11月4日の米ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場は、前日に続き大幅安となり、終値は77.19ドルとなった。
(11月5日は78.68円に戻った。)

OPECが生産枠を引き下げる可能性が薄いこと、米国を中心とした供給量の増加と需要の鈍さが重しとなり、下落が続き、6月20日の107.26ドルから28%の下落となっている。

欧州産原油の指標である北海ブレント原油も2.6%安の82.56ドルと、4年ぶりの安値を更新した。

欧州委員会は11月4日発表の秋季経済見通しで、ユーロ圏の今年の経済成長率予測を 1.2%から0.8%へ、来年についても1.7%から1.1%へとそれぞれ引き下げた。欧州の原油需要の弱さも原油安進行の主な要因の一つとなっている。

OPECのバドリ事務局長は9月16日、来年の需要見通し悪化を受けて、11月のOPEC総会で生産枠を日量50万バレル引き下げる可能性があると語った。

2012年以降は、国別の「生産枠」は撤廃され、新たにイラクを含む12ヶ国全体の「生産目標」として3,000万バレル/日が設定され、以降、据え置かれている。

OPEC生産枠の推移(千バレル/日)
  2007/2 2007/11 2008/1 2008/9 2008/11 2009/1 2012/1
Algeria 794 1,357 1,357 1,357    1,286






Iraq
 含まず

 

 

Iraq含む
Iran 3,788 3,817 3,817 3,817    3,618
Kuwait 2,065 2,531 2,531 2,531    2,399
Libya 1,371 1,712 1,712 1,712    1,623
Nigeria 2,123 2,163 2,163 2,163    2,050
Qatar 663 828 828 828     785
Saudi 8,399 8,943 8,943 8,943    8,477
UAE 2,257 2,567 2,567 2,567    2,433
Venezuela 2,970 2,470 2,470 2,470    2,341
Angola     ー     ー 1,900 1,900    1,801
Equador     ー     ー 520 520     493
Iraq (ー) (ー) (ー) (ー) (ー) (ー)
Indonesia 1,370 865 865

離  脱

Total 25,800 27,253 29,673 28,808   27,300 24,845 30,000
(増減) (-500) (1,450) 2,420 〔-865〕   (-1,500)    

しかし、複数の加盟国代表によると、大半は減産に消極的で、むしろ市場シェアを維持するため、生産量をこれまで以上としたい考えを示している。ナイジェリア、イラク、クウェート、リビアはいずれも生産を増やしている。

生産縮小の可能性があるのはサウジアラビアだけとされた。

そのサウジは、10月1日に11月分の輸出原油全てを値下げし、アジア向けについては2008年12月以来の安値に引き下げた。
供給過剰の解消に向けた減産で市場シェアを譲り渡すのではなく、OPECの他の加盟国との「価格戦争」に臨む用意があることを示唆した。

Saudi Aramcoは各地向け原油価格をベンチマーク価格からの調整金の額で発表している。

ベンチマーク価格は以下の通り。

米国向けは、2010年1月から以前のWTI crudeからArgus Sour Crude Index (ASCI:
米国メキシコ湾岸地域の中質サワー原油現物価格の指数)に変更した。
   
2009/10/31 Saudi Aramco、米国向け輸出の原油価格決定で英Argus Mediaの指標を利用へ

アジア向けは、ドバイ原油とオマーン原油のスポット価格の月間平均値を足し、2で割ったもの 。
欧州向けは、ロンドンのInternational Petroleum ExchangeでのBrent原油加重平均。

11月の調整金は米国向けはバレル当たり 2.45ドルから2.05ドルに0.40ドル下げ、アジア向けは-0.05ドルから-1.05ドルへと 1.00ドルの大幅下げ、欧州向けも -3.20ドルから-3.95ドルへと0.70ドル下げた。
 

サウジは11月3日、12月のアジア向け調整金を0.95ドル引き上げ、10月分に近い -0.10ドルまで戻し、欧州向けについても0.60ドル引き上げた。
このため、OPEC加盟国間で価格戦争が起きるとの観測は一時的に後退した。

しかし、米国向け12月積み原油の販売価格を値下げし、市場に衝撃が走った。調整金を2.05ドルから2013年以来最低の1.60ドルに 下げた。

 

米国向けのみを値下げしてきたことは、米市場におけるシェア維持の強い意志の表明に加え、価格をシェールオイルの採算分岐点以下にして、シェールオイルの増産トレンドにブレーキをかけようとしているのではない かとの推測も出ている。

一般にシェールオイルの生産コストは80ドル程度ではないかとの推定がされている。

付記 

ある報道では、サウジの米国向け値下げのきっかけは、8月の米国向け輸出が日量90万バレル以下となったことで、これは1988年以来の最低で、過去10年の平均の130万バレルと70%である。
サウジの油質とシェールの油質は異なり、サウジの競合相手はイラク、ベネズエラ、ブラジル、カナダで、これらとの競争で値下げを行ったとしている。

次回のOPEC総会は11月27日に予定されているが、現在では減産の可能性は見られておらず、在庫は増加する一方で、在庫の増加は必然的に価格下落をもたらす 。

付記

OPECは11月27日の総会で原油の減産見送りを決定した。
これを受け、原油は値下がり、11月27日(感謝祭休日)の時間外取引でWTI先物は一時67.75ドルと2010年5月以来の水準まで値を崩した。

ーーー

第二次石油ショック時の1982年3月にOPECは生産枠を決め、真のカルテルに移行し、高値を維持しようとしたが、その後、アラスカや北海油田のほか、原子力、天然ガスなどの新しいエネルギーソースが増え、また各国で省エネを進めたため、価格が下がり始めた。

しかし、OPEC諸国は一度増えた収入を維持しようとして、生産枠を破って増産、サウジ一国がスイング国として価格維持のため減産した。

1985年に入り、サウジのシェアは大幅にダウンしたため、スイング国をやめると宣言、値下げ販売を行ったため、各国が追随し、大幅な価格下落となった。


今回もサウジが値下げによるシェア維持に踏み切ると、原油価格の大幅な下落も起こり得る。

その場合、ロシア、イラン、イラクなど経済を石油に頼る各国の経済に大きな打撃を与えるとともに、米国のシェールブームにも影響を与え、世界経済が混乱に陥る恐れもある。

 



2014/11/7   Chesapeake Energy、シェール鉱区の一部を売却

Chesapeake Energy は10月16日、西バージニア州のUtica Shaleの一部と Southern Marcellus Shaleの資産をSouthwestern Energy Companyに53億75百万ドルで売却する契約を締結したと発表した。

西バージニア州北部とペンシルバニア州南部の約413千エーカーと1500の井戸(うち435はMarcellus、Uticaシェール層)及び関連施設を売却する。
これらの資産の生産量は原油換算で日量56千バレルで、ガスが184,000Mcf、NGLが2万バレル、コンデンセート 5千バレルとなっている。
2013年末現在の確認埋蔵量は原油換算 221百万バレル。

ーーー

Chesapeak Energy は、ExxonMobilに次ぐ米天然ガス2位で、“America's Champion of Natural Gas”、“the biggest frackers in the world”と自称し、2012年までの5年で900万エーカーを超える土地(全てを掘削するのに30年かかる)をリースし、新しいシェール層が見 つかると、権利の獲得を続けた。

同社は算出ガスの一定量を提供するという金融取引で資金を調達していたが、2012年に同社の借入金は162億ドルに達し、株主は経営トップのリスク志向や支出への意欲について懸念するようになった。

Chesapeake Energy は2012年5月1日、創業者で会長兼CEOの Aubrey K. McClendonが会長職を辞すると発表した。

Chesapeakeには創業者参加計画(FWPP:Founder Well Participation Program)という名の計画があり、McClendonが同社の数千にも及ぶ井戸の全てについて2.5%の持分を購入することを認めているが、McClendon CEOがChesapeakeの石油・ガス井に対する個人持分を担保に過去3年間で11億ドルを借り入れていることをReutersが報じた。
借り入れた資金はこの個人持分の購入に使われていた。

更に、McClendon が2004年から2008年までの間にヘッジファンドを通じChesapeakeの扱う製品と同じ石油や天然ガスなどに2億ドルを投じていたと Reutersが報道した。

ある上院議員は司法省に対し、詐欺、価格操作、利益相反、その他の違法行為がないか、Chesapeakeを捜査するよう求めた。

2012/5/9   Chesapeake Energyの混乱

Carl Icahnが会長の行動を抑えるため同社株7.6%を取得、会長を辞めさせるとともに取締役の半数を入れ替えた。
McClendonは2013年4月1日付けでCEOも辞した。

その後、同社は資産売却を続けた。

2012年9月に、Permian Basinの資産を69億ドルで売却するいくつかの契約を締結した。年内に期限が来る40億ドルの借入金を返済した。

Permian Basinの 南 Delaware Basin portion の資産をShell 子会社に、北 Delaware Basin portion の資産をChevronに売却した。
また、Midland Basin portion を EnerVest, Ltd.に売却した。(以上3社で33億ドル)

更にEagle Ford、Utica、Haynesville、Powder River Basin Niobrara shale play などの集荷、処理施設をGlobal Infrastructure Partnersに27億ドルで売却。
他の2社にMid-Continentの中流資産を3億ドルで売却した。
2012年6月にもAccess Midstream Partners, L.P. の持分の売却(20億ドル)を加えると、中流資産の売却は50億ドルに達する。

また、Utica Shaleや他の地区の非コアのリース資産を6億ドルで売却した。

2012年12月には、Marcellus、Utica、Eagle Ford、Haynesville、Niobrara shale などの集荷、処理施設のほとんどをAccess Midstream Partners, L.P.に21.6億ドルで売却した。
また、OklahomaとTexasの集荷、処理施設を1.75億ドルで売却した。

2013年5月に、AnadarkoのSenior Vice PresidentのDoug LawlerがCEOに就任した。

Chesapeake Energyは2013年7月、Northern Eagle Ford Shale とHaynesville Shale を EXCO Resources, Inc. に10億ドルで売却した。

2014年1月には、Chaparral Energy, Inc.の権益100%を2.15億ドルで売却した。

2月には、 Access Midstream Partners, L.P.とExterran Partners, L.P. に子会社 MidCon Compression, L.L.C.の持つ圧縮機 437基を5.2億ドルで売却した。

同社の借入金は115億ドルに減っているが、今回の売却収入はこの借入金の返済に使われる。

同社の損益状況は下記の通り。

ーーー

既報の通り、Chevronは10月6日、カナダAlberta 州のDuvernay シェール層の30%の権益をKuwait Petroleum の100%子会社 Kuwait Foreign Petroleum Exploration Company(KUFPEC)に15億米ドルで売却する契約を締結したと発表した。

Apache Corp.は、物言う株主の Jana Partners LLC(ヘッジファンド)からリストラ実施の圧力を受け、本年7月にカナダのKitmat LNG 計画と豪州のWheatstone LNG 計画からの離脱の意向を明らかにした。

2014/10/9  Chevron、カナダのシェール権益の30%をクウェート石油子会社に売却、JV運営

住友商事は9月29日、米国のタイトオイル開発などで2700億円の大幅な損失を計上すると発表した。

2014/10/1  住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上

Shellは8月14日、ドライガス(シェールガス)中心のLouisiana州のHaynesville シェールとWyoming州のPinedaleシェールを売却し、コンデンセートやLPG などのウェットガス を多く含むMarcellusとUticaシェールを取得すると発表した。

Ultra Petroleumを相手に、Pinedal の鉱区を売却、MarcellusとUticaの鉱区を購入し、ネットで925百万ドルを取得する。
Vine Oil & Gas LP とそのパートナーのBlackstoneにHaynesvilleの鉱区を12億ドルで売却する。

シェールガスは100万BTU当たり4〜5ドル程度で、採算が取れていない。
     2013/4/5  米国のシェールガス開発会社が破産法申請 

これに対し、コンデンセートは原油価格相当であり、これまではバレル当たり100ドル程度の収入があった。
(但し、今後原油価格が更に下がると、これも儲からなくなる。)

米国のシェールガス、シェールオイルも決してバラ色ではないようだ。
 


2014/11/8  住友金属鉱山、福島に二次電池用正極材料の生産拠点 

住友金属鉱山は11月5日、二次電池用正極材料であるニッケル酸リチウムの生産拠点を、福島県双葉郡楢葉町に設置すると発表した。

同社は現在、ニッケル酸リチウムの生産を新居浜市の磯浦工場で行っているが、増強の余地が十分でないこと、複数拠点での生産により供給リスクの分散を図れることなどから、新たに福島県双葉郡楢葉町にある日本化学産業福島第二工場を借用し、生産設備を設置することとした。

進出に当たり、100%の子会社の住鉱エナジーマテリアルを設立した。
また、日本化学産業は二次電池用正極材料の生産技術を有することから、今回のニッケル酸リチウムの増産に当たり、同社の福島第一工場にニッケル酸リチウムの製造工程の一部を委託する。

住友金属鉱山は、パナソニックと共同で二次電池用正極材料の一つである高性能のニッケル酸リチウムの開発に成功し、パナソニックに提供してきた。

このニッケル酸リチウムを使用したパナソニック製の円筒型リチウムイオン二次電池は、現行では世界最高水準のエネルギー密度を有しており、米国の電気自動車メーカーのTesla Mortorsが製造・販売している Model Sに採用されている。

パナソニックは10月1日、リチウムイオン電池セルを生産する新会社 Panasonic Energy Corporation of North America をネバダ州スパークスに設立した。
新会社は、同社とTesla Mortorsが連携して設置を検討してきた大規模電池工場ギガファクトリー内で、リチウムイオン電池の生産を行う。

2014/10/8  パナソニック、リチウムイオン電池の生産会社を米国に設立 


住友金属鉱山は、今後のニッケル酸リチウムの需要拡大に対応するために、2013年9月に新居浜市の磯浦工場でニッケル酸リチウムの生産設備の増強を行うと発表した。

設備投資額は、約48億円で、生産能力を月産 300 トンから850 トンに増やすもので、2014年6月に完成させた。

同社は本年10月20日、総額約150億円を投じ、能力を月産850トンから1,850トンに増やすと発表した。2015年12月完成を予定している。
福島県双葉郡楢葉町の新工場はこの一部で、総額150億円のうち、約40億円を投じる。

住友金属鉱山は、ニッケル原料鉱石の製錬から加工までを一貫して手掛けている強みを活かし、二次電池用正極材料のさらなる高性能化と安定供給に取り組むとしている。

 

付記

住友金属鉱山は2016年10月、パナソニックのリチウムイオン二次電池生産拡大に伴い、新たにニッケル酸リチウムの生産設備の増強を磯浦工場(愛媛県新居浜市)、播磨事業所(兵庫県加古郡播磨町)にて行うと発表した。

設備投資額は総額約180億円で、2018年1月完成を予定している。これにより同社のニッケル酸リチウムの生産能力は、1,850トン/月から3,550トン/月に増加する。

ーーー

ニッケル酸リチウムの生産には、大きく分けて3つの工程がある。

第1は硫酸ニッケルの溶液とコバルトなどを調合し中和して直径十数ミクロンの水酸化物の粒子に変える工程。
第2はその水酸化物をリチウムと混ぜて焼成する工程。
第3は表面処理を施して製品に仕上げる工程である。
 

住友金属鉱山はニッケル原料鉱石の製錬から加工までを一貫して手掛けている。

立地

フィリピン 新居浜 新居浜
播磨
新居浜
楢葉町
会社 Nickel Asia Coral Bay Nickel

住友金属鉱山

Taganito HPAL Nickel Corp.
製品 ニッケル鉱石 ニッケル・コバルト混合硫化物 電気ニッケル 硫酸ニッケル ニッケル酸リチウム
電気コバルト  

同社は世界有数のニッケル資源国フィリピンの最大規模のニッケル鉱山会社 Nickel Asia に出資するとともに、同社が54%、Nickel Asia が10% 出資するCoral Bay Nickel では2005年4月から、これまで回収が難しいとされてきた低品位鉱石(Ni=1.26%)を原料としてHPAL法(高圧硫酸浸出法)によりニッケル・コバルト混合硫化物 (Ni=52.7%,Co=3.9%)を生産している。
第一期プラントではニッケル量で年約10,000トン、コバルト量で約700トンのニッケル・コバルト混合硫化物 を生産し、第2工場完成後はニッケル量で22,000トンとなった。

さらに、Taganito HPAL Nickel Corp.(住友金属鉱山 62.5%、Nickel Asia 22.5%、三井物産 15.0%)を設立し、HPAL法でニッケル・コバルト混合硫化物(ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算)を生産している。

HPAL法では大量の硫酸を消費するが、住友金属鉱山東予工場での銅の生産で副生する硫酸を供給する。

2009/8/22 住友金属鉱山、比最大手ニッケル鉱山会社の株式を取得


住友金属鉱山は、この
ニッケル・コバルト混合硫化物を新居浜製錬所に送り、電気ニッケル、コバルトを生産、更に硫酸ニッケルとしている。

同社の高純度硫酸ニッケル「ファインエメラルド」は、電気めっきや無電解めっきをはじめ、すべてのニッケルめっき用に最適であり、めっき以外にもアルミ発色用、触媒用、電池材料用等幅広い用途に使用されている。

同社は新居浜のニッケル工場で硫酸ニッケルを年25,000トンを生産しているが、2014年1月からは更に播磨事業所で年 20,000トンの生産を開始した。

今回のニッケル酸リチウムの増産に伴い、播磨事業所の増産を決定した。
2016年1月完成を目途に能力を45,000トンとする。新居浜と合わせた能力は70,000トンとなる。

ーーー

二次電池用正極材料には、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケル酸リチウム系(LNCA)、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム系(三元系:LNCM)、リン酸鉄リチウム(LFP)などがあるが、既報のとおり、三元系の三菱化学、LFPの三井造船・戸田工業が撤退を決めた。

2014/11/1 BASFと戸田工業、日本でリチウムイオン電池用正極材の合弁会社設立について基本合意

撤退企業は、安価な競合製品が増え、エコカーの普及も進まなかったことを理由としている。

住友金属鉱山の場合、コスト競争力の面でも、販売面でも大きな強みを持つ。

これまで利用価値のなかった低品位鉱石を使い、また副生硫酸を使用するなどして、原料をすべて 元から自社で生産しており、コスト競争力は大きいと思われる。

販売面でも共同開発の相手のパナソニックに供給、そのパナソニックは今後電気自動車で大きく成長すると見られているTesla Mortorsと提携し、電池を供給している。


2014/11/10  石油化学産業の市場構造に関する調査報告

経済産業省は11月7日、産業競争力強化法第50条に基づく「石油化学産業の市場構造に関する調査報告」を公表した。

http://www.meti.go.jp/press/2014/11/20141107001/20141107001a.pdf

「産業競争力強化法」 は2014年1月20日に施行された。
アベノミクスの第三の矢である「日本再興戦略」に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生し、産業競争力を強化することを目的とし、「創業期」、「成長期」及び「成熟期」の発展段階に合わせたいろいろな支援策により産業競争力を強化しようというもの。

産業競争力強化のためには、日本経済の3つの歪み、すなわち「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」を是正していくことが重要で、この法律は、そのキードライバーとしての役割を果たすものであるとしている。

同法第50条(調査等)は以下の通り。

政府は、事業者による事業再編の実施の円滑化のために必要があると認めるときは、商品若しくは役務の需給の動向又は各事業分野が過剰供給構造にあるか否かその他の市場構造に関する調査を行い、その結果を公表するものとする。

ーーー

経産省は6月30日、産業競争力強化法第50条に基づく調査報告「石油精製業の市場構造に関する調査報告」を発表した。

経産省はこれに合わせ、総合資源エネルギー調査会の資源・燃料分科会がまとめた「平成26年度以降の3年間についての原油等の有効な利用に関する石油精製業者の判断基準(告示)案」を公表した。

「残油処理装置装備率」の向上を目標とし、実質的に常圧蒸留装置の処理能力の削減を強制するものである。

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制 

これを受け、各社は具体的な能力削減策を検討していると報道されている。

経済産業省は11月末を期限に、設備最適化と事業再編の方針の提出を求めている。
経産相は、「各社の方針の提出を待って、補助金や産業競争力強化法に基づく税制も総動員して後押ししていきたい」と述べた。

ーーー

今回の石油化学産業についての報告概要は下記の通り。

経済産業省が経営コンサルタントのA.T.カーニー鰍ノ委託した「石油化学産業の市場構造に関する調査」の報告を参考にしている。

1.国内石油化学産業の現状

ナフサクラッカー 14基、生産能力 年 720万トンに対し、2012年国内生産量  610万トン
  住友化学(千葉 38万トン)、旭化成(水島 44万トン)の停止で、能力は640万トンに減少。

輸出が生産量の3〜4割を占める。

石油化学産業の収益は大きく変動しやすく、総じて利益率は低い。
過去10年の売上高経常利益率は2.5%(製造業平均は4.1%)



  

2. 国際的な需給構造の変化

   日本からの輸出減のリスク

   @ 北米の安価なシェールガス由来化学製品のアジア市場への流入

   A 中国の安価な石炭を原料とした化学製品増産

   B 中東の化学産業への投資拡大による安価な化学製品のアジア市場への流入

随伴ガスの生産量には限りがあるため、2011年以降、エチレン設備能力の伸びは年平均3%程度まで低下すると見込まれる。

但し、若年層の高い失業率への対策などから、国家政策として石化事業拡大を図る可能性がある。

   C 最大の輸出先の中国の経済成長減速、需要減

 

  以上のまとめ

3. 上記リスクの影響

エチレン生産量
 2020年までで 470万トンまで減少
 2030年までで 310万トンまで減少

4. 対応策

@ 生産設備集約、再編による生産効率の向上
A 石油精製との連携による生産体制の最適
B 隣接企業とのエネルギー相互融通、発電設備等の共有化、共通部門の集約統合によるコスト削減
C 海外展開の促進

ーーー

上記の報告は正しく、誰もが分かっていることである。

石油産業の場合は、常圧蒸留装置(トッパー)の削減であり、比較的簡単だが、それでも前回の場合、数社で難航した。

エチレンの場合はエチレン停止はその工場全体を止めてしまうことにもなりかねない。

もともと、多くの誘導品は競争力がないが、 エチレンを止めないために動かしていた。エチレンを止めた場合に、他社のエチレンを買ってまで動かす意味はないものが多い。

誘導品に強い三菱化学、住友化学、旭化成でも、エチレン停止に関連し、多くのプラントを止めている。

三菱化学:塩ビ事業撤退、スチレン事業撤退、ナイロン事業売却、テレフタル酸事業の国内撤退、その他
住友化学:日本オキシランのSM/PO、PGの停止、その他
旭化成  :ANM、SM、ABS等

これは従業員の雇用をどうするかという大きな問題を生む。

これまで、三菱化学の鹿島(第一)が停止し、住友化学の千葉、旭化成の水島が停止を決めたが、これら各社は石化以外の事業を展開しており、なんとか、他の事業への配転で対処できるため、可能となった。

それ以外の多くの企業にとっては従業員対策は難しく、経済産業省が法律で強制しようとしても、実施できないのではなかろうか。

日本をダメにした10の裁判」の一つとされる 東京高裁判決で、従業員解雇に非常に厳しい条件を付けたのが影響している。)

 

新聞報道では、三井化学や丸善石油化学などの5工場が集中する千葉県内での統廃合が進むかが焦点となるとしている。

しかし、千葉地区では既に統廃合が実施されている。

   ・三井化学と出光興産がエチレンの運営を統合、三井は京葉エチレンから離脱を決定
   ・住友化学がエチレン停止、京葉エチレンから過半を引き取ることを決定

三井の京葉からの引き取りが無くなるため、三井(or 出光)のエチレン停止の可能性は少なく、残る丸善石化はエチレン停止は会社の解散につながりかねない。

報道では、京葉エチレンの停止を条件に千葉地区のエチレンの統合を三井が提案し、それへの対案として住化のエチレン停止、京葉エチレンからの 三井離脱、住化引き取り増が決まったとされており、これ以上の統廃合は可能性が少ないと思われる。

これ以外の可能性は川崎の東燃化学とJX日鉱日石のみである。

エチレン能力削減は必須だが、実現が難しいというのが実態である。
対策を打てないところがどんどん損益が悪化し、行き詰って撤退するのを待つしかないのだろうか。

 


2014/11/11 コスモ石油、UAE油田開発でCEPSAとJV 

コスモ石油は11月6日、コスモ子会社のコスモエネルギー開発が保有するアブダビ石油の株式を新設分割により設立する会社に承継させ、新設会社の一部持分をスペインの総合石油会社のCEPSAに譲渡すると発表した。

新設JVに直接アブダビ石油の株式を譲渡すると、評価額と簿価との差額が課税されるため、アブダビ石油株式を持つ部分を分割して子会社を新設し、その子会社の株式の一部をCEPSAに売却する形をとる。

コスモ石油とCEPSAは共にアブダビ国営の投資会社 International Petroleum Investment Company(IPIC)グループの一員同士である。

IPICは2007年にコスモ石油に20%出資し、筆頭株主となった。
IPICはCEPSAの株式を順次取得し、2009年8月にTotal から48.83% を買収、最終的に100%をおさえた。

IPICについては、2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

コスモ石油とCEPSAは2014年1月21日、IPICグループの一員同士として、相互の事業機会の発掘と事業化に向けた検討を実施するために提携し、中でも石油ガス開発事業において共同で新鉱区獲得や事業拡大に注力していくことで合意し、石油関連事業に関する戦略的包括提携合意契約を締結した。

両社は以下の作業部会を発足させ、それぞれのテーマに沿った検討を実施し、事業化を目指す。

(1)石油ガス開発作業部会   石油ガス開発事業分野での共同事業検討、技術ノウハウ共有
(2)戦略作業部会  石油ガス開発事業を除く石油関連事業分野での共同事業検討
             (石油化学、石油精製、マーケティング、その他)

このような戦略的提携関係の中、今回の決定に至った。

コスモ石油はコスモエネルギー開発を通じて、アブダビ石油、カタール石油開発、合同石油開発、コスモアシュモア石油の4社の株式を保有し、前3社では中東地域で石油開発事業に従事している。

中でもアブダビ石油における事業は最大規模であり、1969年に試掘1号井で出油に成功し、1973年から商業生産を開始した。
現在、ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田の3油田から生産される原油をブレンドし、ムバラスブレンド原油として、全量をコスモ石油とJX日鉱日石エネルギーが引き取っている。

アブダビ石油は2012年に45年間の期限を迎えたが、2011年2月に30年更新の新利権協定を締結した。
既存のムバラスなど3油田の24千バレルに加え、同程度の生産量が見込めるヘイル油田の権益も取得した。

2009/1/23 アブダビ石油の油田権益 20年延長へ

新しく権益を取得したヘイル油田は、既存3油田と同程度の生産量を見込む大規模プロジェクトで、2016年度の生産開始を目指す。
このプロジェクトを成功裡に完了させ、アブダビでのビジネスを一層拡大させるため、CEPSAを資本面でもパートナーとして迎え入れることを決めた。

新設されるコスモエネルギー開発子会社の価値は、原油埋蔵量、生産計画及び利益計画等を元に両社がそれぞれDCF分析を実施し、1,086百万米ドルとした。

この結果、CEPSAへの20%持分の譲渡価格は217百万ドルとなる。

コスモ石油では関係会社株式売却益として現段階で 約140億円の特別利益を計上する見込み。


 

 
2014/11/11 中韓FTA、首脳会談で妥結 

中国の習近平国家主席と、APEC首脳会議のため訪中している韓国の朴槿恵大統領は11月10日、北京の人民大会堂で首脳会談を行い、 両国は中韓自由貿易協定(FTA)交渉が「実質的に妥結した」と発表した。

重要な争点の交渉は終わり、後は協定に書き込む表現など技術的な問題が残っているだけで、年内の仮署名、年明けの正式署名を経て、来年中の発効を目指す。

付記

中韓両政府は2015年6月1日、ソウルで自由貿易協定に正式署名した。年内の発効を目指す。

商品、サービス、投資、金融、通信など両国経済全般を包括する計22分野でFTAが締結された。
中国は初めて金融、通信、電子商取引をFTAの対象に含めた。

青瓦台は、過去最大規模となる年間54億4000万ドルの関税節減効果が生じるとし、中国消費財市場への進出が加速するとの見通しを示した。

概要は以下の通り。

商品では、両国は品目数ベースで90%以上を開放することで合意した。

中国は品目数91%、輸入額85%(1371億ドル)、韓国は品目数92%、輸入額91%(736億ドル)について20年以内に関税を撤廃する。
協定発効後直ちに関税撤廃に応じる割合は、中国が輸入額44%、韓国が52%で、韓国がやや高い。

自動車は両国が共に市場開放対象から除外した。
液晶パネルは10年以内に関税を撤廃する。

農水産物は品目数ベース70%、輸入額ベース40%で合意し、FTA史上最低水準となった。
超敏感品目(輸入額ベース60%)は開放除外30%、関税割当制度適用16%、関税削減14%で調整が行われた。

コメはFTAから完全に除外することで合意した。トウガラシ、ニンニク、タマネギなど韓国で消費量が多い野菜類と牛肉、豚肉、リンゴ、ナシなど610品目余りは開放除外対象となった。

サービス分野では、FTA発効後2年以内に相互開放しないことで合意した分野を除き、全て自由化する「ネガティブリスト方式」の後続交渉を始めることで一致した。中国の韓国企業に対する差別法執行防止にも合意した。


2012年の日中韓サミットで三首脳は日中韓FTAの年内の交渉開始につき一致、その後、事務レベル会合を重ねた。
9月1日から5日まで、北京で第5回会合が開催されているが、
政治問題もからみ余り進展せず、韓国は中国とのFTA交渉を優先した。

しかし、中韓交渉も難航した。

衛生と検疫、技術障壁、競争、環境、電子商取引など8項目に対しては合意、通信と投資・知的財産権など8項目に対しては比較的進展したが、韓国の農水産物市場開放を求める中国と、工業製品・サービス市場の開放を要求する韓国の利害関係がぶつかり、首脳会談の行われた10日の早朝まで交渉が行われた。

ーーー

韓国にとっては中国は最大の貿易相手国で、昨年は全輸出額の約26%、全輸入額の約16%を占めた。
韓国は今後、中国の巨大市場で低い関税の恩恵を受けられることになる。

韓国は米国やEUともFTAを締結済みで、FTA締結国との貿易額が全体に占める割合は中国を加えると6割近くとなり、2割前後の日本を大きく上回る。 

欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」が実現する。

  韓国 (12) 中国は13番目 日本 (14) TPP参加国
(日本含め12)
ASEAN 物品貿易 2007年6月1日発効
サービス貿易 2009年5月1日発効
投資分野2009年9月1日発効
2008年12月から順次発効  
  シンガポール 2006年3月2日発効 2002年11月発効
マレーシア 個別には発効していないが、ASEANとして既に発効済み 2006年7月発効
タイ 2007年11月発効  
インドネシア 2008年7月発効  
ブルネイ 2008年7月発効
フィリッピン 2008年12月発効  
ベトナム 2009年10月発効
インド  2010年1月1日発効 2011年8月発効  
オーストラリア 2013/12 実質合意 2014年7月8日調印
ニュージーランド  ---  ---
トルコ 2013年5月1日発効  ---  
米国 2012年3月15日発効  ---
カナダ 2014年3月11日妥結  ---
メキシコ  --- 2005年4月発効
チリ 2004年4月1日発効 2007年9月発効
ペルー 2011年8月1日発効 2012年3月発効
コロンビア 2013年2月21日 正式署名  ---  
EFTA 2006年9月1日発効  ---  
  スイス (EFTAとして締結) 2009年9月発効  
EU 2011年7月1日暫定発効  ---  

 

なお、中国と豪州とのFTA交渉も進行しており、11月15-16日にブリスベンで開かれるG20首脳会議に合わせ、農産物輸出の拡大を盛り込んだ正式な合意を発表するとの見方が強まっている。



2014/11/12 中国政府、シェールガスの開発努力不足でSinopec等に罰金 

中国の国土資源部はこのたび、Sinopecに対し、2011年の最初のシェールガス鉱区の入札で約束した投資をしなかったとして約130万ドルの罰金を課した。
政府筋は石油・ガス権益の管理の強化の一環であるとし、投資をしないなら他にやらせるので権益を返却するべきだとしている。

Sinopecは2011年7月に貴州の南川(Nanchuanシェールガス鉱区の権益を取得したが、山岳地域での開発作業は予想より厳しく、約束した額の73%しか投資できていない。

河南省煤層気開発利用有限公司Henan Coalbed Methane Development and Utilization Co.) も近くの秀山(Xiushan)  シェールガス鉱区で約束の半額しか投資しなかったとして約 98万ドルの罰金を課せられた。

両社とも、鉱区の一部を政府に返却した。

中国は世界最大の技術的に回収可能シェールガス資源を持つとされ、米国をLNG輸入国から輸出国に変えたブームの再現を目指している。

米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は2011年4月に「世界のシェールガス資源量評価」を発表、中国の技術的に回収可能なシェールガス資源量は 1,275Tcf(36兆m3)で米国を上回る世界最大のシェールガス資源国であると評価した。

しかし、開発は遅れており、中国政府はいらだっている。

中国政府は本年8月、2020年のシェールガス産出目標を当初の600億〜800億m3から300億m3に下方修正した。
2013年のすべてのガス田でのシェール産出量は2億m3だった。

中国では、PetroChinaとSinopecが良好なシェール鉱区の大部分の権益を握っており、業界ではこれが開発の遅れの一因であるとしている。

これまでの4年間で成功したのはSinopecの重慶涪陵(Fuling)シェールガス田だけである。

中国国土資源部は重慶涪陵(Fuling)シェールガス田の新規確認原始埋蔵量について審査を行い、1,067.5億m3と認定した。
6月末時点で、29の試験井の日量生産量は320万m3で、生産量累計は611百万m3となった。

四川省ではPetroChinaがShellとのJVで開発を行っているが、Shellは地形の問題や水の確保が難しいことから事業を縮小する可能性を示している。
PetroChinaでは事業棚上げとの報道を否定したが、Shellはテスト井の結果(良好なものとそうでないものが混在している)を検討中で、次にどうするかは来年早々に決めるとしている。

ーーー

中国のPetroChina、Sinopec、中国海洋石油(CNOOC)は競って北米のシェールオイルやオイルサンド事業に参加している。         

これには、事業参加によって技術を取得し、中国のシェール開発に役立てるという目的もある。

しかし、技術を勉強しても、それだけでは中国でのシェール開発は目論見どおりにはいかないと思われる。

石油・ガス掘削の歴史、シェール掘削の周辺技術、機器の供給・修理体制、パイプラインや処理施設、輸送態勢、水資源、土地の利用の権利関係、資金ソース、法律体制、税制など、全てが揃って初めて、事業としてやっていける。
また、石油や天然ガスと異なり、一つの井戸で長期間継続しての掘削は出来ない。

埋蔵量があるというだけで、ゼロから掘削を行っても、成果を得るのは難しいと思われる。

 


2014/11/13 中国のシルクロード経済圏構想 

中国の習近平主席は11月4日、中央財経指導グループの第8回会議を招集し、 「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)およびシルクロード基金の設立という「中国版マーシャルプラン戦略」(中国メディア)について検討を行った。

主席は2013年9月7日、訪問先のカザフスタンの大学での講演会で、「シルクロード経済ベルト」と呼ぶ中央アジア諸国などとの経済協力の構想を明らかにした。

「人口30億人のシルクロード経済ベルトの市場規模と潜在力は他に例がない」と述べ、太平洋からバルト海に至る物流の大動脈の整備や、人民元と各国通貨の直接交換取引の拡大を挙げた。
中国と中央アジアのほか、ロシアやインド、パキスタンなども含めた広範な地域を想定しているとみられる。

2013/9/18  中国の習近平主席、「シルクロード経済ベルト」を提唱 

習主席は11月9日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の関連会議で基調講演し、「各国と協力して二つのシルクロード経済圏の建設を進める」と述べた。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通じ、中国自らの資金で地域経済の一体化を主導する意欲を示した。

APEC閣僚会議が開かれた11月8日にバングラデシュ、タジキスタン、ラオス、モンゴル、ミャンマー、カンボジア、パキスタンの首脳と「相互接続パートナーシップ強化対話会議」を開催した。

習主席は「『シルクロード経済圏』と『21世紀の海のシルクロード』を建設しよう」と呼びかけ、中国が400億ドルの「シルクロード基金」を創設すると表明した。

なお、中国を中心としたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立が10月24日に 決まった。

AIIB、BRICS開発銀行、シルクロード基金がシルクロード経済圏構想を資金面でサポートする。

ーーー

習主席は10月11〜19日の日程で、タジキスタン、モルジブ、スリランカ、インドの4ヵ国を歴訪した。
中国はこれを、「一帯一路構想を実現する旅」と位置づけている。

「一帯一路構想」は、中国から中央アジアを経て欧州に至る「シルクロード経済帯」と、中国沿岸部からアラビア半島までを結ぶ海上交通路の「21世紀海上シルクロード」を中国が中心になって開発していくという構想である。

人民元の流通、政策の共通、道路の開通、貿易の盛通、民心の相通という「五通」を目指している。

習主席はこう述べている。

シルクロード経済ベルトと21世紀の海のシルクロードというイニシアティブは時代の要請と発展加速という各国の願望に順応しており、包括性の高い発展プラットフォームを提供し、しっかりした歴史的淵源と人的・文化的基礎を備え、急速に発展する中国経済と沿線国の利益を結びつけることができる。

力を結集してこの重大事をうまく運び、『親、誠、恵、容』の周辺外交理念を堅持し、近睦遠交、沿線国がわれわれに対してさらに賛同し、親しくし、支持するようにする必要がある。

この地域は、世界総人口の63%を占める44億人の人口を有し、GDP規模も世界全体の29%を占める21兆ドルに達する。
沿線には多くの新興市場と途上国があり、発展の伸びしろは大きい。
中国はこの地域と緊密な経済貿易協力を展開しており、その貿易額は中国の対外貿易総額で4分の1以上を占めている。

既に、Eurasian Land Bridges 計画(江蘇省の連雲港を出発点として、西安、ウルムチ、中央アジア、ロシアを経由して、アムステルダムまで鉄道を建設する計画)を筆頭に、中国・シンガポール経済回廊、 バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊など、「一帯一路」の基幹通路案の検討が進んでいる。

広西チワン族自治区は向こう5年で、南寧からベトナムを通過しシンガポールを結ぶ高速鉄道建設計画を進める。

バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊は2013年5月の李克強総理のインドを訪問時に提案したもので、既に合同作業部会が開かれている。

ーーー

中国を中心としたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設準備の了解覚書が10月24日に 調印された。

アジア各国のインフラ整備を支援するAIIB設立構想は2013年10月、習主席が東南アジアを歴訪した際に表明した。日本主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗するためとみられ た。

当初は、ASEAN 10カ国のほか、韓国などの計16カ国が参加するとされた。南シナ海の領有権をめぐり中国と対立するフィリピンも参加する。 中国との国境紛争を抱えるインドなどは交渉に加わっていない。カナダや豪州なども参加を示したとされる。日本には参加の打診もないという。

10月24日に了解覚書に署名したのは、中国、ASEAN10カ国と、インド・バングラデシュ、モンゴル、パキスタン、スリランカ、ネパール 、カザフスタン、ウズベキスタンと、アラブ圏のクウェート・オマーン・カタールの計22カ国。当初、バングラとインドネシアは参加をためらっていた。

韓国は現時点では入らず、逆にインドが参加を決めた。

中国は韓国に対し、参加を要請していた。訪韓した唐家セン元国務委員も朴大統領を表敬訪問した席で、韓国のAIIB参加を繰り返し要請したと伝えられた。

韓国政府は来年前半には参加するかどうかについて決定するとされている。

最大の懸念は中国の出資比率で、中国が圧倒的多数の出資比率を掌握し、韓国がアジアインフラ投資銀行の決定に参与できない可能性も あるとみている。
また、米国はアジアインフラ投資銀行は国際金融秩序に適合しないと批判、参加を検討する韓国に慎重に検討するよう呼び掛けているとされる。

当初中国の出資比率50%に不満を表したインドは、加盟国間の対話で支配構造を調整することができるという中国の意思を確認し、参加を決めた。

豪財務相は、「AIIB参加を前向きに検討中で、創設準備の了解覚書に署名するだろう」としていたが、署名していない。米国の立場を考慮して観望していると見られている。

当初の資本金は500億ドル規模で、ADB (1650億ドル)のADBの1/3となる。

当初は中国が50%超を負担する方向だったが、中国色が強まるのを嫌う参加国に配慮し、中国は出資比率を抑えることを検討している。


2014/11/24  帝人、シンガポールのPC子会社撤収、松山のDMT生産停止など、多額の特別損失計上 

帝人はシンガポールのポリカーボネート子会社を撤収、松山のDMTを生産停止するなどの構造改革を行い、2014年9月中間決算で、減損損失305億円、事業構造改善費用111億円の合計416億円(年間では440億円) の特別損失を計上した。

同社の損益推移は下記の通りで、過去も多額の当期損失を計上している。

同社は過去にも毎年、多額の減損損失・事業構造改善費用を計上している。

2002年3月期 -191億円  
2003年3月期 -158億円  
2004年3月期 -82億円  
2005年3月期 -404億円 北米ファイバー、欧州的スタイル整理損 -375
2006年3月期 -81億円  
2007年3月期 -42億円  
2008年3月期 -322億円 米国PETフィルム -244、日本PET樹脂設備 -47
2009年3月期 -149億円  
2010年3月期 -250億円 インドネシア繊維子会社譲渡ほか -206
2011年3月期 -28億円  
2012年3月期 -26億円  
2013年3月期 -294億円 炭素繊維のれん -173、同米独の設備 -50、米国ヘルスケアのれん等 -54
2014年3月期 -112億円 樹脂シンガポール工場2系列休止、フィルム茨城事業所休止、パラキシレン生産中止等減損損失 -88
2015年3月期予 -440億円  

本年度の440億円の内訳は下記の通り。

1. 電子材料・化成品事業に係る損失  -310億円
 
  @ ポリカーボネート樹脂事業で、高付加価値品へのシフトを図ることで競争優位性を再構築すべく、エネルギーコスト競争力で劣り、汎用品ビジネス主体のシンガポール子会社について2015年12月末をもって事業撤収する。為替調整勘定の引当損失も計上する。
2014年3月期決算で、4系列のうちの2系列を休止すると言うことで減損損失を計上していた。

今後の生産は、競争力を有する中国子会社と、高機能品開発に適した松山事業所の2拠点体制に移行する。

社名 Teijin Polycarbonate Singapore 帝人化成 帝人化成(中国)
場所 シンガポール・ジュロン島 松山 浙江省嘉興市
株主 帝人 45%
帝人化成 45%
EDB 10%
  帝人化成 100%
能力 225千トン 120千トン 1系列 50千トン
2系列 100千トン
第3系列 60千トン
備考 原料ビスフェノールAは
Mitusi Bisphenol Singapore
   
     
  A ポリエステルフィルム事業においても、アジアの後発メーカー台頭による競争激化で収益が悪化しており、岐阜事業所設備等について減損処理を行う。
     
2.原料・重合部門に係る損失 -60億円
    ポリエステル製品に関し、コスト競争力の観点から原料からの生産モデルを見直し、DMTの生産を停止、同時に松山地区でのポリマー重合工場の再編を実施する。

帝人は松山のパラキシレン(290千トン)を2014年3月で停止している。

帝人はボトル用のPETを生産停止して、三井化学と事業統合し、パラキシレンを三井化学に供給していた。

2010/8/10 三井化学と帝人、国内のボトル用PET樹脂事業を統合

     
3.  ヘルスケア事業に係る損失  -42億円
 
    米国で在宅医療事業を営む連結子会社Braden Partners L.P.においては、米国での医療制度改革に伴い、保険価格の大幅な引き下げが継続していること等の環境変化により、収益状況が悪化しているため、2008年に買収した際に生じたのれん等の未償却残高の一部約42億円を減損処理する。
     
4. 高機能繊維・複合材料 -28億円
 
    高機能繊維事業の競争力強化に向け、高成長が見込まれるASEAN地域へのシフトを加速し、同時にポリエステル繊維の国内拠点の再編を図る。

同素材の生産についてはタイ子会社と松山事業所に集中するため、徳山・岩国・三原地区より生産機能を移管し、徳山事業所は閉鎖する。

加えて、研究・開発機能の再編・強化を図るため、大阪研究センターの機能を松山事業所に統合し、同センターは閉鎖する。

     
     

帝人は11月5日、修正中期計画(抜本的構造改革と将来に向けた発展戦略)を発表した。

赤字体質事業に対して抜本的な対策を講じるとともに、将来の発展に向けた基盤整備のため、踏み込んだ事業構造改革、および発展戦略の実行体制の再整備
を行う。

 

 


2014/11/15  ロシア、中国向けに二本目の天然ガスパイプライン 

ロシアのプーチン大統領は11月9日、APEC首脳会議に先立ち中国の習近平国家主席と会談した。
中露は両首脳立ち会いのもと、ロシアのシベリア産天然ガスを西シベリアの国境経由で中国に送るパイプライン計画の覚書など17の合意文書に署名した。

ーーー

ロシアと中国は5月21日、Gazpromによる中国石油天然ガス集団(CNPC)への天然ガス供給で合意し、契約に調印した。
ロシア側は2018年から30年間にわたり毎年380億m3の天然ガスを供給する。

ガスは西シベリアのガス田からウラジオストックまでをつなぐ計画のEastern Pipeline (“Power of Siberia”)で輸送する。

9月1日にヤクーツク近郊で
“Power of Siberia”のロシア側の起工式が行われた。

ガスプロムの社長は10月13日、ウラジオストク郊外のLNGプラント建設計画を「撤回する可能性がある」と述べた。
もしそうなら、Power of Siberiaは中国までということになる。

しかし、地元の行政府は11月5日、ガスプロム側と協議を行った結果、「計画は予定どおり進んでいる」として、当初の計画が撤回されることはないとの見通しを示した。

この時点でプーチン大統領は、「ロシアと中国は西ルートでもガスを供給することを協議する」と述べ、西シベリアからモンゴルの西側を通り中国につなげる2本目も敷設することを明らかにしていた。

2006年3月のプーチン・胡錦涛会談で 西シベリアからアルタイ共和国経由で「西気東輸」(中国の東西ガスパイプライン)につなぐAltai Pipelineの建設で合意したが、価格交渉が難航したこともあり、これまで実現していない。

2014/5/26     ロシアのGazprom 、中国への天然ガス供給契約に調印

今回、このAltai Pipelineの建設で合意した。
計画によるとガス供給は30年間で、東ルートは年間380億立方メートル、西ルートは同300億立方メートルを見込んでいる。

Putin大統領は9月にシベリアのVankor油田の権益の中国への売却を提案したが、現在、CNPCとの間で権益の10%の売却の交渉が行われているとされる。

2014/9/11 Putin大統領、シベリアのVankor油田の権益の中国への売却を提案