ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  2015 http://blog.knak.jp
 



 
2015/4/16  ジェネリック医薬品大手のMylan、アイルランド製薬大手に買収提案    

米国のジェネリック医薬品大手のMylan N.V. は4月8日、アイルランド製薬大手のPerrigo Company plc に買収を提案したと発表した。

4月6日にPerrigoに対し現金と株式交換で1株当たり205ドルでの買収を示した。提案前の終値を25%上回るもので、買収総額は300億ドル近くにのぼる見通し。

欧米で大衆薬や健康食品を手掛けるPerrigoの買収を通じて後発薬以外にも事業を多角化し、顧客基盤を広げる考え。

Mylanでは、ユニークで比類のない多角化したグローバルな医薬業界のリーダーになるとし、「両社の組み合わせは短期的にも、また長期的にも価値の創造につながる」と述べ た。大衆薬、健康食品を商品群に加え、世界の主要市場で事業基盤を拡大するとしている。

Perrigo は提案を「検討する」と発表した。両社の2014年ベースの合計売上高はおよそ153億ドルに達する。

付記

Perrigoは4月21日、同社の取締役会が満場一致でMylanの買収提案を拒否したと発表した。
Mylan の提案はPerrigoの価値とその将来の成長見通しを「著しく過小評価」しているとしている。

Mylanは敵対的買収に踏み切り、9月14日に Perrigoの全株を対象とするTOBを開始した。TOBに応じるPerrigo株主は、1株当たり、現金75ドルとMylanの 2.3株を受け取る。
全株式の50%以上の応募でTOBは成立する。

11月13日、全体の約40%しか応募がなかったため、TOBは成立せず、元の株主に返却された。

 

Mylanは米国のほか英国など欧州にも拠点を持つ。今年に入り、米製薬大手Abbott から米国以外の先進国市場の後発医薬品事業を買収した。

2014/7/21  MylanがAbbottのジェネリック事業の一部を買収、本社移転も目的の一つ 


Perrigoは1887年にミシガン州で設立された企業で、"Quality Affordable Healthcare Products®"をモットーに、多くの種類のOTC healthcare 製品、ジェネリック医薬品、乳児用調整乳など幅広い製品を扱っている。

当初はGeneral storeであったが、ビタミンやヘルスケア製品などへ順次進出した。
2005年にイスラエルのジェネリック医薬品企業 Agis Industries を買収するなど、拡大を続け、2013年にアイルランドの医薬品会社Élan を買収し、本部をDublin に移した。

2014年11月にベルギーに本拠を置く OTC healthcare のOmega Pharma NVを36億ユーロで買収した。

Omega 買収後の年間売上高は57億ドルで、製品構成は下記の通り。

Perrigo Consumer Healthcare  
  鎮痛剤 8%
禁煙製品 4%
咳止め、風邪薬 9%
胃腸薬  7%
動物薬  3%
その他  8%
合計 39%
Omega OTC  28%
Perrigo Nutritionals  
  乳児用調整乳 7%
栄養剤・ビタミン 3%
合計  10%
Consumer 製品合計 77%
ジェネリック医薬品 16%
医薬品原料 4%
ロイヤリティ収入* 3%
合計 100%

 * 多発性硬化症薬 Tysabri®のロイヤリティをBiogen から受け取っている。


 
2015/4/17    三菱ガス化学・三菱商事・三菱重工の3社、トリニダード・トバゴでのメタノール事業で契約 

三菱ガス化学、三菱商事および三菱重工業は4月13日、トリニダード・トバゴのNational Gas Company of Trinidad and Tobago Limited (NGC)および Massy Holdings Ltd.との間で、メタノール/ジメチルエーテル製造販売事業を進めることで合意し、プロジェクト契約、製造プラントのEPC(設計・調達・建設)契約、ガス供給契約等、主要な契約に調印したと発表した。

三菱ガス化学と三菱商事は2013年4月、トリニダード・トバゴ政府及び同国のNeal & Massy Holdingsとともに、この事業を検討することに合意し、NGC とNational Energy Corporation of Trinidad and Tobago (NEC)も加わり、Project Development Agreement を締結、第一段階実施のため、Caribbean Gas Chemical を設立した。

2013/4/12  三菱ガス化学と三菱商事、トリニダード・トバゴでメタノール/DMEの製造事業F/S に合意

このたび、最終的に事業を進めることで合意し、建設を担当する三菱重工も出資者に加え、必要諸契約を締結した。

計画概要は下記の通り。

JV名 Caribbean Gas Chemical Limited(2013 年3 月設立)
所在地 La Brea, Union Estate Industrial Estate
生産量 メタノール=100 万トン/年
ジメチルエーテル=2 万トン/年
出資比率
三菱ガス化学 26.25% メタノールを世界中で販売  
三菱商事 26.25% メタノールを世界中で販売  
三菱重工 17.5% プラントの設計から建設までを担当  
National Gas Company 20.0%    
Massy 10.0% メタノールを世界中で販売  
総投資額 約1,000 百万US$
完工時期 2018 年6 月予定

三菱ガス化学、三菱商事、Massy の3 社は、生産されるメタノールを世界中で販売すると同時に、トリニダード・トバゴ共和国政府と協力し、同国並びに周辺カリブ諸国において、ジメチルエーテルのディーゼル燃料代替促進に向けたプロモーションを行う。

ーーー

Trinidad Tobagoには豊かな石油と天然ガスの資源があり、石油と天然ガスがGDPの40%、輸出の80%を占める。

同国の天然ガスを利用する合計7つのメタノールプラントがPoint Lisasにあり、能力合計は660万トンに達する。

(1)   国営 Trinidad and Tobago Methanol Company

1999年に子会社を統合した。
下記のメタノール5工場のほか、アンモニア/尿素プラントを持つ。

子会社
統合
Trinidad and Tobago Methanol Company (TTMC) 1984年 TTMC I 46万トン
1996   TTMC II 55万トン
Caribbean Methanol Company Limited (CMC) 1993 50万トン
Methanol IV Company Limited (MIV) 1998 55万トン
M5000
(5000T/D+既存プラント排ガスで400T/D)
2005 184万トン
合計   400万トン

(2)   Methanex 及び Atlas Methanol

工場 能力  備考
Methanex   85万トン  
Atlas Methanol  170万トン  BP 36.9%/Methanex 63.1%


政府は、メタノールをそのまま海外に輸出するのではなく、これを原料にMethanol-to-olefins (MTO) 、Methanol-to-petrochemicals (MTP) により
付加価値の高いプラスチック産業の基礎をつくるという悲願を持っており、同国側は本計画の第二期でこれらを実施することを望んでいるとされる。


2015/4/18 世界の原子力発電開発の動向    

日本原子力産業協会は4月8日、2015年1月1日現在の世界の原子力発電開発の動向を発表した。
  http://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/about/publication/doukou2015-press_release.pdf

世界で運転中の原子力発電所は431基、3億9223万kWだった。

  運転中 建設中 計画中 合計
出力 基数 出力 基数 出力 基数 出力 基数
合計 392,228千kW 431 79,370千kW 76 121,440千kW 107 593,036千kW 614
前年 386,356千kW 426 83,987千kW 81 112,920千kW 100 583,263千kW 607

2014年にスタートしたのは6基で、このうち5基が中国、1基がインドである。
米国で2014年末にVermont Yankee原発 1基が閉鎖された

中国では、陽江1号機、寧徳2号機、紅粉河2号機、福清1号機、方家山1号機が稼動、いずれも第二世代改良型である。

中国はこれで運転中が22基 20百万kW、建設中が26基 28百万kW、計画中が30基 32百万kWとなる。
(更に、表では建設中となっている方家山2号機が2015年に入り操業を開始している。)

2012年10月時点では稼働中は15基であった。その後、寧徳1号、紅粉河1号が稼動、昨年の5基と本年に入っての1基で、現在の稼動は23基となる。

 2012/10/29 中国が原発建設再開を宣言 
 

運転中の原発がない国では、UAEが3基を、ベラルーシが2基を建設中。(UAEは更に1基を計画)

このほか、下記の各国が計画中。
 
  トルコ(8基)、ベトナム(4基)、インドネシア(4基)、バングラデシュ(2基)、ヨルダン(2基)、
  エジプト(2基)、リトアニア(1基)、イスラエル(1基)、カザフスタン(1基)

主な国の状況は下記の通りで、中国(とインド)が突出している。

 出力  
 
 基数  
 

この表では日本は運転48基、建設4基 計画8基となっている。

大震災前の54基から廃炉の福島第一の6基を除いたもの。
2015年に入り、敦賀1号、美浜1-2号、島根1号、玄海1号の5基の廃炉が決定しており、これを除くと、43基となる。

建設中は実際は3基
 電源開発大間1号、東電東通1号、中国電力島根3号

計画中は8基
 東北電力東通2号、東電東通2号、中部電力浜岡6号、日本原電敦賀3-4号、中国電力上関1-2号、九電川内3号 

当初計画された3基は中止された。
 東電福島第一 7-8号、東北電力浪江小高1号


2015/4/18 アジア開発銀行(ADB) とアジアインフラ投資銀行(AIIB) 加盟国対比   

AIIBの加盟国は、域内が37カ国、域外が20カ国の合計57カ国となった。

これに対し、アジア開発銀行の加盟国は、域内が48カ国、域外が19カ国の合計67カ国である。

両銀行の加盟国の違いは下記の通り。

主要国では日本と米国、カナダがAIIBに不参加。

逆にAIIBにはADB不参加のロシア、中東諸国、ブラジル、エジプト、南アが参加している。
(AIIBでは中東は域内扱い。中東のうちトルコのみがADBに域外として参加している。)

ADBにはオセアニアの島国が14カ国参加しており、これが参加国数の違いの大きな理由。

AIIBには入っていない台湾と香港は追ってなんらかの形で参加すると思われる。

  アジア開発銀行(ADB) アジアインフラ投資銀行(AIIB)
域内 両方
加盟
アジア 中国、韓国、インド、バングラデシュ、モルディバ、モンゴル、ネパール、パキスタン、スリランカ (9)
ASEAN ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナム、カンボジャ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ブルネイ、
インドネシア (10)
旧ソ連 アゼルバイジャン、グルジア→ジョージア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン (6)
オセアニア 豪州、ニュージーランド (2)
中東 トルコ (1) (ADBは域外)
 
一方
加盟
アジア 日本香港、台湾、アフガニスタン、ブータン (5)  
旧ソ連 アルメニア、トルクメニスタン (2) ロシア (1)
オセアニア クック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、
ミクロネシア、ナウル、パラウ、
パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、
チモール、トンガ、ツバル、バヌアツ(14)
 
中東   サウジアラビア、イスラエル、イラン、ヨルダン、
クウェート、オマーン、カタール、UAE
(8)
 合計 48カ国+トルコ (ADBは域外) 37カ国
 
域外 両方
加盟
欧州 英国、オーストリア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリー、ルクセンブルグ、オランダ、
ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス (14)
 
一方
加盟
欧州 ベルギー、アイルランド (2) アイスランド、マルタ、ポーランド (3)
北米 米国、カナダ (2)  
南米   ブラジル (1)
アフリカ   エジプト、南アフリカ (2)
 合計 18カ国 20カ国
 
合計 67カ国 57カ国 (+香港、台湾?)


 


2015/4/18 米超党派の議員、TPA法案を議会に提出   

米超党派議員は4月16日、大統領に強力な通商交渉の権限(Fast track negotiating authority ) を与える貿易促進権限(通称TPA)法案で合意し、議会に提出した。
法案名は、Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of 2015 (TPA-2015 ) となっている。

民主、共和両党の議員が法案の最終的な細部をめぐって半年間議論を進めてきた。

しかし、与党・民主党内での反対論が根強く、審議が順調に進むかは見通せない。

付記 4月22日に上院財政委員会で可決(多くの修正案が出されたが原案で可決)

            4月23日、下院歳入委員会で可決(為替操作への報復措置を盛り込む修正案は否決)

    但し、両院本会議は簡単ではない。

TPPの合意には、この法案が成立することが前提となる。

以前のTrade Promotion Authority法では、議会は、大統領と外国政府との通商合意の個別内容の修正を求めずに、一括承認するか不承認とかのどちらかであった。

アメリカ合衆国憲法第2章第2条第2項では、大統領は上院の助言と承認を得て条約を締結する権限を有するとされるが、同憲法第1章第8条第3項では、連邦議会の立法権限として諸外国との通商を規制する権限も認めている。

George W. Bush政権は、2002年8月に成立したTrade Promotion Authority法(2002年超党派貿易促進権限法)によって貿易促進権限を得た。これによって、議会への事前通告や交渉内容の限定などの条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意について、個々の内容の修正を求めず迅速な審議により一括して諾否のみ決することとされた。

TPAは2005年6月に延長されたが、その後は再延長が認められず、2007年7月1日に失効したまま現在に至っている。

このままでは、TPP交渉国は、仮に米政府と合意しても、議会が認めず、更なる妥協を強いられる可能性があるため、最終決定ができない。


通常の法案と異なり、本法案は全体としては 野党の共和党議員が賛成であり、与党の民主党議員が反対している。

TPA成立でメリットを受けるのは、共和党の支持者が多い農業をはじめとし、ITなど技術関連業界、医薬業界、保険業界、その他大企業である。

逆に、労働組合、環境保護者、メキシコ系労働者など民主党支持者は、これまでのNAFTA(米・加・メキシコの北米自由貿易協定)やその他の貿易協定で約束が守られず、結局は米国の労働者が傷つくだけであるとして猛反対している。

A.F.L.-C.I.O. や殆ど全ての労働組合は、TPAによりTPPが通ると失業と賃下げになるとし、彼らが支持する議員に対し、TPAに反対するよう猛アタックをかけるとしている。

このため、今回のTPA法案では、反対派をなだめ、賛成に向かわせるため、これまでにない多くの対策を折り込んでいる。

TPA-2015の概要は下記の通り。
  概要:http://www.finance.senate.gov/download/?id=070F3045-8E10-4284-896C-95344D75ECDE
  法案概要:http://www.finance.senate.gov/download/?id=0009D10C-38FD-4D67-AC17-C9F29ABEAF05

1)従来のTPAの改善
   ・議会主導
   ・議会との協議、情報公開 (TPPルールでは情報公開は認めていない)
   ・要件を満たさない場合は、貿易促進権限を取り消し、議会が最終決定

2)TPPを含めた今後の通商交渉の目的の見直し 
   デジタル時代に合った新しい財・サービス貿易
   農業のルールの強化
   バランスの取れた投資
   知的財産保護
   労働と環境
   Human Rights対策
   通貨操作対策
   国有企業(State-owned Enterprises) の扱い
   強力な紛争解決手続き

   手続き改善
   現地生産強制への対策
   Global Value Chain の推進
   米国の通商法の尊重

3)議会、国民との協議
   全ての議員とスタッフに交渉案テキストの開示
   調印60日前の発表、米国提案の詳細サマリーの公開
   USTRに議会担当を置く
   USTRはいつでも議員に会い、説明すること
   議員に交渉参加権
   チェックのため両院にAdvisory Groupを設置

4)議会によるコントロール
     TPAは3年+3年(オプション)とし、次期政権にも貿易促進権限を認める。
     通商協定の効果についての報告・公開義務
    米国主権の保護(議会承認なしに通商協定で米国の法律を変えることを認めない)
  
    議会の拒否権限 要件を満たさない場合は上院の60%の賛成で貿易促進権限を取り消す。


これに加え、賛成票を増すため、輸入が急増した場合にそれによる失業者に(製造労働者だけでなくサービス労働者にも)補助金を出すなどで影響を緩和する貿易調整援助法案も併せて提出する方針だが、補助金を増やしすぎれば、歳出拡大を嫌う共和党の反対者が増えるジレンマも抱える。

また、失業者の健康保険加入支援のため、tax credit の4年延長も検討している。

しかしそれでも、多くの民主党議員が反対に回るのではと見られており、最終的にどうなるか、見通せない。

また、この法案どおりであれば、仮に日本が農業分野で大きな妥協をして米国との間で合意したとしても、大統領がサインする前に議会がクレームをつける可能性(最悪時には要件に合わないとして貿易促進権限を取り消す可能性)もある。


 
2015/4/20     東京電力と中部電力、共同事業会社JERAを設立     

東京電力と中部電力は4月15日、燃料上流・調達から発電まで、火力発電事業のサプライチェーン全体に係る包括的アライアンスに伴う共同事業会社 JERA を4月30日に 両社50%ずつの出資で設立すると発表した。
社名は JAPANとERA(時代)を組み合わせた。
両社は2014年10月7日に基本合意書を締結し、本年2月9日に合弁契約を締結した。

これにより、 LNG調達量は年間約4000万トンと世界最大級になり、価格交渉力を高めることで燃料調達コストを削減するほか、火力発電事業の効率化を進める。

JERAの基本理念は以下の通り。

(1) グローバルなエネルギー企業体の創出で、エネルギーの供給を安定的に行うとともに、両グループ双方の企業価値を向上
(2) 新たなエネルギー事業モデルを構築し、自立的な事業運営と迅速な意思決定が可能な経営体制を確保
(3) バリューチェーン全体を一体的かつ最適にマネジメントし、事業全体での効率を高め、競争力向上、利益追求を図る。
   

事業内容と今後の事業拡大と、それに向けたロードマップは下記の通り。

スタート時 新規分
@新規の燃料上流事業開発・燃料調達事業
A国内火力発電所の新設・リプレース事業
B新規の海外発電事業開発
2015/10/1 両社の燃料輸送事業、燃料トレーディング事業をJERAに統合
2016年夏頃 両社の既存燃料事業(上流事業、調達事業、受入・貯蔵・送ガス事業等)や既存の海外発電・エネルギーインフラ事業をJERAに統合
2017年春頃 両社の既存火力発電事業のJERAへの統合を判断(現在のところは白紙)

統合により、LNG調達は年間4,000万トンと世界最大級になり、石炭も今後、3,000万トン程度となり、価格交渉力が高まる。

最終的に既存の火力発電も統合した場合、設備容量は7,400万kW程度となり、世界トップ水準の1億kW も視野に拡大も可能となる。

しかし、既存の火力発電の統合は今のところ白紙である。報道では「同床異夢の火力統合」としている。

東電側は、「サプライチェーン全体の統合が圧倒的な強みになる」、「既存火力まで統合しないと提携の意味がない」とする。

これに対し中部電力は、「最終形は一体が望ましいが、まず統合の一つ一つの成果を確認していきたい」と慎重である。

中部電力の姿勢は、下記の点からきている。

「火力の効率的な運用や燃料調達手法に磨きをかけてきた。火力は競争力の源泉」で、たやすく東電に渡したくない。

東電は経営再建の行方が不透明 なうえに、実質国有化されている。国の関与が中部電にも及んでくるのではないかとの懸念がある。


2015/4/21   三井物産とCelanese、テキサス州でシェールガス利用の第二のメタノールJV設立で合意    

Celaneseは4月16日、三井物産との間でテキサス州 Bishop のCelaneseの工場でメタノールを生産するJVを設立する契約を締結したと発表した。

能力は130万トンで、両社の50/50JVがテキサス州Clear Lakeで建設中で2015年10月スタート予定の能力130万トンのメタノール工場の設計をそのまま利用する。
これにより、合計能力は260万トンとなる。

CelaneseはTexas Commission on Environmental Qualityに建設申請を提出済みで、メタノール市場の状況や建設コストなどを勘案して最終決定を行う。

なお、両社はClear Lake工場の完成後、三井物産の持分をCelaneseが5年間購入する契約を締結した。

ーーー

Celaneseは酢酸、ポリアセタールなどのメタノール誘導品の製造に強みを持ち、世界最大のメタノール需要家の1社。

一方、三井物産は既に2004年に稼働したサウジアラビアのInternational Methanol Companyに次ぐ第2の製造拠点を検討していた。
また、米国シェールガス・オイル革命により安定供給と価格競争力が期待できる原料ガスの優位性に着目し、世界第2位のメタノール市場である米国で事業参画の機会をうかがってきた。

両社は2013年5月15日、折半出資の事業会社を設立しテキサス州Clear LakeのCelanese工場内でメタノール製造を行うことで合意し、合弁契約書を締結したと発表した。

合弁契約書の概要

事業内容 メタノール製造事業
出資構成 三井物産:50%
Celanese:50%
所在地 米国テキサス州 Clear Lake
総プロジェクトコスト 約8億米ドル
年間生産量 約130万トン
稼働開始時期 2015年央 →2015年10月
出資形態 LLC
 

発表では、メタノールは両社が引取り、三井物産は主に米国内で販売し、Celaneseは自社の川下製品の原料として使用するとしていた。
今回の発表で、5年間は三井物産持分をCelaneseが購入する模様。

ーーー

米国発の「シェール革命」によってエネルギー地図は大きく塗り替えられようとしているが、三井物産は、2014年3月期中期経営計画において「ガスバリューチェーン強化」を重点施策の一つに挙げ、上流権益の取得によるエネルギーの安定供給を目指すとともに、三井物産の総合力を発揮し、増加する天然ガスの物流ニーズに応える液化事業、タンクターミナル事業、天然ガスを利用した化学品製造事業などバリューチェーン全体でさまざまなビジネスを展開している。

今回の決定はその一環。

三井物産の米国シェールガス戦略「ガスバリューチェーン」
 
シェールオイル/ガス開発生産プロジェクト

三井物産は2010年に、米国ペンシルベニア州のMarcellus Shaleエリアで、米国の大手石油・ガス開発会社Anadarko Petroleum Corporationが開発・生産中のシェールガス事業に32.5%出資参画した。

2010/2/18  三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画

さらに、2011年には米国テキサス州のEagle Ford shale エリアでAnadarkoが開発・生産中のシェールオイル/ガス開発生産プロジェクトに出資参画した。(SM Energyから12.5%の権益を取得)

2011/7/4  三井物産、テキサス州のシェール開発に参加

なお、三井物産は2008年2月、Anadarko Petroleumがモザンビークに保有する石油・天然ガス探鉱鉱区(Area 1)の権益の一部を取得することで同社と合意している。

2013/1/10 モザンビークの天然ガス開発 


米国産LNG輸出プロジェクト

三井物産は2012年、米国ルイジアナ州のCameron LNG受け入れ基地で、LNG輸出プロジェクトを計画している米国のSempra Energyと共同で、日本向けを含めた米国産LNG輸出実現に向けた検討を開始、2013年5月に、天然ガス液化加工契約および合弁会社設立契約を締結した。

Sempra EnergyはCameron LNG受け入れ基地に新たに年間1,200万トンの液化能力を確保する計画で、三井物産はこのうち、年間400万トンを引き取る。

2012/4/20  三菱商事と三井物産、米国産LNGを輸入へ

2014/9/12 米エネルギー省、Cameron LNG にFTA非締結国向け輸出の最終承認

ダウ社との合弁による電解事業

化学品の製造事業においても化学品製造に必要な電力や、天然ガス由来の原料調達コスト低減など、シェール革命の影響が広がっているが、三井物産は2010年7月、Dow Chemicalとの間で、米国テキサス州 Freeportで新規電解事業を行う合弁事業会社 Dow-Mitsui Chlor-Alkali LLC を設立し、2014年には、電解プラントが本格的な商業生産及び出荷を開始した。

本電解プラントは、最新の技術を導入し、世界最大級の生産能力を擁し、年間生産量は苛性ソーダが約88万トン、塩素が約80万トンとなり、両社が生産量の50%を引き取って利用または販売を行う。

三井物産は苛性ソーダ約44万トンをダウ社に販売委託し、 40万トンの塩素からは55万トンのEDCを生産し、三井物産のネットワークを通じて世界のマーケットに販売する。

2010/7/2 三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業 

なお、Dow はこのたび、クロルアルカリ事業をOlin Corp.に売却することとしたが、Dow-Mitsui Chlor-Alkali もこの対象となっている。

2015/3/30  Dow Chmeical、クロルアルカリ事業をOlin Corp.と統合


天然ガス輸送

2013年7月には、米国アリゾナ州Tucsonの既存の基幹パイプラインからメキシコ国境のSasabeまで約 100キロメートルの天然ガスパイプラインを敷設・運営する事業に、新規に出資参画することで、米国パイプライン運営最大手のKinder Morganおよびメキシコ国営石油会社Petróleos Mexicanos(PEMEX)と合意した。

Sierrita Gas Pipeline LLCに三井物産が30%、PEMEXが35% 出資する。

輸送能力は日量約2億立方フィートで、総事業費は約2億米ドルを見込む。



2015/4/22   首都圏向け、火力発電計画 相次ぐ    

2016年4月の電力小売り全面自由化後を見据え、大型火力発電所の建設計画が相次いでいる。
なかでも従来の垣根を越えて日本の電力需要の3割超を占める首都圏市場への参入を目指す電力大手の動きが目立つ。


 

関西電力が東燃ゼネラル石油と共同で、千葉県市原市に出力100万キロワット級の大型石炭火力発電所を建設する方針を固めたと報じられている。
関電が首都圏に発電所を設けるのは初めて。

投資額は2千億〜3千億円で、 極東石油工業の製油所敷地(千葉県市原市)に建設し、2020年代半ばの運転開始を目指す。
用地取得の必要がない上、燃料を積んだ船の受け入れ設備がすでに整っており、大消費地の首都圏に近いほど送電ロスが少ないメリットもある。
出資比率は折半が有力だが、今後詰める。

関電子会社の関電エネルギーソリューションは2014年4月から首都圏での電力小売りを開始した。
ただ、東日本と西日本では電気の周波数が違うため、近畿地方からの送電量には限りがあり、東日本での発電計画を相次いで打ち出している。

2014年9月に関西電力 が伊藤忠商事子会社の新電力と組んで仙台市に石炭火力発電所を建設する計画を進めていることが明らかになった。

関電子会社の関電エネルギーソリューションと、新電力の伊藤忠エネクス が共同出資会社を設立した。
出力11.2万キロワットの石炭火力発電所を新たに建設し、2017年の運転開始を目指す。
石炭火力発電所としては小型だが、国の環境アセスメントの対象外となる出力規模のため、早期に運転開始できる。

2015年3月に関西電力と丸紅は、秋田県に大型石炭火力発電所を建設する計画を県に伝え、県は計画を了承した。

関電エネルギーソリューションと丸紅が共同出資する。
発電所の出力は130万キロワットで、総事業費は3000億円超、2020年代前半の稼働を目指す。

ーーー

九州電力、出光興産、東京ガスの3社は3月27日、千葉県に大型の石炭火力発電所を建設することで合意したと正式発表した。
九電が管外に発電所を造るのは初めて。

3社が均等出資し、出光が千葉県袖ケ浦市に持つ貯炭場に隣接する約30ヘクタールの遊休地に最大で100万kWの石炭火力2基を建設する。
投資額は4千億円規模の模様で、2020年代中ごろの稼働を目指す。

電力小売り全面自由化後の需要をにらみ、発電でも首都圏への参入が本格化する。

ーーー

中国電力とJFEスチール、東京ガスが首都圏で火力発電所を共同で建設することを計画している。
中国電とJFEは発電電力の一部を東京電力に販売、東京ガスは残りの電力を自社の販売網で関東圏で売ることも視野に調整している。

JFEの千葉or川崎製鉄所内に100万kW級の石炭火力を建設することを検討している。

ーーー

中部電力と東京電力は2013年12月、東京電力常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)内に、常陸那珂ジェネレーションを設立した。

出資比率は、中部電力 96.55%/東京電力 3.45% で、出力 65万kWの超々臨界圧(USC)微粉炭火力発電所を建設する。

両社は(4/20の記事の通り)燃料上流・調達から発電まで、火力発電事業のサプライチェーン全体に係る包括的アライアンスに伴う共同事業会社 JERA を設立する。

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このほか、東京ガスとJX日鉱日石エネルギーのJVの川崎天然ガス発電、東京ガスと昭和シェルのJVの扇島パワーがそれぞれ、天然ガス発電の増設を行う。

 

  種類 計画出力 場所 時期
関西電力/東燃ゼネラル石油 石炭火力 100万kW 極東石油工業の製油所敷地 2020年代半ば
2017/3/29 東燃ゼネラルと関電の石炭火力プロジェクト 断念
関西電力/伊藤忠 石炭火力 11.2万kW 仙台市 2017年(環境アセス対象外)
関西電力/丸紅 石炭火力 130万kW
(65万x 2)
秋田県 2020年代半ば
九州電力/出光興産/東京ガス
均等出資
石炭火力

max 200万kW

袖ケ浦市
出光の貯炭場に隣接
2020年代半ば
中国電力/JFE/東京ガス 石炭火力

100万kW

JFE 千葉or川崎製鉄所内  
常陸那珂ジェネレーション
中部電力 96.55%/東京電力 3.45%
超々臨界圧
微粉炭火力

65万kW

東電 常陸那珂火力発電所構内 2020年度
川崎天然ガス発電
東京ガス49%/JX51%
天然ガス 約84.7万kW  
→ 194.7万kW
川崎区扇町  
付記 2017/7/14 計画撤回 コストアップで採算悪化
扇島パワー
東京ガス75%/昭和シェル25%
天然ガス 81.4万kW
→ 122.1万kW
鶴見区扇島  

問題は、石炭火力発電時のCO2排出量が多いことで、石炭火力の増設が困難になる可能性もある。

2014年12月にペルーで開かれたCOP20で、日本政府が地球温暖化対策の一環として実施している発展途上国への石炭火力発電所の建設支援が環境保護団体の間で問題視された。


2015/4/23   中部電力、米国の天然ガス火力発電事業に参画     


中部電力は4月8日、米国オハイオ州における天然ガス火力発電事業に参画すると発表した。
本事業の事業会社であるCarroll County Energyの出資権益の20%を、開発事業者であるAdvanced Powerから取得した。

Carroll County Energyは、2017年度にCarroll County天然ガス火力発電所の完工・商業運転開始を予定している。
Advanced Power の発表では、5社からの出資で411百万ドル、10社の金融機関からの融資で488百万ドル、合計 899百万ドルが確保できた。

中部電力以外の出資者は以下の通り。

Advanced Power:スイスが本拠で、米国と欧州で発電プロジェクトの開発・建設・運営管理を行うデベロッパー
TIAA-CREF:米国最大級の資産運用高を誇る総合金融サービス会社
Ullico:労働者組織および組合従業員向けの保険及び投資会社
Prudential:世界最大級の生命保険会社

本計画の概要は以下の通り。

発電容量 700-megawatt electric generating facility
発電方式 Combined-cycle natural gas (ガスタービン:GE製 F.05)
設備 GE 7F.05 gas turbine 2基、D602 steam turbine 1基
建設業者 Bechtel
電力供給 IPP(独立系発電事業者)として北東部13州の全部または一部およびワシントンD.C.を管轄するPJMを通じて供給

本計画は、Utica とMarcellus シェールガス産地、American Electric Powerの345 kV 送電線、Kinder MorganのTennessee Gas Pipeline systemに近く、非常に競争力がある。

近年、米国では老朽化した石炭火力発電所の廃止による電力供給源の減少に対応するものとして天然ガス火力発電が期待されており、中部電力では、本発電所は高効率の新規電源として米国北東部への電力供給を行うことができ、長期にわたり安定した収益が期待できるとしている。

中部電力は伊藤忠と共に2010年に米国の天然ガス火力IPP事業に参画している。

2010年10月、伊藤忠商事と中部電力は、米国IPP事業者であるTenaska, Inc.(ネブラスカ州オマハ)他が保有する米国の5つの天然ガス火力発電所(合計契約出力:4,780MW)の一部事業権益(持分出力:約1,565MW)をTenaskから取得することで合意した。

伊藤忠商事の米国子会社Tyr Energy Inc.と中部電力が50%ずつ出資する共同投資会社を通じて保有する。

中部電力では、今後も市場動向や収益性、リスクなどに留意しながら、着実に海外事業を推進していくとともに、海外で獲得した知見を国内事業に反映することにより、エネルギーサービスの更なる充実につなげる。


2015/4/24 イスラエルのTeva Pharmaceuticals、同業のMylanに買収提案     

既報のとおり、米国のジェネリック医薬品大手のMylan N.V. は4月8日、アイルランド製薬大手のPerrigo Company plc に買収を提案したと発表した。

現金と株式交換での1株当たり205ドルでの買収で、買収総額は300億ドル近くにのぼる見通し。

欧米で大衆薬や健康食品を手掛けるPerrigoの買収を通じて後発薬以外にも事業を多角化し、顧客基盤を広げる考え。

2015/4/16  ジェネリック医薬品大手のMylan、アイルランド製薬大手に買収提案

Perrigo はこの時点では提案を「検討する」と発表した。

しかし、4月21日に同社の取締役会が満場一致でMylanの買収提案を拒否したと発表した。
Mylan の提案はPerrigoの価値とその将来の成長見通しを著しく過小評価しており、株主の利益にならないとしている。


イスラエルの後発医薬品メーカーのTeva Pharmaceuticalsは同じ21日、そのMylanに対し現金と株式による400億ドルでの買収提案を行ったことを明らかにした。

Mylanの全株式を1株当たり82ドルで、半分を現金、半分をTeva の株式で買収するもの。

82ドルという価格は、MylanのPerrigo買収提案発表前の株価に対して37.7%のプレミアム、Tevaによる買収の噂が出た3月10日以前の株価に対しては48.3%のプレミアムとなっており、Mylanの株主のとって極めて有利であるとしている。

(TevaがMylanに買収提案を行う可能性については以前から取り沙汰されており、Tevaによると、3月10日以降、両社の取引をめぐるうわさが広まった。)

Teva は両社の統合により、2014年ベースで売上高は300億ドル、EBITDA(利払い・税金・償却前利益)は90億ドルとなり、ジェネリック市場での地位が高まるとし、買収から3年以内に20億ドルの経費節減効果が見込めるとしている。

なお、4月17日にBloomberg がTevaがMylanの買収を検討していると報じたが、これに対しMylan は、Perrigoとの合意に向け全力を尽くす構えで、身売りに関心はなく、また、合併が独禁審査を通過するとは考えられないとコメントした。

しかし、その後にPerrigoがMylanによる買収提案を拒否したため、Mylanにとっては対案がなくなった形となった。

付記

Mylanは4月27日、Tevaの買収案を拒否した。マイランの企業価値を「大幅に過小評価している」としている。

Mylanの会長はTevaに宛てた書簡で、「1株当たりの価格が100ドルを大幅に上回る」という「出発点」でなければ、協議を行うことは検討しないと言明した。

これとは別に、MylanのPerrigo買収提案は拒否されたが、敵対的買収に切り替えることを計画している。

 


2015/4/24    中国、レアアース等の輸出関税を撤廃   

中国国務院関税委員会はこのたび、レアアース、タングステン、モリブデン、鋼鉄顆粒粉末等の輸出関税を撤廃し、アルミ加工材等の輸出関税をゼロにすると発表した。
5月1日施行で、詳細は別紙の通り。

中国政府はレアアースの輸出枠については2015年から撤廃することを昨年末に発表している。

世界貿易機関(WTO)の紛争処理上級委員会が2014年8月に、中国のレアアース輸出規制がWTO協定に違反するとの報告を発表しており、これらの処理はそれに対応したもの。
 

2015/1/7   中国、レアアース輸出枠を撤廃


2015/4/25   EU、韓国に対する違法漁業国予備指定を解除   

EUの漁業・海事総局は4月21日、韓国に対する「違法、無報告、無規制(IUU)漁業国」の予備指定を解除すると発表した。

EUは2013年11月、韓国の遠洋漁船が西アフリカ海域で違法操業を繰り返したことから、韓国政府には違法操業を罰する体系が整っていないとして、韓国をIUU漁業国に予備指定した。

EUは2008年9月に違法漁業(IUUIllegal, Unreported and Unregulated漁業)を防止、抑止及び廃絶するための「IUU漁業規則」を採択し、2010年1月1日からIUU Regulation を全面的に施行した。

IUU漁業規則は商業漁業に従事する全ての漁船を対象とし、EUへ輸出する全ての水産製品(養殖魚、淡水魚等を除く)について、正当に漁獲されたものであることを漁船の旗国が証明する漁獲証明書の添付が義務付けられ、IUU規則に違反する水産物がEU域内に入域することを防止、抑止及び廃絶することを目的にしている。

2013年11月にEU の海事・漁業担当委員はIUUに違反する国との取引を禁止する計画を発表した。

構造的問題を解決して違法な漁業問題に取り組むとの熱意を示せなかったとして、ギニア、カンボジア、ベリーゼの3国を非協力国に指定した。
これらの3国の漁船が獲った全ての漁業製品をEUが輸入することを禁止し、更にEUの漁船がこれらの国の水域で漁業を行うことを禁止した。

更に、韓国、キュラソー、ガーナの3国に対し、違法な漁業を禁止する国際的な義務を果たしていないとして、イエローカードを渡し、改善の努力がなければ同様のレッドカードが与えられると警告した。

2014年6月にはフィリッピンにもイエローカードを渡した。

EUは2014年6月末にも違法操業国家に指定するかどうかを決定するとしていたが、違法操業を防止する監視システムなどが確実に稼動し、国際規範に見合う操業体制を構築するためにさらに時間が必要だと判断し、最終決定を延期していた。

EUは4月21日の発表で、韓国とフィリッピンについて、法体制を改善し、IUUを防ぐ体制が出来たとみなし、IUUの予備指定を解除した。

一方、タイについては、監視、管理、規制システムに欠陥があるとし、イエローカードを渡した。近いうちに改善の努力がなければレッドカードが与えられる。

付記

タイの軍事政権が7月1日から、違法・無報告・無規制漁業(IUU)の取り締まりを強化した。タイ各地で検挙を恐れる漁船多数が出漁を見合わせた。当分の間、漁獲高が減少、水産物価格が上昇すると予想されている。

タイ軍政はEUのイエローカードを受け、必要な許可を得ていない漁船の操業を7月から取り締まると表明、漁業者側は数カ月の延期を求めたが、プラユット首相は「時間は十分に与えた」として拒否した。

ーーー

NGOによる調査で、西アフリカ、特にSierra Leone沖で韓国船による違法漁業が行われていたことが分かっている。

韓国最大の水産企業・東遠產業が所有するマグロ・カツオ類のまき網漁船F/V Premier が、2011 年末から2012 年中頃にかけてリベリア共和国の海域において、管轄当局に正当な許可申請を行わないまま、IUU(違法・無報告・無規制)漁業を行っていたことが明らかになった。

IUU漁業国に正式に指定されると、国のイメージに傷がつくだけでなく、韓国で生産、加工した水産物のEUへの輸出が全面禁止されるほか、韓国漁船のEU内への入港もできなくなる。韓国海洋水産部は、IUU漁業国に指定された場合に発生する経済的損失を年間約1億ドルと推計していた。

韓国政府は予備指定国解除に向けて遠洋産業発展法を2度にわたり改正したほか、全ての遠洋漁船に衛星通信漁船管理システム(VMS)を設置し、リアルタイムで監視するなどの取り組みを実施した。

付記

EUは仮指定に際し、韓国の遠洋漁船の管理システムを問題視した。

韓国政府は2014年4月、衛星を利用した位置追跡技術を持つKTサットにシステム開発を依頼した。 「最短でも開発に半年かかるところだったが、開発担当者10人余りが40日余り徹夜態勢で作業した結果、なんとか納期に間に合った」。

KTサットの衛星位置追跡システムは、釜山市の操業監視センターが全世界で操業する韓国の遠洋漁船約340隻の位置、進行方向、速度などをリアルタイムで把握できるように設計された。遠洋漁船に搭載されたアンテナを通じ、位置データが常時無線通信で衛星に自動的に伝送される仕組み。システムは遠洋漁船とインターネットで24時間結ばれていることになる。

改正遠洋漁業法(Distant Water Fisheries Development  Act)は2015年7月7日施行となるが、全ての違法漁船に対し、違法な魚の没収、漁業権の制限、違法漁業への対応、監視強化、違法行為への厳罰など、厳しい管理を行う。

例えば、重大な違法行為は刑事犯罪とみなし、5年以内の禁固刑か少なくとも5億ウオン(464千ドル)の罰金が課せられる。

改正法では韓国政府は違法漁業が行われている西アフリカで操業する韓国の船団のかなりの部分を買い上げ、スクラップする。

韓国海水部は、インド洋マグロの保存のための国際機構「インド洋まぐろ類委員会(IOTC)」で韓国が保存管理措置関連規定を96%遵守し、加盟国35カ国中1位を記録したと明らかにした。

今回、これらの対策が評価された。

EUはこれより前の2014年10月に Fiji、Panama、Togo、Vanuatu にグリーンカードを渡している。

なお、イエローカードをもらい、EUと交渉しているのは下記各国。
 2013/11  Ghana、Curaçao
 2014/6       Papua New Guinea
    2014/12     Solomon Islands、Tuvalu、Saint Kitts and Nevis、Saint Vincent and the Grenadines 
 2015/4       Thailand

ーーー

米国も2013年1月に、韓国漁船が南極水域で実施した違法操業に対する韓国政府の制裁の水準を問題視して「IUU漁業国」に予備指定した。

IUU漁業国に最終指定されれば毎年2億ドル相当の韓国水産物の米国向け輸出が禁止されるほか、韓国漁船の米港湾の利用も禁じられる。

このため、韓国は指定解除に向け、関連法の改正のほか、漁船位置追跡システム(VMS)設置、操業監視センターの運営などを進め、米国と交渉を続けてきた。

この結果、韓国海洋水産部は2015年2月、米海洋大気庁が韓国の違法漁業根絶に向けた改善措置を認め、韓国に対する「IUU漁業国」の予備指定を解除したと発表した。


2015/4/27 EU、ロシアのGazpromにEU競争法違反の警告    

EUの欧州委員会は4月22日、ロシアの天然ガス会社 Gazprom にEU競争法違反の疑いがあるとし、異議告知書を送付した。
Gazpromは12週以内に反論できるが、欧州委が最終的に違反だと判定すれば、利益の最大10%の罰金を科され、数千億円規模に上る可能性がある。


欧州委員会はロシア産ガスに大きく依存する中東欧諸国のガス市場で、独占的な地位を乱用して競争を妨げたとの暫定的な判断を示した。

ブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキアの計8カ国のガス市場で独禁法に違反したとみている。

問題としているのは下記の点で、これらにより、欧州域内の自由なガスの取引を損ねているとみている。
 
国境を越えてのガス販売禁止 輸出禁止条項
販売先条項(国内のみ)
その他(輸出承認要、販売先変更拒否など)
Bulgaria, Czech, Estonia,  Hungary, Latvia, Lithuania, Poland、Slovakia
Unfair pricing policy 価格設定が不公平
最大40%の価格差
Bulgaria, Estonia, Latvia, Lithuania、Poland.
パイプライン建設とガス購入を結びつけ South Stream pipeline projectへの参加強制 Bulgaria
Yamal pipelineへの 投資決定への関与 Poland


EUの問題意識は下記の通り。

1) 国境を越えてのガス販売禁止

Gazprom はこれにより、各国間にガスを自由に送るのを禁止し、結果として各国は安い価格のガスの入手が出来ない。

これにより市場分割が行われ、最も必要な国にガスが流れない。

国によりガス価格が大きく異なる。低価格の国は余ったガスを価格が高い国に送るのがよいが、それが出来ない。

欧州委は既に2004年のGDFとENI・ENELとの取引、2009年のEDFとE.Onとの取引で、これが違法であるとの決定を下している。

ーーー

しかし、LNGでは買主が第三者に転売することを禁止する仕向地制限などが一般的である。

2) 不公平な価格

一般的にGazpromはガス価格を一連の石油製品価格に連動させている。

これ自体は違法ではなく、ガス価格が国により異なることも、各国のエネルギーミックスでのガスの重要性が異なるため、問題視していない。

しかし、Gazpromのコスト、地域別の価格など多くの点から考慮し、Gazpromの採用する石油製品との連動フォーミュラは需要家よりもGazpromに有利であると判断した。

3) パイプライン建設との結びつけ

ブルガリアとポーランドでガス供給を特定のパイプラインについての約束を条件とし、市場を支配したと懸念する。

ブルガリアでは、コストが高く、経済見通しが不確実なSouth Stream Pipeline 計画への参加を条件とした。

ポーランドでは、Gazprom以外のガスがポーランドを通過するYamal パイプラインに関して、投資決定にGazpromが関与することを条件とした。

Yamal Pipelineは、ロシアのヤマル半島からベラルーシ及びポーランドを経由してドイツに至るパイプランで、ロシアの独立系天然ガス生産・販売会社Novatek が運営する。

競争政策を担うVestager(ベステアー)欧州委員は22日、記者会見で「欧州市場で活動する企業は欧州企業であるかどうかにかかわらず、EUのルールに基づいて行動しなければならない」と強調した。

Gazpromへの警告について「政治的ではない」と指摘、調査がウクライナ問題の前から始まっていた点などを強調した。

しかし毎日新聞によると、昨年末の会見でVestager 欧州委員はGazpromの調査を「優先」する姿勢を強調し、「競争ある市場」が「EUが目指すエネルギー同盟を達成する一助になる」と述べており、対露エネルギー依存を下げるエネルギー同盟達成のために調査を急いだと見られる。

EUの具体的な動きはウクライナ問題が始まってからであり、ウクライナ問題などを巡ってEUと対立するロシアの反発は必至だ。

Gazpromは「各国法規と国際法を厳格に順守しており、事実無根だ」と反論する声明文を発表した。同社はさらに「(今回の判断は)調査の一段階に過ぎず、違法と認定するものではない。今後も法の枠内で行動していく」とした。ラブロフ露外相は「EUの主張はロシアとの合意に反する」と批判した。

ーーー

ロシアは2014年12月1日、ウクライナを迂回してロシアから欧州南部に天然ガスを輸送するパイプライン South Stream の敷設計画を撤回した。

実際には、パイプラインの海底部分建設のための140億ユーロの調達がEUの制裁で困難になっていることがあるが、EUによる反対が口実となった。

EUは2013年12月4日、各国が締結したSouth Stream pipeline 建設契約はEUの法に違反しており、ゼロから再交渉する必要があるとした。

South Stream pipeline 建設契約が反しているとされるEUの規則は、2007年9月に採択された第三次電力・ガス自由化パッケージである。

これはエネルギーに関する消費者の選択、フェアな価格、クリーンエネルギー、供給の保証を目的とするもの。
再生可能エネルギーに投資するなどの小企業でもエネルギー市場に参入できるようにするもので、具体的には、エネルギーの生産と輸送ネットワークの所有を分離する。これにより電線やパイプラインの所有者が、利用を拒否したり、高い価格を要求したりして参入を妨害するのを防ぐことを狙うものである。

South Stream pipelineについては、天然ガスの生産者であるGazpromがパイプラインを所有することになるため、これに違反するという主張である。
Gazpromの天然ガスだけを送るパイプラインは認められないとした。

ウクライナは2013年に欧州連合との政治・貿易協定の仮調印を済ませたが、ロシア寄りの姿勢を見せるヤヌコビッチ前大統領が2013年11月、EUとの関係を強化する「連合協定」の締結を見送り、ロシアとの協力関係を密にする方針に転換した。 (これが現在のウクライナ問題につながる)

EU規則は2007年9月のものだが、2013年12月までは EUはSouth Stream 計画について何も問題視していない。

2014/12/4   ロシア、South Stream 計画を取り止め

Gazpromはガス販売とパイプライン建設の両方を独占することで強い影響力を保ってきたが、EUはガスとインフラの独占は許さない姿勢を示した。
 


2015/4/28 Shintech、エチレン工場の建設を正式決定     

信越化学は4月23日、米国子会社ShintechがPVCの主原料の一つであるエチレンを生産する工場の建設を決定した と発表した。
日本の化学会社が米国でエチレン工場を建設するのはこの投資が初めてとなる。

建設する工場のエチレンの生産能力は、年産50万トン。工場の立地はShintechが既に所有しているルイジアナ州Plaquemineの工業用地で、2018年前半の完成を目指す。
投資額は約14億ドルを見込み、Shintechの自己資金で賄う。

建設工事は主に東洋エンジニアリングが請負い、米国ルーマス社の技術を用いる。

ーーー

信越化学は2014年4月15日、米国子会社のShintech がPVCの主原料の一つであるエチレンを生産する工場の建設許可(Air Permit application)をルイジアナ州の環境庁(Louisiana Department of Environmental Quality)に申請したと発表した。

投資の最終決定は数ヶ月先とし、所有している4箇所を立地として評価していると述べていた。

 ・ルイジアナ州 AddisのPVC 58万トンプラント
 ・ルイジアナ州 Plaquemine の電解・VCM・PVCのコンプレックス ⇒ 今回、ここに決定した。
 ・上記の近く
 ・テキサス州 Alvin (ShintechのFreeportのPVCプラントから数マイル北) 申請
は出されていない。

 

  2014/4/17  Shintech、米国でエチレン工場の建設許可を申請

エチレンが完成すると、原料からPVCまでの一貫体制が完成、一層のコストダウンが期待出来る。

Shintechは当初、原料VCMをDow Chemicalから供給を受けていた。

1996年に Louisiana州 ConventにShintechの第二工場建設を決めたが、電解〜VCM〜PVCの一貫体制を考えた。
しかし、この計画は環境保護団体グリーンピースが「ダイオキシンが発生する塩ビ工場を黒人住民の多い地域に建設するのは人種差別」と攻撃して難航し、結局、1998年になり信越は立地をAddisに変更し、一貫生産を棚上げしてPVC 59万トンのみの生産とした。

2004年12月、Louisiana 州
Plaquemine に総額10億ドルをかけて塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行う計画を発表した。

そして今回、エチレンに進出する。

米国でのエチレンはシェールガスからのエタンを利用することで低コストが期待できる。
工業塩は工場近辺の土地の地下の岩塩層から採取でき、電解の電力料も安い。

信越化学は2013年6月、Shintech がルイジアナ州(Addis or Plaquemine) での電解、塩ビモノマーおよび塩ビ樹脂の生産能力の増強を決定したと発表した。
増強する生産能力はVCM 約30万トン/年、カ性ソーダ 約20万トン/年、PVC 約30万トン/年で、完成は2015年頃を目指す。投資額は5億ドル。

増設後のシンテックの塩ビ樹脂の生産能力は、ルイジアナ州の工場の既存分とテキサス州の工場を併せて295万トン/年となる。

                                単位:万トン
立地 PVC VCM カ性ソーダ
Texas州 Freeport  145   −   −
Louisiana州 Addis   58   −   −
Plaquemine   60   160  106
今回増設 32 30 20
合計  295  190   126

2013/6/21 Shintech、生産能力拡大を決定 



 
2015/4/29  国際石油開発帝石、アブダビ首長国の陸上ADCO鉱区の権益取得   

国際石油開発帝石(INPEXは4月27日 、アブダビ首長国の陸上のADCO鉱区の5%の参加権益を取得し2015年1月1日からの40年間を契約期間とする利権契約を同国政府及びアブダビ国営石油会社(ADNOC)と締結したと発表した。

ADCO鉱区は同国陸上に位置する11の生産油田と4つの未開発油田から構成されており、本鉱区全体で日量約160万バレルの原油が生産されている世界でも有数の巨大油田群。

ADCO社が本鉱区のオペレーターを務めており、INPEXはADNOCやADCOなどとともに、2017年までに原油生産量を日量180万バレルへと引き上げるべく、開発作業を進め る予定。
本鉱区から生産される原油は、同国西部地域のジェベルダナからの出荷に加えて、2012年に稼働を始めた石油パイプラインを利用してインド洋に面したフジャイラからも出荷されてい る。

日本としては日量8万〜9万バレル分の原油を新たに調達できることとなる。

ーーー

ADCO鉱区は4つの地域に分かれている。

1)SE Hub (South East Asset)

Asab 油田 
Sahil 油田 
   
Shah 油田    
Qusahwira 油田
Mender 油田  開発中、2017年生産開始予定

2)Bab Asset

3)Bu Hasa/Huwaila/BQ Assets

Bu Hasa 油田  
Huwaila 油田   
Bida Al-Qemzan (BQ) 油田 

4) North East Bab (NEB)

Dabbiya 油田
Rumaitha 油田
Shanayel 油田

 

陸上油田は1939年以降、外国の石油会社に採掘権を与えられてきた。
1971年の独立を機に、
Abu Dhabi National Oil Company
(ADNOC)が参加し、Abu Dhabi Company for Onshore Oil Operations (ADCO)を設立した。

当初 ADNOCの出資比率は15%であったが、1974年に60%となった。
他のメンバーは以下の通り。

BP、Shell、Exxon Mobil、Total  各9.5%、計38%
PortugalのPatex Oil and Gas 2%

これら各社の権益は2014年1月10日に期限切れで失効した。

これについて、新しく40年間の権益が与えられることとなり、各社が応札している。

先ず2015年1月1日付けでフランスのTotal が10%の権益を取得した。
今回のINPEXの5%権益取得はこれに続くもの。

残りの25%分を次の各社が争っているとされる。

  BP、Shell (当初の権益者)  
   残るExxonMobil は海上油田Upper Zakum優先で、陸上権益争いから降りたとされる。
  Korea National Oil Company (KNOC)、PetroChina

  ロシアのRosneft やノルウェーのStatoil は権益争いには入っていないとされる。

ーーー

INPEXは、2004年5月に、石油公団(当時)が保有するジャパン石油開発(株)(JODCO)の全株式を株式交換により取得し、同社を完全子会社化した。

ジャパン石油開発は同国において海上油田の開発で40年以上にわたり事業を展開している。

INPEXでは、今回の権益取得は、長きにわたり携わってきた数々の石油開発生産事業での操業実績や技術的貢献が評価されたものと理解して いる。

同社の所有する権益は下記の通り。このうち、1996年1月に権益を取得したアブ アルブクーシュ鉱区はInpexとして進出したもの。
同鉱区から生産される原油は、パイプラインを通じてダス島へ送られた後、ウムシャイフ原油と混ぜられ、ウムシャイフ原油として出荷されている。

  JODCO INPEX ADNOC BP TOTAL(仏) ExxonMobil
下部ザクム油田   12%     60%  14.67%  13.33%  
ウムシャイフ油田 12%   60%  14.67%  13.33%  
ウムアダルク油田   12%     88%      
上部ザクム油田   12%     60%       28%
サター油田   40%     60%       
ウムルル油田 12%   60% 14.67% 13.33%  
ナスル油田  12%   60% 14.67% 13.33%  
アブアルブクーシュ油田   25%     75%  

従来の油田は2018年に期限が来るため、延長交渉を行っている。
このうち、上部ザクム油田については2014年1月20日に2041年まで延長された。
 

 



2015/4/29  武田薬品、米国での2型糖尿病治療剤「アクトス®」の製造物責任訴訟の和解に向けた合意 

武田薬品は4月29日、米国における2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱癌を主張する製造物責任訴訟で、大多数を解決する和解に向けた合意に至ったと発表した。

同社は、本訴訟における原告側の主張には根拠がないものと考えており、同社の法的責任を認めるものではないとしている。

和解は原告の95%が受け入れた場合に有効となる。

和解金は原告の95%が受け入れた場合は23.7億ドル、97%以上が受け入れた場合は24億ドルとなる。

同社は和解に参加しない訴訟の費用等を含め、2015年3月期に27億ドル(3,241億円)を引当計上する。

同社は同日、2015年3月期の損益見直し(億円)を発表した。他の修正も含む。

  営業利益 税引前利益 当期利益
前回公表 1,700 1,600 650
今回予想 -1,300 -1,450 -1,450
増減 -3,000 -3,050 -2,100

同社が最終赤字になるのは1949年の上場以来、初めて。

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2014年4月、原告Terrence Allen が 2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱癌を主張する製造物責任訴訟において、米ルイジアナ州の連邦地裁の陪審が、原告の主張を認め、武田に60億ドル、米国でアクトスを共同で販売しているEli Lilly に30億ドルの懲罰的損害賠償の支払いを命じる評決を出した。

損害賠償としては、147.5万米ドル(武田 75%、Eli 25%)が命じられている。

武田薬品は、原告の膀胱癌はアクトスによるものではなく、また、この医薬品のリスクについては適切に注意書きをしているとし、「このたびの評決は大変遺憾であり、到底承服できない」としている。Eli Lilly も、アクトスは2型糖尿病には重要な治療薬であり、アクトスが原告の膀胱癌を起こしたとの証拠は無く、徹底的に争うとした。

2014/4/11 米連邦地裁の陪審、武田薬品に60億ドルの懲罰的賠償支払の評決 

武田薬品はこの評決を不服とし、可能なあらゆる法的手段で対抗する方針を表明、ルイジアナ州連邦地方裁判所に対しては、陪審認定を無効とする請求と、再審の請求を別々に行った。


懲罰的損害賠償金の陪審認定を無効とするよう求めた請求に対しは、判事は2014年8月、これを退ける決定を行った。

2014/9/2   武田薬品のアクトス問題、米裁判所は陪審員表決却下要請を拒否、武田は発がん性否定データを発表
 

武田は再審理か大幅な減額を求めたが、ルイジアナ州西部連邦裁判所は10月27日、懲罰的損害賠償金額の減額を認める決定およびかかる減額を反映する判決を下した。

武田の懲罰的賠償金額 60億ドル→2,765万ドル
Eli Lilly           30億ドル→  922万ドル

なお、補償的損害賠償金額については、先に147.5万ドルから127万ドルへの減額が決定されている。

これまでの高額懲罰的賠償の10例では全てが破棄または大幅減額となっており、陪審の決定どうりのものはない。
米国の最高裁は、懲罰的賠償は補償的損害賠償や実際の被害額に見合ったものでないといけないとしており、いくつかのケースでは補償的損害賠償額の10倍なら認められるとした。

しかし武田は、損害賠償金額の大小を問わず、この事件で取り扱われた証拠によって、同社の責任は認定されるものではないとし、上訴することとした。

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上記は原告Terrence Allen に係わる裁判だが、米国では、アクトスの長期服用が原因で膀胱癌が発症したり、悪化したとの訴訟が約6000件起きている。

アクトスに関しては、これまでこれまで本件を含め、7件の陪審員評決や判決が出ている。うち、5件は却下されている。

カリフォルニア州とメリーランド州の州裁判所では陪審員が合計820万ドルの支払いを命じたが、裁判長がこれを却下 した。

ラスベガスの州裁では2014年、陪審員が原告の訴えを却下した。

2014年5月に80歳と81歳の女性が10億ドルの損害賠償を求めた裁判では、発ガン時にはアクトスを飲んでいなかったとされており、陪審員が訴えを却下した。

その前週に行われたシカゴの男性(既に死亡)のケースでも、陪審員は2時間以内の審議で却下した。

2014年10月3日、ペンシルベニア州フィラデルフィア郡一般訴訟裁判所で Frances Wisniewski氏を原告とした「アクトス®」に起因する膀胱がんを主張する製造物責任訴訟において、武田薬品等が205万米ドルの補償的損害につき責任があるとの陪審評決が下された。

今回の和解は米国で提起されている製造物責任訴訟に関し、その大多数を解決する和解に向けた合意に至ったもの。
 

 


2015/4/30  東京エレクトロンとApplied Materialsとの統合破談     

半導体製造装置で世界3位の東京エレクトロンは4月27日、同業で世界最大手の米 Applied Materials と2013年9月に交わしていた経営統合契約を解除すると発表した。
米司法省などの独占禁止当局が難色を示し、経営統合が不可能になったという。

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東京エレクトロンとApplied Materials は2013年9月24日、半導体およびディスプレイ製造装置業界における「グローバル・イノベーター」を目指し、株式対価による経営統合の契約を締結したことを発表した。

グローバル・イノベーターが誕生、半導体およびディスプレイ産業に大きく貢献するとした。
 
• 株式対価による対等な経営統合で誕生する新会社の時価総額は約290億ドル
• 今後の大きな技術的転換に応える画期的な製品開発を加速し、株主、顧客、従業員により大きな価値を提供
• 株主還元公約のもと、統合完了後会計初年度のEPS(1株当たり利益)向上を予想
• 30億ドル規模の自社株買いを、統合完了から12カ月以内に実施予定
• 統合新会社は東京証券取引所とNasdaq株式市場に上場し、東京と米国カリフォルニア州サンタクララの両本社体制

具体的には、下記のような三角株式交換・三角合併により、統合持株会社(オランダ)をつくる。

両社の株主には、統合持株会社の株が交付される。
経営統合完了後の新会社の株の保有内訳は、Appliedの株主が68.0%、東京エレクトロンの株主が32.0%となる。

 対等合併をうたっているが、実質的にはApplied Materialsによる東京エレクトロンの吸収合併であるとみられていた。
 

                         ↓

売上ベースはAppliedが72億ドル、東京エレクトロンが54億ドルで、両社合算の年間売上高は126億ドル、従業員は27千人に拡大する。

新会社は、統合後初年度において約2.5億ドルの統合シナジー効果の創出を、また統合後3年間において約5億ドルの統合シナジー効果 を見込んだ。

2014年6月に両社株主総会が承認、7月には社名をEterisにすると発表、2014年後半の統合を目指したが、独禁当局の承認が得られず、2014年11月に統合を本年3月に延期、本年2月には更に6月に再延期していた。

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Gartner Inc.によれば、半導体製造メーカーの2013年の売上高(百万米ドル)は下記の通りで、統合会社の世界シェアは25%となる。

  統合会社

8,517.2

1

Applied Materials

5,460.1

2

ASML(オランダ)

5,302.8

3

Lam Research(米国)

3,163.4

4

Tokyo Electron

3,057.1

5

KLA-Tencor(米国)

2,163.4

6

Dainippon Screen Manufacturing

1,222.7

7

Hitachi High-Technologies

862.0

8

Advantest(旧称 タケダ理研工業)

844.8

9

Teradyne

822.0

10

Nikon

636.3

  Others

10,243.5

  Total Market

33,778.0

日米など8つの国と地域の独禁当局が統合の可否を慎重に審査してきたが、米司法省との協議で承認を得られないことが確実になったという。
中国の反応も厳しい模様。

米司法省は、業界が寡占化して価格競争が起きにくくなることなどを問題視したとみられる。

2001年には米航空大手のユナイテッド航空とUSエアウェイズの経営統合が、2008年には検索大手のヤフーとグーグルの広告事業統合が、米当局が難色を示したことで破談した。

記者会見で東京エレクトロンは次のように述べた。

「米司法省と認識の違いがあり、解決のめどが立たないことが分かった。改善処置のプランを提出したが、実効性の見解に(司法省との間で)隔たりがあった。現行の製品群だけでなく、両社の開発品にまで対象が広がった」

「非常に残念な結果だと思っている。反トラスト法に引っかかるものではないというのが我々の見解だ。このような結論となり、納得がいかない」

米司法省は合併断念発表を受け、4月27日、次の通り発表した。

司法省が両社の改善措置案では競争上の懸念が消えないと伝えたところ、合併計画を断念した。

合併断念で半導体製造設備の競争が維持できる。半導体産業は米国経済にとり非常に重要であり、提案された改善措置案では、特に次世代半導体設備の開発に関して、統合により損なわれる競争を取り戻せない。

両社の統合は、高容量非リソグラフィー型半導体製造設備を開発・供給するノウハウ、資源、能力を持つ最大の2社の統合となる。

調査に当たり、司法省は韓国公取委、中国商務省、ドイツ連邦カルテル局、その他多くの独禁法当局と協力してきた。

半導体については知らないため、よく分からないが、全体としてのシェアではなく、重要分野でのシェアを問題とされた模様で、企業側としては当局の主張を入れると統合の意味がなくなるということではなかろうか。


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