ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2016/7/1   三井物産、豪州油田開発事業の最終投資を決断

三井物産は6月27日、40%権益を保有する西豪州沖合の未開発油田群の商業開発につき、60%権益を保有するオペレーター のWoodside Energy と共に、最終投資の決断をしたと発表した。
今後約19億米ドル(物産の持分約 8億米ドル)を投資し、生産井の掘削、海底設備工事等を行い、2019年央の原油生産開始を目指す。


三井物産は2004年3月、豪州最大手石油・ガス開発会社であるWoodside Energyが100%権益保有する豪州北西海上 のWA- 28-L鉱区とWA-59-L鉱区の各40%権益を取得した。
権益取得対価は約464.5百万米ドル。

両鉱区は、豪州における主要油田・ガス田が存在する西豪州北西沖合い約60km のCarnavon堆積盆地にある合計面積3,261 km2の海上鉱区で、既発見未開発油田としては豪州最大級の埋蔵量規模を誇る油田群(Enfield油田、Vincent 油田及びLaverda油田が賦存しており、3億バレル程度の埋蔵量が期待でき るとした。

2006年7月24日、Enfield油田において原油生産を開始した。同油田の生産設備は10万バレル/日の生産能力を持 つ。

2008年8月27日、Vincent油田において原油生産を開始した。生産量は約5万バレル/日 。

2012年8月上旬に生産開始以降の両油田の累計生産量が1億バレルに到達した。

今回、Enfield 油田、Vincent油田と同じエリア内に存在する既発見油田群(2000年発見のLaverda油田とその上部にあるNorton油田、2010年発見のCimatti油田)を開発 する。
期待可採埋蔵量は原油約69百万バレル(100%ベース)。

Vincent油田で使用されている浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)  Ngujima-Yinに海底パイプラインで接続し、処理する。


原油価格下落の効果で採掘コストや資機材のコストは下がっているうえ、単独開発と比較して大幅に初期投資・操業費を抑えた開発と一体操業を行 うことで、仮に現在の低市況が継続した場合でも経済性を確保できる見込みであることから、商業化推進の判断に至った。

現在Enfield 原油、Vincent 原油は物産の100%子会社Mitsui & Co. Energy Trading Singaporeと Woodsideを通じて共同販売しており、本プロジェクトから生産する原油も同様に販売を行う予定。

また開発対象鉱区内外にはこの他に複数の既発見未開発埋蔵量があり、引き続き探査・評価作業を通じて商業化可能性を検討 する。

ーーー

三井物産は2016年3月期に多額の減損損失を計上し、赤字決算となった。

事業分野 内容 主な理由 当期損益
税引き後 
  億円
金属 チリ銅事業 Anglo American Sur 銅価格見直し等 -900
カセロネス銅事業 -250
ブラジル資源事業 Vale 減損 -350
豪州石炭事業 長期石炭価格 -250
エネルギー 豪州Browse LNG事業の減損 開発計画遅延 -400
その他原油・ガス資産の減損 長期原油・ガス価格 -150
機械・インフラ 海外発電事業の減損 長期電力価格 -300
合計 -2,600

今回の決定は、赤字計上後では初となる資源・エネルギー分野への大型投資である。原油市況が底値に近いと見て投資を決めた。

 


2016/7/2   エスエス製薬、Sanofi とBoehringer Ingelheimの事業交換で Sanofi の子会社に  

フランスのSanofi とドイツのBoehringer Ingelheim は6月27日、昨年12月に交渉を開始したSanofi の動物医薬品事業とBoehringer Ingelheim のConsumer healthcare 事業の交換について、契約を調印したと発表した。

独禁当局等の承認を得て、2016年末までに実施する。

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Sanofi とBoehringer Ingelheim は2015年12月15日、両社が事業交換に関して独占的な交渉に入っていると発表した。
実現すれば、Sanofi はConsumer Healthcareでグローバルリーダーとなり、 Boehringer Ingelheimは動物医薬品で世界二位となる。

Sanofi の評価額114億ユーロの動物医薬品事業(子会社"Merial")  と Boehringer Ingelheim の評価額 67億ドルの Consumer healthcare 事業を交換するもの。
Boehringer Ingelheim の中国のconsumer healthcare 事業は交換の対象外となっている。 

Sanofi は評価額の差額の47億ユーロを現金で Boehringer Ingelheimから受け取る。

Sanofi

 

Boehringer Ingelheim

動物医薬品事業(子会社"Merial")
           評価額 114億ユーロ
 
 
Consumer healthcare 事業
    (中国事業を除く)
   評価額 67億ユーロ
現金     47億ユーロ

2015/12/19 仏Sanofi と独 Boehringer Ingelheim、事業交換の交渉 


Sanofi のConsumer healthcare 事業の売上高は約49億ユーロとなり、世界シェアは4.3%となる。各分野でのシェアもアップする。

Boehringer Ingelheim のAnimal Health businessの売上高は約38億ユーロとなり、現状の2倍以上となる。


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Boehringer Ingelheim の子会社の日本ベーリンガーインゲルハイム は、エスエス製薬の株の約60.2%を所有していたが、2010年にTOBを行い、出資比率を93.83%とし、その後100%子会社とした。

2010/2/16 Boehringer Ingelheim、エスエス製薬にTOB

今回の取引で、エスエス製薬はSanofi の子会社となる。



2016/7/4   公取委、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得を承認  

公取委は6月30日、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得について、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと認められたので、排除措置命令を行わない旨の通知を行い、審査を終了したと発表した。

しかし、株式取得のスキームが、事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあることから、両者に対し異例の注意を行った。

また、今後、企業結合を計画する者が仮にこのようなスキームを採る必要があるのであれば、当該スキームの一部を実行する前に届出を行うことが求められるとした。

付記

キヤノンは12月19日、申請を行っていた各国・地域において所要の競争法規制当局のクリアランス取得が完了したため、東芝メディカルの株式取得(子会社化)を行うことを、取締役会で決議した。

3月17日に下記取引を行っており、今回はMSホールディングスが持つA種類株の取得となる。

3/17 東芝メディカルの売却を発表  
    A種類株(議決権あり)20株   MSホールディングに譲渡(対価 9万8600円)
         
    B種類株(議決権なし) 1株

キヤノンに譲渡(対価 6655億円)
    新株予約権

ーーー

キヤノンは3月17日、東芝の医療機器子会社、東芝メディカルシステムズを買収する契約を結んだと発表した。

独禁表第十条(2) では、この場合、「公取委規則で定めるところにより、あらかじめ当該株式の取得に関する計画を公取委に届け出なければならない」となっており、これには当然、公取委の審査が必要である。

東芝が2月4日に発表した2016年3月期の損益予想は、売却益を含まない前提で、7100億円の赤字となっており、東芝が3月末までに東芝メディカルの売却益を計上できなければ、債務超過に陥るが、通常の手続きでは間に合わないのは明白であった。

このため、両社は異例の手段を使った。

東芝は3月17日、東芝メディカルシステムズの売却を決定し、キヤノンと株式等譲渡契約書を締結した。
売却代金決済も同日完了した。(東芝子会社でなくなる)

キヤノンは主要各国の競争法規制当局からのクリアランスを得られた時点で子会社とする。
それまでの間は独立した第三者であるMSホールディングが東芝メディカルの議決権を保有する。

MSホールディングは株式の保有及び運用を目的として設立された特別目的会社で、株主は東芝とキヤノンのいずれからも独立した第三者の3人。

宮原賢次(住友商事名誉顧問) 33.3%
吉戒修一(弁護士・元東京高裁長官) 33.3%
横瀬元治(公認会計士・元あずさ監査法人専務理事) 33.3%

2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手 

具体的手続きは下記の通り。

東芝は東芝メディカルの普通株を所有していた。 
         
3/15 C種類株に変更    
         
3/16 C種類株の代わりに下記を取得  
    A種類株(議決権あり) 20株
B種類株(議決権なし)   1株
新株予約権
 
     *B種類株には議決権はないが、組織再編などの重要事項について拒否権を行使できる条項あり
3/17 東芝メディカルの売却を発表  
    A種類株(議決権あり)20株   MSホールディングに譲渡(対価 9万8600円)
         
    B種類株(議決権なし) 1株

キヤノンに譲渡(対価 6655億円)
    新株予約権

関係各国の独禁当局の承認後の処理は下記の通り。

東芝メディカルは、
 MSホールディングから
A種類株(議決権あり)20株を買い取る(対価 3600万円)自己株のため議決権無くなる。
  キヤノンからB種類株(議決権なし)1株を買い取る(対価 4930円)

キヤノンは新株予約権100個をすべて行使、東芝メディカルを完全子会社化する。

独禁法第10条2項では、会社が他の会社の株式取得する際、一定の基準(取得後の議決権の数の割合が新たに20%又は50%を超えること)に当たる場合には、公正取引委員会に事前に届出しなければならないとされている。

東芝/キヤノンの主張は、議決権はMSホールディングが持ち、キヤノンは議決権を持たないため、事前届出は不要というもの。

これに対し、公取委は次のとおり述べている。

これら一連の行為は、独占禁止法に基づく企業結合審査において承認を得ることを条件として最終的にキヤノンが東芝メディカルの株式を取得することとなることを前提としたスキームの一部を構成し、上記第三者を通じてキヤノンと東芝メディカルとの間に一定の結合関係が形成されるおそれを生じさせるものである。

公正取引委員会は、これら一連の行為が、キヤノンが当委員会への届出を行う前になされたことは事前届出制度の趣旨を逸脱し、独占禁止法第10条第2項の規定に違反する行為につながるおそれがあることから、今後、このような行為を行わないよう、キヤノンに対して注意を行うとともに、上記スキームの実行に関与していた東芝に対して、今後、事前届出制度の趣旨を逸脱するような行為に関与することのないよう申入れを行った。

したがって、今後、企業結合を計画する者が仮に上記のようなスキームを採る必要があるのであれば、当該スキームの一部を実行する前に届出を行うことが求められる。

東芝メディカルの買収を計画していた富士フィルムは、次のように述べている。

この買収にフェアな姿勢で臨んだ我々にとって、アンフェアな競争であった。これが許されるなら、競争法が形骸化する。

これが悪しき前例となり、日本国内で競争法の手続きを無視した、海外企業を含む企業買収が行われることが懸念される。

このようなスキームを、今後は認めないが今回は認めるということであれば、なぜ今回は認めるのか明確に説明されることを望む。

公取委は、今回の承認について、キヤノンと東芝メディカルの明確な結合関係(親子関係)が認定できなかったこと、今回は初のケースであり、明確なルールがなかったことの2点を挙げている。但し、今回は「密約が認められなかったとはいえ、今後証拠が出てくればクロに覆る」とも述べている。

専門家の間で問題にされる点は以下の通り。

・ MSホールディングの独立性

・ キヤノンの持つB種種類株には、議決権は無いが、組織再編などの重要事項についてキヤノンが拒否権を行使できる条項があること。

・ 新株予約権を持つということは、潜在的な議決権を持っているに等しいとも考えられる。

なお、他の国での審査はこれからである。



2016/7/5 廃液による魚の大量死で、台湾プラスチックのベトナムの製鉄所に罰金5億ドル  vietnam

ベトナム政府は6月30日、中部ハティン省などの海で4月に相次いで起きた魚の大量死について、台湾塑膠工業(台湾プラスチック)が建設する製鉄所からの排水に含まれる有害化学物質が原因とし、罰金5億ドルを命じた。

同製鉄所には、JFEスチールが5%資本参加し、技術支援・供与を行っている。

魚の大量死は製鉄所を建設中の中部ハティン省とその周辺の2省で4月上旬から確認された。その中には沖合や深海にしか生息しない希少種も含まれていた。
地元の漁師らの話によると、製鉄所ができる前は魚やエビが豊富に獲れたが、操業が始まってから漁獲量が急減したという。

ベトナム地元紙は地中に埋設した1.5 km のパイプを通じ、海に汚染物質が流れ出した疑いがあると指摘した。魚の大量死が見つかる数日前、同社はパイプの洗浄をしており、300トンの有毒な化学物質が使われたとしている。

ベトナム政府は当初、魚の大量死に製鉄所が関係する確証はないとの見解を示していた。

4月末に同社のハノイ事務所代表が「魚やエビか、近代的な製鉄所か、ベトナムはどちらかを選ばなければならない。両方手に入れるのは首相でも無理だ」と発言して反発を買い、翌日に本社の幹部が謝罪した。

政府は、魚の大量死の調査のため現地に専門家チームを派遣、原因究明に向けて国際的な支援の要請を検討する意向も示し、責任者を法の裁きにかける方針を明らかにした。 

ベトナム天然資源環境省などが6月30日に発表した調査結果によると、4月に同製鉄所が地下に埋めたパイプを通じ排出した廃液がハティン省近海で魚の大量死を引き起こしたという。

これを受け、台湾プラスチックは汚染物質を検査しやすいように同パイプを地表に移すなどの対策をとる。

同製鉄所は当初6月下旬に稼働予定だったが、環境対策を改善し、7〜9月中の操業開始をめざす。

ーーー

台湾プラスチックが建設中の一貫製鉄所:Formosa Ha Tinh Steel はベトナム初の大型高炉で、ハティン省ケアン市ブンアン経済区で建設を進めている。
鉄鋼を中国からの輸入に頼っているベトナムにとって国家的な最重要プロジェクトのひとつ。

第1期の総投資額は105億USドル、敷地面積は2,000ha強、粗鋼生産量は年約700万トンを計画しており、将来的に世界最大級の年2200万トン以上を生産する計画。

JFEスチールが5%資本参加すること、ならびに技術支援・供与を行うことを決定した。

同社は、新興国における幅広い需要増加に応えるため、かねてより東南アジア、インド等で一貫製鉄所事業の可能性を検討してきた。
ベトナムは、順調な経済成長を背景に鋼材需要が安定的に拡大しており、また今後鋼材需要の着実な伸びが見込まれる東南アジアに立地していることから、ベトナムの内需、および東南アジア向けを中心とした外需に対応した鋼材供給拠点として期待できる。

JFEは、第5次中期経営計画で、JFEブランド販売量 4,000万トンへの拡大を目指しており、今回の参画はその一歩となる。
今後、FHS社の早期の安定稼動に向け協力すると共に、FHS社において製造された製品を同社を通じて出資先や顧客に販売することによって、今後の成長に結びつけていく。

製鉄所の概要は下記の通り。

合弁会社 Formosa Ha Tinh Steel
所在地 ハティン省ケアン市ブンアン経済区
事業内容 高炉一貫製鉄業
資本金 45億USドル
株主構成 台湾プラスチックグループ70%、中国鋼鉄25%、JFEスチール5%
  * 中国鋼鉄は台湾最大の製鉄会社で、粗鋼生産能力は年間約1300万トン規模
投資額 105億USドル(第1期予定)
設備 コークス炉、焼結設備、第1高炉、第2高炉、製鋼設備、熱間圧延設備、棒鋼・線材圧延設備、発電所


2016/7/6 インドネシア タングーLNG拡張プロジェクトの最終投資決定  

BPがオペレーターで三菱商事などが参加する企業連合は7月1日、インドネシア西パプア州のTangguh LNG拡張プロジェクトに対する最終投資決定を行ったと発表した。

Tangguh LNGは
、インドネシアの西パプア州のベラウ鉱区、
ウィリアガール鉱区ムツリ鉱区のガス田(3鉱区全体の確認埋蔵量は14.4兆立方フィート)から供給される天然ガスを液化するプロジェクトで、現在、液化設備2系列で年間760万トンを生産している。

天然ガスは沖合に設置される2基の無人洋上プラットフォームで生産され、パイプラインを通じて陸上LNG液化プラントに供給される。

第一期(2系列計760万トン)は2005年3月に最終投資決定を行い、2009年7月に第一船を出荷した。

タングーLNGプロジェクトは、次の4社との間でLNG売買契約を締結している。
  中国海洋石油総公司の福建省LNG受入基地  年間260万トン
  韓国Kパワー  年間最大80万トン
  韓国ポスコ  年間55万トン
  米国Sempra EnergyのメキシコLNG受入基地  年間最大370万トン

今回、年間380万トンの生産能力を有する第三液化系列を増設するもので、液化設備に加え、2つの海上プラットフォーム、LNG運搬船用の桟橋の新設及び合計13坑の生産井の掘削等を予定、2020年中の生産開始を目指す。既存の系列を加えると、能力は1,140万トンとなる。

第二期のLNGの出荷先は次のとおりで、インドネシアと日本のエネルギー需要を支える。
  75%相当分 インドネシア国営電力会社 PT. PLN   
  25%相当分 関西電力

第二期の総事業費は8千億〜1兆円になるみられている。

当初の計画段階では総事業費は1兆2千億円とされていたが、2016年に入って原油価格が急落し、これにつられる格好で資機材などのコストが大幅に下がったため、採算が取れると判断した。

既報のとおり、原油価格の下落を受け、東京ガスがシェールガスの権益を取得、三井物産も豪州油田開発事業の最終投資を決断している。

 

 

 
 

各鉱区の権益は次のとおり。

Berau 鉱区 BP Berau 48%
MIベラウ 22.856%
日石ベラウ石油開発 17.144%
KGベラウ石油開発 12%
合計 100%
Wiriagar 鉱区 BP Wiriagar 37.59839%
CNOOC Wiriagar 42.40161%
KG ウィリアガール石油開発 20%
合計 100%
Muturi鉱区 BP Muturi 1%
CNOOC Muturi 64.76677%
LNGジャパン子会社 34.23323%
合計 100%
 

Tangguh LNG 企業連合のメンバーは次のとおり。
 

BP Berau (Operator) 37.16%  
MI Berau B.V. 16.30% 三菱商事(56%)、国際石油開発帝石(44%)
CNOOC Muturi   13.90% 中国海洋石油総公司
日石ベラウ石油開発 12.23% JX石油開発(51%)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(49%)
KGベラウ石油開発 8.56% 海外石油開発(三井物産)、MIベラウジャパン(三菱商事、国際石油開発帝石)、JX石油開発、石油天然ガス・金属鉱物資源機構
LNG Japan 7.35% 住友商事(50%)、双日(50%)
Talisman Wiriagar Overseas 3.06%  
KGウィリアガール石油開発 1.44% 海外石油開発(三井物産)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構

 


2016/7/7   Saudi Aramco、タイのPTTとのベトナムでの石油精製・石油化学計画から撤退   

Saudi Aramcoがタイ国営のPTTとのベトナムでの石油精製・石油化学計画(Victory Project)から撤退することが分かった。

PTTによると、Saudi Aramco は7月1日付けで撤退を決めたという。「PTTとSaudi Aramco は本計画のパートナーとなる然るべきベトナム企業を探してきたが、今のところ見つかっていない」というのが撤退の理由とされる。

Saudi Aramcoはコメントしていない。

一方、PTTはベトナムは依然として投資すべき戦略的立地とみており、この計画を38.5%出資する子会社のIRPC(旧称TPI)に移管して継続する。
PTTでは、株主として本計画に関するIRPCの決定(計画のサイズ、投資範囲、パートナーなど)をサポートするとしている。

ーーー

ベトナム政府は2007年9月に製油所の建設計画を明らかにした。9つの製油所を建設し、2025 年までに国内需要の90%を自国内の製油所でカバーするとし、原油処理能力の目標値を日量 111〜121万バレルとした。(能力は当初の計画で、具体化時点で変更される)

今回の計画は地図のC 

 

タイのPTTは2012年末に、ベトナム南中部のBinh Dinh省のNhon Hoi 経済特区に、日量66万バレルという世界最大級の製油所を建設することを計画していると報じられた。
石油化学コンプレックスの建設も計画に含まれている。

その後、他の製油所計画が進捗しているため、同社は精製能力を40万バレルに落とし、詳細を詰めていた。

2014年にサウジのSaudi Aramco が参加を決め、両社で詳細FSを提出した。

計画 石油精製・石油化学計画 (その後、Victory Project と名付ける)
 石油精製 日量 40万バレル(当初計画は66万バレル)
     石油精製製品 日量26万バレル(年産1200万トン)
 オレフィン系 合計年産300万トン
 芳香族系  合計年産200万トン
立地 Binh Dinh省 Nhon Hoi Economic Zone
投資額 220億ドル(PTTの当初見積287億ドル)
出資者
PTT  40%  PTT子会社 Thai Oil と IRPC も参加  
Saudi Aramco  40%    
ベトナム政府  20%    
完成予定 2021年
原油 主にSaudi Aramcoが供給

2014/9/19   タイPTTのベトナム石油精製・石油化学計画にSaudi Aramco が参加 

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IRPC は旧称TPI(Thai Petrochemical Industry)で、PTT が38.51%出資、他にGovernment Savings Bank が9.54% など。

TPI は 元々 Prachai Leopairatana の経営であったが、1997年に石油化学事業への巨額投資や事業多角化のための借入金が経営を圧迫し、運転資金もショートしてが経営危機に陥った。
その後、いろいろの再建計画が立てられたが、Prachai が居座りを続け、迷走した。
2005
年にはタイ証券取引所が、政府主導の再建案に抵抗を続ける同社創業者のPrachai を告発し、管財人に対しPrachai 解任を指示した。
2006年5月になり、同社取締役会はようやく
Prachai を解任した。
 

石油精製能力は215千バレルでタイで第三位(1〜3位は全てPTTグループ)

  精製能力
(千bpd)
PTT出資  
PTT Aromatics Refinery

280

48.89% Aromatics Thailand (ATC) と Rayon Refinery(RRC)が統合
Thai Oil 275 49.10%  
IRPC 215 38.51% 旧称 TPI
ESSO Thailand 177    
Star Refinery 150 36%→0 Chevron 64%→55%
Bangchak Petroleum 120 27.22%→0  

2015/7/23 タイ石油公社PTT、石油精製事業を再編

石油化学は下記の通り。

  千トン
エチレン 360
プロピレン 720
HDPE 140
PP 475
SM 260
ブタジエン 50


タイの石油化学の状況は 
2006/6/8 タイの石油化学の現状  2016/5現在の能力を付記

 


2016/7/8 米パイプライン運営大手のEnergy Transfer、奇策を使い、同業のWilliams Companiesとの合併を違約金なしで解消    

米パイプライン運営大手のEnergy Transfer Partners, L.P. は6月29日、2015年9月28日に合意した同業のWilliams Companiesとの合併を取りやめると発表した。
原油価格の低迷で約330億ドルの買収負担が重く、白紙撤回する。

一方のWilliams は6月27日の株主総会で合併を承認したばかりだが、違約金支払を求め、上告した。

ーーー

Williams Companies  は2015年6月21日夜、Energy Transferから約480億ドル相当での買収を持ち掛けられたが、この提案を退けたことを明らかにした。
1株当たり64ドルの提案は「当社の価値を大幅に過小評価している」とした。

Energy Transfer によると、買収価格は株価に32.4%のプレミアムをのせた1株64ドルで、全額Energy Transfer の株で払われる。
債務継承分を含めれば買収額は約530億ドルになる。

翌日の株式市場で同社の株は前日比25.90%高となり、時価総額は455.8億ドルとなった。

Energy Transfer は全額株式交換方式の取引は「時宜にかなった、適切な合併」になるとして、引き続き買収を目指す意向を示した。

1908年創業のWilliamsはテキサス州からニューヨーク州とニュージャージー州を結ぶ全長約1万6000キロの天然ガス網を所有している。さらに、米北東部の巨大シェールガス田「マーセラス・シェール」からニューヨーク州と北東部6州に天然ガスを供給するパイプライン網の建設を計画している。

一方、1995年にテキサス州の320キロ足らずの天然ガスパイプライン運営から出発させた
Energy Transferは、今では11万キロを超える石油・ガス・燃料輸送網を手掛ける米国有数のエネルギー輸送企業に成長した。

Williamsのパイプライン資産は北東部、
Energy Transferは南部と中西部に集中しているため、両社の合併は理にかなっているとされる。ネットトワークの重複の少ない両社は独禁法上も余り問題ないとみられた。

その後、エネルギー関連株が軒並み大幅に下がった。
この結果、両社の交渉での買収価格も下がった。

Energy Transferは2015年9月28日、買収が決まったと発表した。
買収価格は株価に4.6%のプレミアムを乗せた1株43.50ドルで、
Energy Transfer の株か現金か、その組み合わせを選べる。
買収額は債務込みで377億ドルと、当初提案から約3割下回った。

しかし、その後も株価の下落は続いた。原油価格下落に加え、買収が本当に実現するかどうかとの疑念が響いたとされる。

Energy Transfer は2016年3月、半年前に同業のWilliams買収で利益が年間20億ドル上積みされる可能性があると見込んでいた が、これを大幅に下回る 1億7000万ドルに引き下げた。

シナジーの見通しを92%引き下げたことについて、昨年9月28日の買収合意後に「生じた事態や環境を考慮した」と説明、同日以降、原油価格がバレル当たり5ドル、天然ガスが30%それぞれ下げている状況に言及した。

Energy Transfer 側はこれ以上のコメントを避けたが、Williams側は、「Energy Transferとの統合が株主にとって最大の利益になると考えており、株主の承認を経て買収を実現することを目指している」と述べた。

ーーー

Energy Transfer は統合解消を図った。

しかし、統合契約には、経済状況やエネルギー製品産業や両社の株価の変動は統合契約を解消する根拠にならない、と明示されている。

一つだけ、Energy Transferが使えるかも分からない条項があった。

今回の取引では、Williams株式買収に当たり、Energy Transferの株式で支払い得ることとなっている。

この場合、合併は組織再編と看做され、取引は通常は無税である。
これを確実にするため、契約書には、双方の法律事務所が、この取引は無税の組織再編であるとの意見書を出すとなっている。

2016年5月、Energy Transferの法律事務所のLatham & Watkins は、合意が無効となる6月28日までに意見を出すことが出来ないとの判断を行った。

Energy Transferは株主に対し、これを理由に買収が破談になると述べた。

Williams側は5月13日、Energy Transfer が「遅延や妨害を繰り返す」ことで買収合意に違反していると主張し、Delaware Chancery Court に対し Energy Transfer による合意解消を阻止するよう求める訴えを起こした。合意解消を正当化する理由として法律意見書の件を用いることを禁じるよう求めた。

この訴訟で、裁判官は6月24日、訴えを却下した。

詳細は明らかにされていないが、Energy Transferの法律事務所のLatham & Watkins は、無税の組織再編としては問題があることを見つけたとされる。
今頃になって見つけたというのはおかしく、裁判官もおかしいとしたが、疑わしいというだけでは間違いであるとは言えないとした。

裁判官は、Latham & Watkins は「誠実」という条件は満たしているとした。

また、Latham & Watkins は契約当事者でなく、Latham & Watkins が意見を言えないという以上、Energy Transfer は逃れられることとなる。

これにより、裁判官は税務上、どちらが正しいかの判断を避けた。

この結果、 Energy Transferは契約書の規定により、6月28日に契約を終了することが出来るようになった。

Williams は6月29日、Energy Transferから期限までに条件が整わないため契約を終了するとの通知を受けたと述べ、コメントを発表した。

Energy Transferは、Latham & Watkins からの税務に関する意見をもらうことも含め、契約を実行するための努力を怠っており、契約違反である。

実際問題として Energy Transfer側に契約実行の意思がないことを認める。株主の利益を守るため、違約金支払を求める。

両社の統合は、6月9日にFTCの承認を得ている。

Williamsは6月27日の株主総会で、Energy Transferとの統合を承認した。
Williamsは同日、州最高裁に訴えた。違約金支払いを求める。



2016/7/8 韓国出身のAIIB副総裁、更迭   

韓国企画財政部は6月28日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の副総裁の一人でChief Risk Officerの洪起沢(元韓国産業銀行会長)が突如休職に入ったことを明らかにした。
「一身上の都合で半年間の休職をAIIB理事会に口頭報告し、これが受け入れられたと聞いている」としている。洪副総裁は所在不明で、韓国政府側とも連絡ができていない状態という。

その後の報道では、就任前に務めていた韓国政府系の韓国産業銀行会長時代に支援先企業の放漫経営を放置した問題の責任を問う声が上がり、Chief Risk Officerとして適任ではないとする中国の更迭要求に韓国政府が応じたとの見方が強い。

AIIBは、後任を選ぶ方針を固めた。AIIBのDanny Alexander副総裁(Corporate Secretary)は「大規模な投資プロジェクトが今後相次ぐ。最高リスク管理者(CRO)というポストを長期間空席のままにしておくわけにはいかない」と述べ、早期に後任を募る方針を加盟国に伝えた。早ければ1−2週間以内に募集広告が出される見通し。

後任には韓国(出資比率5位)のほか、ロシア(3位)、オーストラリア(6位)、フランス(7位)が候補擁立の構えを見せており、4カ国による争いが予想される。

副総裁ポストを得られなかったロシアが中国にポストを強く要求する見通し。
また、フランスは競合する英国、ドイツが副総裁ポストを獲得したことに強い不満を抱いている。

韓国政府は後任に韓国人を推薦し、韓国の「取り分」を死守する構えだが、現実的にポストを守るのは容易ではないとみられる。韓国が37.4億ドルを拠出し、朴槿恵大統領が金立群AIIB総裁と会うなど、政府一丸となった努力で勝ち取った国際金融機関の副総裁ポストが失われる危機に直面し ている。

韓国企画財政部関係者は「最大限の努力を尽くすが、洪副総裁が大宇造船海洋への支援過程をめぐり、インタビューで韓国政府を批判する趣旨の発言を行い、物議を醸している上、休職に至る過程もスムーズではなかった」と述べ、洪副総裁の言動や行動で韓国政府のイメージが低下したことが弱点となる可能性を懸念した。

付記

AIIB は7月8日、最高リスク管理責任者(CRO)のポストを局長級に格下げした上で後任者を公募すると発表した。

別途、局長級の最高財務責任者(CFO)は副総裁職に格上げすることも発表した。

AIIBは7月13日に、アジア開発銀行(ADB)副総裁でフランス出身のThierry de Longuemar(ド=ロングマール)氏をCFOに内定している。
この結果、韓国が占めていた副総裁の地位はフランスに移ることとなる。

付記 韓国紙が本件の背景を伝えた。

韓国政府関係者によると、洪副総裁は6月22日ごろ、AIIBから「1週間以内に辞任など去就を決めてもらいたい」と要求され、それを韓国企画財政部に伝え、大統領府にも報告された。AIIB側は韓国産業銀行会長を歴任した洪副総裁が大宇造船海洋の監督責任問題に巻き込まれた上、先月初めに韓国メディアのインタビューで自分には責任がないとの趣旨の発言を行い、物議を醸したことを問題視したとされる。

状況が深刻だと判断した企画財政部などは、AIIBと「休職」カードで折衝を試み、洪副総裁は6カ月の休職を届け出た。韓国政府は一連の経緯を全て秘密扱いにした。柳一鎬経済副首相は6月29日、国会の答弁で「一身上の理由で休職の意思をAIIB理事会に口頭で伝え、受け入れられたと聞いている」と説明していた。

ーーー

AIIBは2016年2月5日、5人の副総裁を指名した。出資比率第三位のロシアは選ばれていない。 

担当 出身国 氏名 経歴
Corporate Secretary 理事会、取締役会、経営陣の調整 英国 Sir Danny Alexander 元 英国予算担当大臣
Chief Risk Officer 投資危険管理 韓国 洪起沢 前 韓国産業銀行会長、CEO
Chief Investment Officer 投資運営管理 インド D.J. Pandian 元 Indian Administrative Services
Policy and Strategy 中長期政策・戦略 ドイツ Joachim von Amsberg 現 世銀開発金融担当の副総裁
Chief Administration Officer 一般行政 インドネシア Luky Eko Wuryanto 元 政府高官

 

   

出資(億ドル)

出資比率
(%)
議決権
(%)
 
域内 域外
1 中国 297.804   30.34 26.06 総裁
2 インド 83.673   8.52 7.50 副総裁
3 ロシア 65.362   6.66 5.93  
4 ドイツ   44.842 4.57 4.15 副総裁
5 韓国 37.388   3.81 3.50 副総裁
6 オーストラリア 36.912   3.76 3.46  
7 フランス   33.756 3.44 3.19  
8 インドネシア 33.607   3.42 3.17 副総裁
9 ブラジル   31.810 3.24 3.02  
10 英国   30.547 3.11 2.91 副総裁

 2016/2/8 アジアインフラ投資銀行(AIIB)、副総裁人事を発表

 

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洪起沢副総裁は、これまで韓国産業銀行の会長兼 CEO であった。

韓国産業銀行が大株主の大宇造船海洋は黒字経営と発表してきたが、粉飾会計が発覚し、韓国の単一企業としては過去最高の5兆ウォン(約4400億円)規模の赤字を計上した。

大宇造船海洋は、韓国の造船ビッグ3の一社。

1973年に政府出資で巨済島に玉浦造船所 を設立した。

1978 年の民営化の際に、ラッキー金星、三星、現代などの財閥企業 が争ったが、各社が大韓造船公社の経営権や発電所設備事業への参入を要求したため、決まらず、最終的に大宇財閥が引受け 、大宇造船重工業機械とした。

1994年に大宇重工業と合併したが、2000年に大宇財閥が解体され、大宇重工業は分割されて造船事業は大宇造船海洋 となった。

最大株主である韓国産業銀行 (31.5%出資)は売却を決定したが、実現していない。(ロシアのRosneftが関心を示したが、政府は外国企業への売却を禁じた。)


2016年3月に大宇造船海洋が発表した2015年12月期連結決算は営業損益が5兆5050億ウォン(約5200億円)の赤字だった。2014年は4710億ウォンの黒字 であった。
海洋プラント事業でコスト管理に失敗し建造費用が受注額を上回ったり、納期に間に合わなかったりしたケースがあると報じられた。

しかし、実際は粉飾決算であることが判明した。政府が調査を始めた。

大宇造船海洋は2013年の営業損益を4409億ウォンの黒字から7784億ウォンの赤字に修正、2014年の営業損益も4711億ウォンの黒字から7429億ウォンの赤字にそれぞれ修正した。
2015年の営業損失は2兆9372億ウォンに減る。

検察腐敗犯罪特別捜査団は6月21日、産業銀行出身で大宇造船海洋の前最高財務責任者を召喚した。

監査院が6月15日に発表した「金融公共機関出資会社管理実態」 によると、大宇造船海洋は原価を少なく算定して工事進行率を膨らませ営業利益を実際より高く算出する手法を使った。

同社は実際には大幅赤字にもかかわらず、粉飾した財務状態を根拠に2013〜14年に役員に成果給65億ウォン、社員に成果給1984億ウォンを不当に支給した。

大株主の産業銀行は粉飾決算を摘発できる「財務異常値分析システム」を適時に活用せず 、監督をおろそかにしたとしている。


2016/7/9 三菱商事、ブルネイで天然色素カロテノイド「アスタキサンチン」生産開始  

三菱商事は7月4日、傘下のMCバイオテックの培養工場において、アスタキサンチン製造工程の本格稼働を開始したと発表した。

MCバイオテックには三菱商事が93%、日本水産が約7%を出資している。

アスタキサンチンは、その抗酸化作用から健康食品、化粧品原料、並びに天然着色料として、欧米・日本・東南アジア・中国等世界的に需要が拡大している。

アスタキサンチンはカロテノイドの一種で、エビやカニなどの甲殻類や、鮭、イクラ、鯛などに多く含まれる赤橙色の色素。

これらの魚介類は体内でアスタキサンチンを体内で生合成することができず、主に微細藻類や植物に生産されたものが食物連鎖によってオキアミやサクラエビの体内に蓄積され、上記の魚介類はそれらを餌とすることで、アスタキサンチンを摂取している。

アスタキサンチンには他の抗酸化剤の追随を許さない、ビタミンEの100〜1000倍とも言われる強力な抗酸化作用を持ち、活性酸素除去能、免疫賦活化、発ガン抑制作用など、極めて有用な特性を持つことが、分かってきた。

このため、アスタキサンチンを摂取することで、生活習慣病の予防や疲労回復、アンチエイジング、美肌作用といった効果があると期待され、新たな機能性健康食品や飲料、老化予防化粧品の素材として、にわかに市場の注目を集めるようになった。

アスタキサンチンには天然型合成型があり、天然型はヘマトコッカスという単細胞の藻類(ヘマトコッカス科ミドモナス目の単細胞の植物プランクトン)から培養する。
ヘマトコッカスは
紫外線を受けると自らの身を守るためにアスタキサンチンを生成し、緑色から赤色に変化する性質を持つ。

合成型のアスタキサンチンは石油由来で生成される。合成型は、抗酸化力が天然型に比べて約30%ほどといわれる。

MCバイオテックの培養工場はブルネイの首都のBandar Seri Begawan にある

ブルネイは、日照、水等の自然資源に恵まれていることから、アスタキサンチンを豊富に生成するヘマトコッカス藻の培養に適しており、ブルネイ政府の協力も得ながら、「Bio Innovation Corridor」工業団地の第1号案件として本事業を取り進めてきた。

本事業では、三菱商事は、日本で天然アスタキサンチンを扱うバイオジェニック鰍ニ提携している。
バイオジェニックがMCバイオテックに
ヘマトコッカス藻の培養装置を納めるとともに、工場の運転・管理を受託している。

バイオジェニックは、植物及び微生物の培養・研究開発ならびに製造販売、培養物の加工販売、その他機能性原料の研究開発・販売を業としている。
中国・昆明市の子会社で密閉式のフォトバイオリアクターでヘマトコッカス藻を培養
、日本国内で天然アスタキサンチンを抽出・加工している。

同社は荏原実業の子会社であったが、2012年にMBOで独立した。

MCバイオテックは培養したヘマトコッカス藻から乾燥バイオマスを製造し、日本向けに輸出し、日本国内でアスタキサンチンを抽出した後、バイオジェニックが、各種原料として製品化し国内外に販売する。

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 三菱商事は、1972年よりブルネイにて LNGを生産、主に日本に向けて安定的に供給している。

本事業を通じてブルネイの豊かな微生物資源を有効に活用し、安全・環境面にも十分に配慮しながら工場の安定操業を継続することで、同国の産業多角化・雇用創出・人材育成に貢献し、エネルギー事業も含めた包括的なブルネイ・日本の関係強化に尽力するとしている。


2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力   

日本原子力発電(日本原電)は7月7日、日立製作所及び日立の子会社の英国の原発事業会社 Horizon Nuclear Power との間で、Horizon が 2020年代前半の運転開始をめざし、北ウエールズのAnglesey島のWylfa Newydd で開発を進めているABWR (改良型沸騰水型原子炉) の新規原子力発電所建設プロジェクトに関し、許認可段階における協力協定を締結した。

Horizonと日立は、Horizon初のプロジェクトとなるWylfa Newydd 原発建設において、2018年までに全ての許認可を英国政府から取得し、2019年に着工、2020年代前半の初号機運転開始をめざしてい る。
英国初となるABWRの技術認可については、英国原子力規制庁による包括的設計審査の手続きが、2017年末の完了に向けて順調に進められてい る。

今回の協定に基づき、3社は、日本原電が培ってきた経験やノウハウを活かして、Wylfa Newydd 原発の建設費評価やEPC (設計・調達・建設)  契約締結に向けた作業、サイトライセンス、建設前安全性影響評価報告書を含む許認可取得、試運転の計画、運転開始後の各種メンテナンス計画の策定などを進め る。

ーーー

Horizonは、英国内における新たな原発の建設を目的として2009年に設立された。

日立製作所は2012年10月30日、ドイツのエネルギー会社のE.ON及びRWEからHorizon 全株式を買収する契約を締結した。
買収額は
6億7000万ポンド(約850億円)。

合わせて、建設プロジェクトの計画・推進に向け、英国で原子力業界有数のBabcock InternationalRolls Royce、カナダの建設エンジニアリング会社SNC-Lavalin と協力覚書を締結した。

2012/11/1   日立製作所、英の原発会社買収

Horizon は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ 2〜3基)を建設する 。
第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(
ABWR)技術を用いる。

日立とGEのJVのGE Hitachi Nuclear Energyが高経済性・単純化沸騰水型原子炉(ESBWR:Economic Simplified Boiling Water Reactor)の設計認証を申請中だが、実績を優先した。


ーーー

日本原電は、日本に商用原発を導入するために、電気事業連合会加盟の電力会社9社が80%、電源開発が20%出資し、1957年11月に設立された。

現在の株主は以下の通り。
  電力9社合計 85.04% (うち東京電力 28.23%)
  電源開発    5.37%
    一般(142人)   9.58%  (日立 0.92%、みずほコーポレート銀行 0.71%、三菱重工 0.64%)

敦賀原発と東海原発を持つが、再稼動の目途は立っていない。

  運転開始 能力
(万KW)
状況
敦賀1号 1970.3 35.7 40年経過、2015/3/17 廃炉決定
  2号 1987.7 116.0 直下に活断層
東海 1978.11 110.0 審査停滞

売電収入はゼロだが、電力会社との契約で「基本料金」を受け取り、存続している状態で、新たな収益源の確保が課題になっている。

2012/10/20  日本原子力発電の損益状況

2016年3月期連結決算は、経常損益が63億円の黒字(前期は69億円の黒字)となった。
販売電力量は4年連続でゼロだったが、大手電力が原発の維持費として「基本料金」の支払いを継続した結果、黒字の確保につながった。

売上高は1149億円で、このうち基本料金は1126億円を占めた。原発の維持に必要な費用が減ったため、前期より176億円減少した。


2016/7/11   EUに新たな混乱の火種   

BrexitでEUが揺れるなか、経済不振に悩む南欧の各国に対する EU当局の対応が新たな混乱の火種となり、ギリシャ危機のような事態を招く可能性や、各国でEU離脱派が勢力を強める可能性がある。

一つはイタリアの銀行の不良債権問題で、もう一つはスペインとポルトガルのEU財政規律違反問題である。
財政ルールの徹底を求めるドイツなどと、柔軟な運用を唱える南欧勢の対立が深まる懸念がある。

IMFは7月8日、ユーロ圏19カ国の実質GDPの見通しを下方修正した。景気の悪化はこれらの問題の解決をさらに難しくする。

2015年は1.7%であったが、Brexit 問題が響き、2016年は1.6%、2017年は1.4%になると予測した。
英国とEUの交渉が長引いた場合には、経済への影響がさらに大きくなる可能性もあると説明している。

 

1)  イタリア

不良債権を大量に抱えるイタリアの銀行が資本不足に陥るのではないかとの懸念が強まっている。

イタリア大手銀行のBanca Monte dei Paschi di Siena(Monte Paschi)は7月4日、欧州中央銀行(ECB)から不良債権比率を下げるように求める書簡を受け取ったと発表した。
不良債権の総額を昨年の469億ユーロから2018年までに約30%削減するように求められた。

イタリアの銀行は不良債権を多く抱えており、2015年9月時点の融資に占める不良債権比率は16.9%で、フランス(4.2%)、ドイツ(3.2%)、EU平均(5.9%) を 大きく上回る。
Monte Paschi の不良債権は2015年末で42%で、イタリア国内で最悪となっている。

Monte Paschi が自力で資金を調達するのは難しく、政府は公的資金注入による救済の検討を始めたが、EUが定めた銀行再建ルールが障碍となる。

金融危機を受け、EUでユーロを使う国々は各国でばらばらだった金融行政を一元化する「銀行同盟」を進めた。
銀行の破綻処理のルールも1月から施行し、まず銀行の債券などを持つ投資家に一定の割合の損失を負わせることにし、公的資金の利用を制限する仕組みにした。

しかし、イタリアでは銀行の債権者に個人投資家も多いため(個人が銀行債を預金に近い感覚で購入している)、このルールを適用すれば反発を招くおそれがある。 

このため、イタリアがEUで決めた銀行救済の新ルールに従わないのではないかとの見方が浮上し、市場は支援をめぐって混乱するおそれがあると警戒を強めている。

Bloombergは6月末、伊政府が一部の銀行に最大400億ユーロの支援を検討していると報じた。
Financial Timesは7月4日、イタリアがEUルールを無視して銀行救済に乗り出す準備をしていると報道し、始めたばかりのルールに例外を認めれば、ユーロ圏の金融行政をめぐる信頼が損なわれかねないとの懸念があると伝えた。

イタリア では10月に憲法改正案の国民投票がある。最新の世論調査では大差で否決されるとの見通しとなっている。

改正案の内容は、上院を地方議会の代表と位置づけ、定数を大幅に削減し、立法権限を制限するもの。
上下両院による立法権限がほぼ同等のイタリアでは、選挙制度の違いもあり、しばしば両院で多数派が食い違う"ねじれ"が発生し、政権発足の難航や政権運営の停滞を招いてきた。これを修正しようという狙いがある。

レンツィ首相は憲法改正案が10月の国民投票で否決された場合、辞任すると表明しており、 この時点で預金者の反発を生む措置は避けたい。

イタリア政府は欧州委員会に特例を求めているが、欧州委やドイツは、導入したばかりのルールを破ることに難色を示している。
協議が難航すれば、欧州発の金融不安が再燃する懸念がある。


付記

IMFは7月11日、イタリアの年次審査報告をまとめ「銀行の不良債権処理へ、債務再編や監督の強化を支援する」と一段の金融改革を促した。

リポートでは、不良債権の4分の3は企業向けの貸し出しで、とりわけ小規模事業者の小口融資が多いと分析。倒産法制の整備や私的整理による債務再編が欠かせないと強調した。

イタリアでは多額の銀行債を保有する個人投資家の損失負担に懸念が強まっているが、IMFは「適切に対処すべきだ」と指摘するにとどめた。

 

2)スペイン、ポルトガル

欧州委員会は7月7日、財政再建の努力を怠っているとして、スペインとポルトガルに制裁を科すよう勧告した。

7月12日に開くEU財務相理事会が勧告に賛同すれば、欧州委は罰金などの具体的な制裁内容を決める手続きに入る。
景気への配慮などから緩やかな内容になる公算が大きい。

EUは各年度の財政赤字をGDPの3%未満 (及び景気循環・一時的要因の影響を除いた「構造的財政赤字」を1%以下)に抑える財政ルールを設けており、財政再建への取り組みが不十分なユーロ圏加盟国に対しては罰金を科すことが出来る。

財政安定化・成長協定は1997年に採択されたが、ドイツとフランスは、2002年以降3年連続で違反を続け、罰金の適用も停止させた。


 

フランスとドイツの圧力を受け、2005年3月の欧州理事会で見直しが行われ、財政赤字規律の条件を超えても、「小幅かつ一時的」な場合、経済成長がマイナスであれば過剰財政赤字とはみなされないことになった。

単年度赤字発行 3%、累積公債発行残高 60% という上限は残されたものの、ある国に対して債務が基準を超過していることを通告するにあたって、景気にあわせた財政動向、債務水準、景気低迷の期間、赤字発行による生産性向上の可能性といった指標を用いることが認められた。

その後、フランスとドイツは別々の道をたどる。
ドイツは経済改革を急速に進めることで対応し、現在では経常黒字になっている。
それとは対照的にフランスは1970年代から財政黒字を計上していない。2015年の財政赤字は3.5%である。

EU財務相会議は2013年、フランスが財政赤字の対GDP比率を3%以内とする期限を2015年まで2年延期することで合意した。

フランス政府は、これを3年先延ばしにし、2018年とするよう要請した。

これを受け、EU財務相は3月10日の理事会で、財政再建の達成期限の2年延長(2017年まで)を承認した。

2000年以降でフランスが基準を達したのは2006年と07年の2回だけ。
フランスの期限延長は2009年以降3度目となり、EU財政規律の信頼性を損ねかねないとして懸念の声が上がっている。

2015/3/23   ギリシャ問題 混迷が続く

ギリシャ問題は、当初の規律を厳密に実行しなかったためであるとの見方が強い。

債務危機後に再度の見直しが行われた。

「構造的財政赤字」はGDPの0.5%以下とし、憲法などに明記する。
目標未達の場合、達成までの期間、毎年GDPの0.5%規模の緊縮策を実施。
各国の予算案を欧州委が審査。

財政赤字がGDPの3%以上の場合、「過剰財政赤字手続き(EDP)」に入り、毎年GDPの0.5%の緊縮策を実施する。
目標に向かって十分に取り組まない場合、迅速に罰金を課す。

2016年5月にEUは Cyprus、Ireland、Slovenia の3国の財政赤字がGDPの3%未満となったため、過剰財政赤字手続き(EDP)から除くよう勧告した。

これにより、現時点ではFrance、Greece、Portugal、Spainのユーロ圏4国とユーロ圏外のCroatia、UK の合計 6カ国がEDPに残っている。

2016年4月21日のEU発表では各国の財政赤字は次のとおり。

 

今回、 スペインとポルトガルに対する制裁勧告を行ったが、その理由は次のとおり。

(1) Spain

欧州委員会は2009年4月、スペインが過度の赤字であると認定し、2012年までに是正するよう勧告した。
2009年12月、2012年7月、2013年6月にも勧告し、期限をそれぞれ2013年、2014年、2016年に延長した。

2014年の財政赤字はGDPの5.9%、2015年は5.1%であった。
予測では、2016年は3.9%、2017年は3.1%で、2016年までに是正できない。

さらに、構造的赤字は2016年に0.2%増加し、2017年には0.1%増加する。

この結果、勧告に対する実効ある行動をとらなかったと見做す。

(2) Portugal

欧州委員会は2009年12月、ポルトガルが過度の赤字であると認定し、2013年までに是正するよう勧告した。
2012年10月、期限を2014年に延長した。
2013年6月に再勧告を行い、遅くとも2015年までに是正を求めた。

2015年の赤字はGDPの4.4%であり、目標の3%を超えた。

この結果、勧告に対する実効ある行動をとらなかったと見做す。
 

付記

EUの財務相理事会は7月12日、制裁を科す方針で合意した。
具体的な内容は、欧州委員会が今後20日以内にまとめるが、最大でGDPの0.2%に当たる額の罰金が科される可能性がある。

付記

欧州委員会は7月27日、スペインとポルトガルに対する罰金を科さず、規律達成期限を延長することを提案した。
「スペインとポルトガルがこれまでに実施した取り組みや現在の厳しい環境などを踏まえ、欧州委はこの日の会合で罰金の取り消しを提案することで合意した。」

8月9日、加盟国がこれを承認したと発表。

欧州では経済成長が足踏み状態にあるなかで反EU感情が高まっており、制裁措置の発動に消極的になっていると見られる。

欧州委はスペインとポルトガルに財政ルールを達成するよう求める期限も延長。スペインは現行の2016年から2018年まで2年間、ポルトガルは現行の2015年から2016年まで1年間延ばすよう提案した。

財政ルール違反に対する制裁のもうひとつの手段であるEUから両国への補助金の支給停止については、欧州議会との合意が必要になるとの理由から、判断を秋以降に先送りした。

 

ーーー

フランスについては、財政赤字の対GDP比率を3%以内とする期限は2013年であったが、上記の通り、2013年に2年延長して2015年までとし、さらに2015年には2年延長して2017年までとしている。

フランス政府は7月6日、2017年の財政赤字を上限の3%以内に収める目標の達成を断念しないと述べた。政府の見通しでは、2016年の財政赤字比率は3.3%、2017年は2.7%となっている。

ただ、独立監査機関は前週、来年の財政赤字が目標を超えるという「高いリスク」があるとの見方を示した。

フランスが目標達成できない場合、欧州委員会はフランスから罰金を取るだろうか?

ーーー

ユーロ圏EUの根本的な問題点は、経済力の弱い国から経済対策としての通貨切り下げや金利率変更の手段を奪いながら、経済力の違いを是正する仕組みがないことである。
それにもかかわらず経済規律を強制すれば、それらの国の経済は更に悪化する。

各国でEU離脱派が勢力を強める可能性がある。


2016/7/12 ドイツの原発停止訴訟、電力大手の敗訴続く   

ドイツ北部ハノーバーの地方裁判所は7月4日、エネルギー大手E.ON が東京電力福島第1原発事故の後に、原発2基の停止を命じられ損失を被ったとして、政府などに計約380百万ユーロ(約434億円)の損害賠償を求めた訴訟で、請求を棄却した。

ドイツ政府は2011年3月11日の福島第一の事故を受け、 直後の15日に、32年の運転年数期限が到達した7基の運転を3カ月間停止すると発表した。
このなかには
E.ONのUnterweser原発1号機とIsar原発1号機が含まれている。

E.ONは損害賠償訴訟にかかる時間は一時停止期間を上回るとの判断から、提訴を行わなかった。しかし2011年6月に議会はこれらの原子炉の閉鎖を決めた。

しかし同様の停止命令を受けたRWEは直ちに訴訟を起こし、
2014年1月にドイツ最高行政裁判所から停止命令が違法であるとの判決を得た。
(2014年8月にRWEは連邦政府とヘッセン州政府を相手取って、235百万ユーロの損害賠償の支払いを求める民事訴訟を起こしている。)

今回、ハノーバーの地方裁判所は、E.ON が命令を受けた時点で法的措置を取らなかったためとして却下した。
裁判長は、「E.ONが直ちに訴えを起こしていれば、運転停止による損失を回避できた可能性がある」としている。

電力会社EnBWも、Neckarwestheim 1 原発とPhillipsburg 1 原発の停止命令に関し、RWE訴訟での判決を受け、261百万ユーロの賠償を求め訴えたが、Bonn 地裁は2016年4月、これを却下した。停止命令を受けた時点で、直ちに全ての法的措置を取らなかったとしている。

EnBWは連邦政府とBaden-Württemberg 州を訴えたが、同州はEnBWの株式の46%を所有する大株主である。

EnBWは現在、控訴中。

なお、もう1社の電力会社で、スウェーデンに本社を置く Vattenfall は、ワシントンの投資紛争解決国際センター (ICSID)に47億ユーロの賠償を求め、訴えている。

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ドイツでは、電力会社4社が17基の原発を運営していた。

2002年に当時のSchröder政権(ドイツ社会民主党と緑の党の連立政権)が原子力法を改正し、原発の運転年数を32年と定めて順次停止し、2022年までに原発を廃止すること、原発の新規建設は認めないことを決定した。

原発の寿命は32年の規定寿命にもとづいて2000年1月1日から残余稼働年数が計算される。
残余年数のあいだ従来の安全性基準が適用される。
核廃棄物処理に関しては電力会社はできるかぎり早急に原子力発電所の立地場所あるいはその近くに中間貯蔵施設を建設する。

しかし、2009年にMerkel 政権(キリスト教民主・社会同盟と自由民主党の連立政権)が成立し、方向転換した。

2022年までにすべての原発の稼働をやめると必要な電力を賄う見通しが立たないため、
再生可能エネルギー等による電力供給のインフラが整うまでの移行措置として原発を位置づけ、
1980年以前に稼働を開始した原発7基の稼働期間を8年、1981年以降に稼働を開始した原発10基の稼働期間を14年延長する「エネルギー計画2050」を決定し、
2010年12月に原子力法を改正した。

ところが、2011年3月11日の福島第一原発事故で、この決定が覆ることになった。メルケル政権は、福島原発事故後のドイツ国内の反原発運動の圧力に抗いきれずに、すべての原発を2020年までに廃止するという以前の決定を受け入れることになった。

2011年6月末のドイツ連邦議会で、この決定が513対79で可決された。
この決定で、8基の旧型の原発が2011年に廃止され、9基の原発は2022年までにすべて廃止されることが確定した。

VattenfallのKruemmel 原発は2011年3月時点で休止していた。

ドイツのエネルギー最大手E. On は2015年6月27日、バイエルン州のGrafenrheinfeld 原発の稼働を停止した。
ドイツ国内で稼働中の原発は残り8基となった。

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問題は2011年6月末のドイツ連邦議会での上記の決定以前の措置である。

メルケル首相は3月11日の事故を受け、翌12日に国内すべての原発の点検を表明し、14日には前年(2010年)に決めたばかりの「原発の運転延長政策」の凍結に踏み込んだ。

さらに3月15日には、国内17基の原発のうち1980年までに稼働を開始 (32年の運転年数期限到達)した7基の運転を3カ月間停止すると発表した。(このほか、クリュンメルは故障で停止中で、実質8基が停止となる)

決定には、首相のほか、環境大臣、経済大臣と原発がある5つの州の知事が参加した。

上記の2011年6月末のドイツ連邦議会の議決で、これら8基の旧型の原発が2011年に廃止され、9基の原発は2022年までにすべて廃止されることが確定した。上記の通り、2015年6月にGrafenrheinfeld 原発が期限切れで停止した。

メルケル首相は2011年6月9日の議会で演説した。

福島事故は、全世界にとって強烈な一撃でした。この事故は私個人にとっても、強い衝撃を与えました。大災害に襲われた福島第一原発で、人々が事態がさらに悪化するのを防ぐために、海水を注入して原子炉を冷却しようとしていると聞いて、私は「日本ほど技術水準が高い国も、原子力のリスクを安全に制御することはできない」ということを理解しました。

私は福島事故の前には、原子力の残余のリスクを受け入れていました。高い安全水準を持ったハイテク国家では、残余のリスクが現実の事故につながることはないと確信していたからです。しかし、今やその事故が現実に起こってしまいました。

福島事故が我々に突きつけている最も重要な問題は、リスクの想定と、事故の確率分析をどの程度信頼できるのかという点です。なぜならば、これらの分析は、我々政治家がドイツにとってどのエネルギー源が安全で、価格が高すぎず、環境に対する悪影響が少ないかを判断するための基礎となるからです。

私があえて強調したいことがあります。私は去年秋に発表した長期エネルギー戦略の中で、原発稼働年数を延長させました。しかし私は今日、この議場ではっきりと申し上げます。福島事故は原子力についての私の態度を変えたのです。

電力会社RWE は2011年4月1日、3月15日の政府によるBiblis (A &B)原発の運転停止命令は行政手続き法に違反していたとして、メルケル政権とヘッセン州政府を相手取り、行政訴訟を起こした。政府の安全規則に従っており、停止命令の法的根拠はないと主張した。
損害賠償については判決を受けてからのこととした。(行政裁判所は損害賠償については判断しない。)

州の行政裁判所は2013年2月、Biblis 原発の即時停止を決めた決定は違法であったと判断した。
停止命令がRWEに対し異議をとなえる十分な機会を与えておらず、
州政府は原子炉停止などが与える影響などについて、RWEから詳しい事情聴取を行わなかったとし、違法とした。
 

州政府は上告したが、ドイツ最高行政裁判所は2014年1月、上告を却下した。Biblis原発の停止命令はRWEとの協議がなく、重大な手続きエラーで違法であるとした。

ドイツの法曹関係者の間では、「メルケルの原子炉停止措置は、少なくとも行政手続きの面では、違法だった」という意見が浸透している。

2014年8月、RWEは連邦政府とヘッセン州政府を相手取って、損害賠償の支払いを求める民事訴訟を起こした。
損害賠償請求額は235百万ユーロとされる。



2016/7/13 Chevron、カザフスタンのTengiz 油田拡張計画を発表  

Chevronは7月5日、同社が50%出資するTengizchevroil がTengiz 油田拡張計画(Future Growth and Wellhead Pressure Management Project)の実施を決めたと発表した。

Tengizchevroil はChevronが50%、ExxonMobilが25%、国営企業のKazMunayGas が20%、ロシアのLukoil子会社のLukArco が5%出資する。
(LukArcoは当初、LukoilとArcoのJVで、ARCOがBPに吸収され、LukoilとBPのJVとなった。2009年にBPが持分をLukoilに売却した。)

Tengiz 油田では地下約3700mに油層がある。隣接する Korolev油田でも開発を行っている。

2015年のChevronの両油田の持分は、平均して、原油が日量257千バレル、天然ガスが348百万立方フィート、NGL( natural gas liquids)が21千バレルとなっている。

 今回の拡張で日量26万バレルの増となり、合計能力は約100万バレル(原油換算)となる。

投資額は368億ドルで、内訳は、設備に271億ドル、油井に35億ドル、予備費が62億ドルとなっている。

石油メジャーは大型の開発投資を抑制してきたが、将来の成長を左右する優良案件とみて積極投資に踏み切る。

Chevronでは、Tengiz油田のこれまでの記録的な実績をベースとするもので、Chevronと他の株主の企業価値を高めるものになるとしている。
十分に準備したもので、最近の石油産業の機器・サービスコストの低下を利用できるよいタイミングである。

2022年にも最初の石油を期待している。
 


2016/7/14  東芝、2030年度までに45基以上の原発受注を目指す    

東芝は7月6日、カンパニー別PR説明会を開催した。

エネルギーシステムソリューションはカンパニー社長で、東芝子会社Westinghouseの会長のDanny Roderickが説明、全世界で400基以上の原発建設計画があり、同社では 2030年度までに45基以上の原発受注を目指すと述べた。

Westinghouseの受注計画は65基で、保守的に見積もったものとしている。

このうち、既受注分が米国4基、中国4基で、今後、英国、インド、トルコほかで37基以上の受注を目指す。

東芝の2015年11月27日の、ウエスチングハウスの減損問題についての記者会見では、全世界で約400基の計画があり、2029年度までの15年間で、新たに「64基」の原発建設を受注するのがベースとなっているとしていた。

2015/12/8 東芝の原子力事業 

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同社の受注の状況は下記の通り。

1) 中国  4基建設中

立地 主体 タイプ 能力 状況
台州市三門 中国核工業 WH「AP1000」 1,250千KW x 2 建設中
山東省海陽 中国核工業 WH「AP1000」 1,100KW x 2 建設中

多くある新設計画についても、「10基程度には関わりたい」としている。

2) 米国

  立地 主体 タイプ 能力 状況
Vogtle 3&4 Georgia州 Southern Nuclear Operating Co WH「AP1000」 1,250千KW x 2 建設中
Virgil C. Summer 2&3 S. Carolina州 South Carolina Electric & Gas
& Santee Cooper
WH「AP1000」 1,250千KW x 2 建設中
     以上 2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 
South Texas 3&4 Texas州 (東芝) 東芝 ABWR 1,300千KWx 2 建設運転一括許可(COL)取得、パートナー待ち
 2016/5/16 東芝、米国大手エンジニアリング会社との原発建設に関する協力関係を解消 
Turkey Point 6&7 フロリダ州 Florida Power & Light WH「AP1000」 1,100千KW x 2 COL 審査中
参考
東芝は7月1日、新規建設案件が当面見込めないことなどから、米原子力規制委員会に出していたABWR(改良型沸騰水型軽水炉)の設計認証の更新申請を取り下げたと発表した。上記のSouth Texas 3&4 については、取り下げの影響を受けない。
米国市場では子会社のWestinghouseが手掛ける次世代型PWR(加圧水型軽水炉)「AP1000」を中心に展開していく。

 

3)インド

オバマ米大統領は6月7日、訪米中のインドのモディ首相とホワイトハウスで会談し、東芝傘下のWestinghouseが原子炉6基をインドに建設することで基本合意した。

Westinghouseとインド原子力発電公社(Nuclear Power Corporation of India Limited =NPCIL) が、2030年までに加圧水型軽水炉「AP 1000」1100千KW x 6基をインドに建設する契約を2017年6月までに締結する。米輸出入銀行が資金支援する。原子炉設計や立地選定は「すぐに始める」としている。

立地は、当初は当初はGujarat州Mithi Virdi となっていたが、住民の反対でAndhra Pradesh 州に変更になった。

2016/6/14 米、インドに原発6基建設で基本合意、Westinghouseが建設

4)英国

東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration (NuGen)の株式50%を 、GDF Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。

NuGenは東芝 60%、GDF Suez 40%の出資となる。

NuGen は、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。

Westinghouse Electric のAP 1000 を3基建設する予定。東芝は 原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。

2013/12/27  英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加

 

5) トルコ

Westinghouseはトルコの国営発電会社との間で、トルコの三番目の原発計画(イーネアダ原発)でAP1000の原子炉4基を建設する方向で独占交渉中とされる。



アックユ原発は、ロシアの
Rosatomが建設する。
シノップ原発は、三菱重工業とフランスのArevaのJVのAtmeaが建設する。

 


2016/7/15 日医工、米後発薬メーカーを730億円でTOB   
 

後発薬大手の日医工は7月11日、米後発薬メーカーのSagent Pharmaceuticals, Inc. を買収すると発表した。

買収は、両社の取締役会で承認済み。日医工は米国に買収するための子会社 Shepard Vision Inc.を新設し、同社を通じて8月末をメドにTOB方式で買い付ける。
1株あたりの買い付け価格は21.75ドルとし、日医工の100%子会社にする計画 で、買収金額は総額で730億円程度を見込む。

前日の終値は15.50ドルであったが、報道を受け、株価は急上昇し、21.72ドルとなった。

Sagentの19.8%を保有する Vivo Capital は, TOBに同意している。

付記

8月26日のTOB期限に85.6%+1.8%の応募があり、TOBが成立、応募株式全てを買い付ける。

 

Sagentは米国でジェネリック注射剤(抗感染症薬・救急医療・抗がん剤領域)を販売する企業で、病院や共同購買組織等の販売先を持ち、55製品のラインナップがある。
2015年の売上高は318百万ドル。

同社は2006年設立で、10周年を迎える。

2014年10月にカナダの注射薬メーカーのOmega Laboratories を買収した。新工場を建設中で、2017年にはカナダで販売開始し、FDAの承認を得て2019年に米国で販売開始する予定。

Sagent Pharmaceuticalsは本年6月16日に、Teva Pharmaceutical から5品目を買収した。
ActavisがAllerganを買収して新社名をAllerganとしたが、この際にジェネリック部門をTevaに売却した。Tevaがこのうちの一部を売却したもの。

2015/7/29   後発薬最大手のTeva、 医薬大手の Allerganから後発薬事業買収

同社は本年1月に事業売却構想を持ち、投資会社を通じて関心を持つ企業に打診していた。

日医工は世界のジェネリックメーカー Top 10 入りを支える起業基盤構築を進めており、国内ジェネリック医薬市場での15%のシェア確立(「シェアUP力」)、超品質に基づく185億錠供給体制確立(「供給能力」)、バイオシミラー・米国市場への参入(「開拓力」)を目指している。

本買収は、米国市場におけるジェネリック医薬品市場参入のプラットフォーム確立、注射剤領域におけるプレゼンス確立を通じた「開発力」の拡大へ向けた重要なステップと位置づけている。

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世界のジェネリック市場では、日医工は20位(日本では1位)で、単独ではトップ10入りは難しい。

EvaluatePharmaによると、2014年のジェネリックの売上高は742億ドル、日医工は12億ドルで世界のシェアは1.6%である。

Top 20 generics companies by 2014 revenue
  http://www.fiercepharma.com/special-report/top-20-generics-companies-by-2014-revenue

    売上高
 10億$
シェア  
1 Teva   9.1 12.2%  
2 Novartis - Sandoz   8.5 11.5%  
3 Allergan   6.6 8.9%  
4 Mylan   6.5 8.8%  
5 Sun Pharmaceutical インド 4.5 6.0%

Ranbaxy Laboratories 買収

6 Aspen   3.0 4.1%  
7 Hospira   2.6 3.6%

Pfizerが買収

8 Sanofi   2.4 3.2%  
9 Fresenius Kabi  2.3 3.1%  
10 Lupin インド 2.0 2.7%

共和薬品工業の株式の過半数を取得

11 Dr. Reddy's Laboratories インド 1.8 2.4%  
12 Apotex   カナダ 1.7 2.3%  
13 Stada Arzneimittel 1.6 2.2%  
14 Aurobindo インド 1.6 2.1%  
15 Cipla   インド 1.4 1.9%  
16 Krka Group スロベニア 1.3 1.8%  
17 Valeant   1.2 1.6%  
18 Zydus Cadila インド 1.2 1.6%

日本ユニバーサル薬品買収

19 Par Pharmaceutical   1.2 1.6%

Endo International が買収

20 日医工   1.2 1.6%  

日医工によると、日本の2014年のジェネリック市場は1.2兆円で、シェアは下記の通り。

1 日医工

12.9%

2

沢井製薬

12.8%

3

東和薬品

7.5%

4

テバ製薬工業

5.0%

5

Meiji Seika ファルマ

2.9%

 


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