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2020/6/1    トランプ大統領、香港への優遇措置撤廃へ

トランプ大統領は5月29日、中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決めたことへの対抗措置として、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると発表した。

「国家安全法制」の導入を決めたことについて、大統領は「香港にはもはや自治はない。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と述べ、「香港に対する特別な扱いを撤廃する手続きに着手するよう指示した」と明らかにした。

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香港の「憲法」である香港基本法の23条は、香港特別行政区が「国家への反逆、国家の分裂、反乱の扇動、中央政府の転覆、国家機密の不正な取得を禁止し、外国の政治組織が香港で政治活動を行ったり香港の政治団体が外国の政治団体と関係を持ったりすることを禁止する 」法制定を求めており、香港は2003年に法律制定を進めようとしたが、反対が強く、撤回され、現在もまだ制定されていない。

今般、中国全人代は、香港での反政府的な動きが「国家安全」に直接的に関わるとし 、「国家安全法」を香港に導入する方針を5月28日に採択した。習近平指導部は今夏にも具体的な法整備を行う。

香港には中国本土の法律は原則適用されないが、 例外として全人代が定めた法律でありながら香港にも適用可能な「全国性法律」がある。香港基本法の18条において「全人代は香港特別行政区基本法委員会と香港特別行政区政府に意見を尋ねた後に全国性法律を追加または削除ができる 」と定められている。但し、「国防、外交などに限定される」とも定められている。

現在、13の全国性法律がある。

建国記念日、国旗、国歌など国家の儀礼的なことを定めた法律が5つ、
領海やEEZに関する法律が3つ、
外交特権・領事特権に関する条例が2つ、
国籍法、
人民解放軍を置く法的根拠となる香港特別行政区駐軍法、
外国の中央銀行に法的特権を認める法律

今回、2015年に施行された中国の国家安全法を全国性法律として追加する形ではなく、新たに全人代が 「香港国家安全法」を作る。

次の4つが犯罪行為とみなされるとみられる。

  • 分離独立行為:中国からの離脱
  • 反政府行為:中央政府の権力あるいは権威の弱体化
  • テロ行為:人への暴力や脅迫
  • 香港に干渉する外国勢力による活動

香港が香港基本法23条で決められている法制定を実施していないため、基本法18条に基づき全人代が全国性法律を追加するという形態をとっている。

中国は今回の法制定の基本原則は下記の通りとしている。

第1に、国家の安全を断固として維持する。
第2に、「一国二制度」の制度体系を堅持し、完全なものにする。
第3に、法に基づく香港統治を堅持する。
第4に、外国の干渉に断固反対する。
第5に、香港市民の合法的権益をしっかりと保障する。

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1997年7月1日に、香港がイギリスから中国に返還され、中国の特別行政区となった。50年間は資本主義を採用し、社会主義の中国と異なる制度を維持することが約束された。香港には「高度な自治」が認められ、言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由などが保障された。

米国では「一国二制度が守られる 」という前提のもと、香港返還と同時に香港に対し通商投資について中国本土とは異なる優遇を認める米国 ・香港政策法 (United States–Hong Kong Policy Act)の効力が発生した。

貿易面では、WTO協定上の独立した関税地域とみなし、香港からの輸入関税はゼロに近い。
「香港の国際金融センターとしての役割を支援する」とし、「米ドルと香港ドルの自由な交換」を認めている。
その他、多数の優遇が認められた。

なお、米国と中国の関係悪化を受け、2019年9月25日に「香港人権・民主主義法案」が可決された。優遇措置の前提である「一国二制度が守られている」状態かどうかを毎年検証することが米国政府に義務付けられ、検証の結果、一国二制度が継続されていないという結論になれば、優遇措置が見直される可能性がある。

今回、大統領は、米政府の対応は犯罪人引き渡しから輸出規制にわたる「香港を巡る広範な合意」が対象で、「例外はほとんどない」とし、「米国の措置は力強く、意味があるものとなる」と語った。ただ、こうした措置を実施する期限は示さなかった。

香港にも中国本土と同じ関税率が適用され、対中追加関税も上乗せされる 可能性がある。 また、米投資家が香港から資金を引き揚げたり、米ドルと香港ドルの交換が規制されたりする事態も懸念される。

中国本土への海外からの対中直接投資や本土からの対外直接投資の6割以上は香港経由である。香港ドルが米ドルとのリンクを失えば、香港は国際金融センターではなくなる。

 

トランプ大統領はこのほか、次の点に言及した。

新型コロナウイルスへの対応などをめぐって「中国寄り」と批判してきたWHOに対し、米国が求めてきた改革を行わなかったと指摘し「関係を断絶する」と断言、脱退の意向を表明した。
WHOへの資金拠出を他の国際公衆衛生活動に振り向けるとも語った。 

中国政府が新型コロナウイルスの感染拡大を隠蔽 し、WHOへの報告義務を無視し、その後もWHOが世界に誤った情報を出すよう、圧力をかけた。
米国が年間4億5千万ドルを拠出し、中国は4千万ドルしか拠出していないにもかかわらず、中国がWHOを完全に支配している。
改革を求めたが、彼らは動くことを拒んだ。我々はWHOとの関係を終了させる。

香港の自治侵害にかかわった一部の中国・香港政府高官への制裁

一部の留学生・研究者へのビザ発給停止

「安全保障上の理由」としており、中国軍と協力する研究機関や企業に所属する中国人らが対象となる模様

具体的には中国の軍・民融合戦略を実行する機関と関連する大学院以上の中国国籍者のF(留学生)およびJ(訪問学者)ビザを利用した米国入国を遮断する。
AIなど民間先端技術を活用して人民解放軍を現代化する「軍・民融合」推進大学・研究機関所属や、これら機関で研究した後に米国に入国した中国人留学生と研究員の約3000人も追放される可能性がある。

米国民が中国企業に投資するリスクを回避するための方法を検証

「投資会社は、共有する規則の下で運営されていない中国企業に投資する不当な隠れたリスクに顧客をさらしてはならない」

金融市場に関する作業部会に「米国の投資家保護を目的に、米株式市場に上場する中国企業のそれぞれの慣習」を検証するよう指示した。

 


2020/6/2  韓国検察、サムスン電子副会長を再度聴取、経営権継承巡る疑惑

サムスン電子の李在鎔副会長は5月26日、取り調べを受けるため、ソウル中央地検に出頭、17時間に及ぶ聴取を受けた。

地検は5月29日にも再度呼び出して聴取した。


付記 検察は6月4日、李在鎔副会長らについて、資本市場法違反(不正取引及び相場操作行為)や偽証などの容疑で逮捕状を請求した。

 ソウル中央地裁は6月9日未明、「被疑者を拘束する必要性が不十分」として、サムスン電子副会長に対する検察の逮捕状請求を棄却した。

付記 韓国の検察捜査審議委員会は6月26日、検察に対し、本件捜査を中断し不起訴にするよう勧告した。強制力はないが、検察の捜査に影響を及ぼす。
   下記の贈賄の裁判には関係しない。

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朴槿恵前政権で起こった国政介入事件で朴前大統領と長年の知人の崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔被告らの控訴審判決公判が2018年2月5日開かれた。

控訴審は2017年12月27日に結審したが、検察側は懲役12年を求刑していた。

ソウル高裁は地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。
2人の部下も執行猶予判決で釈放された。

2018/2/5 サムスントップ釈放 

大法院(最高裁)は2019年8月29日、第二審の判決【懲役2年6ヵ月・執行猶予4年】を破棄し、差し戻した。

大法院は李副会長から朴槿恵前大統領への賄賂の金額を86億8081万ウォンと認定した。

韓国の
特定経済犯罪加重処罰等に関する法律によると、横領金額が50億ウォン以上の場合、無期懲役または懲役5年以上の懲役に処せられる。

現在、差し戻し審が進んでおり、今夏にも結審する見通し

差戻し審では、第一審と同じ懲役5年か、それ以上の実刑判決が宣告される可能性が高く、再び収監される可能性もある。

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今回は2015年のサムスン物産と第一毛織の合併過程における背任、サムスンバイオロジクスの粉飾会計などサムスン経営権継承を巡る一連の疑惑である。検察は本件を3年以上先延ばしにしていた。

 

争点は次の3つ。

1.サムスン物産・第一毛織の合併の違法性
2.第一毛織子会社のSamsung BioLogicsの4兆5000億ウォン粉飾会計疑惑
3.李副会長が関与したのか

検察は、2015年のサムスン電子と第一毛織の合併と、その後のSamsung BioLogicsの会計基準変更が李副会長の安定的な経営権継承を目的としていたとみている。
不正が疑われる行為の企画・実行者を突き止める一方、李氏を頂点とするグループ首脳部がどこまで報告を受け、指示を出していたかを探る考えである。

 

Samsung Group の持株会社 第一毛織(Cheil Industries Inc.) が2014年12月18日に上場した。

李一族が45.56%を保有する。第一毛織は三星生命、三星電子を保有する。

2014/12/2 Samsung Group の持株会社 第一毛織の上場 

2015年9月1日、第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T) が合併し、新しいサムスン物産(Samsung C&T) となった。

新しいSamsung C&T はSamsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となった。

李一族 → Samsung C&T → 三星生命 → 三星電子

問題は第一毛織とサムスン物産の合併比率で、当時李副会長はサムスン物産の株式は保有しておらず、第一毛織の株式価値が高いほど、李副会長には有利となる。

合併時にサムスン物産の株式1株の価値は第一毛織の株式0.35株と計算された。

検察はグループが組織的に、第一毛織の価値を高く、サムスン物産の価値を低く設定し、サムスン物産の株主に被害を与えた背任の疑いがあるとみている。

合併前のサムスン物産の株価上昇を抑えるとする当時のサムスン未来戦略室の報告書 を確保した。
サムスン物産のカタールでの発電所工事受注など好材料を合併後の7月末に公表したこともそうした方針に沿ったものと見る。

ヘッジファンドのElliot Managementなどが反対したが、国民年金公団などの賛成で承認した。 賛成は69%強で、必要な2/3にギリギリであった。
この合併について、朴政権が第一毛織とサムスン物産2社の大株主だった国民年金公団に対し、所管官庁の保健福祉省を通じて合併に賛成するよう圧力をかけた疑いがある。

詳細は 2017/1/20 ソウル地裁、サムスン電子副会長の逮捕を認めず 

もう一つの争点はSamsung BioLogicsの粉飾会計疑惑である。

Samsung BioLogicsは第一毛織の主な子会社であり、この企業価値が高いほどサムスン物産と第一毛織の「1対0.35」という合併比率が正当性を持つことになる。

検察はSamsung BioLogicsが当時、子会社Samsung Bioepisの負債を隠し、企業価値を水増ししたとみている。

Samsung BioLogicsは2012年、米製薬会社Biogenとの合弁会社 Samsung Bioepisを設立した。

出資比率はSamsung BioLogicsが85%、Biogen が15%であったが、Biogenは設立契約で 「50%マイナス1株」までの追加出資の権利を保有している。

コールオプションは負債として扱われるが、Samsung BioLogicsはこのコールオプションの存在を隠していた。

2014年に初めて公表し、Biogenがオプションを行使した場合に支配力が失われかねないとして、2015年にSamsung Bioepis を子会社から関係会社に変更した。

子会社から関係会社に変更する場合には、帳簿価格ではなく、市場価格で評価する。Samsung BioLogicsは2015年12月に、企業価値を3兆ウォンと見積もりながら8兆ウォンと評価し、4兆8086億ウォンの会計上の利益を得た。

Samsung BioLogics は2016年10月に株式公開(IPO)を控えていたが、債務超過の可能性があり、粉飾を行ったとみられる。

金融委員会の証券先物委員会は2018年11月14日、Samsung BioLogicsが傘下のSamsung Bioepisの企業価値を意図的に過大申告していたと指摘した。

会計規則を「故意」に破ったとの判断を示し、Samsung BioLogicsの外部監査法違反での検察告発と代表取締役の解任勧告、課徴金80億ウォン賦課などの制裁を議決した。

Samsung BioLogicsの上場廃止の恐れがあったが、韓国取引所は2018年12月10日、上場維持を発表し、11日に株式売買が再開された。

2018/11/16   韓国の証券先物委員会、Samsung BioLogicsの粉飾を認定

サムスン側は「当時の会計処理は合併後の2015年末に行ったもので、合併とは無関係に行われた」としている。コールオプションの隠蔽は合併前で、問題となり得る。

 

中央地検は経営権継承を巡る不正疑惑に関し、当時グループの司令塔だった未来戦略室(現在は廃止)への李副会長の指示・報告内容を調べている。

朴槿恵前大統領の贈収賄事件の裁判で、大法院全員合議体(大法廷)はサムスン内部に李副会長のための「組織的継承作業」が存在していたと認定した。しかし、継承作業の違法性や李副会長がその過程に関与していたかについては判断しなかった。

李副会長は今回、検察の取り調べに対し、「継承作業について指示したり、報告を受けたりしたことはない」として、容疑を否認したとされる。


2020/6/3    中国製ワクチン5種が第2期臨床試験段階へ

中国工程院 の責任者はこのほど、「中国は、新型コロナウイルスワクチンの研究開発分野で世界の先頭集団におり、現時点までにすでに5種類のワクチンが第2期臨床試験段階に入った」と述べた。

「RNAワクチンや不活化ワクチンなど、中国では現在、5種類のワクチンがすでに第2期臨床試験段階に入っている。研究開発のスピードは少しも遅くはない。ウイルスの開発にはかなり長期間を必要とするのは当然ではあるが、非常に効率性が高いワクチンについては、かなり慎重に選択を進めなければならないため、時間もかかる。だが、現在の進捗状況から、今年の年末までには、危機的な状況をめぐる問題は、ほとんど解決できると予想している。」

これは事実である。

WHOは5月30日、新型コロナウイルスのワクチン開発状況を発表した。

  DRAFT landscape of COVID-19 candidate vaccines – 30 May 2020

このなかで、臨床試験段階にあるもの10件、その以前の段階にあるもの121件を記載している。

臨床試験段階にあるものは次の10件で、うち中国関係が5件である。

  Platform Type of candidate vaccine Developer
1 NonReplicating Viral Vector ChAdOx1-S University of Oxford/AstraZeneca
2 NonReplicating Viral Vector Adenovirus Type 5 Vector CanSino Biological Inc./Beijing Institute of Biotechnology
3 RNA LNP- encapsulated mRNA Moderna/NIAID
4 Inactivated Inactivated Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm
5 Inactivated Inactivated Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm
6 Inactivated Inactivated + alum Sinovac
7 Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M Novavax Research & Development
8 RNA 3 LNP-mRNAs BioNTech/Fosun Pharma/Pfizer
9 Inactivated Inactivated Institute of Medical Biology, Chinese Academy of Medical Sciences
10 DNA DNA plasmid vaccine with electroporation 「INO-4800」 Inovio Pharmaceuticals

No.1    2020/5/22   アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ

No.2   2020/5/26    中国CanSino Biologicsの新型コロナウイルスワクチン、初期治験で安全性と免疫誘導確認

No.3   2020/5/19    Moderna新型コロナウイルスワクチン治験で抗体確認 

No.4 & No.5    中国国営製薬会社Sinopharm GroupのCOVID-19予防不活化ワクチン

No.6 Sinovac Biotech(北京科兴生物制品有限公司

2020年4月16日、中国Sinovac Biotechと米国のDynavax TechnologiesはCOVID-19の予防ワクチンを共同開発すると発表した。
Sinovacが開発する不活化ワクチン候補にDynavaxのアジュバントCpG1018を適用する。

No.7 Novavax

米Novavaxは、専有のナノ粒子技術を適用して作製したCOVID-19のワクチン候補(NVX-CoV2373)に関する第1/2相臨床試験を5月20日に開始したと発表した。
同試験は、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)から3億8800万ドルの資金を得て行われている。
  

No.8    2020/5/7   ファイザー、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を米国で開始

No.9 Chinese Academy of Medical Sciences  不活化EV71ワクチン

No.10   INOVIO

INOVIOとGeneOne Life Scienceは4月29日、DNAワクチンINO-4700(Spike糖タンパク質を標的にするDNAワクチン)の第1/2a相試験12週の中間データを発表した。

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床試験以前の段階にあるものを121件挙げているが、日本関連は下記のものがみられるが、極めて少ない。

Platform Type of candidate vaccine Developer  
DNA DNA plasmid vaccine 大阪大学/アンジェス/タカラバイオ 2020/5/22    アンジェスの新型コロナウィルス向けDNA ワクチン開発
Inactivated TBD 大阪大学/BIKEN/NIBIOHN 阪大微生物病研究所と阪大微生物病研究会(BIKEN財団)、医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)
Protein Subunit VLP-recombinant protein + Adjuvant 大阪大学/BIKEN/NIBIOHN
RNA LNP-encapsulated mRNA 東大/第一三共 日本医療研究開発機構(AMED)感染症実用化研究事業・新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業で実施中の「新型コロナウイルス(2019-nCoV)の制圧に向けての基盤研究」に参画

 


2020/6/4     厚労省、新型コロナウイルスワクチンの早期実用化で「加速並行プラン」

厚労省は6月2日、新型コロナウイルスのワクチンを早期実用化する「加速並行プラン」をまとめた。

国内外で研究開発が進むワクチンについて国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定した。

ワクチン開発は通常、基礎研究→臨床試験→薬事申請・生産体制整備→薬事承認・生産開始と、実用化に数年を要する。

「加速並行プラン」では、臨床試験の段階で民間のリスクを政府が負担し、資金を投入して生産体制整備に着手する。審査・承認の過程も大幅に短縮する。

但し、この場合でも、大量供給できるまでには「生産開始後半年〜1年程度」かかるとしている。国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定しているが、実際には、出来たとしてもごく一部にとどまると思われる。
 

政府は今年度第2次補正予算案で製造ラインの整備費を基金化し約1400億円を計上し、1件200億〜300億円をめどに5件程度を公募で選定する。

厚生労働省は2日、新型コロナウイルスのワクチンを早期実用化する「加速並行プラン」をまとめた。国内外で研究開発が進むワクチンについて国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定。最終的に国民全員に接種することを念頭に、国費を投じて製造ラインを整備するとした。

 公明党が国会内で開いたプロジェクトチームで示した。ワクチン開発は通常、基礎研究▽安全性の確認を含めた薬事承認▽生産――と、実用化に数年を要する。通常は臨床試験が終わり実用化のめどが立ってから着手する製造ラインの整備について、プランは研究中から政府が資金を投入し、審査・承認の過程も大幅に短縮するとした。一方でワクチンの生産体制が整った後も、大量供給できるまでには「生産開始後半年〜1年程度」かかるとした。

 政府は今年度第2次補正予算案で製造ラインの整備費を基金化し約1400億円を計上。補正予算の成立後、1件200億〜300億円をめどに5件程度を公募で選定する。

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既報の通り、WHOによると臨床試験段階にあるものは10件だが、日本のものは含まれていない。

厚労省によると、日本医療研究開発機構(AMED)が支援しているワクチン開発状況は以下のとおり。

  基本情報 取り組み状況 目標と対応 生産体制の見通し
組換えタンパクワクチン
感染研/UMNフ ァーマ/塩野
遺伝子組換え技術を用いて培養細胞よりコロナウイルスのタンパク質抗原を製造しコロナウイルスタンパク質抗原を人に投与するための注射剤 ワクチンの候補を作製
動物を用いた有効性評価を開始予定
有効なワクチン候補を選定しその後非臨床試験及び臨床試験の実施を目指す 塩野義が開発主体
mRNAワクチン
東大医科研/第一三共
メッセンジャーRNAを人に投与する注射剤
人体の中で
コロナウイルスのタンパク質抗原が合成され免疫が誘導される
ワクチンの候補の作製が終了動物を用いた有効性評価を実施中 有効なワクチン候補を選定しその後非臨床試験及び臨床試験の実施を目指す  
DNAワクチン
阪大/アンジェス/タカラバイオ
DNAを人に投与する注射剤
人体の中で
DNAからmRNAを介しコロナウイルスのタンパク質抗原が合成され免疫が誘導される
ワクチンの候補の作製が終了
動物を用いた有効性評価を実施中
最短7月から臨床試験開始の意 タカラバイオが生産予定
不活化ワクチン
KMバイオロジクス/東大医科研/感染研/基盤研
不活化したコロナウイルスを人に投与する従来型のワクチン コロナウイルスが増殖するかを確認中 2020年度中に非臨床試験終了を目指す  
ウイルスベクターワクチン
(ID
ファーマ/感染)
コロナウイルスの遺伝情報を持ったセンダイウイルス投与するワクチ人体の中コロナウイルスのタンパク質(抗原)が合成される 動物を用いた有効性評開始予定 最短で9月から臨床試験開始の意向  

2020/5/22    アンジェスの新型コロナウィルス向けDNA ワクチン開発

このほかAMEDで、基礎研究段階の開発を支援(新潟大・東京都医学総合研究所・慶応大・東大・長崎大)

 

海外での開発で、日本政府がCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)に資金を拠出し、CEPI支援してワクチン開発主体は以下のとおり。

これらについて、日本で早期に生産できるのかどうか不明。

ワクチンの種類 CEPIが支援する開発主体と状況
抗原を注射して免疫を付けるタイプ 組換えタンパクワクチン Novavax第1/2相臨床試験を開始

Novavaxは、専有のナノ粒子技術を適用して作製したCOVID-19のワクチン候補(NVX-CoV2373)に関する第1/2相臨床試験を5月20日に開始したと発表した。
同試験は、CEPIから3億8800万ドルの資金を得て行われている。
  
Clover Biopharmaceuticals Australia2か月以内に豪での第1臨床試験の被験者募集を開始したとしている
ペプチドワクチン Queensland大学/GSK
遺伝子を注射して人体コロナウイルの抗原をつくり免疫をつけるタイプ mRNAワクチン Moderna/国立アレルギー感染症研究所:第1相臨床試験の中間結果を公表2臨床験を202053相臨床試験を2020年初夏に開始予定ロンザ社(スイス)と提携

   2020/5/19    Moderna新型コロナウイルスワクチン治験で抗体確認 
CureVac
DNAワクチン InovioPharmaceuticals第1相臨床試験を開始

INOVIOとGeneOne Life Scienceは4月29日、DNAワクチンINO-4700(Spike糖タンパク質を標的にするDNAワクチン)の第1/2a相試験12週の中間データを発表した。
ウイルスベクター オックスフォード大第1相臨床試験を完了結果は未公表第2/3相臨床試験を開始アストラゼネカと提携

 
2020/5/22   アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ
香港大学
パスツール研究所/テーミス社MSD社の子会社/ピッツバーグ大学

CEPI (Coalition for Epidemic Preparedness Innovations) とは、世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年1月ダボス会議において発足した官民連携パートナーシップ。
日本、ノルウェー、ドイツ、英国、オーストラリア、カナダ、ベルギー政府が関わる。

 


2020/6/4 米、10カ国・地域にデジタル税の対抗措置検討

米通商代表部(USTR)は6月2日、Digital Services Taxを巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。


フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。米国は7月10日、フランスのデジタル課税によって米IT大手が打撃を受けるかどうか、通商法301条に基づいて調査すると発表した。

フランスのマクロン大統領は2019年8月26日、フランスの「デジタル課税」を巡り、米国と合意を得たことを明らかにした。 フランスのデジタル課税と経済協力開発機構(OECD)がまとめている課税制度に基づく税収の差額を仏政府が企業に払い戻す方針で暫定合意に達した。

2019/7/31    フランスのデジタル課税法案成立、米国は報復を示唆
2020/1/29 デジタル課税を巡る問題

 

今回、フランスに続き対象を広げる。外国の不公正な慣行に一方的措置を取る権限を与えた「通商法301条」に基づき調べ、各国のデジタル税が不当に米国企業を差別していると認定すれば、追加関税を含む制裁措置を発動する。

対象は下記の通りで、Federal Register に記載されている。(〇:実施、△:検討)

Austria 2020/1/1、オンライン広告サービスに5%のDigital Services Tax
Brazil Digital Services Taxを検討
Czech Republic 7%のDigital Services Taxを検討
EU 2018年の提案に沿う案を検討
India 2020/4/1、2%のDigital Services Tax
Indonesia 本年初め、electronic transaction tax  手続き後、実施。
Italy 2020/1/1、3%のDigital Services Tax
Spain 3%のDigital Services Taxを検討
Turkey 2020/3/1、7.5%のDigital Services Tax(15%まで引き上げ可能)
UK 2%のDigital Services Taxを検討

各国の状況の詳細:

Austria: In October 2019, Austria adopted a DST that applies a 5% tax to revenues from online advertising services. The law went into force on January 1, 2020. The tax applies only to companies with at least €750 million in annual global revenues for all services and €25 million in in-country revenues for covered digital services.

EU:    2019/3/12  EU、デジタル課税合意見送り

India: In March 2020, India adopted a 2% DST. The tax only applies only to non-resident companies, and covers online sales of goods and services to, or aimed at, persons in India. The tax applies only to companies with annual revenues in excess of approximately Rs. 20 million (approximately US$ $267,000).The tax went into effect on April 1, 2020.

Indonesia: Earlier this year, Indonesia adopted an electronic transaction tax that targets cross-border, digital transactions. Further implementing measures are required for the new tax to go into effect.

Italy: Italy has adopted a DST. The measure includes a 3% tax on revenues from targeted advertising and digital interface services. This tax applies only to companies generating at least €750 million in global revenues for all services and €5.5 million in in-country revenues for covered digital services. The tax applies as of January 1, 2020.

2019/12/30 イタリア、デジタル課税を導入、フランスに追随

Turkey: Turkey has adopted a DST. The measure applies a 7.5% tax to revenues from targeted advertising, social media and digital interface services. The tax applies only to companies generating €750 million in global revenues from covered digital services and TL20 million in in-country revenues from covered digital services. The Turkish President has authority to increase the tax rate up to 15%. The law went into effect on March 1, 2020.

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デジタル課税を巡る議論は経済協力開発機構(OECD)を中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航している

ムニューシン米財務長官は2019年12月上旬、OECDのグリア事務総長に「米国は独自のデジタル課税に強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」との書簡を送付した。米国の反対で協議は難航する可能性が高い。

 


2020/6/5   Eli Lilly、新型コロナウイルスの抗体療法の治験を開始

Eli Lilly は6月1日、新型コロナウイルス治療のための抗体療法について、米国の入院患者を被検者と して、世界初となる第1段階の臨床試験を開始したと発表した。

カナダのバイオテクノロジー企業の AbCellera と共同で開発した。

AbCelleraは米国で新型コロナウイルス感染症から回復した患者の血液試料を入手し、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のワクチン研究センターと共同で有望な抗体を見つけ出した。
その後、Ely Lillyが3か月でウイルスが持つスパイク状のタンパク質構造に対応した IgG1 モノクローナル抗体 LY-CoV555を開発した。

今回の臨床試験は安全性や忍容性を検証するもので、 NYU Grossman School of Medicine 附属病院とロサンゼルスの Cedars-Sinai病院などに入院している新型コロナウイルス感染症患者を対象に実施している。結果は6月下旬に判明する見通し。

同社ではその後、入院していない患者を対象に試験を行う。

臨床試験で同療法の新型コロナウイルスに対する有効性が実証されれば、今年秋までに実用化できる可能性があるとしている。

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抗体療法については、他に2件が開発中。

米Regeneron Pharmaceuticalsは2月4日、米保健福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)との既存の契約を拡大し、新型コロナウイルスに対する新たな抗体医薬の開発を行うことになったと発表した。

3月17日、COVID-19の予防、または治療に用いる抗体カクテル療法の開発を速やかに開始すると発表した。
新型コロナウイルスのウイルス抗体を多数特定した。特定した抗体から2種類の有力な抗体を選定し、これを混合したカクテル抗体を4月中旬までに生産、夏の終わりまでに月20万程度の生産を目指す。

同社はまた、新型コロナ感染症の重篤患者を対象にSanofiと共同で、リウマチ治療薬のヒト型抗IL-6受容体モノクローナル抗体製剤「ケブザラ」(一般名サリルマブ)の試験を行っていることを明らかにした。

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GlaxoSmithKline は4月6日、Vir Biotechnologyに2億5,000万ドルを出資し、新型コロナウイルスによって引き起こされる肺炎を治療・予防する複数の医薬品とワクチンを共同開発すると発表した。

最も先進的なのは、Virが開発したVIR-7831およびVIR-7832という2種類の抗体を使用するアプローチで、両社は今後3〜5カ月以内に第2相臨床試験を開始する。

韓国のバイオ医薬品大手のSamsung Biologicsは4月10日、Vir Biotechnology から新型コロナウイルスの治療薬のモノクローナル抗体を受託生産する契約を結んだ。

2020/4/16 Samsung Biologics、Vir Biotechnologyの新型コロナ治療薬候補を受託生産 


2020/6/5   英首相、香港住民に英国市民権授与を示唆

英国のジョンソン首相は6月3日付の英紙タイムズに寄稿し、 中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」を施行した場合、イギリスは移民規則を変更し、香港人数百万人に対して「英市民権を獲得する道」を開く方針だと述べた。イギリスは香港との関係を維持せざるを得ないとしている。

中国の国家安全法制は司法および政治の独立性を謳歌してきた香港の自治を「大幅に損なう」だろう。

その場合、何百万という香港市民にイギリスのビザを提供するほか「選択肢はない。」

中国が同法を施行した場合、英国海外市民旅券(BNO)を保有する香港人に認めているビザなしの英国滞在期間を、現行の6カ月から12カ月に延長する。

現在、約35万人の香港人がBNOを保有している。ほかに約260万人に取得資格がある。

BNO保有者には今後、就労を含め、これまで以上の権利が与えられることとなる。

これにより、「BNO保有者には英市民権を獲得する道が開かれる可能性がある」。


中国全人代は
5月28日、香港での反政府的な動きが「国家安全」に直接的に関わるとし 、「国家安全法」を香港に導入する方針を採択した。今夏にも具体的な法整備を行う。

トランプ大統領は5月29日、中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決めたことへの対抗措置として、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると発表した。

「国家安全法制」の導入を決めたことについて、大統領は「香港にはもはや自治はない。中国は一国二制度を一国一制度に置き換えた」と述べ、「香港に対する特別な扱いを撤廃する手続きに着手するよう指示した」と明らかにした。

2020/6/1 トランプ大統領、香港への優遇措置撤廃へ

ジョンソン首相は香港の自治の崩壊に備えて住民を広く受け入れる姿勢を強調し、国家安全法に抗議する姿勢を明確にした。

ラーブ外相は6月2日、安全保障上の機密情報を共有する"Five Eyes" —— イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド —— に、香港市民にビザを発給するよう頼んだと議会に伝えた。


これに対し、中国は6月3日、英国に対し、中国の問題に「干渉するのを止める」よう求めた。

中国外務省の報道官は「我々は英国に対し、一歩退き、冷戦時代のメンタリティーと植民地時代のマインドセットを捨てて、香港は中国に返還されたという事実を認識し、尊重するよう忠告する」と語った。
「香港の問題と中国の内政問題に干渉するのを今すぐ止めないと、英国はしっぺ返しを食らうことになる」と加えた。

ジョンソン首相の報道官は次のように反論した。

「首相が述べた通り、英国は香港の『一国二制度』の下での成功を願っているだけだ」

「中国がこの国家安全法を推し進めれば、それは国連に登録されている法的拘束力のある共同声明に基づく義務に直接抵触することになる」

共同声明は1984年12月19日に中国の趙紫陽総理とイギリスのサッチャー首相が北京で署名した。両国は1985年5月27日に批准公文を交換し、国際連合事務局で登録したことで声明は発効した。

中国の香港政策の方針について、中国は一国二制度をもとに、中国の社会主義を香港で実施せず、香港の資本主義の制度は50年間維持されるとした。

ーーー

香港が英領であった時代には、香港人にはBDTC旅券(British Dependent Territories Citizen)が発行されていた。

1997年の香港返還により、BDTCは無効となった。

現在、2種類の旅券がある。

1) 中華人民共和国香港特別行政区が発行するHKSARHong Kong Special Administrative Region旅券(青色)

2) 英国が発行する英国海外市民(BNO=British National Overseas)旅券=赤色

なお、他に香港から中国に入るための中国公安局が発行するIDカード「回郷証」(Home Return Permit)がある。香港の居住権があれば基本的に取得でき、有効期間は10年(18才以下の場合は3年)。

香港住民が中国本土へ行く場合は国内移動とみなされ、HKSARパスポートでは入境できない。 中国はBNO旅券を認めていない。
中国への入境は自由ではなく、「回郷証」が必要である。

1997年の香港返還に際して、「一国二制度」の下で、香港市民は英国海外領国民ではなくなり、中国国民となった。

しかし英国は、1997年返還までの間にBNO旅券を300万人以上の香港市民に発給した。1997年の返還前の香港に居住、申請した人は、現在でもBNO旅券を保有・更新することができる。
但し、BNO旅券を持つ香港人から生まれた子供は1997年6月30日以降に生まれた場合は取得できない。

BNO旅券は実際には英国の旅券でなく、英国政府が発行する渡航文書(Travel document)である。英国入国の際に外国人同様の入国審査を受けなければならない。

なお、日本政府は、HKSAR旅券とBNO旅券保有者にビザ免除を認めている。

 


2020/6/6 韓国との関係:WTOへの提訴手続き再開と日本製鉄資産差し押さえ問題 

韓国政府は6月2日、日本が韓国向け輸出規制を解除するかどうかの回答を最後まで出さなかったことで、世界貿易機関(WTO)への紛争解決手続きを再開すると発表した。

 

日本政府は2019年7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくすると発表した。有機ELに使うフッ化ポリイミドなど3品目について、個別に審査・許可する方式に切り替える。安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定も削除する。

2019/7/3  政府、半導体材料の対韓輸出規制を発表 

韓国は9月11日、日本の半導体材料に対する輸出管理の厳格化がWTO協定に違反するとしてに日本を提訴した。WTOは貿易紛争の処理を二審制にしており、まず2国間で解決方法をさぐる協議が起点となる。

10月11日の協議は平行線をたどった。

2019/10/8  韓国向け半導体材料 輸出規制の状況

韓国政府は2019年11月22日、日本との協議再開に伴い、WTOの紛争解決手続きを中断した。

経済産業省は12月20日、韓国向けの輸出管理を厳格化していた半導体材料3品目のうち、レジスト(感光材)の管理措置を緩和した。

 

韓国の産業通商資源部は6月2日、「韓国政府は、昨年11月22日に暫定停止していた日本の3品目輸出制限措置について、WTOの紛争解決手続を再開することを決定した」と述べた。

これに先立って韓国政府は日本に対して、5月31日まで輸出規制を解除するかどうかについて立場を明らかにしてほしいと要請したが、回答を得られなかった。
このため、日本政府に問題解決の意志がなく、当初WTO手続き停止の条件だった両国間の正常的会話が進んでいないと判断した。

韓国政府は近く、WTOにパネル設置を要請して提訴手続きを再開する。「WTOへの提訴を通じて、日本措置の不当性を国際社会に知らせたい」としている。
ただし、日本との二国間対話も続けていくと付け加えた。
 

これについて茂木外相は、「韓国が一方的に紛争解決手続きの再開を決めたのは残念だ。輸出管理の見直しは、両国対話の中で行われなければならない」と述べた。

なお、手続きが再開されても1審の判定までは通常2年かかり、現在WTO上級委員7人中6人が空席(WTO紛争解決手続きに対する強い不満を持つ米国が上級委員の選考プロセスを阻止)なので、上訴機構が機能停止している。

ーーー

韓国大法院(最高裁)が元徴用工訴訟で日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた問題で、大邱地方法院浦項支院は6月1日、日本製鉄に韓国人強制徴用被害者賠償のための資産差し押さえ書類などを公示送達した。

大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で、被害者の勝訴を確定した。

朝鮮半島が日本統治下にあった戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者が損害賠償を求めた裁判で、韓国大法院は2018年10月30日、新日鉄住金に対して1人あたり約1000万円の賠償を命じた。

原告側は2019年1月と3月の2回にわたり、日本製鉄とPOSCOのJVのPNR (POSCO-NIPPON STEEL RHF Joint Venture) の株式9億7300万ウォン(約8700万円)相当を差し押さえた。

しかし、日本側はこの判決を拒否したまま判決関連書類を受領しなかった。
日本政府は、韓国の大法院判決は日韓請求権協定違反との立場で韓国政府に対応を求めている。

今回の「公示送達」は裁判所が書類を公開掲示した後、一定期間が過ぎれば訴訟当事者に書類が伝えられたとみなす制度で、公示送達期限である8月4日午前0時を越えた時点で、裁判所は押収された日本製鉄の国内資産に対して現金化命令を下すことができるようになる。ただし、裁判所は日本戦犯企業に対する尋問手続きを進めると明らかにしたことから、尋問書発送のための公示送達などの追加手続きが続くと見られる。

また、売却命令が出たとしても、実際に資産売却が終わるまでには時間がかかるとみられる。

強制徴用に関連し、日本企業に公示送達決定が下されたのは今回が初めて 。

茂木外相は韓国の外交部長官との電話会談で、資産現金化問題に対して「深刻な状況を招く」と警告した。

日本企業では他に2社の資産が差し押さえられている。

三菱重工業:2つの商標権と6つの特許権、現金換算で8億400万ウォン(約7200万円)相当
不二越:韓国内の合弁企業「大成・NACHI油圧工業」の株式7万6500株で、約7億6500万ウォン(約6840万円)相当


この問題の解決のため、韓国国会の文喜相議長が2019年末に解決法案を提出した。

法案は日韓の企業と個人から寄付金を募って基金を設け、裁判所や韓国政府が認めた元徴用工らに慰謝料を支給する内容で、企業や個人に寄付を強要しない方針を明記し、受給者は企業への請求権を放棄したとみなす規定を盛り込んだ。

しかし、法案は原告や市民団体の反対で審議にも至らぬまま、韓国憲法の規定により国会会期末の5月29日で廃案となった。


2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給  

AstraZenecaは5月21日、英オックスフォード大学と共同開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。更に増設する。既に4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。

AstraZenecaは同日、米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドルの支援を受けたことも明らかにした。同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。
英国政府も6550万英ポンドを支援し、英国人用に1億回分(うち 9月までに3千万回分)を確保した。

2020/5/22   アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ 

ワクチンは資金力のある先進国に優先的に供給され、開発途上国には行かないのではと懸念された。

 

しかし、AstraZenecaは6月4日、ワクチンを増設し、開発途上国にも供給すると発表した。

1) 同社は、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスと提携し、3億回分を年末までに引き渡しを開始する。

2) インドのワクチン大手Serum Institute of India (SII) とライセンス契約を締結、10億回分を低・中所得国に供給する。うち4億回分は年末までに供給する。
  このうち、一定量(発表なし)はインド向けで、残りはGAVI によって他の低所得国に配られる。

以上により、生産能力は20億回分となり、自社製造のうち3億回分は米国、1億回分は英国、3億回分はCEPI/Gavi 向け、残り3億回分は不明。
インドのSII製造分はインドとGAVI経由で低所得国向けとなる。

合計生産 20億回分のうち、少なくとも13億回分は低・中所得国向けとなる。


 

付記

AstraZenecaは6月13日、英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルスワクチンを、欧州に最大4億回分供給することで、ドイツ、フランス、イタリア、オランダで形成するワクチンの早期確保のための「ワクチン同盟」と合意したと発表した。「利益なし」で、年末までに納入を始める。

独保健省も同日、EU全体向けに「少なくとも3億回分」のワクチン確保でAstraZenecaと合意したと表明、ワクチンは「同盟への参加を望む全ての加盟国に人口に応じて配分される」と説明した。
今後はEU欧州委員会とも連携を深める。

ーーー

4月24日、WHOとビル&メリンダ・ゲイツ財団、CEPI、GAVI、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)、ユニットエイド(三大感染症に関わる医薬品の価格低下や安定供給などに取り組んでいる国際機関)、ウェルカム・トラスト(英国の民間財団)が、COVID-19の診断、治療、ワクチンの開発、製造と平等なアクセスを促進するための地球規模のプラットフォームとして、「COVID-19関連製品へのアクセス促進枠組み」(Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator)を設立した。

低・中所得国を含め世界中にワクチンをフェアに供給することを狙いとする。

今回のCEPIとGaviとの提携による低・中所得国向けのワクチン供給は、「COVID-19関連製品へのアクセス促進枠組み」の最初のケースである。


感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスの内容は下記の通り。

CEPI (Coalition for Epidemic Preparedness Innovations) は、世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年1月ダボス会議において発足した官民連携パートナーシップ。
日本、ノルウェー、ドイツ、英国、オーストラリア、カナダ、ベルギーに加え、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラストが拠出

GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)は、子どもの予防接種プログラムの拡大を通じて、世界の子どもの命を救い、人々の健康を守ることをミッションとする。
2016−2020年のGaviへの日本の貢献は9,500万ドル。


   https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0331/shiryo_01-2.pdf


中国の李克強総理は6月4日にオンラインで開催された「グローバル・ワクチン・サミット」でスピーチを行った。

中国は現在、新型コロナウイルスのワクチン・治療薬・検査試薬研究の難関攻略を急いでいる。中国はワクチン開発の国際協力を重視しており、先般EU等が発起した新型コロナウイルス感染症対策の国際寄付総会に参加した。引き続き各者と協力を強化していきたい。

GAVIアライアンスは中国と良好な協力を保ち続けており、以前中国側のワクチン接種と国際的応用を支えるために出資した。今回の新型コロナウイルス感染症の流行という試練を前に、中国政府はGAVIアライアンスの資金調達のために寄付を行い、中国の研究機関やワクチン生産企業とアライアンスの協力強化を促し、ワクチンの普及においてGAVIアライアンスが重要な役割を発揮することを支持したい。我々は同舟相救い、手を携えて1日も早く感染症に打ち勝ちたい。

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厚労省は6月2日、新型コロナウイルスのワクチンを早期実用化する「加速並行プラン」をまとめた。

国内外で研究開発が進むワクチンについて国内で「2021年前半に接種開始」との目標を設定した。

ワクチン候補として、日本医療研究開発機構(AMED)が支援している国産ワクチン5件と、日本政府がCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)に資金を拠出し、CEPI支援して海外のワクチン9件(AstraZenecaのこのワクチンを含む)を挙げている。

2020/6/4 厚労省、新型コロナウイルスワクチンの早期実用化で「加速並行プラン」

海外分については、恐らく自国が最優先で、余分があれば今回の例のように低・中所得国に回される可能性がある。

国産ワクチンの開発が遅れた場合、日本での接種が遅れる恐れがある。

 


2020/6/8 OPECプラス、現行の減産を1カ月延長  

OPECプラスのエネルギー担当閣僚は6月6日、テレビ会議を開き、現行の減産の1カ月延長を決めた。

 

4月12日の合意では下記の通りであった。

  2020/5〜6 2020/7〜12 2021/1〜2022/4
2020/4/12決定 970万バレル

770万バレル

580万バレル

2020/4/13    OPECプラス協調減産、日量970万バレルで最終合意

今回、6月に下記の自主的追加減産をすることが分かった。

Saudi Arabia (1 mb/d);  UAE (100 tb/d); Kuwait (80 tb/d) ; Oman (10-15 tb/d)
Several countries, such as Norway and Canada

今回、下記を決めた。

1)  7月の減産量を日量960万バレルとする。

  5〜6月の減産を継続するが、メキシコ(減産義務 10万バレル)が7月に離脱

2) 割り当てられた減産量を守らず、生産超過にある参加国(イラク、ナイジェリアなど)は7〜9月に減産を拡大し、超過分を相殺
 

   付記 サウジは別途行っていた自主的追加減産 100万バレル/日を6月末で終了すると発表した。

 

現在の市況は下図の通り。

 

OPECプラスのリーダーのサウジとロシアは、歳入の観点から原油価格の急落は避けたい一方、米シェール企業の生産再開を誘う50ドルを大きく上回る事態は避けたい、との思惑では一致している。

 

 

 


2020/6/9 本庶博士、オプジーボ特許使用料で小野薬品を提訴へ 

ノーベル医学生理学賞受賞者の本庶佑・京大特別教授は6月5日、「オプジーボ」の特許をめぐり、小野薬品工業に対し、特許使用料の配分226億円余りを求める訴訟を今月中旬に大阪地裁に起こすと発表した。

本庶博士は従来から「オプジーボ」の特許の対価について小野薬品と争っているが、今回はそれとは別で、Merckの「キイトルーダ」の特許侵害訴訟での和解でメルク社が支払う特許使用料の配分に関するもの。

従来の経緯は下記の通り。

2003/7 本庶博士と小野薬品が「PD-1阻害による癌治療法」について特許出願

2006/10  本庶博士と小野薬品が特許使用料契約締結 

小野薬品が独占使用、本庶博士は対価を受け取る。

本庶博士は当初、京大に出願を要請したが、当時、京大には知財を扱う専門人材やノウハウがなく資金も不十分だったため、本庶博士本人が、小野薬品と共同出願した 。
当時の契約は本庶博士が弁護士を雇わずに署名したもの。

本庶博士によると、対価は約0.75%という。

本庶博士は抗がん剤として使う用途を視野にいれた特許と考えていたが、小野薬品はPD-1を作る遺伝子という狭い範囲の特許とみて契約を提示したため、料率の低い契約になったとされる。

当時はがんの免疫療法が「海の物とも山の物ともわからないという扱い」で、業界関係者はごく初期の特許の料率が1ケタになることは珍しくないとしている。

2011/10 本庶博士が上乗せを要請、交渉開始。

2013  小野薬品が書面で改定案提示

  現行契約 小野薬品提案
小野薬品の売り上げ 0.75% 2%
Bristol-Myers Squibbから入る特許料 10%
Merckから入る特許料 40%

本庶博士は「安すぎる」として合意せず、交渉を続けたが、小野薬品が一方的に撤回した。

2014/9 小野薬品、オプジーボ発売

2014年9月の販売開始から2018年12月までの4年の売上高約2890億円に対し、小野薬品からの支払は約26億円 。

本庶博士は受け取りを拒否し、小野薬品は法務局に供託している。

2014/9   同じ抗PD-1抗体であるMerck のキイトルーダ(Keytruda)の特許侵害訴訟で、小野薬品が本庶博士に協力を要請

本庶博士によると、小野薬品が受け取るロイヤルティーなどの40%相当額を支払う「約束」があったと主張。
今回、小野薬品が既に支払った1%分を除く39%分(約226億円)の支払いを求める。

2017/1 小野薬品とMerckが和解

小野薬品発表

小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS) が保有する用途特許および物質特許が有効であることを確認
Merckの「
キイトルーダ®」の販売を許諾する
Merck
当社およびBMS社に対し62500万ドルの頭金を支払い201711日から20231231日まではキイトルーダの全世界売上の6.5%202411日から20261231日までは2.5%をロイヤルティとして支払う 。
頭金およびロイヤルティは当社に25%、BMS社に75%の割合で分配

2018/10 ノーベル医学生理学賞受賞決定

2018/11 小野薬品が本庶博士に対し申し入れ

対価の上乗せという枠組みではなく、将来の基礎研究の促進や若手研究者の育成に資するという趣旨から京都大学への最大300億円の寄付を検討。

本庶博士は拒否

2019/4 本庶博士記者会見、対価引き上げを要求

本庶博士は抗がん剤として使う用途を視野にいれた特許と考えていたが、小野薬品はPD-1を作る遺伝子という狭い範囲の特許とみて契約を提示したため、料率の低い契約になった。「用途特許ならば5〜10%が常識的なレベルだ」(代理人弁護士)

代理人は@小野薬品の売り上げ、Aブリストルから入る権利使用料、B同様の薬を開発した別企業から入る使用料の3種類の一部を本庶博士が受け取るべきだと主張、仮に試算すると、現時点で約830億円になるとし、「今後さらに増える」と強調 した。

若手研究者を支援する1千億円規模の基金を作り、対価を基金に投じるとしている。

なお、特許料増額交渉は発売3年前の2011年からしており、後出しジャンケンではないとした。

2019/5 小野薬品が反論、契約の見直しは拒否、別途京大への寄付を検討

2011年に本庶教授から当社に要請のあった契約の見直しに対しても誠意をもって話し合いを続けてきたが、合意に至らず、2018年11月に本庶教授に対し、対価の上乗せという枠組みではなく、将来の基礎研究の促進や若手研究者の育成に資するという趣旨から京都大学への寄付を検討している旨、申し入れた。

今後は、本庶教授との話し合いを継続するとともに、基礎研究の促進や若手研究者の育成のための寄付について慎重に検討する。

ーーー

今回は、Merck のキイトルーダ(Keytruda)の特許侵害訴訟で、小野薬品が本庶博士の協力を要請した際に、小野薬品が受け取るロイヤルティーなどの40%相当額を支払う「約束」があったとし、小野薬品が既に支払った1%分を除く39%分(約226億円)の支払いを求める。

2013年の小野薬品の改定提案に、Merckから入る特許料 40%となっている。

これは一般の特許料の配分とは異なり、協力の対価と考えられ、今回の本庶博士の要求を裏づけすると思われる。

これは、2019/4の記者会見での要求の一部であり、他に@小野薬品の売り上げ、Aブリストルから入る権利使用料の分が残っている。

 

なお、Massachusettsの米国地裁は2019年5月17日、ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学 の本庶佑・特別教授が開発した癌の治療薬「オプジーボ」の特許について、ハーバード大学医学部の主要関連医療機関の一つである Dana-Farber Cancer Instituteの研究者 Gordon Freeman と Clive Woodの2人を共同発明者として認める判決を出した。

2019/5/25 米地裁、オプジーボの発明者に米学者2名を追加

本庶博士は控訴を決め、第2審の知財専門の巡回裁判所での審理に移るものと思われる。本件のその後についてはフォローできていない。

仮に本庶博士の敗訴となれば、特許料の配分交渉が更に複雑となる。

 


2020/6/10 米国の「経済繁栄ネットワーク」構想 

米国はグローバルな供給網の脱中国を目標に「経済繁栄ネットワーク(Economic Prosperity Network/EPN)」構想を推進している。

キース・クラック米国務次官(経済担当)は6月5日、韓国の李泰鎬外交部第2次官との電話会談で米国が主導する新しい経済同盟構想「経済繁栄ネットワーク(Economic Prosperity Network/EPN)」について説明した。

「EPNは世界で考えを同じくする国や企業と市民社会で構成され、民主的価値観に基づいて運営される」と説明した。 米国は韓国をはじめ日本やインド、オーストラリアなど友好国の参加を考えているという。

EPNは米国が世界経済の覇権競争の中で、中国を孤立させるために親米国家で構成する経済ブロックを意味する。
中国をグローバル生産体系から孤立させるための構想で、自由陣営内で国民を保護するサプライチェーンを拡大して多角化することとされ、一種の「反中経済同盟」である。

現時点ではまだ構想段階で、具体的な内容の言及はなかったが、「関心を持ってほしい」との要請をしたという。

米国と中国の間でバランスを取らなければならない韓国政府としては、「反中国」の性格が強いEPNへの参加が負担にならざるを得ず、慎重に検討する。

日本政府はどうするのだろうか。

EPNとは無関係と思われるが、4月30日に成立した2020年度補正予算サプライチェーン改革【2,486億円】が含まれている。

(1) サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金 【2,200億円】
 
生産拠点等を日本国内に整備する場合などに、当該生産拠点等に係る建物や設備の導入に係る経費を補助。

(2) 海外サプライチェーン多元化等支援事業 【235億円】
 
日本・ASEANのサプライチェーンを強靭化するため、製品・部素材の生産拠点の複線化を行う場合などに、設備導入等に係る経費を補助。

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トランプ政権は反中国の姿勢を強めている。膨大な対中貿易赤字が一向に減らないことを問題視し、米国の失業と結びつけている。中国が組織的に米国の知財を盗用しているともする。
今回の新型コロナウイルスの蔓延に際し、必要な医薬品やサーマルカメラなどの多くが中国依存であることが懸念に拍車をかけた。
 

Trump氏は大統領選挙戦中、最大の貿易赤字相手国である中国への強硬姿勢を鮮明にしていた。

Trump大統領は2017年4月18日、連邦政府機関に米国製品の調達を優先するよう求める“Buy American”、高度な技術を持つ外国人労働者を対象とするビザの審査を厳格化する“Hire American”の大統領令を出した。「労働者を守り、雇用を守るという力強いシグナルを世界に送る」と「米国第一」の姿勢を改めて強調した。

2017/4/22 Trump大統領、“Buy American”、“Hire American”の大統領令 

トランプ米大統領は2017年8月14日、不公正貿易での制裁も視野に、中国に対する通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。

2017/8/18   米大統領、通商法301条で対中調査指示

トランプ大統領は2018年3月7日のツイッターで「貿易赤字を1000億ドル減らす計画の策定を求めた。

2018/3/19 トランプ政権、貿易赤字解消に躍起、対中貿易赤字1000億ドル削減を要請 

トランプ大統領は2018年3月22日、米通商代表部(USTR)に中国の知財侵害に制裁関税を課すよう指示する大統領令に署名した。

2018/3/23  トランプ大統領、中国の知財侵害に制裁関税を指示

USTRは2018年4月3日、通商法301条に基づき、中国の知的財産の侵害に対して発動する制裁関税の原案を公表した。

中国がこれに対抗、米国は第二次、第三次、第四次と制裁を引き上げた。

米国の対中制裁関税:

  当初 2019/8/23 発表 10/11 12/13
@〜B
 2500億ドル
@ 340億ドル  2018/7/6    25% 2019/10/1 30%予定
(→10/15に延期)
 
引き上げ延期 
(25%維持)
25%据え置き
A 160億ドル 2018/8/23  25%
B 2000億ドル 2018/9/24   10%
→2019/5/10  25%
C 3000億ドル 一般  1200億ドル 2019/9/1  10% 9/1   15% 7.5%に引き下げ
消費財 1600億ドル 2019/12/15    10% 12/15  15%  予定 発動見送り

2019/8/2 トランプ大統領、9月1日に対中関税第4弾 ツイートで表明

米中両政府は2019年12月13日、貿易協議の「第一段階」で正式合意したと発表した。2020年1月15日、「第一段階貿易合意」の署名を行った。

合意は知財、通貨、貿易拡大など7項目で、中国は米国からモノとサービスの輸入を2017年比で2年で2000億ドル増やす。

2020/1/17 米中「第一段階貿易合意」に署名 

並行して、米国は安保上懸念がある企業を列挙したEntity Listへの中国企業の追加やHuawei排除などで、中国企業の締め付けを強めている。

2019/8/21   米、Huawei 禁輸強化

ーーー

米国は米国のサプライチェーンで中国が重要な大きな部分を占めているのに危機感を感じ、全省庁を挙げてどうすれば中国から移せるかを検討している。税優遇や補助金などが対策の一部となる。

生産を中国から米国に移し、雇用を増やすのが最大の目標であるが、生産を中国から友好国に移し、中国依存を減らすことも狙う。

「経済繁栄ネットワーク(Economic Prosperity Network/EPN)」構想は、信頼できるパートナーと世界サプライチェーンを構築するというものである。

 

その一つが、2019年11月に米政府がタイ・バンコクのインド・太平洋ビジネスフォーラムで発表した「Blue Dot Network(BDN)」である。中国の「一帯一路」に対抗するもの。

米国・オーストラリア・日本の民間開発庁が協力してアジア・太平洋地域に進出する企業を支援するという構想。

米金融開発庁(DCF)が600億ドルを支援し、米輸出入銀行は1,350億ドルほどの貸出保証を行う。

米国の海外民間投資公社(Overseas Private Investment Corporation)とオーストラリア外務貿易省、日本の国際協力銀行(JBIC)が計画を主導する。

「公共部門と民間部門を結び付け、オープンかつ包括的な枠組みで、グローバルインフラ開発のために、高品質で信頼できる標準を促進する。」

支援基準では「途上国の主権を守り、過剰債務に陥らないように、地域の労働者に仕事を提供する」ことなどを強調。過剰な投融資で返済に窮した国がインフラを奪われる「債務のわな」が問題となっている中国の支援と異なることをアピールした。

本年5月15日、世界第1位の半導体ファウンドリーの台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が米国のアリゾナに最先端の半導体工場を建設する計画を発表した。
米国の連邦・州政府からの支援を受けて総額約120億ドルを投じ、2021年から建設を始め、24年に量産を開始する。

TSMCは、半導体の受託生産で世界シェアの約5割を占め、Apple の「iPhone」のCPU(中央演算処理装置)もTSMCが全量生産する。

TSMCの半導体工場は台湾に集中しているが、南京に先端半導体の工場を建設し、2018年から稼働している。米国に有する工場は世代が古い工場である。

回路線幅 5ナノの製品を生産し、生産能力はウエハー換算で月2万枚。

この発表の前にWall Street Journal が、ホワイトハウスがTMSCやIntel と米国内に半導体工場を建設するための話し合いをしていると報じていた。


なお、米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は5月15日、Entity Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。

米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。

これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。

2020/5/18     米商務省、Huawei向け輸出規制を強化


2020/6/10 タカラバイオ、PCR検査の新手法を開発 

タカラバイオの米国子会社Takara Bio USA, Inc.は6月8日、米国の医療関連企業bioSyntagma, Inc. のグループと組んで、PCR検査の効率を大幅に上げる手法を開発したと発表した。

同社のSmartChip real-time PCR装置、チップ、試薬を使うもので、稼働時間2時間で5,184件を同時に検査できる。

bioSyntagmaは米政府に緊急使用許可を申請中で、6月中にも承認される見通しという。

2018年に研究用に開発したSmartChip real-time PCR装置を新型コロナ用に転用した。

Rocheの装置は一度に4,128件を検査できるが、検査に24時間かかるという。

タカラバイオによると、SmartChip real-time PCR 装置の働きは下図の通り。10〜30分で5,184件のサンプルをチップに分け、10〜30分でそれぞれに反応液を分注、2時間で検査する。

bioSyntagma はアリゾナ州立大学からスピンオフした企業で、遺伝子から病気をみつける Molecular Fingerprint®(分子指紋)を開発している。Takara BioのSmartChipテクノロジーを使っており、新型コロナ用で協力した。

同社は検査会社のP2 Diagnosticsと提携して活動している。

 

 


2020/6/11 トランプ大統領、ロブスターでEUと中国に対抗関税警告 

トランプ米大統領は6月5日、EUと中国が米国産ロブスターに対する関税を撤廃しなければ、対抗措置として関税を発動すると警告した。

メーン州で面会した漁業関係者が「隣のカナダはEUと貿易協定を結んでいるのでロブスターに関税がかからず、我々は不利だ」と不満を伝えると、「欧州や中国がロブスターへの関税をやめなければ、我々も関税を課す」と述べた。

EUに対しては、「EUが早急に関税を撤廃しなければ、EUから輸入する自動車に同等プラス(“equivalent-plus”)の関税を課す」と述べた。 中国に対しては、追加関税対象となる中国製品(中国にとって大事なもの)を特定するようナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)に指示とした。

トランプ大統領は同時に、オバマ前大統領が課したメイン州海岸沖の5000平方マイルの海域での漁業制限を直ちに撤回する命令にサインした。

メイン州ロブスター商工会議所会長は、「メイン州には許可証を持ったロブスター養殖業者が約4500人おり、2018年のロブスター産業の雇用者は約1万〜1万2千人ほどだった。中国市場への再進出が私たちロブスター関係者の長期的な経済成長にとって非常に重要だ」と話す。

メーン州は小さな州だが、トランプ大統領は2016年の前回の大統領選で僅差で敗北しており、重要視している。

ーーー

(EU)

EU市場は米国のロブスター輸出の15〜20%を占め、2億ドルの市場である。

これまでカナダとは市場を分けており、カナダ産は主に北欧、米国産は南欧(スペイン、イタリア、ギリシャ)が主であった。

カナダ・EU包括的経済連携協定(CETA)が2017年9月21日に暫定適用が開始され、カナダ産ロブスターはこれまでの関税 1ポンド当たり約1ユーロがゼロとなり、競争力が高まった。

この結果、カナダ産ロブスターは南欧でも米国産の市場を奪うようになった。

 FTAを締結して関税を下げるのは当たり前のことであり、米国もEUとFTAを結べば、同様の優遇が受けられる。それを不当として制裁関税をかけるというのはおかしい。

トランプ大統領は2018年にもEUの自動車に追加関税をかけると脅している。

米政府は2018年5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。

これを受け、EUの欧州委員会は6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

トランプ大統領は6月22日、「EUが関税や障壁をすぐに取り除かないなら、輸入自動車全てに20%の関税をかける。米国で生産せよ!」と呟いた。

これに対し、EU側は米国産の大豆とLNGの調達を減らすと対抗した。

結局、トランプ米大統領は7月25日に、訪米中のJean-Claude Juncker 欧州委員長と会談し、関税引き下げに向け EUと協力することで合意したと述べた。

米国は2019年5月17日、輸入自動車や部品に対する関税の判断を最大6カ月延期すると正式発表した。

2019/5/20 米、輸入自動車・部品の通商拡大法232条の判断延期

今回も、脅しは効かないだろう。

 (中国)

10年前までは中国のロブスター輸入は少額であった。その後、ミドルクラスが増えた中国では、ロブスターは新たなステータスシンボルとなり、輸出は毎年倍増してきた。

アメリカ海洋漁業局によれば、2019年前半の中国へのロブスターの輸出は、前年比で量にして82%、金額では79%も減少した。
20
19年上半期のカナダ産ロブスターの対中輸出量は約1万3600トンに上り、2018年全体の輸出量とほぼ同じだった。

カナダ・ロブスター協会では、中国のロブスター消費は近年増加しているが、いまのように輸出が絶好調なのは、米国への中国の追加関税がなければありえなかっただろうしている。

米国産の輸出減は自業自得である。

トランプ米政権は2018年6月15日、中国の知的財産権侵害への制裁措置として、中国による知財侵害の被害額と同規模の500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課すと発表した。

これを受け、中国商務省は2018年6月16日、報復措置として、659品目、総額500億ドル規模の米国製品や農水産品に25%の追加関税を課すと正式発表した。ロブスターはこれに含まれた。

米国は第二次、第三次、第四次と制裁を引き上げ、中国も対抗した。

米中両政府は2019年12月13日、貿易協議の「第一段階」で正式合意したと発表した。2020年1月15日、「第一段階貿易合意」の署名を行った。

米国は1次〜3次の2500億ドル相当分の25%関税は据え置き、中国もこれに対応する1100億ドル相当分の関税を(9月11日除外分を除き)据え置いた。

この結果、米国産ロブスターへの25%追加関税は残ったままである。

2019/12/16  米中貿易協議、第1段階で合意 


今回のトランプ大統領が問題視するロブスター関税は、自らが発動した中国品への追加関税への対抗であり、半年前に自らの判断で据え置きを認めたものである。


2020/6/11 朴槿恵前政権下での国政介入事件の崔順実被告、実刑確定 

韓国の朴槿恵前政権下での国政介入事件で、前大統領、朴槿恵被告と共謀し財閥から賄賂を受け取ったとして収賄罪などに問われた女性実業家、崔順実被告に対する上告審の判決公判が6月11日、韓国最高裁で開かれた。最高裁は上告を棄却し、懲役18年の実刑とした2審判決が確定した。

確定判決には崔被告への罰金200億ウォン(約18億円)、追徴金約63億ウォンも含まれている。

経緯は下記の通り。

  朴槿恵被告 崔順実被告
一審 2018年4月6日 ソウル中央地裁
懲役24年、罰金180億ウォン(約18億円)の実刑判決
 2018/4/6  朴前大統領に懲役24年の実刑判決
2018年2月13日
懲役20年、罰金180億ウオンの実刑判決
 
2018/2/13 朴前大統領親友に懲役20年、ロッテ重光会長も実刑
二審 2018年8月24日、ソウル高裁
懲役25年、罰金200億ウォン
同左
懲役20年、罰金200億ウォン
最高裁 2019年8月29日
差戻し
大統領在任中の収賄罪は、公職選挙法の規定に従い、他の罪と分けて判決を宣告する必要あり。収賄は認定。
同左
差戻し
強要罪のうち一部は無罪にすべきだと判断

2019/8/29 韓国最高裁、朴前大統領とサムスン電子副会長の二審判決破棄、差し戻し

差戻し二審 2020年7月10日予定
検察は5月20日、懲役35年などを求刑
2020年2月14日 ソウル高裁
懲役18年と罰金200億ウォン、追徴金約63億ウォン
最高裁   2020年6月11日
上告棄却。懲役18年の実刑と罰金200億ウォン、
追徴金約63億ウォンの2審判決が確定

なお、崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔被告らの控訴審判決公判が2018年2月5日開かれた。

ソウル高裁は地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。
2人の部下も執行猶予判決で釈放された。

2018/2/5 サムスントップ釈放 

大法院(最高裁)は2019年8月29日、第二審の判決【懲役2年6ヵ月・執行猶予4年】を破棄し、差し戻した。

大法院は李副会長から朴槿恵前大統領への賄賂の金額を86億8081万ウォンと認定した。

韓国の
特定経済犯罪加重処罰等に関する法律によると、横領金額が50億ウォン以上の場合、無期懲役または懲役5年以上の懲役に処せられる。

2019/8/29 韓国最高裁、朴前大統領とサムスン電子副会長の二審判決破棄、差し戻し

現在、差し戻し審が進んでおり、今夏にも結審する見通し

差戻し審では、第一審と同じ懲役5年か、それ以上の実刑判決が宣告される可能性が高く、再び収監される可能性もある。

 



2020/6/12 LG Chem、液晶ディスプレイ偏光板事業を売却、有機ELに集中 

LG Chemは6月10日、液晶ディスプレイ用偏光板事業を中国の素材メーカー寧波杉杉 (Ningbo Shanshan Co)に11億ドルで売却する条件付き契約を締結したと発表した。自動車向け等の一部偏光板事業は売却対象外となる。

詳細は追って発表するとしているが、報道では、まず杉杉が70%、LG化学が30%出資する合弁会社を設立し、3年後をメドに残りの持ち分も杉杉側に売却する 。

LG Chem の南京と広州にある偏光板工場は売却し、韓国・梧倉工場は有機ELパネル偏光板や自動車向け液晶パネル偏光板の生産拠点として 残す。

寧波杉杉は衣料品のメーカーだが、リチウムイオン電池の材料も生産する。今回、このために31 億人民元 (約438 百万ドル) の増資を発表した。

ーーー

偏光板は液晶ディスプレイを構成する中核素材の一つで、バックライトから発する光を一方向に透過させ、他の方向の光は遮断する役割をする光学フィルム。

LG Chemの説明資料から:

 

LG Chemは、大型偏光板分野で世界1位の競争力を 持ち、一時は世界市場で27%のシェアを占めていた。

しかし、韓国ではLGディスプレーやサムスン電子が液晶事業を縮小しており、最近は中国の競合企業の低価格競争で収益性が落ちていることから、事業から撤退して有機ELに資源を集中する。

液晶パネル産業では2015年ごろから京東方科技集団(BOE)ら中国のパネルメーカーが政府資金を背景に巨額投資を続けており、 今回のLG Chemの偏光板事業の中国企業への売却で、中国勢がパネルの上流にも乗り出す。

ーーー

LG Chemは最近「脱液晶戦略」を推進してきた。

本年2月に液晶用カラーフィルター感光材事業を江蘇雅克科技(Yoke Technology)に580億ウォンで売却した。液晶ガラス基板事業も撤退を決めた。(売却を決めたが、買い手が付かずそのまま撤退した。)

偏光板事業も昨年下半期から売却に向けた本入札を進め今回売却を決めたもの。

逆に今後は有機EL事業に集中する。

同社では、「有機ELを中心に核心競争力を確保するのに集中しており、偏光板事業は韓国の梧倉工場で生産される有機EL偏光板を主力事業に育成する計画」と する。

姉妹会社である LG Display と LG electronics も有機EL技術の開発を進めている。

LG Chemは2019年3月29日、DuPontから有機ELの次世代技術である「soluble OLED技術」を買収したと発表した。溶液状の有機EL材料をインクジェットプリント技術を用いてパネルに定着させる方式で、既存の蒸着方式に比べて材料の損失率を低減させることができる。また、色再現率も向上させられる。LG Chemは同技術に関する約540件の特許と、DuPontの研究・生産設備を取得した。

2019年9月には、有機発光ダイオード技術と材料の開発および製造業者であり、ディスプレイおよび照明産業へのサービスのプロバイダーでもあるUniversal Display Corporation(UDC)と次世代OLED発光層の開発のためのパートナーシップを締結した。

OLEDでの発光層は、注入された電子と正孔が結合して光を出す重要な物質である。特定の色を発光するドーパント 材と、これが光を出すことができるよう支援するホスト材で構成される。

LG化学が開発してきたホスト材は低電圧でも電荷を輸送して寿命が優れている。UDCの燐光ドーパントプログラムは、優れた効率、高色再現、長寿命が特徴である。2つの物質を合わせると、発光層の色再現性能を最大限に引き出すことができる。 ホスト 材とドーパント材を互いに提供し、2つの材料間の最適な組み合わせを見つけることにした。

 


2020/6/13 FRB、2022年末までゼロ金利維持 

米連邦準備制度理事会(FRB)は6月10日の公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0〜0.25%のまま据え置く方針を決定した。

「現在続いている公衆衛生の危機は、短期的には経済活動、雇用、インフレにとって大きな重荷となり、中期的には経済見通しにとって深刻なリスクとなる」とした。

失業率は本年は9.3%、来年は6.5%と予想し、一部の楽観論に対して慎重な見方を示した。

経済が足元の状況を乗り切り、最大雇用と物価安定の目標達成に向け軌道に乗ったと自信をもてるようになるまで、この目標レンジを維持するとしている。

FRBの正副議長や理事、地区連銀総裁による参加者17人が、2022年までの政策方針と景気見通しをそれぞれ提示したが、そのうち15人がゼロ金利政策を少なくとも2022年末まで維持すると表明した。

なお、トランプ大統領が主張しているマイナス金利に関しては「効果が不透明」(パウエル議長)と明確に否定している。

また、家計と企業の信用の流れを支えるために、今後数カ月は少なくとも現状のペースで国債、住宅および商業不動産ローン担保証券の保有を増やすとした。

3月に再開した量的緩和政策は、購入枠を「必要とされる量」としてきたが、米国債は月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)も月400億ドル、合計月1200億ドルを当面の目安とすることとした。

ーーー

米連邦準備理事会(FRB)は3月15日、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響を抑えるため、政策金利を一気に1%引き下げ、事実上のゼロ金利政策に踏み切ることを決定した。 前月末から一気に1.50%下げた。

これにより、政策金利は0%〜0.25%となったが、今回、これを2022年末までは続ける。

   
2018/3  1.50%〜1.75%
2018/6  1.75%〜2.00%
2018/9  2.00%〜2.25%
2018/12  2.25%〜2.50%
2019/7     2.00%〜2.25%
2019/9  1.75%〜2.00%
2019/10

1.50%〜1.75%

2020/3/3

1.00%〜1.25%

2020/3/15

 0.00%〜0.25%

2020/3/16   米FRB、政策金利引き下げ 事実上ゼロ金利導入

 

3月15日の理事会では、これに加え、財務省証券などの債券を少なくとも7,000億ドル買い増す、いわゆる資産買い入れ策の再開も併せて発表した。
向こう数か月、財務省証券を少なくとも5,000億ドル、モーゲージ担保証券(RMBS)を少なくとも2,000億ドル、合計で少なくとも7,000億ドル買い増すとした。

3月17日には企業の資金繰りを抜本的に支援するため、企業が短期資金の調達に使うコマーシャルペーパー(CP)を買い入れる緊急措置を発動すると発表した。

更に、FRBは3月23日に臨時の連邦公開市場委員会を開き、米国債や住宅ローン担保証券の買入量をさきに決めた7,000億ドルから「必要量」に切り替え、当面無制限とするとした。

今回のFOMCでは、月1,200億ドル(米国債:月800億ドル、住宅ローン担保証券:月400億ドル)を当面の目安とすることとした。

 


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