上が抗議デモを始めた。

南通市政府が経済技術開発区に王子製紙などを誘致する際、廃水を南通市が建設する約100kmのパイプラインで黄海に排出すると約束していた。完成後、王子製紙の工場から1日15万トンが排水される予定だった。

住民の反対を受け、南通市政府はパイプライン建設計画を「永遠に」取り消した。

2012/8/1 王子製紙の排水に抗議、中国江蘇省でデモ 


2013/5/17  番外編 ニュース

下記の件、それぞれ以前の記事に付記しました。

1) Dowに独禁法違反で12億ドルの支払い命令、Dowは控訴する。

2013/2/27   Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反裁判で有罪

2)三井物産と三菱商事、米国産LNG輸出プロジェクトで天然ガス液化加工契約及び合弁会社設立契約を締結

2012/4/20 三菱商事と三井物産、米国産LNGを輸入へ


2013/5/18 SK Capital Partners の事業 

SK Capital Partners は5月1日、Chemtura Corporationの酸化防止剤と紫外線安定剤(UV stabilizer)事業の買収を完了したと発表した。
2012年11月に売買契約を締結したもので、
対価は約2億ドル。

新会社 Addivantを設立する。同社は ポリマー、プラスチック、ゴムの性能向上に使われる酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、 阻害剤 (inhibitor)、樹脂改質剤、紫外線安定剤を含む包括的な添加剤を扱う。

Chemtura は2005年にCrompton とGreat Lakes Chemical が合併して設立された会社で、樹脂添加剤では世界最大のメーカー。
ほかに農薬、石油添加剤、ウレタンポリマー等を生産している。農薬は旧Uniroyal の事業。

Crompton 1999年に Crompton & Knowles と塩ビ添加剤メーカーのWitco が合併して出来た。
Crompton & KnowlesUniroyalの事業を買収している。

Great Lakes Chemical は水処理剤、家庭用クリーナー、難燃剤、安定剤等のメーカー。

Chemtura は2006年に旧Uniroyalの事業のEPDMとゴム薬事業をLionに売却した。
      2006/11/14 
合成ゴム会社 Lion Copolymer, LLC

Chemtura は2009年3月に米国の事業に関して Chapter 11 の申請を行ったと発表したが、2010年11月20日、財務リストラが完了し、Chapter 11から離脱したと発表した。

2009/3/21 Chemtura、民事再生法申請

ーーー

SK Capital Partners はニューヨークを拠点とする非公開株式会社で、同社の戦略は、Specialty Materials &Chemicals とHealthcare分野のニッチ市場のリーダー企業を買収することにある。

同社はこれまで、下記の事業を買収している。

買収企業  製品 取得 相手
Aristech Acrylics acrylic sheet 2008/4 三菱商事
Ascend Performance Materials Integrated Nylon Business 2009/6 Solutia
Calabrian Corporation sulfur dioxide and downstream derivatives 2011/5  
IBA Molecular radiopharmaceutical products 2012/4 Ion Beam Applications
TPC Group C4 hydrocarbons 2012/12  
  Textile Chemicals, Paper Specialties,  Emulsions 2012/12 Clariant
Addivant Antioxidant and UV Stabilizer 2013/5 Chemtura

第1号事業が三菱商事から買収したAristech Acrylicsである。

Aristech Chemical 化学品(フェノール、アセトン他)、ポリマー製品(ポリプロピレン他)の製造販売を行っていた。

1989年にHuntsmanがAristechの買収を計画した。Aristechはこれを拒否、一時は住友化学にもPPを分離してJVにする提案もしたが、1990 年に三菱商事が買収提案を行い、Huntsmanが買収を諦めたため、三菱商事による買収が確定した。買収額は850百万$だが借入金の引継ぎなどをいれると 10億$以上となるといわれた。

当初同社には三菱化成、三菱油化、三菱瓦斯化学、三菱レーヨンが各4.48%出資して三菱グループ総力を挙げて取り組む姿勢を見せたが、その後、 三菱商事100%となった。

2000年11月、三菱商事はAristechをSunocoに売却した。アリステックを買収して以来、石油化学品事業の戦略において、北米の橋頭堡として位置づけてきたが、原料価格の上昇を製品価格に転化しきれず、採算が大幅に悪化していた。譲渡価格は固定資産及び棚卸資産の合計で695百万ドル、これにその他の資産・負債を加減した金額になる。

1997年にアリステック・ケミカルのアクリル樹脂事業部門を分離独立し、三菱レイヨンが10%出資し、Aristech Acrylics LLC を設立したが、これはスノコへの売却資産には含まれず、三菱商事が88%出資で残っていた。

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SK Capital Partnersは2009年6月、Solutia Inc. からのナイロン事業買収を完了した。新しく Ascend Performance Materials を設立した。
買収金額は50百万ドルで、Solutiaは新会社の2%を受け取る。更に2011年以降4年間、毎年1百万ドルを受け取る。

Solutiaは1997年9月にMonsantoの化学部門が分離独立して設立された会社である。

Monsantoは1901年設立の化学会社だが、1985年にバイオケミストリー分野での事業展開のため、G.D.Searle を買収した。
1997年に化学部門をSolutia として分離した。

なおMonsantoは
1998年に American Home Products と合併で合意したが、破談となっている。
2000年4月にPharmacia & Upjohn と合併し、Pharmacia となった。

Pharmacia は2002年に農薬部門を再度 Monsanto として分離した。
Pharmaciaは2003年にPfizer に買収された。

Solutia は2003年12月、連邦破産法11条申請を行った。
2008年2月、会社更生手続き(Chapter 11)を終了し、再生に向けスタートした。

  2008/3/4 Solutia、破産手続き終了

2012年1月、Eastman ChemicalがSolutia Inc. の買収を発表した。

  2012/2/3  Eastman Chemical、Solutia を買収

Solutiaのナイロン事業は主に、自動車、建築、輸送、産業用に機能材料を生産するが、主要製品は以下の5つ。

・Saflex®:合わせガラス用 polyvinyl butyral (PVB) 中間膜
・CPFilm® :窓ガラス用フィルム
・Nylon Plastic & Fibers:アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、Nylon 66、ナイロン繊維
・Flexsys® :合成ゴム加硫剤
・Specialty Products :高温合成系熱媒体、航空機用作動油、航空機用洗浄溶剤、
    ポリビニルブチラール樹脂、ジフェニルオキサイド

同社は2008年6月に「原料やエネルギー価格などに左右されやすく、景気循環の影響を受けやすい」ナイロン事業をどうするか検討のためコンサルタントと契約を締結してい た。

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SK Capital Partnersは2011年5月、二酸化硫黄と関連製品のメーカーのCalabrian Corporation を同社のオーナーと共同で再構築することを決めた。

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SK Capital Partners は2012年4月、 IBA(Ion Beam Applications S.A.)から IBAの radiopharmaceutical divisionを分離独立させたIBA Molecularの 60% を買収した。残り40%はIBAが所有する。

同社の製品はPositron Emission Tomography (PET)やSingle-Photon Emission Computed Tomography (SPECT)などで使用される。

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SK Capital Partnersは2012年12月、エネルギー分野での投資会社のFirst Reserve Corporationと共同で、ブタジエン、ブテン-1、イソブチレンなどC4留分専業会社の TPC Groupを買収した。
買収額は負債込で約850百万ドル。

TPC Groupは旧称Texas Petrochemicalsで、元々は1943年に米国政府が合成ゴム製造促進のためにつくったRubber Reserve Co.である。
その後、合成ゴム事業は各社に分離され、同社は現在はC
4留分の専業会社となっている。
2000年にDIBに進出、2006年にHuntsmanからMTBEとブタジェンのプラントを購入している。

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SK Capital Partnersは2012年12月、Clariant のTextile Chemicals, Paper Specialties, Emulsions 事業を買収する契約を締結した。
買収金額は約5億ドルで、SK Capital は年金債務の一部を負担する。


2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可

米エネルギー省は5月17日、テキサス州のFreeport LNGに対し、日本などFTA非締結国への輸出を承認したと発表した。同社の計画には中部電力と大阪ガスが加わっており、2017年にも日本への輸出が始まる見通し。

Freeport LNGは2005年にテキサス州FreeportのQuintana IslandにLNGを海外から輸入してガスに戻す設備を完成させたが、米国内でガスの採掘が進んだため、天然ガスの液化設備を建設してLNGの輸出基地に替えることを決め、2010年にエネルギー省に輸出認可を申請した。
2011年2月には米国とFTAを締結している国に対する輸出認可を得ている。

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。
米国は輸出承認に際し、米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

これまで非締結国に対する輸出承認を得たのは2011年5月のCheniere EnergyのSabine Pass LNG Terminalのみである。
   2012/2/24 米国からのLNG輸入問題

その後、オバマ政権はLNG輸出に向け動き始めたが、Dow Chemicalなどが反対運動を起こしている。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表

2012/12/12 Dow、エネルギー省のLNG輸出に関する報告に反論

後記の通り、Freeport LNGにはDow Chemicalが出資しており、そこに輸出承認が与えられたのは皮肉である。

本ブログは米国政府によるLNG輸出承認制度はWTO規則違反であるとの見方をしている。
    
2013/2/5 米国の天然ガス輸出規制はGATT違反? 

なお、LNGの輸出が制限されているため、天然ガスの需給が緩み、価格が低下しており、倒産した会社も出た。
   2013/4/5 米国のシェールガス開発会社が破産法申請

ーーー

今回、エネルギー省はFTA非締結国向けの2番目の輸出承認をFreeport LNGに与えた。

1日当たりの輸出量を14億立方フィート(LNG換算で年900万トン)までに限定し、申請は25年間ではなく20年間に短縮して輸出を認める条件を設けることで、「(米国の)公益に反しない」と判断した。

付記 エネルギー省は11月15日、Freeport に対し増量を認めた。1.4 Bcf/d→1.8 Bcf/d (LNG換算で年1200万トン)

付記 エネルギー省は2014年11月14日、National Environmental Policy Act (NEPA) による環境評価が終了したため、最終輸出許可を与えた。

承認理由として、以下を挙げている。

反対派は承認が公共の利益に反するという証拠を示していない。
輸出は米国にとり net economic benefits となると思われる
承認により、天然ガスが供給不足になったり、天然ガス価格上昇や著しい価格変動を起こすことは考え難い。
  http://energy.gov/sites/prod/files/2013/05/f0/ord3282.pdf

Freeport LNGは年間440万トンの能力の液化設備3系列を建設中で、2017年に液化事業を開始することを目指しているが、下記の通り 2系列分について契約を締結している。

大阪ガスと中部電力は2012年7月31日、天然ガス液化加工契約に関する契約を締結した。
第1系列の液化設備においてそれぞれ年間約220万トンずつの天然ガス液化能力を確保した。
大阪ガスはFreeport のLNG基地事業にも参加している。(後記)

大阪ガスは2012年6月22日、米国テキサス州イーグルフォード地区のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトに参画することを決め、Cabot Oil & Gas Corporationとの間で、権益35%を250百万米ドルで取得すること等を定めた権益売買契約を締結した。

同社と中部電力は東京ガスとともに三菱商事が参画しているカナダシェールガス開発プロジェクトにも参加した。 
  2011/5/14 中部電力、東京ガス、大阪ガスと
JOGMEC、カナダシェールガス開発プロジェクトに参加 

BP Energyは2013年2月、年間440万トンの天然ガス液化加工契約に関する契約を締結した。

残る1系列分については、今回のFTA非締結国向けの承認枠を超えるため、既に承認を得たものを含むFTA締結国向けになるとみられる。

 

付記 Freeport LNG (年間1500万トン) 商業生産開始

2019/12/8  第一系列
2020/1/17  第二系列
2020/5/5    第三系列

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Freeport LNGの概要は以下のとおり。

Dowは2003年にFreeport LNGに参加した。LNGを海外から輸入してガスに戻すために利用していた。
同社は
DowはFreeport LNGによるLNG輸出計画には反対してきたが、2012年にこの65億ドルの液化計画に参加しないことを発表した。

三菱商事は2005年1月にLNG受入基地に係わる17年間の使用契約を締結した。
同社は2004年7月にOmanのQalhat LNGとの間でLNGの長期購入契約を締結しており、これを再気化して、主にテキサス州の需要家に販売する。

大阪ガスは2008年1月30日、Contango Oil & Gasとの間で、同社が保有する米国のフリーポートLNG基地事業の全持分を譲り受けると発表した。
この事業のための特別目的会社 Turbo LNG LLC を通じて同プロジェクトに10%出資した。

この時点ではLNGの輸出は検討されておらず、LNGの輸入ー再気化事業である。
ConocoPhillips、Dow Chemical、三菱商事の3社が最大25年間に渡り基地を使用する契約を締結済みであり、長期に渡る安定した収益が見込まれるとしていた。

ーーー

今後、米国の天然ガス価格は100万BTU当たり6ドルになるとの説があるが、それでも、LNGへの加工費3ドル、輸送費3ドル(メキシコ湾岸)を加えても12ドル程度であり、現在の原油価格スライドの約16ドルと比べ、かなり安くなる。

但し、現在のLNG輸入価格は単なる原油スライドではなく、震災後の買いあさりで割高になっているもので、長期的にみれば米国からのLNGはそれ程有利でないかも分からない。

ーーー

日本企業では他に下記の各社が米国産LNGの輸入を計画し、輸出認可を待っている。

東京ガスは2013年4月1日、米国のDominion Cove Point LNGから住友商事を通じて年140万トンのLNGを輸入すると発表した。
関西電力も同日、年80万トンを輸入すると発表した。
     http://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#sumisho

三菱商事と三井物産は2013年5月17日、米国のSempra Energyの子会社であるCameron LNGとの間で、それぞれ、天然ガス液化加工契約及び合弁会社設立契約(液化事業への参加)を締結したと発表した。
     http://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#LNG

 


2013/5/21    2013年3月決算 − 住友化学 

基礎化学、石油化学の減益が大きく、減益となった。

特別損益に多額の減損損失、事業構造改善費用を計上、当期損益は511億円もの赤字となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 19,824 880 841 244 3 6
2012/3 19,479 607 507 56 6 3
2013/3 19,525 450 503 -511 6 0
前年比 46 -157 -5 -567 0  -3 
2014/3 23,500 900 900 300 6 3

 

営業損益対比(億円)           
  2011/3 2012/3 2013/3 前年比 2014/3
予想
基礎化学 206 93 -64 -157 0
石油化学 111 62 -32 -94 50
情報電子化学 261 110 117 7 340
健康・農業関連 233 265 263 -2 340
医薬品 287 209 309 99 320
その他 41 77 80 2 50
全社 -260 -209 -222 -12 -200
合計 879 607 450 -157 900

基礎化学部門は合成繊維原料の市況下落と数量減、メタアクリル、アルミニウムなどの市況の下落で大幅減益となり、石油化学とともに赤字に転落した。

情報電子化学と農薬は前期並みの損益を維持、医薬品は増益となった。
情報電子化学では、液晶ディスプレイ材料の偏光フィルム、カラーフィルムの価格が下落したが、偏光フィルムの数量は増えている。

次期予想では石油化学は黒字、情報電子化学はスマートフォン用タッチパネルや偏光フィルムの出荷増で約3倍の利益を見込む。

営業損益の大幅減少のなか、経常損益ではほぼ前年並みとなり、当期損益は大幅な赤字となった。
この理由は以下の通り。(単位:億円)

  2011/3 2012/3 2013/3 前年比
営業損益 880 607 450 -157
営業外損益 受取利息・配当金 67 77 76 -1
支払利息 -130 -124 -128 -4
持分法利益 108 20 54 35
為替差損益 -66 -37 68 104
その他 -18 -35 -17 19
合計 -39 -100 52 152
経常損益 841 507 503 -5
特別 損益 投資有価証券売却益 98 -98
減損損失 -32 -36 -229 -193
事業構造改善費用 -41 -64 -108 -44
投資有価証券評価損 -47 -47
持分法投資損失 -260 260
その他 -11 -7 4 11
合計 -84 -268 -379 -111
税引前当期利益 757 239 123 -116
法人税等 348 83 527 444
(うち 法人税等調整額) (36) (-195) (350) (545)
差引 損益 409 156 -404 -561
少数株主利益 164 101 107 6
当期純利益 244 56 -511 -567

営業外損益では為替差損益が前年比で104億円の益となった。

特別損益には差引379億円の損失を計上した。

 1)減損損失 229億円

千葉 エチレン等

63

2015/9目処に千葉エチレン停止
大分  レゾルシン  66 事業環境悪化で収益性低下
中国 偏光フィルム  57 環境変化で事業計画見直し(建設途中)
ポーランド 偏光フィルム  32 営業停止を決定

住友化学は2月1日、国内石油化学事業の拠点の千葉工場の競争力強化のため、2015年9月(次の定修時期 )までに、エチレン製造設備(定修スキップ年能力415千トン)を停止すると発表した。
このため、千葉工場のエチレン等の設備の減損損失を計上した。

2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退

これ以外に、事業環境悪化で収益性が低下しているレゾルシンと偏光フィルムについて減損処理を行った。

レゾルシンの世界需要は約6万トンとされ、能力も約6万トンで、うち住友化学が30千トン、三井化学が7.6千トンであった。
しかし、中国でレゾルシンの反ダンピング調査を要請した浙江鴻盛化工
Zhejiang Hongsheng Chemical が2万トンの設備を完成させていることが分かった。

このため、事業環境が悪化しているとみられる。三井化学のレゾルシン工場は2012年4月に爆発事故を起こし、再建を断念し、昨年末に事業撤退した。

偏光フィルムについては上記のとおり利益を計上しており、来期も増益を見込んでいるが、需給状況の悪化を受け、中国計画を見直し、ポーランドについては営業停止を決定した。

なお、中国計画については、2012年9月に日経新聞が「中国生産を白紙にする方向で検討に入った」と報道したのに対し、同社は、需要の伸びが緩やかなこと、既存プラントの生産性があがったことから、稼働時期を見合わせているだけと述べている。

 2)事業構造改善費用 108億円

これには千葉工場の石油化学分が(減損損失のほかに)17億円含まれている。

 なお2012年3月期の持分法投資損失260億円は豪州農薬会社のNufarm の株式評価損。

税金は、前年は持分法投資損失(評価損)で減る予定の税金を繰延資産に計上し、法人税等調整額がマイナス(利益)になったが、本年は赤字計上に伴い繰延税金資産の見直しを行い、350億円の法人税等調整(損失)を行った。

税引後損益は404億円の大幅赤字となったが、子会社のなかで利益の大きい大日本住友製薬(出資比率は50.12%)などの利益の他株主帰属相当分が少数株主利益として控除されるため、純損益は511億円の赤字となった。


大日本住友製薬の実績は以下の通り。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2011/3 3,795 310 286 168 9 9
2012/3 3,504 204 189 86 9 9
2013/3 3,477 250 245 100 9 9
前年比 -27 46 56 14    
2014/3 3,690 260 250 130 9 9

営業損益はSepracor Inc.(現在のSunovion Pharmaceuticals )買収に伴う特許権とのれんの償却費259億円を控除したのちのもの。
前年は277億円であった。


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