ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2018/5/1 主要企業の2018年3月決算 ー 信越化学 

純利益が前期比51%増の2662億円となり、10年ぶりに過去最高を更新した。

塩化ビニル樹脂や半導体シリコンウエハーなどの値上げが進み、採算性が改善した。

米国の法人税引き下げに伴い、Shintechの税金費用が一時的に約300億円減ったことも純利益を押し上げた。

Shintechが100%子会社であることから、連結損益のほとんどが株主帰属損益であり、株主帰属損益では三菱ケミカルを大きく上回る。
(三菱ケミカルHDの2月6日発表の予想では、当期損益は2660億円だが、株主帰属損益は2000億円)

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 株主帰属
当期損益

 配当

中間 期末
2016/3 12,798 2,085 2,200 1,488 55 55
2017/3 12,374 2,386 2,421 1,759 60 60
2018/3 14,414 3,368 3,403 2,662 65 75
前年比 2,040 982 982 903 5 15
2019/3予

未定

年間配当は20円増の140円とし、3期連続で増配する。

営業損益は下記の通り。


営業損益推移 (
単位:億円)

セグメント  16/3 17/3 18/3 増減
塩ビ・化成品 447 532 932 401 Shintechがフル操業を継続、日本と欧州も好調
世界能力 PVC 415万トン、NaOH 166万トン
米国エチレン(50万トン)は2018年末完成予定
シリコーン 415 425 520 94 全分野・用途で需要伸長
機能性化学品 182 222 257 35 セルロース誘導体は、医薬用製品、建材用製品及び塗料用製品が底堅く推移、フェロモン製品やポバール製品ほかも総じて堅調な仕上がり
半導体シリコン 469 560 930 370 旺盛な半導体デバイス需要に対応、製品価格も修正
電子・機能材料 515 552 616 64 希土類磁石、フォトレジスト製品、等々、いずれも好調
その他 56 96 115 19  
全社 1 -1 -2 -0  
合計 2,085 2,386 3,368 982  


Shintech の能力は次のとおりとなる(単位:万トン)

立地 PVC VCM カ性ソーダ エチレン
Texas州 Freeport  145   −   −  
Louisiana州 Addis   58   −   −  
Plaquemine   60   160  106  
 今回増設 32 30 20 50
合計  295  190   126 50

増設分はエチレン以外は2016年度に既に稼働している。

エチレンは2018年初めの完成予定であったが、地盤の問題で杭工事の手直しが相当量発生し、2018年末完成予定となった。
(東洋エンジはこれによる同社のコスト増負担を266億円と発表した。)

2014/4/17  Shintech、米国でエチレン工場の建設許可を申請

2017/5/24 東洋エンジニアリングの決算 米国エチレンプロジェクトで損失

今期はShintechの業績を発表していない。

信越の塩ビ・化成品の営業損益は前年比401億円の増益としており、かなりの部分がShintechと思われる。
更に、米国の法人税引き下げに伴い、税金費用が一時的に約300億円減ったことも純利益を大きく押し上げた。

2018年度では、税金減の影響は無くなるが、エチレン自製の効果が出る。


2018/5/2 ソフトバンクとドイツテレコム、子会社 Sprint とT-Mobile USの統合で合意 

ソフトバンクグループ傘下で米携帯4位のSprintと同3位のT-Mobile US, Inc. は4月29日、経営統合することで合意したと発表した。

ソフトバンクとT-Mobileの親会社ドイツテレコムが互いに主導権を主張し交渉は難航したが 、統合会社をドイツテレコムの連結対象にすることで決着した。

統合は株式交換によって行い、Sprint 1株に対して、T-Mobile US株 0.10256株を割り当てる。
統合会社の社名は「T-Mobile」とし、T-MobileのCEO が統合会社のCEOとなる。

統合会社の持株比率はドイツテレコムが41.7%、ソフトバンクが27.4%となる。

取締役は14人で、ドイツテレコムが9人、ソフトバンクグループが4人を指名する(残り1名は中立系)。ソフトバンクグループの孫正義社長とSprintのCEOも取締役に加わる。

2019年半ばまでの取引完了を目指す。
 


 


SprintとT-Mobile USの契約者数は合わせて1億2600万人となり、1億5千万人のVerizon Communications、1億4千万人のAT&Tに迫る。

通信速度が現行の100倍の次世代通信規格「5G」の商用化は目前に迫っている。

ソフトバンクは5Gの競争を勝ち抜くためには規模の拡大が欠かせないと判断し、経営の主導権を譲って統合を優先したとみられる。両社は統合により顧客基盤を固め、3年で400億ドルを5Gなどに投資する計画という。 合併により年間60億ドルのコスト削減を見込む。

今後の焦点は米連邦通信委員会(FCC)や米司法省反トラスト局などが承認するかどうかに移る。

ソフトバンクは2013年にSprintを買収したが、米携帯電話市場は1位のVerizon Communications、2位のAT&Tの上位2社と、3位のT-Mobile US、4位の Sprintの下位2社との差が大きく、孫社長は下位2社の合併による「第3極」の必要性を訴えてきた。

ソフトバンクは2014年にT-Mobile US 買収でドイツテレコムと合意したが、携帯会社が3社になることを懸念する米規制当局の承認を得ることが難しいことから断念した経緯がある。

今回は、 状況が変わっている。SprintのCEOは、「5Gの競争はもはや携帯大手4社によるものではない。ケーブルテレビ大手など7〜8社がライバルになる」と述べた。T-MobileのCEOも、「地方などで何千人もの雇用を生み出すことができる。消費者や米国にとって良いことだ」と強調した。

また、米政権が規制緩和を主張するトランプ政権に代わった。ソフトバンクの孫社長はトランプ大統領と親しい関係にあることもあり、当局の方針が変わる可能性はある。

孫正義社長は2017年12月6日、Trump 次期米大統領とニューヨークの Trump Tower で45分間会談、孫社長は、米国のスタートアップ企業などに500億ドルを投資し、5万人の雇用を生みだすと約束した。Trump 氏は会談後、孫社長とともにTrump Tower のロビーに現れ、孫氏を「業界で最もすばらしい男の1人」とたたえた。

2016/12/7  ソフトバンク孫社長、米に500億ドル投資 

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ソフトバンクは2013年に総額約2兆円を投じ Sprint を買収した。

直後からソフトバンクはT-Mobile USの買収を目指して動き出した。

当時、ドイツテレコムは増え続ける投資負担から米国市場からの撤退を模索していた。
2011年3月には、T-Mobile US をAT&Tに390億ドルで売却することで合意した。しかし、AT&Tは競合や規制当局から独禁法違反で提訴され、2011年12月に断念した。

2014年6月、ソフトバンクとドイツテレコムがSprintとT-Mobile US の合併で合意したと報じられた。SprintがT-Mobile USの株を総額320億ドルで買収するということであった。

しかし、同年8月にSprint はT-Mobile USの買収交渉を中断した。米連邦通信委員会(FCC)や米司法省反トラスト局は大手携帯電話会社が4社から3社に減ることは競争上問題だとして難色を示していた。
日本の当局にも承認は難しいとのメッセージを送ってきていたという。

ソフトバンクは買収に向けてロビー活動を続けてきたが、当局の考えを変えることはできなかった。

その後、状況が一変した。

2014年ころまでは、T-Mobile US は親会社のドイツテレコムのお荷物だった。 その後、T-Mobile US は急成長し、稼ぎ頭になった。
ドイツテレコムは、T-Mobile US を成長産業と見るようになり、経営権を引き続き握ることと決めた。

2017年5月にソフトバンクとドイツテレコムは協議を再開した。
(米政府による周波数帯の入札に関連して、携帯通信業界の合併交渉は4月27日まで約1年間禁止されていた。)

ソフトバンクが統合会社において経営権を保有することを希望したが、 ドイツテレコムも統合会社の経営権を要求した。

ソフトバンクは統合に向け、様々なケースを模索した。ドイツテレコムに新会社の筆頭株主の座を譲っても、孫氏が会長につくなどして経営に影響を与え続ける、一度経営権を手放しても数年後に買い戻す――など。ギリギリの駆け引きの結果、2017年10月にはドイツテレコムと統合に向けて大筋合意した。

しかし、ファーストリテイリング の柳井正会長兼社長を含むソフトバンクの取締役会がこれに反対したとされる。Sprintの時価総額はT-Mobile USの時価総額の2/3程度のため、合併では新会社の持株比率はソフトバンクがドイツバンクの下になるため、「会社の規模を拡大しても米携帯市場への影響力が下がってしまえば元も子もない」と結論した。

2017年10月27日の取締役会で、Sprintについて「グループの戦略的に重要な拠点・会社であるか、それとも単なるアセットなのか」という議論を社外取締役を交えて行った結果、5年後から10年後を見据えた共通意見として、経営統合交渉の中止を決めた。世界最大の米国の携帯電話市場を「手放す訳にはいかない」とため、経営権にこだわった。

この時点で孫社長は次のように述べていた。

人間と人間をつなぐ通信ではVerizonやAT&Tが先を行っていて、これらを抜くのは難しい。しかし、IoTを考えるとグループにARM Holdingsを抱える我々はがぜん有利な立場にある。

インターネットはモバイルだけではない。

(ソフトバンクは2016年9月に、英半導体開発大手の ARM Holdings plc を、日本企業の海外買収案件としては過去最大の240億英ポンド(約3兆3千億円)で子会社化した。孫正義社長は、「今後10年でテクノロジー分野において最大級のプレーヤーになる。出資先のテクノロジー企業の発展に寄与することで、情報革命をさらに加速させていく」と述べた。)
 

現在では、孫社長の関心は、AIとIoTとスマートロボットの3つで、通信インフラより、それを活用するサービス分野に重点が移っている。IoTの通信基盤となる5Gの競争を勝ち抜くためには規模の拡大が欠かせないと判断し、経営権をドイツテレコムに譲っても合併を優先したとみられる。

また、統合により、連結決算対象であるSprintは対象から外れる。Sprintの有利子負債は4兆1千億円で、ソフトバンク連結全体の3割近くとなっており、支払金利は年2700億円に上る。
連結から外れることで、有利子負債が一気に減り、格下げ圧力も和らぐ。



2018/5/2   チッソ社長、「水俣病の救済は終わっている」

水俣病の公式確認から62年を迎えた5月1日、水俣病犠牲者慰霊式が熊本県水俣市の「水俣病慰霊の碑」前で営まれた。

参列した原因企業チッソの後藤舜吉社長(83)が式後の取材に対し、水俣病被害者救済法(特措法)に盛り込まれた事業子会社JNCの株の売却要件の一つである「救済の終了」について「異論はあるかもしれないが、私としては救済は終わっている」と述べた。子会社JNCの売却について、「ぜひやりたいと思っています」と述べた。

熊本、鹿児島両県では計1900人近くが患者認定を申請中で、認定や損害賠償を求めた訴訟も各地で続く。

しかし後藤社長は、「救済とは特措法による救済という意味で、あたうかぎり広く救済した。いろいろ紛争がありますけども、(現在も続く訴訟の原告は)その広い範囲の救済にもかからなかった人たちですから」と答えた。

特措法に基づく救済策は2014年に対象者の判定が終わっている。後藤社長の主張によると、特措法による「救済」は終了しており、JNCの株の売却要件の一つである「救済の終了」は充足しているというもの。

後藤氏は、チッソで長く水俣病対応を担当し、社長・会長を経て最高顧問となっていたが、2017年6月の株主総会後の取締役会で社長に復帰した。

JNC売却後にはチッソ本体の清算が可能となるため、補償主体が消えるとの懸念が強い。

現在も患者認定を求める人がおり、訴訟も続いていることから患者・被害者団体からは「加害企業としてあるまじきことだ」と批判の声があがっている。 水俣病不知火患者会の事務局長は「被害者が救済を求めて裁判を続ける現実を見ていない。被害者に対する冒瀆だ」と批判した。水俣病被害者互助会の事務局長は「自分たちが水俣病で何をしたのか理解していない」と述べた。

今回の発言を受け、中川雅治環境相は「現時点で患者認定の申請が出されていて訴訟も提起されている。救済の終了とは言いがたい」との見解を示した。

 

付記 チッソは5月18日、下記の「お詫びと撤回」を発表した。

本年5月1日に開催された水俣病犠牲者慰霊式後の私の発言により、患者の方々、ご家族、ご遺族の方々を始め多くの方々に不安と不快の念を与えてしまいましたことに対し、誠に申し訳なく、深くお詫びを申し上げます。

当社におきましては、水俣病補償を至上の命題に掲げ、その完遂のため必死の努力を傾けて参りました。また、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」に基づく救済措置対象者の判定が終了した旨の発表が平成26年8月29日に環境省からあり、一時金の支払いを誠実に実施しているところでございます。このことから、一定の区切りがついていることを申し上げました。

そのような趣旨でございましたが、私の言葉足らずによりこのような事態となりましたことを深く反省し、「救済の終了」を始めとする皆様に不安と不快の念を与えてしまいました発言を撤回いたします。

生存患者の方々に対する継続補償はもとより、「公害健康被害の補償等に関する法律」の認定や訴訟に基づく新たな補償責任発生の可能性もあることも十分承知しております。これらの責任につきましてもこれまで通り真摯に対応して参る方針に変わりはなく、今後も水俣病補償完遂のため努力を傾けて参ります。

ーーー

チッソは2010年11月12日、水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づき、同社を補償部門と事業部門に分社化する「事業再編計画」の認可を松本龍環境相に申請、12月15日、「事業再編計画」が認可を取得した。事業再編計画では、事業会社の株式の譲渡を進めるものではなく、いかなる場合も認定患者の補償責任完遂、被害者救済を行うとなっている。

2011年1月12日チッソの100%出資で資本金は150百万円の新会社「JNC株式会社」(社名はJapan New Chissoから)が設立され、3月末に親会社チッソから機能材料分野、化学品分野及び加工品分野などの事業継続に必要な土地や設備などの財産譲渡を受けた。

親会社は当面、子会社の株式配当益で補償業務を担い、3年後をめどに株式を他者に全面譲渡、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算するという構想である。

なお、特措法では、「救済の終了」と「市況の好転」をJNC売却の条件としている。

水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法

(事業会社の株式の譲渡)
第十二条 特定事業者は、事業会社の株式の全部又は一部を譲渡しようとするときは、あらかじめ、環境大臣の承認を得なければならない。
2 環境大臣は、前項の承認をしようとするときは、あらかじめ、総務大臣及び財務大臣に協議するとともに、第十七条第二項の指定支給法人にその旨を通知しなければならない。
3 環境大臣は、第十九条第一項の補償賦課金の確保及び公的支援に係る借入金債務の返済の確保その他債権者の保護に関する政府の方針に従って、次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、第一項の株式の譲渡に係る承認をすることができる。
一 第十九条第一項の補償賦課金を株式の譲渡により確保できること。
二 公的支援に係る借入金債務の返済に支障が生じないと見込まれること。
三 第一項の株式の譲渡の後に債権者の一般の利益が害されることがないこと。

第十三条 事業会社の株式の譲渡は、救済の終了及び市況の好転まで、暫時凍結する。

チッソはJNCを売却した後、チッソ本体の清算が可能になる。このため、補償の主体が消えるとの懸念が患者・被害者団体にある。

2010/11/15  チッソ、事業再編計画の認可申請 

2011/1/12  チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社「JNC株式会社」を設立


2018/5/2 Xerox、富士フィルムとの統合見直し、株主のCarl Icahn、Darwin Deason と和解 

Xeroxは5月1日、富士フィルムによる買収提案を見直すと発表した。4月27日の裁判所による買収手続きの一時停止を命じる仮処分を受け、同案に反対している大株主のCarl Icahn、Darwin Deason と和解した。

2018/4/30 富士フイルムの Xerox買収、NYの裁判所が差し止め仮処分

Carl Icahn、Darwin Deasonが提案する6人の取締役候補を受け入れ、Robert J. Keegan会長、Jeff Jacobson CEO ら現在の取締役7人が辞任する。
Jacobson CEOを「ならず者経営者」と呼んだCheryl Krongard を含む 3人は留任する。

新任の取締役のうち、Icahn EnterprisesのCEOのKeith Cozzaが会長に、John Visentin(Senior Advisor to the Chairman of Exela Technologies )が副会長兼CEOに就任する。

新たな取締役会は直ちに、富士フィルムとの関係を終了したり、再編することを含め、株主価値を最大にする戦略的代替案の検討を開始するとしている。


富士フイルムは「Xerox旧経営陣と合意した買収計画の実行を新たな経営陣にも求めていく」とコメントした。「今回の和解を想定していなかった」としており、今後対応策を検討するとみられる。

富士フィルムは、4月27日の判決について、「意外な判決に驚いている。精査して、上訴を含め適切な手段をとっていく」と述べていたが、Xeroxが株主との和解に踏み切り、新たな取締役会がIcahn主導となったため、富士フィルムの買収案がこのまま通る可能性はなくなった。

付記

富士フイルムHDは 5月2日、Xeroxが大株主と合意した和解に対し異議を申し立てた。

米裁判所は4月27日、買収手続きの一時差し止めを命じたが、大株主とXeroxが和解したことで、Xeroxのみ一時差し止めが解除されることになり、同社は他社との交渉を進められることになる。
富士は自社だけ差し止めが続くことを不服としており、認められなければ上訴する。

裁判所は5月3日、和解案の発表から時間が無く、関係者の意見が出そろっていないと指摘。関係各者に書面で改めて意見を提出するよう求めた。決着までにはなお時間がかかる見通し。


2018/5/3  米、パナソニックと子会社に不正会計と賄賂で制裁金

米証券取引委員会(SEC)と米司法省は4月30日、パナソニックと米子会社Panasonic Avionics に対し、海外腐敗行為防止法違反などで、計280.4百万ドルの制裁金を科すと発表した。
両社は支払いに同意している。

パナソニックは、子会社の海外汚職行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act)違反と不正会計違反で、SECに不当利益返還で143百万ドルを支払う。

Panasonic Avionics は司法省に
海外汚職行為防止法違反の罰金として137.4百万ドルを支払う。
Panasonic Avionics はDPA(deferred-prosecution agreement)を結んだ。これは、罪を認め、検察当局と合意した条件を一定期間遵守すれば、検察官は刑事訴追を見送るというもの

パナソニックは2017年2月に、米司法省とSECから調査を受けていると公表。調査に全面協力し、解決に向けた協議を続けていた。
同社は、今回の制裁金の支払いは2017年10〜12月期までに引き当て済みであると発表した。

 

SECは次の点を指摘している。

航空機向けの娯楽システムを提供するPanasonic Avionics は、国営航空会社との7億ドル以上の2つの契約成立のため、国営航空会社の政府職員を自社のコンサルタントとして雇用した。(報道によると中東の国営航空会社)
ほとんど仕事は無しで、無関係の第三者を使って支払うことでその報酬を隠した。SECはこれを賄賂に当たると判断した。(司法省は賄賂とは認定していない。)

パナソニックは2012年第2四半期に、82百万ドル以上の収入を実際より早く計上して、税引前利益と純利益を過大に表示した。これを行うため、Panasonic Avionics は航空会社との契約を実際より早い時期に遡及し、監査法人に誤った情報を与えた。
(発表文では明確でないが、Panasonic Avionicsが航空会社との契約を実際より早い時期に遡及した結果、パナソニックの連結決算で税引前利益と純利益が過大に表示されたということかも分からない。)

パナソニックでは十分な内部監査ができておらず、
Panasonic Avionics が雇ったコンサルタントや、中東とアジアの国営航空会社などとのビジネスに使う代理店などに関する正確な帳簿をつけていない。

パナソニックは、Securities Exchange Act of 1934 の賄賂防止、不正防止、帳簿記録、内部監査、報告などの規定に違反していることを認め、不当利益返還で約143百万ドル支払というSECの命令に同意した。


司法省の発表は次の通り。

Panasonic Avionics は航空機の娯楽システムや通信サービスを設計、販売している。

同社は、不適切な目的のためのコンサルタント雇用に関し、意図的にパナソニックの帳簿や記録を胡麻化した。

コンサルタントはほとんど仕事はしないが、第三者を通して雇用され、 パナソニックやPanasonic Avionicsの誰も管理しないまま、Panasonic Avionicsのある役員が完全に管理する予算から報酬を支払われた。

そのうちの一人は、国営航空会社の社員で、Panasonic Avionics との契約改正交渉の担当であった。6年以上にわたる期間に875千ドルが支払われ、Panasonic Avionicsはそのコンサルタントが関与した契約で92百万ドル以上の利益を得た。

これらの費用はコンサルタントフィとして帳簿に計上され、パナソニックは販売費一般管理費に計上した。

Panasonic Avionicsはまた、アジア地区の社員が会社の基準に反する販売代理店を使うことを隠していたことを認めた。会社はこれらの代理店との関係を断ったが、その社員は他社の下請けとして使うことで引き続き使っていた。少なくとも13の下請けに7百万ドル以上を払い、これを隠していた。

 

Panasonic Avionics は海外汚職行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act)違反で137.4百万ドルを支払うことに同意した。 調査に協力したため、この額はガイドラインから20%引きとなっている。

Panasonic Avionics はDPA(deferred-prosecution agreement)を結んだ。罪を認め、検察当局と合意した条件を一定期間遵守すれば、検察官は刑事訴追を見送るというもの

親会社のパナソニックの帳簿・記録を意図して胡麻化したことに対するもので、一環として137,403,812ドルの罰金を支払う。今後も調査に協力し、内部監査を高め、最低2年間、第三者によるコンプライアンスに関するモニタリングを受ける。さらにその後1年間、コンプライアンスに関する自主報告を 司法省に対して行う。

(SECは賄賂と認定したが、司法省は賄賂とは認定せず、親会社の記録を意図的に胡麻化したことへの罰金としている。)

パナソニックは、Panasonic Avionicsの企業風土の改革に向け、幅広いコンプライアンスおよび内部統制の強化を監督する。これらの措置には、Panasonic Avionics経営陣の刷新および第三者のエージェントやコンサルタント起用の削減や管理強化が含まれているとしている。

ーーー

過去に日本企業が海外汚職行為防止法 (Foreign Corrupt Practices Act)違反で摘発された例は次の通り。

1) ブリヂストン マリーンホース国際カルテル事件

米司法省は2007年5月2日、原油の海上輸送に使うマリンホースの販売で国際的な価格カルテルに関与した疑いがあるとして日欧企業の幹部8人を逮捕したと発表した。
逮捕されたのは日本のブリヂストンの1名と英国のコンサルタント、英社の2名、仏社の2名、伊2社の各1名の
合計8名。

ブリヂストンは2008年2月12日、マリンホース事業で中南米や東南アジアなどの外国公務員に対する不適切な支払いが少なくとも1億5千万円あったと発表した。販売を仲介する海外コンサルタントに支払った手数料の上乗せ分が複数国の公務員らに賄賂として渡った可能性があるというもので、不正競争防止法違反(外国公務員への賄賂)にあたる恐れがある。

ブリヂストンは2011年9月16日、米司法省と司法取引をしたと発表した。有罪を認め、罰金2800万ドルを払うことで合意した。

司法省はブリヂストンの調査への協力を評価し、罰金を減額した。当初報道では、Sherman Act(独禁法)違反で1億ドル、Foreign Corrupt Practices Act違反で50万ドルとされていた。

2007/12/18 マリーンホース国際カルテル事件のその後

米司法省は2008年12月10日、ブリヂストン社員が有罪を認め、2年の禁固刑と8万ドルの罰金を課せられたと発表した。

カルテルへの参加のほか、ラテンアメリカその他で公務員に不適切な支払いをした連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)違反でも訴えられていた。FCPA違反は彼のみ。

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

2) 日立製作所 南ア発電所

米証券取引委員会は2015年9月28日、発電設備の受注にからんで南アフリカの与党アフリカ民族会議側に不適切な支出をしたとして、日立製作所が民事制裁金1900万ドルを支払うと発表した。
日立は、米国の海外腐敗行為防止法に違反したとされたが、SECの主張を肯定も否定もせず和解に応じた。

SECによると、日立は2005年に現地法人を南アフリカに設立し、株式の25%をアフリカ民族会議と関係のある企業に約19万ドルで売却した。
日立はその後、火力発電所のボイラー納入で2件の契約を受注し、アフリカ民族会議側企業に配当名目で約500万ドル、コンサルタント料として成功報酬約100万ドルを払った。
2014年2月に現地法人の株を約440万ドルで買い戻しており、企業は合計で投資額の50倍を超える金額を受け取ったことになるという。

3) オリンパス 中南米医療

オリンパスは2016年2月29日、米国子会社 Olympus Corp. of Americasが米国で医師にキックバックを提供した件と、Olympus Latin Americasとブラジル子会社が中南米の当局者に賄賂を払ったとされる問題で、罰金と制裁金を支払うことで合意した。

Olympus Corp. of Americasが米国で医師にキックバックを提供した反キックバック法及び米国虚偽請求取締法違反の件で、罰金・制裁金として、612百万ドルと金利11.2百万ドル。

Olympus Latin AmericasとOlympus Optical do Brasilが中南米の当局者に賄賂を支払っていたとされる海外腐敗行為防止法違反の件で、罰金22.8百万ドル。

 

 


2018/5/4 Saudi Aramco、初の女性取締役を選任

Saudi Aramco は4月29日、新取締役5名を発表した。サウジ政府が指名した。3名が退任する。

  H.E. Khalid A. Al-Falih Chairman、サウジ エネルギー大臣
  H.E. Dr. Ibrahim A. Al-Assaf Vice Chairman
  Mr. Amin H. Nasser President and CEO
新任 H.E. Mohammed A. Al Jadaan サウジ財務大臣
新任 H.E. Mohammed M. Al-Tuwaijri サウジ経済企画大臣
  H.E. Yasir O. Al-Rumayyan 元サウジ財務大臣、サウジ PIF Managing Director
ソフトバンク取締役
  Sir Mark Moody-Stuart Royal Dutch Shell 元会長、国連財団Global Compact 会長
  Mr. Andrew F. J. Gould 英国BG Group 会長(元 Schlumberger会長・CEO)
新任 Mr. Peter L. Cella Chevron Philips Chemical 元社長 (2011-2017)
新任 Ms. Lynn Laverty Elsenhans Sunoco Inc 元社長・CEO (2008-2012)
新任 Mr. Andrew N. Liveris (2018/7/1 就任) DowDuPont Director を2018/7/1に退任
     
退任 H.E. Dr. Majid Al-Moneef サウジ王室アドバイザー
退任 H.E. Dr. Khaled S. Al-Sultan  King Fahd 石油鉱物資源大学 学長
退任 Mr. Peter Woicke 元世銀理事・IFC副総裁

本年下期か2019年初めに5%の上場を準備しているSaudi Aramco は、初めて女性を取締役に選任した。

2008年から2012年まで米国のSunoco Inc.の会長兼CEOを務めたLynn Laverty Elsenhans 女史である。
それ以前は、Royal Dutch Shellに28年以上勤務し、最後はExecutive VP of global manufacturing であった。
2017年7月まで Baker Hughesの取締役であった。現在、GlaxoSmithKlineの取締役でもある。

他に、下記の人々が選任された。

・サウジの財務大臣と経済企画大臣

・2011年から2017年までChevron Philips Chemicalの社長を務めた Peter L. Cella氏

・DowDuPont のAndrew N. Liveris 氏

DowDuPontAndrew N. Liveris 会長兼CEOは2018年4月1日付で退任した。7月1日には同社の取締役からも退任する。
DowDuPont
の取締役退任の7月1日付で SaudiAramco取締役に就任する。

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サウジでは女性が大企業の取締役になっているのは極く少数であるが、最近は変わりつつある。

2004年にLubna Olayan (Olayan 財閥の一員)が Saudi Hollandi Bank(現在のAlawwal Bank )の取締役に就いた。彼女は2006年に最大の鉱山会社 Ma’aden の取締役にも選ばれている。

昨年には、サウジ証券取引所がSarah Al-Suhaimi を女性として初の会長に選任した。

ムハンマド皇太子はサウジの改革を進めている。

サウジでは世界で唯一、女性の自動車運転が禁止されていたが、2017年9月27日にサルマン国王が女性に自動車の運転を許可する勅令を出した。

 


2018/5/4 SaudiAramcoの上場問題 

サウジアラビアはSaudiAramco の新規株式公開(IPO)を巡る積極姿勢を後退させている。

当面、海外での上場をやめ、サウジ証券取引所(Tadawul)のみで上場する方向で進んでいる。年内とされていたが、2019年4月になると報道されている。

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サウジアラビア政府は2018年1月1日付で、Saudi Aramcoの企業形態を株式売買が可能な Joint Stock Companyに変更させた。
これにより、サウジ政府以外の投資家がAramco の株主になることができる。

Aramco は2018年下期にも株式の5%を内外市場で公開する予定で、上場する市場(複数)については、New York、London、Tokyo、Hong Kong などが候補として挙がっていた。
その後、国外上場候補をNew York、London、Hong Kong の3か所に絞り込んだと報じられた。

2018/1/11 Saudi Aramco、上場に備え企業形態を変更 

しかし、その後、法的リスクや、海外の取引所が企業に求める情報開示の基準が厳しいことなどを懸念し、先ず自国の証券取引所に限定する方針だと報じられている。

ムハンマド皇太子は3月20日、トランプ米大統領とホワイトハウスで会談し、Aramco の上場についても協議したとみられるが、具体的な進展はなかったとされる。

エネルギー産業鉱物資源相はテレビのインタビューで、Aramco のニューヨーク上場の条件や訴訟を巡るリスクに懸念を表明した。
ニューヨーク市が、ExxonMobil やBPなどの国際石油会社に対し「気候変動の原因を招いた」として提訴したことを具体例に挙げた。

ニューヨーク市は2018年1月10日、ExxonMobil、Chevron、BP、Shell、ConocoPhillips の5社を提訴すると発表した。
5社が気候変動の一因となっており、過去及び将来ニューヨーク市に財政的負担を強いるとし、港湾保護、上下水設備の改善、気候変動緩和、公共医療活動等に費やす数十億米ドルの補償を求める。
同市はすでに、海面上昇、強大な嵐、気温上昇対策のために200億米ドル以上を費やしている。

また、米国では2016年に米同時テロに関与した疑いがある外国政府に、遺族らが損害賠償を請求する訴えを起こすことができる「テロ支援者制裁法(JASTA)」が成立、本年3月に米国の判事がサウジ政府の要求を却下してサウジ政府を被告とする裁判が開始されることとなった。

サウジ政府が最大株主になるアラムコは、資産差し押さえなどの潜在的なリスクにさらされる。

2016/10/1 米同時テロ遺族のサウジ提訴法案、大統領拒否権を覆し成立

2018/4/6 サウジ政府を被告とする9.11同時多発テロ訴訟、裁判開始へ

上場会社になると、Aramco の確認埋蔵量などのデータを公表する必要が出るが、これに対する反発も根強い。

 


2018/5/4 Xerox、株主との和解を撤回、現取締役会メンバー全員が留任 

Xeroxは5月3日、株主との和解を撤回したと発表した。

 

Xeroxは5月1日、富士フィルムによる買収提案を見直すと発表した。4月27日の裁判所による買収手続きの一時停止を命じる仮処分を受け、同案に反対している大株主のCarl Icahn、Darwin Deason と和解した。

Carl Icahn、Darwin Deasonが提案する6人の取締役候補を受け入れ、Robert J. Keegan会長、Jeff Jacobson CEO ら現在の取締役7人が辞任する。

新たな取締役会は直ちに、富士フィルムとの関係を終了したり、再編することを含め、株主価値を最大にする戦略的代替案の検討を開始するとしている。

2018/5/2 Xerox、富士フィルムとの統合見直し、株主のCarl Icahn、Darwin Deason と和解  

5月1日のXeroxによる株主との和解を受け、富士フイルムHDは 5月2日、Xeroxが大株主と合意した和解に対し異議を申し立てた。

これを受け、 裁判所は5月3日聴聞を開いたが、和解案の発表から時間が無く、関係者の意見が出そろっていないと指摘。関係各者に書面で改めて意見を提出するよう求めた。決着までにはなお時間がかかる見通し。

今回の発表によると、上記の和解は、裁判所が承認し、その上で株主のDarwin DeasonがXeroxを相手取った訴訟を取り下げることを条件としていたが、 裁判所が承認を保留したため、5月3日午後8時の期限までに取り下げられず、失効した。

この結果、Robert J. Keegan会長、Jeff Jacobson CEO ら現在の取締役会と経営陣は留任する。引き続き財務と事業の改善に注力するとしている。

付記

Xerox は5月4日、裁判所が4月27日に下した買収手続きの差し止め命令に対し、異議申し立てをしたと発表した。
「差し止め命令はニューヨークの法律に反する。買収提案を認めるかどうかは裁判所ではなく、Xerox の株主が決めるものだ」と主張し、裁判所による差し止めの無効を訴えた。

富士フィルムホールディングスも同日、異議申し立てをした。

付記

米ニューヨーク州の裁判所は、上訴の審理を9月から始めると決めた。
審理までは差し止め命令が継続されるため、富士フイルムはゼロックスと買収手続きを進められない。

付記

Xeroxは5月9日、株主へのレターを発表した。

これまでの経緯を説明、裁判所からは富士フィルムと代替案の交渉をすることは出来るとの説明を受けており、富士フィルムと交渉するとしている。

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Xeroxが株主との和解を取り消しても、裁判所が4月27日に出した、Xeroxに対して買収手続きの一時停止を命じる仮処分は生きている。

株主に不利益が生じるのを防ぐため、企業側の買収手続きを暫定的に差し止めるもので、Xeroxは株主が満足する買収条件に変更するか、30日以内に上訴して命令取り消しを勝ち取る必要がある。

判事はまた、Xeroxが取締役候補の指名を制限するのを止めさせることを求めた要望を承認した。IcahnとDeasonは6月と想定される次の株主総会で取締役候補を指名できる。

2018/4/30 富士フイルムの Xerox買収、NYの裁判所が差し止め仮処分 

和解を取り消したことで、大株主のCarl Icahn、Darwin Deasonとの関係は悪化する。

上訴しても、命令取り消しを勝ち取れるかどうか疑問であり、仮に命令取り消しを勝ち取ったとしても、双方の取締役候補についての取締役選任、富士フィルムによるXerox買収契約の承認を巡り、委任状争奪戦になる可能性がある。

 

 



2018/5/5  ドイツ政府、中国企業によるドイツの航空・自動車部品メーカー買収を承認
ドイツのMinistry of Economic Affairs and Energyは4月26日、中国の安泰科技(Advanced Technology & Materials:AT&M) によるCOTESA GmbHの買収を承認した。

COTESAはドイツ・ザクセン州に本社があり、宇宙航空と自動車の分野で質の高い炭素繊維複合材料部品を供給しており、顧客にはエアバスやボーイングが名前を連ねる。

安泰科技中国国有の中国鋼研科技集団(China Iron & Steel Research Institute Group:CISRI) の子会社で、新金属材料を主要業務と位置づけ、金属磁性材料、粉末冶金、溶接材料、ダイヤモンド工具、高速工具鋼、先端エネルギー材料という6つの分野で活動している。

2017年9月に、AT&MによるCOTESA買収で合意された。

手続き上は中国の明徳投資(Interity Capital Partners)と QFAT Investmentが共同運営する新素材関連ファンドがCOTESAを買収するもので、買収後にはこのファンドに投資する安泰科技(AT&M)が中国市場での製造・販売に協力することとされた。買収額は1億〜2億ユーロと報じられた。

狙いは、中国の国有航空機メーカーである中国商用飛機(COMAC)に COTESA製の部品を供給することとされた。

これに対し、2017年12月にMinistry of Economic Affairs and Energyが介入した。ドイツの法律に合致するかどうかを調査するとした。

ドイツ政府は2017年、ハイテク部門での中国企業のM&A拡大に対する懸念が高まる中、中国企業による独企業の買収を阻止する為の政府権限拡大に乗り出した。

背景には、2016年に同国最大の産業ロボットメーカーであるKUKAが、中国家電メーカーの美的集団に45億ユーロで買収されたことにある。

同年8月にはドイツ政府は「買収は安全保障に危険は及ぼさない」として不介入を表明、米政府も同年12月31日に認可した。

しかし、ドイツの先進技術がアジア企業に奪われることへの懸念が一気に高まり、それ以来、類似の取引に対する調査が大幅に厳格化された。

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半導体製造装置メーカーのドイツのAixtron は 2016年5月23日、中国の福建芯片投資基金 (FGC)が同社を買収することで合意したと発表した。

Aixtron は1983年創業で、ドイツのヘルツォーゲンラートに本社を置く。買収手続き完了後も、ヘルツォーゲンラートの本社と技術拠点、および英国のケンブリッジと米国カリフォルニア州 Sunnyvale にある技術拠点を維持する。

これに関し、オバマ米大統領は12月2日、Aixtron のカリフォルニア州の子会社 Aixtron Inc の買収を禁止すると発表した。軍事利用が可能な技術が対象に含まれ、米国の安全保障の脅威になると判断した。米財務省は、今回の買収に関し「中国政府が資金調達で支援している」と指摘した。

対米外国投資委員会(CFIUS)がAixtron の技術が軍事用途に使われる可能性があると判断しており、米子会社買収が「緩和措置を講じても解決できない安全保障上のリスクをもたらす」と強調した。

ドイツ政府は9月8日に買収を承認しているが、10月21日にこの承認を取り消し、買収の審査手続きを再開すると発表した。

福建芯片投資基金は12月8日、独 Aixtron の買収取り止めを発表した。米子会社を除いた買収も検討したが、戦略拠点の米子会社が除外され、独政府の認可の行方も不透明なことから買収を断念した。

2016/12/7 米政府、中国企業による独社の米子会社買収を禁止 

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ドイツの対外貿易に関する法律は、EU域外の企業がドイツ企業の株式の25%超を取得しようとする場合、それが公の秩序や国家の安全を脅かすものなら政府が阻止できるというものだった。
主に防衛部門の取引に適用されていた。

その後2017年7月の改正で、同法の適用範囲は先端防衛技術産業に加え、電力、水道、病院、交通等の基幹インフラに携わる企業にまで拡大された。
政府が買収を調査できる期間も、改正前の2ヵ月から最大4ヵ月に拡大された。

EUの欧州委員会は2017年、国家安全保障の観点から海外企業による投資について審査を厳格化する計画を打ち出し、ドイツはこれを支持している。

今回、審査が終わり、買収は承認された。中国人投資家によるコア技術をめぐる買収案件では、2017年7月の法律改正後で初めてのケースである。

 


2018/5/7 米中貿易協議 問題先送り

貿易摩擦を巡る米国と中国の初の公式交渉が5月3、4日の2日間、北京の釣魚台迎賓館で行われた。
米国側は
ムニューシン財務長官、ライトハイザー通商代表部(USTR)代表らが、中国側は習近平国家主席の側近で経済ブレーンの劉鶴副首相らが出席した。

米国は2020年までに対中赤字を2千億ドル削減するよう要求し、従来の1千億ドルから上積みした。中国は対中輸出制限の緩和などを求めた。

投資分野、知財分野でも応酬があった。

Made In China 2025計画などハイテク分野でも双方の主張は隔たりが大きい。新華社も「一部の問題は意見の食い違いが大きい」と認めた。

米国側の要求は強硬すぎ、貿易戦争の回避は綱渡りで交渉は長期化の様相を呈してきた。今後、四半期ごとにレビュー のための会合を持つ。

ホワイトハウスは5月4日、「米中の経済関係の調整について率直に議論した」とする声明を発表した。トランプ政権内には「(米中の問題に)即座に対処しなければいけないとの総意がある」と指摘し、報告を受けたトランプ大統領が次の行動を決断するとしている。

米国は500億ドル分の中国製品に25%の追加関税をかける制裁案を既に公表済み。

対抗して中国も、米国産の大豆やその他の農産物、自動車、化学品、飛行機など計106品目に25%の関税をかける方針を発表した。
中国は2017年に米国から約3300万トンの大豆を輸入し、米国の輸出先の6割を中国が占める。トランプ大統領の票田の農業州に揺さぶりをかける。

2018/4/5 USTR、通商法301条に基づく対中制裁関税案を発表、中国も対抗措置を発表

中国の対抗策を受け、トランプ米大統領は4月5日、新たに1000億ドル規模の中国製品を対象にした追加関税を検討する方針を表明した。

いずれも実施時期は決めていない。

米国が制裁を実施すると、貿易戦争となる。

 

米国の要求とそれに対する中国の反応は次の通り。

1)米国の貿易赤字問題

(米国)

対中赤字(米側統計で2017年で3757億ドル) を、2019年6月までに2018年比で1千億ドル、2020年に同 2千億ドルの削減

* 不思議なことに中国の統計では2017年の対米貿易黒字は2758億ドルで、1千億ドルの差がある。この理由を解明するのが先ではないか。

現在平均10%の関税を2020年までに米国と同水準(“noncritical sectors"で平均3.5%)に引き下げ

検疫強化や関税上げなどの報復措置を控えること。

サービス、農業分野の市場開放

(中国

ハイテク製品の対中輸出制限緩和

* 中国商務部は本年1月には、ハイテク製品の対中輸出を制限する米国の規制が米国の対中貿易赤字の原因になっているとの認識を示した。
規制を緩めれば米国の対中輸出が増え、貿易不均衡は縮小するとの見通しを示した。対中赤字が3割超減るとの試算もある。

米国による中国製航空機の安全検査で差別的な取り扱いをしないこと。

世界貿易機関(WTO)協定の「市場経済国」に認定すること。

(中国側は、輸出制限緩和などを条件に現在25%の自動車関税を引き下げる。)

2)投資分野

(米国)

外資の投資禁止項目だけ示す「ネガティブリスト」を7月までに導入すること。
米国がリストを調査して米投資家を阻む内容があれば速やかな是正を求める。

機密の(sensitive) 技術について、中国勢の投資を米国が制限しても、報復をしないこと。

(中国)

米国での投資で中国企業を差別的に取り扱わないこと。

3)知財保護

(米国)

米国でのサイバー攻撃で企業秘密を盗む行為をやめるよう、直ちに、検証可能な手段を取る。

知財保護の強化

海外からの技術移転で中国企業に有利な条例を2018年末までに廃止。

(中国)

通商法301条による知的財産侵害の調査を今後、一切しないこと。

米国による中興通訊(ZTE)の制裁緩和

4)中国のMade In China 2025計画 

(米国)

中国のMade In China 2025計画で、全ての政府補助金の廃止

中国のMade In China 2025計画からの輸入品を米国が制限するのと認めること。

 

Made In China 2025計画は、2025年までに世界の製造業大国となり、建国100周年の2049年までに製造強国の先頭グループになるという計画である。(後記)

巨額の補助金で自国の企業を育てるとみられ、米国のIT企業などは、半導体などの基幹部品の自給で米企業が締め出されかねないとの懸念を持つ。

米国は交渉で中国2025の補助金の即時停止を求めたが、中国には事実上の計画停止を意味し、中国商務省の関係者は「絶対に受け入れられない」と憤る。

ーーー

中国のMade In China 2025(中国製造2025)計画は、2014年から中国工業情報化部、国家発展改革委員会、科技部、財務部、中国工程院など20の政府機関が製造業振興の長期戦略プランを策定し,2015年5月19日,国務院より「中国製造2025」が式に公布された。製造強国になるという戦略目標の実現を図るもの。

2015年までに製造業規模世界第一位、世界の製造業大国になり、
ステップ1で、2025年までに、格差縮小、十点突破で製造強国の仲間入りを果たし,
ステップ2で、2035年までに工業化の実現により製造強国の中位レベルに到達する。
ステップ3で、建国100周年の2049年までにイノベーション先導で製造強国の先頭グループに入るとの目標を掲げている。


2018/5/8  米連邦準備理事会、6月利上げ示唆 
 

米連邦準備理事会(FRB)は5月2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の現状維持を決め、追加利上げを見送った。

短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は、投票メンバー8人の全員一致で年1.50〜1.75%のまま据え置いた。

今回は金融引き締めの影響を見極めるため、政策変更を見送った。
しかし、「さらなる利上げが正当化される」と言及し、早ければ6月中旬の次回会合で追加利上げに踏み切る考えを示唆した。

FRBは3月31日の前回会合で、3カ月ぶりの利上げに踏み切ったばかり。

付記 FRBは6月13日、FF金利の誘導目標を引き上げ、1.75─2.00%に引き上げることを決定した。
     今年についてはあと2回、合計4回の利上げを予測しているとした。

 

声明文では「雇用情勢は拡大が続き、経済活動も緩やかに上向いている」と米景気の動向に自信をのぞかせた。

第1四半期の実質経済成長率は2.3%と、巡航速度である潜在成長率を上回る水準を維持 した。

雇用も好調で、失業率も17年4カ月ぶりに3%台まで下がっ た。

伸び悩んでいた物価については「2%に近づいてきた」と情勢判断を引き上げた。
FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は、3月の上昇率が1年ぶりに目標の2%に到達しており、食品・エネルギーを除く「コア指数」も1.9%に高まっている。

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米国市場で警戒されていた長期金利(10年物国債利回り)は節目とされていた3%を突破した。

一方、日本は日銀が金融緩和の一環で10年物国債利回りを0%程度に抑える政策を行っている。
 

日米金利差の拡大を通じて円安・ドル高になりやすく、対日貿易赤字で攻撃を続けるトランプ大統領が問題視する恐れがある。

 



2018/5/9   武田薬品、シャイアー買収で合意

武田薬品工業は5月8日、アイルランド製薬大手Shire plc を総額約460億ポンド(約6兆8千億円)で、完全子会社化することで合意したと発表した。

Shire 株主は株式1株当たり30.33米ドルの現金、ならびに武田新株 0.839株(又は1.678の武田ADR)を受領する権利を有する。

2018年4月23日における武田株式の終値4,923円並びに同日の為替レート 1ポンド=151.51円=1.3945ドルに基づくと、1株当たりの価値は49.01ポンドになり、総額は約460億ポンドとなる。

これは、4月24日の4回目の提案のままである。

1回目は3月29日で、1株当たり44ポンド(武田株式28ポンド + 現金16ポンド)、合計約410億ポンド(574億ドル) 
2回目は4月11日で、1株当たり45.50ポンド(武田株式28.75ポンド + 現金16.75ポンド)、合計約430億ポンド(602億ドル)  
3回目は4月13日で、1株当たり46.50ポンド(武田株式28.75ポンド + 現金17.75ポンド)、合計約440億ポンド(616億ドル) 
4回目は4月24日で、1株当たり49.01ポンド(武田株式 0.839株=27.26ポンド + 現金US$30.33 =21.75ポンド)、合計約460億ポンド(641.5億ドル

2018/4/26 武田薬品、Shire 買収で4回目の提案、詰めの協議へ 

総額約460億ポンド(約6兆8千億円)のうち、株式で3.78兆円(27.26 / 49.01 )、現金で3.02兆円となる。

武田薬品は既に、三井住友銀行と三菱UFJ銀行、JPモルガン・チェース・バンクの3行から総額308.5億ドル(約3兆3600億円)のブリッジローン契約を締結している。

付記 JPモルガン・チェースが幹事で1/2、三井住友と三菱UFJが1/4ずつ。みずほ銀行は外された。(武田株を売却し、疎遠になったと。)

付記

武田薬品は6月8日、JP Morgan Chase Bank、三井住友銀行、三菱UFJ銀行及びみずほ銀行を含むトップクラスのグローバル金融機関と、総借入限度額75億米国ドルの “Term Loan Credit Agreement”を締結した。資金調達の過半は、日本の金融機関からによる。5年のローンで、ブリッジクレジット契約分を減額する。

付記

武田薬品は10月18日、日本の公取委から無条件の承認を得たと発表した。米国、中国、ブラジルは既に承認を得ており、EUの承認待ち。
 

付記 

EUは武田の潰瘍性大腸炎治療剤「エンタイビオ 」がShireのSHP647 と競合することに懸念を示していたが、武田はSHP647 を売却することを決めたため、承認を得るのは確実となった。

武田は12月5日に臨時株主総会を開き、買収の是非を諮る。

なお、本件の費用が10億ドルに近いことが明らかになった。

Takeda 733.4 million $ financing arrangements (386.6)、advice (111.7 )、lawyer (44.2)、
accounting advice (24.3)、PR consultant (6.3) 、
米国上場とShire上場廃止関連費用 (157)
Shire 216.5  〜 229.5 advice (150)、lawyer (70)
Total 949.9〜 962.9  

 

両社の取締役会によって承認されている。両社とも臨時株主総会を開き、株主の賛成を得て、2019年上期(1〜6月期)に完了する予定としている。

本買収の完了により、両社の株主はそれぞれ、統合後の会社の約50%を保有することになる。

武田薬品では、本買収のハイライトとして以下を挙げている。 

  • 消化器系疾患及びニューロサイエンスにおいて相互に補完するとともに、希少疾患と血漿分画製剤においてリーディングカンパニーとしてのポジションを獲得することで、オンコロジーやワクチンにおける強みを補完

付記 Shireは4月16日、オンコロジー(癌)事業を24億ドルでServierに売却した。

  • 日本に本社を置く、研究開発型グローバルバイオ医薬品企業のリーディングカンパニーが誕生し、今後の発展を促進する魅力的な地理的拠点と規模を確立
     
  • 強固かつモダリティの多様な、高度に補完的なパイプラインを創出し、画期的なイノベーションにフォーカスした研究開発体制を強化
     
  • 武田のキャッシュフロープロファイルが向上し、大幅な年間コストシナジーの実現や充実した株主還元実施を確信
     
  • 武田の変革が、Shire の統合を成功に導き、統合後の会社の価値を最大化

両社を合算すれば売上高の合計は3兆円超となり、世界の製薬業界のトップ10の一角に躍り出ることになる。

但し、武田薬品は2017年9月末時点で1兆1千億円の有利子負債を抱え、Shireも2兆円程度の負債がある。買収で3兆円程度の借り入れを行うことで、統合後に負債が6兆円程度に膨らむ。

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英国法上、上場会社を完全子会社化するには、公開買付で大部分を取得し、残り株を買い取る(Squeeze Out)方法と、Scheme of arrangement を使う方法がある。

前者の場合、TOBで90%以上を取得した場合に限り、Squeeze Outの提案ができる。TOBでは3か月以上かかるとされる。

後者の場合は、議決に参加した株主の過半数が賛成し、賛成株主が75%以上を有している場合に限り、裁判所が認可する。最短で2か月とされる。 株主総会で賛成を得られない場合、改めてTOBをすすめることができる。

今回、後者を使うとされ、Shire の株主総会では75%以上の賛成票が必要である。

Shireの取締役会は 、賛成を得やすくするため現金の比率を増やすよう要請していたとされるが、当初案のままとなった。

 

問題は武田薬品の株主総会である。

今回、3兆7800億円の新株発行で、時価総額(3兆4800億円)を上回り、武田株主にとり株式が1/2 以下に希薄化する。
買収発表後、武田の株価は1000円以上 下落しており、株主の賛成を得るハードルは高いと見られる。

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AnswersNews(2018/04/27)による2017年の製薬会社売上高トップ10は下記の通り。

      億ドル
Roche * スイス 543.65
2 Pfizer 525.46
3 Novartis スイス 491.09
4 Merck 401.22
5 Sanofi * 396.12
6 GlaxoSmithKline * 389.40
7 Johnson & Johnson 362.56
8 AbbVie 282.16
9 Gilead Sciences 261.07
10 Eli Lilly 228.71

 * は2017年平均レートによる米ドル換算

武田薬品は売上高1.75兆円(2018年3月期見込み)で19位、Shireは1.70兆円(2017年12月期)で20位で、単純合算すると3.45兆円で、世界8位になる。

 

 


2018/5/10 トランプ大統領、イラン核合意離脱表明  
 

トランプ米大統領は5月8日、欧米など6カ国とイランが結んだ核合意から離脱すると表明した。核合意に基づく対イラン経済制裁を再開する大統領令にも署名した。

その一方で、イラン核問題の包括的解決は同盟国と協力するとし、新合意に関しイランと交渉の用意があるとした。

 

付記

イラン政府は7月16日、トランプ米政権がイラン核合意の離脱に伴い制裁を再開するのは国際法上違法だとして、国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)に提訴した。

訴状の中で、イランは米国に「制裁による威嚇の即時停止」を要求、制裁発動した場合は賠償請求すると主張している。

トランプ政権は5月に合意離脱を表明し、8月以降、対イラン制裁を順次再開する方針を示している。

 

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イランの核開発をめぐり、米・中・露・英・仏・独(P5プラス1=国連常任理事国5か国+ドイツ)とイランは2015年7月14日、「包括的共同作業計画」(Joint comprehensive Plan aof Action = JCPOA)に合意した。

イランは今後10年以上にわたり核開発を大幅に制限し、軍事施設への査察も条件付きで受け入れ 、米欧や国連は原油禁輸や金融取引制限などの制裁を解除する。

イランは下記を実施する。

Natanz濃縮施設の濃縮ウランの濃縮度低減(20%超→3.67%)、低濃縮ウラン貯蔵量削減(10t→3.67%換算300kg)、
遠心分離機の数の削減(19,000→6104)

Fordow濃縮施設の活動を停止

Arak重水炉の設計変更、兵器級プルトニウム製造の禁止

https://www.jaea.go.jp/04/iscn/archive/nptrend/nptrend_01-06.pdf
 

2016年1月16日、国際原子力機関(IAEA)はイランが核濃縮に必要な遠心分離器などを大幅に削減したことを確認したと発表した。

これを受けてイランと6カ国は同日、合意の履行を宣言し、米欧諸国はイランに対する経済制裁を解除する手続きに入った。

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トランプ大統領は大統領選当時から、オバマ政権時代のイラン核合意を「史上最悪の合意」と酷評し、離脱・破棄の考えを強調していた。

トランプ大統領は 2017年9月、イランが弾道ミサイルの開発を続けていること(合意には弾道ミサイル開発の制限などが含まれていない が、大統領はその点を批判している)、過去に核兵器の起爆装置の製造が試みられた疑いのある軍事施設について、イランがIAEAの査察を受け入れていない ことなどを批判、合意からの離脱にも言及した。

一方、IAEAは、濃縮ウラン総量などで規定違反がなかったと認定 している。米国が問題視する「軍事施設の査察」については、合意文書に明記されておらず、明確な合意違反といえない。

今回、トランプ大統領は、核合意は「巨大な絵空事だ」と批判した。発言要旨は次の通り。

イラン政権はテロに資金提供する主導的な国家だ。

2015年に米前政権はイランの核開発計画に関して他国と歩調を合わせて合意に至った。理論的には「イラン合意」と呼ばれるものは米国とその同盟国をイランの核爆弾の狂気から守るためのものだった。

実際には、この合意によりイランはウランの濃縮を続け、長期的には核戦争の勃発間際に至るようなことを許してしまった。
合意は経済制裁を解除し、代わりに政権の核活動に非常に弱い制限しか与えなかった。

米国が最大の影響力を持てたときに、この破滅的な合意はイラン政権に数十億ドル、その一部は現金を手渡したことになる。

今日、このイランの誓約は虚偽である確証が得られた。先週、イスラエルはイランが長い間隠匿していた諜報記録を公表し、イラン政権がこれまで核兵器を開発していた事実があると結論づけた。

イラン合意は根幹から欠陥があり、我々が行動を起こさなければテロ支援国家が世界で最も危険な兵器を手にすることになるだろう。従って米国はイランとの核合意から離脱することを表明する。

数カ月以内に、イランに対する制裁を再開するための大統領覚書に署名する。最高水準の経済制裁を制定する予定だ。イランが核兵器を取得することを支援する国も米国から厳しい制裁を受ける。

イランとの合意から脱退するにあたり、米国は同盟国と共にイランの核脅威に対する包括的で持続的な解決策に取り組んでいく。同盟国と共に取り組んでいく。これはイランの弾道ミサイルの脅威の除去、世界的テロ活動の停止、中東における威嚇的な行動の防止が含まれる。

これに対し、オバマ前政権まで米国務省でイラン核問題にかかわったトーマス・カントリーマン前国務次官代行は次の通り述べている。(毎日新聞)

イランとの核合意の結果、イランのウラン濃縮活動は9割減となった。IAEAの監視活動により、イランの核兵器取得を恒久的に防ぐことも可能となった。合意は十分に機能している状態にある。

濃縮に使う遠心分離機の保有制限が10年間と定められているが、これを延長することができれば、効果はさらに高まる。

「10年間」の期間を利用してイランとの信頼関係を築くことで解決を図ろうとした。

合意離脱を主張するトランプ大統領や、皆が知っている過去のイランの核兵器計画をあたかも新事実のように取り上げて批判するイスラエルのネタニヤフ首相の主張は、問題解決の動きに逆行したものだ。

イランは弾道ミサイル実験を繰り返したり、テロ支援を続けたりするなど中東の不安定要因となっているが、それを不満に米国が一方的に離脱する道を選べば合意は崩れ、状況はさらに悪化してしまう。

合意が機能している現在、米国が離脱して再び制裁を科しても、同様の支持は得られないだろう。

 

国際原子力機関(IAEA)は5月1日、イランで2009年以降、核開発の「確たる兆候」は見られないとの従来の調査結果を確認する声明を発表した。

核合意維持を求めてきた英仏独は、マクロン仏大統領とメイ英首相、メルケル独首相が連名で、米国の核合意離脱に「遺憾の意」を表し「核合意への関与の継続を強調する」と訴えた。
3カ国首脳は「米国以外の当事者国が核合意を完全に履行するのを妨げる措置をとらないように」と米に要求。イランにも「引き続き核合意に基づく義務を果たさなければならない」と求めた。

 

 

現時点では制裁の内容は明らかでないが、米財務省によると、制裁再発動に伴い、米企業はイラン国内での新規ビジネスができなくなり、既存契約も一定期間内に終了することが求められる。

今後、イランとの原油取引や金融取引ができなくなり、イランと取引がある外国企業も米金融市場から締め出される「2次制裁」対象となる恐れがある。

 ムニューシン米財務長官は5月8日、経済制裁再開の一環として、米航空機大手ボーイングと欧州大手エアバスに与えたイラン向け輸出の認可を取り消す方針を明らかにした。核合意後、両社は国営イラン航空から計約200機を受注していた。
 


2018/5/11     Xerox、富士フィルムと条件面で再交渉へ 

Xeroxは5月9日、株主に宛てた書簡を公表した。

これまでの経緯を説明するとともに、今後の方針について次の通り述べた。

1) 富士フィルムによるXerox買収について、1月31日に発表したものより良い条件にするよう富士フィルムと交渉する。

2) すべての株主の声に耳を傾ける。

3) 裁判所の仮処分は誤ったものであると信じており、異議を申し立てる。

なお、これに対し富士フィルムは5月10日、「ゼロックスから買収条件の具体的な提案は受けていない」とし、「提案済みのプランがベストで、新たな提案があった場合には当社の株主にとってもメリットがあるか検証が必要だ」と説明している。

ーーー

Xerox は5月4日、裁判所が4月27日に下した買収手続きの差し止め命令に対し、異議申し立てをしたと発表した。「買収提案を認めるかどうかは裁判所ではなく、Xerox の株主が決めるものだ」と主張し、裁判所による差し止めの無効を訴えた。

富士フィルムホールディングスも同日、異議申し立てをした。

米ニューヨーク州の裁判所は、上訴の審理を9月から始めると決めた。 審理までは差し止め命令が継続される。

 

Xeroxによる経緯の説明は下記の通り。

2015年秋に、Xerox取締役会は事業の戦略的レビューを開始した。

この結果、2016年1月にビジネス・プロセス・アウトソーシング事業を行う Conduent Incorporated をスピンオフ(分離・独立)することを決めた。これはCarl Icahnの意見を容れたもの。

この間、Icahn と Deasonの両株主とは建設的話し合いを続けた。Icahnの指名した人を取締役に加え、Deasonとの株を巡る争いも解決した。

Conduentのスピンオフの後、株主価値を高めるための方法の検討を進めた。

その結果、Xeroxと富士ゼロックスの統合が最も魅力的であると考えるに至った。

発表後に、投資家と100回以上の会合を持ったが、その意見は、
 両社の統合は戦略的な論拠がある、
 株主の支持を得るためより良い条件を得るべきだ、
 富士ゼロックスの経理スキャンダルは考慮すべき問題だというものであった。

Icahn/Deason 両氏には意見を述べる権利はあり、我々は反論する用意はあるが、二人が全株主を代表して話したり、他の株主が意見を述べる権利を奪う権利はない。

これまで両氏の発言に一々反論していないが、Xeroxと富士ゼロックスの統合が破産のリスクを生むと述べたのには、誤りであり無責任であると指摘せずるを得なかった。

Deason氏は訴訟に訴え、Xerox株主が総会で投票する権利を奪った。裁判所は4月27日に彼に味方した。

(4/27 裁判所が買収手続きの一時停止を命じる仮処分)

この命令は、Xerox株主がこの取引が自分自身の利益になるかどうかを決める権利を奪うものであり、法を無視したもので、覆るものと信じている。

では、なぜ、2人と和解したのか?

(5/1   Xeroxと株主が和解、株主側が主体の体制へ)

それは、裁判所の命令が、富士フィルムとの条件を良くするための交渉を禁じており、株主の利益を最大限にすることができないと考えたためである。
2人と和解すれば、長く続く訴訟による不確実性や混乱を避けられ、事業を進められ、裁判所の仮処分命令にとらわれず、富士フィルムとの条件交渉が可能になると考えた。

何が変わったのか?

和解の発表後に、二人は彼らの体制で事業を進めることを公言した。すると、株価は12%以上下がり、投資家との話し合いで、多くの株主がこれに反対していることが分かった。

そして、5月3日の裁判所のヒアリングで、裁判所は、差し止め命令のもとでも、富士フィルムと代替案の交渉をすることができると明言した。

(5/2    富士フィルムが上記和解に異議申し立て)
(5/3 裁判所が関係者に意見提出を要請、決着に時間がかかる見通し)

その日の午後、2人は、Xeroxが富士フィルムとの契約を直ちに終息させなければ、和解契約を終息させ、戦争に出る(“go to war”)と伝えた。

取締役会は、十分に検討・分析することなしに富士との契約を終息するようにとの圧力を拒否した。

このため、和解の撤回が株主の利益になると判断した。

(5/3 Xeroxが和解の撤回を発表、以前の体制に戻す。)

今後について:

  • 事業の安定に注力する。

  • 株主の利益の最大限化のため、富士フィルムからの対価を増やすことも含め、代替案を探る。

  • 株主の声を反映できるようにする。定時株主総会での取締役候補の指名を認めるreopen the window for nominating director candidates 。株主が総会で決める権利を奪う差し止め命令には上訴して争う。

5/4 Xeroxと富士フィルムが裁判所に買収手続き差し止め命令への異議申し立て。裁判所は審理を9月に始めると決定)

ーーー

株主総会は6月にも開かれる予定であるが、裁判所の審理は9月に始まるため、今回の総会には富士フィルムとの契約は議題にあげられない。

Xeroxはこれまで、総会での取締役候補の推挙の期限の2017年12月11日であるとしてきたが、今回、推挙を認めるとした。

当然、Icahn/Deason 側は候補を出すため、委任状争奪戦になると思われる。

 


2018/5/12 中国、付加価値税率を引き下げ、ハイテク産業向け減税も 

中国は、328日 の国務院常務会議で増値税(付加価値税)制度改革を深化させる措置を決め、51日から増値税税率の軽減と小規模納税者基準の緩和が決定された。

国務院は4月25日、7つの減税措置を打ち出すことで、創業・革新及び小企業・零細企業の発展を支援することを決定した。

(1)増値税 制度改革 (5月1日実施)

製造業は17%から16%に、運輸・交通や建築は11%から10%にそれぞれ下げた。
増値税の税率は17、11、6%の3段階から16、10、3%になった。

中泰証券の試算では製造業の減税規模は1千億元超で、自動車、電機の恩恵が大きい。

課税対象

現行

改正後

製造業

貨物の販売、貨物の輸入 (下記の軽減税率適用品以外)

役務 (加工、修理整備役務)

有形動産リースサービス

17%

16%

運輸・交通・建築


特例

交通運輸、郵政、基礎電信、建設、不動産リースのサービス、不動産の販売、土地使用権の譲渡

下記の貨物の販売または輸入

穀物等農産品・食用植物由、食用塩

水道・暖房ガス・冷房ガス・熱水・石炭ガス・石油液化ガス・天然ガス・ジメチルエーテル・メタンガス・居住用石炭製品

図書・新聞・雑誌・音像製品・電子出版物

飼料・化学肥料・農薬・農機・農業用フィルム

その他

11%

10%

その他

上記以外のサービスの販売

無形資産の販売

6%

6%

輸出

貨物の輸出

0%

0%

輸出貨物に対する増値税はゼロ税率が適用される。またこのとき、仕入時にかかった増値税については還付を受ける。
輸出税金還付率も増値税 が16%のものは16%、10%のものは10%に変更される。

中小零細やベンチャー向けの増値税の優遇税率(3%)の適用対象も広げた。

増値税の一般納税者は売上税(課税販売額×税率)から仕入税(仕入金額×税率)を控除した増値税税額を納付 するが、小規模納税者には簡易税額計算が適用されており、増値税の課税販売額に徴収率3%を乗じた徴収額を納付することになっている。

今回の改正では、小規模納税者基準が緩和されてその範囲が拡大された。

現行

改正後

生産者は年間課税販売額が50万元以下

年間課税販売額が500万元以下

その他は80万元以下の納税者

なお、これまで増値税一般納税者として登記した企業と個人は、20181231日までに小規模納税者として登記変更して、その控除未定の仕入税額はコストに振替処理することができ る。

さらに、設備製造などを行う先進的な製造業や研究開発などを行う現代サービス業で条件を満たす企業および送電会社に対して、仕入れにかかった増値税額のうち未控除分について一定期間内に1度だけ還付を行うとした。


(2)ハイテク産業等向け 減税

中国国務院は4月25日、7つの減税措置を打ち出すことで、創業・革新及び小企業・零細企業の発展を支援することを決定した。
7つの新減税措置により、通年で関連企業の税負担がさらに600億元以上軽減されることになる。

@研究開発機器、設備の税前控除額の引き上げ
 
一部の業種において新規に購入した研究開発機器、設備が1台あたり100万元を超えない金額であれば一括税前控除が認められていたが、この限度額が500万元まで引き上げられる。
対象期間は2018年1月1日から2020年12月31日まで。
A税制優遇の対象となる小型薄利企業の所得額の引き上げ
 
小型薄利企業の条件に合致する場合、課税所得額の50%に対して20%の税率を適用することにより、企業所得税の実質的な税負担は10%となっている。
条件の内、課税所得額はこれまで年間50万元以下とされていたが100万元以下にまで引き上げられる。
対象期間は2018年1月1日から2020年12月31日まで。 
B国外に委託する研究開発費用の加算控除制限の撤廃
これまで国外の組織や個人に委託する研究開発費用は税前加算控除の対象外とされていたが、この制限が撤廃される。
対象期間は2018年1月1日から。
Cハイテク企業と科学技術型中小企業の欠損繰越期間の延長
これまでハイテク企業と科学技術型中小企業の欠損金の繰越期間は5年までとされていたが、これが10年まで延長される。
対象期間は2018年1月1日から。

10年に延長したのは、米国から7年間の制裁を受けた中興通訊(ZTE)の救済を考えたのではないかとの報道がある。

D一般企業の従業員教育費用の税前控除上限がハイテク企業と統一
これまで一般企業の従業員教育費用の税前控除額の上限は、賃金給与総額の2.5%までと定められていた。
これがハイテク企業と統一され、1年度につき 8%まで控除することが認められ、超過した部分は翌年度に繰り越すことが可能。
対象期間は2018年1月1日から。
E印紙税の減税
これまで資金帳簿における払込資本と資本準備金の合計額に対して1万分の5の印紙税が課されていたが、これが1万分の2.5に半減する。
また、その他の営業帳簿や生産経営帳簿に対して課される印紙税は免除される。
対象期間は2018年5月1日から。 
Fスタートアップ科学技術型企業への投資の優遇政策の全国拡大
これまで8つの全面イノベーション改革試験地域と蘇州工業園区において、条件に合致するベンチャーキャピタルまたはエンジェル投資家はスタートアップ科学技術型企業への投資に際して投資額の70%を課税所得額から控除できたが、この適用地域が全国へと拡大される。
関連する企業所得税優遇政策の対象期間は2018年1月1日から、個人所得税優遇政策は2018年7月1日から。

 

2018/5/12 番外編 万里の長城・アイスランドのオーロラ・大谷翔平の打撃練習


クアーズフィールド球場での大谷翔平の打撃練習を見て「デンバーポスト」のスポーツコラムニストが書いた記事が話題になっている。

「人生が終わりを告げる前に、中国の万里の長城を上り、アイスランドのオーロラを見ながらダンスをし、クアーズフィールドでのショウヘイ・オオタニの打撃練習を見るべきである」と述べた。

報道ではこれが繰り返されているが、この次が面白い。

「ロッキーズのオーナーが球場の右翼にバルコニーThe Rooftop をつくった本当の理由が今になって分かった。LoDo地区一番のこの屋外バーがなかったら、大谷の打った球はワイオミング州まで飛んで行った。」

 

記事は下記の通り。

May 8, 2018  by Mark Kiszla (The Denver Post)

Just once before you die, you should climb the Great Wall of China, dance with the Northern Lights in Iceland and watch Shohei Ohtani take batting practice at Coors Field.

Ohtani, as you might have heard, is the 23-year-old sensation from Japan that can hit and pitch the way Beyonce can sing and dance.  

We’re talking freak of nature, so big and beautiful, if folks don’t get out of the way, somebody could get hurt.

I now understand the real reason why Rockies owner Dick Monfort installed The Rooftop in right field. The best outdoor bar in LoDo was all that stopped the American League’s new sensation from blasting a ball to Wyoming.

During batting practice, he smacked so many pitches into the upper reaches of the ballpark it should be rechristened the Shohei Party Deck.

Fans showed up with gloves, anxious to collect B.P. souvenirs from Ohtani, only to run for cover, looking more shell shocked than White Goodman in the final reel of  “DodgeBall.”

映画 “DodgeBall”の最後のシーンでのライバルチームのオーナー以上に、大ショックを受けたように見えた。)

 


The Rooftop  
      大谷の打った球はここまで飛んだ。

 

 


2018/5/14   韓国政府と米GM、韓国GM再建で合意 

韓国政府とGeneral Motors(GM)は5月10日、韓国GMの経営再建で合意した。

韓国政府は経済副首相兼企画財政部長官主宰の関係閣僚会議を開き、同社の経営再建のために71億5000万ドルの資金を投入することを決定した。

GMが36億ドル、産業銀行が7.5億ドルを出し、ほかにGMは韓国GMへの貸付金28億ドルを優先株に転換する。

 

経営破たんの危機に面していた韓国GMでは、会社側と労働組合の話し合いが続いていた。

会社側が、妥結できなければ法定管理(会社更生法)申請に踏み切るとしていた4月20日も妥結できず、23日も引き続き交渉を行った。その結果、経営立て直しのため、労使が歩み寄ることで合意した。

その後、韓国産業銀行とGMは4月26日、韓国GMの経営正常化のために7兆7000億ウォン(71億5000万ドル)を投じることで合意した。

2018/4/25 韓国GMの破綻、ギリギリで回避 

今回、下記の通り決まった。

GMは2018年中に韓国GMへの貸付金28億ドルを優先株に転換する。さらに36億ドルを新規融資などで資金提供する。

韓国GMは36億ドルのうち、28億ドルを今後10年間の設備投資や研究開発にあて、8億ドルを早期希望退職に応募した従業員の退職金などに使う。
競争力のある新車2車種の生産を韓国GMに割り振る。

韓国GMの2位株主で韓国政府系の産業銀行は年内に7億5000万ドル分の優先株を取得する。

GM及び産業銀行の受け取る優先株は議決権がないため、韓国GMの出資比率は米GMが83% (うち、中国でGMと合弁を持つ中国上海汽車が6%)、 産業銀行が17%で変わらない。

産業銀行はこれまで、GMが債権を出資に転換すると、産業銀行の出資比率は現在の17%から1%未満に下がってしまうため、GMに20対1以上の差等減資を求めていた。

韓国政府は米GMが求めていた韓国GMに対する税金の減免措置を検討する。

韓国政府は、GMと産業銀行が詳細な調査を実施し、競争力を持つ新車の発売や固定費削減の努力などが行われれば、売上原価率と営業利益率が次第に改善して経営正常化と長期的な存続が可能だと判断したことから、これに基づいて経営再建策を講じたと伝えた。

韓国の副首相兼企画財政部長官は、韓国GMの経営正常化問題について「10年間、いわゆる『食い逃げ防止』は制度的に保障されている」と述べた。「構造調整問題はこれまで 、大株主の責任、大株主・債権団・労働組合など利害関係者の苦痛分担、持続可能な生存の可能性の3つの原則に基づいて、中堅造船会社とクムホタイヤで実施したが、 韓国GMも同じ原則で処理する」と説明した。

「GMが韓国国内に10年以上は残ることにし、2大株主の産業銀行の拒否権も持つようにした」とし「また、研究開発センターと新車配分を通じて10年間は韓国国内で営業することを制度的に保障した」と話した。

 


2018/5/14 Xerox、再び株主と和解、富士フイルムによる買収契約を破棄

Xeroxは5月13日、富士フィルムホールディングスによる買収契約を終了すると発表した。

買収に反対する大株主のCarl Icahn、Darwin Deason と5月1日に和解し、5月3日に撤回、5月9日に株主宛ての書簡で富士フィルムと再交渉するとしていたが、株主側と再度和解し、買収契約自体を終了させた。

2018/5/2 Xerox、富士フィルムとの統合見直し、株主のCarl Icahn、Darwin Deason と和解 

2018/5/4 Xerox、株主との和解を撤回、現取締役会メンバー全員が留任 

2018/5/11   Xerox、富士フィルムと条件面で再交渉へ

Xerox によると、現地時間 5月13日午後5時(日本時間14日午前6時)に富士フィルムに契約終了を通知した。理由としては、@富士ゼロックスの監査済決算を4月15日までに提出しなかったこと、A監査済の財務数字が契約締結前にもらっていた監査前の財務数字と著しく違っていること、Bその後の事態の変化で契約の実行が難しくなったことを勘案したとしている。

1月22日、Carl IcahnとDarwin Deasonはゼロックスに関する共同声明を発表したが、そのなかで、今回の富士ゼロックスの経理スキャンダルに鑑み、JVを解消するか、ゼロックスに有利なように改定すべきであるとしていた。

富士ゼロックスの財務スキャンダルはXeroxの他の株主の間でも問題になっていた。

富士フィルムへの通知後、大株主のCarl Icahn、Darwin Deasonと新しい和解契約を結んだ。これにより、株主総会での委任状争奪戦、および、Darwin Deasonによる会社及び取締役に対する訴訟を回避する。

株主側の和解内容は次の通りで、Robert J. Keegan 会長、Jeff Jacobson CEO と取締役5名が退任し、株主側推薦の5名が次の総会後に取締役に就任する。

付記 州法に基づき、欠員取締役は取締役会決議で就任できる。次の株主総会での承認が必要。(7月31日の総会で承認された。)

新しい会長にはIcahn Enterprises L.P. のCEOの Keith Cozza が就任する。
副会長兼CEOには
Giovanni (“John”) Visentinが就任する。同氏はExela Technologies のSenior Advisor to the Chairman で、また Advent InternationalのOperating Partner であった。

付記 Xeroxは5月16日、Keith Cozza 会長、John Visentin CEOの就任を発表した。
   株主総会は7月31日に決まった。

   買収合意撤回についてのSECへの提出資料では、株主への特別配当を5割積み増すよう富士フィルムに求めたが、回答がなかったという。

ーーー

  今回合意 5/1 合意
新取締役
(株主推薦)
5名
Keith Cozza,  Nicholas Graziano,
Scott Letier、John Visentin
Jonathan Christodoro
6名
Keith Cozza,  Nicholas Graziano,
Scott Letier,  John Visentin
Jay Firestone,  Randolph Read
退任取締役 6名
Jeff Jacobson
Robert J. Keegan,  Charles Prince,
Ann N. Reese,  William Curt Hunter,
Stephen H. Rusckowski
7名
Jeff Jacobson
Robert J. Keegan,  Charles Prince,
Ann N. Reese,  William Curt Hunter,
Stephen H. Rusckowski、
Sara Martinez Tucker
留任取締役 4名
Gregory Brown,  Joseph Echevarria,
Cheryl Krongard
Sara Martinez Tucker
3名
Gregory Brown,  Joseph Echevarria
Cheryl Krongard
会長 退任 Robert J. Keegan
就任 Keith Cozza
退任 Robert J. Keegan
就任 Keith Cozza
CEO 退任 Jeff Jacobson
就任 John Visentin(副会長兼務)
退任 Jeff Jacobson
就任 John Visentin
(副会長兼務)

当初、株主側は取締役全員の候補を立てるとしていたが、今回就任の5名以外は引き下げる。なお、会社側は取締役候補の推薦期限を2017年12月11日としていたが、2018年6月13日までは受け付ける。
6月13日に予定されていた株主総会はそれ以降となる。

現在の取締役会は、次の通りコメントした。

過去数週間にわたり、富士フィルムに対し、直ちに契約変更の交渉に入るよう求めてきたが、富士フィルムはこれに応じなかった。

取締役会としては、裁判所の差し止め命令、株主が現在の条件での契約を支持していないこと、富士ゼロックスの経理スキャンダルが解決していないことなどの状況下で、取引の完了が見込めないと考える。

また、委任状争奪戦で混乱し、事業にも悪影響を与えることを懸念した。富士フィルムとの間で早期に取引が完了しないことから、富士フィルムとの取引を終了し、株主二人と和解するのが会社にとってベストと考える。

和解契約のもとで、新取締役会はXeroxの株主にとっての価値を最大限にするための代替案の検討に着手する。

 

付記 富士ゼロックスの経理スキャンダル

富士フィルムHDは2017年6月12日、傘下の富士ゼロックスの販売子会社で起きた不適切な会計処理を受けて375億円の損失が発生し、抜本的な対策のため富士ゼロックス会長に古森重隆会長が就くと発表した。

調査報告書によると、不適切会計の主な舞台となったのは富士ゼロックスのニュージーランドの販売子会社。中堅幹部であるマネージングディレクターが中心となって、複写機などのリース契約で問題のある取引を繰り返していた。

例えば、(1)顧客との契約時におけるサービス利用想定量を過大に計上した  (2)リース契約期間満了前に契約を更新し、その際に過去の売り上げを取り消さずに、新たな売り上げを計上した  (3)リース契約獲得のための販促費用相当額を売り上げに加算し、同額をリース債権に計上した、といった不適切な取引を行っていたという。

第三者委員会は理由として、過大なインセンティブ報酬の存在を指摘する。現地従業員の固定給を低く抑える代わりに、売り上げ目標を達成したときの「ボーナス」を大盤振る舞いする報酬体系だったという。

2015年7月、ニュージーランド販社が不適切な取引を行っているとの内容の告発メールが、富士ゼロックスに届くが、幹部は実質的な問題先送りを指示した。

2016年9月にニュージーランドの複数の報道機関が損失発生の事実を指摘。続報で「不正な売上計上の可能性」を報じ、同国の警察省の重大不正捜査局が捜査を始めた。

不適切な会計処理を回避できなかった原因として、調査報告書は「売上プレッシャー」の存在を指摘する。複数のインタビュー対象者から、本社からの業績達成圧力が非常に強いとの証言を得たとしている。

 


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