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2016/5/2 米、日本や中国などを為替操作「監視リスト」に

米財務省は4月29日、主な貿易相手国・地域の為替政策に関する半年に一度の報告書 Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the UNITED STATES を発表した。

そのなかで、通貨を意図的に安く誘導する為替操作への監視を強化するため、日本、中国、韓国、台湾、ドイツの5つの国と地域を新たに設ける「監視リスト」の対象にし、動向を詳しく分析し監視していくとした。

これは、本年2月に成立した2015年貿易円滑化・貿易履行強制法案に基づくものである。

オバマ政権はTPPの大筋合意を受けて、米議会で強まる自由貿易協定への反対論を抑えるため、貿易相手国の通貨政策を監視して対抗措置がとれるよう法制度を強化した。

ーーー

オバマ大統領は2月24日、2015年貿易円滑化・貿易履行強制法案 (Trade Facilitation and Trade Enforcement Act) に署名し、法を成立させた。

2015年2月に下院に提案され、修正案を含めた最終法案が2015年12月11日に下院を256対 158で通過し、上院は今年の2月11日に75対20で可決した。

これはアンチダンピング法、相殺関税法および貿易救済法などを強化したものだが、上院の審議で為替操作国に対する措置が盛り込まれた。

追加された第7章「Engagement on Currency Exchange Rate and Economic Policies」は、提案議員の名前をとって BennetHatchCarper 法と呼ばれるが、第701条と第702条の二つの条文から成る。

第701条は、「米国の主要貿易相手国との為替レートおよび経済政策の取り極めの促進」と題し、次のように規定している。

@財務長官はこの法律制定から180日以内に、米国の主要貿易相手各国について、米国との貿易収支、直前の3年間における経常収支のGDP比、外貨準備額の短期債務額比とGDP比を含む報告書を上院財政委員会および下院歳入委員会に提出し、以後半年毎に提出する。

A重大な対米貿易黒字実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った米国の主要貿易相手国については、マクロ経済および為替政策に関する高度な分析を行い、財務長官はこの法律制定から90日以内に、この分析で使用した諸要因を公表する。

B上記Aの高度な分析には、当該国の
 (i)可能な限り詳細な為替介入の推移を含む当該国の為替市場の展開、
 (ii)実質有効為替レートの変化および為替切り下げ度合の変化、
 (iii)資本規制および貿易制限の推移に関する分析、および
 (iv)外貨準備高の傾向を含むものとする。

C大統領は財務長官を通して、マクロ経済および為替政策に関する高度な分析の対象国と高度な二国間取り極めを開始する。

「高度な二国間取り極め」は、
 (i)当該国通貨の過小評価、大幅な対米貿易および実質的な経常黒字の要因に対処するための政策の実行を当該国に促し、
 (ii)通貨の過小評価と大幅黒字に対する米国の懸念を表明し、
 (iii)当該国が適切な政策を採用しなかった場合は、大統領が取り得る行動を当該国に忠告し、
 (iv)通貨の過小評価と大幅黒字に対処する具体的な行動を伴う計画を作成する、ために行われる。

 (iii)の「大統領が取り得る行動」は次のひとつ以上の行動と規定されている。

(i)海外民間投資公社(OPIC)による当該国に対する新規融資等の禁止、
(ii)連邦政府による当該国からの財・サービスの調達・契約締結の禁止、
(iii)IMF米国代表理事による当該国のマクロ経済および為替政策の厳格な監視および公式協議の要求、
(iv)当該国との二国間または地域間貿易協定の締結または交渉参加の是非の検討。

第702条は、財務長官に政策を諮問するため、「国際為替レート政策に関する諮問委員会」を新設することを規定している。

上院議長、下院議長および大統領が各3名の委員を任命し、合計9名で構成する。

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財務省は上記Aの重大な対米貿易黒字実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った貿易相手国の分析に関し、次の基準で選ぶこととした。

重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上
実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上
外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入

財務省は今回、3つの基準全てに当て嵌まる国はないことを確認したが、米国の主要貿易国の5カ国が3つの基準のうち2つに該当することを見つけた。このため、新しい「監視リスト」を創設し、この5国を監視していくこととしたもの。

2015年の分析結果は下記の通り。黄色部分が基準にかかっている国。

  対米貿易黒字
    億ドル
経常黒字
     GDP比
net 外貨購入
   GDP比

継続

中国 3,657 3.1% -3.9%
ドイツ 742 8.5%
日本 686 3.3% 0.0%
メキシコ 584 -2.8% -1.8%
韓国 283 7.7% 0.2%
イタリー 278 2.2%
インド 232 -1.1% 1.8%
フランス 176 -0.2%
カナダ 149 -3.3% 0.0%
台湾 149 14.6% 2.4%

英国 150 -5.2% 0.0%
ブラジル -43 -3.3% 0.1%
参考 ユーロ計 1,302 3.2% 0.0%

報告では各国について以下の通り述べている。

日本 重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字だが、4年間為替介入を行っていない。
中国 重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字。昨年8月の中国の為替政策変更で急激な人民元安となった後、人民元を守るため強い介入を行った。為替相場の目標についての透明性が高まれば市場は安定する。
韓国 重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字。2015/7〜2016/3に介入した。介入は為替市場が秩序立たない場合のみに限定することと、操作の透明性を求める。
台湾 実質的な経常黒字。2015年を通じ継続して外貨買いをしている。介入は為替市場が秩序立たない場合のみに限定することと、操作の透明性を求める。
ドイツ 重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字。GDPの8%以上の黒字で、少なくともその一部は、ドイツの国内消費のサポートに使うべきである。
 

日本については、次のように述べている。

本年1月に日銀はマイナス金利導入で市場を驚かせた。黒田総裁は日銀は2%のインフレターゲット達成のために引き続き何でもやると述べた。
日銀の決定後、数日間は円安となったが、その後、円高に戻り、3月末時点では昨年11月央と比べ8.9%の円高となっている。日本政府は為替の動きを「quite rough」とし、緊張感をもって市場の動きを監視するとしている。

日本はこの4年、介入をしていない。

米財務省としては、現在のドル・円の為替市場は秩序だっている(orderly) とみており、全ての国が為替政策に関するG-20、G-7のコミットメントを守る必要性を強調する。

G-20、G-7では日本は三本の矢の全てを使うことをコミットし、金融政策だけではバランスのとれた成長は達成できないと認めた。
日本の成長の弱さ、グローバルな需要停滞を考えると、日本政府は、柔軟な財政政策、税制改革・労働市場改革・地方活性化などの野心的な構造改革、TPPやR&Dインフラ強化などの長期的利便のための改革継続など、全てのポリシーレバーを使うことがますます重要となっている。

ーーー

アメリカ大統領選挙に向けて民主党候補への指名がほぼ確実なHillary Clinton 前国務長官はTPP協定について反対だと明言するとともに、中国その他に加え、日本も輸出を有利にするため円安を誘導していると批判し、対抗措置を取る考えを示した。

共和党候補になる可能性が高まった不動産王Donald Trump候補も、日本の円安誘導を批判し、TPPに反対している。

2016/2/25   Hillary Clinton、TPPに反対を表明、日本も為替操作国に含める

円高が進む中、米国がこれを秩序だっていると見ていることから、また為替介入には対抗策を取るとしていることから、日本政府による為替介入は非常に難しくなった。

米国の利上げは遠のいており、暫くは更なる円高が予想される。

麻生財務相は4月30日深夜、海外市場で円相場が 1ドル=106円台と1年半ぶりの円高水準に上昇したことについて「一方的で偏った投機的な動きに極めて憂慮している」と述べた。
「(投機的な動きに)必要に応じて対応する」とも明言し、円売り介入も辞さない姿勢を強調した。

 


2016/5/3  住友金属鉱山、フィリッピンでレアアースのスカンジウムを回収 

住友金属鉱山は4月28日、レアアースの一つのスカンジウムの回収事業への参入を決定するとともに、米国大手企業と酸化スカンジウムの長期販売契約を締結したと発表した。

スカンジウム(scandium)はレアアースの一つで、原子番号 21、元素記号は Sc。

現在は米国、ウクライナ、ロシア、中国等を中心に年間10トン程度生産されていると推定される。

生産量が少なく、高価であることから需要は限定されているが、下記のように、アルミへの添加剤や固体酸化物形燃料電池の電解質等の分野での伸びが期待されている。

住友金属鉱山はフィリッピンの子会社 Coral Bay Nickel とTaganito HPALで低品位ニッケル酸化鉱を原料として「HPAL法」(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸硫酸浸出法)を用いたニッケル製錬を行っている。

Coral Bay Nickel :住友金属鉱山 54%、三井物産 18%、双日 18%
Taganito HPAL:
住友金属鉱山 62.5%、Nickel Asia 22.5%、三井物産 15.0%

2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得

この原料鉱石中に微量のスカンジウムが含まれている。

同社は新居浜研究所でこの効率的な回収方法を確立、2013年にCoral Bay Nickel 内に酸化スカンジウム製造のパイロットプラントを建設、試作を行ってきた。

今回、回収の事業化を決定、Taganito HPALに酸化スカンジウムの中間品製造プラントを建設、最終製品への加工プラントを播磨事業所に建設する。

投資額 約40億円
製造能力 酸化スカンジウム換算 約7.5トン/年
製造拠点 前工程 Taganito HPAL (鉱石から中間品を回収)
後工程 播磨事業所  (中間品から酸化スカンジウムを生産)
生産開始 2018年春予定

 
 


2016/5/4 豪州政府、中国による牧場買収認めず、ニュージーランドも 

オーストラリアのモリソン財務相は4月29日、中国の上海鵬欣集団(Shanghai Pengxin)の傘下企業による 豪州の巨大牧場の所有者の S. Kidman & Co 買収 を、「国益に反する」として認めない予備決定を下した。

S. Kidman & Co はオーストラリア史に残る牧畜王のSidney Kidman の一族が所有する。
Kidman が100年以上前に始めた牧場は
現在、総面積は約10万平方キロ、国土の1.3%に及ぶ。(イングランド全土の3/4の大きさで、北海道や韓国よりも広い。)

買収額は約3億7000万豪ドル(約310億円)で、財務相は、「規模が大きすぎ、豪企業が応札できない」ことを理由に挙げた。農地などへ中国からの投資が拡大し、安全保障上の懸念が浮上していることが背景にある。

Kidman は10箇所の 牛の牧場、1箇所の種牛飼育場を持ち、185千頭の牛を飼育している。

2015年に 3億2500万ドルで売却に出されたが、全世界から多数の応札が入った。

中国からは上海鵬欣集団のほか、東淩糧油 Donlinks Grain and Oil) 、浙江日發 (RIFA Holding)、大康牧業旗下的鵬欣集團(Dakang Pasture Farming's PengXin)、寧波先鋒新材料(Ningbo Xianfeng)等が応札した。

2015年11月初めに、Kidman は上海鵬欣集団に独占交渉権を与えた。

売却には豪州の外国投資審査委員会(Foreign Investment Review Board)と豪州政府の承認を必要とする。

豪州では2015年9月15日にMalcolm Turnbull 首相の新政権が発足したが、豪州政府は11月19日、安全保障上の理由から売却の承認を拒否した。

安全保障上の懸念があり、国益を損なう可能性があることから、売却を認めるべきでないとする外国投資審査委員会の判断に同意するとの考えを示した。

この判断は Kidman のAnna Creek牧場がウーメラ武器試験場(Woomera Test Range) に隣接していることも影響している。
ウーメラ試験場は世界最大の武器試験場で、最近、英防衛大手BAEシステムズの次世代無人ステルス攻撃機「タラニス」の英防衛関連科学者による試験でも使用された。

付記 「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの砂を入れたカプセルは2010年6月13日、Woomeraに着陸した。

これに対し、2016年4月19日、Kidman と上海鵬欣集団 は問題のAnna Creek 牧場を買収対象から除外して売買契約を結ぶこととした。

発表では、上海鵬欣集団 が支配するベンチャーが80%の権益を購入し、残り20%を豪州のAustralian Rural Capital が購入する。
上海鵬欣集団子会社の湖南大康牧業がベンチャーの51%を出資する。

湖南大康牧業は中国の畜産中堅で、ニュージーランドの3つの牧場を傘下に収めている。


豪州政府は今回、問題とされた「武器試験場に隣接」する牧場を売買対象から外したにも係わらず、これを不承認とした。

国内には、買収後の軍事利用や、牛肉を全て中国に出荷することへの警戒論がある。

Turnbull 新政権は、次期潜水艦建造計画では本命視された日本を選らばず、仏企業を選定し、「日本製採用に反対する中国に配慮した」と噂されるなど、「親中」ととれる政策が続いていたが、今回は厳しい態度で臨んだ。

ーーー

上海鵬欣はニュージーランドでも牧場買収を阻止されている。

上海鵬欣は 2014年8月1日、子会社 Pure 100 Farm Limited を通じ、ニュージーランド北島中部のTaupo の近くの 13,800エーカーのLochinver 農場を購入することで合意した。

同国の海外投資局(Overseas Investment Office)はこの申請を受け付けたが、国民の反発を恐れ、9月20日の選挙が終わるまで秘密にされていた。
しかし、これが保守党党首の選挙演説で暴露された。「国民は裏で何が起こっているか知るべきだ。本件は明らかに選挙の争点だ。ニュージーランドは 'For Sale' の看板を下ろすべきだ」と述べた。

これを受け、上海鵬欣は契約したことを発表、既に購入した農場とのシナジーを求めてのものと述べた。

 海外投資局が申請を受け付けるかどうか、注目され た。

2014/8/9     中国企業のニュージーランド牧場購入が問題に

ニュージーランド政府は2015年9月17日、上海鵬欣集団による購入計画を承認しないことを決めた。

外資による土地所有への懸念が高まるなか、海外投資局はこれまでの容認姿勢をくつがえす決定を下した。

政府は声明で「ニュージーランドに相当の利益をもたらすこと、またはその公算が大きいことを確信できなかった。この広さの慎重に扱うべき土地に関する申請では重要な要件となる」と述べた。

上海鵬欣集団はこの決定に対する司法審査を求めていたが、2016年4月1日にこれを取り下げた。

上海鵬欣集団はLochinver 農場に隣接するFleming farm の買収交渉も続けていたが、政府によるLochinver 農場買収の不承認を受け、断念した。

 


2016/5/5   OECDによる英国のEU離脱の影響分析

欧州連合は2月19日夜、ブリュッセルで開いた首脳会議で、英国のEU離脱を回避するためにCameron英首相が求めているEU改革案を巡って全会一致で合意した。
合意を受け
Cameron首相は、6月23日に国民投票を実施することを決め、自らはEU残留を訴えていく考えを明らかにした。

2016/2/22   EU首脳会議、英離脱回避へ改革案合意

経済協力開発機構(OECD)は4月27日、英国がEUを離脱した場合の影響分析:The Economic Consequences of Brexit : A Taxing Decision を発表した。
英国(Britain) のEU離脱(exit ) は Brexit と呼ばれる。

OECDのAngel Gurría 事務総長は同日、これについて ロンドンでスピーチ(タイトルは To Brexit or not to Brexit: A Taxing Decision )を行った。

OECDの分析によると、英国が6月23日の国民投票でEU離脱を選択した場合、2020年の英国のGDPは加盟を継続した場合より3.3%少なく、これは1 世帯あたり 2,200ポンド(約34万円)の損失に相当するという。

長期的には、2030年時点でGDPの減少幅は5.1%に広がると推計する。(楽観ケースでは2.7%減、悲観ケースで7.7%)
1 所帯当たりでは3,200ポンド(約50万円)の損失。(楽観ケースでは1,500ポンド、悲観ケースでは5,000ポンドの損失)

事務総長は、離脱による損失を英国民にとっての「離脱税 ( Brexit tax)」と呼び、これは、一般の税金とは異なり、公共サービスに使われるのでも財政赤字の穴埋めに使われるのでもなく、純粋な超過負担(pure deadweight loss)で経済的利便のないコストであるとしている。しかもこれは一回限りのものではなく、英国民は何年にもわたり払い続けることとなる。

このため、離脱は「やっかいな決定(taxing decision) 」であるとする。

6月23日の国民投票でEU離脱を選択した場合、直ちに交渉を始め、正式離脱は2018年の終わりと予想する。
2019から2023年にかけてEUとの新しい貿易交渉を行い、移民を減らす方策を採用することとなる。

事務総長は以下の通り述べている。

短期的な影響として、経済的な不確実性が高まり、ひどい影響が出る。資産の投売りが起こり、リスクプレミアが大きく高まる。消費が減り、投資が減り、成長が落ちる。
離脱により
、EUとの貿易協定を結ぶ必要がある。EUへのアクセスが自動的に止まるだけでなく、EUが貿易協定を結んでいる53カ国・地域とも同様である。

今よりもよい貿易関係を結べるとの意見は妄想で、新しい交渉には長い時間がかかり、膨大なエネルギーを要する。ゼロからの交渉となる。オバマ大統領が述べたとおり、米国にとって英国は貿易交渉の最優先国ではなく、英国にとり有利な交渉は期待できない。

長期的にはサプライサイドで影響を受ける。

英国は現在、欧州で最大の海外からの直接投資対象国であるが、EU単独市場にアクセスできない英国の魅力は縮小する。
EU市場にアクセスするために英国に拠点を置いた企業は移転を考えるだろう。英国の多くの多国籍企業も同様である。
海外からの直接投資の減少は全体の投資、イノベーション、生産性に悪影響を与え、貿易不均衡を生む。

資金の流出、流入減が起こり、GDPの7%にも達する経常収支赤字の補填が難しくなる。

投資の減、モノと人の流入の減、信用コストのアップ、海外からのアイディアとスキルの流入減は、最終的に英国の生産性を弱め、長期的な経済力を弱める。

他のいろいろな調査でもBrexitの影響はマイナスである。

OECDの結論は、英国は欧州の一員としてより強くなり、欧州も英国が先頭を切ることでより強い。

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事務総長のスピーチには入っていないが、報告書は移民について次のように述べている。

2005年以降、英国への移民は200万以上の職を創り出し、英国のGDPの伸びの半分を占めている。EUからの労働力の自由な流入の制限と離脱後の英国経済の弱体化によって英国への移民のインセンティブが次第に減り、英国経済にとって負担となる。

英国が現在問題にしているのは、EUの拡大の結果、東欧諸国からの移民の大量流入で、低賃金層の英国人の職が奪われる点と、公的医療などの社会保障の費用が増えることである。

金融分野や企業誘致による知的労働層の移民は英国経済に大きく貢献しており、これが減ると、英国経済に悪影響を与える。上の表のImmigration はこの影響を表している。

フランスのマクロン経済相は、英国が離脱するならば、「ロンドンの金融街シティーからの帰還者を受け入れることになるだろう」と語った。



2016/5/6   米国の製薬会社 Medivation、仏Sanofi の買収提案を拒否

Paris, April 28, 2016 Sanofi today announced that it has sent a letter to Medivation, Inc., in which it makes a non-binding proposal to acquire Medivation for $52.50 per share. This would represent an all-cash transaction valued at approximately $9.3 billion.[1] Combining Sanofi and Medivation represents a compelling strategic and financial opportunity to drive significant value for the respective companies’ shareholders, employees, patients and caregivers.

The proposed purchase price represents a premium of over 50 percent to Medivation’s two-month volume weighted average price (VWAP) prior to there being takeover rumors.

- See more at: http://mediaroom.sanofi.com/sanofi-offers-to-acquire-medivation-for-52-50-per-share-in-cash-proposal-would-provide-immediate-and-certain-value-to-medivations-shareholders-combination-would-create-complementary-offerings-t/#sthash.rBgkMzS2.dpuf

Paris, April 28, 2016 Sanofi today announced that it has sent a letter to Medivation, Inc., in which it makes a non-binding proposal to acquire Medivation for $52.50 per share. This would represent an all-cash transaction valued at approximately $9.3 billion.[1] Combining Sanofi and Medivation represents a compelling strategic and financial opportunity to drive significant value for the respective companies’ shareholders, employees, patients and caregivers.

The proposed purchase price represents a premium of over 50 percent to Medivation’s two-month volume weighted average price (VWAP) prior to there being takeover rumors.

- See more at: http://mediaroom.sanofi.com/sanofi-offers-to-acquire-medivation-for-52-50-per-share-in-cash-proposal-would-provide-immediate-and-certain-value-to-medivations-shareholders-combination-would-create-complementary-offerings-t/#sthash.rBgkMzS2.dpuf

製薬大手の仏 Sanofiは4月28日、米国の製薬会社Medivation Inc. に対し現金での1株52.50ドル、総額93億ドルでの買収提案を行ったと発表した。過去2ヶ月の平均株価に対し50%以上のプレミアムとしている。

Sanofi は2015年11月に中期戦略を発表しているが、バイオ医薬品部門で最大でかつ伸びの高い癌治療分野での再構築をうたっており、すぐれた前立腺癌治療薬を持つMedivation との組み合わせは患者に役に立つとともに、両社の株主に利益をもたらすとしている。

Medivationは4月29日、提案はMedivationの価値を低く見ており、同社と株主の利益に反するとしてこれを拒否したと発表した。

Sanofi はこれに対し、引き続き買収の実現を目指すとし、Medivationの株主に直接説明したいと述べた。敵対的買収にも含みを残す。

さらに、AstraZeneca、Pfizer、Novartis AG などが買収の検討を始めたと報じられている。

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Medivation は、本社を米国カルフォルニア州に置くバイオ医薬品会社で、がん治療薬の開発・販売を手がけており、前立腺がん治療薬 XTANDI ( 一般名Enzalutamide、開発コードMDV3100)を実用化している。

XTANDIは、第二世代のアンドロゲン受容体拮抗薬で、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に適応を持つ。

Medivation は2009年10月、アステラス製薬との間でXTANDI の全世界での開発・商業化に関する契約を締結した。

アステラス製薬は契約締結一時金として110百万ドルを支払い、開発マイルストン達成に伴う総額 335百万ドルの一時金支払いのほか、売上達成に応じて最大320百万ドルの追加一時金を支払う。

両社はXTANDI の広範囲な開発プログラムを共同で進め、米国における商業化を共同で行なう。

米国を除く全ての地域については、アステラス製薬が独占的開発・販売権を有し、アステラス製薬はMedivationに対し米国以外の全地域の売上に応じて漸増する2桁台のロイヤリティを支払う。

アステラス製薬は、過活動膀胱治療剤「ベシケア」や前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤「ハルナール」のグローバルでの販売に加えて、前立腺がん治療剤では「エリガード」を欧州で販売するなど、泌尿器領域において既に強固な事業基盤を構築している。
また、がん領域をフォーカス疾患のひとつに位置づけ経営資源を集中している。

アステラス製薬はこの契約締結により、泌尿器領域並びにがん領域における事業基盤を強化した。


FDAは2012年8月、転移性去勢抵抗性前立腺癌向けにXTANDI を承認、アステラス製薬は同年9月に米国で発売した。

2013年6月には欧州委員会から承認を得て、同年7月にまず英国で発売した。

アステラス製薬は2014年3月24日、経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤「イクスタンジ®カプセル 40mg」について、去勢抵抗性前立腺癌の効能・効果で製造販売承認を取得した。

アステラス製薬のXTANDI の売上高は下記の通り。(単位:億円)

  2014/3 2015/3

付記

2016/3 2017/3予
米国 443 857 1,484 1,637
日本 149 262 257
米州(米国以外) 8 26 45 61
欧州 95 334 707 959
アジア・オセアニア 0 6 24 45
合計 546 1,372 2,521 2,959

 

アステラス製薬ではXTANDI について、販売地域の拡大(新興国を中心に)、適応拡大(より早期の前立腺癌、乳癌、肝細胞癌など)を図る。

 

Medivationでは、XTANDI のほか、乳がん治療薬のTalazoparib、白血病治療薬のPidilizumab(白血病)でも開発を進めている。


2016/5/7  LG Chem、メール詐欺で22億円の被害 

LG Chem が本年4月にメール詐欺で240億ウオン(約22億円)の被害を受けたことが明らかになった。

同社はAramco Products Trading Co. から長期間ナフサを購入している が、Aramco から、取引用の銀行口座を変更したため、代金を新しい口座に振り込むよう依頼のメールがあった。

LG Chem は何の疑いも持たず、新口座に240億ウオンを振り込んだ。

しかし、この口座は Aramco Products Trading の口座ではないことが判明した。

LG Chemはこのほど、ソウル中央地方検察庁に電子メールを使ったハッキング詐欺の捜査を依頼した。

ーーー

実は同様の事件がAramco Trading and Oil とインドのOil and Natural Gas Corp (ONGC) の間で 2015年9月に発生している。

Aramco が 1,970百万ルピー(約39百万ドル)のナフサをONGC から購入したが、ONGCの社員を騙る犯人(メールアドレスの@ongc を@ognc に変えて 使用)は Aramco にメールを送り、代金を State Bank of India の口座ではなく、バンコックの銀行の口座に送るよう要請した。

詳細は明らかでないが、Aramco は、この企みは失敗に終わり、両社ともに被害は出ていないとしている。

インドの警察によると、Mumbai で2015年だけで少なくとも15 社が同様のやり方で被害にあったという。


2016/5/9 ヘリコプターマネー 

世界経済の低迷が続くなか、各国とも財政政策も金融政策も限界があることから、ヘリコプターマネーが注目され出した。

1969年に経済学者のMilton Friedmanが発表した概念で、需要喚起のために国民に対し直接紙幣のばら撒きを行う、という考えである。

2003年に“Ben” Bernankeが日本の需要低迷と物価下落への対策として提案した。

2001年3月からの日銀の量的金融緩和政策は中途半端であり、物価がデフレ前の水準に戻るまでお札を刷り続け、さらに日銀が国債を大量に買い上げ、減税財源を引き受けるべきだ。(「日本の金融政策に関する若干の考察」)

紙幣を刷って配る(政府が無利子の永久国債を発行して日銀が引き受ける)ため、実質的に国の債務を増やさずに需要を喚起できる。
但し、カネの価値を暴落させ、ハイパーインフレを招きかねないとされる。

2008年から2013年まで英国の金融行政の監督機関FSA長官を務めたAdair Turner が2015年10月に出版した著書 “Between Debt and the Devil:Money, Credit, and Fixing Global Finance” でヘリコプターマネーの導入を説いている。

日経ビジネスOn Line (2016年5月2日) がインタビュー記事「日本はヘリコプターマネーを本気で検討せよ  英金融サービス機構元長官、アデア・ターナー氏の警鐘」を掲載している。

世界経済の低迷の理由は2つ。需要不足過剰債務の問題に尽きる。
多くの先進国が、金融危機後に抱えた巨額債務の反動で財政規律重視の傾向が強まり、思い切った財政政策を打てず、経済の停滞につながっている。

期待されたのが中央銀行の金融政策だが日本の経験で明らかになったのは、金融緩和策の限界だった。
マイナス金利政策も、個人的には銀行の経営を圧迫 する以上のプラス効果は見込めないと見る。むしろ経済に対する不透明感が高まり、企業が投資を手控えたり、個人がタンス預金を増やしたりと需要喚起とは正反対の状況に陥りかねない。

しかし、まだ施策は残されている。「マネーファイナンス」の導入だ。
マネーファイナンスの最大のポイントは国民に現金を配り、家計を直接刺激することにある。
具体的には、国民の銀行口座に現金を入れたり、あるいは特別な商品券を配布したりする形が考えられるだろう。配布した商品券などには有効期限を設定し、使わないと価値を失う仕組みを作ってもいいだろう。

マネーファイナンスでは、新たに創造するマネーは中央銀行から与えられる。すなわち、国の実質的な債務を増やさずに済む。
減税は結局、将来の増税という形で需要を先食いしているに過ぎないが、マネーファイナンスの場合はそうした懸念もない。消費は間違いなく増え、物価は上昇する。

運用次第でハイパーインフレのリスクは十分管理できる。

日本は過去20年以上、非伝統的金融政策を使っても思うように物価が上がらなかった。意思決定の仕組みが複雑な欧州に比べれば、はるかに実施できるチャンスはある。政府や日銀はあらゆる可能性を排除すべきではない。

池田信夫ブログ(5月3日)「ヘリコプターマネーは日本を救うか」 はこれを取り上げ、黒田総裁の裁量で日銀のオペとして実行できる(国会決議は必要)ので、財政危機を「ハードランディング」させるには、いちばん簡単な方法だとしている。

銀行を通さないで、国民に直接カネを配るのだ。期限つきデビットカードを推薦したい。

「定額給付金」のように数兆円ぐらいでは効果がないので、思い切って100兆円ぐらいばらまいたらどうだろうか。1人80万円だから、車1台ぐらい買える。預金しておくと1年後にはゼロになるので、急いで使うだろう。

これによってGDPが100兆円増えることも確実なので、安倍首相の「名目 GDP 600兆円」も実現できる。

マネタリーベースは一挙に30%ぐらい増えるので、物価は2倍ぐらいになるだろう。

これで政府の実質債務は半減する。
年金生活者の所得は半減し、国民の金融資産も半減するが、その60%は60歳以上がもっているので、世代間格差も解消する。
もちろん財政は破綻し、日本経済はめちゃくちゃになるが、1年たてば正常化するだろう。あの石油ショックで物価が2倍になったときも、5年でもとに戻った。

財政法第5条では、国会の議決を経た場合は日銀による国債引き受けが可能である。

第5条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。
但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

しかし、 黒田日本銀行総裁は4月20日の衆院財務金融委員会の日銀半期報告の質疑で、景気刺激策の財源を中央銀行の紙幣増刷で賄う いわゆるヘリコプターマネー政策は「全く考えていない」と述べた。同時に、物価安定目標達成のために必要なら追加緩和を行う姿勢をあらためて示した。

ヘリコプターマネーは金融政策と財政政策を一体的に行うものとの認識を示した上で、財政は政府と議会、金融政策は政府や議会から中立的な中央銀行が行うので、「一体としてやるのは法的枠組みと矛盾する」と指摘。これまでに「具体的に検討したこともない」と重ねて否定した。

ーーー

ヘリコプターマネーの導入で本当に需要が喚起されるであろうか。

1999年に地域振興券が配布された。

15歳以下の子供のいる世帯主、老齢福祉年金等々の受給者、生活保護の被保護者等、満65歳以上で市町村民税の非課税者等を対象に、
財源を国が全額補助することで日本全国の市区町村が発行し、
地域振興券を1人2万円分、総額6,194億円を贈与という形で交付した。

交付開始日から6ヶ月間有効で原則として発行元の市区町村内のみで使用でき、
釣り銭を出すことが禁止され、額面以上の買い物をすることを推奨した。

内閣府経済社会総合研究所は2002年4月にこの効果を分析したレポート 「地域振興券の消費刺激効果」 を出している。

個票データに基づく推計結果を見ると、地域振興券はその配布時点において半耐久財、とりわけアパレル品等、を中心に消費を拡大させ、振興券配布月内で評価した限界消費性向は0.2〜0.3 程度であった。

(経済企画庁は振興券を受け取った中の9,000世帯に対してアンケート調査を行い、振興券によって増えた消費は振興券使用額の32%であったとしている。)

一方、地域振興券の消費刺激効果は時間とともに減衰し、最終的な限界消費性向は0.1に低下している。これは、一旦拡大した半耐久財の消費が異時間代替の形でその後若干減少したことによる。

保有資産が少ない世帯ほど振興券受領に応じ消費を拡大する傾向が見られた。

まず、受け取ったカネの7割〜8割が貯蓄に回された。(振興券がなくても行われた消費に使われる場合、本来使うはずのカネは貯蓄に回る)
また、消費のうち、半耐久財の場合は将来需要の先食いが含まれ、翌年以降の需要が減少する。

この結果、ネット需要増は配布されたカネの1割だけとなり、非常に効率が悪いことが分かった。

カネがないから消費できない人には有効だが、実際には、カネがないから消費しないのではなく、欲しいものが無いから、または将来に不安があるから消費しない人が多いのが現状で、ヘリコプターマネーの大半は貯蓄に回るであろう。
期限付きの商品券を配るとしても、その使用によって、本来使うはずのカネが貯蓄に回れば消費は増えない。

金額が大幅に増えても同じであろう。


2016/5/10 第一三共、Ranbaxy Laboratories の元株主を相手とする仲裁裁判所の判断を発表 

第一三共は5月6日、2008年にRanbaxy Laboratoriesの株式を第一三共に譲渡した元株主を相手としたシンガポールでの国際商業会議所国際仲裁裁判所の仲裁判断を発表した。

ーーー

第一三共は2008年6月11日、Ranbaxy Laboratories 及び創業家一族との間で、同社の議決権総数の50.1%以上を取得する契約を締結、2008年11月に第三者割当増資、新株予約権の引受け等を合わせ 63.9%を取得した。

しかし、米国食品医薬品局(FDA)は2008年9月16日に、Ranbaxy Laboratoriesの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。
Ranbaxy Laboratoriesは2011年12月に、FDAと同意協定書を締結したが、その後も輸入差止が相次いだ。

また、株価の大暴落で第一三共は多額ののれん償却を余儀なくされた。

第一三共はRanbaxyの米国事業の早期解決が難しいと判断、2014年4月にSun Pharma と株式交換し、2015年4月に取得したSun Pharmaの持株全てを売却した。

これについて第一三共は、2008年9月16日のFDAによるRanbaxyの医薬品30種以上の輸入の一時停止は 、同年6月の契約締結までに調査があった筈で、Ranbaxyの特定の元株主が、FDA 等の調査に関する重要な情報を隠蔽したものと判断し、国際商業会議所国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てたもの。

4月29日付の仲裁判断は下記の通り。

元株主は第一三共に下記の金額を支払う。

@ 損害賠償金 25,627.8 百万インドルピー 41,004百万円
損害遅延金 8,510.7百万インドルピー 13,617百万円
A 弁護士費用 14,549.7千米ドル 1,557百万円
仲裁費用 599.3千米ドル 64百万円
合計 56,242百万円

第一三共は、この回収の目処が立った段階で、同社の業績への影響を発表する。


付記

報道によると、2003年にランバクシーに入社したディネッシュ・タクールが、2004年に上司の指示で調査し、治験データの多くの改ざんを発見、不正の調査結果を経営会議にかけた上司が退職し、タクールも2005年に退職、不正の証拠をFDAに送った。報奨金4800万ドルを受け取る。

 

ーーー

経緯は下記の通り。

第一三共は2008年6月11日、インドのジェネリック医薬品大手 Ranbaxy Laboratories 及び創業家一族との間で、同社の議決権総数の50.1%以上を取得する契約を締結したと発表した。

同社は11月7日、 Ranbaxy 株の63.9%を取得したと発表した。

2008年8月16日から2008年9月4日までの間、公開買付けを行ったうえ、創業家一族からの取得、第三者割当増資、新株予約権の引受けを行った。
総額4,950億円になる。

米国食品医薬品局(FDA)はTOB完了直後の 2008年9月16日、Ranbaxy Laboratoriesの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。

Ranbaxy のインドの2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。

これが報道され、Ranbaxyの株価は(世界的な株安も加わり)暴落した。

第一三共は2009年1月5日、連結子会社であるRanbaxy Laboratoriesについて、3,540億円ののれん一時償却の特別損失を計上すると発表した。

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上

Ranbaxy Laboratoriesは2011年11月30日に、高コレステロール血症治療剤「リピトール」の後発薬を米国で発売した。
同社は当初、
インドでの原体生産を検討していたが、米国への輸入が認められていないため、Teva Pharmaceuticalに原体の生産を委託せざるを得なかった。

2011/12/5  第一三共子会社 Ranbaxy、米国で「リピトール」の後発品を発売

第一三共は2011年12月に、Ranbaxy Laboratoriesが米国FDAと同意協定書を締結したと発表した。

Ranbaxyは、データの信頼性を確実にするための手段や方針を更に強化し、現行の適正製造基準を遵守することを確約した。
また、これまでの行為に対し、5億ドルの罰金支払いで米国司法省と和解した。

2011/12/28 ランバクシー、米FDAと同意協定書締結

FDAは2013年9月13日、Ranbaxy Laboratoriesのインドのパンジャブ州のMohali 工場で生産された医薬品の輸入を差し止めるという輸入警告(import alert)を発表した。

2013/9/21  米FDA、第一三共子会社Ranbaxyに再び輸入差し止め 

第一三共は2014年1月14日、Ranbaxy Laboratories の原薬工場であるToansa工場(Punjab州)に関して、米国FDAによる査察の結果、何らかの問題があることを指摘する Form483 を受理したと発表した。

FDAは2014年1 月23 日付で、Toansa工場で製造された原薬を医薬品用に製造および流通させることを禁止する旨発表した。

2014/1/18   第一三共のRanbaxy、原体製造工場も問題か?

 

第一三共はRanbaxyの米国事業の早期解決が難しいと判断、Sun Pharma に売却することとした。

第一三共は2014年4月7日、Ranbaxy Laboratories をインドのSun Pharmaceutical Industries  が株式交換により吸収合併することでSun Pharmaと合意したと発表した。

2015年4月に取得したサンファーマの持株全てを3,784億円で売却した。

2014/4/10 第一三共、ランバクシーを実質売却 


2016/5/11 商社の決算 

伊藤忠商事が5月6日に発表した2016年3月期の連結決算(国際会計基準)は純利益が2403億円とない、前期比 602億円の減益となった。

本年2月時点では当初からの予想 3300億円を維持していたが、それと比べ896億円の減益となった。

しかし、三菱商事、三井物産が赤字決算となることから、総合商社で初のトップとなった。

2016/3/28   三井物産と三菱商事、減損損失計上で2016年3月期損益予想を大幅に引き下げ

今回の決算で「将来の損失リスクを最大限織り込んだ」とし、2017年3月期では3500億円の過去最高の利益を見込む。

実績予想では、下記の減損損失を見込んだが、 CITIC投資前倒しによる利益(200億円)や予備費(200億円)でほぼ相殺するとみていた。

しかし今回、下記の損失を追加計上した。当初からみていた損失を含めると1300億円を超える。

  実績予想

今回追加

エネルギー 180億円 英領北海油田開発事業プロジェクト(WIDP)の減損

 
繊維     約170億円 英国大手アパレル製造・卸業 Bramhope Group Holdings から撤退  60億円
ジャヴァホールディングス、LeSportsac の減損 85億円ほか
金属 180億円 IMEAの豪州石炭事業の減損 約220億円 IMEAのGlencoreとのNCA石炭JV (35%出資)の権益売却 170億円
インドネシア石炭損失 25億円
IMEA石炭減損追加 25億円
食料 60億円 Dole Food の減損 約145億円 Doleの減損追加 115億円
Dole 豪州撤退 20億円等
生活資材     約310億円 英国 European Tyre Enterprise Limited 減損 310億円
(タイヤ卸のStapleton's と タイヤ小売のKwik-Fit グループの事業統括)
その他     約55億円  
合計

約420億円

  約900億円  
特別損益 約400億円 CITIC投資前倒しほか    
差引 ± 0      

 

伊藤忠のITOCHU Minerals & Energy of Australia  (IMEA)の豪州石炭事業は下記の通り。

なお、伊藤忠は同日、同社の単体決算で コロンビアの炭鉱とインフラに出資する ITOCHU Coal Americas の減損損失 465億円を計上すると発表した。

2011年度にコロンビアの石炭生産販売・輸送インフラ保有会社 Drummond International LLC の株式20%を取得し、ITOCHU Coal Americas を設立した。
Drummondは1995年の操業開始当初より輸送インフラ及び自社港湾設備を有し、高カロリー、低硫黄分、低灰分の高品質一般炭を低コストで生産、大西洋マーケット中心に安定的に販売して いる。約19億トンの豊富な埋蔵量が確認されている。

しかし、石炭価格下落により、Drummond International の公正価値が下落したため、ITOCHU Coal Americas の減損処理を行う。

但し、IFRS方式での連結決算においては、Drummondへの投資は「FVTOCI 金融資産」として扱っており、この公正価値の変動は「その他の包括利益」として処理されるため、株主帰属損益には影響しない。

IFRS方式では、資本性金融資産は通常、「純損益を通じた公正価値」=FVTPL(Fair value through profit or loss)で測定するが、例外として、当初の認識時に「その他の包括利益を通じた公正価値」=FVTOCI (Fair value through other comprehensive income)測定に指定をすることができる。

この場合、事後に変更はできない。
事後の公正価値の変動は減損処理の対象外となり、「その他の包括利益」として処理される。

なお、受取配当金は損益として認識する。

--
   ソース:https://www.obc.co.jp/click/ifrs/column/col_01/vol08.html

ーーー

住友商事は5月9日に決算を発表したが、2016年2月時点の予想より255億円の悪化となっている。

2015/3 実績 2014/10/1  住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上 

2015/3 & 2016/3 減損損益 (億円)

  2015/3 2016/3
米 タイトオイル開発 1,755  
米 シェールガス事業 257  
米 タイヤ事業 188  
北海油田事業 36  
マダガスカル ニッケル事業   770
チリ 銅・モリブデン開発   140
南ア鉄鉱石関連投資   183
北米鋼管事業   181
ブラジル鉄鉱石事業 623 146
豪州石炭事業 244 121
豪州穀物事業   114
その他   295
合計 3,103 1,951

2016年2月の予想では、通期の減損損失を1,700億円とみており、実績は250億円の損失追加となった。

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三井物産

三菱商事

2016/3/28   三井物産と三菱商事、減損損失計上で2016年3月期損益予想を大幅に引き下げ

丸紅

2016/4/22  丸紅も2016年3月期損益予想を大幅に引き下げ

 


2016/5/12 JSR・宇部興産・三菱レイヨンのABS事業統合基本合意 

宇部興産、 JSR、三菱レイヨンの3社は5月9日、3社のABS事業の統合で基本合意に達したと発表した。

現在、JSRは完全子会社のテクノポリマーで、宇部興産と三菱レイヨンは折半出資のUMG ABSで事業を行っている。

今後もさらに厳しさを増す国内外のABS樹脂事業を取り巻く環境下で、オペレーションの最適化、製造効率とコスト競争力の確保を目的として、2016年10月31日を目処に契約を締結、2017年10月1日に両社を合併することを目指す。 詳細は今後詰める。

合併で能力は366千トンとなり、第2位の日本A&Lの100千トンを大きく上回る。
しかし、世界最大手の台湾の奇美実業の生産能力は年185万トン、2位の韓国LG化学も年156万トンで、大きく引き離されている。

新会社は国内に3カ所ある工場の生産体制を見直し、コスト減を進めるとともに、高機能品の生産に特化するなどして、海外の巨大メーカーとの差異化を図る。

付記

2017年3月30日付で、2017年10月1日を予定日として両社の事業を統合し、統合後の新会社を共同して運営することについて合意した株主間契約を締結した。

  統合会社名 未定
  株主    JSR 51% 
        UMG 49% (宇部興産 50/ 三菱レイヨン 50)

ーーー

テクノポリマー

1996年7月にJSRと三菱化学のABS事業を統合(JSR 60%、三菱 40%) してテクノポリマーがスタートした。
当時、JSRは日本のABSのトップメーカーであり、三菱化学も2番手グループで、統合したテクノポリマーは奇美実業、Bayer、GE(Borg Warnerを買収)に次ぐ世界4位であった。

奇美実業は当時、台湾で100万トンのABS樹脂を生産していたが、三菱化学は奇美に10%の資本参加をし、奇美製品の日本での販売(2万トン程度)を扱っていた。
このため、公取委がこの合併を問題視したため、三菱から、奇美との提携の解消を含めて措置をとるとの返事があり、公取委はこの措置を前提に承認した。

2002年10月、特殊ABS樹脂の業容拡大を目指すテクノポリマーと、コア事業への集中による事業基盤の再構築を進めたい鐘淵化学の意向が一致し、鐘淵化学から超耐熱・耐熱ABS樹脂の営業権を譲り受けた。鐘淵化学は高砂のプラントを他製品に転用した。

なお、2002年の新聞報道では、東レもテクノポリマーへの事業統合参加を検討しているとされたが、実現しなかった。

その後、三菱化学は戦略事業分野への集中的な投資を加速するとともに、事業の集中と選択を推進、2009年3月にテクノポリマーから離脱し、プラントを停止した。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

UMG ABS

1963年に宇部興産 51%、Borg Warner Chemical 49% 出資で宇部サイコンが設立された。
1988年9月にGE PlasticsがBorg Warnerの化学部門を買収し、GE Japanが株主となった。

2002年4月、宇部サイコンと三菱レイヨンがABS事業を統合し、UMG ABS としてスタートした。
この時点では、
宇部興産 42.7%、三菱レイヨン 42.7%、GE 14.6% の出資比率であったが、その後、GEが離脱し、宇部と三菱レイヨンの 50/50JVとなった。

宇部サイコンは宇部に年産110千トン、三菱レイヨンは大竹に同66千トンのABS樹脂設備をもち、合計176千トンと、テクノポリマーに次いで第2位メーカーとなった。

2015年3月期の売上高は下記の通り。
 テクノポリマー   42,662 百万円
 UMG ABS   42,349 百万円

 

ABS業界の推移は下記の通り。(能力は推定)

2006/10/9 日本のABS業界の変遷

旭化成は水島地区のエチレンセンター集約時の国内石油化学事業の基盤強化の一環でABSプラントを停止した。

2014/2/27  旭化成と三菱ケミカル、水島地区エチレンセンター集約で合意


日本のABSの需要は下記の通り。
輸出は、海外進出の日本企業への供給が多い。

 
  2000年 2015年 増減
国内 410 230 -180
輸出 184 128 -56
....

2016/5/13  四国電力伊方原発1号機 廃炉 

四国電力は5月10日、伊方原発1号機(1977年9月運転開始、能力56.6万kw )を廃炉にした。

運転開始から40年近くたち、申請すれば20年の運転延長も可能だが、巨額の安全対策費が予想され、採算性がないと判断した。

運転延長には、新規制基準をクリアするための電源ケーブルの難燃化などで約1700億円が必要。収支改善効果は約1500億円にとどまるため、四電は「投資回収が成り立たない」と判断した。

運転期間を原則40年とするルールでの廃炉は6基目となる。

関西電力の高浜1号、2号は2016年4月20日に安全審査に合格している。
2015年4月30日に運転期間延長を申請しており、延長のための審査がさらに必要。

関西電力の美浜3号は、震源断層の深さで規制委と対立していたが、2015年7月末に規制委案で見直すこととなった。
2015年11月26日に 20年延長を申請している。

  運転開始 万KW

再稼動
  申請

 
原電 敦賀@ 1970.3

40年

35.7   2015/3/17 廃炉決定
関西電力 美浜@ 1970.11 34.0   2015/3/17 廃炉決定
東京電力 福島1@ 1971.3 46.0   2012/4/19 廃炉
関西電力 美浜A 1972.7 50.0   2015/3/17 廃炉決定
中国電力 島根@ 1974.3 46.0   2015/3/18 廃炉決定
東京電力 福島1A 1974.7 78.4   2012/4/19 廃炉
関西電力 高浜@ 1974.11 82.6 2015/3/17 2015/4/30 運転期間延長申請、2016/4/20 安全審査合格
九州電力 玄海@ 1975.1 55.9   2015/3/18 廃炉決定
関西電力 高浜A 1975.11 82.6 2015/3/17 2015/4/30 運転期間延長申請、2016/4/20 安全審査合格
東京電力 福島1B 1976.3 78.4   2012/4/19 廃炉
関西電力 美浜B 1976.3 82.6 2015/3/17 2015/11/26  20年延長を申請
四国電力 伊方@ 1977.9   56.6   2016/5/10 廃炉
東京電力 福島1C 1978.1   78.4   2012/4/19 廃炉
東京電力 福島1D 1978.4   78.4   2014/1/31 廃炉
日本原子力 東海 1978.11   110.0 2014/5/20 (PWR優先で審査停滞) 
東京電力 福島1E 1979.1   110.0   2014/1/31 廃炉
関西電力 大飯@ 1979.3   117.5

 
関西電力 大飯A 1979.12   117.5

 
九州電力 玄海A 1981.3   55.9

 
四国電力 伊方A 1982.3   56.6

 
東京電力 福島2@ 1982.4   110.0

(地元が廃炉要求)
東京電力 福島2A 1984.2   110.0

(地元が廃炉要求)
東北電力 女川@ 1984.6   52.4

 
九州電力 川内@ 1984.7   89.0 2013/7/8 2015/9/10 営業運転
関西電力 高浜B 1985.1   87.0 2013/7/8 2016/1/29 再稼動、2016/3/9 運転差止
東京電力 福島2B 1985.6   110.0

(地元が廃炉要求)
関西電力 高浜C 1985.6   87.0 2013/7/8 2016/2/26 再稼動、直後にトラブル停止 2016/3/9 運転差止
東京電力 柏崎刈羽@ 1985.9   110.0

 
九州電力 川内A 1985.11   89.0 2013/7/8 2015/11/17  営業運転
原電 敦賀A 1987.7   116.0 2014/11/5 2013/5/27  敦賀2号機直下の断層を活断層と断定
東京電力 福島2C 1987.8   110.0

(地元が廃炉要求)
中部電力 浜岡B 1987.8   110.0 2015/6/16  
中国電力 島根A 1989.2   82.0 2013/12/25  
北海道電力 泊@ 1989.6   57.9 2013/7/8  
東京電力 柏崎刈羽D 1990.4   110.0

 
東京電力 柏崎刈羽A 1990.9   110.0

 
北海道電力 泊A 1991.4   57.9 2013/7/8  
関西電力 大飯B 1991.12   118.0 2013/7/8 2015/12/24 再稼働差し止めの仮処分申し立て却下
関西電力 大飯C 1993.2   118.0 2013/7/8
北陸電力 志賀@ 1993.7   54.0

2016/3/3  直下に活断層と最終判断
東京電力 柏崎刈羽B 1993.8   110.0

 
中部電力 浜岡C 1993.9   113.7 2014/2/14  
九州電力 玄海B 1994.3   118.0 2013/7/12  
東京電力 柏崎刈羽C 1994.8   110.0

 
四国電力 伊方B 1994.12   89.0 2013/7/8 2015/7/15 安全審査合格
東北電力 女川A 1995.7   82.5 2013/12/27  
東京電力 柏崎刈羽E 1996.11   135.6 2013/9/27  
東京電力 柏崎刈羽F 1997.7   135.6 2013/9/27  
九州電力 玄海C 1997.7   118 2013/7/12  
東北電力 女川B 2002.1   82.5

 
中部電力 浜岡D 2005.1   138.0

 
東北電力 東通 2005.12   110.0 2014/6/10  
北陸電力 志賀A 2006.3   135.8 2014/8/12 2016/3/3 重要設備直下に活断層の可能性の判断
北海道電力 泊B 2009.12   91.2 2013/7/8  

 


2016/5/14  石油資源開発、カナダのオイルサンド事業の生産一時休止 

石油資源開発は5月12日、昨今の著しい油価下落に対応するため、孫会社の Japan Canada Oil Sands Limited(JACOS)によるカナダのアルバータ州Hangingstone 鉱区3.75 セクション地域におけるビチューメン(オイルサンド層から採取される超重質油)の生産操業を一時休止すると発表した。

油価が回復するまで埋蔵量を温存することで、より収益性の高い生産活動を目指す。操業要員は隣接の「拡張開発事業」へ異動する。

付近のFort McMurray地区で5月1 日に発生した山火事による直接の被害はないが、操業要員の移動や販路の確保に制約が生じたため、生産操業を一時的に見合わせて いる。
今回の決定で、山火事の鎮静後も生産操業を一時休止する。

カナダ西部アルバータ州で5月1日に発生した山火事で、Fort McMurray周辺の1.2万ヘクタールを含め、合計10万ヘクタールの森林が焼け、多くの民家が消失した。
山火事に襲われた地域はカナダ有数の原油生産拠点で、オイルサンド関連施設の操業が軒並み停止や縮小に追い込まれ、 オイルサンドからの原油生産は1日当たり100万バレル(カナダの生産量の1/3 余りに相当)が滞っているとされる。

最大の供給先の米国のエネルギー政策にも影響を及ぼしかねない事態となっている。

3.75セクションに隣接する「拡張開発事業」については、日量約20,000 バレル規模のビチューメン生産が可能となる設備の建設工事を進めており、2017年の生産操業開始を目指しているが、これについては、3.75セクションよりも効率的な生産操業が期待できるため、山火事鎮静後に速やかに作業を再開する。

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石油資源開発が現在 94.05% 出資するカナダオイルサンド は1978年に国と経済界の強力な支援を受け、当時の石油公団と民間各社により設立され 、カナダの子会社 JACOSを通じて、オイルサンド事業に取り組んできた。

JACOSはカナダ・アルバータ州北部のFort McMurray地区の南南西 に権益を有する。
今回休止するHangingstone鉱区 3.75セクション地域では、1 0 0 %権益を保有し、1 9 9 9 年に生産開始した。(2003年から商業生産)

Hangingstone鉱区 3.75 セクション JACOS(オペレーター)100%
Hangingstone鉱区 拡張開発地域 JACOS(オペレーター)75%、Nexen Energy 25%
未開発鉱区
   Thornbury、Corner、Chard
JACOS 100%保有鉱区と、 パートナーの Suncor、Nexen Energy、Imperial Oil と共同で保有する鉱区(権益比率は鉱区毎に異なる)が存在

JACOSは、3.75セクションでさまざまな回収法の試行錯誤の末、当時は商業的には実証されていなかった SAGD(Steam Assisted Gravity Drainage)  法を採用した。

これまで日量5千〜6 千バレルで生産していた。

拡張開発事業もSAGD法を使用し、初期開発においては日量約2万バレル程度で、 その後、最大日量3万バレル規模に拡張する。

生産されたビチューメンは、コンデンセート等の超軽質油で希釈し、重質油相当の希釈ビチューメンとして、主に米国の製油所に対しパイプラインを通じ販売をする 。
初期開発に係る総投資額は約14億カナダドルを予定している。


 


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