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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2023/9/1  米国のメディケア対象医薬品の薬価交渉 

昨日の記事で、「米国の法律は従来、約20年前に始まった処方薬制度の一環としてメディケアの対象となる処方薬の価格交渉は禁止していた」と述べた。

その理由を調べた。(主にChatGPTによる)

メディケアは1965年に制定されたが、2003年にメディケア改善法(Medicare Prescription Drug, Improvement, and Modernization Act)が導入される以前は、通常のメディケア(メディケアパートAおよびパートB)には処方薬の給付は含まれていなかった。

メディケアパートAは入院保険を提供し、パートBは医療保険を提供していたが、処方薬に関するカバレッジはなかった。

メディケアが1965年に制定された当時は、処方薬の価格や必要性に関する問題が現在のように複雑で大きな焦点にはなっておらず、入院費や医療費は組み込まれたが、処方薬に関するカバレッジはメディケアに組み込まれておらず、高齢者や障害者が処方薬を必要とする場合、それらの薬のコストは個々の患者が自己負担する必要があった。

このため、処方薬の価格が高くなることで医療費の負担が増えるという懸念が存在した。

2003年の法改正によって「パートD」という処方薬給付プログラムが導入され、高齢者と障害者が処方薬のコストを軽減するための制度が確立され、処方薬の給付がメディケアの一部として提供されるようになった。

 

2003年のメディケア改善法では、「パートD」として知られる処方薬の給付プログラムを導入したが、同時に「非干渉条項」として知られる規定も設けた。
メディケアと製薬会社との間で薬価交渉を行わないように制約し、政府が独自の薬価交渉や価格設定体系を開発することを禁じるものである。

この非干渉条項は、議会における政治的な交渉と妥協の産物として誕生した。法律制定時、共和党の議会メンバーは市場志向のアプローチを強調した。市場志向の共和党員の賛成票を引き出すための交渉材料の一つとして、「非干渉条項」を加えた。

製薬会社が執筆し議会を通過させるのに大きな役割を果たした規定で、メディケアと製薬会社との間の薬価交渉を禁止し、政府が独自の一覧表や価格体系を開発することを阻止した。メディケアは処方薬の価格交渉を行うことができない状態となった。

製薬会社としては、従来は高齢者や障害者も一般顧客と同様に、製薬会社の提示する価格で処方薬を購入していた。メディケアに組み入れられた結果、メディケアから値引きを要求されるのはおかしいという理屈である。

製薬会社は、自社の製品価格を維持し、競争を制御するために、価格交渉の制限を支持しており、この条項の撤廃や変更を求める動きに対して、製薬業界からの強力な反対がある。

既報のとおり、今回の「メディケア」の対象となる医療用医薬品(処方薬)の価格を交渉で決める制度について、 MerckやJohndon & Johnsonなどの製薬大手は収益減への懸念から米国政府を提訴している。

 

 


2023/9/2    東北大学、「大学10兆円ファンド」の支援第1号

文部科学省は9月1日、世界最高水準の研究大学をつくるために政府が創設した10兆円規模の大学ファンドで東北大を最初の支援対象候補に選んだと発表した。研究や組織改革の戦略を総合的に評価した。
運用益を確保して2024年度の助成開始をめざす。

付記

文部科学省の有識会議は2024年6月14日、東北大が認定基準を満たしたと発表した。支援対象第1号となり、2024年度中に100億円程度が助成される。

大学ファンドは資産を株式や債券で運用し、利益を数校の「国際卓越研究大学」に分配して研究力の向上を図る制度で、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運用し、運用益を活用して年間3,000億円を上限に文部科学大臣の認定を受けた国際卓越研究大学に配分する。

東北大は初年度に最大100億円程度を受け取る見通しで、その使い道は卓越大の裁量に任されるが、「参画大学は、世界トップ研究大学に相応しい制度改革、大学改革、資金拠出にコミット」するとなっている。

ーーー

近年、科学技術・イノベーションが、国家間の覇権争いの中核をなす中、日本の研究力は相対的に低下している。論文数の順位は国際的に地位の低下が続いており、博士号取得者数は、特に米中に比べ伸びが大きく劣後している。

そこで、「総合科学技術・イノベーション会議」では、「統合イノベーション戦略2020」において、研究力を強化し若手研究者を支援するため、世界に伍する規模のファンドを創設し、その運用益を活用することを提示した。

同時に「経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太の方針)」では、「世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学等の共用施設やデータ連携基盤の整備、若手人材育成等を推進するため、世界に伍する規模のファンドを大学等の間で連携して創設し、その運用益を活用するなどにより、世界レベルの研究基盤を構築するための仕組みを実現する」ことが明記された。

その後2020年12月8日の「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」閣議決定において、
「10 兆円規模の大学ファンドを創設し、その運用益を活用することにより、世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学の共用施設やデータ連携基盤の整備、博士課程学生などの若手人材育成等を推進することで、我が国のイノベーション・エコシステムを構築する。」とされた。

2022年3月、10兆円規模の大学ファンド(基金)が誕生した。

当初、国の一般会計から政府出資として約1.1兆円、財政投融資債の発行で調達した財政融資資金から約4兆円の合計約5.1兆円を調達し、運用開始した。

さらに2022年度中に約4.9兆円の財政融資資金が追加され。10兆円となった。(政府出資約1.1兆円と財政投融資からの借入金約8.9兆円)

財政融資資金は期間40年(うち据置期間20年)の長期借入で2042年度以降、20年かけて順次償還されることとなる。そして20年経過後には、参画大学や民間の資金に置き換えられていくことを想定している。

2022年度末の運用資産額は9兆9644億円で、総合収益(実現収益+評価損益)は604億円の赤字となった。うち、損益計算書上の当期純利益は742億円の黒字である。

今回の助成財源は、当期純利益742億円から繰越欠損金62億円を控除した金額から決定される。

 

2022年12月に国際卓越研究大学の公募が開始されると、23年3月末の締め切りまでに下記の10校が申請した。 

2023年6月には、文部科学省が7月に「京都大学」、「東京大学」、「東北大学」に視察に行く方針であることが明らかになり、事実上この3校から選ばれるとみられていた。

審査を担う有識者会議は「体制強化計画の磨き上げなど一定の条件を満たした場合に認定する」との留保付きで東北大を選んだ。正式な認定は2024年度中の見通し。

東北大は「未来を変革する社会価値の創造」「多彩な才能の開花」など三つの公約を掲げ、注目度の高い論文数や外国人研究者比率といった6つの目標と19の戦略を提示。審査では、教授を頂点とするピラミッド型研究体制から転換し、助教ら若手もリーダーとなって野心的な研究に挑戦できる体制を構築する目標が高く評価された。ガバナンス面で改革理念が浸透していることも選定理由に挙げられた。

東北大は同省に提出した計画で、世界トップ級の研究者で作る「研究戦略ボード」を設けるとした。工業製品の材料を研究して新たな機能の材料を開発する材料科学や災害科学などで「世界十指に入る研究拠点を形成する」という。

仙台市のキャンパスに整備する世界最高水準の分析機能を持つ次世代放射光施設「ナノテラス」を核に、産学官で半導体や量子などの成長分野の研究にも力を入れる。

ナノテラスは、高輝度・高指向性の光を使ってモノの構造や機能をナノレベルで可視化できる“巨大な顕微鏡”で、これまで国内にあった施設の約100倍の強度で軟X線を発生させることができ、物質の電子状態やその変化を高精度で追うことができる世界最高レベルの高輝度放射光施設として、国内外から大きな期待を集めている。

大学院生に給与を支給するなど経済支援を拡充し、博士課程の学生数を現在の約2700人から25年後に6000人に増やす計画も盛り込んだ。国際化を推進するため外国人研究者比率を9%から30%に、学部の留学生比率も2%から20%に引き上げる。

東北大の大野英男学長は「変革への意思や体制強化計画が評価され、大変光栄に思う。世界をリードする研究大学を目指し、最終的な認定に向けて全学一丸となって引き続き力を尽くす」とのコメントを出した。

 

現地視察の対象になった東京大と京都大は選ばれなかった。有識者会議は両大学について、「構想の具体的内容を学内の多くの構成員が共有し、全学として推進する」体制になっていないと、同じ文言で指摘した。
東大についてはさらに、「既存組織の変革に向けたスケール感やスピード感が不十分」とし、京大は「責任関係や指示命令系統が不明確」、「スタートアップや国際化の取り組みで実社会の変化への対応の必要性が感じられた」と指摘した。

同省は2024年度も卓越大を公募する。23年度の審査で選ばれなかった大学も申請できる。支援対象は段階的に数校に増える見込み。

永岡桂子文科相は1日の閣議後記者会見で「選ばれなかった大学も意欲的な提案がなされた。研究力強化に向けて各大学と対話を継続し、改革の取り組みをしっかりと後押ししたい」と述べた。

 

各大学の申請概要と、審査した有識者会議からの意見

  申請概要 意見
東北大学 全方位の国際化、世界の研究者をひきつける研究環境、世界に変化をもたらす研究展開など6つの目標を達成するために19の戦略を提示。

例えば、教授、准教授、助教で研究室を構成する体制から、助教レベルも独立できる研究体制に移行することなどに取り組む。

KPI(重要業績評価指標)やマイルストーンを明確にした体系的な計画。

他方、民間企業からの研究資金などの受け入れ額を10倍以上にするという目標は、従来の成長モデルでは達成は困難であり、戦略の深掘りや見直しが必要。

東京大学 全学的な教育研究組織を新たに創設し、「世界の公共性への奉仕」を実践。
学術の多様性を維持しつつ、世界トップ10の有力大学に並ぶ存在に。
研究基盤の整備や、人的資本の高度化に向けた改革を行う。
新組織の創設は、大学の変革を駆動する構想としては評価。

他方、変革のスケール感やスピード感は十分ではなく、工程の具体化と学内調整の加速が求められる。
後、構想内容を全学として推進することが確認できれば認定候補となりうる。
京都大学 研究組織改革と人材・研究環境への投資、研究成果の活用、新しいガバナンス体制の確立などを推進する。 執行部の変革への強い意志は高く評価できる。

他方、国際標準の新たな体制に移行するには責任と権限の所在の明確化が必要。
また、スタートアップや国際化に向けた取り組みは、実社会の変化への対応が必要。
早稲田大学 カーボンニュートラル社会の実現を最重要課題として、全学の研究領域を包含し推進体制を構築する。総合知など文理融合にも取り組む。 大学全体の研究力強化や全学での変革につなげる道筋が明確ではなかった。
カーボンニュートラル社会の実現に特化するのではなく、大学全体の変革に向けた構想とすることが望ましかった。
東京科学大学
(東京医科歯科大と東京工業大の共同申請)
英語の公用語化やスタートアップ拡大などに取り組み、世界最高水準の大学を実現する。
人文社会科学を含む多彩な分野が融合する「コンバージェンス・サイエンス」を展開することで社会とともに科学技術立国を再興し、世界に貢献する。
統合にあわせ、研究大学としての変革を同時に実施するという意欲的な構想。

他方、統合後の大学を審査するに際し、現時点では計画の具体化が十分とは言えず、実行性を判断できる段階に至っていない。
名古屋大学 基礎研究のレベルの高さや活発な産学連携を土台に若手研究者支援などを行い研究力向上を目指す。
博士課程の定員と留学生割合を増やし世界レベルの研究大学へ成長させる。
研究力向上策には期待。

一方、大学全体の研究力強化の駆動には、新たな組織と既存の部局との関係などをいま一度整理する必要がある。
東京理科大学 日本における理工系研究大学のモデル創出を目指し、国際交流のハブとなる「国際研究交流ユニオン」や、国際的研究拠点「未来都市研究センター」「未来生活研究センター」を設置。 新たな研究施設の設置など研究力強化に資する具体的な取り組みは評価できる。

他方、世界水準の研究環境の構築には、より手厚いスタートアップ支援、多様な人材登用などに取り組む必要がある。
筑波大学 事務の英語化の学内標準化やピアレビューを重視した人事評価などに新たに取り組む。
つくばと世界との連携による研究教育力の最大化などで社会の変革を目指す。
筑波研究学園都市という立地をいかし、研究機能の最大化が実現されれば高い効果も期待できる。

ただし、国際卓越研究大学には各研究機関との連携強化だけでは十分ではなく、大胆な視点での改革が求められる。
九州大学 九州・沖縄地区の各大学との連携強化や、オープンな研究環境の整備などを行う。
「脱炭素」「医療・健康」「環境・食料」の3領域を突破口に改革を実施する。
従来の大学の内外の壁を越え、地域全体の研究力向上を図る構想は評価。

他方、変革を学内組織に浸透させていく道筋が現時点では明確になっていない。
構想の実現に向けた課題も予想される。
大阪大学 関西から世界へ向けた社会変革の実証の場となる「サイエンスヒルズ」(大阪版シリコンバレー)の形成を目指す。
国際共創拠点や、最先端卓越研究拠点などを「研究特区」として順次立ち上げる。
成果展開を学内に留めることのない野心的な提案と評価。

他方、新たな組織が既存の部局や講座などの関係で十分に機能しうるのか、弊害は生じないのかを見極め、工程を具体化する必要がある。

 


2023/9/4     福島原発「処理水」についての中国政府のコメントへの日本政府の回答

中国の呉駐日大使は8月28日、岡野外務事務次官と会談し、日本側に対して、福島原発汚染水の海洋放出 が「全世界の海洋環境と全人類の健康及び安全に多大なリスクと予測不可能な危害をもたらし、中国を含む国際社会の憤りを招いた」とし、3つの点について回答を求めた。

第1に、なぜ日本はトリチウムを希釈処理したことを意図的に強調しながら、他の放射性核種については常に言葉を濁すのか?

第2に、なぜ日本は全面的かつ体系的な海洋環境モニタリングを行わないのか?
日本の現行のモニタリング計画は体系的でも全面的でもなく、放出した全ての核種をモニタリングしているわけではなく、またモニタリングの対象となる海洋生物の種類も少なく、海洋生態系への長期的影響評価のニーズを満たしていない。

第3に、なぜ日本は国際的なモニタリング・メカニズムの構築に他の利害関係者が参加することを拒否するのか?

2023/8/30 福島原発「処理水」についての中国政府の主張

 

 

これに対し外務省は9月1日、下記のとおり中国側に回答した。日本政府としては、これまでも、中国側から直接提起された指摘には、誠意をもって、科学的根拠に基づき回答してきているとしており、今後もALPS処理水について、高い透明性をもって、科学的根拠に基づく丁寧な情報提供を続けていくとし、中国政府に正確な情報を発信するよう求めている。

第1に、なぜ日本はトリチウムを希釈処理したことを意図的に強調しながら、他の放射性核種については常に言葉を濁すのか?

ALPS(多核種除去設備)は62の核種を確実に除去するように設計されているが、半減期を考慮すると処理前の水に現実的に存在し得る核種は29核種である。IAEA及び第三国機関の分析でも、その他の核種は検出されていない。

これらの核種については、ALPSによる処理を経た後、規制基準未満まで除去する。処理後に検出されたことのある核種は、29核種のうち9核種だけであり、それらも規制基準を十分に下回るまで浄化できている。

ALPS処理水の海洋放出による人及び環境への放射線影響は、国際的な基準及びガイドラインに沿って、海洋拡散、核種の生物濃縮や長期の蓄積も考慮して入念な評価を行った結果、無視できるものである。

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発表された資料をよくみると、確かに規制基準を下回っていることがわかる。但し、あまり報道されていない。

2023年08月27日 環境省発表 ALPS処理水に係る海域モニタリングの結果について(令和5年8月25日採取分)
 

1.環境省では、ALPS処理水に係る海域モニタリングを実施しています。 

2.ALPS処理水の放出開始後、令和5年8月25日朝に採取した海水試料を分析した結果、トリチウムの濃度は11か所全てで検出下限値未満(7〜8Bq/L未満)であり、人や環境への影響がないことを確認しました。
 
3.加えて、γ 線核種についても念のため測定を行いましたが、全て検出下限値未満でした。

結果の詳細 https://shorisui-monitoring.env.go.jp/

8月30日の東電発表では、20km圏内の魚介類のセシウム分析結果も出ている。

https://www.tepco.co.jp/decommission/data/analysis/pdf_csv/2023/3q/fish02_230830-j.pdf


第2に、なぜ日本は全面的かつ体系的な海洋環境モニタリングを行わないのか?

日本は政府が定める「総合モニタリング計画」に基づいて、包括的かつ体系的な海域モニタリングを行っている。東京電力のみならず、環境省、原子力規制委員会、水産庁及び福島県がモニタリングを行っており、その結果については各省庁のウェブサイト及び包括的海域モニタリング閲覧システム等において公開されている。

放出開始後のモニタリング結果は、ほとんど検出下限値未満であり、検出されたものも極めて低い濃度であり、安全であることが確認されている。

東京電力のデータの信頼性については、IAEAのレビューを受けており、東電の分析能力や信頼できる業務体制を有するか等も含め評価されている。このレビューには中国の専門家も参加している。

トリチウム以外の核種についても、例えば、環境省は、上述の29核種を含めた幅広い核種のモニタリングを行うこととしており、特に、海洋放出開始後は、海水中のγ線放出核種を毎週スクリーニング的にモニタリングし、結果を公表している。原子力規制委員会は、以前より、定期的に、海水のセシウム134及び137、ストロンチウム90の濃度や全β核種をモニタリングし公表してい るが、海洋放出開始後もそれを継続している。

現在のモニタリング制度は、放射性物質濃度の変動があった場合には速やかにこれを探知し、放出の停止を含め適切な対応をとることが可能なものとなっている。

 

第3に、なぜ日本は国際的なモニタリング・メカニズムの構築に他の利害関係者が参加することを拒否するのか?

ALPS処理水の海洋放出については、これまでIAEAの関与を得ながら、国際基準及び国際慣行に則り、安全性に万全を期した上で進めてきている。

海洋放出開始後も、IAEA職員の常駐に加え、同発電所からリアルタイムでモニタリング・データを提供している。

ALPS処理水のモニタリングについては、IAEAレビューの枠組みの下で、IAEA及びIAEAから選定された複数の第三国分析・研究機関が、処理水中の放射性核種を測定・評価するソースモニタリングの比較評価及び環境中の放射性物質の状況を確認する環境モニタリングの比較評価を実施している。

現在実施されているIAEAによる比較評価には、IAEAの放射線分析機関ネットワーク(ALMERA)から、米国、フランス、スイス及び韓国の分析研究機関が参画している。

「IAEAのモニタリングメカニズムには、これまでに他の国や国際機関の現場への参加は行われておらず、これでは、真の国際モニタリングとは言えず、透明性を著しく欠いている」という中国側の主張は、事実とは異なる。

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以上により、中国側の質問には一応答えている。

但し、新聞やTVの報道では、質問1の通り、「トリチウムを希釈処理したことを意図的に強調しながら」、他の放射性核種についてはほとんど触れていない。世界各国が放出しているトリチウム水と同じという印象を与えようとしているように見える。 「汚染水」という言葉を頑なに拒否するのも、不自然である。処理はされているが、一旦汚染された水であることには変わりはない。

現在大量に残っているALPS処理水には多量の放射線核種が残っているのは事実であり、これをALPSで再処理したうえで、大量の海水で薄めて放出するが、これがきちんと薄められているか、海洋生物に蓄積しないかどうかが真の懸念事項であ る。問題がないから報道しないのではなく、問題ないという事実を数字等できちんと報道すれば、 国民の不安も中国側の懸念もなくなるのではないだろうか。

 

なお、 以下はブログ筆者の個人的見解。

第2の質問への答えに、「東京電力のデータの信頼性については、IAEAのレビューを受けており、東電の分析能力や信頼できる業務体制を有するか等も含め評価されている」とある。

しかし、過去の実績からは東京電力の発表への信頼性はない。

本来、ALPSで処理してタンクに保管している水は、ごく微量の照射線物質はあるが、トリチウムだけが残っている筈である。それが今回再処理が必要なのは、東京電力のルール違反(廃水処理を急ぐため、ALPSの吸着材の交換頻度を下げた)で 多くのタンクのなかの処理水の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を大幅に超過していることによる。

報道で明らかになるまで東電はこのことを公表していない。都合の悪い事態が発生した際に、その事実を隠していた。

しかも、原子力規制委員会も当初から本件を知っておりながら、公表していない。

新聞が報道するまで、国民はトリチウム以外はすべて(微量を除き)除去されているものと信じていた。

 

もしも将来、何らかのミスやトラブルで都合が悪いことが発生した場合、すぐに発表するであろうか。特に影響が大きいものほど、疑念が生じる。


2023/9/5    新しいアルツハイマー治療法候補 ハブ毒から得た酵素によりアミロイド β を分解

東北大と東京大のチームは8月31日、沖縄や鹿児島の奄美大島に生息するヘビのハブが持つ毒の成分に、アルツハイマー病の原因物質を分解する作用があることを、培養細胞を使った実験で突き止めたと発表した。

今後、動物実験などで効果や安全性を確かめる。「将来、新たな認知症治療法の開発につながる可能性がある」としている。

アルツハイマー病は「アミロイドベータ」などのタンパク質が脳に蓄積され、神経細胞を傷つけることで起こると考えられている。

例えば、神経細胞の外側では「アミロイドβ」が蓄積して老人班を形成し、神経細胞の中では「タウタンパク」が蓄積してタンパク質が糸くず状に変化したようなもの(神経原繊維変化)が見られるようになる。

厚労省の専門部会は8月21日、エーザイと米 Biogenが共同開発したアルツハイマー治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」について、国内での製造販売承認を了承した。今後、厚労相が正式承認する。

LECANEMABは、アルツハイマー病に対する免疫療法剤創製を目的としたヒト化モノクローナル抗体で、ベータ・アミロイド(Aβ)を分解除去する。

  2023/8/23 厚労省の専門部会、エーザイのアルツハイマー治療薬「レカネマブ」の国内での製造販売承認を了承、近く承認へ


東北大学大学院農学研究科の二井勇人准教授と小川智久教授のグループは、

・ ハブ(Protobothrops flavoviridis)の粗毒から、金属イオンアフィニティー法を用いて蛇毒メタロプロテアーゼ(SVMPs)というタンパク質分解酵素を精製した。

・ 蛇毒メタロプロテアーゼは、アミロイドβ(Aβ)を無害なペプチド断片へと分解し、ヒト培養細胞からのAβ産生量を大幅に減少させることを発見した。

・ ハブが独自に進化させたアミロイドβ分解プロテアーゼである蛇毒メタロプロテアーゼを用いたアルツハイマー病治療法の開発に結びつくことが期待される。

本研究グループは東北大学学際科学フロンティア研究所佐藤伸一助教、東京大学大学院薬学研究科富田泰輔教授との共同研究により、蛇毒メタロプロテアーゼがヒト細胞からのAβ生産を大幅に減少させることを明らかにし、有毒なAβを短いペプチド(p3)に変換する切断部位を特定した。

さらに、試験管内でAβのアミロイド線維を生成させる実験から、蛇毒メタロプロテアーゼはアミロイド線維を分解しないものの、アミロイド線維の生成を抑制することも明らかにした。

今後の研究によって、Aβ分解プロテアーゼを用いた治療法の開発に役立つことが期待される。

同様の分解酵素は人間の体内にも存在しているが、ほかの生き物から見つかるのは珍しいという。

チームの小川智久東北大教授は「ヘビの毒という強い成分だからこそ、人間の体内で力を発揮すると期待できる」と話した。

 

本研究成果は、日本時間2023年8月12日に科学雑誌Toxinsに掲載された。


2023/9/8 北海道の新興企業、究極の半導体:ダイヤモンド半導体の実用化へ
 

札幌市の大熊ダイヤモンドデバイスは、「究極の半導体」と呼ばれるダイヤモンド半導体の実用化を目指し、2026年度末にも福島県大熊町で工場を稼働する。総事業費は約50億円で、年間数万個の半導体デバイスを製造できる規模にする。

東電HDとIHIが2022年に設立した東双みらいテクノロジー(福島県大熊町)へ半導体基板に人工ダイヤモンドを使ったダイヤモンド半導体デバイスを納品する予定で、東双みらいテクノロジーは福島第1原発のデブリ(溶融燃料)取り出しに向けた設備の基本設計や研究開発を担っている。

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ダイヤモンド半導体はシリコン・SiC・GaNに代わる「究極の半導体」と言われ、1980年代に日本が世界に先駆けてガスからの人工ダイヤモンド合成に成功し、以降30年以上に渡って世界中で研究開発がされている。

ダイヤモンド半導体は、これまで多く使われてきたどの材質よりも大きな電力を無駄なくつかえるようになる性質を持っている。

既存半導体デバイスは自己発熱で 性能が劣化するため大型冷却装置が必須であるが、ダイヤモンド半導体では除熱不要により小型化軽量化が可能となる。

 

また高出力高周波素子としてのポテンシャルも持っている。

 1. 高温(300℃)、放射線(3MGy)環境下での動作

 2. 反転、非反転増幅した出力を同時確認

 3. 信号を4.5倍に増幅

原子炉過酷事故や廃炉作業、基地局用途における自己発熱のような高温環境下・放射線環境下での動作(耐過酷環境)や、データ通信量爆発・高速化(Beyond 5G)に対応するアナログデバイスの製造に必要不可欠である。

 

大熊ダイヤモンドデバイスは、福島第一原発廃炉プロジェクトへ適応する要素技術をきっかけとして、世界初となるダイヤモンド半導体の社会実装を目指す、北海道大学および産業技術総合研究所を基とする2022年3月創業のスタートアップ。

東日本大震災による福島第一原発での事故の後、高温かつ高放射線環境下に耐えうるダイヤモンド半導体へのニーズが急速に高まり、北海道大学の金子純一准教授を筆頭に北海道大学、産総研、物材機構、高エネルギー加速器研究機構など国内の研究機関が一丸となって研究開発に取り組んできた。金子氏は日本原子力研究開発機構の廃炉国際共同研究センター客員研究員も務める。

10年超に及ぶ研究を経て、世界で初めてダイヤモンド半導体が実用的な増幅器として動作するレベルに達したため、2022年3月1日に同社が創業した。(金子氏が取締役で技術指導)

2021年12月に世界初の実用型ダイヤモンド半導体プロトタイプ完成

同社が作るダイヤモンド半導体は、「演算」や「記憶」を行うマイコン・メモリではなく、電源(電力)の制御・供給を行うパワー半導体。その中の、電気信号を増幅するトランジスタに該当。

50以上の製造工程の歩留まりを高め、半導体素子の量産化にめどを付けた。

ダイヤモンド半導体を使った部品での研究では、最大温度セ氏450度でも作動し、高い放射線濃度の環境下でも正常に機能したという。

事業内容は下記の通り。

廃炉対応/耐放デバイス事業 原子力発電所や宇宙等、極限環境下における放射線測定・中性子検出 ・過酷事故対応計測/前置増幅器/マルチプレクサ/伝送器 他
衛星通信・レーダー事業 衛星通信機器・レーダー産業向け、ダイヤモンド半導体の製造・販売 ・衛星通信(地球局・衛星)/航空管制/船舶監視/気象観測/防衛 他
通信機器事業
(Beyond 5G)
Beyond 5Gを見据えた、基地局向けダイヤモンド半導体の製造・販売
 ・携帯電話基地局
 ・携帯電話基地局間通信

 

工場稼働までの総事業費は約50億円と見込む。国の「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」などを活用する方針。

ベンチャーキャピタルから2023年5月に総額1.4億円の資金調達を実施した。

研究開発でも、福島県の復興につながる技術開発などを対象に上限7億円の補助事業にも採択された。ほかに内閣府からも年1億〜3億円、最長3年間の交付を受ける。


次世代パワー半導体材料の1つ、ガリウムの2022年の世界生産量は550トンで、うち中国が98%を占めるが、中国商務部と税関総署は2023年7月3日、ガリウムや関連製品を輸出規制の対象にすると発表した。

2023/7/6   中国が半導体材料ガリウムなど輸出規制 

一方、ダイヤモンド半導体に使用する人工ダイヤモンドはメタンガスから生成しており、大熊ダイヤモンドも現在はこの方法を採用している。将来的には二酸化炭素(CO2)と水素から合成したメタンで製造することも可能だという。

原発廃炉を機に同社はダイヤモンド半導体の量産化を狙う。衛星通信への応用も目指し、三菱電機などとも研究を始めた。年内にも国内メーカーとEV向けのデバイス開発も進めていく。


2023/9/11  中国Huawei、米国の制裁を克服し5G対応のスマホ発売、中国政府はAppleのiPhone 使用制限

華為技術は9月8日、中国本土で新たに上位モデル「Mate 60 Pro+」を売り出した。Mate 60 Proに比べてメモリーを増やしたもので、10月9日までの納品を予定している。Pro+には1テラバイトの最大ストレージオプションが加えられ、メモリーはMate 60 Proよりも4ギガバイト増えている。

Mate 60 Proは衛星通話ができる世界初の消費者向けスマホで、地上のネットワークが利用できない場合でも、衛星通話の発着信が可能となる。また、同社の大規模言語モデル「盤古(Pangu)」を導入し、よりスマートなインタラクション・サービスを提供するという。

新たに発表となった「Mate 60 Pro+」は、120Hzリフレッシュレートに対応した1.5K解像度のOLEDディスプレイと、ディスプレイ上部に3D顔認識用の3D深度カメラが搭載されたフロントカメラを備え、リアカメラはOIS(光学式手振れ補正)に対応した48MPカメラを採用している。

新たにTechInsightsの分析から、Mate 60 Proには韓国のSKハイニックス製のモバイル用DRAM「LPDDR5」と176層4D NANDフラッシュストレージが搭載れていることが判明した。Mate 60 Proに搭載されている部品のほとんどは中国のサプライヤーによって提供されており、SKハイニックスの部品は例外的だとしている。
 

SKハイニックスは声明で、「SKハイニックスはアメリカによるHuaweiへの規制導入以降、Huaweiとの取引を停止しており、この問題について詳細を知るために調査を開始した。また、SKハイニックスはアメリカ政府の輸出規制を厳守している」と述べ、事態の解明に乗り出したことを明かした。

米商務省は2019年5月15日、安全保障上の懸念があるとして輸出を規制する外国企業のリスト(Entity List ) に華為技術(Huawei)を追加した 。米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置である。

2019/5/16    米国、Huawei を対象に2施策

米商務省は2019年8月19日、華為技術(Huawei)への米国製品の禁輸措置を強化すると発表した。今回制裁回避を防ぐため世界各国の子会社を含む関連会社46社を追加した。これらの企業への米国製品の輸出は商務省の許可が必要で、今後も企業の申請は原則却下される。

2019/8/21   米、Huawei 禁輸強化  

米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は2020年5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。

米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。Huaweiはもちろん、Huawei傘下の半導体メーカーHiSilicon向けに半導体を供給する台湾の台湾積体電路製造(TSMC.)にも影響を与える。これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。

2020/5/18     米商務省、Huawei向け輸出規制を強化

ウォール・ストリート・ジャーナルは9月6日、中国当局が政府職員によるiPhoneの使用を制限していると報じた。

中国はここ数週間、政府職員によるiPhone規制を拡大し、一部の中央政府機関の職員に対し、公務でのiPhone使用を禁じた。

中国当局は米Appleのスマートフォン「iPhone」を巡り、機微な内容を扱う部門を対象としている使用禁止を拡大し、政府系機関や国有企業にも適用することを計画している。一部の政府機関はiPhoneを職場に持ち込まないよう職員に指示し始めた。中国当局はこの制限についてさらに踏み込み、多くの国有企業や他の政府系組織にも対象を広げる意向だと関係者は述べた。

Appleにとって売上高の約5分の1を占める中国市場で、同社の立場が脅かされる恐れがある。また、世界で販売されるiPhoneの多くは中国各地に広がる工場で製造されている。 鄭州市にある巨大工場はアイフォーンの世界生産台数の半分を手がけているとされる。


2023/9/15 2023年イグノーベル賞、日本人17年連続受賞

ユニークで奥深い研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の今年の受賞者が9月14日発表された。電流が流れる箸やストローを使って味覚を変化させる研究に取り組んだ宮下 芳明 ・明治大教授(47)と中村裕美・東京大特任准教授(37)が「栄養学賞」を共同受賞した。

明治大の大学院生だった中村さんと、指導教官だった宮下さんは、受賞対象となった研究を2010年以降に本格的に始めた。電流の刺激を加えると味覚が変わることは知られていたが、食事の際にその効果を活用できるようにするため、食器に電流を流すことを思い付いた。

 微弱な電流が流れるストローやはしを使って飲み物や食べ物を口に入れると、塩味が強まったり、金属の味がしたりと、味に変化が出ることを確認。味覚を変える新しい手法として、論文を11年に発表した。

 宮下教授の研究室はその後、キリンホールディングスとの共同研究で、減塩食の塩味を強めるスプーンとおわんを開発し、年内にも商品化される。

 宮下さんは「この12年間の大きな進展全体を評価してもらったと思う」と受賞を喜び、中村さんは「健康とおいしさを両立させる技術をさらに発展させていきたい」と意気込んだ。

栄養学賞
 
宮下 芳明・明治大教授(47)と中村裕美・東京大特任准教授(37)

「電気で充電された箸とストローが食べ物の味を変える方法を調査した実験」

味覚は、好きな食べ物や飲み物を楽しむだけでなく、腐った食べ物やそれ以外の食べられない可能性のある食べ物を避けるのにも非常に重要。宮下と中村は2011年の論文で、人間は舌にしか味蕾を持っていないと嘆いたが、ヒメナマズは体表全体に味蕾を持っており、「泳ぐ舌」となっていると指摘した。

宮下と中村は、2つの異なるストローに負極と正極を挿入し、それぞれのストローを電解質を含む飲料が入った2つのカップに挿入した。ユーザーが飲むと、回路が完成し、ストローは口に電気刺激を送り、電気味を生み出す。
彼らは食品に対しても同じことを行い、正極と負極を挿入し、ストローの代わりに箸を使用してユーザーインターフェースとした。明らかに、この電気味を知覚する能力は電圧に依存する。したがって、電圧調整機能を追加した。

「私たちのシステムの目標は、以前には知覚できなかった味を検出できる新しい舌の層を得ることです」と彼らは結論づけた。

 

心理学賞 誰かが上を見上げていると、どれだけの通行人が立ち止まって上を見上げるか

1人が上を見上げているだけの場合、通行人のわずか4%が立ち止まり、上を見上げた。刺激群が15人の場合、40%が立ち止まった。

物理学賞 アンチョビの性行動が海水の混合にどれだけ影響を与えるかを測定

風と潮汐は、世界規模での海洋の混合の主要なエネルギー源だが、一部の科学者は、特定の泳ぐ生物、例えば動物プランクトン、魚、または海洋哺乳類が、地域規模での混合にも重要なエネルギー源となる可能性があると提案してきた。
夜間に「強烈な生物物理学的な乱れ」が観測された。原因は、産卵するアンチョビで、音響反射データは魚の集合体と一致し、毎朝のプランクトン網の収穫物にはアンチョビの卵の高濃度が含まれていた。
「魚が長期間にわたって強烈な乱れを生成する可能性があるという説得力のある証拠を提供している」
 

機械工学賞 死んだクモを使ってロボット用のつかみ具を作成  「死」を意味する「necro」という言葉と、「ロボティクス」を組み合わせた「ネクロボティクス(Necrobotics)」

クモの前胸部には内部バルブがあり、クリーチャーが各脚を個別に制御できるようになっている。クモが死ぬと、その制御は消失し、脚は連動して動作する。
死んだクモの前胸部に針を挿入し、超接着剤でクモの体に固定して気密シールを形成した。針の反対側は、研究室の試験用リグのいずれかか、手持ちの注射器に取り付けられている。微小なエアパフを与えることで室を圧力化し、脚を即座に活性化し、開かせる。室の圧力を解除すると、脚が再び閉じる。

チームはクモのつかみ具をさまざまな物体にテストした。クモのつかみ具は、クモの体重の1.3倍以上の物体を信頼性を持って持ち上げ、最大のつかむ力は0.35ミリニュートンだった。また、このクモのつかみ具は驚くほど頑丈で、関節部の摩耗が原因で数日後に体が壊れるまで、1,000回の開閉サイクルを完了した。さらに、クモの体は完全に生分解性であることも利点である。

医学賞 遺体を使用して、人の鼻の両鼻孔に均等な本数の毛があるかどうかを探求

円形脱毛症に興味を持つことから始まった。この状態に苦しむ多くの人々が、鼻の両鼻孔にある鼻毛の減少により、上気道感染症、アレルギー、乾燥に対してもより感受性が高くなることに注意した。そして、実際に人間の平均的な鼻毛の本数を数えるということは、この欠如が患者の生活の質にどのような影響を及ぼすかを評価するための最初のステップであると認識した。

20体の遺体(男性10体、女性10体)を使用して研究を行った。彼らは各鼻孔の鼻毛を数えるだけでなく、鼻の上部、側面、下部での毛の成長距離を測定するために測定テープを使用した。

結果:各鼻孔の平均鼻毛本数は120から122本の間であり、鼻毛は通常、0.81から1.035センチメートルの範囲で成長する。

コミュニケーション賞 逆さまに話すことに長けた人々の精神活動を研究

スペインのラ・ラグーナに住む一群の住民が、逆さまに話す(単語の逆転)ことに優れている。(例えば、buenos nochesの代わりにnasbue chesnoと言う)

チームは「逆さまの話し言葉は、単語、仮単語、さらには文を素早く逆さまにする非凡な能力を構成し、音素の順序を再配置しながらその同一性を保持する必要がある」とする。

チームは実験のために2人の逆さまに話す専門家を募集した。彼らはいずれも母国語がスペイン語で、スペイン語は音素が位置や周囲の音素に関係なく常に同じ音を保持するため、特に適している。また、比較のために他の18人の男性をコントロールグループとして募集した。すべての参加者は一般的な認知および記憶課題、逆方向および正方向の言語課題に対応した。逆さまに話す2人の被験者は、脳の構造画像のために完全なスキャンも受け、その結果は別個のコントロールグループ(24人の男性)と比較された。

逆さまに話す2人の被験者は、明確な言葉の逆転に関する行動上の優位性を示したが、これは彼らの記憶力とは関連していない。これら2人の男性の脳画像は、言語に関連する脳の重要な部分で灰白質の体積が増加し、機能的な連結性(白質)が向上していることを示している。これらの結果は、専門的な同時通訳者の早期の研究と一致しており、「非公式な言語の専門的な形態であっても、日常生活で公に使用されないか、専門的なトレーニングを通じて磨かれないものであっても、言語に関連する神経可塑性の適応が現れる可能性があることを示唆している。」

 

公衆衛生賞
「スタンフォード・トイレ」と呼ばれる装置を発明

この装置は、尿分析の試験紙、排便分析のためのコンピュータビジョンシステム、肛門プリントセンサーと識別カメラのペアリング、および通信リンクなど、さまざまな技術を使用して、人間が排出する物質を監視し、迅速に分析するために使用される。

心臓の健康、血圧、酸素飽和度、尿、および便のサンプルを監視できる統合センサーを備えたスマートトイレ。

教育学賞 教師と生徒の退屈を体系的に研究

2020年の研究では、教師の退屈が授業中の学生の退屈度にどのように影響し、それが学習意欲に与える影響を調査した。退屈は、それが実際にあるか、認識されたかに関係なく、退屈を生み出した。

2023年に続編の研究を詳細に報告し、講義や授業が退屈だという単なる予測が、一種の自己成就の予言になる可能性があるかどうかを調査した。学生が講義が退屈だと予想するほど、その後の退屈感が増すことを確認した。

化学/地質学賞
多くの科学者が岩を舐めるのが好きな理由を説明

地質学者や古生物学者は、それが岩か化石の骨片かをテストするかなり良い方法だと言う。後者は舌にくっつき、歯で岩を少し噛むことで粒子のサイズを確認し、岩が粘土またはシルトを含むかどうかを判断するのに役立つ。

「表面を湿らせることで、化石と鉱物のテクスチャが乾いた表面から出る交差する微小な反射と微小な屈折のぼやけから鮮明に浮かび上がる。」
 

文学賞
同じ単語を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返すときに人々が感じる感覚を研究したことに対して。」

私たちのほとんどは déjà vu(すでに経験したかのような感覚)の現象を知っている。それは、以前に何かを経験したような感覚であり、それにもかかわらず実際には経験していないという、記憶の錯覚。
これに対する逆は jamais vu(決して経験したことがない感覚)で、通常は単語だが、場合によっては人々や場所にも関連する。jamais vuは、てんかんや片頭痛の症状としてよく現れる。

Moulinらは、jamais vuがいわゆる「単語の異化タスク」で引き起こされる可能性があるという予想があり、リーズ大学の学生ボランティアを対象に実験を行い、この仮説をテストした。

研究参加者は、同じ選択された単語を何度も何度も(何度も何度も)コピーし、もし「奇妙な感覚」を感じ始めた場合は停止するように指示された。これは通常、30回繰り返した後、つまり約1分後の「意味の飽和点」の時点で発生した。例えば、単語が見るたびに意味を失っていく感覚があった(「それらは単語全体ではなく文字列のように見えるだけ」)、また、馴染みのある単語が突然奇妙に感じられることもあった(「それは正しくないように思え、ほとんど本当の単語ではないか、誰かが私を騙して思い込ませたように見える」)。

日常生活で déjà vu を経験した人々は、jamais vu を経験する割合が高く、その2つの間に相関関係があることを示唆している。

 

 

日本人の受賞(敬称略)  

    名前 受賞
1 1992 神田不二宏ほか
(資生堂研究センター)
薬学賞
足の匂いの原因となる混合物の解明
2 1994 気象庁 物理学賞
地震が尾を振るナマズによって引き起こされるかどうかを7年間研究した功績
3 1995 渡辺茂(慶應義塾大学)
坂本淳子
脇田真清(京都大学)
心理学賞
ハトの絵画弁別(ハトを訓練してピカソとモネの絵を区別できるようにした)功績
4 1996 岡村長之助
(岡村化石研究所)
生物学的多様性賞
岩手県の岩石から古生代石炭紀(約3億年前)の石灰岩中に超ミニ恐竜化石を発見した功績
(小さな石を顕微鏡で見て超ミニ恐竜化石だと主張して発表)
5 1997 舞田あき(バンダイ)
横井昭宏(ウィズ)
経済学賞
バーチャルペット(
たまごっち)の開発によりバーチャルペットへの労働時間を費やさせた功績
6 1997 柳生隆視 他
(関西医科大学)
生物学賞
様々な味のガムをかんでいる人の脳波を研究
7 1999 牧野武
(セーフティ探偵社)
化学賞
妻や夫の下着に適用して精液の跡を発見できる浮気検出スプレーの開発
.
8 2002 佐藤慶太(タカラ社社長)
鈴木松美(日本音響研究所)
小暮規夫(獣医学博士)
平和賞
コンピュータ・ベースでの犬と人間の言葉を自動翻訳するデバイス「
バウリンガル」開発
9 2003 広瀬幸雄 教授
(金沢大学)
化学賞
銅像に鳥が寄りつかないことをヒントに、カラスを撃退できる合金開発
10 2004 井上大佑 平和賞
カラオケ
を発明し、人々に互いに寛容になる新しい手段を提供
11 2005 中松義郎
(ドクター中松) 
栄養学賞
36年間にわたり自分が食べたすべての食事を撮影し、食べ物が頭の働きや体調に与える影響を分析
12 2007 山本麻由 化学賞
牛糞からバニラの芳香成分 vanillin の抽出
13 2008 中垣俊之ほか 認知科学賞
真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てる
14 2009 田口文章ほか 生物学賞
パンダのフンから抽出したバクテリアを使って台所の生ゴミを分解し、9割減量
15 2010 中垣俊之ほか 交通計画賞
粘菌が交通網を整備
16 2011 今井眞ほか 化学賞
わさびの臭いが火災報知器の役割を成す理想的な空気中のわさび濃度
17 2012 栗原一貴、塚田浩二 音響賞
迷惑を顧みず話し続ける人の話を妨害する装置「スピーチジャマー」を開発
18 2013 新見正則ほか 医学賞
心臓移植したマウスにオペラを聴かせると生存期間が延びた
19 今井真介ほか 化学賞
タマネギの催涙成分をつくる酵素
20 2014 馬渕清資ほか 物理学賞
「バナナの皮を踏むとなぜ滑りやすいのか」を実験で解明
21 2015 木俣肇 医学賞
情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験
22 2016 東山篤規、足立浩平 知覚賞
股のぞき効果
23 2017 吉澤和徳、上村佳孝 生物学賞
ブラジルの洞窟で見つかった新種の虫の雌が「ペニス」のような器官を持ち、それを使って雄と交尾することを解明
24 2018 堀内朗 医学教育賞
座位で行う大腸内視鏡検査
25 2019 渡部茂 化学賞
5歳児の唾液の量
26 2020 西村剛 音響学賞
ヘリウムを吸ったワニの鳴き声
27 2021 村上久 動力学賞
「歩きスマホ」が、歩行者集団に与える影響
28 2022 松崎元ほか 工学賞
円柱形つまみの回転操作における指の使用状況について

付記 2023年  本件 電流が流れる箸やストローを使って味覚を変化させる研究に取り組んだ宮下 芳明 ・明治大教授(47)と中村裕美・東京大特任准教授(37)が「栄養学賞」

      2024年  武部貴則氏らの研究チームによる「多くの哺乳類が肛門呼吸できることの発見について」


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